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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】レーザープローブ
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/008 20060101AFI20230619BHJP
   A61B 18/24 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
A61F9/008 120Z
A61F9/008 150
A61F9/008 151
A61F9/008 120A
A61B18/24
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020531769
(86)(22)【出願日】2018-12-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 IB2018059974
(87)【国際公開番号】W WO2019116280
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-11-19
(31)【優先権主張番号】62/597,550
(32)【優先日】2017-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/598,653
(32)【優先日】2017-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/622,299
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー クック
(72)【発明者】
【氏名】アリレザ ミルセパッシ
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-500043(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0236183(US,A1)
【文献】国際公開第1992/008427(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2010/0261961(US,A1)
【文献】国際公開第2011/071776(WO,A1)
【文献】特表2002-507135(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0122366(US,A1)
【文献】国際公開第2008/081653(WO,A1)
【文献】特表2003-518395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/008
A61B 18/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カニューレと、
前記カニューレ内に位置決めされている少なくとも1つの多芯光ファイバーと、
前記ファイバーに対して末端の前記カニューレ内に位置決めされている勾配屈折率(GRIN)レンズであって、前記レンズの基端部で前記光ファイバーからレーザービームを受信し、前記レーザービームを前記レンズの末端部の方へ送信するのに適しているGRINレンズと、
前記レーザービームを前記レンズの前記末端部から受信し、前記レーザービームをレーザープローブから放出するように構成されている光学素子と
を含み、
前記光学素子は、ろう接継手によって前記カニューレに結合されており
前記光学素子の基端部は、前記カニューレ内に位置決めされており、かつ、前記光学素子の末端部は、前記カニューレの末端部を越えて突出し、
前記光ファイバーの末端面は、前記レンズの基端面に押圧されており、
前記光学素子は前記レンズに対する機械的止め具として機能するように、前記レンズの末端面は、前記光学素子の基端面に押圧されている、
レーザープローブ。
【請求項2】
前記ろう接継手は、
ろう材と前記光学素子の外面との間の第1の分子間接合体と、
前記ろう材と前記カニューレの内面との間の第2の分子間接合体と
を含む、請求項1に記載のレーザープローブ。
【請求項3】
前記ろう接継手は、
ろう材と前記光学素子の外面に付着されている金属材料との間の第1の分子間接合体と、
前記ろう材と前記カニューレの内面との間の第2の分子間接合体と
を含む、請求項1に記載のレーザープローブ。
【請求項4】
前記光学素子は、光学的に透明な材料を含む、請求項1に記載のレーザープローブ。
【請求項5】
前記光学素子は、サファイア及び溶融石英のうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載のレーザープローブ。
【請求項6】
前記カニューレは、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、ニチノール、及び白金イリジウムのうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載のレーザープローブ。
【請求項7】
前記光学素子の前記外面に付着されている前記金属材料は、チタン及び金のうち少なくとも1つを含む、請求項3に記載のレーザープローブ。
【請求項8】
前記カニューレの直径は、200~700μmの範囲にあり、
前記光学素子は、円柱状に形成されており、
前記光学素子の直径は、200~700μmの範囲にあり、
前記光学素子の長さは、200~700μmの範囲にあり、
前記レンズは、円柱状に形成されており、
前記レンズの直径は、200~700μmの範囲にあり、
前記レンズの長さは、200μm~1.5mmの範囲にあり、
前記ろう接継手の厚さは、50μm以下である、請求項1に記載のレーザープローブ。
【請求項9】
ユーザによって握るためにサイズ調整及び形成されている本体であって、患者の眼内に位置決めされるように構成されているニューレが結合されている本体と、
前記本体に結合されており、患者の眼内に位置決めされるように構成されているカニューレと、
前記カニューレ内に位置決めされている多芯ファイバーと、
前記多芯ファイバーに対して末端の前記カニューレ内に位置決めされているGRINレンズであって、前記レンズの基端部で前記光ファイバーからレーザービームを受信し、前記レーザービームを前記レンズの末端部の方へ送信するのに適しているGRINレンズと、
前記レーザービームを前記レンズの前記末端部から受信し、前記レーザービームをレーザープローブから放出するように構成されている光学的に透明な窓を含む光学素子であって、前記光学素子の基端部は、前記カニューレ内に位置決めされており、前記光学素子の末端部は、前記カニューレの末端部を越えて突出する光学素子と、
前記光学素子を前記カニューレに結合するろう接継手であって、前記光学素子と前記カニューレとの間に気密シール及び液密シールのうち少なくとも1つを形成するろう接継手と
を含み
前記光ファイバーの末端面は、前記レンズの基端面に押圧されており、
前記光学素子は前記レンズに対する機械的止め具として機能するように、前記レンズの末端面は、前記光学素子の基端面に押圧されている、レーザープローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
この出願は、発明者がAlireza Mirsepassi、及びChristopher Cookである、2018年1月26日に出願の「熱ロバストマルチスポットレーザープローブ(THERMALLY ROBUST MULTI-SPOT LASER PROBE)」と称する米国仮特許出願第62/622,299号明細書の優先権の利益を主張しており、十分且つ完全にここに記載されているように、その内容全体を参照により本明細書に引用しているものとする。
【0002】
本開示は、眼科を含む医療処置に有用なレーザープローブに関する。
【背景技術】
【0003】
レーザー光凝固治療は、網膜剥離及び裂傷、及び糖尿病などの病気に起因する増殖性網膜症などの眼症状に対処する。糖尿病患者における異常に高い血糖は、網膜血管を刺激して、成長因子を放出し、その結果、網膜面にわたって血管及び毛細血管の望ましくない増殖を促す。これらの増殖性血管は、非常に壊れやすく、硝子体に直ちに出血する。身体は、瘢痕組織を生成することによって損傷血管に対応し、その結果、網膜剥離を引き起こし、最終的には、失明を引き起こすことがある。
【0004】
レーザーパン網膜光凝固術において、レーザープローブを使用して、網膜にわたってスポットを焼く。網膜の任意の1つの治療に対する必要なレーザー光凝固の数は多いものであり得、1000~1500スポットを通常焼く。従って、複数の光凝固ビームを同時に送出することができるマルチスポットレーザープローブにより、複数のスポットを一度に焼くことができ、このマルチスポットレーザープローブを使用して、光凝固処置を迅速に処理することができる。マルチスポットレーザープローブを、2つのカテゴリ(光ファイバーの対応するアレイを介して複数のレーザービームを生成する「マルチスポット/マルチファイバー」レーザープローブ、及び単一ファイバーを使用する「マルチスポット/単一ファイバー」レーザープローブ)に一般に分類することができる。
【0005】
網膜上に単一焼きスポットを生成するために、レーザー出力要件は、約250~500ミリワット(mW)である。複数の焼きスポットを同時に生成するために、マルチスポットレーザープローブは、この必要な出力の対応する倍量を送出する必要がある。例えば、4つの焼きスポットを同時に生成することができるマルチスポットプローブは、プローブチップにおける密閉空間を介して、1ワット(W)から3ワット(W)までどの場所でも生成することができる。手術用途の場合によっては(例えば、プローブチップにおける出血及び閉塞の場合)、プローブチップにおける大幅な光吸収が発生して、プローブの熱による故障を引き起こすことがある。従って、熱的に頑強で溶融に強い改良マルチスポットレーザープローブが必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
特定の実施形態は、カニューレと、カニューレ内に位置決めされている少なくとも1つの光ファイバーと、このファイバーの末端部でカニューレ内に位置決めされているレンズとを有するレーザープローブを含む。このレンズは、レンズの基端部で光ファイバーからレーザービームを受信し、レーザービームをレンズの末端部の方へ送信するのに適している。このレーザープローブは、レーザービームをレンズの末端部から受信し、レーザービームをレーザープローブから放出するように構成されている光学素子を更に含む。この光学素子は、ろう接継手によってカニューレに結合されている。このろう接継手は、光学素子とカニューレとの間に気密又は液密シールを形成してもよい。
【0007】
特定の実施形態において、ろう接継手は、ろう材と光学素子の外面との間の第1の分子間接合体と、ろう材とカニューレの内面との間の第2の分子間接合体とを含む。幾つかの変型例は、ろう材と光学素子の外面に付着されている金属材料(例えば、チタン又は金)との間の第1の分子間接合体と、ろう材とカニューレの内面との間の第2の分子間接合体とを含む。
【0008】
特定の例において、レーザープローブに含まれる少なくとも1つの光ファイバーは、多芯ファイバー又は複数の光ファイバーを含む。
【0009】
特定の実施形態において、光学素子の基端部は、カニューレ内に位置決めされており、光学素子の末端部は、カニューレの末端部を越えて突出する。光学素子は、50~200μmの範囲にある長さだけカニューレの末端部を越えて突出してもよい。
【0010】
開示のレーザープローブの特定の変型例において、レンズは、GRINレンズ又は球面レンズを含んでもよく、光学素子は、光学的に透明な材料を含んでもよい。特定の例において、光学素子は、サファイア又は溶融石英を含み、カニューレは、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、ニチノール、又は白金イリジウムを含む。
【0011】
開示のレーザープローブの特定の実施形態において、カニューレの直径は、200~700μmの範囲にあり、光学素子は、円柱状に形成されており、光学素子の直径は、200~700μmの範囲にあり、光学素子の長さは、200~700μmの範囲にあり、レンズは、円柱状に形成されており、レンズの直径は、200~700μmの範囲にあり、レンズの長さは、200μm~1.5mmの範囲にあり、ろう接継手の厚さは、50μm以下である。
【0012】
特定の実施形態において、レーザープローブは、ユーザによって握るためにサイズ調整及び形成されている本体を含み、カニューレは、この本体に結合されており、患者の眼内に位置決めされるように構成されている。
【0013】
開示のレーザープローブの変型例は、レンズの末端部に接する光学素子の基端部を含んでもよい。更に、光ファイバーの末端面は、レンズの基端面に押圧されてもよく、光学素子はレンズに対する機械的止め具として機能するように、レンズの末端面は、光学素子の基端面に押圧されている。
【0014】
これら及び他の態様及び用途を、詳細な説明で記載する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、マルチスポットレーザープローブの例を示す。
図2図2は、従来のマルチスポットレーザープローブの末端部の態様を例示する。
図3A-B】図3A-Bは、特定の実施形態によるマルチスポットレーザープローブの末端部の態様を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面において、同じ符号を有する要素は、同じ又は同様な機能を有する。図面は必ずしも原寸に比例していないこと、及び様々な特徴をより明確に例示するために特徴のうち幾つかを強調することがあることが、当業者は分かる。更に、図示の構造は、例示であり、本発明の範囲を限定しないことが、当業者は分かる。
【0017】
下記の説明において、開示の主題の説明を容易にするために、一例として詳細を記載する。しかし、開示の実装形態は、例示であり、全ての可能な実装形態を網羅していないことが当業者に明白であるはずである。場合によっては、開示を曖昧にしないようにするために、当業者に周知の特徴及び手順は説明されていない。特に指定がない限り、ここで使用される全ての専門用語及び科学用語は、この開示が属する当業者の1人によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。値の範囲を与える場合、その範囲の上限と下限との間の各介在値、及びその規定範囲における任意の他の規定又は介在値を、開示の実施形態として含むことが分かる。更に、その規定範囲における任意の特に除外された限界を条件として、これらのより小さい範囲の上限及び下限を開示の実施形態として含む。規定範囲が上限及び下限の両方を含む場合、それらの含まれる限界の一方を除外する範囲も開示の実施形態として含む。
【0018】
上述のように、レーザー光凝固治療において、レーザープローブを使用して、網膜にわたって様々なレーザー焼きスポットで、血管を焼灼する。網膜の任意の1つの治療に対する必要なレーザー光凝固の数は、非常に多いものであり得る(場合によっては、1000~1500スポットを超える)ので、外科医は、マルチスポットレーザープローブを使用して、複数の光凝固ビームを同時に送出してもよく、これによって、複数のスポットを一度に焼いて、手術時間を短縮する。
【0019】
図1は、4つのレーザースポット108を同時に生成するマルチスポットレーザープローブ100の例を示す。プローブ100は、ユーザ(例えば、眼科医)によって握るためにサイズ調整及び形成されたハンドル102を含む。プローブ100は、末端部でチップ106を有するハンドル102及び104から延在するカニューレ(様々な実施形態で示すように湾曲していても湾曲していなくてもよい)を更に含む。カニューレ104は、患者の眼への挿入に適しており、円筒状に形成されていてもよい。様々な例において、カニューレ104は、ステンレス鋼、チタン、ニッケル、ニッケルチタン(ニチノール)、又は白金イリジウムで構成されてもよく、23番径、25番径、又は27番径であってもよい。
【0020】
動作中、レーザー源(図示せず)からの1つ又は複数のレーザービームを、1つ又は複数のファイバーを介してハンドル102及びカニューレ104内で送信し、末端チップ106から網膜108に送出して、スポット108を生成する。幾つかの例において、プローブ100は、スポット108の別々の1つを生成するレーザービームを各々が送信する複数のファイバー又は多芯ファイバーを含む。他の例において、単一ファイバーは、スポット108の各々の1つを生成するために、(例えば、プローブ102で球面レンズ又は勾配屈折率(GRIN)レンズを用いて)分割されたレーザービームを送信してもよい。様々なマルチスポットレーザープローブ設計は、内容全体を参照により本明細書に引用したものとする米国特許第8951244号明細書に記載されている。
【0021】
図2は、従来のマルチスポットレーザープローブの態様を例示する。この例において、マルチスポットレーザープローブ200の末端部は、カニューレ201内でプローブチップ206に設置されたレンズ204と光学的に結合された2×2ファイバーアレイ202を含む。この設計において、レンズ204は、プローブ200の最も末端の光学素子であり、プローブ200を処置中に眼に挿入している間、レンズ204の末端面は、眼組織210と物理的に接触している。動作中、レーザー光を、ファイバーアレイ202を介して送信し、レンズ204によって屈折させ、複数のレーザースポットとして網膜208に投影する。
【0022】
手術の場合によっては、血液又は別の異質成分が、プローブチップ206に蓄積して、閉塞を引き起こすことがある。例えば、外科手術中に、血液が、レンズ204の末端面205で閉塞することがある。末端面205で閉塞された血液は、焦げて、レーザーエネルギーを吸収し、レンズ204の温度が上昇することがある。衰えずにこの温度上昇が続くと、熱暴走が発生してレンズ204が溶け、その結果、プローブ200が故障することがある。他の場合、血液又は別の異質成分が、レンズ204の外面とカニューレ201の内面との間の空間212に浸透することがある。先行の例のように、このような物質は、レーザーエネルギーを吸収し、レンズ204の温度が上昇することがある。衰えずにこの温度上昇を放置すると、熱暴走が発生してレンズ204が溶け、その結果、プローブ200が故障することがある。
【0023】
本開示の実施形態は、手術中に血液及び異物に起因する熱故障に耐えることができる改良マルチスポットプローブ設計を提供する。マルチスポットプローブの改良設計は、ろう接継手によってカニューレに装着された熱ロバスト光学素子を、プローブの最も末端のチップに含んでもよい。このような設計によって構成されたプローブは、外科手術中に直面する血液又は他の異物の閉塞から、カニューレ内の光学素子(例えば、レンズ)を切り離す。更に、光学的に透明な素子をカニューレに装着するろう接継手は、異物又は血液による浸透を受けにくい。従って、このようなプローブのレンズは、血液閉塞の場合、熱故障の影響を受けにくい。
【0024】
図3A及び図3Bは、特定の実施形態による改良マルチスポットレーザープローブ102の態様を例示する。特に、マルチスポットレーザープローブ102の末端チップ300は、カニューレ301を含む。カニューレ301内に含まれるのは、塗膜304で囲まれた多芯光ファイバー302、レンズ306、及び光学素子308である。特定の実施形態において、光学素子308の基端部は、レンズ306の末端部に接する。特定の実施形態において、レンズ306の基端部は、ファイバー302の末端面305に接する。特定の実施形態において、光ファイバー302の末端面305を、レンズ306の基端面に押圧し、レンズ306の末端面を、光学素子308の基端面に押圧し、その結果、光学素子は、レンズ306に対する機械的止め具として機能する。
【0025】
マルチスポットレーザー光312を、光学素子308の末端面から放出する。動作中、レーザー源(例えば、レーザーエンジン、図示せず)から受信されるレーザー光を、光ファイバー302を介して送信し、レンズ306によって受信及び送信し、最後に、光学素子308の末端面311で1つ又は複数の集束レーザービーム312として受信及び放出する。
【0026】
カニューレ301を、ステンレス鋼、チタン、ニッケル、ニッケルチタン(ニチノール)、白金イリジウム、又は任意の他の適切な材料で構成してもよい。カニューレ301は、23番径、25番径、27番径、又は29番径のカニューレ、又はより大きい又はより小さい番径のカニューレであってもよい。特定の例において、カニューレ301を円筒状に形成してもよい。
【0027】
多芯光ファイバー302は、レーザー光を柔軟に送信するガラス又は任意の適切な材料を含んでもよい。図示の実施形態において、光ファイバー302は、4本の芯を含むが、他の実施形態は、より少ない(例えば、1本、2本、又は3本の芯)、又は更に多い(例えば、5本、6本、又はより多い本数の芯)のファイバー芯を含んでもよい。図示しないが、本発明の実施形態は、2本(以上)の2芯ファイバー、2本(以上)の3芯ファイバー、又は2本(以上)の4芯ファイバーなどの複数の多芯ファイバーを含んでもよい。他の実施形態は、2本、3本、又は4本、5本、6本、又はより多い本数の単芯ファイバーなどの複数の単芯ファイバーを含んでもよい。このような実施形態において、各芯は、網膜上に単一レーザースポットを最終的に形成するレーザー光のビームを送信してもよい。他の実施形態において、単一ファイバーによって送信されるレーザービームを、プローブ又はカニューレ内で光学素子(例えば、回折ビーム分割器)によって複数のビームに分割してもよい。これらの例は、開示の原理を例示するために与えられ、本発明の範囲を限定しないことが、当業者は分かる。
【0028】
レンズ306は、溶融石英、ホウケイ酸塩、又はサファイアのような可視的に透明なガラス又はセラミックを含む任意の適切な材料を含む1つ又は複数のレンズを含んでもよい。特定の例において、レンズ306は、1つ又は複数のレーザービームをファイバー302の末端チップ305から受信し、受信レーザービームを光学素子308の方へ伝える単一素子円柱GRINロッドレンズを含む。
【0029】
上述のように、高いエネルギースループット(例えば、1~3ワット)、及び末端チップ300の密閉空間を考えると、動作中のレンズ306の末端面上の血液又は他の物質の蓄積は、光吸収及び熱による故障を引き起こすことがある。従って、光学素子308は、レンズ306に対して末端に設置され、異物(例えば、手術環境における組織又は血液)への暴露、過熱、及び溶融からレンズ306(及びプローブにおける他の構成要素)を切り離して保護するように設計されている。光学素子308は、高融点及び高軟化温度を有する光学的に透明な材料(例えば、高軟化点セラミック又はガラス)で構成された1つ又は複数の素子を含んでもよく、末端チップ300における最も末端の光学素子であってもよい。特定の例において、光学素子308は、サファイア又は溶融石英を含む。
【0030】
特定の実施形態において、光学素子308は、カニューレ300の口径の末端部に嵌合するように円柱状にサイズ調整及び形成され得る単一素子の光学的に透明な窓(例えば、サファイア、溶融石英、又は同様の光学的特性及び軟化点/融点を有する材料で構成されている)を含む。特定の例において、光学素子308は、レーザー光を受信及び放出する平坦な基端面及び平坦な末端面を含んでもよい。他の例において、光学素子308は、平坦な基端面及び湾曲した末端面、湾曲した基端面及び平坦な末端面、又は湾曲した基端面及び湾曲した末端面を含んでもよい。
【0031】
特定の例において、光学素子308の末端面311は、カニューレ301の末端部を越えて延在してもよい。例えば、図3Aは、光学素子308Aの末端面311Aがカニューレ301の最も末端のチップを越えて距離Dだけ突出する例を示す。特定の実施形態において、距離Dは、50~200μmの範囲にあってもよい。他の実施形態において、距離Dは、50μm未満又は200μmを超えてもよい。図3Bは、光学素子308Bの末端面311Bがカニューレ301の末端部を越えて突出しない例を示す。この例において、末端面311Bは、カニューレ301の最も末端のチップと面一であり、その結果、カニューレ301の末端部を越えて延在することなく、カニューレ301の全長を延在させる。
【0032】
上述のように、構成要素の末端チップ300を、硝子体網膜手術のための眼への挿入を含む眼科用にサイズ調整及び形成してもよい。従って、特定の実施形態において、カニューレ301は、200~700μmの範囲にある内径を有してもよく、円柱状レンズ302は、200~700μmの範囲にある直径及び200μm~1.5mmの範囲にある長さを有してもよく、円柱状光学素子308は、200~700μmの範囲にある直径及び200~700μmの範囲にある長さを有してもよい。
【0033】
よく密封された熱ロバスト弾性プローブを提供するために、光学素子308を、1つ又は複数のろう接継手310によってカニューレ301に結合してもよい。製造中に、高温(接合される材料の軟化点又は融点に近い)に加熱されたろう材(又はろう接複合材)を使用して、光学素子308の外面とカニューレ300の内面との間の分子間接合体を形成することができる。従って、得られるろう接継手310は、ろう材と光学素子308の外面との間の第1の分子間接合体、及びろう材とカニューレの内面との間の第2の分子間接合体を含んでもよい。サファイア又は溶融石英の光学素子308、及びステンレス鋼、チタン、ニチノール)又は白金イリジウムのカニューレ301と共に有用なろう材は、金及びチタンを含むが、本発明は、これらの例に限定されない。幾つかの実施形態において、ろう接継手310の厚さは、50μm以下であってもよい。
【0034】
幾つかの実施形態において、ろう接継手310を形成しやすくするために、光学素子308の外面を、金属材料で一部又は全部被覆してもよい。例えば、原子数個分の厚さであり、光学素子310と接合する金属層を光学素子308の外面に形成するスパッタリング工程によって、サファイアの光学素子308の外面を、金属材料(例えば、チタン、金、又は他の金属又は合金)で被覆してもよい。このような例において、金属材料及びろう材は、ろう接継手310の一部を構成する分子間接合体を形成してもよい。特定の実施形態において、ろう接継手310は、円柱光学素子308に円周方向に(カニューレ301内で)巻き付き、光学素子308とカニューレ300との間の重なりに対応する長さLの全部又は一部にわたって延在してもよい。
【0035】
従って、ろう接継手310は、先行プローブ設計で生じることがある漏れ又は浸透から末端チップ300の内部構成要素(レンズ306を含む)を保護する気密又は液密シールを光学素子308とカニューレ301との間に形成してもよい。更に、末端面311で閉塞した場合、ろう接継手310は、レンズ310を熱的に絶縁し、先行プローブ設計で生じる過熱及び熱による故障を回避する。その結果、上述のように光学素子308をろう接継手310と組み合わせると、過熱、溶融、又はプローブチップ(例えば、血液閉塞から)における光吸収に起因する他の重大な故障の危険性を大幅に減らして、高出力(例えば、1~3ワット)のレーザービーム送信を行うことができるレーザープローブが得られる。本発明のこれらの利益及び他の利益は、ここに記載の図面及び特許請求の範囲に鑑みて、当業者に明白である。
【0036】
上述の開示の主題は、例示であり、限定されないと見なされるべきであり、添付の特許請求の範囲は、本開示の真の精神及び範囲に入る全てのこのような変更、拡張及び他の実装形態を含むように意図されている。従って、法律が許す最大限の範囲で、本開示の範囲は、下記の特許請求の範囲及び特許請求の範囲の均等物の最も広範な許容解釈によって決められるべきであり、上述の詳細な説明によって制限又は限定されるべきではない。
図1
図2
図3A
図3B