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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】特にPTC効果を有する電気ヒータ装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/14 20060101AFI20230619BHJP
   H05B 3/03 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
H05B3/14 A
H05B3/03
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020564554
(86)(22)【出願日】2019-05-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 IB2019054089
(87)【国際公開番号】W WO2019220402
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】102018000005496
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518314084
【氏名又は名称】エルテック・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】ELTEK S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100100479
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 三喜夫
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト・バルバーノ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・ビッザッロ
(72)【発明者】
【氏名】ルカ・コスタ
(72)【発明者】
【氏名】ルカ・ヴェルチェロッティ
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0168014(US,A1)
【文献】米国特許第04700054(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/14
H05B 3/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極(12)、第2電極(12)および、正温度係数効果を有する材料(11a)を含み、第1電極(12)および第2電極(12)と電気的に接触する発熱本体(11)を含む少なくとも1つの発熱エレメント(10)を備える電気ヒータ装置(1;1’)であって
・第1電極(12)および第2電極(12)の少なくとも一方は、メッシュ構造(13;13、13)を備え、これは、長さ方向(L)と幅方向(W)に延びており、発熱本体(11)と電気的に接触し
・第1電極(12)および第2電極(12)の前記少なくとも一方は、少なくとも1つの配電エレメント(14;14、14)をさらに備え、形されたストラップ状または箔状の導電性材料を含み、これは、ッシュ構造(13;13,13)の長さ方向(L)および幅方向(W)の少なくとも一方に延びる少なくとも1つの配電部分(14a,14b)を有し、
前記電気ヒータ装置(1;1’)は、
・正温度係数効果を有する材料(11a)は、少なくともポリマーまたはポリマー系材料を含み、
・少なくとも1つの配電エレメント(14;14、14 )は、メッシュ構造(13;13、13 )に固定され、
・メッシュ構造(13;13、13 )は、発熱本体(11)の正温度係数効果を有する材料(11a)の前記ポリマーまたはポリマー系材料の中に、あるいは、発熱本体(11)と電気的に接触して発熱本体(11)を少なくとも部分的にコーティングする更なる電気的熱的伝導性材料の中に、少なくとも部分的に埋め込まれ、または包囲されていることを特徴とする、電気ヒータ装置(1;1’)。
【請求項2】
メッシュ構造(13;13、13)は、0.2mm~0.02mmの間の直径または断面寸法を有する導電性材料の略糸状のエレメント(16a,16b)の織り交ぜまたは十字交差によって形成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
メッシュ構造(13;13、13)は、発熱本体(11)の主面に対して略平行に延びている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
メッシュ構造(13;13、13)は、発熱本体11(11)の面に圧力嵌めされており、あるいは、
発熱本体(11)は、第1電極(12 )および第2電極(12 )の少なくとも1つの上に少なくとも部分的にモールド成形された本体である、請求項1~3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
発熱本体(11)は、第1電極(12 )および第2電極(12 )の少なくとも1つの上に少なくとも部分的にモールド成形された本体であり、
第1電極(12)と第2電極(12)の間に、スペーサ本体(15;15’)が配置され、これは、発熱本体(11)の正温度係数効果を有する材料(11a)内に少なくとも部分的に埋め込まれ、または包囲される、請求項に記載の装置。
【請求項6】
第1電極(12)および第2電極(12)はそれぞれ、1つの前記メッシュ構造(13;13、13)、1つの前記配電エレメント(14;14、14)を備える、請求項1~のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
少なくとも1つの配電エレメント(14;14、14)は、メッシュ構造(13;13)の幅方向(W)に延びる少なくとも1つの第1配電部分(14a)、およびメッシュ構造(13;13)長さ方向(L)に延びる少なくとも1つの第2配電部分(14b)を有する、請求項1~のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
少なくとも1つの配電エレメント(14;14、14 )は、L字状のエレメント、または、櫛形状を備えたエレメントである、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
少なくとも1つの配電エレメント(14)は、メッシュ構造(13;13)または発熱本体(11)のの周辺エッジを越えて突出する少なくとも1つの電気接続部分(12a)を有する、請求項1~8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
少なくとも1つの配電エレメント(14)は、メッシュ構造(13;13、13)の少なくとも1つのエッジまたはその近傍で実質的に延びている少なくとも1つの配電部分(14a,14b)を有する、請求項1~9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
発熱エレメント(10)の少なくとも1つの部分(11,12,13,14)が、実質的に直線状または平面状であるか、あるいは略アーチ形状である、請求項1~10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
少なくとも1つの配電エレメント(14;14、14)は、メッシュ構造(13;13)に溶接されている、請求項1~11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
少なくとも1つの発熱エレメント(10)を少なくとも部分的に覆うケーシング本体(2;2’)を備える、請求項1~12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
第1電極(12)、第2電極(12)および、正温度係数効果を有する材料(11a)で少なくとも部分的に製作され、第1電極(12)と第2電極(12)と電気的に接触する発熱本体(11)を含む少なくとも1つの発熱エレメント(10)を備える電気ヒータ装置(1;1’)であって
第1電極(12)および第2電極(12)の少なくとも一方は、ッシュ構造(13;13、13を備え、これは、長さ方向(L)および幅方向(W)に延びて、その面積を画定し、そして発熱本体(11)と電気的に接触しており、
第1電極(12 )および第2電極(12 )の少なくとも一方はさらに、成形されたストラップ状または箔状の形態である、少なくとも1つの配電エレメント(14;14、14)であって、メッシュ構造(13;13、13 の長さ方向(L)および幅方向(W)の少なくとも1つに延びており、メッシュ構造(13;13、13 )と重なり合う少なくとも1つの配電部分(14a,14b)を有する、少なくとも1つの配電エレメント(14;14、14を含み
前記電気ヒータ装置(1;1’)は、
・正温度係数効果を有する材料(11a)は、少なくともポリマーまたはポリマー系材料を含み、
・少なくとも1つの配電エレメント(14;14、14 )は、メッシュ構造(13;13、13 )に溶接され、
・少なくとも1つの配電部分(14a,14b)は、メッシュ構造(13;13、13 )に対して重なり合う面積を有し、該面積は、メッシュ構造(13;13、13 )の面積の50%未満であり、
・メッシュ構造(13;13、13 )は、発熱本体(11)の正温度係数効果を有する材料(11a)の前記ポリマーまたはポリマー系材料の中に、あるいは、発熱本体(11)と電気的に接触して発熱本体(11)を少なくとも部分的にコーティングする更なる電気的熱的伝導性材料の中に、少なくとも部分的に埋め込まれ、または包囲されていることを特徴とする、電気ヒータ装置(1;1’)。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに記載の少なくとも1つの電気ヒータ装置(1’)を備える自動車コンポーネント。
【請求項16】
請求項1~14のいずれかに記載の少なくとも1つの電気ヒータ装置(1’)を提供するための方法であって、
a)第1電極(12)および第2電極(12)の少なくとも一方を用意するステップと、
b)第1電極(12)および第2電極(12)の前記少なくとも一方を発熱本体(11)に堅く取り付けるステップと、を含み、
ステップa)は、
・メッシュ構造(13;13)を用意することと、
・少なくとも1つの配電エレメント(14;14、14)を用意することと、
・少なくとも1つの配電エレメント(14;14、14)をメッシュ構造(13;13)に固定することと、を含み、
ステップb)は、
正温度係数効果を有する材料(11a)をメッシュ構造(13;13)の少なくとも一部にオーバーモールドすること、あるいは、
・メッシュ構造(13;13)の少なくとも一部を発熱本体(11)の面にプレスし、前者が後者に少なくとも部分的に嵌め込まれ、または埋め込まれるようにすること、を含み、
ステップa)はステップb)の前に実行され、あるいは、ステップb)はステップa)の前に実行されるようにした、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気ヒータ装置、特に、正の温度係数を有する電気抵抗によって区別される材料、即ち、PTC効果を有するもの、好ましくはポリマータイプの材料、即ち、ポリマー系の材料または少なくとも1つのポリマーを含む材料の使用に基づいた装置に関する。
【0002】
本発明は、自動車部品に取り付けられ、または集積される電気ヒータ装置、例えば、タンクまたはリザーバ用のヒータ、フィルタ用のヒータ、流体ダクト用のヒータ、バッテリ用のヒータ、凍結したり、温度の関数としてその特性が変化する物質用のヒータ、または、気体、例えば、環境用の空気、前記ヒータの表面で強制循環される空気などを加熱するために使用されるヒータを特に関連して開発されたものである。
【0003】
本発明は、液体、例えば、内燃機関の動作または、水噴射またはアンチノック剤噴射システムを含む、内燃機関の排気ガスの処理または低減のためのシステムの動作に必要な液体と接触するタンクまたはダクトの部品の分野において好ましい用途を見出すものである。本発明に係るヒータ装置は、いずれの場合も、上述した好ましい用途とは異なる状況での用途を見出してもよい。
【背景技術】
【0004】
国際公開第2017/077447A号は、請求項1の前文がベースとしており、参照したタイプの電気ヒータ装置を開示しており、これは自動車タンクのコンポーネントに集積された複数の発熱エレメントを備える。各発熱エレメントは、PTC効果を有するポリマー材料で製作された発熱本体を含み、2つの平行な電極の間に設置され、これらと接触している。電極は、金属箔の形態であり、互いにほぼ同じであり、孔が設けられることがあり、略平行六面体層の形状を有する発熱本体の2つの対向する主面をほぼ覆っている。
【0005】
発熱エレメントのこのタイプの構造は、層状電極の幅広い平行な表面が、PCT効果を有する材料の大部分の対向両面を実際上全体的に覆うことから、熱放出の観点から効率的である。こうして電極自体の間の電流の均一性および強度が保証され、よって良好な加熱パワーが保証される。
【0006】
しかしながら、特に長期間に渡って、ヒータ装置は、加熱および冷却のサイクルに起因して、PTC効果材料及び/又は対応する金属電極の変形(例えば、膨張および収縮)に関連した問題によって影響を受けることがあることが判明した。こうした変形は、異なる材料で作られた部品間の相対的移動をもたらすことがあり、PTC効果を有する材料で製作された発熱本体の対応する面から電極の層間剥離または剥離というリスクの可能性があり、そのため装置の動作特性の低下をもたらす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述したことを考慮して、本発明は、基本的には、全体として簡単かつ安価で信頼できる方法で組み立てられた電気ヒータ装置によって、先行技術の前述した不具合を克服したり、少なくとも制限するという目的を有する。上記および他の目的は、以下で明らかになるように、本発明に従って、電気ヒータ装置、自動車部品、および添付の請求項で特定される特性を有する電気ヒータ装置を取得する方法によって達成される。請求項は、本発明に関連してここに提供される技術的教示の不可欠な部分を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の特性、利点及び更なる目的は、非限定な例によって純粋に提供される、添付図面を参照して、後の詳細な記載から明確に明らかになるであろう。
【0009】
図1】本発明の可能性ある実施形態に係るヒータ装置の概略斜視図である。
図2】本発明の可能性ある実施形態に係るヒータ装置の部分分解概略図である。
図3】本発明の可能性ある実施形態に係る発熱エレメントの分解概略図である。
図4】本発明の可能性ある実施形態に係る発熱エレメントの概略斜視図である。
図5】本発明の可能性ある実施形態に係るヒータ装置の電極の概略斜視図である。
図6】斜視図により、本発明の可能性ある実施形態に係るヒータ装置の電極の一部の可能性ある代替構成を概略的に示す。
図7】本発明の可能性ある実施形態に係るヒータ装置の電極の2つの部分を固定するためのプロセスの概略図である。
図8図5のより大きいスケールの詳細である。
図9図8のより大きいスケールの詳細である。
図10】本発明の変形実施形態に関する図9に類似した図である。
図11】本発明の可能性ある実施形態に係るヒータ装置を集積する自動車コンポーネントの概略斜視図である。
図12図11のコンポーネントの2つの部分の部分分解概略図である。
図13】本発明の可能性ある実施形態に係るヒータ装置のケーシング本体を得るための第1プロセスの概略図である。
図14】本発明の可能性ある実施形態に係るヒータ装置のケーシング本体を得るための第2プロセスの概略図である。
図15】本発明の可能性ある実施形態に係るヒータ装置のケーシング本体を得るための第2プロセスの概略図である。
図16】本発明の可能性ある実施形態に係るヒータ装置の複数の発熱エレメントの概略斜視図である。
図17】本発明の可能性ある実施形態に係るヒータ装置の電極の分解概略図である。
図18】本発明の可能性ある実施形態に係る発熱エレメントを得るための第1プロセスの概略図である。
図19】本発明の可能性ある実施形態に係る発熱エレメントを得るための第1プロセスの概略図である。
図20図18図19のプロセスで得られる発熱エレメントの概略斜視図である。
図21】本発明の可能性ある実施形態に係る発熱エレメントを得るための第2プロセスの概略図である。
図22図21のプロセスで使用される半製品の概略斜視図である。
図23図21のプロセスの更なる概略図である。
図24図21のプロセスの更なる概略図である。
図25】本発明の可能性ある実施形態に係る発熱エレメントの部分断面概略図である。
図26】本発明の可能性ある実施形態に係る更なる発熱エレメントの概略斜視図である。
図27】本発明の可能性ある実施形態に係る更なる発熱エレメントの分解概略図である。
図28】本発明の可能性ある実施形態に係る更なる発熱エレメントの概略斜視図である。
図29】本発明の可能性ある実施形態に係る更なる発熱エレメントの分解概略図である。
図30】本発明の可能性ある実施形態に係るヒータ装置の電極の概略斜視図である。
図31】本発明の可能性ある実施形態に係るヒータ装置の電極の分解概略図である。
図32】本発明の可能性ある実施形態に係る少なくとも1つのヒータ装置を集積する自動車コンポーネントの部分分解図である。
図33図32に類似した図であり、ヒータ装置の発熱エレメントが分解図で示される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本説明のフレームワーク内の「実施形態」または「一実施形態」への参照は、実施形態に関連して説明する特定の構成、構造または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを示すことを意図する。よって、本説明の種々のポイントに存在し得る、例えば、「実施形態において」または「一実施形態において」などの句は、必ずしも同一の実施形態を参照するものでない。さらに、本説明内で定義される特定のコンフォメーション(形態)、構造または特性は、示したものとは異なっていても1つ以上の実施形態においていずれか適切な方法で組み合わせてもよい。ここで使用する参照符号および空間参照(例えば、「上側」、「下側」、「上部」、「下部」など)は、単に便宜のために提供され、よって、保護の範囲または実施形態の範囲を定義するものではない。本説明および添付の請求項において、一般用語「材料」は、複数の異なる材料の混合物、組成物、または組合せ(例えば、多層構造)を含むものとして理解すべきである。本説明および添付の請求項において、用語「メッシュ構造」または「ネット構造」は、実質的に糸状のエレメント、好ましくはスレッド(thread:糸)またはワイヤ(例えば、ネット、メッシュ、織り(weave)など)の十字交差(criss-crossing)または織り交ぜ(interweaving)によって形成された構造を示すものと理解される。
【0011】
最初に図1を参照して、全体として符号1で示すものは、本発明の可能性ある実施形態に係るヒータ装置である。以下において、装置1は、自動車に搭載されたシステム、例えば、空気の流れを加熱するためのシステム、あるいは、タンクもしくはリザーバに収納された液体、またはダクトを通過する液体を加熱するためのシステムに属することを想定している。
【0012】
装置1は、少なくとも部分的に少なくとも1つの発熱エレメント(図2で全体として符号10で示す)を封入するケーシング本体2を備える。ケーシング本体2には、好ましくは電源との接続用の電気コネクタ3が設けられる。
【0013】
種々の実施形態において、本発明に係るヒータ装置のケーシング本体は、互いに固定された2つ以上の部品で構成され、一方、他の実施形態において、ケーシング本体は、装置の少なくとも1つの発熱エレメントでの材料のオーバーモールドによって少なくとも部分的に形成される。ケーシング本体は、ハーメチックタイプ、即ち、装置の発熱エレメントまたは複数の発熱エレメントを液密的に封入するように考案されたものでもよい。
【0014】
種々の実施形態において、本発明の主題を形成するヒータ装置は、スタンドアローン(独立型)コンポーネントとして構成され、その場合、そのケーシング本体は、好ましくは、より複雑なシステム、例えば、自動車の発熱システムでの設置及び/又は固定のために構成される。代わりに他の実施形態において、本発明の主題を形成する装置は、一般的な媒体の発熱とは異なる機能も行うように事前構成されたコンポーネントに集積され、その場合、コンポーネントの本体の少なくとも一部が、ヒータ装置のケーシング本体を少なくとも部分的に提供するために利用できる。さらに他の用途において、装置は、例えば、対応する発熱エレメントがそれを加熱するために所定の環境に直接露出する場合、それ自体のケーシング本体を必要としない。
【0015】
図1図2に例示した場合では、装置1は、スタンドアローン(独立型)コンポーネントとして構成され、そのケーシング本体2は、例えば、電気絶縁性熱可塑性材料で製作される3つの部品2、2、2から構成される。これは、発熱エレメント10の少なくとも一部を内部に封入するために、好ましくは、例えば、接着、溶接、またはフッキングにより、密封式で互いに固定できる。
【0016】
再び図1図2に例示した場合を参照して、2で示すケーシング部品は、略箱状の構造を有し、発熱エレメント10を完全にまたは大部分その内部に収容するためのシート4を画定する。例示した場合では、ケーシング部品2は、フランジ形状のフロント部分5を有し、エレメント10がシート4に横方向に挿入できるスリット5aが設けられる。そのため、2つの電気接続端子12aが、発熱エレメント10の個々の電極に属するか、またはこれらに接続され(そのうちの1つだけが図2に見えており、符号12で示す)、部分5を超えて前面に突出する。フロント部分5の前面に固定されるのは、符号2で示すケーシング部品であり、これは、端子12aを内部に受け入れ、図1のコネクタ3を提供するように構成されたコネクタ本体6を規定する。図示した例では、ケーシング部分2はさらに、スリット5aを封止するように設計されたフランジ形状の部分7を備える。
【0017】
この例では、シート4は、符号2で示すケーシング部品によって封止でき、これは基本的に前述のシートの蓋として機能し、ケーシング部品2に周辺で固定される。
【0018】
図3の分解図に示すのは、発熱エレメント10の可能性ある実施形態である。この図では、符号11で示すのは、PTC効果を有する材料、即ち、正の温度係数を有する電気抵抗によって区別される材料の少なくとも一部で製作されたエレメント10の発熱本体であり、符号12,12で全体として示す2つの電極と接触するように配置される。
【0019】
好ましい実施形態において、符号11aで示す本体11を構成する材料は、ポリマー系の材料(即ち、少なくとも1つのポリマーを含む材料)、好ましくは、ポリマーによって、または複数のポリマーの混合物によって、そして対応する充填剤(filler)、例えば、導電性充填剤及び/又は熱伝導性充填剤によって形成されたマトリクスを有する複合材料である。
【0020】
種々の好ましい実施形態において、発熱本体11の材料11aは、PTC効果を有する共連続(co-continuous)ポリマー複合材料であり、マトリクス中に少なくとも2つの非相溶性ポリマーおよび少なくとも1つの導電性充填剤を含むマトリクスを有する。このタイプの好ましい実施形態では、非相溶性ポリマーの少なくとも1つが高密度ポリエチレン(HDPE)であり、非相溶性ポリマーの他の少なくとも1つがポリオキシメチレン(POM)である。導電性充填剤は、好ましくは、マイクロメートルまたはナノメートルの寸法、好ましくは10nm~20μmの間、とても好ましくは50nm~200nmの間に含まれる寸法を有する粒子によって構成され、可能性として1μm~20μmの寸法を有する鎖または分岐凝集体を形成するように凝集した粒子によって構成される。導電性充填剤の好ましい材料は、カーボン材料、例えば、カーボンブラック、グラフェン、またはカーボンナノチューブ、またはこれらの混合物などである。
【0021】
HDPEおよびPOMは、好ましくは、これらの重量合計の45%~55%の間の相対百分率である。好ましくは、導電性充填剤は、HDPEおよび導電性充填剤の重量の合計の10%~45%の間、好ましくは16%~30%の間の重量百分率で、HDPEに閉じ込められ、またはほとんど閉じ込められる。このためにHDPEおよび導電性充填剤は、特に押出し成形(extrusion)によって共に混合可能であり、続いてPOMと混合する。この場合も、好ましくは押出し成形によって実行可能である。
【0022】
POMの高い融点により、2つの相、HDPEおよびPOMをより良い分離状態に維持することが可能になり、POM中への導電性充填剤の泳動の可能性を低減する(この効果に寄与するのは、充填剤がHDPEのみと優先的に先に混合されることである)。他の既知のポリマーと比べてPOMのより高い融点により、同様に、より安定した最終構造を得ることが可能になる。即ち、複合材料のPTC効果により、自己発熱を約120℃の最高温度に制限する。POMはさらに、70%~80%を示す高い結晶化度(crystallinity)を示す。このことは、提案する好ましい共連続複合材料では、HDPEからPOMへの充填剤の泳動が発生する可能性がより低く、それにより、例えば、電流の発熱および通過に起因して、PTC効果を有する材料の性能の損失を防止することを意味する。POMのより高い結晶化度により、複合材料を、化学的観点から特に耐性のあるものにし、その上に高い安定性を付与する。一方、HDPEの結晶化度は、典型的には60~90%の間で構成される。こうしてアモルファスドメインにある高濃度の導電性充填剤が得られ、対応する高い導電率を備える。
【0023】
例えば、図3を参照して、本発明の一態様によれば、電極12,12の少なくとも1つが、メッシュ構造またはネット構造(符号13で示す)を含み、これは、発熱本体11、即ち、それを構成する材料11a内に少なくとも部分的に埋め込まれ、または包囲される。
【0024】
以下により明確になるように、メッシュ構造13の少なくとも部分的な埋め込みは、機械的圧力及び/又は加熱により、構造13を発熱本体11の中にその面で嵌入させることによって、あるいは、メッシュ構造13または対応する電極12上で発熱本体11の少なくとも一部をオーバーモールドすることによって、得られる。
【0025】
これに関して、図2では、電極12に属するメッシュ構造13は、より明確さのために、ほぼ完全に視野にあり、即ち、あたかも発熱本体11上に戴置するかのように表されていることに留意すべきである。しかしながら、前述したように、本発明の種々の好ましい実施形態では、前述した構造13は、本体11の材料11aに少なくとも部分的に埋め込まれており、好ましくは、該構造の種々のメッシュ間に画定された開口の間に材料11aの一部が存在するようにしている。他方では、例えば、図4に概略的に示すように、電極のメッシュ構造13を材料11a内にほぼ完全に埋め込むことも可能である。
【0026】
メッシュ構造13は、発熱本体11の主面に対して実質的に平行に延在することが好ましく、前記構造13は、本体11の主面の領域に実質的に対応する領域、あるいは、いずれの場合もその一般的な部分に対応する領域を画定する。こうして発熱本体11は、2つの電極12,12の構造13の幅広い表面の間に設定され、電極自体の間を通過する電源電流の良好な均一性および良好な強度を確保している。
【0027】
よって、メッシュ構造13は、長さ方向Lおよび幅方向Wに延びており、好ましくは実質的に2次元的であり、即ち、実質的にシート構造のように最小の厚さのものである。
【0028】
種々の好ましい実施形態では、構造13は、導電性材料、好ましくは金属材料のスレッドで少なくとも部分的に形成された布(fabric)によって構成される。好ましい金属は、例えば、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、真鍮、青銅、ニッケルクロム系合金、または鉄クロム系合金の中から選択される。導電性布は、任意の既知の技術を用いて糸の織り交ぜまたは十字交差によって得られる。例えば、織り方のタイプは下記のものから選択してもよい。
・平織り(plain weave)。各横スレッド(横糸:weft thread)は、各縦スレッド(縦糸:warp thread)の上下を交互に通過する。その逆も同様。
・綾織り(twill weave)。各横スレッドが2本の縦スレッドと交互に交差する。
・平畳織り(plain Dutch weave)。縦スレッドは、横スレッドよりも大きい直径を有し、多数の横スレッドと織り合わされた少数の縦スレッドからなる織りを備える。
・綾畳織り(Dutch twill weave)。これは、平畳織りと同様の織りによって得られるが、織りが綾織りであり、横スレッドのダブル層を有する点が相違する。
・逆畳織り(reverse Dutch weave)。これは、平畳織りの実質的に逆であり、即ち、縦スレッドの細いスレッドの数が多く、横スレッドの粗いスレッドの数が少ない。
・逆畳綾織り(reverse Dutch twill weave)。これは前のものと同様の織りであるが、各横スレッドは2本の縦スレッドと交互に交差する。
【0029】
好ましくは、導電性布を提供するスレッドは、以下に明らかになる理由のために、0.2mm~0.02mmの間を示す、減少した公称直径(即ち、織りの前)を有する。布のメッシュ開口、即ち、構造の2つの隣接した平行なスレッドの間のスペースは、好ましくは、1mm~0.05mmの間で構成される。
【0030】
図3図5では、メッシュ構造13は、部分的かつ概略的な形態で表しており、特に図5において、符号16a,16bでそれぞれ示す横スレッドと縦スレッドの十字交差または織り交ぜを強調するためであることに留意すべきである。
【0031】
メッシュ構造13は、PTC効果を備えた材料11aに少なくとも部分的に埋め込まれることは、加熱および冷却サイクルに起因した材料11及び/又は構造13の可能性ある変形の存在下であっても、対応する電極12が発熱本体11から分離または剥離するというリスク(先行技術に典型的な問題である)を防止する。いずれの場合も、メッシュ構造13が比較的高密度かつ広範囲であることは、電極12間の電流の相当な分布および強度を確保する。
【0032】
理解できるように、電極12のメッシュ構造13の周辺プロファイルは、例えば、布またはメッシュの導電性のシートまたは織物(web)の切断または突切り
(dinking)の基本操作によって容易に得られる。前記周辺プロファイルは、これまで図に例示したように、必ずしも四角形である必要はない。
【0033】
本発明の他の態様によれば、少なくとも1つの電極12または12は、メッシュ構造13に加えて、例えば、図2図3に符号14で示すものなど、少なくとも1つの配電エレメントも含む。これは、メッシュ構造13に固定され、構造13自体の長さ方向Lおよび幅方向Wのうちの少なくとも1つに延びている。
【0034】
エレメント14は、メッシュ構造13を形成するスレッド16a,16bまたは同様の糸状エレメントに電流を分配するように成形され、特に、数本のスレッドでの望ましくない電流集中を防止するためであり、これはスレッド自体の溶融を生じさせることもある。
この目的のために、種々の実施形態において、配電エレメント14は、構造13のほぼ全幅Wに渡って延びる少なくとも1つの部分、及び/又は、構造13のほぼ全長Lに渡って実質的に延びる少なくとも1つの部分を有する。しかしながら、配電エレメントの少なくとも1つの部分は、構造13の幅W及び/又は長さLの一部だけ、好ましくは、構造13の幅W及び/又は長さLの少なくとも半分または3分の1に渡って延びていてもよい。
【0035】
配電エレメント14は、構造自体がPTC効果を有する材料11aに埋め込まれるのを妨げないように、好ましくは本体11とは反対側のメッシュ構造13の面に固定される。配電エレメント14は、本体11に面するメッシュ構造13の面に固定してもよく、この場合、配電エレメント14の一部もまた、PTC効果を有する材料11aの構造の中に埋め込むことができる。
【0036】
電流の分配をさらに改善する観点で、種々の好ましい実施形態では、配電エレメント14の少なくとも一部は、メッシュ構造13のエッジまたはその近傍で実質的に延びている。
【0037】
例えば、図3~5を参照して、図示したエレメント14が、構造13に横断方向に(即ち、W方向に)延びる少なくとも1つの部分14a、そして構造13に対して長手方向に(即ち、L方向に)延びる少なくとも1つの部分14bを、どのように有するかに留意されたい。これらの2つの部分は、好ましくは、互いに実質的に直角である(しかしながら、異なる角度も可能である)。種々の実施形態、例えば、図示したものにおいて、部分14aから分岐しているのは、長手方向Lに延びる、好ましくは部分14bに対してほぼ平行であり、好ましくは横方向Wに実質的に分布する追加部分14cである。
【0038】
こうして配電エレメントは、異なる長さの歯または指(前述した図3~5の場合のように)、あるいは同じ長さの歯または指を備えた、ほぼ櫛状のコンフォメーション(形態)を有することができる。いずれの場合も、見たように、配電エレメントまたはその全ての配電部分と対応するメッシュ構造との間の重なり合うエリアは、後者のエリアよりも小さく、特に、図示のように、重なり合う領域は、対応するメッシュ構造のエリアよりもかなり小さく、好ましくは、重なり合う領域は、対応するメッシュ構造の面積の少なくとも半分または3分の1よりも小さい。
【0039】
様々な好ましい実施形態では、配電エレメント14は、少なくとも1つの電気接続部分を有し、これは、装置が組立て状態にある場合、電気接続のためにアクセス可能なように、メッシュ構造13または発熱本体11の周辺エッジを越えて突出するように設計される。例示の場合では、前記突出部分は、前述した端子に対応する限りおいて、図中に符号12aで示す。そして、好都合なことに、配電エレメントは、対応する電極12の電気接続端子12aを直接に画定できる。
【0040】
また、図6から、分布部分14aまたは分布部分14a~14bの総面積がどのようになっているのかを推測することができる。対応するメッシュ構造にオーバーラップするように設計されたエレメント14の14a~14cは、メッシュ構造の面積の限られた部分に相当する。また、図6から、どのようにエレメント14の配電部分14aまたは配電部分14a~14b,14a~14cの総面積が(対応するメッシュ構造に重なり合うように設計される)メッシュ構造の面積の限られた部分に達するかを推測できる。単なる一例として、図6の部分a)、b)、c)、d)の場合を参照することによって、重なり合う面積は、それぞれ、対応するメッシュ構造の面積の10%未満、20%未満、30%未満または50%未満でもよい。
【0041】
種々の実施形態において、配電エレメント14は、メッシュ構造13を提供するスレッド16a及び/又はスレッド16bの実質的または一般的な部分に接続されるように成形され、好ましくは、少なくとも1つの横断方向部分(例えば、部分14aなど)は、スレッド16aの少なくとも3分の1または少なくとも半分に接続され、及び/又は、少なくとも1つの長手方向部分(例えば、部分14bなど)は、は、スレッド16bの少なくとも3分の1または少なくとも半分に接続される。
【0042】
種々の実施形態において、配電エレメント14は、複数のスレッド16a及び/又はスレッド16bに接続されるように成形され、これらのスレッドの断面の合計は、装置1及び/又は発熱エレメント10の動作に必要な電流が、いずれの損傷または異常なしで循環できるように設定される。
【0043】
図6に単に例として示すもののは、本発明に係るヒータ装置で使用可能な配電エレメント14のいくつかの可能性ある構成である。目的に適した無数の構成が可能であるため、例示した構成は網羅的な性質を有していない。
【0044】
図6の部分A)に示すものは、エレメント14のより簡単な形状であり、これは、メッシュ構造13の幅Wの方向に(あるいは、明らかに前記構造の長さLの方向)に延びる配電部分14aを有し、そして端子12aを構成する部分は、ここでは部分14aに対してほぼ直交する。
【0045】
図6の部分B)に示すものは、主にL字状のエレメント14であり、即ち、これは、構造13の幅方向(または長さ方向)に延びる配電部分14a、および同じ構造13の長さ方向(または幅方向)に延びる配電部分14bの両方を含む。また、この場合、前述した2つの部分14a,14bのうちの1つから互いにほぼ直交するように延びているもの(ここでは部分14a)が、端子12aを構成する接続部分である。
【0046】
図6の部分C)に示すものは、ほぼ櫛形状を有するエレメント14であり、即ち、構造13の幅(または長さ)の方向に延びる配電部分14a、および互いにほぼ平行であり、同じ長さを有し、同じ構造13の長さ(または幅)の方向に延びる複数の配電部分14b,14cの両方を含み、この場合、部分14aから延びるものが、端子12aを構成する接続部分である。
【0047】
図6の部分D)に示すものは、エレメント14であり、これもほぼ櫛形状を有するが、一連の歯または指は、ほぼ平行であるが、異なる長さである。 この例では、構造13の幅(または長さ)の方向に延びる配電部分14a、および同じ構造13の長さ(または幅)の方向に延びる4つのペアの指14b,14c,14c,14cの両方が設けられ、例えば、各ペアの指は、ほぼ同じ長さを有するが、他のペアの指とは異なる長さであり、一方のペアの各指は、他の2つの異なるペアの2本の指の間に設定され、この場合も、部分14aから延びるものが、端子12aを構成する接続部分である。
【0048】
種々の好ましい実施形態において、配電エレメント14は、導電性材料のストラップまたは箔(foil)で形成される。よって、好ましくは、分配エレメント14は実質的に2次元状であり、即ち、それは、好ましくは0.02mm~1.5mmの間の極めて薄い厚さを有する。
【0049】
エレメント14を構成するストラップは、好ましくはメッシュ構造13のものと適合する金属材料、特に構造13とエレメント14との間で行われる溶接の観点で適合する金属材料で製作される。この観点から、例えば、前記ストラップを構成する金属材料は、例えば、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、真鍮、青銅、ニッケルクロム系合金または鉄クロム系合金の中から選択してもよい。
【0050】
エレメント14を構成するストラップは、可能ならば、異なる材料、好ましくは第2導電性材料及び/又は保護材料を用いて少なくとも部分的にコーティングしてもよい。この観点において、端子12aは、例えば、電気スレッドの溶接を容易にするために、錫(tin)で少なくとも部分的にコーティングしてもよく、あるいは、例えば、外部コネクタの端子との電気的接触を改善するために、金または他の貴金属で少なくとも部分的にコーティングしてもよい。メッシュ構造と接触していないストラップの少なくとも外側部分も、保護材料及び/又は電気絶縁材料を用いてコーティングできる。
【0051】
電極12の配電エレメント14の周辺プロファイルもまた、例えば、導電性金属のシートまたはストリップの打ち抜き加工(blanking)または突切り(dinking)(および可能な変形)の基本的な操作によって容易に得られることは、明らかであろう。
【0052】
好ましい実施形態では、メッシュ構造13と電極12の対応する配電エレメント14との間の機械的接続または固定は、溶接、好ましくは追加の溶接材料なしの溶接によって得られる。
【0053】
種々の好ましい実施形態において、課題である2つの部品間で実行される溶接動作は、抵抗溶接、即ち、材料が電気抵抗を介して加熱される自溶圧力溶接の方法である。こうした技術は、図7に例示しており、符号E1,E2で示すものは溶接装置の2つの金属電極である。
【0054】
図7の部分A)に概略的に示すものは、2つの溶接電極E1,E2が第1距離で離れている初期条件であり、これにより構造13およびお互いの上に単に戴置されるエレメント14のこれらの間への挿入が可能になる。図7の部分B)は、後続のステップを例示しており、2つの溶接電極E1,E2が互いに持ち上げられて、構造13自体と接触しているエレメント14の表面上で、即ち、対応する重なり合う領域で構造13を機械的に押圧する。機械的圧力の印加と同時に、電極E1,E2の間に、ジュール効果によって、スレッド16a,16b及び/又はエレメント14のストラップの部分溶融、よって相互溶接を生じさせるのに充分な熱を発生するような強度を有する電流を流す(前記スレッドおよびストラップの領域で発生する熱は、電流強度および接合される部品の電気抵抗に実質的に比例することになる)。図7の部分C)は、後続のステップを例示しており、溶接電極E1,E2が互いに離れるように移動して、電極12の取り外しを可能にし、構造13およびエレメント14は共に溶接されている。
【0055】
メッシュ構造13上での配電エレメント14の溶接は、典型的には、前記構造のスレッドの変形をも生じさせるが、これは、エレメント14と構造13との間の重なり合う領域に実質的に外接している。上述した溶接技術を参照して、重なり合う溶接領域でのスレッドの変形の程度は、実質的に、発生する溶接熱及び/又は部品間の機械的圧力の関数になるであろう。図5から、特に図8の対応する詳細から、溶接領域17aにおいて、メッシュ構造13のスレッドの形状は、溶接プロセスに関与しない非重なり合い領域17bの形状とどのように異なるかに留意してもよい。この状況は、図9に示す更なる詳細からよりよく理解でき、溶接領域17aにおいてスレッド16a,16bの異なる形状が存在するのに注目してもよく、前記スレッドは部分溶融とともに圧搾され、そして、溶接プロセスに関与しない領域17bでは、スレッドは初期の公称直径及び/又は形状を実質的に維持している。
【0056】
図10は、図9と類似した眺めにより、構造13とエレメント14との間で実行されるより強力な溶接の場合を例示しており、即ち、溶接対象の領域17aにおいてより大きな熱発生及び/又はより高い機械的圧力を用いる。よって、結果として、スレッド16a,16bのより顕著な溶融及び/又は変形が得られ、これらの領域17aでは、ほぼ平坦なグリッドを形成するようになる。
【0057】
種々の実施形態において、例えば、これまでに例示したものなどは、電極12,12の両方はそれぞれ、少なくとも1つの対応するメッシュ構造13および少なくとも1つの対応する配電エレメント14を含み、2つの電極は、好ましくは互いに実質的に同じであり、生産の標準化の利点となる。電極12,12は、本体11の反対側の面、好ましくは互いにほぼ平行である反対側の主面において発熱本体11に集積されてもよく、前記面に対して垂直な面内で、即ち、本体11の厚さを通る電流の循環をもたらす。しかしながら、他の実施形態によれば、電極は、本体11の同一の面に設置してもよい。さらに、前述したように、電極12,12または少なくとも個々のメッシュ構造13は、本体11の対応する面に対してほぼ平行に延びることが好ましい。
【0058】
上記タイプの構成は、2つの電極12,12の配電エレメント14が個々の電気接続部分12aを有する場合に特に有利であり、これらは互いに接近した位置に設定し、電気コネクタ、例えば、コネクタ3を設置できる。
【0059】
よって、種々の実施形態において、発熱本体11の少なくとも一部が2つの電極12,12の間に設定され、好ましくは、ほぼ一定の厚さを有する部分である。本体11は、電極またはこれらの構造13と実質的に類似した周囲寸法を有することができるが、本体11の一部が構造13のエッジを越えて突出する場合、あるいはこれに対して凹んでいる場合は排除されない。
【0060】
図2図3に戻って、例示の場合、発熱本体11は、好ましくは、電極12,12の上に少なくとも部分的にオーバーモールドされた本体である。このタイプの用途では、課題である2つの電極は金型に挿入され、そこにPTC効果を有するポリマー材料11aが溶融状態で注入される。前記製造ステップを容易にするために、特にポリマーの注入中及び/又は半製品の前取り扱い中に、2つの電極の間に、特に電極の適切な相対位置を確保するために(特に金型内で)構成されたスペーサ本体及び/又は位置決め本体が挿入可能である。
【0061】
図3に例示するのは、こうしたスペーサ本体(符号15で示す)の可能性ある実施形態であり、これは電気絶縁材料で製作してもよく、あるいはそれ自体が電気抵抗またはPTC効果を有する材料で製作してもよく、これは、例えば、ポリマー系材料である。この例では、スペーサ本体15は、基本的に、メッシュフレームワークを画定するように成形され、一種の周辺フレーム15aを備え、その内部に一連の長手方向エレメント15bおよび一連の横断方向エレメント15cが、好ましくは互いに同一平面で延びている。エレメント15b,15cがフレーム15aより小さい高さ(厚さ)を有する場合、前記エレメント15b,15cの間の十字交差の領域にレリーフ15dを設けることが可能であり、高さの差を補償している。幾つかのレリーフ15dは、例えば、構造13の開口において、少なくとも1つの電極12及び/又は12と係合するような係合手段として成形できる。
【0062】
この例では、スペーサ本体15の周辺フレーム15aの外側は、発熱エレメント10の少なくとも一部の周辺エッジを構成するように、発熱本体11の材料11aによってコーティングされないように設計される(これに関連して図2を参照)。いずれの場合も、例えば、電極のメッシュ構造が発熱本体11の材料11aの中に完全に埋め込まれる図4の場合のように、スペーサ本体も、オーバーモールドされた材料11aの中に完全に埋め込み可能であることは理解されよう。さらに、使用するスペーサ本体の形状は、その機能が同じままであることを前提として、例示したものとは異なってもよいことは理解されよう。
【0063】
本発明に係るヒータ装置は、複数の発熱エレメントを含んでもよく、及び/又は、既に述べたように、一般的な媒体の加熱とは異なる機能、またはそれに追加する機能も行うコンポーネントに集積してもよい。
【0064】
図11~25に示すものは、前述した特性の両方を実装するのに適した種々の実施形態である。これらの図は、種々の実施形態において、ヒータ装置1および発熱エレメント10が全体的に直線状または平面状である前述した実施形態とは異なり、ヒータ装置またはその発熱エレメントがどのように全体としてアーチ形状を有することができるかを例示する。発熱エレメント(発熱本体またはその電極)の単一の部分でさえも、少なくとも部分的に平面状でもよく、または少なくとも部分的にアーチ形状でもよく、あるいは部分的に平面状で部分的にアーチ形状でもよい。
【0065】
特に図11を参照して、全体として30で示すものは、自動車のコンポーネントであり、特に、一般的な液体物質を収容するためのタンクのコンポーネントである。コンポーネント30は、例えば、水噴射またはアンチノック剤噴射(ADI)として知られるタイプのシステムの一部を形成でき、その場合、対象の液体は、内燃機関のシリンダ中に噴射される水である。代替として、コンポーネント30は、いわゆる選択的触媒還元(SCR)システムの一部を形成でき、その場合、対象の液体は、窒素酸化物を還元するために、排気ラインに注入される尿素を含む水溶液である。
【0066】
他方、本説明の導入部分で述べたように、コンポーネント30は、他のタイプ、例えば、内燃機関の燃料フィルタを収容または設置するためのコンポーネントでもよい。
【0067】
例示の場合、コンポーネントは、実質的にカップ形状の本体を有し、基本的に本発明に係るヒータ装置によって提供される限りにおいて、符号1’で示す略管状の上側部分および、液体用の入口33および出口34が設けられた、好ましくは電気コネクタ3’が設けられた下側箱状部分32を有する下側ベース31が認識できる。しかしながら、上側部分1’は、他の形状を有してもよく、開口部が設けられてもよく、例えば、少なくとも1つの中間開口を設けるために、互いにある距離で設定された複数のアーチ状壁で構成してもよい。
【0068】
箱状部分32は、好ましくは下側蓋(不図示)が設けられ、例えば、電気回路部品などの機能エレメントの内部位置決めを可能にする。この例では、ベース31の本体は、符号35で示すフランジ部分も有し、これは、コンポーネント30を車両の他の部分に固定するため、例えば、コンポーネント30をタンクへ固定または溶接するためなどにも役立つ。
【0069】
同様に、図示のコンポーネント30は、追加の機能エレメント、例えば、符号LSで全体として示すレベルセンサなどのセンサを集積し、これは、いずれの場合も、コンポーネント30の任意のエレメントを構成する。この目的のために、装置1’及び/又はベース31は、適切に成形でき、及び/又は、前述した追加の機能エレメントを収容するための少なくとも1つの開口または台座を設けてもよい。
【0070】
理解できるように、装置1’をベース31に封止方法で接合した後、コンポーネント30の全体として本体が形成され、これは、液体を収容するように設計され、あるいは、いずれの場合も液体がより容易に加熱できる内部領域を画定するように設計された、ある空間(図11に符号Tで示す)を画定する。
【0071】
図12は、ヒータ装置1’およびベース31が互いに別個の部品として構成され、封止方法で共に固定されるタイプのコンポーネント30の部分分解図である。判るように、ヒータ装置1’は、そのケーシング本体(符号2’で示す)を有し、略管状の形状を有し、これは、後述するように、例えば、複数の発熱エレメント上にオーバーモールドされた電気絶縁材料(例えば、ポリマー材料)で製作してもよい。判るように、ここではその下側エッジにおいてケーシング本体2’から突出しているのは、ヒータ装置の電気接続のための端子12aであり、これらは、ベース31に存在する電気回路と電気的に接続され、これはコネクタ3’の個々の端子(不図示)を含む。図において、2つの端子12aだけを示しているが、装置1は、以下に例示するように、2つより多い端子を含んでもよい。
【0072】
再び図12から、この例では、ベース31の上面において、液体用の入口ポート33aおよび出口ポート34aがどのように画定され、これらが入口33および出口34とそれぞれ流体連通していることが判るであろう。さらに、図12に示すものは、例えば、図11のレベルセンサLSなど、追加の機能コンポーネントの位置決めおよび電気接続のための台座36であり、同様に、ベース31のフランジ部分35内で、ヒータ装置1’のケーシング本体2’の下側エッジを封止方法で固定するために、略環状の台座36がどのように画定されるかが判るであろう。ベース31の本体は、ポリマー材料、例えば、ケーシング本体2’を製造するために使用される同じ材料のモールド成形(moulding)によって少なくとも部分的に得られる。
【0073】
図13は、図11~12のヒータ装置1’のケーシング本体2’のオーバーモールドの可能性あるステップを例示する。この例では、ヒータ装置は、全体的にアーチ形状を有する3つの発熱エレメント10を集積するように設計され、これらは、好ましくは、必ずしもではないが、互いに実質的に同じである。この例では、M1で示す金型部品は、ベース部品(参照符号なし)を有し、そこからヒータ装置のケーシング本体2’の内周面を画定するように設計された形状40である。前述したベース部品では、形状40に対して周辺位置に台座41が画定され、そこに発熱エレメント10の端子12aが挿入でき、これらは互いに近接して金型部品の上に位置決めされ、円弧を形成する。金型部品M2は、中空の彫込み(impression)(不図示)を画定しており、図11図12のケーシング本体2’の外周面およびその上部エッジを画定するように設計される。
【0074】
理解できるように、図13のように、発熱エレメント10を金型部品M1の上に位置決めした後、2つの金型部品は、ケーシング本体2’の形状に対して対応する(相補的)形状を有する中空形状の空間を区切るように互いに閉じられる。そして、そして前述の中空空間に注入されるものは、前述したケーシング本体を形成するように設計されたポリマー材料である。凝固および冷却に必要な時間の後、金型部品M1,M2を再び開くことができ、図12に示すように、ケーシング本体2’を含む装置1’が取り出し可能になる。
【0075】
図12図13を参照して例示したものの代替品として、ヒータ装置1’のベース31およびケーシング2’の少なくとも一部が、単一ピース、特に、発熱エレメント10上に必要なポリマー材料をオーバーモールドすることによって得られるピースで構成してもよい。こうした場合、図14図15に概略的に例示され、M3,M4で示すものは、2つの対応する金型部品である。この場合、金型部品M3は、ベース31の外側プロファイルおよびその内側プロファイルの一部を画定するように設計された彫込み43を有する(前述したように、ベース31は、後で付与される蓋によって閉止される下側開口を有することができる)。図13を参照して説明するように、彫込み43内に画定されるものは、発熱エレメント10の端子12aのための台座41である。
【0076】
金型部品M4は、彫込み42を画定し、部分的に見えており、ベース31の外側プロファイルの残部、そしてヒータ装置1’のケーシング本体2’を画定するように設計される(前述した彫込み42内では、図13中の符号40で示すものと類似したタイプの形状も提供されることになる)。
【0077】
よって、この場合も、図14のように、発熱エレメント10を金型部品M3に位置決めした後、2つの金型部品M3,M4は、中空形状の空間を区切るように互いに閉じられ、その中にポリマー材料が注入され、ベース31およびケーシング本体2’の両方を画定する本体を形成する。この場合も、図15に示すように、凝固および冷却に必要な時間の後、金型部品M3,M4を再び開くことができ、コンポーネント30の対応する半製品が取り出し可能である。
【0078】
図16に概略的に示すものは、例えば、ヒータ装置1’の製造に適したタイプのアーチ形状の構成を有する3つの発熱エレメント10である。この例では、各エレメント10は、個々に2つの電極を含み、それぞれ少なくとも1つのメッシュ構造13および少なくとも1つの配電エレメント14によって形成され、個々の端子12aを画定するように成形され、ここでは下向きに突出している。図16で見えるものは、構造13のほんの一部、即ち、エレメント14に溶接された部分であり、構造の残部は、発熱本体11のPTC効果を有する材料11aであるか、またはその中に埋め込まれる。電極は、好ましくは、個々の配電エレメント14が、対応する発熱エレメント10の反対側の長手方向エッジにほぼ設置されるように配置される。これは、いずれの場合も本質的な特徴を構成していない。
【0079】
メッシュ構造13および対応する配電エレメント14は、図17に概略的に示している。判るように、構造13はアーチ形状を有し、エレメント14は単一部分からなり、ここでは構造13の長さ方向Lに延びており、その長手エッジまたはその近傍に固定される。エレメント14の長さは、構造13よりも長く、そのためエレメント14の端子部分が対応する端子12aを提供する。2つの部品13,14の間の接合は、例えば、図7を参照して前述したように、溶接タイプでもよい。図17では、後の図面のように、メッシュ構造13は、極めて広いメッシュ開口で概略的にのみ示しており、より迅速な理解を可能にする。
【0080】
前述したように、メッシュ構造13の少なくとも一部は、発熱本体11のある面に圧力嵌めしてもよく、即ち、構造13を本体11に嵌入させことによってもよい。
【0081】
この関連で、可能性ある技術を図18に例示しており、M5,M6で示すものは、プレス装置の2つの可動エレメントであり、その少なくとも一方が他方に対して可動である。各可動エレメントは、アーチ状電極12,12の対応する部分、および予め形成された発熱本体11の対応する部分をそれぞれ受けるように設計された個々の台座50(ここでは可動エレメントM5の台座のみが見える)を画定できる。本体11は、この場合、PTC効果ポリマーのシートまたは織物(web)から開始する打ち抜き加工または突切りの動作によって得られ、そして必要なアーチ形状の構成を付与するために熱成形され、あるいは、本体11は、アーチ型に直接に射出成形してもよい。
【0082】
電極は、対応する台座50を利用して可動エレメントM5,M6の間に設定され、そして、可動エレメント自体が互いに押し付けられ、その結果、メッシュ構造は、本体11の対向する主面に対して力強くプレスまたは押圧され、その構造を面内に嵌入させる。この目的のために、好ましい実施形態では、可動エレメントM5及び/又はM6の少なくとも一方、または対応するプレス装置は、本体11を加熱して、その適度な軟化を生じさせ、材料11a中への構造の嵌入を容易にするように構成される。そして、特に、その加熱が想定される場合は本体11の冷却後、2つの可動エレメントM5およびM6が互いに離れるように移動し、こうして得られた発熱エレメント10は、図19に例示するように、装置から取り出し可能になる。発熱エレメント10は、図20に示す形態でもよく、構造13のスレッドは材料11aの中に完全に埋め込まれている(可能性として個々の配電エレメント14に溶接されたものを除く)、あるいは、スレッドは、材料11aの中に完全に埋め込まれなければ、部分的に露出してもよい。
【0083】
このタイプの用途では、本体11は、エレメント14の位置決めのために、あるエッジに、より小さい厚さの少なくとも1つの領域(図18、符号11b)を提示するように好ましくは予備成形され、後者の外面は、構造13のスレッドが埋め込まれる本体11の面の表面と実質的に同一平面になるようになる。
【0084】
可動エレメントM5,M6の台座50は、構造13から突出するエレメント14の部分12aを受け入れるように設計された部分を好ましく含むことになる。
【0085】
当然ながら、図18図19を参照して説明した装置は、その機能が同じままであるという前提で、例示したものとは異なる形状を有してもよい。例えば、2つの可動エレメントM5,M6のうちの一方だけが、電極12または12の両方を受け入れるように設計された台座50を含むことができ、予め形成された本体11がその間にセットされ、他方の可動エレメントは、2つの可動エレメントが互いにプレスされた場合、必要に応じて機械的圧力を作用させるように設計されたレリーフ状の部分を含む。
【0086】
図18~20を参照して説明したことは、例えば、図4のように、直線状または平面状の発熱エレメントの場合にも適用できることは理解されよう。当然ながら、対応する彫込み50の可動エレメントM5,M6の異なる形状を伴う。
【0087】
当然ながら、少なくとも部分的にアーチ状である発熱エレメントの場合も、例えば、図2図3の発熱エレメントを参照して前述したように、PTC効果を有するポリマー材料11aは、電極12,12の上に少なくとも部分的にオーバーモールドすることが可能である。こうした場合は図21に概略的に示しており、M7,M8で示すものは、発熱本体11を形成する材料11aの射出用の2つの金型部品である。各金型部品は、アーチ状発熱エレメントのプロファイルの対応する部品を画定する個々の彫込みを含む。
【0088】
また、この場合、前述したように、これらが金型、例えば、図21で見える金型部品M7の彫込み51に挿入される場合、電極12,12の間に介在するスペーサ及び/又は位置決め本体(ここでは符号15’で示す)を設けることが好ましい。図21に示す場合は、電気絶縁材料またはPTC効果を有する抵抗材料で製作できる本体15’は、電極12,12の形状に従ってアーチ状になったほぼ櫛形の形状を有するが、明らかに、この形状は、単なる一例として設けられるものとして理解すべきである。
【0089】
図22は、電極12,12を相互の上部に設置する動作の結果を概略的に示しており、スペーサ本体15’は、これらを適切な距離に維持し、本体15’の指は、ここでは電極自体の長手方向、即ち、配電エレメント14に対してほぼ平行に延びている。図23は、部品M7,M8の間に、電極12,12およびスペーサ本体15’によって形成される集合体または「サンドイッチ」の挿入のステップを示す。部品M7,M8の閉止後、発熱本体11を形成するポリマー材料11aが金型に注入される。図24は、射出された材料の凝固と冷却に必要な時間の後、金型の再開放および発熱エレメントの取り出しという後続ステップを例示する。この場合も、エレメント10は、材料11aに完全に埋め込まれた構造13のスレッド(可能性として個々の配電エレメント14に溶接されたものを除く)とともに存在してもよく、あるいは、成形動作が材料11aによるその完全な被覆を想定していなければ、前述のスレッドは部分的に露出することがある。
【0090】
図25は、図21図24に従って得られる発熱エレメントの部分断面概略図である。この図からスペーサ本体15’が2つの電極12,12の間の空間にある材料11aの中にどのように埋め込まれているかが判る。
【0091】
図26図27は、本発明に係るヒータ装置の発熱エレメントの更なる可能な実施形態の概略図である。これらの図は、エレメント10は必ずしも実質的に四角形または多角形である必要はなく、それは、可能性として部分的に湾曲した周辺プロファイルを有し、及び/又は、湾曲したストレッチおよび直線状のストレッチを含む。
【0092】
図26図27は、同様に、種々の実施形態において、配電エレメント14が、例えば中間カーブを用いて可能性ある寸法変動を補償するために、どのように寸法補償構造を提示できるかを示す。あるいは、実質的に波状の展開部(development)を有するために、または反対方向に角度付与されまたは配向した一連のカーブ及び/又はストレッチによって区別される。
【0093】
このタイプの形状は、特にPTC材料11aで製作された発熱本体11の加熱中に、熱変動、例えば、膨張および収縮、及び/又は、方向L及び/又はWの少なくとも1つでの伸長および短縮などに起因する可能性ある寸法変動を補償するために、配電エレメント14を伸長及び/又は短縮できるために便利であることが判る。
【0094】
好ましくは、前述した寸法補償構造により、電極12,12および発熱本体11の少なくとも一部の異なる材料の間、特に、少なくとも金属製の配電エレメント14とポリマー系PTC材料11aで製作された本体11との間の可能性ある寸法変動を補償することが可能になる。
【0095】
例示した場合、図示した2つのエレメント14は、両方とも幅方向Wに延びる配電部分14aと、長さ方向Lに延びる配電部分14bとを有し、それぞれ対応するメッシュ構造13の個々のエッジの近くにある。好ましくは、必ずしもではないが、電気接続部分、または端子12aは、2つの前記配電部分14a,14bの間の接合領域において画定される。明らかに、このタイプのエレメント14は、一例として、図示したものとは異なる形状を有してもよく、そして1つの配電部分だけを含んでもよい。
【0096】
言うまでもなく、図26図27を参照して説明したタイプの実施形態においても、構造13は、既に上述した方法、例えば、溶接によって、対応するエレメント14に固定してもよく、同様に構造13は、上述した方法で、即ち、機械的圧力により、あるいは材料11aのオーバーモールドによって、発熱本体11に少なくとも部分的に埋め込まれてもよい。図26図27の例では、発熱エレメント10の2つの電極、好ましくは寸法補償構造を備えた電極は、発熱本体11の対応する面の平面に対して実質的に垂直な方法で電流の循環をもたらすために、対応する加熱体11の個々の反対面に設置される。
【0097】
種々の実施形態において、発熱エレメント10の2つの電極は、対応する発熱本体11の同一の面に設置され、発熱本体11の対応する面の平面に対して平行な平面に実質的に従って電流の循環をもたらす。こうした場合は、図28図29に例示しており、実際に、好ましくは、しかし必ずしもそうではないが、電極12,12は、図26図27を参照して前述したものと類似した寸法補償構造を備えており、どのように2つの電極12,12が両方とも本体11の同一の面に設置され、対応する構造13は、ここでは材料11a内に部分的にのみ埋め込まれているかが判るであろう。また、例示した2つのエレメント14は両方とも、幅方向Wに傾斜して延びる配電部分14a、および長さ方向Lに延びる配電部分14bを有し、それぞれ、対応するメッシュ構造13の個々のエッジの近傍で、材料11aの上部に直接に、即ち、構造13の対応する部分の介在なしに設定された各部分14aの一部を備えてもよい。
【0098】
電気接続部分、または端子12aは、ここでは、エレメント14の端部、特に部分14aの端部に画定される。明らかに、エレメント14は、例示したものとは異なる形状を有してもよく、ただ1つの横断方向または長手方向の配電部分も含んでもよい。
【0099】
また、図28図29を参照して説明したタイプの実施形態では、構造13は、上述した方法で、例えば、溶接によって、対応するエレメント14に固定してもよく、構造13は、上述した方法で発熱本体11内に少なくとも部分的に埋め込んでもよい。上記の方法で、即ち、機械的圧力によって、または材料11aのオーバーモールドによって、加熱本体11に埋め込んでもよい。
【0100】
種々の実施形態において、発熱エレメントの少なくとも1つの電極、または各電極は、複数のメッシュ構造13を含み、これらは、好ましくは少なくとも1つの配電エレメントによって互いに電気的に接続される。
【0101】
このタイプの例は、図30図31に概略的に示されており、符号12で示す電極は、第1メッシュ構造13を有し、それに関連して、図6の部分A)で既に示したタイプの対応する配電エレメント14を有し、そして第2メッシュ構造13を有し、これは追加の配電エレメント14(ここでは略L字状)を介して第1メッシュ構造13に接続され、あるいは第2メッシュ構造13に対して横断方向にある部分14aおよび長手方向にある部分14bを有する。追加の配電エレメント14は、好ましくは2つの構造13,13の間でその中間位置で固定され、特に溶接される。
【0102】
前述したように、種々の実施形態において、本発明に係るヒータ装置は、一般的な媒体、例えば、タンクのコンポーネントの加熱とは異なる機能も実施するコンポーネントに集積してもよい。こうした用途では、明らかに、ヒータ装置が全体的にアーチ状である必要はなく、あるいは1つ以上のアーチ状発熱エレメントを示す必要もない。実際、例えば、前述した国際公開第2017/077477A号のように、1つ以上の直線状または平面状発熱エレメントを示してもよい。さらに、1つ以上の平面状ヒータは、必ずしもこうしたコンポーネントの管状部分に集積される必要はない。
【0103】
例えば、図32図33に示すものは、符号30で示したタイプのコンポーネントであり、そのベース31において、直線状または平面状の発熱エレメント10のハウジング37が画定されており、ここでは複数の曲率を示すように成形された周辺プロファイルを有する。これらの図で見えるものは、箱状の部分32を閉じるための、前述したタイプのベース31の下蓋(図32にだけ符号32aで示す)である。台座は、コンポーネント30の格納空間を画定する横壁で実質的に画定される(即ち、図11中の符号Tで示す空間の底壁)。
【0104】
図32図33は、電極12,12の場合を図示するのに同様に有用であり、その配電エレメント14は、閉じたまたは実質的に閉じた、あるいは環状または実質的に環状の展開部を有する。よって、この例では、配電エレメント14は、環状周縁部14dを有し、これは対応するメッシュ構造13の周縁エッジまたはその近傍で実質的に延びている。よって、この周縁部14aは、対応する構造13の長手方向および横断方向の両方に延びている。このタイプの種々の実施形態では、エレメント14はまた、1つ以上の中間配電部分、例えば、エレメント14の中央領域14fに向かって収束する部分14eを含んでもよい。この例では、前述した中央領域14fで開口が画定され、それはコンポーネント30のベース31のハウジング37内に画定された対応する位置決めエレメント37aと結合するように設計される。前述したハウジング37内には、電極のうちの1つ(ここでは電極12)の配電エレメント14のものと実質的に相補的であるプロファイルを有する台座37bも画定される。電極の1つ、ここでは電極122の分配エレメント14のものと実質的に相補的であり、発熱エレメント10の適切な配置にさらに寄与する。
【0105】
説明した発熱エレメント10の存在のために、図32図33のコンポーネント30は、ヒータ1’,30の両方の存在が好ましい場合であっても、必ずしもヒータ装置(符号1’で示す)を集積する必要がないことに留意すべきである。
【0106】
このタイプの実施形態においても、構造13は、既に上述した方法、例えば、溶接によって、対応するエレメント14に固定してもよく、構造13は、上述した方法で、即ち、機械的圧力により、あるいは材料11aのオーバーモールドによって、発熱本体11内に少なくとも部分的に埋め込まれてもよい。図32に示した場合は、構造13は、材料11a内に完全に埋め込まれているが、これは本質的な特性を構成するものではない。
【0107】
再び図示した例を参照して、エレメント14の電気接続部分、または発熱エレメント10の端子12aは、エレメント自体の平面に対して垂直な方向に延びており、この目的のために、電極のエレメント14(ここでは上側電極12のエレメント14)の周辺部14dは、内側に曲がるか(図33中の符号14d)、またはいずれの場合も、他の電極の端子12aの通過を可能にするような形状である。前述したように、いずれの場合も、電極の周辺部14dは、必ずしもそれ自体で閉じる必要はなく、少なくとも1つの中断または不連続を示してもよい。
【0108】
前述したように、メッシュ構造13は、好ましくは0.2mm~0.02mmの間の直径を有する比較的微細な糸状エレメントまたはスレッドの織り交ぜまたは十字交差によって形成されることが好ましい。微細な糸の使用により、前述した材料内へのそれらの少なくとも部分的な埋め込みのために、材料11aへの構造13の効率的な固定を得ることが可能になり、こうして課題である部品間の剥離のリスクに対処できる。
【0109】
例えば、0.1mm未満の直径を有するスレッドは、スレッド自体を材料11a内に力で埋め込む可能にする(前述したように、好ましくは材料11aを加熱することによって)のに好都合であり、これは、小さいメッシュ開口の場合、たとえば0.05mm未満でも好都合である。その代わり、0.1mmを超える直径を有するスレッドは、材料11aが構造13にオーバーモールドされる場合に使用するのにより便利であり、材料自体の通過を可能にするために、より幅広いメッシュ開口、例えば、1mmよりもさらに大きいメッシュ開口を有することが必要がある(一般に、本発明の実装のために使用できる導電性布では、より大きな直径のスレッドに対応するものは、より幅広いメッシュ開口である)。
【0110】
比較的大きい直径のスレッドは、好都合には、より小さい直径の複数のスレッドで置換できる。例えば、0.14mmの直径を有するスレッドの断面は、0.08mmの直径を有する3本のスレッドの断面に実質的に対応する。よって、表皮効果を無視すると、0.14mmの直径を有するスレッドで発生可能な電流の通過は、0.08mmの直径を有する3本のスレッドで発生可能である。ただし、0.08mmの直径を有する3本のスレッドの円周の合計(約0.77mm)を考えた場合、0.14mmの直径を有する1本のスレッドの円周(約0.44mm)の2倍にほぼ等しいことに留意されよう。よって、3本のより細いスレッドの前述したより大きな「全体」円周に対応するのは、メッシュ構造13とPTC効果を有する材料11aとの間のより大きな(ほぼ2倍大きい)接触面であり、よってより良好な電気的接触および構造と材料の間のより広範囲の全体的な機械的接着を伴うことが理解されよう。
【0111】
前述した説明から、本発明の特性は、同様にその利点がそうであるように、明確に明らかになる。本発明に係る電気ヒータ装置は、全体として簡単かつ安価で信頼できる方法で組み立てられる。
【0112】
装置の発熱エレメントの電極が、PTC効果を有する材料内に少なくとも部分的に埋め込まれたメッシュ構造を少なくとも含むという事実は、電極が材料から分離または剥離するリスク(先行技術で遭遇した現象)に対処する。メッシュ構造が比較的広範囲で高密度であること、即ち、比較的微細なスレッドで形成されるという事実は、いずれの場合も電極とPTC効果を有する材料との間の接着および接触の広い表面を確保し、電極自体の間を流れる電流の最適な分布および強度を伴う。少なくとも1つの配電エレメントの電極内での存在は、メッシュ構造のたった数本のスレッドでの望ましくない電流集中を防止し、よってスレッド自体が溶融リスクを防止する。小さい断面のスレッドが、PTC材料とのより良い電気的接触およびより良い機械的接着を達成するために好ましく使用されると仮定すると、リスクはさらにより大きくなる可能性がある。
【0113】
後の請求項で定義されるような本発明の範囲から逸脱することなく、一例として説明した電気ヒータ装置に対して、当業者によって多数の変形が可能であることは明らかである。
【0114】
先に例示した実施形態において、電極12,12の少なくとも1つのメッシュ構造13は、PCT効果を有する材料11a内に直接少なくとも部分的に埋め込まれ、または包囲される。他の可能性ある実施形態では、構造13は、代わりに、それと電気的に接触して本体11を少なくとも部分的にコーティングする更なる電気的熱的伝導性材料、例えば、導電性接着剤または導電性コーティング層に少なくとも部分的に埋め込まれ、または包囲される。これらの実施形態では、発熱本体11は、前述の更なる材料を含み、これは電極12,12の少なくとも1つを発熱本体自体に機械的に固定できるように利用できる。
【0115】
前に見たように、本発明に係る電気ヒータ装置の製造方法は、配電エレメント14を電極のメッシュ構造13に固定することを想定している。好ましくは、この固定は、メッシュ構造13を発熱本体11に取り付ける前に、例えば、前者を後者に強制的に嵌入させ、またはオーバーモールディングにより、例えば、溶接によって実行される。しかしながら、代替として、前述した方法の1つで、メッシュ構造13を最初に発熱本体11に取り付けて、続いてエレメント14を構造13に固定することも可能である。例えば、メッシュ構造は、本体11に取り付けてもよく、前者の少なくとも一部が後者から突出させて、そして配電エレメント14を構造13の前記突出部分に固定する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A)】
図6B)】
図6C)】
図6D)】
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図19
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