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特許7297689電力安定化支援装置、電力安定化支援方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】電力安定化支援装置、電力安定化支援方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20230619BHJP
   B60L 53/66 20190101ALI20230619BHJP
   B60L 55/00 20190101ALI20230619BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20230619BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20230619BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20230619BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230619BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
H02J3/32
B60L53/66
B60L55/00
G06Q50/06
H02J3/00 130
H02J3/14
H02J7/00 P
H02J13/00 301A
H02J13/00 311R
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020000838
(22)【出願日】2020-01-07
(65)【公開番号】P2021111994
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小原 玲子
(72)【発明者】
【氏名】河内 駿介
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 廣次
(72)【発明者】
【氏名】松井 照久
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 道彦
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-048286(JP,A)
【文献】特開2016-032339(JP,A)
【文献】特開2015-171189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00-3/12
B60L7/00-13/00
B60L15/00-58/40
G06Q10/00-10/10
G06Q30/00-30/08
G06Q50/00-50/20
G06Q50/26-99/00
G16Z99/00
H02J3/00-7/12
H02J7/34-7/36
H02J13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EVによって電力系統から充電が行われる特定区域における環境と電力との対応関係を示す環境情報、前記特定区域におけるEVによる充電又は放電に関する運用情報を取得する取得部と、
前記特定区域における環境を含む設定条件を設定する設定部と、
前記環境情報、前記運用情報、及び前記EVを利用する利用者の属性から推測される充電の習慣度合いに基づいて、前記特定区域において前記設定条件を充足する場合における電力の状態を示す電力情報を生成する電力情報生成部と、
前記電力情報生成部によって生成された前記電力情報を記憶部に記憶させる制御部と、 を備える電力安定化支援装置。
【請求項2】
前記電力情報は、特定区域における所定のエリアの電力の状態を示す値である電力状態値と、当該エリアの位置座標とを対応づけた情報であり、
前記電力情報生成部は、前記環境情報に基づいて、前記特定区域においてEVによる充電又は放電が行われない場合における前記電力状態値である第1電力状態値を算出し、算出した前記第1電力状態値、及び前記運用情報に基づいて、前記特定区域においてEVによる充電又は放電が行われる場合における前記電力状態値である第2電力状態値を算出し、前記第2電力状態値と、前記第2電力状態値に対応するエリアの位置座標とを対応付けることにより、前記電力情報を生成する、
請求項1に記載の電力安定化支援装置。
【請求項3】
EVによって電力系統から充電が行われる特定区域における環境と電力との対応関係を示す環境情報、前記特定区域におけるEVによる充電又は放電に関する運用情報を取得する取得部と、
前記特定区域における環境を含む設定条件を設定する設定部と、
前記環境情報、及び前記運用情報に基づいて、前記特定区域において前記設定条件を充足する場合における電力の状態を示す電力情報を生成する電力情報生成部と、
前記電力情報生成部によって生成された前記電力情報を記憶部に記憶させる制御部と、 を備え、
前記電力情報は、特定区域における所定のエリアの電力の状態を示す値である電力状態値と、当該エリアの位置座標とを対応づけた情報であり、
前記電力情報生成部は、
前記環境情報に基づいて、前記特定区域においてEVによる充電又は放電が行われない場合における前記電力状態値である第1電力状態値を算出し、算出した前記第1電力状態値、及び前記運用情報に基づいて、前記特定区域においてEVによる充電又は放電が行われる場合における前記電力状態値である第2電力状態値を算出し、前記第2電力状態値と、前記第2電力状態値に対応するエリアの位置座標とを対応付けることにより、前記電力情報を生成し、
特定区域における所定のエリアにおいて基準とする前記電力状態値に、前記設定条件に対応する前記環境情報に応じた係数を乗算することにより、前記第1電力状態値を算出する、
電力安定化支援装置。
【請求項4】
EVによって電力系統から充電が行われる特定区域における環境と電力との対応関係を示す環境情報、前記特定区域におけるEVによる充電又は放電に関する運用情報を取得する取得部と、
前記特定区域における環境を含む設定条件を設定する設定部と、
前記環境情報、及び前記運用情報に基づいて、前記特定区域において前記設定条件を充足する場合における電力の状態を示す電力情報を生成する電力情報生成部と、
前記電力情報生成部によって生成された前記電力情報を記憶部に記憶させる制御部と、 を備え、
前記電力情報は、特定区域における所定のエリアの電力の状態を示す値である電力状態値と、当該エリアの位置座標とを対応づけた情報であり、
前記電力情報生成部は、
前記環境情報に基づいて、前記特定区域においてEVによる充電又は放電が行われない場合における前記電力状態値である第1電力状態値を算出し、算出した前記第1電力状態値、及び前記運用情報に基づいて、前記特定区域においてEVによる充電又は放電が行われる場合における前記電力状態値である第2電力状態値を算出し、前記第2電力状態値と、前記第2電力状態値に対応するエリアの位置座標とを対応付けることにより、前記電力情報を生成し、
特定区域における所定のエリアに対応する前記第1電力状態値に、前記運用情報に応じた係数を乗算することにより、前記第2電力状態値を算出する、
電力安定化支援装置。
【請求項5】
EVによって電力系統から充電が行われる特定区域における環境と電力との対応関係を示す環境情報、前記特定区域におけるEVによる充電又は放電に関する運用情報を取得する取得部と、
前記特定区域における環境を含む設定条件を設定する設定部と、
前記環境情報、及び前記運用情報に基づいて、前記特定区域において前記設定条件を充足する場合における電力の状態を示す電力情報を生成する電力情報生成部と、
前記電力情報生成部によって生成された前記電力情報を記憶部に記憶させる制御部と、 を備え、
前記電力情報生成部によって生成された前記電力情報に基づいて、前記特定区域における電力の状態に逸脱があるか否かを判定する電力逸脱判定部と、
前記電力逸脱判定部によって、前記特定区域における電力の状態に逸脱があると判定された場合、EVにおける充電の指示を示すEV充電指示情報を生成するEV充電指示情報生成部と、を更に備え、
前記電力情報生成部は、前記EV充電指示情報が生成された場合、前記EV充電指示情報を反映させた前記電力情報を生成し、
前記特定区域における交通の状態を示す交通情報に基づいて、前記特定区域における渋滞の発生があるか否かを判定する渋滞判定部、を更に備え、
前記EV充電指示情報生成部は、前記渋滞判定部によって、前記特定区域における渋滞の発生があると判定された場合、前記EV充電指示情報を更新する、
電力安定化支援装置。
【請求項6】
前記電力情報生成部は、前記EV充電指示情報が更新された場合、更新された前記EV充電指示情報を反映させた前記電力情報を生成する、
請求項5に記載の電力安定化支援装置。
【請求項7】
電力安定化支援装置が、
EVによって電力系統から充電が行われる特定区域における環境と電力との対応関係を示す環境情報、前記特定区域におけるEVによる充電又は放電に関する運用情報を取得し、
前記特定区域における環境を含む設定条件を設定し、
前記環境情報、前記運用情報、及び前記EVを利用する利用者の属性から推測される充電の習慣度合いに基づいて、前記特定区域において前記設定条件を充足する場合における電力の状態を示す電力情報を生成する、
電力安定化支援方法。
【請求項8】
電力安定化支援装置に、
EVによって電力系統から充電が行われる特定区域における環境と電力との対応関係を示す環境情報、前記特定区域におけるEVによる充電又は放電に関する運用情報を取得させ、
前記特定区域における環境を含む設定条件を設定させ、
前記環境情報、前記運用情報、及び前記EVを利用する利用者の属性から推測される充電の習慣度合いに基づいて、前記特定区域において前記設定条件を充足する場合における電力の状態を示す電力情報を生成させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力安定化支援装置、電力安定化支援方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
交通手段の電化により電気自動車(以下、EVと称する)の導入が加速している。このため、電力系統におけるEV向けの電力需要の拡大が予想されている。電力系統を安定に保つためには、交通向け電力利用、すなわちEVによる電力系統からの充電(以下、単に充電ともいう)がもたらす電力系統への影響を考慮する必要がある。
【0003】
EVが電力系統に与える影響を考慮した技術として、EVの移動や充電の状況に応じて、場所及び時刻に応じた電力需要を予測するものや、所定の場所にある充電スタンドへナビゲーションするものがある。混雑度合いに応じた充電料金を設定することにより交通混雑を緩和する技術がある。しかしながら、これらはEVの充電により生じ得る電力偏差のみを安定化させるための技術であり、EVの充電以外の要因で生じる電力偏差が反映されていないため、地域における電力偏差を示すものとしては精度が十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-42383号公報
【文献】特開2014-56589号公報
【文献】特許第5585802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、EVによる充電が行われる特定の区域における電力偏差を示す情報を精度よく生成することができる電力安定化支援装置、電力安定化支援方法、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の電力安定化支援装置は、取得部と、設定部と、電力情報生成部と、制御部とを持つ。前記取得部は、EVによって電力系統から充電が行われる特定区域における環境と電力との対応関係を示す環境情報、前記特定区域におけるEVによる充電又は放電に関する運用情報を取得する。前記設定部は、前記特定区域における環境を含む設定条件を設定する。前記電力情報生成部は、前記環境情報、及び前記運用情報に基づいて、前記特定区域において前記設定条件を充足する場合における電力の状態を示す電力情報を生成する。前記制御部は、前記電力情報生成部によって生成された前記電力情報を記憶部に記憶させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態の電力系統安定化支援システム1の構成の例を示すブロック図。
図2】第1の実施形態のカレンダ情報11の構成の例を示す図。
図3】第1の実施形態の気候情報12の構成の例を示す図。
図4】第1の実施形態のEV利用者属性情報21の構成の例を示す図。
図5】第1の実施形態のEV充電情報22の構成の例を示す図。
図6】第1の実施形態の電力情報370の構成の例を示す図。
図7】実施形態の電力情報370に基づく表示の例を示す図。
図8】第1の実施形態の電力安定化支援装置30の処理の流れを示すフローチャート。
図9】第2の実施形態の電力系統安定化支援システム1Aの構成の例を示すブロック図。
図10】第2の実施形態のEV充電指示情報371の構成の例を示す図。
図11】第2の実施形態の電力安定化支援装置30Aの処理の流れを示すフローチャート。
図12】第3の実施形態の電力系統安定化支援システム1Bの構成の例を示すブロック図。
図13】第3の実施形態の交通情報372の構成の例を示す図。
図14】第3の実施形態のEV情報373の構成の例を示す図。
図15】第3の実施形態の電力安定化支援装置30Bの処理の流れを示すフローチャート。
図16】実施形態の電力情報370に基づく表示の例を示す図。
図17】実施形態の電力情報370に基づく表示の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の電力安定化支援装置、電力安定化支援方法、及びプログラムを、図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の電力系統安定化支援システム1の構成の例を示すブロック図である。電力系統安定化支援システム1は、例えば、電力DBサーバ10と、EVDBサーバ20と、電力安定化支援装置30とを備える。電力系統安定化支援システム1の各構成要素は、通信ネットワークNWを介して互いに通信可能に接続される。
【0010】
電力系統安定化支援システム1は、EVによる充電が行われる特定の区域(以下、特定区域とも称する)における電力偏差を解消させるための情報(以下、電力情報と称する)を生成するシステムである。ここでの特定区域は、少なくとも、その特定区域における電力系統から供給される電力が、EVによる充電に用いられる区域であればよい。或いは、EVから放電された電力が、その特定区域における電力系統に供給される区域であればよい。或いは、特定区域は、電力系統における同一の電力設備(例えば、配電用変電所など)を介して電力が供給される区域であってもよい。
【0011】
電力系統安定化支援システム1により生成される電力情報は、特定区域における電力の状況を示す情報であり、例えば、時間と場所に応じた消費電量の分布、或いは電圧値の分布を示す情報である。このような電力情報が生成されることにより、その特定区域における電力偏差が生じている場所、或いは電力偏差が生じる可能性が高い場所を特定することが可能となる。電力偏差とは、特定地域において、消費電力や電圧値などの分布における偏差を意味する。これにより、特定区域における電力負荷を調整する等して、電力偏差が解消され易くする、或いは電力偏差が生じ難くする対応をとることができる。したがって、その特定区域における電力の安定化を支援することが可能となる。
【0012】
電力DBサーバ10は、特定区域における環境と電力に関する情報(以下、環境情報)を記憶するDB(データベース)を備えたサーバ装置である。電力DBサーバ10は、例えば、カレンダ情報11と、気候情報12とを記憶する。カレンダ情報11は、「環境情報」の一例である。気候情報12は、「環境情報」の一例である。
【0013】
カレンダ情報11は、特定区域における暦と電力との対応関係を示す情報である(図2参照)。カレンダ情報11は、例えば、日時と、その日時における電力状態値とを対応付けた情報である。電力状態値は、電力の状態を示す情報であって、例えば、その時間において消費された電力量(消費電力量)の時系列情報である。
【0014】
電力状態値は、時系列情報に統計処理を施した代表値であってもよい。代表値は、任意の統計量であってよいが、例えば、平均値や、中央値、最大値、或いは最小値などである。或いは、電力状態値は、基準とする電力状態値(基準値という)のとの乖離度合いを示す指標であってもよい。乖離度合いは、基準値に対する電力状態値を示す比率であってもよいし、基準値と電力状態値との差分を示す値であってもよいし、その他の統計的な距離であってもよい。
【0015】
なお、上記では電力状態値として消費電力量を用いた場合を例に説明したが、これに限定されることはなく、電力状態値として、例えば、電圧値、電流値、周波数、ノイズ、異常値などの検知信号が用いられてもよい。
【0016】
また、カレンダ情報11は、特定区域全体ではなく、特定区域を分割した複数のエリアのそれぞれにおける電力状態値を示す情報であってもよい。
【0017】
気候情報12は、特定区域における気候と電力との対応関係を示す情報である(図3参照)。気候情報12は、例えば、特定区域における天気又は気温と、その日における電力状態値とを対応付けた情報である。気候情報12は、カレンダ情報11と同様に、特定区域全体ではなく、特定区域を分割した複数のエリアのそれぞれにおける電力状態値を示す情報であってもよい。
【0018】
EVDBサーバ20は、EV利用者属性情報21と、EV充電情報22とが記憶されたDB(データベース)を備える。EV利用者属性情報21は、「運用情報」の一例である。EV充電情報22は、「運用情報」の一例である。
【0019】
EV利用者属性情報21は、EVを利用する利用者の属性と、属性から推測される充電の習慣度合いを示す情報である(図4参照)。利用者は、例えば、EVの所有者、及びその家族である。利用者の属性とは、利用者に関する情報であって、例えば、利用者の性別や家族構成、職業、ライフスタイルなどを示す情報である。EV利用者属性情報21には、利用者が、EVを利用する態様に関する情報が含まれていてもよい。EVを利用する態様とは、例えば、EVを利用する目的や、利用頻度、利用時間などである。EVを利用する態様は、例えば、利用者自ら登録したり、利用者へのヒアリングを実施したりすることなどにより取得される。また。EV利用者属性情報21には、充電の習慣度合いを示す情報が含まれる。充電の習慣度合いを示す情報とは、EVを充電する場所や時間について、その程度習慣性を有するかを示す情報である。充電の習慣度合いは、例えば、利用者の属性、及び利用者がEVを利用する態様に基づいて推定される。例えば、利用目的が送迎や通勤などであり、規則正しく所定の時間帯に所定の場所に移動するような場合においては、習慣性が比較的高い度合いに設定される。一方、利用目的が買い物やレジャーなどであり、不規則な時間帯に、不特定の場所に移動するような場合においては、習慣性が比較的低い度合いに設定される。
【0020】
EV充電情報22は、EVの充電に関する実績と電力状態値との関係を示す情報である(図5参照)。EV充電情報22は、例えば、充電が行われた日時、場所、充電量などを示す情報を含む。EV充電情報22は、例えば、EV情報端末60(図9参照)、及び交通管理サーバ70(図9参照)などから取得される。EV情報端末60は、EVに搭載され、EVの状態を取得する端末装置である。EVの状態には、EVの位置や蓄電池の残容量を示す情報が含まれる。交通管理サーバ70は、特定区域に設けられた道路における交通渋滞に関する状況をモニタリングして通知するサーバ装置である。EV充電情報22は、電力状態値を含む。電力状態値は、充電量に基づいて算出される電力量、或いは電圧値である。
【0021】
EV充電情報22は、EV利用者属性情報21の利用者の属性から推測されたものであってもよい。
【0022】
なお、本実施形態においてEVによる電力系統への放電が行われる場合、EV充電情報22に、EVによる放電の実績が含まれてよい。この場合、例えば、特定区域に設けられた充電スタンドにおいてEVによる放電が行われる。
【0023】
電力安定化支援装置30は、例えば、通信部31と、入力部32と、条件設定部33、電力情報生成部34と、表示部35と、制御部36と、記憶部37とを備える。通信部31は、「取得部」の一例である。
【0024】
通信部31は、通信ネットワークNWを介して、電力DBサーバ10及びEVDBサーバ20と通信をする。入力部32は、マウスやキーボードなどの入力装置を介して操作入力された情報を取得する。表示部35は、液晶パネル等からなる表示画面を有し、制御部36の指示に応じた画像を表示する。なお、表示部35の表示画面の全部又は一部がタッチパネルである場合、入力部32は、タッチパネルにタッチ操作された情報を取得する。
【0025】
条件設定部33と、電力情報生成部34と、制御部36とは、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0026】
条件設定部33は、設定条件を設定する。設定条件は、特定区域又はエリアにおいて設定される条件であって、例えば、カレンダ条件、気候条件などにより構成される。カレンダ条件は、カレンダ情報11に対応する条件であって、日時を示す条件である。気候条件は、気候情報12に対応する条件であって、天気や気温を示す条件である。ここで条件設定部33により設定された日時や天気などの設定条件に基づいて、その特定区域又はエリアにおける電力の状態が予測される。
【0027】
条件設定部33は、例えば、入力部32に入力された情報に基づいて、設定条件(カレンダ条件、及び気候条件)を設定する。この場合、例えば、表示部35に設定条件を設定するための項目が表示される。項目は、例えば、カレンダ欄、気候欄などからなり、それぞれがマウス操作やキーボード入力などにより設定可能に表示されている。ユーザが、表示画面に操作入力を行うことにより、カレンダ欄に日時などの条件が設定され、気候欄に天気や気温など条件が設定される。入力部32は、ユーザの操作により設定されたこれらの条件を示す情報を取得し、取得した情報を条件設定部33に出力する。条件設定部33は、入力部32からの情報を用いて設定条件を設定する。
【0028】
電力情報生成部34は、設定条件に応じた電力情報を生成する。電力情報は、特定区域における電力の状態を示す情報であり、例えば、時間と場所に応じた消費電量の分布、或いは電圧値の分布を示す情報である。電力情報は、例えば、特定区域を複数に分割したエリアごとの消費電量の分布、或いは電圧値の分布を示す情報である。
【0029】
電力情報生成部34は、カレンダ条件として設定された日時などの条件に基づいて、カレンダ情報11を参照する。電力情報生成部34は、カレンダ情報11のうち、カレンダ条件に設定された日時などの条件と一致又は類似する日時に対応付けられた電力量を取得する。ここでの日時などの条件と一致又は類似する日時とは、単に日時が一致する場合だけでなく、曜日や時間帯、その日における特徴(例えば、祝日や行事の有無など)が似ている場合を含む。
【0030】
電力情報生成部34は、気候条件として設定された天気や気温などの条件に基づいて、気候情報12を参照する。電力情報生成部34は、気候情報12のうち、気候条件に設定された天気や気温などの条件と一致又は類似する天気や気温に対応付けられた電力量を取得する。条件設定部33は、カレンダ情報11から取得した電力量と、気候情報12から取得した電力量とに基づいて、設定条件に応じた電力情報を生成する。
【0031】
電力情報生成部34は、例えば、二段階の電力状態値を算出する処理を行い、設定条件に応じた電力情報を生成する。一段階目の処理はEVに依存しない電力状態値を算出する処理である。ここで、EVに依存しない電力状態値は、「第1電力状態値」の一例である。二段階目の処理は、EVに依存しない電力状態値を基に、EVの影響を考慮した電力状態値を算出する処理である。ここで、EVの影響を考慮した電力状態値は、「第2電力状態値」の一例である。
【0032】
電力情報生成部34は、二段階目の処理において算出したEVの影響を考慮した電力状態値を、その特定区域又はエリアを示す位置情報と対応づけることにより、電力情報を生成する。なお、EVに依存しない電力とは、EVによる充電が行われない場合において特定区域の電力系統に示される電力のことである。EVの影響を考慮した電力とは、EVによる充電が行われる場合において特定区域の電力系統に示される電力のことである。
【0033】
まず、一段階目の処理について説明する。電力情報生成部34は、例えば、以下の(1)式に基づいて、EVに依存しない電力状態値を算出する。(1)式において、V(X、Y、t)は位置座標(X、Y)における時刻tのEVに依存しない電力状態値である。G(A、B)は関数A、Bに基づいて算出される係数である。f(c)は設定条件として設定されたカレンダ条件に一致又は類似するカレンダ情報11における電力状態値である。f(w)は設定条件として設定された気候条件に一致又は類似する気候情報12における電力状態値である。Vs(X、Y、t)は位置座標(X、Y)における時刻tにおいて基準となる電力状態値である。基準となる電力状態値は、例えば、所定の期間(例えば1年間)における電力状態値の平均値などに基づいて予め決定される値である。なお、EVに依存しない電力状態値V(X、Y、t)は、位置(X、Y)及び時刻tに関する関数であるが、以下では、電力状態値V(X、Y、t)を、単に、電力状態値Vと称する場合もある。同様に基準となる電力状態値Vs(X、Y、t)を、単に、基準となる電力状態値Vsと称する場合もある。
【0034】
V(X、Y、t)=G(f(c)、f(w))×Vs(X、Y、t) …(1)
【0035】
例えば、電力情報生成部34は、係数G(f(c)、f(w))を、電力状態値f(c)、及び電力状態値f(w)の大きさに応じた値となるように算出する。例えば、電力状態値f(c)及びf(w)が、共に基準となる電力状態値Vsよりも大きい値である場合、係数G(f(c)、f(w))は、1.0以上の値(例えば、1.5)となるようにする。一方、電力状態値f(c)及びf(w)が、共に基準となる電力状態値Vsよりも小さい値である場合、係数G(f(c)、f(w))は、1.0未満の値(例えば、0.7)となるようにする。例えば、電力情報生成部34は、カレンダ情報11に基づく電力状態値f(c)、及び、気候情報12に基づく電力状態値f(w)の平均値を、基準となる電力状態値Vsで除算した値を、係数G(f(c)、f(w))とする。或いは、電力情報生成部34は、電力状態値f(c)、及び、電力状態値f(w)のそれぞれに重みづけした値の平均値を、基準となる電力状態値Vsで除算した値を係数G(f(c)、f(w))とするようにしてもよい。また、これらの電力値は潮流計算や電圧降下計算などの電力系統における一般的な算出値を用いて算出あるいは補正をかけてもよい。
【0036】
次に、二段階目の処理について説明する。電力情報生成部34は、例えば、以下の(2)式に基づいて、EVの影響を考慮した電力状態値を算出する。(2)式において、VEV(X、Y、t)は位置座標(X、Y)における時刻tのEVの影響を考慮した電力状態値である。F(A)は関数Aに基づいて算出される係数である。f(h)は、EV充電情報22における電力状態値である。V(X、Y、t)は位置座標(X、Y)の時刻tにおけるEVに依存しない電力状態値である。電力状態値V(X、Y、t)は(1)式を用いて算出された値である。なお、EVの影響を考慮した電力状態値VEV(X、Y、t)は、位置(X、Y)及び時刻tに関する関数であるが、以下では、電力状態値VEV(X、Y、t)を、単に、電力状態値VEVと称する場合もある。
【0037】
EV(X、Y、t)=F(f(h))×V(X、Y、t) …(2)
【0038】
例えば、電力情報生成部34は、係数F(f(a))を、電力状態値f(h)の大きさに応じた値となるように算出する。電力情報生成部34は、充電の習慣がある時間帯及び場所において、係数F(f(a))は、電力状態値f(h)に対応する値となるようにする。一方、電力情報生成部34は、充電の習慣がない時間帯及び場所において、係数F(f(h))が、1.0に近い値となるようにする。
【0039】
例えば、夜間に家で充電する習慣度合いが高いEVがあり、そのEVが充電され夜間において、EVを充電しない夜間の消費電力と比較して2.5倍の電力を消費する場合を考える。電力情報生成部34は、その家のある場所の夜間における係数F(f(a))を、2.5倍となるように設定する。一方、その家のある場所の夜間でない時間帯(例えば、朝方)における係数F(f(a))を、1.0倍となるように設定する。
【0040】
電力情報生成部34は、電力状態値f(h)に、EV利用者属性情報21における習慣度合いf(a)による重みづけを行うようにしてもよい。この場合、習慣度合いf(a)は、例えば、0~1.0の任意の実数である。電力情報生成部34は、電力状態値f(h)に習慣度合いf(a)を乗算することにより、重みづけした電力状態値f(h)を用いて、電力状態値VEVを算出する。
【0041】
制御部36は、電力安定化支援装置30を統括的に制御する。制御部36は、例えば、設定条件を設定する画像情報を表示部35に出力することにより、設定画面を表示させる。制御部36は、電力情報に基づく電力分布図を示す画像情報を生成し、生成した画像情報を表示部35に出力することにより、特定区域における電力状態値の分布図を表示させる。制御部36は、電力情報生成部34により生成された電力情報を、記憶部37に電力情報370として記憶させる。
【0042】
記憶部37は、例えば、HDD、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等により構成される。記憶部37は、電力情報370を記憶する。
【0043】
図2は、第1の実施形態のカレンダ情報11の構成の例を示す図である。カレンダ情報11は、例えば、ID、年、月、日、時間帯、特異日フラグ、行事フラグ、及び電力状態値などの項目を備える。IDは、カレンダ情報を一意に識別する情報である。IDは、例えば、日ごと、或いは時間帯ごとに付与される。年、月、日、及び時間帯の各々はIDに対応するカレンダ情報に示される年月日、及び時間帯をそれぞれ示す情報である。時間帯は、予め定めされた時間区分であって、例えば、1時間ごとに区切られた時間帯である。或いは、時間帯は、夜間、朝方、昼間などにより区分された時間帯であってもよい。特異日フラグはIDに対応する年月日が特異日であるか否かを示す情報である。特異日とは、通常とは異なる日であって、電力状態値の時系列推移が、通常の日とは異なると推測される日である。例えば、特異日は、祝日や大型連休、夏季休暇、正月などに対応する日である。特異日は任意に設定されてよいし、祝日などの明示的な指標がなくとも、特に暑かったり、寒かったりして、通常の日とは異なる電力状態値が記録された日に設定されるようにしてもよい。行事フラグはIDに対応する年月日に行われた行事の有無を示す情報である。ここでの行事は、特定区域における行事であって、電力状態値の時系列推移が、通常の日とは異なると推測される行事である。例えば、行事は、その特定区域における祭事、運動会などの学校行事などである。電力状態値は、IDに対応する年月日の時間帯における電力状態値である。
【0044】
図3は、第1の実施形態の気候情報12の構成の例を示す図である。気候情報12は、例えば、ID、天気、気温、湿度、季節、及び電力状態値、などの項目を備える。IDは、気候情報を一意に識別する情報である。IDは、例えば、日ごと、或いは時間帯ごとに付与される。天気はIDに対応する気候情報における天気を示す。気温はIDに対応する気候情報における気温を示す。湿度はIDに対応する気候情報における湿度を示す。季節はIDに対応する気候情報における季節を示す。電力状態値はIDに対応する気候情報における電力状態値である。
【0045】
図4は、第1の実施形態のEV利用者属性情報21の構成の例を示す図である。EV利用者属性情報21は、例えば、ID、世帯構成、利用目的、利用時間、EV消費電力、及び習慣度合いなどの項目を備える。IDは、EV利用者属性情報を一意に識別する情報である。IDは、例えば、EVごとに付与される。世帯構成はIDに示されるEVにおける所有者の世帯構成である。利用目的はIDに示されるEVの利用目的である。利用時間はIDに示されるEVが利用された時間である。利用時間は、例えば、EV情報端末60により通知された移動の履歴に基づいて設定される。EV消費電力量はIDに示されるEVが利用されることにより消費された電力である。EV消費電力量は、例えば、EV情報端末60により通知された蓄電池の残量の履歴に基づいて設定される。習慣度合いは、例えば、利用者の属性、及び利用者がEVを利用する態様に基づいて推定される、EVの充電を行う時間帯や場所について習慣性を有する度合いである。
【0046】
図5は、第1の実施形態のEV充電情報22の構成の例を示す図である。EV充電情報22は、例えば、ID、充電日、充電時間帯、充電場所、充電量、及び電力状態値などの項目を備える。IDはEV充電情報を一意に識別する識別情報である。IDは、例えば、EVごとに付与される。充電日は、IDに示されるEVにおいて充電が行われた日が示される。充電時間帯は、充電が行われた時間帯であり、例えば、夜間、日間(日中)、早朝などにより区分される時間帯である。充電場所は、IDに示されるEVにおいて充電が行われた場所の位置情報を示す情報である。充電量は、IDに示されるEVにおいて一回の充電により充電される電力量である。電力状態値は、充電量に応じた電力量、或いは電圧値などを示す情報である。
【0047】
図6は、第1の実施形態の電力情報370の構成の例を示す図である。電力情報370は、例えば、ID、住所、位置座標、及び電力状態値などの項目を備える。IDは電力情報を一意に示す識別情報である。IDは特定区域におけるエリアごとに付与される。住所はIDに対応する電力情報における住所を示す。位置座標はIDに対応する電力情報における位置の座標を示す。住所、及び位置座標は、電力情報が生成される単位に応じて設定されてよく。必ずしも両方が設定されていなくともよく、いずれか一方のみが設定されていればよい。電力状態値は、IDに対応する電力情報における電力状態値である。
【0048】
図7は、実施形態の電力情報370に基づく表示の例を示す図である。図7には、表示部35の表示画面に、電力情報が特定区域の区画図上に表示される表示態様にて表示された例が示されている。この例では、電力状態値として電圧値が示されており、概ね、100[V]前後の電圧値であることが示されている。区画ごとの電圧値は、区画により若干のばらつきがあり、98[V]から101[V]の範囲に分布している。
【0049】
図8は、第1の実施形態の電力安定化支援装置30の処理の流れを示すフローチャートである。条件設定部33は、設定条件を設定する(ステップS10)。条件設定部33は、例えば、ユーザの操作入力により入力部32に入力された条件を示す信号に基づいて、カレンダ条件や気候条件を設定する。
【0050】
電力情報生成部34は、電力情報370の生成に用いるカレンダ情報を取得する(ステップS11)。電力情報生成部34は、設定条件のカレンダ条件に設定された内容に基づいてカレンダ情報11を参照し、カレンダ条件と一致又は類似するカレンダ情報を取得する。電力情報生成部34は、電力情報370の生成に用いる気候情報を取得する(ステップS12)。電力情報生成部34は、設定条件の気候条件に設定された内容に基づいて気候情報12を参照し、気候条件と一致又は類似する気候情報を取得する。電力情報生成部34は、EVに依存しない電力状態値を算出する(ステップS13)。電力情報生成部34は、ステップS11において取得したカレンダ情報11、及びステップS12において取得した気候情報12を、(1)式に適用することにより、EVに依存しない電力状態値を算出する。
【0051】
電力情報生成部34は、EV利用者属性情報21を取得する(ステップS14)。電力情報生成部34はEV充電情報22を取得する(ステップS15)。電力情報生成部34は、ステップS14において取得したEV利用者属性情報21、及びステップS15において取得したEV充電情報22、及びステップS13において算出したEVに依存しない電力状態値を、(2)式に適用することにより、EVによる影響を考慮した電力状態値を算出する(ステップS16)。電力情報生成部34は、算出した電力状態値を、位置座標に対応付けることにより電力情報を生成する。制御部36は、電力情報生成部34によって生成された電力情報を記憶部37に記憶させる(ステップS17)。
【0052】
なお、上記において、電力情報生成部34が、カレンダ情報11と気候情報12との両方を用いて、EVに依存しない電力状態値を算出する場合を例に説明したが、これに限定されることはない。電力情報生成部34は、カレンダ情報11と気候情報12との少なくとも一方を用いて、EVに依存しない電力状態値を算出すればよい。この場合、条件設定部33は、設定条件として、カレンダ条件、又は気候条件のいずれか一方のみを設定するようにしてもよい。そして、電力情報生成部34は、設定条件にカレンダ条件のみが設定された場合にはカレンダ情報11を用いてEVに依存しない電力状態値を算出する。この場合、例えば、電力情報生成部34は、(1)式における気候情報12に基づく電力状態値f(w)に0(ゼロ)を設定することにより、EVに依存しない電力状態値Vを算出する。
【0053】
以上説明したように、第1の実施形態の電力安定化支援装置30は、通信部31(「取得部」の一例)と、条件設定部33(「設定部」の一例)と、電力情報生成部34(「生成部」の一例と、制御部36とを備える。通信部31は、カレンダ情報11と気候情報12との少なくともいずれか一方(「環境情報」の一例)、及び、EV充電情報22(「運用情報」の一例)を取得する。条件設定部33は、特定区域における環境を含む設定条件(カレンダ条件と気候条件の少なくともいずれか一方)を設定する。電力情報生成部34は、カレンダ情報11と気候情報12との少なくともいずれか一方、及びEV充電情報22に基づいて、特定区域において設定条件を充足する場合における電力情報370を生成する。制御部36は、電力情報生成部34によって生成された電力情報370を記憶部37に記憶させる。
【0054】
これにより、第1の実施形態の電力安定化支援装置30は、EVの充放電とは直接的に関係しないカレンダ情報11や気候情報12と、EVの充放電と関係するEV充電情報22とを用いて電力状態値を算出することができる。このため、EVの充放電による影響のみならず、EVの充放電とは直接的に関係しない電力偏差を反映させた電力状態値を算出することができる。したがって、EVによる充電が行われる特定の区域における電力偏差を示す情報を、EVの充放電による影響のみを考慮した場合と比較して、精度よく生成することができる。
【0055】
また、第1の実施形態の電力安定化支援装置30では、電力情報は、特定区域における所定のエリアの電力の状態を示す値である電力状態値と、当該エリアの位置座標とを対応づけた情報である。電力情報生成部34は、環境情報に基づいて、特定区域においてEVによる充電又は放電が行われない場合における電力状態値である第1電力状態値を算出する。電力情報生成部34は、算出した第1電力状態値、及び運用情報に基づいて、前記特定区域においてEVによる充電又は放電が行われる場合における前記電力状態値である第2電力状態値を算出する。電力情報生成部34は、前記第2電力状態値と、前記第2電力状態値に対応するエリアの位置座標とを対応付けることにより、前記電力情報を生成する。これにより、EVに依存しない電力状態値Vを算出することができる。電力安定化支援装置30は、EVに依存しない電力状態値Vを基に、EVによる影響を考慮した電力状態値VEVを算出することができ、上述した効果と同様の効果を奏する。
【0056】
また、第1の実施形態の電力安定化支援装置30では、電力情報生成部34は、特定区域における所定のエリアにおいて基準とする電力状態値Vsに、環境情報に応じた係数を乗算することにより、EVに依存しない電力状態値V(「第1電力状態値」の一例)を算出する。これにより、基準とする値に係数を乗じるという容易な方法により、設定条件に対応するEVに依存しない電力状態値Vを算出することが可能である。
【0057】
また、第1の実施形態の電力安定化支援装置30では、電力情報生成部34は、特定区域における所定のエリアに対応するEVに依存しない電力状態値Vに、運用情報に応じた係数を乗算することにより、EVによる影響を考慮した電力状態値VEV(「第2電力状態値」の一例)を算出する。これにより、EVに依存しない電力状態値Vに係数を乗じるという容易な方法により、EVによる影響を考慮した電力状態値VEVを算出することが可能である。
【0058】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。本実施形態では、特定区域における電力偏差が緩和されるようにEVの運用方法を決定する点において、上述した実施形態と相違する。以下では、上述した実施形態と相違する構成についてのみ説明し、上述した実施形態と同等の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0059】
図9は、第2の実施形態の電力系統安定化支援システム1Aの構成の例を示すブロック図である。電力系統安定化支援システム1Aは、例えば、電力DBサーバ10と、EVDBサーバ20と、電力安定化支援装置30Aと、EV運用サーバ50と、EV情報端末60とを備える。
【0060】
電力安定化支援装置30Aは、電力情報生成部34Aと、制御部36Aと、記憶部37Aと、電力逸脱判定部38と、EV充電指示情報生成部39とを備える。記憶部37Aは、EV充電指示情報371を記憶する。EV充電指示情報371は、EVの充電に関する指示を示す情報であり、例えば、EVが充電する時間帯、場所、充電量などを指示する情報である。
【0061】
電力逸脱判定部38は、電力情報370に基づいて、特定区域において電力の状態が逸脱したエリアがあるか否かを判定する。電力の状態が逸脱したエリアとは、電力状態値が、予め定めた範囲から逸脱しているエリアである。例えば、電力状態値が消費電力であり、特定区域において、消費電力が100±3[V]の範囲内であることが定められている場合を考える。この場合、電力情報生成部34は、消費電力が97[V」~103[V]の間にあるエリアを電力の状態が逸脱していないエリアと判定する。一方、電力逸脱判定部38は、消費電力が103[V」を超えるエリア、及び消費電力が103[V」を下回るエリアを電力の状態が逸脱したエリアと判定する。
【0062】
EV充電指示情報生成部39は、EV充電指示情報を生成する。EV充電指示情報生成部39は、例えば、電力逸脱判定部38によって電力の状態が逸脱したエリアがあると判定された場合にEV充電指示情報を生成する。
【0063】
EV充電指示情報生成部39は、例えば、電力情報370、EV充電情報22に基づいて、EV充電指示情報を生成する。EV充電指示情報生成部39は、例えば、電力情報370に基づき電力の状態が逸脱していると判定されたエリアについて、当該逸脱が緩和されるようにEV充電指示情報を生成する。
【0064】
例えば、特定区域において、電力状態値が、第1時間帯において予め定めた範囲を下回る第1エリアがある場合を考える。EV充電指示情報生成部39は、EV充電情報22に基づいて、第1時間帯に、第1エリアにおいて充電する可能性が高いEVを抽出する。EV充電指示情報生成部39は、抽出したEVを、第1エリアとは異なる別のエリアで充電させるように指示するEV充電指示情報を生成する。或いは、EV充電指示情報生成部39は、第1エリアにおいて第1時間帯とは異なる別の時間帯に充電させるように指示するEV充電指示情報を生成する。
【0065】
なお、EV充電指示情報生成部39は、第1時間帯に、第1エリアにおいて充電する可能性が低いEVについては、EV充電情報22に示す内容の充電時間帯、充電場所、及び充電量を充電させるように指示するEV充電指示情報を生成する。
【0066】
或いは、EV充電指示情報生成部39は、EV利用者属性情報21を更に用いて、EV充電指示情報371を生成するようにしてもよい。EV充電指示情報生成部39は、第1時間帯に、第1エリアにおいて充電する可能性が高いEVのうち、第1時間帯において喫緊の利用がない可能性が高いEV、或いは、第1時間帯において充電量十分あると判定されるEVを、EV利用者属性情報21を用いて抽出する。EV充電指示情報生成部39は、抽出したEVを、第1エリアとは異なる別のエリアで充電させるように指示するEV充電指示情報を生成する。或いは、EV充電指示情報生成部39は、第1エリアにおいて第1時間帯とは異なる別の時間帯に充電させるように指示するEV充電指示情報を生成する。
【0067】
EV充電指示情報生成部39は、生成したEV充電指示情報371を、記憶部37に記憶させる。
【0068】
制御部36Aは、EV充電指示情報生成部39によってEV充電指示情報371が生成された場合、EV充電指示情報371の内容を反映させた電力情報を、電力情報生成部34Aに生成させる。
【0069】
電力情報生成部34Aは、制御部36の指示に基づき、EV充電指示情報371を反映させた電力情報を生成する。電力情報生成部34Aは、例えば、以下の(3)式に基づいて、EV充電指示情報371を反映させた電力情報を生成する。(3)式において、VEV2(X、Y、t)は位置座標(X、Y)における時刻tのEV充電指示情報371を反映させた電力状態値である。H(A)は関数Aに基づいて算出される係数である。f(sh)は、EV充電指示情報371に示される電力状態値である。V(X、Y、t)は位置座標(X、Y)の時刻tにおけるEVに依存しない電力状態値である。電力状態値V(X、Y、t)は(1)式を用いて算出された値である。なお、EV充電指示情報371を反映させた電力状態値VEV2(X、Y、t)は、位置(X、Y)及び時刻tに関する関数であるが、以下では、電力状態値VEV2(X、Y、t)を、単に、電力状態値VEV2と称する場合もある。
【0070】
EV2(X、Y、t)=H(f(sh))×V(X、Y、t) …(3)
【0071】
電力情報生成部34Aは、電力の状態が逸脱したエリア、及びEV充電指示情報371にて充電場所として指示されたエリアのみ、EV充電指示情報371を反映させた電力情報を生成するようにしてもよい。上述したエリアとは異なるエリアについては、電力の状態が逸脱しておらず、また、EV充電指示情報371に基づいて電力の状態に変化しないためである。これにより、電力情報生成部34Aは、EV充電指示情報371を反映させた電力情報を生成する際の作業負荷を、特定区域の全てのエリアの電力情報を生成する場合と比較して、低減させることができる。
【0072】
制御部36Aは、EV充電指示情報371を反映させた電力情報において、電力の状態が逸脱したエリアがあるか否かを電力逸脱判定部38に判定させる。制御部36Aは、電力の状態が逸脱したエリアが無い場合、EV充電指示情報371をEV運用サーバ50に出力する。
【0073】
EV運用サーバ50は、EVの移動を指示するサーバ装置である。EV運用サーバ50は、例えば、電力安定化支援装置30A及び、EV情報端末60と通信可能に接続する。EV運用サーバ50は、電力安定化支援装置30AからEV充電指示情報371を受信する。EV運用サーバ50は、受信したEV充電指示情報371に基づいて、EV充電指示情報371における指示の対象であるEVを特定する。EV運用サーバ50は、特定したEVのEV情報端末60に、EV充電指示情報371の内容を指示する通知を行う。EV充電指示情報371の内容とは、充電する時間帯、場所、及び充電量である。
【0074】
EV情報端末60は、EVに備えられ、EV運用サーバ50からの指示に基づいて、指示された時間帯において、指示された場所で、指示された充電量をEVの蓄電池に充電させる。EVの移動手段として自動運転が用いられてもよい。或いは、EV情報端末60がEV運用サーバ50から受信した指示が、EVのユーザに通知され、ユーザが指示に従うことにより、EVを移動させ、指示された時間帯、場所、及び充電量にて充電を行うようにしてもよい。
【0075】
また、EV情報端末60は、EVに関する情報をEV運用サーバ50などに通知する。EVに関する情報とは、EVの位置、速度、走行距離、蓄電池の残容量などを示す情報である。EV情報端末60は、例えば、EVが有するGPS(Global Positioning System)等に基づいてEVの位置を検出する。EV情報端末60は、検出した位置、及びその後の位置の変化に基づいて、速度や加速度、及び走行距離を検出する。また、EV情報端末60は、例えば、EVの蓄電池の電圧(開回路電圧)を測定し、測定した電圧に基づいて、蓄電池の充電率を算出する。この場合、EV情報端末60は、予め、蓄電池の開回路電圧と充電率との関係を示すテーブルを記憶しており、測定した電圧に基づいて当該テーブルを参照することにより、蓄電池の充電率を算出する。EV情報端末60は、算出した充電率に基づいて蓄電池の残容量を算出する。
【0076】
図10は、第2の実施形態のEV充電指示情報371の構成の例を示す図である。EV充電指示情報371は、例えば、ID、充電時間帯、充電場所、及び充電量などの項目を備える。IDは、EV充電指示情報を一意に識別する識別情報である。IDは、例えば、EVごとに付与される。充電時間帯は、IDに示されるEVに充電を行う時間帯を示す情報である。充電場所は、IDに示されるEVに充電を行う場所を示す情報である。充電量は、IDに示されるEVに充電を行う充電量を示す情報である。
【0077】
図11は、第2の実施形態の電力安定化支援装置30Aの処理の流れを示すフローチャートである。電力情報生成部34Aは、電力情報370を生成する(ステップS20)。電力情報生成部34Aは、例えば、図8に示すフローチャートのステップS10~S17により示す処理の流れに従い、電力情報370を生成する。
【0078】
電力逸脱判定部38は、電力情報370に基づいて、電力の状態が逸脱したエリア(電力逸脱エリア)があるか否かを判定する(ステップS21)。電力逸脱判定部38は、例えば、電力状態値が、所定の範囲内にないエリアを、電力の状態が逸脱したエリアと判定する。
【0079】
EV充電指示情報生成部39は、電力の状態が逸脱したエリアがある場合、電力情報370、EV利用者属性情報21及びEV充電情報22を用いて、EV充電指示情報371を生成する(ステップS22)。EV充電指示情報生成部39は、当該逸脱の状態が緩和されるように、例えば、EVの充電時間帯、又は/及び充電場所を変更するEV充電指示情報371を生成する。
【0080】
ステップS10に戻り、制御部36Aは、電力情報生成部34Aに、EV充電指示情報371を反映させた電力情報を生成させる。制御部36Aは、電力の状態が逸脱したエリアがなくなるまで、EV充電指示情報371の生成と、生成したEV充電指示情報371を反映させた電力情報370の生成とを繰り返し行わせる。
【0081】
一方、ステップS21において、電力の状態が逸脱したエリアがないと判定された場合、制御部36Aは、EV充電指示情報371が生成されたか否かを判定し(ステップS23)、EV充電指示情報371が生成された場合には、その内容をEV運用サーバ50に通知する(ステップS24)。制御部36Aは、EV充電指示情報371が生成されていない場合には、処理を終了させる。
【0082】
以上、説明したように、第2の実施形態の電力安定化支援装置30Aでは、電力逸脱判定部38と、EV充電指示情報生成部39とを更に備える。電力逸脱判定部38は、電力情報370に基づいて、電力の状態が逸脱したエリアがあるか否かを判定する。EV充電指示情報生成部39は、電力の状態が逸脱したエリアがある場合、逸脱が緩和されるように、EV充電指示情報371を生成する。これにより、第2の実施形態の電力安定化支援装置30Aでは、電力の状態が逸脱したエリアがある場合であっても、逸脱が緩和されるようにすることが可能である。
【0083】
なお、上述した第2の実施形態では、EV充電指示情報生成部39は、EV充電情報22に基づいて、EVにおいて充電が行われる可能性が高い充電時間帯、充電場所等を判定する場合を例に説明した。しかしながら、これに限定されない。EV充電指示情報生成部39は、EV情報端末60からEVの位置や、EVの蓄電池の残容量などを示す情報を取得し、取得した情報に基づいて、EV充電指示情報371を生成するようにしてもよい。
【0084】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について説明する。本実施形態では、特定区域における充電スタンドの待ち時間および特定区域における交通渋滞を緩和するようにEVの運用方法を決定する点において、上述した実施形態と相違する。以下では、上述した実施形態と相違する構成についてのみ説明し、上述した実施形態と同等の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0085】
図12は、第3の実施形態の電力系統安定化支援システム1Bの構成の例を示すブロック図である。電力系統安定化支援システム1Bは、例えば、電力DBサーバ10と、EVDBサーバ20と、電力安定化支援装置30Bと、EV運用サーバ50と、EV情報端末60と、交通管理サーバ70とを備える。
【0086】
交通管理サーバ70は、特定区域の交通を管理するサーバ装置である。交通管理サーバ70は、特定区域の道路に設けられた、センサからの情報を取得し、取得した情報に基づいて、交通の状態を示す情報を取得する。ここでのセンサは、例えば、道路を通過する車両の台数や小型車・大型車の判別、車の速度などを計測するセンサである。或いは、センサは、道路を通過する車両を撮像する監視カメラなどである。また、ここでの交通の状態とは、交通渋滞の有無を示す情報を含む。交通管理サーバ70は、例えば、道路を通過する車両の速度が所定の閾値以下である状態が、所定時間継続した場合に、その道路において渋滞が発生したと判定する。あるいは、交通管理サーバ70は、監視カメラにより撮像された画像や、監視員からの目視確認の結果に基づいて、渋滞が発生したか否かを判定するようにしてもよい。交通管理サーバ70は、取得した交通の状態を示す情報を電力安定化支援装置30Bに通知する。
【0087】
電力安定化支援装置30Bは、電力情報生成部34Bと、制御部36Bと、記憶部37Bと、交通情報生成部40と、EV情報生成部41と、渋滞判定部42とを備える。記憶部37Bは、交通情報372と、EV情報373とを記憶する。EV充電指示情報371は、交通に関する情報であり、例えば、特定区域における充電スタンドならびに交通網において渋滞が発生したか否かを示す情報である。EV情報373は、EVに関する情報であり、EVの位置や、蓄電池の残容量などを示す情報である。
【0088】
交通情報生成部40は、交通管理サーバ70から通知された、交通の状態を示す情報に基づいて、特定区域における充電スタンドならびに交通網において渋滞が発生したか否かを判定する。交通情報生成部40は、判定結果に基づいて交通情報372を生成する。交通情報生成部40は、生成した交通情報372を記憶部37に記憶させる。EV情報生成部41は、EV情報端末60から通知された、EVの位置などを示す情報に基づいてEV情報373を生成し、生成したEV情報373を記憶部37に記憶させる。渋滞判定部42は、交通情報372に基づいて、特定区域の充電スタンドにおける周辺の道路に渋滞が発生しているか否かを判定する。
【0089】
制御部36Bは、充電スタンドの周辺ならびに交通網において渋滞が発生している場合、EV充電指示情報生成部39Bに、再度、EV充電指示情報371を生成させる。この場合、EV充電指示情報生成部39Bは、充電スタンドの周辺に発生した渋滞が緩和されるように、EV充電指示情報371を生成する。
【0090】
例えば、特定区域に設けられた第1充電スタンドにおける周辺の道路に、現在時刻(第1時間帯とする)において渋滞が発生している場合を考える。EV充電指示情報生成部39Bは、交通情報372に基づいて、第1充電スタンドにおいて第1時間帯に充電するように指示がなされたEVを抽出する。EV充電指示情報生成部39は、抽出したEVを、第1充電スタンドとは異なる別の充電スタンドで充電させるように指示するEV充電指示情報を生成する。或いは、EV充電指示情報生成部39は、第1充電スタンドにおいて、現在の第1時間帯とは異なる別の時間帯に充電させるように指示するEV充電指示情報を生成する。
【0091】
なお、EV充電指示情報生成部39は、第1時間帯に、第1充電スタンドにおいて充電する指示が出されていないEVについては、指示の内容を変更しないようにしてEV充電指示情報を生成する。EV充電指示情報生成部39Bは、再度生成したEV充電指示情報371を、記憶部37に記憶させる。
【0092】
或いは、EV充電指示情報生成部39Bは、交通情報372とEV情報373とに基づいて、再度のEV充電指示情報371を生成するようにしてもよい。例えば、EV充電指示情報生成部39Bは、渋滞が発生した充電スタンドあるいは交通網において渋滞が発生している方向に移動しているEVを、他の充電スタンドに移動するように指示するEV充電指示情報371を生成する。これにより、まだ渋滞に巻き込まれていないEVが、渋滞に巻き込まれて渋滞が拡大してしまうことを回避することが可能である。
【0093】
制御部36Aは、EV充電指示情報生成部39に再度のEV充電指示情報371を生成させた場合、再度生成させたEV充電指示情報371の内容を反映させた電力情報370を、電力情報生成部34Bに生成させる。電力情報生成部34Bが、EV充電指示情報371の内容を反映させた電力情報370を生成する方法についは、第2の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0094】
図13は、第3の実施形態の交通情報372の構成の例を示す図である。交通情報372は、例えば、IDと、周辺渋滞フラグとの項目を備える。IDは、交通情報を一意に識別する情報である。IDは、例えば、充電スタンドごとに付与される。周辺渋滞フラグは、IDで特定されるエリア(充電スタンド)における周辺の道路に渋滞が発生しているか否かを示すフラグである。
【0095】
図14は、第3の実施形態のEV情報373の構成の例を示す図である。EV情報373は、例えば、IDと、位置情報と、残容量と、運転計画との項目を備える。IDは、EV情報を一意に識別する識別情報である。IDは、例えば、EVごとに付与される。位置情報は、IDで特定されるEVの位置を示す情報である。残容量は、IDで特定されるEVの蓄電池の残容量を示す情報である。利用計画は、IDで特定されるEVが利用される予定を示す情報であり、例えば、EV利用者属性情報21の利用目的や利用時間に基づいて決定される情報である。
【0096】
図15は、第3の実施形態の電力安定化支援装置30Bの処理の流れを示すフローチャートである。図15に示すフローチャートでは、すでに、EV充電指示情報371がEV運用サーバ50に通知されていることを前提としている。つまり、EV運用サーバ50から通知を受けたことに伴い、EVが、充電の指示に従って充電スタンドに移動を開始していることを前提とする。
【0097】
交通情報生成部40は、交通情報372を生成する(ステップS30)。交通情報生成部40は、例えば、交通管理サーバ70からの情報に基づいて交通情報372を生成する。
【0098】
渋滞判定部42は、交通情報372に基づいて、周辺の道路に渋滞が発生している充電スタンドがあるか否かを判定する(ステップS31)。渋滞判定部42は、例えば、交通情報372の周辺渋滞フラグに、渋滞が発生している旨が示されている充電スタンドを、周辺の道路に渋滞が発生している充電スタンドと判定する。
【0099】
周辺の道路に渋滞が発生している充電スタンドがある場合、EV充電指示情報生成部39Bは、交通情報372を用いて、EV充電指示情報371を更新する(ステップS32)。EV充電指示情報生成部39Bは、当該渋滞が緩和されるように、例えば、EVの充電時間帯、又は/及び充電場所を変更するEV充電指示情報371を生成する。
【0100】
制御部36Bは、電力情報生成部34Bに、更新したEV充電指示情報371を反映させた電力情報を生成させることにより、電力情報370を更新する(ステップS33)。制御部36Bは、電力の状態が逸脱したエリアがなくなるまで、EV充電指示情報371の生成と、生成したEV充電指示情報371を反映させた電力情報370の生成とを繰り返し行わせる(ステップS34)。
【0101】
一方、ステップS31において、渋滞したエリアがないと判定された場合、制御部36Bは、EV充電指示情報371が生成されたか否かを判定し(ステップS35)、EV充電指示情報371が生成された場合には、その内容をEV運用サーバ50に通知する(ステップS36)。制御部36Bは、EV充電指示情報371が生成されていない場合には、処理を終了させる。
【0102】
以上、説明したように、第3の実施形態の電力安定化支援装置30Bでは、渋滞判定部42を更に備える。渋滞判定部42は、交通情報372に基づいて、渋滞の発生を判定する。EV充電指示情報生成部39Bは、渋滞が発生している場合、渋滞が緩和されるように、EV充電指示情報371を更新する。これにより、第3の実施形態の電力安定化支援装置30Bでは、充電の指示に伴ってEVが移動することにより渋滞が発生した場合であっても、渋滞が緩和されるようにすることが可能である。
【0103】
また、第3の実施形態の電力安定化支援装置30Bでは、電力逸脱判定部38Bが、更新されたEV充電指示情報371を反映させた電力情報370に基づいて、電力の状態が逸脱するエリアがあるか否かを判定する。EV充電指示情報生成部39Bは、電力の状態が逸脱するエリアがある場合、逸脱が緩和されるように、EV充電指示情報371を更新する。これにより、第3の実施形態の電力安定化支援装置30Bでは、電力の逸脱がないようにして、渋滞が緩和されるようにすることが可能である。
【0104】
(実施形態の表示例)
上述した少なくとも一つ実施形態において、電力情報370に基づいて特定区域における電力状態の分布を表示する態様を変化させるようにしてもよい。図16、及び図17は、実施形態の電力情報370に基づく表示の例を示す図である。図16には、位置(X、Y)ごとに電力状態値Vを対応させた三次元グラフにより電力の分布を表示した例が示されている。図17には、位置(X、Y)ごとに、電力状態値に応じて色分けしたグラフにより電力の分布を表示した例が示されている。このような表示態様とすることにより、電力の分布状態が把握し易くすることが可能である。
【0105】
上述した少なくとも一つ実施形態において、電力系統から特定区域に供給される電力は、火力発電所などから供給される集中型エネルギー源に加え、太陽光パネルにより発電された電力や、風力発電により発電された電力などの分散型エネルギー源から供給される電力であってもよい。
【0106】
また、(1)式~(3)式に示す電力状態値を算出する際に用いるパラメータ(例えば、係数F、G、H、など)を、実績に基づいて補正するようにしてもよい。例えば、電力情報生成部34は、(1)式に基づいて算出したEVに依存しない電力状態値V(X、Y、t)を予測値とする。電力情報生成部34は、実際の時刻tにおいて位置(X、Y)において観測された電力状態値を実測値とする。電力情報生成部34は、予測値が実測値にちかづくように、パラメータを補正する。電力情報生成部34は、以降の電力状態値Vの算出に、補正後のパラメータを用いるようにする。
【0107】
また、EVが個人に利用される態様に限定されない。EVが業務用に利用される場合であっても電力系統安定化支援システム1を適用することができる。業務用の利用形態としては、例えば、カーシェアリングや、バス或いはタクシーなどが想定される。この場合、EV利用者属性情報21における利用目的や利用時間は、業務に応じて決定される。またEV情報373における利用計画は、業務に応じて定められる運用となる。これらの利用時間及び利用計画は、業務に基づくものであるため、個人利用の場合と比較して、履行される可能性が高い、正確な情報である。電力系統安定化支援システム1を業務用に利用されるEVに適用することで、個人利用の場合と比較して、より正確な電力情報370などを生成することができる。
【0108】
上述した少なくとも一つ実施形態は、特定区域における、電力システムおよび交通システムの運用を監修する、電力事業者、交通事業者、及び地方自治体等による利用を想定している。
【0109】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、電力系統安定化支援システム1では、電力情報生成部34が、カレンダ情報11又は気候情報12、及びEV充電情報22を用いて、電力情報370を生成する。これにより、EVのみならず、EVに依存しない電力偏差を考慮した電力状態値を算出することができる。したがってEVのみを用いた場合と比較して、より正確な電力状態を示す情報を生成することができる。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0111】
1…電力系統安定化支援システム、10…電力DBサーバ、11…カレンダ情報(環境情報)、12…気候情報(環境情報)、20…EVDBサーバ、21…EV利用者属性情報(運用情報)、22…EV充電情報(運用情報)、30…電力安定化支援装置、31…通信部(取得部)、32…入力部、33…条件設定部、34…電力情報生成部、35…表示部、36…制御部、37…記憶部、370…電力情報、38…電力逸脱判定部、39…EV充電指示情報生成部、40…交通情報生成部、41…EV情報生成部、50…EV運用サーバ、60…EV情報端末、70…交通管理サーバ
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