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  • 特許-ケイ素含有化合物を有する潤滑剤配合物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】ケイ素含有化合物を有する潤滑剤配合物
(51)【国際特許分類】
   C10M 163/00 20060101AFI20230619BHJP
   C10M 165/00 20060101ALI20230619BHJP
   C10M 159/24 20060101ALN20230619BHJP
   C10M 139/04 20060101ALN20230619BHJP
   C10M 155/02 20060101ALN20230619BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20230619BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20230619BHJP
【FI】
C10M163/00
C10M165/00
C10M159/24
C10M139/04
C10M155/02
C10N10:04
C10N40:25
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021007827
(22)【出願日】2021-01-21
(65)【公開番号】P2021116426
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】62/967,268
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391007091
【氏名又は名称】アフトン・ケミカル・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100196449
【弁理士】
【氏名又は名称】湯澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】アシュトプ・グプタ
(72)【発明者】
【氏名】イアン・ベル
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・コンシェン
(72)【発明者】
【氏名】アレクシー・ネヴェロー
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・ダブリュー.・ルース
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・レミアス
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-141145(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0032543(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M
C10N
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボチャージャー付きガソリン直噴エンジンで使用するために配合された潤滑油組成物であって、
前記潤滑油組成物の総重量に基づいて、50重量%超の潤滑油粘度の基油と、添加剤組成物であって、
a)前記潤滑油組成物の総重量に基づいて、少なくとも1200ppmw~2400ppmwのカルシウムを前記潤滑油組成物に提供する量の1種以上の過塩基性スルホン酸カルシウム洗剤と、
b)前記潤滑油組成物の総重量に基づいて、少なくとも170ppmw~550ppmwのケイ素を前記潤滑油組成物に提供する量の1種以上の式(IA)のケイ素含有化合物であって、
【化1】
式中、R、R、Rが、各々独立して、1~20個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、mが、1~50の整数である、ケイ素含有化合物と、を混合することによって調製される、添加剤組成物と、を含み、
前記1種以上のケイ素含有化合物によって前記潤滑油組成物に提供されるケイ素のppmwと、前記1種以上のカルシウム含有洗剤によって前記潤滑油組成物に提供されるカルシウムのppmwとの比が、少なくとも0.0389~0.1であり、
前記潤滑油組成物が、サリチル酸カルシウム洗剤を含まない、潤滑油組成物。
【請求項2】
、R、及びRが、メチル基である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記式(IA)の化合物がポリジメチルシロキサンである、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記式(IA)の化合物は、数平均分子量が、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定して、100g/mol~1,000g/mol、又は125g/mol~800g/mol、又は150g/mol~600g/molである、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
前記式(IA)の化合物は、数平均分子量が、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定して、少なくとも1,000g/mol、又は1,000g/mol~5,000g/mol、又は1,000g/mol~3866g/mol未満である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
前記式(IA)の化合物は、動粘度が、ASTM-445-19に従って測定して、25℃で、1cSt~299cSt、又は1~50cSt、又は1~30cSt、又は1~10cSt、又は1~10cSt未満である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
前記式(IA)の化合物は、水素原子とケイ素原子との元素組成比が、6.115~9である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
前記式(IA)の化合物は、炭素原子とケイ素原子との元素組成比が、2.038~3である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
前記式(IA)の化合物は、ケイ素原子と酸素原子との元素組成比が、1.019~2である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
前記カルシウム含有洗剤が、前記潤滑油組成物の総重量に基づいて、1.0重量%~10重量%、又は1.0重量%~8重量%、又は1.0重量%~4.0重量%、又は4重量%超~8重量%を提供する量で存在する、請求項1~9のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
前記1種以上のカルシウム含有洗剤が、ASTM-2896によって測定して、225mg KOH/g超、又は250mg KOH/g超、又は275mg KOH/g超、又は少なくとも300mg KOH/gのTBNを有する過塩基性カルシウム含有洗剤である、請求項1~10のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
前記潤滑油組成物が、フェネート含有洗剤からなる群から選択される洗剤を含まない、請求項1~11のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
前記潤滑油組成物が、許容可能な安定性を提供する、請求項1~12のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項14】
前記潤滑油組成物が、ASTM D6557に従う腐食保護を提供する、請求項1~13のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項15】
前記潤滑油組成物は、総硫酸塩灰分含量が、前記潤滑油組成物の総重量に基づいて、2重量%以下、又は1.5重量%以下、又は1.1重量%以下、又は1重量%以下、又は0.8重量%以下、又は0.5重量%以下である、請求項1~14のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項16】
前記潤滑油組成物が、1セグメント当たり25,000サイクルの6セグメントについて2,000rpmのエンジン速度及び18バールの正味平均有効圧力(brake mean effective pressure、BMEP)で動作するGM製2.0リットル4気筒Ecotecターボチャージャー付きガソリン直噴エンジンにおいて決定して、低速プレイグニッション事象の数を、前記添加剤組成物を含まない同じ潤滑油組成物で潤滑された同じエンジンにおける低速プレイグニッション事象の数と比較して低減するのに有効である、請求項1~15のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項17】
ターボチャージャー付きガソリン直噴エンジンにおける低速プレイグニッション(low-speed pre-ignition、LSPI)事象を低減するための方法であって、前記エンジンを請求項1~16のいずれか一項に記載の潤滑油組成物で潤滑することを含み、低速プレイグニッション(LSPI)事象の数が、前記添加剤組成物を含まない同じ潤滑油組成物で潤滑された同じエンジンにおける低速プレイグニッション事象の数と比較して低減される、方法。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか一項に記載の潤滑油組成物でエンジンを潤滑することを含む、腐食保護を提供するための方法。
【請求項19】
前記過塩基性スルホン酸カルシウム洗剤が、前記潤滑油組成物の総重量に基づいて、1200ppmw~2000ppmwのカルシウムを提供するのに十分な量で存在する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項20】
前記式(IA)の化合物が、1~18個の炭素原子を含むアルキル基を末端基とするポリジメチルシロキサンである、請求項1に記載の潤滑油組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ターボチャージャー付きガソリン直噴エンジンにおける低速プレイグニッション(LSPI)性能を改善するための潤滑油組成物に関する。より具体的には、本開示は、1つ以上のカルシウム含有洗浄剤とケイ素含有化合物とを混合することによって調製される添加剤組成物を含む潤滑油組成物と、本明細書に開示される潤滑油組成物でエンジンを潤滑することによってターボチャージャー付きガソリン直噴エンジンにおける低速プレイグニッション(LSPI)性能を改善するための方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボチャージャーまたはスーパーチャージャー付きエンジン(すなわち、ブースト付き内燃エンジン)は、確率的プレイグニッションまたは低速プレイグニッション(または「LSPI」)として知られる異常燃焼現象を呈することがある。LSPIは、超高圧スパイク、不適切なクランク角の間の早期燃焼、およびノックを含み得るプレイグニッション事象である。これらはすべて、個々におよび組み合わせて、エンジンの劣化および/または重大な損傷を引き起こす可能性を有する。しかしながら、LSPI事象は、散発的かつ無制御の様式でのみ生じるため、この現象の原因を特定すること、およびそれを抑制する解決策を策定することは困難である。
【0003】
プレイグニッションは、イグナイターによる空気燃料混合物の所望の点火の前に、燃焼室における空気燃料混合物の点火から生じる燃焼の形態である。エンジンの運転による熱は、燃焼室の一部を、接触時に空気燃料混合物を点火するのに十分な温度まで加熱し得るため、プレイグニッションは、典型的に、高速エンジン運転中に問題となっている。このタイプのプレイグニッションは、時に、ホットスポットプレイグニッションと称される。
【0004】
より最近では、断続的な異常燃焼が、低速および中~高負荷におけるブースト付き内燃エンジンにおいて観察されている。例えば、少なくとも10バールの正味平均有効圧力(BMEP)による、負荷下での、3,000rpm以下におけるエンジンの運転中に、低速プレイグニッションが、ランダムかつ確率的な様式で発生することがある。低速エンジン運転中、圧縮行程時間は最も長い。
【0005】
いくつかの公開された研究は、ターボチャージャーの使用、エンジン設計、エンジンコーティング、ピストン形状、燃料選択、および/またはエンジン油添加剤がLSPI事象の増加に寄与し得ることを実証してきた。1つの理論は、ピストンクレバス(ピストンリングパックとシリンダーライナーとの間の空間)からエンジン燃焼室に入るエンジン油滴の自己イグニッションがLSPI事象の1つの原因であり得ることを示唆している。したがって、ブースト付き内燃エンジンにおいてLSPIを低減または排除するのに有効なエンジン油添加剤成分および/または組み合わせが必要である。
【0006】
いくつかの研究では、LSPIを抑制するのを助けるためにスルホン酸カルシウム洗浄剤の濃度を下げるオプションを模索しているが、この低下は、腐食(例えば、錆)保護など、他の領域における潤滑油の性能に悪影響を及ぼす。スルホン酸マグネシウムは、LSPI性能を改善させながら腐食保護を提供するために、スルホン酸カルシウム洗浄剤の代替としても評価されている。残念ながら、これは、燃料経済などの他の分野での性能の短所になる可能性がある。
【0007】
US2018/0237718は、直噴火花点火内燃エンジンにおける低速プレイグニッションを改善するための潤滑油組成物に関する。潤滑油組成物は、少なくとも150の総塩基数を有する過塩基性カルシウム洗浄剤を含む洗浄剤を含む。潤滑油組成物は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、少なくとも0.08重量%のカルシウム含有量および少なくとも12ppmwのケイ素含有量を有する。
【0008】
US2019/0360383は、直噴火花点火内燃エンジンにおける低速プレイグニッションを改善するための潤滑油組成物に関する。潤滑油組成物は、少なくとも1つのシラン含有化合物と組み合わせた洗浄剤を含み得る。
【0009】
本開示は、特定の潤滑油組成物およびそのような潤滑油組成物を使用する方法を提供することを目的とし、それらは、直噴火花点火内燃エンジンの潤滑のために重要である他の望ましい特性をなお提供しながら、LSPI事象の低減において有意な利益をもたらす。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、50重量%を超える潤滑粘度の基油を含む潤滑油組成物と、カルシウム含有洗浄剤とケイ素含有化合物とを混合することによって調製される添加剤組成物と、に関する。
【0011】
以下の文において、本発明のいくつかの実施形態を説明する。
1.第1の態様では、本発明は、潤滑油組成物に関し、潤滑油組成物は、
潤滑油組成物の総重量に基づいて、50重量%を超える潤滑粘度の基油と、
潤滑油組成物の総重量に基づいて、
a)潤滑油組成物に少なくとも1000ppmwのカルシウムを提供する量の1つ以上のカルシウム含有洗浄剤、および
b)潤滑油組成物に少なくとも50ppmwのケイ素を提供する量の1つ以上のケイ素含有化合物を混合することによって調製される添加剤組成物と、を含み、当該1つ以上のケイ素含有化合物は、
i)式(I)に従うシロキサン、
【化1】
(式中、R、R、Rは、各々独立して、1~20個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、RおよびRは、各々独立して、1~20個の炭素原子を含むアルキル基および6~16個の炭素原子を含むアリール基から選択され、RおよびRは、各々独立して、1~3個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、mは、0~50の数であり、nは、0~50の数であり、m+n<50である)、ならびに
ii)式(II)に従うシラン化合物、
【化2】
(式中、Rは、2~20個の炭素原子を含むアルキル基であり、R、R10、およびR11は、各々独立して、1~3個の炭素原子を含むアルキル基から選択される)、ならびに
iii)シリカおよび/またはケイ素含有ナノ粒子であって、動的光散乱によって測定した場合に、ナノ粒子が、1~500nmのサイズを有する、シリカおよび/またはケイ素含有ナノ粒子からなる群から選択され、
潤滑油組成物に1つ以上のケイ素含有化合物によって提供されるケイ素のppmwの、潤滑油組成物に1つ以上のカルシウム含有洗浄剤によって提供されるカルシウムのppmwに対する比は、0.02~1である。
【0012】
2.ケイ素含有化合物は、式(I)に従う化合物であり得る、文1に記載の潤滑油組成物。
【0013】
3.R、R、およびRは、メチル基であってもよく、n=0であり、mは、1~50未満である、文2に記載の潤滑油組成物。
【0014】
4.RおよびRは、メチル基であってもよく、n=0であり、mは、1~50未満である、文2に記載の潤滑油組成物。
【0015】
5.R、R、R、R、およびRは、メチル基であってもよい、文2に記載の潤滑油組成物。
【0016】
6.nは、1~23であってもよく、mは、1~27であってもよく、R、R、R、R、R、およびRは、各々独立して、1~3個の炭素原子を含むアルキル基から選択してもよく、Rは、1~20個の炭素原子を含むアルキル基から選択してもよい、文2に記載の潤滑油組成物。
【0017】
7.式(I)の化合物が、ポリジメチルシロキサン、ヘキサデシルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、3-エチルヘプタメチルトリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、およびテトラデカメチルヘキサシロキサンからなる群から選択され得る、文2に記載の潤滑油組成物。
【0018】
8.式(I)の化合物が、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した場合に、100g/モル~1,000g/モル、または125g/モル~800g/モル、または150g/モル~600g/モルの数平均分子量を有し得る、文2に記載の潤滑油組成物。
【0019】
9.式(I)の化合物が、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した場合に、少なくとも1,000g/モル、または1,000g/モル~5,000g/モル、または1,000g/モル~3866g/モル未満の数平均分子量を有し得る、文2に記載の潤滑油組成物。
【0020】
10.式(I)の化合物が、ASTM-445-19に従って測定した場合に、25℃で、1cSt~299cSt、または1~50cSt、または1~30cSt、または1~10cSt、または1~10cSt未満の動粘度を有し得る、文2に記載の潤滑油組成物。
【0021】
11.式(I)の化合物が、6.115~9の水素原子のケイ素原子に対する元素比を有し得る、文2に記載の潤滑油組成物。
【0022】
12.式(I)の化合物が、2.038~3の炭素原子のケイ素原子に対する元素比を有し得る、文2に記載の潤滑油組成物。
【0023】
13.式(I)の化合物が、1.019~2のケイ素原子の酸素原子に対する元素比を有し得る、文2に記載の潤滑油組成物。
【0024】
14.ケイ素含有化合物は、式(II)に従う化合物であり得る、文1に記載の潤滑油組成物。
【0025】
15.Rが、11~18個の炭素原子を含むアルキル基であってもよい、文14に記載の潤滑油組成物。
【0026】
16.R、R10、およびR11が、各々独立して、1~2個の炭素原子を含むアルキル基から選択されてもよい、文14に記載の潤滑油組成物。
【0027】
17.式(II)に従う化合物が、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した場合に、100~400g/モルの数平均分子量を有し得る、文14に記載の潤滑油組成物。
【0028】
18.式(II)が、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ウンデシルトリエトキシシラン、およびテトラデシルトリエトキシシラン、またはより好ましくはヘキサデシルトリメトキシシランから選択され得る、文14に記載の潤滑油組成物。
【0029】
19.ケイ素含有化合物が、シリカおよび/またはケイ素含有ナノ粒子であり得る、文1に記載の潤滑油組成物。
【0030】
20.シリカおよび/またはケイ素含有ナノ粒子が、任意選択で可溶化および/または官能化されている、文19に記載の潤滑油組成物。
【0031】
21.ケイ素含有ナノ粒子が、二酸化ケイ素であり得る、文19に記載の潤滑油組成物。
【0032】
22.潤滑油組成物に1つ以上のケイ素含有化合物によって提供されるケイ素のppmwの、潤滑油組成物に1つ以上のカルシウム含有洗浄剤によって提供されるカルシウムのppmwに対する比が、0.027~0.75、または0.035~0.5、または0.0375~0.45であり得る、文1~21のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
【0033】
23.カルシウム含有洗浄剤が、カルシウムスルホネート洗浄剤であり得る、文1~22のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
【0034】
24.カルシウム含有洗浄剤が、潤滑油組成物の総重量に基づいて、1100ppmw~4000ppmwのカルシウム、または約1200ppmw~約3500ppmwのカルシウム、または約1800ppmw~約2500ppmwのカルシウムを提供するのに十分な量で存在し得る、文1~23のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
【0035】
25.カルシウム含有洗浄剤が、潤滑油組成物の総重量に基づいて、1.0重量%~約10重量%、または約1.0重量%~約8重量%、または約1.0重量%~約4.0重量%、または約4重量%超~約8重量%を提供する量で存在し得る、文1~24のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
【0036】
26.1つ以上のカルシウム含有洗浄剤が、ASTM-2896で測定した場合に、225mg KOH/gを超える、または250mg KOH/gを超える、または275mg KOH/gを超える、または少なくとも300mg KOH/gのTBNを有する過塩基性カルシウム含有洗浄剤であり得る、文1~25のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
【0037】
27.潤滑油組成物が、フェネート含有洗浄剤およびカルシウムサリチレート洗浄剤からなる群から選択される洗浄剤を含んでいない場合がある、文1~26のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
【0038】
28.ケイ素含有化合物が、潤滑油組成物の総重量に基づいて、50ppm~約2000ppmのケイ素、または約60ppm~約1500ppmのケイ素、または約70ppm~約1000ppmのケイ素、または約150ppm~約700ppmのケイ素、または約170ppm~約550ppmのケイ素を提供するのに十分な量で存在し得る、文1~27のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
【0039】
29.潤滑油組成物が、許容可能な安定性を提供する、文1~28のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
【0040】
30.潤滑油組成物が、ASTM D6557による腐食保護を提供する、文1~29のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
【0041】
31.潤滑油組成物が、潤滑油組成物の総重量に基づいて、2重量%以下、または約1.5重量%以下、または約1.1重量%以下、または約1重量%以下、または約0.8重量%以下、または約0.5重量%以下の総硫酸灰分を有し得る、文1~30のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
【0042】
32.1セグメントあたり25,000サイクルで6セグメントの間、2,000rpmのエンジン速度かつ約18バールの正味平均有効圧力(BMEP)で運転されたGM2.0リットルの4気筒Ecotecターボチャージャー付きガソリン直噴エンジンにおいて測定した場合に、潤滑油組成物が、添加剤組成物を含まない同じ潤滑油組成物で潤滑された同じエンジンにおける低速プレイグニッション事象の数と比較して、低速プレイグニッション事象の数を低減するのに有効であり得る、文1~31のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
【0043】
33.第2の態様では、文1~32のいずれか1つに記載の潤滑油組成物でエンジンを潤滑することを含む、ターボチャージャー付きガソリン直噴エンジンにおける低速プレイグニッション(LSPI)事象を低減するための方法に関する。
【0044】
34.低速プレイグニッション(LSPI)事象の数は、添加剤組成物を含まない同じ潤滑油組成物で潤滑された同じエンジンにおける低速プレイグニッション事象の数と比較して、低減され得る、文33に記載の方法。
【0045】
35.第3の態様では、本発明は、文1~32のいずれか1つに記載の潤滑油組成物でエンジンを潤滑することを含む、腐食保護を提供するための方法に関する。
【0046】
36.第4の態様では、本発明は、ケイ素含有洗浄剤を調製する方法に関し、方法は、
a)1つ以上のカルシウム含有洗浄剤、および
b)1つ以上のケイ素含有化合物を混合して混合物を形成するステップであって、1つ以上のケイ素含有化合物は、
i)式(I)に従うシロキサン、
【化3】
(式中、R、R、Rは、各々独立して、1~20個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、RおよびRは、各々独立して、1~20個の炭素原子を含むアルキル基および6~16個の炭素原子を含むアリール基から選択され、RおよびRは、各々独立して、1~3個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、mは、0~50の数であり、nは、0~50の数であり、m+n<50である)、
ii)式(III)に従うケイ素含有化合物、
【化4】
(式中、R12、R13、R14、およびR15は、各々独立して、1~20個の炭素原子を含むアルキル基および1~20個の炭素原子を含むアルコキシ基から選択される)、ならびに
iii)シリカおよび/またはケイ素含有ナノ粒子であって、動的光散乱によって測定した場合に、ナノ粒子が、1~500nmのサイズを有する、シリカおよび/またはケイ素含有ナノ粒子からなる群から選択され、
ケイ素含有洗浄剤に1つ以上のケイ素含有化合物によって提供されるケイ素のppmwの、ケイ素含有洗浄剤に1つ以上のカルシウム含有洗浄剤によって提供されるカルシウムのppmwに対する比は、0.02~1である、混合して混合物を形成するステップと、
混合物を約30℃~約90℃の温度に加熱するステップと、を含む。
【0047】
37.c)加熱ステップの後に混合物を濾過するステップをさらに含み得る、文36に記載の方法。
【0048】
38.加熱ステップが、30分~10時間、または1時間~8時間、約35℃~約80℃、または約40℃~約70℃、または約45℃~約65℃の温度で行われ得る、文36~37のいずれか1つに記載の方法。
【0049】
39.ケイ素含有化合物が、式(I)に従う化合物であり得る、文36~38のいずれか1つに記載の方法。
【0050】
40.ケイ素含有化合物が、式(III)に従う化合物であり得る、文36~38のいずれか1つに記載の方法。
【0051】
41.ケイ素含有化合物が、シリカおよび/またはケイ素含有ナノ粒子であり得る、文36~38のいずれか1つに記載の方法。
【0052】
42.第5の態様では、本発明は、
a)1つ以上のカルシウム含有洗浄剤、および
b)1つ以上のケイ素含有化合物を混合して調製されるケイ素含有洗浄剤に関し、1つ以上のケイ素含有化合物は、
i)式(I)に従うシロキサン、
【化5】
(式中、R、R、Rは、各々独立して、1~20個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、RおよびRは、各々独立して、1~20個の炭素原子を含むアルキル基および6~16個の炭素原子を含むアリール基から選択され、RおよびRは、各々独立して、1~3個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、mは、0~50の整数であり、nは、0~50の整数であり、m+n<50である)、
ii)式(III)に従うケイ素含有化合物、
【化6】
(式中、R12、R13、R14、およびR15は、各々独立して、1~20個の炭素原子を含むアルキル基および1~20個の炭素原子を含むアルコキシ基から選択される)、ならびに
iii)シリカおよび/またはケイ素含有ナノ粒子であって、動的光散乱によって測定した場合に、ナノ粒子が、1~500nmのサイズを有する、シリカおよび/またはケイ素含有ナノ粒子からなる群から選択され、
ケイ素含有洗浄剤に1つ以上のケイ素含有化合物によって提供されるケイ素のppmwの、ケイ素含有洗浄剤に1つ以上のカルシウム含有洗浄剤によって提供されるカルシウムのppmwに対する比は、0.02~1である。
【0053】
43.第6の態様では、本発明は、
a)1つ以上のカルシウム含有洗浄剤、および
b)1つ以上のケイ素含有化合物を反応させることにより調製されるケイ素含有洗浄剤に関し、1つ以上のケイ素含有化合物は、
i)式(I)に従うシロキサン、
【化7】
(式中、R、R、Rは、各々独立して、1~20個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、RおよびRは、各々独立して、1~20個の炭素原子を含むアルキル基および6~16個の炭素原子を含むアリール基から選択され、RおよびRは、各々独立して、1~3個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、mは、0~50の整数であり、nは、0~50の整数であり、m+n<50である)、
ii)式(III)に従うケイ素含有化合物、
【化8】
(式中、R12、R13、R14、およびR15は、各々独立して、1~20個の炭素原子を含むアルキル基および1~20個の炭素原子を含むアルコキシ基から選択される)、ならびに
iii)シリカおよび/またはケイ素含有ナノ粒子であって、動的光散乱によって測定した場合に、ナノ粒子が、1~500nmのサイズを有する、シリカおよび/またはケイ素含有ナノ粒子からなる群から選択され、
ケイ素含有洗浄剤に1つ以上のケイ素含有化合物によって提供されるケイ素のppmwの、ケイ素含有洗浄剤に1つ以上のカルシウム含有洗浄剤によって提供されるカルシウムのppmwに対する比は、0.02~1である。
【0054】
44.第7の態様では、本発明は、
潤滑油組成物の総重量に基づいて、50重量%を超える潤滑粘度の基油と、文42~43のいずれか1つで請求されている量の1つ以上のケイ素含有洗浄剤と、を含み、1つ以上のケイ素含有洗浄剤は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、少なくとも50ppmwのケイ素を提供する量で存在する、潤滑油組成物に関する。
【0055】
45.第8の態様では、本発明は、文44に記載の潤滑油組成物でエンジンを潤滑することを含む、ターボチャージャー付きガソリン直噴エンジンにおける低速プレイグニッション(LSPI)事象を低減するための方法に関し、低速プレイグニッション(LSPI)事象の数は、1つ以上のケイ素含有洗浄剤を含んでいない同じ潤滑油組成物で潤滑された同じエンジンにおける低速プレイグニッション事象の数と比較して低減される。
【0056】
46.第9の態様では、本発明は、文44に記載の潤滑油組成物でエンジンを潤滑することを含む、腐食保護を提供するための方法に関する。
【0057】
本明細書で使用される特定の用語の意味を明確にするために、以下の用語の定義が提供される。
【0058】
用語「油組成物」、「潤滑組成物(lubrication composition)」、「潤滑油組成物」、「潤滑油」、「潤滑剤組成物」、「潤滑組成物(lubricating composition)」、「完全配合潤滑剤組成物」、「潤滑剤」、「クランクケース油」、「クランクケース潤滑剤」、「エンジン油」、「エンジン潤滑剤」、「モータ油」、および「モータ潤滑剤」は、主要量の基油に加えて少量の添加剤組成物を含む最終潤滑生成物を指す、同義の完全に互換性のある専門用語であるとみなされる。
【0059】
本明細書で使用される場合、用語「添加剤パッケージ」、「添加剤濃縮物」、「添加剤組成物」、「エンジン油添加剤パッケージ」、「エンジン油添加剤濃縮物」、「クランクケース添加剤パッケージ」、「クランクケース添加剤濃縮物」、「モータ油添加剤パッケージ」、「モータ油濃縮物」は、主要量の基油ストック混合物を除外する潤滑油組成物の一部を指す、同義の完全に互換性のある専門用語であるとみなされる。添加剤パッケージは、粘度指数向上剤または流動点降下剤を含む場合も含まない場合もある。
【0060】
用語「過塩基性」は、金属塩、例えば、スルホネート、カルボキシレート、サリチレート、および/またはフェネートの金属塩に関し、存在する金属の量は、理論量を超える。このような塩は、100%超の転化率を有し得る(すなわち、それらは酸をその「標準」、「中性」の塩に変換するのに必要な理論的金属量の100%以上を含み得る)。しばしばMRと略される表現「金属比」は、既知の化学反応性および化学量論に従って、過塩基性塩中の金属の総化学当量と中性塩中の金属の化学当量との比率を示すために用いられる。標準または中性塩では金属比は1であるが、過塩基性塩ではMRは1より大きい。これらは、一般に、過塩基性、高塩基性、または超塩基性塩と称され、有機硫黄酸、カルボン酸、サリチレート、および/またはフェノールの塩であってもよい。本開示では、過塩基性洗浄剤は、225mg KOH/gを超えるTBNを有する。過塩基性洗浄剤は、ASTM D2896の方法に従って測定した場合に、225mg KOH/gを超えるTBNを各々有する2つ以上の過塩基性洗浄剤の組み合わせであり得る。
【0061】
本明細書で使用される場合、用語「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」は当業者に周知の通常の意味で使用される。具体的には、分子の残りに直接結合した炭素原子を有し、主に炭化水素特性を有する基を指す。各ヒドロカルビル基は、独立して炭化水素置換基から選択され、置換炭化水素置換基は、ハロ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、酸素、および窒素のうち1種以上を含有し、ヒドロカルビル基中の10個の炭素原子毎に2つ以下の非炭化水素置換基が存在する。
【0062】
本明細書で使用される場合、用語「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」は、当業者に周知のその通常の意味で使用される。具体的には、分子の2つの場所で炭素原子によって分子の残りの部分に直接結合し、主に炭化水素の性質を有する基を指す。各ヒドロカルビレン基は、二価炭化水素置換基、およびハロ基、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、酸素と窒素を含む置換二価炭化水素置換基から独立して選択され、ヒドロカルビレン基の10個の炭素原子ごとに2つ以下の非炭化水素置換基が存在する。
【0063】
本明細書で使用される場合、用語「重量パーセント」は、他に明確に述べられていない限り、記載された成分が組成物全体の重量に対して表すパーセンテージを意味する。
【0064】
本明細書で使用される用語「可溶性」、「油溶性」、または「分散性」は、化合物または添加剤が可溶性、溶解性、混和性、または油中にあらゆる割合で懸濁可能であることを示し得るが、必ずしもそうではない。しかしながら、前述の用語は、それらが、油が採油される環境において意図された効果を発揮するのに十分な程度に、油中で可溶性、懸濁性、溶解性、または安定に分散性であることを意味する。さらに、必要に応じて、他の添加剤を追加で組み込むことで、特定の添加剤のより高いレベルの配合が可能となり得る。
【0065】
本明細書で採用される用語「TBN」は、ASTM D2896の方法によって測定した場合に、総塩基数をmg KOH/gで表すために使用される。
【0066】
本明細書で採用される用語「アルキル」は、約1~約100個の炭素原子の直鎖、分枝鎖、環状、および/または置換飽和鎖部分を指す。
【0067】
本明細書で採用される用語「アルケニル」は、約3~約10個の炭素原子の直鎖、分岐鎖、環状、および/または置換の不飽和鎖部分を指す。
【0068】
本明細書で採用される用語「アリール」は、アルキル、アルケニル、アルキルアリール、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロ置換基、ならびに/またはこれらに限定されないが、窒素、酸素、および硫黄を含むヘテロ原子を含み得る、単環式および多環式の芳香族化合物を指す。
【0069】
本明細書の潤滑剤、成分の組み合わせ、または個々の成分は、様々なタイプの内燃エンジンにおける使用に好適であり得る。好適なエンジンのタイプには、重負荷ディーゼル、乗用車、軽負荷ディーゼル、中速ディーゼル、または船舶用エンジンが含まれ得るが、これらに限定されない。内燃エンジンは、ディーゼル燃料エンジン、ガソリン燃料エンジン、天然ガス燃料エンジン、バイオ燃料エンジン、混合ディーゼル/バイオ燃料-燃料エンジン、混合ガソリン/バイオ燃料-燃料エンジン、アルコール燃料エンジン、混合ガソリン/アルコール燃料エンジン、圧縮天然ガス(CNG)燃料エンジン、またはそれらの混合物であってもよい。ディーゼルエンジンは、圧縮点火エンジンであってもよい。ガソリンエンジンは、スパーク点火エンジンであってもよい。内燃エンジンはまた、電気またはバッテリ電源と組み合わせて使用してもよい。このように構成されたエンジンは一般的にはハイブリッドエンジンとして既知である。内燃エンジンは、2ストローク、4ストローク、またはロータリーエンジンであり得る。好適な内燃エンジンは、船舶用ディーゼルエンジン(例えば内陸船舶)、航空用ピストンエンジン、低負荷ディーゼルエンジン、およびオートバイ、自動車、機関車、ならびにトラックエンジンを含む。
【0070】
内燃エンジンは、アルミニウム合金、鉛、スズ、銅、鋳鉄、マグネシウム、セラミック、ステンレス鋼、複合材、および/またはこれらの混合物のうちの1つ以上の成分を含有してもよい。成分は、例えば、ダイヤモンドライクカーボンコーティング、潤滑コーティング、リン含有コーティング、モリブデン含有コーティング、グラファイトコーティング、ナノ粒子含有コーティング、および/またはこれらの混合物でコーティングされてもよい。アルミニウム合金は、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、または他のセラミック材料を含んでもよい。一実施形態では、アルミニウム合金はケイ酸アルミニウム表面である。本明細書で使用される場合、用語「アルミニウム合金」は、「アルミニウム複合体」と同義であり、その詳細な構造にかかわらず、顕微鏡レベルまたはほぼ顕微鏡レベルで混合または反応するアルミニウムおよび他の成分を含む成分または表面を表すことが意図される。これには、アルミニウム以外の金属を有する任意の従来の合金だけでなく、セラミック様材料のような非金属性元素または化合物を有する複合または合金様構造が含まれる。
【0071】
内燃エンジンのための潤滑油組成物は、硫黄、リン、または硫酸灰分(ASTM D-874)含有量とは無関係に、あらゆるエンジン潤滑剤に好適であり得る。エンジンオイル潤滑剤の硫黄含有量は、約1重量%以下、または約0.8重量%以下、または約0.5重量%以下、または約0.4重量%以下、または約0.3重量%以下、または約0.2重量%以下であり得る。一実施形態では、硫黄含有量は、約0.001重量%~約0.5重量%、または約0.01重量%~約0.3重量%の範囲であってもよい。リン含有量は、約0.2重量%以下、または約0.1重量%以下、または約0.085重量%以下、または約0.08重量%以下、またはさらには約0.06重量%以下、約0.055重量%以下、または約0.05重量%以下であってもよい。一実施形態では、リン含有量は、約50ppmw~約1000ppmw、または約325ppmw~約850ppmwであり得る。総硫酸灰分含有量は、約2重量%以下、または約1.5重量%以下、または約1.1重量%以下、または約1重量%以下、または約0.8重量%以下、または約0.5重量%以下であってもよい。一実施形態では、硫酸灰分含有量は、約0.05重量%~約0.9重量%、または0.1重量%もしくは約0.2重量%~約0.45重量%であってもよい。別の実施形態では、硫黄含有量は、約0.4重量%以下であってもよく、リン含有量は、約0.08重量%以下であってもよく、かつ硫酸灰分は、約1重量%以下である。さらに別の実施形態では、硫黄含有量は、約0.3重量%以下であってもよく、リン含有量は、約0.05重量%以下であり、かつ硫酸灰分は、約0.8重量%以下であってもよい。
【0072】
一実施形態では、潤滑油組成物はエンジン油であり、本潤滑油組成物は、(i)約0.5重量%以下の硫黄含有量、(ii)約0.1重量%以下のリン含有量、および(iii)約1.5重量%以下の硫酸灰分含有量を有し得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、約1~約5%の硫黄を含む燃料などの低硫黄燃料を駆動源とするエンジンでの使用に好適である。高速道路車両燃料は、約15ppmwの硫黄(または約0.0015%の硫黄)を含有する。潤滑油組成物は、ターボチャージャーまたはスーパーチャージャー付き内燃エンジンを含むブースト付き内燃エンジンとともに使用するのに好適である。
【0074】
さらに、本明細書の潤滑剤は、ILSAC GF-3、GF-4、GF-5、GF-6、PC-11、CF、CF-4、CH-4、CK-4、FA-4、CJ-4、CI-4Plus、CI-4、API SG、SJ、SL、SM、SN、ACEA A1/ B1、A2/B2、A3/B3、A3/B4、A5/B5、C1、C2、C3、C4、C5、E4/E6/E7/E9、Euro5/6、JASO DL-1、Low SAPS、Mid SAPSなどの1つ以上の業界仕様要件、またはDexos(商標)1、DexosTM2、MB-Approva229.1、229.3、229.5、229.51/229.31、229.52、229.6、229.71、226.5、226.51、228.0/.1,228.2/.3、228.31、228.5、228.51、228.61、VW501.01、502.00、503.00/503.01、504.00、505.00、505.01、506.00/506.01、507.00、508.00、509.00、508.88、509.99、BMW Longlife-01、Longlife-01FE、Longlife-04、Longlife-12FE、Longlife-14FE+、Longlife-17FE+、Porsche A40、C30、PeugeotCitroenAutomobilesB712290、B71 2290、B71 2294、B71 2295、B71 2296、B71 2297、B71 2300、B71 2302、B71 2312、B71 2007、B71 2008、Renault RN0700、RN0710、RN0720、Ford WSS-M2C153-H、WSS-M2C930-A、WSS-M2C945-A、WSS-M2C913A、WSS-M2C913-B、WSS-M2C913-C、WSS-M2C913-D、WSS-M2C948-B、WSS-M2C948-A、GM6094-M、クChrysler MS-6395、Fiat9.55535G1、G2、M2、N1、N2、Z2、S1、S2、S3、S4、T2、DS1、DSX、GH2、GS1、GSX、CR1、Jaguar Land Rover STJLR.03.5003、STJLR.03.5004、STJLR.03.5005、STJLR.03.5006、STJLR.03.5007、STJLR.51.5122などの元の機器メーカーの仕様、またはここに記載されていない過去または将来のPCMOまたはHDDの仕様を満たすのに好適な可能性がある。乗用車用モータオイル(PCMO)用途のためのいくつかの実施形態では、完成した流体中のリンの量は、1000ppmw以下、または900ppmw以下、または800ppmw以下である。
【0075】
他のハードウェアは、開示された潤滑剤とともに使用するのに好適でない可能性がある。用語「機能性流体」は、トラクターの作動流体、自動変速機流体を含む動力伝達流体、連続可変トランスミッション流体および手動トランスミッション流体、トラクターの作動流体を含む作動流体、一部のギア油、パワーステアリング流体、風力タービン、圧縮機に使用される流体、一部の工業用流体、および動力伝達装置の部品に関連する流体を含むがこれらに限定されない様々な流体を含む。自動変速機流体などのこれらの流体の各々の中には、顕著に異なる機能特性の流体を必要する異なる設計を有する様々なトランスミッションのために様々な異なるタイプの流体が存在することに留意すべきである。これは、動力の発生または伝達に使用されない用語「潤滑流体」とは対照的である。
【0076】
例えば、トラクターの油圧作動流体に関しては、これらの流体はエンジンを潤滑させることを除いて、トラクターのすべての潤滑剤用途に使用される汎用品である。これらの潤滑用途には、ギアボックス、パワーテイクオフおよびクラッチ(複数可)、リアアクスル、リダクションギア、湿式ブレーキ、および油圧アクセサリーの潤滑が含まれ得る。
【0077】
機能性流体が自動変速機流体である場合、自動変速機流体は、クラッチ板が動力を伝達するのに十分な摩擦を有していなければならない。しかしながら、流体の摩擦係数は、運転中に流体が加熱されるので温度の影響により低下する傾向がある。トラクターの作動流体または自動変速機流体は高温で高い摩擦係数を維持することが重要であり、さもなければブレーキシステムまたは自動変速機が故障する可能性がある。これはエンジン油の機能ではない。
【0078】
トラクター流体、例えば、スーパートラクタユニバーサル油(STUO)またはユニバーサルトラクタトランスミッション油(UTTO)は、エンジン油の性能と、変速機、ディファレンシャル、ファイナルドライブプラネタリギア、湿式ブレーキ、および油圧性能とを組み合わせてもよい。UTTOまたはSTUO流体を配合するのに使用される添加剤の多くは機能的に類似しているが、適切に添加されないと有害な影響を及ぼすおそれがある。例えば、エンジン油に使用される特定の耐摩耗性および極圧添加剤は、油圧ポンプの銅成分に対して極めて強い腐食性を有する。ガソリンまたはディーゼルエンジンの性能に使用される洗浄剤および分散剤は、湿式ブレーキの性能に有害であり得る。静粛な湿式ブレーキ鳴きに特有の摩擦調整剤は、エンジン油性能に必要な熱安定性を欠いている可能性がある。これらの各流体は機能性、トラクター、または潤滑性にかかわらず、特定の厳格な製造業者の要件を満たすように設計されている。
【0079】
本開示は、自動車用クランクケース潤滑剤としての使用のために配合された新規の潤滑油ブレンドを提供する。本開示の実施形態は、クランクケース用途に好適であり、かつ以下の特質:空気混入、アルコール燃料適合性、酸化防止性、耐摩耗性能、バイオ燃料適合性、泡低減特性、摩擦低減、燃料経済性、プレイグニッション防止、錆抑制、汚泥および/または煤煙分散性、ピストン清浄性、堆積物形成、ならびに耐水性における改善を有する、潤滑油を提供し得る。
【0080】
本開示のエンジン油は、以下に詳細に記載されるように、1つ以上の添加剤を適切な基油配合物に添加することによって配合し得る。添加剤は、事前に混合してから、添加剤パッケージ(または濃縮物)の形態で基油と組み合わせることができ、または代替的に、個別に、または基油と任意の組み合わせで(または両方の混合物と)組み合わせることによって、混合してもよい。完全に配合されたエンジン油は、添加された添加剤およびそれぞれの割合に基づいて、改善された性能特性を示し得る。
【0081】
本開示のさらなる詳細および利点は、以下の説明に部分的に記載される、かつ/または本開示の実施によって習得し得る。本開示の詳細および利点は、添付の特許請求の範囲に特に指摘された要素および組み合わせによって実現および達成し得る。前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は両方とも例示的および説明的なものにすぎず、特許請求される本開示を限定するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1】ケイ素含有洗浄剤を含有する潤滑油組成物に関する高周波往復運動リグ(HFRR)試験の結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0083】
本開示の様々な実施形態は、ブースト付き内燃エンジンにおける低速プレイグニッション事象(LSPI)を低減させるための潤滑油組成物および方法を提供する。特に、本開示のブースト付き内燃エンジンは、ターボチャージャーおよびスーパーチャージャー付き内燃エンジンを含む。ブースト付き内燃エンジンとしては、火花点火エンジン、直噴エンジン、および/またはポート燃料噴射エンジンが挙げられる。火花点火内燃エンジンは、ガソリンエンジンであり得る。
【0084】
一態様では、本開示は、潤滑油組成物で潤滑されたターボチャージャー付きガソリン直噴エンジンにおける低速プレイグニッション事象の数を低減するために配合された潤滑油組成物に関する。潤滑油組成物は、
潤滑油組成物の総重量に基づいて、50重量%を超える基油と、
添加剤組成物と、を含み、添加剤組成物は、
a)潤滑油組成物の総重量に基づいて、潤滑油組成物に少なくとも1000ppmwのカルシウムを提供する量の1つ以上のカルシウム含有洗浄剤、および
b)潤滑油組成物の総重量に基づいて、潤滑油組成物に少なくとも50ppmwのケイ素を提供する量の1つ以上のケイ素含有化合物を混合することにより調製され、当該1つ以上のケイ素含有化合物は、
ii)式(I)に従うシロキサン、
【化9】
(式中、R、R、およびRは、各々独立して、1~20個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、RおよびRは、各々独立して、1~20個の炭素原子を含むアルキル基および6~16個の炭素原子を含むアリール基から選択され、RおよびRは、各々独立して、1~3個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、mは、0~50の整数であり、nは、0~50の整数であり、m+n<50である)、
ii)式(II)に従うシラン化合物、
【化10】
(式中、Rは、2~20個の炭素原子を含むアルキル基であり、R、R10、およびR11は、各々独立して、1~3個の炭素原子を含むアルキル基から選択される)、ならびに
c)シリカおよび/またはケイ素含有ナノ粒子であって、動的光散乱によって測定した場合に、ナノ粒子が、1~500nmのサイズを有する、シリカおよび/またはケイ素含有ナノ粒子からなる群から選択され、
潤滑油組成物に1つ以上のケイ素含有化合物によって提供されるケイ素のppmwの、潤滑油組成物に1つ以上のカルシウム含有洗浄剤によって提供されるカルシウムのppmwに対する比は、0.02~1である。
【0085】
潤滑油組成物は、典型的には、異なるシロキサン化合物の混合物を含有し、その場合、混合物のmおよびnの各々に関する平均値は、整数である必要はないが、代わりに、混合物中のmおよびnの各平均値は、0~50の任意の数であることができる。
【0086】
添加剤組成物を含む本開示の潤滑油組成物は、潤滑油組成物で潤滑されたブースト付き内燃エンジンにおける低速プレイグニッション事象の数を、1つ以上のケイ素含有化合物を含まない同じ潤滑油組成物で潤滑された同じエンジンにおける低速プレイグニッション事象と比較して、低減することができる。低速プレイグニッション事象の数を低減することに加えて、本明細書に開示される潤滑油組成物は、許容可能な貯蔵安定性および腐食保護を提供するように配合される(これは、例えば、ASTM D6557によるボール錆試験によって実証することができる)。
【0087】
本開示の潤滑油組成物の代替の実施形態では、1つ以上の他の化合物を、1つ以上のケイ素含有化合物と組み合わせて、またはその代わりに使用し得る。そのような代替の実施形態を、以下で、より詳細に説明する。
【0088】
別の実施形態では、本開示は、ブースト付き内燃エンジンにおける低速プレイグニッション事象を低減させるための方法を提供する。本方法は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、50重量%を超える潤滑粘度の基油と、潤滑油組成物の総重量に基づいて、1000ppmwを超えるカルシウムを潤滑油組成物に提供するのに十分な量の1つ以上のカルシウム含有洗浄剤と、潤滑油組成物の総重量に基づいて、少なくとも50ppmwのケイ素を潤滑油組成物に提供するのに十分量の上で定義した1つ以上のケイ素含有化合物を含む低速プレイグニッション低減添加剤組成物と、を含む潤滑油組成物でブースト付き内燃エンジンを潤滑することを含む。本方法は、潤滑油組成物で潤滑されたブースト付き内燃エンジンにおける低速プレイグニッション事象を、1つ以上のケイ素含有化合物を含まない同じ潤滑油組成物で潤滑された同じエンジンにおける低速プレイグニッション事象の数と比較して、低減するのに有効である。低速プレイグニッション事象の数を低減することに加えて、本明細書に開示される方法は、腐食保護(ASTM D6557によるボール錆試験によって実証されるように)および許容可能な貯蔵安定性を提供する。
【0089】
本開示の方法の代替の実施形態では、1つ以上の他の化合物を、1つ以上のケイ素含有化合物と組み合わせて、またはその代わりに使用し得る。そのような代替の実施形態を、以下で、より詳細に説明する。
【0090】
いくつかの実施形態では、ターボチャージャーまたはスーパーチャージャーを備えた火花点火直噴エンジンまたはポート燃料噴射内燃エンジンの燃焼室またはシリンダー壁は、潤滑油組成物と運転され、かつ潤滑され、それにより、潤滑油組成物で潤滑されたエンジンにおける低速プレイグニッション事象が低減され得る。
【0091】
任意選択で、本開示の方法は、潤滑油組成物で潤滑した内燃エンジンの低速プレイグニッション事象を測定するステップをさらに含み得る。そのような方法では、内燃エンジンでは、LSPI事象の低減は、5%以上の低減、またはより好ましくは10%以上の低減であり、LSPI事象は、25,000エンジンサイクル中のLSPIカウントであり、エンジンは、2000回転/分で運転され、正味平均有効圧力は18,000kPaである。
【0092】
別の態様では、本開示は、ケイ素含有洗浄剤およびそれらを作製する方法に関する。
【0093】
本開示のケイ素含有洗浄剤は、
a)1つ以上のカルシウム含有洗浄剤、および
b)1つ以上のケイ素含有化合物を混合することによって調製され、1つ以上のケイ素含有化合物は、
i)式(I)に従うシロキサン、
【化11】
(式中、R、R、Rは、各々独立して、1~20個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、RおよびRは、各々独立して、1~20個の炭素原子を含むアルキル基および6~16個の炭素原子を含むアリール基から選択され、RおよびRは、各々独立して、1~3個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、mは、0~50の整数であり、nは、0~50の整数であり、m+n<50である)、
ii)式(III)に従うケイ素含有化合物、
【化12】
(式中、R12、R13、R14、およびR15は、各々独立して、1~20個の炭素原子を含むアルキル基および1~20個の炭素原子を含むアルコキシ基から選択される)、ならびに
iii)シリカおよび/またはケイ素含有ナノ粒子であって、動的光散乱によって測定した場合に、ナノ粒子が、1~500nmのサイズを有する、シリカおよび/またはケイ素含有ナノ粒子からなる群から選択され、
ケイ素含有洗浄剤に1つ以上のケイ素含有化合物によって提供されるケイ素のppmwの、ケイ素含有洗浄剤に1つ以上のカルシウム含有洗浄剤によって提供されるカルシウムのppmwに対する比は、0.02~1である。
【0094】
代替的に、本開示のケイ素含有洗浄剤は、
a)1つ以上のカルシウム含有洗浄剤、および
b)1つ以上のケイ素含有化合物を反応させることによって調製され、1つ以上のケイ素含有化合物は、
i)式(I)に従うシロキサン、
【化13】
(式中、R、R、Rは、各々独立して、1~20個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、RおよびRは、各々独立して、1~20個の炭素原子を含むアルキル基および6~16個の炭素原子を含むアリール基から選択され、RおよびRは、各々独立して、1~3個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、mは、0~50の整数であり、nは、0~50の整数であり、m+n<50である)、
ii)式(III)に従うケイ素含有化合物、
【化14】
(式中、R12、R13、R14、およびR15は、各々独立して、1~20個の炭素原子を含むアルキル基および1~20個の炭素原子を含むアルコキシ基からて選択される)、ならびに
iii)シリカおよび/またはケイ素含有ナノ粒子であって、動的光散乱によって測定した場合に、ナノ粒子が、1~500nmのサイズを有する、シリカおよび/またはケイ素含有ナノ粒子からなる群から選択され、
ケイ素含有洗浄剤に1つ以上のケイ素含有化合物によって提供されるケイ素のppmwの、ケイ素含有洗浄剤に1つ以上のカルシウム含有洗浄剤によって提供されるカルシウムのppmwに対する比は、0.02~1である。
【0095】
別の実施形態では、本開示は、ケイ素含有洗浄剤を作製する方法に関し、方法は、
a)1つ以上のカルシウム含有洗浄剤の量、および
b)1つ以上のケイ素含有化合物の量を混合して混合物を形成するステップであって、1つ以上のケイ素含有化合物は、
i)式(I)に従うシロキサン、
【化15】
(式中、R、R、Rは、各々独立して、1~20個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、RおよびRは、各々独立して、1~20個の炭素原子を含むアルキル基および6~16個の炭素原子を含むアリール基から選択され、RおよびRは、各々独立して、1~3個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、mは、0~50の整数であり、nは、0~50の整数であり、m+n<50である)、
ii)式(III)に従うケイ素含有化合物、
【化16】
(式中、R12、R13、R14、およびR15は、各々独立して、1~20個の炭素原子を含むアルキル基および1~20個の炭素原子を含むアルコキシ基から選択される)、
iii)シリカおよび/またはケイ素含有ナノ粒子であって、動的光散乱によって測定した場合に、ナノ粒子が、1~500nmのサイズを有する、シリカおよび/またはケイ素含有ナノ粒子からなる群から選択され、
ケイ素含有洗浄剤に1つ以上のケイ素含有化合物によって提供されるケイ素のppmwの、ケイ素含有洗浄剤に1つ以上のカルシウム含有洗浄剤によって提供されるカルシウムのppmwに対する比は、0.02~1である、混合して混合物を形成するステップと、
混合物を約30℃~約90℃の温度に加熱するステップと、を含む。
【0096】
別の態様では、本開示は、潤滑油の総重量に基づいて、50重量%を超える基油と、潤滑油組成物の総重量に基づいて、50ppmwのケイ素を提供する量で存在する1つ以上のケイ素含有洗浄剤のある量と、を含む潤滑油組成物に関する。
【0097】
基油
本明細書の潤滑油組成物中に使用される基油は、米国石油協会(American Petroleum Institute)(API)Base Oil Interchangeability Guidelinesに明記される、I~V群における基油のいずれかから選択されてもよい。5つの基油の群は、以下の通りである。
【表1】
【0098】
I群、II群、およびIII群は、鉱物油プロセス原料である。IV群基油は、オレフィン性不飽和炭化水素の重合によって生成される、真の合成分子種を含有する。多くのV群基油も真の合成生成物であり、ジエステル、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、アルキル化芳香族、ポリリン酸エステル、ポリビニルエーテル、および/またはポリフェニルエーテルなどを含み得るが、植物油のような天然に存在する油でもあり得る。グループIII基油は鉱油に由来するが、これらの流体が受ける酷烈な加工はそれらの物理的特性をPAOなどの一部の真の合成物と非常に類似したものにすることに留意すべきである。したがって、グループIII基油由来の油は、業界では合成流体と称されることがある。グループII+は、高粘度指数グループIIを含み得る。
【0099】
開示される潤滑油組成物中に使用される基油は、鉱物油、動物油、植物油、合成油、合成油ブレンド物またはこれらの混合物であり得る。好適な油は、水素化分解、水素化、水素化仕上げ、未精製、精製および再精製油、ならびにこれらの混合物に由来し得る。
【0100】
未精製油は、精製処理を行わないか、それ以上の精製処理はほとんど行われない天然油、鉱物油、または合成源から誘導されたものである。精製油は、1つ以上の特性の改善をもたらし得る、1つ以上の精製ステップで処理されることを除き、未精製油と類似である。好適な精製技術の例は、溶媒抽出、二次蒸留、酸または塩基抽出、濾過、浸透などである。食用品質に精製された油は有用である場合または有用でない場合がある。食用油はホワイトオイルとも呼ばれ得る。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、食用油またはホワイト油を含まない。
【0101】
再精製油は、再生または再加工油としても知られている。これらの油は同一のまたは類似の処理を使用して得られる精製油と類似する。多くの場合、これらの油は、使用済み添加剤および油分解生成物の除去に関する技術によってさらに加工される。
【0102】
鉱油は、掘削によってまたは植物および動物またはそれらの混合物から得られた油を含んでもよい。例えば、そのような油としては、ヒマシ油、ラード油、オリーブ油、ピーナツ油、トウモロコシ油、ダイズ油、および亜麻仁油、ならびに鉱物潤滑油、例えば、液体石油、およびパラフィン系、ナフテン系、もしくは混合されたパラフィン系-ナフテン系タイプの溶媒処理または酸処理された鉱物系潤滑油が挙げられるが、それらに限定されない。必要があれば、かかる油は部分的または完全に水素化されてもよい。石炭または頁岩から誘導された油もまた、有用であり得る。
【0103】
有用な合成潤滑油としては、重合、オリゴマー化、もしくは内部重合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー)などの炭化水素油;ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、1-デセンのトリマーもしくはオリゴマー、例えば、ポリ(1-デセン)(そのような材料はしばしばα-オレフィンと称される)、およびこれらの混合物;アルキル-ベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ-(2-エチルヘキシル)-ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル);ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルエーテル、およびアルキル化ジフェニルスルフィド、ならびにこれらの誘導体、類似体、および相同体、またはこれらの混合物を挙げることができる。ポリアルファオレフィンは、典型的には水素化された物質である。
【0104】
他の合成潤滑油としては、ポリオールエステル、ジエステル、リン含有酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、およびデカンホスホン酸のジエチルエステル)、またはポリマーテトラヒドロフランが挙げられる。合成油は、フィッシャー・トロプシュ反応によって生成されてもよく、典型的に、水素化異性化フィッシャー・トロプシュ炭化水素またはワックスであってもよい。一実施形態では、油は、フィッシャー・トロプシュガス対液体合成手順ならびに他のガス対液体油によって調製することができる。
【0105】
潤滑組成物に含まれる主要量の基油は、I群、II群、III群、IV群、V群、および前述の2つ以上の組み合わせからなる群から選択されることができ、主要量の基油は、組成物中の添加剤成分または粘度指数向上剤の提供に起因する基油以外である。別の実施形態では、潤滑組成物に含まれる主要量の基油は、II群、III群、IV群、V群、および前述の2つ以上の組み合わせからなる群から選択されることができ、主要量の基油は、組成物中の添加剤成分または粘度指数向上剤の提供に起因する基油以外である。
【0106】
存在する潤滑粘度の油の量は、100重量%から、粘度指数向上剤(複数可)および/もしくは流動点降下剤(複数可)ならびに/または他の上面処理添加剤を含む性能添加剤の量の合計を減算した後に残る残余であり得る。例えば、最終流体中に存在し得る潤滑粘度の油は、約50重量%超、約60重量%超、約70重量%超、約80重量%超、約85重量%超、または約90重量%超など、主要量であり得る。
【0107】
添加剤組成物
潤滑油組成物は、少なくとも1つ以上のカルシウム含有洗浄剤と、1つ以上のケイ素含有化合物とを混合することによって得られる添加剤組成物を含む。いくつかの実施形態では、添加剤組成物の1つ以上の成分は、基油に添加する前に事前に混合してもよい。いくつかの実施形態では、添加剤組成物の成分は基油中に混合される。他の実施形態では、添加剤組成物のいくつかの成分は、事前に混合してから基油に添加してもよく、他の成分は、個別にまたは互いに組み合わせて基油に添加してもよい。
【0108】
添加剤組成物の成分は、基油への添加前、または基油への添加後、例えば、エンジンの潤滑中に使用される場合を含めて、互いに反応させ得る。
【0109】
カルシウム含有洗浄剤
添加剤組成物は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、潤滑油組成物に少なくとも1000ppmwのカルシウムを提供するための量の1つ以上のカルシウム含有洗浄剤を含み得る。
【0110】
いくつかの実施形態では、1種以上のカルシウム含有洗浄剤は、1種以上の過塩基性カルシウム含有洗浄剤、または1種以上の低塩基性カルシウム含有洗浄剤、またはこれらの混合物を含み得る。好適な洗浄剤基材としては、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、カリキサレート、サリキサレート、サリチレート、カルボン酸、リン酸、モノおよび/またはジチオリン酸、アルキルフェノール、硫黄結合アルキルフェノール化合物、またはメチレン架橋フェノールが挙げられる。好適な洗浄剤およびそれらの調製方法は、米国特許第7,732,390号、およびその中で引用されている参考文献を含む、多数の特許公報においてより詳細に記載されている。好適な洗浄剤は、石油スルホン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩、およびアリール基がベンジル、トリル、およびキシリルである長鎖モノまたはジアルキルアリールスルホン酸を含み得る。
【0111】
好適な洗浄剤の例としては、カルシウムフェネート、カルシウム硫黄含有フェネート、カルシウムスルホネート、カルシウムカリキサレート、カルシウムサリキサレート、カルシウムサリチレート、カルシウムカルボン酸、カルシウムリン酸、カルシウムモノ-および/またはジ-チオリン酸、カルシウムアルキルフェノール、カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、またはカルシウムメチレン架橋フェノールが挙げられるが、それらに限定されない。
【0112】
過塩基性および低塩基性洗浄剤は、当該技術分野において周知であり、アルカリ金属またはアルカリ土類金属過塩基性洗浄剤であり得る。そのような洗浄剤は、金属酸化物または金属水酸化物を基材および二酸化炭素ガスと反応させることによって調製され得る。基材は、典型的には、酸、例えば、脂肪族置換スルホン酸、脂肪族置換カルボン酸、または脂肪族置換フェノールのような酸である。
【0113】
用語「過塩基性」または「低塩基性」は、存在する金属の量が化学量論量を超える、スルホネート、カルボキシレート、およびフェネートの金属塩などの金属塩に関する。このような塩は、100%超の転化率を有し得る(すなわち、それらは酸をその「標準」、「中性」の塩に変換するのに必要な理論的金属量の100%以上を含み得る)。しばしばMRと略される表現「金属比」は、既知の化学反応性および化学量論に従って、過塩基性塩中の金属の総化学当量と中性塩中の金属の化学当量との比率を示すために使用される。正塩または中性塩において、金属比は1であり、過塩基性塩または低塩基性塩において、MRは1を超える。これらは、一般に、過塩基性、高塩基性、または超塩基性塩と称され、有機硫黄酸、カルボン酸、またはフェノールの塩であってもよい。
【0114】
過塩基性洗浄剤は、ASTM D-2896の方法によって測定した場合に、約225mg KOH/グラム以上のTBN、または約250mg KOH/グラム以上のTBN、または約300mg KOH/グラム以上のTBN、または約350mg KOH/グラム以上のTBN、または約375mg KOH/グラム以上のTBN、または約400mg KOH/グラム以上のTBNを有し得る。
【0115】
好適な過塩基性カルシウム含有洗浄剤の例としては、過塩基性カルシウムフェネート、過塩基性カルシウム硫黄含有フェネート、過塩基性カルシウムスルホネート、過塩基性カルシウムカリキサレート、過塩基性カルシウムサリキサレート、過塩基性カルシウムサリチレート、過塩基性カルシウムカルボン酸、過塩基性カルシウムリン酸、過塩基性カルシウムモノ-および/またはジ-チオリン酸、過塩基性カルシウムアルキルフェノール、過塩基性カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、または過塩基性カルシウムメチレン架橋フェノールが挙げられるが、それらに限定されない。好ましくは、1つ以上の過塩基性カルシウム含有洗浄剤は、過塩基性カルシウムスルホネート洗浄剤から選択される。さらにより好ましくは、過塩基性カルシウム含有洗浄剤は、過塩基性カルシウムスルホネート洗浄剤である。すべての実施形態では、潤滑油組成物は、カルシウムサリチレート洗浄剤を含んでいなくてもよく、かつ/または組成物は、フェネート含有洗浄剤を含んでいなくてもよい。
【0116】
過塩基性カルシウム含有洗浄剤は、1.1:1から、または2:1から、または4:1から、または5:1から、または7:1から、または10:1から、または12:1からの金属対基材比を有し得る。
【0117】
低塩基性洗浄剤は、ASTM D-2896の方法によって測定したときに、最高175mg KOH/g、または最高150mg KOH/gのTBNを有し得る。本発明のカルシウム含有洗浄剤は、低塩基性カルシウム含有洗浄剤を含み得る。
【0118】
好適な低塩基性カルシウム含有洗浄剤の例としては、低塩基性カルシウムスルホネート、低塩基性カルシウム硫黄含有フェネート、および低塩基性カルシウムサリチレートが挙げられるが、それらに限定されない。好ましくは、低塩基性カルシウム洗浄剤は、カルシウムスルホネート洗浄剤である。
【0119】
いくつかの実施形態では、カルシウム含有洗浄剤は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、カルシウムの少なくとも1000ppmwのカルシウム、または1100ppmw~4000ppmwのカルシウム、または約1200ppmw~約3500ppmwのカルシウム、または約1200ppmw~約2400ppmwのカルシウム、または約1200ppmw~約2000ppmw、または約1800ppmw~約2500ppmwのカルシウムを、潤滑油組成物に提供するのに十分な量で存在する。
【0120】
カルシウム含有洗浄剤は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.85重量%~約10重量%、または約1.0重量%~約8重量%、または約1.0重量%~約4.0重量%、または約4重量%超~約8重量%で存在し得る。
【0121】
いくつかの実施形態では、カルシウム含有洗浄剤は、潤滑油組成物に1つ以上のケイ素含有化合物によって提供されるケイ素のppmwの、潤滑油組成物に1つ以上のカルシウム含有洗浄剤によって提供されるカルシウムのppmwに対する比が、0.02~1、または0.025~1、または0.033~1であるような量で存在する。
【0122】
ケイ素含有化合物
添加剤組成物は、潤滑油組成物の総重量に少なくとも50ppmwのケイ素を提供するための量の1つ以上のケイ素含有化合物含み得る。本開示のケイ素含有化合物は油溶性である。
【0123】
本開示の添加剤組成物を調製する際に採用される好適なケイ素含有化合物としては、式(I)に従うシロキサン、式(II)に従うシラン、ならびにシリカおよび/またはケイ素含有ナノ粒子が挙げられる。
【0124】
本開示のシロキサンは、式(I)によって記述することができる:
【化17】
式中、R、R、Rは、各々独立して、1~20個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、RおよびRは、各々独立して、1~20個の炭素原子を含むアルキル基および6~16個の炭素原子を含むアリール基から選択され、RおよびRは、各々独立して、1~3個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、mは、0~50の整数であり、nは、0~50の整数であり、m+n<50である。
【0125】
任意選択で、R、R、R、R、およびRは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクチルデシル、ノナデシル、およびエイコシルから選択されるアルキル基であってもよく、ならびにRおよびRは、メチル、エチル、およびプロピルから選択されるアルキル基であってもよい。
【0126】
いくつかの実施形態では、R、R、およびRは、メチル基であり、n=1であり、mは、1~50未満である。別の実施形態では、RおよびRは、メチル基であり、n=0であり、mは、1~50未満である。シロキサンの別の実施形態では、R、R、R、R、およびRは、メチル基である。
【0127】
別の実施形態では、nは、1~23であり、mは、1~27であり、R、R、R、R、R、およびRは、各々独立して、1~3個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、Rは、1~20個の炭素原子を含むアルキル基から選択される。
【0128】
別の実施形態では、RおよびRは、各々独立して、1~20個の炭素原子を含むアルキル基から選択される。
【0129】
別の実施形態では、RおよびRは、各々独立して、6~16個の炭素原子を含むアルキル基から選択される。任意選択で、RおよびRは、フェニル、ベンジル、ナフチル、トリル、およびキシリルから選択されるアリール基である。
【0130】
いくつかの実施形態では、本開示のシロキサンは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した場合に、100g/モル~1,000g/モル、または125g/モル~800g/モル、または150g/モル~600g/モルの数平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、nは0であり、mは40未満であり、またはmは30未満であり、またはmは20未満であり、またはmは15未満であり、またはmは15未満であり、またはmは10未満であり、またはmは5未満である。
【0131】
いくつかの実施形態では、nは1~50であり、またはnは1~30であり、またはnは1~20であり、またはnは1~10であり、およびmは1~50であり、またはmは1~30であり、またはmは1から20であり、またはmは1~10であり、n+mは50未満である。
【0132】
いくつかの実施形態では、本開示のシロキサンは、GPCによって測定した場合に、少なくとも1,000g/モル、または1,000g/モル~5,000g/モル、または1,000g/モル~3,866g/モル未満の数平均分子量を有し得る。
【0133】
本開示のシロキサンは、好ましくは、ASTM-445-19に従って測定した場合に、25℃で、1cSt~299cSt、または1~50cSt、または1~30cSt、または1~10cSt、または1~10cSt未満の動粘度を有する。
【0134】
本発明のシロキサンは、6.115~9の水素原子のケイ素原子に対する元素比、2.038~3の炭素原子のケイ素原子に対する元素比、および1.019~2のケイ素原子の酸素原子に対する元素比のうちの1つ以上を有し得る。
【0135】
本開示の添加剤組成物において採用されるシロキサンの好適な例は、ポリジメチルシロキサン、ヘキサデシルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、3-エチルヘプタメチルトリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、およびテトラデカメチルヘキサシロキサンから選択され得る。
【0136】
本開示のシランは、式(II)によって記述することができる:
【化18】
式中、Rは、2~20個の炭素原子を含むアルキル基であり、R、R10、およびR11は、各々独立して、1~3個の炭素原子を含むアルキル基から選択される。
【0137】
いくつかの実施形態では、Rは、11~18個の炭素原子を含むアルキル基である。他の実施形態では、R、R10、およびR11は、各々独立して、1~3個の炭素原子、または1~2個の炭素原子を含むアルキル基から選択される。
【0138】
好ましくは、本開示のシラン化合物は、GPCによって測定した場合に、100~400g/モルの平均数分子量を有する。シラン化合物の好適な例は、ヘキサデシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、n-デシルトリエトキシシラン、ウンデシルトリエトキシシラン、およびテトラデシルトリエトキシシランから選択され得る。好ましくは、本開示のシラン化合物は、ウンデシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン、およびヘキサデシルトリメトキシシランから選択される。
【0139】
任意選択で、Rは、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクチルデシル、ノナデシル、およびエイコシルから選択されるアルキル基であってもよく、R、R10、およびR11は、メチル、エチル、およびプロピルから選択されるアルキル基であってもよい。好ましくは、Rは、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクチルデシルから選択されるアルキル基である。
【0140】
代替的に、ケイ素含有化合物は、シリカおよび/またはケイ素含有ナノ粒子、例えば、様々な形態のシリカ(二酸化ケイ素)または他の粒子状ケイ素含有化合物であり得る。ナノ粒子は、ASTM E2490-09(2015)に従った動的光散乱法で測定した場合に、1~500nm、または1~400nm、または1~300nm、または1~250nmの範囲の3つの外寸を有する化合物と定義される。シリカおよび/またはケイ素含有ナノ粒子は、可溶化かつ/または官能化され得る。
【0141】
好ましくは、ケイ素含有化合物が、潤滑油組成物の総重量に基づいて、50ppm~約2000ppmのケイ素、または約60ppm~約1500ppmのケイ素、または約70ppm~約1000ppmのケイ素、または約150ppm~約700ppmのケイ素、または約170ppm~約550ppmのケイ素を提供するのに十分な量で存在する。
【0142】
ケイ素含有洗浄剤
本開示の代替の実施形態は、ケイ素含有洗浄剤およびそれらを作製する方法に関する。
【0143】
一実施形態では、ケイ素含有洗浄剤は、1つ以上のカルシウム含有洗浄剤と1つ以上のケイ素含有化合物とを混合して混合物を形成することによって、調製される。次いで、混合物を、約30℃~約90℃、または約35℃~約80℃、または約40℃~約70℃、または約45℃~約65℃の温度に加熱する。加熱のステップは、約30分~10時間、または約1時間~8時間、または約2時間~約7時間、行われ得る。好ましくは、混合物は、プロセス全体を通して連続的に撹拌される。好適な撹拌速度は、約300rpm~約600rpm、または約400rpm~約500rpm、または約450rpm~であり得る。
【0144】
いくつかの実施形態では、方法は、混合ステップの前に、1つ以上のカルシウム含有洗浄剤を、約30℃~約90℃、または約35℃~約80℃、または約40℃~約70℃、または約45℃~約65℃の温度に加熱する第1のステップを含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、方法は、混合物を加熱するステップ後に、混合物を濾過するステップをさらに含む。好ましくは、濾過ステップは、0.22μmフィルターを有する圧力濾過システムを採用する。
【0146】
方法の例示的な実施形態では、ケイ素含有洗浄剤は、1つ以上のカルシウム含有洗浄剤を、例えば450rpmで、撹拌しながら、例えば、少なくとも45℃の温度に加熱することによって、調製され得る。温度は、熱電対ベースの制御システムを使用して測定および制御することができる。少なくとも45℃の温度に達したら、1つ以上のケイ素含有化合物を添加する。混合物が少なくとも45℃の温度に達したら、それを、少なくとも45℃の温度に維持しながら、例えば、1~5時間、撹拌される。次いで、任意選択で撹拌を続けながら、生成物を冷却する。少なくとも1つのカルシウム含有およびケイ素含有洗浄剤化合物を含む反応生成物が形成される。
【0147】
方法の別の例示的な実施形態では、ケイ素含有洗浄剤は、1つ以上のケイ素含有化合物を1つ以上のカルシウム洗浄剤と混合することによって、調製され得る。次いで、混合物は、少なくとも65℃の温度に約7時間加熱され得る。続いて、混合物を、0.22μmフィルターを備えた圧力濾過システムを使用して濾過した。
【0148】
ケイ素含有洗浄剤を作製する際に採用される好適なカルシウム含有洗浄剤(複数可)としては、カルシウムフェネート、カルシウム硫黄含有フェネート、カルシウムスルホネート、カルシウムカリキサレート、カルシウムサリキサレート、カルシウムサリチレート、カルシウムカルボン酸、カルシウムリン酸、カルシウムモノ-および/またはジ-チオリン酸、カルシウムアルキルフェノール、カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、カルシウムメチレン架橋フェノールを挙げることができ、前述のすべての中性、低塩基性、および過塩基性バージョンを含む。過塩基性カルシウム含有洗浄剤は、すべてをASTM D-2896の方法によって測定した場合に、少なくとも約225mg KOH/g、少なくとも約225mg KOH/g~約400mg KOH/g、少なくとも約225mg KOH/g~約350mg KOH/g、または約230mg KOH/g~約350mg KOH/gの総塩基数を有する。そのような洗浄剤組成物が不活性希釈剤、例えば、プロセス油、通常は鉱油で形成される場合、総塩基数は、希釈剤、および洗浄剤組成物に含有され得る任意の他の材料(例えば、促進剤など)を含む組成物全体の塩基性を反映している。
【0149】
ケイ素含有洗浄剤を調製するための1つ以上のケイ素含有化合物の好適な例としては、式(I)のシロキサン、本明細書に開示されるシリカおよび/またはケイ素含有ナノ粒子、ならびに式(III)に従うケイ素含有化合物が挙げられる:
【化19】
式中、R12、R13、R14、およびR15は、各々独立して、1~20個の炭素原子を含むアルキル基および1~20個の炭素原子を含むアルコキシ基から選択される。
【0150】
いくつかの実施形態では、式(III)の化合物は、シランおよびシリケートから選択される。いくつかの実施形態では、R12は、11~18個の炭素原子を含むアルキル基である。他の実施形態では、R13、R14、およびR15は、各々独立して、1~3個の炭素原子、または1~2個の炭素原子を含むアルキル基から選択される。
【0151】
好ましくは、本開示のシラン化合物は、GPCによって測定した場合に、100~400g/モルの数平均分子量を有する。シラン化合物の好適な例は、ヘキサデシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、n-デシルトリエトキシシラン、ウンデシルトリエトキシシラン、およびテトラデシルトリエトキシシランから選択され得る。好ましくは、本開示のシラン化合物は、ウンデシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン、およびヘキサデシルトリメトキシシランから選択される。
【0152】
任意選択で、R12は、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクチルデシル、ノナデシル、およびエイコシルから選択されるアルキル基であってもよく、R、R10、およびR11は、メチル、エチル、およびプロピルから選択されるアルキル基であってもよい。好ましくは、Rは、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクチルデシルから選択されるアルキル基である。
【0153】
いくつかの実施形態では、R12、R13、R14、およびR15は、各々独立して、1~10個の炭素原子、または1~8個の炭素原子、または2~6個の炭素原子を含むアルコキシ基から選択される。
【0154】
シリケート化合物の好適な例は、テトラメチルシリケートおよびテトラエチルシリケートから選択され得る。
【0155】
本開示の方法によって調製されるケイ素含有洗浄剤は、ケイ素含有洗浄剤の総重量に基づいて、好ましくは、約0.01重量%~約5重量%のケイ素、または約0.1重量%~約4重量%のケイ素、または約0.25重量%~約3重量%のケイ素を含有する。
【0156】
好ましくは、ケイ素含有洗浄剤に1つ以上のケイ素含有化合物によって提供されるケイ素のppmwの、ケイ素含有洗浄剤に1つ以上のカルシウム含有洗浄剤によって提供されるカルシウムのppmwに対する比は、0.02~1である。
【0157】
いくつかの実施形態では、1つ以上のカルシウム含有洗浄剤によって混合物に提供されるCaのppmwの、1つ以上のケイ素含有化合物によって混合物に提供されるSiのppmwに対する比は、10~30である。
【0158】
酸化防止剤
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択で、1つ以上の酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤化合物は既知のものであり、例えば、フェネート、フェネートスルフィド、硫化オレフィン、ホスホ硫化テルペン、硫化エステル、芳香族アミン、アルキル化ジフェニルアミン(例えば、ノニルジフェニルアミン、ジ-ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジ-オクチルジフェニルアミン)、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、アルキル化フェニル-アルファ-ナフチルアミン、ヒンダード非芳香族アミン、フェノール、ヒンダードフェノール、油溶性モリブデン化合物、高分子酸化防止剤、またはそれらの混合物が挙げられる。酸化防止剤化合物は、単独でまたは組み合わせて使用することができる。
【0159】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は、立体障害基として、第二級ブチル基および/または第三級ブチル基を含有してもよい。フェノール基は、ヒドロカルビル基および/または第2の芳香族基に結合する架橋基でさらに置換されていてもよい。好適なヒンダードフェノール酸化防止剤の例には、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-プロピル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールまたは4-ブチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、または4-ドデシル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールを含む。一実施形態では、ヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであってもよく、例えばBASFから入手可能なIrganox(商標)L-135または2,6-ジ-tert-ブチルフェノールおよびアルキルアクリレートから誘導される付加生成物を含むことができ、アルキル基は、約1~約18個、または約2~約12個、または約2~約8個、または約2~約6個、または約4個の炭素原子を含有してもよい。別の市販のヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであってもよく、Albemarle Corporationから入手可能なEthanox(商標)4716を含み得る。
【0160】
有用な酸化防止剤は、ジアリールアミンおよび高分子量フェノールを含んでもよい。一実施形態では、本潤滑油組成物は、ジアリールアミンと高分子量フェノールとの混合物を含有してもよいため、各酸化防止剤は、本潤滑油組成物の最終重量に基づいて、最大約5重量%を提供するのに十分な量で存在してもよい。一実施形態では、酸化防止剤は、本潤滑油組成物の最終重量に基づき、約0.3~約1.5重量%のジアリールアミンと約0.4~約2.5重量%の高分子量フェノールとの混合物であってもよい。
【0161】
硫化されて硫化オレフィンを形成することができる好適なオレフィンの例は、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ポリイソブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、またはこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセンまたはこれらの混合物、ならびにこれらの二量体、三量体、および四量体は特に有用なオレフィンである。代替的に、オレフィンは、1,3-ブタジエンなどのジエンのディールス・アルダー付加物およびブチルアクリレートなどの不飽和エステルであってもよい。
【0162】
別のクラスの硫化オレフィンには、硫化脂肪酸およびそのエステルが含まれる。脂肪酸は、しばしば、植物油または動物油から得られ、典型的には約4~約22個の炭素原子を含有する。好適な脂肪酸およびこれらのエステルの例としては、トリグリセリド、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、またはこれらの混合物が挙げられる。しばしば、脂肪酸は、ラード油、トール油、ピーナツ油、大豆油、綿実油、ヒマワリ種子油、またはこれらの混合物から得られる。脂肪酸および/またはエステルは、α-オレフィンなどのオレフィンと混合してもよい。
【0163】
別の代替の実施形態では、抗酸化剤組成物はまた、上記のフェノール性および/またはアミン性抗酸化剤に加えて、モリブデン含有抗酸化剤を含む。これらの3つの酸化防止剤の組み合わせが使用される場合、好ましくは、フェノール、アミン、およびモリブデン含有の比は、(0~2):(0~2):(0~1)である。
【0164】
1つ以上の酸化防止剤は、潤滑油組成物の約0重量%~約20重量%、または約0.1重量%~約10重量%、または約1重量%~約5重量%を含む範囲で存在してもよい。
【0165】
耐摩耗剤
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択で、1つ以上の耐摩耗剤を含有してもよい。好適な耐摩耗剤の例は、金属チオホスフェート、金属ジアルキルジチオホスフェート、これらのリン酸エステルまたは塩、ホスフェートエステル(複数可)、ホスファイト、リン含有カルボン酸エステル、エーテル、またはアミド、硫化オレフィン、チオカルバメートエステル、アルキレン結合チオカルバメート、およびビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドを含むチオカルバメート含有化合物、ならびにこれらの混合物を含むがこれらに限定されない。好適な耐摩耗剤はモリブデンジチオカルバメートであり得る。リン含有耐摩耗剤は、欧州特許第612839号により詳細に記載されている。ジアルキルジチオホスフェート塩中の金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅、チタン、または亜鉛であり得る。有用な耐摩耗剤は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛であり得る。
【0166】
好適な耐摩耗剤のさらなる例としては、チタン化合物、酒石酸塩、タルトリミド、リン化合物の油溶性アミン塩、硫化オレフィン、亜リン酸塩(例えば、亜リン酸ジブチル)、ホスホン酸塩、チオカルバメート含有化合物、例えば、チオカルバミン酸エステル、チオカルバミン酸アミド、チオカルバミン酸エーテル、アルキレン結合チオカルバメート、および二硫化ビス(S-アルキルジチオカルバミル)が挙げられる。酒石酸塩またはタルトリミドは、アルキル-エステル基を含有することができ、アルキル基上の炭素原子の合計は、少なくとも8であり得る。耐摩耗剤は、一実施形態では、クエン酸塩を含んでもよい。
【0167】
耐摩耗剤は、潤滑油組成物の約0重量%~約15重量%、または約0.01重量%~約10重量%、または約0.05重量%~約5重量%、または約0.1重量%~約3重量%を含む範囲で存在してもよい。
【0168】
ホウ素含有化合物
本明細書の潤滑油組成物は、任意選択で、1つ以上のホウ素含有化合物を含有してもよい。
【0169】
ホウ素含有化合物の例としては、米国特許第5,883,057号に開示されているように、ホウ酸エステル、ホウ酸脂肪アミン、ホウ酸エポキシド、ホウ酸化洗浄剤、およびホウ酸化スクシンイミド分散剤などのホウ酸化分散剤が挙げられる。
【0170】
ホウ素含有化合物は、存在する場合には、潤滑油組成物の最大約8重量%、約0.01重量%~約7重量%、約0.05重量%~約5重量%、または約0.1重量%~約3重量%を提供するのに十分な量で使用することができる。
【0171】
追加の洗浄剤
本潤滑油組成物は、任意選択で、1つ以上の中性、低塩基性、または過塩基性洗浄剤、またはそれらの混合物をさらに含んでもよい。好適な洗浄剤基材としては、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、カリキサレート、サリキサレート、サリチレート、カルボン酸、リン酸、モノ-および/もしくはジ-チオリン酸、アルキルフェノール、硫黄結合アルキルフェノール化合物、またはメチレン架橋フェノールが挙げられる。好適な洗浄剤およびその調製方法は、US7,732,390およびその中に引用されている参考文献を含む多数の特許公報により詳細に記載されている。
【0172】
洗浄剤基材は、限定するものではないが、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、リチウム、バリウム、またはそれらの混合物などのアルカリまたはアルカリ土類金属によって塩化され得る。いくつかの実施形態では、洗浄剤は、バリウムを含まない。いくつかの実施形態では、洗浄剤は、マグネシウムまたはカルシウムなどの微量の他の金属を、50ppmw以下、40以下、30ppmw以下、20ppmw以下、または10ppmw以下などの量で含有し得る。好適な洗浄剤は、石油スルホン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩、およびアリール基がベンジル、トリル、およびキシリルである長鎖モノまたはジアルキルアリールスルホン酸を含み得る。好適な洗浄剤の例としては、マグネシウムフェネート、マグネシウム硫黄含有フェネート、マグネシウムスルホネート、マグネシウムカリキサレート、マグネシウムサリキサレート、マグネシウムサリチレート、マグネシウムカルボン酸、マグネシウムリン酸、マグネシウムモノ-および/もしくはジ-チオリン酸、マグネシウムアルキルフェノール、マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、マグネシウムメチレン架橋フェノール、ナトリウムフェネート、ナトリウム硫黄含有フェネート、ナトリウムスルホネート、ナトリウムカリキサレート、ナトリウムサリキサレート、ナトリウムサリチレート、ナトリウムカルボン酸、ナトリウムリン酸、ナトリウムモノ-および/もしくはジ-チオリン酸、ナトリウムアルキルフェノール、ナトリウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、またはナトリウムメチレン架橋フェノールが挙げられるが、それらに限定されない。
【0173】
好適な過塩基性洗浄剤の例としては、過塩基性マグネシウムフェネート、過塩基性マグネシウム硫黄含有フェネート、過塩基性マグネシウムスルホネート、過塩基性マグネシウムカリキサレート、過塩基性マグネシウムサリキサレート、過塩基性マグネシウムサリチレート、過塩基性マグネシウムカルボン酸、過塩基性マグネシウムリン酸、過塩基性マグネシウムモノ-および/もしくはジ-チオリン酸、過塩基性マグネシウムアルキルフェノール、過塩基性マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、または過塩基性マグネシウムメチレン架橋フェノールが挙げられるが、それらに限定されない。
【0174】
過塩基性洗浄剤は、1.1:1から、または2:1から、または4:1から、または5:1から、または7:1から、または10:1からの金属対基材比を有してもよい。
【0175】
いくつかの実施形態では、洗浄剤はエンジン内の錆を低減または防止するのに有効である。
【0176】
追加の洗浄剤は、約0重量%~約10重量%、または約0.1重量%~約8重量%、または約1重量%~約4重量%、または約4重量%超~約8重量%で存在し得る。
【0177】
分散剤
本潤滑油組成物は、任意選択で、1つ以上の分散剤またはこれらの混合物をさらに含んでもよい。分散剤は、潤滑油組成物に混合する前に灰分を形成する金属を含まず、潤滑剤に添加するとき通常灰分に寄与しないため、しばしば無灰タイプの分散剤と呼ばれている。無灰タイプの分散剤は、極性基が比較的高分子量の炭化水素鎖に結合することを特徴とする。典型的な無灰分散剤には、N-置換長鎖アルケニルスクシンイミドが含まれる。N置換長鎖アルケニルスクシンイミドの例には、ポリイソブチレン置換基の数平均分子量が、GPCによって測定して、約350~約50,000、または~約5000、または~約3000の範囲にあるポリイソブチレンスクシンイミドが含まれる。スクシンイミド分散剤およびそれらの調製は、例えば、米国特許第7,897,696号または米国特許第4,234,435号に開示されている。ポリオレフィンは、約2~約16個、または約2~約8個、または約2~約6個の炭素原子を含有する重合性モノマーから調製することができる。スクシンイミド分散剤は、典型的には、典型的にポリ(エチレンアミン)であるポリアミンから形成されたイミドである。
【0178】
好ましいアミンは、ポリアミンおよびヒドロキシアミンから選択される。使用できるポリアミンの例には、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、およびペンタエチルアミンヘキサミン(PEHA)などのより高い同族体が含まれるが、これらに限定されない。
【0179】
好適な重ポリアミンは、TEPAおよびPEHA(ペンタエチレンヘキサミン)などの少量の低級ポリアミンオリゴマーを含むが、主に6つ以上の窒素原子、1分子あたり2つ以上の第一級アミン、および従来のポリアミン混合物より広範な分岐を有するオリゴマーを含むポリアルキレン-ポリアミンの混合物である。重質ポリアミンは、好ましくは、分子あたり7つ以上の窒素を含み、分子あたり2つ以上の第一級アミンを含むポリアミンオリゴマーを含む。重質ポリアミンは、28重量%(例えば、32重量%超)を超える全窒素と、当量当たり120~160グラムの当量の第一級アミン基を含む。
【0180】
好適なポリアミンは、一般にPAMとして知られており、TEPAとペンタエチレンヘキサミン(PEHA)がポリアミンの主要部分であり、通常は約80%未満であるエチレンアミンの混合物を含有する。
【0181】
典型的には、PAMは、1グラムあたり8.7~8.9ミリ当量の第一級アミン(第一級アミンの当量あたり115~112グラムの当量)および約33~34重量%の総窒素含有量を有する。実質的にTEPAがなく、PEHAがごく少量であるが、主に6つ以上の窒素とより広範な分岐を持つオリゴマーを含むPAMオリゴマーのより重いカットは、分散性が改善された分散剤を生成し得る。
【0182】
一実施形態では、本開示は、GPCによって測定されるように、約350~約50,000、または~約5000、または~約3000の範囲の数平均分子量を有するポリイソブチレンに由来する少なくとも1つのポリイソブチレンスクシンイミド分散剤をさらに含む。ポリイソブチレンスクシンイミドは、単独で、または他の分散剤と組み合わせて使用してもよい。
【0183】
いくつかの実施形態では、ポリイソブチレンは、含まれるときには、50モル%超、60モル%超、70モル%超、80モル%超または90モル%超の末端二重結合の含有量を有し得る。このようなPIBは高反応性PIB(「HR-PIB」)とも呼ばれる。上記のGPCによって測定したときに約800~約5000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBが、本開示の実施形態における使用に好適である。従来のPIBは、典型的に、50モル%未満、40モル%未満、30モル%未満、20モル%未満、または10モル%未満の末端二重結合の含有量を有する。
【0184】
GPCによって測定したときに約900~約3000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBが、好適であり得る。そのようなHR-PIBは、市販されているか、またはBoerzelらの米国特許第4,152,499号およびGateauらの米国特許第5,739,355号に記載されているように三塩化ホウ素のような非塩素化触媒の存在下でのイソブテンの重合によって合成することができる。前述の熱エン反応で使用される場合、HR-PIBは、反応性の増大により、反応中のより高い変換率、および少ない沈殿物の形成量をもたらし得る。好適な方法は、米国特許第7,897,696号に記載されている。
【0185】
一実施形態では、本開示は、ポリイソブチレン無水コハク酸(「PIBSA」)から誘導される少なくとも1つの分散剤をさらに含む。PIBSAは、ポリマー当たり平均約1.0~約2.0のコハク酸部分を有してもよい。
【0186】
アルケニルまたはアルキル無水コハク酸の活性%はクロマトグラフィー技術を使用して測定することができる。この方法は、米国特許第5,334,321号の第5欄および第6欄に記載されている。
【0187】
ポリオレフィンの変換率は、米国特許第5,334,321号の第5欄および第6欄の式を使用して活性物質%から計算される。
【0188】
特に明記しない限り、すべてのパーセンテージは、重量パーセントであり、すべての分子量は、市販のポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される数平均分子量である(較正基準として数平均分子量180から約18,000)。
【0189】
一実施形態では、分散剤は、ポリアルファオレフィン(PAO)無水コハク酸から誘導され得る。
【0190】
一実施形態では、分散剤はオレフィン無水マレイン酸コポリマーから誘導され得る。一例として、分散剤はポリPIBSAとして記載され得る。
【0191】
一実施形態では、分散剤は、エチレン-プロピレンコポリマーにグラフト化される無水物に由来してもよい。
【0192】
好適なクラスの窒素含有分散剤は、オレフィンコポリマー(OCP)、より具体的には、無水マレイン酸でグラフト化され得るエチレン-プロピレン分散剤から誘導され得る。機能性OCPと反応させることができる窒素含有化合物のより完全なリストは、米国特許第7,485,603号、同第7,786,057号、同第7,253,231号、同第6,107,257号、および同第5,075,383号に記載され、および/または市販されている。
【0193】
代替的に、ヒドロカルビル-ジカルボン酸のヒドロカルビル部分または成分A)の無水物は、エチレン-アルファオレフィンコポリマーから誘導され得る。本明細書に記載のコポリマーは、複数のエチレン単位および複数の1つ以上のC~C10アルファ-オレフィン単位を含む。C~C10アルファ-オレフィン単位は、プロピレン単位を含み得る。
【0194】
エチレン-アルファオレフィンコポリマーは、典型的に、校正基準としてポリスチレンを使用してGPCで測定したとき、5,000g/モル未満の数平均分子量を有し、またはコポリマーの数平均分子量は、4,000g/モル未満、または3,500g/モル未満、または3,000g/モル未満、または2,500g/モル未満、または2,000g/モル未満、1,500g/モル未満、または1,000g/モル未満であり得る。いくつかの実施形態では、コポリマーの数平均分子量は、800~3000g/モルであり得る。
【0195】
エチレン-アルファオレフィンコポリマーのエチレン含有量は、80モル%未満70モル%未満、または65モル%未満、または60モル%未満、または55モル%未満、または50モル%未満、または45モル%未満、または40モル%未満であり得る。コポリマーのエチレン含有量は、少なくとも10モル%および80モル%未満、または少なくとも20モル%および70モル%未満、または少なくとも30モル%および65モル%未満、または少なくとも40モル%および60モル%未満であり得る。
【0196】
エチレン-アルファオレフィンコポリマーのC~C10アルファ-オレフィン含有量は、少なくとも20モル%、または少なくとも30モル%、または少なくとも35モル%、または少なくとも40モル%、または少なくとも45モル%、または少なくとも50モル%、または少なくとも55モル%、または少なくとも60モル%であり得る。
【0197】
いくつかの実施形態では、エチレン-アルファオレフィンコポリマーの分子の少なくとも70モル%が不飽和基を有し得るか、当該不飽和基の少なくとも70モル%が、末端ビニリデン基または末端ビニリデン基の三置換異性体に位置し得るか、またはコポリマーの少なくとも75モル%が、末端ビニリデン基または末端ビニリデン基の三置換異性体で終結するか、またはコポリマーの少なくとも80モル%が、末端ビニリデン基または末端ビニリデン基の三置換異性体で終結するか、またはコポリマーの少なくとも80モル%が、末端ビニリデン基または末端ビニリデン基の三置換異性体で終結するか、または、コポリマーの少なくとも85モル%が、末端ビニリデン基または末端ビニリデン基の三置換異性体で終結するか、またはコポリマーの少なくとも90モル%が、末端ビニリデン基または末端ビニリデン基の三置換異性体で終結するか、またはコポリマーの少なくとも95モル%が、末端ビニリデン基または末端ビニリデン基の三置換異性体で終結する。コポリマーの末端ビニリデンおよび末端ビニリデンの三置換異性体は、以下の構造式(A)~(C)のうちの1つ以上を有する:
【化20】
式中、Rは、C~Cアルキル基を表し、
【化21】
は、結合が前記コポリマーの残りの部分に結合していることを示す。
【0198】
エチレン-アルファオレフィンコポリマーは、13C NMR分光法によって測定した場合に、2.8未満の平均エチレン単位ランレングス(nC2)を有している場合があり、また、以下の式によって示される関係も満たす:
【数1】
式中、
EEE=(xC2
EEA=2(xC2)2(1-xC2)、
AEA=xC2(1-xC2
C2は、H-NMR分光法によって測定した場合に、ポリマーに組み込まれたエチレンのモル分率であり、Eは、エチレン単位を表し、Aは、アルファ-オレフィン単位を表している。コポリマーは、2.6未満、または2.4未満、または2.2未満、または2未満の平均エチレン単位ランレングスを有し得る。平均エチレンランレングスnc2も、次の式で示される関係を満たすことができる。
C2、実際<nC2、統計
【0199】
コポリマーのクロスオーバー温度は、-20℃以下、-25℃以下、または-30℃以下、または-35℃以下、または-40℃以下であり得る。コポリマーは、4以下、または3以下、または2以下の多分散指数を有し得る。コポリマー中の単位トライアドの20%未満がエチレン-エチレン-エチレントライアドであり得るか、またはコポリマー中の単位トライアドの10%未満がエチレン-エチレン-エチレントライアドであるか、またはコポリマー中の単位トライアドの5%未満がエチレン-エチレン-エチレントライアドである。エチレン-アルファオレフィンコポリマーおよびそれから作製された分散剤のさらなる詳細は、米国受入官庁に提出されたPCT/US18/37116に見出すことができ、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0200】
好適な分散剤の1つのクラスは、マンニッヒ塩基であってもよい。マンニッヒ塩基は、より高分子量のアルキル置換フェノール、ポリアルキレンポリアミン、およびホルムアルデヒドのようなアルデヒドの縮合によって形成される物質である。マンニッヒ塩基は、米国特許第3,634,515号により詳細に記載されている。
【0201】
好適なクラスの分散剤は、高分子量エステルまたは半エステルアミドであってもよい。
【0202】
好適な分散剤はまた、従来の方法によって任意の様々な薬剤のいずれかと反応させて後処理し得る。これらの中には、ホウ素、尿素、チオウレア、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、無水マレイン酸、ニトリル、エポキシド、カーボネート、環状炭酸塩、ヒンダードフェノールエステル、およびリン化合物などがある。US7,645,726、US7,214,649、およびUS8,048,831は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0203】
炭酸塩およびホウ酸の後処理に加えて、化合物はいずれも、異なる特性を改善または付与するように設計された様々な後処理により後処理、またはさらに後処理され得る。このような後処理には、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,241,003号の27~29欄に要約されたものが含まれる。このような処理には、
無機リン酸または無水物(例えば、米国特許第3,403,102号および同第4,648,980号)、
有機リン化合物(例えば、米国特許第3,502,677号)、
五硫化リン、
既に上述したホウ素化合物(例えば、米国特許第3,178,663号および第4,652,387号)、
カルボン酸、ポリカルボン酸、無水物、および/または酸ハライド(例えば、米国特許第3,708,522号および第4,948,386号)、
エポキシドポリエポキシド、またはチオエポキシド(例えば、米国特許第3,859,318号および同第5,026,495号)、
アルデヒドまたはケトン(例えば、米国特許第3,458,530号)、
二硫化炭素(例えば、米国特許第3,256,185号)、
グリシドール(例えば、米国特許第4,617,137号)、
尿素、チオ尿素、またはグアニジン(例えば、米国特許第3,312,619号、同第3,865,813号、および英国特許第GB1,065,595号)、
有機スルホン酸(例えば、米国特許第3,189,544号および英国特許第GB2,140,811号)、
シアン化アルケニル(例えば、米国特許第3,278,550号および3,366,569)、
ジケテン(例えば、米国特許第3,546,243号)、
ジイソシアネート(例えば、米国特許第3,573,205号)、
アルカンスルトン(例えば、米国特許第3,749,695号)、
1,3-ジカルボニル化合物(例えば、米国特許第4,579,675号)、
アルコキシル化アルコールまたはフェノールの硫酸塩(例えば、米国特許第3,954,639号)、
環状ラクトン(例えば、米国特許第4,617,138号、同第4,645,515号、同第4,668,246号、同第4,963,275号、および同第4,971,711号)、
環状炭酸塩もしくはチオ炭酸塩、直鎖状モノ炭酸塩もしくはポリ炭酸塩、またはクロロギ酸塩(例えば、米国特許第4,612,132号、同第4,647,390号、同第4,646,886号、同第4,670,170号)、
窒素含有カルボン酸(例えば、米国特許第4,971,598号および英国特許第GB2,140,811号)、
ヒドロキシ保護クロロジカルボニルオキシ化合物(例えば、米国特許第4,614,522号)、
ラクタム、チオラクタム、チオラクトン、またはジチオラクトン(例えば、米国特許第4,614,603号および同第4,666,460号)、
環状炭酸塩もしくはチオ炭酸塩、直鎖状モノ炭酸塩もしくはポリ炭酸塩、またはクロロギ酸塩(例えば、米国特許第4,612,132号、同第4,647,390号、同第4,646,860号、同第4,670,170号)、
窒素含有カルボン酸(例えば、米国特許第4,971,598号および英国特許第GB2,440,811号)、
ヒドロキシ保護クロロジカルボニルオキシ化合物(例えば、米国特許第4,614,522号)、
ラクタム、チオラクタム、チオラクトン、またはジチオラクトン(例えば、米国特許第4,614,603号および同第4,666,460号)、
環状カルバメート、環状チオカルバメート、または環状ジチオカルバメート(例えば、米国特許第4,663,062号および同第4,666,459号)、
ヒドロキシ脂肪族カルボン酸(例えば、米国特許第4,482,464号、同第4,521,318号、同第4,713,189号)、
酸化剤(例えば、米国特許第4,379,064号)、
五硫化リンおよびポリアルキレンポリアミンの組み合わせ(例えば、米国特許第3,185,647号)、
カルボン酸またはアルデヒドまたはケトンおよび硫黄または塩化硫黄の組み合わせ(例えば、米国特許第3,390,086号、同第3,470,098号)、
ヒドラジンおよび二硫化炭素の組み合わせ(例えば、米国特許第3,519,564号)、
アルデヒドおよびフェノールの組み合わせ(例えば、米国特許第3,649,229号、同第5,030,249号、同第5,039,307号)、
アルデヒドおよびジチオリン酸のO-ジエステルの組み合わせ(例えば、米国特許第3,865,740号)、
ヒドロキシ脂肪族カルボン酸およびホウ酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,554,086号)、
ヒドロキシ脂肪族カルボン酸、それに次ぐホルムアルデヒドおよびフェノールの組み合わせ(例えば、米国特許第4,636,322号)、
ヒドロキシ脂肪族カルボン酸、およびそれに次ぐ脂肪族ジカルボン酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,663,064号)、
ホルムアルデヒドおよびフェノール、ならびにそれに次ぐグリコール酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,699,724号)、
ヒドロキシ脂肪族カルボン酸またはシュウ酸およびそれに次ぐジイソシアネートの組み合わせ(例えば、米国特許第4,713,191号)、
リンの無機酸もしくは無水物またはその部分もしくは完全硫黄類似体およびホウ素化合物の組み合わせ(例えば、米国特許第4,857,214号)、
有機二酸、それに次ぐ不飽和脂肪酸、およびそれに次ぐニトロソ芳香族アミン、任意選択でそれに続くホウ素化合物、ならびにそれに次ぐグリコール化剤の組み合わせ(例えば、米国特許第4,973,412号)、
アルデヒドおよびトリアゾールの組み合わせ(例えば、米国特許第4,963,278号)、
アルデヒドおよびトリアゾール、それに次ぐホウ素化合物の組み合わせ(例えば、米国特許第4,981,492号)、
環状ラクトンとホウ素化合物との組み合わせ(例えば、米国特許第4,963,275号および同第4,971,711号)などによる処理が含まれる。上記の特許は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0204】
好適な分散剤のTBNは、約50%の希釈油を含有する分散剤試料で測定した場合、約5~約30TBNに匹敵する、油を含まない基準で約10~約65mg KOH/gであり得る。TBNは、ASTM D2896の方法で測定される。
【0205】
存在する場合、分散剤抑制剤は、本潤滑油組成物の最終重量を基準として、最大約20重量%を提供するのに十分な量で使用され得る。使用され得る分散剤の別の量は、本潤滑油組成物の最終重量を基準として、約0.1重量%~約15重量%、または約0.1重量%~約10重量%、または約3重量%~約10重量%、または約1重量%~6重量%、または約7重量%~約12重量%であり得る。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、混合分散剤系を利用する。単一のタイプまたは任意の所望の比の2つ以上のタイプの分散剤の混合物を使用することができる。
【0206】
摩擦調整剤
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択で、1つ以上の摩擦調整剤も含有し得る。好適な摩擦調整剤は、金属含有および金属フリー摩擦調整剤を含むことができ、好適な摩擦調整剤としては、イミダゾリン、アミド、アミン、スクシンイミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、アミンオキシド、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、第四級アミン、イミン、アミン塩、アミノグアニジン、アルカノールアミド、ホスホネート、金属含有化合物、グリセロールエステル、硫化脂肪化合物およびオレフィン、ヒマワリ油、他の天然に存在する植物油または動物油、ジカルボン酸エステル、ポリオールのエステルまたは部分エステル、ならびに1つ以上の脂肪族または芳香族カルボン酸などを挙げることができるが、それらに限定されない。
【0207】
好適な摩擦調整剤は、直鎖状、分岐鎖状、もしくは芳香族ヒドロカルビル基、またはそれらの混合物から選択されるヒドロカルビル基を含んでもよく、かつ飽和であっても不飽和であってもよい。ヒドロカルビル基は、炭素および水素または硫黄もしくは酸素のようなヘテロ原子で構成されてもよい。ヒドロカルビル基は約12~約25個の炭素原子の範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、摩擦調整剤は長鎖脂肪酸エステルであってもよい。他の実施形態では、長鎖脂肪酸エステルはモノエステル、またはジエステル、または(トリ)グリセリドであってもよい。摩擦調整剤は、長鎖脂肪アミド、長鎖脂肪エステル、長鎖脂肪エポキシド誘導体、または長鎖イミダゾリンであってもよい。
【0208】
他の好適な摩擦調整剤は、有機、無灰(金属不含)、窒素非含有有機摩擦調整剤を含んでもよい。かかる摩擦調整剤は、カルボン酸および無水物をアルカノールと反応させることによって形成されるエステルを含み得、一般に、親油性炭化水素鎖に共有結合した極性末端基(例えば、カルボキシルまたはヒドロキシル)を含む。有機無灰窒素非含有摩擦調整剤の例は、一般に、オレイン酸のモノ-、ジ-およびトリ-エステルを含み得るモノオレイン酸グリセロール(GMO)として知られている。他の好適な摩擦調整剤は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,723,685号に記載されている。
【0209】
アミン系摩擦調整剤はアミンまたはポリアミンを含んでもよい。かかる化合物は、直鎖、飽和もしくは不飽和のいずれか、またはそれらの混合物であるヒドロカルビル基を有することができ、約12~約25個の炭素原子を含有してもよい。好適な摩擦調整剤のさらなる例には、アルコキシル化アミンおよびアルコキシル化エーテルアミンが含まれる。そのような化合物は、飽和、不飽和、またはこれらの混合物のいずれかの直鎖であるヒドロカルビル基を有することができる。これらは、約12~約25個の炭素原子を含有してもよい。例としては、エトキシル化アミンおよびエトキシル化エーテルアミンが挙げられる。
【0210】
アミンおよびアミドは、それ自体として、または酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、メタホウ酸塩、ホウ酸またはホウ酸モノ-、ジ-またはトリ-アルキルなどのホウ素化合物との付加物もしくは反応生成物の形態で使用することができる。他の好適な摩擦調整剤は、全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,300,291号に記載されている。
【0211】
摩擦調整剤は、約0重量%~約10重量%、または約0.01重量%~約8重量%、または約0.1重量%~約4重量%などの範囲で任意選択で存在してもよい。
【0212】
モリブデン含有成分
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択で、1種以上のモリブデン含有化合物を含有し得る。油溶性モリブデン化合物は、耐摩耗剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、またはそれらの混合物の機能的性能を有していてもよい。油溶性モリブデン化合物は、モリブデンジチオカルバメート、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、ジチオホスフィン酸モリブデン、モリブデン化合物のアミン塩、キサントゲン酸モリブデン、チオキサントンモリブデン、モリブデン硫化物、カルボン酸モリブデン、モリブデンアルコキシド、三核有機モリブデン化合物、および/またはこれらの混合物を含んでもよい。モリブデン硫化物は二硫化モリブデンを含む。二硫化モリブデンは安定な分散液の形態であり得る。一実施形態では、油溶性モリブデン化合物は、モリブデンジチオカルバメート、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、モリブデン化合物のアミン塩、およびこれらの混合物からなる群から選択され得る。一実施形態では、油溶性モリブデン化合物は、モリブデンジチオカルバメートであってもよい。
【0213】
使用することができるモリブデン化合物の好適な例には、R.T.Vanderbilt Co.,Ltd.のMolyvan822(商標)、Molyvan(商標)A、Molyvan2000(商標)およびMolyvan855(商標)、ならびにAdeka Corporationから入手可能なSakura-Lube(商標)S-165、S-200、S-300、S-310G、S-525、S-600、S-700、およびS-710などの商品名で販売されている市販の材料、およびそれらの混合物が挙げられる。好適なモリブデン成分は、全体が参照により本明細書に組み込まれる、US5,650,381、US RE37,363E1、US RE38,929E1およびUS RE40,595E1に記載されている。
【0214】
追加的に、モリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物であってもよい。含まれるものは、水素ナトリウムモリブデン酸塩、MoOCl4、MoO2Br2、Mo2O3Cl6、三酸化モリブデンまたは類似する酸性モリブデン化合物である、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、および他のアルカリ金属モリブデン酸塩および他のモリブデン塩である。代替的に、その組成物は、例えば、米国特許第4,263,152号、同第4,285,822号、同第4,283,295号、同第4,272,387号、同第4,265,773号、同第4,261,843号、同第4,259,195号、および同第4,259,194号、ならびにWO94/06897に記載されている塩基性窒素化合物のモリブデン/硫黄錯体によるモリブデンを用いて、提供することができ、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0215】
別のクラスの好適な有機モリブデン化合物は、式Mo3SkLnQzの化合物などの三核モリブデン化合物およびそれらの混合物であり、式中、Sは硫黄を表し、Lは有機基が化合物を油中に可溶性または分散性にするのに十分な炭素原子を有する独立して選択された配位子を表し、nは1~4であり、kは4~7であり、Qは水、アミン、アルコール、ホスフィンおよびエーテルなどの中性電子供与性化合物の群から選択され、zは0~5の範囲にあり、非化学量論値を含む。すべての配位子の有機基の中に、少なくとも25個、少なくとも30個、または少なくとも35個の炭素原子など、少なくとも21個の総炭素原子が存在してもよい。追加の好適なモリブデン化合物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,723,685号に記載されている。
【0216】
油溶性モリブデン化合物は、約0.5ppmw~約2000ppmw、約1ppmw~約700ppmw、約1ppmw~約550ppmw、約5ppmw~約300ppmw、または約20~約250ppmwのモリブデンを提供するのに十分な量で存在し得る。
【0217】
追加の遷移金属含有化合物
別の実施形態では、油溶性化合物は、追加の遷移金属含有化合物またはメタロイドであり得る。追加の遷移金属としては、バナジウム、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、タンタル、タングステンなどを挙げることができるが、それらに限定されない。好適なメタロイドとしては、ホウ素、アンチモン、テルルなどが挙げられるが、それらに限定されない。
【0218】
粘度指数向上剤
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択で、1つ以上の粘度指数向上剤も含有し得る。好適な粘度指数向上剤としては、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン-イソプレンポリマー、スチレン/マレイン酸エステルコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンコポリマー、水素化イソプレンポリマー、アルファ-オレフィン無水マレイン酸コポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、またはそれらの混合物を挙げることができる。粘度指数向上剤は星型ポリマーを含んでもよく、好適な例は、米国公開第2012/0101017(A1)号に記載されている。
【0219】
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択で、粘度指数向上剤に加えて、または粘度指数向上剤の代わりに、1つ以上の分散剤粘度指数向上剤も含有し得る。好適な粘度指数向上剤は、官能化ポリオレフィン、例えば、アシル化剤(無水マレイン酸など)とアミンとの反応生成物で官能化されているエチレン-プロピレンコポリマー、アミンで官能化されているポリメタクリレート、またはアミンと反応したエステル化無水マレイン酸-スチレンコポリマーを含んでもよい。
【0220】
粘度指数向上剤および/または分散剤粘度指数向上剤の総量は、潤滑油組成物の約0重量%~約20重量%、約0.1重量%~約15重量%、約0.1重量%~約12重量%、または約0.5重量%~約10重量%であってもよい。
【0221】
他の任意選択の添加剤
他の添加剤は、潤滑流体に要求される1つ以上の機能を実行するように選択されてもよい。さらに、1つ以上の上記添加剤は多官能性であってもよく、本明細書で記述される機能にさらなる機能を提供してもよく、またはそれ以外の機能を提供してもよい。
【0222】
本開示に基づく潤滑油組成物は任意選択で他の性能添加剤を含み得る。他の性能添加剤は、本開示に明記される添加剤に対する追加であっても、かつ/または金属不活性剤、粘度指数改善剤、洗浄剤、無灰TBNブースター、摩擦調整剤、耐摩耗剤、腐食防止剤、防錆剤、分散剤、分散剤粘度指数改善剤、極圧剤、酸化防止剤、泡抑制剤、解乳化剤、乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤、およびそれらの混合物のうちの1つ以上を含んでもよい。典型的には、完全配合潤滑油は、これらの性能添加剤のうちの1つ以上を含有する。
【0223】
好適な金属不活性化剤は、ベンゾトリアゾール誘導体(典型的にトリルトリアゾール)、ジメルカプトチアジアゾール誘導体、1,2,4-トリアゾール、ベンズイミダゾール、2-アルキルジチオベンズイミダゾール、または2-アルキルジチオベンゾチアゾール、エチルアクリレートおよび2-エチルヘキシルアクリレートならびに任意選択で酢酸ビニルのコポリマーを含む泡抑制剤、トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、および(エチレンオキシド-プロピレンオキシド)ポリマーを含む解乳化剤、無水マレイン酸-スチレンのエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、またはポリアクリルアミドを含む流動点降下剤を含む。
【0224】
好適な発泡防止剤としては、シロキサン、ポリシロキサン、およびポリジメチルシロキサンなどのケイ素系化合物が挙げられる。
【0225】
好適な流動点降下剤は、ポリメチルメタクリレートまたはそれらの混合物を含み得る。流動点降下剤は、本潤滑油組成物の最終重量を基準として、約0重量%~約1重量%、約0.01重量%~約0.5重量%、または約0.02重量%~約0.04重量%を提供するのに十分な量で存在し得る。
【0226】
好適な防錆剤は、フェラスメタル表面の腐食を抑制する特性を有する単一化合物、または化合物の混合物であってもよい。本明細書で有用な防錆剤の非限定的な例には、2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、およびセロチン酸などの油溶性高分子量有機酸、ならびにトール油脂肪酸、オレイン酸およびリノール酸から生成された二量体および三量体酸を含む油溶性ポリカルボン酸が挙げられる。他の好適な腐食防止剤には、約600~約3000の分子量範囲の長鎖アルファ、オメガ-ジカルボン酸、およびテトラプロペニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、およびヘキサデセニルコハク酸などの、アルケニル基が約10個以上の炭素原子を含むアルケニルコハク酸が挙げられる。別の有用なタイプの酸性腐食防止剤は、アルケニル基に約8~約24個の炭素原子を有するアルケニルコハク酸と、ポリグリコールのようなアルコールとの半エステルである。かかるアルケニルコハク酸の対応する半アミドも有用である。有用な防錆剤は高分子量の有機酸である。いくつかの実施形態では、エンジン油は、防錆剤を含まない。
【0227】
存在する場合、錆抑制剤は、本潤滑油組成物の最終重量を基準として、約0重量%~約5重量%、約0.01重量%~約3重量%、約0.1重量%~約2重量%を提供するのに十分な量で使用され得る。
【0228】
一般的に言えば、好適なクランクケース潤滑剤は、以下の表に列挙する範囲にある添加剤成分を含み得る。
【表2】
【0229】
上記各成分の百分率は、最終潤滑油組成物の重量に基づく各成分の重量パーセントを表す。潤滑油組成物の残部は1つ以上の基油からなる。
【0230】
本明細書に記載の組成物の配合に使用される添加剤は、基油に個々にまたは様々なサブコンビネーションで混合され得る。しかしながら、添加剤濃縮物(すなわち、添加剤プラス炭化水素溶媒のような希釈剤)を使用して、成分のすべてを同時に混合することが好適であり得る。
【実施例
【0231】
以下の実施例は、本開示の方法および組成物を例示するものであって、限定するものではない。本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、当該分野において通常用いられる様々な条件およびパラメータの他の好適な修正および調整は、当業者にとって既知である。本明細書で引用したすべての特許および刊行物は、それらの全体が参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0232】
カルシウム含有洗浄剤とケイ素含有化合物との混合物が潤滑油の特性にどのように影響を及ぼし得るかを実証するために、潤滑油組成物を、貯蔵安定性、腐食保護、および低速プレイグニッションについて試験した。
【0233】
ボール錆試験を使用して潤滑油組成物を試験し、腐食に対して保護する潤滑油組成物の能力を評価した。オイルの性能を測定するために、ASTM D6557試験方法論を採用した。スコアが86未満のオイルは、試験に不合格と評価した。
【0234】
潤滑油組成物の安定性は、エンジンオイルをエンジンで使用する前に一定期間保管する場合に望ましい性能を確保するために重要である。潤滑油の安定性を評価するためのいくつかの試験は、文献で、例えば、ASTM D2273、ASTM D7603で一般的に知られている。以下に提供される例では、ASTM D2273に記載されている装置および方法を採用する遠心分離機に基づく方法を使用して、安定性について評価した。ASTM D2273によって使用される方法は、任意の追加の溶媒の追加を回避するように修正された。その方法は、オイルを、微量沈渣管中に注ぎ、1,700rpmの速度で30分間遠心分離することを含む。続いて、オイルを遠心分離機から取り出し、沈殿物の形跡について明るい光の下で視覚的に評価した。堆積物が存在しない場合、オイルは許容可能な安定性を有していたと評価される。
【0235】
低速プレイグニッションサイクルは、General Motors 2.0 L Ecotecターボチャージャー付きガソリン直噴(TGDI)エンジンにおいて測定した。試験は、2,000rpmのエンジン速度および18バールの正味平均有効圧力(BMEP)で実施した。データは、1セグメントあたり25,000サイクルについて収集し、試験は6つのセグメントで構成された。キャリーオーバーの影響を最小限に抑えるために、試験の間に、エンジンをダブルフラッシュした。LSPIサイクルは、燃焼圧力データを監視し、ピーク圧力または2%質量分率燃焼タイミングのいずれか、もしくはその両方の異常値であるサイクルを特定することによって、測定した。オイルの平均LSPI頻度は、6つのセグメントに関するLSPIサイクル数の平均を計算することによって測定した。平均LSPI頻度が4.5以上の場合、オイルは、試験に不合格であると評価した。
【0236】
潤滑油組成物の各々は、特に示されていない限り、主要量の基油、基油の従来のDIパッケージ、および同じ過塩基性スルホン酸カルシウム洗浄剤を含有しており、TBNは、300mg KOH/gであった。
【表3】
【0237】
例の各々は、様々な量で異なるケイ素含有化合物を採用し、以下の例の表および考察において明示される。列挙したすべての値は、別段指定されていない限り、潤滑油組成物(すなわち、有効配合成分+もしあれば希釈油)中の成分の重量パーセントとして記述されている。以下の本発明の例は、本開示の潤滑油組成物が、許容可能な貯蔵安定性および腐食保護を提供しながら、LSPIの改善を提供することを実証している。
【表4】
【0238】
比較例CE1~CE4およびCE6では、鎖長が500を超える典型的な消泡性ポリジメチルシロキサンを採用した。CE1およびCE2は、10ppmw未満のケイ素の量で、50個を超える炭素原子の鎖長を有するポリジメチルシロキサンを採用する組成物が、許容可能な安定性を提供できることを実証した。しかしながら、50個を超える炭素原子の鎖長を有するポリジメチルシロキサンに関するより高い処理速度では、すなわち、CE3~CE4およびCE6では、LSPI事象の数が増加し、潤滑油組成物は、許容可能な安定性を提供しなかった。CE5は、シラザン化合物を採用する潤滑油組成物は、ケイ素に関する類似の高い処理速度では、許容可能な安定性を提供できないことを実証した。
【表5】
【0239】
表4は、本開示によるいくつかの異なるケイ素含有化合物を含有する潤滑油組成物の例に関するデータを示している。いずれの場合でも、十分な量のケイ素含有化合物を採用して、180ppmwのケイ素を潤滑油組成物に寄与させた。これらの例示した潤滑油配合物の各々は、LSPI事象の数の低減、腐食保護を実証し、許容可能な安定性を提供した。本発明の配合物IE3~IE6は、比較配合物CE3およびCE6と比較した場合、鎖長が有意に短く、すなわち炭素原子が50個未満のポリジメチルシロキサンを採用すると、許容可能な安定性が提供され、ASTM D6557の腐食試験に合格し、鎖長が50個の炭素原子を超えるポリジメチルシロキサンを含有する潤滑油組成物と比較して、LSPI事象の数が低減された。
【表6】
【0240】
表5は、本開示による、いくつかの異なるシラン化合物ならびにシリカナノ粒子を含有する潤滑油組成物の例に関するデータを示している。これらの例のいくつかでは、異なる量のケイ素を使用した。IE7~IE10は、シリコン含有化合物の処理速度をより高くすると、したがってSi/Caの重量比がより高くなると、最高のLSPI性能が達成され得ることを示している。
【0241】
潤滑油の特性に関するケイ素含有洗浄剤の効果を実証するために、追加の例を調製した。
【0242】
CE7では、ベースラインの潤滑油組成物を使用した。このベースライン潤滑油組成物は、主要量の基油、基油の従来のDIパッケージ、潤滑油組成物に約5ppmのケイ素を提供する量で存在する典型的な消泡剤、および過塩基性カルシウム含有洗浄剤を含有していた。
【0243】
本発明の潤滑油組成物、IE12は、主要量の基油、同じ基油の従来のDIパッケージ、ケイ素含有洗浄剤、および約5ppmのケイ素を潤滑油組成物に提供する量で存在するCE7で採用した同じ消泡剤を含有していた。IE12で採用したケイ素含有洗浄剤は、CE7で使用したのと同じ過塩基性カルシウム含有洗浄剤を、450rpmで撹拌しながら、少なくとも45℃の温度に加熱することによって調製した。少なくとも45℃の温度に達したら、テトラエチルオルトシリケートを加えた。その混合物を、再び少なくとも45℃の温度に到達させ、撹拌し、この温度で約2時間維持した。最終生成物を撹拌しながら冷却させた。
【0244】
表6は、例CE7およびIE12の潤滑油に関するデータおよびLSPIの結果を示している。CE7およびIE12は、試験は、6つのセグメントではなく4つのセグメントで構成されていたことを除いて、上記と同じ方法を使用してLSPI性能について試験された。
【表7】
【0245】
表6から分かるように、ケイ素含有洗浄剤を組み込むと、ベースライン組成物と比較して、LSPI性能が有意に改善した。
【0246】
CE7およびIE12の潤滑油も、高周波往復運動リグ(HFRR)試験を使用して試験して、ケイ素含有洗浄剤の摩擦に関する影響を測定した。PCS InstrumentsのHFRRを使用して、境界潤滑領域の摩擦係数を測定した。設定したストローク周波数において、前後に固定荷重下で、温度-制御槽において、SAE52100金属ボールとSAE52100金属ディスクとの間の接触を浸漬することによって、試験試料を測定した。境界層摩擦を低減させる潤滑剤の能力は、測定された境界潤滑領域の摩擦係数によって反映される。値が小さいほど、摩擦が低いことを示している。表7および図1は、70℃でのHFRR試験の結果を示している。
【表8】
【0247】
表7および図1から分かるように、ケイ素含有洗浄剤を含むIE12は、ケイ素含有洗浄剤を含まない組成物と比較して、摩擦係数が低減された潤滑油組成物を提供した。
【0248】
本開示の他の実施形態は、本明細書の考慮および本明細書に開示される実施形態の実施から当業者に明らかとなるであろう。明細書および特許請求の範囲を通して使用されているように、「a」および/または「an」は1つまたは2つ以上を指し得る。他に指示がなければ、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量、分子量、パーセント、比、反応条件などの特性を表すすべての数字は、用語「約」が存在するか否かにかかわらず、すべての場合において用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載される数値パラメータは本開示によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。最低限、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各々の数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数および通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。広範囲の開示を記載する数値範囲およびパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に記載される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いかなる数値も、それらのそれぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる、所定の誤差を本質的に含有する。本明細書および実施例が、例示的なものにすぎず、本開示の真の範囲および趣旨は以下の特許請求の範囲によって示されるものとみなされることが意図される。
【0249】
前述の実施形態は、実際にかなりの変動を受けやすい。したがって、実施形態は上記の特定の例示に限定されるものではない。むしろ、上述の実施形態は、法的に利用可能なそれらの等価物を含む、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内にある。
【0250】
特許権所有者は、いずれかの開示される実施形態を、一般に開放することを意図せず、いずれかの開示される修正または変形が文字通り特許請求の範囲に該当し得ない程度まで、それらは均等論下でこれらの一部であるとみなされる。
【0251】
本明細書に開示される各成分、化合物、置換基、またはパラメータは、単独で、または本明細書に開示されるありとあらゆる他の成分、化合物、置換基、もしくはパラメータのうちの1つ以上との組み合わせでの使用について開示されていると解釈されるべきであることを理解されたい。
【0252】
本明細書に開示される各成分、化合物、置換基、またはパラメータについての各量/値または量/値の範囲は、本明細書に開示される任意の他の成分(複数可)、化合物(複数可)、置換基(複数可)、またはパラメータ(複数可)について開示される各量/値または量/値の範囲と組み合わせて開示されていると解釈されるべきであり、本明細書に開示される2つ以上の成分(複数可)、化合物(複数可)、置換基(複数可)、またはパラメータについての量/値または量/値の範囲の任意の組み合わせも、したがって、この説明の目的のために互いに組み合わせて開示されることも理解されたい。
【0253】
本明細書に開示される各範囲は、同じ有効数字の数を有する開示範囲内の各特定値の開示として解釈されるべきであることをさらに理解されたい。したがって、1~4の範囲は、1、2、3、および4の値の明確な開示として解釈されるべきである。
【0254】
本明細書に開示される各範囲の各下限は、同じ成分、化合物、置換基、またはパラメータについて本明細書に開示される各範囲の各上限および各範囲内の各特定値と組み合わせて開示されると解釈されるべきであることをさらに理解されたい。したがって、本開示は、各範囲の各下限を各範囲の各上限と、または各範囲内の各特定値と組み合わせることによって、または各範囲の各上限を各範囲内の各特定値と組み合わせることによって誘導されるすべての範囲の開示として解釈されるべきである。
【0255】
さらに、説明または実施例において開示される成分、化合物、置換基、またはパラメータの特定量/値は、範囲の下限または上限のいずれかの開示として解釈されるべきであり、よって、本出願の他の個所で開示される同じ成分、化合物、置換基、またはパラメータについての範囲または特定量/値の任意の他の下限または上限と組み合わせて、その成分、化合物、置換基、またはパラメータについての範囲を形成することができる。
図1