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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】オレフィン重合用触媒
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/6592 20060101AFI20230619BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20230619BHJP
   C07F 19/00 20060101ALI20230619BHJP
   C07F 17/00 20060101ALN20230619BHJP
   C07F 7/00 20060101ALN20230619BHJP
   C07F 7/08 20060101ALN20230619BHJP
【FI】
C08F4/6592
C08F10/00 510
C07F19/00 CSP
C07F17/00
C07F7/00 A
C07F7/08 G
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020550134
(86)(22)【出願日】2019-03-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2019056737
(87)【国際公開番号】W WO2019179959
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-02
(31)【優先権主張番号】18162549.2
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】イズマール,ヴャチェスラフ ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】コノノビッチ,ドミトリー エス.
(72)【発明者】
【氏名】ボスコボイニコフ,アレクサンダー ゼット
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルックネン,ヴィレ
(72)【発明者】
【氏名】レスコーニ,ルイジ マリア クリストフォロ
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-511418(JP,A)
【文献】特表2014-525950(JP,A)
【文献】特表2008-535799(JP,A)
【文献】特開2014-169408(JP,A)
【文献】特開2017-178786(JP,A)
【文献】特開平06-100579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/6592
C08F 10/00
C07F 19/00
C07F 17/00
C07F 7/00
C07F 7/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I)のメタロセン触媒錯体:
【化1】
ここで、
Mtは、Hf又はZrであり、
各Xは、シグマ-リガンドであり、
各R1は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つCH2-R7基であり、ここで、R7は、H、又は直鎖若しくは分岐のC1~6アルキル基、C3~8シクロアルキル基又はC6~10アリール基であり、
各R2は独立して、-CH2-基、-CHY-基又は-CY2-基であり、ここで、Yは、C1~10ヒドロカルビル基であり、且つnは2~6であり、
各R3及びR4は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖又は分岐のC1~C6アルキル基、OY基又はC7~20アリールアルキル基、C7~20アルキルアリール基若しくはC6~20アリール基であり、それによって、フェニル基当たり少なくとも1つのR3、及び少なくとも1つのR4は、水素原子でなく、且つ任意的に、2つの隣接するR3又はR4基は、それらが結合されているフェニル炭素を含む環の一部であってよく、
R5は、直鎖又は分岐のC1~C6アルキル基、C7~20アリールアルキル基、C7~20アルキルアリール基又はC6~C20アリール基であり、
R6は、C(R8)3基であり、ここで、R8は、直鎖又は分岐のC1~C6アルキル基であり、
各Rは独立して、C1~C20ヒドロカルビル、C6~C20アリール、C7~C20アリールアルキル又はC7~C20アルキルアリールである。
【請求項2】
Mtは、Zrであり、
各Xは独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~6アルコキシ基又はR’基であり、ここで、R’は、C1~6アルキル、フェニル又はベンジル基であり、
各Rは独立して、C1~C20ヒドロカルビル、C6~C20アリール、C7~C20アリールアルキル又はC7~C20アルキルアリールであり、
各R1は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つCH2-R7基であり、ここで、R7は、H、又は直鎖若しくは分岐のC1~6アルキル基又はC6~10アリール基であり、
各R2は独立して、-CH2-基、-CHY-基又は-CY2-基であり、ここで、Yは、C1~4ヒドロカルビル基であり、且つnは3~4であり、
各R3及びR4は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖又は分岐のC1~C6アルキル基、又はC6~20アリール基でありそれによって、フェニル基当たり少なくとも1つのR3、及び少なくとも1つのR4は、水素原子でなく、
R5は、直鎖又は分岐のC1~C6アルキル基又はC6~20アリール基であり、及び
R6は、C(R8)3基であり、ここで、R8は、直鎖又は分岐のC1~C4アルキル基である、
請求項1に記載のメタロセン触媒錯体。
【請求項3】
Mtは、Zrであり、
各Xは独立して、塩素原子、ベンジル又はメチル基であり、
各Rは独立して、C1~C10ヒドロカルビル又はC6~C10アリール基であり、
R1の両方は、同じであり、且つCH2-R7基であり、ここで、R7は、H、又は直鎖若しくは分岐のC1~C3アルキル基であり、
各R2は独立して、-CH2-基、-CHY-基又は-CY2-基であり、ここで、Yは、C14ヒドロカルビル基であり、且つnは3~4であり、
各R3及びR4は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖又は分岐のC1~C6アルキル基又はC6~20アリール基でありそれによって、フェニル基当たり少なくとも1つのR3、及び少なくとも1つのR4は、水素原子でなく、
R5は、直鎖又は分岐のC1~C6アルキル基又はC6~20アリール基であり、及び
R6は、C(R8)3基であり、R8は互いに同じであり、且つC1~C2アルキル基である、
請求項1又は2に記載のメタロセン触媒錯体。
【請求項4】
下記の式(Ia)を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のメタロセン触媒錯体:
【化2】
ここで、各R3及びR4は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、又は直鎖若しくは分岐のC1~C6アルキル基であり、それによって、フェニル基当たり少なくとも1つのR3、及び少なくとも1つのR4は、水素原子でない。
【請求項5】
フェニル基当たり1つ又は2つのR3は水素原子でなく、且つ両方のフェニル基上でR3は同じであり、
及び、インデニル部分について、フェニル基上の2つのR4は水素原子でなく、且つこれら2つのR4は互いに同じである、
請求項4に記載のメタロセン触媒錯体。
【請求項6】
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(4'-tert-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3',5'-ジメチル-フェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、若しくは
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(3',5'-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-sインダセン-1-イル][2-メチル-4-(3',5'-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、若しくは
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(3',5'-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3',5'-ジ-tert.-ブチル-フェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド
又はそれらの対応するジルコニウムジメチル類似体である、
請求項1~5のいずれか1項に記載のメタロセン触媒錯体。
【請求項7】
下記を含む触媒系:
(i)請求項1~6のいずれか1項に記載のメタロセン触媒錯体;
(ii)第13族金属の化合物を含む助触媒。
【請求項8】
助触媒(ii)として、
アルモキサン、アルモキサンとAl-アルキルとの組み合わせ、ホウ素又はボレート助触媒、及びアルモキサンとホウ素系助触媒との組み合わせ
を含む、請求項7に記載の触媒系。
【請求項9】
外部担体上に担持された固体形態である、又は外部担体を含まない固体粒状形態である、請求項7又は8に記載の触媒系。
【請求項10】
シリカ上に担持された、請求項9に記載の触媒系。
【請求項11】
2つの(R3)3-フェニル基置換基を含む式(I又はIa)のメタロセン触媒錯体のリガンドが、下記の工程1)~4)を含む方法によって調製され、
1)出発のケトン化合物、例えばR1-3,5,6,7-テトラヒドロ-s-インデセン-1(2H)-オン、が求電子的にジブロモ化される
2)工程1から得られた対応するジブロモ化合物、例えば4,8-ジブロモ-R1-3,5,6,7-テトラヒドロ-s-インデセン-1(2H)-オン、が還元され、そして引き続きメチル化によって対応するOMe化合物を生じる
3)工程2から得られた対応するOMe化合物が、(R3)3-フェニルマグネシウムブロミドと熊田カップリングされる、及び
4)工程3からの化合物が、脱メトキシル化される、
ここで、R1及びR3は、請求項1~5のいずれか1項に定義されている通りである、
請求項1~6のいずれか1項に記載のメタロセン触媒錯体。
【請求項12】
請求項7~10のいずれか1項に記載の触媒系の存在下で、プロピレン、プロピレン及びエチレン、又はプロピレン及びC4~10アルファーオレフィンを重合することを含む、ポリプロピレンホモポリマー、プロピレン-エチレンコポリマー、又はプロピレン-C4~10アルファーオレフィンコポリマーを調製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なビスインデニルリガンド、それらの錯体及びそれらの錯体を含む触媒に関する。本発明は、所望のアンチ異性体に対する錯体合成の選択性を改善し、収率を増加させ、錯体の精製を単純化する為に、複数のインデニルリガンドのうちの1つを改変することによって特定のC1-対称性のビスインデニル錯体の製造を改善することに向けられている。本発明はまた、特にエチレンを有し、高い活性レベル、高分子量、及びそれ故に低いMFRを有し且つ理想的な融点を有するポリプロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマーを製造する為の新規なビスインデニルメタロセン触媒の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
メタロセン触媒は、ポリオレフィンを製造する為に、長年使用されてきている。無数の学術発表及び特許公報が、オレフィン重合におけるこれらの触媒の使用を記載している。メタロセンは、現在、工業的に使用され、特にポリエチレン及びポリプロピレンはしばしば、種々の置換パターンを有する、シクロペンタジエニルに基づく触媒系を使用して製造される。
【0003】
本発明者等は、特に、プロピレンの単独重合の場合又はエチレンとのプロピレンの共重合の場合に、高い活性を提供する新規なメタロセンを求めた。所望の触媒がまた、高融点且つ高分子量のポリプロピレンホモポリマーの製造において改善された性能を有するべきである。所望の触媒がまた、例えば、高いMwコポリマー生成物について高い活性を有する、プロピレン-エチレンコポリマーの製造において改善された性能を有するべきである。所望の触媒がまた、例えば、高いMwコポリマー生成物について高い活性を有する、プロピレン-エチレンコポリマーの製造において改善された性能を有するべきである。所望の触媒がまた、高分子量を有するプロピレン-エチレンコポリマーを提供するべきである。
【0004】
新規なメタロセン触媒錯体は、既知のメタロセン触媒錯体よりも単純で且つ高い収率合成によって、所望のアンチ異性体に対する錯体合成の改善された選択性で生成されることが出来ることが特に所望される。
【0005】
様々な従来技術文献は、これらの特徴の1以上を目的としている。
【0006】
C2-対称のメタロセンが例えば、国際公開第2007/116034号パンフレットにおいて開示されている。この文献は、なかんずく、メタロセン ラセミ体(rac)-Me2Si(2-Me-4-Ph-5-OMe-6-tBuInd)2ZrCl2の合成及び特徴付け並びに溶液重合におけるプロピレンの単独重合及びプロピレンとエチレン及びそれより高級のアルファーオレフィンとの共重合の為のMAOで活性化後の重合触媒としてのその使用を報告している。
【0007】
国際公開第02/02576号パンフレットは、なかんずく、rac-Me2Si[2-Me-4-(3,5-tBu2Ph)Ind]2ZrCl2及びrac-Me2Si[2-Me-4-(3,5-tBu2Ph)Ind]2ZrCl2(国際公開第2014/096171号パンフレットをまた参照)、並びに高いMw且つ高融点のポリプロピレンの製造におけるその使用を記載する。
【0008】
国際公開第06/097497号パンフレットは、なかんずく、シリカ上に担持されたrac-Me2Si(2-Me-4-Ph-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル)2ZrCl2、並びにプロピレンの単独重合、及びエチレンとのプロピレンの共重合におけるその使用を記載する。
【0009】
国際公開第2011/076780号パンフレットは、プロピレン単独重合の為の、外部担体なしの固体粒子形態においてメチルアルモキサンで活性化されたrac-Me2Si(2-Me-4-Ph-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル)2ZrCl2の使用を記載する。
【0010】
米国特許第6,057,408号は、液体スラリー中で製造されたエチレン-プロピレンコポリマーの分子量に対する4-アリール置換基の影響をする。
【0011】
アイソタクチックポリプロピレンを製造することが出来る非対称のメタロセンが下記の文献に記載されている。国際公開第2013/007650号パンフレットは、複数の環のうちの1つの5位にアルコキシ基を含む或る不斉触媒、例えばアンチ-ジメチルシランジイル(2-メチル-4-フェニル-6-tert-ブチルインデン-1-イル)(2-メチル-4-フェニル-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル)ジルコニウムジクロリド、を記載する。その良好な性能にもかかわらず、この参考文献に基づく触媒は、ポリプロピレンホモポリマーの融解温度、低MFRでの生産性に関して制限されている。加えて、該触媒の全体的な生産性は依然として改善される必要がある。
【0012】
国際公開第2015/158790号パンフレットは、なかんずく、錯体「2-Zr」 アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4-(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチル-インデン-1-イル][2-メチル-4-(3,5-ジ-tert-ブチル-フェニル)-5,6,7-トリヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド を開示し、溶液プロセスでエチレン/1-オクテンコポリマーの形成におけるこの錯体の使用を記載する。メタロセンがまたC1-対称であり且つ2つの2つのインデニルリガンド「1-Zr」[アンチ-ジメチルシリレン(2-メチル-4-フェニル-5-メトキシ-6-tert-ブチル-インデニル)(2-メチル-4-(4-tert-ブチル-フェニル)インデニル)ジルコニウムジクロリド]を有し、又はC2-対称であり且つ2つの2つのインダセニルリガンド「3-Zr」[ジメチルシリレンビス-(2-i-ブチル-4-(4'-tert-ブチルフェニル)-5,6,7-トリヒドロ-s-インダセン-1-イル)ジルコニウムジクロリド]を有する同等の系に対して、このメタロセンの触媒系、MAOと、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートとの間で直接比較が行われる。2-Zrを含む触媒系は、1-Zr及び3-Zrを含むものに比べて1-オクテン取り込みに関して劣っていることがわかった。
【0013】
国際公開第2009/054831号パンフレットは、2-メチル-4,7-ジ(4'-tert-ブチルフェニル)インデニルリガンドに基づくC2-対称性錯体の合成を記載し、それらを4-フェニル類似体と比較する。触媒生産性、PP分子量及び融点は、4,7-ジ(4'-tert-ブチルフェニル)インデニルリガンドの使用によって改善されているが、該融点の絶対値は低いままであり、そしてより重要なことに、リガンド及びメタロセンの両合成収率は非常に低く、この手法が工業的適用性を有しないことを示す。
【0014】
本発明の触媒は、理想的には、溶液における又は、例えばシリカ又はアルミナ担持体を使用して従来の固体担持形態における使用の為に適しているべきであり、或いは固体形態で使用されることが出来るが、しかしながら、例えば国際公開第03/051934号パンフレットに記載されている通り、外部担持体又は担体は存在しない。
【0015】
本発明者等は、改良された重合挙動、より高い触媒生産性、高分子量ポリプロピレンホモポリマーの製造における改善された性能を有する新規なメタロセン触媒を開発した。
【0016】
加えて、新規なメタロセン触媒錯体は、既知のメタロセン触媒錯体よりも単純で且つ高い収率合成で生成されることが出来る。
【0017】
さらに、新規なメタロセン触媒錯体は、所望のアンチ異性体に対する錯体合成の改善された選択性で生成されることが出来る。
【0018】
幾つかの既知のメタロセン触媒錯体が、下記の表に記載されている:
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
上記のメタロセン構造は、高い触媒活性を示し、及び高融点のポリプロピレン及び高分子量C2/C3コポリマーを提供する。しかしながら、これらの錯体の純粋なアンチ異性体の合成及び精製は、多くの工程を必要とし、それ故に、全体的に低い収率を有し、そのような錯体の製造を経済的に便利でないものとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
それ故に、良好な触媒性能を維持しながら、その上、より効果的な合成で生成されることが出来るメタロセン触媒錯体を提供する必要が依然としてある。
【0023】
加えて、より一層高い活性を有し且つより高い分子量ポリマーを提供する触媒を提供することが望ましいであろう。本発明はこの問題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明者等は、国際公開第2018/122134号パンフレットに記載されているC1-対称性のメタロセンリガンド構造のさらなる改変が、所望のアンチ異性体に対する合成の選択性を著しく増加させ、アンチ異性体の単離を単純化し、メタロセン錯体の純粋なアンチ異性体の全体的収率を増加させることを今見出した。
【0025】
加えて、新規な錯体の触媒性能は非改変インデニルリガンドに基づく錯体と比較して同様又はより良好である。
【0026】
一つの観点から見ると、本発明は、下記の式(I)のメタロセン触媒錯体を提供する。
【0027】
【化1】
【0028】
ここで、
Mtは、Hf又はZrであり、
各Xは、シグマ-リガンドであり、
各R1は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つCH2-R7基であり、ここで、R7は、H、又は直鎖若しくは分岐のC1~6アルキル基、C3~8シクロアルキル基又はC6~10アリール基であり、
各R2は独立して、-CH=基、-CY=基、-CH2-基、-CHY-基又は-CY2-基であり、ここで、YはC1~10ヒドロカルビル基であり、且つnは2~6であり、
各R3及びR4は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖又は分岐のC1~C6アルキル基、OY基又はC7~20アリールアルキル基、C7~20アルキルアリール基若しくはC6~20アリール基であり、それによって、フェニル基当たり少なくとも1つのR3、及び少なくとも1つのR4は、水素原子でなく、且つ任意的に、2つの隣接するR3又はR4基は、それらが結合されているフェニル炭素を含む環の一部であってよく、
R5は、直鎖又は分岐のC1~C6アルキル基、C7~20アリールアルキル基、C7~20アルキルアリール基又はC6~C20アリール基であり、
R6は、C(R8)3基であり、ここで、R8は直鎖又は分岐のC1~C6アルキル基であり、
各Rは独立して、C1~C20ヒドロカルビル、C6~C20アリール、C7~C20アリールアルキル又はC7~C20アルキルアリールである。
【0029】
別の観点から見ると、本発明は、下記の式(Ia)のメタロセン触媒錯体を提供する。
【0030】
【化2】
【0031】
ここで、各R3及びR4は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、又は直鎖若しくは分岐のC1~C6アルキル基であり、それによって、フェニル基当たり少なくとも1つのR3、及び少なくとも1つのR4は、水素原子でない。
【0032】
さらなる観点から見ると、本発明は、
(i)上記で定義されている通りの式(I)又は(Ia)のメタロセン触媒錯体、及び
(ii)第13族金属の化合物を含む助触媒
を含む触媒を提供する。
【0033】
加えて、本発明のなおさらなる観点は、2つの(R3)3-フェニル基置換基を含む式(I又はIa)のメタロセン触媒錯体のリガンドを生成する為の方法である。
【0034】
本発明の触媒は、担持されていない形態で、又は固体形態で使用されることが出来る。本発明の触媒は、均一触媒又は不均一触媒として使用されうる。
【0035】
固体形態である、好ましくは固体粒状形態である、本発明の触媒は、外部担体物質、例えばシリカ又はアルミナ、上に担持されること、又は一つの実施態様において、外部担体を含まないが、なお固体形態であることのいずれかであることが出来る。例えば、該固体触媒は、
(a) 液体/液体エマルジョン系が形成される、ここで、該液体/液体エマルジョン系は、分散された滴を形成するように溶媒中に分散された触媒成分(i)及び(ii)の溶液を含む;及び
(b) 該分散された滴を固形化することにより固体粒子が形成される
ところの方法によって得られうる。
【0036】
別の観点から見ると、本発明は、式(I)の錯体及び上記で記載された助触媒を得ること;
溶媒中に分散された触媒成分(i)及び(ii)の溶液を含む液体/液体エマルジョン系を形成すること、及び上記分散された滴を固化して固体粒子を形成することを含む、上記で定義された触媒の製造法を提供する。
【0037】
別の観点から見ると、本発明は、特に例えばエチレン又はC4~10アルファーオレフィン、例えば1-ヘキセン、を有するポリプロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマーの形成の為の、本明細書の上記に定義された触媒のプロピレン重合における使用を提供する。
【0038】
別の実施態様に従って、固体触媒は、有機若しくは無機担持物質、例えばシリカ、アルミナ若しくはジルコニア、又は混合酸化物、例えばシリカ-アルミナ、上に担持される。
【0039】
別の観点から見ると、本発明は、プロピレンの重合の為の方法であって、特に例えばエチレン又はC4~10アルファーオレフィン、例えば1-ヘキセン、を有するポリプロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマーの形成の為に、プロピレン及び任意的に、コモノマーを、本明細書の上記に定義された触媒と反応することを含む、上記方法を提供する。
【0040】
定義
明細書を通じて、下記の定義が用いられる。
【0041】
「外部担体を含まない」は、触媒が、外部担持体、例えば無機担持体、例えばシリカ若しくはアルミナ、又は有機ポリマー担持物質、を含まないことを意味する。
【0042】
語「C1~20ヒドロカルビル基」は、C1~20アルキル基、C2~20アルケニル基、C2~20アルキニル基、C3~20シクロアルキル基、C3~20シクロアルケニル基、C6~20アリール基、C7~20アルキルアリール基若しくはC7~20アリールアルキル基、又はもちろんこれらの基の組み合わせ、例えばアルキルによって置換されたシクロアルキルを包含する。直鎖及び分岐のヒドロカルビル基は、環単位を含むことが出来ない。脂肪族のヒドロカルビル基は、アリール環を含むことが出来ない。
【0043】
特に明記されない限り、好ましいC1~20ヒドロカルビル基は、C1~20アルキル基、C4~20シクロアルキル基、C5~20シクロアルキルアルキル基、C7~20アルキルアリール基、C7~20アリールアルキル基又はC6~20アリール基、特にC1~10アルキル基、C6~10アリール基、又はC7~12アリールアルキル基、例えばC1~8アルキル基、である。最も特に好ましいヒドロカルビル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、イソブチル、C5~6シクロアルキル、シクロヘキシルメチル、フェニル又はベンジルである。
【0044】
語「ハロ」は、錯体の定義に関連する場合、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基及びヨード基、特にクロロ基又はフルオロ基、を包含する。
【0045】
金属イオンの酸化状態は、問題となる金属イオンの性質、及び各金属イオンの個々の酸化状態の安定性によって主に支配される。
【0046】
本発明の錯体において、金属イオンMは、金属イオンの原子価を満足し且つそれの利用出来る配位場所を満たすようにリガンドXによって配位されることが理解されるであろう。これらのσ-リガンドの性質は、大きく変わることが出来る。
【0047】
語「C4フェニル環」及び「C4’フェニル環」は、インデニル環及びインダセニル環それぞれの4位及び4’位に結合された置換フェニル環に関する。これらの環の番号付けは、本明細書において示される構造から明らかであろう。
【0048】
本明細書において、触媒活性は、製造されるポリマーの量/触媒1g/時間であると定義される。本明細書において、触媒金属活性は、製造されるポリマーの量/金属1g/時間であると定義される。語 生産性はまた、触媒の単位重量当たりについて製造されるポリマーの量を意味するが、触媒活性を示すために使用される場合もある。
【0049】
本明細書において、語「分子量」は、特に明記されない限り、重量平均分子量Mwを言及するために用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明は、プロピレンの重合に理想的である、一連の新規なリガンド、メタロセン触媒錯体及び従って触媒に関する。本発明のメタロセン触媒錯体は非対称である。非対称は単に、メタロセンを形成する2つのリガンドが異なることを意味し、すなわち、各リガンドが、化学的に異なる置換基の組を有する。対称錯体は、2つの同一のインデニルリガンドに基づく。
【0051】
本発明のメタロセン触媒錯体は、それらのアンチ配置にあるキラル、ラセミ架橋ビスインデニルC1-対称性のメタロセンである。本錯体は形式的にはC1-対称性であるけれども、それらはリガンド周囲でなく金属中心に近接してC2-対称を維持する故に、該錯体は疑似C2-対称性を理想的には保持する。それらの化学的性質により、アンチ及びシンの両方のエナンチオマー対(C1-対称性錯体の場合)が錯体の合成中に形成される。本発明の目的の為に、下記図に示されるように、ラセミ体のアンチ形は、2つのインデニルリガンドがシクロペンタジエニル-金属-シクロペンタジエニル平面に関して反対方向に位置していることを意味し、一方、ラセミ体のシン形は、2つのインデニルリガンドがシクロペンタジエニル-金属-シクロペンタジエニル平面に関して同じ方向に位置していることを意味する。
【0052】
【化3】
【0053】
式(I)、及び任意のサブ式は、シン及びアンチの配置の両方をカバーすることが意図される。好ましいメタロセン触媒錯体は、アンチ配置にある。
【0054】
本発明のメタロセン触媒錯体は、ラセミ-アンチ異性体として用いられる。それ故に、理想的には、メタロセン触媒錯体の少なくとも95モル%、例えば少なくとも98モル%、特に少なくとも99モル%、がラセミ-アンチ異性体形である。
【0055】
本発明のメタロセン触媒錯体において、下記の好適なものが適用される。
【0056】
本発明に従うメタロセン触媒錯体は、下記の式(I)のものである:
【0057】
【化4】
【0058】
下記の式(I)の錯体において、MtはZr又はHf、好ましくはZr、であることが好ましい。
【0059】
各Xは、シグマリガンドである。最も好ましくは、各Xは独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~6アルコキシ基又はR’基であり、ここで、R’は、C1~6アルキル、フェニル又はベンジル基である。最も好ましくは、Xは、塩素原子、ベンジル基又はメチル基である。好ましくは、両方のX基はおなじである。最も好ましいオプションは、2つのメチル基又は2つのベンジル基、特に2つの塩素原子、である。
【0060】
式-SiR2-において、各Rは独立して、C1~C20ヒドロカルビル、C6~C20アリール、C7~C20アリールアルキル又はC7~C20アルキルアリールである。それ故に、語 C1~20ヒドロカルビル基は、C1~20アルキル基、C2~20アルケニル基、C2~20アルキニル基、C3~20シクロアルキル基、C3~20シクロアルケニル基、C6~20アリール基、C7~20アルキルアリール基若しくはC7~20アリールアルキル基又はもちろんこれらの基の組み合わせしたもの、例えばアルキルによって置換されたシクロアルキル基、を包含する。特に言及されない限り、好ましいC1~20ヒドロカルビル基は、C1~20アルキル基、C4~20シクロアルキル基、C5~20シクロアルキルアルキル基、C7~20アルキルアリール基、C7~20アリールアルキル基又はC6~20アリール基である。
【0061】
好ましくは、R基の両方は同じである。RはC1~C10ヒドロカルビル基又はC6~C10アリール基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、イソブチル、C5~6シクロアルキル、シクロヘキシルメチル、フェニル又はベンジルであり、より好ましくはR基の両方はC1~C6アルキル基、C3~8シクロアルキル基又はC6アリール基、例えばC1~C4アルキル基、C5~6シクロアルキル基又はC6アリール基であり、及び最も好ましくは、R基の両方はメチルであり、又は一方がメチルであり且つ他方がシクロヘキシルであることが好ましい。最も好ましくは、該架橋基は、-Si(CH3)2-である。
【0062】
各R1は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つCH2-R7基であり、ここで、R7は、H、又は直鎖若しくは分岐のC1~6アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec.-ブチル基及びtert.-ブチル基、又はC3~8シクロアルキル基(例えばシクロヘキシル)、C6~10アリール基(好ましくは、フェニル)であり;
好ましくは、R1の両方は、同じであり且つCH2-R7基であり、ここで、R7は、H、又は直鎖若しくは分岐のC1~C4アルキル基であり、より好ましくは、R1の両方は、同じであり且つCH2-R7基であり、ここで、R7は、H、又は直鎖若しくは分岐のC1~C3アルキル基である。最も好ましくは、R1の両方は、共にメチルである。
【0063】
各R2は独立して、-CH=基、-CY=基、-CH2-基、-CHY-基又は-CY2-基であり、ここで、Yは、C1~10ヒドロカルビル基、好ましくはC1~4ヒドロカルビル基、であり、且つnは2~6、好ましくは3~4、である。
【0064】
各置換基R3及びR4は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、直鎖又は分岐のC1~C6アルキル基、OY基又はC7~20アリールアルキル基、C7~20アルキルアリール基若しくはC6~20アリール基、好ましくは水素原子、直鎖又は分岐のC1~C6アルキル基又はC6~20アリール基、であり、且つ任意的に、2つの隣接するR3又はR4基は、それらが結合されているフェニル炭素を含む環の一部であってよい。より好ましくは、R3及びR4は、水素原子、又は直鎖若しくは分岐のC1~C4アルキル基又はOY-基であり、ここで、Yは、C14ヒドロカルビル基である。いっそう好ましくは、各R3及びR4は独立して、水素原子、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル又はメトキシ、特に水素原子、メチル又はtert-ブチルでありそれによって、フェニル基当たり少なくとも1つのR3、及び少なくとも1つのR4は、水素原子でない。
【0065】
すなわち、好ましくは、フェニル基当たり1つ又は2つのR3は水素原子でなく、より好ましくは、両方のフェニル基上でR3は、同じであり、例えば両方のフェニル基について3',5'-ジ-メチル又は4'-tert-ブチルである。
【0066】
インデニル部分について、好ましくは、フェニル基上の1つ又は2つのR4は水素原子でなく、より好ましくは、2つのR4は水素原子でなく、そして最も好ましくは、これら2つのR4は互いに同じであり、例えば3',5'-ジ-メチル又は3',5'-ジ-tert-ブチル、である。
【0067】
R5は、直鎖又は分岐のC1~C6アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基及びtert-ブチル基、C7~20アリールアルキル基、C7~20アルキルアリール基又はC6~C20アリール基である。
【0068】
R5は、好ましくは直鎖又は分岐のC1~C6アルキル基又はC6~20アリール基、より好ましくは、線状C1~C4アルキル基、いっそう好ましくはC1~C2アルキル基、及び最も好ましくはメチル、である。
【0069】
R6はC(R8)3基であり、ここで、R8は、直鎖又は分岐のC1~C6アルキル基である。
【0070】
各Rは独立して、C1~C20ヒドロカルビル、C6~C20アリール、C7~C20アリールアルキル又はC7~C20アルキルアリールである。好ましくは、各R8は、同じ又は異なり、ここで、R8は、直鎖又は分岐のC1~C4アルキル基であり、より好ましくはここで、R8は互いに同じであり且つC1~C2アルキル基である。最も好ましくは、全てのR8基はメチルである。
【0071】
好ましい実施態様において、本発明は、下記の式(Ia)のメタロセン触媒錯体を提供する。
【0072】
【化5】
【0073】
ここで、
Mtは、Zr又はHf、好ましくはZr、であり;
各R3及びR4は独立して、同じであってもよく又は異なっていてもよく、且つ水素原子、又は直鎖若しくは分岐のC1~C6アルキル基であり、それによってフェニル基当たり少なくとも1つのR3、及び少なくとも1つのR4は、水素原子でない。
【0074】
本発明の特定のメタロセン触媒錯体は、下記を含む:
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(4'-tert-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3',5'-ジメチル-フェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド(MC-1)
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(3',5'-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-sインダセン-1-イル][2-メチル-4-(3',5'-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド(MC-2)
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(3',5'-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3',5'-ジ-tert-ブチル-フェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド(MC-3)
又はそれらの対応するジルコニウムジメチル類似体。
【0075】
【表3】
【0076】
疑いを避けるために、上記で提供される置換基の任意のより狭い定義は、任意の他の置換基の任意の他の広い又は狭くされた定義と組み合わせられることが出来る。
【0077】
上記記載の全体にわたって、置換基のより狭い定義が示されている場合には、より狭い定義が、本出願における他の置換基の全てのより広い及びより狭い定義と関連して開示されているとみなされる。
【0078】
合成
本発明の触媒を形成する為の必要なリガンドは、任意の方法によって合成されることができ、当業者は、必要なリガンド物質の製造の為の種々の合成プロトコルを考え出すことが出来るであろう。国際公開第2007/116034号パンフレットは、必要な化学反応を開示しており、参照により本明細書に組み込まれる。合成プロトコルはまた一般に、国際公開第2002/02576号パンフレット、国際公開第2011/135004号パンフレット、国際公開第2012/084961号パンフレット、国際公開第2012/001052号パンフレット、国際公開第2011/076780号パンフレット及び国際公開第2015/158790号パンフレットに見出すことが出来る。実施例の節はまた、当業者に十分な指示を与える。
【0079】
2つの(R 3 ) 3 -フェニル基置換基を含む式(I又はIa)のメタロセン触媒錯体のリガンドの合成、好ましくはインダセニルリガンド合成。
国際公開第2018/122134号パンフレットに開示されている通りのメタロセンのリガンドは、2つの異なるインデン、1つのメトキシインデン及び1つのインダセンを含む。メトキシインデンの合成は、単純であり、そして高収率を与えるが、インダセンの合成は、4-(4-tert-ブチルフェニル)インダセンの場合についてスキーム1に示されている通りのいくつかの工程を必要とする:
【0080】
【化6】
【0081】
2つの(R3)3-フェニル基置換基を含む式(I又はIa)のメタロセン触媒錯体のリガンド、好ましくは、上記の構造の構造類似体である本発明のメタロセン触媒錯体の合成において使用されるインダセンリガンド、はスキーム2に示されている通り、1つの工程が少ない状態で得られる:
【0082】
【化7】
【0083】
すなわち、本発明の新規なメタロセン触媒錯体は、より単純な方法で、及び実験パートに示されている通り、より効果的な方法でも、調製されることが出来る。
【0084】
それ故に、本発明は、その上、2つの(R3)3-フェニル基置換基を含む式(I又はIa)のメタロセン触媒錯体のリガンド、好ましくはインダセンリガンド、を生成する為の方法に関連する。
【0085】
スキーム2に類似のこの方法は、下記の工程を含む
1.出発のケトン化合物、例えばR1-3,5,6,7-テトラヒドロ-s-インデセン-1(2H)-オン、の求電子ジブロモ化
2.対応するジブロモ化合物、例えば4,8-ジブロモ-R1-3,5,6,7-テトラヒドロ-s-インデセン-1(2H)-オン、の還元、引き続くメチル化による対応するOMe化合物の生成
3.(R3)3-フェニルマグネシウムブロミドとの熊田カップリング、及び
4.脱メトキシル化。
【0086】
すなわち、請求項1~6のいずれか1項に記載のメタロセン触媒錯体、ここで、該2つの(R3)3-フェニル基置換基を含む式(I又はIa)のメタロセン触媒錯体のリガンドが、下記の工程1)~4)を含む方法によって調製され、
1)出発のケトン化合物、例えばR1-3,5,6,7-テトラヒドロ-s-インデセン-1(2H)-オン、が求電子的にジブロモ化される
2)工程1から得られた対応するジブロモ化合物、例えば4,8-ジブロモ-R1-3,5,6,7-テトラヒドロ-s-インデセン-1(2H)-オン、が還元され、そして引き続いてメチル化によって対応するOMe化合物を生じる
3)工程2から得られた対応するOMe化合物が、(R3)3-フェニルマグネシウムブロミドと熊田カップリングされる、且つ
4)工程3から化合物が脱メトキシル化される。
【0087】
該工程1)は好ましくは、ジクロロメタン中の塩化アルミニウムを用いて、低温、例えば2℃から10℃、例えば約+5℃、で行われる。
【0088】
該工程2)における還元は好ましくは、THF-MeOH媒体中の水素化ホウ素ナトリウムによって、低温、例えば2℃から10℃、例えば約+5℃、で行われる。
メチル化は好ましくは、室温でMeI/KOH/DMSOを用いて行われる。
【0089】
該工程3)は好ましくは、NiCl2(PPh3)IPr触媒の存在下にて還流温度で行われ、該工程4)は好ましくは、トルエン中の触媒量のTsOHを用いて還流温度で行われる。
【0090】
該工程1)~4)は、上記のスキーム2に類似している。
【0091】
助触媒
【0092】
活性触媒種を形成する為に、当技術分野において周知である通り、助触媒を使用することが通常必要である。
【0093】
本発明に従って、ホウ素含有助触媒及び/又はアルミノキサン助触媒を含む助触媒系は、上記で定義されているメタロセン触媒錯体との組み合わせで使用される。
【0094】
アルミノキサン助触媒は、下記の式(X)の一つであることが出来る:
【0095】
【化8】
【0096】
ここで、nは通常6~20であり、且つRは下記の意味を有する。
【0097】
アルミノキサンは、有機アルミニウム化合物、例えば式AlR3、AlR2Y及びAl2R3Y3)の部分加水分解により形成され、ここで、Rは例えば、C1~C10アルキル、好ましくはC1~C5アルキル又はC310シクロアルキル、C7~C12アリールアルキル又はアルキルアリール及び/又はフェニル又はナフチルであることでき、且つYは、水素原子、ハロゲン原子、好ましくは塩素原子若しくは臭素原子、又はC1~C10アルコキシ、好ましくはメトキシ若しくはエトキシであることが出来る。結果として生じた酸素含有アルミノキサンは一般に、純粋な化合物でなく、式(X)のオリゴマーの混合物である。
【0098】
好ましいアルミノキサンは、メチルアルミノキサン(MAO)である。助触媒として、本発明に従って使用されるそのようなアルミノキサンは、それらの製造方法のために純粋な化合物ではないが、本明細書の下記においてアルミノキサン溶液のモル濃度は、それらのアルミニウム含量に基づく。
【0099】
本発明に従って、その上、ホウ素含有助触媒は、アルミノキサン助触媒の代わりに使用されることができ、又は該アルミノキサン助触媒は、ホウ素含有助触媒との組み合わせで使用されることが出来る。
【0100】
ホウ素系助触媒が用いられる場合には、それとアルミニウムアルキル化合物、例えばTIBA、との反応によって錯体を予備アルキル化することが通常であることが当業者に理解されよう。この手順は周知であり、及び任意の好適なアルミニウムアルキル、例えばAl(C1~6アルキル)3、が使用されることが出来る。好ましいアルミニウムアルキル化合物は、トリエチルアルミニウム、トリ-イソブチルアルミニウム、トリ-イソヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム及びトリ-イソオクチルアルミニウムである。
【0101】
代替的に、ボレート助触媒が使用される場合には、該メタロセン触媒錯体は、それのアルキル化バージョンであり、すなわち、例えばジメチル又はジベンジルメタロセン触媒錯体が使用されることが出来る。
【0102】
関心のあるホウ素系助触媒は、式(Z)のものを含む
BY3(Z)
ここで、Yは、同じ又は異なり、且つ水素原子、1~約20個の炭素原子のアルキル基、6~約15個の炭素原子のアリール基、アルキルアリール、アリールアルキル、ハロアルキル又はハロアリールであり、各々は、アルキルラジカル中に1~10個の炭素原子及びアリールラジカル中に6~20個の炭素原子、又はフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を有する。Yの為の好ましい例は、メチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル又はトリフルオロメチル、不飽和基、例えばアリール又はハロアリール、例えばフェニル、トリル、ベンジル基、p-フルオロフェニル、3,5-ジフルオロフェニル、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、3,4,5-トリフルオロフェニル及び3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル、である。好ましい選択肢は、トリフルオロボラン、トリフェニルボラン、トリス(4-フルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,4,6-トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタ-フルオロフェニル)ボラン、トリス(トリル)ボラン、トリス(3,5-ジメチル-フェニル)ボラン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボラン及び/又はトリス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボランである。
【0103】
特別な好適は、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランに与えられる。
【0104】
しかしながら、該ボレート、即ち、ボレート3+イオン、を含む化合物が使用されることが好ましい。そのようなイオン性助触媒は、好ましくは、非配位性アニオン、例えばテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート及びテトラフェニルボレート、を含む。好適な対イオンは、プロトン化アミン又はアニリン誘導体、例えばメチルアンモニウム、アニリニウム、ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、N-メチルアニリニウム、ジフェニルアンモニウム、N,N-ジメチルアニリニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリ-n-ブチルアンモニウム、メチルジフェニルアンモニウム、ピリジニウム、p-ブロモ-N,N-ジメチルアニリニウム又はp-ニトロ-N,N-ジメチルアニリニウム、である。
【0105】
本発明に従って使用されることが出来る好ましいイオン性化合物は、下記を包含する:
トリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラ(フェニル)ボレート、
トリメチルアンモニウムテトラ(トリル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラ(トリル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリプロピルアンモニウムテトラ(ジメチルフェニル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラ(トリフルオロメチルフェニル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラ(4-フルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ボレート、
N,N-ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ボレート、
N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジ(プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジ(シクロヘキシル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリフェニルホスホニウムテトラキス(フェニル)ボレート、
トリエチルホスホニウムテトラキス(フェニル)ボレート、
ジフェニルホスホニウムテトラキス(フェニル)ボレート、
トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(フェニル)ボレート、
トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(フェニル)ボレート、
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
又はフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート。
【0106】
好ましくは、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、又は
N,N-ジメチルベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
が与えられる。
【0107】
あるホウ素助触媒が特に好ましいことが驚くべきことにわかった。それ故に、本発明における使用の好ましいボレートは、トリチルイオンを含む。すなわち、それ故に、N,N-ジメチルアンモニウム-テトラキスペンタフルオロフェニルボレート及びPh3CB(PhF5)4並びに類似体の使用が特に好ましい。
【0108】
本発明に従って、好ましい助触媒は、アルモキサン、より好ましくはメチルアルモキサン、アルモキサンとAl-アルキルとの組み合わせ、ホウ素又はボレート助触媒、及びアルモキサンとホウ素系助触媒との組み合わせ、である。
【0109】
本発明の最も好ましい実施態様によると、好ましい助触媒は、アルモキサン、最も好ましくはメチルアルモキサン、である。
【0110】
助触媒の好適な量は、当業者に知られているだろう。
【0111】
メタロセンの金属イオンに対するホウ素のモル比は、0.5:1~10:1モル/モル、好ましくは1:1~10:1、特には1:1~5:1モル/モル、でありうる。
【0112】
メタロセンの金属イオンに対するアルミノキサン中のAlのモル比は、1:1~2000:1モル/モル、好ましくは10:1~1000:1、及びより好ましくは50:1~500:1モル/モル、でありうる。
【0113】
触媒の製造
【0114】
本発明のメタロセン触媒錯体は、当技術分野において周知である通り、例えば溶媒、例えばトルエン又は脂肪族炭化水素、中でのプロピレンの重合用(すなわち溶液における重合用)触媒として好適な助触媒と組み合わせて使用されることが出来る。好ましくは、プロピレンの重合が、凝縮相において又は気相で生じる。
【0115】
本発明の触媒は、担持された形状又は担持されていない形状で使用されることが出来る。使用される粒子担持物質は好ましくは、有機又は無機の物質、例えばシリカ、アルミナ又はジルコニア、又は混合酸化物、例えばシリカ-アルミナ、特にシリカ、アルミナ又はシリカ-アルミナ、である。シリカ担持体の使用が好ましい。当業者は、メタロセン触媒を担持する為に必要な手順を知っている。
【0116】
特に好ましくは、該担持体が、例えば国際公開第94/14856号パンフレット、国際公開第95/12622号パンフレット及び国際公開第2006/097497号パンフレットに記載された方法と類似の方法を使用して、該錯体が上記担持体の孔内に入られうるような多孔性物質である。粒子サイズは重要でないが、好ましくは5~200μm、より好ましくは20~80μm、である。これらの担持体の使用は、当分野においてルーチンである。
【0117】
代替的な実施態様において、担持体が全く使用されない。そのような触媒は、溶液中で、例えば芳香族溶媒、例えばトルエン、中で、メタロセン(固体として又は溶液として)を助触媒、例えば芳香族溶媒中に予め溶解されたメチルアルミノキサン又はボラン又はホウ酸塩と接触させることにより調製されることができ、又は溶解された触媒成分を重合媒体に順次添加することにより調製されることが出来る。
【0118】
一つの実施態様において、外部担体が使用されないが、触媒はなおも固体粒子形態で存在する。すなわち、外部担持物質、例えば不活性の有機又は無機の担体、例えば上述したシリカ、が使用されない。
【0119】
本発明の触媒を外部担体を使用しないで固体形態で提供する為に、液体/液体エマルジョン系が使用されることが好ましい。上記方法は、触媒成分(i)及び(ii)を溶媒に分散させること及び該分散された滴を固化して固体粒子を形成することを含む。
【0120】
特に、上記方法は、1以上の触媒成分の溶液を調製すること;上記溶液を溶媒中に分散させて1以上の触媒成分が分散相の滴に存在しているところのエマルジョンを形成すること;外部粒子多孔性担持体の不存在下で、分散された滴中の上記触媒成分を固定化して上記触媒を含む固体粒子を形成すること、及び任意的に、上記粒子を回収することを含む。
【0121】
この方法は、改善されたモルホロジー、例えば予め決定された球形状、表面特性及び粒子サイズ、を有する活性触媒粒子の製造を、追加の外部多孔性担持体物質、例えば無機酸化物、例えばシリカ、を使用することなく可能にする。語「1以上の触媒成分の溶液を調製する」は、触媒形成性化合物が、1つの溶液中で一緒にされ、それが非混和性溶媒に分散され得、又は触媒形成性化合物の各部分の為の少なくとも2つの別個の触媒溶液が調製され得、次いで上記溶媒に順次分散されることを意味する。
【0122】
必要な方法の完全な開示を、国際公開第03/051934号パンフレットにおいて見ることができ、該パンフレットは、参照によって本明細書内に組み込まれる。
【0123】
本発明はまた、工業的に有利である。なぜならば、それは、固体粒子の調製がワンポット手順で行われることを可能にするからである。連続の又は半連続の手順がまた、触媒を製造する為に可能である。
【0124】
触媒オフライン予備重合
【0125】
外部担持体物質が使用されていない不均一触媒(「自己担持体型」触媒とも呼ばれる)の使用は、欠点として、重合媒体中である程度溶解する傾向があり得、すなわち、ある活性触媒成分がスラリー重合中に前記触媒粒子から浸出し得、それにより、該触媒の元々の良好なモルホロジーが失われる可能性がありうる。これらの浸出した触媒成分は非常に活性であり、重合中に問題を引き起こす可能性がある。それ故に、浸出される成分の量は最小にされるべきであり、すなわち全ての触媒成分は不均一な形態に保たれるべきである。
【0126】
その上、該自己担持体型触媒は、該触媒系における触媒的に活性な種の高い量の故に、重合の開始時に高温を生じ、それが生成物材料の融解を引き起こしうる。両方の効果、すなわち該触媒系の部分的溶解及び発熱は、ポリマー材料モルホロジーのファウリング、シーティング及び劣化を引き起こしうる。
【0127】
高い活性又は浸出に伴ってありうる問題を最小にする為に、それを重合方法において使用する前に触媒を「オフラインプレポリマー化」することが可能である。この点に関して、オフライン予備重合は、該触媒調製方法の一部であり、固体触媒が形成された後に行われる工程であることに留意しなければならない。該触媒オフライン予備重合工程は、予備重合工程を含む実際の重合方法の構成の一部ではない。該触媒オフライン予備重合工程の後、固体触媒が重合において使用されることが出来る。
【0128】
触媒「オフライン予備重合」は、該液-液エマルジョン方法の固化工程に従って行われる。予備重合は、当技術分野において記載された既知の方法、例えば国際公開第2010/052263号パンフレット、国際公開第2010/052260号パンフレット又は国際公開第2010/052264号パンフレットに記載されている方法、により行いうる。本発明のこの観点の好ましい実施態様が、本明細書内に記載されている。
【0129】
該触媒オフライン予備重合工程におけるモノマーとして、好ましくはアルファーオレフィンが使用される。好ましいC2~C10オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン1-デセン、スチレン及びビニールシクロヘキセン、が使用される。最も好ましいアルファー-オレフィンは、エチレン及びプロピレン、特にプロピレン、である。
【0130】
該触媒オフライン予備重合は、気相中又は不活性希釈剤、典型的には油又はフッ素化炭化水素、好ましくはフッ素化炭化水素中又はフッ素化炭化水素の混合物中、で行われうる。好ましくは、過フッ素化炭化水素が使用される。そのような(過)フッ素化炭化水素の融点は典型的には、0~140℃、好ましくは30~120℃、例えば50~110℃、である。
【0131】
該触媒オフライン予備重合がフッ素化炭化水素中で行われる場合、該予備重合工程の温度は70℃未満、例えば-30~70℃、好ましくは0~65℃、より好ましくは20~55℃、である。反応槽内の圧力は好ましくは、該触媒容器内への空気及び/又は湿気の浸出を最小限に抑えるために大気圧よりも高い。好ましくは、該圧力は、少なくとも1~15バール、好ましくは2~10バール、である。該反応槽は好ましくは、不活性雰囲気に、例えば窒素若しくはアルゴン又は同様の雰囲気下に、保たれている。
【0132】
オフライン予備重合は、予備重合工程前のポリマーマトリックスの重量/固体触媒の重量として定義される所望の予備重合度に達するまで続けられる。該度は、25未満、好ましくは0.5~10.0、より好ましくは1.0~8.0、最も好ましくは2.0~6.0、である。
【0133】
オフライン触媒予備重合工程を使用することは、触媒成分の浸出が最小限に抑えられ、従って局所的に過熱するという利点を提供する。
【0134】
オフライン予備重合後、該触媒は、単離され且つ貯蔵されることが出来る。
【0135】
重合
本発明に従う触媒は、プロピレンホモポリマー、プロピレン-エチレンコポリマー又はプロピレン-C4~10アルファーオレフィンコポリマーの形成に適している。すなわち、該方法は、重合性プロピレン、プロピレン及びエチレン又はプロピレン及びC4~10アルファーオレフィンを含む。そのようなプロピレン-エチレンポリマーにおけるエチレン含量は、ポリマーの所望の特性に応じて変化しうる。典型的には、エチレン含量は0.1~10モル%であろう。特に、本発明の触媒は、コモノマーとしてエチレンとのプロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマー、及びコモノマーとしてヘキセンとのプロピレンコポリマーを製造する為に使用される。
【0136】
本発明の方法における重合は、1以上の、例えば1、2又は3の重合反応器において、慣用的な重合技術、例えば気相、溶液相、スラリー若しくはバルク重合又はそれらの組み合わせ、例えばスラリーと少なくとも1つの気相反応器、を使用して行われうる。
【0137】
スラリー反応器の為のプロピレン重合の場合には、反応温度が一般に60~110℃(例えば、60~90℃)であり、反応器圧が一般に、5~80バール(例えば、20~60バール)であり、滞留時間が一般に0.1~5時間(例えば、0.3~2時間)である。モノマーは通常、反応媒体として使用される。
【0138】
気相反応器の場合には、使用される反応温度が一般に、60~115℃(例えば、70~110℃)であり、反応器圧が一般に10~25バールであり、滞留時間が一般に0.5~8時間(例えば、0.5~4時間)である。使用される気体は、任意的に非反応性気体、例えば窒素又はプロパン、との混合物としてのモノマーである。実際の重合工程及び反応器に加えて、上記方法は、任意の追加の重合工程、例えば予備重合工程、及び当技術分野において知られている任意のさらなる反応器ハンドリング後工程を含むことが出来る。
【0139】
溶液重合の為に、脂肪族又は芳香族の溶媒が使用されて、モノマー及びポリマーを溶解することができ、重合温度は一般に80~200℃(例えば、90~150℃)である。
【0140】
一般に、使用される触媒の量は、触媒の性質、反応器の型及び条件並びにポリマー生成物の為の望ましい特性に依存するであろう。当技術分野において周知である通り、水素がポリマーの分子量を制御するために使用されることが出来る。
【0141】
本発明のメタロセン触媒は、優れた触媒活性及び良好なコモノマー応答を有する。該触媒はまた、高い重量平均分子量Mwのポリマーを提供することが出来る。
【0142】
その上、本発明のメタロセン触媒のランダム共重合挙動は、エチレンへの連鎖移動の低下された傾向を示す。本発明のメタロセンで得られたポリマーは通常の粒子形態を有する。
【0143】
ポリマー
特許請求の範囲に請求された触媒が高分子量を有するポリマーの形成を可能にすることが本発明の特徴である。これらの特徴は商業的に関心のある重合温度、例えば60℃以上、で達成されることが出来る。本発明の好ましい特徴は、本発明の触媒が少なくとも60℃、好ましくは少なくとも65℃、例えば少なくとも70℃、の温度でプロピレンを重合するのに使用されることである。特定の実施態様において、本発明の触媒を用いて得られるプロピレンポリマーは、多分散性指数(Mw/Mn)の2.0以上、例えば2.2~6.5、を有する。
【0144】
プロピレンホモポリマー
本発明のメタロセンによって製造されるプロピレンホモポリマーは、Mw調整剤として使用される水素の使用及び量に依存して、40~2000kg/molの、好ましくは50~1500kg/molの、Mw(重量平均分子量)値で製造されることが出来る。本発明の触媒は、高融点を有するポリプロピレンホモポリマーの形成を可能にする。好ましい実施態様において、本発明の方法によって形成されるプロピレンホモポリマーは、149.0℃超、好ましくは149.5℃超、特により好ましくは150.0℃、の融点を有する。
【0145】
プロピレンコポリマー
本発明のメタロセンによって作製される、エチレンとの又はC4~C10との、特にC6コモノマーとのプロピレンコポリマーは、高い生産性で作製されることが出来る。さらに、固有粘度の増加は、プロピレン-ヘキセンコポリマーにおいて見られることが出来る。
【0146】
本発明は、下記の非制限的な実施例を参照することによって説明されるだろう。
【0147】
分析試験
【0148】
測定法:
【0149】
Al及びZr決定(ICP法)(例IE1,CE1)
触媒の元素分析が、質量Mの固体サンプルを取り、ドライアイス上で冷却することにより行われた。サンプルが、硝酸(HNO3,65%,Vの5%)及び新しい脱イオン(DI)水(Vの5%)に溶解することより、既知体積Vまで希釈された。溶液が次いで、フッ化水素酸(HF,40%,Vの3%)に添加され、DI水で最終体積Vまで希釈され、そして2時間安定化された。
【0150】
分析は、ブランク(DI水中の5%HNO3、3%HFの溶液)及びDI水中の5%HNO3、3%HFの溶液中の0.5ppm、1ppm、10ppm、50ppm、100ppm及び300ppmのAlと、0.5ppm、1ppm、5ppm、20ppm、50ppm及び100ppmのHf及びZrとの6個の標準を使用して較正されたThermo Elemental iCAP 6300 Inductively Coupled Plasma-Optical Emmision Spectrometer(ICP-OES)を使用して室温で行われた。
【0151】
分析の直前に、較正が、ブランク及び100ppmのAl、50ppmのHf、Zr標準を使用して「再傾斜され(resloped)」、品質管理サンプル(quality control sample)(DI水中の5%HNO3、3%HFの溶液中の20ppmのAl、5ppmのHf、Zr)が実行されて上記再傾斜を確認する。QCサンプルはまた、5番目のサンプルが終わる毎に及び計画された分析の組の最後に実行される。
【0152】
ハフニウムの含量が、282.022nm及び339.980nmラインを使用してモニターされ、ジルコニウムの含量が339.198nmラインを使用してモニターされた。アルミニウムの含量は、ICPサンプルにおけるAl濃度が0~10ppmである場合には(100ppmまでのみ較正された)、167.079nmラインによってモニターされ、10ppm超のAl濃度の場合には396.152nmラインによってモニターされた。
【0153】
報告された値は、同じサンプルから分取された3の連続するアリコートの平均であり、サンプルの元の質量及び希釈体積をソフトウェアに入力することにより元の触媒に関連させる。
【0154】
予備重合された触媒の元素組成物を分析する場合、ポリマー部分は、元素が酸によって自由に溶解出来るように灰化により消化される。総含有量は、予備重合された触媒の重量%に対応するように計算される。
【0155】
Al及びZr決定(ICP-方法)(例IE2、CE2及びCE3)
グローブボックスにおいて、該触媒(約40mg)のアリコートが、化学天秤を使用してガラス秤量用ボートの中に秤量された。サンプルは、次に、空気取り入れ口を備えた鋼二次容器に入れられながら、一晩、空気に曝露されることを許された。次に、5mLの濃(65%)硝酸が、該ボートの含有量をXpress電子レンジ容器(20mL)に濯ぎ入れる為に使用された。サンプルは、次に、MARS 6実験室マイクロ波ユニットを使用して35分かけて150℃でマイクロ波補助消化に付された。消化されたサンプルは、少なくとも4時間冷却することを許され、そして次に、100mL体積のガラス体積測定用ガラスフラスコに移された。1000mg/LのY及びRh(0.4mL)を含む標準溶液が添加された。該フラスコは、次に、蒸留水で満たされ、そしてよく振とうされた。該溶液は、0.45μmのナイロンシリンジフィルターを通して濾過され、そして次に、Thermo iCAP 6300 ICP-OES及びiTEVAソフトウェアを使用する分析に付された。
【0156】
該機器は、ブランク(5%HNO3の溶液)、及び5%HNO3蒸留水の溶液中の0.005mg/L、0.01mg/L、0.1mg/L、1mg/L、10mg/L及び100mg/LのAl、B、Hf、Mg、Ti及びZrの6つの標準を使用して、Al、B、Hf、Mg、Ti及びZrについて較正された。しかしながら、あらゆる較正点が各波長について使用されるわけではなかった。各較正溶液は、4mg/LのY及びRh標準を含んでいた。Al 394.401nmは、下記の較正点:ブランク、0.1mg/L、1mg/L、10mg/L及び100mg/Lを使用して較正された。Al 167.079nmは、ブランク、0.01mg/L、0.1mg/L、1mg/L、10mg/L及び100mg/Lの標準を使用して、100mg/Lを除外するAl 394.401nm、及びZr 339.198nmのように較正された。曲線フィッティング及び1/濃度秤量(concentration weighting)が較正曲線について使用された。
【0157】
分析の直前に、該較正は、該ブランク、並びに4mg/LのY及びRhを有していた10mg/LのAl、B、Hf、Mg、Ti及びZr標準を使用して、確認及び調整された(機器再傾斜関数)。品質対照サンプル(QC:蒸留水中の5%HNO3の溶液中、1mg/LのAl、Au、Be、Hg&Se;2mg/LのHf&Zr、2.5mg/LのAs、B、Cd、Co、Cr、Mo、Ni、P、Sb、Sn&V;4mg/LのRh&Y;5mg/LのCa、K、Mg、Mn、Na&Ti;10mg/LのCu、Pb及びZn;25mg/LのFe及び37.5mg/LのCa)が実行されて、Al、B、Hf、Mg、Ti及びZrについて再傾斜を確認した。該QCサンプルはまた、計画された分析の組の最後に実行された。
【0158】
Zrについての含有量は、Zr 339.198nm{99}ラインを使用してモニタリングされた。アルミニウムの含有量は、試験部分におけるAl濃度が2重量%未満である場合には該167.079nm{502}ラインを介して、及び2重量%超のAl濃度については該394.401nm{85}ラインを介してモニタリングされた。Y 371.030nm{91}は、Zr 339.198nm及びAl 394.401nmについて、及びY 224.306nm{450}は、Al 167.079nmについて、内部標準として使用された。
【0159】
報告された値は、該触媒アリコート及び希釈体積の元の質量を使用して、元の触媒サンプルに逆算された。
【0160】
GPC:分子量平均、分子量分布及び多分散性指数(Mn,Mw,Mw/Mn)
多分散性指数、PDI=Mw/Mn(ここで、Mnは数平均分子量であり、Mwは重量平均分子量である)によって記載される分子量平均(Mw及びMn)、分子量分布(MWD)及びそれの広さは、ISO 16014-1:2003、ISO 16014-2:2003、ISO 16014-4:2003及びASTM D 6474-12に従って、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定された。
【0161】
3×Agilent-PLgel Olexis及び1×Agilent-PLgel Olexisガードカラムを備えた、PolymerChar(Valencia、Spain)から入手した赤外(IR)検出器(IR4又はIR5)又はAgilent Technologiesから入手した示差屈折計(RI)のいずれかを備えた高温GPC機器が使用された。溶媒及び移動相として、250mg/Lの2,6-ジ-tertブチル-4-メチル-フェノール)で安定化された1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)が使用された。該クロマトグラフィーシステムは、160℃で及び1mL/分の一定流量速度で作動された。200μLのサンプル溶液が、分析ごとに注入された。データ収集は、AgilentCirrusソフトウェアバージョン3.3又はPolymerChar GPC-IR制御ソフトウェアのいずれかを使用して行われた。
【0162】
カラムセットは、ユニバーサルキャリブレーション(ISO 16014-2:2003に従った)を使用して、0,5kg/mol~11500kg/molにおける19の狭いMWDポリスチレン(PS)標準を用いて較正された。該PS標準は、室温で数時間かけて溶解された。該ポリスチレンピーク分子量からポリオレフィン分子量への変換は、Mark Houwink式及び下記のMark Houwink定数:
KPS=19×10-3mL/g、aPS=0.655
KPE=39×10-3mL/g、aPE=0.725
KPP=19×10-3mL/g、aPP=0.725
を使用することによって達成される。
【0163】
三次の多項式フィット(third order polynomial fit)が、較正データをフィットする為に使用された。
【0164】
全てのサンプルは、0,5~1mg/mlの濃度範囲で調製され、そして160℃で2.5時間PPについて又は3時間溶解された。
【0165】
DSC解析
融解温度Tmは、50ml分-1の窒素流速下、+23~+225℃の温度範囲で、10℃/分の走査速度で、熱/冷/熱のサイクルにおけるISO11357-3に従って、Mettler-Toledo 822e示差走査熱量計(DSC:differential scanning calorimeter)を用いて、約5mgのサンプルで測定された。融解温度は、2回目の加熱工程においてそれぞれ、吸熱ピークとしてとられた。機器の較正は、ISO 11357-1に従って、H20、鉛、錫、インジウムで実施された。
【0166】
メルトフローレート
メルトフローレート(MFR)がISO 1133に従って決定され、g/10分で示される。MFRはポリマーの流動性を示し、従って加工性を示す。メルトフローレートが高いほど、ポリマーの粘度が低い。MFRは230℃で決定され、且つ種々の荷重、例えば2.16kg(MFR2)又は21.6kg(MFR21)、で決定されうる。
【0167】
ポリマー粉末かさ密度
機器:
電子天秤:0,1g~11000gの範囲
ガラスメスシリンダー:体積=max.250ml
プラスチックスプーン:体積=125ml
プラスチック漏斗:D=105mm
実行:ガラスシリンダーは、プラスチックスプーン及びプラスチック漏斗を使用して、非安定化ポリマー粉末を注ぎ入れることによって250mlのmax.体積まで満たされる。
計算:ポリマーの質量(g)/測定体積(ml)
【0168】
FT-IR
1-ヘキセンの含有量は、13C NMR分光法を使用する事前較正に基づくFT-IR分光法によって測定されている。較正は、定量的13C溶解状態NMR分光法によって決定される既知のヘキセン含有量の自家製の非商業的参照材料のセットの使用を介して容易にされた。較正手順は、従来の方法で行われた。該較正セットが、様々な条件下にてパイロットスケールで生成され、そして13C溶解状態NMR分光法によって特徴付けられた、0.8~6.3重量%を範囲とする1-ヘキセン含有量を有する8種の参照材料からなっていた。該較正セットは、最終の定量的IR分光法方法によって遭遇された典型的な様々なコポリマーを反映する為に選択された。定量的IRスペクトルが、Bruker Vertex 70 FTIR分光計を使用して固体状態で記録された。スペクトルが、180~210℃及び4~6mPaで圧縮成形することによって調製された300um厚の25×25mm四方のフィルム上に記録された。5000~500cm-1のスペクトル範囲、6mmの開口、2cm-1のスペクトル分解能、16のバックグラウンドスキャン、16のスペクトルスキャン、64のインターフェログラムゼロ充填因数(zero filling factor)及びBlackmann-Harris3項アポダイゼーションを使用する、標準的な透過FTIR分光法が用いられた。定量分析が、ブチル分枝における(CH2)3構造単位に対応する約727cm-1(AQ)でのCH2揺動変形の総面積を使用して行われた(積分方法B、限度750及び715cm-1)。該定量域が、CH構造単位に対応する4323cm-1(AR)でのCH域の面積に正規化された(積分方法B、限度4450、4007cm-1)。重量パーセントの単位におけるヘキセン含有量が次に、二次較正曲線を使用して正規化吸収(AQ/AR)から予測された。該較正曲線は、該較正セット上で測定された正規化吸収及び一次コモノマー含有量の通常最小二乗(OLS)回帰によって予め構築されている。
【0169】
記載:ポリ(プロピレン-co-ヘキセン)-ヘキセン含有量-13C NMR分光法
定量的13C{1H} NMRスペクトルが、1H及び13Cについてそれぞれ500.13MHz及び125.76MHzで作動するBruker Avance III 500 NMR分光計を使用して、溶融状態で記録された。全てのスペクトルが、13C最適化7mmマジック角回転(MAS)プローブヘッドを180℃で使用し、全空気圧について窒素ガスを使用して記録された。およそ200mgの材料が、7mm外径ジルコニアMASローターに詰められ、そして4kHzで回転された。この設定は主に、速やかな同定及び正確な定量化に必要とされる高い感受性の為に選択された。(Klimke, K., Parkinson, M., Piel, C., Kaminsky, W., Spiess, H.W., Wilhelm, M., Macromol. Chem. Phys. 2006;207:382., Parkinson, M., Klimke, K., Spiess, H.W., Wilhelm, M., Macromol. Chem. Phys. 2007;208:2128., Castignolles, P., Graf, R., Parkinson, M., Wilhelm, M., Gaborieau, M., Polymer 50 (2009) 2373)。標準的な単一パルス励起が、3秒の短いリサイクル遅延でNOE (Klimke, K., Parkinson, M., Piel, C., Kaminsky, W., Spiess, H.W., Wilhelm, M., Macromol. Chem. Phys. 2006;207:382., Pollard, M., Klimke, K., Graf, R., Spiess, H.W., Wilhelm, M., Sperber, O., Piel, C., Kaminsky, W., Macromolecules 2004;37:813.)、及びRS-HEPTデカップリングスキーム(Filip, X., Tripon, C., Filip, C., J. Mag. Resn. 2005, 176, 239., Griffin, J.M., Tripon, C., Samoson, A., Filip, C., 及びBrown, S.P., Mag. Res. in Chem. 2007 45、S1、S198)を利用して用いられた。スペクトル当たり合計16384(16k)の過渡状態が獲得された。定量的13C{1H} NMRスペクトルが、加工され、積分され、そして関連の定量的特性は、該積分から決定された。全ての化学シフトは、21.85ppmでメチルアイソタクチックペンダッド(mmmm)に対して内部標準化される。
【0170】
1-ヘキセンの取り込みに対応する特徴的なシグナルが観察され、そしてコモノマー含有量が下記の方法で定量化された。
【0171】
PHP単離配列に取り込まれた1-ヘキセンの量が、コモノマー当たりの報告部位の数を考慮に入れて、44.2ppmにあるαB4部位の積分を使用して定量化された:
H=IαB4/2
【0172】
PHHP二重連続配列に取り込まれた1-ヘキセンの量が、コモノマー当たりの報告部位の数を考慮に入れて、41.7ppmにあるααB4部位の積分を使用して定量化された:
HH=2*IααB4
【0173】
二重連続取り込みが観察された場合、PHP単離配列に取り込まれた1-ヘキセンの量は、44.4ppmにあるシグナルαB4及びαB4B4の重複により代償されることが必要だった:
H=(IαB4-2*IααB4)/2
【0174】
総1-ヘキセン含有量が、単離及び連続取り込み1-ヘキセンの合計に基づいて計算された:
H合計=H+HH
【0175】
連続取り込みを示す部位が観察されなかった場合、総1-ヘキセンコモノマー含有量は、この定量のみで計算された:
H合計=H
【0176】
2,1-エリトロ位置欠陥を示す特徴的なシグナルが観察された(Resconi, L., Cavallo, L., Fait, A., Piemontesi, F., Chem. Rev. 2000, 100, 1253)。
【0177】
2,1-エリトロ位置欠陥の存在が17.7ppm及び17.2ppmにあるPαβ(21e8)及びPαγ(21e6)メチル部位の存在によって示され、そして他の特徴的なシグナルによって確認された。
【0178】
二次(2,1-エリトロ)挿入プロペンの総量が、42.4ppmにあるαα21e9メチレン部位に基づいて定量化された:
P21=Iαα21e9
【0179】
一次(1,2)挿入プロペンの総量が、46.7ppmにある主なSααメチレン部位に基づいて定量化され、そしてプロペンの2,1-エリトロ、αB4及びααB4B4メチレン単位の相対量についての代償は考慮されなかった(配列の数でなく配列当たりのヘキセンモノマーのH及びHHカウント数に留意されたい):
P12=ISαα+2*P21+H+HH/2
【0180】
プロペンの総量が、一次(1,2)及び二次(2,1-エリトロ)挿入プロペンの合計として定量化された:
P合計=P12+P21=ISαα+3*Iαα21e9+(IαB4-2*IααB4)/2+IααB4
【0181】
これは以下に単純化する:
P合計=ISαα+3*Iαα21e9+0.5*IαB4
【0182】
ポリマー中の1-ヘキセンの総モル分率が次に、以下の通りに計算された:
fH=H合計/(H合計+P合計)
【0183】
ポリマー中の1-ヘキセンのモル分率についての完全な積分式は以下であった:
fH=(((IαB4-2*IααB4)/2)+(2*IααB4))/((ISαα+3*Iαα21e9+0.5*IαB4)+((IαB4-2*IααB4)/2)+(2*IααB4))
【0184】
これは以下に単純化する:
fH=(IαB4/2+IααB4)/(ISαα+3*Iαα21e9+IαB4+IααB4)
【0185】
モルパーセントにおける1-ヘキセンの総コモノマー取り込みが、通常の方法で該モル分率から計算された:
H[mol%]=100*fH
【0186】
重量パーセントにおける1-ヘキセンの総コモノマー取り込みが、標準的な方法で該モル分率から計算された:
H[重量%]=100*(fH*84.16)/((fH*84.16)+((1-fH)*42.08))
【0187】
CRYSTEX
結晶性及び可溶性画分並びにそれらのそれぞれの特性
該ポリプロピレン(PP)組成物の結晶性(CF:crystalline fraction)及び可溶性画分(SF:soluble fraction)、並びにそれぞれの画分のコモノマー含有量及び固有粘度が、CRYSTEX QC Polymer Char (Valencia、Spain)によって分析された。
【0188】
CRYSTEX QC機器の略図は、Del Hierro, P.; Ortin, A.; Monrabal, B.; ‘Soluble Fraction Analysis in polypropylene, The Column, February 2014. Pages 18-23に表されている。該結晶性及び非晶質画分は、160℃で溶解、40℃で結晶化、及び160℃で1,2,4-トリクロロベンゼン(1,2,4-TCB)における再溶解の温度サイクルを介して分離される。SF及びCFの定量化並びにエチレン含有量(C2)の決定は、赤外検出器(IR4)の手段によって達成され、そしてオンライン2毛細管粘度計は、固有粘度(IV:intrinsic viscosity)の決定の為に使用される。
【0189】
IR4検出器は、濃度決定及びエチレン-プロピレンコポリマーにおけるエチレン含有量の決定の為に2つの異なる帯域(CH3及びCH2)でIR吸光度を検出する多重波長検出器である。IR4検出器は、2重量%~69重量%(13C-NMRによって決定される)で既知のエチレン含有量を有する一連のEPコポリマーを用いて較正される。
【0190】
可溶性画分(SF)及び結晶性画分(CF)の量は、XS較正を介して、ISO16152による標準的な重量測定的方法に従って決定された「キシレン冷可溶性」(XCS:Xylene Cold Soluble)定量及びそれぞれキシレン冷不溶性(XCI:Xylene Cold Insoluble)画分と相関した。XS較正は、2~31重量%でXS含有量を用いて様々なEPコポリマーを試験することによって達成される。
【0191】
親EPコポリマー並びにそれの可溶性及び結晶性画分の固有粘度(IV)は、オンライン2毛細管粘度計(capillary viscometer)の使用で決定され、そしてISO 1628に従ってデカリン中で決定される対応するIV’と相関した。
【0192】
較正は、IV=2~4dL/gを有するいくつかの商業的EP PPコポリマーで達成される。
【0193】
分析されるべきPP組成物のサンプルは、10mg/ml~20mg/mlの濃度で秤量される。抗酸化剤として250mg/lの2,6-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を含む1,2,4-TCBを有するバイアルの自動充填後、該サンプルは、160℃で、完全な溶解が達成されるまで、通常60分間、800rpmの一定撹拌で溶解される。
【0194】
該サンプル溶液の定義体積は、不活性担持体で満たされているカラムに注入され、ここで、該サンプルの結晶化及び結晶性部分から可溶性画分の分離が行われている。この方法は2回繰り返される。第1の注入中、全サンプルは高温で測定され、該PP組成物のIV[dl/g]及びC2[重量%]を決定する。第2の注入中、該結晶化サイクルを用いる可溶性画分(低温で)及び結晶性画分(高温で)が決定される(重量%SF、重量%C2、IV)。
【0195】
実施例
【0196】
メタロセン合成
錯体調製の為に使用される化学物質:
2,6-ジメチルアニリン(Acros)、1-ブロモ-3、5-ジメチルベンゼン(Acros)、1-ブロモ-3,5-ジ-tert-ブチルベンゼン(Acros)、ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾリウムクロライド(Aldrich)、トリフェニルホスフィン(Acros)、NiCl2(DME)(Aldrich)、ジクロロジメチルシラン(Merck)、ZrCl4(Merck)、トリメチルボレート(Acros)、Pd(OAc)2(Aldrich)、NaBH4(Acros)、ヘキサン中、2.5MのnBuLi(Chemetal)、CuCN(Merck)、削り屑状マグネシウム(Acros)、シリカゲル60,40~63μm(Merck)、臭素(Merck)、96%の硫酸(Reachim)、亜硝酸ナトリウム(Merck)、銅粉末(Alfa)、水酸化カリウム(Merck)、K2CO3(Merck)、12M HCl(Reachim)、TsOH(Aldrich)、MgSO4(Merck)、Na2CO3(Merck)、Na2SO4(Akzo Nobel)、メタノール(Merck)、ジエチルエーテル(Merck)、1,2-ジメトキシエタン(DME,Aldrich)、95%エタノール(Merck)、ジクロロメタン(Merck)、ヘキサン(Merck)、THF(Merck)、及びトルエン(Merck)が、受け取ったままで使用された。有機金属の合成の為のヘキサン、トルエン及びジクロロメタンが、モレキュラーシーブ4A(Merck)で乾燥された。有機金属の合成の為のジエチルエーテル、THF及び1,2-ジメトキシエタンが、ナトリウムベンゾフェノンケチルで蒸留された。CDCl3(Deutero GmbH)及びCD2Cl2(Deutero GmbH)が、モレキュラーシーブ4A上で乾燥された。
【0197】
4-ブロモ-6-tert-ブチル-5-メトキシ-2-メチルインダン-1-オンが国際公開第2013/007650号パンフレットに記載された通りで得られた。
【0198】
4,8-ジブロモ-1-メトキシ-2-メチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン及び5-tert-ブチル-7-(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-6-メトキシ-2-メチル-1H-インデンが、国際公開第2015/158790号パンフレットに記載されている通りに得られた。
【0199】
MC-1の合成
4,8-ジ(4-tert-ブチルフェニル)-1-メトキシ-2-メチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン
【0200】
【化9】
【0201】
4.3g(5.51mmol)のNiCl2(PPh3)IPr及び76.06g(211.2mmol)の4,8-ジブロモ-1-メトキシ-2-メチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン[1]の混合物に、THF中の550ml(550mmol、1.3当量)の1.0M 4-tert-ブチルフェニルマグネシウムブロミドが、穏やかな還流を維持するような速度で添加された。結果として生じた溶液が3時間還流され、次に、室温に冷却され、そして1000mlの水、引き続き500mlの1.0M HCl及び400mlのエーテルが添加された。有機層を分離し、そして次に蒸発乾固されて、赤色の油を与えた。該生成物が、シリカゲル60上でフラッシュクロマトグラフィーによって単離された(40~63μm;溶離液:ヘキサン-ジクロロメタン=5:1体積、次に2:1体積)。この手順は、白色の固体塊として91.5g(93%)の、4,8-ジ(4-tert-ブチルフェニル)-1-メトキシ-2-メチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセンの2つのジアステレオ異性体の混合物を与えた。
[1]この場合において、~15%のそれの角異性体(angular isomer)、即ち4,5-ジブロモ-3-メトキシ-2-メチル-1,2,3,6,7,8-ヘキサヒドロ-as-インダセン、が混在されている4,8-ジブロモ-1-メトキシ-2-メチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセンが使用された。
【0202】
1H NMR(CDCl3),異性体の混合物:δ7.46~7.38(m,5H),7.37~7.32(m,1H),7.32~7.27(m,2H),4.38(d,J=5.1Hz)及び4.15(s) {合計1H},3.40~3.32(m,0.5H),3.17(s)及び3.07(s) {合計3H},2.99~2.65(m,5H),2.56~2.48(m,0.5H),2.43~2.34(m,0.5H),2.31~2.22(m,0.5H),2.06~1.94(m,1H),1.94~1.82(m,1H),1.38(s),1.37(2s)及び1.36(s) {合計18H},1.16(d,J=6.9Hz)及び0.90(d,J=7.2Hz) {合計3H}
13C{1H} NMR(CDCl3),異性体の混合物:δ149.48,149.32,149.28,149.26,143.88,143.29,141.93,141.61,141.57,140.93,140.76,138.51,137.01,136.92,136.78,135.67,135.00,134.30,133.75,129.02,128.64,124.80,124.69,124.56,90.17,85.03,57.85,56.09,40.77,38.39,38.03,37.40,34.52,33.09,32.98,32.95,32.68,31.43,31.41,26.29,26.08,19.25,14.18
【0203】
4,8-ジ(4-tert-ブチルフェニル)-6-メチル-1,2,3,5-テトラヒドロ-s-インダセン
【0204】
【化10】
【0205】
600mgのTsOHが、700mlのトルエン中の91.5g(196.06mmol)の4,8-ジ(4-tert-ブチルフェニル)-1-メトキシ-2-メチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセンの溶液に添加され、そして結果として生じた混合物が、ディーン-スターク・ヘッドを使用して10分間還流された。室温に冷却した後、該反応混合物が200mlの10%K2CO3で洗われた。有機層が分離され、そして水層が200mlのジクロロメタンでさらに抽出された。一緒にされた有機抽出物が、無水K2CO3上で乾燥され、シリカゲル60(40~63μm)のショートパッドを通過され、そして次に蒸発乾固され、黄色がかった固体塊を与えた。この塊が温n-ヘキサンで粉砕され、形成された懸濁物が濾別され(G3)、こうして得られた沈殿物がn-ヘキサンで洗浄され、そして真空中で乾燥された。この手順は、白色の粉末として61.06g(72%)の4,8-ジ(4-tert-ブチルフェニル)-6-メチル-1,2,3,5-テトラヒドロ-s-インダセンを与えた。
【0206】
1H NMR(CDCl3):δ7.46~7.42(m,4H),7.38~7.35(m,4H),6.49(m,1H),3.27(s,2H),2.92(t,J=7.2Hz,2H),2.86(t,J=7.2Hz,2H),2.04(s,3H),1.98(quint,J=7.2Hz,2H),1.38(2つのs,合計18H)
13C{1H} NMR(CDCl3):δ149.39,149.19,145.45,143.01,141.12,140.63,138.67,137.14,136.77,133.13,129.35,129.15,128.47,126.40,125.00,124.86,42.59,34.56,32.89,32.66,31.44,31.43,26.27,16.83
【0207】
[4,8-ジ(4-tert-ブチルフェニル)-2-メチル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]クロロ-ジメチル-シラン
【0208】
【化11】
【0209】
200mlのエーテル及び40mlのTHFの混合物中の10.87g(25.01mmol)の4,8-ジ(4-tert-ブチルフェニル)-6-メチル-1,2,3,5-テトラヒドロ-s-インダセンの、-50℃に冷却された溶液に、ヘキサン中の10.3ml(25.03mmol)の2.43M nBuLiが一度に添加された。結果として生じた混合物が、一晩、室温で撹拌され、次に、得られた黄色の懸濁物が-30℃に冷却され、そして16.1g(124.8mmol、5当量)のジクロロジメチルシランが一度に添加された。結果として生じた混合物が、一晩、室温で撹拌され、次に、ガラスフリット(G3)を通じて濾過され、そしてフィルターケーキが2×50mlのトルエンで洗われた。一緒にされた濾過物が蒸発乾固され、わずかに黄色がかった油として標題生成物を与え、それは更なる精製無しにさらに使用された。
【0210】
1H NMR(CDCl3):δ7.49~7.40(m,6H),7.38~7.32(m,2H),6.58(s,1H),4.13(s,1H),3.29~3.17(m,1H),3.00~2.81(m,2H),2.70~2.59(m,1H),2.24(s,3H),2.13~2.01(m,1H),1.94~1.79(m,1H),1.39(s,9H),1.38(s,9H),-0.22(s,3H),-0.23(s,3H)
13C{1H} NMR(CDCl3):δ150.04,149.27,146.26,143.29,140.95,140.05,138.54,137.44,136.98,132.28,129.65,129.57,129.16,126.42,125.11,124.90,49.63,34.59,34.57,33.41,32.88,31.46,31.39,26.31,18.13,3.71,-1.58
【0211】
2-メチル-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチル-インダン-1-オン
【0212】
【化12】
【0213】
49.14g(157.9mmol)の2-メチル-4-ブロモ-5-メトキシ-6-tert-ブチルインダン-1-オン、29.6g(197.4mmol,1.25当量)の(3,5-ジメチルフェニル)ボロン酸、45.2g(427mmol)のNa2CO3、1.87g(8.3mmol,5モル%)のPd(OAc)2、4.36g(16.6mmol,10モル%)のPPh3、200mlの水及び500mlの1,2-ジメトキシエタンの混合物が6.5時間還流された。DMEがロータリーエバポレーターで蒸発され、600mlの水及び700mlのジクロロメタンが残留物に加えられた。有機層が分離され、そして水性層が200mlのジクロロメタンでさらに抽出された。一緒にされた抽出物が、K2CO3を介して乾燥され、そして次に、蒸発乾固され、黒色の油を与えた。粗生成物が、シリカゲル60上でフラッシュクロマトグラフィーによって精製されて(40~63μm,ヘキサン-ジクロロメタン=1:1容量、次に1:3容量)、茶色がかった油として、48.43g(91%)の2-メチル-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインダン-1-オンを与えた。
【0214】
C23H28O2についての計算値:C,82.10;H,8.39 実測値:C,82.39;H,8.52
1H NMR(CDCl3):δ7.73(s,1H),7.02(s,3H),7.01(s,3H),3.32(s,3H),3.13(dd,J=17.5Hz,J=7.8Hz,1H),2.68~2.57(m,1H),2.44(dd,J=17.5Hz,J=3.9Hz),2.36(s,6H),1.42(s,9H),1.25(d,J=7.5Hz,3H)
13C{1H} NMR(CDCl3):δ208.90,163.50,152.90,143.32,138.08,136.26,132.68,130.84,129.08,127.18,121.30,60.52,42.17,35.37,34.34,30.52,21.38,16.40
【0215】
2-メチル-5-tert-ブチル-6-メトキシ-7-(3,5-ジメチルフェニル)-1H-インデン
【0216】
【化13】
【0217】
5℃に冷やされた300mlのTHF中の48.43g(143.9mmol)の2-メチル-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインダン-1-オンの溶液に、8.2g(217mmol)のNaBH4が添加された。次に、150mlのメタノールが、約7時間、5℃で激しく撹拌することによってこの混合物に滴下で加えられた。結果として生じた混合物が蒸発乾固され、そして残留物が500mlのジクロロメタンと500mlの2M HClに分配された。有機層が分離され、水性層が100mlのジクロロメタンでさらに抽出された。一緒にされた有機抽出物が蒸発乾固されて、わずかに黄色がかった油を与えた。600mlのトルエン中のこの油の溶液に400mgのTsOHが添加され、この混合物は、10分間、ディーン-スターク・ヘッド(Dean-Stark head)で還流され、そして次に、水浴を用いて室温に冷やされた。形成された溶液は、10% Na2CO3によって洗われ、有機層が分離され、水性層が150mlのジクロロメタンで抽出された。一緒にされた有機抽出物がK2CO3を介して乾燥され、そして次に、シリカゲル60(40~63μm)のショートレイヤー(short layer)を通過された。シリカゲル層が100mlのジクロロメタンによってさらに洗われた。一緒にされた有機溶出物が蒸発乾固され、そして結果として生じた油が、高められた温度で、真空で乾燥された。この手順は、45.34g(98%)の2-メチル-5-tert-ブチル-6-メトキシ-7-(3,5-ジメチルフェニル)-1H-インデンを与え、それは更なる精製無しに使用された。
【0218】
C23H28Oについての計算値:C,86.20;H,8.81 実測値:C,86.29;H,9.07
1H NMR(CDCl3):δ7.20(s,1H),7.08(br.s,1H),6.98(br.s,1H),6.42(m,1H),3.25(s,3H),3.11(s,2H),2.36(s,6H),2.06(s,3H),1.43(s,9H)
13C{1H} NMR(CDCl3):δ154.20,145.22,141.78,140.82,140.64,138.30,137.64,131.80,128.44,127.18,126.85,116.98,60.65,42.80,35.12,31.01,21.41,16.65
【0219】
[4,8-ジ(4-tert-ブチルフェニル)-2-メチル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][6-tert-ブチル-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-2-メチル-1H-インデン-1-イル]ジメチルシラン
【0220】
【化14】
【0221】
200mlのエーテル中の8.26g(25.78mmol)の5-tert-ブチル-7-(3,5-ジメチルフェニル)-6-メトキシ-2-メチル-1H-インデンの溶液に、ヘキサン中の10.5ml(25.52mmol)の2.43M nBuLiが-50℃で一度に添加された。この混合物が、一晩、室温で撹拌され、次に、少量の沈殿物を有する結果として生じた明るい橙色の溶液が-50℃に冷却され、そして200mgのCuCNが添加された。得られた混合物が0.5時間-25℃で撹拌され、次に、150mlのエーテル及び50mlのTHFの混合物中の[4,8-ジ(4-tert-ブチルフェニル)-2-メチル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]クロロジメチルシラン(上記で調製された、25.01mmol)の溶液が一度に添加された。得られた混合物が、一晩、室温で撹拌され、次に、シリカゲル60(40~63μm)のパッドを介して濾過され、それが2×50mlのジクロロメタンによってさらに洗われた。一緒にされた濾過物が減圧下で蒸発され、そして残留物が真空中にて高められた温度で乾燥された。この手順は、白色の粉末として21.36g(約100%)の[4,8-ジ(4-tert-ブチルフェニル)-2-メチル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][6-tert-ブチル-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-2-メチル-1H-インデン-1-イル]ジメチルシラン(NMRによる約95%の純度、立体異性体の約1:1混合物)を与え、それは更なる精製無しにさらに使用された。
【0222】
1H NMR(CDCl3):δ7.59~7.33(m,8H),7.19,7.07,7.02及び6.94(4s,合計4H),6.54(s,1H),6.20及び6.15(2s,合計1H),4.33及び4.18(2s,合計1H),3.21及び3.20(2s,合計3H),3.31~3.16(m,1H),3.05~2.82(m,2H),2.72~2.60(m,1H),2.38及び2.37(2s,1H),2.35及び2.34(2s,合計6H),2.07,2.05,1.94及び1.60(4s,合計6H),2.16~2.02(m,1H),1.99~1.88(m,1H),1.44及び1.43(2s,合計9H),1.39(s,9H),1.22及び1.11(2s,合計9H),-0.49,-0.61,-0.64及び-0.69(4s,合計6H)
【0223】
アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ジ(4-tert-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド
【0224】
【化15】
【0225】
-50℃に冷却された200mlのエーテル中の20.6g(25.4mmol)の[4,8-ジ(4-tert-ブチルフェニル)-2-メチル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][6-tert-ブチル-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-2-メチル-1H-インデン-1-イル]ジメチルシランの溶液に、ヘキサン中の20.9ml(50.8mmol)の2.43M nBuLiが一度に添加された。この混合物が、一晩、室温で撹拌され、次に、結果として生じた暗赤色の溶液が-60℃に冷却され、そして5.92g(25.4mmol)のZrCl4が添加された。反応混合物が24時間、室温で撹拌され、LiClの沈殿物を有する赤色の溶液を与えた。NMR分光法の証拠によると、この溶液は、幾つかの他の不純物で汚染されたアンチ-及びシン-ジルコノセンジクロリドの約3:1混合物を含んでいた。この混合物が蒸発乾固され、そして残留物が150mlの温トルエンで処理された。得られた懸濁物がガラスフリット(G4)を通じて濾過された。濾過物が蒸発乾固され、次に、後者が60mlの温n-ペンタン中に溶解された。-30℃で一晩この混合物から沈殿された橙色の粉末が集められ、そして真空中で乾燥された。この手順は、11.35g(46%)の純粋なアンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ジ(4-tert-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリドを与えた。
アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ジ(4-tert-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド
【0226】
C58H68Cl2OSiZrについての計算値:C,71.71;H,7.06 実測値:C,71.93;H,7.30
1H NMR(CDCl3):δ7.65~7.02(m,11H),6.95(s,1H),6.85(s,1H),6.60(s,1H),3.42(s,3H),3.15~3.01(m,2H),3.01~2.91(m,1H),2.53~2.41(m,1H),2.34(s,6H),2.29(s,3H),2.04(s,3H),2.03~1.94(m,1H),1.84~1.68(m,1H),1.39(s,9H),1.34(2s,合計18H),1.13(s,3H),-0.17(s,3H)
13C{1H} NMR(CDCl3):δ159.92,150.58,149.72,144.85,144.23,143.43,138.59,137.85,136.85,135.58,134.74,134.20,131.85,131.81,131.74,131.26,130.85,129.37,128.93,128.80,127.38,126.80,125.96,125.09,124.72,123.13,121.92,121.08,82.42,82.05,62.64,35.68,34.70,34.60,33.77,32.40,31.41,31.37,30.37,26.07,21.42,19.77,18.64,3.58,1.23
【0227】
MC-2の合成
4,8-ジ(3,5-ジメチルフェニル)-6-メチル-1,2,3,5-テトラヒドロ-s-インダセン
【0228】
【化16】
【0229】
2.0g(2.56mmol)のNiCl2(PPh3)IPr及び36.3g(100.8mmol)の4,8-ジブロモ-1-メトキシ-2-メチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセンの混合物に、THF中の500ml(250mmol、2.5当量)の0.5M 3,5-ジメチルフェニルマグネシウムブロミドが、穏やかな還流を維持するような速度で(約15分間)添加された。結果として生じた溶液がさらに1時間還流され、次に、室温に冷却され、そして1200mlの0.5M HCl及び500mlのジクロロメタンが添加された。有機層が分離され、K2CO3上で乾燥され、シリカゲル60(40~63μm、約30ml)のショートパッドを通過され、そして次に蒸発乾固され、茶色がかった油として4,8-ジ(3,5-ジメチルフェニル)-1-メトキシ-2-メチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセンのジアステレオ異性体の粗混合物を与えた。さらに、315mgのTsOHが、420mlのトルエン中の該粗生成物の溶液に添加され、そして結果として生じた混合物が、ディーン-スターク・ヘッドを使用して10分間還流された。次に、220mgのTsOHがもう一回添加され、そして得られた混合物が10分間還流された。最終的に、最後の動作が50mgのTsOHで繰り返された。室温に冷却した後、反応混合物が200mlの10%K2CO3で洗われた。有機層が分離され、そして水層が200mlのジクロロメタンでさらに抽出された。一緒にされた有機抽出物が無水K2CO3上で乾燥され(該有機層は、この段階で深紅色になった)、シリカゲル60(40~63μm、30ml)のショートパッドを通過され、そして結果として生じた明るい黄色の溶液が約30mlに蒸発され、かなりの量の白色の沈殿物を有する溶液を与えた。この混合物に、300mlのn-ヘキサンが添加された。該沈殿固体が濾別され(G3)、n-ヘキサンで洗浄され、そして真空中で乾燥された。この手順は、白色の微結晶性固体として29.33g(77.48mmol、76.9%)の4,8-ジ(3,5-ジメチルフェニル)-6-メチル-1,2,3,5-テトラヒドロ-s-インダセンを与えた。母液が蒸発乾固され、黄色がかった固体塊を与えた。この塊が40mlの温n-ヘキサンで粉砕され、室温に冷却され、そして濾別された(G3)。得られた固体がn-ヘキサンで洗浄され、そして真空中で乾燥された。この手順は、白色の粉末として4.55g(12.02mmol、11.9%)の4,8-ジ(3,5-ジメチルフェニル)-6-メチル-1,2,3,5-テトラヒドロ-s-インダセンをさらに与えた。すなわち、標題生成物の総収量は33.88g(89.5mmol、88.8%)であった。
【0230】
1H NMR(CDCl3):δ7.04(s,2H),7.03(s,2H),6.98(s,2H),6.43(m,1H),3.23(s,2H),2.89(t,J=7.3Hz,2H),2.83(t,J=7.3Hz,2H),2.38(s,6H),2.37(s,6H),2.04(s,3H),1.99(quint,J=7.3Hz,2H)
13C{1H} NMR(CDCl3):δ145.38,142.84,140.85,140.43,140.21,139.80,138.37,137.55,137.39,133.44,129.64,128.39,128.19,127.31,126.61,126.34,42.49,32.76,32.51,26.08,21.43,16.81
【0231】
[4,8-ビス(3,5-ジメチルフェニル)-2-メチル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]クロロジメチルシラン
【0232】
【化17】
【0233】
-30℃に冷却された、250mlのエーテル及び40mlのTHFの混合物中の11.96g(31.59mmol)の4,8-ジ(3,5-ジメチルフェニル)-6-メチル-1,2,3,5-テトラヒドロ-s-インダセンの懸濁物に、ヘキサン中の13.0ml(31.59mmol)の2.43M nBuLiが一度に添加された。結果として生じた混合物が、一晩、室温で撹拌され、次に、多くの橙色の沈殿物を有するこうして得られた明るい橙色の溶液が-50℃に冷却され、そして19.0ml(20.33g、157.5mmol、4.99当量)のジクロロジメチルシランが一度に添加された。この混合物が、一晩、室温で撹拌され、そして次に、ガラスフリット(G3)を介して濾過され、フラスコ及びフィルターケーキが50mlのトルエンで濯がれた。濾過物が蒸発乾固され、白色の固体塊として14.9g(約100%)の標題化合物を与え、それは更なる精製無しにさらに使用された。
【0234】
1H NMR(CDCl3):δ7.09(s,2H),7.02~6.94(m,4H),6.51(m,1H),4.07(s,1H),3.26~3.14(m,1H),2.95~2.79(m,2H),2.60(ddd,J=12.4Hz,J=8.4Hz,J=4.1Hz,1H),2.38及び2.37(2s,合計12H),2.24(s,3H),2.12~1.99(m,1H),1.95~1.80(m,1H),-0.16(s,3H),-0.20(s,3H)
13C{1H} NMR(CDCl3):δ146.19,143.17,140.68,140.29,139.94,139.92,138.37,137.59,137.42,132.60,129.86,128.52,128.24,127.85,127.28,126.32,49.67,33.33,32.73,26.15,21.45,21.42,18.10,3.92,-1.45
【0235】
[4,8-ビス(3,5-ジメチルフェニル)-2-メチル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][6-tert-ブチル-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-2-メチル-1H-インデン-1-イル]ジメチルシラン
【0236】
【化18】
【0237】
-30℃に冷却された、250mlのエーテル中の10.13g(31.59mmol)の5-tert-ブチル-7-(3,5-ジメチルフェニル)-6-メトキシ-2-メチル-1H-インデン(MC-1について上記の通りに生成された)の溶液に、ヘキサン中の13.0ml(31.59mmol)の2.43M nBuLiが一度に添加された。この混合物が、一晩、室温で撹拌され、次に、少量の沈殿物を有する結果として生じた明るい橙色の溶液が-45℃に冷却され、そして200mgのCuCNが添加された。得られた混合物が0.5時間-25℃で撹拌され、次に、200mlのTHF中の14.9g(31.59mmol)の[4,8-ビス(3,5-ジメチルフェニル)-2-メチル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]クロロジメチルシラン(上記で調製された)の溶液が一度に添加された。この混合物は、一晩、室温で撹拌され、次に、シリカゲル60(40~63μm)のパッドを通じて濾過され、それは2x50mlのジクロロメタンでさらに洗われた。一緒にされた有機溶出物が蒸発乾固され、そして残留物が真空中にて高められた温度で乾燥され、わずかに黄色がかった固体泡状物として24.0g(約100%~約90%の純度)の標題生成物(立体異性体の約55:45混合物)を与え、それは更なる精製無しにさらに使用された。
【0238】
1H NMR(CDCl3):δ7.27及び7.25(2s,合計2H),7.04(s,4H),6.98,6.95及び6.93(3s,合計3H),6.90及び6.85(2s,合計1H),6.46(s,1H),6.23及び6.20(2s,合計1H),4.41及び4.16(2s,合計1H),3.30~2.62(m,1H),3.22及び3.20(2s,合計3H),3.04~2.79(m,2H),2.68~2.56(m,1H),2.39(s,6H),2.35(s,9H),2.32(s,3H),2.18~1.80(6s及び2m,合計9H),1.44及び1.38(2s,合計9H),-0.52,-0.58,-0.62及び-0.73(4s,合計6H)
【0239】
アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ジ(3,5-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド
【0240】
【化19】
【0241】
-30℃に冷却された、250mlのエーテル中の23.06g(30.54mmol)の[4,8-ビス(3,5-ジメチルフェニル)-2-メチル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][6-tert-ブチル-4-(3,5-ジメチル-フェニル)-5-メトキシ-2-メチル-1H-インデン-1-イル]ジメチルシランのわずかに曇った黄色がかった溶液に、ヘキサン中の25.1ml(60.99mmol)の2.43M nBuLiが一度に添加された。この混合物が5.5時間、室温で撹拌され、次に、結果として生じた赤色の溶液が-50℃に冷却され、そして7.12g(30.55mmol)のZrCl4が添加された。反応混合物が24時間、室温で撹拌され、LiClの沈殿物を有する暗赤色の溶液を与えた。NMR分光法の証拠によると、この溶液は、幾つかの他の不純物で汚染されたアンチ-及びシン-ジルコノセンジクロリドの約85/15混合物を含んでいた。この混合物が蒸発乾固され(赤色の泡状物の状態)、そして残留物が100mlの温トルエンで処理された。得られた懸濁物がガラスフリット(G4)を通して濾過され、フィルターケーキが2×50mlの温トルエンで洗われた。濾過物が蒸発乾固され、そして残留物が70mlの熱n-ヘキサン中に溶解された。室温で一晩この溶液から落下された明るい橙色の沈殿物が集められ、そして真空中で乾燥された。この手順は、該錯体の1モル当たり約1.0molのn-ヘキサンを含む7.8gのアンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ジ(3,5-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリドを与え、そのため、該単離アンチ-錯体の調整された正味重量は7.13g(26%)であった。母液が約60mlに蒸発された。-25℃で一晩この溶液から沈殿された明るい橙色の粉末が集められ、そして真空中で乾燥された。この手順は、該錯体の1モル当たり約0.75molのn-ヘキサン(又は8.6gの該生成物において0.57gのn-ヘキサン)を含む8.6gのアンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ジ(3,5-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリドを与え、そのため、該単離アンチ-錯体の調整された正味重量は8.03g(29%)であった。
アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ジ(3,5-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド×1.0 nヘキサン。
【0242】
C54H60Cl2OSiZr x C6H14についての計算値:C,71.96;H,7.45 実測値:C,72.30;H,7.69
1H NMR(CDCl3):δ7.55~6.90(非常にbr.s.,4H),7.39(s,1H),7.10(s,1H),7.03(s,1H),6.98(s,1H),6.95(s,1H),6.94(s,1H),6.81(s,1H),6.58(s,1H),3.41(s,3H),3.15~3.01(m,2H),2.93(ddd,J=16.0Hz,8.1Hz,3.3Hz,1H),2.51~2.41(m,1H),2.39(s,3H),2.36(s,3H),2.34(s,12H),2.30(s,3H),2.04(s,3H),2.07~1.95(m,1H),1.85~1.68(m,1H),1.35(s,9H),1.14(s,3H),-0.13(s,3H)
13C{1H} NMR(CDCl3):δ159.87,144.73,144.10,143.25,141.39,138.39,138.08,137.81,137.47,136.90,134.61,134.39,134.26,132.05,131.96,131.74,131.11,128.96,128.91,128.82,128.74,127.74,127.44,127.01(br.s),126.76,123.42,123.12,121.60,121.08,82.55,81.91,62.67,35.68,33.87,32.39,30.39,26.04,21.53,21.47,21.41,21.24,19.78,18.60,3.62,1.70
【0243】
MC-3の合成
[4,8-ビス(3,5-ジメチルフェニル)-2-メチル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][6-tert-ブチル-4-(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-メトキシ-2-メチル-1H-インデン-1-イル]ジメチルシラン
【0244】
【化20】
【0245】
-30℃に冷却された、250mlのエーテル中の12.78g(31.59mmol)の5-tert-ブチル-7-(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-6-メトキシ-2-メチル-1H-インデンの溶液に、ヘキサン中の13.0ml(31.59mmol)の2.43M nBuLiが一度に添加された。この混合物が、一晩、室温で撹拌され、次に、多くの白色の沈殿物を有する結果として生じた明るい黄色の溶液が-45℃に冷却され、そして200mgのCuCNが添加された。得られた混合物が0.5時間-25℃で撹拌され、次に、200mlのTHF中の14.9g(31.59mmol)の[4,8-ビス(3,5-ジメチルフェニル)-2-メチル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]クロロジメチルシラン(上記の通りに調製された)の溶液が一度に添加された。この混合物が、一晩、室温で撹拌され、次に、シリカゲル60(40~63μm)のパッドを介して濾過され、それが2×50mlのジクロロメタンによってさらに洗われた。一緒にされた有機溶出物が蒸発乾固され、そして黄色がかった残留物が100mlのn-ヘキサンで粉砕された。得られた固体が濾別され(G3)、2×25mlのn-ヘキサンで洗浄され、そして真空中で乾燥され、白色の粉末として19.57gの標題生成物を与えた。母液が蒸発乾固され、黄色がかった固体塊を与えた。この塊が20mlのn-ヘキサンで粉砕され、濾別され(G3)、得られた固体が10mlのn-ヘキサンで洗浄され、そして真空中で乾燥された。この手順は、白色の粉末として4.87gの標題生成物を与えた。すなわち、この生成物(立体異性体の約55:45混合物)の総収量は、24.44g(29.1mmol、92%~約95%の純度)であった。
【0246】
1H NMR(CDCl3):δ7.35~7.22(m,5.5H),7.04(s,2H),6.98(s,1H),6.93,6.90及び6.87(3s,合計1.5H),6.46(s,1H),6.30及び6.26(2s,合計1H),4.41~4.17(2s,合計1H),3.32~3.13(m,1H),3.14及び3.12(2s,合計3H),3.02~2.81(m,2H),2.68~2.56(m,1H),2.39(s,6H),2.35(s,3H),2.33(s,3H),2.24~1.81(6s及び2m,合計9H),1.44及び1.39(2s,合計9H),1.35及び1.34(2s,合計18H),-0.52,-0.59,-0.63及び-0.71(4s,合計6H)
【0247】
アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ジ(3,5-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド
【0248】
【化21】
【0249】
-30℃に冷却された、250mlのエーテル中の24.39g(29.06mmol)の[4,8-ビス(3,5-ジメチルフェニル)-2-メチル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][6-tert-ブチル-4-(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-メトキシ-2-メチル-1H-インデン-1-イル]ジメチルシランのわずかに曇った黄色がかった溶液に、ヘキサン中の23.9ml(58.08mmol)の2.43M nBuLiが一度に添加された。この混合物が5.5時間、室温で撹拌され、次に、結果として生じた赤色の溶液が-50℃に冷却され、そして6.77g(29.05mmol)のZrCl4が添加された。反応混合物が24時間、室温で撹拌され、LiClの沈殿物を有する暗赤色の溶液を与えた。NMR分光法の証拠によると、この溶液は、幾つかの他の不純物で汚染されたアンチ-及びシン-ジルコノセンジクロリドの約90/10混合物を含んでいた。この混合物が蒸発乾固され(赤色の泡状物の状態)、そして残留物が100mlの温トルエンで処理された。得られた懸濁物がガラスフリット(G4)を通して濾過され、フィルターケーキが2×50mlの温トルエンで洗われた。一緒にされた濾過物が蒸発乾固され、残留物が60mlの熱n-ヘキサン中に溶解され、そして10mlのn-ペンタンが添加された。室温で一晩この溶液から落下された明るい橙色の沈殿物が集められ、そして真空中で乾燥された。この手順は、該錯体の1モル当たり約0.7molのn-ヘキサン(又は15.2gの該錯体における0.87gのn-ヘキサン)を含む15.2gの標題アンチ-錯体を与え、そのため、該単離アンチ-錯体の調整された正味重量は、14.33g(49%)であった。母液が約50mlに蒸発された。-25℃で一晩この溶液から沈殿された明るい橙色の粉末が集められ、そして真空中で乾燥された。この手順は、該錯体の1モル当たり約0.36molのn-ヘキサン(又は4.8gの該錯体における0.14gのn-ヘキサン)を含む、4.8gのアンチ-及びシン-錯体の混合物を約86/14比で与え、そのため、該単離混合物の調整された正味重量は4.66g(16%)であった。
アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ジ(3,5-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド
【0250】
C60H72Cl2OSiZr x 0.7C6H14についての計算値:C,72.76;H,7.78 実測値:C,72.70;H,8.05
1H NMR(CDCl3):δ7.74~7.18(非常にbr.s.,3H),7.41(s,1H),7.34(t,J=1.8Hz,1H),7.17~6.81(非常にbr.s.,1H),7.09(s,1H),7.03(s,1H),6.98(s,1H),6.95(s,1H),6.70(s,1H),6.61(s,1H),3.27(s,3H),3.14~3.00(m,2H),2.95(ddd,J=16.0Hz,J=8.1Hz,J=3.6Hz,1H),2.44(ddd,J=16.6Hz,J=8.3Hz,J=3.4Hz,1H),2.38(s,3H),2.37(s,3H),2.32(s,6H),2.29(s,3H),2.07~1.96(m,1H),2.03(s,3H),1.89~1.71(m,1H),1.35(s,9H),1.34(s,18H),1.14(s,3H),-0.14(s,3H)
13C{1H} NMR(CDCl3):δ159.93,150.62,144.70,143.99,143.10,141.41,138.47,138.10,137.50,135.90,134.75,134.53,134.48,132.04,131.44,131.29,128.95,128.82,128.74,127.70,127.31,124.44,124.10,123.01,121.11,120.89,120.26,82.55,81.24,62.28,35.69,34.98,34.12,33.84,32.12,31.48,30.36,25.93,22.34,21.50,21.24,19.67,18.82,14.07,3.70,1.65
【0251】
比較例のメタロセンMC-C1の合成(国際公開第/2018/122134号パンフレット、MC-IE3の合成に従った)
4-(4-tert-ブチルフェニル)-1-メトキシ-2-メチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン
【0252】
【化22】
【0253】
前駆体4-ブロモ-1-メトキシ-2-メチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセンが、際公開第2015/158790A2号パンフレット(pp26~29)に記載された手順に従って製造された。
【0254】
1.5g(1.92mmol,0.6モル%)のNiCl2(PPh3)IPr及び89.5g(318.3mmol)の4-ブロモ-1-メトキシ-2-メチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセンの混合物に、THF中の500ml(500mmol,1.57等量)の1.0M 4-tert-ブチルフェニルマグネシウムブロミドが添加された。結果として生じた溶液が3時間還流されて、次に室温に冷やされ、そして1000mlの0.5M HClが加えられた。さらに、この混合物は1000mlのジクロロメタンで抽出され、有機層が分離され、そして水層が250mlのジクロロメタンで抽出された。一緒にされた有機抽出物が蒸発乾固されて、緑がかった油を与えた。標記の生成物が、シリカゲル60上でフラッシュクロマトグラフィーによって分離された(40~63μm;溶離液:ヘキサン-ジクロロメタン=3:1容量、次に1:3容量)。この手順は、白色の固体物として、107g(約100%)の1-メトキシ-2-メチル-4-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセンを与えた。
【0255】
C24H30Oについての計算値:C,86.18;H,9.04 実測値:C,85.99;H,9.18
1H NMR(CDCl3),シン-異性体:δ7.42~7.37(m,2H),7.25~7.20(m,3H),4.48(d,J=5.5Hz,1H),3.44(s,3H),2.99~2.47(m,7H),2.09~1.94(m,2H),1.35(s,9H),1.07(d,J=6.9Hz,3H);アンチ-異性体:δ7.42~7.37(m,2H),7.25~7.19(m,3H),4.39(d,J=3.9Hz,1H),3.49(s,3H),3.09(dd,J=15.9Hz,J=7.5Hz,1H),2.94(t,J=7.3Hz,2H),2.78(tm,J=7.3Hz,2H),2.51~2.39(m,1H),2.29(dd,J=15.9Hz,J=5.0Hz,1H),2.01(quin,J=7.3Hz,2H),1.36(s,9H),1.11(d,J=7.1Hz,3H)
13C{1H} NMR(CDCl3),シン-異性体:δ149.31,142.71,142.58,141.46,140.03,136.71,135.07,128.55,124.77,120.02,86.23,56.74,39.41,37.65,34.49,33.06,32.45,31.38,25.95,13.68;アンチ-異性体:δ149.34,143.21,142.90,140.86,139.31,136.69,135.11,128.49,124.82,119.98,91.53,56.50,40.12,37.76,34.50,33.04,32.40,31.38,25.97,19.35
【0256】
4-(4-tert-ブチルフェニル)-6-メチル-1,2,3,5-テトラヒドロ-s-インダセン
【0257】
【化23】
【0258】
700mlのトルエン中の107gの1-メトキシ-2-メチル-4-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン(上記で調製された)の溶液に、600mgのTsOHが添加され、そして結果として生じた溶液が、10分間、ディーン-スターク・ヘッド(Dean-Stark head)を用いて還流された。室温に冷やされた後、反応混合物は、200mlの10% NaHCO3で洗われた。有機層が分離され、そして水層が2x100mlのジクロロメタンでさらに抽出された。一緒にされた有機抽出物が蒸発乾固されて赤色の油を与えた。生成物が、シリカゲル60上でフラッシュクロマトグラフィーによって精製され(40~63μm;溶離液:ヘキサン、次にヘキサン-ジクロロメタン=5:1容量)、引き続き減圧蒸留された(b.p.210~216℃/5~6mmHg)。この手順は、黄色がかったガラス状物質として、77.1g(80%)の4-(4-tert-ブチルフェニル)-6-メチル-1,2,3,5-テトラヒドロ-s-インダセンを与えた。
【0259】
C23H26についての計算値:C,91.34;H,8.66 実測値:C,91.47;H,8.50
1H NMR(CDCl3):δ7.44~7.37(m,2H),7.33~7.26(m,2H),7.10(s,1H),6.45(br.s,1H),3.17(s,2H),2.95(t,J=7.3Hz,2H),2.78(t,J=7.3Hz,2H),2.07(s,3H),2.02(quin,J=7.3Hz,2H),1.37(s,9H)
13C{1H} NMR(CDCl3):δ149.37,145.54,144.79,142.91,139.92,138.05,137.15,134.06,128.36,127.02,124.96,114.84,42.11,34.53,33.25,32.16,31.41,25.96,16.77
【0260】
2-メチル-[4-(4-tert-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]クロロジメチルシラン
【0261】
【化24】
【0262】
-50℃に冷やされた300mlのエーテル中の22.3g(73.73mmol)の4-(4-tert-ブチルフェニル)-6-メチル-1,2,3,5-テトラヒドロ-s-インダセンの溶液に、ヘキサン中の30.4ml(73.87mmol)の2.43M nBuLiが一度に添加された。結果として生じた混合物が、一晩、室温で撹拌され、次に、多くの沈殿物を有する結果として生じた懸濁物が、-78℃に冷やされ(ここで、該沈殿物実質的に溶解して橙色の溶液を形成した)、そして47.6g(369mmol,5当量)のジクロロジメチルシランが、一度に添加された。得られた溶液が、一晩、室温で撹拌され、そして次にガラスフリット(G4)を通じて濾過された。濾過物が蒸発乾固されて、無色のガラス状物質として、28.49g(98%)の2-メチル-[4-(4-tert-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]クロロジメチルシランを与え、それは更なる精製無しに使用された。
【0263】
1H NMR(CDCl3):δ7-50-7.45(m,2H),7.36(s,1H),7.35~7.32(m,2H),6.60(s,1H),3.60(s,1H),3.10~2.82(m,4H),2.24(s,3H),2.08(quin,J=7.3Hz,2H),1.42(s,9H),0.48(s,3H),0.22(s,3H)
13C{1H} NMR(CDCl3):δ149.27,144.41,142.15,141.41,139.94,139.83,136.85,130.19,129.07,126.88,124.86,118.67,49.76,34.55,33.27,32.32,31.44,26.00,17.6
【0264】
[2-メチル-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチル-1H-インデン-1-イル][2-メチル-4-(4-tert-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジメチルシラン
【0265】
【化25】
【0266】
150mlのエーテル中の7.87g(24.56mmol)の2-メチル-5-tert-ブチル-6-メトキシ-7-(3,5-ジメチルフェニル)-1H-インデン(上記の通りに生成された)の溶液に、ヘキサン中の10.1ml(24.54mmol)の2.43M nBuLiが-50℃で一度に添加された。この混合物は、一晩、室温で撹拌された。次に、大量の黄色の沈殿物を有する結果として生じた黄色の溶液が-50℃に冷やされ(ここで、該沈殿物は完全に消失した)、そして150mgのCuCNが添加された。得られた混合物は0.5時間、-25℃で撹拌され、次に、150mlのエーテル中の9.70g(24.55mmol)の2-メチル-[4-(4-tert-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]クロロジメチルシランの溶液に一度に添加された。この混合物は、一晩、室温で撹拌され、次にシリカゲル60(40~63μm)のパッドを通じて濾過され、それは2x50mlのジクロロメタンでさらに洗われた。一緒にされた濾過物が減圧下で蒸発され、そして残留物が、真空で、高められた温度で乾燥された。この手順は、黄色がかったガラス状の固体として、16.2g(97%)の[2-メチル-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチル-1H-インデン-1-イル][2-メチル-4-(4-tert-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジメチルシラン(NMRによる>95%純度,立体異性体のおよそ1:1の混合物)を与え、それは更なる精製無しに更に使用された。
【0267】
1H NMR(CDCl3):δ7.49(s,0.5H),7.47~7.42(m,2H),7.37~7.32(m,2.5H),7.25(s,0.5H),7.22(s,0.5H),7.15~7.09(m,2H),7.01~6.97(m,1H),6.57,6.56及び6.45(3s,合計2H),3.70,3.69,3.67及び3.65(4s,合計2H),3.28及び3.27(2s,合計3H),3.01~2.79(m,4H),2.38(s,6H),2.19,2.16及び2.13(3s,合計6H),2.07~2.00(m,2H),1.43及び1.41(2s,合計9H),1.38(s,9H),-0.18,-0.19,-0.20及び-0.23(4s,合計6H)
13C{1H} NMR(CDCl3):δ155.30,155.27,149.14,149.10,147.45,147.38,146.01,145.77,143.98,143.92,143.73,143.68,142.13,142.09,139.51,139.41,139.26,139.23,139.19,139.15,138.22,137.51,137.08,137.05,136.98,130.05,130.01,129.11,128.22,127.90,127.48,127.44,126.18,126.13,125.97,125.92,124.82,120.55,120.49,118.50,118.27,60.54,60.50,47.34,47.33,46.87,46.72,35.14,34.54,33.34,33.28,32.30,31.44,31.25,31.20,26.02,26.01,21.45,17.95,17.87
【0268】
アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル][2-メチル-4-(4-tert-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド
【0269】
【化26】
【0270】
-50℃に冷やされた250mlのエーテル中の16.2g(23.86mmol)の[2-メチル-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチル-1H-インデン-1-イル][2-メチル-4-(4-tert-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジメチルシラン(上記で調製された)の溶液に、ヘキサン中の19.7ml(47.87mmol)の2.43M nBuLiが一度に添加された。この混合物は、4時間、室温で撹拌され、次に、結果として生じた赤色の溶液が-50℃に冷やされ、そして5.57g(23.9mmol)のZrCl4が添加された。反応混合物が24時間、室温で撹拌されて、橙色の沈殿物を有する赤色の溶液を与えた。この混合物が蒸発乾固された。残留物が150mlの温トルエンで処理され、そして形成された懸濁物がガラスフリット(G4)を通じて濾過された。濾過物が50mlに蒸発され、そして次に、20mlのn-ヘキサンが加えられた。一晩、室温でこの溶液から沈殿された橙色の結晶が集められ、10mlの冷トルエンで洗われ、そして真空で乾燥された。この手順は、トルエンとの溶媒和物(x0.75 トルエン)として、5.02g(25%)のアンチ-ジルコノセンを与えた。母液が約30mlに蒸発され、そして30mlのn-ヘキサンが加えられた。一晩、室温でこの溶液から沈殿された橙色の粉末が集められ、そして真空で乾燥された。この手順は、アンチ-及びシンのジルコノセンの6.89g(34%)の約3対7の混合物を与えた。すなわち、この合成において分離されたrac-ジルコノセンの総収量は、11.91g(60%)であった。
【0271】
アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル][2-メチル-4-(4-tert-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド
C48H56Cl2OsiZr x0.75C7H8についての計算値:C,70.42;H,6.88 実測値:C,70.51;H,6.99
1H NMR(CDCl3):δ7.63~7.03(非常にbr.s,2H),7.59~7.51(br.m,2H),7.51~7.42(m,4H),6.98(s,1H),6.78(s,1H),6.60(s,1H),3.46(s,3H),3.11~3.04(m,1H),3.04~2.93(m,2H),2.88~2.81(m,1H),2.36(s,6H),2.22(s,3H),2.21(s,3H),2.12~1.94(m,2H),1.41(s,9H),1.36(s,9H),1.32(s,3H),1.31(s,3H)
13C{1H} NMR(CDCl3):δ159.78,149.90,144.67,144.07,143.07,136.75,135.44,135.40,133.97,133.51,132.90,132.23,128.84,128.76,127.34,127.01,126.73,125.28,125.17,122.89,121.68,121.59,120.84,117.94,81.60,81.26,62.61,35.73,34.60,33.20,32.17,31.36,30.34,26.56,21.40,18.41,18.26,2.65,2.54
【0272】
比較例のメタロセンMC-C2の合成
メタロセンMC-2が国際公開第/2018/122134号パンフレット、MC-IE2の合成に従って合成された。
【0273】
【化27】
【0274】
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4-(3',5'-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3',5'-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド
【0275】
比較例のメタロセンMC-C3の合成
メタロセンMC-3が国際公開第/2018/122134号パンフレット、MC-IE5の合成に従って合成された。
【0276】
【化28】
【0277】
rac-アンチ-ジメチルシランジイル[2-メチル-4-(3',5'-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3',5'-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド。
【0278】
比較例のメタロセンMC-C4の合成
【0279】
【化29】
【0280】
rac-ジメチルシランジイルビス[2-メチル-4,8-ビス(3',5'-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、つまりrac-Me2Si[2-Me-4,8-(3',5'-Me2Ph)2-1,5,6,7-H4-インダセニル]2ZrCl2
【0281】
ビス[2-メチル-4,8-ビス(3,5-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジメチルシラン
【0282】
【化30】
【0283】
ヘキサン中のnBuLi(2.43M、18.8ml、45.68mmol)が、-30℃に冷却された、350mlのエーテル及び40mlのTHFの混合物中の4,8-ジ(3,5-ジメチルフェニル)-6-メチル-1,2,3,5-テトラヒドロ-s-インダセン(17.28g、45.65mmol)の懸濁物に一度に添加された。この混合物が4時間、室温で撹拌され、次に、結果として生じた橙色の懸濁物が-40℃に冷却され、そして250mgのCuCNが添加された。得られた混合物が0.5時間-25℃で撹拌され、そして次に、ジクロロジメチルシラン(2.95g、22.86mmol)が添加された。得られた混合物が、一晩、室温で撹拌され、次に、シリカゲル60(40~63μm)のパッドを介して濾過され、それが7×500mlのジクロロメタンでさらに洗われた。一緒にされた有機溶出物が300mlの水で洗浄され、Na2SO4上で乾燥され、そして次に蒸発乾固された。黄色がかった残留物が200mlのn-ヘキサンで粉砕された。形成された懸濁物がガラスフリット(G3)を通して濾過された。そうして得られた白色の沈殿物が2×25mlのn-ヘキサンで洗浄され、そして次に真空中で乾燥され、白色の粉末として14.61gの標題生成物を与えた。母液が蒸発乾固され、黄色がかった半固体塊を与えた。この塊が30mlのn-ヘキサンで粉砕された。得られた懸濁物がガラスフリット(G3)を通して濾過され、沈殿物が2×30mlのn-ヘキサンで洗浄され、そして次に真空中で乾燥された。この手順は、追加の0.81gの標題生成物を与えた。すなわち、ビス[2-メチル-4,8-ビス(3,5-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジメチルシラン(立体異性体の約92:8混合物)の総収量は、15.42g(19.0mmol、83%~約95%の純度)であった。
【0284】
1H NMR(CDCl3),主異性体(rac-):δ7.03~6.94(m,5H),6.89(s,1H),6.32(s,1H),4.25(s,1H),3.20~3.07(m,1H),2.95~2.81(m,1H),2.79~2.67(m,1H),2.56~2.45(m,1H),2.38(s,6H),2.30(s,6H),2.12(s,3H),2.07~1.94(m,1H),1.88~1.71(m,1H),-1.24(s,3H)
13C{1H} NMR(CDCl3):δ146.35,142.86,142.25,140.70,140.34,139.70,137.92,137.28,136.92,132.42,129.15,128.15,128.01,127.38,125.10,47.32,33.42,32.80,26.15,21.45,21.36,17.95,-5.50
【0285】
Rac-ジメチルシランジイルビス[2-メチル-4,8-ジ(3,5-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセニル]ジルコニウムジクロリド
【0286】
【化31】
【0287】
ヘキサン中のnBuLi(2.43M、6.5ml、15.8mmol)が、350mlのトルエン中のビス[2-メチル-4,8-ビス(3,5-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジメチルシラン(6.38g、7.85mmol)の白色の懸濁物に、室温で一度に添加された。この混合物が4時間還流され、次に、結果として生じた暗赤色の溶液が-40℃に冷却され、そして次に、1.28ml(1.138g、15.78mmol)のTHF、引き続き1.83g(7.85mmol)のZrCl4が添加された。反応混合物が24時間、室温で撹拌され、次に、3時間さらに還流され、LiClの沈殿物を有する暗赤色の溶液を与えた。この混合物が約100mlに蒸発され、そしてガラスフリット(G4)を介して濾過された。濾過物が約30mlに蒸発され、そして20mlのn-ヘキサンが添加された。室温で一晩この溶液から形成された黄色の沈殿物が集められ、そして次に、真空下で乾燥された。
【0288】
この手順は、0.85g(11%)のrac-ジメチルシランジイルビス[2-メチル-4,8-ジ(3,5-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセニル]ジルコニウムジクロリド[1H NMR 1605_2_2]を与えた。
【0289】
C60H62Cl2SiZrについての計算値:C,74.04;H,6.42 実測値:C,74.42;H,6.55
1H NMR(CDCl3):δ7.50~7.01(非常にbr.s,2H),7.08(s,1H),6.95(s,1H),6.92(s,2H),6.76(s,1H),3.19~2.90(m,3H),2.53~2.42(m,1H),2.38(s,3H),2.33(s,6H),2.26(s,3H),2.09(s,3H),2.06~1.94(m,1H),1.86~1.70(m,1H),-0.25(s,3H)
13C{1H} NMR(CDCl3):δ144.49,143.19,141.39,138.53,137.90,137.43,133.63,132.42,131.79,131.71,131.63,129.01,128.69,128.21,127.64,127.17,123.01,83.23,33.65,32.21,26.07,21.53,21.39,21.07,20.26,2.92
【0290】
表1において、本発明のメタロセン触媒錯体は、比較例のメタロセン触媒錯体よりもアンチ異性体のほうが高い選択性及び高い単離収率で得られることが示されている。
【0291】
【表4】
【0292】
触媒合成、使用された化学物質
MAOがChemtura/Lanxessから購入され、そしてトルエン中の30重量%溶液として使用された。界面活性剤として、Cytonix corporationから購入され且つ活性化モレキュラーシーブを介して乾燥され(2回)、そして使用前にアルゴンバブリングにより脱気(S1)されたパーフルオロアルキルエチルアクリレートエステル(CAS番号 65605-70-1)、又はUnimatecから購入され且つ活性化モレキュラーシーブを介して乾燥され(2回)、そして使用前にアルゴンバブリングにより脱気(S2)された1H,1H-パーフルオロ(2-メチル-3-オキサヘキサン-1-オール)(CAS 26537-88-2)が使用された。
ヘキサデカフルオロ-1,3-ジメチルシクロヘキサン(PFC)(CAS番号 335-27-3)が商業的供給元から入手され、活性化モレキュラーシーブを介して乾燥され(2回)、そして使用前にアルゴンバブリングにより脱気された。プロピレンがBorealisによって提供され且つ使用前に適切に精製された。
トリエチルアルミニウムがCromptonから購入され、且つ純粋な形で使用された。水素がAGAによって提供され、使用前に精製された。
【0293】
全ての化学物質及び化学反応は、オーブンで乾燥させたガラス製品、注射器、針又はカニューレを使用して、シュレンク(Schlenk)及びグローブボックスの技術を使用して不活性ガス雰囲気下で処理された。
【0294】
シリカとして、600℃で予備焼成された、AGC Si-Tech Coから入手したシリカグレードDM-L-303が使用された。
【0295】
触媒調製:
比較例の触媒1-CE1:(Al/Zr=450(mol/mol)、Al/Surf.=167(mol/mol)
グローブボックス内で、85.3mgの乾燥され且つ脱気された界面活性剤S2がセプタムボトル中で2mLのMAOと混合され、そして一晩反応させる為に放置された。次の日、42.4mgのMC-C1(0,076mmol,1当量)が別のセプタムボトル中で4mLのMAO溶液で溶解され、そしてグローブボックス内で放置され、撹拌された。
【0296】
60分後、4mLのMAO-メタロセン溶液及び1mLの界面活性剤溶液が、-10℃で、40mLのPFCを含み且つオーバーヘッドスターラー(撹拌速度=600rpm)を備えた50mLの乳化ガラス反応器反応器内に連続的に加えられた。MAOの総量は、5mL(450当量)である。赤色のエマルジョンが直ちに形成され、そして15分間、0℃、600rpmで撹拌された。次に、該エマルジョンが、2/4テフロン(登録商標)チューブを介して100mLの90℃の温PFCに移され、該移しが完了するまで600rpmで撹拌され、次に、速度が300rpmに下げられた。15分間撹拌後、油浴が取り除かれ、そして撹拌機の電源が切られた。触媒がPFCの上部に落ち着くまで放置され、そして45分後に、溶媒が吸い出された。残りの赤色の触媒が、2時間50℃でアルゴンの気流下で乾燥された。0.52gの赤色の自由流動性粉末が得られた。
【0297】
本発明の触媒1-IE1:(Al/Zr=450(mol/mol)、Al/Surf.=250)
グローブボックス内で、0.2mLのトルエン中の、29,2mgの乾燥及び脱ガス界面活性剤S2希釈物が、5mLの30重量%Chemtura MAOに滴下により添加された。溶液が撹拌下で10分間放置された。次に、49,2mgのメタロセンMC-1が、MAO/界面活性剤に添加された。
【0298】
60分の撹拌後、界面活性剤-MAO-メタロセン溶液が、-10℃で40mLのPFCを含み且つオーバーヘッド攪拌機(撹拌速度=600rpm)を備えた50mLの乳化ガラス反応器内に添加された。黄色のエマルジョンが直ちに形成され、そして15分間、0℃、600rpmで撹拌された。次に、該エマルジョンが、2/4テフロン(登録商標)チューブを介して100mLの90℃の温PFCに移され、該移しが完了するまで600rpmで撹拌され、次に、速度が300rpmに下げられた。15分間撹拌後、油浴が取り除かれ、そして撹拌機の電源が切られた。触媒がPFCの上部に落ち着くまで放置され、そして45分後に、溶媒が吸い出された。残りの触媒が、2時間50℃でアルゴンの気流下で乾燥された。0.80gの黄色の自由流動性粉末が得られた。
【0299】
本発明の触媒2-IE2:(MC-2/シリカ)
MAO-シリカ担持体の調製。
機械的攪拌機及びフィルターネットを備えた鋼反応器が、窒素でフラッシュされ、そして反応器温度が20℃に設定された。次に、予備焼成シリカグレードDM-L-303(7.4kg)が供給ドラムから添加され、引き続き、手動のバルブを使用して窒素で慎重に加圧及び減圧された。次に、トルエン(32.2kg)が添加された。混合物が15分間撹拌された(40rpm)。次に、Lanxessから入手した、トルエン(17.5kg)中のMAOの30重量%溶液が、該反応器の上部の12mmラインを介して70分以内で添加された。次に、反応混合物が90℃まで加熱され、そして90℃で追加の2時間撹拌された。スラリーが沈降することを許され、そして母液が濾別された。触媒が、トルエン(32.2kg)を用いて90℃で2回洗浄され、引き続き、沈降及び濾過された。該反応器が60℃に冷却され、そして固体がヘプタン(32.2kg)で洗われた。最終的にMAO処理SiO2が、60℃で2時間、窒素流2kg/h、圧力0.3バールg下で、そして次に5時間、真空(-0.5バールg)下で、5rpmで撹拌しながら乾燥された。MAO処理担持体が自由流動性白色の粉末として集められ、重量により12%のAlを含むことがわかった。
【0300】
触媒調製
窒素充填グローブボックスにおいて、乾燥トルエン(2.3mL)中のMAO 0.2mL(トルエン中30重量%、Lanxess)の溶液が、メタロセン錯体MC-2(27μmol)のアリコートに添加された。混合物が60分間室温で撹拌された。次に、上記の通りに調製された2.0gのMAO処理シリカが、多孔質ガラスフリットを備えたガラス反応器に入れられた。トルエン中のMC-2及びMAOの溶液が次に、穏やかに混合しながら5分かけて担持体にゆっくり添加された。結果として生じた混合物がよく振とうされ、そして一晩留まることが許された。次に、乾燥トルエン(10mL)が添加され、そしてスラリーが、不活性ガススパージングを用いてフィルターネットを介して10分かけてよく混合された。固体が沈降することを許され、そして液体が濾別され、捨てられた。結果として生じたケーキが真空中で1時間乾燥され、ピンク色の自由流動性粉末として2.0gの触媒を生じた。
【0301】
比較例の触媒2-CE2:(MC-C3/シリカ)
IE2の触媒と同じ方法だが、比較例のメタロセン錯体MC-C3(27μmol)の等量を使用して、触媒が調製された。
【0302】
比較例の触媒3-CE3:(MC-C4/シリカ)
IE2の触媒と同じ方法だが、比較例のメタロセン錯体MC-C4(27μmol) の等量を使用して、触媒が調製された。
【0303】
本発明の触媒3-IE3:(MC-3/シリカ)
MAO-シリカ担持体の調製
機械的攪拌機を備えたガラス反応器が、予備焼成シリカグレードDM-L-303(10.0g)を入れられた。次に、乾燥トルエン(50mL)が添加された。次に、混合物が35℃に加熱され、そして35℃で(40rpm)15分間撹拌された。次に、Lanxessから入手したトルエン(25mL)中のMAOの30重量%溶液が、カニューレを介して25分かけて添加され、そして次に、さらに2時間35℃で撹拌された。固体が沈降することを許され、そして母液が吸い上げられ、そして捨てられた。トルエン(50mL)が添加され、そして混合物が80℃に加熱され、そしてこの温度で1時間撹拌された。固体が沈降することを許され、そして液体が吸い上げられ、そして捨てられた。トルエン洗浄がさらに2回繰り返され、引き続き、60℃でヘプタン(50mL)洗われた。次に、ケーキが真空下にて60℃で数時間乾燥され、白色の粉末として13.7gの担持体を生じた。
【0304】
触媒調製
窒素充填グローブボックスにおいて、乾燥トルエン(1mL)中のMAO 0.25mL(トルエン中30重量%、Lanxess)の溶液が、メタロセンMC-3(38μmol)のアリコートに添加された。混合物が60分間室温で撹拌された。次に、上記の通りに調製された1.0gのMAO処理シリカが、ガラスバイアルに入れられた。トルエン中のメタロセン及びMAOの溶液が次に、穏やかに混合しながら5分かけて担持体にゆっくり添加された。結果として生じた混合物がよく振とうされ、そして一晩留まることが許された。次に、乾燥トルエン(5mL)が添加され、そしてスラリーが60℃で30分間よく混合された。固体が沈降することを許され、そして液体が吸い上げられ、そして捨てられた。5mLトルエンを用いる洗浄が、室温で2回繰り返された。結果として生じたケーキが、60℃で3時間Ar流の中で乾燥され、ピンク色の自由流動性粉末として1.0gの触媒を生じた。
【0305】
本発明の触媒4-IE4:(MC-2/シリカ)
本発明の触媒IE3と同じ方法だが、本発明のメタロセンMC-2(38μmol、35,4mg)の等量を使用して、触媒が調製された。
【0306】
比較例の触媒4-CE4:(MC-C2/シリカ)
IE3の本発明の触媒と同じ方法だが、比較例のメタロセンMC-C2(38μmol)の等量を使用して、触媒が調製された。
【0307】
【表5】
【0308】
重合例
例CE1及びIE1(比較例の重合例PCE1及び本発明の重合例PIE1)の触媒を用いるプロピレンの単独重合
攪拌機、モノマー及び水素の為のライン、排出ライン、並びに触媒及びスカベンジャーの為の供給系を備えた5リットルのジャケット付きステンレス鋼反応器内で、重合が行われた。
【0309】
触媒供給系は、2つのステンレス鋼シリンダーを連続して含む。グローブボックス内で、所望量の触媒(表3を参照されたい)が、該供給系の低い方の鋼製シリンダーにロードされ、そして5mlの乾燥ペルフルオロ-1,3-ジメチルシクロヘキサンを含む第2のシリンダーが上部に取り付けられた。スカベンジャー供給系の鋼製シリンダーが、200μlのトリエチルアルミニウム及び5mlの乾燥ペンタンで満たされた。グローブボックスの外側で、該供給シリンダーが該反応器に取り付けられ、そして接続部が窒素でフラッシュされた。反応器温度が20℃に制御された。該スカベンジャー供給系の含有物が窒素超過圧力で該反応器にフラッシュされた。次に、水素の所望量(表3を参照されたい)、引き続き、1100gの液体プロピレンが、該反応器に供給された。撹拌速度が400rpmに設定された。該反応器温度が20℃に安定化され、そして最低5分後に、下記に記載されている通りに該反応器に該触媒を注入することによって、重合が開始された。該触媒供給系の2つのシリンダー間のバルブが開かれ、そして該触媒が次に、窒素超過圧力で該反応器に直ちにフラッシュされた。該供給系が窒素で3回加圧され、該反応器にフラッシュされた。反応器への総窒素ロードは、約0.42molであった。
【0310】
20℃で5分の予備重合後、該反応器温度が70℃に15分にわたって上昇された。該重合が70℃で60分間続けられ、そして次に、該反応器を正常圧にフラッシュすることによって停止された。ポリマーが、窒素で数回該反応器をフラッシュした後に集められ、定質量が達成されるまで乾燥する為に放置され、そして次に、収率を記録する為に秤量された。
【0311】
下記の式に従って60分の期間に基づいて、触媒活性が計算された:
【0312】
【数1】
【0313】
重合条件及び結果が、表3に開示されている。
【0314】
【表6】
【0315】
本発明の新規なメタロセンで得られた全体的な性能が、比較例を用いるよりも良好である:単独重合における高い活性、良好なホモポリマー溶融温度及び良好な分子量能力。
【0316】
シリカ担持メタロセン触媒(比較例の重合例PCE2及びPCE3;本発明の重合例PIE2及びPIE3)を使用する、プロピレンの単独重合及びヘキセンとのプロピレンの共重合
ヘキセン供給
ヘキセンがM-Braun溶媒ステーション(solvent station)で精製され、固定ラインを介してシリンジポンプに移され、そして次に、シリンジポンプを介して反応器に供給された後に、トリエチルアルミニウムを添加した。
【0317】
75℃でバルクでのhPP又はC3C6
0.2バールgのプロピレン含む20.9dm3の総体積を有する、リボン攪拌機を備えたステンレス鋼反応器が、追加の4.45kgのプロピレン及び選択量の1-ヘキセンで満たされる。トリエチルアルミニウム(n-ヘプタン中の0.8mlの0.62モル溶液)が、250gのプロピレンの流れを使用して添加され、次に、1.44NLのH2が、質量流量制御器を介して1分で添加される。反応器温度が20℃で安定化され(HB-Therm)、そして該溶液は250rpmで、少なくとも20分間撹拌された。
【0318】
所望量の固体触媒が、グローブボックス内で5mlのステンレス鋼バイアルにロードされ、次に、4mlのn-ヘプタンを含み且つ10バールの窒素で加圧された第2の5mlのバイアルが、その上部に添加される。このデュアル供給系が、オートクレーブの蓋上のポートに取り付けられる。該2つのバイアル間のバルブが開けられ、そして固体触媒がn-ヘプタンとN2圧力下で2秒間接触され、そして次に、250gのプロピレンを有する反応器にフラッシュされる。撹拌速度が250rpmで維持され、そして予備重合が10分間20℃で実行される。次に、重合温度が75℃に増加される。反応器温度が該重合を通じて一定に維持される。重合時間は、該温度が、設定された重合温度よりも2℃低くなった場合に開始して測定される。60分の該重合時間が経過した場合、反応は、5mlのエタノールを注入し、該反応器を冷却し、そして揮発性成分を同時にフラッシュすることによって停止される。N2及び1回の真空/N2サイクルで3回、該反応器をパージした後、該反応器が開けられ、ポリマー粉末が取り出され、それからドラフト内で一晩乾燥される。100gの該ポリマーは、0.5重量%のIrganox B225(アセトン中に溶解させた)を加えられ、そして次に、ドラフト内にて一晩、及びさらに1時間、真空乾燥オーブン内にて60℃で乾燥される。結果は表4A及び4Bに開示されている。
【0319】
【表7】
【0320】
【表8】
【0321】
結果から見ることが出来る通り、本発明の触媒を用いた触媒活性及びMC-活性は、プロピレン単独重合及びヘキサンとのプロピレンの共重合の両方において、より高い。加えて、本発明の実施例のポリマーのMFR2はより低く、該ポリマーのより高い分子量を示す。
【0322】
シリカ担持メタロセン触媒を使用する、プロピレンの単独重合及びエチレンとのプロピレンの共重合(異相コポリマー)
(比較例の重合例PCE3、PCE4及びPCE5;本発明の重合例PIE4)
工程1:予備重合及びバルク単独重合
0.2バールgのプロピレンを含む20.9dm3の総体積を有する、リボン攪拌機を備えたステンレス鋼反応器が、追加の3950gのプロピレンで満たされる。トリエチルアルミニウム(ヘプタン中の0.80mlの0.62モル溶液)が、追加の240gのプロピレンによって該反応器に注入され、次に、2.0NLの水素が質量流量制御器を介して1分で添加される。溶液が、20℃及び250rpmで、少なくとも20分間撹拌される。所望量の固体触媒が、グローブボックス内で5mlのステンレス鋼バイアルにロードされ、そして10バールの窒素で加圧された4mlのn-ヘプタンを含む第2の5mlのバイアルが、第1のバイアルの上部に追加された。この触媒供給系が、該反応器の蓋上のポートに取り付けられ、該2つのバイアル間のバルブが開かれ、そして該固体触媒が、2秒間窒素圧力下でヘプタンと接触され、次に、240gのプロピレンを有する該反応器にフラッシュされる。予備重合が10分間実行される。予備重合工程の最後に、温度が80℃に上昇された。一部の実験において、内部の反応器温度が75℃に達した場合、追加の水素が(値について表を参照されたい)、質量流量制御器を介して1分で供給される。該反応器温度が、該重合を通じて80℃で一定に維持される。重合時間は、内部の反応器温度が、設定された重合温度よりも2℃低くなった場合に開始して測定される。
【0323】
工程2:
気相エチレン-プロピレン共重合
単独重合工程が完了した後、攪拌機速度が50rpmに下げられ、及び圧力が、モノマーをベントすることによって0.3バールgに下げられる。次に、トリエチルアルミニウム(ヘプタン中の0.80mlの0.62mol/l溶液)が、鋼バイアルを介して追加の250gのプロピレンによって該反応器に注入される。次に、該圧力が再び、該モノマーをベントすることによって0.3バールgに下げられる。該攪拌機速度が180rpmに設定され、及び該反応器の温度が70℃に設定される。次に、該反応器の圧力が、下記によって定義されている組成のC3/C2ガス混合物を供給することによって、20バールgに上げられる:
【0324】
【数2】
【0325】
ここで、C2/C3は、2つのモノマーの重量比であり、且つRは、実験的に決定された、それらの反応性比である。本実験において、R=0.50。
【0326】
該温度がサーモスタットによって一定に維持され、且つ該圧力が、質量流量制御器を介して、目標のポリマー組成物に対応する組成のC3/C2ガス混合物を供給することによって、この工程の為の設定持続期間が経過するまで一定に維持される。
【0327】
次に、該反応器が約30℃に冷却され、そして揮発性成分がフラッシュアウトされる。N2そして1回の真空/N2のサイクルの3回で反応器をパージした後、生成物が取り出され、そしてドラフト内で一晩乾燥された。100gのポリマーが、0.5重量%のIrganox B225(アセトン中の溶液)で添加され、そしてフード内で一晩乾燥され、引き続き、60℃の真空乾燥オーブンで2時間乾燥された。結果が、下記の表5及び表6に開示されている。
【0328】
【表9】
【0329】
【表10】
【0330】
本発明の実施例PIE4は、明らかに、比較例PCE4~PCE6よりも良好な全体的且つMC生産性を示す。さらに、本発明の実施例におけるIVは、比較例におけるよりも同様の量のエチレンを用いてより高い。