(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】機械的応力が低減された光学式圧力センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 11/02 20060101AFI20230619BHJP
【FI】
G01L11/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021147655
(22)【出願日】2021-09-10
(62)【分割の表示】P 2018533982の分割
【原出願日】2016-09-21
【審査請求日】2021-09-28
(32)【優先日】2015-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518095817
【氏名又は名称】オプセンス ソリューションズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】デュプレイン ゲタン
(72)【発明者】
【氏名】ビュシエール シルヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ラフルール フィリップ
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-246641(JP,A)
【文献】実開昭57-50047(JP,U)
【文献】特開2002-129941(JP,A)
【文献】特表2011-506980(JP,A)
【文献】特開平4-232435(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0195402(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第4035373(DE,A1)
【文献】特開2013-234853(JP,A)
【文献】特表2009-537831(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0233066(US,A1)
【文献】米国特許第5026984(US,A)
【文献】独国特許出願公開第3341845(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第10024588(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 11/02,9/00,19/06,
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学式圧力センサであって、
センサハウジングと、
前記センサハウジング内に装着されて前記センサハウジングを第1の流体スペースと第2の流体スペースとに分割し、前記第1の流体スペースの圧力に晒される表側面と、前記第2の流体スペースの圧力に晒される裏側面とを含む光学式圧力セルと、
前記光学式圧力セルの表側面上の前記第1の流体スペースの圧力と前記裏側面上の前記第2の流体スペースの圧力との間の均圧化を可能にする流体連通構成と、
を備える、光学式圧力センサ。
【請求項2】
前記センサハウジングは、前記第2の流体スペースから前記第1の流体スペースに延びる導管を内部に定めて、前記第2の流体スペースと前記第1の流体スペースとの間の流体連通並びに圧力差の排除を可能にする流体連通構成を提供する、請求項1に記載の光学式圧力センサ。
【請求項3】
前記センサハウジングは、前記第1の流体スペース及び前記第2の流体スペースの境界を定める壁を含み、前記壁の1つが前記第1の流体スペース及び前記第2の流体スペースに共通する共有壁であり、前記第2の流体スペースから前記第1の流体スペースに延びる前記導管は、前記共有壁に設けられる、請求項2に記載の光学式圧力センサ。
【請求項4】
前記光学式圧力センサは更に、前記第1の流体スペースの境界を更に定める前壁を備え、該前壁に前方入力圧力ポートが定められて、前記前方入力圧力ポートは、前記第1の流体スペースと前記前方入力圧力ポート付近の前記光学式圧力センサの外部の周辺環境との間で流体連通を提供する、請求項3に記載の光学式圧力センサ。
【請求項5】
前記前方入力圧力ポートは、前記前方入力圧力ポート付近の前記光学式圧力センサの外部の周辺環境から前記第1の流体スペースへの流体の進入を阻止しながら圧力を連通させるためのベローズ及び波状ダイアフラムのうちの一方を含む、請求項4に記載の光学式圧力センサ。
【請求項6】
前記光学式圧力セルを前記センサハウジングに固定するための非シール装着クランプを更に備える、請求項2に記載の光学式圧力センサ。
【請求項7】
前記光学式圧力セルは、前記第1の流体スペースの圧力に晒されるダイアフラムを有するファブリ・ペローキャビティを含み、前記光学式圧力セルは、前記第1の流体スペースと前記ファブリ・ペローキャビティとの間の圧力差を測定し、前記流体連通構成により、前記第2の流体スペースと前記第1の流体スペースとの間の連通及び圧力差の排除を可能にする、請求項1に記載の光学式圧力センサ。
【請求項8】
前記センサハウジングは更に、
前記第1の流体スペースの境界を定める前壁であって、該前壁に前方入力圧力ポートが定められて、前記前方入力圧力ポートが前記第1の流体スペースと前記前方入力圧力ポート付近の前記光学式圧力センサの外部の周辺環境との間で流体連通を提供する、前壁と、 前記第2の流体スペースの境界を定める後壁であって、該後壁に後方入力圧力ポートが定められて、前記後方入力圧力ポートが前記第2の流体スペースと前記後方入力圧力ポート付近の前記光学式圧力センサの外部の周辺環境との間で流体連通を提供する、後壁と、
を含む、請求項7に記載の光学式圧力センサ。
【請求項9】
前記前方入力圧力ポート及び前記後方入力圧力ポートは各々、前記前方入力圧力ポート付近の前記光学式圧力センサの外部の周辺環境から前記第1の流体スペース及び前記後方入力圧力ポート付近の前記光学式圧力センサの外部の周辺環境それぞれへの流体の進入を阻止しながら圧力を連通させるためのベローズ及び波状ダイアフラムのうちの一方を含む、請求項8に記載の光学式圧力センサ。
【請求項10】
前記光学式圧力セルとの間で光ビームを送受するような動作可能な方法で前記第2の流体スペースにおいて前記光学式圧力セルに近接して位置する遠位端を有する光ファイバ組立体を更に備える、請求項1に記載の光学式圧力センサ。
【請求項11】
前記センサハウジングは更に、前記第2の流体スペースの境界を定める後壁を含み、該後壁に孔が設けられて、前記光ファイバ組立体が前記孔を通過する、請求項10に記載の光学式圧力センサ。
【請求項12】
前記光ファイバ組立体は、光ファイバと、前記光ファイバ組立体の遠位端にて前記光ファイバを収容するフェルールとを含み、前記孔は、前記後壁に前記フェルールを保持するように適合されている、請求項11に記載の光学式圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2015年9月21日出願の米国特許出願第62/221,313号に基づく優先権を主張する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、光学式圧力センサに関し、より具体的には、ファブリ・ペロー干渉計をベースとした光学式圧力センサに関する。
【0003】
開示される主題は、概して、センサ性能に有害な影響を与える機械的応力がより小さい新規の光学式圧力センサの設計に関する。
【背景技術】
【0004】
ファブリ・ペロー干渉計をベースとした様々な既存の光学式圧力センサがある。これらのタイプのセンサは、光学的組立法及び機械的装着法によって異なることが多い。例えば、Bellevilleによる米国特許第7,689,071号は、ファブリ・ペロー圧力センサの構造が、ガラス基板(センサ本体)及びシリコン撓みダイアフラムから作られたファブリ・ペローベースの光学式圧力セルに向けて光波を誘導する双方向光ファイバを含むことを教示している。第1の反射鏡は、ガラス基板の上面に実施された凹状キャビティ内に定置される。変形可能なシリコンダイアフラムは、ガラス基板に結合又は溶接されて第2の鏡を形成し、また凹状キャビティを緊密にシールする。凹状キャビティの深さにより与えられる距離だけ離間した2つの鏡は、ファブリ・ペロー干渉計を構成する。凹状キャビティの深さは、ファブリ・ペロー干渉計のキャビティ長と呼ばれ、シールされたキャビティの内外間に存在することができる差圧の関数として変化する。この光学式圧力セルは、セルのセンサ本体に生成される受信キャビティ内で光ファイバの端部に装着される。受信キャビティは接着剤が充填されて、セルを所定場所に固定して、組立体全体をシールする。この方法の主な1つの欠点は、シール及び結合のために接着剤を使用することである。このようなシール及び結合法は、差圧が小さい環境でのみ正常に機能することができる。この方法の別の欠点は、光波を圧力セルに取り込むのにレンズを使用していないので、センサ本体が薄肉(ほぼ200ミクロン程度)であることが必要とされる点である。薄肉の光学構成要素は、より光学的歪みを生じる傾向があり、圧力測定に影響を与える可能性がある。この方法の別の欠点は、シール本体がセンサ本体に付加されることである。従って、密閉シールに必要な結果として生じる機械的力がセンサ本体に伝達されて、センサ本体に内部応力を生じさせる。このことはまた、圧力セルの光学的歪みにつながり、その結果、圧力測定の精度に影響を与える可能性がある。
【0005】
Beat Halgによる米国特許第5,128,537号は、2次圧力ポートを用いることによりキャビティに所与の圧力を加えることができる異なる構成を教示している。この設計は、シール本体がセンサ本体に付加され且つ薄肉のセンサ本体を必要とする点で上述と同様の欠点を有する。
【0006】
代替形態として、Saaski他による米国特許第4,933,545号では、光学式圧力セルに光波を取り込むのに光学レンズが使用されている。この場合、センサ本体は、その厚みを増大させることによってより堅牢に作ることができる。それにもかかわらず、この設計もまた、シール本体がセンサ本体に付加されることに起因して、上述と同様の欠点を抱えている。この構成の別の欠点は、光学式圧力セルの表側面と裏側面との間に大きな差圧が存在する場合がある点である。これは、セルの曲げを生じる可能性があり、その結果、圧力測定に影響を与えることになる。
【0007】
Berner他による米国特許第7,614,308号において、別の構成が開示されている。支持ディスクが光学式圧力セルに付加され、シール本体は、支持ディスクに付加される。シール本体により作用する力は、支持ディスクに付加されるが、支持ディスクはセルに密接にシールされなければならないことが分かっているので、これらの力が光学式圧力セルにある程度加えられるのを回避することはできない。また、この光学組立体(圧力セルを有する支持ディスク)の表側面と裏側面との間に存在し得る大きな圧力差は、光学組立体の曲げを誘起する可能性がある。これによりセルにおいて上述の光学的歪みが生じ、圧力測定に影響を与える可能性がある。
【0008】
上述のこれらの光学式圧力セル構成は全て、一方向で又は他の方向で機械的応力に晒されている。これは、センサの性能に悪影響を与える可能性がある。例えば、このような応力は、時間と共に、又は温度変化に伴って、もしくは振動及び/又は衝撃を受けて予測不能に軽減される傾向があることは、当該技術分野において周知である。これらの応力軽減作用は、圧力センサの望ましくないドリフトの主要因である。圧力セルはまた、曲げ力によって影響を受け、これは、例えば、センサ応答の線形性に重大な影響を与える可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第7,689,071号明細書
【文献】米国特許第5,128,537号明細書
【文献】米国特許第4,933,545号明細書
【文献】米国特許第7,614,308号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、機械的応力への暴露が小さく、これによりこれらの応力に関連する悪影響を回避するよう設計された新規の光学式圧力センサに対する要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1つの実施形態によれば、センサハウジングと、センサハウジング内に装着されてセンサハウジングを第1の流体スペースと第2の流体スペースとに分割する光学式圧力セルとを備える光学式圧力センサが提供される。光学式圧力セルは、第1の流体スペースの圧力に晒される表側面と、第2の流体スペースの圧力に晒される裏側面とを含む。光学式圧力センサは更に、光学式圧力セルの表側面上の第1の流体スペースの圧力と裏側面上の第2の流体スペースの圧力との間の均圧化を可能にする流体連通構成を備える。
【0012】
1つの態様によれば、センサハウジングは、第2の流体スペースから第1の流体スペースに延びる導管を内部に定めて、第2の流体スペースと第1の流体スペースとの間の流体連通並びに圧力差の排除を可能にする流体連通構成を提供する。
【0013】
1つの態様によれば、センサハウジングは、第1の流体スペース及び第2の流体スペースの境界を定める壁を含み、壁の1つが第1の流体スペース及び第2の流体スペースに共通する共有壁であり、第2の流体スペースから第1の流体スペースに延びる導管は共有壁に設けられる。
【0014】
1つの態様によれば、光学式圧力センサは更に、第1の流体スペースの境界を更に定める前壁を備え、該前壁に前方入力圧力ポートが定められて、前方入力圧力ポートは、第1の流体スペースと前方入力圧力ポート付近の光学式圧力センサの外部の周辺環境との間で流体連通を提供する。
【0015】
1つの態様によれば、前方入力圧力ポートは、該前方入力圧力ポート付近の光学式圧力センサの外部の周辺環境から第1の流体スペースへの流体の進入を阻止しながら圧力を連通させるためのベローズ及び波状ダイアフラムのうちの一方を含む。
【0016】
1つの態様によれば、光学式圧力センサは、光学式圧力セルをセンサハウジングに固定するための非シール装着クランプを更に備える。
【0017】
1つの態様によれば、光学式圧力セルは、第1の流体スペースの圧力に晒されるダイアフラムを有するファブリ・ペローキャビティを含み、光学式圧力セルは、第1の流体スペースとファブリ・ペローキャビティとの間の圧力差を測定し、流体連通構成により、第2の流体スペースと第1の流体スペース及びファブリ・ペローキャビティのうちの一方との間の連通及び圧力差の排除を可能にする。
【0018】
1つの態様によれば、光学式圧力セルは、光学式圧力セル内で第2の流体スペースからファブリ・ペローキャビティまで延びる通気チャンネルを定めて、流体連通構成が、第2の流体スペースとファブリ・ペローキャビティとの間の連通及び圧力差の排除を可能にするようにする。
【0019】
1つの態様によれば、センサハウジングは更に、第1の流体スペースの境界を定める前壁であって、該前壁に前方入力圧力ポートが定められて、該前方入力圧力ポートが第1の流体スペースと前方入力圧力ポート付近の光学式圧力センサの外部の周辺環境との間で流体連通を提供する、前壁と、第2の流体スペースを定める後壁であって、該後壁に後方入力圧力ポートが定められて、後方入力圧力ポートが第2の流体スペースと後方入力圧力ポート付近の光学式圧力センサの外部の周辺環境との間で流体連通を提供する、後壁と、を含む。
【0020】
1つの態様によれば、前方入力圧力ポート及び後方入力圧力ポートは各々、前方入力圧力ポート付近の光学式圧力センサの外部の周辺環境から第1の流体スペース及び後方入力圧力ポート付近の光学式圧力センサの外部の周辺環境それぞれへの流体の進入を阻止しながら圧力を連通させるためのベローズ及び波状ダイアフラムのうちの一方を含む。
【0021】
1つの態様によれば、光学式圧力センサは更に、第1の流体スペースと第2の流体スペースとの間で流体が流れるのを阻止する軟質シール本体を更に備える。
【0022】
1つの態様によれば、光学式圧力センサは更に、光学式圧力セルとの間で光ビームを送受するような動作可能な方法で第2の流体スペースにおいて光学式圧力セルに近接して位置する遠位端を有する光ファイバ組立体を更に備える。
【0023】
1つの態様によれば、センサハウジングは更に、第2の流体スペースの境界を定める後壁を含み、該後壁に孔が設けられて、光ファイバ組立体が孔を通過する。
【0024】
1つの態様によれば、光ファイバ組立体は、光ファイバと、光ファイバ組立体の遠位端にて光ファイバを収容するフェルールとを含み、孔は、後壁にフェルールを保持するように適合されている。
【0025】
1つの実施形態によれば、センサハウジングと、センサハウジング内に装着されてセンサハウジングを第1の流体スペースと第2の流体スペースとに分割する光学式圧力セルとを備えた光学式圧力センサが提供される。ファブリ・ペローキャビティを含む光学式圧力セルは、第1の流体スペースの圧力に晒されるダイアフラムを有する。光学式圧力セルは、第1の流体スペースとファブリ・ペローキャビティとの間の圧力差を測定することを目的とする。光学式圧力センサは更に、第2の流体スペースと第1の流体スペース及びファブリ・ペローキャビティのうちの一方との間の連通及び圧力差の排除を可能にする流体連通構成を備える。
【0026】
本開示の更なる特徴及び利点は、添付図面を参照しながら以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1の実施形態による、ファブリ・ペロー光学絶対圧力センサを示す断面図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態による、ファブリ・ペロー光学差圧センサを示す断面図である。
【
図3】本発明の第3の実施形態による、センサセルを腐食性又は不透明流体から保護するよう構成されたファブリ・ペロー光学絶対圧力センサを示す断面図である。
【
図4】本発明の第4の実施形態による、センサセルを腐食性又は不透明流体から保護するよう構成されたファブリ・ペロー光学差圧センサを示す断面図である。
【
図5】本発明の第5の実施形態による、センサセルを腐食性又は不透明流体から保護するよう構成されたファブリ・ペロー光学絶対圧力センサを示す断面図である。
【
図6】本発明の第6の実施形態による、センサセルを腐食性又は不透明流体から保護するよう構成されたファブリ・ペロー光学差圧センサを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
添付図面全体を通じて、同じ特徴要素は同じ参照符号により識別される点に留意されたい。
【0029】
本明細書で以下に記載されるファブリ・ペロー圧力センサの実施形態を用いると、ファブリ・ペロー圧力センサを設計する際に遭遇する主要な問題(本明細書で上記で検討したような)の1つ、すなわちファブリ・ペロー圧力センサの構成を装着及びパッケージングすることにより光学式圧力セルに誘起される可能性がある機械的応力の問題が解決される。これらの応力は、圧力センサのドリフト及び応答の高度非線形性など、ファブリ・ペロー圧力センサの性能に悪影響を与える可能性がある。機械的応力が誘起される1つの原因は、光学式圧力セルの材料、光学式圧力セルをシールするのに使用される材料、及びセンサハウジングの材料間の熱膨張係数(CTE)の不整合である。機械的応力の別の原因は、シール本体と光学式圧力セルとの間の密閉シールに必要とされる機械力である。応力の別の要因は、光学式圧力セルの表側面と裏側面との間に存在する可能性がある大きな圧力差に起因した光学式圧力セルの曲げである。応力のこれらの要因は全て、本発明の解決策により大きく低減される。
【0030】
ここで図面を、より詳細には
図1を参照すると、ファブリ・ペロー光学絶対圧力センサ10の断面図が示されている。用語「絶対圧力」は、ファブリ・ペローキャビティ140に存在する圧力が前方入力圧力ポート152に存在する圧力に比べて無視できるほどであるとした場合に、当該前方入力圧力ポート152に存在する圧力を意味する。これは「差圧」とは対照的であり、この差圧の場合には、ファブリ・ペローキャビティ140における圧力は、前方入力圧力ポート152に存在する圧力に比べて無視することはできない。
【0031】
ファブリ・ペロー光学絶対圧力センサ10は、表側面102a及び裏側面102bを有するファブリ・ペロー干渉計をベースとした光学式圧力セル102を含む。光学式圧力セル102は、軟質装着構成要素、すなわちエラストマーOリング又は軟質金属Oリングなどの軟質材料から作られた装着クランプ108を用いて側壁凹部106内でセンサハウジング104に配置されて、光学式圧力セル102を側壁凹部106内に確実に維持するが、ここでは必要とされない大きな力がセルに加わることはない。
【0032】
光学式圧力セル102は、光学式圧力セルの表側面102a上で周縁部に結合又は溶接された変形可能な反射圧力セルダイアフラム110を含む。ファブリ・ペローキャビティ140の表面が反射性材料から構成されているので、動作可能なファブリ・ペローキャビティ140は、光学式圧力セル102内で、圧力を受けてファブリ・ペローキャビティ140の深さが変化するように設計される。前方入力圧力ポート152とファブリ・ペローキャビティ140での圧力差を受けてダイアフラム110が変形すると、2つの反射面間の距離が変化する。
【0033】
センサハウジング104内に光学式圧力セル102を配置することにより、2つの別個の区域:前方区域122と後方区域124を定めて分割される。前方区域122は、ハウジング前壁104a、ハウジング側壁104c、及び圧力セル表側面102aすなわちダイアフラム110によって境界が定められる。後方区域124は、ハウジング後壁104b、ハウジング側壁104c、及び圧力セル裏側面102bによって境界が定められる。この実施形態において、ファブリ・ペロー光学絶対圧力センサ10は、上部から見たときに円形であるので、単一のハウジング側壁104cが存在する。3次元的視点から、前方区域122及び後方区域124はまた、光学式圧力セル102に圧力が作用する流体を含む容積又はスペースと呼ぶことができる。従って、前方区域122及び後方区域124は、それぞれ、第1の流体スペース及び第2の流体スペースと呼ぶことができる。ハウジング側壁104cはまた、第1の流体スペース(前方区域122)及び第2の流体スペース(後方区域124)の両方を定めることに寄与するので、共有壁とも呼ばれる。
【0034】
ファブリ・ペロー光学絶対圧力センサ10は更に、後方区域124に末端部を有するようにハウジング後壁104bを通過する光ファイバ組立体20を含む。光ファイバ組立体20は、保護被覆又は管体132内に配置された双方向光ファイバ130を含み、その末端部は、ハウジング後壁104bの孔内でセンサハウジング104に取り付けられたフェルール134内に収容される。双方向光ファイバ130の末端部は、レンズ136に近接して終端している。シールウィンドウ138がフェルール134に取り付けられて、光ファイバ組立体20をシールする。光ファイバ組立体の遠位端は、光ビームが双方向光ファイバ130と光学式圧力セル102の間に伝送されて取り込まれるような動作可能な方法で光学式圧力セル102の裏側面102bに近接して配置される。光ファイバ組立体の端部と光学式圧力セル102の裏側面102bとの間の距離を制限することはまた、光学式圧力セルの後方区域124に存在する流体の屈折率の変化によって引き起こされる光ビームのシフトを低減するのに有利である。
【0035】
ハウジング前壁104aを通過する導管(前方導管の別名でも知られる)からなる前方入力圧力ポート152がハウジング前壁104aに配置されることにより、前方入力圧力ポート152が接続又は埋没(前方入力圧力ポート152での流体圧力の別名でも知られる、圧力Piで)される周囲区域の流体は、前方区域122に入ることが可能となる。均圧ポート156がハウジング側壁104cに配置される。均圧ポート156は、前方区域122を後方区域124と接続する導管からなる。均圧ポート156は、流体が前方区域122と後方区域124との間を連通するのを可能にする。このため、光学式圧力セル102は、その表側面102a(Pf)及び裏側面102b(Pb)に対して同じ圧力に晒され、従って、センサハウジング104に存在する流体において自由に動くことができる。更に、装着クランプ108は、シール目的で使用されないので、ハウジング側壁の凹部106に光学式圧力セル102を維持するために必要なクランプ力は、極めて僅かな量である。この構成を用いると、これにより光学式圧力セル102は、光学式圧力セル102の表側面102a及び裏側面102b間の圧力差によって引き起こされる機械的応力には晒されない。このことは、圧力セルの両側にかかる圧力が実質的に同じであることに起因しており、すなわち、Pb=Pf=Piである。光学式圧力セルをセンサハウジングに対してシールする必要はないので、シール本体と光学式圧力セルとの間を密閉シールするのに通常必要となる大きな力が存在しない。
【0036】
ファブリ・ペロー光学絶対圧力センサ10の実施形態では、前述の構成で見られた機械的応力の誘起に関する上記の問題が解決される。
図1に示す実施形態では、前方入力圧力ポート152での流体圧力は、光学式圧力セル102の表側面102a及び裏側面102bの両方に印加される。従って、光学式圧力セル102は、セルの表側面102aと裏側面102bとの間の圧力差に起因した機械的応力に晒されない。本実施形態の別の利点は、圧力シール本体の必要性が排除されることである。光学式圧力セル102の周りは全て圧力が均等化されているので、光学式圧力セルをセンサハウジング104に対してシールする必要がない。これにより、高圧の機械シールを取り扱う際の光学式圧力セル102に作用する機械的応力の周知の潜在的要因が排除される。
【0037】
ここで
図2を参照すると、ファブリ・ペロー光学圧力センサ30の代替の実施形態が断面図で示されている。
【0038】
ファブリ・ペロー光学圧力センサ30は、第1の実施形態のファブリ・ペロー光学絶対圧力センサ10と同様の構成要素、すなわち、センサハウジング104、光学式圧力セル102、及び光ファイバ組立体20を特徴として備える。ファブリ・ペロー光学圧力センサ30は更に、ハウジング前壁104a上に配置される前方入力圧力ポート152を備え、該前方入力圧力ポート152は、このポートに存在する周囲の流体(前方入力圧力ポート152付近の圧力センサの外部の周辺環境における圧力としても知られる、圧力Pi1である)を前方区域122に流入させ、従って、前方区域122の圧力(Pf)と前方入力圧力ポート154に存在する圧力(Pi1)とを均等化することができ、すなわち、Pf=Pi1である。
【0039】
同様に、ハウジング後壁104bは、後方入力圧力ポート154を特徴として備える。後方入力圧力ポート154は、センサハウジング104のハウジング後壁104bにおいてこのポートに存在する周囲の流体(後方入力圧力ポート154付近の圧力センサの外部の周辺環境における圧力としても知られる、圧力Pi2である)を、今回は後方区域124(圧力Pbにある)においてファブリ・ペロー光学圧力センサ30に流入させる導管である。軟質シール本体112は、装着構成要素として第1の実施形態の装着クランプ108と置き換えられている。軟質シール本体112は、前方区域122と後方区域124との間の流体連通を阻止する。光学式圧力セル102を通ってファブリ・ペローキャビティ140に至るまで延びる通気チャンネル160は、ダイアフラム110後方の圧力(Pc)を光学式圧力セル102の裏側面102bの圧力(Pb)と均等化する、すなわち、Pb=Pc=Pi2である。従って、ファブリ・ペローキャビティ140は、前方区域122と後方区域124との間の圧力差を測定するのを可能にする。
【0040】
従って、この構成は、上述の低応力の利点を有して、高静圧(従来の圧力センサを用いると高い機械的応力が生じることになる)での2つの入力ポート間の小さな圧力差を測定するのに特に有望である。
【0041】
図3、4、5及び6を参照すると、化学的にアグレッシブな流体の存在下では、腐食又は他のタイプの化学物質の進入によって損傷を受ける可能性がある光学式圧力セル及び他の高感度の構成要素を保護する必要がある。液体充填圧力センサは、化学的にアグレッシブな流体に対してセンサを保護するための周知の方法である。例えば、オイルが充填されたシリコンMEMS技術圧力センサは、様々な産業で有用であることが分かっている。
【0042】
液体充填圧力センサの基本的構成は、薄肉であるが化学的耐性のある金属合金から通常作られた薄肉波状ダイアフラム164(
図3~4)又はベローズ170(
図5~6)を含む。ダイアフラム又はベローズは、光学式圧力セルが配置されたチャンバをシールし、圧力が測定されているプロセス流体からセルを隔離する。チャンバは、例えば、シリコーン油、アルキル化芳香油、又は鉱油などの充填流体162で充填される。理想的には低圧縮特性を有する液体の使用は、ダイアフラム又はベローズに加わった圧力を光学式圧力セルに伝達するのに必要である。センサが大きな温度範囲で使用される状況では、充填流体162のより大きな熱膨張に対処することが可能であることから、ベローズを使用することが好ましい。
【0043】
図示しない代替の実施形態は、均圧ポート156の代替の設計及び代替の配置を含み、流体が前方区域122と後方区域124との間を連通するのを可能にし、従って、所望の圧力平衡(すなわち、光学式圧力セル102の周囲の圧力差の制限又は排除)をもたらすことができる。例えば、センサハウジング104の代替の設計、前方入力圧力ポート152及び後方入力圧力ポート154の代替の配置はまた、本発明の範囲から逸脱することなく実施可能である。
【0044】
同様に、本発明の範囲から逸脱することなくセンサハウジング104内に光学式圧力セル102を固定する代替の解決策も存在する。例えば、Paul R Yoder Jr.による題名「Mounting Optics in Optical Instruments(光学機器における光学系の装着)」の書籍では、様々な装着及びクランプ方法が示されている。上記書籍に記載された装着及びクランプ方法の多くは、本明細書で提示されたものと同様の目的で光学式圧力セル102を装着するのに用いることができ、これ以上説明する必要はない。代替のハウジング設計によれば、光学式圧力セル102がセンサハウジング104内の所定位置に維持される方法は様々であってもよく、例示の側壁凹部106を必要とする場合もあり、又は必要でない場合もあり、或いは、光学式圧力セル102に機械的応力を誘起する力を加えることなく光学式圧力セル102を所定位置に固定するために、代替の構成及び/又は構成要素を設けることもできる。同様に、本明細書で記載される均圧化を達成するために様々な方法があることは、当業者であれば理解されるであろう。例えば、オリフィス又はチャンネルを装着クランプ108に形成し、光学式圧力セルの両側を同じ圧力にすることができる。
【0045】
図1~6は、光学式圧力セルの表側面上の第1の流体スペースの圧力と裏側面上の第2の流体スペースの圧力の間の均圧化を可能にするのに有用な流体連通構成の様々な実施形態を示している点を理解されたい。これらの流体連通構成は、様々な通路、ポート、導管、通気路、ベローズ、波状ダイアフラム、孔、その他を含む。
【0046】
更に別の例示的な実施形態によれば、導管がダイアフラム110を通じて光学式圧力セル102の本体内に直接導入される。このような場合、光学式圧力セル102の導管が第1の流体スペースと第2の流体スペース間の流体連通構成を提供するので、均圧ポート156は必要ではなくなる。ダイアフラム110が光学式圧力セル102の表側面102a全体を覆わない、僅かに異なる同様の実施形態も実施可能である。このような場合、導管は、ダイアフラム110が光学式圧力セル102の表側面102aを覆わない区域においてのみ光学式圧力セル102の本体内に導入される。
【0047】
好ましい実施形態について上記で説明し、添付図面にて例示してきたが、本開示から逸脱することなく修正が可能であることは、当業者には明らかであろう。このような修正は、本開示の範囲内に含まれる実施可能な変形形態とみなされる。