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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】抗突然変異KRAS T細胞受容体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20230619BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20230619BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20230619BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230619BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230619BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20230619BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K14/725 ZNA
C12N15/85 Z
C12N5/10
A61P35/00
A61K38/17 100
A61K39/00 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021063092
(22)【出願日】2021-04-01
(62)【分割の表示】P 2017527874の分割
【原出願日】2015-11-24
(65)【公開番号】P2021104044
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2021-04-26
(31)【優先権主張番号】62/084,654
(32)【優先日】2014-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/171,321
(32)【優先日】2015-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510002280
【氏名又は名称】アメリカ合衆国
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】ワン、チョン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ジヤ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ジェームズ シー.
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-514190(JP,A)
【文献】米国特許第07709002(US,B1)
【文献】EUROPEAN JOURNAL OF IMMUNOLOGY,1996年02月,VOL:26, NR:2,PAGE(S):435-443,http://dx.doi.org/10.1002/eji.1830260225
【文献】Vaccine, 2003 Oct 1, vol. 21, no. 27-30, pp. 4285-4296
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における、VVVGADGVGK(配列番号2)、VVVGAVGVGK(配列番号33)又はVVGAVGVGK(配列番号35)のアミノ酸配列を含む突然変異エピトープを発現するがんを治療又は予防するための組成物であって、
該組成物は突然変異エピトープに対し抗原特異性を有する、単離又は精製されたT細胞受容体(TCR)を含み、
該突然変異エピトープは、(a)VVVGADGVGK(配列番号2)を含むか、又は(b)VVVGAVGVGK(配列番号33)又はVVGAVGVGK(配列番号35)から成り、
TCRが、HLA-A11分子に関連して提示される突然変異エピトープに対し抗原特異性を有し、及び
(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むα鎖相補性決定領域(CDR)1、配列番号4のアミノ酸配列を含むα鎖CDR2、配列番号5のアミノ酸配列を含むα鎖CDR3、配列番号6のアミノ酸配列を含むβ鎖CDR1、配列番号7のアミノ酸配列を含むβ鎖CDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を含むβ鎖CDR3;
(b)配列番号125のアミノ酸配列を含むα鎖CDR1、配列番号126のアミノ酸配列を含むα鎖CDR2、配列番号127のアミノ酸配列を含むα鎖CDR3、配列番号128のアミノ酸配列を含むβ鎖CDR1、配列番号129のアミノ酸配列を含むβ鎖CDR2、及び配列番号130のアミノ酸配列を含むβ鎖CDR3;
(c)配列番号137のアミノ酸配列を含むα鎖CDR1、配列番号138のアミノ酸配列を含むα鎖CDR2、配列番号139のアミノ酸配列を含むα鎖CDR3、配列番号140のアミノ酸配列を含むβ鎖CDR1、配列番号141のアミノ酸配列を含むβ鎖CDR2、及び配列番号142のアミノ酸配列を含むβ鎖CDR3;
(d)配列番号149のアミノ酸配列を含むα鎖CDR1、配列番号150のアミノ酸配列を含むα鎖CDR2、配列番号151のアミノ酸配列を含むα鎖CDR3、配列番号152のアミノ酸配列を含むβ鎖CDR1、配列番号153のアミノ酸配列を含むβ鎖CDR2、及び配列番号154のアミノ酸配列を含むβ鎖CDR3;又は
(e)配列番号149のアミノ酸配列を含むα鎖CDR1、配列番号150のアミノ酸配列を含むα鎖CDR2、配列番号207のアミノ酸配列を含むα鎖CDR3、配列番号152のアミノ酸配列を含むβ鎖CDR1、配列番号153のアミノ酸配列を含むβ鎖CDR2、及び配列番号154のアミノ酸配列を含むβ鎖CDR3を含む。
【請求項2】
TCRが
(a)配列番号9のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域、及び配列番号10のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域;
(b)配列番号131のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域、及び配列番号132のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域;
(c)配列番号143のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域、及び配列番号144のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域;
(d)配列番号155のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域、及び配列番号156のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域;又は
(e)配列番号208のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域、及び配列番号156のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域
を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
TCRが
(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むα鎖定常領域、及び配列番号14のアミノ酸配列を含むβ鎖定常領域;
(b)配列番号135のアミノ酸配列を含むα鎖定常領域、及び配列番号136のアミノ酸配列を含むβ鎖定常領域;
(c)配列番号147のアミノ酸配列を含むα鎖定常領域、及び配列番号148のアミノ酸配列を含むβ鎖定常領域;又は
(d)配列番号159のアミノ酸配列を含むα鎖定常領域、及び配列番号160のアミノ酸配列を含むβ鎖定常領域
を含む、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
TCRが
(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むα鎖、及び配列番号12のアミノ酸配列を含むβ鎖;
(b)配列番号133のアミノ酸配列を含むα鎖、及び配列番号134のアミノ酸配列を含むβ鎖;
(c)配列番号145のアミノ酸配列を含むα鎖、及び配列番号146のアミノ酸配列を含むβ鎖;
(d)配列番号157のアミノ酸配列を含むα鎖、及び配列番号158のアミノ酸配列を含むβ鎖;又は
(e)配列番号209のアミノ酸配列を含むα鎖、及び配列番号158のアミノ酸配列を含むβ鎖
を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
TCRが、VVVGADGVGK(配列番号2)を含む突然変異エピトープに対し抗原特異性を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
TCRが、VVVGAVGVGK(配列番号33)又はVVGAVGVGK(配列番号35)から成る突然変異エピトープに対し抗原特異性を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
TCRが
(a)配列番号3~5のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、及び配列番号6~8のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;
(b)配列番号125~127のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、及び配列番号128~130のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;
(c)配列番号137~139のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、及び配列番号140~142のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;
(d)配列番号149~151のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、及び配列番号152~154のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;又は
(e)配列番号149、150及び207のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、及び配列番号152~154のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖
を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
TCRが
(a)配列番号9のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、及び配列番号10のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;
(b)配列番号131のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、及び配列番号132のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;
(c)配列番号143のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、及び配列番号144のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;
(d)配列番号155のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、及び配列番号156のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;又は
(e)配列番号208のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、及び配列番号156のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖
を含む、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
TCRが
(a)配列番号11のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、及び配列番号12のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;
(b)配列番号133のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、及び配列番号134のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;
(c)配列番号145のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、及び配列番号146のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;
(d)配列番号157のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、及び配列番号158のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;又は
(e)配列番号209のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、及び配列番号158のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖
を含む、請求項7又は8に記載の組成物。
【請求項10】
TCRが、単離又は精製された核酸にコードされている、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
該核酸が組換え発現ベクターに含まれる、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
該組換え発現ベクターが宿主細胞内にある、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
該宿主細胞がヒトのである、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
該組成物が、細胞集団内の少なくとも1つの宿主細胞を含む、請求項12又は13記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2014年11月26日出願の米国仮特許出願第62/084,654号及び2015年6月5日出願の米国仮特許出願第62/171,321号(それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の利益を主張する。
【0002】
電子提出された物件の参照による組み込み
本明細書と同時提出され、且つ、以下の通り識別されるコンピューター可読のヌクレオチド/アミノ酸の配列表が、参照により、本明細書にその全体が組み込まれる:2015年11月20日付ファイル名「722261_ST25.txt」、231,164バイトのASCII(テキスト)ファイル1件。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ある種のがんは、特に、がんが転移性で切除不能になった場合、治療選択肢が非常に限られる場合がある。例えば、手術、化学療法、及び放射線療法等の治療の進歩にもかかわらず、例えば膵臓がん、結腸直腸がん、肺がん、子宮内膜がん、卵巣がん及び前立腺がん等の多くのがんの予後は、不良な場合がある。従って、がんに対するさらなる治療について、満たされていないニーズがある。
【発明の概要】
【0004】
発明の要旨
本発明の一実施形態は、突然変異エピトープに対し抗原特異性を有する、単離又は精製されたT細胞受容体(TCR)であって、突然変異エピトープが、(a)VVVGADGVGK(配列番号2)を含むか、又は(b)VVVGAVGVGK(配列番号33)若しくはVVGAVGVGK(配列番号35)から成る、TCRを提供する。
【0005】
本発明は、本発明のTCRに関連する、関連のポリペプチド及びタンパク質並びに関連の核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団及び医薬組成物を更に提供する。
【0006】
本発明により、哺乳動物におけるがんの存在を検出する方法、及び哺乳動物におけるがんを治療又は予防する方法が、更に提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
発明の詳細な説明
カーステン・ラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(KRAS)(GTPase KRas、V-Ki-Ras2カーステン・ラット肉腫ウイルスがん遺伝子、又はKRAS2とも呼ばれる)は、低分子量GTPaseスーパーファミリーのメンバーである。KRASの2つの転写産物変異体:KRAS変異体A及びKRAS変異体Bが存在する。以降、「KRAS」(突然変異型又は非突然変異型)への言及は、別段の指定がない限り、変異型A及び変異型Bの両方を指す。特定の理論又はメカニズムには縛られないが、KRASは、突然変異した場合、多くのヒトがんの発がんにおいて、初期に、シグナル伝達に関与すると考えられている。単一のアミノ酸置換が突然変異を活性化し得る。活性化されると、突然変異KRASはグアノシン-5’-三リン酸(GTP)に結合し、GTPをグアノシン5’-二リン酸(GDP)に変換する。突然変異KRASタンパク質産物は、構成的に活性化され得る。突然変異KRASタンパク質は、例えば、膵臓がん(例、膵臓上皮がん(pancreatic carcinoma))、結腸直腸がん、肺がん(例、肺
腺がん)、子宮内膜がん、卵巣がん(例、上皮性卵巣がん)及び前立腺がん等の様々なヒトのがんのいずれかにおいても発現し得る。
【0008】
本発明の一実施形態は、突然変異ヒトKRAS(以降、「突然変異KRAS」)に対し抗原特異性を有する、単離又は精製されたTCRを提供する。以降、「TCR」への言及は、別段明示されない限り、TCRの機能的部分及び機能的変異体も指す。本発明のTCRは、任意の突然変異KRASタンパク質、ポリペプチド又はペプチドに対し抗原特異性を有し得る。本発明の一実施形態においては、TCRは、配列番号1、32、122又は123のアミノ酸配列を含むか、又はから成る突然変異KRASタンパク質に対し抗原特異性を有する。配列番号1及び32の各々の突然変異KRAS変異体Aタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1及び32において、12位のグリシンが、それぞれアスパラギン酸又はバリンに置換されていること以外は、通常、配列番号29の未変異の野生型(WT)KRASタンパク質変異体Aのアミノ酸配列の1~189位に対応する。配列番号122及び123の各々の突然変異KRAS変異体Bタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号122及び123において、12位のグリシンが、それぞれアスパラギン酸又はバリンに置換されていること以外は、通常、配列番号121の未変異のWT KRASタンパク質変異体Bのアミノ酸配列の1~188位に対応する。本発明の好ましい実施形態においては、TCRは、VVVGADGVGK(配列番号2)又はVVVGAVGVGK(配列番号33)のアミノ酸配列を含むか、又はから成る突然変異KRAS7-16ペプチドに対し抗原特異性を有する。配列番号2及び33の突然変異KRASペプチドアミノ酸配列は、配列番号2及び33において、6位のグリシンが、それぞれアスパラギン酸又はバリンに置換されていること以外は、通常、配列番号30の未変異のWT KRAS7-16ペプチドアミノ酸配列の1位~10位に対応する。本発明の一実施形態においては、TCRは、VVGADGVGK(配列番号34)VVGAVGVGK(配列番号35)のアミノ酸配列を含むか又はから成る突然変異KRAS8-16ペプチドに対し抗原特異性を有する。配列番号34及び35の突然変異KRASペプチドアミノ酸配列は、配列番号34及び35において、5位のグリシンが、それぞれアスパラギン酸又はバリンに置換されていること以外は、通常、配列番号31の未変異のWT KRAS8-16ペプチドアミノ酸配列の1~9位に対応する。好ましい実施形態においては、TCRは、突然変異KRASエピトープに対する抗原特異性を有し、突然変異KRASエピトープは、(a)VVVGADGVGK(配列番号2)を含むか、又は(b)VVVGAVGVGK(配列番号33)若しくはVVGAVGVGK(配列番号35)から成る。特に好ましい実施形態においては、TCRは、VVVGADGVGK(配列番号2)を含む突然変異KRASエピトープに対し抗原特異性を有する。別の好ましい実施形態においては、TCRは、VVVGAVGVGK(配列番号33)又はVVGAVGVGK(配列番号35)から成る突然変異KRASエピトープに対し抗原特異性を有する。突然変異KRASアミノ酸配列VVVGAVGVGK(配列番号33)及びVVGAVGVGK(配列番号35)は、本明細書においては、「KRAS G12V」とも呼ばれる。突然変異KRASアミノ酸配列VVVGADGVGK(配列番号2)及びVVGADGVGK(配列番号34)は、本明細書においては、「KRAS G12D」とも呼ばれる。
【0009】
本明細書に記載の、突然変異KRASエピトープのアミノ酸配列は、ヒトのがんにおける他の2つの突然変異型がん遺伝子、神経芽細胞腫RASウイルス(V-Ras)がん遺伝子ホモログ(NRAS)及びハーベイラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(HRAS)にも見出される。突然変異ヒトNRAS及び突然変異ヒトHRASのアミノ酸配列は、本明細書に記載の突然変異ヒトKRASエピトープ配列を含有する。従って、本発明の一実施形態においては、本発明のTCRは、突然変異ヒトNRAS及びHRASに対する抗原特異性も有する。突然変異ヒトKRAS、突然変異ヒトNRAS、及び突然変異ヒトHRASは、本明細書では集合的に「突然変異標的(複数可)」と呼ばれる。
【0010】
本発明の一実施形態においては、本発明のTCRは、突然変異標的(例、突然変異KRAS)を、主要組織適合性複合体(MHC)クラスI依存的様態で認識することができる。「MHCクラスI依存的様態」は、本明細書で用いる場合、MHCクラスI分子関連の範囲内で、TCRが、突然変異標的(例、突然変異KRAS)への結合に際して、免疫応答を誘発することを意味する。MHCクラスI分子は、当該技術分野で公知の任意のMHCクラスI分子(例、HLA-A分子)であり得る。本発明の好ましい実施形態においては、TCRは、HLA-A11分子に関連して提示される突然変異エピトープに対し抗原特異性を有する。
【0011】
本発明のTCRは、養子細胞移入用に用いられる細胞に発現する場合を含め、多くの利点を提供する。突然変異KRAS、突然変異NRAS、及び突然変異HRASは、がん細胞に発現し、正常な非がん性細胞には発現しない。特定の理論又はメカニズムに縛られないが、本発明のTCRは、好都合なことに、正常な非がん性細胞の破壊を最小限にし、又はなくし、それによって、毒性を、例えば最小限にし又はなくすことによって、低減しつつ、がん細胞の破壊を目的とすると考えられている。更に、本発明のTCRは、好都合なことに、例えば化学療法、外科手術、又は放射線療法等の他のタイプの治療に応答しない突然変異KRAS陽性がん、突然変異NRAS陽性がん、及び突然変異HRAS陽性がんのうちの1つ以上を首尾よく治療又は予防し得る。更に、本発明のTCRは、結合活性が非常に高い、突然変異KRAS、突然変異NRAS、及び突然変異HRASのうちの1つ以上の認識を提供し得、これは、未操作腫瘍細胞(例、インターフェロン(IFN)-γで治療されていない、突然変異KRAS及びHLA-A11の一方又は両方をコードするベクターでトランスフェクションされていない、突然変異KRAS7-16又は突然変異KRAS8-16ペプチドでパルスされていない、又はそれらの組合せの、腫瘍細胞)を認識する能力を提供し得る。
【0012】
語句「抗原特異性」は、本明細書で用いる場合、TCRが、突然変異標的(例、突然変異KRAS)に、高い結合活性により特異的に結合でき、また免疫学的に認識できることを意味する。例えば、TCRは、(a)低濃度の突然変異標的ペプチド(例、約0.05ng/mL~約5ng/mL、0.05ng/mL、0.1ng/mL、0.5ng/mL、1ng/mL、5ng/mL、又は上記の値のうちの任意の2つによって規定される範囲)でパルスした抗原陰性HLA-A11標的細胞又は(b)標的細胞が突然変異標的を発現するように、突然変異標的をコードするヌクレオチド配列が導入された抗原陰性HLA-A11標的細胞との共培養の際に、TCRを発現するT細胞が少なくとも約200pg/mL以上(例、200pg/mL以上、300pg/mL以上、400pg/mL以上、500pg/mL以上、600pg/mL以上、700pg/mL以上、1000pg/mL以上、5,000pg/mL以上、7,000pg/mL以上、10,000pg/mL以上、20,000pg/mL以上、又は上記の値のうちの任意の2つによって規定される範囲)のIFN-γを分泌する場合、突然変異標的について「抗原特異性」を有すると考えられ得る。本発明のTCRを発現する細胞は、より高濃度の突然変異標的ペプチドでパルスした抗原陰性HLA-A11標的細胞との共培養の際も、IFN-γを分泌し得る。
【0013】
代替的に又は追加的に、TCRを発現するT細胞が、(a)低濃度の突然変異標的ペプチドでパルスした抗原陰性HLA-A11標的細胞又は(b)標的細胞が突然変異標的を発現するように、突然変異標的をコードするヌクレオチド配列が導入された抗原陰性HLA-A11標的細胞と共培養した際に、ネガティブコントロールに発現したIFN-γの量と比較して、少なくとも2倍の多さのIFN-γを分泌する場合、TCRは、突然変異標的に対し「抗原特異性」を有すると考えられ得る。ネガティブコントロールは、例えば、(i)(a)同濃度の、関係性の無いペプチド(例、突然変異標的ペプチドと異なる配列を有する他の何らかのペプチド)でパルスした抗原陰性HLA-A11標的細胞
又は(b)標的細胞が関係性の無いペプチドを発現するように、関係性の無いペプチドをコードするヌクレオチド配列が導入された抗原陰性HLA-A11標的細胞と共培養した、TCRを発現するT細胞、或いは(ii)(a)同濃度の突然変異標的ペプチドでパルスした抗原陰性HLA-A11標的細胞又は(b)標的細胞が突然変異標的を発現するように、突然変異標的をコードするヌクレオチド配列が導入された抗原陰性HLA-A11標的細胞と共培養した、非形質導入T細胞(例、TCRを発現しないで、PBMCに由来する)であり得る。IFN-γ分泌は、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)等の、当該技術分野で公知の方法により測定され得る。
【0014】
代替的に又は追加的に、(a)低濃度の突然変異標的ペプチドでパルスした抗原陰性HLA-A11標的細胞又は(b)標的細胞が突然変異標的を発現するように、突然変異標的をコードするヌクレオチド配列が導入された抗原陰性HLA-A11標的細胞と共培養した際に、IFN-γを分泌するネガティブコントロールT細胞の数と比較して、少なくとも2倍の多さの数の、TCRを発現するT細胞がIFN-γを分泌する場合、TCRは、突然変異標的に対し「抗原特異性」を有すると考えられ得る。ペプチド及びネガティブコントロールの濃度は、本発明の他の態様に関して本明細書に記載される通りであり得る。IFN-γを分泌する細胞の数は、例えば、ELISPOT等の、当該技術分野で公知の方法により測定され得る。
【0015】
本発明は、TCRのアルファ(α)鎖、TCRのベータ(β)鎖、TCRのガンマ(γ)鎖、TCRのデルタ(δ)鎖、又はそれらの組合せ等の、2ポリペプチド(即ち、ポリペプチド鎖)を含むTCRを提供する。本発明のTCRのポリペプチドは、TCRが、突然変異標的(例、突然変異KRAS)に対し抗原特異性を有するならば、任意のアミノ酸配列を含み得る。
【0016】
本発明の一実施形態においては、TCRは2つのポリペプチド鎖を含み、その各々が、TCRの相補性決定領域(CDR)1、CDR2、及びCDR3を含む可変領域を含む。本発明の一実施形態においては、TCRは:(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR1(抗KRAS G12D TCRα鎖のCDR1)、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR2(抗KRAS G12D TCRα鎖のCDR2)、及び配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR3(抗KRAS G12D TCRα鎖のCDR3)を含む第1のポリペプチド鎖、並びに、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR1(抗KRAS G12D TCRβ鎖のCDR1)、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR2(抗KRAS G12D TCRβ鎖のCDR2)、及び配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR3(抗KRAS G12D TCRβ鎖のCDR3)を含む第2のポリペプチド鎖;(b)配列番号125のアミノ酸配列を含む抗KRAS G12V TCRα鎖のCDR1、配列番号126のアミノ酸配列を含む抗KRAS G12V TCRα鎖のCDR2、配列番号127のアミノ酸配列を含む抗KRAS G12V TCRα鎖のCDR3を含む第1のポリペプチド鎖、並びに、配列番号128のアミノ酸配列を含む抗KRAS G12V TCRβ鎖のCDR1、配列番号129のアミノ酸配列を含む抗KRAS G12V TCRβ鎖のCDR2、及び配列番号130のアミノ酸配列を含む抗KRAS G12V TCRβ鎖のCDR3を含む第2のポリペプチド鎖;(c)配列番号137のアミノ酸配列を含む抗KRAS G12V TCRα鎖のCDR1、配列番号138のアミノ酸配列を含む抗KRAS G12V TCRα鎖のCDR2、配列番号139のアミノ酸配列を含む抗KRAS G12V TCRα鎖のCDR3を含む第1のポリペプチド鎖、並びに、配列番号140のアミノ酸配列を含む抗KRAS G12V TCRβ鎖のCDR1、配列番号141のアミノ酸配列を含む抗KRAS G12V TCRβ鎖のCDR2、及び配列番号142のアミノ酸配列を含む抗KRAS G12V TCRβ鎖のCDR3を含む第2のポリペプチド鎖;又は(d)配列番号149のアミノ酸配列を含む抗KRAS
G12D TCRα鎖のCDR1、配列番号150のアミノ酸配列を含む抗KRAS
G12D TCRα鎖のCDR2、配列番号151のアミノ酸配列を含む抗KRAS G12D TCRα鎖のCDR3を含む第1のポリペプチド鎖、並びに、配列番号152のアミノ酸配列を含む抗KRAS G12D TCRβ鎖のCDR1、配列番号153のアミノ酸配列を含む抗KRAS G12D TCRβ鎖のCDR2、及び配列番号154のアミノ酸配列を含む抗KRAS G12D TCRβ鎖のCDR3を含む第2のポリペプチド鎖を含む。これに関して、本発明のTCRは、配列番号3~8;125~130;137~142;及び149~154から成る群から選択されるアミノ酸配列のいずれか1つ以上を含み得る。好ましくは、TCRは、配列番号3~5;配列番号6~8;配列番号125~127;配列番号128~130;配列番号137~139;配列番号140~142;配列番号149~151;又は配列番号152~154のアミノ酸配列を含む。特に好ましい実施形態においては、TCRは、(a)配列番号3~8の全て;(b)配列番号125~130の全て;(c)配列番号137~142の全て;(d)配列番号149~154の全てのアミノ酸配列を含む。
【0017】
本発明の一実施形態においては、TCRは、上記のCDRを含むTCRの可変領域のアミノ酸配列を含む。これに関して、TCRは、配列番号9(抗KRAS G12D TCRα鎖の可変領域);配列番号10(抗KRAS G12D TCRβ鎖の可変領域);配列番号9及び10の両方;配列番号131(抗KRAS G12V TCRα鎖の可変領域);配列番号132(抗KRAS G12V TCRβ鎖の可変領域);配列番号131及び132の両方;配列番号143(抗KRAS G12V TCRα鎖の可変領域);配列番号144(抗KRAS G12V TCRβ鎖の可変領域);配列番号143及び144の両方;配列番号155(抗KRAS G12D TCRα鎖の可変領域);配列番号156(抗KRAS G12D TCRβ鎖の可変領域);又は配列番号155及び156の両方のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、本発明のTCRは、配列番号9及び10の両方;配列番号131及び132の両方;配列番号143及び144の両方;又は配列番号155及び156の両方のアミノ酸配列を含む。
【0018】
本発明の一実施形態においては、TCRは、TCRの定常領域のアミノ酸配列を更に含む。これに関して、TCRは、配列番号13のアミノ酸配列(抗KRAS G12D TCRα鎖の定常領域)、配列番号14(抗KRAS G12D TCRβ鎖の定常領域)、配列番号13及び14の両方;配列番号135(抗KRAS G12V TCRα鎖の定常領域)、配列番号136(抗KRAS G12V TCRβ鎖の定常領域)、配列番号135及び136の両方;配列番号147(抗KRAS G12V TCRα鎖の定常領域)、配列番号148(抗KRAS G12V TCRβ鎖の定常領域)、配列番号147及び148の両方;配列番号159(抗KRAS G12D TCRα鎖の定常領域)、配列番号160(抗KRAS G12D TCRβ鎖の定常領域)、又は配列番号159及び160の両方を含み得る。好ましくは、本発明のTCRは、配列番号13及び14の両方;配列番号135及び136の両方;配列番号147及び148の両方;配列番号159及び160の両方のアミノ酸配列を含む。
【0019】
本発明の一実施形態においては、本発明のTCRは、可変領域と定常領域との組合せを含み得る。これに関して、TCRは:(a)配列番号9(α鎖の可変領域)及び配列番号13(α鎖の定常領域)の両方のアミノ酸配列を含むα鎖;配列番号10(β鎖の可変領域)及び配列番号14(β鎖の定常領域)の両方のアミノ酸配列を含むβ鎖;若しくは配列番号9、10、13、及び14の全てのアミノ酸配列;(b)配列番号131(α鎖の可変領域)及び配列番号135(α鎖の定常領域)の両方のアミノ酸配列を含むα鎖;配列番号132(β鎖の可変領域)及び配列番号136(β鎖の定常領域)の両方のアミノ酸配列を含むβ鎖;若しくは配列番号131、132、135、及び136の全てのアミノ酸配列;(c)配列番号143(α鎖の可変領域)及び配列番号147(α鎖の定常領域)の両方のアミノ酸配列を含むα鎖;配列番号144(β鎖の可変領域)及び配列番号
148(β鎖の定常領域)の両方のアミノ酸配列を含むβ鎖;若しくは配列番号143、144、147、及び148の全てのアミノ酸配列;又は(d)配列番号155(α鎖の可変領域)及び配列番号159(α鎖の定常領域)の両方のアミノ酸配列を含むα鎖;配列番号156(β鎖の可変領域)及び配列番号160(β鎖の定常領域)の両方のアミノ酸配列を含むβ鎖;若しくは配列番号155、156、159、及び160の全てのアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、本発明のTCRは、(a)配列番号9、10、13、及び14の全て;(b)配列番号131、132、135、及び136の全て;(c)配列番号143、144、147、及び148の全て;又は(d)配列番号155、156、159、及び160の全てのアミノ酸配列を含む。
【0020】
本発明の一実施形態においては、本発明のTCRは、本明細書に記載のCDR領域及び定常領域のいずれかの組合せを含み得る。これに関して、TCRは:(a)配列番号3~5及び13の全てのアミノ酸配列;配列番号6~8及び14の全てのアミノ酸配列を含むβ鎖;若しくは配列番号3~8及び13~14の全てのアミノ酸配列;(b)配列番号125~127及び135の全てのアミノ酸配列;配列番号128~130及び136の全てのアミノ酸配列を含むβ鎖;若しくは配列番号125~130及び135~136の全てのアミノ酸配列;(c)配列番号137~139及び147の全てのアミノ酸配列;配列番号140~142及び148の全てのアミノ酸配列を含むβ鎖;若しくは配列番号137~142及び147~148の全てのアミノ酸配列;又は(d)配列番号149~151及び159の全てのアミノ酸配列;配列番号152~154及び160の全てのアミノ酸配列を含むβ鎖;若しくは配列番号149~154及び159~160の全てのアミノ酸配列を含むα鎖を含み得る。
【0021】
本発明の一実施形態においては、本発明のTCRは、TCRα鎖及びTCRβ鎖を含み得る。本発明のTCRのα鎖及びβ鎖の各々は、独立して、任意のアミノ酸配列を含み得る。これに関して、本発明のTCRα鎖は、配列番号11(抗KRAS G12D TCRα鎖)、配列番号133(抗KRAS G12V TCRα鎖)、配列番号145(抗KRAS G12V TCRα鎖)又は配列番号157(抗KRAS G12D TCRα鎖)のアミノ酸配列を含み得る。このタイプのα鎖は、TCRの任意のβ鎖と対合し得る。これに関して、本発明のTCRβ鎖は、配列番号12(抗KRAS G12D TCRβ鎖)、配列番号134(抗KRAS G12V TCRβ鎖)、配列番号146(抗KRAS G12V TCRβ鎖)又は配列番号158(抗KRAS G12D TCRβ鎖)のアミノ酸配列を含み得る。従って、本発明のTCRは、配列番号11、配列番号12、配列番号133、配列番号134、配列番号145、配列番号146、配列番号157、配列番号158、配列番号11及び12の両方、配列番号133及び134の両方、配列番号145及び146の両方、又は配列番号157及び158の両方のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、本発明のTCRは、配列番号11及び12の両方、配列番号133及び134の両方、配列番号145及び146の両方、又は配列番号157及び158の両方のアミノ酸配列を含む。
【0022】
本発明の一実施形態においては、本発明のTCRは、(i)CD4の存在下且つCD8の非存在下で、又は(ii)CD8の存在下且つCD4の非存在下で、突然変異標的(例、突然変異KRAS)を認識する。好ましい実施形態においては、(i)配列番号125~130;(ii)配列番号131~132;又は(iii)配列番号133及び134のアミノ酸配列を含むTCRが、(i)CD4の存在下且つCD8の非存在下、又は(ii)CD8の存在下且つCD4の非在下のいずれでも、突然変異標的(tareget)(例、突然変異KRAS)を認識する。従って、これらの本発明のTCRは、CD4+又はCD8+の細胞のいずれに発現する場合でも、好都合なことに、突然変異標的(例、突然変異KRAS)を認識し得る。
【0023】
本発明の一実施形態においては、TCRはマウスTCRである。本明細書で用いる場合、用語「マウスの」は、本明細書に記載のTCR又はTCRの任意の構成要素(例、相補性決定領域(CDR)、可変領域、定常領域、α鎖及び/又はβ鎖)に言及するときは、マウスに由来するTCR(又はその構成要素)、即ち、マウスT細胞起源であるか、若しくはかつてマウスT細胞に発現していたTCR(又はその構成要素)を意味する。本発明の一実施形態においては、(i)配列番号3~8の全て;(ii)配列番号9及び10;(iii)配列番号11及び12;(iv)配列番号3~8及び13~14の全て;(v)配列番号9、10、13、及び14の全て;(vi)配列番号125~130の全て;(vii)配列番号131及び132;(viii)配列番号133及び134;(ix)配列番号125~130及び135~136の全て;(x)配列番号131、132、135、及び136の全て;(xi)配列番号137~142の全て;(xii)配列番号143及び144;(xiii)配列番号145及び146;(xiv)配列番号137~142及び147~148の全て;(xv)配列番号143、144、147、及び148の全て;(xvi)配列番号149~154の全て;(xvii)配列番号155及び156;(xviii)配列番号157及び158;(xix)配列番号149~154及び159~160の全て;又は(xx)配列番号155、156、159、及び160の全てを含むTCRが、マウスのTCRである。
【0024】
本発明の範囲には、本明細書に記載の本発明のTCRの機能的変異体が含まれる。用語「機能的変異体(functional variant)」は、本明細書で用いる場合、親TCR、ポリペプチド、又はタンパク質と実質的又は顕著な配列同一性又は類似性を有するTCR、ポリペプチド又はタンパク質であって、該機能的変異体がTCR、ポリペプチド、又はタンパク質(該機能的変異体はそれらの変異体である)の生物学的活性を保持するものを指す。機能的変異体は、例えば、親TCR、ポリペプチド又はタンパク質と類似の(similar)程度に、同(same)程度に、又はより高い程度に、突然変異標的(例、突然変異KRAS)(親TCRが抗原特異性を有するか、又は親ポリペプチド若しくはタンパク質が特異的に結合する)と特異的に結合する能力を保持する、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質(親TCR、ポリペプチド、又はタンパク質)の変異体を包含する。親TCR、ポリペプチド、又はタンパク質に関連して、機能的変異体は、親TCR、ポリペプチド、又はタンパク質に対して、アミノ酸配列において、例えば、少なくとも約30%、50%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上同一であり得る。
【0025】
機能的変異体は、例えば、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を有する親TCR、ポリペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列を含み得る。保存的アミノ酸置換は、当該技術分野で公知であり、特定の物理的及び/又は化学的特性を有する1つのアミノ酸が、同じ化学的又は物理的特性を有する別のアミノ酸と交換されるアミノ酸置換が挙げられる。例えば、保存的アミノ酸置換は、酸性アミノ酸の、酸性の別のアミノ酸(例、Asp又はGlu)との置換、非極性側鎖を有するアミノ酸の、非極性側鎖を有する別のアミノ酸(例、Ala、Gly、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Val等)との置換、塩基性アミノ酸の、塩基性の別のアミノ酸(Lys、Arg等)との置換、極性側鎖を有するアミノ酸の、極性側鎖を有する別のアミノ酸(Asn、Cys、Gln、Ser、Thr、Tyr等)との置換等であり得る。
【0026】
代替的に又は追加的に、機能的変異体は、少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換を有する親TCR、ポリペプチド、又はタンパク質のアミノ酸配列を含み得る。この場合、非保存的アミノ酸置換が、機能的変異体の生物学的活性を妨害又は阻害しないことが好ましい。好ましくは、非保存的アミノ酸置換は、親TCR、ポリペプチド、又はタンパク質と比較して機能的変異体の生物学的活性が増加するように、機能的変異体の生物学的活性を増強する。本発明の一実施形態においては、機能的変異体は、(i)配列番号46~56
及び207、70~80及び208、並びに94~104及び209のいずれか1つの、それぞれ、置換CDR3α、α鎖の可変領域、又は全長α鎖のアミノ酸配列;(ii)配列番号57~69、81~93、及び105~117のいずれか1つの、それぞれ、置換CDR3β、β鎖の可変領域、又は全長β鎖のアミノ酸配列;又は(iii)(ii)のアミノ酸配列のいずれか1つと組み合わされた(i)のアミノ酸配列のいずれか1つとの対を含む、置換TCR、ポリペプチド、又はタンパク質である。
【0027】
例えば、本発明の一実施形態においては、置換TCR、ポリペプチド、又はタンパク質は、(a)配列番号46~56及び207のいずれか1つの置換CDR3αアミノ酸配列(表1)及び(b)配列番号57~69のいずれか1つの置換CDR3βアミノ酸配列(表II)の一方又は両方を含み得る。本発明の一実施形態は、配列番号46~56及び207の置換CDR3αアミノ酸配列のいずれか1つと組み合わせた、本発明の他の態様に関して本明細書に記載される天然の非置換CDR1α、CDR2α、CDR1β、CDR2β、及びCDR3βアミノ酸配列のいずれか1つ以上を有するTCR、ポリペプチド、又はタンパク質を提供する。これに関して、本発明の一実施形態は、配列番号149~150、207、及び152~154の全てのアミノ酸配列を含む置換TCRを提供する。本発明の別の実施形態は、配列番号57~69の置換CDR3βアミノ酸配列のいずれか1つと組み合わせた、本発明の他の態様に関して本明細書に記載される天然の非置換CDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、及びCDR2βアミノ酸配列のいずれか1つ以上を有するTCR、ポリペプチド、又はタンパク質を提供する。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
本発明の一実施形態においては、配列番号46~56の置換CDR3αのアミノ酸配列の各々は、配列番号5の天然の非置換CDR3αのアミノ酸配列を含まない。本発明の一実施形態においては、配列番号207の置換CDR3αのアミノ酸配列は、配列番号151の天然の非置換CDR3αのアミノ酸配列を含まない。同様に、本発明の一実施形態に
おいては、配列番号57~69の置換CDR3βのアミノ酸配列の各々は、配列番号8の天然の非置換CDR3βのアミノ酸配列を含まない。
【0031】
本発明の一実施形態は、(i)配列番号70~80及び208のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、α鎖の置換可変領域(表III)及び(ii)配列番号81~93のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、β鎖の置換可変領域(表IV)の一方又は両方を含む置換TCR、ポリペプチド、又はタンパク質を提供する。本発明の一実施形態は、配列番号70~80及び208の置換可変領域α鎖のアミノ酸配列のいずれか1つと組み合わせた、本発明の他の態様に関して本明細書に記載されるβ鎖の天然の非置換可変領域のいずれかを有するTCR、ポリペプチド、又はタンパク質を提供する。本発明の別の実施形態は、配列番号81~93の置換可変領域β鎖のアミノ酸配列のいずれか1つと組み合わせた、本発明の他の態様に関して本明細書に記載されるα鎖の天然の非置換可変領域のいずれかを有するTCR、ポリペプチド、又はタンパク質を提供する。
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】
本発明の一実施形態においては、配列番号70~80の置換可変領域α鎖のアミノ酸配列の各々は、配列番号9の天然の非置換可変領域α鎖のアミノ酸配列を含まない。本発明の一実施形態においては、配列番号208の置換可変領域α鎖のアミノ酸配列は、配列番号155の天然の非置換可変領域α鎖のアミノ酸配列を含まない。同様に、本発明の一実
施形態においては、配列番号81~93の置換可変領域β鎖のアミノ酸配列の各々は、配列番号10の天然の非置換可変領域β鎖のアミノ酸配列を含まない。
【0035】
本発明の一実施形態は、(i)配列番号94~104及び209のいずれか1つのアミノ酸配列を含む置換全長α鎖(表V)及び(ii)配列番号105~117のいずれか1つのアミノ酸配列を含む置換全長β鎖(表VI)の一方又は両方を含む置換TCR、ポリペプチド、又はタンパク質を提供する。本発明の一実施形態は、配列番号94~104及び209の置換全長α鎖のアミノ酸配列のいずれか1つと組み合わせた、本発明の他の態様に関して本明細書に記載される天然の非置換全長β鎖配列のいずれかを有するTCR、ポリペプチド、又はタンパク質を提供する。本発明の別の実施形態は、配列番号105~117の置換全長β鎖配列のいずれか1つと組み合わせた、本発明の他の態様に関して本明細書に記載される天然の非置換全長α鎖のいずれかを有するTCR、ポリペプチド、又はタンパク質を提供する。
【0036】
【表5】
【0037】
【表6】
【0038】
本発明の一実施形態においては、配列番号94~104の置換全長α鎖のアミノ酸配列の各々は、配列番号11の天然の非置換全長α鎖のアミノ酸配列を含まない。本発明の一実施形態においては、配列番号209の置換全長α鎖のアミノ酸配列は、配列番号157の天然の非置換全長α鎖のアミノ酸配列を含まない。同様に、本発明の一実施形態におい
ては、配列番号105~117の置換全長β鎖のアミノ酸配列の各々は、配列番号12の天然の非置換全長β鎖のアミノ酸配列を含まない。
【0039】
TCR、ポリペプチド、又はタンパク質の他の構成要素(例、他のアミノ酸)が、TCR、ポリペプチド、又はタンパク質の生物学的活性を実質的に変化させないように、TCR、ポリペプチド、又はタンパク質は、本明細書に記載の特定のアミノ酸配列(単数)又はアミノ酸配列(複数)から実質的に成り得る。これに関して、本発明のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質は、例えば、配列番号11、配列番号12、配列番号133、配列番号134、配列番号145、配列番号146、配列番号157、配列番号158、配列番号209、配列番号11及び12の両方、配列番号133及び134の両方、配列番号145及び146の両方、配列番号157及び158の両方、又は配列番号158及び209の両方のアミノ酸配列から実質的になり得る。また、例えば、本発明のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質は、配列番号9、配列番号10、配列番号131、配列番号132、配列番号143、配列番号144、配列番号155、配列番号156、配列番号208、配列番号9及び10の両方、配列番号131及び132の両方、配列番号143及び144の両方、配列番号155及び156の両方、又は配列番号156及び208の両方のアミノ酸配列(複数可)から実質的に成り得る。更に、本発明のTCR、ポリペプチド又はタンパク質は、(a)配列番号3(α鎖のCDR1)、配列番号4(α鎖のCDR2)、配列番号5(α鎖のCDR3)、配列番号6(β鎖のCDR1)、配列番号7(β鎖のCDR2)、配列番号8(β鎖のCDR3)、又はそれらの任意の組合せ(例、配列番号3~5;6~8;若しくは3~8);(b)配列番号125(α鎖のCDR1)、配列番号126(α鎖のCDR2)、配列番号127(α鎖のCDR3)、配列番号128(β鎖のCDR1)、配列番号129(β鎖のCDR2)、配列番号130(β鎖のCDR3)、又はそれらの任意の組合せ(例、配列番号125~127;128~130;若しくは125~130);(c)配列番号137(α鎖のCDR1)、配列番号138(α鎖のCDR2)、配列番号139(α鎖のCDR3)、配列番号140(β鎖のCDR1)、配列番号141(β鎖のCDR2)、配列番号142(β鎖のCDR3)、又はそれらの任意の組合せ(例、配列番号137~139;140~142;若しくは137~142);(d)配列番号149(α鎖のCDR1)、配列番号150(α鎖のCDR2)、配列番号151(α鎖のCDR3)、配列番号152(β鎖のCDR1)、配列番号153(β鎖のCDR2)、配列番号154(β鎖のCDR3)、又はそれらの任意の組合せ(例、配列番号149~151;152~154;若しくは149~154);或いは(e)配列番号149(α鎖のCDR1)、配列番号150(α鎖のCDR2)、配列番号207(α鎖の置換CDR3)、配列番号152(β鎖のCDR1)、配列番号153(β鎖のCDR2)、配列番号154(β鎖のCDR3)、又はそれらの任意の組合せ(例、配列番号149~150及び207;152~154;若しくは149~150、207、及び152~154)のアミノ酸配列から実質的に成り得る。
【0040】
本発明により、本明細書に記載されるTCRのいずれかの機能的部分を含むポリペプチドも提供される。用語「ポリペプチド」は、本明細書で用いる場合、オリゴペプチドを含み、1つ以上のペプチド結合によって連結されたアミノ酸の一本鎖を指す。
【0041】
本発明のポリペプチドに関して、機能的部分は、該機能的部分が突然変異標的(例、突然変異KRAS)に特異的に結合するならば、それが一部であるTCRの、連続するアミノ酸を含む任意の部分であり得る。用語「機能的部分」は、TCRに関して用いられる場合、本発明のTCRの任意の部分又は断片を指し、その部分又は断片は、それが一部であるところのTCR(親TCR)の生物学的活性を保持する。機能的部分は、例えば、突然変異標的(例、突然変異KRAS)に(例、HLA-A11依存的な様態で)特異的に結合する能力か、又はがんを検出、治療、若しくは予防する能力を、親TCRと類似の程度で、同程度で、又はより高い程度で保持するTCRの部分を包含する。親TCRに関して
、機能的部分は、例えば、親TCRの、約10%、25%、30%、50%、68%、80%、90%、95%又はそれ以上を含み得る。
【0042】
機能的部分は、該部分のアミノ末端若しくはカルボキシ末端において、又は両方の末端において、親TCRのアミノ酸配列には見受けられない追加のアミノ酸を含み得る。望ましくは、追加のアミノ酸は、機能的部分の生物的機能(例、突然変異標的(例、突然変異KRAS)に特異的に結合すること;及び/又はがんを検出する、がんを治療又は予防する能力を有すること等)を妨害しない。より望ましくは、追加のアミノ酸は、親TCR又はその機能的変異体の生物活性と比較して、生物活性を増強させる。
【0043】
ポリペプチドは、本発明のTCRのα鎖及び/又はβ鎖の可変領域(複数可)のCDR1、CDR2及びCDR3の1つ以上を含む機能的部分等の、本発明のTCRのα鎖及びβ鎖のいずれか又は両方の機能的部分を含み得る。本発明の一実施形態においては、ポリペプチドは、(a)配列番号3(α鎖のCDR1)、4(α鎖のCDR2)、5(α鎖のCDR3)、6(β鎖のCDR1)、7(β鎖のCDR2)、8(β鎖のCDR3)、若しくはそれらの組合せ;(b)配列番号125(α鎖のCDR1)、126(α鎖のCDR2)、127(α鎖のCDR3)、128(β鎖のCDR1)、129(β鎖のCDR2)、130(β鎖のCDR3)、若しくはそれらの組合せ;(c)配列番号137(α鎖のCDR1)、138(α鎖のCDR2)、139(α鎖のCDR3)、140(β鎖のCDR1)、141(β鎖のCDR2)、142(β鎖のCDR3)、若しくはそれらの組合せ;(d)配列番号149(α鎖のCDR1)、150(α鎖のCDR2)、151(α鎖のCDR3)、152(β鎖のCDR1)、153(β鎖のCDR2)、154(β鎖のCDR3)、若しくはそれらの組合せ;又は(e)配列番号149(α鎖のCDR1)、150(α鎖のCDR2)、207(α鎖の置換CDR3)、152(β鎖のCDR1)、153(β鎖のCDR2)、154(β鎖のCDR3)、若しくはそれらの組合せのアミノ酸配列を含む機能的部分を含み得る。好ましくは、本発明のポリペプチドは、配列番号3~5;6~8;125~127;128~130;137~139;140~142;149~151;152~154;配列番号3~8の全て;配列番号125~130の全て;配列番号137~142の全て;配列番号149~154の全て;又は配列番号149~150、207及び152~154の全てのアミノ酸配列を含む機能的部分を含む。より好ましくは、ポリペプチドは、配列番号3~8の全て;配列番号125~130の全て;配列番号137~142の全て;配列番号149~154の全て;又は配列番号149~150、207及び152~154の全てのアミノ酸配列を含む機能的部分を含む。
【0044】
本発明の一実施形態においては、本発明のポリペプチドは、例えば、上記のCDR領域の組合せを含む、本発明のTCR又はその機能的変異体の可変領域を含み得る。これに関して、ポリペプチドは、配列番号9(α鎖の可変領域)、配列番号10(β鎖の可変領域)、配列番号131(α鎖の可変領域)、配列番号132(β鎖の可変領域)、配列番号143(α鎖の可変領域)、配列番号144(β鎖の可変領域)、配列番号155(α鎖の可変領域)、配列番号156(β鎖の可変領域)、配列番号208(α鎖の置換可変領域)、配列番号9及び10の両方、配列番号131及び132の両方、配列番号143及び144の両方、配列番号155及び156の両方、又は配列番号208及び156の両方のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、ポリペプチドは、配列番号9及び10の両方、配列番号131及び132の両方、配列番号143及び144の両方、配列番号155及び156の両方、又は配列番号208及び156の両方のアミノ酸配列を含む。
【0045】
本発明の一実施形態においては、本発明のポリペプチドは、上記の本発明のTCR又はその機能的変異体の定常領域を更に含み得る。これに関して、ポリペプチドは、配列番号13(α鎖の定常領域)、配列番号14(β鎖の定常領域)、配列番号135(α鎖の定
常領域)、配列番号136(β鎖の定常領域)、配列番号147(α鎖の定常領域)、配列番号148(β鎖の定常領域)、配列番号159(α鎖の定常領域)、配列番号160(β鎖の定常領域)、配列番号13及び14の両方、配列番号135及び136の両方、配列番号147及び148の両方、又は配列番号159及び160の両方のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、ポリペプチドは、配列番号13及び14の両方、配列番号135及び136の両方、配列番号147及び148の両方、又は配列番号159及び160の両方のアミノ酸配列を含む。
【0046】
本発明の一実施形態においては、本発明のポリペプチドは、本発明のTCR又はその機能的変異体の可変領域及び定常領域の組合せを含み得る。これに関して、ポリペプチドは:(a)配列番号9(α鎖の可変領域)及び配列番号13(α鎖の定常領域)の両方、配列番号10(β鎖の可変領域)及び配列番号14(β鎖の定常領域)の両方、若しくは配列番号9、10、13、及び14の全てのアミノ酸配列;(b)配列番号131(α鎖の可変領域)及び配列番号135(α鎖の定常領域)の両方、配列番号132(β鎖の可変領域)及び配列番号136(β鎖の定常領域)の両方、若しくは配列番号131、132、135、及び136の全てのアミノ酸配列;(c)配列番号143(α鎖の可変領域)及び配列番号147(α鎖の定常領域)の両方、配列番号144(β鎖の可変領域)及び配列番号148(β鎖の定常領域)の両方、若しくは配列番号143、144、147及び148の全てのアミノ酸配列;(d)配列番号155(α鎖の可変領域)及び配列番号159(α鎖の定常領域)の両方、配列番号156(β鎖の可変領域)及び配列番号160(β鎖の定常領域)の両方、若しくは配列番号155、156、159、及び160の全てのアミノ酸配列;又は(e)配列番号208(α鎖の置換可変領域)及び配列番号159(α鎖の定常領域)の両方、配列番号156(β鎖の可変領域)及び配列番号160(β鎖の定常領域)の両方、若しくは配列番号208、156、159、及び160の全てのアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、ポリペプチドは、配列番号9、10、13及び14の全て;配列番号131、132、135、及び136の全て;配列番号143、144、147、及び148の全て;配列番号155、156、159、及び160の全て;又は配列番号208、156、159、及び160の全てのアミノ酸配列を含む。
【0047】
本発明の一実施形態においては、本発明のポリペプチドは、本明細書に記載のCDR領域のいずれかと本発明のTCRの定常領域との組合せを含み得る。これに関して、ポリペプチドは、配列番号3~5及び13の全て、配列番号6~8及び14の全て、配列番号3~8及び13~14の全て;配列番号125~127及び135の全て、配列番号128~130及び136の全て、配列番号125~130及び135~136の全て、配列番号137~139及び147の全て、配列番号140~142及び148の全て、配列番号137~142及び147~148の全て、配列番号149~151及び159の全て、配列番号149~150、207及び159の全て、配列番号152~154及び160の全て、配列番号149~154及び159~160の全て、又は配列番号149~150、207、152~154及び159~160の全てのアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、ポリペプチドは、配列番号3~8及び13~14の全て、配列番号125~130及び135~136の全て、配列番号137~142及び147~148の全て、配列番号149~154及び159~160の全て、又は配列番号149~150、207、152~154、及び159~160の全てのアミノ酸配列を含む。
【0048】
本発明の一実施形態においては、本発明のポリペプチドは、本明細書に記載されるTCRのα鎖又はβ鎖の全長を含み得る。これに関して、本発明のポリペプチドは、配列番号11、配列番号12、配列番号133、配列番号134、配列番号145、配列番号146、配列番号157、配列番号209、配列番号158、配列番号11及び12の両方、配列番号133及び134の両方、配列番号145及び146の両方、配列番号157及び158の両方、又は配列番号209及び158の両方のアミノ酸配列を含み得る。好ま
しくは、ポリペプチドは、配列番号11及び12の両方、配列番号133及び134の両方、配列番号145及び146の両方、配列番号157及び158の両方、又は配列番号209及び158の両方のアミノ酸配列を含む。
【0049】
本発明は、本明細書に記載のポリペプチドの少なくとも1つを含むタンパク質を更に提供する。「タンパク質」により、1つ以上のポリペプチド鎖を含む分子が意味される。
【0050】
一実施形態においては、本発明のタンパク質は、配列番号3~5のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号6~8のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;配列番号125~127のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号128~130のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;配列番号137~139のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号140~142のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;配列番号149~151のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号152~154のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;又は配列番号149~150及び207のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号152~154のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖を含み得る。代替的に又は追加的に、本発明のタンパク質は、配列番号9のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号10のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;配列番号131のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号132のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;配列番号143のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号144のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;配列番号155のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号156のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;又は配列番号208のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号156のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖を含み得る。タンパク質は、例えば、(a)配列番号9及び13の両方、若しくは配列番号3~5及び13の全てのアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、並びに配列番号10及び14の両方、若しくは配列番号6~8及び14の全てのアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(b)配列番号131及び135の両方、若しくは配列番号125~127及び135の全てのアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、並びに配列番号132及び136の両方、若しくは配列番号128~130及び136の全てのアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(c)配列番号143及び147の両方、若しくは配列番号137~139及び147の全てのアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、並びに配列番号144及び148の両方、若しくは配列番号140~142及び148の全てのアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(d)配列番号155及び159の両方、若しくは配列番号149~151及び159の全てのアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、並びに配列番号156及び160の両方、若しくは配列番号152~154及び160の全てのアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;又は(e)配列番号208及び159の両方、若しくは配列番号149~150、207及び159の全てのアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、並びに配列番号156及び160の両方、若しくは配列番号152~154、及び160の全てのアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖を含み得る。代替的に又は追加的に、本発明のタンパク質は、(a)配列番号11のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号12のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(b)配列番号133のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号134のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(c)配列番号145のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号146のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;(d)配列番号157のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号158のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;又は(e)配列番号209のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号158のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖を含み得る。この場合、本発明のタンパク質はTCRであり得る。或いは、例えば、タンパク質が、配列番号11及び12の両方、配列番号133及び134の両方、配列番号145及び146の両方、配列番号157
及び158の両方、又は配列番号209及び158の両方のアミノ酸配列を含む単一のポリペプチド鎖を含む場合、又はタンパク質の第1及び/又は第2のポリペプチド鎖(複数可)が他のアミノ酸配列(例、免疫グロブリン又はその一部をコードするアミノ酸配列)を更に含む場合、本発明のタンパク質は、融合タンパク質であり得る。これに関して、本発明は、少なくとも1つの他のポリペプチドとともに、本明細書に記載される本発明のポリペプチドの少なくとも1つを含む融合タンパク質も提供する。他のポリペプチドは、融合タンパク質の個別のポリペプチド(separate polypeptide)として存在し得るか、又は本明細書に記載の本発明のポリペプチドの1つとインフレーム(タンデム)で発現するポリペプチドとして存在し得る。他のポリペプチドは、免疫グロブリン、CD3、CD4、CD8、MHC分子、CD1分子(例、CD1a、CD1b、CD1c、CD1dなど)を含むが、これらに限定されない、任意のペプチド性若しくはタンパク質性分子又はそれら一部をコードし得る。
【0051】
融合タンパク質は、本発明のポリペプチドの1つ以上のコピー、及び/又は他のポリペプチドの1つ以上のコピーを含み得る。例えば、融合タンパク質は、本発明のポリペプチド及び/又は他のポリペプチドのコピーを1、2、3、4、5つ又はそれ以上含み得る。融合タンパク質を作製する好適な方法は、当該技術分野において公知であり、例えば、組換え法が挙げられる。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態においては、本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質は、α鎖及びβ鎖を連結するリンカーペプチドを含む単一のタンパク質として発現し得る。これに関して、配列番号11及び12の両方、配列番号133及び134の両方、配列番号145及び146の両方、配列番号157及び158の両方、配列番号209及び158の両方、配列番号9及び10の両方、配列番号131及び132の両方、配列番号143及び144の両方、配列番号155及び156の両方、配列番号208及び156の両方、配列番号3~8の全て、配列番号125~130の全て、配列番号137~142の全て、配列番号149~154の全て、配列番号9、10、13及び14の全て、配列番号131、132、135、及び136の全て、配列番号143、144、147、及び148の全て、配列番号155、156、159及び160の全て、配列番号208、156、159及び160の全て、配列番号3~8及び13~14の全て、配列番号125~130及び135~136の全て、配列番号137~142及び147~148の全て、配列番号149~154及び159~160の全て、又は配列番号149~150、207、152~154及び159~160の全てを含む本発明のTCR、ポリペプチド及びタンパク質が、リンカーペプチドを更に含み得る。リンカーペプチドは、好都合なことに、宿主細胞において、組換えTCR、ポリペプチド、及び/又はタンパク質の発現を促進し得る。リンカーペプチドは、任意の好適なアミノ酸配列を含み得る。本発明の一実施形態においては、TCR、ポリペプチド、又はタンパク質は、自己切断性ウイルスリンカーペプチドを含む。例えば、リンカーペプチドは、配列番号28を含み得る。リンカーペプチドを含むコンストラクトを宿主細胞で発現させる際、リンカーペプチドは切断され得、α鎖及びβ鎖が分離され得る。本発明の一実施形態においては、TCR、ポリペプチド又はタンパク質は、全長α鎖、全長β鎖、及びα鎖とβ鎖との間に位置するリンカーペプチドを含むアミノ酸配列(例えば、配列番号45(抗KRAS G12D TCR)、配列番号162(抗KRAS G12D TCR)、配列番号201(抗KRAS G12V TCR)、又は配列番号203(抗KRAS G12V TCR)のアミノ酸配列)を含み得る。
【0053】
本発明のタンパク質は、本明細書に記載される本発明のポリペプチドのうちの少なくとも1つを含む組換え抗体であり得る。「組換え抗体」は、本明細書で用いる場合、本発明のポリペプチドのうちの少なくとも1つ、及び抗体のポリペプチド鎖、又はその部分を含む組換え(例、遺伝学的に操作された)タンパク質を指す。抗体のポリペプチド、又はそ
の部分は、抗体の、重鎖、軽鎖、重鎖若しくは軽鎖の可変領域若しくは定常領域、単鎖可変断片(scFv)、又はFc、Fab若しくはF(ab)’断片等であり得る。抗体のポリペプチド鎖、又はその部分は、組換え抗体の、分離したポリペプチドとして存在し得る。或いは、抗体のポリペプチド鎖、又はその部分は、本発明のポリペプチドとインフレーム(タンデム)に発現するポリペプチドとして存在し得る。抗体のポリペプチド、又はその部分は、本明細書に記載の抗体及び抗体断片のいずれかを含む、任意の抗体又は任意の抗体断片のポリペプチドであり得る。
【0054】
本発明のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質(それらの機能的変異体を含む)は、TCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質(又はそれらの機能的変異体)がそれらの生物学的活性(例、突然変異標的(例、突然変異KRAS)に特異的に結合する能力;哺乳動物におけるがんを検出する能力;又は哺乳動物におけるがんを治療又は予防する能力等を保持するのであれば、任意の長さであり得、即ち、任意の数のアミノ酸を含み得る。例えば、ポリペプチドは、長さが、50、70、75、100、125、150、175、200、300、400、500、600、700、800、900、1000又はそれ以上のアミノ酸等の、約50~約5000アミノ酸の範囲であり得る。これに関して、本発明のポリペプチドは、オリゴペプチドも含む。
【0055】
本発明の(of the invention of the invention)TCR、ポリペプチド、及びタンパク質は、1つ以上の天然に存在するアミノ酸の代わりに合成アミノ酸を含み得る。かかる合成アミノ酸は、当該技術分野において公知であり、例えば、アミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、α-アミノn-デカン酸、ホモセリン、S-アセチルアミノメチル-システイン、トランス-3-及びトランス-4-ヒドロキシプロリン、4-アミノフェニルアラニン、4-ニトロフェニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、4-カルボキシフェニルアラニン、β-フェニルセリン β-ヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、α-ナフチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、インドリン-2-カルボン酸、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン酸モノアミド、N’-ベンジル-N’-メチル-リジン、N’,N’-ジベンジル-リジン、6-ヒドロキシリジン、オルニチン、α-アミノシクロペンタンカルボン酸、α-アミノシクロヘキサンカルボン酸、α-アミノシクロヘプタンカルボン酸、α-(2-アミノ-2-ノルボルナン)-カルボン酸、α,γ-ジアミノ酪酸、α,β-ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン、及びα-tert-ブチルグリシンが挙げられる。
【0056】
本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質(それらの機能的変異体を含む)は、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、エステル化、N-アシル化、(例、ジスルフィド架橋を介して)環化され、若しくは、酸付加塩に変換され得、且つ/又は、必要に応じて、二量体化若しくは重合され、又はコンジュゲート化され得る。
【0057】
本発明のTCR、ポリペプチド、及び/又はタンパク質は、例えば、de novo合成等の、当該技術分野において公知の方法によって得られ得る。また、ポリペプチド及びタンパク質は、標準的な組換え法を用いて、本明細書に記載の核酸を用いて組換えで産生され得る。例えば、Green and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th ed.,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(2012)参照。或いは、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、及び/又はタンパク質(それらの機能的変異体を含む)は、Synpep(Dublin,CA)、Peptide Technologies Corp.(Gaithersburg,MD)、及びMultiple Peptide Systems(San Diego,CA)等の企業により商業的に合成され得る。この点において、本発明のTCR、ポリペプチ
ド、及びタンパク質は、合成、組換え、単離及び/又は精製をされたものであり得る。
【0058】
本発明の範囲には、本発明のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、宿主細胞集団、又は抗体、若しくはその抗原結合部分のいずれかを含むコンジュゲート(例、バイオコンジュゲート)が含まれる。コンジュゲート及び一般的にコンジュゲートを合成する方法は、当該技術分野において公知である。
【0059】
本発明の一実施形態は、本明細書に記載の、TCR、ポリペプチド、又はタンパク質のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。本明細書で用いる場合、「核酸」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、及び「核酸分子」を含み、一般にDNA又はRNAのポリマーを意味し、これは一本鎖又は二本鎖の、合成された又は天然のソースから得た(例、単離及び/又は精製された)ものであり得、天然、非天然又は改変された(altered)ヌクレオチドを含有し得、修飾されていないオリゴヌクレオチドのヌクレオチド間に見いだされるホスホジエステルの代わりに、天然の、非天然の、又は改変された、ヌクレオチド間結合(ホスホロアミデート(phosphoroamidate)結合又はホスホロチオエート結合等)を含有し得る。1実施形態においては、核酸は、相補的DNA(cDNA)を含む。一般に、核酸は、挿入、欠失、逆位、及び/又は置換を何れも含まないことが好ましい。しかし、本明細書で検討する通り、ある場合には、核酸が1つ以上の挿入、欠失、逆位、及び/又は置換を含むことが好適である場合がある。
【0060】
好ましくは、本発明の核酸は、組換え体である。用語「組換え体」は、本明細書で用いる場合、(i)天然又は合成の核酸セグメントを、生細胞中で複製し得る核酸分子に連結することによって、生細胞外で構築される分子、又は(ii)上記(i)に記載した分子の複製から生じる分子を指す。本明細書における目的のためには、複製は、インビトロ複製又はインビボ複製であり得る。
【0061】
核酸は、当該技術分野における公知の手順を用いて、化学合成及び/又は酵素的ライゲーション反応に基づいて構築され得る。例えば、Green and Sambrook
et al.(上記)を参照。例えば、核酸は、天然に存在するヌクレオチド、又は、分子の生物学的安定性を増加させるように、又はハイブリダイゼーションの際に形成される二重鎖の物理的安定性を増加させるように設計された多様な修飾ヌクレオチド(例、ホスホロチオエート誘導体及びアクリジン置換ヌクレオチド)を用いて、化学的に合成され得る。核酸を生成するために用いられ得る修飾ヌクレオチドの例としては、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルキューオシン(beta-D-galactosylqueosine)、イノシン、N-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N-置換アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルキューオシン(beta-D-mannosylqueosine)、5’-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、シュードウラシル(pseudouracil)、キューオシン(queosine)、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル及び2,6-ジアミノプリンが挙げられるが、これらに限定されない。
或いは、本発明の核酸の1つ以上が、Macromolecular Resources(Fort Collins,CO)及びSynthegen(Houston,TX)等の企業から購入され得る。
【0062】
核酸は、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質のいずれかをコードする任意のヌクレオチド配列を含み得る。本発明の一実施形態においては、核酸は、(a)配列番号22(抗KRAS G12D TCRα鎖のCDR1);配列番号23のヌクレオチド配列(抗KRAS G12D TCRα鎖のCDR2);配列番号24のヌクレオチド配列(抗KRAS G12D TCRα鎖のCDR3);配列番号25のヌクレオチド配列(抗KRAS G12D TCRβ鎖のCDR1);配列番号26のヌクレオチド配列(抗KRAS G12D TCRβ鎖のCDR2);若しくは配列番号27のヌクレオチド配列(抗KRAS G12D TCRβ鎖のCDR3);(b)配列番号164(抗KRAS G12D TCRα鎖のCDR1);配列番号165のヌクレオチド配列(抗KRAS G12D TCRα鎖のCDR2);配列番号166のヌクレオチド配列(抗KRAS G12D TCRα鎖のCDR3);配列番号167のヌクレオチド配列(抗KRAS G12D TCRβ鎖のCDR1);配列番号168のヌクレオチド配列(抗KRAS G12D TCRβ鎖のCDR2);若しくは配列番号169のヌクレオチド配列(抗KRAS G12D TCRβ鎖のCDR3);(c)配列番号177(抗KRAS G12V TCRα鎖のCDR1);配列番号178のヌクレオチド配列(抗KRAS G12V TCRα鎖のCDR2);配列番号179のヌクレオチド配列(抗KRAS G12V TCRα鎖のCDR3);配列番号180のヌクレオチド配列(抗KRAS G12V TCRβ鎖のCDR1);配列番号181のヌクレオチド配列(抗KRAS G12V TCRβ鎖のCDR2);若しくは配列番号182のヌクレオチド配列(抗KRAS G12V TCRβ鎖のCDR3);又は(d)配列番号189(抗KRAS G12V TCRα鎖のCDR1);配列番号190のヌクレオチド配列(抗KRAS G12V TCRα鎖のCDR2);配列番号191のヌクレオチド配列(抗KRAS G12V TCRα鎖のCDR3);配列番号192のヌクレオチド配列(抗KRAS G12V TCRβ鎖のCDR1);配列番号193のヌクレオチド配列(抗KRAS G12V TCRβ鎖のCDR2);若しくは配列番号194のヌクレオチド配列(抗KRAS G12V TCRβ鎖のCDR3)のヌクレオチド配列を含み得る。好ましくは、核酸は、配列番号22~24の全て;配列番号25~27の全て;配列番号22~27の全て;配列番号164~166の全て;配列番号167~169の全て;配列番号164~169の全て;配列番号177~179の全て;配列番号180~182の全て;配列番号177~182の全て;配列番号189~191の全て;配列番号192~194の全て;配列番号189~194のヌクレオチド配列を含む。特に好ましい実施形態においては、核酸は、配列番号22~27の全て;配列番号164~169の全て;配列番号177~182の全て;又は配列番号189~194の全てのヌクレオチド配列を含む。本発明の一実施形態においては、核酸は、(a)配列番号15(抗KRAS G12D TCRα鎖の可変領域);配列番号16(抗KRAS G12D TCRβ鎖の可変領域);又は配列番号15及び16の両方;(b)配列番号170(抗KRAS G12D TCRα鎖の可変領域);配列番号171(抗KRAS G12D TCRβ鎖の可変領域);又は配列番号170及び171の両方;(c)配列番号183(抗KRAS G12V TCRα鎖の可変領域);配列番号184(抗KRAS G12V TCRβ鎖の可変領域);又は配列番号183及び184の両方;(d)配列番号195(抗KRAS G12V TCRα鎖の可変領域);配列番号196(抗KRAS G12V TCRβ鎖の可変領域);又は配列番号195及び196の両方のヌクレオチド配列を含み得る。好ましくは、核酸は、配列番号15及び16の両方;配列番号170及び171の両方;配列番号183及び184の両方;又は配列番号195及び196の両方のヌクレオチド配列を含む。本発明の別の実施形態においては、核酸は、(a)配列番号17(全長の抗KRAS G12D TCRα鎖);配列番号18(全長の抗KRAS G
12D TCRβ鎖);若しくは配列番号17及び18の両方;(b)配列番号172(全長の抗KRAS G12D TCRα鎖);配列番号173(全長の抗KRAS G12D TCRβ鎖);若しくは配列番号172及び173の両方;(c)配列番号185(全長の抗KRAS G12V TCRα鎖);配列番号186(全長の抗KRAS G12V TCRβ鎖);若しくは配列番号185及び186の両方;又は(d)配列番号197(全長の抗KRAS G12V TCRα鎖);配列番号198(全長の抗KRAS G12V TCRβ鎖);若しくは配列番号197及び198の両方のヌクレオチド配列を含み得る。好ましくは、核酸は、配列番号17及び18の両方;配列番号172及び173の両方;配列番号185及び186の両方;又は配列番号197及び198の両方のヌクレオチド配列を含む。
【0063】
本発明の一実施形態においては、核酸は、TCRα鎖又はβ鎖の定常領域をコードするヌクレオチド配列を更に含む。これに関して、本明細書に記載の核酸のいずれもが、(a)配列番号19(抗KRAS G12D TCRα鎖の定常領域);配列番号20(抗KRAS G12D TCRβ鎖の定常領域);若しくは配列番号19及び20の両方;(b)配列番号174(抗KRAS G12D TCRα鎖の定常領域);配列番号175(抗KRAS G12D TCRβ鎖の定常領域);若しくは配列番号174及び175の両方;(c)配列番号187(抗KRAS G12V TCRα鎖の定常領域);配列番号188(抗KRAS G12V TCRβ鎖の定常領域);若しくは配列番号187及び188の両方;又は(d)配列番号199(抗KRAS G12V TCRα鎖の定常領域);配列番号200(抗KRAS G12V TCRβ鎖の定常領域);若しくは配列番号199及び200の両方;のヌクレオチド配列を更に含み得る。好ましくは、核酸は、配列番号15及び19の両方;配列番号16及び20の両方;配列番号15~16及び19~20の全て;配列番号22~24及び19の全て;配列番号25~27及び20の全て;配列番号22~27及び19~20の全て;配列番号170及び174の両方;配列番号171及び175の両方;配列番号170~171及び174~175の全て;配列番号164~166及び174の全て;配列番号167~169及び175の全て;配列番号164~169及び174~175の全て;配列番号183及び187の両方;配列番号184及び188の両方;配列番号183~184及び187~188の全て;配列番号177~179及び187;配列番号180~182及び188の全て;配列番号177~182及び187~188の全て;配列番号195及び199の両方;配列番号196及び200の両方;配列番号195~196及び199~200の全て;配列番号189~191及び199の全て;配列番号192~194及び200の全て;又は配列番号189~194及び199~200の全てのヌクレオチド配列を含む。特に好ましい実施形態においては、核酸は、配列番号15~16及び19~20の全て;配列番号22~27及び19~20の全て;配列番号170~171及び174~175の全て;配列番号164~169及び174~175の全て;配列番号183~184及び187~188の全て;配列番号177~182及び187~188の全て;配列番号195~196及び199~200の全て;又は配列番号189~194及び199~200の全てのヌクレオチド配列を含む。
【0064】
本明細書に記載の核酸のいずれもが、リンカーペプチドをコードするヌクレオチド配列を更に含み得る。リンカーペプチドをコードするヌクレオチド配列は、任意の好適なヌクレオチド配列を含み得る。例えば、リンカーペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号44のヌクレオチド配列を含み得る。
【0065】
本発明の一実施形態においては、配列番号22~24の全て;配列番号25~27の全て;配列番号22~27の全て;配列番号15及び16の両方;配列番号17及び18の両方;配列番号15及び19の両方;配列番号16及び20の両方;配列番号15~16及び19~20の全て;配列番号22~24及び19の全て;配列番号25~27及び2
0の全て;配列番号22~27及び19~20の全て;配列番号164~169の全て;配列番号170及び171の両方;配列番号172及び173の両方;配列番号164~169及び174~175の全て;配列番号170~171及び174~175の全て;配列番号177~182の全て;配列番号183~184の両方;配列番号185~186の両方;配列番号177~182及び187~188の全て;配列番号183~184及び187~188の全て;配列番号189~194の全て;配列番号195~196の両方;配列番号197~198の両方;配列番号189~194及び199~200の全て;又は配列番号195~196及び199~200の全てのヌクレオチド配列を含む核酸は、マウスTCRをコードする。
【0066】
本発明は、本明細書に記載される核酸のいずれかのヌクレオチド配列に対して相補的なヌクレオチド配列、又は本明細書に記載される核酸のいずれかのヌクレオチド配列に対し、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む、核酸も提供する。
【0067】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列は、好ましくは、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする。「高ストリンジェンシー条件」とは、ヌクレオチド配列が、非特異的ハイブリダイゼーションよりも検出可能に強い量で標的配列(本明細書に記載される核酸のいずれかのヌクレオチド配列)に特異的にハイブリダイズすることを意味する。高ストリンジェンシー条件としては、正確に相補的な配列を有するポリヌクレオチド、又は散らばったミスマッチを少しだけ含有するポリヌクレオチドを、ヌクレオチド配列にマッチしたいくつかの小領域(例、3~10塩基)を偶然有するランダム配列から識別する条件が挙げられる。かかる相補的な小領域は、14~17又はそれ以上の塩基の全長相補体よりも容易に融解され、高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションにより、それらが容易に識別可能となる。比較的高ストリンジェンシーの条件としては、例えば、低塩及び/又は高温条件(約0.02~0.1MのNaCl又は当量によって、約50~70℃の温度で提供される等)が挙げられる。かかる高ストリンジェンシー条件は、許容したとしても、ヌクレオチド配列とテンプレート鎖若しくは標的鎖との間のミスマッチをほとんど許容せず、本発明のTCRのいずれかの発現を検出するのに特に好適である。条件は、漸増量のホルムアミドの添加によって、よりストリンジェントになり得ることが、一般的に理解される。
【0068】
本発明は、本明細書に記載の核酸のいずれかと、少なくとも約70%以上(例、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%)同一であるヌクレオチド配列を含む核酸も提供する。これに関して、核酸は、本明細書に記載のヌクレオチド配列のいずれかから実質的になり得る。
【0069】
本発明の核酸は、組換え発現ベクターに組み込まれ得る。これに関して、本発明は、本発明の核酸のいずれかを含む組換え発現ベクターを提供する。本発明の一実施形態においては、組換え発現ベクターは、α鎖、β鎖及びリンカーペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。例えば、一実施形態においては、組換え発現ベクターは、配列番号21(α鎖及びβ鎖である配列番号11及び12を、それらの間に位置するリンカーと共にコードする);配列番号163(α鎖及びβ鎖である配列番号157及び158を、それらの間に位置するリンカーと共にコードする);配列番号202(α鎖及びβ鎖である配列番号145及び146を、それらの間に位置するリンカーと共にコードする)又は配列番号176(α鎖及びβ鎖である配列番号133及び134を、それらの間に位置するリンカーと共にコードする)のヌクレオチド配列を含む。
【0070】
本明細書における目的のためには、用語「組換え発現ベクター」とは、宿主細胞によるmRNA、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドの発現を可能にする、遺伝学的に改
変されたオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドコンストラクトを意味し、この場合、コンストラクトは、mRNA、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ベクターは、細胞内でmRNA、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドを発現させるのに十分な条件下で細胞と接触させられる。本発明のベクターは、全体としては天然には存在しない。しかし、該ベクターの一部は天然に存在し得る。本発明の組換え発現ベクターは、DNA及びRNA(一本鎖又は二本鎖であり得、合成されるか、又は一部が天然のソースから得られ得、天然、非天然又は改変されたヌクレオチドを含有し得る)を含む(がこれらに限定されない)、任意のタイプのヌクレオチドを含み得る。組換え発現ベクターは、天然に存在するヌクレオチド間結合、天然に存在しないヌクレオチド間結合、又は両方のタイプの結合を含み得る。好ましくは、天然に存在しない又は改変されたヌクレオチド又はヌクレオチド間結合は、ベクターの転写や複製を妨害しない。
【0071】
本発明の組換え発現ベクターは、任意の好適な組換え発現ベクターであり得、任意の好適な宿主細胞を形質転換又はトランスフェクションするために用いられ得る。好適なベクターとしては、プラスミド及びウイルス等の繁殖及び増幅のため、若しくは発現のため、又は両方のために設計されたベクターが挙げられる。ベクターは、pUCシリーズ(Fermentas Life Sciences)、pBluescriptシリーズ(Stratagene,LaJolla,CA)、pETシリーズ(Novagen,Madison,WI)、pGEXシリーズ(Pharmacia Biotech,Uppsala,Sweden)、及びpEXシリーズ(Clontech,Palo Alto,CA)から成る群から選択され得る。λGT10、λGT11、λZapII(Stratagene)、λEMBL4及びλNM1149等のバクテリオファージベクターも用いられ得る。植物発現ベクターの例としては、pBI01、pBI101.2、pBI101.3、pBI121及びpBIN19(Clontech)が挙げられる。動物発現ベクターの例としては、pEUK-Cl、pMAM及びpMAMneo(Clontech)が挙げられる。好ましくは、組換え発現ベクターは、ウイルスベクター(例、レトロウイルスベクター)である。特に好ましい実施形態においては、組換え発現ベクターはMSGV1ベクターである。
【0072】
本発明の組換え発現ベクターは、例えば、Green and Sambrook et al.(上記)に記載されている標準的な組換えDNA技術を用いて調製され得る。環状又は線状の発現ベクターのコンストラクトは、原核又は真核の宿主細胞において機能する複製系を含有するように調製され得る。複製系は、ColEl、2μプラスミド、λ、SV40、ウシ乳頭腫ウイルス等(例)に由来し得る。
【0073】
望ましくは、組換え発現ベクターは、適宜、ベクターがDNAベースであるかRNAベースであるかを考慮して、ベクターが導入される宿主細胞のタイプ(例、バクテリア、真菌、植物、又は動物)に特異的な、転写、並びに翻訳の開始及び終止コドン等の調節配列を含む。
【0074】
組換え発現ベクターは、形質転換又はトランスフェクションされた宿主細胞の選択を可能にする、1つ以上のマーカー遺伝子を含み得る。マーカー遺伝子は、殺生物剤耐性(例、抗生物質、重金属などに対する耐性)、原栄養性を提供するための栄養要求性宿主細胞における補完等を含む。本発明の発現ベクターに好適なマーカー遺伝子としては、例えば、ネオマイシン/G418耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ヒスチジノール耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子及びアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。
【0075】
組換え発現ベクターは、TCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質をコードするヌクレオチド配列に、又は、TCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質をコードするヌクレ
オチド配列に相補的であるか、又はハイブリダイズするヌクレオチド配列に作動可能に結合した天然の、又は非天然のプロモーターを含み得る。プロモーターの選択(例、強力なプロモーター、弱いプロモーター、誘導プロモーター、組織特異的プロモーター及び発生特異的(developmental-specific)プロモーター)は、当業者の通常の技術の範囲内である。同様に、ヌクレオチド配列をプロモーターと組み合わせることも、当業者の技術の範囲内である。プロモーターは、非ウイルスプロモーター、又はウイルスプロモーター(例、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター、及びマウス幹細胞ウイルス長鎖末端反復配列(long-terminal repeat)において見受けられるプロモーター)であり得る。
【0076】
本発明の組換え発現ベクターは、一過性の発現のため、安定した発現のためのいずれか、又はその両方のために設計され得る。また、組換え発現ベクターは、構成的発現のため、又は誘導性発現のために作製され得る。
【0077】
更に、組換え発現ベクターは、自殺遺伝子を含むように作製され得る。用語「自殺遺伝子」は、本明細書で用いる場合、自殺遺伝子を発現する細胞を死に至らしめる遺伝子を指す。自殺遺伝子は、その遺伝子を発現する細胞に対し物質(例、薬物)に対する感受性を付与し、細胞が該物質と接触したとき又は該物質に曝露されたときに細胞を死に至らしめる遺伝子であり得る。自殺遺伝子は、当該技術分野において公知であり、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、シトシンデアミナーゼ、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ及びニトロレダクターゼが挙げられる。
【0078】
本発明の別の実施形態は、本明細書に記載の組換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を更に提供する。用語「宿主細胞」は、本明細書で用いる場合、本発明の組換え発現ベクターを含有し得る任意の型の細胞を指す。宿主細胞は、真核細胞(例、植物、動物、真菌又は藻類)であり得、又は、原核細胞(例、バクテリア若しくは原生動物)であり得る。宿主細胞は、培養細胞、又は、初代細胞であり得、即ち、生物(例、ヒト)から直接単離され得る。宿主細胞は、接着細胞、又は、浮遊細胞、即ち、懸濁物中で増殖する細胞であり得る。好適な宿主細胞は、当該技術分野において公知であり、例えば、DH5α E.coli細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、サルVERO細胞、COS細胞、HEK293細胞等が挙げられる。組換え発現ベクターを増幅又は複製する目的のためには、宿主細胞は、好ましくは、原核細胞(例、DH5α細胞)である。組換えTCR、ポリペプチド又はタンパク質を産生する目的のためには、宿主細胞は、好ましくは、哺乳動物細胞である。最も好ましくは、宿主細胞はヒト細胞である。宿主細胞は任意のタイプの細胞であり得、任意のタイプの組織由来であり得、任意の発生段階のものであり得るが、宿主細胞は、好ましくは、末梢血リンパ球(PBL)又は末梢血単核球(PBMC)である。より好ましくは、宿主細胞は、T細胞である。
【0079】
本明細書における目的のためには、T細胞は、任意のT細胞(培養T細胞(例、初代T細胞)、若しくは培養T細胞株(例、Jurkat、SupT1など)由来のT細胞、又は哺乳動物から得られたT細胞等)であり得る。哺乳動物から得られる場合、T細胞は、多数のソース(血液、骨髄、リンパ節、胸腺又は他の組織若しくは体液が含まれるが、これらに限定されない)から得られ得る。T細胞は、濃縮又は精製もされ得る。好ましくは、T細胞はヒトT細胞である。T細胞は、任意のタイプのT細胞であり得、任意の発生段階のものであり得る(CD4/CD8二重陽性T細胞、CD4ヘルパーT細胞(例、Th及びTh細胞)、CD4T細胞、CD8T細胞(例、細胞傷害性T細胞)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、メモリーT細胞(例、セントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞)、ナイーブT細胞等が挙げられるが、これらに限定されない)。
【0080】
本発明は、本明細書に記載の少なくとも1つの宿主細胞を含む細胞集団も提供する。細胞集団は、少なくとも1つの他の細胞(例、組換え発現ベクターをいずれも含まない宿主細胞(例、T細胞)又はT細胞以外の細胞(例、B細胞、マクロファージ、好中球、赤血球、肝細胞、内皮細胞、上皮細胞、筋細胞、脳細胞など))に加えて、記載される組換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を含む、不均質な集団であり得る。或いは、細胞集団は、実質的に均質な集団であり得、該集団は、組換え発現ベクターを含む宿主細胞を主に含む(例、組換え発現ベクターを含む宿主細胞から実質的になる)。集団は細胞のクローン集団でもあり得、該集団の全ての細胞は、組換え発現ベクターを含む単一の宿主細胞のクローンであり、その結果、集団の全ての細胞が組換え発現ベクターを含む。本発明の一実施形態においては、細胞集団は、本明細書に記載される通りの組換え発現ベクターを含む宿主細胞を含むクローン集団である。
【0081】
本発明の一実施形態においては、集団中の細胞数が急速に増幅され得る。T細胞数の増幅は、例えば、米国特許第8,034,334号;米国特許第8,383,099号;米国特許出願公開第2012/0244133号;Dudley et al.,J.Immunother.,26:332-42(2003);及びRiddell et al.,J.Immunol.Methods,128:189-201(1990)に記載の通りの、当該技術分野で既知の多くの方法のいずれかによって達成され得る。一実施形態においては、T細胞数の増幅は、T細胞をOKT3抗体、IL-2、およびフィーダーPBMC(例、放射線照射された同種異系PBMC)と共に培養することによって行われる。
【0082】
本発明は、本明細書に記載されるTCRのいずれかの機能的部分に特異的に結合する抗体又はその抗原結合部分を更に提供する。好ましくは、機能的部分(例、配列番号3、125、137、若しくは149(α鎖のCDR1)、配列番号4、126、138、若しくは150(α鎖のCDR2)、配列番号5、127、139、151、若しくは207(α鎖のCDR3)、配列番号6、128、140、若しくは152(β鎖のCDR1)、配列番号7、129、141、若しくは153(β鎖のCDR2)、配列番号8、130、142、若しくは154(β鎖のCDR3)、配列番号9、131、143、155、若しくは208(α鎖の可変領域)、配列番号10、132、144、若しくは156(β鎖の可変領域)、又はそれらの組合せ(例、配列番号3~5;配列番号6~8;配列番号3~8;配列番号9;配列番号10;配列番号9~10;配列番号125~127、配列番号128~130、配列番号125~130、配列番号137~139、配列番号140~142、配列番号137~142、配列番号149~151、配列番号149~150及び207、配列番号152~154、配列番号149~154、配列番号149~150、207及び152~154;配列番号131~132、配列番号143~144、配列番号155~156;配列番号208;又は配列番号208及び156)のアミノ酸配列を含む機能的部分)は、がん抗原に特異的に結合する。より好ましくは、機能的部分は、配列番号3~8、配列番号9及び10、配列番号125~130、配列番号137~142、配列番号149~154、配列番号149~150、207及び152~154、配列番号131~132、配列番号143~144、配列番号155~156、又は配列番号208及び156のアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態においては、抗体又はその抗原結合部分は、6つのCDR(α鎖のCDR1~3及びβ鎖のCDR1~3)全てによって形成されるエピトープに結合する。抗体は、当該技術分野で公知の任意のタイプの免疫グロブリンであり得る。例えば、抗体は、任意のアイソタイプ(例、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM等)のものであり得る。抗体は、モノクローナル又はポリクローナルであり得る。抗体は、天然に存在する抗体、例、哺乳動物(例、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマ、ニワトリ、ハムスター、ヒト等)から単離及び/又は精製された抗体であり得る。或いは、抗体は、遺伝学的に操作された抗体(例、ヒト化抗体又はキメラ抗体)であり得る。抗体は、モノマー又はポリマー形態であり得る。また、抗体は、本発明
のTCRの機能的部分に対し、任意のレベルの親和性又は結合活性を有し得る。望ましくは、抗体は、他のペプチド又はタンパク質と交差反応性が最小限であるように、本発明のTCRの機能的部分に対し特異的である。
【0083】
本発明のTCRの任意の機能的部分又は機能的変異体と結合する能力について、抗体を試験する方法が当該技術分野において公知であり、任意の抗原抗体結合アッセイ(例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ELISA、ウェスタンブロット、免疫沈降及び競合阻害アッセイ等)が挙げられる。
【0084】
抗体を作製する好適な方法は、当該技術分野において公知である。例えば、標準的なハイブリドーマ法は、C.A.Janeway et al.(eds.),Immunobiology、8thEd.,Garland Publishing,NewYork,NY(2011)(例))に記載されている。或いは、EBV-ハイブリドーマ法、非ヒト動物において抗体を製造する方法、及びバクテリオファージベクター発現系等、他の方法が当該技術分野において公知である。
【0085】
ファージ提示法も、本発明の抗体を生成するために用いられ得る。これに関して、抗体の抗原結合可変(V)ドメインをコードするファージライブラリーは、標準的な分子生物学及び組換えDNA技術(例、Green and Sambrook et al.(eds.),Molecular Cloning,A Laboratory Manual,4thEdition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York (2012)参照)を使って生成され得る。所望の特異性を伴う可変領域をコードするファージは、所望の抗原への特異的結合に関して選択され、完全又は部分的抗体は、選択された可変ドメインを含むように再構成される。再構成された抗体をコードする核酸配列は、ハイブリドーマ産生に用いられる骨髄腫細胞等、好適な細胞株へと導入され、その結果、モノクローナル抗体の特性を有する抗体が細胞によって分泌される(例、Janeway et al.(上記)参照)。
【0086】
ヒト化抗体を生成するための方法は、当該技術分野において周知である。抗体は、特定の重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックであるトランスジェニックマウスによっても産生され得る。かかる方法は、当該技術分野において公知であり、例えば、Janeway et al.(上記)に記載されている。
【0087】
本発明は、本明細書に記載される抗体のいずれかの抗原結合部分も提供する。抗原結合部分は、Fab、F(ab’)、dsFv、sFv、ダイアボディ(diabodies)及びトリアボディ(triabodies)等、少なくとも1つの抗原結合部位を有する任意の部分であり得る。
【0088】
単鎖可変領域断片(sFv)抗体断片(これは、合成ペプチドを介して抗体軽鎖のVドメインに連結された抗体重鎖の可変(V)ドメインを含む、切断型Fab断片から成る)は、慣用的な組換えDNAテクノロジー技術を用いて生成され得る(例、Janeway
et al.,(上記)参照)。同様に、ジスルフィド安定化可変領域断片(dsFv)は、組換えDNA技術によって調製され得る。しかしながら、本発明の抗体断片は、これらの例示的な抗体断片のタイプに限定されない。
【0089】
また、抗体又はその抗原結合部分は、検出可能な標識(例えば、放射性同位体、蛍光色素分子(例、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE))、酵素(例、アルカリホスファターゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ)、及び元素粒子(例、金粒子)等)を含むように修飾され得る。
【0090】
本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞(その集団を含む)、及び抗体(その抗原結合部分を含む)は、単離及び/又は精製され得る。用語「単離された」は、本明細書で用いる場合、その自然環境から取り出されたことを意味する。用語「精製された」は、本明細書で用いる場合、純度が増したことを意味するが、「純度」は、相対的な用語であって、必ずしも絶対的純度として解釈されるべきでない。例えば、純度は、少なくとも約50%であり得、60%、70%、80%、90%、95%を超え得、又は100%であり得る。
【0091】
本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞(その集団を含む)、及び抗体(その抗原結合部分を含む)は、これら全てが、以降、「本発明のTCR材料」と総称されるものであるが、医薬組成物等、組成物へと製剤化され得る。これに関して、本発明は、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、宿主細胞(その集団を含む)、及び抗体(その抗原結合部分を含む)のいずれか、並びに医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物を提供する。本発明のTCR材料のいずれかを含有する本発明の医薬組成物は、1超の本発明のTCR材料(例、ポリペプチド及び核酸)又は2つ以上の異なるTCRを含み得る。或いは、医薬組成物は、化学療法剤等、別の医薬的に活性な物質(複数可)又は薬剤(複数可)(例、アスパラギナーゼ(asparaginase)、ブスルファン(busulfan)、カルボプラチン(carboplatin)、シスプラチン(cisplatin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、フルオロウラシル(fluorouracil)、ゲムシタビン(gemcitabine)、ヒドロキシウレア(hydroxyurea)、メトトレキサート(methotrexate)、パクリタキセル(paclitaxel)、リツキシマブ(rituximab)、ビンブラスチン(vinblastine)、ビンクリスチン(vincristine)など)と組み合わせて、本発明のTCR材料を含み得る。
【0092】
好ましくは、担体は医薬的に許容可能な担体である。医薬組成物に関して、担体は、考慮中の特定の本発明のTCR材料のために従来用いられているもののいずれかであり得る。かかる医薬的に許容可能な担体は、当業者に周知であり、公衆にとって容易に入手可能である。医薬的に許容可能な担体は、使用条件下で有害な副作用や毒性を有さないものであることが好ましい。
【0093】
担体の選択は、特定の本発明のTCR材料によって、そして本発明のTCR材料を投与するために用いられる特定の方法によってある程度決定される。従って、多様な、本発明の医薬組成物の好適な製剤がある。好適な製剤としては、経口、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内及び腹腔内投与のための、いずれかの製剤が挙げられ得る。本発明のTCR材料を投与するために、1超の路が用いられ得、特定の例においては、特定の経路が、別の経路よりも迅速且つ効果的な反応をもたらし得る。
【0094】
好ましくは、本発明のTCR材料は、注射により、静脈内(例)に投与される。本発明のTCR材料が、本発明のTCR(又はその機能的変異体)を発現する宿主細胞である場合には、注射用の細胞のための医薬的に許容可能な担体は、任意の等張性の担体、例えば、通常の生理食塩水(水中約0.90% w/vのNaCl、水中約300mOsm/LのNaCl、又は水1リットル当たり約9.0gのNaCl)、NORMOSOL R電解質溶液(Abbott,Chicago,IL)、PLASMA-LYTE A(Baxter,Deerfield,IL)、水中約5%のデキストロース、又は乳酸リンゲル液等が挙げられ得る。一実施形態においては、医薬的に許容可能な担体には、ヒト血清アルブミン(albumen)が補充される。
【0095】
本発明の目的のためには、投与される本発明のTCR材料の量又は用量(例、本発明の
TCR材料が1つ以上の細胞の場合、細胞数)は、被験者又は動物において、適切な期間にわたって治療的又は予防的応答(例)をもたらすのに十分であるべきである。例えば、本発明のTCR材料の用量は、がん抗原(例、突然変異KRAS)と結合するのに、又は、投与時から約2時間以上、例、12~24時間以上という期間でがんを検出、治療若しくは予防するのに十分でなければならない。特定の実施形態においては、期間は、もっと長くなり得る。用量は、特定の本発明のTCR材料の有効性、及び動物(例、ヒト)の状態と、治療する動物(例、ヒト)の体重とによって決定される。
【0096】
投与される用量を決定するための多くのアッセイが当該技術分野において公知である。本発明の目的のために、標的細胞が溶解される程度、又は、それぞれが異なる用量のT細胞を与えられた哺乳動物1セットのうち、1匹の哺乳動物へ、所与の用量のかかるT細胞を投与した際の、本発明のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質を発現するT細胞によってIFN-γが分泌される程度を比較することを含むアッセイが、哺乳動物に投与する開始用量を決定するために用いられ得る。一定用量の投与の際の、標的細胞が溶解する程度、又はIFN-γが分泌される程度は、当該技術分野において公知の方法によってアッセイされ得る。
【0097】
本発明のTCR材料の用量は、特定の本発明のTCR材料の投与に伴い得る任意の有害な副作用の存在、性質及び程度によっても決定される。典型的には、主治医が、年齢、体重、全般的健康、食習慣、性別、投与する本発明のTCR材料、投与経路、及び治療されているがんの重篤度等、様々な要因を考慮に入れて、個々の患者を治療するための本発明のTCR材料の用量を決定する。本発明のTCR材料が細胞集団である実施形態においては、注入あたりで投与される細胞の数は、約1×10から約1×1012細胞又はより多く(例)まで変わり得る。特定の実施形態においては、1×10未満の細胞が投与され得る。
【0098】
本発明のTCR材料の治療効力又は予防効力を修飾によって増大させるために、本発明のTCR材料(inventive TCR materials of the invention)が、いくつもの形に修飾され得ることを、当業者は容易に理解する。例えば、本発明のTCR材料は、直接的又は標的化部分への架橋物(bridge)を介する間接的のいずれかでコンジュゲート化され得る。化合物(例、本発明のTCR材料)を標的化部分にコンジュゲート化する実務は、当該技術分野において公知である。用語「標的化部分」は、本明細書で用いる場合、細胞表面受容体を特異的に認識し、これに結合する任意の分子又は物質を指し、標的化部分は、該受容体が表面に発現する細胞の集団への、本発明のTCR材料の送達を指令する。標的化部分としては、細胞表面受容体(例、上皮成長因子受容体(EGFR)、T細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)、CD28、血小板由来成長因子受容体(PDGF)、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)等)に結合する抗体又はその断片、ペプチド、ホルモン、成長因子、サイトカイン、及び他の任意の天然リガンド又は非天然リガンドが挙げられるが、これらに限定されない。用語「架橋物」は、本明細書で用いる場合、本発明のTCR材料を標的化部分に連結させる任意の物質又は分子を指す。当業者は、本発明のTCR材料の機能には必要でない、本発明のTCR材料における部位が、架橋物及び/又は標的化部分を結合させるのに理想的な部位であると認識する(但し、架橋物及び/又は標的化部分は、本発明のTCR材料に結合して、本発明のTCR材料の機能(即ち、突然変異標的(例、突然変異KRAS)に結合する能力、又はがんを検出、治療若しくは予防する能力)を妨害しないものとする)。
【0099】
本発明の医薬組成物、TCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞又は細胞集団が、がんの治療又は予防の方法において用いられ得ることが検討される。特定の理論には縛られないが、本発明のTCRは、突然変異標的(例、突然変異
KRAS)に特異的に結合すると考えられ、その結果、TCR(又は関連する本発明のポリペプチド又はタンパク質)が、細胞に発現すると、突然変異標的(例、突然変異KRAS)を発現する標的細胞に対する免疫反応を調節することができる。これに関して、本発明は、哺乳動物におけるがんの治療又は予防の方法であって、本明細書に記載の医薬組成物、TCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質のいずれか、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、タンパク質のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む、任意の核酸又は組換え発現ベクター、又は本明細書に記載のTCR、ポリペプチド若しくはタンパク質のいずれかをコードする組換えベクターを含む任意の宿主細胞又は細胞集団を、哺乳動物におけるがんを治療又は予防するのに有効な量で、哺乳動物に投与することを含む、方法を提供する。
【0100】
本発明の実施形態は、哺乳動物におけるがんの治療又は予防において用いるための、本明細書に記載の医薬組成物、TCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、タンパク質のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む任意の核酸若しくは組換え発現ベクター、又は本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質のいずれかをコードする組換えベクターを含む任意の宿主細胞又は細胞集団のいずれかを提供する。
【0101】
用語「治療する」及び「予防する」並びにそれらの派生語は、本明細書で用いる場合、100%の、又は完全な治療又は予防を必ずしも意味しない。むしろ、当業者が潜在的な利益又は治療効果を有すると認識する、様々な程度の治療又は予防が存在する。これに関して、本発明の方法は、任意のレベルの任意の量の、哺乳動物におけるがんの治療又は予防を提供し得る。更に、本発明の方法が提供する治療又は予防は、治療又は予防されている1つ以上の、がんの状態又は症状の治療又は予防を含み得る。例えば、治療又は予防は、腫瘍の退行を促進することを含み得る。また、本明細書における目的のために、「予防」は、がんの発症、又はその症状若しくは状態を遅延させることを包含し得る。
【0102】
哺乳動物におけるがんの存在を検出する方法も提供される。該方法は、(i)哺乳動物由来の1つ以上の細胞を含む試料と、本明細書に記載の、本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、抗体若しくはその抗原結合部分、又は医薬組成物のいずれかとを接触させ、それによって複合体を形成すること、及び該複合体を検出することを含み、該複合体の検出が哺乳動物におけるがんの存在を示す。
【0103】
哺乳動物におけるがんを検出する本発明の方法に関して、細胞の試料は、全細胞、その溶解物、又は全細胞溶解物の画分(例、核若しくは細胞質画分、全タンパク質画分、又は核酸画分)を含む試料であり得る。
【0104】
本発明の検出方法の目的のためには、接触は、哺乳動物に関してインビトロ又はインビボで行い得る。好ましくは、接触はインビトロである。
【0105】
また、複合体の検出は、当該技術分野で公知の、任意の数の方法によって行い得る。例えば、本明細書に記載の本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、又は抗体、若しくはその抗原結合部分は、例えば、放射性同位体、蛍光色素(例、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE))、酵素(例、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、及び元素粒子(例、金粒子)等の検出可能な標識で標識され得る。
【0106】
宿主細胞又は細胞集団が投与される、本発明の方法の目的のためには、細胞は、哺乳動物に対して同種異系又は自己の細胞であり得る。好ましくは、細胞は哺乳動物に対して自
己である。
【0107】
本発明の方法に関して、がんは、急性リンパ球性がん、急性骨髄性白血病、肺胞横紋筋肉腫、骨がん、脳がん、乳がん、肛門、肛門管又は肛門直腸のがん、眼のがん、肝内胆管のがん、関節のがん、頸部、胆嚢又は胸膜のがん、鼻、鼻腔、又は中耳のがん、口腔のがん、膣のがん、外陰のがん、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性がん、結腸がん、結腸直腸(colocrectal)がん、子宮内膜がん、食道がん、子宮頸がん、胃腸カルチノイド腫瘍、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、腎臓がん、喉頭がん、肝臓がん、肺がん、悪性中皮腫、黒色腫、多発性骨髄腫、鼻咽頭がん、非ホジキンリンパ腫、口腔咽頭のがん、卵巣がん、陰茎のがん、膵臓がん、腹膜がん、大網がん及び腸間膜がん、咽頭がん、前立腺がん、直腸がん、腎臓がん、皮膚がん、小腸がん、軟部組織がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、子宮のがん、尿管がん及び膀胱がんのいずれかを含む、任意のがんであり得る。好ましいがんは(cancer is cancer is)、膵臓がん、結腸直腸がん、肺がん、子宮内膜がん、卵巣がん、又は前立腺がんである。好ましくは、肺がんは肺腺がんであり、卵巣がんは上皮性卵巣がんであり、膵臓がんは膵臓上皮がんである。別の好ましい実施形態においては、がんは、突然変異ヒトKRAS、突然変異ヒトNRASおよび突然変異ヒトHRASに存在する、VVVGADGVGK(配列番号2)、VVGADGVGK(配列番号34)、VVVGAVGVGK(配列番号33)又はVVGAVGVGK(配列番号35)の突然変異アミノ酸配列が発現するがんである。
【0108】
本発明の方法において哺乳動物というのは、任意の哺乳動物であり得る。用語「哺乳動物」は、本明細書で用いる場合、マウス及びハムスター等、ネズミ目の哺乳動物、及びウサギ等、ウサギ目の哺乳動物を含むが、これらに限定されない、任意の哺乳動物を指す。哺乳動物が、ネコ科の動物(ネコ)及びイヌ科の動物(イヌ)を含むネコ目由来であることが好ましい。哺乳動物が、ウシ科の動物(ウシ)及びイノシシ科の動物(ブタ)を含むウシ目、又はウマ科の動物(ウマ)を含むウマ目(Perssodactyla)由来であることが、より好ましい。哺乳動物が、霊長目、セボイド(Ceboids)目若しくはシモイド(Simoids)目(サル)又は、類人(Anthropoids)目(ヒト及び類人猿)であることが、最も好ましい。特に好ましい哺乳動物は、ヒトである。
【0109】
以下の実施例は、本発明を更に説明するが、もちろん、決してその範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【実施例
【0110】
実施例1
本実施例は、マウス抗KRAS7-16 G12D 10マー TCRの単離を実例で示す。
【0111】
コンピュータアルゴリズムを用いて、候補HLA-A1101KRASペプチドを作成した。該アルゴリズムに関しては、強い結合剤閾値は50nM、弱い結合剤閾値は500nMであった。候補ペプチドを表1に示す。
【0112】
【表7】
【0113】
G12D 10マーペプチド(配列番号2)で、HLA-A11トランスジェニックマウスを3回免疫した。3回目の免疫後、脾臓及びリンパ節を取り出し、様々な濃度(1μM、0.1μM及び0.01μM)のG12D 10マーペプチドと共にインビトロで7日間培養した。リンパ節(LN)及び脾臓培養物から単離したT細胞を、(i)(a)ペプチドなし(COS/A11)、(b)WT KRAS7-16ペプチド(配列番号30)(COS/A11+WTペプチド)、(c)G12D 10マーペプチド(配列番号2)(COS/A11+G12Dペプチド)、又は(d)G12V 10マーペプチド(配列番号33)(COS/A11+G12Vペプチド)でパルスした、HLA-A11を発現するように形質導入したCOS7細胞(COS7/A11);及び(ii)(a)WT
KRASミニ遺伝子(23マーの配列番号118をコードする)(COS/A11/WT)又は(b)G12Dミニ遺伝子(23マーの配列番号119をコードする)(COS/A11/G12D)をコードするベクターでトランスフェクションしたCOS7/A11細胞に対する反応性について試験した。インターフェロン(IFN)-γを測定した。結果を表2A(パルスした標的細胞)及び表2B(トランスフェクションした標的細胞)に示す。表2A及び2Bに示す通り、HLA-A11拘束性マウスT細胞は、KRAS G12Dペプチド(配列番号2)に対して反応性であった。
【0114】
【表8】
【0115】
【表9】
【0116】
cDNA末端の5’迅速増幅(RACE)を用いて、各陽性ウェル中の細胞からTCRを単離した。2つの支配的なアルファ鎖と4つの支配的なベータ鎖を同定した(表3)。
【0117】
【表10】
【0118】
実施例2
本実施例は、配列番号11を含むTCRα鎖及び配列番号12を含むTCRβ鎖を発現するよう形質導入したPBLが、HLA-A11+/G12D 10マー+の標的に対して反応性であることを実証する。
【0119】
表3の2つの支配的なα鎖及び4つの支配的なβ鎖を、個別に、MSGV1レトロウイルスベクターにクローニングした。表4に示す通り、PBLを、α鎖およびβ鎖の様々な対のうちの1つを発現するよう、個別に共形質導入した。形質導入PBLを、(i)(a)G12D 10マーペプチド(配列番号2)、(b)G12V 10マーペプチド(配
列番号33)、(c)WT KRAS 10マーペプチド(配列番号30)、若しくは(d)ペプチドなし(なし)でパルスした、HLA-A11を発現するT2/A11+(表4A)若しくはCOS7/A11+(表4B)の細胞;又は(ii)(a)G12Dミニ遺伝子(23マーの配列番号119をコードする)(COS/A11/G12D)、(b)G12Vミニ遺伝子(23マーの配列番号120をコードする)(COS/A11/G12V)、(c)WT KRASミニ遺伝子(23マーの配列番号118コードする)(COS7/A11/WT)で形質導入したCOS7/A11細胞、若しくは(d)細胞なし(培地のみ)(表4C)に対する反応性についてスクリーニングした。IFN-γ分泌を測定した。結果を表4A~Cに示す。表4A~Cにおいて、太字のIFN-γ分泌値は、反応性を示したTCRα鎖及びβ鎖の対を示し、下線付き太字のIFN-γ分泌値は、最良の反応性を示したTCRα鎖及びβ鎖の対を示す。表4A~Cに示す通り、マウスTCRα鎖TRAV12N-301(配列番号11)及びマウスTCRβ鎖TRBV401(配列番号12)を発現するよう共形質導入したPBLは、G12D 10マーでパルスしたHLA-A11発現COS7細胞又はG12Dトランスフェクタントの標的細胞に対し反応性を示した。
【0120】
【表11】
【0121】
【表12】
【0122】
【表13】
【0123】
実施例3
本実施例は、配列番号11を含むTCRα鎖及び配列番号12を含むTCRβ鎖で共形質導入したPBLが、HLA-A11+/G12D+の膵臓腫瘍細胞株FA6-2/A11に対して反応性であることを実証する。
【0124】
ヒトPBLを、配列番号11を含むTCRα鎖及び配列番号12を含むTCRβ鎖で共形質導入した。共形質導入細胞を、(i)(a)HLA-A11単独でトランスフェクションしたCOS7細胞(COS7/A11)又は(b)WT KRASミニ遺伝子(23マーの配列番号118をコードする)(COS7/A11/KRAS WT)、(c)KRAS G12Dミニ遺伝子(23マーの配列番号119をコードする)(COS7/A11/KRAS G12D)、(d)KRAS G12Vミニ遺伝子(23マーの配列番号120をコードする)(COS7/A11/KRAS G12V)で形質導入した、HLA-A11でトランスフェクションしたCOS7細胞;(ii)膵臓腫瘍細胞株Mia-Paca2/A11、T3m4/A11、AsPC-1、FA6-2/A11、MDA-Panc-48/A11、PANC-1、PK-45p/A11、SK.PC.3/A11、x135m1/A11、又は(iii)培地単独と共培養した。IFN-γ分泌を測定した。結果を表5に示す。腫瘍細胞株のKRAS突然変異を括弧内に示す。表5に示す通り、TCRα鎖TRAV12N-301(配列番号11)及びTCRβ鎖TRBV401(配列番号12)で共形質導入したPBLは、HLA-A11+/G12D+の膵臓腫瘍細胞株FA6-2/A11に対し反応性を示した。
【0125】
【表14】
【0126】
実施例4
本実施例は、TCRα鎖TRAV12N-301(配列番号11)及びTCRβ鎖TRBV401(配列番号12)をコードするレトロウイルスベクターで形質導入したPBLが、KRAS G12D 10マーペプチド(配列番号2)でパルスしたCOS7/A11細胞に対し、反応性を示すことを実証する。
【0127】
ヒトPBLを、TCRα鎖TRAV12N-301(配列番号11)及びTCRβ鎖TRBV401(配列番号12)をコードするレトロウイルスベクターで形質導入した。形質導入したPBLを、表6に示す様々な濃度の、KRAS G12D 10マーペプチド(配列番号2)、KRAS G12D 9マーペプチド(配列番号34)、KRAS
G12D 9マーペプチド(配列番号124)、KRAS G12V 10マーペプチド(配列番号33)、又はWT KRAS 10マーペプチド(配列番号30)でパルスしたCOS7/A11細胞と共培養した。IFN-γ分泌を測定した。結果を表6に示す。表6に示す通り、TCRα鎖TRAV12N-301(配列番号11)及びTCRβ鎖TRBV401(配列番号12)を発現するよう形質導入したヒトPBLは、KRAS G12D 10マーペプチド(配列番号2)でパルスしたCOS7/A11細胞に対し反応性を示した。
【0128】
【表15】
【0129】
実施例5
本実施例は、TCRα鎖TRAV12N-301(配列番号11)及びTCRβ鎖TRBV401(配列番号12)をコードするレトロウイルスベクターで形質導入したPBLが、HLA-A11を発現する膵臓腫瘍株FA6-2/A11に対し、反応性を示すことを実証する。
【0130】
ヒトPBLを、TCRα鎖TRAV12N-301(配列番号11)及びTCRβ鎖TRBV401(配列番号12)をコードするレトロウイルスベクターで形質導入した。非形質導入のコントロールPBL又は形質導入PBLを、表7に示す標的細胞と共培養した。IFN-γ分泌を測定した。結果を表7に示す。腫瘍細胞株のKRAS変異を括弧内に示す。表7に示す通り、TCRα鎖TRAV12N-301(配列番号11)及びTCRβ鎖TRBV401(配列番号12)を発現するよう形質導入したヒトPBLは、FA6-2/A11腫瘍細胞株に対し反応性を示した。非形質導入PBLは、表7に記載の各標的細胞との共培養の際に、100pg/mL未満のIFN-γを分泌した。
【0131】
【表16】
【0132】
実施例6
本実施例は、マウス抗KRAS7-16 G12V 10マーTCRの単離を実例で示す。
【0133】
G12V 10マーペプチド(配列番号33)で、HLA-A11トランスジェニックマウスを2回免疫した。2回目の免疫後、脾臓及びリンパ節を取り出し、G12V 10マーペプチドを用いて、様々な濃度(1μM、0.1μM及び0.01μM)で7日間、インビトロで培養した。リンパ節及び脾臓培養物から単離したT細胞を、(i)(a)G12Vミニ遺伝子(23マーの配列番号120をコードする)(COSA11/G12V);(b)WT KRASミニ遺伝子(23マーの配列番号118をコードする)(COSA11/WT);(c)G12Dミニ遺伝子(23マーの配列番号119をコードする)(COSA11/G12D)をコードするベクターでトランスフェクションしたCOS7/A11細胞;(ii)HLA-A11を発現するKRAS G12V+の膵腫瘍細胞株Paca44/A11、SKPC3/A11、若しくはx135m1/A11;又は(iii)標的細胞なし(培地)に対する反応性について試験した(表8)。結果を表8に示す。表8において、下線付きのIFN-γ分泌値は、トランスフェクタント及び腫瘍に対する反応性を示した細胞を示す。
【0134】
【表17】
【0135】
5’RACEを用いて、非常に特異的な、G12Vペプチドとトランスフェクタントとの反応性を示した細胞からオリゴクローナルTCRを単離した。支配的な2つのアルファ鎖及び支配的な3つのベータ鎖を同定した(表9)。
【0136】
【表18】
【0137】
実施例7
本実施例は、(i)配列番号133を含むTCRα鎖及び配列番号134を含むTCRβ鎖、又は(ii)配列番号145を含むTCRα鎖及び配列番号146を含むTCRβを発現するよう形質導入したPBLが、HLA-A11+/G12V 10マー+の標的に対して反応性であることを実証する。
【0138】
表9の2つの支配的なα鎖及び3つの支配的なβ鎖を、MSGV1レトロウイルスベクターに個々にクローニングした。表10A~10Bに示す通り、抗CD3刺激PBLを個々に共形質導入して、α鎖及びβ鎖の様々な対のうちの1つを発現させた。形質導入したPBLを、(i)(a)G12D 10マーペプチド(配列番号2)、(b)G12V 10マーペプチド(配列番号33)、若しくは(c)WT KRAS 10マーペプチド(配列番号30)でパルスした、COS7/A11+の細胞(表10A)又は(ii)(a)G12Dミニ遺伝子(23マーの配列番号119をコードする)(COS/A11/G12D)、(b)G12Vミニ遺伝子(23マーの配列番号120をコードする)(COS/A11/G12V)、若しくは(c)WT KRASミニ遺伝子(23マーの配列番号118をコードする)(COS/A11/WT)で形質導入したCOS7/A11細胞(表10B)に対する反応性に関してスクリーニングした。ペプチドでパルスしなかった非形質導入Cos7/A11細胞(Cos7/A11)及び細胞を含まない培地(培地)をネガティブコントロールとして用いた。GFPでパルス又は形質導入したPBLはポジティブコントロールとして用いた。IFN-γ分泌を測定した。
【0139】
結果を表10A~10Bに示す。表10A~10Bにおいて、太字のIFN-γ分泌値は、反応性を示したTCRα鎖及びβ鎖の対を示す。表10A~10Bに示す通り、(i
)マウスTCRα鎖TRAV1901(配列番号145)及びマウスTCRβ鎖TRBV13-102(配列番号146)又は(ii)マウスTCRα鎖TRAV3-301(配列番号133)及びマウスTCRβ鎖TRBV401(配列番号134)の両方を発現するよう共形質導入したPBLが、G12V 10マーでパルスしたHLA-A11発現COS7細胞又はG12Vトランスフェクタント標的細胞に対する反応性を示したが、コントロールのペプチド又はコントロールのトランスフェクタントにはそうではなかった。
【0140】
【表19】
【0141】
【表20】
【0142】
実施例8
本実施例は、TRAV3-301/TRBV401マウス抗KRAS G12V TCR(配列番号133及び134)が、TRAV1901/TRBV13-102マウス抗KRAS G12V TCR(配列番号145及び146)と比較して、パルスした標的ペプチドに対し、より高い親和性を有することを実証する。
【0143】
PBLを、(i)TRAV3-301/TRBV401マウス抗KRAS G12V TCR(配列番号133及び134)又は(ii)TRAV1901/TRBV13-102マウス抗KRAS G12V TCR(配列番号145及び146)のいずれかで形質導入した。形質導入した細胞を、表11A及び11Bに示す濃度の、(a)G12D 10マーペプチド(配列番号2)、(b)G12V 10マーペプチド(配列番号33)、(c)WT KRAS10マーペプチド(配列番号30)、(d)G12D 9マーペプチド(配列番号34)、又は(e)G12V 9マーペプチド(配列番号35
)でパルスしたCos7/A11細胞と共培養した。IFN-γ分泌を測定した。
【0144】
結果を表11A(TRAV3-301/TRBV401(配列番号133及び134))及び表11B(TRAV1901/TRBV13-102(配列番号145及び146))に示す。表11A~11Bにおいて、太字のIFN-γ分泌値は、TCRが反応性を示した標的ペプチド濃度を示す。表11A~11Bに示す通り、TRAV3-301/TRBV401TCR(配列番号133及び134)で形質導入したT細胞は、9マー及び10マーの両方のペプチドでパルスしたCos7/A11を認識し、濃度0.01nMでパルスした9マーを認識した。従って、TRAV3-301/TRBV401TCR(配列番号:133及び134)は、TRAV1901/TRBV13-102(配列番号:145及び146)TCRと比較して、より高い結合活性を伴って、パルスした標的ペプチドを認識した。TRAV3-301/TRBV401(配列番号145及び146)TCRの、G12V 9マーペプチドに対する反応性が、10マーペプチドと比較して増加したことにより、9マーペプチドが最小の決定因子であることも示唆された。
【0145】
【表21】
【0146】
【表22】
【0147】
実施例9
本実施例は、TRAV3-301/TRBV401マウス抗KRAS G12V TCR(配列番号133及び134)が、HLA-A11+KRAS G12V+の膵臓腫瘍細胞株を認識することを実証する。
【0148】
PBLを、(i)TRAV3-301/TRBV401マウス抗KRAS G12V TCR(配列番号133及び134)又は(ii)TRAV1901/TRBV13-102マウス抗KRAS G12V TCR(配列番号145及び146)のいずれかで形質導入した。表12に示す通り、形質導入細胞を、(i)(a)G12Dミニ遺伝子(23マーの配列番号119をコードする)(COS/A11/G12D)、(b)G12Vミニ遺伝子(23マーの配列番号120をコードする(COS/A11/G12V)、又は(c)WT KRASミニ遺伝子(23マーの配列番号118をコードする)(COS/A11/WT)で形質導入したCOS7/A11細胞;(ii)HLA-A11で形質導入したKRAS G12V陰性膵臓腫瘍細胞株;(iii)HLA-A11で形質導入したKRAS G12V+の膵臓腫瘍細胞株;又は(iv)親(非形質導入)膵臓腫瘍細胞株と共培養した。IFN-γ分泌を測定した。
【0149】
結果を表12に示す。表12において、太字のIFN-γ分泌値は、TCRが反応性を示した標的細胞を示す。表12に示す通り、TRAV3-301/TRBV401マウス抗KRAS G12V TCR(配列番号133及び134)は、TRAV1901/TRBV13-102マウス抗KRAS G12V TCR(配列番号145及び146)と比較して、より多くの、HLA-A11+KRAS G12V+の膵臓腫瘍細胞株を認識した。
【0150】
【表23】
【0151】
実施例10
本実施例は、TRAV3-301/BV401マウス抗KRAS G12V TCR(配列番号133及び134)についての、IFN-γ産生と、突然変異KRAS発現との間の相関を実証する。
【0152】
表13に示す膵臓腫瘍細胞株の各々が発現するKRAS G12V mRNAのコピー数を測定し、表示した細胞株が発現する、β-アクチンmRNAのコピー数と比較した(表13)。実施例9で測定した、各細胞株との共培養に際しての、TRAV3-301/BV401マウス抗KRAS G12V TCR(配列番号133及び134)で形質導入したPBLによって分泌されるIFN-γの量を、表13に再掲した(reproduced)。TRAV3-301/BV401マウス抗KRAS G12V TCR(配列番号133及び134)の反応性(標的細胞との共培養に際してのIFN-γ分泌に関して)は、KRAS G12V mRNAのコピー数と相関した。
【0153】
【表24】
【0154】
実施例11
本実施例は、TRAV3-301/BV401マウス抗KRAS G12V TCR(配列番号133及び134)が、(i)CD4の存在下且つCD8の非存在下、又は(ii)CD8の存在下且つCD4の非存在下のいずれでも、突然変異KRASを認識することを実証する。
【0155】
PBLを、TRAV3-301/BV401マウス抗KRAS G12V TCR(配列番号133及び134)をコードするヌクレオチド配列で形質導入した。フローサイトメトリーにより、形質導入細胞(Trnasduced cells)を表14に示す集団に選別した。選別した細胞集団を、(i)(a)G12Dミニ遺伝子(163マーをコードする)(COS/A11/G12D)、(b)G12Vミニ遺伝子(163マーをコードする)(COS/A11/G12V)、若しくは(c)WT KRASミニ遺伝子(163マーをコードする)(COS/A11/WT)で形質導入したCOS7/A11細胞;又は(ii)形質導入しなかったか、又はHLA-A11で形質導入したSK.PC3膵腫瘍細胞株と共培養した。細胞を含まない培地をネガティブコントロールとして用いた。IFN-γ分泌を測定した。
【0156】
結果を表14に示す。表14において、太字のIFN-γ分泌値は、TCRが反応性を示した標的細胞を示す。表14に示す通り、TRAV3-301/BV401マウス抗KRAS G12V TCR(配列番号133及び134)は、(i)CD4の存在下且つCD8の非存在下、又は(ii)CD8の存在下且つCD4の非存在下のいずれでも、標的細胞を認識した。従って、TRAV3-301/BV401マウス抗KRAS
G12V TCR(配列番号133及び134)は、結合活性が非常に高い、標的の認識をもたらす。
【0157】
【表25】
【0158】
実施例12
本実施例は、マウス抗KRAS7-16 G12D 10マーTCRの単離を実例で示す。
【0159】
G12D 10マーペプチド(配列番号2)により、HLA-A11トランスジェニックマウスを3回免疫した。3回目の免疫の後、脾臓及びリンパ節を取り出し、様々な濃度(1μM、0.1μM及び0.01μM)のG12D 10マーペプチドと共にインビトロで7日間培養した。LN及び脾臓の培養物から単離したT細胞を、(i)(a)ペプチドなし(なし)、(b)WT KRAS7-16ペプチド(配列番号30)(COS/A11+WTペプチド)、(c)G12D 10マーペプチド(配列番号2)(COS/A11+G12Dペプチド)、(d)G12V 10マーペプチド(配列番号33)(COS/A11+G12Vペプチド)、(e)G12V 9マーペプチド(配列番号35)、又は(f)G12D 9マーペプチド(配列番号34)でパルスした、HLA-A11を発現するよう形質導入したCOS7細胞(COS7/A11);及び(ii)(a)WT
KRASミニ遺伝子(23マーの配列番号118をコードする)(COS/A11/WT)、(b)G12Dミニ遺伝子(23マーの配列番号119をコードする)(COS/A11/G12D)、又は(c)(b)G12Vミニ遺伝子(23マーの配列番号120をコードする)(COS/A11/G12D)をコードするベクターでトランスフェクションしたCOS7/A11細胞に対する反応性について試験した。インターフェロン(IFN)-γを測定した。
【0160】
結果を表15A(ペプチドパルス)及び表15B(トランスフェクタント)に示す。表15A及び15Bにおいて、太字のIFN-γ分泌値は、TCRが反応性を示した標的ペプチド及び標的細胞を示す。表15A及び15Bに示す通り、HLA-A11拘束性マウスT細胞は、KRAS G12Dペプチドである配列番号2に対して反応性であった。
【0161】
【表26】
【0162】
【表27】
【0163】
LN及び脾臓の培養物から単離したT細胞も、様々な濃度のG12Dペプチドで6~7日間インビトロで刺激し、次いで表16に示す、HLA-A11を発現するKRAS G12D+の膵臓細胞株と共培養した。IFN-γを測定した。
【0164】
結果を表16に示す。表16において、太字のIFN-γ分泌値は、TCRが反応性を示した標的細胞を示す。表16に示す通り、LN及び脾臓の培養物から単離したT細胞は、HLA-A11発現KRAS G12D+の膵臓細胞株と反応性であった。
【0165】
【表28】
【0166】
5’RACEを用いて、反応性細胞からTCRを単離した。2つの支配的なアルファ鎖及び1つの支配的なベータ鎖を同定した(表17)。
【0167】
【表29】
【0168】
実施例13
本実施例は、配列番号157を含むTCRα鎖及び配列番号158を含むTCRβ鎖を発現するよう形質導入したPBLが、HLA-A11+/G12D 10マー+の標的に対して反応性であることを実証する。
【0169】
表17の2つの支配的なα鎖及びβ鎖を、MSGV1レトロウイルスベクターに個別にクローニングした。PBLを、表18に示す通り、α鎖及びβ鎖の2つの対のうちの1つを発現するよう、個別に共形質導入した。形質導入したPBLを、(i)(a)G12Dミニ遺伝子(23マーの配列番号119をコードする)(COS/A11/G12D)、(b)G12Vミニ遺伝子(23マーの配列番号120をコードする)(COS/A11/G12V)、(c)WT KRASミニ遺伝子(23マーの配列番号118をコードする)(COS/A11/WT)で形質導入したCOS7/A11細胞、又は(d)細胞なし(培地のみ)に対する反応性についてスクリーニングした(表18)。IFN-γ分泌を測定した。
【0170】
結果を表18に示す。表18に示す通り、マウスTCRα鎖TRAV4-401(1)(配列番号157)及びマウスTCRβ鎖TRBV12-201(配列番号158)を発現するよう共形質導入したPBLは、HLA-A11を発現するG12Dトランスフェクタント標的細胞に対し反応性を示した。
【0171】
【表30】
【0172】
PBLを、TCR TRAV4-401(1)/TRBV12-201(配列番号157及び158)を発現するよう形質導入し、(a)G12Dミニ遺伝子(23マーの配列番号119をコードする)(COS/A11/G12D)、(b)G12Vミニ遺伝子(23マーの配列番号120をコードする)(COS/A11/G12V)、(c)WT KRASミニ遺伝子(23マーの配列番号118をコードする)(COS/A11/WT)で形質導入したCOS7/A11細胞、(d)形質導入しなかったか、又は、HLA-A11及び表示されたKRAS突然変異を発現するよう形質導入した、表19に示す
膵臓腫瘍株に対する反応性についてスクリーニングした。表19に、各膵臓腫瘍細胞株に発現するKRAS突然変異を示す。IFN-γ分泌を測定した。
【0173】
結果を表19に示す。表19に示す通り、TCR TRAV4-401(1)/TRBV12-201(配列番号157及び158)で形質導入したPBLは、HLA-A11+G12D+の膵臓腫瘍株を認識した。
【0174】
【表31】
【0175】
実施例14
本実施例は、TRAV4-401(1)/TRBV12-201マウス抗KRAS
G12D TCR(配列番号157及び158)について、IFN-γ産生と、突然変異KRAS発現との間の相関を実証する。
【0176】
表20に示す膵臓腫瘍細胞株のそれぞれが発現するKRAS G12D mRNAのコピー数を測定し、各細胞株が発現する、β-アクチンmRNAのコピー数と比較した(表20)。各細胞株との共培養に際して、TRAV4-401(1)/TRBV12-201マウス抗KRAS G12D TCR(配列番号157及び158)で形質導入し
たPBLによって分泌されたIFN-γ量を表13に示す。TRAV4-401(1)/TRBV12-201マウス抗KRAS G12D TCR(配列番号157及び158)の(標的細胞との培養に際してのIFN-γ分泌に関する)反応性は、KRAS G12D mRNAのコピー数と相関していた。
【0177】
【表32】
【0178】
実施例15
本実施例は、TRAV4-4/DV1001/BV12-201マウス抗KRAS
G12D TCR(配列番号157及び158)が、TRAV12N-301/BV401マウス抗KRAS G12D TCR(配列番号11及び12)と比較して、パルスした標的ペプチドに対し、より高い親和性を有することを実証する。
【0179】
PBLを、(i)T TRAV4-4/DV1001/BV12-201マウス抗KRAS G12D TCR(配列番号157及び158)又は(ii)TRAV12N-301/BV401マウス抗KRAS G12D TCR(配列番号11及び12)のいずれかで形質導入した。形質導入した細胞を、表21A及び21Bに示す濃度の、(a)G12D 10マーペプチド(配列番号2)、(b)WT KRAS 10マーペプチド(配列番号30)、(c)G12D9マーペプチド(配列番号34)又は(d)WT KRAS 9マーペプチド(配列番号31)でパルスしたCos7/A11細胞と共培養した。IFN-γ分泌を測定した。
【0180】
結果を表21A(TRAV4-4/DV1001/BV12-20(配列番号157及び158))並びに表21B(TRAV12N-301/BV401(配列番号11及び12))に示す。表21A~21Bに示す通り、TRAV4-4/DV1001/BV12-20(配列番号157及び158)で形質導入したT細胞は、1×10-9の濃度でパルスした10マーを認識した。従って、TRAV4-4/DV1001/BV12-20(配列番号157及び158)は、TRAV12N-301/BV401(配列番号11及び12)のTCRと比較して、より高い結合活性を伴って、パルスした標的ペプチドを認識した。
【0181】
【表33】
【0182】
【表34】
【0183】
実施例16
本実施例は、TRAV4-4/DV1001/BV12-201マウス抗KRAS
G12D TCR(配列番号157及び158)が、TRAV12N-301/BV401マウス抗KRAS G12D TCR(配列番号11及び12)と比較して、G12D+の膵臓腫瘍細胞株に対し、高い親和性を有することを実証する。
【0184】
PBLを、(i)TRAV4-4/DV1001/BV12-201マウス抗KRAS G12D TCR(配列番号157及び158)又は(ii)TRAV12N-301/BV401マウス抗KRAS G12D TCR(配列番号11及び12)のいずれかで形質導入した。表22に示す通り、形質導入した細胞を、形質導入しなかったか、又はHLA-A11及び突然変異KRASで形質導入した膵臓細胞株と共培養した。IFN-γ分泌を測定した。
【0185】
結果を表22に示す。表22に示す通り、TRAV4-4/DV1001/BV12-20(配列番号157及び158)で形質導入したT細胞は、TRAV12N-301/BV401(配列番号11及び12)のTCRと比較して、G12D+の膵臓腫瘍細胞株を、高い結合活性を伴って認識した。
【0186】
【表35】
【0187】
実施例17
本実施例は、突然変異KRASを発現するがんの患者に、突然変異KRASを認識するマウスTCRをコードするベクターで形質導入したPBLを投与する、第I相/II相の研究を実例で示す。
【0188】
研究に含めるのに適格な患者は、養子細胞療法(ACT)/IL-2に関する通常の基準を満たし、且つ以下を有する:
・HLA-A11+の、突然変異KRAS発現腫瘍(免疫組織化学による測定で);
・放射性ヨウ素不応性がん;及び
・陽電子放射断層撮影(PET)陽性の腫瘍又は過去6ヶ月以内における腫瘍の進行の証明。
【0189】
自己PBLを、マウス抗突然変異KRAS TCR(配列番号11及び12)のアルファ鎖及びベータ鎖をコードするベクターにより、レトロウイルスで形質導入する。患者を、前処置的な、非骨髄破壊性の高用量シクロホスファミド(Cy)及びフルダラビン(Flu)で治療する。患者を、高用量のIL-2で、8時間ごとに許容値まで治療する。第I相においては、開始用量の、レトロウイルスで形質導入した1×10細胞で、患者を治療する。投与量は半対数(half-logs)で増加させ、コホートごとで患者1名に最大1×1010細胞の投与量とし、コホート当たり患者3人が従う。第II相は、奏功率20%を目標とする2段階設計となっている。
【0190】
実施例18
本実施例は、ヒトのがんにおけるKRAS突然変異の頻度を実例で示す。
【0191】
ヒトの様々ながんにおける、KRAS突然変異の頻度(%)を表23に示す。表23は、全てのKRAS突然変異の中の特定のKRAS突然変異の頻度(%)も示す。
【0192】
【表36】
【0193】
実施例19
本実施例は、TRAV4-4/DV1001/BV12-201 TCRのCDR3α領域におけるグリシン残基の置換が、野生型TRAV4-4/DV1001/BV12-201 TCRと比較して、抗KRAS反応性の増強をもたらすことを実証する。
【0194】
TRAV4-4/DV1001/BV12-201 TCRのCDR3α領域のグリシン残基をアラニン残基で置換して、置換TRAV4-4/DV1001/BV12-201 TCR(CDR3アルファG112A)を用意した。PBLを、(i)野生型TRAV4-4/DV1001/BV12-201 TCR(配列番号157及び158)又は(ii)置換TRAV4-4/DV1001/BV12-201 TCR(配列番号209及び158)のいずれかで形質導入した。形質導入細胞を、HLA-A11及びWT KRASで形質導入したCos細胞(Cos/A11/WT)、HLA-A11及びG12D KRASで形質導入したCos細胞(Cos/A11/G12D)、HLA-A11で形質導入した膵臓腫瘍細胞株FA6-2(FA6-2/A11)、又は膵臓腫瘍細胞株Panc-1と共培養した。単独で培養した形質導入細胞(培地)をコントロールとして用いた。IFN-γ分泌(pg/ml)を測定した。結果を表24に示す。
【0195】
【表37】
【0196】
表24に示す通り、TRAV4-4/DV1001/BV12-201 TCRのCDR3α領域のグリシン残基の置換は、野生型TRAV4-4/DV1001/BV12-201 TCRと比較して、抗KRAS反応性の増強をもたらした。
【0197】
刊行物、特許出願及び特許を含む、本明細書に引用した全ての参考文献は、それぞれの参考文献が参照によって組み込まれることが個々に且つ具体的に示されているのと同程度及びその全体が本明細書に記載されているのと同程度まで、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0198】
本発明の説明に関して(特に、以下の特許請求の範囲に関して)、用語「a」及び「an」及び「the」及び「少なくとも1つの」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書に特記しないか文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると解釈すべきである。1つ以上の事項の列挙の後での用語「少なくとも1つの」の使用(例えば、「A及びBのうち少なくとも1つの」)は、本明細書に特記しない又は文脈と明らかに矛盾しない限り、列挙した事項(A若しくはB)から選択された1つの事項又は列挙した事項(A及びB)のうち2つ以上の任意の組合せを意味すると解釈すべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含有する(containing)」は、特記しない限り、オープンエンドの用語(即ち、「~を含むがそれらに限定されない」を意味する)と解釈すべきである。本明細書の値の範囲の記述は、本明細書に特記しない限り、その範囲内に入る各個別の値に個々に言及する省略方法として働くことのみを意図しており、各個別の値は、それが本明細書に個々に記述されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に特記しない又は文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施できる。本明細書に提供される任意の及び全ての例又は例示的語句(例、「等(such as)」)の使用は、本発明をよりよく説明することのみを意図しており、特段特許請求されない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書の全ての語句は、特許請求されていない任意の要素を本発明の実施に必須のものとして示していると解釈すべきではない。
【0199】
発明を実施するための、発明者が知る最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態が本明細書に記載されている。これらの好ましい実施形態のバリエーションは、上述の説明を読めば当業者に明らかとなり得る。本発明者らは、当業者がかかるバリエーションを適宜使用することを予期しており、本発明者らは、本明細書に具体的に記載されたのとは異なる方法で本発明が実施されることを意図している。従って、本発明は、適用法によって許容されるとおり、本明細書に添付した特許請求の範囲に記載される対象の全ての改変及び均等物を含む。更に、その全ての可能なバリエーションでの上記要素の任意の組合せが、本明細書に特記しない限り又は文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。
【配列表】
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