(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】熱可塑性複合品ならびにその製造方法および使用
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20230619BHJP
B29C 70/12 20060101ALI20230619BHJP
B29C 70/42 20060101ALI20230619BHJP
B29K 101/12 20060101ALN20230619BHJP
B29K 105/12 20060101ALN20230619BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C70/12
B29C70/42
B29K101:12
B29K105:12
(21)【出願番号】P 2020546472
(86)(22)【出願日】2019-02-27
(86)【国際出願番号】 CN2019076303
(87)【国際公開番号】W WO2019170021
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】201810180872.9
(32)【優先日】2018-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュー、チウ
(72)【発明者】
【氏名】テン、スツー、チー
(72)【発明者】
【氏名】シュ、ウェン
(72)【発明者】
【氏名】リー、イラン
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-256692(JP,A)
【文献】特開2011-194852(JP,A)
【文献】特開平07-228707(JP,A)
【文献】特開平07-205192(JP,A)
【文献】特開2006-137174(JP,A)
【文献】特表2005-533690(JP,A)
【文献】特開平09-280345(JP,A)
【文献】国際公開第2018/143476(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/002456(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 43/00-43/58
B29C 70/00-70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス部および機能部を含む熱可塑性複合品であって、前記マトリックス部は複合基材およびコーティングを含み、前記コーティングは前記複合基材の表面を被覆するものであり、前記コーティングおよび前記機能部は、以下の成分を含むコーティング組成物の反応により得られ:1つ以上のポリイソシアネート、および1つ以上のH-活性多官能性化合物、
前記機能部は前記基材の切り欠き部に延びるコーティング領域を含
み、
かつ
前記機能部が、電気信号伝送のための領域を含む電気絶縁部を含む、
前記熱可塑性複合品。
【請求項2】
前記H-活性多官能性化合物が1つ以上のポリオールである、請求項1に記載の熱可塑性複合品。
【請求項3】
前記複合基材が炭素繊維強化ポリカーボネート複合材または炭素繊維強化ポリカーボネート複合材シートを含む、請求項1または2に記載の熱可塑性複合品。
【請求項4】
前記炭素繊維強化ポリカーボネート複合材シートが、該炭素繊維強化ポリカーボネート複合材シート100重量%に対して10~70重量%の炭素繊維を含む、請求項3に記載の熱可塑性複合品。
【請求項5】
前記炭素繊維強化ポリカーボネート複合材シートが、該炭素繊維強化ポリカーボネート複合材シート100重量%に対して40~60重量%の炭素繊維を含む、請求項3に記載の熱可塑性複合品。
【請求項6】
前記複合基材が、射出成形された炭素繊維強化ポリカーボネート複合材を含む、請求項3
又は4に記載の熱可塑性複合品。
【請求項7】
前記射出成形された炭素繊維強化ポリカーボネート複合材が、該射出成形された炭素繊維強化ポリカーボネート複合材100重量%に対して10~50重量%の炭素繊維を含む、請求項
6に記載の熱可塑性複合品。
【請求項8】
前記射出成形された炭素繊維強化ポリカーボネート複合材が、該射出成形された炭素繊維強化ポリカーボネート複合材100重量%に対して20~30重量%の炭素繊維を含む、請求項6に記載の熱可塑性複合品。
【請求項9】
前記機能部が
さらに構造機能部を含む、請求項1~
8のいずれか一項に記載の熱可塑性複合品。
【請求項10】
前記電気信号伝送のための領域が、無線信号伝送のための領域または圧電感知装置の周辺に配置された領域を含む、請求項
9に記載の熱可塑性複合品。
【請求項11】
前記構造機能部が下記の構造:スクリューボス、放熱グリッド、補強リブ、フックおよびスピーカーメッシュの1つ以上の構造を含む、請求項
9に記載の熱可塑性複合品。
【請求項12】
下記の工程を含
み:
切り欠き部を有する複合基材を成形金型の空洞に挿入し、前記成形金型と前記複合基材表面の表面との間の成形金型の空洞内の隙間を規定する工程;
コーティング組成物を前記隙間に成形し、それによりコーティング、および前記基材の切り欠き部に延びるコーティング領域を含む機能部を形成する工程
、
前記機能部が、電気信号伝送のための領域を含む電気絶縁部を含む、
請求項1~11のいずれか一項に記載の熱可塑性複合品の製造方法。
【請求項13】
前記複合基材が、熱可塑性複合材の射出成形によって、または基材金型の空洞内における熱可塑性複合材シートの加熱プレスによって得られる、請求項1
2に記載の製造方法。
【請求項14】
前記成形金型の空洞および前記基材金型の空洞が同じ金型内にある、請求項1
3に記載の製造方法。
【請求項15】
電子製品の製造における、請求項1~1
1のいずれか一項に記載の熱可塑性複合品の使用。
【請求項16】
ハウジングを含む電子製品であって、前記ハウジングが請求項1~1
1のいずれか一項により提供される熱可塑性複合品を含む、前記電子製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性複合材の分野に属し、特に、熱可塑性複合材に基づいて製造される電子製品部品、ならびにその製造方法および使用に関する。
【0002】
より軽く、より薄く、より硬く、より審美的な携帯電子製品は、常に電子製品製造者と消費者の目標である。炭素繊維強化ポリカーボネート複合材等の炭素繊維強化熱可塑性複合材は、剛性が高く、比重が小さく、成形が容易である。したがって、近年、ますます多くの電子製品製造者が、携帯電子製品のハウジングを製造するために炭素繊維強化熱可塑性複合材を選択するようになった。
【0003】
産業界で知られているように、炭素繊維は電気信号に対する電磁シールド効果を有する。炭素繊維強化熱可塑性複合材で作られた電子製品のハウジングは、電気信号の伝送、例えば、電子製品と外部との間の通信のための無線信号伝送、および電子製品の内部回路間の信号伝送に影響を与える可能性がある。
【0004】
干渉を回避または低減するために、炭素繊維強化熱可塑性複合材を使用して電子製品のハウジングを製造する場合、業界ではいくつかの従来の技術的解決策が使用されている。従来技術において、炭素繊維強化熱可塑性複合材を使用して電子製品ハウジングを製造するための一つの技術的解決策は以下の通りである:電子ハウジングの本体として炭素繊維強化熱可塑性複合材シートを使用すること、電気信号伝送が必要な領域でガラス繊維強化ポリカーボネート材を使用すること、そして、ハウジングの外側をコーティングすること。
【0005】
従来技術において、炭素繊維強化熱可塑性複合材を使用して電子製品ハウジングを製造するための別の技術的解決策は以下の通りである:炭素繊維強化ポリカーボネートまたはそのプラスチック合金を、射出成形されたガラス繊維強化ポリカーボネート熱可塑性複合品の表面における挿入射出成形(insert injection molding)に供し、挿入射出成形時に電気信号伝送が必要な領域で炭素繊維強化ポリカーボネートまたはそのプラスチック合金が射出成形されるのを防ぎ、ハウジングの外側をコーティングする。
【0006】
先行技術における上記の技術的解決策は、複雑な技術的プロセス、低い生産効率、低い適格率(qualification rate)および高いコストを伴い、溶剤ベースのコーティングを使用する複数のスプレーによって、より多くの有機化合物の揮発を引き起こし、環境安全性に影響を及ぼし、グリーン生産の開発動向に対応できていない。
【0007】
したがって、単純なプロセス、高効率、高収率および環境に優しいことを特徴とする熱可塑性複合品(特に、電子製品ハウジング)を製造する方法および製品を提供することが産業界で望まれている。
【0008】
本発明は、請求項1に記載の熱可塑性複合品および請求項11に記載の熱可塑性複合品の製造方法を対象とする。さらに、本発明は、請求項14に記載の熱可塑性複合品の使用および請求項15に記載の電子製品を対象とする。有利な実施形態は、従属請求項の主題である。文脈から明らかにそうでない場合を除いて、これらは自由に組み合わせることができる。
【0009】
本発明は、熱可塑性複合品を提供する。熱可塑性複合品は、マトリックス部および機能部を含む。マトリックス部は複合基材およびコーティングを含み、コーティングは複合基材の表面を被覆し、コーティングおよび機能部は、下記の成分:1つ以上のポリイソシアネート、および1つ以上のH-活性多官能性化合物を含むコーティング組成物の反応によって得られる。機能部は基材の切り抜き部に延びるコーティング領域を含む。H-活性多官能性化合物は、好ましくは1つ以上のポリオールである。
【0010】
複合基材は、炭素繊維強化ポリカーボネート複合材を含み得る。
【0011】
炭素繊維強化ポリカーボネート複合材は、炭素繊維強化ポリカーボネート複合材シートを含み得る。炭素繊維強化ポリカーボネート複合材シートは、炭素繊維強化ポリカーボネート複合材シート100重量%に対して10~70重量%、好ましくは40~60重量%の炭素繊維を含む。
【0012】
炭素繊維強化ポリカーボネート複合材は、射出成形された炭素繊維強化ポリカーボネート複合材を含み得る。射出成形された炭素繊維強化ポリカーボネート複合材は、炭素繊維強化ポリカーボネート複合材100重量%に対して10~50重量%、好ましくは20~30重量%の炭素繊維を含む。
【0013】
機能部は、電気絶縁部および/または構造機能部を含む。
【0014】
電気絶縁部は、電気信号伝送のために使用され、それを干渉しない領域を備えている。電気絶縁部は、無線信号伝送のための領域、または(例えば)圧電感知装置の周辺に配置された領域を含む。無線信号伝送のための領域は、アンテナ領域であってもよい。
【0015】
機能部は、構造機能部であり得、これは、以下の構造の1つ以上を含み得る:スクリューボス(screw boss)、放熱グリル、補強リブ、フックおよびスピーカーメッシュ。
【0016】
本発明の別の目的は、本発明により提供される熱可塑性複合物品の製造方法であって、切り欠き部を有する複合基材を成形金型の空洞に挿入し、成形金型と複合基材の表面との間の成形金型の空洞内の隙間を規定する工程;およびコーティング組成物を隙間に成形し、それによりコーティング、および基材の切り欠き部に延びるコーティング領域を含む機能部を形成する工程を含む製造方法を提供することである。
【0017】
複合基材は、熱可塑性複合材の射出成形、または基材金型の空洞内における熱可塑性複合材シートの加熱プレスによって得ることができる。
【0018】
成形金型の空洞および基材金型の空洞は、好ましくは同じ金型内に配置される。
【0019】
本発明のさらに別の目的は、電子製品における本発明により提供される熱可塑性複合品の使用を提供することである。
【0020】
本発明のさらに別の目的は、本発明により提供される熱可塑性複合品を含む電子製品を提供することである。
【0021】
本発明により提供される熱可塑性複合品の製造方法は、単純なプロセス、高効率、高収率および環境に優しいことを特徴とし、得られる熱可塑性複合品、特に電子製品のハウジングは、対応する機能を備える良好な電気信号伝送性能または構成部品を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1-A、1-Bおよび1-Cは、本発明の熱可塑性複合品の製造方法の例の概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の熱可塑性複合品を製造するための別の方法の例の概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の熱可塑性複合品の断面図である。
【
図4】
図4は、本発明のさらなる熱可塑性複合品の断面図である。
【0023】
添付の図面は、本発明により開示される特定の例および方法をさらに示すために使用されるが、これらの図面および説明は、例示的であり、限定的ではないことが意図される。
【発明の詳細な説明】
【0024】
本発明は、限定ではなく例示の目的のためにここで説明される。特定の例を除いて、または特に指定のない限り、本明細書において量、パーセンテージ等を表すすべての数値は、すべての場合において「約」という用語によって変更されるものとして理解されるべきである。
【0025】
本発明により提供される熱可塑性複合品は、マトリックス部および機能部を含む。マトリックス部は複合基材とコーティングを含み、コーティングは複合基材の表面を被覆するものであり、コーティングおよび機能部は、以下の成分:1つ以上のポリイソシアネート、および1つ以上のH-活性多官能性化合物を含むコーティング組成物の反応により得られ、H-活性多官能性化合物は好ましくは1つ以上のポリオールである。
【0026】
本発明により提供される熱可塑性複合品およびその製造方法では、機能部はコーティング組成物の射出成形によって形成され、コーティングは複合基材の表面に射出成形され、そのため、機能および外観の要件は満たされ、プロセス工程およびコストが削減され、生産効率と適格率が向上する。
【0027】
複合基材
本発明の複合基材は、熱可塑性複合基材を含む。本発明で使用される熱可塑性複合基材について特に必須の要件なく、例えば、繊維強化熱可塑性の複合材や射出成形用シートを使用することができる。
【0028】
本発明は、電気信号伝送に干渉効果を有する熱可塑性複合材が複合基材として使用される状況、例えば、炭素繊維強化熱可塑性複合材が複合基材として使用される状況に特に適している。炭素繊維強化熱可塑性複合材は、射出成形された材料またはシートであり得る。
【0029】
本発明はまた、いくつかの微細構造部材に容易に成形されない熱可塑性複合材、例えば、炭素繊維強化熱可塑性複合材シートが複合基材として使用される状況にも特に適している。一般に、炭素繊維強化熱可塑性複合材シートは、スクリューボス、放熱グリル、補強リブ、フック、スピーカーメッシュ等の構造に、切断または加熱プレスにより簡単に成形することはできない。
【0030】
材料が業界の要件、および強化材料の剛性、靭性、環境保護性、難燃性、結合強度等に関する特定の製品に適合することができる限り、本発明おける複合基材のための熱可塑性材料に特定の要件はない。
【0031】
熱可塑性複合材の熱可塑性材料は、ポリオレフィン、ビニルポリマー、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリスチレン、ポリヒダントイン、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリアリーレンスルフィド、ポリスルホン、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリロニトリル-スチレンコポリマー(SAN)、熱可塑性オレフィンエラストマー(TPO)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)およびポリオキシメチレン(POM)からなる群から選択され得る。
【0032】
ビニルポリマーは、好ましくは、ポリビニルハライド、ポリ(ビニルアルコール)およびポリビニルエーテルからなる群から選択される。
【0033】
ポリアミドは、好ましくは、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド6(PA6)およびポリアミド12(PA12)からなる群から選択される。
【0034】
特に好ましくは、少なくとも1つの熱可塑性物質は、射出成形プロセス用のポリアミド66(PA66)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド12(PA12)、フェニルプロパノールアミン(PPA)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)およびポリカーボネート(PC)からなる群から選択される。
【0035】
非常に特に好ましくは、少なくとも1つの熱可塑性物質は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリアミド6(PA6)およびポリカーボネート(PC)からなる群から選択される。
【0036】
適切なポリカーボネートには、既知の文献に従って、または文献から既知の方法によって調製される芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートが含まれる(芳香族ポリカーボネートの調製については、例えば、Schnell, “Chemistry and Physics of Polycarbonates”, Interscience Publishers, 1964ならびにDE-AS1495626、DE-A2232877、DE-A2703376、DE-A2714544、DE-A3000610およびDE-A3832396を;また、芳香族ポリエステルカーボネートの調製については、例えば、DEA3007934を参照されたい)。
【0037】
芳香族ポリカーボネートは、相境界プロセス(phase boundary process)によって、好ましくは連鎖停止剤、例えばモノフェノールと、任意に三官能性または3を超える官能性の分岐剤、例えばトリフェノールまたはテトラフェノールを使用して、ジフェノールと、炭酸ハライド、好ましくはホスゲンとの反応、および/または芳香族二炭酸ジハライド(ジカーボンサウレジハロゲニデン(dicarbonsauredihalogeniden))、好ましくはベンゼンジカルボン酸ジハライドとの反応により調製される。芳香族ポリカーボネートは、溶融重合プロセスにより、ジフェノールと、例えば炭酸ジフェニルとの反応により製造することもできる。
【0038】
芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートを調製するためのジフェノールは、好ましくは式(1)で表されるものである:
【化1】
[式中、
Aは単結合、C
1-C
5アルキレン、C
2-C
5アルキリデン、C
5-C
6シクロアルキリデン、-O-、-SO-、-CO-、-S-、SO
2-、任意にヘテロ原子を含む他の芳香族環が融合していてもよいC
6-C
12アリーレンであるか、または、式(2)もしくは(3)の基であり:
【化2】
Bは、いずれの場合もC
1~C
12アルキル、好ましくはメチル;ハロゲン、好ましくは塩素および/または臭素であり、
xは、いずれの場合も独立して0、1または2であり、
pは1または0であり、
R
5およびR
6は各X
1について個別に選択することができ、それぞれ独立して水素またはC
1-C
6アルキル、好ましくは水素、メチルまたはエチルであり、
X
1は炭素であり、
mは、R
5およびR
6のいずれもが少なくとも1つの原子X
1上のアルキルであるという条件で、4~7、好ましくは4または5の整数を表す]。
【0039】
好ましいジフェノールとしては、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシジフェノール、ビス-(ヒドロキシフェニル)-C1-C5アルカン、ビス-(ヒドロキシフェニル)-C5-C6シクロアルカン、ビス-(ヒドロキシフェニル)-エーテル、ビス-(ヒドロキシフェニル)-スルホキシド、ビス-(ヒドロキシフェニル)-ケトン、ビス-(ヒドロキシフェニル)-スルホンおよびα,α-ビス-(ヒドロキシフェニル)-ジイソプロピル-ベンゼン、ならびにそれらの環-臭素化誘導体および/または環-塩素化誘導体が挙げられる。
【0040】
特に好ましいジフェノールとしては、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、ビスフェノール-A、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-シクロヘキサン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンならびにそれらのジ-およびテトラ臭素化誘導体または塩素化誘導体、例えば、2,2-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)-プロパン、2,2-ビス-(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)-プロパンまたは2,2-ビス-(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)-プロパンが挙げられる。2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン(ビスフェノール-B)が特に好ましい。
【0041】
これらのジフェノールは、単独でまたは任意の混合物として使用することができる。ジフェノールは、文献から既知であるか、または文献から既知の方法によって得ることができる。
【0042】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートの調製に適した連鎖停止剤は、例えば、フェノール、p-クロロフェノール、p-tert-ブチルフェノールまたは2,4,6-トリブロモフェノールであり、DE-A2842005に開示されている4-[2-(2,4,4-トリメチルペンチル)]-フェノールおよび4-(1,3-テトラメチルブチル)-フェノールであり、または3,5-ジ-tert-ブチルフェノール、パラ-イソ-オクチルフェノール、パラ-tert-オクチルフェノール、パラ-ドデシルフェノールおよび2-(3,5-ジメチルヘプチル)-フェノールおよび4-(3,5-ジメチルヘプチル)-フェノール等のアルキル置換基に合計8~20個の炭素原子を有するモノアルキルフェノールまたはジアルキルフェノールである。使用される連鎖停止剤の量は、一般的に、それぞれの場合において使用されるジフェノールのモルの合計に対して0.5モル%~10モル%である。
【0043】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートは、15,000~80,000g/モル、好ましくは19,000~32,000g/モル、特に好ましくは22,000~30,000g/モルの平均分子量(ポリカーボネートを標準として使用するGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定される重量平均分子量M)を有する。
【0044】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートは、既知の方法で、より具体的には、好ましくは、三官能性または3を超える官能性の化合物、例えば、3以上のフェノール基を有する化合物を、使用されるジフェノールの合計に対して0.05~2.0モル%導入することにより分岐させることができる。好ましくは直鎖状ポリカーボネートが使用され、より好ましくはビスフェノールAをベースとするポリカーボネートが使用される。
【0045】
ホモポリカーボネートおよびコポリカーボネートのいずれも適している。使用されるジフェノールの合計量に対して、ヒドロキシアリールオキシ末端基を有するポリジオルガノシロキサンを1~25重量%、好ましくは2.5~25重量%を、本発明の成分Aに適したコポリカーボネートの調製に使用することもできる。これらは既知であり(US3419634)、文献から既知の方法で調製することができる。ポリジオルガノシロキサンを含むコポリカーボネートも適しており;ポリジオルガノシロキサンを含むコポリカーボネートの調製は、例えば、DE-A3334782に記載されている。
【0046】
芳香族ポリエステルカーボネートを調製するための芳香族ジカルボン酸ジハライドは、好ましくはイソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸およびナフタレン-2,6-ジカルボン酸の二酸ジクロリドである。
【0047】
イソフタル酸およびテレフタル酸の二酸ジハライドの1:20~20:1の比の混合物が特に好ましい。炭酸ハライド、好ましくはホスゲンは、ポリエステルカーボネートの調製において二官能性酸誘導体としてさらに併用される。
【0048】
上述したモノフェノールに加えて、芳香族ポリエステルカーボネートの調製のための連鎖停止剤も、そのクロロカーボネート、任意にC1-C22アルキルまたはハロゲン原子で置換された芳香族モノカルボン酸の酸クロリド、および脂肪族C2-C22モノカルボン酸クロリドであり得る。
【0049】
連鎖停止剤の量は、フェノール系連鎖停止剤の場合はジフェノールのモルに対して、モノカルボン酸クロリド系連鎖停止剤の場合はジカルボン酸ジクロリドのモルに対して、いずれの場合もそれぞれ0.1~10モル%である。
【0050】
芳香族ポリエステルカーボネートの調製において、1つ以上の芳香族ヒドロキシカルボン酸をさらに使用することができる。
【0051】
芳香族ポリエステルカーボネートは、直鎖状であってもよく、既知の方法で分岐していてもよく(この点に関しては、DE-A2940024およびDE-A3007934を参照されたい)、直鎖状ポリエステルカーボネートが好ましい。
【0052】
分岐剤として、例えば、トリメシン酸トリクロリド、シアヌル酸トリクロリド、3,3’,4,4’-ベンゾフェノン-テトラカルボン酸テトラクロリド、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸テトラクロリドまたはピロメリット酸テトラクロリド等の三官能性または3を超える官能性のカルボン酸クロリドが、(使用されるジカルボン酸ジクロリドに対して)0.01~1.0モル%の量で使用され得、または、フロログルシノール、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-ヘプト-2-エン、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-ヘプタン、1,3,5-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-ベンゼン、1,1,1-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-エタン、トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-フェニルメタン、2,2-ビス[4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-シクロヘキシル]-プロパン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル-イソプロピル)-フェノール、テトラ-(4-ヒドロキシフェニル)-メタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチル-フェノール、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(2,4-ジヒドロロキシフェニル)-プロパン、テトラ-(4-[4-ヒドロキシフェニル-イソプロピル]-フェノキシ)-メタンまたは1,4-ビス[4,4’-ジヒドロキシトリフェニル)-メチル]-ベンゼン等の三官能性または3を超える官能性のフェノールが、(使用されるフェノールに対して)0.01~1.0モル%の量で使用され得る。フェノール分岐剤は、予めジフェノールとともに導入することができ;酸クロリド分岐剤は、酸クロリドと共に導入することができる。
【0053】
熱可塑性芳香族ポリエステルカーボネートにおけるカーボネート構造単位の含有量は、任意に変えることができる。カーボネート基の含有量は、エステル基およびカーボネート基の合計に対して、好ましくは100モル%まで、特に80モル%まで、特に好ましくは50モル%までである。芳香族ポリエステルカーボネートのエステル部分およびカーボネート部分のいずれも、ブロックの形態で存在してもよく、または重縮合物中にランダムに分布してもよい。
【0054】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートは、単独でまたは任意の混合物として使用することができる。
【0055】
材料が業界の要件、および熱可塑性材料の剛性、靭性、環境保護性、難燃性、結合強度等に関する特定の製品に適合することができる限り、本発明における熱可塑性材料と混合される強化材料に特定の要件はない。業界において一般的に使用される、熱可塑性材料と混合される強化材料は、炭素繊維、ガラス繊維、鉱物繊維、芳香族ポリアミド繊維等であり得る。
【0056】
本発明における複合基材としての使用に特に適した熱可塑性複合材としては、例えば、連続炭素繊維強化熱可塑性複合材およびシート、または射出成型に一般的に使用される多数の短い炭素繊維(例えば、約8~12mmの炭素繊維)を含む熱可塑性複合材が挙げられる。
【0057】
本発明において、電気信号伝送への干渉とは、電気信号に対する熱可塑性複合材またはその構成要素のシールド効果、または電気信号伝送を著しく妨害または干渉する他の効果を指す。電気信号は、電子製品の圧電感知装置内の信号等の無線信号または回路信号(circuit signal)のいずれかであり得る。
【0058】
好ましくは、複合基材は、炭素繊維強化熱可塑性複合材を射出成形することによって、または炭素繊維強化熱可塑性複合材シートを切断、加熱プレス等の工程に供することによって調製することができる。
【0059】
炭素繊維強化ポリカーボネート複合材の射出成形によって複合基材が調整される場合、炭素繊維強化ポリカーボネート複合材は、炭素繊維強化ポリカーボネート複合材の重量を100重量%として、10~50重量%、好ましくは20~30重量%の炭素繊維を含む。射出成形による複合基材の調製では、熱可塑性複合材の溶融物、例えば、短炭素繊維強化ポリカーボネート複合材の溶融物を基材金型の空洞に射出し、成形後に離型することができる。
【0060】
炭素繊維強化ポリカーボネート複合材シートを切断、加熱プレス等の工程に供することによって複合基材が調製される場合、炭素繊維強化ポリカーボネート複合材シートは、炭素繊維強化ポリカーボネート複合材シートの重量を100重量%として、10~70重量%、好ましくは40~60重量%の炭素繊維を含む。製品設計に従って切断された熱可塑性複合材シートは、加熱プレスのための加熱プレス基材金型に入れられ、複合基材が得られる。
【0061】
業界において熱可塑性複合材シートを調製するために一般的に使用される他のプロセスに加えて、炭素繊維強化熱可塑性複合材シートは、炭素繊維プリプレグ(carbon fiber prepreg)および/またはポリマーフィルム、プラスチックフィルム(例えば、PC、TPUおよびPAフィルム)または発泡フィルム等の1つ以上の層を積層し、加熱プレスすることによって調整することができる。炭素繊維プリプレグは、ポリカーボネートまたはその合金(alloy)をマトリックス樹脂として含み(体積による含有量:40~70%)、連続炭素繊維を含み(織物、不織布または一方向繊維;繊維の体積による含有量:30~60%)、体積による含有量は、プリプレグの体積を100%としたものである。
【0062】
本発明において、熱可塑性複合材シートは、例えば0.4~3.0mm、好ましくは0.6~1.2mmの厚さを有する。
【0063】
本発明において使用することができる熱可塑性複合材シートとしては、例えば、Covestro AGによって提供されるCF FR1000、CF FR1001等が挙げられる。
【0064】
コーティング
本発明のコーティングは、複合基材の表面上にコーティング組成物を射出成形することにより得られる。コーティング組成物は、1つ以上のポリイソシアネートおよび1つ以上のH-活性多官能性化合物を含み、H-活性多官能性化合物は、好ましくは1つ以上のポリオールである。コーティング組成物は、任意に少なくとも1つのポリウレタン添加剤および/または加工助剤をさらに含んでもよい。
【0065】
好ましくは、コーティングとしてポリウレタンフォームまたは緻密な(compact)ポリウレタン層が使用される。
【0066】
本発明において使用されるポリウレタンは、ポリイソシアネートとH-活性多官能性化合物、好ましくはポリオールとの反応により得られる。
【0067】
本明細書において、「ポリウレタン」という用語は、本発明の範囲内のポリウレタン尿素としても理解され、任意にポリオールと混合されたN-H官能性を有するこれらの化合物がH-活性多官能性化合物として使用される。
【0068】
適切なポリイソシアネートは、好ましくは2以上のNCO官能価を有し、イミノオキサジアジンジオン、イソシアヌレート、ウレトジオン、カルバメート、アロファネート、ビウレット、尿素、オキサジアジントリオン、オキサゾリジノン、アシル尿素および/またはカルボジイミドの構造も有し得る、当業者に既知の芳香族、芳香脂肪族、脂肪族または脂環式のポリイソシアネートである。これらは単独で、または互いに任意の比率で使用することができる。
【0069】
本明細書において、上記ポリイソシアネートは、当業者に既知であり、脂肪族的、脂環式的、芳香脂肪族的および/または芳香族的に結合したイソシアネート基を有するジイソシアネートおよびトリイソシアネートをベースとするものであり、これらはホスゲンを使用して調製されたか、またはホスゲンを使用しない方法によって調整されたかが重要である。これらのジイソシアネートおよびトリイソシアネートの例は、1,4-ジイソシアナトブタン、1,5-ジイソシアナトペンタン、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)、2-メチル-1,5-ジイソシアナトペンタン、1,5-ジイソシアナト-2,2-ジメチルペンタン、2,2,4-または2,4,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,10-ジイソシアナトデカン、1,3-および1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3-および1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、4,4’-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(Desmodur(登録商標)W、Covestro AG、レバークーゼン、ドイツ)、4-イソシアナトメチル-1,8-オクタン-ジイソシアネート(トリイソシアナトノナン、TIN)、ω,ω’-ジイソシアナト-1,3-ジメチルシクロヘキサン(H6XDI)、1-イソシアナト-1-メチル-3-イソシアナトメチルシクロヘキサン、1-イソシアナト-1-メチル-4-イソシアナトメチルシクロヘキサン、ビス-(イソシアナトメチル)-ノルボルナン、1,5-ナフタレン-ジイソシアネート、1,3-および1,4-ビス-(2-イソシアナト-プロパ-2-イル)-ベンゼン(TMXDI)、2,4-および2,6-ジイソシアナトトルエン(TDI)、特に、2,4-および2,6-異性体、および2つの異性体、2,4’-および4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)のテクニカルグレードの混合物、ポリメリックMDI(pMDI)、1,5-ジイソシアナトナフタレン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(XDI)および上記化合物の混合物である。
【0070】
本明細書において、ポリイソシアネートは、2.0~5.0、好ましくは2.2~4.5、特に好ましくは2.2~2.7の平均NCO官能価、および5.0~37.0重量%、好ましくは14.0~34.0重量%のイソシアネート基含有量を有することが好ましい。好ましい実施形態において、専ら脂肪族的および/または脂環式的に結合したイソシアネート基を有する上記タイプのポリイソシアネートまたはポリイソシアネート混合物が使用される。
【0071】
最も好ましくは、上記タイプのポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、異性体ビス-(4,4’-イソシアナトシクロヘキシル)メタンおよびそれらの混合物に基づくものである。
【0072】
より高分子量の変性ポリイソシアネートの中で、分子量の範囲が400~15000、好ましくは600~12000である、ポリウレタン化学から既知の末端イソシアネート基を有するプレポリマーが特に興味深い。これらの化合物は公知の方法により、例として挙げたタイプの単純なポリイソシアネートの過剰量と、イソシアネート基に対して反応性である少なくとも2つの基を有する有機化合物、特に有機ポリヒドロキシ化合物との反応により調製される。そのような適切なポリヒドロキシ化合物はいずれも、82~599、好ましくは62~200の分子量の範囲を有する単純なポリオール、例えば、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、プロパン-1,2-ジオール、またはブタン-1,4-ジオールもしくはブタン-2,3-ジオールであり、特に、分子量600~12000、好ましくは800~4000であり、少なくとも2つ、通常2~8個、好ましくは2~6個の第一級および/または第二級ヒドロキシル基を有する、ポリウレタン化学から既知のタイプの高分子量ポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリオールである。例えば、例として上記したタイプの低分子量ポリイソシアネートと、イソシアネート基に対して反応性である基を有する、より好ましくない化合物、例えば、ポリチオエーテルポリオール、ヒドロキシル含有ポリアセタール、ポリヒドロキシポリカーボネート、ヒドロキシル含有ポリエステルアミドまたはオレフィン性不飽和化合物のヒドロキシル含有コポリマーから得られるNCOプレポリマーももちろん使用することができる。
【0073】
イソシアネート基、特にヒドロキシルに対して反応性である基を有し、NCOプレポリマーの調製に適した化合物は、例えば、US-A4218543に開示されている化合物である。NCOプレポリマーの調製において、イソシアネート基に対して反応し得である基を有するこれらの化合物は、NCO過剰を維持しながら、例として上記したタイプの単純なポリイソシアネートと反応する。NCOプレポリマーは、一般的に10~26重量%、好ましくは15~26重量%のNCO含有量を有する。これは、本発明の範囲内で、「NCOプレポリマー」または「末端イソシアネート基を有するプレポリマー」が、反応生成物それ自体および過剰量の未反応の出発ポリイソシアネートとの混合物の両方として理解されるべきであり、「セミプレポリマー」とも呼ばれることを示すものである。
【0074】
500mgKOH/gを超えるOH価を有する脂肪族ジオールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタン-1,4-ジオールおよびプロパン-1,3-ジオール等のポリウレタン化学において一般的に使用される鎖延長剤が検討され得る。2-ブタン-1,4-ジオール、ブテン-1,3-ジオール、ブタン-2,3-ジオールおよび/または2-メチルプロパン-1,3-ジオール等のジオールが好ましい。脂肪族ジオールを互いに任意の混合物として使用することももちろん可能である。
【0075】
適切なH-活性成分は、5~600mgKOH/gの平均OH値および2~6の平均官能価を有するポリオールである。10~50mgKOH/gの平均OH値を有するポリオールが好ましい。本発明における適切なポリオールは、例えば、ポリヒドロキシポリエーテルであり、これは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ジヒドロキシブタン、1,6-ジヒドロキシヘキサン、ジメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトールまたはスクロース等の適切なスターター分子のアルコキシル化によって得ることができる。アンモニア、またはエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、アニリンもしくはアミノアルコール等のアミン、またはビスフェノールA等のフェノールも同様にスターターとして機能し得る。アルコキシル化は、プロピレンオキシドおよび/またはエチレンオキシドを任意の順序でまたは混合物として使用して行われる。
【0076】
ポリオールに加えて、アミンおよびアミノアルコール、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、イソホロンジアミン、N,N’-ジメチル(ジエチル)-エチレンジアミン、2-アミノ-2-メチル(またはエチル)-1-プロパノール、2-アミノ-1-ブタノール、3-アミノ-1,2-プロパンジオールおよび2-アミノ-2-メチル(エチル)-1,3-プロパンジオール、およびアルコール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ジヒドロキシブタン、1,6-ジヒドロキシヘキサン、ジメチロールプロパン、グリセロールおよびペンタエリスリトール、およびソルビトールおよびスクロース、またはこれらの化合物の混合物からなる群から選択される少なくとも1つの追加の架橋剤および/または鎖延長剤をさらに含むことが可能である。
【0077】
さらに、例えば低分子量アルコールと、アジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸またはこれらの酸の無水物等のポリカルボン酸との反応により既知の方法で得ることができるポリエステルポリオールは、H-活性成分の粘度が高くなりすぎない限り適切である。エステル基を有する好ましいポリオールはヒマシ油である。さらに、例えば樹脂、例えばアルデヒド-ケトン樹脂を溶解することにより得ることができるヒマシ油、ならびにヒマシ油の変性物および他の天然油をベースとするポリオールも適している。
【0078】
高分子量重のポリ付加物または重縮合物またはポリマーが均一に分散、溶解またはグラフト化されて存在する高分子量ポリヒドロキシポリエーテルも同様に適している。変性されたそのようなポリヒドロキシ化合物は、既知の方法により、例えば、ヒドロキシル含有化合物中で、in situで重付加反応(例えば、ポリイソシアネートとアミノ官能性化合物との間の反応)または重縮合反応(例えば、ホルムアルデヒドとフェノールおよび/またはアミンとの間)により得られる。しかしながら、既製の水性ポリマー分散液とポリヒドロキシ化合物とを混合し、次いで混合物から水を除去することも可能である。
【0079】
例えば、ポリエーテルまたはポリカーボネートポリオールの存在下でスチレンとアクリロニトリルとの重合によって得られるビニルポリマーにより変性されたポリヒドロキシ化合物も、ポリウレタンの調製に適している。DE-A2442101、DE-A2844922およびDE-A2646141に従って、ビニルホスホン酸エステル、および任意に(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミドまたはOH-官能性(メタ)アクリレートとグラフト重合することにより変性されたポリエーテルポリオールが使用され、特定の難燃性を有するプラスチックを得ることができる。
【0080】
H-活性化合物として言及された代表的な化合物は、例えばHigh Polymers, vol. XVI, “Polyurethanes Chemistry and Technology”, Saunders-Frisch (ed.) Interscience Publishers, New York, London, vol. 1, p. 32-42, 44 and 54, and vol. II, 1984, p. 5-6 and p. 198-199に記載されている。列挙されている化合物の混合物も使用することができる。
【0081】
得られるポリウレタンの脆弱性の増大は、特に、H-活性成分の平均OH値および平均官能性に制限をもたらす。しかしながら、ポリウレタンの物理的ポリマー特性に影響を与える可能性は、原則として当業者に知られているので、NCO成分、脂肪族ジオールおよびポリオールは、好ましい方法で互いに調整することができる。
【0082】
ポリウレタン層(b)は、例えばラッカーまたはコーティングのように発泡または固体であり得る。
【0083】
離型剤、発泡剤、充填剤、触媒および難燃剤等の既知のすべての助剤および添加剤を、それらの製造に使用することができる。
【0084】
本明細書において、任意に使用することができる助剤および添加剤は以下の通りである:
a)発泡剤としての水および/または揮発性の無機または有機物質
適切な有機発泡剤は、例えば、アセトン、酢酸エチル、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチリデン、塩化ビニリデン、モノフルオロトリクロロメタン、クロロジフルオロメタンおよびジクロロジフルオロメタン等のハロゲン置換アルカン、さらにブタン、ヘキサン、ヘプタンまたはジエチルエーテルであり、適切な無機発泡剤は、空気、CO2またはN2Oである。発泡作用は、室温より高い温度で分解して窒素等の気体を発生する化合物、例えばアゾジカルボンアミドまたはアゾジイソブチロニトリル等のアゾ化合物を添加することにより達成される。
【0085】
b)触媒
触媒は、例えば、第三級アミン(トリエチルアミン、トリブチルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミンおよびより高次の同族体、1,4-ジアザビシクロ-(2,2,2)オクタン、N-メチル-N’-ジメチルアミノエチルピペラジン、ビス-(ジメチルアミノアルキル)ピペラジン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジエチルベンジルアミン、ビス-(N,N-ジエチルアミノエチル)アジペート、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ブタンジアミン、N,N-ジメチル-β-フェニルエチルアミン、1,2-ジメチルイミダゾールおよび2-メチルイミダゾール等)、
単環式および二環式アミド、ビス-(ジアルキルアミノ)アルキルエーテル、
アミド基(好ましくはホルムアミド基)を有する第三級アミン、
二級アミン(ジメチルアミン等)とアルデヒド(好ましくはホルムアルデヒド)またはケトン(アセトン、メチルエチルケトンまたはシクロヘキサノン等)とフェノール(フェノール(フェノール、ノニルフェノールまたはビスフェノール等)に由来するマンニッヒ塩基、
イソシアネート基に対して反応性である水素原子を有する第三級アミン(例えば、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミンおよびN,N-ジメチルエタノールアミン)、およびそれらと、プロピレンオキシドおよび/またはエチレンオキシド等のアルキレンオキシドとの反応生成物、
二級~三級アミン、
炭素-ケイ素結合を有するシラアミン(2,2,4-トリメチル-2-シラモルホリンおよび1,3-ジエチルアミノメチルテトラメチルジシロキサン)、
窒素含有塩基(例えば、水酸化テトラアルキルアンモニウム)、
アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム)、アルカリ金属フェノラート(例えば、ナトリウムフェノラート)、
アルカリ金属アルコラート(例えば、ナトリウムメチラート)、および/または
ヘキサヒドロトリアジンである。
【0086】
NCO基とZerewitinoff-活性水素原子との間の反応も、ラクタムおよびアザラクタムによって、既知の方法で大幅に加速され、ラクタムと酸性水素を有する化合物との間の会合が最初に形成される。
【0087】
有機金属化合物、特に有機スズおよび/またはビスマス化合物も触媒として使用することができる。硫黄含有化合物に加えて、例えば、ジ-n-オクチル-スズメルカプチド、好ましくは酢酸スズ(II)、オクタン酸スズ(II)、エチルヘキサン酸スズ(II)およびラウリン酸スズ(II)等のカルボン酸のスズ(II)塩、およびジブチルスズオキシド、ジブチルスズジクロリド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエートまたはジオクチルスズジアセテート等のスズ(IV)化合物を使用することができる。有機ビスマス触媒は、例えば、特許出願WO2004/000905に記載されている。
【0088】
もちろん、上記の触媒はすべて混合物として使用することができる。本明細書において、有機金属化合物とアミジン、アミノピリジンまたはヒドラジノピリジンとの組み合わせが特に興味深い。
【0089】
触媒は一般的に、少なくとも2つのイソシアネート反応性水素原子を有する化合物の合計量に対して約0.001~10重量%の量で使用される。
【0090】
c)乳化剤および泡安定剤等の界面活性添加剤
適当な乳化剤は、例えば、ヒマシ油スルホネートのナトリウム塩、またはオレイン酸ジエチルアミンまたはステアリン酸ジエタノールアミン等の脂肪酸とアミンとの塩である。ドデシルベンゼンスルホン酸またはジナフチルメタンジスルホン酸等のスルホン酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、またはリシノール酸等の脂肪酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、または高分子脂肪酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩も、界面活性添加剤として併用することができる。
【0091】
適切な泡安定剤は、特に、ポリエーテルシロキサン、特に水溶性の代表物である。これらの化合物は一般的に、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマーがポリジメチルシロキサン残基に結合するように構築される。アロファネート基を介して数回にわたり分岐したポリシロキサン/ポリオキシアルキレンコポリマーが特に興味深い。
【0092】
d)反応遅延剤
適切な反応遅延剤は、例えば、酸性反応性物質(例えば、塩酸または有機酸ハライド)である。
【0093】
e)添加剤
適切なPU添加剤は、例えば、既知のタイプの細胞調節剤(例えば、パラフィンまたは脂肪アルコール)またはジメチルポリシロキサンおよび顔料または染料、ならびに既知のタイプの難燃剤(例えば、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリクレジルホスフェートまたはリン酸アンモニウムおよびポリリン酸)、さらに劣化や風化の影響に対する安定剤、可塑剤、静真菌活性物質および静菌活性物質、および充填剤(例えば、硫酸バリウム、珪藻土、カーボンブラック、チョークパウダー)である。
【0094】
任意に本発明と併用される界面活性添加剤および泡安定剤、ならびに気泡調節剤、反応遅延剤、安定剤、難燃性物質、可塑剤、染料および充填剤ならびに静真菌活性物質および静菌活性物質の他の例は、当業者に既知であり、文献に記載されている。
【0095】
複合基材の表面上のコーティングの厚さは、50~2000μm、好ましくは50~1000μm、より好ましくは100~500μmであり得る。
【0096】
機能部
機能部は、基材の切り欠き部に延びるコーティング領域を含む。機能部は、例えば、電気絶縁部および/または構造機能部を含み得る。
【0097】
電気絶縁部は電気信号伝送のための領域を含み、該領域は、電気信号伝送を著しく干渉しない。電気絶縁部は一般的に1012オームを超える抵抗値を有する。
【0098】
電気絶縁部は、無線信号伝送領域、例えばアンテナ領域であり得る。無線信号伝送領域は、主に電子製品の無線信号伝送に使用される。本発明によれば、複合マトリックスが無線信号伝送を著しく干渉または妨害する場合、無線信号伝送を必要とする領域(例えば、アンテナ領域)は複合マトリックスによって被覆されるべきではない。本発明において、電気絶縁部は、コーティング組成物により形成される。
【0099】
電気絶縁部は、回路の信号伝送を干渉しない領域、例えば、圧電感知装置の電気信号伝送のための領域であり得る。一部の電子製品は圧電感知装置を備えており、回路によって伝送される電気信号への干渉がある場合、電子製品の機能および使用が影響を受ける可能性があるため、電気信号の伝送を干渉しないマトリックス材料を電気信号の伝送を必要とする圧電感知装置の周辺に配置する必要がある。本発明において、そのような領域は、コーティング組成物により形成される。
【0100】
構造機能領域とは、熱可塑性複合材料から同時に形成することが比較的困難であるか、または複合基材が形成されるときに影響を受ける機能で形成することができる構成部品、例えば、スクリューボス、放熱グリル、補強リブ、フックおよびスピーカーメッシュ等の構造を指す。スピーカーメッシュとは一般的に、複数の穴のあるボードまたはボード状の領域等の音響伝達チャネルを指す。穴は、設計に応じて、数、形状、サイズ、配置等が異なる。これらの構成部品は一般的に、熱可塑性複合材シートの切断および加熱プレスによって直接形成することが比較的困難であり、熱可塑性複合材料の射出成形による形成にあまり適しておらず、例えば、炭素繊維強化熱可塑性複合材シートは直接スクリューボスに切断するのにあまり適しておらず、また、例えそのような構成部品を熱可塑性複合材の射出成型により形成することができる場合でも、形成される構造は、例えば電気信号の伝送に干渉することがあり、例えば、炭素繊維強化熱可塑性複合材から形成されたアンテナ領域は電気信号の伝送に影響を及ぼす。本発明において、これらの構成部品は、コーティング組成物の射出成形により適宜形成することができる。
【0101】
本発明において、熱可塑性複合品は、電気絶縁部および構造機能部を同時にまたは単独で含み得る。電気絶縁部および構造機能部は、分離されていても結合されてもよく、例えば、コーティング組成物から形成される特定の構造は、構造機能を有しながら電気絶縁部の対応する機能を達成する。
【0102】
熱可塑性複合品の製造方法
本発明は、マトリックス部および機能部を含む熱可塑性複合品の製造方法を提供する。マトリックス部は複合基材およびコーティングを含み、コーティングは複合基材の表面を被覆するものであり、コーティングおよび機能部は、以下の成分:1つ以上のポリイソシアネート、および1つ以上のH-活性多官能性化合物を含むコーティング組成物の反応により得られ、H-活性多官能性化合物は、好ましくは1つ以上のポリオールである。この方法は、複合基材を成形金型の空洞に挿入する工程、および成形金型の空洞と複合基材の表面との間の隙間のコーティングおよび機能部にコーティング組成物を成形する工程とを含む。
【0103】
複合基材は、熱可塑性複合材料を射出成形することによって、または熱可塑性複合材シートを切断、加熱プレス等の工程に供することによって調製することができる。
【0104】
コーティングおよび機能部が成形金型の空洞内に形成される金型の圧力および温度は、使用されるコーティング組成物、物品の設計および要件、ならびに使用される装置に従って決定される。一般的に、金型の温度は50~110℃、好ましくは60~100℃、より好ましくは70~90℃であり得る。
【0105】
成形金型の空洞は、複合基材と金型の空洞の表面との間にコーティングを形成するための隙間に加えて、複合基材と金型の空洞の表面との間に機能部を形成するための隙間を含み、そのため機能部はコーティング組成物から形成される。
【0106】
成形金型の空洞の内表面は、装飾的なパターンまたはテクスチャがコーティングの表面に形成される平面または三次元設計をさらに有していてもよく、したがって、最終物品はより審美的である。成形金型の内表面は、物品の要件に応じて、様々な表面の外観パターンやテクスチャ等を伴って設計することができる。コーティングは、機能部と一体に形成され、物品の表面の欠陥(浮遊繊維等)を被覆し、物品を保護できることに加えて、成形金型の内表面にテクスチャまたはパターンを複製することができる。
【0107】
本発明の熱可塑性複合物品を製造する方法は、熱可塑性複合材の射出成形によって、または基材金型の空洞内における熱可塑性複合材シートの加熱プレスによって複合基材を形成する工程をさらに含むことができる。熱可塑性複合材シートは一般的に、加熱プレスの前に望ましい形状に切断される。
【0108】
複合基材が基材金型の空洞で調製される金型の圧力と温度は、使用する熱可塑性複合材またはそのシートおよび物品の性能要件に従って決定される。
【0109】
成形金型の空洞および基材金型の空洞は、同じ金型の異なる空洞であってもよく、異なる金型の異なる空洞であってもよい。
【0110】
以下、本発明の熱可塑性複合体の製造方法について、具体例を挙げて説明する。
【0111】
図1-A、1-Bおよび1-Cは、本発明の熱可塑性複合物品の製造方法の例の概略図である。例として、炭素繊維強化ポリカーボネート複合シートを取り上げる。
図1-Aに示すように、特定の熱可塑性複合品の設計要件に従って、炭素繊維強化ポリカーボネート複合シートが切断部材110に切断され、切り欠き部は通常、機能部を調製するために残しておく。複合シートの切り欠き部はその後コーティングで満たされ、それによって機能部が形成される。切り欠き部は、複合材シートで完全に囲まれるか、シートの境界領域に配置される。
【0112】
図1-Bに示されるように、切断部材110は、(
図1-Cに示されるように)複合基材130を調製するために加熱プレスするための基材金型の空洞120に配置される。切断部材110は、基材金型の空洞120に配置される前に赤外線オーブンによって予熱されてもよく、または好ましくは、誘導加熱部、蒸気加熱部および空気加熱部等の急速加熱部を備える基材金型、例えば、Roctool Companyの加熱部を備えた金型の空洞に配置される。切断部材110は加熱部を有する基材金型の空洞内で加熱され、それにより製造サイクルを短縮することができる。
【0113】
基材金型の空洞120で複合基材130を熱成形するプロセスにおいて、加熱プレスのパラメータは、使用される熱可塑性複合材に従って決定することができる。一般的に、基材金型の使用温度は150~250℃、好ましくは180~210℃に設定することができ、型締圧力は1~20MPa、好ましくは5~10MPaに設定することができ、冷却段階の基材金型の温度は60~80℃、好ましくは70~80℃に設定することができる。
【0114】
熱成形された複合基材130は、
図1-Cに示されるように成形金型の成形型空洞内に配置され、コーティング組成物の反応射出成形が行われる。成形型空洞では、コーティング組成物を射出および成形するための隙間140が、複合基材130と金型空洞の内壁との間に確保される。コーティング組成物は、射出装置150によって射出される。隙間140は、コーティングおよび機能部を成形するための隙間を含み、隙間のサイズおよび形状は、製品設計に従って決定することができる。一般的に、コーティングの厚さは0.05~2.0mmの範囲、または特に必要な場合はより薄くまたはより厚くすることができる。射出成形プロセスにおいて、成形金型の空洞の温度は、特定のコーティング組成に応じて決定されて、得られるコーティングと機能部の性能の安定性が確保される。
【0115】
コーティング組成物の反応射出成形後、射出成形された物品は成形金型の空洞から取り出される。反応射出成形プロセス中にコーティング組成物の流路に残った残留物から形成されたプラスチックの滓(tailing)(存在する場合)、および成形金型の型割り線(parting line)で形成されたプラスチックのバリ(存在する場合)を除去して、本発明により提供される熱可塑性複合品が得られる。本発明により製造された物品は、特に他に要求されない限り、一般に他のコーティング操作を必要としない。
【0116】
図1-Bに示されるような複合基材を熱成形する工程、および
図1-Cに示されるようなコーティング組成物の射出成形工程は、基材金型の空洞および成形金型の空洞の両方を有する射出成形装置において行うこともできる。例えば、Isotherm PSM 90反応射出成形機は、複合基材の調製およびコーティング組成物の反応射出成形のために、GP600 No. 2ミキシングヘッドと協調的に接続することができる。射出成形機が基材金型の空洞および成形金型の空洞の両方を備えている場合、複合基材が基材金型の空洞で熱成形され、回転ディスクまたはスライディングプレート等の装置により基材金型の空洞から成形金型の空洞に搬送され、コーティング組成物の反応射出成形が成形金型の空洞で行われ、コーティングおよび/または機能部が形成される。
【0117】
図2は、本発明の一つの例による熱可塑性複合物品を製造するための別の方法の概略図である。射出成形された炭素繊維強化熱可塑性複合品からの複合基材の調製を例として取り上げる。
図2に示されるように、熱可塑性複合品の製造工程では、射出成形機が回転金型と組み合わせて使用され、それにより連続生産が可能となり、生産効率がさらに向上する。回転金型は、基材金型の空洞および成形金型の空洞を含む。
【0118】
図2に示されるように、金型における基材金型の空洞において、射出装置160によって射出された炭素繊維強化熱可塑性複合品は、複合基材130に成形される。複合基材は、金型の回転を伴って成形金型の空洞に搬送される。金型における成形金型の空洞において、コーティング組成物は、成形金型の空洞の内表面と複合基材130の表面との間の隙間140に射出装置150を介して射出され、コーティングおよび機能部を形成し、離型して本発明により提供される物品が得られる。
【0119】
好ましくは、連続生産条件下で、コーティング組成物が成形金型の空洞内における反応射出成形に供される時に、新しい炭素繊維強化熱可塑性複合基材130が基材金型の空洞内に射出成形され得る。成形品は成形型から取り出される。コーティング組成物の射出成形のために流路に残った残留物から形成された滓(存在する場合)、および金型の型割り線で形成されたプラスチックのバリ(存在する場合)を除去して、本発明により提供される物品が得られる。
【0120】
射出成形された炭素繊維強化ポリカーボネート複合材から複合基材を調製する場合、金型の温度および材料の温度は、使用する特定の炭素繊維強化ポリカーボネート複合材に応じて決定することができる。一般的に、金型の温度は80~150℃、好ましくは90~120℃であり、材料の温度は270~330℃、好ましくは290~310℃であり得る。
【0121】
適切な金型設計と組み合わせることにより、コーティング組成物の反応射出成形によって、機能部のスクリューボス、補強リブおよびフック等の構成部品を製品として作製することができる。
【0122】
図3は、複合基材200およびコーティング210を有する本発明の物品の断面を概略的に示している。さらに、基材200の切り欠き部にもコーティング200が施されており、それにより機能部が規定されていることが示されている。切り欠き部は、複合材シートで完全に囲まれるか(好ましい)、シートの境界領域に配置される。機能部220はまた隆起部分(raised section)を有し、これにより、例えば、ねじまたはねじ式ボルトを受容するためのねじ山をつけることができる。このような構成は、複合材料に穴を開ける必要がないという利点があり、そうしないと、関連する工具の摩耗が増大する。
【0123】
図4は、複合基材200およびコーティング210を有する本発明のさらなる物品の断面を概略的に示している。さらに、基材200の切り欠き部にもコーティング200が施されており、それにより機能部が規定されていることが示されている。切り欠き部は、複合材シートで完全に囲まれるか(好ましい)、シートの境界領域に配置される。ここで、機能部220の外表面はコーティング220の外表面と同一平面である。このような構成は、特に炭素繊維複合材220の場合において、そうしないと信号の電波が複合基材220によって妨害される、無線アンテナを備える電子機器のハウジングにおいて使用され得る。
【0124】
本発明により提供される熱可塑性複合品は、携帯通信装置、携帯電話、ノートブックコンピュータおよびタブレットパーソナルコンピュータ等の電子製品の構成要素(特にハウジング)を製造するための用途に使用することができる。
【0125】
本発明はさらにハウジングを有する電子製品を提供し、該ハウジングは、本発明によって提供される熱可塑性複合品である。ハウジングは、電子製品全体のハウジング、またはその一部のハウジング、またはその内部部品のハウジング、または部品のハウジングのいずれであってもよい。
【0126】
本発明において、電子製品としては、携帯通信装置、ノートブックコンピュータ、タブレットパーソナルコンピュータ、IPカメラ、スマートホームセキュリティシステム、スマートフード注文機、車両または船舶で使用される通信装置または航空ツール、屋内または屋外の固定通信装置等が挙げられ、好ましくは、アンテナまたは圧電感知装置を備える部品において使用される電子製品、ならびにスクリューボス、放熱グリル、補強リブ、フックおよびスピーカーメッシュ等の比較的加工が難しい構造および小さな密集した穴を有する他の電子製品である。
【0127】
従来技術と比較して、本発明によって提供される熱可塑性複合品およびその製造方法は、インサート射出成形および多重スプレー塗装等の製造工程を回避し、製造の複雑さを低減し、それにより製造効率および製品適格率を効果的に改善し、環境保護に有利である。
【0128】
本発明の目的のために上記の通り本発明を詳細に説明したが、そのような詳細な説明は例示に過ぎないことが理解されるべきである。請求項によって定義される内容を除いて、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができる。