(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】回路遮断器
(51)【国際特許分類】
H01H 73/00 20060101AFI20230619BHJP
【FI】
H01H73/00 A
(21)【出願番号】P 2019195043
(22)【出願日】2019-10-28
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕明
(72)【発明者】
【氏名】山中 佑太
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-342976(JP,A)
【文献】特開2000-003660(JP,A)
【文献】実開昭56-037353(JP,U)
【文献】特開昭56-079825(JP,A)
【文献】特開2002-216612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 73/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路遮断器であって、
電路の開閉を切り換えるように動作する電路開閉部と、
漏電の発生時において、開状態となるように前記電路開閉部を動作させる引外しコイル装置と、
前記引外しコイル装置及び前記電路開閉部の動作をテストするために、使用者によって操作されるテスト操作部と、を備え、
前記電路開閉部が開状態となっているときに、前記テスト操作部が操作されてしまうことを防止する操作防止機構を更に備える回路遮断器。
【請求項2】
前記テスト操作部は、使用者によって押下されるテストボタンであって、
前記操作防止機構は、前記電路開閉部が開状態となっているときに、押下される方向に沿った前記テストボタンの動作を規制する規制リブを有している、請求項1に記載の回路遮断器。
【請求項3】
前記電路開閉部は可動部を有しており、
前記規制リブは、前記電路開閉部が開状態となっているときに、前記可動部に当接した状態となることで前記テストボタンの動作を規制する、請求項2に記載の回路遮断器。
【請求項4】
前記電路開閉部が閉状態から開状態に切り換わる際において、
前記規制リブが、動作中の前記可動部に当接することのないように、前記規制リブを前記テストボタン側に予め移動させる退避機構を更に備える、請求項3に記載の回路遮断器。
【請求項5】
前記テスト操作部が操作されることで閉状態に切り換わるテストスイッチが、前記引外しコイル装置を構成する部材に取り付けられている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の回路遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は回路遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
回路遮断器は、例えば分電盤の内部において、電路の開閉を切り換えるための装置として用いられるものである。回路遮断器が所謂「漏電遮断器」として構成されている場合には、回路遮断器は、ハンドルに対し使用者が行う操作に応じて電路を遮断する機能の他、漏電が生じた際においてはこれを検知し、電路を自動的に遮断する機能をも有している。
【0003】
このような漏電遮断機能を実現するために、回路遮断器には、漏電の発生を検知するための零相変流器や、零相変流器からの信号に応じて電路を開状態に切り換えるための引外しコイル装置等が設けられる。更に、回路遮断器には、引外しコイル装置等が正常に動作することを確認するために、使用者によって操作されるテスト操作部が設けられる。テスト操作部とは、例えば、使用者によって押下されるテストボタンである。
【0004】
引外しコイル装置等を動作させるための電力は、回路遮断器の内部における電路のうち負荷側の部分から供給される。このような構成においては、ハンドル操作等によって上記電路が開状態となっているときには、引外しコイル装置等には電力が供給されない。このため、電路が開状態となっているときに、仮にテスト操作部に対する操作が行われたとしても、引外しコイル装置のコイル部分に電流が流れることはない。
【0005】
しかしながら、回路遮断器が逆接続された場合、すなわち、負荷側から電力が供給されるように回路遮断器が接続された場合には、ハンドル操作等によって電路が開状態となっているときにおいても、引外しコイル装置等には引き続き電力が供給されてしまう。このような構成においては、電路が開状態となっているときに、テスト操作部に対する操作が行われてしまうと、引外しコイル装置のコイル部分に電流が流れ続けてしまうので、コイルが焼損してしまう可能性がある。
【0006】
そこで、下記特許文献1に記載の回路遮断器では、引外しコイル装置に電力を供給する経路の途中において、可動接触子の動作に連動するスイッチを設けることとしている。このような構成においては、ハンドル操作等によって電路が開状態となると、可動接触子と連動して上記のスイッチも開状態に切り換わり、以降は引外しコイル装置に電力が供給されなくなる。これにより、上記のようなコイルの焼損を防止することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の回路遮断器のように、引外しコイル装置の保護を目的としてスイッチを別途設けた構成においては、部品点数が増加することに加え、スイッチを取り付ける作業の工数が増加してしまうので、コストの観点からは好ましくない。
【0009】
本開示は、コイルを保護するためのスイッチを設けることなく、逆接続された際におけるコイルの焼損を確実に防止することのできる回路遮断器、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る回路遮断器は、電路の開閉を切り換えるように動作する電路開閉部と、漏電の発生時において、開状態となるように電路開閉部を動作させる引外しコイル装置と、引外しコイル装置及び電路開閉部の動作をテストするために、使用者によって操作されるテスト操作部と、を備える。この回路遮断器は、電路開閉部が開状態となっているときに、テスト操作部が操作されてしまうことを防止する操作防止機構を更に備える。
【0011】
このような構成の回路遮断器では、電路開閉部が開状態となっているときにテスト操作部が操作されてしまうことが、操作防止機構によって防止される。電路開閉部が開状態となっているときには、テスト操作部に対する操作自体ができなくなるので、上記特許文献1に記載されているようなスイッチを設けなくても、コイルの焼損を確実に防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、コイルを保護するためのスイッチを設けることなく、逆接続された際におけるコイルの焼損を確実に防止することのできる回路遮断器、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る回路遮断器の外観を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る回路遮断器の内部構造を示す図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る回路遮断器の内部構造を示す図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る回路遮断器の内部構造を示す図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る回路遮断器の回路構成を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る回路遮断器の内部構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0015】
本実施形態に係る回路遮断器10は、不図示の分電盤に取り付けられるものあり、当該分電盤において電路の開閉を切り換えるための装置として構成されている。
図1に示されるように、回路遮断器10は、ハウジング20と、電源側端子座31と、負荷側端子座32と、ハンドル50と、を備えている。
【0016】
ハウジング20は、概ね回路遮断器10の外形をなす部材である。ハウジング20は樹脂によって形成されている。ハウジング20の内部には、後述の可動接触子80等が収容されている。
【0017】
ハウジング20は、基台21とカバー22とに分割された構成となっている。基台21は、
図1における下方側の部分であって、分電盤の内側にある不図示のベースに取り付けられる部分となっている。カバー22は、
図1における上方側の部分であって、基台21を、上記のベースとは反対側から覆っている部分である。
【0018】
電源側端子座31は、不図示の電源側配線が接続される部分である。
図1に点線で示されるように、ハウジング20のうち
図1における左側の部分は、一部が右側に向けて凹状に後退しており、これにより凹状の空間である凹部23が形成されている。電源側端子座31は、この凹部23に配置されている。
【0019】
負荷側端子座32は、不図示の負荷側配線が接続される部分である。
図1に点線で示されるように、ハウジング20のうち
図1における右側の部分は、一部が左側に向けて凹状に後退しており、これにより凹状の空間である凹部24が形成されている。負荷側端子座32は、この凹部24に配置されている。
【0020】
ハンドル50は、使用者により電路の開閉を切り換えるための操作がなされる部分である。ハンドル50は、カバー22に形成された不図示の開口を通じて、その一部が外側に突出している。
【0021】
図1のようにハンドル50が負荷側に傾斜している状態においては、ハウジング20の内部における電路、すなわち、電源側端子座31と負荷側端子座41との間を繋ぐ電路が開状態となっている。このため、負荷側配線への電力の供給は遮断されている。
【0022】
図1の状態からハンドル50が操作され、ハンドル50が反時計回り方向に回転して電源側に傾斜している状態になると、上記の電路が閉状態に切り換えられる。これにより、電源側配線からの電力が負荷側配線へと供給されるようになる。また、当該状態からハンドル50が操作され、ハンドル50が上記とは逆方向に回転して
図1の状態になると、上記の電路は再び開状態に切り換えられる。このように、ハンドル50は、電路の開閉を切り換えるための操作により回転する部材として設けられている。
【0023】
後に詳細に説明するように、回路遮断器10は、漏電が生じた際においてはこれを検知し、電路を自動的に遮断する機能をも有している。つまり、回路遮断器10は所謂「漏電遮断器」としての機能を有している。
【0024】
回路遮断器10のうちハンドル50の近傍となる位置には、テストボタン60と、表示部70と、が配置されている。テストボタン60は、上記のような漏電遮断器としての機能が正常に発揮されることをテストするために、使用者によって操作される部分である。テストボタン60は略円柱形状となっており、先に述べたハンドル50と同様に、カバー22に形成された不図示の開口を通じてその一部が外側に突出している。使用者が、基台21からカバー22に向かう方向にテストボタン60を押下すると、漏電が生じた場合と同様に、後に説明する引外しコイル装置100や電路開閉部40が動作し、電路が開状態に切り換えられる。このように、テストボタン60は、引外しコイル装置100及び電路開閉部40の動作をテストするために、使用者によって操作される部分であって、本実施形態における「テスト操作部」に該当する。
【0025】
表示部70は、漏電が生じたか否かを表示するための部分である。表示部70は略円柱形状となっており、上記のテストボタン60と同様に、カバー22に形成された不図示の開口を通じてその一部が外側に突出している。漏電が生じていない通常時においては、表示部70の突出量は比較的小さい。一方、漏電が生じて電路が開状態に切り換えられると、表示部70は
図1における上方側に移動して、その突出量が大きくなる。使用者は、表示部70を外側から視認することにより、漏電が生じたか否かを確認することができる。漏電が生じて電路が開状態に切り換えられた後、ハンドル50が操作されて再び電路が閉状態になると、表示部70は
図1における下方側に移動し、その突出量が小さい状態に戻る。
【0026】
回路遮断器10の内部構成について説明する。
図2、3には、電路が開状態となっている時における内部構成が示されている。
図4には、電路が閉状態となっているときにおける内部構成が示されている。尚、
図2、3、4においては、回路遮断器10の内部に配置された部材の一部の図示が省略されている。
【0027】
図2、3、4に示されるように、回路遮断器10の内部には、可動接触子80と、引外しコイル装置100と、が設けられている。
【0028】
可動接触子80は、回路遮断器10の内部で回転動作することにより、不図示の固定接触子90に接触している閉状態と、固定接触子90から離間している開状態と、を切り換えるための部材である。可動接触子80は、その全体が金属により形成されている。本実施形態に係る回路遮断器10は、3極の回路遮断器10として構成されている。このため、
図5に示されるように、可動接触子80及び固定接触子90がそれぞれ3つずつ設けられている。
【0029】
図1のようにハンドル50が負荷側に傾斜している状態においては、可動接触子80は
図2、3に示される状態となっており、可動接触子80と固定接触子90とが互いに離間している。これにより、回路遮断器10の内部における電路は開状態となる。
【0030】
ハンドル50が操作され、ハンドル50が
図1の状態から反時計回り方向に回転すると、可動接触子80は
図2等の矢印AR1の方向に回転し、
図4に示される状態となる。当該状態においては、可動接触子80と固定接触子90とが互いに当接しており、回路遮断器10の内部における電路は閉状態となっている。その後、ハンドル50が操作され、ハンドル50が上記とは逆方向に回転すると、可動接触子80は
図4の矢印AR2の方向に回転し、
図2、3の状態に戻る。
【0031】
可動接触子80は、セパレータ82によって支持されている。セパレータ82は樹脂により形成されている。セパレータ82は回転軸83を有しており、回転軸83の周りにおいて回転自在な状態で保持されている。先に述べた3つの可動接触子80は、いずれもこのセパレータ82によって保持されている。従って、セパレータ82が回転軸83の周りに回転すると、3つの可動接触子80のそれぞれも、セパレータ82と共に回転する。
【0032】
ハンドル50に対する操作が行われ、ハンドル50が回転すると、当該回転の力が不図示の伝達機構を介してセパレータ82に伝達される。これにより、セパレータ82と共に3つの可動接触子80が回転し、先に述べたように電路の開閉が切り換えられる。
【0033】
可動接触子80、セパレータ82、及び固定接触子90は、回路遮断器10において電路の開閉を切り換えるように動作する部分である。以下では、これらを総じて「電路開閉部40」と表記する。また、可動接触子80及びセパレータ82は、電路開閉部40のうち、実際に動作する「可動部」に該当する。
【0034】
引外しコイル装置100は、漏電の発生時において、開状態となるように電路開閉部40を動作させるための装置である。引外しコイル装置100は、コイル120と、可動電磁片130と、を有している。
【0035】
コイル120は、導線をボビン110の周りに巻き付けることにより形成されたコイルである。コイル120に電流が流れて電磁力が生じると、当該電磁力により、次に述べる可動電磁片130が動作する。
【0036】
可動電磁片130は、コイル120で生じた電磁力によって動作することで、不図示の開閉機構を動作させて電路開閉部40を開状態に切り換えるものである。尚、このような開閉機構の構成としては公知のものを採用し得るので、その具体的な図示や説明については省略する。
【0037】
図5を参照しながら、引外しコイル装置100を動作させるための具体的な回路構成について説明する。同図に示されるように、回路遮断器10の内部には、零相変流器210と、増幅器220と、スイッチング回路230と、が設けられている。
【0038】
零相変流器210は、電路における3相交流電流のバランスに応じた電流を出力するものである。
図5においては、電源側端子座31と負荷側端子座32との間を繋いでいる3つの電路が、それぞれ電路11、12、13として示されている。電路11、12、13は、いずれも、この零相変流器210の内側を通るように配置されている。漏電が生じていないときにおいては、電路11、12、13を通る3相交流電流のバランスがとれているので、零相変流器210から出力される電流は概ね0となる。一方、漏電が生じているときにおいては上記のバランスが崩れるので、零相変流器210から出力される電流は大きくなる。
【0039】
増幅器220は、零相変流器210から出力される電流を増幅し、これをスイッチング回路230に入力するものである。「零相変流器210から出力される電流」は、漏電の発生を示す信号、ということもできる。
【0040】
スイッチング回路230は、増幅器220から入力される電流の値が所定値を超えると、コイル120に電流を流すように構成された回路である。コイル120に電流が流れると、先に述べたように、可動電磁片130が動作し、電路開閉部40が開状態に切り換わる。
【0041】
スイッチング回路230には、配線14、15が接続されている。配線14は、電路11とスイッチング回路230との間を繋ぐ配線である。配線15は、電路13とスイッチング回路230との間を繋ぐ配線である。スイッチング回路230は、配線14、15を介して供給される電力を受けて動作する。
【0042】
電路11と電路13との間は、配線16を介して接続されている。配線16の途中には、端子抵抗150と、テストスイッチ140と、が配置されている。
図2や
図5等において符号「151」が付されているのは、端子抵抗150から伸びる配線16の端部である。以下では、当該部分ことを「端部151」とも表記する。
【0043】
テストスイッチ140は、その全体が金属により形成された板ばねである。
図2等に示されるように、テストスイッチ140は、その一端がボビン110に取り付けられている。カバー22から基台21に向かう方向、すなわち
図1の上下方向に沿って回路遮断器10を見た場合においては、テストボタン60は、テストスイッチ140と重なる位置に配置されている。また、テストボタン60の奥側の端部は、テストスイッチ140に当接している。
【0044】
テストボタン60が押下されていない通常時においては、テストスイッチ140と端部151とは互いに離間しており、テストスイッチ140は開状態となっている。テストボタン60が押下されると、テストボタン60からの力によって、板ばねであるテストボタン60が変形する。これにより、テストボタン60の一部が端部151に当接し、テストスイッチ140が閉状態となる。
【0045】
このようなテストスイッチ140は、テスト操作部であるテストボタン60が操作されることにより、閉状態に切り換わるスイッチ、ということができる。本実施形態では、テストスイッチ140が、引外しコイル装置100を構成する部材、具体的にはボビン110に取り付けられており、これにより引外しコイル装置100と一体となっている。このような構成とすることにより、テストスイッチ140を取り付ける作業を簡素化することができる。
【0046】
テストボタン60が操作されてテストスイッチ140が閉状態になると、電路11、12、13を通る3相交流電流のバランスが崩れた状態、すなわち、漏電が生じたときと同じ状態になる。このため、引外しコイル装置100や及び電路開閉部40が正常であれば、漏電時と同様にこれらが動作し、電路が開状態に切り換えられることとなる。
【0047】
電源側端子座31側に電源側配線が接続され、負荷側端子座32側に負荷側配線が接続されている状態、すなわち順接続状態においては、電路開閉部40が開状態になると、スイッチング回路230や引外しコイル装置100には電力が供給されなくなる。このため、当該状態においてテストボタン60が押下され、テストスイッチ140が閉状態となっても、コイル120に電流が流れることはない。
【0048】
一方、電源側端子座31側に負荷側配線が接続され、負荷側端子座32側に電源側配線が接続されている状態、すなわち逆接続状態においては、電路開閉部40が開状態になった以降においても、スイッチング回路230や引外しコイル装置100には電力が供給される。このため、当該状態においてテストボタン60が押下され、テストスイッチ140が閉状態になると、コイル120には継続的に電流が流れてしまうこととなる。その結果、コイル120が焼損してしまう可能性がある。
【0049】
上記のような、逆接続時におけるコイル120の焼損を防止するための構成としては、例えば、配線15の途中における点線DLの位置にスイッチを設ける構成が考えられる。電路開閉部40が開状態となったときには、当該スイッチも連動して開状態となるように構成しておけば、スイッチング回路230や引外しコイル装置100には電力が供給されなくなるので、上記のようなコイル120の焼損が生じることはない。
【0050】
しかしながら、コイル120の保護を目的としてスイッチを別途設けた構成においては、部品点数が増加することに加え、スイッチを取り付ける作業の工数が増加してしまうので、コストの観点からは好ましくない。
【0051】
そこで、本実施形態に係る回路遮断器10では、上記のようなスイッチを設けることなく、コイル120の焼損を確実に防止し得るように構成されている。
【0052】
図2等に示されるように、回路遮断器10のうち引外しコイル装置100の近傍となる位置には、規制リブ160が配置されている。規制リブ160は、細長い棒状の部材である。規制リブ160は、その長手方向が、テストボタン60が押下される方向、すなわち、
図1や
図2における上下方向に沿うように配置されている。規制リブ160は、周辺に配置された構造部材により、その長手方向(
図2の上下方向)に沿って移動可能な状態で保持されている。
【0053】
図2及び
図3に示されるように、電路開閉部40が開状態となっているときにおいては、規制リブ160の一端(
図2における下端)は、可動部であるセパレータ82に対して当接している。また、規制リブ160の他端(
図2における上端)は、端部151よりも更にテストスイッチ140側に向けて突出している。
【0054】
このため、電路開閉部40が開状態となっているときに、使用者がテストボタン60を押下しようとした場合には、テストスイッチ140は、端部151に当接する前に規制リブ160に当接し、それ以上端部151側に移動することができなくなる。つまり、使用者がテストボタン60を押下して、引外しコイル装置100等の動作をテストすることが、規制リブ160によって妨げられる。テストスイッチ140が閉状態になることが確実に防止されるので、逆接続時においても、上記のようなコイル120の焼損が生じることがない。
【0055】
一方、
図4に示されるように、電路開閉部40が閉状態となっているときにおいては、規制リブ160の一端(
図2における下端)と、可動部であるセパレータ82との間には隙間が形成されている。このため、当該状態において、使用者がテストボタン60を押下しようとした場合には、規制リブ160は、押下されるテストスイッチ140からの力によって、セパレータ82側へと移動する。この場合、テストスイッチ140の動きは規制リブ160によって妨げられないので、最終的には、テストスイッチ140が端部151に当接した状態、すなわち、テストボタン60が完全に押下された状態となる。
【0056】
以上に説明したように、本実施形態に係る回路遮断器10は、電路開閉部40が開状態となっているときに、テスト操作部であるテストボタンが操作されてしまうことを防止する操作防止機構を備えている。本実施形態では、規制リブ160及びこれを支持する周辺部材が、上記の「操作防止機構」に該当する。
【0057】
規制リブ160は、電路開閉部40が開状態となっているときに、押下される方向に沿ったテストボタン60の動作を規制する。具体的には、規制リブ160は、電路開閉部40が開状態となっているときに、可動部であるセパレータ82に当接した状態となることでテストスイッチ140の動作を妨げて、これによりテストボタン60の動作を規制する。
【0058】
尚、操作防止機構の具体的な構成としては、以上に説明したような態様に限定されず、種々の態様を採用することができる。例えば、電路開閉部40が開状態となっているときにおける規制リブ160の動きが、セパレータ82への当接によって規制されるのではなく、可動接触子80への当接によって規制される構成としてもよい。
【0059】
操作防止機構における更なる工夫点について説明する。
図6には、電路開閉部40が閉状態となっているときにおける規制リブ160、及びその周辺の構成が示されている。同図においては、各構成部材が、表示部70の中心軸を含む面に沿って切断された状態となっている。
【0060】
図6に示されるように、表示部70の下方側、すなわち可動接触子80側には、平板部71と、腕部72と、突起73と、が形成されている。これらはいずれも樹脂により形成されており、表示部70と共にその全体が一体の部材として形成されている。
【0061】
平板部71は、概ね平板状に形成された部分である。平板部71は、その主面の法線方向が、可動電磁片130の移動方向に沿うように配置されている。平板部71には、これを上記法線方向に沿って貫くように開口710が形成されている。開口710には可動電磁片130が挿通されている。
【0062】
腕部72は、平板部71のうち可動接触子80側の端部から、更に可動接触子80側へと向かって伸びるように形成された棒状の部分である。突起73は、平板部71の先端から、セパレータ82側に向かって突出するように形成された部分である。
【0063】
先に述べたように、漏電が生じていない通常時においては、カバー22からの表示部70の突出量は比較的小さくなっている。このときにおける表示部70の位置は、
図6に示されるように、その可動範囲のうち、可動接触子80側の端部となる位置となっている。
【0064】
このとき、表示部70は、
図2、3、4に示されるバネ75によってカバー22側に向けて付勢されている。しかしながら、表示部70は不図示のロック機構によって保持されているので、表示部70の位置が変化することはない。
【0065】
漏電が生じ、引外しコイル装置100が作動すると、上記のロック機構が解除される。表示部70は、バネ75の付勢力によってカバー22側へと移動する。これにより、表示部70の突出量が大きくなる。
【0066】
その後、使用者によってハンドル50が操作されると、セパレータ82及び可動接触子80は、
図2等において矢印AR1で示される方向に回転する。このとき、セパレータ82の側面に形成された突起84(
図3、4を参照)が、突起73に当たることにより、表示部70はカバー22から遠ざかる方向に引き下げられる。その結果、表示部70の突出量は通常時の突出量に戻される。
【0067】
図6に示されるように、平板部71のうち規制リブ160側の面には、規制リブ160側に向かって突出する突起74が形成されている。また、規制リブ160のうち平板部71側の面には、凹状に後退する溝161が形成されている。突起74は、溝161の内側に張り込んでいる。溝161は、規制リブ160の長手方向に沿って伸びるように形成されている。ただし、当該長手方向に沿って溝161が形成されている範囲は、規制リブ160の全体ではなく一部のみとなっている。このような構成により、溝161は、規制リブ160の可動範囲を規定している。
【0068】
規制リブ160は、
図6に示される状態から、可動接触子80側(
図6における下側)に向けて更に移動することができる。溝161のうち、カバー22側の端面162に突起74が当接すると、規制リブ160はそれ以上可動接触子80側に移動することができなくなる。規制リブ160が、その可動範囲のうち最も可動接触子80側に移動した際においても、
図6のように電路開閉部40が閉状態となっているときには、規制リブ160はセパレータ82には当接せず、両者の間には隙間が形成された状態となっている。
【0069】
その後、漏電が生じて電路開閉部40が開状態に切り換わる際には、可動部であるセパレータ82及び可動接触子80が、
図4において矢印AR2で示される方向に回転し始める。また、先に述べたように、表示部70がカバー22側に向かって移動し始める。
【0070】
このとき、溝161の端面162に突起74が当接するので、規制リブ160も、表示部70と共にカバー22側に移動する。このような規制リブ160の動きは、先に述べたセパレータ82及び可動接触子80の動きよりも速い。このため、少なくとも、セパレータ82及び可動接触子80が動作している間においては、規制リブ160の下端がセパレータ82に当接することはない。
【0071】
仮に、規制リブ160の下端が、動作中のセパレータ82に当たってしまうような構成とした場合には、規制リブ160には、セパレータ82への当接に伴う大きな衝撃が加えられることとなる。また、回転動作中のセパレータ82から規制リブ160に加えられる力の方向は、規制リブ160の移動方向に沿った方向とはならない。このため、規制リブ160が、セパレータ82から受ける衝撃により変形したり、破損したりすることが懸念される。
【0072】
これに対し、本実施形態では上記のように、電路開閉部40が閉状態から開状態に切り換わる際において、規制リブ160が、動作中の可動部に当接することのないように、予めカバー22側(テストボタン60側ともいえる)に向かって移動することとしている。このような規制リブ160の移動は、平板部71に形成された突起74や、規制リブ160に形成された溝161によって実現される。突起74及び溝161は、規制リブ160をテストボタン60側に予め移動させるための「退避機構」に該当する。このような退避機構を設けることにより、上記のような規制リブ160の破損などが防止される。
【0073】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0074】
10:回路遮断器
40:電路開閉部
60:テストボタン
100:引外しコイル装置
160:規制リブ