IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルコン インコーポレイティドの特許一覧

特許7297783デジタル顕微鏡のための自動XYセンタリング
<>
  • 特許-デジタル顕微鏡のための自動XYセンタリング 図1
  • 特許-デジタル顕微鏡のための自動XYセンタリング 図2
  • 特許-デジタル顕微鏡のための自動XYセンタリング 図3
  • 特許-デジタル顕微鏡のための自動XYセンタリング 図4A
  • 特許-デジタル顕微鏡のための自動XYセンタリング 図4B
  • 特許-デジタル顕微鏡のための自動XYセンタリング 図4C
  • 特許-デジタル顕微鏡のための自動XYセンタリング 図5
  • 特許-デジタル顕微鏡のための自動XYセンタリング 図6
  • 特許-デジタル顕微鏡のための自動XYセンタリング 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】デジタル顕微鏡のための自動XYセンタリング
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/13 20060101AFI20230619BHJP
   A61F 9/007 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
A61B3/13
A61F9/007 200C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020550604
(86)(22)【出願日】2019-04-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 IB2019052783
(87)【国際公開番号】W WO2019197951
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-03-16
(31)【優先権主張番号】62/656,079
(32)【優先日】2018-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ティー.チャールズ
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-200667(JP,A)
【文献】国際公開第2016/098300(WO,A1)
【文献】特表2014-512922(JP,A)
【文献】特表2017-526507(JP,A)
【文献】特開2012-152469(JP,A)
【文献】特開平05-176897(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00740179(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0133112(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科手術中に高倍率下で患者の眼の視野をXY面内で自動的にセンタリングするように構成されたシステムであって、
プロセッサと;
前記プロセッサにより実行可能な指示を含む前記プロセッサにアクセス可能な非一時的コンピュータ可読媒体と、を含むシステムにおいて、前記指示は、
顕微鏡により高倍率下で前記患者の眼を含む視野を表すリアルタイムビデオ信号を光センサから取得するための指示であって、前記視野は正面向きXY面を含む、指示と;
前記リアルタイムビデオ信号に対応する前記視野内の少なくとも1つのビューをディスプレイ上に表示するための指示と;
前記リアルタイムビデオ信号内の円状画像を検出するための指示であって、前記円状画像は前記視野内の標的画像を含む、指示と;
前記視野の前記XY面内の円形の中心の位置を判断するための指示と;
前記XY面内の前記視野の中心の前記位置を判断するための指示と;
前記円状画像の中心の前記位置と前記視野の中心の前記位置とを比較するための指示と;
前記円状画像の中心の前記位置と前記視野の中心の前記位置との差を判断すると、前記XY面内の前記顕微鏡視野の前記位置を移動するように構成された電動顕微鏡支持体へ移動指示を送信するための指示であって、前記移動指示は前記視野の中心を前記円状画像の中心の前記位置に置くように前記顕微鏡視野の移動を指示し;これにより、眼科手術中に高倍率下で前記患者の眼の前記視野から取得される前記リアルタイムビデオ信号内に検出された前記円状画像の中心へ前記視野の中心を自動的に移動する、指示であり、
拡大は一定値を有するズームを有し、前記ディスプレイは一定エリアを有し、前記システムはさらに、
前記非一時的コンピュータ可読媒体内に含まれる指示を前記プロセッサが実行することにより前記円状画像の径を検出することと;
前記検出された前記円状画像の径が前記ディスプレイの領域の最大部分に収まるように前記拡大の前記ズームの値を調節する指示を、前記非一時的コンピュータ可読媒体内に含まれる指示を前記プロセッサが実行することにより送信することとを含み;
前記ズームの値を調節する前記指示の前記送信することは、(a)前記顕微鏡の前記視野の光学ズームを調節するために指示を前記顕微鏡へ送信すること;及び(b)前記リアルタイムビデオ信号の前記視野のデジタルズームを調節するために指示を前記ディスプレイへ送信することから選択される、システム。
【請求項2】
前記視野の中心は前記ディスプレイ上の設定位置に対応する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ディスプレイ上の前記設定位置は前記ディスプレイの中心である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ディスプレイは長方形ディスプレイであり、前記ディスプレイ上の前記設定位置は前記長方形ディスプレイの長辺間の中点における位置である、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記円状画像は前記眼の瞳を通じて見える前記患者の眼の内部の照明された部分に対応する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
電動顕微鏡ヘッド支持体へ送信される前記移動指示は速度のパラメータを含み、前記速度の値は前記視野の中心の前記位置と前記円状画像の中心との間の距離に応じて可変である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記移動指示の前記速度の値は前記視野の中心の前記位置と前記円状画像の中心との間の距離の増加と共に増加する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記移動指示の前記速度の値は直線的に増加する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記移動指示の前記速度の値は非直線的に増加する、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記円状画像の前記検出のために前記プロセッサにより実行される前記非一時的コンピュータ可読媒体に含まれる前記指示は円Hough変換アルゴリズムを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記眼科手術は硝子体網膜手術を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記リアルタイムビデオ信号は3Dビデオ信号である、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
NGENUITY(登録商標)3D可視化システムを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
請求項1から請求項13の何れか1項に記載のシステムによって、眼科手術中に高倍率下で患者の眼の視野をXY面内で自動的にセンタリングする方法であって、
顕微鏡により高倍率下で前記患者の眼を含む視野を表すリアルタイムビデオ信号を、非一時的コンピュータ可読媒体に含まれる指示を実行するプロセッサにより光センサから取得する工程であって、前記視野は正面向きXY面を含む、工程と;
前記非一時的コンピュータ可読媒体に含まれる指示を実行する前記プロセッサを介し、前記リアルタイムビデオ信号に対応する前記視野内の少なくとも1つのビューをディスプレイ上に表示する工程と;
前記非一時的コンピュータ可読媒体に含まれる指示を実行する前記プロセッサにより前記リアルタイムビデオ信号内の円状画像を検出する工程であって、前記円状画像は前記視野内の標的画像を含む、工程と;
前記視野の前記XY面内の前記円状画像の中心の前記位置を、前記非一時的コンピュータ可読媒体に含まれる指示を実行する前記プロセッサにより判断する工程と;
前記XY面内の前記視野の中心の前記位置を、前記非一時的コンピュータ可読媒体に含まれる指示を実行する前記プロセッサにより判断する工程と;
前記円状画像の中心の前記位置と前記視野の中心の前記位置とを前記非一時的コンピュータ可読媒体に含まれる指示を実行する前記プロセッサにより比較する工程と;
前記円状画像の中心の前記位置と前記視野の中心の前記位置との差を判断すると、前記XY面内の前記顕微鏡視野の位置を移動するように構成された電動顕微鏡支持体へ移動指示を、非一時的コンピュータ可読メモリに含まれる指示を実行する前記プロセッサにより送信する工程であって、前記移動指示は前記視野の中心を前記円状画像の中心の前記位置に置くように前記顕微鏡視野の移動を指示し;これにより、眼科手術中に高倍率下の前記患者の眼の前記視野から取得される前記リアルタイムビデオ信号内に検出された前記円状画像の中心へ前記視野の中心を自動的に移動する、工程と、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は眼科手術に関し、具体的には、眼科手術中に高倍率下で患者の眼の視野をXY面内で自動センタリングすることを可能にするように構成された方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
眼科では、眼科手術は、毎年何万もの患者の視力を救い改善する。しかし、眼の小変化にすら対する視力の感度と多くの眼構造の繊細且つ微妙な性質を考えると、眼科手術は行うのが困難であり、些細な又はまれな手術誤りの低減又は外科技術の精度の僅かな改善ですら手術後の患者の視力に非常に大きな差を生じ得る。
【0003】
眼科手術中、外科医は、手術されている患者の眼又は眼の一部分の視覚化したものを拡大するために顕微鏡を使用する。眼科手術中、外科医は顕微鏡により拡大されている眼又はその一部を視るために接眼レンズ(そうでなければ接眼鏡として知られる)を使用し得る。代替的に又は加えて、眼科手術中、顕微鏡により拡大される眼又はその一部分の画像は外科医及び手術室内の他の要員により見える画面上に表示され得る。しかし、眼科手術中の画面上の拡大画像の表示の制御の改善はチャレンジングなままである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、眼科手術中に高倍率下で患者の眼の視野をXY面内で自動的にセンタリングするように構成されたシステムを提供する。本システムは、プロセッサと;プロセッサにより実行可能な指示を含むプロセッサにアクセス可能な非一時的コンピュータ可読媒体とを含み、上記指示は、顕微鏡により高倍率下で患者の眼を含む視野を表すリアルタイムビデオ信号を光センサから取得するための指示であって、視野は正面向きXY面を含む、指示と;リアルタイムビデオ信号に対応する視野内の少なくとも1つのビューをディスプレイ上に表示するための指示と;リアルタイムビデオ信号内の円状画像を検出するための指示であって、円状画像は視野内の標的画像を含む、指示と;視野のXY面内の円状画像の中心の位置を判断するための指示と;XY面内の視野の中心の位置を判断するための指示と;円状画像の中心の位置と視野の中心の位置とを比較するための指示と;円状画像の中心の位置と視野の中心の位置との差を判断すると、XY面内の顕微鏡視野の位置を移動するように構成された電動顕微鏡支持体へ移動指示を送信するための指示であって、移動指示は視野の中心を円状画像の中心の位置に置くように顕微鏡視野の移動を指示し;これにより、眼科手術中に高倍率下で患者の眼の視野から取得されるリアルタイムビデオ信号内に検出された円状画像の中心へ視野の中心を自動的に移動する、指示である。
【0005】
本開示はまた、眼科手術中に高倍率下で患者の眼の視野をXY面内で自動的にセンタリングする方法を提供する。本方法は、顕微鏡により高倍率下で患者の眼を含む視野を表すリアルタイムビデオ信号を、非一時的コンピュータ可読媒体に含まれる指示を実行するプロセッサにより光センサから取得する工程であって、視野は正面向きXY面を含む、工程と;非一時的コンピュータ可読媒体に含まれる指示を実行するプロセッサを介し、リアルタイムビデオ信号に対応する視野内の少なくとも1つのビューをディスプレイ上に表示する工程と;非一時的コンピュータ可読媒体に含まれる指示を実行するプロセッサによりリアルタイムビデオ信号内の円状画像を検出する工程であって、円状画像は視野内の標的画像を含む、工程と;視野のXY面内の円状画像の中心の位置を、非一時的コンピュータ可読媒体に含まれる指示を実行するプロセッサにより判断する工程と;XY面内の視野の中心の位置を、非一時的コンピュータ可読媒体に含まれる指示を実行するプロセッサにより判断する工程と;円状画像の中心の位置と視野の中心の位置とを、非一時的コンピュータ可読媒体に含まれる指示を実行するプロセッサにより比較する工程と;円状画像の中心の位置と視野の中心の位置との差を判断すると、XY面内の顕微鏡視野の位置を移動するように構成された電動顕微鏡支持体へ移動指示を、非一時的コンピュータ可読メモリに含まれる指示を実行するプロセッサにより送信する工程であって、移動指示は視野の中心を円状画像の中心の位置に置くように顕微鏡視野の移動を指示し;これにより、眼科手術中に高倍率下で患者の眼の視野から取得されるリアルタイムビデオ信号内に検出された円状画像の中心へ視野の中心を自動的に移動する、工程と、を含む
【0006】
開示される実施形態のうちの任意の実施形態において、本システム及び方法は以下の詳細をさらに含み得る:
i)視野の中心はディスプレイ上の設定位置に対応し得る;
ii)ディスプレイ上の設定位置はディスプレイの中心であり得る;
iii)ディスプレイは長方形ディスプレイであり得、ディスプレイ上の設定位置は長方形ディスプレイの長辺間の中点における位置であり得る;
iv)円状画像は眼の瞳を通して見える患者の眼の内部の照射された部分に対応し得る;
v)電動顕微鏡ヘッド支持体へ送信される移動指示は速度のパラメータを含み得、速度の値は視野の中心の位置と円状画像の中心との間の距離に応じて可変である;
vi)移動指示の速度の値は視野の中心の位置と円状画像の中心との間の距離の増加と共に増加し得る;
vii)移動指示の速度の値は直線的に増加し得る;
viii)移動指示の速度の値は非直線的に増加し得る;
ix)拡大はある値を有するズームを有し得;ディスプレイはあるエリアを有し得;本方法はさらに、非一時的コンピュータ可読媒体内に含まれる指示をプロセッサが実行することにより円状画像の径を検出する工程と;検出された円状画像の径がディスプレイの上記領域の最大部分に収まるように拡大のズームの値を調節する指示を、非一時的コンピュータ可読媒体内に含まれる指示をプロセッサが実行することにより送信する工程とを含み;ズームの値を調節する指示の送信は以下のことから選択される:(a)顕微鏡の視野の光学ズームを調節する指示を顕微鏡へ送信すること;及び(b)リアルタイムビデオ信号の視野のデジタルズームを調節する指示をディスプレイへ送信すること;
x)円状画像の検出のためにプロセッサにより実行される非一時的コンピュータ可読媒体に含まれる指示は円Hough変換アルゴリズムを含み得る;
xi)眼科手術は硝子体網膜手術を含み得る;
xii)リアルタイムビデオ信号は3Dビデオ信号であり得る;及び
xiii)本システムはNGENUITY(登録商標)3D可視化システムを含み得る。
【0007】
本開示をより完全に理解するために添付図面と併せて以下の説明が次に参照される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、硝子体網膜外科的処置を受けている眼の側面図を示す例示的概略図である。
図2図2は、例示的硝子体網膜外科的処置を受けている眼の正面図に対応する例示的トップダウン図を示す概略図である。
図3図3は、眼科手術中にデジタル顕微鏡により眼の拡大像内に検出される円のXY位置の自動センタリングのために構成された例示的システムの概略図である。
図4A図4Aは、眼科手術中の拡大下で眼の画像内に検出された円上にオーバーレイされたXY面の例示的概略図である。
図4B図4Bは、眼科手術中の拡大下で眼の画像内に検出された円上にオーバーレイされたXY面の別の例示的概略図である。
図4C図4Cは、眼科手術中の拡大下で眼の画像内に検出された円上にオーバーレイされたXY面のさらに別の例示的概略図である。
図5図5は、例示的ディスプレイの垂直広がりの中心に位置する例示的な検出された円の概略図である。
図6図6は、画像内の例示的円形を示す概略図である、
図7図7は、円Hough変換に関係する例示的画像を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の明細書では、詳細が開示主題の論述を容易にするために一例として説明される。しかし、開示される実施形態は例示的であり、すべての可能な実施形態を網羅しないということは当業者にとって明らかなはずである。
【0010】
本開示は眼科手術に関し、具体的には、眼科手術中に高倍率下で患者の眼の視野をXY面内で自動センタリングすることを可能にする方法と本方法を行うように構成されたシステムとに関する。
【0011】
眼科手術は眼と補助的視覚構造とに対し行われる。例えば、硝子体網膜手術は、硝子体液及び網膜などの眼の内部部分に関わる様々な微妙な処置を包含する。網膜は、鮮明且つ詳細な視覚を提供する光感知細胞で作られる網膜黄斑を含む光感知領域である。眼の硝子体液は網膜と水晶体との間の空間を埋める透明ゲルである。網膜、網膜黄斑、及び硝子体はすべて、盲目又は失明に至り得る様々な病気及び条件に晒され得、硝子体網膜外科医の注意を必要とし得る。
【0012】
様々な硝子体網膜外科的処置が、とりわけ網膜前膜、糖尿病性網膜症、硝子体出血、黄斑円孔、網膜剥離、及び白内障手術の複雑性を含む多くの眼疾患の治療において視覚性能を改善するために時折レーザと共に使用される。
【0013】
眼科手術はしばしば眼組織の除去に関与する。例えば、白内障手術は一般的に水晶体の除去及び交換を必要とする。このとき、人工水晶体又は眼内水晶体インプラントが患者の視力を回復又は改善するために眼内に移植され得る。他の処置もまた水晶体組織及び/又は他のタイプの眼組織の除去に関与し得る。
【0014】
眼組織の除去のために開発されてきた多くの処置及び装置がある。例えば、水晶体超音波乳化吸引術は、病気の又は破損された水晶体組織の除去のために広く使用される方法である。水晶体超音波乳化吸引術処理は通常、白内障手術において水晶体をばらばらにして除去するために小さな角膜切開部を通るプローブの挿入に関与する。
【0015】
水晶体超音波乳化吸引術では、1つ又は複数の切開部が通常、外科手術器具の導入を可能にするために眼内に作られる。次に、外科医は眼の内部の水晶体を含む嚢の前面を除去する。先端が超音波周波数で振動する超音波ハンドピースが白内障を彫り乳化するために通常使用される。白内障の除去後、後部嚢は一般的には依然として手をつけられていなく、眼内水晶体インプラント(IOL:intraocular lens implant)は残る水晶体嚢内に置かれ得る。
【0016】
眼科手術中、眼構造の小型及び微妙な性質のために、外科医は通常、手術されている患者の眼又は眼の一部分の視覚化したものを拡大するために顕微鏡を使用する。一般的に、過去には、眼科手術中、外科医は顕微鏡により拡大されている眼又はその一部分を視るために接眼レンズ(そうでなければ接眼鏡として知られる)を使用した。眼科手術中、両眼視のために両眼により同時に見える2つの接眼レンズを有する実体顕微鏡が通常使用される。いくつかの眼科手術処置は行うのに数時間かかり得、したがって以前は、眼科手術中、眼科医は何時間もぶっ通しで顕微鏡の双眼接眼レンズを通して見ることをしばしば要求されただろう。
【0017】
最近、眼科手術中に接眼レンズを使用することの代案として又はそれに加えて、デジタル顕微鏡の発展は、顕微鏡により拡大される眼又はその一部分の画像が外科医及び手術室内の他の要員により見える画面上に表示さることを可能にした。ディスプレイ画面を使用する恩恵の中でも、顕微鏡接眼レンズを使用することではなく、眼科手術中に眼構造を見えるようにすることは外科医の疲労の低下及び快適性の増加を含む。加えて、顕微鏡接眼レンズとは異なり、ディスプレイは一度に2人以上の人により視られ得るので、ディスプレイの使用は、教えるのに役立ち、且つ、手術室内の要員間の外科的処置に関するコミュニケーションを改善する。
【0018】
本明細書において説明される方法及びシステムへ適用可能なデジタル顕微鏡及びディスプレイ画面を利用する眼科手術視覚化プラットホームは通常、顕微鏡による拡大下で眼の複数の光学的ビューを受信及び取得することができるカメラ又は電荷結合素子(CCD)などの少なくとも1つの高解像度光センサを含む。当業者は、通常の可視光の波長外の波長に加え可視波長内の光も受信することもまた本発明の範囲内であるということを理解するだろう。一般的に、このとき、高解像度光センサはその結果のリアルタイム高解像度ビデオ信号を送信する。このリアルタイム高解像度ビデオ信号は、非一時的コンピュータ可読媒体に含まれる指示を実行するプロセッサを介し少なくとも1つの高解像度ビデオディスプレイへ送信される。いくつかの構成では、送信されディスプレイ上に存在する複数の高解像度光学的ビューのおかげで、視覚化プラットホームの操作者、又は他の者は、標的物体又は組織のリアルタイム高精細度三次元視覚像を視ることができる。
【0019】
本明細書において説明されるシステムを実現するとともに方法を実行するのに好適な例示的リアルタイム視覚化プラットホームは、そのすべてを参照により本明細書に援用する米国特許第9,168,173号明細書、米国特許第8,339,447号明細書及び米国特許第8,358,330号明細書に記載されるものを含む。
【0020】
本明細書で使用される用語「ディスプレイ」は静止画像又はビデオ画像を表示することができる任意の装置を指す。好適には、本開示のディスプレイは、標準精細度(SD:standard definition)信号より高いレベルの詳細を外科医に提供する高精細度(HD:high definition)静止画像及びビデオ画像又はビデオを表示する。より好適には、ディスプレイはこのようなHD静止画像及び画像を三次元(3D)で提供する。例示的ディスプレイはHDモニタ、陰極線管、投射画面、液晶ディスプレイ、有機発光ダイオードディスプレイ、プラズマディスプレイパネル、発光ダイオード(LED)又は有機LED(OLED)、これらの3D等価物、等々を含む。3D HDホログラフィック表示システムは本開示の範囲内であると考えられる。
【0021】
本明細書において説明される視覚化プラットホームは少なくとも1つの高解像度光センサを含む。光センサは、光に応答して電気信号を生成する、すなわち光を電気信号へ変換する電磁センサであり、電気信号は信号処理又は他の操作のために受信器へ送信され最終的には計器又は観察者により読み出され得る。光センサは、電磁スペクトルを形成する光の波長のいくらか又はすべてに応答することができる又はそれを検出することができるかもしれない。代替的に、光センサは可視光の波長外の光の少なくとも1つの波長を含むより制限された範囲の波長に敏感であり得る。
【0022】
本明細書において説明される視覚化プラットホームが含み得る光センサの例はカメラである。カメラは画像をスチール写真又は一連の動画(映画又はビデオ)のいずれかとして捕捉するために使用される装置である。カメラは通常、光が入射する一端に開口を有する閉ざされた空洞と、他端において光を捕捉するための記録面又は表示面とで構成される。記録面は化学的なもの(膜のように)又は電子的なものであり得る。カメラは、入力光を収集し記録面上の画像のすべて又は一部を合焦させるためにカメラの開口の前に位置するレンズを有し得る。開口の径はしばしば絞り機構により制御されるが、代替的に、適切な場合、カメラは固定サイズ開口を有する。
【0023】
本開示による例示的電子的光センサは、限定しないが相補型金属酸化膜半導体(CMOS)センサ又は電荷結合素子(CCD)センサを含む。両タイプのセンサは光を捕捉しこれを電気信号へ変換する機能を行う。CCDはアナログ装置である。CCDにぶつかると、光は小さな電荷として保持される。この電荷は、CCDから読み出されるときに一度に1画素ずつ電圧へ変換される。CMOSチップは、CMOS半導体プロセスを使用して作られる一種の能動画素センサである。各光センサの隣に通常位置する電子回路系が受信された光エネルギーを電圧へ変換し、次に、追加の回路系がこの電圧を送信又は記録され得るデジタルデータへ変換する。
【0024】
送信されるリアルタイム高解像度ビデオ信号は離散信号のデジタル表現であるデジタルビデオ信号であり得る。しばしば、デジタル信号はアナログ信号から導出される。当業者により理解されるであろうように、離散信号はアナログ信号のサンプリングされたバージョンであり、ここでは、データムの値が連続的にではなく一定間隔(例えば、マイクロ秒毎に)で表される。離散信号の個々の時間値が精密に測定される(無限数の桁を必要とするだろう)代わりに一定精度で近似される(したがって特定数の桁を必要とするだけ)場合、その結果のデータストリームは「デジタル」信号と称される。固定数の桁(又はビット)内の精密な値を近似する処理は量子化と呼ばれる。したがって、デジタル信号は量子化された離散信号であり、ひいてはサンプリングされたアナログ信号である。デジタル信号は2進数として表され得るので、量子化のそれらの精度はビットで測定される。
【0025】
標的物体の複数のビューを光センサ上へ導く実体顕微鏡などの可視化装置へ光センサを取り付けることにより、本明細書において説明される可視化システムは、眼科手術中に拡大された眼などの標的物体の複数の光学的ビューを取得し、そして、この情報を、表示する及び視るために記録又は提示され得るリアルタイム高解像度ビデオ信号として送信し得るということが当業者には認識される。いくつかの実施形態では、送信されたデジタルビデオ信号は、少なくとも約1280ライン×720ラインの分解能を有する画像を生成することができる。この分解能は、当業者が高精細度である又はHD信号であると考える典型的最低解像度に対応する。
【0026】
本明細書で使用される「リアルタイム」は通常、データが受信されるのと同じ速度での情報の更新を指す。具体的には、本発明の文脈では、「リアルタイム」は、画像データが光センサから高い十分なデータ速度及び十分に低い遅延で取得され、処理され、そして送信されるということと、データが表示される時に物体がユーザ知覚可能ジャダー又は待ち時間無しにスムーズに移動するということとを意味する。通常、これは、新しい画像が少なくとも約30フレーム/秒(fps)の速度で取得、処理、及び送信され、約60fpsで表示されると、そしてビデオ信号の組み合せ処理が1/30秒以下の遅延を有すると、発生する。
【0027】
高解像度ビデオ信号が受信され、対応高解像度又はHD能力を有するビデオディスプレイ上に提示されると、その結果の画像は、高い周囲可視光が無いと以前は達成不能な程度の明瞭性、詳細性及び制御を提供する。例示的画像ディスプレイは陰極線管、投射画面、液晶ディスプレイ、有機発光ダイオードディスプレイ、プラズマディスプレイパネル、及び発光ダイオードディスプレイを含む。
【0028】
本明細書において説明されるリアルタイム高解像度ビデオ信号が標的物体又は組織の複数のビューを含む場合、ビデオディスプレイは被写界深度が眼科医へ提示されるように3次元(「3D」)にされ得る。例示的タイプの高解像度3Dビデオディスプレイは、TrueVision Systems,Inc.により開発されたものなど偏光メガネを使用する立体視3Dディスプレイを含む。代替的に、各眼へ異なる像を導くためにいかなる特殊眼鏡又は他のヘッドギアの使用も必要としない自動立体視3Dディスプレイが使用され得る。同様に、ホログラフィック3Dディスプレイも本開示の範囲内のものとして企図される。
【0029】
眼科手術中の視覚化のためのディスプレイ画面を利用するデジタル顕微鏡検査のシステムの例は、Alcon Laboratories NGENUITY(登録商標)3D Visualization System(Alcon,Inc. Corporation Switzerland,Hunenberg Switzerland),Digitally Assisted Vitreoretinal Surgery(DAVS)のプラットホームを含む。特に、NGENUITY(登録商標)システムは、改善された外科医体験のために眼の後部の視覚化を強化するように設計される。NGENUITY(登録商標)システムはTrueVision(登録商標)3D Surgical(TrueVision Systems,Inc.Goleta California)と共同で開発されたシステムを指す。NGENUITY(登録商標)3D可視化システムは、網膜外科医が顕微鏡の接眼レンズを通して見るために自身の首を曲げる代わりに高精細度3D画面を見ながら手術することを可能にする。伝統的硝子体切除術手術は完了するのに30分から3時間超までの長さの範囲に渡る。この顕微鏡接眼レンズ無し設計は外科医の姿勢を改善するために設計されており、疲労を低減し得る。
【0030】
NGENUITY(登録商標)3D可視化システムは、高解像度、画像奥行き、明瞭性及び色コントラストを提供する高ダイナミックレンジ(HDR:High Dynamic Range)カメラを含むいくつかの要素を含む。HRDは、超微細手術中に物体の拡大された立体鏡像を提供するように構成された3D立体視高解像度デジタルビデオカメラである。このビデオカメラは、手術中の外科用顕微鏡への追加として機能し、そして記録からリアルタイム画像又は画像群を表示するために使用され得る。特に、三次元ビューにより、外科医は標準テレビモニタ上に以前は利用可能でなかった奥行き知覚を有する。外科医はまた、各処置中に広視野を維持するだけでなくそれらのビューをカスタム化するためにデジタルフィルタを使用し、そして眼の後部を見えるようにするのに必須である眼構造及び組織層をハイライトする間倍率を増加し得る。患者の眼への光暴露を最小化することに特に焦点を合わせた技術的工夫により、NGENUITY(登録商標)3D可視化システムはより低い光レベルを使用して手術することを容易にする(Eckardt C and Paulo EB.Heads-up surgery for vitreoretinal procedures:An Experimental and Clinical Study.Retina.2016 Jan;36(1):137-47)。
【0031】
眼科手術中に画面上に拡大画像を表示する本明細書において説明される利点にもかかわらず、眼科手術中の画面上の拡大画像の表示の制御の改善はチャレンジングなままである。
【0032】
例えば、外科医から一定距離(例えば122~183センチメートル(4~6フィート))においてNGENUITY(登録商標)55インチOLEDディスプレイなどのディスプレイの全広がりを利用するためには高倍率が必要である。手術中、外科医が視ようとする眼又は眼の一部分の位置は、正面向き視野に対応するXY面内の顕微鏡視野の位置に対して移動し得る。移動は、手術中の患者の移動又は手術中の眼組織の操作に関連する移動によるものである。したがって、外科医が視ようとする眼の一部を顕微鏡の視野内に維持するために、XY面内の顕微鏡の位置は、顕微鏡の視野が外科医が視ようとする眼の当該部分の位置と再アライメントされるように再配向されなければならない。特に、手術中に使用される高倍率は「手術中の小移動ですら顕微鏡の視野に対する外科医が視ようとする眼の一部分の移動とその結果のディスプレイ画面から外れるリアルタイムビデオ画像の移動とに対応し得る」ということを意味する。これは、外科医がディスプレイ画面上に視ようとする眼の一部分を効果的に見えるようにすることができないという結果を有し得る。
【0033】
現在、画面上の拡大されたリアルタイムビデオ画像のセンタリングは通常、手動制御(顕微鏡支持アームと顕微鏡ヘッドとの間のボックス内でXYモータを駆動するためのフットスイッチジョイスティックの手動操作など)により行われる。特に、顕微鏡上のXY位置の非常に頻繁な外科医制御が高倍率のために必要とされる。加えて、拡大された円状ビデオ画像の位置の手動制御は不精確であり且つ問題であり得る。例えば、手動制御は、画面上の画像の準最適センタリング、又はリアルタイムビデオ画像が画面外に位置することに至り得る。加えて、フットスイッチジョイスティックの使用などの手動制御は手術中に外科医の手の不慮の運動を引き起こし得る。
【0034】
眼科手術中の微調整された制御のための必要性を所与として、外科技術に関するさらなる制御を提供するために眼科医により使用される機器の改善は患者の手術結果を改善すると期待される。
【0035】
本開示は一般的には、眼科手術中に外科医により視られる画面上の患者の眼の拡大ビデオ画像の自動センタリングに関する。
【0036】
本明細書において使用される用語「高倍率」は、当業者により識別可能である眼科手術(硝子体網膜手術など)中に通常使用され得る任意の値の又は範囲の倍率を指し得る。例えば、いくつかの実施形態では、例示的高倍率は、当業者により識別可能である範囲の中でも約2×~100×、又は約10×~40×、又は約10×~20×の範囲内の倍率値を指し得る。いくつかの実施形態では、高倍率は約20×の倍率値を指し得る。
【0037】
本明細書において説明されるシステム及び方法と共に使用され得る例示的外科用顕微鏡は、当業者により識別可能であるものの中でもZeiss OPMI(登録商標)Lumera T(Carl Zeiss Corporation,Germany)を含む。当業者により理解されるであろうように、好適な顕微鏡は例えば200mmの作動距離において約3.5×~21.0×の倍率範囲を特徴とし得、電動ズーム系は1:6ズーム比などの好適なズーム比、例えば約0.4~2.4の倍率係数γ、及び約50mmの合焦範囲を有する。
【0038】
電動ズーム系の全体倍率は、当業者により識別可能な係数の中でも顕微鏡及び光センサの因子(焦点長、電動ズーム系のズーム部品に関し設定された倍率、及び光センサの倍率など)を考慮することにより当業者により計算され得る。
【0039】
光学的及び/又はデジタル的ズーム能力を有する部品を含む方法及びシステムが本開示において企図される。
【0040】
一般的に、用語「自動」は眼科医などのユーザによる手動制御又は操作を必要としない行為又は処理を指すということが理解される。
【0041】
特に、患者の眼の高倍率画像に関連して本明細書において使用される用語「自動センタリング」は、本明細書に説明されるように、非一時的コンピュータ可読媒体内に含まれる指示を実行するコンピュータプロセッサにより行われる拡大された視野のセンタリングの制御を指し得る。
【0042】
一般的に、本明細書において説明されるのは、眼科手術中に患者の眼のリアルタイムビデオ内の円又はほぼ円状画像を検出し、そして、それに応じて、XY位置の顕微鏡の視野の移動を駆動し、その結果、対応高倍率円状ビデオ画像がディスプレイ画面上にセンタリングされるビデオ解析ソフトウェアを利用する方法及びシステムである。
【0043】
当業者により理解されるであろうように、眼科手術中の眼の拡大画像及び眼内の構造の拡大画像の検出に関して、本明細書で使用される用語「円」はほぼ円形を指し、そして楕円及びほぼ楕円形状を含み得る。
【0044】
特に、本明細書において説明される自動XY画像センタリング方法及びシステムは硝子体網膜手術などの眼の外科的処置に有用である。
【0045】
例えば、図1は硝子体網膜外科的処置を受けている眼の側面図を示す例示的概略図100である。概略図内に指示されるのは、切開部を介し眼内へ挿入される様々なツール(眼の硝子体ジェルをゆっくり制御されたやり方で除去する硝子体切断装置101を含む)である。また示されるのは、眼内の流体と生理食塩水とを交換して適切な眼圧力を維持するために使用されるカニューレ102である。また示されるのは、眼の内部に照明を提供する光パイプ103である。図1の例示的概略図において示されるような硝子体網膜手術中、眼科医は、瞳105を通して眼の内部部分を視るように向けられた顕微鏡を使用することにより網膜104の照射された部分を見えるようにする。
【0046】
図2は、図1の側面図に示される例示的処置と同様な例示的硝子体網膜外科的処置を受けている眼の例示的トップダウン図(正面図に対応する)を示す概略200である。概略図に指示されるのは、切開部を介し眼内へ挿入される様々なツール(硝子体切断装置201、カニューレ202、及び眼の内部に照明を提供する光パイプ203を含む)である。図2の例示的概略図において示されるような硝子体網膜手術中、眼科医は、その外形が点線円205として示される瞳を通して眼の内部部分を視るように向けられた顕微鏡を使用することにより網膜204の照射された部分を見えるようにする。
【0047】
硝子体網膜手術中、例えば、外科用顕微鏡の視野はしばしば網膜全体のうちの僅かな部分に制限される。通常、この僅かな部分は圧倒的に暗い背景上の網膜の小パッチとしてライブリアルタイムビデオ画像上に現われる。顕微鏡を介し眼科医により見えるパッチの形状は瞳の形状(通常は円盤又は楕円盤である)により決まる。例えば、画像は、網膜ビューが、上、下、左、又は右に回転される眼の楕円状瞳を通したものである場合は、楕円状であり得る。また、いくつかのケースでは、パッチの形状は、眼の虹彩の形状の変動に従って(例えば虹彩が無ければ、又は虹彩の構造の一部分が無ければ、又は例えば前の手術が虹彩の形状を変更していれば)円状画像からの変動を含み得る。眼の画像の照射された部分は、眼科医が外科的処置中にディスプレイ上で視ようとする「標的画像」と呼ばれ得る。手術中、照射されたパッチの位置は、正面向き視野に対応するXY面内の顕微鏡視野の位置に対して移動し得る。ほぼ円状に照射されたパッチの移動は手術中の患者の移動又は手術中の眼組織の操作に伴う移動に起因し得る。したがって、顕微鏡の視野内のほぼ円状に照明されたパッチの画像を維持するために、XY面内の顕微鏡の位置は、顕微鏡の視野が眼内の照明されたパッチの位置により再アライメントされるように再配向されなければならない。特に、手術中に使用される高倍率は「手術中の小移動ですら顕微鏡の視野に対する眼の照明されたパッチの移動とその結果のディスプレイの中心に対するリアルタイムビデオ画像の移動とに対応し得る」ということを意味する。これは、外科医がディスプレイ画面上の眼の照明されたパッチを効果的に見えるようにすることができないという結果を有し得る。本明細書で述べるように、現在、これは、本明細書に説明されるような不利益を有する顕微鏡の視野の手作業の再位置決めを必要する。この問題を解決するために、本明細書において説明される方法及びシステムはディスプレイ画面上の拡大された眼の画像の自動センタリングを可能にする。当業者により理解されるであろうように、本開示のシステム及び方法は眼内照明(endoillumination)を使用する眼科手術処置に好適であり、本明細書で使用される用語「眼内照明」は本明細書で説明され図1、2の例示的概略図に示されるような眼の内部の照明を指す。眼内照明を使用する際、眼の外部の顕微鏡光源などの外部顕微鏡照明光源は、眼内照明された眼の瞳を通じて円形状又は楕円形状として見える眼の照明された内部が眼内照明された眼の圧倒的に暗い照明されない外部と対照的となるようにオフされる。例えば、硝子体網膜手術を行うための例示的NGENUITY(登録商標)3D可視化システムを使用する際、眼の内部は眼内照明により見えるようにされ、外部顕微鏡光源はオフされる。
【0048】
本明細書において使用される用語「XY面」は、X軸及びY軸により定義される2次元空間を指し、X軸はY軸に対し垂直であり、X軸とY軸は原点と呼ばれる点において交差する。
【0049】
特に、本明細書で使用されるように、XY面は、通常は地面(又は手術室の床)とほぼ平行である面を指し得る。特に、XY面は、患者が手術台上で仰向けに横たわる間、眼科手術中に眼の上のほぼ水平である面を形成し得る。したがって、例えば、本明細書において使用される用語X軸は眼科医の位置に対し左右に配向された水平軸を指し得、例えば、本明細書において使用される用語Y軸は眼科医の位置に対し前-後方(又は遠-近方)に配向された水平軸を指し得る。顕微鏡と視野を表す対応リアルタイムビデオ画像とを介し見える眼の視野に関し、XY面はリアルタイムビデオ画像の正面向きビューの2次元空間に対応する。いくつかの実施形態では、リアルタイムビデオ信号は3Dビデオ信号であり、正面向きXY面の2次元に加えて、ビデオ信号はまた、XY面に垂直であるZ軸における視野の奥行きに対応するビデオデータを含む。
【0050】
XY面が座標グリッドを形成し得るということが理解され、座標はX軸上の値とY軸上の値との交差部により定義されるXY面内の位置を指し、これらの値は原点からの距離を指示し、原点は通常X=0及びY=0の座標により指示され得る。XY座標は一般的にはデカルト座標系(点の位置が、原点と呼ばれる点において交差する垂直線からのその距離を表す座標により与えられる系)に関係するということを当業者は理解するようになる。面内のデカルト座標系は、3つの軸(X軸、Y軸及びZ軸)を有する三次元空間内の2つの垂直線(X軸とY軸)を有する。
【0051】
図3は、眼科手術中にデジタル顕微鏡により眼の拡大画像内の検出された円のXY位置の自動センタリングのために構成された例示的システム300の概略図である。図3に示す眼科手術中にデジタル顕微鏡により眼の拡大画像内の検出された円のXY位置の自動センタリングのために構成されたシステム300は例示的であり非限定的であるということと、本開示の範囲内で作動するシステム300の他の構成が当業者により識別可能であるということとを理解すべきである。修正、追加又は省略は本開示の範囲から逸脱することなくシステム300に対しなされ得る。本明細書に説明されたシステム300の部品及び要素は特定アプリケーションに従って一体化されてもよいし分離されてもよい。システム300はいくつかの実施形態ではより多い、より少ない、又は異なる部品を使用して実現され得る。
【0052】
図3は瞳302を有する眼301を示す。顕微鏡303が示され、顕微鏡303の例示的視野304は点線により境界をつけられて示される。矢印317、318によりそれぞれ指示されるX軸、Y軸により形成されるXY面305が眼301の上にそして顕微鏡303の下に水平方向に示される。顕微鏡303は、顕微鏡303による眼の拡大画像がカメラ306により捕捉されることを可能にするように構成された電子的接続部307を介しカメラ306などの光センサと電子的に通信するように構成される。特に、カメラ306は高フレームレートで像を捕捉することができる高解像度ビデオカメラなどのビデオカメラである。カメラ306は、接続部309を介しプロセッサ308へ接続されそれと電子的に通信するように構成される。プロセッサ308は、カメラ306からデジタルリアルタイムビデオ画像データを受信しそれをディスプレイ311へ送信するために非一時的コンピュータ可読媒体310に含まれる指示を実行するように構成される。図3において、ディスプレイ311は、眼科手術中に眼の一部分の画像内に検出された円状拡大画像312を有して示される。例えば、ディスプレイ上に示される円状画像は、いくつか実施形態では、硝子体網膜手術中に眼301の瞳302を通じて顕微鏡視野に対して見える網膜の照明された部分の円状又は楕円状画像であり得る。プロセッサ308は接続部313を介し非一時的コンピュータ可読媒体310と電子的に通信し、プロセッサ308は接続部314を介しディスプレイ311と電子的に通信する。プロセッサ308は、カメラ306から受信されるデジタル画像データ内の円を検出するために非一時的コンピュータ可読媒体310に含まれる指示を実行するように構成される。電動顕微鏡ヘッド支持体315は、顕微鏡の視野をXY面内で調節するためにXY面305の座標に従って顕微鏡を水平方向に移動させるように構成される。電動顕微鏡ヘッド支持体315を介した顕微鏡の移動は非一時的コンピュータ可読媒体310からの指示を実行するプロセッサ308により制御される。特に、眼の拡大画像のデジタルリアルタイムビデオ画像データ内の円状画像を検出すると、非一時的コンピュータ可読媒体310に含まれる指示を実行するプロセッサ308は、円状画像の中心を顕微鏡303の視野304の中心に位置決めするために移動指示を電動顕微鏡ヘッド支持体315へ送信するように構成される。したがって、非一時的コンピュータ可読媒体310に含まれる指示を実行するプロセッサ308は、円状画像の中心をディスプレイ311の中心に位置決めするようにXY面に従って移動指示を電動顕微鏡ヘッド支持体315へ送信する。電動顕微鏡ヘッド支持体315による顕微鏡303の移動は接続部316を介する。
【0053】
図3に示す例示的システムは追加的に、ディスプレイ311へ送信される拡大ズーム、色、光度、コントラスト、輝度などなどの画像データの特徴を外科医が調節することを可能にするユーザ操作制御を有する制御パネル(図示せず)を含み得る。
【0054】
図4Aは、眼科手術中の拡大下で眼の画像内に検出された円401上にオーバーレイされたXY面403の例示的概略図400を示す。例えば、検出された円401は、図2において点線円205により描写されるような瞳の円形を通して見える眼の照明された内部部分であり得る。円401はベタ黒スポットとして描写される円中心402を有する。XY面403は、顕微鏡の視野の領域、具体的にはカメラにより捕捉された拡大像の視野の領域を指示する。X軸404及びY軸405により形成されるXY面403はXY座標のグリッドを有する。XY面は両軸に沿った点における交差線のグリッドとして描写されるが、XY面403はXY座標がX及びY軸に沿った任意のX及びY値を有し得るように連続的水平面場を形成するということを理解すべきである。視野は円又は正方形などの任意の形状を有し得る。例示的実施形態では、顕微鏡及びNGENUITY(登録商標)光学系視野絞りにより生成される視野は円状である。図4Aに示す例示的概略図では、XY面403は、眼科手術中に拡大下で眼を見えるようにするために使用される顕微鏡の視野上へオーバーレイされる水平面を指示する。図4Aでは、視野は小円により指示される視野中心406を有する。視野中心406の中心は線407と線408とにより交差されるXY座標(Xの座標値とYの座標値とをそれぞれ有する)に位置する。いくつかの実施形態では、視野中心406は視野の中心に位置する単一点であり得、一方、他の実施形態では、視野中心406は、円形エリアなどのエリアを有する領域であってもよいし、視野の中央領域を定義する任意の他の好適な形状を有する領域であってもよい。いくつかの実施形態では、視野中心406は、視野全体の1%、5%、10%又は20%など視野全体に対し設定されたサイズを有する領域であり得る。円中心はXの座標値とYの座標値とをそれぞれ有するXY座標を有する。図4Aでは、円中心402は視野中心406の中心と同じ位置に位置して示される。円中心402が視野中心406と同じ位置に位置すると、円中心402の座標と視野中心406の座標との差は無く、したがってX-Xの絶対値=0及びY-Yの絶対値=0である。
【0055】
図4Aと対照的に、図4Bでは、円中心402は視野406の中心に対して異なる位置に位置して示される。図4Bでは、視野中心406は線407と線408との交点により指示される座標X,Yに位置して示される。図4Bでは、円中心402は点線409と点線410との交点により指示される座標X,Yに位置して示される。円中心402が視野中心406として異なる位置に位置すると、円中心402の座標と視野中心406の座標とには差が有り、したがってX-Xの絶対値>0及び/又はY-Yの絶対値>0である。
【0056】
プロセッサ308は、円中心402及び視野中心406を検出するために非一時的コンピュータ可読媒体310に含まれる指示を実行するように構成される。プロセッサ308はまた、円中心402及び視野中心406のそれぞれのXY座標を計算するために、そして円中心402の座標と視野中心406の座標との差を検出するために、非一時的コンピュータ可読媒体310に含まれる指示を実行するように構成される。したがって、円中心402の座標と視野中心406の座標との差を検出すると、X-Xの絶対値>0及び/又はY-Yの絶対値>0の場合、非一時的コンピュータ可読媒体に含まれる指示を実行するプロセッサは、X-Xの絶対値=0及びY-Yの絶対値=0を生じるように視野中心406を円中心402と同じ位置に再位置決めするためにXY面に従って移動指示を電動顕微鏡ヘッド支持体315へ送信する。例えば、図4Bに示すように、視野中心406とは異なる座標を有する円中心402の位置を検出すると、非一時的コンピュータ可読媒体に含まれる指示を実行するプロセッサは、矢印411、412として描写されるように視野中心406を再移転するために移動指示を電動顕微鏡ヘッド支持体315へ送信する。
【0057】
視野中心406及び円中心402の座標は原点に対して計算される値であり得、原点はXY面のX軸とY軸との交差の点である。これらの値は任意の好適な単位の距離(mm又はμmなど)であり得る。プロセッサは原点に対する値などのXY面内の座標の値を計算するために非一時的コンピュータ可読媒体に含まれる指示を実行するように構成される。したがって、X座標及びY座標の値は原点からの距離の増加と共に増加する。したがって、視野中心406及び円中心402の位置が計算され得、XY面内の視野中心406と円中心402との相対位置が原点に対して計算され得る。したがって、例えば、図4A図4Bに示すように、原点が左側の近端方向に置かれる場合、Xの値は左から右へ増加し、Yの値は近端(後方)から遠端(前方)へ増加する。したがって、図4Bに示す例示的概略図では、円中心402の位置は視野中心406より右前方(より遠方)にあるとして検出され、したがってX-X>0及びY-Y>0である。対照的に、円中心402が視野中心406より左近方(後方)に在れば、原点に対して計算される座標はX-X<0及びY-Y<0を与えるだろう。いずれの場合も、円中心402が視野中心406と異なる位置に在ると、X-Xの絶対値>0及びY-Yの絶対値>0である。
【0058】
代替的に、例えば、XY面の座標は、視野のXY面403が線407、408により分割される4象限に分割されるように視野中心406に対して計算され得る。したがって、図4A図4Bに示すように、左上象限は視野中心406に対しYの正値とXの負値とを有することになり、右上象限は視野中心406に対しYの正値とXの正値とを有することになり、左下象限は視野中心406に対しYの負値とXの負値とを有することになり、左下象限は視野中心406に対しYの負値とXの正値とを有することになる。したがって、いかなる象限内の位置に在る円中心402の座標も視野中心406に対して計算され得る。
【0059】
本明細書において説明される実施形態では、視野中心406はディスプレイ311の中心に対応し得る。したがって、視野中心406を円中心402と同じ位置に位置決めすると、円中心はディスプレイ311の中心に位置決めされる。
【0060】
電動顕微鏡ヘッド支持体315へ送信される移動指示は速度のパラメータ(例えばmm/秒又はμm/秒などの任意の好適な単位で測定される)を有し得る。例えば、移動の速度は約1mm/秒であり得る。約1μm/秒~1cm/秒などの他の速度値が使用され得る。いくつかの実施形態では速度の値は固定され得、一方、他の実施形態では速度の値は可変であり得る。いくつかの実施形態では、速度の値は円中心402と視野中心406との相対位置に従って変化し得る。例えば、X-Xの絶対値及び/又はY-Yの絶対値が増加すると、速度は増加し得る。したがって、X-Xの絶対値及び/又はY-Yの絶対値が低下すると、速度は低下し得る。図4A図4Bに描写するように、三角形413は、視野中心406からの円中心402の距離の増加と共に移動の速度が増加する関係を指示する。いくつかの実施形態では、視野中心406からの円中心402の距離の増加に伴う移動の速度の増加は線形であり得る(例えば、図4A図4Bの三角形により描写されるように)。他の実施形態では、視野中心406からの円中心402の距離の増加に伴う移動の速度の増加は非線形であり得る。例えば、速度の増加は曲線関数に従い得、ここでは、速度は、円中心402と視野中心406との間の距離の増加に比例した増倍係数だけ増加する。
【0061】
好適な実施形態では、移動速度は、円中心402と視野中心406との間の距離の増加と共に増加し、円中心402と視野中心406との間の距離の減少と共に低下する。したがって、好適には、本方法は、円中心402と視野中心406との間の距離のそれぞれの増加又は低下に伴う移動速度の緩やかなランプアップ及びランプダウンを生じ得るように実施され、そしてシステムはそのように構成される。
【0062】
したがって、本発明の目的は、拡大された眼の画像内の検出された円の顕微鏡視野内の及びリンクされたディスプレイ内の自動コンピュータプロセッサ仲介型センタリング表示であり、センタリングは滑らかな移動を有する。特に、本発明の目的は、拡大された眼内の「中心外れ」円形像を検出することに対する自動制御応答であり、自動制御応答は円を視野の中心にスムーズに再位置決めする。センタリングは、眼科手術中に拡大された眼を捕捉しそのライブビデオを画像処理するとリアルタイムで発生する。いくつかの実施形態では、本システムは、センタリング移動の速度が利用者選好に従って設定され得るように構成される。
【0063】
いくつかの実施形態では、X-Xの絶対値及び/又はY-Yの絶対値は、プロセッサ308が移動指示を電動顕微鏡ヘッド支持体315へ送信する前に、設定された最小値を有し得る。したがって、本明細書において説明されるシステムは、顕微鏡視野の再位置決めが実行される前に視野中心406に対する円中心402のある移動を可能にし得る。例えば、視野中心406の位置は、プロセッサ308が移動指示を電動顕微鏡ヘッド支持体315へ送信する前に、検出された円中心402から設定距離だけ又は視野又は検出された円の設定割合だけ変化し得る。例えば、いくつかの実施形態では、視野中心406の位置は、プロセッサ308が移動指示を電動顕微鏡ヘッド支持体315へ送信する前に、検出された円中心402から、視野又は検出された円の直径の約10%だけ変化し得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、ディスプレイ上に提示される拡大画像のビューは、顕微鏡の視野及びリアルタイムビデオ画像の一部分又は部分集合であり得る。図4Cに示すように、点線ボックス414が、画面上に提示されるビューを指示し得、点線の位置はディスプレイ画面の縁に対応し得る。したがって、本発明の目的の1つは、ディスプレイ画面上の検出された円形の拡大画像のサイズを最大化することである。このようにして、眼の拡大画像を外科医へ表示するためにディスプレイ画面の最大エリアが利用され得る。いくつかの実施形態では、拡大のズームは、ディスプレイ画面上の検出された円形の拡大画像のサイズを最大化するために外科医などのユーザにより設定され得る。他の実施形態では、非一時的コンピュータ可読媒体に含まれる指示を実行するプロセッサは、検出された円状画像の径を検出し、そして、検出された円状画像の径がディスプレイ画面の縁内に収まるように視野のズームレベルを制御し得る。いくつかの実施形態では、ズームレベルは、顕微鏡の光学ズームをそれに従って変更するために、指示を顕微鏡へ送信するために、非一時的コンピュータ可読媒体に含まれる指示を実行するプロセッサにより調節され得る。他の実施形態では、ズームレベルは、それに従ってディスプレイへ送信される画像のデジタルズームを変更するために、非一時的コンピュータ可読媒体に含まれる指示を実行するプロセッサにより調節され得る。特に、ディスプレイが景色指向画面(例えばNGENUITY(登録商標)システムと併せて通常使用される16×9アスペクト比OLED画面)などの長方形である場合、ズームレベルは、検出された円形の径がディスプレイ画面の垂直広がり内に収まるように設定され得る。したがって、いくつかの実施形態では、長方形画面上で、円状画像はディスプレイの中心に位置決めされてもよいし、追加情報(手術前像及び/又は電子カルテなど)のための長方形ディスプレイ(例示的16×9ディスプレイなど)上の一方の側に空間を残してもよい。
【0065】
図5は、例示的ディスプレイ502の垂直広がりの中心にその中心を有して位置決めされた例示的円501の概略500を示す。本明細書において使用される用語「センタリング」はディスプレイ上の円の中心の位置決めを指し得、位置決めは、円の中心をディスプレイの画面空間の中央又はその近くの位置に又はそのユーザ定義された又は予め設定された領域内の位置に配向するのに効果的である。いくつかの実施形態では、用語「センタリング」は、図5に示す領域504により指示されるようにディスプレイの中心の設定距離内の円(ディスプレイの中心503の10%以内など)の中心の位置決めを指し得る。いくつかの実施形態ではディスプレイは正方形であり得、一方、他の実施形態ではディスプレイは長方形であり得る。他のディスプレイ形状も可能である。正方形ディスプレイに関して、用語「ディスプレイの中心」は辺のそれぞれからほぼ等距離である位置を指し得る。長方形ディスプレイに関して、用語「ディスプレイの中心」は、図5に示す例示的概略長方形ディスプレイ内の位置502により示されるように、辺のそれぞれからほぼ等距離又は特に長方形の長辺505のそれぞれから等距離である位置を指し得る。いくつかの実施形態では、センタリングは、円全体がディスプレイ上に見えるように円の位置決めを好適に生じるように行われ得る。他の実施形態では、センタリングは、円の一部だけがディスプレイ上に見えるように円の位置決めを生じるように行われ得る。
【0066】
本明細書において説明される様々な実施形態では、円状画像の検出は、画像内の円の検出のために当業者により識別可能な任意の好適なアルゴリズムを使用し得る。円を検出するために使用され得る標準アルゴリズムは、当業者により識別され得るものの中でもHough変換及びランダムサンプルコンセンサス(RANSAC:random sample consensus)を含む。
【0067】
本明細書において使用される用語「Hough変換」は画像解析、コンピュータビジョン及びデジタル画像処理において使用される特徴抽出技術を指す。これら技術の目的は、投票手順(voting procedure)と称される処理によりあるクラスの形状内の物体の不完全なインスタンスを発見することである。この投票手順はパラメータ空間内で行われ、ここから、物体候補は、Hough変換を計算するためのアルゴリズムにより明示的に構築される所謂アキュムレータ空間(accumulator space)内の極大値として取得される。
【0068】
本明細書において使用される用語「円Hough変換:circle Hough Transform」すなわち「CHT」は、Hough変換の特化を指し、デジタル画像内の円形物体を検出するためのデジタル画像処理においてルーチン的に使用される基本技術である。円Hough変換(CHT)は円を検出するための特徴抽出技術である。この技術の目的は不完全な画像入力内で円を発見することである。円候補は、Houghパラメータ空間内で「投票する」ことにより生成され、次に、所謂アキュムレータマトリクス内の極大値を選択する。
【0069】
当業者が理解するであろうように、2次元空間では、円は次のように記述され得る:
(x-a)+(y-b)=r 式(1)
ここで、(a,b)は円の中心であり、rは半径である。2D点(x,y)が固定されれば、パラメータは式(1)に従って発見され得る。パラメータ空間は3次元(a,b,r)になるだろう。そして(x,y)を満たすすべてのパラメータはその頂部が(x,y,0)である逆直錐体の表面上に在る。3D空間では、円パラメータは、2D円上の点により定義される多くの円錐面同士の交差により識別され得る。この処理は2つの段階に分割され得る。第1の段階は、半径を固定し、次に、2Dパラメータ空間内の円の最適中心を発見する。第2の段階は一次元パラメータ空間内の最適半径を発見することである。
【0070】
いくつかの実施形態では、円の半径は固定され得る。半径が固定されれば、パラメータ空間は2D(円中心の位置)へ低下されるだろう。元の円上の点(x,y)毎に、パラメータ空間は式(1)に従って半径Rを有する(x,y)を中心とする円を定義し得る。パラメータ空間内のすべてのこのような円の交点は元の円の中心点に対応するだろう。
【0071】
例えば、例示的円画像600内の円601上の4つの点602が図6に示すように考慮され得る。例示的円Hough変換700が図7に示される。原画像600内の4つの点602の点(x,y)毎に、円Hough変換は、半径rを有して(x,y)を中心とするHoughパラメータ空間内の円を定義し得る。アキュムレータマトリクスが交点を追跡するために使用される。パラメータ空間では、円が通過する点の投票数は1だけ増加されるだろう。次に、極大値点701(中心の点)が発見され得る。最大値701の位置(a,b)は元の円601の中心になるだろう。
【0072】
当業者により理解されるであろうように、実際上、アキュムレータマトリクスはパラメータ空間内の交点を発見するために導入される。第1に、パラメータ空間は、グリッドに従ってアキュムレータマトリクスを生成するためにグリッドを使用して「バケット」に分割される。アキュムレータマトリクス内の要素は、パラメータ空間内の対応グリッドセルを通過するパラメータ空間内の「円」の数を表す。この数は「投票数」とも呼ばれる。当初、マトリクス内のあらゆる要素は零である。次に、元の空間内の「エッジ」点毎に、円は、パラメータ空間内で定式化され得、円が通過するグリッドセルの投票数を増加する。この処理は「投票」呼ばれる。
【0073】
投票後、極大値がアキュムレータマトリクス内に発見され得る。極大値の位置は元の空間内の円中心に対応する。
【0074】
未知の半径を有する円に関し、パラメータ空間は3Dであるので、アキュムレータマトリクスもまた3Dになるだろう。可能な半径が全体を通し繰り返され得;半径毎に、前の技術が使用される。最後に、極大値が3Dアキュムレータマトリクス内で発見される。アキュムレータアレイは3D空間内のA[x,y,r]であるべきである。投票は画素、半径及びシータ毎であるべきでありA[x,y,r]+=1。
【0075】
当業者により理解されるであろうように、例示的アルゴリズムは以下のとおりである:(1)A[a,b,r]=0毎に;(2)画像に対しフィルタリングアルゴリズムを適用する(Gaussian Blurring)、画像をグレイスケールへ変換する(grayScaling)、Canny演算子を作る、Canny演算子は画像上の縁を与える。(3)アキュムレータ内のすべての可能な円を投票する。(4)アキュムレータAの極大投票された(local maximum voted)円が円Hough空間を与える。(5)アキュムレータの最大投票された(maximum voted)円が円を与える。
【0076】
当業者により理解されるであろうように、円Hough変換投票処理のための例示的コードは以下のとおりである:
For each pixel(x,y)
For each radius r=1φ to r=6φ//可能な半径
For each theta t=φ to 36φ//可能なシータφ~36φ
a=x-r=cos(t*π/180);//中心の極座標
b=y-r=sin(t*π/180);//中心の極座標
A[a,b,r]+=1;//投票
end
end
end
【0077】
MATLAB及びpython内で使用されるものなどの他の例示的実施コードが当業者により識別可能である。
【0078】
いくつかの実施形態では、当業者により識別可能なOpenCVライブラリからHoughアルゴリズムCvHoughCirclesを使用するHough円検出プログラムが画像内の円を検出するために使用され得る。Hough円検出プログラムでは、当業者により識別可能な最小半径、最大半径、及び様々な適用可能閾値及びフィルタなどのパラメータが定義され得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、OpenCVにより行われるような画像内の円の検出は当業者により識別可能なHough Gradient方法(”cv2.HoughCircles()”と呼ばれるOpenCV内の関数など)を使用し得る。
【0080】
本明細書において説明される方法及びシステムの利点は、ディスプレイ上の高倍率ビデオ画像の急速且つ精密な自動センタリングを含み、外科医によりビデオ画像を(例えばフットペタルジョイスティック制御を介し)センタリングする手動制御(フットペタルジョイスティック活性化により引き起こされる画面表示外れ又は不慮の手運動に至り得る)の必要性を無くす一方で高倍率の連続使用を可能にする。
【0081】
上記開示された主題は例示的であって限定的ではないと考えるべきであり、添付の特許請求の範囲は、本開示の精神及び範囲に入るこのような修正、拡張及び他の実施形態をすべてカバーするように意図されている。したがって、法律により許される最大限の範囲において、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲及びそれらの同等物の最も広い許容可能解釈により判断されるべきであり、これまでの詳細説明により制約又は制限されないものとする。
【0082】
本明細書と添付特許請求範囲において使用されるように、単数形式の冠詞及び不定詞は、その内容が明らかに規定しない限り、複数の参照物を含む。用語「複数」はその内容が別途明確に規定しない限り2つ以上の参照を含む。特記しない限り、本明細書で使用されるすべて技術及び科学用語は、本開示が関連する技術分野の当業者により一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7