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特許7297724エンドツーエンドビーム形成システム及び衛星
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】エンドツーエンドビーム形成システム及び衛星
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/185 20060101AFI20230619BHJP
   H04B 7/06 20060101ALI20230619BHJP
   H04B 7/08 20060101ALI20230619BHJP
   H01Q 25/00 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
H04B7/185
H04B7/06 150
H04B7/08 420
H01Q25/00
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2020157310
(22)【出願日】2020-09-18
(62)【分割の表示】P 2017550921の分割
【原出願日】2016-04-08
(65)【公開番号】P2021007230
(43)【公開日】2021-01-21
【審査請求日】2020-09-18
(31)【優先権主張番号】62/145,810
(32)【優先日】2015-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/145,804
(32)【優先日】2015-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/164,456
(32)【優先日】2015-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/278,368
(32)【優先日】2016-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/298,911
(32)【優先日】2016-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/312,342
(32)【優先日】2016-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/314,921
(32)【優先日】2016-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513180451
【氏名又は名称】ヴィアサット,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ViaSat,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ビュル,ケネス
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0051080(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0081946(US,A1)
【文献】国際公開第2014/171003(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/147753(WO,A1)
【文献】特開2011-029720(JP,A)
【文献】国際公開第2014/041932(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/185
H04B 7/06
H04B 7/08
H01Q 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアクセスノード(AN)(515)と複数のユーザ端末(517)との間に通信を提供する、エンドツーエンドリレー(503、1202、1502、3403)を介したエンドツーエンドビーム形成のための方法であって、
ANカバーエリアにわたって地理的に分布した前記複数のANから、複数の協働フィーダリンク構成受信要素によって、複数の往路アップリンク信号(521)の重畳されたものである複合入力往路信号(545)を受信することと、
前記複合入力往路信号から複数の往路ダウンリンク信号(522)を発生させることと、
複数の協働ユーザリンク構成伝送要素によって、前記複数の往路ダウンリンク信号を伝送することであって、前記往路ダウンリンク信号が、前記ANカバーエリアと少なくとも部分的に異なるユーザカバーエリアにわたって地理的に分布した複数のユーザ端末に伝送される、伝送することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記伝送が、前記ユーザカバーエリアにおいて複数の往路ユーザビームを形成することに貢献する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のユーザ端末のうちの少なくともいくつかから、複数の協働ユーザリンク構成受信要素によって、復路アップリンク信号(525)を受信することと、
前記受信した復路アップリンク信号から複数の復路ダウンリンク信号(527)を発生させることと、
複数の協働フィーダリンク構成伝送要素によって、前記複数のANに前記複数の復路ダウンリンク信号を伝送することと、を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の協働フィーダリンク構成伝送要素から、前記複数のANによって、複数の前記復路ダウンリンク信号(527)の重畳されたもの(1706)を受信して、複合復路信号(907)を形成することと、
復路ビーム形成器において前記複合復路信号を組み合わせて、前記ユーザカバーエリアにおいて複数の復路ユーザビームを形成することに貢献することと、を更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
復路ビーム加重値(937)に従って、前記組み合わせる前に、前記ビーム形成器において前記複合復路信号に加重することを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも前記エンドツーエンドリレーと前記複数のANとの間のそれぞれの経路遅延差を補償するために、前記組み合わせる前に、前記複合復路信号を同期させることを更に含む、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記エンドツーエンドリレーから、前記複数のANのうちの少なくともいくつかによって、リレービーコン信号を受信することを更に含み、
前記同期が、前記リレービーコン信号に従う、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記復路アップリンク信号の受信が、
第1のユーザカバーエリアにわたって地理的に分布した前記複数のユーザ端末の第1の部分から、前記複数の協働ユーザリンク構成受信要素によって、第1の時間間隔中に、第1の復路アップリンク信号の第1の受信を行なうことと、
第2のユーザカバーエリアにわたって地理的に分布した前記複数のユーザ端末の第2の部分から、前記複数の協働ユーザリンク構成受信要素によって、第2の時間間隔中に、第2の復路アップリンク信号の第2の受信を行なうことと、を含む、請求項4~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ANカバーエリアが、前記第1のユーザカバーエリアのサブセットであり、
1の時間フレーム中に、前記エンドツーエンドリレーによって前記複数のANを較正することを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2のユーザカバーエリアが、前記ANカバーエリアと重ならない、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の時間間隔中に、前記往路アップリンク信号が、第1の周波数範囲を使用して受信され、前記復路アップリンク信号が、前記第1の周波数範囲とは異なる第2の周波数範囲を使用して受信され、
前記第2の時間間隔中に、前記往路アップリンク信号及び前記復路アップリンク信号が、同じ周波数範囲を使用して受信される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記往路アップリンク信号が、第1の周波数帯域を使用して受信され、
前記復路ダウンリンク信号が、前記第1の周波数帯域と異なる第2の周波数帯域を使用して伝送され、
前記復路アップリンク信号が、前記第1の周波数帯域を使用して受信され、
前記往路ダウンリンク信号が、前記第2の周波数帯域を使用して伝送される、請求項3~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記複数のユーザ端末のうちの少なくともいくつかから、前記複数の協働ユーザリンク構成受信要素に前記復路アップリンク信号を伝送することを更に含む、請求項3~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記複数の協働ユーザリンク構成伝送要素から、前記ユーザ端末のうちの1つによって、前記複数の往路ダウンリンク信号の空間的な重畳されたもの(551)を受信することを更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記複数のANによって、前記複数の協働フィーダリンク構成受信要素に前記往路アップリンク信号を伝送することを更に含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記複数のANからの関連した伝送が実質的に同調して前記エンドツーエンドリレーに到達するように、前記複数のANの各々についてそれぞれの相対タイミング調整(2524、2527、2540)を決定することを更に含み、
前記往路アップリンク信号が、前記それぞれの相対タイミング調整に従って、前記複数のANによって伝送される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記エンドツーエンドリレーから、前記複数のANのうちの少なくともいくつかによって、リレービーコン信号を受信することを更に含み、
前記それぞれの相対タイミング調整が、前記リレービーコン信号に少なくとも部分的に従って決定される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記エンドツーエンドリレーから、前記複数のANのうちの少なくともいくつかによって、ループバック伝送を受信することを更に含み、
前記それぞれの相対タイミング調整が、前記ループバック伝送に少なくとも部分的に従って決定される、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記ユーザカバーエリアが、前記ANカバーエリアと異なる、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ANカバーエリアが、単一の隣接するカバーエリアである、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ユーザカバーエリアの第1の部分が、前記ANカバーエリアと重なり、
前記ユーザカバーエリアの第2の部分が、前記ANカバーエリアと重ならない、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ANカバーエリアが、前記ユーザカバーエリアのサブセットであり、前記ANカバーエリアが、物理的面積が前記ユーザカバーエリア(cover area)の1/5未満である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記伝送が、
第1の複数のユーザリンク構成伝送フィード要素によって、第1のユーザカバーエリア(3460a)にわたって地理的に分布した第1の複数のユーザ端末に、第1の複数の往路ダウンリンク信号の第1の伝送を行なうことと、
第2の複数のユーザリンク構成伝送フィード要素によって、第2のユーザカバーエリア(3460b)にわたって地理的に分布した第2の複数のユーザ端末に、第2の複数の往路ダウンリンク信号の第2の伝送を行なうことと、を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の伝送及び前記第2の伝送が、異なる時間に実行される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の伝送が、第1の複数のユーザビームによって前記第1のユーザカバーエリアに照射することを含み、
前記第2の伝送が、第2の複数のユーザビームによって前記第2のユーザカバーエリアに照射することを含み、
そのため、第1の時間中に、前記第1の複数のユーザビームがアクティブであり、前記第2の複数のユーザビームが非アクティブであり、
そのため、第2の時間中に、前記第2の複数のユーザビームがアクティブであり、前記第1の複数のユーザビームが非アクティブである、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1のユーザカバーエリアの第1の部分が、前記第2のユーザカバーエリアと重なり、前記第1のユーザカバーエリアの第2の部分が、前記第2のユーザカバーエリアと重ならない、請求項23~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記第2のユーザカバーエリアが、前記第1のユーザカバーエリアのサブセットである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第1のユーザカバーエリアが、前記第2のユーザカバーエリアと重ならない、請求項23~25のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示されるシステム、方法、及び装置は、エンドツーエンドリレーを使用した、システムにおけるエンドツーエンドビーム形成に関する。
【背景技術】
【0002】
衛星通信システムなどの無線通信システムは、オーディオ、ビデオ、及び他の種類のデータを含むデータをある場所から別の場所へ通信することができる手段を提供する。情報は、第1の地上局などの第1の局において生じ、そして、通信衛星などの無線リレーに伝送される。無線リレーによって受信された情報は、第2の地上局などの第2の局に再伝送される。いくつかの無線リレー通信システムでは、第1又は第2の局のいずれか(又は双方)が、航空機、船舶、地上車両などのクラフトに装着される。情報は、一方向にだけ(例えば、第1の地上局から第2の地上局にだけ)伝送することができ、又は両方向に(例えば、第2の地上局から第1の地上局にも)伝送することができる。
【0003】
無線リレーが衛星である無線リレー通信システムにおいて、衛星は、静止衛星とすることができ、その事例において、衛星の軌道は、地球の自転と同期され、衛星のカバーエリアを地球に対して本質的に固定した状態に保つ。他の事例において、衛星は、地球の周りの軌道の中にあり、衛星のカバーエリアに、衛星がその軌道を横断するように地球表面の上を移動させる。
【0004】
第1の局へ向けられた、又はそこからの信号は、信号を狭ビームに収束させるように成形されたアンテナを使用することによって方向付けることができる。そのようなアンテナは、一般的には、ビームを集束させるための放物面形状の反射器を備える。
【0005】
いくつかの事例において、ビームは、位相アレイアンテナのいくつかの要素から伝送される、受信される、又は双方による信号のゲイン及び位相(又は時間遅延)を調整することによって電子的に形成することができる。位相アレイアンテナの各要素によって伝送及び/又は受信される相対位相及びゲインを適切に選択することによって、ビームを方向付けることができる。大部分の事例において、地上局から伝送されているエネルギーの全ては、1つの無線リレーによって受信されることを意図する。同様に、第2の局によって受信される情報は、一般的には、一度に1つの無線リレーから受信される。したがって、(電子ビーム形成を使用するか、又は成形した反射器を有するアンテナを使用するかにかかわらず)無線リレーに情報を伝送するように形成される伝送ビームは、できる限り多くの伝送エネルギーを無線リレーに方向付けることを可能にするために、比較的幅が狭いことが一般的である。同様に、無線リレーから情報を受信するように形成される受信ビームは、一般的に、他の源からの干渉を最小にしながら無線リレーの方向からエネルギーを収集するために、幅が狭い。
【0006】
数多くの対象の事例において、無線リレーから第1及び第2の局へ伝送される信号は、単一の局に方向付けられない。むしろ、無線リレーは、比較的大きい地理的地域にわたって信号を伝送することができる。例えば、1つの衛星通信システムにおいて、衛星は、米国全土にサービスを提供することができる。そのような事例において、衛星は、米国全土を含む衛星カバーエリアを有すると言われる。それにもかかわらず、衛星を通して伝送することができるデータの量を増加させるために、衛星によって伝送されるエネルギーは、ビームに集束される。このビームは、地球上の地理的地域に方向付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図面は、単に例示の目的で提供され、単なる例を表すに過ぎない。これらの図面は、開示される方法及び装置の読者の理解を容易にするために提供される。これらの図面は、特許請求される発明の広さ、範囲、又は適用性を限定しない。明確にするために、及び例示を容易にするために、これらの図面は、必ずしも一定の比率ではない。
【0008】
図1】衛星通信システムの一実施例の説明図である。
【0009】
図2】米国本土をカバーするビームの例示的なパターンを示す図である。
【0010】
図3】衛星が、位相アレイの1ビームあたり複数のフィードのオンボードビーム形成能力を有する、衛星通信システムの往路リンクの一実施例の説明図である。
【0011】
図4】地上ビーム形成を有する衛星通信システムの往路リンク一実施例の説明図である。
【0012】
図5】例示的なエンドツーエンドビーム形成システムの説明図である。
【0013】
図6】復路方向における信号の例示的な信号経路の説明図である。
【0014】
図7】ユーザ端末からの復路方向における例示的な信号経路の説明図である。
【0015】
図8】例示的なエンドツーエンド復路チャネルマトリックスモデルの簡略説明図である。
【0016】
図9】往路方向における例示的な信号経路の説明図である。
【0017】
図10】ユーザビームカバーエリア内に位置するユーザ端末への往路方向の例示的な信号経路の説明図である。
【0018】
図11】例示的なエンドツーエンド往路チャネルマトリックスモデルの簡略説明図である。
【0019】
図12】往路及び復路データをサポートする例示的なエンドツーエンドリレー衛星の説明図である。
【0020】
図13】2つの部分に分割されているアップリンク周波数範囲の一実施例の説明図である。
【0021】
図14】往路データと復路データとの間で時間多重化されている例示的なエンドツーエンドリレーの説明図である。
【0022】
図15】衛星として実現される例示的なエンドツーエンドリレーの構成要素のブロック図である。
【0023】
図16】位相シフタを含む例示的なトランスポンダのブロック図である。
【0024】
図17】いくつかのアンテナ要素の例示的な信号強度パターンのグラフである。
【0025】
図18】いくつかのアンテナ要素の例示的な3dB信号強度の輪郭線の説明図である。
【0026】
図19】いくつかのアンテナ要素の例示的な重複信号の強度パターンの説明図である。
【0027】
図20A】いくつかのアンテナ要素の例示的な重複3dB信号強度の輪郭線の説明図である。
図20B】いくつかのアンテナ要素の例示的な重複3dB信号強度の輪郭線の説明図である。
図20C】いくつかのアンテナ要素の例示的な重複3dB信号強度の輪郭線の説明図である。
図20D】いくつかのアンテナ要素の例示的な重複3dB信号強度の輪郭線の説明図である。
図20E】いくつかのアンテナ要素の例示的な重複3dB信号強度の輪郭線の説明図である。
【0028】
図21】16個のアンテナ要素及びそれらの重複3dB信号強度の輪郭線の例示的な列挙の説明図である。
【0029】
図22】16個のトランスポンダを通した、受信アンテナ要素の伝送アンテナ要素への例示的なマッピングを示す表である。
【0030】
図23】放物面アンテナ反射器の断面、及び放物線の焦点に中心がある要素のアレイの説明図である。
【0031】
図24】放物面アンテナ反射器の断面、及び放物線の焦点から離れて配置された要素のアレイの説明図である。
【0032】
図25】例示的なリレーカバーエリア(単一のクロスパッチで示される)、及び6つのアンテナ要素カバーエリア内にも含まれるリレーカバーエリア内の点によって確定されるエリア(二重クロスハッチで示される)の説明図である。
【0033】
図26】リレーカバーエリア内の全ての点が少なくとも4つのアンテナ要素カバーエリア内にも含まれる、例示的なリレーアンテナパターンの説明図である。
【0034】
図27】アクセスノード(AN)及びユーザビームカバーエリアの例示的な分布の説明図である。
【0035】
図28】配備されたANの数の関数として、正規化された往路及び復路リンク容量の例示的なグラフである。
【0036】
図29】エンドツーエンドビーム形成システムの例示的な地上セグメント502のブロック図である。
【0037】
図30】例示的な往路/復路ビーム形成器のブロック図である。
【0038】
図31】時間領域の逆多重化及び多重化を伴う複数の復路タイムスライスビーム形成器を備える、例示的な往路ビーム形成器のブロック図である。
【0039】
図32】往路タイムスライスビーム形成器の動作を示す、簡略化した例示的な地上セグメントの説明図である。
【0040】
図33】時間領域の逆多重化及び多重化を伴うタイムスライスビーム形成器を備える、例示的な復路ビーム形成器のブロック図である。
【0041】
図34】時間領域の多重化を用いた復路ビーム形成器の動作を示す、簡略化した例示的な地上セグメントの説明図である。
【0042】
図35】サブ帯域の逆多重化及び多重化を用いる、例示的な多帯域往路/復路ビーム形成器のブロック図である。
【0043】
図36】往路リンクの例示的なタイミング整列の説明図である。
図37】往路リンクの例示的なタイミング整列の説明図である。
【0044】
図38】例示的なANのブロック図である。
【0045】
図39】ANの一実施例の一部のブロック図である。
【0046】
図40】多重周波数サブ帯域が別々に処理される、例示的なAN515のブロック図である。
【0047】
図41】異なるユーザリンク及びフィーダリンクのカバーエリアを可能にするための例示的なエンドツーエンドビーム形成システムの説明図である。
【0048】
図42】エンドツーエンド復路リンク上で復路データを搬送する信号の信号経路の例示的なモデルの説明図である。
【0049】
図43】エンドツーエンド往路リンク上で往路データを搬送する信号の信号経路の例示的なモデルの説明図である。
【0050】
図44A】それぞれ、例示的な往路信号経路及び復路信号経路の説明図である。
図44B】それぞれ、例示的な往路信号経路及び復路信号経路の説明図である。
【0051】
図45】エンドツーエンドリレーの可視的な地球カバーエリアの一実施例の説明図である。
【0052】
図46】エンドツーエンドリレーの北米カバーエリアの一実施例の説明図である。
【0053】
図47A】それぞれ、各々が多重ユーザリンクアンテナサブシステムの選択的な起動を有する、例示的な往路信号経路及び復路信号経路のブロック図である。
図47B】それぞれ、各々が多重ユーザリンクアンテナサブシステムの選択的な起動を有する、例示的な往路信号経路及び復路信号経路のブロック図である。
【0054】
図48A】複数の選択的に起動されたユーザカバーエリアを含む、エンドツーエンドリレーカバーエリアの一実施例の説明図である。
図48B】複数の選択的に起動されたユーザカバーエリアを含む、エンドツーエンドリレーカバーエリアの一実施例の説明図である。
【0055】
図49】複数のユーザリンクアンテナサブシステム及び複数のフィーダリンクアンテナサブシステムの選択的な起動を有する、例示的な往路信号経路のブロック図である。
【0056】
参照番号(例えば、100)は、本明細書において図面の態様を参照するために使用される。類似する又は同じ態様は、一般的に、同じ番号を使用して示される。一群の類似する又は同じ要素は、単一の参照番号(例えば、200)によって集合的に参照される場合があり、一方で、該群の個々の要素は、添付文字を伴う参照番号(例えば、200a、200b)によって参照される場合がある。
【0057】
図面は、網羅的であること、又は特許請求される発明を開示される特定の形態に限定することを意図しない。開示される方法及び装置は、修正及び変更が行われる場合があり、本発明は、特許請求の範囲及びその均等物だけによって限定される。
【発明を実施するための形態】
【0058】
この詳細な説明は、以下のように構成される。第1に、衛星通信及びビーム形成を使用した無線リレー通信システムの序論が説明される。第2に、一実施例として衛星エンドツーエンドビーム形成を使用したエンドツーエンドビーム形成が全般的に、及びシステムレベルで説明されるが、エンドツーエンドビーム形成の適用は、衛星通信に限定されない。第3に、エンドツーエンドビーム形成の状況における往路及び復路データの動作が説明される。第4に、一実施例として通信衛星を使用したエンドツーエンドリレー及びそれらのアンテナが説明される。次に、遅延等化、フィーダリンク障害の除去、及びビーム加重値の計算などの関連する態様を含む、エンドツーエンドビームを形成するための地上ネットワークが説明される。最後に、異なるユーザリンク及びフィーダリンクカバーエリアを有するエンドツーエンドビーム形成、並びに複数のカバーエリアを有するシステムが説明される。
衛星通信
【0059】
図1は、ハブアンドスポーク衛星通信システム100の一実施例の説明図である。衛星は、無線リレーの一実施例としての役割を果たす。本開示の全体を通して数多く実施例が衛星又は衛星通信システムの状況で説明されるが、そのような実施例は、衛星に限定することを意図するものではなく、任意の他の適切な無線リレーを使用し、同様の様式で動作させることができる。システム100は、地上地球局101と、通信衛星103と、ユーザ端末105などの地球伝送源とを含む。衛星カバーエリアは、地上地球局又はユーザ端末などの地球伝送源又は地球受信機のいずれかから、及び/又はそれらに、衛星を通して通信することができるエリアであると大まかに定義することができる。いくつかのシステムにおいて、各リンクのカバーエリア(例えば、往路アップリンクカバーエリア、往路ダウンリンクカバーエリア、復路アップリンクカバーエリア、及び復路ダウンリンクカバーエリア)は、異なり得る。往路アップリンクカバーエリア及び復路アップリンクカバーエリアは、集合的にアップリンク衛星カバーエリアと称される。同様に、往路ダウンリンクカバーエリア及び復路ダウンリンクカバーエリアは、集合的にダウンリンク衛星カバーエリアと称される。衛星カバーエリアは、サービスを提供している(例えば、サービス軌道にある)衛星に対してだけアクティブであるが、衛星は、地球に対する衛星の相対的な場所とは関係のない衛星アンテナパターンを有する(例えば、有するように設計することができる)ものとみなすことができる。すなわち、衛星アンテナパターンは、衛星のアンテナから伝送される(衛星のアンテナから伝送されるか、又は該アンテナによって受信される)エネルギーの分布パターンである。衛星がサービス軌道にあるときには、衛星アンテナパターンを特定の衛星カバーエリアに照射する(該エリアに伝送するか、又はそこから受信する)。衛星カバーエリアは、衛星アンテナパターン、衛星に関して設計された軌道の位置及び姿勢、並びに所与のアンテナゲイン閾値によって画定される。一般に、(例えば、ピークゲインから3dB、4dB、6dB、10dBの、特定の有効アンテナゲインでの)アンテナパターンと特定の物理的対象領域との交差は、そのアンテナのカバーエリアを画定する。アンテナは、特定のアンテナパターン(及び/又はカバーエリア)を提供するように設計することができ、そのようなアンテナパターンは、(例えば、分析又はシミュレーションによって)計算的に決定することができ、及び/又は(例えば、アンテナ試験範囲又は実際の使用において)試験的に測定することができる。
【0060】
簡潔にするために、図には1つのユーザ端末105だけが示されているが、一般的に、システムには多数のユーザ端末105がある。衛星通信システム100は、ポイントツーマルチポイントシステムとして動作する。すなわち、衛星カバーエリア内の地球局101は、衛星カバーエリア内のユーザ端末105のいずれかに情報を送信し、そこから情報を受信することができる。しかしながら、ユーザ端末105は、地球局101とだけ通信する。地球局101は、通信ネットワーク107から往路データを受信し、フィーダリンクモデム109を使用して該データを調整し、そして、往路フィーダアップリンク111の衛星103に該データを伝送する。衛星103は、この往路データを、往路ユーザダウンリンク(往路サービスダウンリンクとも呼ばれる)113のユーザ端末105にリレーする。いくつかの事例において、地球局101からの往路方向通信は、ユーザ端末105のいくつかを対象とする(例えば、情報がユーザ端末105にマルチキャストされる)。いくつかの事例において、地球局101からの往路通信は、1つのユーザ端末105だけを対象とする(例えば、特定のユーザ端末105にユニキャストされる)。ユーザ端末105は、復路ユーザアップリンク(復路サービスアップリンクとも呼ばれる)115の衛星103に復路データを伝送する。衛星103は、復路データを復路フィーダダウンリンク117の地球局101にリレーする。フィーダリンクモデム109は、復路データを復調し、該復路データは、通信ネットワーク107に転送される。この復路リンク能力は、通常、いくつかのユーザ端末105によって共有される。
【0061】
図2は、米国本土にサービスを提供する衛星のビームカバーエリアの1つの構成の一実施例を示す図である。70本のビームが例示的な構成で示される。第1のビーム201は、ワシントン州の約2/3をカバーする。第1のビーム201に隣接する第2のビーム203は、第1のビーム201のすぐ東のエリアをカバーする。第3のビーム205は、第1のビーム201の南方のオレゴン州をほぼカバーする。第4のビーム207は、第1のビーム201のほぼ南東のエリアをカバーする。一般的に、隣接するビームの間には、幾らかの重なりがある。いくつかの事例では、多色(例えば、2色、3色、又は4色の再使用パターン)が使用される。4色パターンの一実施例において、ビーム201、203、205、207は、個々に割り当てられた、固有の周波数(例えば、1つ若しくは複数の周波数範囲、又は1つ若しくは2つ以上のチャネル)、及び/又はアンテナ偏波(例えば、いくつかの事例において、アンテナは、右旋円偏波(RHCP)又は左旋円偏波(LHCP)で信号を伝送するように構成することができ、他の偏波技術を利用することができる)の組み合わせである。故に、異なるビーム201、203、205、207で伝送される信号の間には、比較的小さい干渉があり得る。周波数及びアンテナ偏波のこれらの組み合わせは、次いで、繰り返し非重複「4色」再使用パターンにおいて再使用することができる。いくつかの状況において、所望の通信容量は、単色を使用して達成することができる。いくつかの事例では、ビーム及び/又は他の干渉軽減技術の中の時分割を使用することができる。
【0062】
幾らかの限度内で、ビームをより小さいエリアの中へ集束させ、したがって、ビームの数を増加させることは、より多くの周波数再使用の機会を可能にすることによって衛星のデータ容量を増加させる。しかしながら、ビームの数を増加させることは、システムの複雑さ、及び数多くの事例において、衛星の複雑さを増加させる場合がある。
【0063】
衛星の設計における複雑さは、一般的に、より大きいサイズ、より多くの重量、及びより多くの電力消費をもたらす。衛星は、軌道の中へ打ち上げるための費用が高い。衛星を打ち上げるコストは、衛星の重量及びサイズによって部分的に決定される。加えて、衛星が現在利用できるロケット技術を使用して打ち上げられる場合には、衛星の重量及びサイズに対する絶対的な制限がある。これは、衛星に設計することができる特徴間のトレードオフに至る。更に、衛星の構成要素に提供することができる電力量が制限される。したがって、重量、サイズ、及び電力消費が、衛星の設計において考慮されるべきパラメータである。
【0064】
本開示の全体を通して、受信アンテナ要素という用語は、電磁信号を電気信号に変換する物理的トランスデューサを指し、伝送アンテナ要素という用語は、電気信号によって励起されたときに、電磁信号を発射する物理的トランスデューサを指す。アンテナ要素としては、ホーン、隔壁偏波ホーン(例えば、異なる偏波を有する2つの組み合わせた要素として機能することができる)、多ポート多帯域バンドホーン(例えば、二重偏波LHCP/RHCPを有するデュアルバンド20GHz/30GHz)、キャビティ付きスロット、逆F、スロット付き導波管、ビバルディ、ヘリカル、ループ、パッチ、又は任意の他のアンテナ要素の構成若しくは相互接続したサブ要素の組み合わせ、が挙げられる。アンテナ要素は、アンテナゲインがどのように方向(又は角度)の関数として変動するのかを説明する、対応するアンテナパターンを有する。アンテナ要素はまた、カバーエリアも有し、該カバーエリアは、アンテナ要素が所望のレベルのゲイン(例えば、アンテナ要素のピークゲインに対して3dB、6dB、10dB、又は他の値以内)を提供する、面積(例えば地球表面の一部分)又は体積(例えば、地球表面の一部分とその表面の上側の空間とを合わせたもの)に対応する。アンテナ要素のカバーエリアは、反射器、周波数選択表面、レンズ、レードーム、及び同類のものなどの、様々な構造物によって修正することができる。本明細書で説明される衛星を含むいくつかの衛星は、各々が独立に信号を受信し、伝送することができる複数のトランスポンダを有することができる。各トランスポンダは、アンテナ要素(例えば、受信要素及び伝送要素)に結合されて、他の受信/伝送信号経路からの異なる放射パターン(アンテナパターン)を有する受信/伝送信号経路を形成して、異なるビームカバーエリアに割り当てることができる固有のビームを作成する。単一の受信/伝送信号経路を、入力及び/又は多重化装置を使用して、複数のビームにわたって共有することが一般的である。どちらの事例においても、形成することができる同時のビーム数は、一般に、衛星に配備される受信/伝送信号経路の数によって制限される。
ビーム形成
【0065】
通信リンクのためのビーム形成は、重複カバーエリアを有する1つ又は2つ以上のアンテナアレイの複数の要素によって伝送及び/又は受信される信号の、信号位相(又は時間遅延)及びあるときには信号振幅を調整することによって行うことができる。いくつかの事例において、いくつか又は全てのアンテナ要素は、下で説明するように、協働してエンドツーエンドビーム形成を可能にする、構成受信及び/又は伝送要素のアレイとして配設される。伝送の場合(1つ又は2つ以上のアンテナアレイの伝送要素から)、伝送信号の相対位相及びあるときには振幅は、伝送アンテナ要素によって伝送されるエネルギーを所望の場所において構成的に重畳するように調整される。この位相/振幅調整は、一般に、伝送信号に「ビーム加重値を適用する」と称される。受信の場合(1つ又は2つ以上のアンテナアレイの受信要素による)、受信信号の相対位相及びあるときには振幅は、受信アンテナ要素によって所望の場所から受信されるエネルギーがそれらの受信アンテナ要素において構成的に重畳するように調整される(すなわち、同じ又は異なるビーム加重値が適用される)。いくつかの事例において、ビーム形成器は、所望のアンテナ要素ビーム加重値を計算する。ビーム形成という用語は、いくつかの事例において、ビーム加重値の適用を指すことができる。適応ビーム形成器は、ビーム加重値を動的に計算する機能を含む。ビーム加重値を計算することは、通信チャネル特徴の直接的又は間接的な発見を必要とする場合がある。ビーム加重値の計算及びビーム加重値の適用のプロセスは、同じ又は異なるシステム要素において行うことができる。
【0066】
アンテナビームは、異なるビーム加重値を適用することによって、操縦すること、選択的に形成すること、及び/又は別様には再構成することができる。例えば、アクティブビームの数、ビームのカバーエリア、ビームのサイズ、ビームの相対ゲイン、及び他のパラメータは、経時的に変動させることができる。そのような融通性は、ある状況において望ましい。ビーム形成アンテナは、通常、比較的細いビームを形成することができる。細いビームは、(例えば、干渉を回避するために)一方のビームで伝送される信号と、もう一方のビームで伝送される信号とを区別することを可能にすることができる。故に、細いビームは、周波数及び偏波を、より太いビームが形成されるときよりも大きい程度で再使用することを可能にすることができる。例えば、細く形成されたビームは、重ならない2つの隣接しないカバーエリアにサービスを提供することができる。各ビームは、右偏波及び左偏波を使用することができる。より多くの再使用は、伝送及び/又は受信されるデータの量を増加させることができる。
【0067】
いくつかの衛星は、オンボードビーム形成(OBBF)を使用して、アンテナ要素のアレイを電子的に操縦する。図3は、衛星302が位相アレイの1ビームあたり複数のフィード(MFPB)のオンボードビーム形成能力を有する、衛星システム300の説明図である。この実施例において、ビーム加重値は、地上計算センターにおいて計算され、次いで、適用のために衛星に伝送されるか、又は衛星に予め記憶される(図示せず)。図3には、フォワードリンクが示されるが、このアーキテクチャは、フォワードリンク、復路リンク、又はフォワードリンク及び復路リンクの両方に使用することができる。ビーム形成は、ユーザリンク、フィーダリンク、又は両方で利用することができる。例示されるフォワードリンクは、複数のゲートウェイ(GW)304のうちの1つから、1つ又は2つ以上のスポットビームカバーエリア306内の複数のユーザ端末のうちの1つ又は2つ以上への信号経路である。人工衛星302は、受信アンテナアレイ307と、伝送アンテナアレイ309と、下方変換器(D/C)及びゲインモジュール311と、受信ビーム形成器313と、伝送ビーム形成器315とを有する。衛星302は、フィーダリンク308及びユーザリンク310にビームを形成することができる。受信アレイ307のL個の要素の各々は、K個のGW304からK個の信号を受信する。作成されるK本のフィーダリンクビームの各々(例えば、1つのGW304あたり1つのビーム)について、異なるビーム荷重値が、受信ビーム形成器313によって、(受信アンテナアレイ307の)L個の受信アンテナアレイ要素の各々によって受信される各信号に適用される(例えば、位相/振幅の調整が行われる)。故に、L個の受信アンテナ要素を有する受信アンテナアレイ307を使用して形成されるK本のビームについて、長さLの異なるK個のビーム加重ベクトルが、L個の受信アンテナアレイ要素によって受信されるL個の信号に適用される。衛星302内の受信ビーム形成器313は、L個の受信アンテナアレイ要素によって受信される信号の位相/振幅を調整して、K個の受信ビーム信号を作成する。K本の受信ビームの各々は、1つのGW304から信号を受信するように集束される。故に、受信ビーム形成器313は、D/C及びゲインモジュール311にK個の受信ビーム信号を出力する。1つのこのような受信ビーム信号が、各伝送GW304から受信される信号について形成される。
【0068】
D/C及びゲインモジュール311は、K個の受信ビーム信号の各々を下方変換し、ゲインを適切に調整する。K個の信号は、D/C及びゲインモジュール311から出力され、伝送ビーム形成器315に結合される。伝送ビーム形成器315は、合計でL×K個の伝送ビーム加重値について、L個の加重値のベクトルをK個の信号の各々に適用して、ユーザダウンリンク310にK本のビームを形成する。
【0069】
いくつかの事例において、衛星内では、ビームを形成するために使用される各アンテナ要素の位相及びゲインを制御するために、かなりの処理能力が必要であり得る。そのような処理能力は、衛星の複雑さを増加させる。いくつかの事例において、衛星は、地上ビーム形成(GBBF)によって動作させて、衛星の複雑さを低減させることができるが、それでも、細いビームを電子的に形成するという利点を提供する。
【0070】
図4は、往路GBBFを有する衛星通信システム400の1つの実施例の説明図である。GBBFは、上で説明したものに類似するL個の要素アレイを介して、往路ユーザリンク317で行われる。ユーザリンク317上を伝送される信号の位相/振幅は、ビームが形成されるように加重される。フィーダリンク319は、アンテナ324の各受信及び伝送アンテナ要素が1つのフィーダリンクビーム専用である、1ビームあたり単一のフィード(SFPB)のスキームを使用する。
【0071】
1つ又は複数のGW304から伝送する前に、K本の往路フィーダリンクビームの各々について、伝送ビーム形成器321は、K個のビーム加重ベクトルのそれぞれ1つを、各々長さLで、伝送されるK個の信号の各々に適用する。L個の加重値のK個のベクトルを決定し、該ベクトルを信号に適用することは、往路ユーザダウンリンク317について、K本の往路ビームを地上に形成することを可能にする。フィーダアップリンク319上では、L個の異なる信号の各々が、多重化装置323(又は同類のもの)によって、周波数分割多重化信号(FDM)に多重化される。各FDM信号は、GW304によって、フィーダリンク319上のアンテナ324の受信アンテナ要素の1つに伝送される。衛星327上のFDM受信機325は、アンテナ324から信号を受信する。アナログ-デジタル変換器(A/D)326は、受信したアナログ信号をデジタル信号に変換する。デジタルチャネルプロセッサ328は、FDM信号を逆多重化するが、該FDM信号の各々は、伝送アンテナ329の伝送アンテナ要素のアレイのL個の要素のうちの1つを通して伝送するために、ビーム形成器321によって適切に加重されている。デジタルチャネルプロセッサ328は、信号をデジタル/アナログ変換器(D/A)331に出力して、変換してアナログ形態に戻す。D/A331のアナログ出力は、上方変換され、上方変換器(U/C)及びゲイン段330によって増幅され、そして、伝送アンテナ329の関連付けられる要素によって伝送される。復路ビームについては、賞賛のプロセスが逆順に起こる。このタイプのシステムにおいて、FDMフィーダリンクは、ユーザビームのL倍もの帯域幅を必要とし、広いデータ帯域幅を有するシステム又は多数の要素Lを有するシステムに対して非実用的にすることに留意されたい。
エンドツーエンドビーム形成システム
【0072】
本明細書で説明されるエンドツーエンドビーム形成システムは、エンドツーエンドリレーを通して、エンドツーエンドビームを形成する。エンドツーエンドビーム形成システムは、ユーザ端末をデータソース/シンクと接続することができる。上で論じたビーム形成システムとは対照的に、エンドツーエンドビーム形成システムにおいて、ビーム加重値は、中央処理システム(CPS)において計算され、エンドツーエンドビーム加重値は、(衛星においてではなく)地上ネットワーク内で適用される。エンドツーエンドビーム内の信号は、衛星アクセスノード(SAN)とすることができるアクセスノード(AN)のアレイにおいて伝送及び受信される。上で説明したように、任意の適切なタイプのエンドツーエンドリレーをエンドツーエンドビーム形成システムで使用することができ、異なるタイプのANを使用して、異なるタイプのエンドツーエンドリレーと通信することができる。「中央」という用語は、CPSが、信号の伝送及び/又は受信に関与するANにアクセスすることができるという事実を指すものであり、CPSが存在する特定の地理的場所を指すものではない。CPS内のビーム形成器は、(1)エンドツーエンドリレーへの無線信号アップリンク経路、(2)エンドツーエンドリレーを通した受信/伝送信号経路、及び(3)エンドツーエンドリレーからの無線信号ダウンリンク経路、に対応する一組のエンドツーエンドビーム加重値を計算する。ビーム加重値は、マトリックスとして数学的に表すことができる。上で論じたように、OBBF及びGBBF衛星システムは、衛星上のアンテナ要素の数によって設定されるビーム加重ベクトル次元を有する。対照的に、エンドツーエンドビーム加重ベクトルは、エンドツーエンドリレー上の要素の数ではなく、ANの数によって設定される次元を有する。一般に、ANの数は、エンドツーエンドリレー上のアンテナ要素の数と同じではない。更に、形成されたエンドツーエンドビームは、エンドツーエンドリレーの伝送又は受信いずれかのアンテナ要素において終端されない。むしろ、エンドツーエンドビームがアップリンク信号経路、(衛星又は他の適切なエンドツーエンドリレーを介する)リレー信号経路、及びダウンリンク信号経路を有するので、形成されたエンドツーエンドビームは、効果的にリレーされる。
【0073】
エンドツーエンドビーム形成は、ユーザリンク及びフィーダリンク(並びにエンドツーエンドリレー)を考慮するので、特定の方向に所望のエンドツーエンドユーザビーム(例えば、往路ユーザビーム又は復路ユーザビーム)を形成するために、単一組のビーム加重値だけしか必要としない。したがって、一組のエンドツーエンド往路ビーム加重値(以下、往路ビーム加重値と称される)が、ANから、往路アップリンクを通して、エンドツーエンドリレーを通して、そして、往路ダウンリンクを通して伝送され、組み合わせて、エンドツーエンド往路ユーザビーム(以下、往路ユーザビームと称される)を形成する。これとは逆に、復路ユーザから、復路アップリンクを通して、エンドツーエンドリレーを通して、そして、復路ダウンリンクを通して伝送される信号は、エンドツーエンド復路ユーザビーム(以下、復路ユーザビームと称される)を形成するために、エンドツーエンド復路ビーム加重値(以下、復路ビーム加重値と称される)を有する。いくつかの条件の下では、アップリンク及びダウンリンクの特徴を区別することが非常に困難であるか、不可能であり得る。故に、形成されたフィーダリンクビーム、形成されたユーザビームの方向性、並びに個々のアップリンク及びダウンリンクの搬送波対干渉波比(C/I)は、システム設計においてもはやそれらの従来の役割を有し得ないが、それでも、アップリンク及びダウンリンクの信号対雑音比(Es/No)及びエンドツーエンドのC/Iといった概念は関連し得る。
【0074】
図5は、例示的なエンドツーエンドビーム形成システム500の説明図である。システム500は、地上セグメント502と、エンドツーエンドリレー503と、複数のユーザ端末517とを含む。地上セグメント502は、ANカバーエリアにわたって地理的に配備されるM個のAN515を備える。AN515及びユーザ端末517は、それらが地球上又はその近くに位置し、信号の伝送及び受信の両方を行うので、問題となる特定の機能に応じて、集合的に地球受信機、地球伝送機、又は地球トランシーバと称され得る。いくつかの事例において、ユーザ端末517及び/又はAN515は、航空機、船舶に位置付けられる、又は地上車両に載置される等が行われ得る。いくつかの事例において、ユーザ端末517は、地理的に分布し得る。AN515は、地理的に分布し得る。AN515は、信号を、配信ネットワーク518を通して、地上セグメント502内のCPS505に提供する。CPS505は、例えばインターネット、ビデオヘッドエンド、又は他のそのようなエンティティなどのデータ源(図示せず)に接続される。
【0075】
ユーザ端末517は、他の近くのユーザ端末517(例えば、ユーザ端末517a及び517bで例示される)にグループ化することができる。いくつかの事例において、そのようなユーザ端末517のグループは、同じユーザビームによってサービスを提供され、同じ地理的な往路及び/又は復路ユーザビームカバーエリア519内に存在する。あるユーザビームによってサービスを提供されるカバーエリア内にユーザ端末517がある場合、ユーザ端末517は、そのユーザビーム内にある。図5には、1つのそのようなユーザビームカバーエリア519だけが、2つ以上のユーザ端末517を有するように示されているが、いくつかの事例において、ユーザビームカバーエリア519は、任意の適切な数のユーザ端末517を有することができる。更にまた、図5の描写は、異なるユーザビームカバーエリア519の相対的サイズを示すことを意図しない。すなわち、ユーザビームカバーエリア519の全てがほぼ同じサイズであり得る。代替的に、ユーザビームカバーエリア519は、いくつかのユーザビームカバーエリア519が他よりもはるかに大きい状態で、サイズを変動させることができる。いくつかの事例において、AN515の数は、ユーザビームカバーエリア519の数に等しくない。
【0076】
エンドツーエンドリレー503は、ユーザ端末517と、図5に示されるAN515などのいくつかのネットワークアクセスノードとの間で、信号を無線でリレーする。エンドツーエンドリレー503は、複数の信号経路を有する。例えば、各信号経路は、少なくとも1つの受信アンテナ要素と、少なくとも1つの伝送アンテナ要素と、及び(下で詳細に論じるような)少なくとも1つのトランスポンダとを含むことができる。いくつかの事例では、複数の受信アンテナ要素が、受信反射器によって反射される信号を受信して、受信アンテナアレイを形成するように調整される。いくつかの事例では、複数の伝送アンテナ要素が、信号を伝送し、したがって、伝送アンテナアレイを形成するように調整される。
【0077】
いくつかの事例において、エンドツーエンドリレー503は、衛星に提供される。他の事例において、エンドツーエンドリレー503は、エンドツーエンドリレー503が存在することができる航空機、気球、塔、水中構造物、又は任意の他の適切な構造物若しくは車両に提供される。いくつかの事例において、システムは、アップリンク及びダウンリンクについて(同じ又は異なる周波数帯域の)異なる周波数範囲を使用する。いくつかの事例において、フィーダリンク及びユーザリンクは、異なる周波数範囲である。いくつかの事例において、エンドツーエンドリレー503は、パッシブ又はアクティブ反射器として作用する。
【0078】
本明細書で説明されるように、エンドツーエンドリレー503の様々な特徴は、エンドツーエンドビーム形成を可能にする。1つの特徴は、エンドツーエンドリレー503が、エンドツーエンドビーム形成システムの状況においてAN515とユーザ端末517の間に多重経路を誘導する、複数のトランスポンダを含むことである。別の特徴は、エンドツーエンドリレー503のアンテナ(例えば、1つ又は2つ以上のアンテナサブシステム)が、エンドツーエンドビーム形成に貢献し、よって、適切にビーム加重された信号がエンドツーエンドリレー503によって誘導される多重経路を通して通信されたときに、往路及び/又は復路ユーザビームが形成されることである。例えば、往路通信中には、複数のトランスポンダの各々が、複数の(例えば、全ての)AN515から(ビーム加重)往路アップリンク信号521のそれぞれの重畳複合物(以下、複合入力往路信号と称される)を受信し、トランスポンダが、対応する複合信号(以下、往路ダウンリンク信号と称される)を出力する。往路ダウンリンク信号の各々は、ビーム加重往路アップリンク信号521の固有の複合部とすることができ、これは、エンドツーエンドリレー503の伝送アンテナ要素によって伝送されたときに、所望の場所(例えば、この事例では、往路ユーザビーム内の復元場所)にユーザビーム519を形成するように重畳する。復路エンドツーエンドビーム形成は、同じように可能になる。したがって、エンドツーエンドリレー503は、複数の重畳されたものを生じさせることができ、それによって、誘導された多重経路チャネルにわたるエンドツーエンドビーム形成を可能にする。
復路データ
【0079】
図6は、エンドツーエンド復路リンク上で復路データを搬送する信号の信号経路の例示的なモデルの説明図である。復路データは、ユーザ端末517からAN515に流れるデータである。図6の信号は、右から左に流れる。信号は、ユーザ端末517によって生じる。ユーザ端末517は、復路アップリンク信号525(復路ユーザデータストリームを有する)をエンドツーエンドリレー503まで伝送する。K個のユーザビームカバーエリア519の中のユーザ端末517からの復路アップリンク信号525は、L個の受信/伝送信号経路1702のアレイによって受信される。いくつかの事例において、エンドツーエンドリレー503のアップリンクカバーエリアは、L個の受信アンテナ要素406の全てが信号を受信することができるその一組の地点によって画定される。他の事例において、リレーカバーエリアは、L個の受信アンテナ要素406のサブセット(例えば、2つ以上の所望の数であるが、全てよりも少ない)が信号を受信することができるその一組の地点によって画定される。同様に、いくつかの事例において、ダウンリンクカバーエリアは、L個の伝送アンテナ要素409の全てが信号を確実に送信することができる一組の地点によって画定される。他の事例において、エンドツーエンドリレー503のダウンリンクカバーエリアは、伝送アンテナ要素409のサブセットが信号を確実に送信することができるその一組の地点として画定される。いくつかの事例において、受信アンテナ要素406又は伝送アンテナ要素409のサブセットのサイズは、少なくとも4つである。他の事例において、サブセットのサイズは、6個、10個、20個、100個、又は所望のシステムの性能を提供する任意の他の数である。
【0080】
簡潔にするために、いくつかの実施例は、L個全ての受信アンテナ要素406が、アップリンクカバーエリアの中の全ての地点から信号を受信し、及び/又はL個全ての伝送アンテナ要素409が、ダウンリンクカバーエリアの中の全ての地点に伝送するように説明され、及び/又は例示される。そのような説明は、L個全ての要素がかなりの信号レベルで信号を受信及び/又は伝送することが必要であることを意図しない。例えば、いくつかの事例において、L個の受信アンテナ要素406のサブセットは、アップリンク信号(例えば、ユーザ端末517からの復路アップリンク信号525、又はAN515からの往路アップリンク信号521)を受信し、よって、受信アンテナ要素406のサブセットは、アップリンク信号のピーク受信信号レベルに近い(例えば、最も高い信号レベルを有するアップリンク信号に対応する信号レベルよりも大幅に低くない)信号レベルでアップリンク信号を受信し、サブセットの中にないL個のアンテナ要素406の他のものは、かなり低い(例えば、アップリンク信号のピーク受信信号レベルよりもはるかに低い)レベルでアップリンク信号を受信する。いくつかの事例において、サブセットの各受信アンテナ要素によって受信されるアップリンク信号は、受信アンテナ要素406のいずれかによって受信される最大信号レベルの10dB以内の信号レベルである。いくつかの事例において、サブセットは、受信アンテナ要素406の少なくとも10%を含む。いくつかの事例において、サブセットは、少なくとも10個の受信アンテナ要素406を含む。
【0081】
例えば、伝送側において、L個の伝送アンテナ要素409のサブセットは、地球受信機にダウンリンク信号を(例えば、AN515に復路ダウンリンク信号527を、又はユーザ端末517に往路ダウンリンク信号522を)伝送し、よって、伝送アンテナ要素409のサブセットは、ダウンリンク信号のピーク伝送信号レベルに近い(例えば、最も高い受信信号レベルを有するダウンリンク信号に対応する信号レベルよりも大幅に低くない)受信信号レベルで受信機にダウンリンク信号を伝送し、サブセットの中にないL個の伝送アンテナ要素409の他のものは、かなり低い(例えば、ダウンリンク信号のピーク伝送信号レベルよりもはるかに低い)レベルで受信されるようにダウンリンク信号を伝送する。いくつかの事例において、信号レベルは、伝送アンテナ要素409のピークゲインに対応する信号レベルの3dB以内にある。他の事例において、信号レベルは、伝送アンテナ要素409のピークゲインに対応する信号レベルの6dB以内にある。更に他の事例において、信号レベルは、伝送アンテナ要素409のピークゲインに対応する信号レベルの10dB以内にある。
【0082】
いくつかの事例において、各受信アンテナ要素406によって受信される信号は、各受信アンテナ要素の受信アンテナパターンにおける重なりのため、同じ源(例えば、ユーザ端末517の1つ)において生じる。しかしながら、いくつかの事例では、ユーザ端末が位置付けられ、受信アンテナ要素の全てが信号を受信することができるとは限らない、エンドツーエンドリレーカバーエリア内の地点があり得る。いくつかのそのような事例では、エンドツーエンドリレーカバーエリア内にあるユーザ端末から信号を受信しない(又はできない)かなりの数の受信アンテナ要素があり得る。しかしながら、本明細書で説明されるように、エンドツーエンドリレー503によって多重経路を誘導することは、少なくとも2つの受信要素によって信号を受信することに依存することができる。
【0083】
図6に示され、下で更に詳細に論じられるように、いくつかの事例において、受信/伝送信号経路1702は、受信アンテナ要素406と、トランスポンダ410と、伝送アンテナ要素409とを備える。そのような事例において、復路アップリンク信号525は、それぞれの受信アンテナ要素406を介して、複数のトランスポンダ410の各々によって受信される。各受信/伝送信号経路1702の出力は、受信復路アップリンク信号のそれぞれの複合物に対応する復路ダウンリンク信号527である。復路ダウンリンク信号は、受信/伝送信号経路1702によって作成される。復路ダウンリンク信号527は、M個のAN515のアレイに伝送される。いくつかの事例において、AN515は、エンドツーエンドリレーカバーエリアの全体を通して、地理的に分布した場所(例えば、受信又は復元場所)に配置される。いくつかの事例において、各トランスポンダ410は、受信アンテナ要素406のそれぞれ1つを伝送アンテナ要素409のそれぞれ1つに結合させる。故に、ユーザビームカバーエリア519の中に位置付けられるユーザ端末517から特定のAN515への、L個の異なる信号の進路がある。これは、ユーザ端末517とAN515との間にL個の経路を作成する。1つのユーザ端末517と1つのAN515と間のL個の経路は、集合的にエンドツーエンド復路多重経路チャネル1908と称される(図8を参照されたい)。故に、ユーザビームカバーエリア519内の伝送場所から、L個のトランスポンダ410を通して、復路アップリンク信号525を受信することは、トランスポンダ410の1つから(すなわち、L個の並置された通信経路を通して)各々が伝送される、L個の復路ダウンリンク信号527を作成する。各エンドツーエンド復路多重経路チャネル1908は、アップリンク放射マトリックスのベクトルA、ペイロードマトリックスE、及びダウンリンク放射マトリックスのベクトルCと関連付けられる。アンテナ要素のカバーパターンのため、いくつかの事例において、L個の経路のうちのいくつかは、比較的少ないエネルギー(例えば、6dB、10dB、20dB、30dB、又は他の経路よりも少ない任意の他の適切な電力比)を有することに留意されたい。復路ダウンリンク信号527の重畳されたもの1706は、AN515の各々(例えば、M個の地理的に分布した受信又は復元場所)で受信される。各復路ダウンリンク信号527は、複数の伝送復路ダウンリンク信号527の重畳されたものを含み、それぞれの複合復路信号をもたらす。それぞれの複合復路信号は、復路ビーム形成器531に結合される(図5及び図29を参照されたい)。
【0084】
図7は、ユーザビームカバーエリア519内に位置付けられる1つのユーザ端末517からAN515への、例示的なエンドツーエンドリターンリンク523を例示する。ユーザ端末517から伝送される復路アップリンク信号525は、エンドツーエンドリレー503上のL個の受信アンテナ要素406のアレイによって受信される(例えば、又はL個の受信アンテナ要素406のサブセットによって受信される)。
【0085】
Arは、L×K個の復路アップリンク放射マトリックスである。復路アップリンク放射マトリックスの値は、ユーザビームカバーエリア519の中の基準場所からエンドツーエンドリレー受信アンテナ要素406への信号経路をモデル化する。例えば、ArL,1は、1番目のユーザビームカバーエリア519の中の基準場所からL番目の受信アンテナ要素への復路アップリンク放射マトリックス(すなわち、経路の振幅及び位相)の1つの要素の値である。いくつかの事例では、復路アップリンク放射マトリックスArの全ての値が非ゼロであり得る(例えば、基準場所から受信アンテナアレイの受信アンテナ要素の各々へのかなりの信号経路がある)。
【0086】
E(次元L×L)は、ペイロードマトリックスであり、また、受信アンテナ要素406から伝送アンテナ要素409への経路のモデル(振幅及び位相)を提供する。エンドツーエンドリレー503の「ペイロード」は、本明細書で使用するときに、一般に、エンドツーエンドリレー503の一組の構成要素を含み、該一組の構成要素は、信号通信がエンドツーエンドリレー503によって受信され、そこを通して中継され、そして、そこから伝送されるときに、該信号通信に影響を及ぼし、及び/又はそれによって影響を及ぼされる。例えば、エンドツーエンドリレーペイロードは、アンテナ要素、反射器、トランスポンダ、その他、を含むことができるが、エンドツーエンドリレーは、バッテリ、太陽電池、センサ、及び/又は(通常に動作したときに信号に影響を及ぼさないので)ペイロードの一部として本明細書で考慮されない他の構成要素を更に含むことができる。ペイロードとしての一組の構成要素の考慮事項は、(単一のペイロードマトリックスEとして)エンドツーエンドリレーの全体的な影響を数学的にモデル化することを可能にすることができることである。各受信アンテナ要素406から各対応する伝送アンテナ要素409への支配的な経路は、ペイロードマトリックスEの対角上にある値によってモデル化される。受信/伝送信号経路の間にいかなるクロストークもないとすれば、ペイロードマトリックスの非対角値は、ゼロである。いくつかの事例において、クロストークは、ゼロでない場合がある。信号経路を互いに分離することで、クロストークが最小になる。いくつかの事例において、クロストークがごく僅かであるので、ペイロードマトリックスEは、対角マトリックスによって推定することができる。いくつかの事例において、数学的な複雑さを低減させるために、及び/又は他の理由で、ペイロードマトリックスの非対角値に対応する何らかの信号の影響がある場合であっても、そうした値(又は任意の他の適切な値)をゼロとして扱うことができる。
【0087】
Ctは、M×L個のダウンリンク放射マトリックスである。復路ダウンリンク放射マトリックスの値は、伝送アンテナ要素409からAN515への信号経路をモデル化する。例えば、Ct3,2は、2番目の伝送アンテナ要素409から3番目のAN515への復路ダウンリンク放射マトリックス(例えば、経路のゲイン及び位相)の値である。いくつかの事例では、ダウンリンク放射マトリックスCtの全ての値が非ゼロであり得る。いくつかの事例において、ダウンリンク放射マトリックスCtの値のいくつかは、本質的にゼロである(例えば、伝送アンテナアレイの対応する伝送アンテナ要素409によって確立されるアンテナパターンは、伝送アンテナ要素409が、AN515のいくつかに有用な信号を伝送しない程度である)。
【0088】
図7で分かるように、特定のユーザビームカバーエリア519の中のユーザ端末517から特定のAN515へのエンドツーエンド復路多重経路チャネルは、L個の異なる経路の加算である。エンドツーエンド復路多重経路チャネルは、エンドツーエンドリレーのトランスポンダ410を通して、L個の固有の経路によって誘導される多重経路を有する。多くの多重経路チャネルと同様に、経路の振幅及び位相は、好都合に(構築的に)加算して、高いエンドツーエンドチャネルゲインを生成するか、又は不都合に(破壊的に)低いエンドツーエンドチャネルゲインを生成することができる。ユーザ端末とANとの間の異なる経路の数Lが多いときに、エンドツーエンドチャネルゲインは、振幅のレイリー分布を有し得る。そのような分布に関しては、ユーザ端末517からAN515へのチャネルゲインの平均レベルを20dB以上下回る、特定のユーザ端末517から特定のAN515への幾らかのエンドツーエンドチャネルゲインが見られることも珍しくない。このエンドツーエンドビーム形成システムは、任意のユーザ端末から任意のANへのエンドツーエンド経路の多重経路環境を意図的に誘導する。
【0089】
図8は、ユーザビームカバーエリア519からAN515への全てのエンドツーエンド復路多重経路チャネルの例示的なモデルの簡略図である。エンドツーエンド復路リンクには、M×K個のそのようなエンドツーエンド復路多重経路チャネルがある(すなわち、K個のユーザビームカバーエリア519の各々からM個)。チャネル1908は、1つのユーザビームカバーエリア519の中のユーザ端末を、L個の異なる受信/伝送信号経路1702を通じて1つのAN515に接続し、各経路は、リレーのL個の受信/伝送信号経路(及び関連付けられるトランスポンダ)のうちの異なる1つを経由する。この効果は、本明細書において「多重経路」と称されるが、この多重経路は、本明細書の多重経路がL個の受信/伝送信号経路によって意図的に誘導される(そして、本明細書で説明されるように、影響を及ぼされる)ので、従来の(例えば、モバイルラジオ又は多重入力多重出力(MIMO)システムにおける)多重経路と異なる。特定のユーザビームカバーエリア519内のユーザ端末517から生じるM×K個のエンドツーエンド復路多重経路チャネルの各々は、エンドツーエンド復路多重経路チャネルによってモデル化することができる。各々のそのようなエンドツーエンド復路多重経路チャネルは、ユーザビームカバーエリア519内の基準(又は復元)場所からAN515の1つまでである。
【0090】
M×K個のエンドツーエンド復路多重経路チャネル1908の各々は、個々にモデル化して、M×K個の復路チャネルマトリックスHretの対応する要素を計算することができる。復路チャネルマトリックスHretは、M個に等しい次元数を各々が有するK個のベクトルを有し、よって、各ベクトルは、K個のユーザビームカバーエリアのうちの1つの中の基準場所と、M個のAN515との間の多重経路通信のためのエンドツーエンド復路チャネルゲインをモデル化する。各エンドツーエンド復路多重経路チャネルは、L個のトランスポンダ410を介して、M個のAN515のうちの1つを、K本の復路ユーザビームのうちの1つの中の基準場所と結合させる(図7を参照されたい)。いくつかの事例では、エンドツーエンドリレー503上のL個のトランスポンダ410のサブセットだけを使用して、エンドツーエンド復路多重経路チャネルを作成する(例えば、かなりのエネルギーをエンドツーエンド復路多重経路チャネルに貢献させることによって、サブセットだけが、信号経路の中にあるとみなす)。いくつかの事例において、ユーザビームの数Kは、エンドツーエンド復路多重経路チャネルの信号経路の中にあるトランスポンダの数Lよりも多い。更に、いくつかの事例において、ANの数Mは、エンドツーエンド復路多重経路チャネル1908の信号経路の中にあるトランスポンダの数Lよりも多い。一実施例において、復路チャネルマトリックスHretの要素Hret4,2は、第2のユーザビームカバーエリア1903の中の基準場所から第4のAN1901へのチャネルと関連付けられる。マトリックスHretは、マトリックスCt×E×Arの積としてエンドツーエンドチャネルをモデル化する(図6を参照されたい)。Hretの各要素は、1つのエンドツーエンド復路多重経路チャネル1908のエンドツーエンドゲインをモデル化する。チャネルの多重経路の性質のため、チャネルは、深いフェードを受け得る。復路ユーザビームは、CPS505によって形成することができる。CPS505は、これらのM×K個の信号経路のモデルに基づいて復路ビーム加重値を計算し、復路ビーム加重値を複数の複合復路信号に適用することによって復路ユーザビームを形成し、各加重値は、1つのユーザビームカバーエリアの中のユーザ端末517を複数のAN515のうちの1つと結合させる各エンドツーエンド復路多重経路チャネルについて計算される。いくつかの事例では、複合復路信号を受信する前に復路ビーム加重値が計算される。K個のユーザビームカバーエリア519の各々からM個のAN515へは、1つのエンドツーエンド復路リンクがある。M個のAN515によって受信される信号の各々の加重(すなわち、複雑な相対位相/振幅)は、地上セグメント502内のCPS505のビーム形成能力を使用して、そうした信号を組み合わせて、復路ユーザビームを形成することを可能にする。ビーム加重マトリックスの計算は、下でより詳細に説明されるように、各エンドツーエンド復路多重経路チャネル1908にどのように加重して、複数の復路ユーザビームを形成するのかを決定するために使用される。ユーザビームは、一方のエンドツーエンドリレーアンテナ要素によって伝送される信号の位相及び振幅に対する、もう一方のエンドツーエンドリレーアンテナ要素によって伝送される信号の相対位相及び振幅を直接調整することによって形成されない。むしろ、ユーザビームは、M×K個のチャネルマトリックスと関連付けられる加重値をM個のAN信号に適用することによって形成される。受信経路の多様性、単一の伝送機(ユーザ端末)を複数の受信機(AN)に提供して、意図的に誘導された多重経路チャネルの存在下で、任意のユーザ端末からの情報の伝送を成功させることを可能にする、複数のANである。
往路データ
【0091】
図9は、エンドツーエンド往路リンク501上で往路データを搬送する信号の信号経路の例示的なモデルの説明図である。往路データは、AN515からユーザ端末517に流れるデータである。この図において、信号は、右から左に流れる。信号は、エンドツーエンドリレー503のフットプリントの中に位置付けられるM個のAN515によって生じる。K個のユーザビームカバーエリア519がある。各AN515からの信号は、L個の受信/伝送信号経路2001によってリレーされる。
【0092】
受信/伝送信号経路2001は、ユーザビームカバーエリア519の中のユーザ端末517に、リレーされた信号を伝送する。故に、特定のAN515から、ユーザビームカバーエリア519の中に位置付けられるユーザ端末517への、L個の異なる信号の進路があり得る。これは、各AN515と各ユーザ端末517との間にL個の経路を作成する。アンテナ要素のカバーパターンのため、L個の経路のうちのいくつかは、他の経路よりも少ないエネルギーを有し得ることに留意されたい。
【0093】
図10は、エンドツーエンドリレー503を介して、地理的に分布した場所の複数のアクセスノードを、(例えば、ユーザビームカバーエリア519内の復元場所に位置付けられる)ユーザビームの中のユーザ端末517と結合させる、例示的なエンドツーエンド往路リンク501を例示する。いくつかの事例では、往路アップリンク信号を発生させる前に、往路データ信号がビーム形成器において受信される。複数の往路アップリンク信号は、ビーム形成器において発生され、複数のAN515に通信される。例えば、各AN515は、そのAN515に対応するビーム加重値に従って発生される固有の(ビーム加重)往路アップリンク信号を受信する。各AN515は、M個のアップリンクのうちの1つを介して、往路アップリンク信号を伝送する出力を有する。各往路アップリンク信号は、往路ユーザビームと関連付けられる往路データ信号を含む。往路データ信号は、ユーザビームによってサービスを提供されるユーザ端末517によって受信されることを意図するので、往路ユーザビームと「関連付けられる」。いくつかの事例において、往路データ信号は、2つ以上のユーザデータストリームを備える。ユーザデータストリームは、時分割又は周波数分割多重化、その他、によって、共に多重化することができる。いくつかの事例において、各ユーザデータストリームは、同じ往路ユーザビーム内の複数のユーザ端末のうちの1つ又は2つ以上に伝送するためのものである。
【0094】
下で更に詳細に論じられるように、各往路アップリンク信号は、AN515のそのそれぞれの送信によって、時間同期した様式で伝送される。AN515から伝送される往路アップリンク信号521は、エンドツーエンドリレー503上の受信アンテナ要素406を介して、エンドツーエンドリレー503上の複数のトランスポンダ410によって受信される。地理的に分布した場所から受信される往路アップリンク信号521の重畳されたもの550が、複合入力往路信号545を作成する。各トランスポンダ410は、複合入力往路信号545を同時に受信する。しかしながら、各トランスポンダ410は、各トランスポンダ401と関連付けられる受信アンテナ要素406の場所の違いのため、僅かに異なるタイミングで信号を受信する。
【0095】
Crは、L×M個の往路アップリンク放射マトリックスである。往路アップリンク放射マトリックスの値は、AN515から受信アンテナ要素406への信号経路(振幅及び位相)をモデル化する。Eは、L×L個のペイロードマトリックスであり、受信アンテナ要素406から伝送アンテナ要素409へのトランスポンダの信号経路のモデルを提供する。複数のトランスポンダのうちの対応する1つを通した、各受信アンテナ要素406から各対応する伝送アンテナ要素409への直接経路ゲインは、ペイロードマトリックスの対角値によってモデル化される。復路リンクに関して上で述べたように、アンテナ要素の間にいかなるクロストークもないとすれば、ペイロードマトリックスの非対角要素は、ゼロである。いくつかの事例において、クロストークは、ゼロでない場合がある。信号経路を互いに分離することで、クロストークが最小になる。この実施例において、トランスポンダ410の各々は、受信アンテナ要素406のそれぞれ1つを伝送アンテナ要素409のそれぞれ1つに結合させる。故に、トランスポンダ410の各々から出力される往路ダウンリンク信号522は、伝送アンテナ要素409を介して、複数のトランスポンダ410(図9を参照されたい)の各々によって伝送され、よって、往路ダウンリンク信号522は、(所望の地理的復元場所において構築的に、及び破壊的に重畳して、ビームを形成することによって)往路ユーザビームを形成する。いくつかの事例では、ユーザビームカバーエリア519内でそれぞれ一組のユーザ端末517にサービスを提供する地理的ユーザビームカバーエリア519に各々が対応する、複数のユーザビームが形成される。第1の伝送アンテナ要素409a(図10を参照されたい)から第1のユーザビームカバーエリア519の中の基準(又は復元)場所への経路は、往路ダウンリンク放射マトリックスのAt11の値で与えられる。復路リンクに関して述べたように、このエンドツーエンドビーム形成システムは、任意のAN515から任意のユーザ端末517へのエンドツーエンド経路の多重経路環境を意図的に誘導する。いくつかの事例において、伝送アンテナ要素409のサブセットは、かなりのエネルギーによってユーザ端末517に往路ダウンリンク信号522を伝送する。ユーザ端末517(又は、より一般に、受信及び/又は復元のためのユーザビームカバーエリア519の中の受信又は復元場所)は、複数の往路ダウンリンク信号522を受信し、受信した複数の往路ダウンリンク信号522から、往路データ信号の少なくとも一部分を復元する。伝送された往路ダウンリンク信号522は、サブセット内の伝送アンテナ要素409によって伝送される他の信号のいずれかからの最大信号レベルの10dB以内である信号レベルで、ユーザ端末517によって受信することができる。いくつかの事例において、伝送アンテナ要素のサブセットは、エンドツーエンドリレー503に存在する複数の伝送アンテナ要素の少なくとも10%を含む。いくつかの事例において、伝送アンテナ要素のサブセットは、何個の伝送アンテナ要素409がエンドツーエンドリレー503に存在するかにかかわらず、少なくとも10個の伝送アンテナ要素を含む。1つの事例において、複数の往路ダウンリンク信号を受信することは、複数の往路ダウンリンク信号の重畳されたもの551を受信することを含む。
【0096】
図11は、M個のAN515からK個のユーザビームカバーエリア519への全てのエンドツーエンド往路多重経路チャネル2208のモデルの簡略説明図である。図11に示されるように、各AN515を各ユーザビームカバーエリア519に結合させる、エンドツーエンド往路多重経路チャネル2208がある。1つのAN515から1つのユーザビームカバーエリア519への各チャネル2208は、複数のトランスポンダを通してAN515からユーザビームカバーエリア519へのL個の固有の経路の結果として誘導される多重経路を有する。したがって、K×M個の多重経路チャネル2208は、個々にモデル化されることができ、各々のモデルは、K×M個の往路チャネルマトリックスHfwdの要素としての役割を果たす。往路チャネルマトリックスHfwdは、K個に等しい次元数を各々が有するM個のベクトルを有し、よって、各ベクトルは、M個のAN515のそれぞれ1つと、K個の往路ユーザビームカバーエリアの中の基準(又は復元)場所との間の多重経路通信のエンドツーエンド往路ゲインをモデル化する。各エンドツーエンド往路多重経路チャネルは、L個のトランスポンダ410を介して、M個のAN515のうちの1つを、K個の往路ユーザビームのうちの1つによってサービスを提供されるユーザ端末517と結合させる(図10を参照されたい)。いくつかの事例において、エンドツーエンドリレー503上のL個のトランスポンダ410のサブセットだけが、エンドツーエンド往路多重経路チャネルを作成するために使用される(すなわち、エンドツーエンド往路多重経路チャネルの信号経路の中にある)。いくつかの事例において、ユーザビームの数Kは、エンドツーエンド往路多重経路チャネルの信号経路の中にあるトランスポンダの数Lよりも多い。更に、いくつかの事例において、ANの数Mは、エンドツーエンド往路多重経路チャネルの信号経路の中にあるトランスポンダの数Lよりも多い。
【0097】
Hfwdは、マトリックスAt×E×Crの積としてエンドツーエンド往路リンクを表すことができる。Hfwdの各要素は、経路の多重経路の性質のため、エンドツーエンド往路ゲインであり、深いフェードを受け得る。適切なビーム加重値は、地上セグメント502内のCPS505によって、複数のエンドツーエンド往路多重経路チャネル2208の各々について計算して、一組のM個のAN515から各ユーザビームカバーエリア519への往路ユーザビームを形成することができる。複数のAN515は、複数の伝送機(AN)を使用することによって伝送経路のダイバーシティを単一の受信機(ユーザ端末)に提供して、意図的に誘導された多重経路チャネルの存在下で、任意のユーザ端末517への情報の伝送を成功させることを可能にする。
組み合わせた往路及び復路データ
【0098】
図12は、往路及び復路通信をサポートする例示的なエンドツーエンドリレーを例示する。いくつかの事例において、同じエンドツーエンドリレー信号経路(例えば、一組の受信アンテナ要素、トランスポンダ、及び伝送アンテナ要素)を、エンドツーエンド往路リンク501及びエンドツーエンド復路リンク523に使用することができる。いくつかの他の事例としては、受信及び伝送アンテナ要素を共有する場合もあれば、しない場合もある、往路リンクトランスポンダ及び復路リンクトランスポンダが挙げられる。いくつかの事例において、システム1200は、同じ一般の地理的地域1208(例えば、特定の州、国全体、地域、可視エリア全体、又は任意の他の適切な地理的地域1208であり得る)の中に位置付けられる、複数のANと、ユーザ端末とを有する。単一のエンドツーエンドリレー1202(衛星又は任意の他の適切なエンドツーエンドリレー上に配置される)は、ANから往路アップリンク信号521を受信し、ユーザ端末に往路ダウンリンク信号522を伝送する。代替の時間に、又は代替の周波数で、エンドツーエンドリレー1202はまた、ユーザ端末から復路アップリンク信号525を受信し、ANに復路ダウンリンク信号527を伝送する。いくつかの事例において、エンドツーエンドリレー1202は、時間領域二重化、周波数領域二重化、及び同類のものなどの技術を使用して、往路データと復路データとの間で共有される。いくつかの事例において、往路データと復路データとの間の時間領域二重化は、同じ周波数範囲を使用し、往路データは、復路データを伝送するために使用される時間間隔と異なる(重ならない)時間間隔の間に伝送される。いくつかの事例において、周波数領域二重化によって、異なる周波数が、往路データ及び復路データに使用され、それによって、往路データ及び復路データの同時の不干渉伝送を可能にする。
【0099】
図13は、2つの部分に分割されているアップリンク周波数範囲の説明図である。この範囲のより低い周波数(左)部分は、往路アップリンクに割り当てられ、この範囲のより高い周波数(右)部分は、復路アップリンクに割り当てられる。アップリンク範囲は、往路データ又は復路データのいずれかの複数の部分に分割することができる。
【0100】
図14は、時分割多重化される往路データ及び復路データの説明図である。データフレーム期間が示され、該期間において、往路データは、フレームの最初の時間間隔の間に輸送され、一方で、復路データは、フレームの最後の時間間隔の間に輸送される。エンドツーエンドリレーは、第1の(往路)受信時間間隔の間に1つ又は2つ以上のアクセスノードから受信し、第1の受信時間間隔と重ならない第2の(復路)受信時間間隔の間に1つ又は2つ以上のユーザ端末から受信する。エンドツーエンドリレーは、第1の(往路)伝送時間間隔の間に1つ又は2つ以上のユーザ端末に伝送し、第1の受信時間間隔と重ならない第2の(復路)伝送時間間隔の間に1つ又は2つ以上のアクセスノードに伝送する。データフレームは、繰り返すことができ、又は動的に変化させることができる。フレームは、往路データ及び復路データのために、複数の(例えば、隣接しない)部分に分割することができる。
エンドツーエンドビーム形成衛星
【0101】
いくつかの事例において、エンドツーエンドリレー503は、衛星上に実現され、よって、衛星は、AN(そのような事例では、衛星アクセスノード(SAN)と称することができる)からユーザ端末に、及びその逆に信号をリレーするために使用される。いくつかの事例において、衛星は、静止軌道にある。エンドツーエンドリレーとして動作する例示的な人工衛星は、受信アンテナ要素のアレイと、伝送アンテナ要素のアレイと、受信アンテナ要素を伝送アンテナ要素に接続するいくつかのトランスポンダとを有する。アレイは、従来の単一リンクの位相アレイアンテナに類似する、重複アンテナ要素カバーエリアを有する多数のアンテナ要素を有する。それは、先に説明した多重経路環境を作成する、伝送アンテナ要素及び受信アンテナ要素の両方の重複アンテナ要素カバーエリアである。いくつかの事例において、対応するアンテナ要素によって確立されるアンテナパターン、及び重複アンテナ要素カバーエリアをもたらすアンテナパターン(例えば、重複構成要素ビームアンテナパターン)は、同一である。本開示の目的で、「同一の」という用語は、アンテナ要素を空間におけるその地点を示すための基準地点と見なして、アンテナパターンが空間における所与の一組の地点にわたって本質的に同じ電力分布に従っていることを意味する。完全に同一にすることは、非常に難しい。したがって、一方のパターンからもう一方への比較的少ない偏差を有するパターンは、「同一の」パターンの範囲内である。他の事例において、受信構成要素ビームアンテナパターンは、同一でない場合があり、実際には、かなり異なる場合がある。しかしながら、そのようなアンテナパターンは、それでも重複アンテナ要素カバーエリアをもたらすことができるが、結果として生じるカバーエリアは、同一にならない。
【0102】
アンテナタイプとしては、アレイフィード反射器、共焦点アレイ、直接放射アレイ、及び他の形態のアンテナアレイが挙げられるが、これらに限定されない。各アンテナは、1つ又は2つ以上の反射器などの、信号の受信及び/又は伝送を支援するための追加的な光学的構成要素を含むシステムとすることができる。いくつかの事例において、衛星は、システムタイミング調整及びビーム形成較正を支援する構成要素を含む。
【0103】
図15は、エンドツーエンドリレー503として使用することができる例示的な人工衛星1502の線図である。いくつかの事例において、衛星1502は、アレイフィード反射器伝送アンテナ401と、アレイフィード反射器受信アンテナ402とを有する。受信アンテナ402は、受信反射器(図示せず)と、受信アンテナ要素406のアレイとを備える。受信アンテナ要素406は、受信反射器によって照射される。伝送アンテナ401は、伝送反射器(図示せず)と、伝送アンテナ要素409のアレイとを備える。伝送アンテナ要素409は、伝送反射器に照射するように配設される。いくつかの事例では、受信及び伝送の両方に同じ反射器が使用される。いくつかの事例では、アンテナ要素の1つのポートが受信に使用され、別のポートが伝送に使用される。いくつかのアンテナは、異なる偏波の信号を区別する能力を有する。例えば、アンテナ要素は、右旋円偏波(RHCP)受信、左旋円偏波(LHCP)受信、RHCP伝送、及びLHCP伝送のための4つの導波管ポートをそれぞれ含むことができる。いくつかの事例では、システムの容量を増加させるために二重偏波を使用することができ、他の事例では、(例えば、異なる偏波を使用する他のシステムとの)干渉を低減させるために単一偏波を使用することができる。
【0104】
例示的な衛星1502はまた、複数のトランスポンダ410も備える。トランスポンダ410は、1つの受信アンテナ要素406からの出力を伝送アンテナ要素409の入力に接続する。いくつかの事例において、トランスポンダ410は、受信した信号を増幅する。各受信アンテナ要素は、固有の受信信号を出力する。いくつかの事例において、受信アンテナ要素406のサブセットは、復路リンク信号の事例でのユーザ端末517又は往路リンク信号の事例でのAN515などの、地球伝送機から信号を受信する。これらの事例のうちのいくつかにおいて、受信信号のためのサブセットにおける各受信アンテナ要素のゲインは、比較的小さい範囲内である。いくつかの事例において、その範囲は、3dBである。他の事例において、その範囲は、6dBである。更に他の事例において、その範囲は、10dBである。故に、衛星は、衛星の複数の受信アンテナ要素406の各々において信号を受信し、地球伝送機から通信信号が生じ、よって、受信アンテナ要素406のサブセットは、受信アンテナ要素406のピークゲインに対応する信号レベルよりも大幅に少なくない信号レベルで、通信信号を受信する。
【0105】
いくつかの事例では、少なくとも10個のトランスポンダ410が、衛星1502内に提供される。他の事例では、少なくとも100のトランスポンダ410が衛星1502内に提供される。更に別の事例において、1つの極性あたりのトランスポンダの数は、2、4、8、16、32、64、128、256、512、1024個の範囲、又は中間若しくはそれ以上の数とすることができる。いくつかの事例において、トランスポンダ410は、低雑音増幅器(LNA)412と、周波数変換器及び関連付けられるフィルタ414と、電力増幅器(PA)420とを含む。アップリンク周波数及びダウンリンク周波数が同一であるいくつかの事例において、トランスポンダは、周波数変換器を含まない。他の事例では、複数の受信アンテナ要素が第1の周波数で動作する。各受信アンテナ要素406は、1つのトランスポンダ410と関連付けられる。受信アンテナ要素406は、LNA412の入力に結合される。故に、LNAは、トランスポンダ410と関連付けられる受信アンテナ要素によって提供される固有の受信信号を独立に増幅する。いくつかの事例において、LNA412の出力は、周波数変換器414に結合される。周波数変換器414は、増幅信号を第2の周波数に変換する。
【0106】
トランスポンダの出力は、伝送アンテナ要素の関連付けられる1つに結合される。これらの実施例では、トランスポンダ410と、関連付けられる受信アンテナ要素406と、関連付けられる伝送アンテナ要素409との間には、1対1の関係があり、よって、各受信アンテナ要素406の出力は、唯一のトランスポンダの入力に接続され、そのトランスポンダの出力は、唯一の伝送アンテナ要素の入力に接続される。
【0107】
図16は、例示的なトランスポンダ410の説明図である。トランスポンダ410は、上で説明したように、エンドツーエンドリレー503のトランスポンダの一実施例とすることができる、(例えば、図15の衛星1502)。この実施例において、トランスポンダは、低雑音増幅器(LNA)412、周波数変換器及び関連付けられるフィルタ414、並びにトランスポンダ410の電力増幅器(PA)に加えて、位相シフタ418を含む。図16に例示されるように、例示的なトランスポンダ410はまた、位相シフトコントローラ427とも結合させることができる。例えば、位相シフトコントローラ427は、エンドツーエンドリレー503のトランスポンダのいくつか又は全ての各々に(直接的又は間接的に)結合させることができ、よって、位相シフトコントローラ427は、各トランスポンダについて位相を個々に設定することができる。位相シフタは、例えば、下で論じられるように、較正に有用であり得る。
アンテナ
【0108】
多重経路環境を作成するために、アンテナ要素カバーエリアは、同じ極性、周波数、及びタイプの(それぞれ伝送又は受信の)少なくとも1つの他のアンテナ要素のアンテナ要素カバーエリアと重ねることができる。いくつかの事例では、複数の受信構成要素ビームアンテナパターンが、同じ受信偏波及び受信周波数(例えば、共通の受信周波数の少なくとも一部を有する)で動作可能であり、互いに重なる。例えば、いくつかの事例では、受信構成要素ビームアンテナパターンの少なくとも25%が、同じ受信偏波及び受信周波数(例えば、共通の受信周波数の少なくとも一部を有する)で動作可能であり、受信アンテナ要素の少なくとも5つの他の受信構成要素ビームアンテナパターンと重なる。同様に、いくつかの事例では、伝送構成要素ビームアンテナパターンの少なくとも25%が、同じ伝送偏波及び伝送周波数(例えば、共通の伝送周波数の少なくとも一部を有する)で動作可能であり、少なくとも5つの他の伝送構成要素ビームアンテナパターンと重なる。重なりの量は、システムによって異なる。いくつかの事例では、受信アンテナ要素406の少なくとも1つが、同じ受信周波数(例えば、共通して受信周波数の少なくとも一部を有する)及び同じ受信偏波で動作可能である、他の受信アンテナ要素406のアンテナパターンと重なる、構成要素ビームアンテナパターンを有する。したがって、複数の受信アンテナ要素のうちの少なくともいくつかは、同じ源から同じ信号を受信することができる。同様に、伝送アンテナ要素409の少なくとも1つが、同じ伝送周波数(例えば、共通して伝送周波数の少なくとも一部を有する)及び伝送偏波で動作可能である、他の伝送アンテナ要素409のアンテナパターンと重なる、構成要素ビームアンテナパターンを有する。したがって、複数の伝送アンテナ要素のうちの少なくともいくつかは、同じ偏波で同じ周波数を有する信号を同じ受信機に伝送することができる。いくつかの事例において、重複構成要素ビームアンテナパターンは、共通の地理的エリアにわたって3dB未満(又は任意の他の適切な値)だけ異なるゲインを有することができる。アンテナ要素は、受信又は伝送にかかわらず、幅広い構成要素ビームアンテナパターンを有し、したがって、比較的幅広いアンテナ要素カバーエリアを有することができる。いくつかの事例において、ユーザ端末517又はアクセスノード515などの地球伝送機によって伝送される信号は、エンドツーエンドリレー(例えば、衛星)の全ての受信アンテナ要素406によって受信される。いくつかの事例では、要素406のサブセットが、地球伝送機から信号を受信する。いくつかの事例において、サブセットは、受信アンテナ要素の少なくとも50%を含む。他の事例において、サブセットは、受信アンテナ要素の少なくとも75%を含む。更に他の事例において、サブセットは、受信アンテナ要素の少なくとも90%(例えば、全てを含むそれ以下)を含む。受信アンテナ要素406の異なるサブセットは、異なる地球伝送機から信号を受信することができる。同様に、いくつかの事例において、要素409のサブセットは、ユーザ端末517によって受信することができる信号を伝送する。いくつかの事例において、サブセットは、伝送アンテナ要素の少なくとも50%を含む。他の事例において、サブセットは、伝送アンテナ要素の少なくとも75%を含む。更に他の事例において、サブセットは、伝送アンテナ要素の少なくとも90%を含む(例えば、最大で、及び全てを含む)。要素409の異なるサブセットは、異なるユーザ端末によって受信される信号を伝送することができる。更に、ユーザ端末は、いくつかの形成されたユーザビームカバーエリア519内にあり得る。本開示の目的で、アンテナパターンは、アンテナに伝送される、又はそこから受信されるエネルギーの分布パターンである。いくつかの事例において、エネルギーは、アンテナ要素から、及びそこに直接放射することができる。他の事例において、1つ又は2つ以上の伝送アンテナ要素からのエネルギーは、アンテナ要素パターンを成形する1つ又は2つ以上の反射器によって反射することができる。同様に、受信要素は、直接的に、又はエネルギーが1つ又は2つ以上の反射器に反射した後に、エネルギーを受信することができる。いくつかの事例において、アンテナは、対応するアンテナ要素カバーエリアを確立する構成要素ビームアンテナパターンを各々が有する、いくつかの要素で構成することができる。同様に、信号をAN515と伝送及び受信する受信及び伝送アンテナ要素の全て又はサブセットは、重なることができ、よって、複数の受信アンテナ要素が、同じAN515から信号を受信し、及び/又は複数の伝送アンテナ要素が、同じAN515に信号を伝送する。
【0109】
図17は、3dBの地点で交差するいくつかのアンテナ要素(受信アンテナ要素406又は伝送アンテナ要素409のいずれか)によって生成される、構成要素ビームアンテナパターンの説明図である。第1のアンテナ要素の構成要素ビームアンテナパターン1301は、ボアサイト1303に沿って、ピーク構成要素ビームアンテナゲインを有する。構成要素ビームアンテナパターン1301は、それが構成要素ビームアンテナパターン1305と交差する前に、約3dB減衰することが示される。2つの隣接する構成要素ビームアンテナパターンの各対が、構成要素ビームアンテナパターンの比較的小さい部分だけにわたって3dB線1307の周りで重なるので、これらの構成要素ビームアンテナパターンを生成するアンテナ要素は、重なっていないとみなされる。
【0110】
図18は、文字「x」で示されるピークゲインを有するいくつかの要素406、409の理想的な3dBのアンテナ輪郭部3901、3902、3903を示す。輪郭部3901、3902、3903は、簡潔にするために輪郭部が円形で示されるので、本明細書では「理想的」と称される。しかしながら、輪郭部3901、3902、3903は、円形である必要はない。各輪郭部は、伝送信号又は受信信号がピークレベルよりも3dB低い場所を示す。輪郭部の外側で、信号は、ピークよりも3dB以上低い。輪郭部の内側で、信号は、ピークのよりも3dB未満低い(すなわち、ピークの3dB以内である)。受信構成要素ビームアンテナパターンのカバーエリアが全ての地点であり、該地点について、受信構成要素ビームアンテナゲインがピーク受信構成要素ビームアンテナゲインの3dB以内であるシステムにおいて、輪郭部の内側のエリアは、アンテナ要素カバーエリアと称される。各要素406、409の3dBのアンテナ輪郭部は、重なっていない。すなわち、3dBのアンテナ輪郭部3901の内側のエリアの比較的小さい部分だけが、隣接する3dBのアンテナパターン3902、3903の内側であるエリアと重なる。
【0111】
図19は、いくつかのアンテナ要素(受信アンテナ要素406又は伝送アンテナ要素409のいずれか)のアンテナパターン1411、1413、1415の説明図である。図17の構成要素ビームアンテナパターンとは対照的に、図19に示される構成要素ビームアンテナパターンは、3dB線1307の上側で1417と交差する。
【0112】
図20A図20Eは、文字「x」で示されるビーム中央点(ピークゲイン)を有するいくつかのアンテナ要素406、409の3dBのアンテナ輪郭部を例示する。図20Aは、第1のアンテナ要素406の特定のアンテナ輪郭部1411を示す。図20Bは、2つの特定の要素406の3dBのアンテナ輪郭部1411、1413を示す。図20Cは、3つの要素406の3dBのアンテナ輪郭部を示す。図20Dは、4つのアンテナ要素406の3dBのアンテナ輪郭部を示す。図20Eは、16個のアンテナ要素406のアレイの3dBのアンテナ輪郭部を示す。3dBのアンテナ輪郭部は、重なり1418を示す(例えば、16個のそのような3dBアンテナ輪郭部が示される)。受信アンテナ又は伝送アンテナのアンテナ要素は、いくつかの異なる構成のいずれかで配設することができる。例えば、要素が略円形のフィードホーンを有する場合、該要素は、ハニカム構成で配設して、該要素を小さい空間量の中に密に詰め込むことができる。いくつかの事例において、アンテナ要素は、水平行及び垂直列に整列される。
【0113】
図21は、受信アンテナ要素406と関連付けられる受信アンテナの3dBアンテナ輪郭部の相対位置の例示的な説明図である。要素406のビーム中央は、1~16の番号が付され、要素406は、ビーム中央の支持「x」の左上の数字の「4」によって識別される。いくつかの事例では、16個よりもかなり多くの受信アンテナ要素406がある。しかしながら、簡潔にするために、図21には、16個だけが示される。伝送アンテナ要素409及びそれらの関連付けられる3dBアンテナ輪郭部の対応するアレイは、図21に類似する外観になる。したがって、簡潔にするために、受信アンテナ要素406のアレイだけが示される。中央のエリア2101では、アンテナ要素カバーエリアの全てが重なっている。
【0114】
いくつかの事例において、リレーカバーエリア(例えば、衛星カバーエリア)内の少なくとも1つの地点は、いくつかのアンテナ要素406の構成要素ビームの3dBアンテナ輪郭部の範囲に入る。1つのこのような事例では、少なくとも1つの地点が、少なくとも100個の異なるアンテナ要素406の3dBアンテナ輪郭部内にある。別の事例では、リレーカバーエリアの少なくとも10%が、少なくとも30個の異なるアンテナ要素の3dBアンテナ輪郭部内にある。別の事例では、リレーカバーエリアの少なくとも20%が、少なくとも20個の異なるアンテナ要素の3dBアンテナ輪郭部内にある。別の事例では、リレーカバーエリアの少なくとも30%が、少なくとも10個の異なるアンテナ要素の3dBアンテナ輪郭部内にある。別の事例では、リレーカバーエリアの少なくとも40%が、少なくとも8つの異なるアンテナ要素の3dBアンテナ輪郭部内にある。別の事例では、リレーカバーエリアの少なくとも50%が、少なくとも4つの異なるアンテナ要素の3dBアンテナ輪郭部内にある。しかしながら、いくつかの事例では、これらの関係のうちの1つ以上が真であり得る。
【0115】
いくつかの事例において、エンドツーエンドリレーは、アップリンクリレーカバーエリアの中の地点の少なくとも25%が少なくとも6つの受信アンテナ要素406の重複カバーエリア内にある(例えば、かかる)、リレーカバーエリア(例えば、衛星カバーエリア)を有する。いくつかの事例では、アップリンクリレーカバーエリア内の地点の25%が、少なくとも4つの受信アンテナ要素406の重複カバーエリア内にある(例えば、かかる)。いくつかの事例において、エンドツーエンドリレーは、ダウンリンクリレーカバーエリアの中の地点の少なくとも25%が少なくとも6つの伝送アンテナ要素409の重複カバーエリア内にある(例えば、かかる)、カバーエリアを有する。いくつかの事例では、ダウンリンクリレーカバーエリア内の地点の25%が、少なくとも4つの伝送アンテナ要素409の重複カバーエリア内にある(例えば、かかる)。
【0116】
いくつかの事例において、受信アンテナ402は、いくつかの受信アンテナ要素カバーエリアが特定の伝送アンテナ要素カバーエリアに自然に対応することができるように、伝送アンテナ401とだいたい同じカバーエリアに向けることができる。これらの事例において、受信アンテナ要素406は、トランスポンダ410を介して、該受信アンテナ要素の対応する伝送アンテナ要素409にマッピングすることができ、各受信/伝送信号経路の類似する伝送及び受信アンテナ要素カバーエリアをもたらす。しかしながら、いくつかの事例では、受信アンテナ要素406を、同じ構成要素ビームカバーエリアに対応しない伝送アンテナ要素409にマッピングすることが有利であり得る。故に、受信アンテナ402の要素406を伝送アンテナ401の要素409にマッピングすることは、ランダムに(又は別様に)入れ替えることができる。そのような置換としては、アレイ内の同じ相対的な場所の中の、又は同じカバーエリアを有する伝送アンテナ要素409にマッピングされていない受信アンテナ要素406をもたらす事例が挙げられる。例えば、受信アンテナ要素アレイ内の各受信アンテナ要素406は、伝送アンテナ要素アレイのミラー場所に位置付けられる伝送アンテナ要素409と同じトランスポンダ410と関連付けることができる。任意の他の置換を使用して、置換に従って受信アンテナ要素406を伝送アンテナ要素409にマッピングすることができる(例えば、各受信アンテナ要素406を、関連付けられる伝送アンテナ要素409が受信アンテナ要素406及び伝送アンテナ要素409の特定の置換に従って結合される同じトランスポンダと対にする)。
【0117】
図22は、16個のトランスポンダ410を通した、受信アンテナ要素406の伝送アンテナ要素409への例示的なマッピングを示す表4200である。各トランスポンダ410は、関連付けられる受信アンテナ要素406に排他的に結合される入力と、関連付けられる伝送アンテナ要素409に排他的に結合される出力とを有する(例えば、各受信アンテナ要素406と、1つのトランスポンダ410と、1つの伝送アンテナ要素409との間には1対1の関係がある)。いくつかの事例において、他の受信アンテナ要素、トランスポンダ、及び伝送アンテナ要素は、1対1の関係で構成されない(また、エンドツーエンドビーム形成システムの一部として動作しない)エンドツーエンドリレー(例えば、衛星)上に存在することができる。
【0118】
表4200の第1の列4202は、トランスポンダ410を識別する。第2の列4204は、第1の列のトランスポンダ410が結合される、受信アンテナ要素406を識別する。表4200の第3の列4206は、トランスポンダ410の出力が結合される、関連付けられる伝送アンテナ要素409を識別する。各受信アンテナ要素406は、表4200の同じ行において識別されるトランスポンダ410の入力に結合される。同様に、各伝送アンテナ要素409は、表4200の同じ行において識別されるトランスポンダ410の出力に結合される。表4200の第3の列は、受信アンテナアレイの各受信アンテナ要素406が、伝送アンテナアレイ内の同じ相対的な場所の中の伝送アンテナ要素409と同じトランスポンダ410に結合される、ダイレクトマッピングの一実施例を示す。表4200の第4の列4208は、第1の受信アンテナ要素406が、第1のトランスポンダ410に、及び第10の伝送アンテナ要素409に結合される、インターリーブマッピングの一実施例を示す。第2の受信アンテナ要素406は、第2のトランスポンダ410に、及び第9の伝送アンテナ要素409に結合される、などである。いくつかの事例は、受信アンテナ要素406及び伝送要素409とトランスポンダ410との特定の対合がランダムに選択されるランダムマッピングを含む、他の置換を有する。
【0119】
各受信/伝送信号経路について伝送及び受信アンテナ要素カバーエリアをできる限り類似した状態に保とうとするダイレクトマッピングは、一般に、最も高い総容量のシステムをもたらす。ランダム置換及びインターリーブ置換は、一般に、僅かに少ない容量を生成するが、ANの故障、地上ネットワークにおけるファイバの故障、又はエンドツーエンドリレー上の(例えば、1つ又は2つ以上のトランスポンダにおける)電子的故障による受信/伝送信号経路の喪失に対してよりロバストなシステムを提供する。ランダム置換及びインターリーブ置換は、より低コストの非冗長ANを使用することを可能にする。ランダム置換及びインターリーブ置換はまた、最良に機能するビームの容量と最悪に機能するビームの容量との間のより少ない変動も提供する。ランダム置換及びインターリーブ置換はまた、最初に一部分のANだけによってシステムを動作させることにも有用であり、総容量の一部分だけしか利用できないが、カバーエリアにはいかなる損失ももたらさない。この一実施例は、配備されたANの50%だけで最初にシステムを動作させた場合の、ANの逐次的ロールアウトである。これは、全容量よりも少ない容量を提供し得るが、それでも、カバーエリア全体にわたる動作を可能にする。需要が増加するにつれて、全てのANがアクティブな状態で全容量が達成されるまで、より多くのANを配備して、容量を増加させることができる。いくつかの事例において、ANの構成の変更は、ビーム加重値の再計算をもたらす。構成の変更は、1つ又は2つ以上のANの数又は特徴を変更することを含み得る。これは、エンドツーエンド往路及び/又は復路ゲインの再推定を必要とし得る。
【0120】
いくつかの事例において、アンテナは、放物面反射器を有するアレイフィード反射アンテナである。他の事例において、反射器は、放物面形状を有しない。受信アンテナ要素406のアレイは、反射器によって反射された信号を受信するように配設することができる。同様に、伝送アンテナ要素409のアレイは、反射器に照射するためのアレイを形成するように配設することができる。重複構成要素ビームアンテナパターンを有する要素を提供するための1つの方法は、要素406、409を、反射器の焦点面を要素406、409のアレイの後方(又は前方)にすること(すなわち、受信アンテナアレイを、受信反射器の焦点面の外側に位置付けること)の結果として、脱合焦(非合焦)させることである。
【0121】
図23は、中央フィード放物面反射器1521の断面の説明図である。焦点1523は、反射器1521の中心軸1527に対して垂直である焦点面1525にある。中心軸1527に対して平行に反射器1521に当たる受信信号は、焦点1523に集束される。同様に、焦点に位置付けられるアンテナ要素から伝送され、反射器1521に当たる信号は、集束ビームにおいて、中心軸1527に対して平行に反射器1521から反射される。そのような配設は、各ビームの指向性を最大にし、また、隣接するフィードによって形成されるビームとの重なりを最小にするために、1ビームあたり単一のフィードのシステムにおいてしばしば使用される。
【0122】
図24は、別の放物面反射器1621の説明図である。アンテナ要素1629(受信アンテナ要素又は伝送アンテナ要素406、409、3416、3419、3426、3429のいずれか)を焦点面の外側(例えば、反射器1621の焦点面1625の前方)に位置付けることによって、反射器1621に当たる伝送信号1631の経路は、該伝送信号が反射器1621に反射したときに、互いに対して平行でなくなり、集束させた事例よりも広いビーム幅をもたらす。いくつかの事例では、放物面以外の形状を有する反射器が使用される。そのような反射器もまた、アンテナの脱焦点をもたらし得る。エンドツーエンドビーム形成システムは、このタイプの脱焦点アンテナを使用して、隣接するアンテナ要素のカバーエリアの重なりを作成し、したがって、リレーカバーエリアの中の所与のビーム場所のための、多数の有用な受信/伝送経路を提供することができる。
【0123】
1つの事例では、リレーカバーエリアが確立され、そこでは、エンドツーエンドリレーが配備された(例えば、エンドツーエンド衛星リレーがサービス軌道にある)ときに、リレーカバーエリア内の地点の25%が、少なくとも6つの構成要素ビームアンテナパターンのアンテナ要素カバーエリア内にある。代替的には、リレーカバーエリア内の地点の25%が、少なくとも4つの受信アンテナ要素のアンテナ要素カバーエリア内にある。図25は、例示的なリレーカバーエリア(エンドツーエンド衛星リレーのためのもので、衛星カバーエリアとも称される)3201(単一のクロスパッチで示される)、及び6つのアンテナ要素カバーエリア3205、3207、3209、3211、3213、3215内にも含まれるリレーカバーエリア3201内の地点によって画定されるエリア3203(二重クロスハッチで示される)の説明図である。カバーエリア3201及びアンテナ要素カバーエリア3205、3207、3209、3211、3213、3215は、受信アンテナ要素カバーエリア又は伝送アンテナ要素カバーエリアとすることができ、また、往路リンクだけ又は復路リンクだけと関連付けることができる。アンテナ要素カバーエリア3205、3207、3209、3211、3213、3215のサイズは、システムによって提供される所望の性能によって決定される。エラーに対してより許容性があるシステムは、あまり許容性がないシステムよりも大きいアンテナ要素カバーエリアを有することができる。いくつかの事例において、各アンテナ要素カバーエリア3205、3207、3209、3211、3213、3215は、構成要素ビームアンテナゲインが、構成要素ビームアンテナパターンを確立するアンテナ要素のピーク構成要素ビームアンテナゲインの10dB以内である、全ての地点である。他の事例において、各アンテナ要素カバーエリア3205、3207、3209、3211、3213、3215は、構成要素ビームアンテナゲインが、ピーク構成要素ビームアンテナゲインの6dB以内である、全ての地点である。更に他の事例において、各アンテナ要素カバーエリア3205、3207、3209、3211、3213、3215は、構成要素ビームアンテナゲインが、ピーク構成要素ビームアンテナゲインの3dB以内である、全ての地点である。エンドツーエンドリレーがまだ配備されていない(例えば、エンドツーエンド衛星リレーがサービス軌道にない)ときであっても、エンドツーエンドリレーは、それでも、上記の定義に従う構成要素ビームアンテナパターンを有する。すなわち、軌道上のエンドツーエンドリレーに対応するアンテナ要素カバーエリアは、エンドツーエンドリレーがサービス軌道にないときであっても、構成要素ビームアンテナパターンから算出することができる。エンドツーエンドリレーは、ビーム形成に貢献せず、したがって、上述の特徴を有しない場合がある、追加的なアンテナ要素を含むことができる。
【0124】
図26は、リレーカバーエリア3301(例えば、衛星カバーエリア)内の全ての地点が少なくとも4つのアンテナ要素カバーエリア3303、3305、3307、3309内にも含まれる、エンドツーエンドリレー(例えば、衛星)アンテナパターン3300の説明図である。他のアンテナ要素は、エンドツーエンドリレー上に存在することができ、また、リレーカバーエリア3301内の全ての地点よりも少ない地点を含むアンテナ要素カバーエリア3311を有することができる。
【0125】
このシステムは、任意の適切なスペクトルで動作することができる。例えば、エンドツーエンドビーム形成システムは、C、L、S、X、V、Ka、Ku、又は他の適切な1つ又は複数の帯域で動作することができる。いくつかのそのようなシステムにおいて、受信手段は、C、L、S、X、V、Ka、Ku、又は他の適切な1つ又は複数の帯域で動作する。いくつかの事例において、往路アップリンク及び復路アップリンクは、同じ周波数範囲で(例えば、30GHz付近で)動作することができ、復路ダウンリンク及び往路ダウンリンクは、重複しない周波数範囲で(例えば、20GHz付近で)動作することができる。エンドツーエンドシステムは、任意の適切な帯域幅(例えば、500MHz、1GHz、2GHz、3.5GHz、その他)を使用することができる。いくつかの事例において、往路リンク及び復路リンクは、同じトランスポンダを使用する。
【0126】
システムのタイミング整列を支援するために、L個トランスポンダの間の経路長は、いくつかの事例において、例えば適切なケーブル長の選択を通して、信号経路時間遅延を合致させるように設定される。エンドツーエンドリレー(例えば、衛星)は、いくつかの事例において、較正サポートモジュール424内に、リレービーコン発生器426(例えば、衛星ビーコン)を有する(図15を参照されたい)。ビーコン発生器426は、リレービーコン信号を発生させる。エンドツーエンドリレーは、リレービーコン信号をブロードキャストして、システムタイミング整列並びにサポートフィーダリンク較正を更に支援する。いくつかの事例において、リレービーコン信号は、高いチップ速度(例えば、1秒あたり1億、2億、4億、若しくは8億チップ(Mcps)、又は任意の他の適切な値)で動作する疑似ランダム(PNとして知られる)直接シーケンススペクトラム拡散信号などの、PNシーケンスである。いくつかの事例において、RHCP及びLHCPアンテナによって受信することができる直線偏波リレー(例えば、衛星)ビーコンは、関連付けられる伝送アンテナ要素409を通して伝送するために、広いカバーエリアにわたってアンテナホーン(図示せず)などのアンテナによってブロードキャストされるか、又はトランスポンダ410の1つ又は2つ以上に結合される。例示的なシステムにおいて、ビームは、複数の500MHzの帯域幅チャネルにおいてKaバンドを通じて形成され、400McpsのPNコードが、500MHzの帯域幅チャネル内に適合するようにフィルタリングされるか、又はパルス成形される。複数のチャネルが使用されるときには、チャネルの各々において同じPN符号を伝送することができる。システムは、各チャネルについて1つのビーコン、又は2つ以上のチャネルについて1つのビーコンを用いることができる。
【0127】
エンドツーエンドリレーには、多数の受信/伝送信号経路を存在させることができるので、個々の受信/伝送信号経路の冗長性が必要とされ得ない。受信/伝送信号経路が故障したときに、システムは、それでもその直前の状態に非常に近い性能レベルで機能することができるが、損失を補償するために、ビーム形成係数の修正を使用する場合がある。
地上ネットワーク
【0128】
例示的なエンドツーエンドビーム形成システムの地上ネットワークは、共通のエンドツーエンドリレーに向けられた、いくつかの地理的に分布したアクセスノード(AN)を含む。最初に往路リンクを見ると、中央処理システム(CPS)は、ユーザデータを伝送するためのビーム加重値を計算し、配信ネットワークを通してANにインターフェースする。CPSはまた、ユーザ端末に提供されるデータ源にもインターフェースする。配信ネットワークは、例えば光ファイバーケーブルインフラストラクチャを使用して、様々な方法で実装することができる。CPSとSANとの間のタイミングは、(例えば、回路スイッチチャネルを使用して)決定的とするか、又は(例えば、パケットスイッチネットワークを使用して)非決定的とすることができる。いくつかの事例において、CPSは、信号処理を扱うために、例えば特別な特定用途向け集積回路(ASIC)を使用して、単一の現場に実装される。いくつかの事例において、CPSは、例えばクラウドコンピューティング技術を使用して、分布した様式で実装される。
【0129】
図5の実施例に戻ると、CPS505は、複数のフィーダリンクモデム507を含むことができる。往路リンクの場合、フィーダリンクモデム507は、インターネット、ビデオヘッドエンド(図示せず)、その他などのデータ源から、往路ユーザデータストリーム509を各々が受信する。受信した往路ユーザデータストリーム509は、モデム507によってK個の往路ビーム信号511に調整される。いくつかの事例において、Kは、1、2、4、8、16、32、64、128、256、512、1024個の範囲、又は中間若しくはそれ以上の数とすることができる。K個の往路ビーム信号の各々は、K個の往路ユーザビームのうちの1つに伝送される往路ユーザデータストリームを搬送する。故に、K=400である場合は、400個の往路ビーム信号511があり、各々が、400個の往路ユーザビームのうちの関連付けられる1つを通じて往路ユーザビームカバーエリア519に伝送される。K個の往路ビーム信号511は、往路ビーム形成器に結合される。
【0130】
M個のAN515が地上部分502に存在する場合は、往路ビーム形成器の出力が、M個のアクセスノード固有の往路信号516であり、各々が、K個の往路ビーム信号511のうちのいくつか又は全てに対応する加重往路ビーム信号を含む。往路ビーム形成器は、K×M個の往路ビーム加重マトリックスとK個の往路データ信号とのマトリックス積に基づいて、M個のアクセスノード固有の往路信号516を発生させることができる。配信ネットワーク518は、M個のアクセスノード固有の往路信号の各々を、M個のAN515のうちの対応する1つに配信する。各AN515は、それぞれのアクセスノード固有の往路信号516を備える往路アップリンク信号521を伝送する。各AN515は、エンドツーエンドリレーの往路受信/伝送信号経路の1つ又は2つ以上(例えば、全てを含むそれ以下)を介して、往路ユーザビームカバーエリアの1つ又は2つ以上(例えば、全てを含むそれ以下)に、該ANのリレーのそれぞれの往路アップリンク信号521を伝送する。エンドツーエンドリレー503内のトランスポンダ410、411は、複数のAN515(例えば、全てを含むそれ以下)によって伝送される往路アップリンク信号521の重畳されたもの550を含む複合入力往路信号を受信する。各トランスポンダ(例えば、リレーを通した各受信/伝送信号経路)は、複合入力往路信号を、それぞれの往路ダウンリンク信号として、往路ダウンリンクを通じてユーザ端末517にリレーする。
【0131】
図27は、AN515の例示的な分布の説明図である。番号を付したより小さい円の各々は、AN515の場所を表す。より大きい円の各々は、ユーザビームカバーエリア519を示す。いくつかの事例において、AN515は、エンドツーエンドリレー503のカバーエリアにわたってほぼ均等に離間配置される。他の事例において、AN515は、カバーエリア全体を通じて不均等に分布することができる。更に他の事例において、AN515は、リレーカバーエリアの1つ又は2つ以上のサブ地域分布にわたって均等に、又は不均等にすることができる。一般的に、システムの性能は、AN515がカバーエリア全体を通じて一様に分布しているときに最良である。しかしながら、考慮事項がANの配置における妥協点を左右し得る。例えば、AN515は、干渉の量、雨、若しくは他の環境条件、不動産のコスト、配信ネットワークへのアクセス、その他、に基づいて配置することができる。例えば、雨に敏感である衛星ベースのエンドツーエンドリレーシステムの場合、AN515の大部分は、降雨誘導の減衰を受ける可能性が低いエリア(例えば、米国西部)に配置することができる。別の例として、AN515は、幾らかのダイバーシティゲインを提供して降雨減衰の影響に対抗するように、高降雨地域(例えば、米国南東部)により高い密度で配置することができる。AN515は、AN515と関連付けられる分布経費を低減させるために、ファイバールートに沿って位置付けることができる。
【0132】
AN515の数Mは、いくつかの基準に基づいて選択することができる、選択可能なパラメータである。より少ないANは、より単純で、より低いコストの地上セグメント、及び配信ネットワークのより低い運用コストをもたらすことができる。より多いANは、より大きいシステム容量をもたらすことができる。図28は、例示的なシステムにおいて配備されるANの数の関数として、正規化された往路及び復路リンク容量のシミュレーションを示す。正規化された容量は、シミュレーションにおいて最大数のANで得られた容量で割った、M個のANによる容量である。容量は、ANの数が増加するにつれて増加するが、際限なく増加するわけではない。往路リンク及び復路リンク容量はどちらも、ANの数が増加するにつれて、漸近極限に近づく。このシミュレーションは、L=517個の伝送及び受信アンテナ要素で、ANをカバーエリアにわたって一様に分布した状態であったが、この容量の漸近挙動は、L及び他のANの空間的な分布の他の値によって認識することができる。図28に示されるような曲線は、上で論じたように、配備されるANの数Mを選択する際に、及びANが漸増的に配備されるときにどのようにシステムの容量を段階的に導入することができるのかを理解する際に有用であり得る。
【0133】
図29は、エンドツーエンドビーム形成システムの例示的な地上セグメント502のブロック図である。図29は、例えば、図5の地上セグメント502を例示することができる。地上セグメント502は、CPS505と、配信ネットワーク518と、AN515とを備える。CPS505は、ビーム信号インターフェース524と、往路/復路ビーム形成器513と、配信インターフェース536と、ビーム加重値発生器910とを備える。
【0134】
往路リンクの場合、ビーム信号インターフェース524は、往路ユーザビームの各々と関連付けられる往路ビーム信号(FBS)511を得る。ビーム信号インターフェース524は、往路ビームデータ多重化装置526と、往路ビームデータストリーム変調器528とを含むことができる。往路ビームデータ多重化装置526は、ユーザ端末517に伝送するための往路データを備える往路ユーザデータストリーム509を受信することができる。往路ユーザデータストリーム509は、例えば、図5のエンドツーエンドビーム形成システム500を介してユーザ端末517に伝送するためのデータパケット(例えば、TCPパケット、UDPパケット、その他)を備えることができる。往路ビームデータ多重化装置526は、往路ビームデータストリーム532を得るために、それらのそれぞれの往路ユーザビームカバーエリアに従って、往路ユーザデータストリーム509をグループ化(例えば、多重化)する。往路ビームデータ多重化装置526は、例えば、時間領域多重化、周波数領域多重化、又は多重化技術の組み合わせを使用して、往路ビームデータストリーム532を発生させることができる。往路ビームデータストリーム変調器528は、1つ又は2つ以上の変調スキームに従って(例えば、データビットを変調シンボルにマッピングして)往路ビームデータストリーム532を変調させて、往路/復路ビーム形成器513に渡される往路ビーム信号511を作成することができる。いくつかの事例において、変調器528は、複数の変調信号を周波数多重化して、マルチキャリアビーム信号511を作成することができる。ビーム信号インターフェース524は、例えば、図5を参照して論じられるフィーダリンクモデム507の機能を実現することができる。
【0135】
往路/復路ビーム形成器513は、往路ビーム形成器529と、復路ビーム形成器531とを含むことができる。ビーム加重値発生器910は、M×K個の往路ビーム加重マトリックス918を発生させる。M×K個の往路ビーム加重マトリックス918を発生させるための技術は、下で更に詳細に論じられる。往路ビーム形成器529は、M個のアクセスノード固有の往路信号516を算出するマトリックス乗算器を含むことができる。例えば、この算出は、M×K個の往路ビーム加重マトリックス918、及びK個の往路ビーム信号511のベクトルのマトリックス積に基づくことができる。いくつかの実施例において、K個の往路ビーム信号511の各々は、F個の往路周波数サブ帯域のうちの1つと関連付けることができる。この事例において、往路ビーム形成器529は、F個の往路周波数サブ帯域の各々のM個のアクセスノード固有の往路信号516のサンプルを発生させることができる(例えば、K個の往路ビーム信号511のそれぞれのサブセットのF個のサブ帯域の各々のマトリックス積演算を効果的に実現する)。配信インターフェース536は、(例えば、配信ネットワーク518を介して)M個のアクセスノード固有の往路信号516をそれぞれのAN515に配信する。
【0136】
復路リンクの場合、配信インターフェース536は、(例えば、配信ネットワーク518を介して)AN515から複合復路信号907を得る。ユーザ端末517からの各復路データ信号は、複数の(例えば、全てを含むそれ以下)複合復路信号907に含むことができる。ビーム加重値発生器910は、K×M個の復路ビーム加重マトリックス937を発生させる。K×M個の復路ビーム加重マトリックス937を発生させるための技術は、下で更に詳細に論じられる。復路ビーム形成器531は、K個の復路ユーザビームカバーエリアのK個の復路ビーム信号915を算出する。例えば、この算出は、復路ビーム加重マトリックス937、及びそれぞれの複合復路信号907のベクトルのマトリックス積に基づくことができる。ビーム信号インターフェース524は、復路ビーム信号復調器552と、復路ビームデータ逆多重化装置554とを含むことができる。復路ビーム信号復調器552は、復路ビーム信号の各々を復調して、K個の復路ユーザビームカバーエリアと関連付けられるK個の復路ビームデータストリーム534を得ることができる。復路ビームデータ逆多重化装置554は、K個の復路ビームデータストリーム534の各々を、ユーザ端末517から伝送される復路データ信号と関連付けられるそれぞれの復路ユーザデータストリーム535に逆多重化することができる。いくつかの実施例において、復路ユーザビームの各々は、R個の復路周波数サブ帯域のうちの1つと関連付けることができる。この事例において、復路ビーム形成器531は、R個の復路周波数サブ帯域の各々と関連付けられる復路ビーム信号915のそれぞれのサブセットを発生させることができる(例えば、R個の復路周波数サブ帯域の各々のマトリックス積演算を効果的に実現して、復路ビーム信号915のそれぞれのサブセットを発生させる)。
【0137】
図30は、例示的な往路/復路ビーム形成器513のブロック図である。往路/復路ビーム形成器513は、往路ビーム形成器529と、往路タイミングモジュール945と、復路ビーム形成器531と、タイミングモジュール947とを備える。往路タイミングモジュール945は、M個のアクセスノード固有の往路信号516の各々を、信号がいつエンドツーエンドリレーに到達するように所望されたかを示すタイムスタンプと関連付ける(例えば、タイムスタンプを、多重化したアクセスノード固有の往路信号の中のアクセスノード固有の往路信号で多重化する)。このようにして、往路ビーム形成器529内の分割モジュール904において分割されるK個の往路ビーム信号511のデータは、AN515の各々によって、適切な時間に伝送することができる。タイミングモジュール947は、タイムスタンプに基づいて、受信信号を整列させる。M個のAN複合復路信号(CRS)907のサンプルは、特定のサンプルがいつエンドツーエンドリレーから伝送されたかを示すタイムスタンプと関連付けられる。タイミングの考慮事項及びタイムスタンプの生成は、下で更に詳細に論じられる。
【0138】
往路ビーム形成器529は、データ入力925と、ビーム加重値入力920と、アクセスノード出力923とを有する。往路ビーム形成器529は、M×K個のビーム加重マトリックスの値をK個の往路データ信号511の各々に適用して、K個の加重往路ビーム信号を各々が有するM個のアクセスノード固有の往路信号521を発生させる。往路ビーム形成器529は、分割モジュール904と、M個の往路加重及び加算モジュール533とを含むことができる。分割モジュール904は、K個の往路ビーム信号511の各々をK個の往路ビーム信号のM個のグループ906に分割し、M個の往路加重及び加算モジュール533の各々について1つのグループ906である。故に、各往路加重及び加算モジュール533は、K個全ての往路データ信号511を受信する。
【0139】
往路ビーム加重値発生器917は、M×K個の往路ビーム加重マトリックス918を発生させる。いくつかの事例において、下で更に論じられるように、往路チャネルマトリックスを形成するために、K×M個のエンドツーエンド往路多重経路チャネルの各々のエンドツーエンド往路ゲインの推定値であるチャネルマトリックスに基づいて、往路ビーム加重マトリックス918が発生される。エンドツーエンド往路ゲインの推定は、チャネル推定器モジュール919で行われる。いくつかの事例において、チャネル推定器は、下で更に詳細に論じられるように、エンドツーエンド多重経路チャネルの様々なパラメータに関連するデータを記憶する、チャネルデータストア921を有する。チャネル推定器919は、推定エンドツーエンドゲイン信号を出力して、往路ビーム加重値発生器917が往路ビーム加重マトリックス918を発生させることを可能にする。加重及び加算モジュール533の各々は、往路ビーム加重マトリックス918のビーム形成加重値のそれぞれのベクトルを受信するように結合される(簡単にするために、図30には、そのような接続が1つだけ示される)。第1の加重及び加算モジュール533は、M×K個の往路ビーム加重マトリックス918のうちの1,1の要素の値に等しい加重値を、K個の往路ビーム信号511のうちの1番目に適用する(下で更に詳細に論じられる)。M×K個の往路ビーム加重マトリックス918の1,2の要素の値に等しい加重値は、K個の往路ビーム信号511のうちの2番目に適用される。マトリックスの他の加重値は、K番目の往路ビーム信号511まで同様に適用され、M×K個の往路ビーム加重マトリックス918の1,Kの要素に等しい値で加重される。K個の加重往路ビーム信号903の各々は、次いで、加算され、アクセスノード固有の往路信号516として、第1の加重及び加算モジュール533から出力される。第1の加重及び加算モジュール533によって出力されるアクセスノード固有の往路信号516は、次いで、タイミングモジュール945に結合される。タイミングモジュール945は、配信ネットワーク518を通して、第1のAN515にアクセスノード固有の往路信号516を出力する(図5を参照されたい)。同様に、他の加重及び加算モジュール533の各々は、K個の往路ビーム信号511を受信し、K個の往路ビーム信号511に加重し、加算する。M個の加重及び加算モジュール533の各々からの出力は、配信ネットワーク518を通して、関連付けられるM個のAN515に結合され、よって、m番目の加重及び加算モジュールからの出力がm番目のAN515に結合される。いくつかの事例において、配信ネットワーク通したジッタ及び不均等な遅延、並びにいくつかの他のタイミングの考慮事項は、タイムスタンプをデータと関連付けることによってタイミングモジュール945によって処理される。例示的なタイミング技術の詳細は、図36及び図37に関して下に提供される。
【0140】
地上セグメント502において往路ビーム形成器529によって適用されるビーム加重値の結果として、エンドツーエンドリレー503を通してAN515から伝送される信号は、ユーザビームを形成する。形成することができるビームのサイズ及び場所は、配備されるAN515の数、信号が通過するリレーアンテナ要素の数及びパターン、エンドツーエンドリレー503の場所、並びに/又はAN515の地理的間隔の関数とすることができる。
【0141】
以下、図5に示されるエンドツーエンド復路リンク523を参照すると、ユーザビームカバーエリア519の1つの中のユーザ端末517は、エンドツーエンドリレー503に信号を伝送する。信号は、次いで、地上セグメント502にリレーされる。信号は、AN515によって受信される。
【0142】
図30を再度参照すると、M個の復路ダウンリンク信号527は、M個のAN515によって受信され、配信ネットワーク518を通してM個のAN515から、複合復路信号907として結合され、そして、復路ビーム形成器531のアクセスノードの入力931において受信される。タイミングモジュール947は、M個のAN515からの複合復路信号を互いに整列させ、時間整列させた信号を復路ビーム形成器531に出力する。復路ビーム加重値発生器935は、チャネル推定器943内のチャネルデータストア941に記憶された情報に基づいて、K×M個の復路ビーム荷重マトリックス937として、復路ビーム加重値を発生させる。復路ビーム形成器531は、復路ビーム形成器531が復路ビーム加重マトリックス937を受信する、ビーム加重値入力939を有する。M個のAN複合復路信号907の各々は、復路ビーム形成器531内のM個の分割器及び加重モジュール539のうちの関連付けられる1つに結合される。各分割器及び加重モジュール539は、時間整列させた信号をK個のコピー909に分割する。分割器及び加重モジュール539は、K×M個の復路ビーム加重マトリックス937のk、mの要素を使用して、K個のコピー909の各々に加重する。K×M個の復路ビーム加重マトリックスに関する更なる詳細は、以下に提供される。K個の加重複合復路信号911の各組は、次いで、組み合わせモジュール913に結合される。いくつかの事例において、組み合わせモジュール913は、各分割器及び加重モジュール539から出力されたk番目の加重複合復路信号911を組み合わせる。復路ビーム形成器531は、K個の復路ユーザビーム519のうちの1つと関連付けられるサンプル(例えば、M個のANの各々を通して受信されるサンプル)を各々が有する、K個の復路ビーム信号915を出力する復路データ信号出力933を有する。K個の復路ビーム信号915の各々は、1つ又は2つ以上のユーザ端末517からのサンプルを有することができる。組み合わせて、整列させ、ビーム形成したK個の復路ビーム信号915は、フィーダリンクモデム507に結合される(図5を参照されたい)。復路タイミング調整は、分割及び加重の後に実行することができることに留意されたい。同様に、往路リンクの場合、往路タイミング調整は、ビーム形成の前に行うことができる。
【0143】
上で論じたように、往路ビーム形成器529は、K個の往路ビーム信号511の入力サンプルにマトリックス積演算を行って、M個のアクセスノード固有の往路信号516をリアルタイムで算出することができる。ビーム帯域幅が(例えば、より短いシンボル区間をサポートするために)増加するにつれて、並びにK及びMが大きくなるにつれて、マトリックス積演算は、計算集中的になり、単一のコンピューティングノード(例えば、単一のコンピュータサーバ、その他)の能力を超える場合がある。復路ビーム形成器531の動作は、同様に計算集中的である。複数のコンピューティングノードのコンピューティングリソースを往路/復路ビーム形成器513に分割するために、様々な方法を使用することができる。1つの実施例において、図30の往路ビーム形成器529は、M個のAN515の各々について、別個の加重及び加算モジュール533に分割することができ、これは異なるコンピューティングノード内に分布され得る。一般に、実現形態の考慮事項としては、コスト、電力消費、K、M、及び帯域幅に対するスケーラビリティ、(例えば、ノード故障、その他による)システム稼働率、アップグレード性、並びにシステムの待ち時間が挙げられる。上の実施例は、1行(又は列)あたりである。その逆も可能である。マトリックス動作をグループ化する他の様式を考慮することができる(例えば、[1,1~K/2,M/2]、[...]で4つに分割し、個々に計算し、加算する)。
【0144】
いくつかの事例において、往路/復路ビーム形成器513は、タイムスライスビーム形成器によってビーム加重演算を処理するための時間領域多重化アーキテクチャを含むことができる。図31は、時間領域逆多重化及び多重化による複数の往路タイムスライスビーム形成器を備える、例示的な往路ビーム形成器529のブロック図である。往路ビーム形成器529は、1つの往路ビーム信号逆多重化装置3002と、N個の往路タイムスライスビーム形成器3006と、1つの往路アクセスノードの信号多重化装置3010とを含む。
【0145】
往路ビーム信号逆多重化装置3002は、往路ビーム信号511を受信し、K個の往路ビーム信号511を、N個の往路タイムスライスビーム形成器3006への入力のために、往路タイムスライス入力3004に逆多重化する。例えば、往路ビーム信号逆多重化装置3002は、K個の往路ビーム信号511のサンプルの第1の時間領域サブセットを、第1の往路タイムスライスビーム形成器3006に送信し、該ビーム形成器は、サンプルの第1の時間領域サブセットに対応するM個のアクセスノード固有の往路信号と関連付けられるサンプルを発生させる。往路タイムスライスビーム形成器3006は、その往路タイムスライス出力3008を介して、サンプルの第1の時間領域サブセットのためのM個のアクセスノード固有の往路信号と関連付けられるサンプルを、往路アクセスノードの信号多重化装置3010に出力する。往路タイムスライスビーム形成器3006は、アクセスノードによって使用される同期タイミング情報(例えば、対応するタイムスライスインデックス、その他)を伴う、M個のアクセスノード固有の往路信号の各々と関連付けられるサンプルを出力して、エンドツーエンドリレーによって受信したときに、(例えば、事前修正することによって)それぞれのアクセスノード固有の往路信号を同期させることができる。往路アクセスノードの信号多重化装置3010は、N個の往路タイムスライス出力3008を介して、M個のアクセスノード固有の往路信号のサンプルの時間領域サブセットを多重化して、M個のアクセスノード固有の往路信号516を発生させる。往路タイムスライスビーム形成器3006の各々は、データバッファと、ビームマトリックスバッファと、マトリックス積演算を実現するビーム加重値プロセッサとを含むことができる。すなわち、往路タイムスライスビーム形成器3006の各々は、1回限りのスライスインデックスのサンプルの処理中に、図30の往路ビーム形成器529について示される分割モジュール904並びに往路加重及び加算モジュール533に数学的に等しい計算を実現することができる。ビーム加重マトリックスの更新は、逐次的に行うことができる。例えば、往路タイムスライスビーム形成器のビーム加重マトリックスバッファは、N個の往路タイムスライスビーム形成器3006を通したタイムスライスインデックスtの回転におけるアイドル時間中に更新することができる。代替的に、各往路タイムスライスビーム形成器は、ピンポン構成(例えば、一方を使用している間にもう一方を更新することができる)で使用することができる、2つのバッファを有することができる。いくつかの事例において、複数のユーザビームパターン(例えば、複数のユーザカバーエリア)に対応するビーム加重値を記憶するために、複数のバッファを使用することができる。往路タイムスライスビーム形成器3006のビーム加重値バッファ及びデータバッファは、ダイナミック又はスタティックランダムアクセスメモリ(RAM)を含む任意のタイプのメモリ又は記憶装置として実現することができる。ビーム加重値処理は、特定用途向け集積回路(ASIC)及び/又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)において実現することができ、また、(例えば、クラウドコンピューティング環境において)1つ又は2つ以上の処理コアを含むことができる。加えて、又は代替的に、ビーム加重値バッファ、データバッファ、及びビーム加重値プロセッサは、1つの構成要素内に統合することができる。
【0146】
図32は、往路タイムスライスビーム形成器529の動作を示す、簡略化した例示的な地上セグメントを例示する。図32の実施例において、往路ビーム形成器529は、4つの往路ビーム信号(例えば、K=4)を受信し、5つのAN(例えば、M=5)のアクセスノード固有の往路信号を発生させ、また、3つの往路タイムスライスビーム形成器(例えば、N=3)を有する。往路ビーム信号は、FBk:tによって示され、ここで、kは、往路ビーム信号インデックスであり、tは、タイムスライスインデックス(例えば、サンプルの時間領域サブセットに対応する)である。往路ビーム信号逆多重化装置3002は、4つの往路ユーザビームと関連付けられる往路ビーム信号のサンプルの4つの時間領域サブセットを受信し、1つの往路タイムスライス入力3004が、特定のタイムスライスインデックスtについて、往路ビーム信号511の各々からのサンプルの時間領域サブセットを含むように、各往路ビーム信号を逆多重化する。例えば、時間領域サブセットは、下で説明するように、単一のサンプル、サンプルの隣接するブロック、又はサンプルの隣接しない(例えば、インターリーブ)ブロックとすることができる。往路タイムスライスビーム形成器3006は、(例えば、往路ビーム信号511及び往路ビーム加重マトリックス918に基づいて)AFm:tによって示される、タイムスライスインデックスtのM個のアクセスノード固有の往路信号の各々を発生させる。例えば、タイムスライスインデックスt=0のサンプルFB1:0(FB2):0(FB3):0、及びFB4:0の時間領域サブセットは、第1の往路タイムスライスビーム形成器TSBF[1]3006に入力され、往路タイムスライス出力3008において、アクセスノード固有の往路信号AF1:0(AF2):0(AF3):0(AF4):0、及びAF5:0の対応するサンプルを発生させる。その後のタイムスライスインデックス値t=1,2について、往路ビーム信号511のサンプルの時間領域サブセットは、第2及び第3の往路タイムスライスビーム形成器3006への入力のために、往路ビーム信号逆多重化装置3002によって逆多重化され、往路タイムスライス出力3008において、対応するタイムスライスインデックスtと関連付けられるアクセスノード固有の往路信号を発生させる。図32はまた、タイムスライスインデックス値t=3において、第1の往路タイムスライスビーム形成器が、対応するタイムスライスインデックス3と関連付けられるアクセスノード固有の往路信号を発生させることも示す。1つのタイムスライスインデックス値tについて各往路タイムスライスビーム形成器3006によって行われるマトリックス積演算は、サンプルの時間領域サブセット(例えば、サンプリングレートtを乗じたサンプル数S)の実際の時間よりも長くかかる場合がある。しかしながら、各往路タイムスライスビーム形成器3006は、N個のタイムスライスインデックスt毎に、サンプルの時間領域サブセットを1つだけ処理することができる。往路アクセスノードの信号多重化装置3010は、往路タイムスライスビーム形成器3006の各々からの往路タイムスライス出力3030を受信し、サンプルの時間領域サブセットを多重化して、それぞれのANに配信するためのM個のアクセスノード固有の往路信号516を発生させる。
【0147】
図33は、時間領域逆多重化及び多重化による複数の復路タイムスライスビーム形成器を備える、例示的な復路ビーム形成器531のブロック図である。復路ビーム形成器531は、1つの復路複合信号逆多重化装置3012と、N個の復路タイムスライスビーム形成器3016と、1つの復路ビーム信号多重化装置3020とを含む。復路複合信号逆多重化装置3012は、(例えば、M個のANから)M個の複合復路信号907を受信し、N個の復路タイムスライスビーム形成器3016への入力のために、M個の複合復路信号907を復路タイムスライス入力3014に逆多重化する。復路タイムスライスビーム形成器3016の各々は、それぞれの復路タイムスライス出力3018を介して、対応するサンプルの時間領域サブセットのK個の復路ビーム信号915と関連付けられるサンプルを、復路ビーム信号多重化装置3020に出力する。復路ビーム信号多重化装置3020は、N個の復路タイムスライス出力3018を介して受信したK個の復路ビーム信号のサンプルの時間領域サブセットを多重化して、K個の復路ビーム信号915を発生させる。復路タイムスライスビーム形成器3016の各々は、データバッファと、ビームマトリックスバッファと、マトリックス積演算を実現するビーム加重値プロセッサとを含むことができる。すなわち、復路タイムスライスビーム形成器3016の各々は、1つのスライスインデックスのサンプルの処理中に、図30の復路ビーム形成器531について示される分割器及び加重モジュール539並びに組み合わせモジュール913に数学的に等しい計算を実現することができる。往路タイムスライスビーム形成器について上で論じたように、ピンポンビーム加重値バッファ構成(例えば、一方を使用している間にもう一方を更新することができる)を使用して、逐次的に行うことができる。いくつかの事例において、複数のユーザビームパターン(例えば、複数のユーザカバーエリア)に対応するビーム加重値を記憶するために、複数のバッファを使用することができる。復路タイムスライスビーム形成器3016のビーム加重値バッファ及びデータバッファは、ダイナミック又はスタティックランダムアクセスメモリ(RAM)を含む任意のタイプのメモリ又は記憶装置として実現することができる。ビーム加重値処理は、特定用途向け集積回路(ASIC)及び/又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)において実現することができ、また、1つ又は2つ以上の処理コアを含むことができる。加えて、又は代替的に、ビーム加重値バッファ、データバッファ、及びビーム加重値プロセッサは、1つの構成要素内に統合することができる。
【0148】
図34は、時間領域多重化を用いた復路ビーム形成器531の動作を示す、簡略化した例示的な地上セグメントを例示する。図33の実施例において、復路ビーム形成器531は、5つの複合復路信号(例えば、M=5)を受信し、4つの復路ユーザビーム(例えば、K=5)の復路ビーム信号を発生させ、また、3つのタイムスライスビーム形成器(例えば、N=3)を有する。複合復路信号は、RCm:tによって示され、ここで、mは、ANインデックスであり、tは、タイムスライスインデックス(例えば、サンプルの時間領域サブセットに対応する)である。復路複合信号逆多重化装置3012は、5つのANから複合復路信号のサンプルの4つの時間領域サブセットを受信し、1つの復路タイムスライス入力3014が、特定のタイムスライスインデックスtについて、複合復路信号907の各々から対応するサンプルの時間領域サブセットを含むように、各複合復路信号を逆多重化する。例えば、時間領域サブセットは、下で説明するように、単一のサンプル、サンプルの隣接するブロック、又はサンプルの隣接しない(例えば、インターリーブ)ブロックとすることができる。復路タイムスライスビーム形成器3016は、(例えば、複合復路信号907及び復路ビーム加重マトリックス937に基づいて)RBk:tによって示される、タイムスライスインデックスtのK個の復路ビーム信号の各々を発生させる。例えば、タイムスライスインデックスt=0のサンプルRC1:0(RC2):0(RC3):0(RC4):0、及びRC5:0の時間領域サブセットは、第1の復路タイムスライスビーム形成器3016に入力され、復路タイムスライス出力3018において、復路ビーム信号RB1:0(RB2):0(RB3):0及びRB4:0の対応するサンプルを発生させる。その後のタイムスライスインデックス値t=1,2について、複合復路信号907のサンプルの時間領域サブセットは、第2及び第3の復路タイムスライスビーム形成器3016への入力のために、復路複合信号逆多重化装置3012によってそれぞれ逆多重化され、復路タイムスライス出力3018において、対応するタイムスライスインデックスtと関連付けられる復路ビーム信号のサンプルを発生させる。図34はまた、タイムスライスインデックス値t=3において、第1の復路タイムスライスビーム形成器が、対応するタイムスライスインデックス3と関連付けられる復路ビーム信号のサンプルを発生させることも示す。1つのタイムスライスインデックス値tについて各往路タイムスライスビーム形成器3016によって行われるマトリックス積演算は、サンプルの時間領域サブセット(例えば、サンプリングレートtを乗じたサンプル数S)の実際の時間よりも長くかかる場合がある。しかしながら、各復路タイムスライスビーム形成器3016は、N個のタイムスライスインデックスt毎に、サンプルの1つの時間領域サブセットだけを処理することができる。復路ビーム信号多重化装置3020は、復路タイムスライスビーム形成器3016の各々から復路タイムスライス出力3018を受信し、サンプルの時間領域サブセットを多重化して、K個の復路ビーム信号915を発生させる。
【0149】
図31図34は、復路タイムスライスビーム形成器3016と同じ数Nの往路タイムスライスビーム形成器3006が例示されているが、いくつかの実現形態は、復路タイムスライスビーム形成器3016よりも多い又は少ない往路タイムスライスビーム形成器3006を有することができる。いくつかの実施例において、往路ビーム形成器529及び/又は復路ビーム形成器531は、ノード故障に対するロバスト性のための予備容量を有することができる。例えば、各往路タイムスライスビーム形成器3006が、リアルタイムタイムスライス期間tを有するタイムスライスインデックスtについて、一組のサンプルを処理するために、tFTSかかる場合、ここで、tFTS=N・tであり、往路ビーム形成器529は、N+E個の往路タイムスライスビーム形成器3006を有することができる。いくつかの実施例では、N+E個の往路タイムスライスビーム形成器3006各々が動作に使用され、各往路タイムスライスビーム形成器3006がE/Nの有効な予備容量を有する。1つの往路タイムスライスビーム形成器3006が故障した場合、動作は、(例えば、時間領域サンプル(又はサンプルのグループ)が時間領域逆多重化及び多重化を通してどのようにルーティングされるのかを調整することによって)別の往路タイムスライスビーム形成器3006に移すことができる。したがって、往路ビーム形成器529は、システムの性能が影響を受ける前に、最大でE個の故障した往路タイムスライスビーム形成器3006に対する許容性があり得る。加えて、余分の容量は、システム動作中のシステムの保守及びタイムスライスビーム形成器のアップグレードを可能にする。例えば、システムは、タイムスライスビーム形成器間の異なる性能に対する許容性があるので、タイムスライスビーム形成器のアップグレードを逐次的に行うことができる。タイムスライスインデックスtと関連付けられるデータサンプルは、インターリーブすることができる。例えば、第1のタイムスライスインデックスtは、サンプル0、P、2P、...、(S-1)Pと関連付けることができ、一方で、タイムスライスインデックスtは、サンプル1、P+1、2P+1、...、(S-1)P+1と関連付けることができる、その他、であり、ここで、Sは、サンプルの各組におけるサンプルの数であり、Pは、インターリービング期間である。インターリービングはまた、往路エラー修正におけるインターリービングによる利点に類似して、喪失ブロックによるエラーが時間内に分散されるようにサンプルの各タイムスライスビーム形成ブロックが時間内に分離されるので、システムをタイムスライスビーム形成器の故障に対してよりロバストにすることもできる。実際には、タイムスライスビーム形成器の故障によって引き起こされた分散されたエラーは、特に往路エラー符号化が用いられる場合に、ノイズに類似する影響を生じさせ、ユーザデータに対していかなるエラーももたらさない場合がある。N=3である実施例が例示されているが、他のNの値を使用することができ、Nは、K又は、Mといかなる特定の関係を有する必要はない。
【0150】
上で論じたように、図31及び図33に例示される往路ビーム形成器529及び復路ビーム形成器531は、1つのチャネル又は周波数サブ帯域についてタイムスライスビーム形成を行うために、時間領域逆多重化及び多重化を行うことができる。複数のサブ帯域は、追加的なサブ帯域多重化/逆多重化スイッチング層を使用して独立に処理することができる。図35は、サブ帯域逆多重化及び多重化を用いる、例示的な多帯域往路/復路ビーム形成器513のブロック図である。多帯域往路/復路ビーム形成器513は、F個の往路サブ帯域及びR個の復路サブ帯域をサポートすることができる。
【0151】
多帯域往路/復路ビーム形成器513は、F個の往路サブ帯域ビーム形成器3026と、R個の復路サブ帯域ビーム形成器3036と、1つのサブ帯域多重化装置/逆多重化装置3030とを含む。例えば、往路ビーム信号511は、F個の往路サブ帯域に分割することができる。F個の往路サブ帯域の各々は、K個の往路ユーザビームカバーエリアのサブセットと関連付けることができる。すなわち、K個の往路ユーザビームカバーエリアは、異なる(例えば、異なる周波数及び/又は偏波、その他)周波数サブ帯域と関連付けられる往路ユーザビームカバーエリアの複数のサブセットを含むことができ、ここで、サブセットの各々の中の往路ユーザビームカバーエリアは、(例えば、3dBの信号輪郭部、その他、において)重なっていない場合がある。したがって、往路サブ帯域ビーム形成器入力3024の各々は、往路ビーム信号511のサブセットKを含むことができる。F個の往路ビーム形成器3026の各々は、往路ビーム形成器529の機能を含むことができ、往路ビーム信号511のサブセットと関連付けられるM個のアクセスノード固有の往路信号を含む往路サブ帯域ビーム形成器出力3028を発生させる(例えば、M×K個の往路ビーム加重マトリックスを有するK個の往路ビーム信号のマトリックス積)。したがって、AN515の各々は、(例えば、F個の往路サブ帯域について)異なる周波数サブ帯域と関連付けられる複数のアクセスノード固有の往路信号を受信することができる。ANは、下で更に詳細に論じられるように、信号を往路アップリンク信号に異なるサブ帯域で組み込む(例えば、加算する)ことができる。同様に、AN515は、R個の異なる復路サブ帯域の複数の複合復路信号907を発生させることができる。R個の復路サブ帯域の各々は、K個の復路ユーザビームカバーエリアのサブセットと関連付けることができる。すなわち、K個の復路ユーザビームカバーエリアは、異なる周波数サブ帯域と関連付けられる復路ユーザビームカバーエリアの複数のサブセットを含むことができ、ここで、サブセットの各々の中の復路ユーザビームカバーエリアは、(例えば、3dBの信号輪郭部、その他、において)重なっていない場合がある。サブ帯域多重化装置/逆多重化装置3030は、複合復路信号907をR個の復路サブ帯域ビーム形成器入力3034に分割することができる。復路サブ帯域ビーム形成器3036の各々は、次いで、復路サブ帯域ビーム形成器出力3038を発生させることができ、これは、(例えば、フィーダリンクモデム507又は復路ビーム信号復調器、その他への)復路ユーザビームのサブセットの復路ビーム信号915を含むことができる。いくつかの実施例において、多帯域往路/復路ビーム形成器513は、複数の偏波(例えば、右旋円偏波(RHCP)、左旋円偏波(LHCP)、その他)をサポートすることができ、いくつかの事例では、サブ帯域の数を効果的に2倍にすることができる。
【0152】
いくつかの事例において、往路ビーム形成器529及び復路ビーム形成器531のタイムスライス多重化及び逆多重化(例えば、ビーム信号逆多重化装置3002、往路アクセスノードの信号多重化装置3010、復路複合信号逆多重化装置3012、復路ビーム信号多重化装置3020)、並びにサブ帯域多重化/逆多重化(サブ帯域多重化装置/逆多重化装置3030)は、パケットスイッチング(例えば、イーサネット(登録商標)スイッチング、その他)によって行うことができる。いくつかの事例において、タイムスライス及びサブ帯域スイッチングは、同じスイッチングノードにおいて、又は異なる順序で行うことができる。例えば、各スイッチファブリックファブリックノードをAN515、往路タイムスライスビーム形成器3006、復路タイムスライスビーム形成器3016、又はフィーダリンクモデム507のサブセットと結合させることができる場合に、ファブリックスイッチングアーキテクチャを使用することができる。ファブリックスイッチングアーキテクチャは、例えば、任意のANを(例えば、スイッチ及び/又はスイッチファブリック相互接続を介して)、低待ち時間の階層的に平坦なアーキテクチャで、任意の往路タイムスライスビーム形成器又は復路タイムスライスビーム形成器に接続することを可能にすることができる。1つの実施例において、K≦600、M≦600、及び500MHzの帯域幅(例えば、1個のサブ帯域あたり)をサポートし、往路又は復路リンクの14個のサブ帯域を有するシステムは、2048 10GigEのポートを有する市販の相互接続スイッチプラットフォームによって実現することができる。
遅延等化
【0153】
いくつかの事例において、エンドツーエンドリレー503とCPS505との間の経路の各々での伝搬遅延の差は、僅かである。例えば、復路リンク上で、同じ信号(例えば、特定のユーザへの、又はそこからのデータ)が複数のAN515によって受信されるときに、信号の各インスタンスは、信号の互いのインスタンスと本質的に整列されたCPSで到達することができる。同様に、同じ信号がいくつかのAN515を通してユーザ端末517に伝送されたときに、信号の各インスタンスは、信号の互いのインスタンスと本質的に整列されたユーザ端末517に到達することができる。換言すれば、信号は、信号をコヒーレントに組み合わせる十分な精度で位相及び時間整列させることができ、よって、経路遅延及びビーム形成の影響は、伝送シンボル率に対して少ない。例示的な実施例として、経路遅延の差が10マイクロ秒である場合、ビーム形成帯域幅は、およそ数10kHzになり得、起こり得る性能の低下が少ない状態で、狭帯域幅信号、例えば≒10のkspsを使用することができる。10kspsの信号速度は、100マイクロ秒のシンボル区間を有し、10マイクロ秒の遅延拡散は、シンボル区間の僅か1/10である。これらの事例において、上で説明したように、システム分析の目的で、1つのインスタンスにおいてエンドツーエンドリレーによって受信される信号は、本質的に同時にリレーされ、伝送されると仮定することができる。
【0154】
他の事例において、伝送アンテナ要素409からAN515に伝送される信号の信号間隔(伝送シンボル区間)に対する伝搬遅延には、かなりの差があり得る。信号が各AN515から配信ネットワーク518を通してとる経路は、かなりの遅延の変動を含み得る。これらの事例では、遅延等化を用いて、経路遅延に整合させることができる。
【0155】
CPS505によって配信ネットワーク518を通して受信されるエンドツーエンド復路リンク信号の場合、信号は、エンドツーエンドリレーから伝送されるリレービーコン、例えば上で説明したPNビーコンを使用することによって時間整列させることができる。各AN515は、基準としてリレービーコン信号を使用して、複合復路信号をタイムスタンプすることができる。したがって、異なるAN515は、異なる時間に同じ信号を受信することができるが、各AN515における受信信号は、CPS505が該信号を時間整列することを可能にするようにタイムスタンプすることができる。CPS505は、同じタイムスタンプを有する信号を組み合わせることによってビーム形成が行われるように、信号をバッファリングすることができる。
【0156】
図33及び図34に戻ると、復路リンクの遅延等化は、復路タイムスライスビーム形成器3016への複合復路信号を逆多重化することによって行うことができる。例えば、各ANは、複合復路信号をタイムスライスインデックスtと関連付けられる複数組のサンプルに分割することができ、これは、複合復路信号のインターリーブサンプルを含むことができる。タイムスライスインデックスtは、リレービーコン信号に基づいて決定することができる。ANは、対応するタイムスライスインデックスtと多重化したサンプルのサブセットを(例えば、多重化した複合復路信号として)復路ビーム形成器531に送信することができ、これは、復路リンクの同期タイミング情報としての役割を果たすことができる。各ANからのサンプルのサブセットは、(例えば、スイッチングを介して)逆多重化することができ、1つの復路タイムスライスビーム形成器3016は、タイムスライスインデックスtについて(いくつかの事例では、複数のサブ帯域のうちの1つについて)、各ANからサンプルのサブセットを受信することができる。復路ビーム加重マトリックスと、タイムスライスインデックスtと関連付けられるM個の複合復路信号の各々からのサンプルのサブセットとのマトリックス積を行うことによって、復路タイムスライスビーム形成器3016は、復路ビーム加重マトリックスを適用するために、エンドツーエンドリレーによってリレーされる信号を同時に整列させることができる。
【0157】
往路リンクの場合、CPS505内のビーム形成器513は、AN515によって伝送される各アクセスノード固有の往路信号がエンドツーエンドリレー503に到達することがいつ所望されたのかを示すタイムスタンプを発生させることができる。各AN515は、アクセスノードビーコン信号2530、例えばループバックPN信号を伝送することができる。各そのような信号は、エンドツーエンドリレー503によって、再度AN515にループバックされ、伝送され得る。AN515は、ANのいずれか又は全てから、リレービーコン信号及びリレーされた(ループバックされた)アクセスノードビーコン信号の両方を受信することができる。リレービーコン信号の受信タイミングに対するアクセスノードビーコン信号の受信タイミングは、アクセスノードビーコン信号がいつエンドツーエンドリレーに到達したのかを示す。エンドツーエンドリレーによるリレーの後に、リレービーコン信号がANに到達するのと同時にアクセスノードビーコン信号が到達するようにそのタイミングを調整することで、アクセスノードビーコン信号を、リレービーコンと同期させてエンドツーエンドリレーに到達させる。全てのANにこの機能を行わせることで、全てのアクセスノードビーコン信号が、リレービーコンと同期させたエンドツーエンドリレーに到達することを可能にする。このプロセスにおける最後の工程は、各ANに、そのアクセスノードビーコン信号と同期させたそのアクセスノード固有の往路信号を伝送させることである。これは、後で説明されるようにタイムスタンプを使用して行うことができる。代替的に、CPSは、(例えば、配信ネットワーク介したタイミングが決定的である場合)それぞれの時間領域オフセットによってオフセットされたそれぞれのアクセスノード固有の往路信号をANに送信することによって、遅延等化を管理することができる。
【0158】
図36は、システムのタイミングを整列させるために使用されるPNシーケンスの説明図である。図の水平軸は、時間を表す。チップ2303のAN PNシーケンス2301は、第1のANからアクセスノードビーコン信号で伝送される。エンドツーエンドリレーでのこのシーケンスの到達の相対的時間は、PNシーケンス2305によって表される。ANからエンドツーエンドリレーへの伝搬遅延のため、AN PNシーケンス2301に対するPNシーケンス2305の時間シフトがある。リレーPNビーコンシーケンス2307は、リレービーコン信号のエンドツーエンドリレー内で発生され、そこから伝送される。時間TでのリレーPNビーコンシーケンス2307のPNチップ2315は、時間TでのAN PN受信信号2305のPNチップ2316と整列される。AN伝送タイミングが適切な量によって調整されたときに、AN PN受信信号2305のPNチップ2316は、リレーPNビーコン2307のPNチップ2315と整列される。PNシーケンス2305は、エンドツーエンドリレーからループバックされ、PNシーケンス2317は、ANで受信される。リレーPNビーコンのエンドツーエンドリレーから伝送されるPNシーケンス2319は、ANで受信される。PNシーケンス2317、2319は、ANで整列され、それらがエンドツーエンドリレーで整列させられたことを示すことに留意されたい。
【0159】
図37は、ANにおいて発生されたPNシーケンスのタイミングを適切に調整しなかったANの一実施例を示す。ANによって発生されたPNシーケンス2311は、リレーPNビーコンPNシーケンス2307からある量dtのオフセットを伴って、シーケンス2309として示されるエンドツーエンドリレーで受信されることに留意されたい。このオフセットは、ANのシーケンスを発生させるために使用されるタイミングのエラーによるものである。また、ANでのAN PNシーケンス2321の到達は、ANでのリレーPNビーコンPNシーケンス2323の到達から同じ量dtだけオフセットされることにも留意されたい。ANにおける信号処理は、このエラーを観察し、また、量dtだけタイミングを調整することによって伝送タイミングに対する修正を行って、PNシーケンス2321、2323を整列させることができる。
【0160】
図36及び図37では、概念の例示を簡単にするために、リレーPNビーコン及び全てのAN(ループバック)PN信号に同じPNチップ速度が使用されている。同じタイミング概念は、異なるPNチップ速度で適用することができる。図31及び図32に戻ると、タイムスライスインデックスtは、エンドツーエンドリレーにおいてANの各々から受信されるアクセスノード固有の往路信号を同期させるために使用することができる。例えば、タイムスライスインデックスtは、アクセスノード固有の往路信号516と多重化することができる。各ANは、それぞれのアクセスノードビーコン信号において伝送されるチップのPNシーケンスの対応するタイミング情報と整列される特定のタイムスライスインデックスtを有する、アクセスノード固有の往路信号のサンプルを伝送することができる。それぞれのアクセスノードビーコン信号が、ANとエンドツーエンドリレーとの間のそれぞれの経路遅延及び位相シフトを補償するように調整されているので、タイムスライスインデックスtと関連付けられるサンプルは、互いに対して正しくタイミング同期され、位相整列された状態で、エンドツーエンドリレーに到達する。
【0161】
ANがそれら自体のアクセスノードビーコン信号を受信する事例では、往路通信データも搬送している同じエンドツーエンドリレー通信ハードウェアを使用して、アクセスノードビーコン信号をループバックすることが可能である。これらの事例において、エンドツーエンドリレーにおけるトランスポンダの相対ゲイン及び/又は位相は、後で説明されるように調整することができる。
【0162】
図38は、例示的なAN515のブロック図である。AN 515は、受信機4002と、受信タイミング及び位相調整器4024と、リレービーコン信号復調器2511と、多重化装置4004と、ネットワークインターフェース4006と、コントローラ2523と、逆多重化装置4060と、伝送タイミング及び位相補償器4020と、伝送機4012とを備える。ネットワークインターフェース4006は、例えば、ネットワークポート4008を介してCPS505に接続することができる。
【0163】
復路リンク上で、受信機4002は、復路ダウンリンク信号527を受信する。復路ダウンリンク信号527は、例えば、(例えば、複数の受信/伝送信号経路、その他、を介して)エンドツーエンドリレーによってリレーされる復路アップリンク信号と、リレービーコン信号との複合物を含むことができる。受信機4002は、例えば、下方変換及びサンプリングを行うことができる。リレービーコン信号復調器2511は、デジタル化された複合復路信号907のリレービーコン信号を復調して、リレータイミング情報2520を得ることができる。例えば、リレービーコン信号復調器2511は、復調を行って、リレーPN符号と関連付けられるチップタイミングを復元し、デジタル化された複合復路信号527のサンプルために、エンドツーエンドリレーから、伝送時間に対応するタイムスタンプを発生させることができる。多重化装置4004は、(例えば、多重化した複合復路信号を形成するために)リレータイミング情報2520を、(例えば、ネットワークインターフェース4006を介して)CPS505に送信されるデジタル化された複合復路信号のサンプルと多重化することができる。リレータイミング情報2520を多重化することは、CPS505に送信するための、タイムスライスインデックスtに対応するサンプルのサブセットを発生させることを含むことができる。例えば、多重化装置4004は、図33図34、及び図35を参照して上で説明した復路タイムスライスビーム形成アーキテクチャへの入力のために、各タイムスライスインデックスtと関連付けられるサンプルのサブセットを出力することができる。多重化装置4004は、いくつかの事例において、サンプルの各サブセットについてサンプルをインターリーブするためのインターリーバ4044を含むことができる。
【0164】
往路リンク上で、ネットワークインターフェース4006は、(例えば、ネットワークポート4008を介して)AN入力信号4014を得ることができる。逆多重化装置4060は、AN入力信号4014を逆多重化して、アクセスノード固有の往路信号516、及びアクセスノード固有の往路信号516の伝送タイミングを示す往路信号伝送タイミング情報4016を得ることができる。例えば、アクセスノード固有の往路信号516は、(例えば、データサンプル、その他と多重化された)往路信号伝送タイミング情報を含むことができる。1つの実施例において、アクセスノード固有の往路信号516は、(例えば、データパケットにおいて)複数組のサンプルを備え、ここで、サンプルの各セットは、タイムスライスインデックスtと関連付けられる。例えば、サンプルの各セットは、図31図32、及び図35を参照して上で論じた往路タイムスライスビーム形成アーキテクチャに従って発生される、アクセスノード固有の往路信号516のサンプルとすることができる。逆多重化装置4060は、タイムスライスインデックスtと関連付けられるサンプルをデインターリーブするためのデインターリーバ4050を含むことができる。
【0165】
伝送タイミング及び位相補償器4020は、アクセスノード固有の往路信号516を受信し、バッファリングし、往路アップリンク信号521として適切な時期に伝送機4012によって伝送するための往路アップリンク信号サンプル4022を出力することができる。伝送機4012は、デジタル-アナログ変換及び上方変換を行って、往路アップリンク信号521を出力することができる。往路アップリンク信号サンプル4022は、アクセスノード固有の往路信号516及びアクセスノードビーコン信号2530(例えば、ループバックPN信号)を含むことができ、これらは、伝送タイミング情報(例えば、PN符号チップタイミング情報、フレームタイミング情報、その他)を含むことができる。伝送タイミング及び位相補償器4020は、往路信号伝送タイミング及び位相情報4016がアクセスノードビーコン信号2530の対応する伝送タイミング及び位相情報に同期されるように、アクセスノード固有の往路信号516をアクセスノードビーコン信号2530と多重化することができる。
【0166】
いくつかの実施例において、アクセスノードビーコン信号2530の発生は、AN515において(例えば、アクセスノードビーコン信号発生器2529において)局部的に行われる。代替的に、アクセスノードビーコン信号2530の発生は、別個の構成要素(例えば、CPS505)において行って、(例えば、ネットワークインターフェース4006を介して)AN515に送信することができる。上で論じたように、アクセスノードビーコン信号2530は、ANとエンドツーエンドリレーとの間の経路差及び位相シフトについて往路アップリンク信号521を補償するために使用することができる。例えば、アクセスノードビーコン信号2530は、往路アップリンク信号521において伝送し、受信機4002において受信されるようにエンドツーエンドリレーによってリレーすることができる。コントローラ2523は、リレーされたアクセスノードビーコン信号から(例えば、復調、その他、によって)得られるリレーされた伝送タイミング及び位相情報4026と、リレービーコン信号から(例えば、復調、その他、によって)得られる受信タイミング及び位相情報4028とを比較することができる。コントローラ2523は、伝送タイミング及び位相補償器4020に入力するためのタイミング及び位相調整2524を発生させ、アクセスノードビーコン信号2530を調整して、経路遅延及び位相シフトを補償することができる。例えば、アクセスノードビーコン信号2530は、PN符号及びフレームタイミング情報(例えば、フレーム番号の1つ又は2つ以上のビット、その他)を含むことができる。伝送タイミング及び位相補償器4020は、例えば、経路遅延を粗補償するためのフレームタイミング情報を調整することができる(例えば、リレーされたアクセスノードビーコン信号がリレービーコン信号の対応するフレームタイミング情報と粗整列された、リレーされた伝送フレームタイミング情報を有するように、アクセスノードビーコン信号のフレームタイミング情報を出力し、PNコードのどのチップをLSBとみなすのかを変更する、その他)。加えて、又は代替的に、伝送タイミング及び位相補償器4020は、往路アップリンク信号サンプル4022に対するタイミング及び位相調整を行って、リレーされた伝送タイミング及び位相情報4026と受信タイミング及び位相情報4028との間のタイミング又は位相差を補償することができる。例えば、アクセスノードビーコン信号2530が局部発振器に基づいて発生される場合、局部発振器と受信したリレービーコン信号との間のタイミング又は位相差は、往路アップリンク信号サンプル4022に対するタイミング及び位相調整によって修正することができる。いくつかの実施例において、アクセスノードビーコン信号の復調は、AN515において(例えば、アクセスノードビーコン信号復調器2519において)局部的に行われる。代替的に、アクセスノードビーコン信号の復調は、別個の構成要素(例えば、CPS505)において行うことができ、リレーされた伝送タイミング及び位相情報4026は、(例えば、ネットワークインターフェース4006を介して)他の信号送信で得ることができる。例えば、深いフェーディングは、他の信号送信よりも高い電力での伝送がなければ、AN自体のリレーアクセスノードビーコン信号の受信及び復調を困難にする場合があり、これは、通信信号のパワーバジェットを低減させる場合がある。したがって、複数のAN515からのリレーされたアクセスノードビーコン信号の組み合わせ受信は、リレーされたアクセスノードビーコン信号の有効な受信電力及び復調精度を増加させることができる。したがって、単一のAN515からのアクセスノードビーコン信号の復調は、複数のAN515において受信されるダウンリンク信号を使用して行うことができる。アクセスノードビーコン信号の復調は、AN515の大部分又は全てからのアクセスノードビーコン信号の信号情報も含むことができる複合復路信号907に基づいてCPS505において行うことができる。所望であれば、アクセスノードビーコン信号のエンドツーエンドビーム形成は、アクセスノードビーコンアップリンク(例えば、C)、リレーループバック(例えば、E)、及び/又はアクセスノードビーコンダウンリンク(例えば、C)を考慮して行うことができる。
フィーダリンク障害の除去
【0167】
全てのANからのエンドツーエンドリレーに対する信号経路の遅延等化に加えて、ビーム形成の前に、フィーダリンクによって誘発される位相シフトを除去することができる。エンドツーエンドリレーとM個のANと間の各リンクの位相シフトは異なる。各リンクの異なる位相シフトの原因としては、伝播経路の長さ、シンチレーションなどの大気条件、ドップラー周波数シフト、及び異なるAN発振器のエラーが挙げられるが、これらに限定されない。これらの位相シフトは、一般に、各ANについて異なり、また、(シンチレーション、ドップラーシフト、及びAN発振器エラーの差により)時間的に変動する。動的なフィーダリンク障害を除去することによって、ビーム加重値が適応する速度は、フィーダリンクのダイナミックスを追跡するのに十分に速いビーム加重値が適応する代替例よりも遅くすることができる。
【0168】
復路方向において、ANに対するフィーダダウンリンク障害は、リレーPNビーコン及びユーザデータ信号(例えば、復路ダウンリンク信号)の両方に共通である。いくつかの事例において、リレーPNビーコンのコヒーレントな復調は、復路データ信号からこれらの障害の大部分又は全部を除去するために使用されるチャネル情報を提供する。いくつかの事例において、リレーPNビーコン信号は、連続的に伝送され、通信データと共に帯域内に位置付けられる既知のPNシーケンスである。この帯域内のPN信号の等価(又は有効)等方放射電力(EIRP)は、通信データに対する干渉が最大許容レベルよりも大きくないように設定される。いくつかの事例において、復路リンクのフィーダリンク障害除去プロセスは、リレーPNビーコン信号の受信タイミング及び位相のコヒーレントな復調及び追跡を含む。例えば、リレービーコン信号復調器2511は、リレーPNビーコン信号と局部的基準信号(例えば、局部発振器又はPLL)との比較に基づいて、受信タイミング及び位相調整2512を決定して、フィーダリンク障害を補償することができる。復元されたタイミング及び位相差は、次いで、(例えば、受信タイミング及び位相調整器4024によって)復路ダウンリンク信号から除去され、したがって、通信信号(例えば、復路ダウンリンク信号527)からフィーダリンク障害を除去する。フィーダリンク障害除去後に、ビームからの復路リンク信号は、全てのANにおいて共通の周波数エラーを有し、したがって、ビーム形成に適している。共通の周波数エラーとしては、ユーザ端末周波数エラー、ユーザ端末アップリンクドップラー、エンドツーエンドリレー周波数変換周波数エラー、リレーPNビーコン周波数エラーによる貢献が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0169】
往路において、各ANからのアクセスノードビーコン信号は、フィーダアップリンク障害の除去を補助するために使用することができる。フィーダアップリンク障害は、往路リンク通信データ(例えば、アクセスノード固有の信号)並びにアクセスノードビーコン信号に課される。アクセスノードビーコン信号のコヒーレントな復調は、(例えば、リレービーコン信号に対する)アクセスノードビーコン信号のタイミング及び位相差を復元するために使用することができる。復元されたタイミング及び位相差は、次いで、アクセスノードビーコン信号がリレービーコン信号と同位相で到達するように、伝送アクセスノードビーコン信号から除去される。
【0170】
いくつかの事例において、往路フィーダリンク除去プロセスは、ANからエンドツーエンドリレーへの、及びループ構造内への戻りの経路遅延を有する位相ロックループ(PLL)である。いくつかの事例では、ANからエンドツーエンドリレーへの、及びANへの戻りの往復遅延が顕著であり得る。例えば、エンドツーエンドリレーとして機能する地球同期衛星は、約250ミリ秒(ms)の往復遅延を発生させる。このループを大きい遅延の存在下で安定した状態に保つために、非常に低いループ帯域を使用することができる。250msの遅延の場合、PLL閉ループ帯域幅は、一般的に、1Hz未満であり得る。そのような事例では、高い安定性の発振器を衛星及びANの両方で使用して、図39においてブロック2437(下記を参照されたい)によって示されるように、信頼性の高い位相ロックを維持することができる。
【0171】
いくつかの事例において、アクセスノードビーコン信号は、較正間隔の間にだけ伝送されるバースト信号である。較正間隔の間には、アクセスノードビーコン信号に対するこの干渉を除去するために、通信データが伝送されない。較正間隔の間にいかなる通信データも伝送されないので、通信データ中にブロードキャストされる場合に必要とされる伝送電力と比較して、アクセスノードビーコン信号の伝送電力を大きくすることができる。これは、通信データとの干渉を引き起こすいかなる懸念事項もない(この時点で、通信データが存在していない)からである。この技術は、アクセスノードビーコン信号が較正間隔の間に伝送されるときに、該アクセスノードビーコン信号の高い信号対雑音比(SNR)を可能にする。較正間隔の発生頻度は、較正間隔の間の経過時間の逆数である。各較正間隔が位相のサンプルをPLLに提供するので、この較正頻度は、この離散時間PLLのサンプリングレートである。いくつかの事例において、サンプリングレートは、僅かなエイリアシング量を有するPLLの閉ループ帯域幅をサポートするのに十分な高さである。較正周波数(ループサンプリングレート)及び較正間隔の積は、プローブ信号を発するチャネルからの追加的な干渉を伴わなければ通信データにエンドツーエンドリレーを使用することができない僅かな時間を表す。いくつかの事例では、0.1未満の値が使用され、いくつかの事例では、0.01未満の値が使用される。
【0172】
図39は、例示的なANトランシーバ2409のブロック図である。ANトランシーバ2409への入力2408は、(例えば、複数の周波数サブ帯域のうちの1つについて)AN515によって受信されるエンドツーエンド復路リンク信号を受信する。入力2408は、下方変換器(D/C)2503の入力2501に結合される。D/C2503の出力は、アナログ-デジタル変換器(A/D)2509に結合される。A/D2509の出力は、Rx時間調整器2515及び/又はRx位相調整器2517に結合される。Rx時間調整器2515及びRx位相調整器2517は、図38の受信タイミング及び位相調整器4024の態様を例示することができる。D/C2503は、直交下方変換器である。故に、D/C2503は、同相及び直交出力をA/D2509に出力する。受信信号は、通信信号(例えば、ユーザ端末によって伝送される復路アップリンク信号の複合物)、アクセスノードビーコン信号(例えば、同じAN及び/又は他のANから伝送される)、及びリレービーコン信号を含むことができる。デジタルサンプルは、リレービーコン信号復調器2511に結合される。リレービーコン信号復調器2511は、リレービーコン信号を復調する。更に、リレービーコン信号復調器2511は、時間制御信号2513及び位相制御信号2514を発生させて、受信リレービーコン信号に基づいてフィーダリンク障害を除去する。そのような障害としては、ドップラー、AN周波数エラー、シンチレーション効果、経路長変化、その他、が挙げられる。リレービーコン信号のコヒーレントな復調を行うことによって、位相ロックループ(PLL)を使用して、これらのエラーの大部分又は全部を修正することができる。リレービーコン信号におけるエラーを修正することによって、(例えば、そのようなエラーは、リレービーコン信号、アクセスノードビーコン信号、及び通信信号に共通であるので)フィーダリンク上の通信信号及びアクセスノードビーコン信号における対応するエラーも同様に修正される。フィーダリンク障害を除去した後に、ユーザ端末517からのエンドツーエンド復路リンク通信信号は、名目上、M個のAN515の各々において同じ周波数エラーを有する。その共通のエラーとしては、ユーザ端末周波数エラー、ユーザリンクドップラー、エンドツーエンドリレー周波数変換エラー、及びリレービーコン信号周波数エラーが挙げられる。
【0173】
フィーダリンク障害を除去したデジタルサンプルは、多重化装置2518に結合され、これは、図38の多重化装置4004の一実施例であり得る。多重化装置2518は、サンプルを、リレービーコン信号復調器2511からのリレータイミング情報2520と関連付ける(例えば、タイムスタンプする)。多重化装置2518の出力は、ANトランシーバ2409の出力ポート2410に結合される。出力ポート2410は、多重化装置2413に結合され、また、インターフェース2415(図40を参照されたい)を通して、CPS505に結合される。CPS505は、次いで、受信デジタルサンプルと関連付けられるタイムスタンプを使用して、AN515の各々から受信されるデジタルサンプルを整列させることができる。加えて、又は代替的に、フィーダリンク障害の除去は、CPS505において行うことができる。例えば、埋め込まれたリレービーコン信号を有するエンドツーエンド復路リンク信号のデジタルサンプルは、AN515からCPS505に送信することができ、CPS505は、複合復路信号の各々の同期タイミング情報(例えば、埋め込まれたリレービーコン信号)を使用して、それぞれの複合復路信号のそれぞれの調整を決定して、ダウンリンクチャネル障害を補償することができる。
【0174】
アクセスノードビーコン信号2530は、アクセスノードビーコン信号発生器2529によって局部的に発生させることができる。アクセスノードビーコン信号復調器2519は、(例えば、エンドツーエンドリレーによってリレーされ、入力2408において受信した後に)AN515によって受信されるアクセスノードビーコン信号を復調する。リレービーコン信号復調器2511は、受信リレータイミング及び位相情報信号2521をコントローラ2523に提供する。コントローラ2523はまた、アクセスノードビーコン信号復調器2519から、リレーされた伝送タイミング及び位相情報信号2525を受信する。コントローラ2523は、受信リレータイミング及び位相情報を、リレーされた伝送タイミング及び位相情報と比較し、粗時間調整信号2527を発生させる。粗時間調整信号2527は、アクセスノードビーコン信号発生器2529に結合される。アクセスノードビーコン信号発生器2529は、AN515からエンドツーエンドリレー503に伝送される埋め込み伝送タイミング情報を有する、アクセスノードビーコン信号2530を発生させる。上の考察において述べたように、リレータイミング及び位相情報(リレービーコン信号に埋め込まれる)と伝送時間及び位相情報(アクセスノードビーコン信号に埋め込まれる)との差は、伝送タイミング及び位相情報を調整して、リレーされた伝送タイミング及び位相情報を、受信したリレータイミング及び位相情報と同期させるために使用される。粗時間は、アクセスノードビーコン信号発生器2529への信号2527によって調整され、微細時間は、Tx時間調整器2539への信号2540によって調整される。受信したリレータイミング及び位相情報2521と同期されるアクセスノードビーコン信号復調器2519からの、リレーされた伝送タイミング及び位相情報2525によって、アクセスノードビーコン信号発生器2529は、伝送されるCPS505からのアクセスノードビーコン信号2530及びアクセスノード固有の往路信号の同期を支援するタイムスタンプ2531を発生させる。すなわち、CPS505からのデータサンプルは、関連付けられるデータサンプルがいつエンドツーエンドリレー503に到達するように所望されたのかを示すタイムスタンプ2535と共に、入力ポート2423で受信される。バッファ、時間整列、及び加算モジュール2537は、CPS505から結合されるデータサンプルをバッファリングし、タイムスタンプ2535、2531に基づいて、それらをアクセスノードビーコン信号発生器2529からのサンプルと加算する。タイムスタンプによって示されたときに、同一の時間を有するPNサンプル及び通信データサンプルが共に加算される。この実施例では、複数のビーム信号(x(n)×b)が、CPS505において共に加算され、複数のビーム信号の複合物を備えるアクセスノード固有の往路信号が、CPS505によってANに送信される。
【0175】
ANによって適切に整列されたときに、データサンプルは、所望の時間に(例えば、他のANからの同じデータサンプルの到達と同時に)エンドツーエンドリレー503に到達する。伝送時間調整器2539は、時間コントローラモジュール2523からの微細時間コントローラ出力信号2540に基づいて、微細時間調整を行う。伝送位相調整器2541は、アクセスノードビーコン信号復調器2519によって発生される位相制御信号2542に応答して、信号の位相調整を行う。伝送時間調整器2539及び伝送位相調整器2541は、例えば、図38の伝送タイミング及び位相補償器4020の態様を例示することができる。
【0176】
伝送位相調整器2541の出力は、デジタル/アナログ変換器(D/A)2543の入力に結合される。D/A2543からの直交アナログ出力は、上方変換器(U/C)2545に結合されて、HPA2433(図40を参照されたい)によってエンドツーエンドリレー503に伝送される。アクセスノードビーコン信号復調器2519によって提供される振幅制御信号2547は、振幅フィードバックをU/C2545に提供して、アップリンクレインフェードなどの項目を補償する。
【0177】
いくつかの事例において、アクセスノードビーコン信号2530のために各ANによって使用されるPN符号は、他の全てのANによって使用されるものと異なる。いくつかの事例において、アクセスノードビーコン信号のPN符号は、リレービーコン信号において使用されるリレーPN符号と各々異なる。故に、各AN515は、それ自体のアクセスノードビーコン信号と、他のAN515のアクセスノードビーコン信号を区別することが可能であり得る。AN515は、それ自体のアクセスノードビーコン信号と、リレービーコン信号を区別することができる。
【0178】
先に説明したように、カバーエリアの中の任意の地点からそのエリアの中の任意の他の地点へのエンドツーエンドゲインは、いくつかのポイントツーポイントチャネルについて非常に深いフェードをもたらすことができるL個の異なる経路を有する多重経路チャネルである。伝送ダイバーシティ(往路リンク)及び受信ダイバーシティ(復路リンク)は、深いフェードを緩和する際に非常に有効あり、また、通信システムが機能することを可能にする。しかしながら、アクセスノードビーコン信号の場合、伝送及び受信ダイバーシティは存在しない。その結果、ANからの信号を同じANに戻す伝送である、ループバック信号のポイントツーポイントリンクは、平均よりもはるかに低いエンドツーエンドゲインを経験し得る。平均を20dB下回る値は、多数の受信/伝送信号経路(L)によって起こり得る。これらの僅かな低エンドツーエンドゲインは、それらのANのより低いSNRをもたらし、また、リンククロージャを困難にし得る。故に、いくつかの事例において、ANでは、より高いゲインアンテナが使用される。代替的に、図16の例示的なトランスポンダを参照すると、位相調整器418を受信/伝送信号経路の各々に含むことができる。位相調整器418は、(例えば、地球上の制御センターからのテレメトリ、追跡、及びコマンド(TT&C)リンクの制御下で)位相シフトコントローラ427によって、個々に調整することができる。相対位相を調整することは、低ゲインループバック経路のエンドツーエンドゲインを増加させる際に有効であり得る。例えば、ある目的は、位相シフト設定を選択して、最悪の事例のループバックゲイン(ANからそれ自体に戻るゲイン)の値を上昇させることであり得る。位相の選択は、一般に、カバーエリアの中の全ての地点について評価されたときのゲインの、該カバーエリアの中の全ての他の地点への分布を変化させないが、低ゲインループバック経路のゲインを増加させることができることに留意されたい。
【0179】
精密にするために、M個のAN515の各々から他の全てのAN515への一組のゲインを考慮する。M個のゲインがあり、そのうち、それらのM個だけがループバック経路である。2つのゲイン分布を考慮すると、第1のゲイン分布は、M個全ての経路のヒストグラムを編集することによって推定することができる、全ての経路(M個)の総分布である。カバーエリア全体にわたって均等に分布したANの場合、この分布は、カバーエリアの中の任意の地点から任意の多の地点へのエンドツーエンドゲインの分布を表すことができる。第2の分布は、M個のループバック経路だけのヒストグラムを編集することによって推定することができる、ループバックゲイン分布(ループバック分布)である。多くの事例において、受信/伝送信号経路の位相設定(及び随意に、ゲイン設定)の特別な選択は、総分布に対して大幅な変更を提供しない。これは、要素を受信するためにランダム又はインターリーブマッピングを伴うときに特に当てはまる。しかしながら、大部分の事例において、ループバック分布は、位相(及び随意に、ゲイン)設定の(ランダム値とは対照的に)特別な選択によって改善することができる。これは、一組のループバックゲインが(M個の総経路とは対照的に)M個の経路からなり、位相及びゲイン調整の自由度の数がLであるからである。しばしば、時間Lは、Mとほぼ同じであり、これは、特別な位相選択による低ループバックゲインの大幅な改善を可能にする。この別の見方は、特別な位相選択が必ずしも低エンドツーエンドゲインを除去するわけではなく、むしろ、それらを、一組のループバックゲイン(一組にM個の要素)から一組のループバックゲイン(M-M個の要素)に移動させることである。非自明なMの値の場合、より大きい組は、しばしば、前者よりもはるかに大きい。
【0180】
AN515は、1つ以上の周波数サブ帯域を処理することができる。図40は、多重周波数サブ帯域が別々に処理される、例示的なAN515のブロック図である。エンドツーエンド復路リンク523(図5を参照されたい)上で、AN515は、低雑音増幅器(LNA)2401を通して、エンドツーエンドリレー503から復路ダウンリンク信号527を受信する。増幅信号は、LNA2401から電力分割器2403に結合される。電力分割器2403は、信号を複数の出力信号に分割する。各信号は、電力分割器2403の出力ポート2405、2407のうちの1つで出力される。出力ポート2407のうちの1つは、試験ポートとして提供することができる。他のポート2405は、複数のANトランシーバ2409(1つだけ示される)のうちの対応する1つの入力2408に結合される。ANトランシーバ2409は、対応するサブ帯域で受信される信号を処理する。ANトランシーバ2409は、上で詳細に論じたいくつかの機能を行う。ANトランシーバ2409の出力2410は、サブ帯域多重化装置2413の入力ポート2411に結合される。出力は、サブ帯域多重化装置2413及び配信ネットワークインターフェース2415への出力において組み合わせられる。インターフェース2415は、配信ネットワークを通じたAN515とCPS505との間のデータのやり取りのためのインターフェースを提供する(図5を参照されたい)。周波数サブ帯域を処理することは、エンドツーエンドリレー及びANを実現するために使用されるRF構成要素に関する性能要件を軽減する際に有利であり得る。例えば、3.5GHzの帯域幅を(例えば、Ka帯域システムで使用できるように)を7つのサブ帯域に分割することによって、各サブ帯域は、僅か500MHzの幅になる。すなわち、各アクセスノード固有の往路信号は、異なるサブ帯域と関連付けられる(例えば、往路ユーザビームカバーエリアの異なるサブセットと関連付けられる)複数のサブ信号を含むことができ、ANトランシーバ2409は、サブ信号を異なる搬送周波数に上方変換することができる。異なるサブ帯域の間の振幅及び位相の変動を、別個のビーム形成加重値、較正、その他によって異なるサブ帯域を補償することができるので、この帯域幅分割は、より低い許容度の構成要素を使用することを可能にする。当然、他のシステムは、異なる数のサブ帯域及び/又は試験ポートを使用することができる。いくつかの事例は、単一のサブ帯域を使用することができ、また、本明細書に示される全ての構成要素を含まない(例えば、電力分割器2403及びmux2413を省略する)ことができる。
【0181】
エンドツーエンド往路リンク501上で、データは、インターフェース2415によってCPS505から受信される。受信したデータは、サブ帯域逆多重化装置2419の入力2417に結合される。サブ帯域逆多重化装置2419は、データを複数のデータ信号に分割する。データ信号は、サブ帯域逆多重化装置2419の出力ポート2421からANトランシーバ2409の入力ポート2423に結合される。ANトランシーバ2409の出力ポート2425は、加算器モジュール2429の入力ポート2427に結合される。加算器モジュール2429は、7つのANトランシーバ2409から出力される信号を加算する。加算器モジュール2429の出力ポート2431は、高電力増幅器(HPA)2435の入力ポート2433に、加算器モジュール2429の出力を結合させる。HPA2435の出力は、エンドツーエンドリレー503に出力される信号を伝送するアンテナ(図示せず)に結合される。いくつかの事例では、安定した基準周波数源を提供するために、超安定発振器2437がANトランシーバ2409に結合される。
ビーム加重値の計算
【0182】
復路リンク上の信号の例示的な説明である図8に戻ると、エンドツーエンド復路リンクの数学モデルを使用して、該リンクを以下のように説明することができる。
式中、
xは、伝送信号のK×1個の列ベクトルである。いくつかの事例において、xの要素毎の振幅二乗は、1(均等伝送電力)であると定義される。いくつかの事例では、これが常に当てはまるわけではない。
yは、ビーム形成後の受信信号のK×1個の列ベクトルである。
Arは、L×K個の復路アップリンク放射マトリックスである。要素alkは、ビームKに位置付けられる基準場所から、Rxアレイの中のl番目(文字「el」)の受信アンテナ要素406への経路のゲイン及び位相を含む。いくつかの事例において、復路アップリンク放射マトリックスの値は、チャネルデータストア941に記憶される(図30を参照されたい)。
Eは、L×L個のペイロードマトリックスである。要素eijは、受信アレイのj番目のアンテナ要素406から伝送アレイのi番目のアンテナ要素409への信号のゲイン及び位相を定義する。いくつかの事例において、(電子部品の有限の絶縁によってもたらされる)経路間の偶発的なクロストークを除いて、Eマトリックスは、対角マトリックスである。マトリックスEは、マトリックスの全ての要素の振幅二乗の加算がLであるように正規化することができる。いくつかの事例において、ペイロードマトリックスの値は、チャネルデータストア941に記憶される(図29を参照されたい)。
Ctは、M×L個のダウンリンク放射マトリックスである。要素cmlは、Txアレイの中のl番目(文字「el」)のアンテナ要素から、M個のAN515の中のm番目のAN515への経路のゲイン及び位相を含む。いくつかの事例において、復路ダウンリンク放射マトリックスの値は、チャネルデータストア941に記憶される(図29を参照されたい)。
Hretは、M×K個の復路チャネルマトリックスであり、これは、Ct×E×Arの積に等しい。
ulは、複合ガウス雑音のL×1個の雑音ベクトルである。アップリンク雑音の共分散は、
である。は、L×L個の単位マトリックスである。
σは、雑音分散である。
は、アップリンク上で経験され、一方で、
は、ダウンリンク上で経験される。
dlは、複合ガウス雑音のM×1個の雑音ベクトルである。ダウンリンク雑音の共分散は、
は、M×M個の単位マトリックスである。
Bretは、エンドツーエンド復路リンクビーム加重値のK×M個のマトリックスである。
【0183】
実施例は、一般に、往路及び復路エンドツーエンド多重経路チャネルの間に、ある程度の類似性があるとみなす様式において(例えば、図6図11を参照して)上で説明されている。例えば、往路及び復路チャネルマトリックスは、一般に、M、K、E、及び他のモデルを参照して、上で説明されている。しかしながら、そのような説明は、更に明確にする目的で説明を簡単にすることだけを意図したものであり、往路及び復路方向において同一の構成を有する事例だけに限定することを意図しない。例えば、いくつかの事例では、同じトランスポンダが往路及び復路トラフィックの両方に使用され、それに応じて、ペイロードマトリックスEは、往路及び復路エンドツーエンドビーム形成の両方(及び対応するビーム加重値計算)について同じにすることができる。他の事例では、異なるトランスポンダが往路及び復路トラフィックに使用され、異なる往路ペイロードマトリックス(Efwd)及び復路ペイロードマトリックス(Eret)を使用して、対応するエンドツーエンド多重経路チャネルをモデル化し、対応するビーム加重値を計算することができる。同様に、いくつかの事例では、同じM個のAN515及びK個のユーザ端末517が、往路及び復路エンドツーエンド多重経路チャネルの両方の一部とみなされる。他の事例において、M及びKは、往路及び復路方向における、AN515及び/若しくはユーザ端末517の異なるサブセット、並びに/又は異なる数のAN515及び/若しくはユーザ端末517を指すことができる。
【0184】
ビーム加重値は、システム要件を満たすために、数多くの方法で計算することができる。いくつかの事例において、ビーム加重値は、エンドツーエンドリレーの配備後に計算される。いくつかの事例において、ペイロードマトリックスEは、配備前に測定される。いくつかの事例において、ビーム加重値は、各ビームの信号対干渉プラス雑音(SINR)を増加させる目的で計算され、以下のように計算することができる。
式中、Rは、受信信号の共分散であり、(は、共役転置(Hermetian)演算子である。
【0185】
K×M個の復路ビーム加重マトリックスBretのk、m要素は、ユーザ端末からm番目のAN515へのビームをk番目のユーザビームに形成するための加重値を提供する。故に、いくつかの事例において、復路ユーザビームを形成するために使用される復路ビーム加重値の各々は、エンドツーエンド多重経路チャネルの各々(例えば、エンドツーエンド復路多重経路チャネルの各々)について、エンドツーエンド復路ゲイン(すなわち、チャネルマトリックスHretの要素)を推定することによって計算される。
【0186】
式2は、Rが、式3で提供されるような受信信号の共分散である場合に当てはまる。したがって、式1、2の全てのマトリックスが既知であるときには、エンドツーエンドビームを形成するために使用されるビーム加重値を直接決定することができる。
【0187】
この一組のビーム加重値は、xとyとの間の平均二乗誤差を低減させる。また、K個のエンドツーエンド復路リンク信号525の各々(K本のビームの各々から生じる)のエンドツーエンド信号対雑音プラス干渉比(SINR)を増加させる。
【0188】
式3の第1項
は、(無相関の)ダウンリンク雑音の共分散である。式3の第2項
は、(ANにおいて相関される)アップリンク雑音の共分散である。式3の第3項HHは、信号の共分散である。アップリンク雑音分散をゼロに設定し、最後の項(HH)を無視することで、一組の加重値がもたらされ、該加重値は、M個のAN515の各々で受信信号を位相整列させることによって、信号対ダウンリンク雑音比を増加させる。ダウンリンク雑音分散をゼロに設定し、第3項を無視することで、アップリンクSINRを増加させる一組の加重値がもたらされる。アップリンク雑音分散及びダウンリンク雑音分散をゼロに設定することで、搬送波対干渉波(C/I)比を増加させる脱相関受信機をもたらす。
【0189】
いくつかの事例において、ビーム加重値は、Bretの任意の行の振幅二乗の加算が、加算して1になるように正規化される。
【0190】
いくつかの事例において、式2の解は、マトリックスAr、Ct、及びE、並びに雑音ベクトルnul及びndlの分散についての演繹的知識によって決定される。マトリックスの要素値の知識は、エンドツーエンドリレーの関連する構成要素の製造及び試験中に行われる測定において得ることができる。これは、マトリックスの値がシステムの動作中に大幅に変化することが予想されないシステムについてうまく機能し得る。しかしながら、いくつかのシステム、特により高い周波数帯域において動作するシステムの場合は、そのような予想が存在しない場合がある。そのような事例において、マトリックスAr、Ct、及びEは、エンドツーエンドリレーが配置されるクラフト(例えば、衛星)の配備後に推定することができる。
【0191】
加重値を設定するために演繹的情報が使用されないいくつかの事例において、式2の解は、R及びHの値を推定することによって決定することができる。いくつかの事例において、各ユーザビームカバーエリア519の中央の指定されたユーザ端末517は、較正期間中に、既知の信号xを伝送する。AN515で受信されるベクトルは、以下の通りである。
u=Hx+Ct E nul+ndl 式4
【0192】
一実施例において、CPS505は、以下の関係に基づいてR及びHの値を推定する。
【0193】
は、共分散マトリックスRの推定値であり、
は、チャネルマトリックスHの推定値であり、
は、相関ベクトルの推定値であり、
は、アップリンク伝送によって導入される周波数エラーを有する伝送ベクトルのk番目の構成要素の共役である。いくつかの事例において、復路通信データは、較正期間中に伝送されない。すなわち、
の値を、受信したベクトルuから上記の式を使用して決定することを可能にするために、ANに知られている較正信号だけが、較正期間中にエンドツーエンド復路リンク上を伝送される。これは、次に、
の値を決定することを可能にする。共分散マトリックス推定値
及びチャネルマトリックス推定値
はどちらも、較正期間中に受信される信号に基づいて決定される。
【0194】
いくつかの事例において、CPS505は、(例えば、xが知られていないときであっても)通信データが存在する間、共分散マトリックス
を推定することができる。これは、
が受信信号uだけに基づいて決定されるという事実から分かることができる。それでも、
の値は、較正信号だけが復路リンク上を伝送される較正期間中に受信される信号に基づいて推定される。
【0195】
いくつかの事例において、チャネルマトリックス
及び共分散マトリックス
の両方の推定は、通信データが復路リンク上を伝送されている間に行われる。この事例において、共分散マトリックス
は、上で述べたように推定される。しかしながら、xの値は、受信信号を復調することによって決定される。xの値が分かると、チャネルマトリックスは、式6及び式7において上で述べたように推定することができる。
【0196】
ビーム形成後の信号及び信号の干渉構成要素は、ベクトルBret H xに含まれる。ビームの各々の信号及び干渉電力は、K×K個のマトリックスBret Hに含まれる。Bret Hのk番目の対角要素の電力は、ビームkからの所望の信号電力である。対角要素以外の行kの全ての要素の振幅二乗の加算は、ビームkの干渉電力である。したがって、ビームkのC/Iは、以下の通りである。
式中、skjは、Bret Hの要素である。アップリンク雑音は、ベクトルBret Ct Enulに含まれ、該ベクトルは、
のK×K個の共分散マトリックスを有する。共分散マトリックスのk番目の対角要素は、ビームkにおけるアップリンク雑音電力を含む。ビームkのアップリンク信号対雑音比は、次いで、下記のように計算される。
【0197】
式中、tkkは、アップリンク共分散マトリックスのk番目の対角要素である。ダウンリンク雑音は、ベクトルBret ndlに含まれ、該ベクトルは、正規化されたビーム加重値による
の共分散を有する。したがって、ダウンリンク信号対雑音比は、以下の通りである。
【0198】
エンドツーエンドSINRは、式8~式10の組み合わせである。
【0199】
上記の式は、ペイロードマトリックスEが与えられたときに、どのようにエンドツーエンドSINRを算出するのかを説明する。ペイロードマトリックスは、Eの要素の各々のゲイン及び位相の知的な選択によって構築することができる。いくつかの効用メトリック(一般に、上で計算されるK個のビームSINRの関数である)を最適化するEの対角要素のゲイン及び位相は、L個のトランスポンダ411の各々に位相シフタ418を設定することによって選択し、実現することができる。候補の効用関数としては、SINRの加算(総SINR)、Log(1+SINR)(総スループットに比例)の加算、又はチャネルマトリックスにおける総電力Hが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの事例において、ゲイン及び位相をカスタマイズすることによる効用関数の改善は、非常に小さく、また、意味をなさない。これは、アンテナ要素のランダム又はインターリーブマッピングが使用されるときに当てはまることがある。いくつかの事例において、効用関数は、受信/伝送信号ゲイン及び位相の特別な選択によって非自明な量だけ改善することができる。
【0200】
図9に戻ると、エンドツーエンド往路リンク501の数学モデルは、以下のようにリンク501を説明するために使用することができる。
式中、
xは、伝送信号のK×1個の列ベクトルである。xの要素毎の振幅二乗は、1(等しい信号電力)であると定義される。いくつかの事例において、不等な伝送電力は、往路ビーム加重値の選択によって達成することができる。
yは、受信信号のK×1個の列ベクトルである。
Crは、L×M個の往路アップリンク放射マトリックスである。要素clmは、m番目のAN515からアンテナのエンドツーエンドリレー503上のRxアレイのl番目(文字「el」)の受信アンテナ要素406への経路2002のゲイン及び位相を含む。いくつかの事例において、往路アップリンク放射マトリックスの値は、チャネルデータストア921に記憶される(図29を参照されたい)。
Eは、L×L個のペイロードマトリックスである。要素eijは、j番目の受信アレイアンテナ要素から伝送アレイのi番目のアンテナ要素への信号のゲイン及び位相を定義する。経路(電子部品の有限の絶縁によってもたらされる)間の偶発的なクロストークを除いて、Eマトリックスは、対角マトリックスである。いくつかの事例において、マトリックスEは、マトリックスの全ての要素の振幅二乗の加算がLであるように正規化される。いくつかの事例において、ペイロードマトリックスの値は、チャネルデータストア921に記憶される(図29を参照されたい)。
Atは、K×L個の往路ダウンリンクは、放射マトリックスである。要素aklは、エンドツーエンドリレー503のTxアレイのアンテナ要素L(文字「el」)からユーザビームkの基準場所への経路のゲイン及び位相を含む。いくつかの事例において、往路ダウンリンク放射マトリックスの値は、チャネルデータストア921に記憶される(図29を参照されたい)。
Hfwdは、K×M個の往路チャネルマトリックスであり、これは、積AECに等しい。
ulは、複合ガウス雑音のL×1個の雑音ベクトルである。アップリンク雑音の共分散は、以下の通りである。
式中、Iは、L×L個の単位マトリックスである。
dlは、複合ガウス雑音のK×1個の雑音ベクトルである。ダウンリンク雑音の共分散は、以下の通りである。
式中、Iは、K×K個の単位マトリックスである。
Bfwdは、エンドツーエンド往路リンクビーム加重値のM×K個のビーム加重マトリックスである。
【0201】
ユーザビームkのビーム加重値は、Bfwdの列kの要素である。復路リンクと異なり、ビームkのC/Iは、ビームkのビーム加重値によって決定されない。ビームkのビーム加重値は、アップリンク信号対雑音比(SNR)及びダウンリンクSNR、並びにC/Iにおける搬送波(C)電力を決定する。しかしながら、ビームkの干渉電力は、ビームkを除いて、他の全てのビームのビーム加重値によって決定される。いくつかの事例において、ビームkのビーム加重値は、SNRを増加させるように選択される。そのようなビーム加重値はまた、Cの増加に続いて、ビームkのC/Iも増加させる。しかしながら、他のビームに干渉が発生する場合がある。したがって、復路リンクの事例と異なり、最適なビーム加重値は、(他のビームとは関係なく)ビーム単位で計算されない。
【0202】
いくつかの事例において、ビーム加重値(該ビーム加重値を計算するために使用される放射及びペイロードマトリックスを含む)は、エンドツーエンドリレーの配備後に決定される。いくつかの事例において、ペイロードマトリックスEは、配備前に測定される。いくつかの事例では、ビームkによって他のビームに作成される干渉を使用し、それをビームkの干渉とみなすことによって、一組のビーム加重値を計算することができる。この方法は、最適なビーム加重値を計算しない場合があるが、加重値計算を単純化するために使用することができる。これは、一組の加重値を、他の全てのビームとは関係なく各ビームについて決定することを可能にする。得られた往路ビーム加重値は、次いで、復路ビーム加重値と同様に計算される。
式14の第1項
(無相関の)ダウンリンク雑音の共分散である。第2項
は、(ANにおいて相関される)アップリンク雑音の共分散である。第3項HHは、信号の共分散である。アップリンク雑音分散をゼロに設定し、最後の項(HH)を無視することで、一組の加重値がもたらされ、該加重値は、M個のAN515での受信信号を位相整列させることによって、信号対ダウンリンク雑音比を増加させる。ダウンリンク雑音分散をゼロに設定し、第3項を無視することで、アップリンクSNRを増加させる一組の加重値がもたらされる。アップリンク雑音分散及びダウンリンク雑音分散をゼロに設定することで、C/I比を増加させる脱相関受信機をもたらす。往路リンクの場合は、一般に、ダウンリンク雑音及び干渉が支配的である。したがって、これらの項は、一般に、ビーム加重値の計算に有用である。いくつかの事例において、式14の第2項(アップリンク雑音)は、第1項(ダウンリンク雑音)と比較して、重要でない。そのような事例において、第2項は、共分散の算出において無視することができ、算出を更に単純化するが、それでも、エンドツーエンドSINRを増加させる一組のビーム加重値をもたらす。
【0203】
復路リンクと同様に、ビーム加重値は、正規化することができる。K個全ての往路リンク信号に割り当てられる均等電力を有する伝送機ビーム加重値の場合、Bfwdの各列は、任意の列の要素の振幅二乗の加算が、加算して1になるようにスケーリングすることができる。均等電力共有は、信号の各々に、総AN電力(信号xに割り当てられる全てのANから総電力)を同じ割合で与える。いくつかの事例では、往路リンクについて、往路リンク信号の間での不均等電力共有が実現される。故に、いくつかの事例において、いくつかのビーム信号は、総AN電力の均等な共有を超えるようになる。これは、全てのビームにおけるSINRを等しくするために、又はより重要なビームに、あまり重要でないビームよりも大きいSINRを与えるために使用することができる。不均等電力共有のためのビーム加重値を作成するために、M×K個の均等電力ビーム加重マトリックスBfwdにK×K個の対角マトリックスPを右から乗じ、したがって、新たにBfwd=Bfwd Pとなる。次式のようにすると、
k番目の対角要素の二乗値は、ユーザ信号xに割り当てられる電力を表す。電力共有マトリックスPは、対角要素の加算又は二乗がKに等しくなる(非対角要素がゼロである)ように正規化される。
【0204】
いくつかの事例において、式13の解は、マトリックスAt、Cr、及びE、並びに雑音ベクトルnul及びndlの分散についての演繹的知識によって決定される。いくつかの事例において、マトリックスの知識は、エンドツーエンドリレーの関連する構成要素の製造及び試験中に行われる測定において得ることができる。これは、マトリックスの値がシステムの動作中に測定された値から大幅に変化することが予想されないシステムについてうまく機能し得る。しかしながら、いくつかのシステム、特により高い周波数帯域において動作するシステムの場合は、これが当てはまらない場合がある。
【0205】
加重値を設定するために演繹的情報が使用されないいくつかの事例において、往路リンクのR及びHの値を推定して、式13の解を決定することができる。いくつかの事例において、ANは、較正期間中に、チャネルサウンディングプローブを伝送する。チャネルサウンディングプローブは、数多くの異なるタイプの信号とすることができる。1つの事例では、異なる、直交で既知のPNシーケンスが各ANによって伝送される。チャネルサウンディングプローブは、時間、周波数、及び/又は位相を事前修正して、(下で更に論じられるように)フィーダリンク障害を除去することができる。較正間隔中に全ての通信データをオフにして、チャネルサウンディングプローブに対する干渉を低減させることができる。いくつかの事例において、チャネルサウンディングプローブは、フィーダリンク障害の除去に使用される信号と同じ信号とすることができる。
【0206】
較正間隔中に、各ビームの中央の端末は、チャネルサウンディングプローブを受信し、処理するように指定することができる。較正期間中の受信信号のK×l個のベクトルuは、u=Hx+At E nul+ndlであり、式中、xは、伝送チャネルサウンディングプローブのM×l個のベクトルである。いくつかの事例において、各指定された端末は、最初に、(ドップラーシフト及び端末発振器のエラーによってもたらされる)偶発的な周波数エラーを除去し、次いで、得られた信号を、M個の既知の直交PNシーケンスと相関させる。これらの相関の結果は、各端末について、M個の複素数(振幅及び位相)であり、これらの結果は、復路リンクを介して、CPSへ返送される。k番目のビームの中央の端末によって計算されたM個の複素数は、チャネルマトリックスの推定値
のk番目の行を形成するために使用することができる。K個の指定された端末の全てからの測定値を使用することによって、チャネルマトリックス全体の推定値が得られる。多くの事例では、複数の較正間隔からの測定値を組み合わせることが、チャネルマトリックスの推定値を改善するために有用である。チャネルマトリックスの推定値が決定されると、第2項に0の値を使用して、式14から共分散マトリックス
の推定値を決定することができる。これは、アップリンク雑音(式14の第2項)がダウンリンク雑音(式14の第1項)に対してごく僅かである場合に、共分散マトリックスの非常に正確な推定値であり得る。次いで、式13のチャネルマトリックス及び共分散マトリックスの推定値を使用することによって、往路リンクビーム加重値を計算することができる。故に、いくつかの事例において、ビーム加重値の計算は、AN515とユーザビームカバーエリアの中の基準場所との間のエンドツーエンド往路多重経路チャネルの各々について、エンドツーエンド往路ゲイン(すなわち、チャネルマトリックスHfwdの要素の値)を推定することを含む。他の事例において、ビーム加重値の計算は、M個のAN515からK個のユーザビームカバーエリアの中に位置付けられる基準場所へのK×M個のエンドツーエンド往路多重経路チャネルについて、エンドツーエンド往路ゲインを推定することを含む。
【0207】
ビーム形成後の信号及び信号の干渉構成要素は、ベクトルH Bfwd x(H、Bfwd、xの積)に含まれる。ビームの各々の信号及び干渉電力は、K×K個のマトリックスH Bfwdに含まれる。H Bfwdのk番目の対角要素の電力は、ビームkを対象とする所望の信号電力である。対角要素以外の行kの全ての要素の振幅二乗の加算は、ビームkの干渉電力である。したがって、ビームkのC/Iは、以下の通りである。
式中、skjは、H B fwdの要素である。アップリンク雑音は、ベクトルA E nulに含まれ、該ベクトルは、
のK×K個の共分散マトリックスを有する。共分散マトリックスのk番目の対角要素は、ビームkにおけるアップリンク雑音電力を含む。ビームkのアップリンク信号対雑音比は、次いで、下記のように計算される。
式中、tkkは、アップリンク共分散マトリックスのk番目の対角要素である。ダウンリンク雑音は、ベクトルndlに含まれ、該ベクトルは、
の共分散を有する。したがって、ダウンリンク信号対雑音比は、以下の通りである。
【0208】
エンドツーエンドSINRは、式15~式17の組み合わせである。
【0209】
上記の式は、ペイロードマトリックスEが与えられたときに、どのようにエンドツーエンドSINRを算出するのかを説明する。ペイロードマトリックスは、Eの要素の各々のゲイン及び位相の知的な選択によって構築することができる。いくつかの効用メトリック(一般に、上で計算されるK個のビームSINRの関数である)を最適化するEの対角要素のゲイン及び位相は、L個のトランスポンダ411の各々の位相シフタ418を設定することによって選択し、実現することができる。候補の効用関数としては、SINRの加算(総SINR)、Log(1+SINR)(総スループットに比例)の加算、又はチャネルマトリックスにおける総電力Hが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの事例において、ゲイン及び位相をカスタマイズすることによる効用関数の改善は、非常に小さく、また、意味をなさない。これは、アンテナ要素のランダム又はインターリーブマッピングが使用されるときに当てはまることがある。いくつかの事例において、効用関数は、受信/伝送信号ゲイン及び位相の特別な選択によって非自明な量だけ改善することができる。
異なるカバーエリア
【0210】
上で説明したいくつかの実施例は、エンドツーエンドリレー503が、ユーザ端末517及びAN515の両方によって共有される単一のカバーエリアにサービスを提供するように設計されていると仮定する。例えば、いくつかの事例は、衛星カバーエリアに照射するアンテナシステムを有する衛星を説明し、AN及びユーザ端末はどちらも、(例えば、図27のように)衛星カバーエリア全体にわたって地理的に分布する。衛星カバーエリアの中に形成することができるビームの数、及びそれらのビームのサイズ(ビームカバーエリア)は、アンテナ要素の数及び配設、反射器のサイズ、その他などの、アンテナシステム設計の態様によって影響を及ぼされ得る。例えば、非常に大きい容量を現実化することは、エンドツーエンドビーム形成を可能にするために、ANの間に十分な空間を伴う多数(例えば、数百)のANを配備することを含み得る。例えば、図28を参照して上で述べたように、ANの数を増加させることで、システム容量を増加させることができるが、数の増加と共に復路の減少を伴う。1つのアンテナシステムがユーザ端末及びANをサポートするときに、ANの間に十分な空間を伴うそのような配備を達成することは、(例えば、図27のように、衛星カバーエリア全体にわたる)ANの非常に広範囲にわたる地理的な分布を強制し得る。現実には、そのような分布を達成することは、高速ネットワークへのアクセスが不十分なエリアの中(例えば、CPS505に戻る不十分なファイバインフラストラクチャ、1つ又は2つ以上の海洋、その他)、複数の管轄区域、費用のかかる及び/又は非常に人口の多いエリア、その他などの、望ましくない場所にANを配置することを含み得る。故に、ANの配置は、しばしば、様々なトレードオフを含む。
【0211】
エンドツーエンドリレー503のいくつかの実施例は、複数のアンテナシステムによって設計され、それによって、単一のエンドツーエンドリレー503から2つ以上の異なるカバーエリアに別個のサービスを提供することを可能にする。下で説明するように、エンドツーエンドリレー503は、ANカバーエリアにサービスを提供する少なくとも第1のアンテナシステムと、ユーザカバーエリアにサービスを提供する少なくとも第2のアンテナシステムとを含むことができる。ユーザ端末及びANカバーエリアは、異なるアンテナシステムによってサービスを提供されるので、各アンテナシステムは、異なる設計パラメータを満たすように設計することができ、各カバーエリアは、(例えば、地理的に、ビームのサイズ及び/又は密度、周波数帯域、その他において)少なくとも部分的に異なり得る。例えば、そのようなマルチアンテナシステム手法を使用することは、比較的大きいエリアの地理的エリア(例えば、米国全土)にわたって分布したユーザ端末に、比較的小さい地理的エリア(例えば、米国東部の一部)にわたって分布した多数のANによってサービスを提供することを可能にすることができる。例えば、ANカバーエリアは、物理的エリアにおけるユーザカバーエリアのうちのほんの一部分(例えば、1/2未満、1/4未満、1/5未満、1/10未満)であり得る。
【0212】
図41は、例示的なエンドツーエンドビーム形成システム3400の説明図である。システム3400は、エンドツーエンドビーム形成システムであり、複数の地理的に分布したアクセスノード(AN)515と、エンドツーエンドリレー3403と、複数のユーザ端末517とを含む。エンドツーエンドリレー3403は、本明細書で説明されるエンドツーエンドリレー503の一実施例とすることができる。AN515は、ANカバーエリア3450の中に地理的に分布し、ユーザ端末517は、ユーザカバーエリア3460の中に地理的に分布する。ANカバーエリア3450及びユーザカバーエリア3460はどちらも、エンドツーエンドリレー3403のカバーエリアの中にあるが、ANカバーエリア3450は、ユーザカバーエリア3460と異なる。換言すれば、ANエリアは、ユーザカバーエリアと同じではなく、むしろ、ユーザカバーエリアと重ならない、かなりの(非自明な)エリア(例えば、ANカバーエリアの1/4以上、半分以上、その他)を有する。例えば、いくつかの事例において、ユーザカバーエリアの少なくとも半分は、ANカバーエリアと重ならない。上で説明したように(例えば、図5において)、AN515は、配信ネットワーク518を通して地上セグメント502内のCPS505に信号を提供することができ、CPS505は、データ源に接続することができる。
【0213】
エンドツーエンドリレー3403は、別個のフィーダリンクアンテナサブシステム3410と、ユーザリンクアンテナサブシステム3420とを含む。フィーダリンクアンテナサブシステム3410及びユーザリンクアンテナサブシステム3420の各々は、エンドツーエンドビーム形成を支援することができる。例えば、下で説明するように、各アンテナサブシステムは、それ自体の協働アンテナ要素のアレイ(複数可)、それ自体の反射器(複数可)、その他を有することができる。フィーダリンクアンテナサブシステム3410は、協働フィーダリンク構成受信要素3416のアレイと、協働フィーダリンク構成伝送要素3419のアレイとを含むことができる。ユーザリンクアンテナサブシステム3420は、協働ユーザリンク構成受信要素3426のアレイと、協働ユーザリンク構成伝送要素3429のアレイとを含むことができる。構成要素は、そのような構成要素のアレイがそのそれぞれのアンテナサブシステムをビーム形成システムの使用に適したものにするという意味で、「協働している」。例えば、所与のユーザリンク構成受信要素3426は、復路ユーザビームを形成することに貢献する様式で、複数の(例えば、全ての)ユーザビームカバーエリア519から復路アップリンク信号の重畳複合物を受信することができる。所与のユーザリンク構成伝送要素3429は、他のユーザリンク構成伝送要素3429からの対応する伝送と重畳して、いくつか又は全ての往路ユーザビームを形成する様式で、往路ダウンリンク信号を伝送することができる。所与のフィーダリンク構成受信要素3416は、(例えば、エンドツーエンドリレー3403に多重経路を含むことによって)往路ユーザビームを形成することに貢献する様式で、複数の(例えば、全ての)AN515から往路アップリンク信号の重畳複合物を受信することができる。所与のフィーダリンク構成伝送要素3419は、他のフィーダリンク構成伝送要素3419からの対応する伝送と重畳して、(例えば、AN515が、復路ユーザビームを形成するようにビーム加重することができる複合復路信号を受信することを可能にすることによって)いくつか又は全ての復路ユーザビームを形成することに貢献する様式で、復路ダウンリンク信号を伝送することができる。
【0214】
例示的なエンドツーエンドリレー3403は、複数の往路リンクトランスポンダ3430と、複数の復路リンクトランスポンダ3440とを含む。トランスポンダは、アンテナサブシステムの間の任意の適切なタイプのベントパイプ信号経路とすることができる。各往路リンクトランスポンダ3430は、フィーダリンク構成受信要素3416のそれぞれ1つを、ユーザリンク構成伝送要素3429のそれぞれ1つと結合させる。各復路リンクトランスポンダ3440は、ユーザリンク構成受信要素3426のそれぞれ1つを、フィーダリンク構成伝送要素3419のそれぞれ1つと結合させる。例えば、いくつかの実施例は、各ユーザリンク構成受信要素3426とそれぞれのフィーダリンク構成伝送要素3419との間に(又はその逆も同様に)に1対1の対応関係を有するように、又は各ユーザリンク構成受信要素3426が「唯一の」フィーダリンク構成伝送要素3419と(又はその逆も同様に)結合されるように、又は同類の状態であるように説明される。いくつかのそのような事例において、各トランスポンダの片側は、単一の受信要素と結合され、トランスポンダの反対側は、単一の伝送要素と結合される。他のそのような事例において、トランスポンダの片側又は両側は、(例えば、下で説明するように、スイッチ又は他の手段によって)複数の要素のうちの1つと選択的に結合させることができる。例えば、エンドツーエンドリレー3403は、1つのフィーダリンクアンテナサブシステム3410と、2つのユーザリンクアンテナサブシステム3420とを含むことができ、各トランスポンダは、片側を単一のフィーダリンク要素に結合させ、反対側を第1のユーザリンクアンテナサブシステム3420の単一のユーザリンク要素に、又は第2のユーザリンクアンテナサブシステム3420の単一のフィーダリンク要素に選択的に結合させることができる。そのような選択的に結合させる事例において、各トランスポンダの各側は、それでも、任意の所与の時点で(例えば、特定の信号関連の処理のために)、「唯一の」要素又は同類のものと結合されているとみなすことができる。
【0215】
往路通信の場合、AN515からの伝送は、(フィーダアップリンク521を介して)フィーダリンク構成受信要素3416によって受信し、往路リンクトランスポンダ3430によってユーザリンク構成伝送要素3429にリレーし、そして、ユーザリンク構成伝送要素3429によってユーザカバーエリア3460の中のユーザ端末517に伝送することができる。復路通信の場合、ユーザ端末517からの伝送は、ユーザリンク構成受信要素によって受信し、復路リンクトランスポンダ3440によってフィーダリンク構成伝送要素3419にリレーし、そして、フィーダリンク構成伝送要素3419によって(フィーダダウンリンク信号527を介して)ANカバーエリア3450の中のAN515に伝送することができる。エンドツーエンドリレー3403を介したAN515からユーザ端末517への全信号経路は、エンドツーエンド往路リンク501と称され、エンドツーエンドリレー3403を介したユーザ端末517からAN515への全信号経路は、エンドツーエンド復路リンク523と称される。本明細書で説明されるように、エンドツーエンド往路リンク501及びエンドツーエンド復路リンク523は、往路通信及び復路通信のための複数の多重経路チャネルを各々が含むことができる。
【0216】
いくつかの事例において、複数の地理的に分布したアクセスノード(例えば、AN515)の各々は、エンドツーエンドビーム加重往路アップリンク信号出力を有する。エンドツーエンドリレー(例えば、エンドツーエンドリレー3403)は、分布したアクセスノードと無線通信する協働フィーダリンク構成受信要素3416のアレイと、複数のユーザ端末517と無線通信する協働ユーザリンク構成伝送要素3419のアレイと、複数の往路リンクトランスポンダ3430とを備える。往路リンクトランスポンダ3430は「ベントパイプ」(又は未処理)トランスポンダであり、よって、各トランスポンダは、処理を殆ど又は全く受けない信号に対応する信号を出力する。例えば、各往路リンクトランスポンダ3430は、その受信信号を増幅する、及び/又は周波数移動させることができるが、より複雑な処理を行わない(例えば、復調及び/又は変調がない、搭載されたビーム形成がない、その他)。いくつかの事例において、各往路リンクトランスポンダ3430は、第1の周波数帯域(例えば、30GHzのLHCP)で入力を受け取り、第2の周波数帯域(例えば、20GHzのRHCP)で出力し、そして、各復路リンクトランスポンダ3440は、第1の周波数帯域(例えば、30GHzのRHCP)で入力を受け取り、第2の周波数帯域(例えば、20GHzのLHCP)で出力を受け入れる。周波数及び/又は偏波の任意の適切な組み合わせを使用することができ、ユーザリンク及びフィーダリンクは、同じ又は異なる周波数範囲を使用することができる。各往路リンクトランスポンダ3430は、(例えば、1対1の対応関係で)フィーダリンク構成受信要素3416のそれぞれ1つと、ユーザリンク構成伝送要素3419のそれぞれ1つとの間に結合される。往路リンクトランスポンダ3430は、フィーダリンク構成受信要素3416を介して、複数のビーム加重往路アップリンク信号の重畳されたものを往路ダウンリンク信号(例えば、複合入力往路信号)に変換する。ユーザリンク構成伝送要素3429による往路ダウンリンク信号の伝送は、複数のユーザ端末517の少なくともいくつかにサービスを提供する往路ユーザビームを形成することに貢献する。本明細書で説明されるように、往路アップリンク信号は、AN515から伝送する前に、エンドツーエンドビーム加重し、同期させる(例えば、位相同期させ、そして所望であれば、時間同期させる)ことができ、これは、フィーダリンク構成受信要素3416でのそれらの信号の所望の重畳を可能にすることができる。
【0217】
この伝送は、本明細書で説明されるように、ビーム形成がエンドツーエンドであるという意味で、往路ユーザビームを形成することに貢献し、ビーム形成は、複数の工程によりもたらされ、該工程は、AN515からリレーへの伝送前に往路アップリンク信号に対する適切な加重値を計算し、適用することと、エンドツーエンドリレー3403の複数の往路リンクトランスポンダ3430によって多重経路を誘導することと、ユーザリンクアレイアンテナによって往路ダウンリンク信号を伝送することとを含む。それでも、簡潔にするために、いくつかの説明は、往路ビームを、伝送往路ダウンリンク信号の重畳によって形成されると称することができる。いくつかの事例において、複数のユーザ端末517の各々は、協働ユーザリンク構成伝送要素3429のアレイと無線通信して、伝送往路ダウンリンク信号の複合物(例えば、重畳されたもの)を受信する。
【0218】
いくつかの事例において、エンドツーエンドリレー3403は、ユーザ端末517と通信するユーザリンク構成受信要素3426と、分布したAN515と通信する協働フィーダリンク構成伝送要素3419のアレイと、複数の復路リンクトランスポンダ3440のアレイとを更に含む。復路リンクトランスポンダ3440は、往路リンクトランスポンダ3430(例えば、ベントパイプトランスポンダ)に類似し得るか、又は同一であり得るが、各々が、ユーザリンク構成受信要素3426のそれぞれ1つとフィーダリンク構成伝送要素3419のそれぞれ1つとの間に結合されることが異なる。協働ユーザリンク構成受信要素3426のアレイを介した復路アップリンク信号の受信は、復路リンクトランスポンダ3440に復路ダウンリンク信号を形成する。いくつかの事例において、各復路ダウンリンク信号は、複数のユーザ端末517から(例えば、複数のユーザビームカバーエリア519から)ユーザリンク構成受信要素3426によって受信される、復路アップリンク信号のそれぞれの重畳されたものである。いくつかのそのような事例において、複数のユーザ端末の各々は、協働ユーザリンク構成受信要素3426のアレイと通信して、複数のユーザリンク構成受信要素3426にそれぞれの復路アップリンク信号を伝送する。
【0219】
いくつかの事例において、復路ダウンリンク信号は、フィーダリンク構成伝送要素3419によって、地理的に分布したAN515に伝送される。本明細書で説明されるように、各AN515は、フィーダリンク構成伝送要素3419から伝送される復路ダウンリンク信号の重畳複合物を受信することができる(すなわち、復路ダウンリンク信号に対応する)。受信した復路ダウンリンク信号(複合受信信号と称される)は、復路ビーム形成器に結合することができ、これは、組み合わせて、同期させて、ビーム加重して、そして、任意の他の適切な処理を行うことができる。例えば、復路ビーム形成器は、信号を組み合わせる前に、復路ダウンリンク信号の受信した重畳されたもの1706に加重すること(すなわち、復路ビーム加重値を複合復路信号に適用すること)ができる。復路ビーム形成器はまた、少なくともエンドツーエンドリレー3403とAN515との間のそれぞれの経路遅延差を補償するために、信号を組み合わせる前に、複合復路信号を同期させることができる。いくつかの事例において、同期させることは、(AN515の1つ又は2つ以上、又は全てによって受信した)受信ビーコン信号に従うことができる。
【0220】
ビーム形成のエンドツーエンド性質のため、復路ビーム形成器をエンドツーエンド多重経路チャネルのフィーダリンク側に結合することができる場合であっても、復路ビーム形成器による復路ビーム加重値の適切な適用は、復路ユーザビームの形成を可能にし、ユーザビームは、エンドツーエンド多重経路チャネルのユーザリンク側に形成することができる。故に、復路ビーム形成器は、復路ユーザビームの形成に貢献すると称することができる(システム3400のいくつかの他の態様はまた、エンドツーエンドリレー3403の復路リンクトランスポンダ3440による多重経路の誘導などの、エンドツーエンド復路ビーム形成にも貢献する)。それでも、復路ビーム形成器は、簡潔にするために、復路ユーザビームを形成すると称することができる。
【0221】
いくつかの事例において、エンドツーエンドリレー3403は、複数の分布したアクセスノードが位置付けられるアクセスノードカバーエリア(ANカバーエリア3450)に照射するために、フィーダリンクアンテナサブシステム3410を更に含む。フィーダリンクアンテナサブシステム3410は、協働フィーダリンク構成受信要素3416のアレイを備える。いくつかの事例において、エンドツーエンドリレー3403はまた、複数のユーザ端末517が(例えば、複数のユーザビームカバーエリア519の中に)地理的に分布したユーザカバーエリア3460に照射するために、ユーザリンクアンテナサブシステム3420も含む。ユーザリンクアンテナサブシステム3420は、協働ユーザリンク構成伝送要素3429のアレイを備える。いくつかの事例において、ユーザリンクアンテナサブシステム3420は、ユーザリンク受信アレイ及びユーザリンク伝送アレイ(例えば、別個で半二重の協働ユーザリンク構成要素のアレイ)を含む。ユーザリンク受信アレイ及びユーザリンク伝送アレイは、(例えば、同じ反射器に向くように)空間的にインターリーブすること、(例えば、それぞれ、受信及び伝送反射器に向くように)空間的に分離させること、又は任意の他の適切な様式で配設することができる。他の事例において、ユーザリンクアンテナサブシステム3420は、全二重要素を含む(例えば、各ユーザリンク構成伝送要素3429は、それぞれのユーザリンク構成受信要素3426と放射構造を共有する)。同様に、いくつかの事例において、フィーダリンクアンテナサブシステム3410は、フィーダリンク受信アレイと、フィーダリンク伝送アレイとを含み、これらは、任意の適切な様式で空間的に関連させることができ、また、単一の反射器に向けて、別個の伝送及び受信反射器に向けて、その他で、直接放射することができる。他の事例において、フィーダリンクアンテナサブシステム3410は、全二重要素を含む。フィーダリンクアンテナサブシステム3410及びユーザリンクアンテナサブシステム3420は、同じ又は異なる開口サイズを有することができる。いくつかの事例において、フィーダリンクアンテナサブシステム3410及びユーザリンクアンテナサブシステム3420は、同一周波数帯域(例えば、Ka帯域、その他)で動作する。いくつかの事例において、フィーダリンクアンテナサブシステム3410及びユーザリンクアンテナサブシステム3420は、異なる周波数帯域で動作する(例えば、フィーダリンクは、V帯域を使用し、ユーザリンクは、Ka帯域を使用する、その他)。
【0222】
図41によって例示されるような実施例において、ANカバーエリア3450は、ユーザカバーエリア3460と異なる。ANカバーエリア3450は、単一の隣接するカバーエリア、又は複数の独立したカバーエリアとすることができる。同様に(及び、ANカバーエリアが単一であるか、複数であるかにかかわらず)、ユーザカバーエリア3460は、単一の隣接するカバーエリア、又は複数の独立したカバーエリアとすることができる。いくつかの事例において、ANカバーエリア3450は、ユーザカバーエリア3460のサブセットである。いくつかの事例において、ユーザカバーエリア3460の少なくとも半分は、ANカバーエリア3450と重ならない。下で説明するように、いくつかの事例において、フィーダリンクアンテナサブシステム3410は、1つ又は2つ以上のフィーダリンク反射器を更に備え、ユーザリンクアンテナサブシステム3420は、1つ又は2つ以上のユーザリンク反射器を更に備える。いくつかの事例において、フィーダリンク反射器は、ユーザリンク反射器よりもかなり大きい(例えば、少なくとも2倍、少なくとも5倍、10倍、50倍、80倍等の物理的面積)。いくつかの事例において、フィーダリンク反射器は、ユーザリンク反射器とほぼ同じ物理的面積(例えば、5%、10%、25%以内)である。
【0223】
いくつかの事例において、システム3400は、図5を参照して説明されるように、地上ネットワーク機能に関連して動作する。例えば、エンドツーエンドリレー3403は、AN515と通信し、該ANは、配信ネットワーク518を介してCPS505と通信する。いくつかの事例において、CPS505は、例えば、図29を参照して説明されるように、往路ビーム形成器529及び/又は復路ビーム形成器531を含む。上で説明したように、往路ビーム形成器529は、計算された往路ビーム加重値(例えば、往路ビーム加重値発生器918によって供給される)を往路リンク信号に適用することによって、往路エンドツーエンドビームの形成に参加することができ、復路ビーム形成器531は、計算された復路ビーム加重値(例えば、復路ビーム加重値発生器935によって供給される)を復路リンク信号に適用することによって、復路エンドツーエンドビームの形成に参加することができる。上で説明したように、エンドツーエンド往路ビーム加重値及び/又は一組のエンドツーエンド復路ビーム加重値は、エンドツーエンド多重経路チャネルの推定エンドツーエンドゲインに従って計算することができ、各エンドツーエンド多重経路チャネルは、それぞれの複数の往路リンクベントパイプトランスポンダ3430を介して、及び/又はそれぞれの複数の復路リンクベントパイプトランスポンダ3440を介して、分布したAN515のそれぞれ1つを、ユーザカバーエリアの中のそれぞれの場所(例えば、ユーザ端末517又は任意の適切な基準場所)と通信可能に結合する。いくつかの事例において、図示されないが、エンドツーエンドリレー3403は、ビーコン信号伝送機を含む。ビーコン信号伝送機は、図15のビーコン信号発生器及び較正サポートモジュール424を参照して上で説明したように実現することができる。いくつかの事例において、発生されたビーコン信号は、複数の分布したAN515がエンドツーエンドリレー3403と(例えば、ビーコン信号に従って、複数のフィーダリンク構成受信要素3416と)時間同期無線通信するように使用することができる。
【0224】
いくつかの事例において、システム3400は、エンドツーエンドビーム形成を使用して、複数の往路ユーザビームを形成するためのシステムを含む。そのような事例は、複数の地理的に分布した場所から複数の往路アップリンク信号を伝送するための手段を含み、複数の往路アップリンク信号が、複数のユーザビーム信号の加重した組み合わせから形成され、各ユーザビーム信号が、唯一のユーザビームに対応する。例えば、複数の地理的に分布した場所は、複数のAN515を含むことができ、複数の往路アップリンク信号を伝送するための手段は、往路ビーム形成器529、配信ネットワーク518、及び地理的に分布したAN515(エンドツーエンドリレー3403と通信する)のうちのいくつか又は全てを含むことができる。そのような事例はまた、複数の往路ダウンリンク信号を形成するために複数の往路アップリンク信号をリレーするための手段も含むことができる。各往路ダウンリンク信号は、複数の往路アップリンク信号の固有の重畳されたものを増幅することによって作成され、複数の往路ダウンリンク信号が重畳して複数のユーザビームを形成し、各ユーザビーム信号は、対応するユーザビーム内で支配的である。例えば、複数の往路ダウンリンク信号を形成するために複数の往路アップリンク信号をリレーするための手段は、その複数の信号経路が並置された状態で、エンドツーエンドリレー3403(ユーザビームカバーエリア519の1つ又は2つ以上のユーザ端末と通信する)を含むことができ、これは、往路リンクトランスポンダ3430及び復路リンクトランスポンダ3440を含むことができる。
【0225】
いくつかのそのような事例は、複数の往路ダウンリンク信号の第1の重畳されたものを受信し、複数のユーザビーム信号のうちの第1の1つを復元するための第1の手段を含む。そのような第1の手段は、ユーザ端末517を含むことができる(例えば、往路ダウンリンク信号からユーザビーム信号を復元するための、ユーザ端末アンテナ及びモデム、又は他の構成要素を含む)。いくつかのそのような事例はまた、複数の往路ダウンリンク信号の第2の重畳されたものを受信し、複数のユーザビーム信号のうちの第2の1つを復元するための第2の手段も含む(例えば、第2のユーザ端末517を含む)。例えば、受信するための第1の手段は、第1のユーザビーム内に位置付けられ、受信するための第2の手段は、第2のユーザビーム内に位置付けられる。
【0226】
図42は、エンドツーエンド復路リンク523上で復路データを搬送する信号の信号経路の例示的なモデルの説明図である。この例示的なモデルは、図6図8を参照して説明されるモデルに類似して動作することができるが、エンドツーエンドリレー3403が、復路リンク通信専用の復路リンク信号経路3502を含むことが異なる。各復路リンク信号経路3502は、ユーザリンク構成受信要素3426とフィーダリンク構成伝送要素3419との間に結合される、復路リンクトランスポンダ3440を含むことができる。K個のユーザビームカバーエリア519の中のユーザ端末517によって生じる信号は、(復路アップリンク信号525として)エンドツーエンドリレー3403に伝送され、L個の復路リンク信号経路3502のアレイによって受信され、L個の復路リンクトランスポンダ3440を通してL個の対応するフィーダリンク構成伝送要素3419に通信され、そして、L個のフィーダリンク構成伝送要素3419によって、M個のAN515のいくつか又は全てに伝送される(図7に示されるものに類似する)。このようにして、複数の復路リンク信号経路3502(例えば、復路リンクトランスポンダ3440)は、復路リンク通信の多重経路を誘導する。例えば、各復路リンク信号経路3502の出力は、受信した復路アップリンク信号525のそれぞれ1つに対応する(例えば、複数のユーザビームカバーエリア519から伝送される復路アップリンク信号525の受信した複合物に対応する)復路ダウンリンク信号527であり、復路ダウンリンク信号527を通じて、(例えば、ANカバーエリア3450にわたって地理的に分布した)M個のAN515に伝送される。上で説明したように、ユーザビームカバーエリア519の中に位置付けられるユーザ端末517から特定のAN515への、L個(又は最大L個)の異なる信号の進路がある。エンドツーエンドリレー3403は、それによって、ユーザ端末517とAN515との間にL個の経路を作成し、集合的に、エンドツーエンド復路多重経路チャネル1908(例えば、図8に類似する)と称される。
【0227】
エンドツーエンド復路多重経路チャネルは、上で説明したものと同じ様式でモデル化することができる。例えば、Arは、L×K個の復路アップリンク放射マトリックスであり、Ctは、M×L個の復路ダウンリンク放射マトリックスであり、Eretは、ユーザリンク構成受信要素3426からフィーダリンク構成伝送要素3419への経路のL×L個の復路ペイロードマトリックスである。上で説明したように、特定のユーザビームカバーエリア519の中のユーザ端末517から特定のAN515へのエンドツーエンド復路多重経路チャネルは、エンドツーエンドリレー3403を通してL個の固有の復路リンク信号経路3502によって誘導されるL個の異なる信号経路の正味効果である。K個のユーザビームカバーエリア519及びM個のAN515によって、M×K個の誘導されたエンドツーエンド復路多重経路チャネルが(エンドツーエンドリレー3403を介して)エンドツーエンド復路リンク523に存在することができ、各々を個々にモデル化して、M×K個の復路チャネルマトリックスHretの対応する要素(C×Eret×Ar)を計算することができる。上で述べたように(例えば、図6図8を参照して)、全てではないが、AN515、ユーザビームカバーエリア519、及び/又は復路リンクトランスポンダ3440は、エンドツーエンド復路多重経路チャネルに参加しなければならない。いくつかの事例において、ユーザビームの数Kは、エンドツーエンド復路多重経路チャネルの信号経路のトランスポンダの数Lよりも多く、及び/又はANの数Mは、エンドツーエンド復路多重経路チャネルの信号経路のトランスポンダの数Lよりも多い。図5を参照して説明されるように、CPS505は、受信したダウンリンク復路信号527(下で更に説明するように、受信信号は、ANによる受信後に、複合復路信号907と称される)に復路ビーム加重値を適用することによって、復路ユーザビームの形成を可能にすることができる。復路ビーム加重値は、1つのユーザビームカバーエリア519の中のユーザ端末517を複数のAN515のうちの1つと結合させる各エンドツーエンド復路多重経路チャネルについて、のM×K個の信号経路のモデルに基づいて計算することができる。
【0228】
図43は、エンドツーエンド往路リンク501上で往路データを搬送する信号の信号経路の例示的なモデルの説明図である。この例示的なモデルは、図9図11を参照して説明されるモデルに類似して動作することができるが、エンドツーエンドリレー3403が、往路リンク通信専用の往路リンク信号経路3602を含むことが異なる。各往路リンク信号経路3602は、フィーダリンク構成受信要素3416とユーザリンク構成伝送要素3429との間に結合される、往路リンクトランスポンダ3430を含むことができる。上で説明したように、各往路アップリンク信号521は、AN515からの伝送前に、(例えば、地上セグメント502のCPS505の往路ビーム形成器515において)ビーム加重される。各AN515は、固有の往路アップリンク信号521を受信し、(例えば、時間同期様式で)M個のアップリンクのうちの1つを介して、固有の往路アップリンク信号521を伝送する。往路アップリンク信号521は、複合入力往路信号545を作成する重畳様式で、往路リンクトランスポンダ3430のいくつか又は全部によって、地理的に分布した場所(例えば、AN515から)から受信される。各往路リンクトランスポンダ3430は、複合入力往路信号545を同時に受信するが、各往路リンクトランスポンダ3430と関連付けられる各受信フィーダリンク構成受信要素3416の場所の違いのため、僅かに異なるタイミングを伴う。例えば、各フィーダリンク構成受信要素3416が同じ複数の往路アップリンク信号521の複合物を受信することができる場合であっても、受信した複合入力往路信号545は、僅かに異なり得る。複合入力往路信号545は、それぞれのフィーダリンク構成受信要素3416を介してL個の往路リンクトランスポンダ3430によって受信され、L個の往路リンクトランスポンダ3430を通してL個の対応するフィーダリンク構成伝送要素3429に通信され、そして、L個のユーザリンク構成伝送要素3429によって、(例えば、受信した複合入力往路信号521に各々が対応する、往路ダウンリンク信号522として)K個のユーザビームカバーエリア519のうちの1つ又は2つ以上に伝送される。このようにして、複数の往路リンク信号経路3602(例えば、往路リンクトランスポンダ3430)は、往路リンク通信の多重経路を誘導する。上で説明したように、AN515からユーザビームカバーエリア519の特定のユーザ端末517への、L個の異なる信号の進路がある。エンドツーエンドリレー3403は、それによって、1つのAN515と1つのユーザ端末517(又は1つのユーザビームカバーエリア519)との間に複数の(例えば、最大でL個の)信号経路を誘導し、これは、集合的に、エンドツーエンド往路多重経路チャネル2208と称することができる(例えば、図10に類似する)。
【0229】
エンドツーエンド往路多重経路チャネル2208は、上で説明したものと同じ様式でモデル化することができる。例えば、Crは、L×M個の往路アップリンク放射マトリックスであり、Atは、K×L個の往路ダウンリンク放射マトリックスであり、Efwdは、フィーダリンク構成受信要素3416からユーザリンク構成伝送要素3429への経路のL×L個の往路ペイロードマトリックスである。いくつかの事例において、往路ペイロードマトリックスEfwd及び復路ペイロードマトリックスEretは、往路リンク信号経路3602と復路リンク信号経路3502との差を反映するように異なり得る。上で説明したように、特定のAN515から特定のユーザビームカバーエリア519の中のユーザ端末517へのエンドツーエンド往路多重経路チャネルは、エンドツーエンドリレー3403を通してL個の固有の往路リンク信号経路3602によって誘導される、L個の異なる信号経路の正味効果である。K個のユーザビームカバーエリア519及びM個のAN515によって、M×K個の誘導されたエンドツーエンド往路多重経路チャネルがエンドツーエンド往路リンク501に存在することができ、各々を個々にモデル化して、M×K個の往路チャネルマトリックスHfwdの対応する要素(At×Efwd×Cr)を計算することができる。復路方向を参照して述べたように、全てではないが、AN515、ユーザビームカバーエリア519、及び/又は往路リンクトランスポンダ3430は、エンドツーエンド往路多重経路チャネルに参加しなければならない。いくつかの事例において、ユーザビームの数Kは、エンドツーエンド往路多重経路チャネルの信号経路のトランスポンダの数Lよりも多く、及び/又はANの数Mは、エンドツーエンド往路多重経路チャネルの信号経路のトランスポンダの数Lよりも多い。図5を参照して説明されるように、適切なビーム加重値は、往路ユーザビームを形成するように、CPS505による複数のエンドツーエンド往路多重経路チャネルの各々について計算することができる。単一の受信機(ユーザ端末517)に対して複数の伝送機(AN515)を使用することで、伝送経路ダイバーシティを提供して、意図的に誘導された多重経路チャネルの存在下で、任意のユーザ端末517への情報の伝送を成功させることを可能にすることができる。
【0230】
図41図43は、別個の往路リンクトランスポンダ3430及び復路リンクトランスポンダ3440によって実現されるエンドツーエンドリレー3403を説明する。図44A及び44Bは、それぞれ、(図43の往路信号経路3602のような)例示的な往路信号経路3700、及び(図42の復路信号経路3502のような)復路信号経路3750の説明図を示す。上で説明したように、往路信号経路3700は、フィーダリンク構成受信要素3416とユーザリンク構成伝送要素3429との間に結合される、往路リンクトランスポンダ3430を含む。復路信号経路3750は、ユーザリンク構成受信要素3426とフィーダリンク構成伝送要素3419との間に結合される、復路リンクトランスポンダ3440を含む。いくつかの事例において、各往路リンクトランスポンダ3430及び各復路リンクトランスポンダ3440は、交差極トランスポンダである。例えば、往路リンクトランスポンダ3430は、左旋円偏波(LHCP)を有するアップリンク周波数で往路アップリンク信号を受信し、右旋円偏波(RHCP)を有するダウンリンク周波数で往路ダウンリンク信号を出力し、各復路リンクトランスポンダ3440は、右旋円偏波(RHCP)を有するアップリンク周波数で復路アップリンク信号を受信し、左旋円偏波(LHCP)を有するダウンリンク周波数で復路ダウンリンク信号を出力する。1つのこのような事例(前述の実施例において説明される偏波に従う)は、図44A及び44Bの実線だけをたどることによって例示され、別のそのような事例(前述の実施例において説明される偏波とは逆の偏波に従う)は、図44A及び44Bの破線だけをたどることによって例示される。他の事例において、いくつか又は全てのトランスポンダは、二重極信号経路の対を提供することができる。例えば、図44A及び44Bの実線及び破線の両方をたどると、往路リンクトランスポンダ3430及び復路リンクトランスポンダ3440は、両方の偏波(LHCP及びRHCP)を有する同じ又は異なるアップリンク周波数で往路アップリンク信号を受信することができ、また、両方の偏波(RHCP及びLHCP)を有する同じ又は異なるダウンリンク周波数でダウンリンク信号を出力することができる。例えば、そのような事例は、複数のシステムが、任意の適切なタイプの干渉緩和技術を使用して(例えば、時分割、周波数分割、その他、を使用して)、並列に動作することを可能にすることができる。いくつかの事例において、エンドツーエンドリレー3403は、512個の往路リンクトランスポンダ3430及び512個の復路リンクトランスポンダ3440(例えば、合計1,024個のトランスポンダ)などの、多数のトランスポンダを含む。他の実現形態は、10個又は任意の他の適切な数などの、より少ない数のトランスポンダを含むことができる。いくつかの事例において、アンテナ要素は、全二重構造として実現され、よって、各受信アンテナ要素は、それぞれの伝送アンテナ要素と構造を共有する。例えば、各例示されるアンテナ要素は、信号の伝送及び受信の両方に適応する放射構造の4つの導波管ポートのうちの2つとして実現することができる。いくつかの事例では、フィーダリンク要素だけが、又はユーザリンク要素だけが全二重である。他の実現形態は、異なるタイプの偏波を使用することができる。例えば、いくつかの実現形態において、トランスポンダは、同じ極性の受信アンテナ要素と伝送アンテナ要素との間に結合することができる。
【0231】
例示的な往路リンクトランスポンダ3430及び復路リンクトランスポンダ3440はどちらも、低ノイズ増幅器(LNA)3705と、周波数変換器及び関連付けられるフィルタ3710と、チャネル増幅器3715と、位相シフタ3720と、電力増幅器3725(例えば、進行波管増幅器(TWTA)、固体電力増幅器(SSPA)、その他)と、高調波フィルタ3730)とを含むことができる。二重極の実現形態において、示されるように、各極は、それ自体の一組のトランスポンダ構成要素を有するそれ自体の信号経路を有する。いくつかの実現形態は、より多い又はより少ない構成要素を有することができる。例えば、周波数変換器及び関連付けられるフィルタ3710は、アップリンク周波数及びダウンリンク周波数が異なる場合に有用であり得る。1つの実施例として、各往路リンクトランスポンダ3430は、第1の周波数帯域で入力を受け取り、第2の周波数帯域で出力することができ、各復路リンクトランスポンダ3440は、第1の周波数帯域で入力を受け取り、第2の周波数帯域で出力することができる。
【0232】
いくつかの事例では、複数のサブ帯域(例えば、上で説明したように、7つの500MHzのサブ帯域)が使用される。例えば、いくつかの事例では、トランスポンダが提供され、該トランスポンダは、単一のエンドツーエンドリレーを通して複数の独立した並列エンドツーエンドビーム形成システム(各々が、異なるサブ帯域で動作するエンドツーエンドビーム形成システム)を効果的に可能にするために、地上ネットワークの複数のサブ帯域の実現形態で使用されるものと同じサブ帯域を通じて動作する。他の事例において、広帯域幅エンドツーエンドビーム形成システムは、地上ネットワークにおいて複数のサブ帯域を使用することができるが、1つ又は2つ以上の(又は全ての)サブ帯域に広域帯トランスポンダを通過させる(例えば、各々が500MHzの幅の7つのサブ帯域に、3.5GHzの帯域幅のトランスポンダを通過させる)ことができる。そのような事例において、各トランスポンダは、複数の周波数変換器及び関連付けられるフィルタ3710、並びに/又はサブ帯域の1つ又は2つ以上を取り扱うために専用される他の構成要素を含むことができる。複数の周波数サブ帯域の使用は、地上ネットワークがサブ帯域の各々において使用されるビーム加重値を別々に決定することができるので、トランスポンダの振幅及び位相応答に対する要件の緩和を可能にし、トランスポンダの通過帯域を外れた振幅及び位相の変動を効果的に較正する。例えば、別個の往路及び復路トランスポンダによって、及び7つのサブ帯域を使用して、各ビームについて、合計14個の異なるビーム加重値、すなわち、7つのサブ帯域×2つの方向(往路及び復路)を使用することができる。いくつかの事例において、各トランスポンダ経路は、LNA3705、チャネル増幅器3715、及び電力増幅器3725だけを含む。エンドツーエンドリレー3403のいくつかの実現形態は、上で説明したように各トランスポンダの位相及び/又は他の特徴を個々に設定することができる、位相シフトコントローラ及び/又は他のコントローラを含む。
【0233】
アンテナ要素は、任意の適切な様式で信号を伝送及び/又は受信することができる。いくつかの事例において、エンドツーエンドリレー3403は、1つ又は2つ以上のアレイフィード反射器を有する。例えば、フィーダリンクアンテナサブシステム3410は、伝送及び受信の両方のためのフィーダリンク反射器、又は別個のフィーダリンク伝送反射器及びフィーダリンク受信反射器を有することができる。同様に、ユーザリンクアンテナサブシステム3420は、伝送及び受信の両方のためのユーザリンク反射器、又は別個のユーザリンク伝送反射器及びユーザリンク受信反射器を有することができる。1つの例示的な事例において、フィーダリンクアンテナサブシステム3410は、放射構造のアレイを備え、各放射構造は、フィーダリンク構成受信要素3416と、フィーダリンク構成伝送要素3419とを含む。そのような一事例において、フィーダリンクアンテナサブシステム3410はまた、フィーダリンク構成受信要素3416に照射し、フィーダリンク構成伝送要素3419によって照射される、フィーダリンク反射器も含むことができる。いくつかの事例において、反射器は、複数の反射器として実現され、異なる形状、サイズ、方向、その他とすることができる。他の事例において、フィーダリンクアンテナサブシステム3410及び/又はユーザリンクアンテナサブシステム3420は、反射器を伴わずに、例えば、直接放射アレイとして実現される。
【0234】
上で述べたように、フィーダリンクアンテナサブシステム3410及びユーザリンクアンテナサブシステム3420を分離することは、1つ又は2つ以上のユーザカバーエリア3460と異なる1つ又は2つ以上のANカバーエリア3450にサービスを提供することを可能にすることができる。例えば、フィーダリンクアンテナサブシステム3410は、ユーザカバーエリア3460の反射器よりもかなり広い物理的面積を有する反射器によって実現することができる。より大きい反射器は、多数のAN515を、ユーザカバーエリア3460の小さいサブセットの中などの、かなり小さいANカバーエリア3450の中に地理的に分布することを可能にする。いくつかの実施例は、図45及び図46に示される。
【0235】
図45は、エンドツーエンドリレー3403(例えば、衛星)の可視的な地球カバーエリア3800の一実施例を示す。例示的なエンドツーエンドリレー3403において、フィーダリンクアンテナサブシステム3410は、18メートルのフィーダリンク反射器を含み、ユーザリンクアンテナサブシステム3420は、2メートルのユーザリンク反射器を含む(例えば、フィーダリンク反射器の面積は、ユーザリンク反射器の面積よりも約80倍大きい)。各アンテナサブシステムはまた、512個の協働構成受信/伝送要素のアレイを含む。例えば、例示的なエンドツーエンドリレー3403は、512個の往路リンクトランスポンダ3430(例えば、図44Aに示されるような、512個の往路信号経路3700を形成する)と、512個の復路リンクトランスポンダ3440(例えば、図44Bに示されるような、512個の復路信号経路3750を形成する)とを含むことができる。ユーザカバーエリア3460は、625個のユーザビームカバーエリア519を含む。米国東部の小さい陰影付きの地域は、その中に分布した597個のAN515を有するANカバーエリア3450である。ANカバーエリア3450は、大きいユーザカバーエリア3460の小さいサブセットであるが、それでも多数のAN515を有する大きい容量を提供する。そのような比較的密集したANカバーエリア3450は、本明細書において、「ANファーム」と称される。
【0236】
図46は、エンドツーエンドリレー3403(例えば、衛星)の米国本土(CONUS)カバーエリア3900の一実施例を示す。例示的なエンドツーエンドリレー3403は、図45に示される実施例に類似するが、ユーザリンクアンテナサブシステム3420が、5メートルのユーザリンク反射器を含む(例えば、フィーダリンク反射器が、ユーザリンク反射器よりも約4倍大きい)ことが異なる。ユーザカバーエリア3460は、523個のユーザビームカバーエリア519を含む。ANカバーエリア3450(ANファーム)は、図45のものと同じあり、その中に分布した597個のAN515を有する米国東部の地域であり、ユーザカバーエリア3460の小さいサブセットである。
複数のカバーエリア
【0237】
上で説明した例示的なエンドツーエンドリレー3403において、ユーザリンクアンテナサブシステム3420は、単一アンテナサブシステム(例えば、単一のユーザリンク反射器を有する)として説明され、フィーダリンクアンテナサブシステム3410は、単一アンテナサブシステム(例えば、単一のフィーダリンク反射器を有する)として説明される。いくつかの事例において、ユーザリンクアンテナサブシステム3420は、1つ又は2つ以上のユーザリンク反射器と関連付けられる1つ又は2つ以上のアンテナサブシステム(例えば、構成アンテナ要素の2つ以上のサブアレイ)を含むことができフィーダリンクアンテナサブシステム3410は、1つ又は2つ以上のフィーダリンク反射器と関連付けられる1つ又は2つ以上のアンテナサブシステムを含むことができる。例えば、いくつかのエンドツーエンドリレー3403は、ユーザリンクアンテナサブシステム3420を有することができ、これは、第1のユーザリンク反射器(例えば、各要素が、第1のユーザリンク反射器に照射し、及び/又はそれによって照射されるように配設される)と関連付けられる第1の一組のユーザリンク構成受信/伝送要素と、第2のユーザリンク反射器と関連付けられる第2の一組のユーザリンク構成受信/伝送要素を含む。いくつかの事例において、2つのユーザリンク反射器は、互いにほぼ同じ物理的面積(例えば、5%、10%、25%、50%以内)である。いくつかの事例において、1つのユーザリンク反射器は、他のものよりもはるかに大きい(例えば、少なくとも2倍の物理的面積)。各一組のユーザリンク構成受信/伝送要素、及びその関連付けられるユーザリンク反射器は、対応する、異なるユーザカバーエリアに照射することができる。例えば、複数のユーザカバーエリアは、重ならない、部分的に重なる、完全に重なる(例えば、より小さいユーザカバーをより大きいユーザカバーエリア内に含むことができる)、その他、とすることができる。いくつかの事例において、複数のユーザカバーエリアは、同時に起動する(照射する)ことができる。他の事例は、下で説明するように、ユーザリンク構成受信/伝送要素の異なる部分の選択的な起動を可能にすることができ、それによって、異なる時間に異なるユーザカバーエリアを起動させる。複数のカバーエリア間のスイッチングは、CPSによって調整することができる。例えば、ビーム形成の較正、ビーム加重値の算出、及びビーム加重値の適用は、2つの異なるカバーエリアの各々について1つの、2つの平行したビーム形成器において起こり得る。ビーム形成器における適切な加重値の使用は、エンドツーエンドリレーの動作に対応するように調節することができる。ビーム加重値は、いくつかの事例において、タイムスライスビーム形成器が用いられる場合に、タイムスライス中に変化する場合がある。
【0238】
図47A及び47Bは、それぞれ、複数のユーザリンクアンテナサブシステム3420の選択的な起動を各々が有する、例示的な往路信号経路4000及び復路信号経路4050を示す。各信号経路は、構成アンテナ要素の間に結合されるトランスポンダを有する。最初に図47Aを参照すると、往路リンクトランスポンダ3430は、図44Aを参照して説明されるものに類似するが、往路リンクトランスポンダ3430の出力側が、2つのユーザリンク構成伝送要素3429のうちの1つに選択的に結合され、各々が別個のユーザリンクアンテナサブシステム3420の一部である(例えば、各々が協働ユーザリンク構成伝送要素3429の別個のアレイの一部である)ことが異なる。上で説明したように、往路リンクトランスポンダ3430は、LNA3705、周波数変換器及び関連付けられるフィルタ3710、チャネル増幅器3715、位相シフタ3720、電力増幅器3725、並びに高調波フィルタ3730のうちのいくつか又は全てを含むことができる。
【0239】
図47Aの往路リンクトランスポンダ3430は、スイッチ4010(往路リンクスイッチ)を更に含み、該スイッチは、第1の一組の電力増幅器3725及び高調波フィルタ3730を介して(第1のユーザリンクアンテナサブシステム3420の)第1のユーザリンク構成伝送要素3429aに、又は第2の一組の電力増幅器3725及び高調波フィルタ3730を介して(第2のユーザリンクアンテナサブシステム3420の)第2のユーザリンク構成伝送要素3429bに、トランスポンダを選択的に結合させる。例えば、第1のスイッチモードにおいて、往路リンクトランスポンダ3430は、フィーダリンク構成受信要素3416と第1のユーザリンク構成伝送要素3429との間の信号経路を効果的に形成し、第2のスイッチモードにおいて、往路リンクトランスポンダ3430は、同じフィーダリンク構成受信要素3416と第2のユーザリンク構成伝送要素3429との間の信号経路を効果的に形成する。スイッチ4010は、電気機械スイッチ、リレー、トランジスタ、その他などの任意の適切なスイッチング手段を使用して実現することができる。スイッチ4010として示されるが、他の実現形態は、往路リンクトランスポンダ3430の入力を複数の出力に選択的に結合させるための任意の他の適切な手段を使用することができる。例えば、電力増幅器3725をスイッチとして使用することができる(例えば、「オン」のときに高ゲインを提供し、「オフ」のときにゼロゲイン(又は損失)を提供する)。
【0240】
図47Bを参照すると、復路リンクトランスポンダ3440は、図47Aの往路リンクトランスポンダ3430を機能的にミラーリングする。図47Aの往路リンクの事例のように、トランスポンダの出力側に選択的に結合させるのではなく、図47Bの復路リンクトランスポンダ3440の入力側は、2つのユーザリンク構成受信要素3426のうちの1つに選択的に結合される。ここでも、各ユーザリンク構成受信要素3426は、別個のユーザリンクアンテナサブシステム3420の一部とすることができる(例えば、各々が、協働ユーザリンク構成受信要素3426の別個のアレイの一部である)。上で説明したように(例えば、図44Bにおいて)、復路リンクトランスポンダ3440は、LNA3705、周波数変換器及び関連付けられるフィルタ3710、チャネル増幅器3715、位相シフタ3720、電力増幅器3725、並びに高調波フィルタ3730のうちのいくつか又は全てを含むことができる。
【0241】
図47Bの復路リンクトランスポンダ3440は、スイッチ4010(復路リンクスイッチ)を更に含み、該スイッチは、第1の一組のLNA3705を介して(第1のユーザリンクアンテナサブシステム3420の)第1のユーザリンク構成受信要素3426に、又は第2の一組のLNA3705を介して(第2のユーザリンクアンテナサブシステム3420の)第2のユーザリンク構成受信要素3426に、トランスポンダも選択的に結合させる。例えば、第1のスイッチモードにおいて、復路リンクトランスポンダ3440は、第1のユーザリンク構成受信要素3426とフィーダリンク構成伝送要素3419との間の信号経路を効果的に形成し、第2のスイッチモードにおいて、復路リンクトランスポンダ3440は、第2のユーザリンク構成受信要素3426と同じフィーダリンク構成伝送要素3419との間の信号経路を効果的に形成する。スイッチ4010は、電気機械スイッチ、リレー、トランジスタ、その他などの任意の適切なスイッチング手段を使用して実現することができる。スイッチ4010として示されるが、他の実現形態は、複数の出力に往路リンクトランスポンダ3430の入力を選択的に結合させるための任意の他の適切な手段を使用することができる。例えば、増幅器3705をスイッチとして使用することができる(例えば、「オン」のときに高ゲインを提供し、「オフ」のときにゼロゲイン(又は損失)を提供する)。
【0242】
エンドツーエンドリレー3403の例としては、スイッチングスケジュールに従ってスイッチ4010のいくつか又は全てを選択的に切り換えるためのスイッチコントローラ4070(又は他の適切な選択的結合手段)を挙げることができる。例えば、スイッチングスケジュールを、エンドツーエンドリレー3403を搭載した記憶デバイスに記憶することができる。いくつかの事例において、スイッチングスケジュールは、複数の時間間隔(例えば、タイムスロット)の各々において、どのユーザリンクアンテナサブシステム3420を起動させるのか(例えば、どの一組のユーザビームに照射させるのか)を効果的に選択する。いくつかの事例において、スイッチングは、複数のユーザリンクアンテナサブシステム3420に等しい時間を割り当てる(例えば、2つのサブシステムの各々が、時間の約半分にわたって起動する)。他の事例において、スイッチングは、容量共有という目標を現実化するために使用することができる。例えば、一方のユーザリンクアンテナサブシステム3420は、需要のより高いユーザと関連付けることができ、また、スケジュールにおいてより長い時間部分を割り当てることができ、一方で、もう一方のユーザリンクアンテナサブシステム3420は、より低い需要のユーザと関連付けることができ、また、スケジュールにおいてより短い時間部分を割り当てることができる。
【0243】
図48A及び48Bは、複数の選択的に起動するユーザカバーエリア3460a、3460bを含む、エンドツーエンドリレー3403のカバーエリア4100及び4150の実施例を示す。例示的なエンドツーエンドリレー503は、図38及び図39のものに類似するが、アンテナサブシステムが異なることを除く。この実施例において、ユーザリンクアンテナサブシステム3420は、2つの9メートルのユーザリンク反射器を含み、トランスポンダは、任意の所与の時点で、選択的にユーザビームの半分だけを起動させるように構成される(例えば、トランスポンダは、図47A及び47Bのように実現される)。例えば、第1の時間間隔中に、図48Aに示されるように、ユーザカバーエリア3460aは、590個の起動中のユーザビームカバーエリア519を含む。起動中のユーザビームカバーエリア519は、米国の西半分を効果的に網羅する。ANカバーエリア3450(ANファーム)は、図38及び図39のものと同じであり、米国東部の地域は、その中に分布した597個のAN515を有する。第1の時間間隔中に、ANカバーエリア3450は、起動中のユーザカバーエリア3460と重ならない。第2の時間間隔中に、図48Bに示されるように、ユーザカバーエリア3460bは、別の590個の起動中のユーザビームカバーエリア519を含む。第2の時間間隔中に、起動中のユーザビームカバーエリア519は、米国の東半分を効果的に網羅する。ANカバーエリア3450は、変化しない。しかしながら、第2の時間間隔中に、ANカバーエリア3450は、アクティブユーザカバーエリア(のサブセット)3460によって、全体が重ねられる。容量は、対応するユーザリンクアンテナサブシステムに割り当てられる時間の比率を動的に調整することによって、様々な地域に(例えば、東部及び西部のユーザカバーエリアの間で)柔軟に割り当てることができる。
【0244】
先の実施例は、2つの同様にサイズ決定されたユーザカバーエリアを例示しているが、他の数(例えば、3つ又は4つ以上)のユーザカバーエリアを提供することができ、また、サイズが異なり得る(例えば、地球全体、米国本土のみ、米国のみ、地域的にのみ等)。複数のユーザカバーエリア3460を有する事例において、ユーザカバーエリア3460は、任意の適切な地理的関係を有することができる。いくつかの事例において、第1及び第2のユーザカバーエリア3460は、(例えば、図48A及び48Bに示されるように)部分的に重なる。他の事例において、第2のユーザカバーエリア3460は、(例えば、図45及び図46に示されるように)第1のユーザカバーエリア3460のサブセットとすることができる。他の事例において、第1及び第2のユーザカバーエリアは、重ならない(例えば、独立している)。
【0245】
図47A~47Bは、ユーザリンク側の信号経路選択を説明する。しかしながら、いくつかの事例は、代替的に、又は加えて、フィーダリンク側の信号経路スイッチングを含む。図49は、複数のユーザリンクアンテナサブシステム3420及び複数のフィーダリンクアンテナサブシステム3410の選択的な起動を有する、例示的な往路信号経路4200を示す。信号経路は、構成アンテナ要素の間に結合される往路リンクトランスポンダ3430を有する。上で説明したように、往路リンクトランスポンダ3430は、LNA3705、周波数変換器及び関連付けられるフィルタ3710、チャネル増幅器3715、位相シフタ3720、電力増幅器3725、並びに高調波フィルタ3730のうちのいくつか又は全てを含むことができる。往路リンクトランスポンダ3430の入力側は、(例えば、スイッチ4010a及び4010b、又は任意の他の適切な経路選択手段を使用して)2つのフィーダリンク構成受信要素3416のうちの1つに選択的に結合される。各フィーダリンク構成受信要素3416は、別個のフィーダリンクアンテナサブシステム3410の一部とすることができる(例えば、各々が、協働フィーダリンク構成受信要素3416の別個のアレイの一部である)。往路リンクトランスポンダ3430の出力側は、(例えば、スイッチ4010c及び4010d、又は任意の他の適切な経路選択手段を使用して)2つのフィーダリンク構成伝送要素3429のうちの1つに選択的に結合される。各ユーザリンク構成伝送要素3429は、別個のユーザリンクアンテナサブシステム3420の一部とすることができる(例えば、各々が、協働ユーザリンク構成伝送要素3429の別個のアレイの一部である)。往路リンクトランスポンダ3430によって可能にされる4つの可能な信号経路のいくつか又は全部の間で選択するために、1つ又は2つ以上のスイッチングコントローラ(図示せず)を、エンドツーエンドリレー3403に含むことができる。図47A、47B、及び図49のトランスポンダは、数多くの可能な事例のうちのいくつかを例示するに過ぎない。更に、いくつかの事例は、2つを超えるユーザリンクアンテナサブシステム3420及び/又は2つを超えるフィーダリンクアンテナサブシステム3410の間の経路選択を含むことができる。同様に、ユーザリンクアンテナサブシステム3420及び/又はフィーダリンク構成受信要素3416が別個の伝送及び受信反射器、又は同類のものを有する事例では、追加的な経路選択を含むことができる。
【0246】
また、類似する様式で、複数のANカバーエリアも提供することができる。1つの実施例として、特定の地理的地域のトラフィックがそれらのそれぞれ地域で終端することが望ましくなり得る。例えば、エンドツーエンドリレー3403は、図49に例示されるような一対のトランスポンダの有無にかかわらず、どちらも米国北部にある、第1のANカバーエリア3450及び第1のユーザカバーエリア3460にサービスを提供することができ、また、どちらも米国南部にある、第2のANカバーエリア3450及び第2のユーザカバーエリア3460にサービスを提供することができる。トランスポンダにおける経路選択(例えば、スイッチング)を使用して、単一のエンドツーエンドリレー3403(例えば、単一の衛星)は、米国北部のANカバーエリア3450の中のAN515を使用して、米国北部のユーザカバーエリア3460と関連付けられるトラフィックにサービスを提供することができ、また、米国南部のANカバーエリア3450の中のAN515を使用して、米国南部のユーザカバーエリア3460と関連付けられるトラフィックにサービスを提供することができる。容量は、対応するアンテナサブシステムに割り当てられる時間の比率を動的に調整することによって、様々な地域に(例えば、米国北部及び南部のユーザカバーエリアの間で)柔軟に割り当てることができる。
【0247】
一般に、図41において説明されるエンドツーエンドリレー3403の特徴は、少なくとも1つのANカバーエリア3450と異なる少なくとも1つのユーザビームカバーエリア519にサービスを提供することを可能にする。いくつかの事例において、異なるカバーエリアへのサービス提供は、ANファームの使用が、大きいユーザカバーエリア3460に高い容量を提供することを可能にすることができる。図45図46図48A、及び48Bは、そのようなANファームの実現形態の様々な実施例を示す。比較的小さい地理的エリアの中に多数のAN515を配備することで、いくつかの特徴を提供することができる。例えば、より多くの(又は更には全ての)AN515を、AN515の理想的な分布からより逸脱せずに、単一の国若しくは地域の境界内、陸上等の(例えば、CPS505に戻る良好なファイバの接続性を有する地域の)高速ネットワークの近くに配備することを確実にすることがより容易であり得る。経路選択(例えば、図47A~47Bのように)による異なるカバーエリアへのサービス提供を実現することは、追加的な特徴を提供することができる。例えば、上で説明したように、単一のANファーム(及び単一のエンドツーエンドリレー3403)を使用して、複数のユーザカバーエリア3460に選択的にサービスを提供することができる。同様に、単一のエンドツーエンドリレー3403を使用して、地域によってトラフィックを区別し、サービスを提供することができる。
【0248】
いくつかの事例において、経路選択による異なるカバーエリアへのサービス提供は、様々な干渉管理及び/又は容量管理機能を可能にすることができる。例えば、図48A及び48Bを再度参照すると、通信リンクの4つのカテゴリ、すなわち、ANファームから、図48Aの西部のアクティブユーザカバーエリア3460への往路リンク通信(「リンクA」)、ANファームから、図48Bの東部のアクティブユーザカバーエリア3460への往路リンク通信(「リンクB」)、図48Aの西部のアクティブユーザカバーエリア3460からANファームへの復路リンク通信(「リンクC」)、及び図48Bの東部のアクティブユーザカバーエリア3460からANファームへの復路リンク通信(「リンクD」)を考慮することができる。第1の時間間隔では、図48Bの東部のユーザカバーエリア3460が起動中であり、よって、通信は、リンクB及びリンクDにわたる。ANカバーエリア3450と東ユーザカバーエリア3460との間に完全な共通部分があるので、リンクB及びDは潜在的に干渉する。故に、第1の時間間隔中に、リンクBには、帯域幅の第1の部分(例えば、2GHz)を割り当てることができ、リンクDには、帯域幅の第2の部分(例えば、1.5GHz)を割り当てることができる。第1の第2の間隔では、図48Aの西部のユーザカバーエリア3460が起動中であり、よって、通信は、リンクA及びリンクCにわたる。ANカバーエリア3450と西部のユーザカバーエリア3460との間にはいかなる重なりもないので、リンクA及びリンクCは、第2の時間間隔中に、エンドツーエンドリレー3403の全帯域幅(例えば、3.5GHz)を使用することができる。例えば、第1の時間間隔中には、往路アップリンク信号を、第1の周波数範囲を使用して受信することができ、復路アップリンク信号は、第1の周波数範囲と異なる第2の周波数範囲を使用して、受信することができ、第2の時間間隔の間には、往路アップリンク信号及び復路アップリンク信号を、同じ周波数範囲(例えば、第1、第2、又は他の周波数範囲)を使用して受信することができる。いくつかの事例では、第1の時間間隔中に使用される他の干渉緩和技術によって、第1及び第2の両方の時間間隔中に、周波数を再利用することができる。いくつかの事例において、経路選択タイミングは、異なる時間間隔中の帯域幅割り当てのそのような差を補償するように選択することができる。例えば、第1の時間間隔は、第2の時間間隔よりも長くすることができ、よって、リンクB及びDは、より長い時間にわたってより少ない帯域幅を割り当てて、より短い時間にわたるリンクA及びCへのより多くの帯域幅の割り当てを少なくとも部分的に補償する。
【0249】
いくつかの事例において、第1の復路アップリンク信号は、第1の時間間隔中に、第1のユーザカバーエリア(例えば、東部のユーザカバーエリア3460)の一部又は全部にわたって地理的に分布した複数のユーザ端末517の第1の部分から、複数の協働ユーザリンク構成受信要素3426aによって受信され、第2の復路アップリンク信号は、第2の時間間隔中に、第2のユーザカバーエリア(例えば、西部のユーザカバーエリア3460)の一部又は全部にわたって地理的に分布した複数のユーザ端末517の第2の部分から、複数の協働ユーザリンク構成受信要素3426bによって、受信される。ANカバーエリア3450(ANファーム)が(例えば、図48A及び48Bに例示されるように)第1のユーザカバーエリアのサブセットであるときに、ANタイミングは、第1の時間フレーム中に(例えば、ユーザカバーエリア3460とANカバーエリア3450との間に重なりがあるときに)、エンドツーエンドリレー3403によって較正することができる。
【0250】
上で説明したように、いくつかの事例は、複数のAN515の各々についてそれぞれの相対的タイミング調整を決定することを含むことができ、よって、複数のAN515からの関連付けられる伝送は、(例えば、10%、5%、2%、又は他の適切な値などのシンボル区間の一部である、シンボル区間に対して十分に調整したタイミングで)同調してエンドツーエンド中継3403に到達する。そのような事例において、往路アップリンク信号は、それぞれの相対的タイミング調整に従って、複数のAN515によって伝送される。いくつかのそのような事例において、同期ビーコン信号(例えば、上で説明したように、ビーコン信号発生器によって発生されるPN信号)は、エンドツーエンドリレー3403から、複数のAN515のうちの少なくともいくつかによって受信され、それぞれの相対的タイミング調整は、同期ビーコン信号に従って決定される。他のそのような事例において、AN515のいくつか又は全部は、エンドツーエンドリレー3403からループバック伝送を受信することができ、それぞれの相対的タイミング調整は、ループバック伝送に従って決定される。AN515を較正するための様々な手法は、AN515がエンドツーエンドリレー3403と通信する能力に依存することができる。故に、いくつかの事例は、適切なカバーエリアが照射される時間間隔中にだけ、AN515を較正することができる。例えば、ループバック伝送は、ANカバーエリア3450とユーザカバーエリア3460との間に幾らかの重なりがある時間間隔中にだけ使用することができる(例えば、AN515が、エンドツーエンドリレー3403のフィーダリンクアンテナサブシステム3410及びユーザリンクアンテナサブシステム3420の両方を使用することができるループバックビームを通じて通信する)。いくつかの事例において、適切な較正は、フィーダダウンリンク周波数範囲とユーザダウンリンク周波数範囲との間の幾らかの重なりに更に依存することができる。
結論
【0251】
開示される方法及び装置は、様々な実施例、事例、及び実現形態に関して上で説明されているが、個々の実施例の1つ又は2つ以上において説明される特定の特徴、態様、及び機能は、他の実施例に適用することができることが理解されるであろう。したがって、特許請求される発明の広さ及び範囲は、上で提供されたいずれの実施例によっても限定されるものではなく、むしろ特許請求の範囲によって定義される。
【0252】
本文書において使用される用語及び語句、並びにそれらの変形物は、別途明示的に記述されない限り、限定することとは対照的に、制約のないものであると解釈されるべきである。前述の例として、「含んでいる(including)」という用語は、「限定することなく、含んでいる(including without limitation)」又は同類のことを意味するように使用され、「例(example)」という用語は論述中の項目の代表的な事例を提供するために使用され、その網羅的又は限定的なリストを提供するためのものではなく、「1つの(a)」又は「1つの(an)」という用語は、「少なくとも1つの」、「1つ又は2つ以上の」、又は同類のことを意味する。
【0253】
明細書の全体を通して、「結合させる(couple)」又は「結合された(coupled)」という用語は、構成要素間の物理的又は電気的(無線を含む)のいずれかによる接続を広く指すために使用される。いくつかの事例において、第1の構成要素は、第1及び第2の構成要素の間に配置される中間の第3の構成要素を通して第2の構成要素に結合させることができる。例えば、構成要素は、直接接続、インピーダンス整合ネットワーク、増幅器、減衰器、フィルタ、直流ブロック、交流ブロック、などを通して結合させることができる。
【0254】
接続詞「及び(and)」で結び付けられる一群の項目は、それらの項目のうちのどの項目もその群内に存在することが必要であることを意味するのではなく、むしろ、別途明示的に記述されない限り、全てを、又は全てのうちの任意のサブセットを含むことを意味する。同様に、接続詞「又は(or)」で結び付けられる一群の項目は、その群の中で相互排他的であることを必要とするものではなく、むしろ、別途明示的に記述されない限り、全てを、又は全てのうちの任意のサブセットを含む。更に、開示される方法及び装置の項目、要素、又は構成要素は、単数で説明され、又は特許請求され得るが、単数であることが明確に述べられていない限り、複数がその範囲内にあることが想定される。
【0255】
いくつかの事例における「1つ又は2つ以上の(one or more)」、「少なくとも(at least)」、又は同類の語句などの幅を広げる語又は語句の存在は、そのような幅を広げる語句がなかった場合に、より狭い事例を意図する、又は必要とすることを意味するものではない。
【0256】
特許請求の範囲に参照符号が含まれる場合があるが、そうした参照符号は、特許請求の範囲をより理解し易くする唯一の機能のために提供され、参照符号の包含(又は省略)は、特許請求の範囲によって保護される事項の範囲を限定するものとみなすべきではない。
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