(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】製造条件出力装置、品質管理システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20230619BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20230619BHJP
B22D 17/32 20060101ALI20230619BHJP
B22D 46/00 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G05B23/02 301Q
G05B23/02 T
B22D17/32 Z
B22D46/00
(21)【出願番号】P 2021145782
(22)【出願日】2021-09-07
(62)【分割の表示】P 2019096286の分割
【原出願日】2019-05-22
【審査請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】301063496
【氏名又は名称】東芝デジタルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 透
(72)【発明者】
【氏名】高橋 信太郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 利幸
(72)【発明者】
【氏名】早川 ルミ
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-146621(JP,A)
【文献】特開2019-074969(JP,A)
【文献】特開2010-029925(JP,A)
【文献】特開2016-045799(JP,A)
【文献】特開2007-165721(JP,A)
【文献】特開2016-200949(JP,A)
【文献】特開平06-259047(JP,A)
【文献】特開2018-73185(JP,A)
【文献】国際公開第2013/125387(WO,A1)
【文献】特開2003-228411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G05B 23/02
B22D 17/32
B22D 46/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の製造条件を出力する製造条件出力装置であって、
モデル分析部を有し、
前記モデル分析部は、
前記製品の製造データと前記製品の検査結果データとに基づいて機械学習により生成されたモデルのモデル情報から、前記製品の製造に関わる複数の変数の各々の値に対応する不良確率に関する値の変化度についての情報である変化度情報を、出力する変化度情報出力部と、
前記モデルにおける前記製品が良品であるか不良品であるかの推定精度に対する影響の大きさを示す重要度を、前記モデル情報から算出し、算出された前記重要度に応じて前記複数の変数の変数名を、重要項目として抽出する重要項目抽出部と、
前記重要項目抽出部により抽出された前記重要項目の情報を表示する第1の表示データを出力する重要項目出力部と、
前記複数の変数の各々についての前記変化度情報出力部より出力された前記変化度情報から、前記製品が前記良品又は前記不良品となる確率に対応付けて前記製造条件を設定するための前記製造条件の前記変化度のグラフを含む第2の表示データを出力する製造条件設定部と、
を有し、
前記モデル分析部は、前記第1の表示データと前記第2の表示データとを含み、前記良品についての前記製造条件を設定するための設定画面を生成し、
前記設定画面において、前記第1の表示データに含まれる前記重要項目に関わる前記変数名についての前記製造条件が、前記グラフ中における前記変数の範囲として設定可能であり、
前記変化度情報出力部は、前記重要項目出力部から前記重要項目の情報を得て、前記複数の変数のうち、重要度の高い上位の所定数の変数についてのみ、前記変化度情報を算出して出力
し、
前記製造条件設定部は、前記製造条件の前記変化度のグラフを含む前記第2の表示データに、前記製品の製造データのうち、少なくとも1つの変数の実測値を重畳して表示画面に表示する、
製造条件出力装置。
【請求項2】
前記モデルは、非線形モデルである、請求項1に記載の製造条件出力装置。
【請求項3】
前記非線形モデルは、複数の決定木を用いたランダムフォレスト等のアンサンブル学習により学習されたモデルである、請求項2に記載の製造条件出力装置。
【請求項4】
前記製品は、ダイカストマシンで製造されるダイカストである、請求項1から3のいずれか1つに記載の製造条件出力装置。
【請求項5】
データ取得装置と、モデル学習装置と、推定装置とを含む品質管理システムであって、
前記データ取得装置は、
製品を製造する製造装置から製造データを取得する製造データ取得部と、
前記製造装置により製造された前記製品の検査結果データを取得する検査結果データ取得部と、
を有し、
前記モデル学習装置は、
前記製造データ取得部から取得した前記製造データを保存する製造データ保存部と、
前記検査結果データ取得部から取得した前記検査結果データを保存する検査結果データ保存部と、
前記製造データ保存部の前記製造データと、前記検査結果データ保存部の前記検査結果データとに基づいて機械学習により前記製造装置において製造された前記製品が良品又は不良品であるかを推定するモデルを生成するモデル学習部を、
有し、
前記推定装置は、
前記モデルを用いて、前記データ取得装置において取得された前記製造データに基づいて前記製品が前記良品又は前記不良品であるかを推定して推定結果を出力する推定結果出力部と、
モデル分析部と、
を有し、
前記モデル分析部は、
前記製品の前記製造データと前記製品の前記検査結果データとに基づいて機械学習により生成された前記モデルのモデル情報から、前記製品の製造に関わる複数の変数の各々の値に対応する不良確率に関する値の変化度についての情報である変化度情報を、出力する変化度情報出力部と、
前記モデルにおける前記製品が良品であるか不良品であるかの推定精度に対する影響の大きさを示す重要度を、前記モデル情報から算出し、算出された前記重要度に応じて前記複数の変数の変数名を、重要項目として抽出する重要項目抽出部と、
前記重要項目抽出部により抽出された前記重要項目の情報を表示する第1の表示データを出力する重要項目出力部と、
前記複数の変数の各々についての前記変化度情報出力部より出力された前記変化度情報から、前記製品が前記良品又は前記不良品となる確率に対応付けて前記製造条件を設定するための前記変化度のグラフを含む第2の表示データを出力する製造条件設定部と、
を有し、
前記モデル分析部は、前記第1の表示データと前記第2の表示データとを含み、前記良品についての製造条件を設定するための設定画面を生成し、
前記設定画面において、前記第1の表示データに含まれる前記重要項目に関わる前記変数名についての前記製造条件が、前記グラフ中における前記変数の範囲として設定可能であり、
前記変化度情報出力部は、前記重要項目出力部から前記重要項目の情報を得て、前記複数の変数のうち、重要度の高い上位の所定数の変数についてのみ、前記変化度情報を算出して出力
し、
前記製造条件設定部は、前記製造条件の前記変化度のグラフを含む前記第2の表示データに、前記製品の製造データのうち、少なくとも1つの変数の実測値を重畳して表示画面に表示する、
品質管理システム。
【請求項6】
製品の製造データと前記製品の検査結果データとに基づいて機械学習により生成されたモデルのモデル情報から、前記製品の製造に関わる複数の変数の各々の値に対応する不良確率に関する値の変化度についての情報である変化度情報を、出力する第1の機能と、
前記モデルにおける前記製品が良品であるか不良品であるかの推定精度に対する影響の大きさを示す重要度を、前記モデル情報から算出し、算出された前記重要度に応じて前記複数の変数の変数名を、重要項目として抽出する第2の機能と、
前記第2の機能により抽出された前記重要項目の情報を表示する第1の表示データを出力する第3の機能と、
前記複数の変数の各々についての前記第3の機能より出力された前記変化度情報から、前記製品が前記良品又は前記不良品となる確率に対応付けて前記製造条件を設定するための製造条件の前記変化度のグラフを含む第2の表示データを出力する第4の機能と、
前記第1の表示データと前記第2の表示データとを含み、前記良品についての前記製造条件を設定するために、前記第1の表示データに含まれる前記重要項目に関わる前記変数名についての前記製造条件が、前記グラフ中における前記変数の範囲として設定可能である設定画面を生成する第5の機能と、
前記重要項目の情報を得て、前記複数の変数のうち、重要度の高い上位の所定数の変数についてのみ、前記変化度情報を算出して出力する第6の機能と、
前記製造条件の前記変化度のグラフを含む前記第2の表示データに、前記製品の製造データのうち、少なくとも1つの変数の実測値を重畳して表示画面に表示する第7の機能と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、製造条件出力装置、品質管理システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種製品の製造において、品質管理が行われている。製品の品質を改善するために、線形回帰式を製造条件の実績データに対して用いて最適な製造条件の目標値を算出して、その目標値に基づいて製造条件を変更することによって製品の品質を制御する方法や、品質の改善に有効な操業因子の組み合わせを自動的に抽出し、所定の品質レベルを満たす操業条件の組み合わせを自動的にガイダンスすることによって品質の改善をする方法が、提案されている。
【0003】
しかし、線形回帰式を用いる方法では、各変数が線形な関係を有する製造条件にしか適用できない。また、操業条件の組み合わせを自動的にガイダンスする方法では、操業因子の組み合わせの数が大きくなると、組み合わせの数に応じた計算量が膨大に増加するために、次元数の大きな操業因子データに対しては適切な多変量解析ができない。例えば、ダイカストなどの製造の場合、製造条件が品質に対して非線形関係を有しており、操業因子の数も多い。また、これらの方法では、製品の不良の発生を抑制するために、不良確率に対して製造条件をどのように設定すればよいかについては考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-64054号公報
【文献】特開2008-146621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本実施形態は、製品の不良の発生を抑制するために、不良確率に対して、製造条件をどのように設定すればよいかを提示することができる製造条件出力装置、この出力を用いた品質管理システム、及び上記の製造条件を出力させる機能を有するプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の製造条件出力装置は、製品の製造条件を出力する製造条件出力装置であって、モデル分析部を有し、前記モデル分析部は、前記製品の製造データと前記製品の検査結果データとに基づいて機械学習により生成されたモデルのモデル情報から、前記製品の製造に関わる複数の変数の各々の値に対応する不良確率に関する値の変化度についての情報である変化度情報を、出力する変化度情報出力部と、前記モデルにおける前記製品が良品であるか不良品であるかの推定精度に対する影響の大きさを示す重要度を、前記モデル情報から算出し、算出された前記重要度に応じて前記複数の変数の変数名を、重要項目として抽出する重要項目抽出部と、前記重要項目抽出部により抽出された前記重要項目の情報を表示する第1の表示データを出力する重要項目出力部と、前記複数の変数の各々についての前記変化度情報出力部より出力された前記変化度情報から、前記製品が前記良品又は前記不良品となる確率に対応付けて前記製造条件を設定するための前記製造条件の前記変化度のグラフを含む第2の表示データを出力する製造条件設定部と、を有し、前記モデル分析部は、前記第1の表示データと前記第2の表示データとを含み、前記良品についての前記製造条件を設定するための設定画面を生成し、前記設定画面において、前記第1の表示データに含まれる前記重要項目に関わる前記変数名についての前記製造条件が、前記グラフ中における前記変数の範囲として設定可能であり、前記変化度情報出力部は、前記重要項目出力部から前記重要項目の情報を得て、前記複数の変数のうち、重要度の高い上位の所定数の変数についてのみ、前記変化度情報を算出して出力し、前記製造条件設定部は、前記製造条件の前記変化度のグラフを含む前記第2の表示データに、前記製品の製造データのうち、少なくとも1つの変数の実測値を重畳して表示画面に表示する
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係わる鋳造品の製造についての品質管理システムの構成図である。
【
図2】実施形態に係わる製造データの例を示す図である。
【
図3】実施形態に係わる検査結果データの例を示す図である。
【
図4】実施形態に係わる決定木の例を説明するための図である。
【
図5】実施形態に係わる推定結果出力部の機能ブロック図である。
【
図6】実施形態に係わるモデル分析部のブロック図である。
【
図7】実施形態に係わる重要項目表示部において生成された表示データの表示例を示す図である。
【
図8】実施形態に係わる、変数の値に応じた不良率の変化度を表示するグラフを示す図である。
【
図9】実施形態に係わるモデル学習部の処理の流れの例を示すフローチャートである。
【
図10】実施形態に係わる推定結果出力部の処理の流れの例を示すフローチャートである。
【
図11】実施形態に係わるモデル分析部の処理の流れの例を示すフローチャートである。
【
図12】実施形態に係わる設定画面の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
(システム構成)
図1は、本実施形態に係わる鋳造品の製造についての品質管理システム1の構成図である。品質管理システム1は、アルミダイカストなどの鋳造品の品質管理を行う鋳造品質管理システムである。品質管理システム1は、データ取得装置2と、モデル学習装置3と、推定装置4とを含む。データ取得装置2は、ダイカストマシン5と製品状態検査装置6に接続されている。ダイカストマシン5は、製品としてダイカストを製造する製造装置である。ダイカストマシン5は、金型を移動させる機構、金型キャビティへのアルミニウム等の溶湯の射出を行う機構などの製造機構(図示せず)と、ダイカストマシン5の動作を制御する制御装置5aを有している。
なお、推定装置4は、良品の製造条件を設定するための設定画面を生成して、表示装置4cに出力するものである。よって、推定装置4は、製品の製造条件を出力する製造条件出力装置を構成し、品質管理システム1は、ここで出力された製造条件を用いて品質管理を行っている。即ち、品質管理システム1の一部が製造条件出力装置となっている。
【0009】
なお、データ取得装置2、モデル学習装置3及び推定装置4は、データの送受信のために、後述する信号線により互いに接続され、例えばダイカストマシン5のある1つの工場内に配置されてもよい。あるいは、モデル学習装置3と推定装置4は、インターネットなどのネットワークを介してクラウド上のサーバであってもよい。
(データ取得装置の構成)
データ取得装置2は、プロセッサ11を含む装置であって、例えば、ダイカストマシン5及び製品状態検査装置6との入出力インターフェースを有するパーソナルコンピュータ(以下、PCという)である。プロセッサ11は、製造データ取得部12と、製造データ加工部13と、検査結果データ取得部14とを含む。
【0010】
プロセッサ11は、中央処理装置(以下、CPUという)、ROM、RAMを含む。プロセッサ11は、ハードディスク装置などの不揮発性メモリも有している。CPUがROM及び不揮発性メモリに記憶された各種ソフトウエアプログラムを読み出して実行することにより、データ取得装置2は、ダイカストマシン5及び製品状態検査装置6から各種データを受信したり、モデル学習装置3及び推定装置4へ各種データを送信したりすることができる。
【0011】
ここでは、製造データ取得部12、製造データ加工部13及び検査結果データ取得部14は、ソフトウエアプログラムによって構成される。なお、製造データ取得部12と検査結果データ取得部14は、全部又は一部に電子回路により構成されてもよい。
【0012】
製造データ取得部12は、通信ライン5bを介してダイカストマシン5の制御装置5aから製造データを取得する。製造データは、例えば、ダイカストのショット毎の、時刻データ、製造ショット番号、各種計測データである。
【0013】
温度センサ、位置センサ、圧力センサ、などの各種計測データ用の各種センサがダイカストマシン5に取り付けられ、あるいはダイカストマシン5に内蔵されている。製造ショット番号は、製造ショットを識別するためのショット識別情報である。制御装置5aは、時計を有し、時刻データを生成する。時刻データは、年月日及び時間を含む。ダイカストマシン5の制御装置5aは、ダイカストのショット毎に、各種計測データを収集し、製造ショット番号と時刻データとバッファなどのメモリ(図示せず)に記憶する。
【0014】
製造データ取得部12は、ダイカストマシン5のメモリに一時記憶された製造データを取得する各種インターフェース回路と、取得した製造データをメモリ(図示せず)に一時記憶する処理を行うソフトウエアプログラムを含んで構成される。
【0015】
製造データ加工部13は、製造データ取得部12に記憶された製造データに対して、後述するモデル学習装置3においてモデル学習処理が適切に実行可能なように、データの桁数の調整、データの欠損の補充、等々を行う。
【0016】
ダイカストマシン5において製造されたダイカスト、例えばアルミダイカストに対して、その後の工程において、各種加工が行われる。
【0017】
ダイカストの検査は、ダイカストマシン5において製造されたダイカスト、又は後工程において加工されたダイカストに対して行われる。検査結果データは、良品であるか不良品であるかを示すデータである。なお、検査結果データは、不良品の不良の種別を含むデータを含んでも良い。不良の種別には、湯回り不良、鋳巣等がある。さらに、検査結果データは、品質を示す数値でもよい。その場合は、検査結果データは、例えば、表面の凹みの程度を示す数値であり、その数値の範囲で、検査結果データが示されてもよい。
【0018】
製品状態検査装置6は、例えば、ダイカストの検査装置であり、ダイカストをカメラなどの装置を用いて検査し、検査結果に基づいて、ダイカストが良品であるか不良品であるかを判定する。製品状態検査装置6は、判定結果に基づいて、検査された鋳造品のショット番号毎に、良品であるか不良品であるかを示す検査結果データを生成して出力する。検査結果データ取得部14は、通信ライン6aを介して、その製品状態検査装置6から検査結果データを取得する。すなわち、検査結果データ取得部14は、ダイカストマシン5により製造されたダイカストの検査結果データを取得する。
【0019】
なお、検査員が検査を行い、製品状態検査装置6は、その検査員が行った判定結果、すなわちダイカストが良品であるか不良品であるかの判定結果が入力された装置、例えばPCでもよい。
【0020】
図2は、製造データの例を示す図である。製造データは、時刻、ショット番号、鋳造温度A、鋳造圧力B、冷却量C、等々の各種データを含む。1ショットは、1つのダイカストの製造に対応し、1つの製造データは、1ショットについての1つのレコードデータである。複数の製造データが製造データ取得部12において取得される。後述するように、複数の製造データが、
図2に示すような表形式のデータとして製造データ保存部25に格納される。
【0021】
図3は、検査結果データの例を示す図である。検査結果データは、検査結果、時刻データ及びショット番号のデータを含む。時刻データは、ショット番号により特定された製造データ中の時刻データと同じである。後述するように、複数の検査結果データが、
図3に示すような表形式のデータとして検査結果データ保存部26に格納される。1つの検査結果データは、ショット番号により1つの製造データと紐付けることができる。
(モデル学習装置の構成)
モデル学習装置3は、プロセッサ21と記憶装置22を有する。モデル学習装置3は、例えば、PCであるが、上述したようにインターネット上のサーバでもよい。プロセッサ21は、データ取得装置2と通信ライン2aにより接続されている。プロセッサ21は、CPU、ROM、RAM、及びハードディスク装置を含む。モデル学習装置3は、データ取得装置2からの製造データと検査結果データとに基づいて機械学習を行い、ダイカストの良・不良の識別モデルであるモデルMを作成する。
【0022】
プロセッサ21は、ユーザによるコマンドあるいは所定の周期で、通信ライン2aを介してデータ取得装置2から製造データと検査結果データを取得する。プロセッサ21は、取得した製造データを、記憶装置22の製造データ保存部25に保存する。プロセッサ21は、取得した検査結果データを、記憶装置22の検査結果データ保存部26に保存する。製造データ保存部25は、製造データを記憶するための、記憶装置22における所定の記録領域である。検査結果データ保存部26は、検査結果データを記憶するための、記憶装置22における所定の記録領域である。
【0023】
プロセッサ31は、モデル条件設定部23と、モデル学習部24を含む。モデル条件設定部23は、機械学習を行うときの各種条件のパラメータデータを設定し、設定されたパラメータデータをモデル学習部24に対して与えるソフトウエアプログラムである。
【0024】
モデル学習装置3は、図示しないキーボード、マウス等の入力装置、図示しない表示装置などを有している。よって、ユーザは、入力装置及び表示装置を用いてモデル条件設定部23に設定する各種条件のパラメータデータを設定することができる。パラメータデータは、例えばモデル生成時に使用する教師データの数や生成する決定木の本数などである。
【0025】
モデル学習部24は、記憶装置22に記憶された製造データと検査結果データを教師データとして、機械学習によりモデルMを生成するソフトウエアプログラムである。すなわち、モデル学習部24は、製造データと検査結果データとに基づいて機械学習によりダイカストマシン5において製造されたダイカストが良品又は不良品であるかを推定するモデルを生成する。製造データと検査結果データは、ショット番号により紐付けることができるので、プロセッサ31は、紐付けられた製造データと検査結果データを1つの教師データとし、複数の教師データをモデル学習部24に与えることができる。
【0026】
ここでは、モデルMは、ランダムフォレストの機械学習アルゴリズムにより生成される非線形モデルである。モデルMは、製造データが与えられると、その製造データに従って製造されたダイカストに不良が発生する確率、すなわち不良確率を推定して出力する不良識別モデルである。ランダムフォレストは、ランダムに選択された変数(製造データ)から複数の決定木を作成し、各決定木を弱識別器として複数の決定木を平均化等する処理を行うことによりアンサンブル学習を行う集団学習アルゴリズムである。作成された各決定木の識別境界が足し合わされることによって、精度の高い識別境界が作成される。すなわち、非線形なモデルMは、複数の決定木を用いたランダムフォレスト等のアンサンブル学習により学習されたモデルである。よって、弱識別器である複数の決定木から、アンサンブル学習により最終的に統合されてロバストな識別境界が生成される。
【0027】
なお、ここでは、モデル学習部24は、モデルMを生成するために、アンサンブル学習を行う集団学習アルゴリズムとして、ランダムフォレストの機械学習アルゴリズムを用いているが、バギング法、ブースティング法、アダブースト法、勾配ブースティング法、エクストリーム勾配ブースティング法、エクストリームランダマイズドツリー法、正則化ランダムフォレスト法、などの機械学習アルゴリズムを用いてもよい。
ここでは、モデルMは、
図4に示すような学習データ(教師データ)も用いて生成された決定木が複数集まったものを意味する。
図4は、決定木の例を説明するための図である。
図4では、鋳造温度Aが230度を超える場合は、ダイカストは良品と判定される。また、鋳造温度Aが230度以下であって、かつ鋳造圧力Bが20を超える場合は、ダイカストは良品と判定される。さらに、鋳造温度Aが230度以下であって、かつ鋳造圧力Bが20以下の場合は、ダイカストは不良品と判定される。
【0028】
モデル学習部24において生成されたモデルMのモデルデータすなわちモデル情報MIは、プロセッサ21のメモリ内に格納されると共に、推定装置4へ送信される。モデル情報MIは、決定木をリスト形式のデータとして表現したものである。
(推定装置の構成)
推定装置4は、プロセッサ31と、記憶装置32とを有する。プロセッサ31は、マンマシンインターフェース(以下、MMIという)4aに接続されている。MMI4aは、入力装置4bと表示装置4cを有する。入力装置4bは、キーボード、マウスなどを含む。推定装置4は、データ取得装置2から製造データを取得すると、その製造データに基づいて、良・不良の推定結果を出力して表示装置4cに表示する。さらに、推定装置4は、モデル学習装置3から受信したモデルMのモデル情報MIを分析して不良確率の低減に関する情報を出力して表示装置4cに表示する。
【0029】
プロセッサ31は、通信ライン2bによりデータ取得装置2と接続されている。さらに、プロセッサ31は、通信ライン5cによりダイカストマシン5の制御装置5aと接続されている。プロセッサ31は、通信ライン3aによりモデル学習装置3と接続されている。プロセッサ21は、CPU、ROM、RAM、及びハードディスク装置を含む。
【0030】
プロセッサ31は、推定結果出力部33とモデル分析部34を含む。記憶装置32は、学習モデル保存部35を有する。プロセッサ31は、モデル学習装置3からモデルMのモデル情報MIを受信すると、学習モデル保存部35に保存する。学習モデル保存部35は、受信したモデルMのモデル情報MIを格納する記憶領域である。
【0031】
推定結果出力部33は、製造データに基づいて、良・不良の推定結果を出力するソフトウエアプログラムである。
図5は、推定結果出力部33の機能ブロック図である。推定結果出力部33は、推定不良確率出力部41と、良・不良判定部42を含む。推定不良確率出力部41は、学習モデル保存部35に格納されたモデルMのモデル情報MIを用いて、受信した製造データに基づいて不良確率を算出し、不良確率データDPを良・不良判定部42へ出力する。良・不良判定部42は、受信した不良確率データDPに基づいて受信した製造データに関わるショットにおいて製造されたダイカストの良・不良の推定結果DRを出力する。よって、推定結果出力部33は、モデルMを用いて、データ取得装置2において取得された製造データに基づいてダイカストが良品又は不良品であるかを推定して推定結果を出力する。
【0032】
ダイカストマシン5において製造されたダイカストについての製造データが、データ取得装置2から推定結果出力部33へリアルタイムで送信されたときは、推定結果出力部33は、モデルMのモデル情報MIを用いて、その製造データに基づいてダイカストの良・不良を推定し、推定結果DRを出力する。すなわち、推定結果出力部33は、ダイカストマシン5で製造されたダイカストについて、リアルタイムで取得した製造データに基づいて、モデルMを用いて良・不良を推定することができる。
【0033】
なお、バッチ処理により複数の製造データに対してまとめて良・不良を推定するようにしてもよい。その場合、
図5において点線で示すように、推定装置4には、製造データ加工部13からの製造データを蓄積する製造データ格納部43が設けられる。製造データ格納部43は、所定の期間、例えば1日分あるいは一週間分の製造データを格納可能な記憶装置である。推定不良確率出力部41は、製造データ格納部43に格納されている複数の製造データに基づいて、モデルMを用いて不良確率を算出する。良・不良判定部42は、各不良確率データDPに基づいて、各ショットの良・不良を判定し、推定結果DRを出力する。
【0034】
不良確率データDPは、ショット毎の不良確率データである。良・不良判定部42は、所定の閾値を有し、例えば、閾値が50であれば、不良確率が50%以上であると当該ショットのダイカストは不良品であると判定し、不良確率が50%未満であると当該ショットのダイカストは良品であると判定する。言い換えれば、良・不良判定部42は、不良確率データに基づいて、ダイカストの不良又は良の判定をする。
【0035】
更に、不良確率データが複数の不良の種類に応じて出力される場合、良・不良判定部42は、所定の判定ルールに従って、当該ショットのダイカストが良品であるか、不良品であるかを判定する。
【0036】
加えて、推定結果出力部33は、推定不良確率出力部41に代えて、ダイカストが良であると推定される確率を出力する推定良確率出力部を有し、良・不良判定部42が、例えば、良確率が50%未満になると、当該ショットのダイカストは不良品であると判定するようにしてもよい。
【0037】
図6は、モデル分析部34のブロック図である。モデル分析部34は、重要項目抽出部51と、重要項目表示部52と、不良確率変化度出力部53と、製造条件設定部54と、を含むソフトウエアプログラムである。
【0038】
重要項目抽出部51は、モデルMにおける各変数の重要度を算出し、算出された各変数の重要度から、重要項目を抽出する。すなわち、重要項目抽出部51は、モデル情報MIから算出された重要度に応じて複数の変数の変数名を、重要項目として抽出する。
【0039】
ランダムフォレストにおいては、各決定木において使用された変数とその決定木の推定精度から、各変数の重要度が算出される。言い換えれば、算出された重要度は、各決定木に関わる変数の中で、推定精度に対して影響の大きさを示す。よって、重要項目抽出部51は、製造データにおける、鋳造温度、鋳造圧力、冷却量などの複数の変数について重要度を算出する。重要度は、例えばランダムフォレストにおけるジニ係数の変化度、MSE(平均二乗誤差)効果度である。すなわち、重要度は、使わなかったデータにおいて、ジニ係数又はMSE効果度がどの程度変化していたかを示す。
【0040】
ここでは、重要項目抽出部51は、複数の変数について算出された重要度の情報のうち、設定された値よりも高い重要度の複数の変数名を、重要項目として出力する。あるいは、重要項目抽出部51は、複数の変数について算出された重要度の情報のうち、重要度の高い順に所定数の変数名の情報を出力するようにしてもよい。
【0041】
重要項目表示部52は、重要項目抽出部51において抽出された重要項目を表示装置4cに表示する表示データIMを生成する。上述したように、重要項目抽出部51は、重要度の高い変数名の情報を重要項目表示部52に出力する。重要項目表示部52は、受信した変数名の情報から、重要度の高い変数名を表示する表示データIMを生成し、表示装置4cに出力する。よって、重要項目表示部52は、重要項目抽出部51により抽出された重要項目の情報を出力する重要項目出力部を構成する。
【0042】
図7は、重要項目表示部52において生成された表示データの表示例を示す図である。
図7では、6つの変数の重要度が示されている。縦軸は、変数名であり、横軸は、重要度の値である。重要度は、ジニ係数等の所定の規格化された値である。
図7に示すように、鋳造温度Aの重要度が最も高く、以下、鋳造圧力B、冷却量C、鋳造温度D、鋳造圧力E、冷却量Fの順に重要度は高い。重要度は、各変数に対応する点で示されている。
【0043】
図7に示すような重要項目の変数名と重要度が表示装置4cに表示され、ユーザは、不良確率に対して重要な変数を認識することができる。
【0044】
不良確率変化度出力部53は、モデルMのモデル情報MIから、変数毎の不良確率の変化度を算出して出力する。不良確率変化度出力部53は、各変数についての不良確率の変化度の関数データを出力する。
【0045】
図8は、変数の値に応じた不良率の変化度を表示するグラフを示す図である。
図8のグラフは、変数毎のグラフであり、
図8は、鋳造温度Aに対する不良率の変化度を表示するグラフである。
図8において、グラフgの関数は、ランダムフォレストの部分従属プロットにより得ることができる。グラフgの各値は、部分従属プロットの値に対応する。すなわち、モデルMのモデル情報MIから、変数毎の不良確率の変化度が算出される。ここでは、ランダムフォレストの部分従属プロットを用いて、変数毎の不良確率の変化度が算出される。
なお、ここでは、不良確率変化度出力部53は、各変数についての不良確率の変化度の関数データを出力しているが、不良確率の変化度情報は、各変数の値に対応する不良確率に関する値を含んでいればよく、離散的なデータでもよい。
【0046】
後述するように、
図8のグラフgをユーザに提示することにより、ユーザは、
図8のグラフgを見ると、不良確率は、鋳造温度Aが36度を超えるとき、及び28度未満になったとき、大きく変化することが分かる。言い換えれば、二点鎖線の間の白い矢印で示す温度範囲が、不良確率が低い良品領域と言える。よって、鋳造温度Aの設定を、例えば28度から36度の範囲内にすれば、不良確率を下げることができると、ユーザは定量的に判定することができる。
よって、不良確率変化度出力部53は、機械学習により生成されたモデルのモデル情報から、製品の製造に関わる複数の変数についての不良確率に関する値の変化度についての情報である変化度情報を、良品条件すなわち製造条件として出力する変化度情報出力部を構成する。製造条件は、不良確率に応じてダイカストが良品又は不良品となる変数の値又は範囲である。
【0047】
製造条件設定部54は、不良確率変化度出力部53からの不良確率の変化度の関数データを用いて、良品の製造条件を設定するための設定画面の表示データSIを生成する。その表示データには、
図8のグラフgが含まれる。ユーザは、設定画面を用いて、変数毎の良品の製造条件を設定することができる。
【0048】
後述するように、推定装置4は、
図8に示すようなグラフを表示装置4cに表示し、ユーザは、入力装置4bを用いて表示装置4cに表示された画面上で良品領域を設定することができる。よって、製造条件設定部54は、鋳造温度などの製造条件を、ダイカストが良品又は不良品となる確率に対応付けて設定するための表示データを出力する。
【0049】
なお、
図6において点線で示すように、不良確率変化度出力部53は、重要項目表示部52から重要度の高い変数名の情報を得て、重要度の高い上位の所定数の変数についてのみ、変数毎の不良確率の変化度を算出して出力するようにしてもよい。不良確率変化度出力部53は、不良確率の変化度を算出する変数の数が少なくなるので、プロセッサ31の負荷を軽減することができる。
(作用)
次に、品質管理システム1の動作について説明する。ここでは、モデル学習部24と、推定結果出力部33と、モデル分析部34の処理について説明する。
【0050】
図9は、モデル学習部24の処理の流れの例を示すフローチャートである。上述したように、モデル学習部24は、ソフトウエアプログラムであるので、プロセッサ21のCPUがモデル学習部24のプログラムをROM等から読み出して実行することにより、プロセッサ21は、モデルの機械学習を行う。
【0051】
プロセッサ21は、データ取得装置2から製造データを取得し、記憶装置22の製造データ保存部25に記録する(ステップ(以下、Sと略す)1)。プロセッサ21は、データ取得装置2から検査結果データを取得し、記憶装置22の検査結果データ保存部26に記録する(S2)。プロセッサ21は、製造データ保存部25と検査結果データ保存部26に記憶されたデータを参照して、所定のショット数分のデータ(製造データとその製造データに対応する検査結果データ)が、記憶装置22に保存されているかを判定する(S3)。
【0052】
所定のショット数分のデータが記憶装置22に保存されていないとき(S3:NO)、処理は、S1に戻る。所定のショット数分のデータが記憶装置22に保存されているとき(S3:YES)、プロセッサ21は、記憶装置22に記録されたデータ(製造データとその製造データに対応する検査結果データ)を読み出す(S4)。
【0053】
プロセッサ21は、読み出したデータ(製造データとその製造データに対応する検査結果データ)を教師データとして、機械学習によりモデルMを生成する(S5)。ここでは、機械学習は、ランダムフォレストによるアンサンブル学習である。ランダムフォレストは、複数の決定木を弱識別器として、複数の決定木の結果をアンサンブル学習するアルゴリムであり、S5により、ランダムフォレストにより学習されたモデルM(すなわち最終的な識別器)が生成される。プロセッサ21は、生成したモデルMのモデル情報MIを推定装置4へ送信して、学習モデル保存部35に保存する(S6)。
【0054】
ユーザは、モデルMを生成するのに必要なデータ量を、所定のショット数として設定することにより、所望のデータ量に応じたモデルMを生成することができる。
【0055】
図10は、推定結果出力部33の処理の流れの例を示すフローチャートである。上述したように、推定結果出力部33は、ソフトウエアプログラムであるので、プロセッサ31のCPUが良・不良推定のプログラムをROM等から読み出して実行することにより、プロセッサ31は、推定結果DRを出力する。
図10の処理の前に、プロセッサ31は、モデル情報MIを学習モデル保存部35から読み出しておく。
【0056】
プロセッサ31は、推定対象の製造データをデータ取得装置2から取得する(S11)。例えば、データ取得装置2がダイカストマシン5の製造データをリアルタイムで取得しているときは、プロセッサ31は、そのリアルタイムの製造データを取得する。
【0057】
プロセッサ31は、学習モデル保存部35に保存されているモデルMのモデル情報MIを用いて、S11で取得した製造データに従って製造されたダイカストの不良確率を推定すなわち算出する(S12)。S12の処理は、推定不良確率出力部41により行われる。
【0058】
プロセッサ31は、不良確率に基づいて、製造データに係るダイカストの良・不良を判定する(S13)。S13の処理は、良・不良判定部42により行われる。推定結果DRは表示装置4cに出力され、良・不良の判定結果が、表示装置4cに表示される。
【0059】
図11は、モデル分析部34の処理の流れの例を示すフローチャートである。上述したように、モデル分析部34は、ソフトウエアプログラムであるので、プロセッサ31のCPUがそのソフトウエアプログラムをROM等から読み出して実行することにより、プロセッサ31は、モデル分析を行う。
図11の処理の前においても、プロセッサ31は、モデル情報MIを学習モデル保存部35から読み出しておく。
【0060】
プロセッサ31は、モデル情報から重要項目を抽出する(S21)。S21の処理は、上述したように、良・不良の推定精度に対する影響度に基づいて、重要項目としての変数名が推定されて抽出される。S21の処理は、重要項目抽出部51により行われる。
【0061】
プロセッサ31は、良品の製造条件を設定するための設定画面を生成して、表示装置4cに出力する(S22)。S22の処理は、製造条件設定部54により行われる。よって、推定装置4は、製品の製造条件を出力する製造条件出力装置を構成する。
【0062】
プロセッサ31は、設定画面に対して行われて入力に基づいて変数の製造条件を設定する設定処理を実行する(S23)。
【0063】
図12は、S22において生成される設定画面の表示例を示す図である。表示装置4cの表示画面61には、2つのウインドウ62と63が表示されている。ウインドウ62は、
図7に示した、重要項目表示部52において生成された表示データを表示している。ウインドウ63は、
図8に示した、製造条件設定部54において生成された表示データを表示している。
【0064】
ウインドウ62中の各変数名の左側には、チェックボックス62aが表示されている。ユーザは、入力装置4bのマウスなどを用いて、各チェックボックス62aにチェックを入れることができる。
図12では、変数名「鋳造温度A」に対応するチェックボックス62aにチェックが付けられている。よって、ウインドウ63には、チェックされた変数名に対応する設定画面が表示される。
【0065】
よって、ユーザは、入力装置4bを用いて、例えば「設定変更」ボタン64をクリックすることにより、チェックボックス62aを利用して所望の変数を選択して、その変数について、製造条件の設定を変更することができる。
図12においては、2本の点線が鋳造温度の下限値と上限値を示している。例えば、ユーザは、製造条件の設定を変更したいとき、マウス等を操作して、良品領域を規定する点線の位置を移動させて、1本の点線を28度の位置に移動し、他の1本の点線を36度の位置に移動する。
【0066】
その後、ユーザは、入力装置4bを操作して、例えば「登録」ボタン64をクリックすることにより、ウインドウ63において設定されたように、製造条件を登録して変更することができる。例えば、
図12の鋳造温度Aについて、製造されたダイカストの不良確率が10%以下になるように、鋳造温度Aの上限を36度と下限を28度の温度範囲を設定することができる。
【0067】
設定情報は、信号ライン5cを介してプロセッサ31からダイカストマシン5の制御装置5aへ送信される。受信した設定情報は、制御装置5aのメモリに格納されて、ダイカストマシン5の動作制御に用いられる。上述した例では、制御装置5aは、受信した設定情報に基づいて鋳造温度Aが制御される。その結果、2本の点線により、製造時の鋳造温度Aが28度から36度の範囲内になるように、ダイカストマシン5の鋳造温度Aの制御に関わる弁などの機器が制御されるので、不良確率は低減される。
【0068】
上述したように、不良確率変化度出力部53は、モデルMのモデル情報MIから、複数の変数の不良確率の変化度を算出するので、ユーザは、他の所望の変数についても製造条件を同様に設定することができる。
【0069】
すなわち、各変数の不良確率の変化度がユーザに提示されるので、ユーザは、各変数についての不良確率の変化度を見て、ダイカストが良品となるような各変数の条件を設定することができる。
【0070】
なお、上述した例では、良品領域の設定は、ユーザがMMI4aを用いて設定しているが、不良確率の閾値をプロセッサ31のメモリに予め設定しておき、その閾値に基づいて各変数についての良品領域を自動的に設定するようにしてもよい。
【0071】
更に、上述した例では、設定情報は、信号ライン5cを介して制御装置5aに送信されて自動的に設定されているが、製造条件設定部54は、各変数の不良確率の変化度を表示装置4cに表示してユーザに提示するだけでもよい。ユーザは、その提示された設定情報に基づいて、マニュアルで制御装置5aに設定することができる。
【0072】
加えて、設定情報が、制御装置5aに直接設定できない変数であるときには、ユーザが、その設定情報に合致するように、その設定情報に関わる1以上の変数を制御装置5aに設定する。
【0073】
また、
図6において二点鎖線で示すように、製造データを製造条件設定部54にリアルタイムで供給し、製造データ中の所望の変数(ここでは鋳造温度A)の実測値を、画面上に重畳するようにしてもよい。
図12において、点MDは、鋳造温度Aの実測値を示す。よって、ユーザは、重畳された実測値から、鋳造温度Aの制御状態をリアルタイムで確認して、ダイカストマシン5で今製造されたダイカストが良品であるか不良品であるかを予測することができる。
【0074】
以上のように、上述した実施形態によれば、モデル分析部34によりダイカストの不良発生に大きく関わる変数について、不良発生を抑えるような製造条件をユーザは認識できる。そして、ユーザは不良発生を抑えるように所望の変数の製造条件を設定できるので、ダイカストの不良発生を抑えることができる。
【0075】
特に、上述した実施形態によれば、非線形な機械学習モデルを用いているので、次元数の大きな製造データに対して良・不良の推定を行うことができると共に、良・不良に関わる重要項目も抽出しているので、ユーザは、不良確率を確実に低減するための製造条件の設定を行い易い。
【0076】
なお、上述した実施形態において品質管理の対象製品は、ダイカストであるが、ダイカストは、ダイカストマシンから取り出されたダイカストがその後に加工されてから、内部に巣があるなどの不良が後工程で見つかる場合が多い。上述した実施形態によれば、そのようなダイカストが製造されるときに、不良が発生し難い製造条件を設定できる。その結果、不良品のダイカストを後工程に供給することを防いで、ダイカストの無駄な加工処理の抑制に繋がる。
【0077】
更に、上述した実施形態における品質管理の対象製品は、ダイカストであるが、射出成形機において製造される射出成形品などの他の製造物でもよく、上述した実施形態は、ダイカスト以外の他の製造物に対しても適用可能である。
【0078】
加えて、上述した各装置のプロセッサは、一部又は全部が、電子回路として構成されていてもよく、または、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路における回路ブロックとして構成されていてもよい。
【0079】
以上のように、上述した実施形態によれば、製品の不良の発生を抑制するために、不良確率に対して製造条件をどのように設定すればよいかを提示することができる製造条件出力装置、この出力を用いた品質管理システム、及び上記の製造条件を出力させる機能を有するプログラムを提供することができる。
【0080】
なお、以上で説明した各装置において実行されるプログラムは、コンピュータプログラム製品として、フレキシブルディスク、CD-ROM等の可搬媒体や、ハードディスク等の記憶媒体に、その全体あるいは一部が記録され、あるいは記憶されている。そのプログラムがコンピュータにより読み取られて、動作の全部あるいは一部が実行される。あるいは、そのプログラムの全体あるいは一部について、通信ネットワークを介して流通または提供することができる。利用者は、通信ネットワークを介してそのプログラムをダウンロードしてコンピュータにインストールしたり、あるいは記録媒体からコンピュータにインストールすることで、容易に本実施形態の製造条件出力装置あるいは品質管理システムを実現することができる。
【0081】
本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
1 品質管理システム、2 データ取得装置、2a、2b 通信ライン、3 モデル学習装置、3a 通信ライン、4 推定装置、4a マンマシンインターフェース、4b 入力装置、4c 表示装置、5 ダイカストマシン、5a 制御装置、5b、5c 通信ライン、6 製品状態検査装置、6a 通信ライン、11 プロセッサ、12 製造データ取得部、13 製造データ加工部、14 検査結果データ取得部、21 プロセッサ、22 記憶装置、23 モデル条件設定部、24 モデル学習部、25 製造データ保存部、26 検査結果データ保存部、31 プロセッサ、32 記憶装置、33 推定結果出力部、34 モデル分析部、35 学習モデル保存部、41 推定不良確率出力部、42 良・不良判定部、43 製造データ格納部、51 重要項目抽出部、52 重要項目表示部、53 不良確率変化度出力部、54 製造条件設定部、61 表示画面、62 ウインドウ、62a チェックボックス、63 ウインドウ、64 設定変更ボタン、65 登録ボタン。