(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】監視機器、配電盤および監視システム
(51)【国際特許分類】
H04L 12/28 20060101AFI20230619BHJP
【FI】
H04L12/28 400
(21)【出願番号】P 2020000419
(22)【出願日】2020-01-06
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 幸司
(72)【発明者】
【氏名】皆川 明樹
【審査官】中川 幸洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-216782(JP,A)
【文献】特開2018-191116(JP,A)
【文献】特開2005-027280(JP,A)
【文献】特開2008-177796(JP,A)
【文献】特表2012-525583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスタにマルチドロップ方式で接続され、マスタからの要求に応じて計測データをマスタに送信するスレーブである監視機器であって、
計測部と、
通信部と、
自動でスレーブからマスタへ切り替わるマスタ・スレーブ動作切替部と、
を備え、
前記マスタ・スレーブ動作切替部は、自アドレス番号毎にまたは自識別ID毎に異なる所定の時間前記マスタと通信が行われない場合に、スレーブ動作からマスタ動作へ切り替わ
り、
前記通信部は、スレーブ動作からマスタ動作へ切り替わった場合に、接続された他の監視機器に識別IDまたはアドレス番号を要求する信号を送信する
ことを特徴とする監視機器。
【請求項2】
請求項1に記載の監視機器において、
マスタ動作へ切り替わる条件は、通常の設定であるアドレス番号を使用して、
システムの上限時間+(アドレス番号×一定時間) により導き出される時間前記マスタと通信が行われない場合にマスタ動作へ切り替わることを特徴とする監視機器。
【請求項3】
請求項1に記載の監視機器において、
待機時間カウンタ部と待機時間判定部とを備え、
前記待機時間カウンタ部は、マスタから通信信号を受信した時点から待機時間をカウントし、
前記待機時間判定部は、前記待機時間カウンタ部がカウントした待機時間が前記所定の時間になった場合に、前記マスタ・スレーブ動作切替部を動作させることを特徴とする監視機器。
【請求項4】
請求項1に記載の監視機器において、
表示部を備え、
前記表示部は、マスタへ移行したことを知らせる表示、マスタへ移行し他のスレーブと通信確立したことを知らせる表示、通信確立した他のスレーブの識別IDおよび/またはアドレス番号を示す表示を行うことを特徴とする監視機器。
【請求項5】
計測部と通信部とを備え、通信線にマルチドロップ方式で接続される監視機器を複数有する配電盤であって、
少なくとも1つの前記監視機器が、自動でスレーブからマスタへ切り替わるマスタ・スレーブ動作切替部を備え、
前記マスタ・スレーブ動作切替部は、自アドレス番号毎にまたは自識別ID毎に異なる所定の時間前記マスタと通信が行われない場合に、スレーブ動作からマスタ動作へ切り替わ
り、
前記通信部は、スレーブ動作からマスタ動作へ切り替わった場合に、接続された他の監視機器に識別IDまたはアドレス番号を要求する信号を送信することを特徴とする配電盤。
【請求項6】
請求項5に記載の配電盤において、
マスタ・スレーブ動作切替部を備える前記監視機器が、マスタ動作へ切り替わる条件は、通常の設定であるアドレス番号を使用して、
システムの上限時間+(アドレス番号×一定時間) により導き出される時間前記マスタと通信が行われない場合にマスタ動作へ切り替わることを特徴とする配電盤。
【請求項7】
請求項5に記載の配電盤において、
マスタ・スレーブ動作切替部を備える前記監視機器は、表示部を備え、
前記表示部は、マスタへ移行したことを知らせる表示、マスタへ移行し他のスレーブと通信確立したことを知らせる表示、通信確立した他のスレーブの識別IDおよび/またはアドレス番号を示す表示を行うことを特徴とする配電盤。
【請求項8】
マスタと、計測部と通信部とを備え、通信線にマルチドロップ方式で接続される複数の監視機器から構成され、前記監視機器から計測データを前記マスタへ送信する監視システムであって、
少なくとも1つの前記監視機器が、自動でスレーブからマスタへ切り替わるマスタ・スレーブ動作切替部を備え、
前記マスタ・スレーブ動作切替部は、自アドレス番号毎にまたは自識別ID毎に異なる所定の時間前記マスタと通信が行われない場合に、スレーブ動作からマスタ動作へ切り替わ
り、
前記通信部は、スレーブ動作からマスタ動作へ切り替わった場合に、接続された他の監視機器に識別IDまたはアドレス番号を要求する信号を送信することを特徴とする監視システム。
【請求項9】
請求項8に記載の監視システムにおいて、
マスタ・スレーブ動作切替部を備える前記監視機器が、マスタ動作へ切り替わる条件は、通常の設定であるアドレス番号を使用して、
システムの上限時間+(アドレス番号×一定時間) により導き出される時間前記マスタと通信が行われない場合にマスタ動作へ切り替わることを特徴とする監視システム。
【請求項10】
請求項8に記載の監視システムにおいて、
マスタ・スレーブ動作切替部を備える前記監視機器は、表示部を備え、
前記表示部は、マスタへ移行したことを知らせる表示、マスタへ移行し他のスレーブと通信確立したことを知らせる表示、通信確立した他のスレーブの識別IDおよび/またはアドレス番号を示す表示を行うことを特徴とする監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー監視システムで使用する監視機器の通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
工場内、ビル内などにおいて、電路の状態や電路に接続した機器の状態などを監視する監視機器を通信線で上位装置へ接続したエネルギー監視システムが設けられている。エネルギー監視システムでは、マルチドロップ方式(例えばRS-485、EIA-485)の通信を採用しており、システム内で使用する機器は、マスタとスレーブという関係で通信を行っている。マスタの指示により、スレーブが必要なデータを返信する構成である。スレーブにはマスタが識別できるように識別IDや個別アドレスが割り振りされ、同じネットワーク内に同じ識別IDや個別アドレスは存在しない。識別IDや個別アドレスは任意に割り振りされる。
【0003】
特許文献1には、RS-485ネットワークにて監視装置を上位装置に接続した電力監視システムが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、マスタ局とスレーブ局とから構成される通信システムが記載されている。特許文献2には、「マスタ局またはスレーブ局として動作可能な複数の可変速装置を用いて、1つのマスタ局と少なくとも1つのスレーブ局とを構成し、マルチドロップ通信方式によるデータ通信を行う通信システムにおいて、各可変速装置は、マスタ局として動作する優先順位を設定するための優先順位設定手段を有し、その優先順位が通信システム内で最も高い可変速装置がマスタ局として動作し、残りの可変速装置がスレーブ局として動作し、現マスタ局が異常発生により通信不能であれば、つぎに優先順位の高いスレーブ局が自動的にマスタ局となり、データ通信を継続して行うことを特徴とする通信システム。」(請求項4参照)と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-97490号公報
【文献】特開2000-216782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、RS-485ネットワークを使用した監視システムが開示されているが、マスタ局が通信不能となった場合の対応については考慮されていない。
【0007】
特許文献2には、現マスタ局が異常発生により通信不能となれば、つぎに優先順位の高いスレーブ局が自動的にマスタ局となり、データ通信を継続して行う通信システムが記載されているが、優先順位や通信待機時間を事前に設定する必要がある。
【0008】
本発明は、優先順位や通信待機時間の事前設定が不要で、スレーブ局が自動的にマスタ局となり、データ通信を継続して行うことができる監視機器および監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための、本発明の「監視機器」の一例を挙げるならば、マスタにマルチドロップ方式で接続され、マスタからの要求に応じて計測データをマスタに送信するスレーブである監視機器であって、計測部と、通信部と、自動でスレーブからマスタへ切り替わるマスタ・スレーブ動作切替部と、を備え、前記マスタ・スレーブ動作切替部は、自アドレス番号毎にまたは自識別ID毎に異なる所定の時間前記マスタと通信が行われない場合に、スレーブ動作からマスタ動作へ切り替わり、前記通信部は、スレーブ動作からマスタ動作へ切り替わった場合に、接続された他の監視機器に識別IDまたはアドレス番号を要求する信号を送信することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の「配電盤」の一例を挙げるならば、計測部と通信部とを備え、通信線にマルチドロップ方式で接続される監視機器を複数有する配電盤であって、少なくとも1つの前記監視機器が、自動でスレーブからマスタへ切り替わるマスタ・スレーブ動作切替部を備え、前記マスタ・スレーブ動作切替部は、自アドレス番号毎にまたは自識別ID毎に異なる所定の時間前記マスタと通信が行われない場合に、スレーブ動作からマスタ動作へ切り替わり、前記通信部は、スレーブ動作からマスタ動作へ切り替わった場合に、接続された他の監視機器に識別IDまたはアドレス番号を要求する信号を送信することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の「監視システム」の一例を挙げるならば、マスタと、計測部と通信部とを備え、通信線にマルチドロップ方式で接続される複数の監視機器から構成され、前記監視機器から計測データを前記マスタへ送信する監視システムであって、少なくとも1つの前記監視機器が、自動でスレーブからマスタへ切り替わるマスタ・スレーブ動作切替部を備え、前記マスタ・スレーブ動作切替部は、自アドレス番号毎にまたは自識別ID毎に異なる所定の時間前記マスタと通信が行われない場合に、スレーブ動作からマスタ動作へ切り替わり、前記通信部は、スレーブ動作からマスタ動作へ切り替わった場合に、接続された他の監視機器に識別IDまたはアドレス番号を要求する信号を送信することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優先順位や通信待機時間の事前設定が不要で、スレーブ局が自動的にマスタ局となり、データ通信を継続して行うことができる監視機器および監視システムを提供することができる。
【0013】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】スレーブからマスタとなる条件の参考例を示す図である。
【
図3】実施例1の監視機器の一例を示すブロック構成図である。
【
図4】マスタ動作へ移行した監視機器の通信の概要を示す図である。
【
図5】実施例1の監視機器のマスタ動作へ移行のフロー図である。
【
図6】実施例1の監視機器での表示部の表示例を示す図である。
【
図8】実施例3の監視システムの正常時の表示例を示す図である。
【
図9】全ての機器が通信しない異常発生時の表示例を示す図である。
【
図10】通信線の一か所を切り離した異常個所の調査時の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において、当業者による様々な変更および修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【実施例1】
【0016】
本発明の実施例1について、
図1乃至
図6を用いて説明する。
【0017】
図1は、エネルギー監視システムの概略構成例を示す。
図1において、符号1がマスタであり、パソコン等で構成される。マスタ1は、ツイストペア通信ケーブルであるRS-485伝送線(符号3)にて監視機器である各スレーブ(符号2)をマルチドロップ方式にて接続し、ネットワークを構築する。各スレーブ2にはマスタが識別するため個別のアドレス(AD):スレーブアドレス01~0Fを割り付ける。このアドレスは任意に割り付けられるが、同じアドレスのものは同一ネットワーク内には存在しない。このシステムでは、マスタはアドレス01のスレーブから順に要求の発行および返信の受信を行う。全スレーブへの要求および返信が終わる時間を含む一定の時間、例えば最長10分に一度はマスタ1が各スレーブ2に対しデータを要求するので、通常スレーブ2は10分毎にデータ要求を受け取る。マルチドロップ接続であるので、各スレーブは自身に関係のない他スレーブへの通信も受信している。各スレーブは、自身への通信要求に対して返信し、他スレーブへの通信は、内容を読み取るだけで返信はしない。
【0018】
上記スレーブ2に、自動的にマスタへ移行する機能を搭載する。各スレーブ2は、通信が途絶えたタイミングから無通信時間の計測を始める。無通信時間が各スレーブのアドレス毎に異なる所定時間経過した場合に、スレーブからマスタへ移行する。(システムの上限時間である所定時間:例えば10分)+(アドレス番号×一定時間:例えば3秒) 以上無通信時間が発生した場合に、監視機器がスレーブからマスタへ移行する。
図2の例では、アドレスAD:01のスレーブの場合は、10分+(1*3秒)=10分3秒後にマスタへ移行する。また、アドレスAD:0Aのスレーブの場合は、10分+(0A(16進数)*3秒)=10分30秒後にマスタへ移行する。
【0019】
マスタへ移行した機器は、一定時間、例えば3秒以内に各スレーブに対し通信を送る。スレーブは、10分+(アドレス番号×3秒)以内に何か通信を受信した場合は、計測時間をリセットし、再度通信が途絶えたタイミングから無通信時間の計測を始める。アドレス番号は個別に振られるため、マスタからデータが来ない場合にスレーブがマスタへ移行するタイミングは、スレーブ毎に全て異なることになる。同時にマスタに移行することはないので、ネットワーク上にはマスタは1台しか存在しない。アドレス番号を使用することで、通常のシステム設定をするだけでマスタへの移行条件を設定することが可能である。そのため、自動的にマスタへ移行する専用の設定をする必要がない。
【0020】
スレーブから移行したマスタが通信を送るコマンドは、機器の識別IDを読み出す通信を送る。本システムでは識別ID読み出しの要求は全てのスレーブ機器が返信できるコマンドである。マスタへ移行していないスレーブは、自身がマスタへ移行する時間前に通信データを受信するため、無通信時間の計測がリセットされ、マスタへ移行することがない。
【0021】
図3に、実施例1の監視機器10の一例のブロック構成図を示す。監視機器10は、CPU等からなる処理部11と、通信受信部12と、通信送信部13と、電路の状態や機器の状態などを計測する計測部15と、表示部14を備えている。また、データやプログラムを記憶する記憶部16を備えていても良い。処理部11は、データ構文判定部111、待機時間カウンタ部112、待機時間判定部113、マスタ・スレーブ動作切替部114、送信データ作成部115を備えている。なお、通信受信部12と通信送信部13とを合わせて通信部ともいう。
【0022】
監視機器10がスレーブ動作時には、通信受信部12がマスタからの要求コマンドを受信し、データ構文判定部111が要求を解析し、送信データ作成部115が計測データ等を含む送信データを作成し、通信送信部13からマスタへ送信する。待機時間カウンタ部112は、通信が途絶えたタイミングから無通信時間の計測を始める。そして、待機時間判定部114で、待機時間カウンタ部112で計測した無通信時間が上記スレーブ毎に異なる所定時間を経過したことを判定する。判定信号に応じてマスタ・スレーブ動作切替部114が、監視機器10をスレーブ動作からマスタ動作へ切り替え、送信データ作成部115でマスタとしての要求コマンドを作成し、通信送信部13から他の監視機器へ送信する。
【0023】
図4に、スレーブがマスタ動作に切り替わった場合のデータ通信の概要を示す。
図4は、アドレス02のスレーブがマスタとなった場合の例である。マスタとなった機器は、全てのアドレスに識別IDを要求する。ここではシステム上限はアドレス7F(121台)とする。要求に対し返信があったアドレスの機器がネットワーク上に存在するスレーブということになる。全てのアドレスに識別IDを要求し終えたマスタは、再度システムの上限時間である所定の時間10分間待機する。本体のマスタが復帰すると復帰時にデータを要求してくるため、この10分間にデータを受信した場合はマスタへ移行した機器は、スレーブへ戻ることになる。本来のマスタが復帰していない場合は、10分後にマスタ移行した機器が再度識別ID要求を行う。これにより、自身のマスタを維持し、各スレーブもマスタへ移行することはない。そして、この動作を繰り返すこととする。
【0024】
図5に、実施例1の監視機器の、スレーブからマスタ動作への切り替えのフロー図を示す。
S101で、通信信号を受信したかを判断し、通信信号を受信した場合は、S109で待機時間カウンタをリセットする。通信信号を受信しない場合は、S102で待機時間を計測中かを判断する。待機時間を計測中でなければ、S103で待機時間の計測を開始する。待機時間計測中であれば、或いはS103で待機時間の計測を開始すると、S104でマスタモード中かを判断する。
マスタモード中で無ければ、S106で 待機時間>=10分+(自身のAD数*3秒) を満たすかを判断し、待機時間が所定の時間を超えた場合は、S107でその監視機器をマスタモードへ移行する。待機時間が所定の時間を超えていない場合は、ENDへ行く。
S104でマスタモード中であれば、S105で待機時間が10分を超えているかを判断し、10分を超えていなければENDへ行く。
S107でマスタモードへ移行した場合、或いは、S105で待機時間が10分を超えた場合は、S108で他の監視機器へ識別ID読み出し要求を送信し、S109で待機時間カウンタをリセットする。
そして、監視機器は、所定時間毎にこのフローを繰り返す。
【0025】
図6に、監視機器の表示部の一例を示す。表示部14は、マスタへ移行したことを知らせる表示、およびマスタへ移行しスレーブと通信確立したことを知らせる表示を備えている。
【0026】
スレーブからマスタ動作となった監視機器は、
図6の符号41のマスタとなったことを示すLED(Master)を点灯させる。また、スレーブの監視機器から返信があった場合は、返信があったことを示す符号42のLED(Response)を点灯させる。そして、通信の返信があった監視機器のアドレス番号を符号43のように1秒間隔で表示する。アドレス番号に代えて、識別IDを表示しても良い。この機能により、自身がマスタかどうか、スレーブから返信を受信したかどうか、どのアドレスのスレーブと通信できたか視認することができる。
【0027】
表示部としては、LEDに限らず、液晶ディスプレイ等種々の表示手段を用いることができる。
【0028】
なお、本実施例では、自動でスレーブからマスタへ切り替わる時間をアドレス番号毎に異なる所定の時間としたが、識別ID毎に異なる所定の時間としてもよい。
【0029】
本実施例によれば、監視機器が自動でマスタとなる機能を備えており、マスタへ移行するための優先順位や通信待機時間の事前設定が不要で、通常のスレーブとしての個別IDや個別アドレスの設定のみで、スレーブ局が自動的にマスタ局となって通信を継続して行うことができる。
【0030】
また、マスタ動作となった場合に、マスタへ移行したことを知らせる表示、およびマスタへ移行しスレーブと通信確立したことを知らせる表示や通信確立したスレーブの個別IDや個別アドレスを表示するので、マスタが無くても通信の確認を行うことができる。
【実施例2】
【0031】
エネルギー監視システムは増設が可能なシステムである。システム内で使用する監視機器(スレーブ)は、配電盤内に組み込まれることが多い。増設する際は、配電盤を製作する会社がシステム内にて使用する監視機器(スレーブ)を組み込む。この配電盤製作会社が配電盤を出荷する時の検査において、通信の確認を行うにはマスタが必要となる。マスタはパソコンなどであり、マスタ自身の設定も必要であるため、盤製作会社では、検査するための機器の準備と設定に時間を要してしまう。本実施例は、この課題を解決するものである。
【0032】
図7に、本発明の実施例2の配電盤を示す。配電盤50には、複数の監視機器10a~10cを備え、マルチドロップ方式で伝送線に接続されている。なお、図示していないが、配電盤50は、電力を入力し分配して出力する配電盤としての構成を備えており、監視機器10a~10cは電圧、電流等の電路の状態や遮断器等の内蔵する機器の状態などを監視するものである。
【0033】
監視機器10a~10cの少なくとも一つを、実施例1で説明した、アドレスに応じた時間でスレーブからマスタへ移行する機能を有する監視機器を用いる。
【0034】
配電盤製作後の出荷検査ではマスタが接続されていないため、アドレスの最も若い監視機器がマスタとなる。マスタとなった監視機器は、接続している監視機器と通信をして通信できた機器のアドレス番号を表示する。この機能を使うことで、配電盤を製作した会社は、マスタを用意する必要なく、特別な操作をすることなく、配電盤の通信状態の確認を行うことができる。
【実施例3】
【0035】
エネルギー監視システムで通信異常が発生した場合、通信異常個所の特定に時間がかかる。マルチドロップ方式であるためすべての機器が接続されており、異常な機種を切り離さないと正常状態にならない。監視機器(スレーブ)を1つづつ切り離し、マスタと個別通信させて通信の返信があるか確認するという作業を行う必要があるためである。本実施例は、この課題を解決するものである。本機能を使用すると異常個所の早期発見と配線ルートの概要を確認することができる。
【0036】
図8に、マスタとしてのパソコン55と、パソコン55にRS-485伝送線を介して接続された配電盤A50a、配電盤B50b、配電盤C50c、配電盤D50dとから構成される監視システムを示す。配電盤AのアドレスAD:01の監視機器、配電盤BのアドレスAD:07の監視機器、配電盤CのアドレスAD:04の監視機器、配電盤DのアドレスAD:0Aの監視機器が、実施例1のアドレスに応じた時間でスレーブからマスタへ移行する機能を搭載している。
図8は、全ての監視機器が正常に動作している状態を示しており、パソコン55がマスタとして動作しているので、各監視機器のMaster LEDは点灯していない。
【0037】
各配電盤を設置する業者がすべて同一となるわけではないので、配電盤間を接続する通信線のルートは顧客も不明なことが多い。スレーブが通信を出力した状態で異常(故障)となると、マスタは通信データを出力したとしてもシステム内は通信がぶつかりあってしまい、各スレーブは通信を受信しない状態に陥る。これにより、システム内のすべての通信が停止してしまう。
【0038】
図9に、仮に配電盤BのアドレスAD:09の監視機器が故障した場合の表示例を示す。
図9は、全ての機器が通信しないときの表示例である。通信が停止するとアドレスAD:01,04,07,0Aの機器がマスタへ移行する。
図9の動作は次のとおりである。
・アドレスAD:01の監視機器がマスタへ移行し、Masterが点灯する。ID要求通信を送信するが、故障した機器により、通信データが各機器へ届かず、Responseは点灯しない。
・アドレスAD:04の監視機器がマスタへ移行し、Masterが点灯する。ID要求通信を送信するが、故障した機器により、通信データが各機器へ届かず、Responseは点灯しない。
・アドレスAD:07の監視機器がマスタへ移行し、Masterが点灯する。ID要求通信を送信するが、故障した機器により、通信データが各機器へ届かず、Responseは点灯しない。
・アドレスAD:0Aの監視機器がマスタへ移行し、Masterが点灯する。ID要求通信を送信するが、故障した機器により、通信データが各機器へ届かず、Responseは点灯しない。
・アドレスAD:01の監視機器が10分後に再度ID要求するが、故障した機器により、通信データが各機器へ届かず、Responseは点灯しない。
・アドレスAD:04の監視機器が10分後に再度ID要求するが、故障した機器により、通信データが各機器へ届かず、Responseは点灯しない。
・以下、同様である。
【0039】
その状態で
図10に示すように、配電盤Bと配電盤Cとの間の通信線を切り離す。
図10は、1か所切り離した調査時の表示例である。
図10の動作は次のとおりである。
・通信線を切り離したことにより、アドレスAD:04の監視機器がID通信要求を送信すると、アドレスAD:05,06,0A,0B,0Cの監視機器にID通信要求が届き、これらの監視機器からレスポンスがある。そして、Responseが点灯し、アドレスを表示する。
・アドレスAD:0Aの監視機器は、通信を受け取ったため、マスタからスレーブ動作へ移行する。
・アドレスAD:01およびAD:07の監視機器のマスタ機能は、状況変化が無いため、発生時と同じ表示である。
【0040】
すなわち
図10のように、アドレスAD:01の監視機器はマスタ機能が動作していてレスポンスがない状態、アドレスAD:07の監視機器はマスタ機能が動作していてレスポンスがない状態、アドレスAD:04の監視機器はマスタが動作していてレスポンスがアドレスAD:05,06,0A,0B,0Cの監視機器からあった状態、アドレスAD:0Aの監視機器はマスタが動作していない状態になる。この状態になるとアドレスAD:04,05,06,0A,0B,0Cの監視機器は故障していないことがわかり、かつアドレスAD:04,05,06,0A,0B,0Cの監視機器が繋がっているということがわかり、配電盤C,Dがつながっていることがわかるので配線ルートの概要を知ることができる。また、異常がある箇所は配電盤A,B内にあるユニットであることがわかる。
【0041】
この状態で
図10の配電盤Aと配電盤Bとの間の通信線を切り離す。その時の表示がアドレスAD:01の監視機器はマスタが動作していてレスポンスがアドレスAD:02,03の監視機器からあった状態、アドレスAD:07の監視機器はマスタが動作していてレスポンスが無い状態だったとする。このような表示になると、配電盤B内にある機器に異常があることがわかる。後は、配電盤B内のそれぞれの配線を外し通信の確認をすれば、異常が発生している監視機器を発見することができる。通常であればそれぞれの配電盤にパソコン等のマスタを持っていき、マスタの設定をして動作確認する必要があるが、本機能を使用することで早期に異常個所を発見でき、且つ配線ルートを知ることが可能となる。
【符号の説明】
【0042】
1…マスタ機器
2…スレーブ機器
3…RS-485伝送線
10…監視機器
11…処理部(CPU)
111…データ構文判定部
112…待機時間カウンタ部
113…待機時間判定部
114…マスタ・スレーブ動作切替部
115…通信データ作成部
12…通信受信部
13…通信送信部
14…表示部
15…計測部
16…記憶部
41…マスタ機能を示すLED
42…スレーブから返信があったことを示すLED
43…通信したスレーブアドレスを表示するセグメント表示
50…配電盤
55…マスタ(パソコン)