(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】圧縮ガスを形成および分配するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
F17C 9/00 20060101AFI20230619BHJP
F17C 5/06 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
F17C9/00 Z
F17C5/06
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021172780
(22)【出願日】2021-10-22
【審査請求日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591035368
【氏名又は名称】エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【氏名又は名称】岩田 純
(74)【代理人】
【氏名又は名称】板谷 一弘
(72)【発明者】
【氏名】マイケル カッチャーパッレ
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ピー.コーエン
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ジョナサン チョーク
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ジョン ファリーズ
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー アール.キベロス
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102008060127(DE,A1)
【文献】特開2017-067178(JP,A)
【文献】特開2013-160476(JP,A)
【文献】特表2016-529448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 9/00
F17C 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮ガスを形成し、それを圧縮ガスレシーバに分配するための方法であって、
(a)極低温のプロセス流体を提供するステップと、
(b)前記プロセス流体を加圧し、依然として極低温の前記加圧されたプロセス流体を第1の熱交換器に供給するステップと、
(c)例えばD-リモネンなどの熱流体を、熱流体リザーバ内に、前記加圧されたプロセス流体の前記極低温を超える熱流体温度で提供するステップと、
(d)前記加圧されたプロセス流体から前記圧縮ガスを形成するステップであって、前記圧縮ガスを形成することは、前記第1の熱交換器内で、前記熱流体との間接的熱交換によって前記加圧されたプロセス流体を加熱することを含む、ステップと、
(e)任意選択的に、1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器を提供し、前記1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器から圧縮ガスをディスペンサに供給するステップと、
(f)ステップ(d)で形成された圧縮ガスを前記ディスペンサおよび/または、存在する場合は、前記1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器に供給するステップと、
(g)前記圧縮ガスを前記圧縮ガスレシーバに前記ディスペンサを介して分配するステップと、
ステップ(d)で形成された圧縮ガス、および/または、存在する場合は、前記1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器からの圧縮ガスを、第2の熱交換器内の前記熱流体との間接的熱交換によって冷却し、前記冷却された圧縮ガスを前記ディスペンサに供給するステップと、を含
み、
前記第1の熱交換器および前記第2の熱交換器は、前記熱流体に関して並列に配置され、第1のポンプが、前記熱流体リザーバの前記熱流体を前記第1の熱交換器を通して供給し、第2のポンプが、前記熱流体リザーバの前記熱流体を前記第2の熱交換器を通して供給する、
方法。
【請求項2】
前記加圧されたプロセス流体および熱流体
のうちの一方は、前記第1の熱交換器を通して、1つ以上の流体チャネル内を搬送され、他方は、前記1つ以上の流体チャネルを直接接触して取り囲み、それによって間接的熱交換をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱流体リザーバの前記熱流体は、熱流体回路であって、前記熱流体リザーバと、前記第1の熱交換器と、前記熱流体回路内で前記熱流体を供給する1つ以上のポンプとを含む熱流体回路内を循環する、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
前記加圧されたプロセス流体および熱流体
のうちの一方は、前記第2の熱交換器を通して、1つ以上の流体チャネル内を搬送され、他方は、前記1つ以上の流体チャネルを直接接触して取り囲み、それによって間接的熱交換をもたらす、請求項
1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器が提供され、ステップ(d)で形成された前記圧縮ガスの少なくとも一部分が、中間貯蔵のために前記1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器に供給さ
れ、
圧縮ガスを前記ディスペンサに供給する前記ステップは、圧縮ガスを前記1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器から前記ディスペンサに供給することを含んでよいか、またはそれからなってよい、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器が提供され、ステップ(d)で形成された前記圧縮ガスの少なくとも一部分が、前記1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器を迂回して、前記ディスペンサに供給される、請求項1
~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
圧縮ガスを形成し、それを圧縮ガスレシーバに分配するためのシステムであって、
(a)極低温のプロセス流体の供給源と、
(b)前記供給源からプロセス流体を受け取るように動作可能に配置され、前記プロセス流体を加圧し、依然として極低温の前記加圧されたプロセス流体を供給するように構成された極低温供給デバイスと、
(c)前記加圧されたプロセス流体から圧縮ガスを形成するためのプロセス流体処理構成であって、極低温で、前記極低温供給デバイスから加圧されたプロセス流体を受け取るように操作可能に配置され、熱流体との間接的熱交換によって前記加圧されたプロセス流体を加熱するように構成された第1の熱交換器を備える、プロセス流体処理構成と、
(d)前記加圧されたプロセス流体の前記極低温を超える温度の前記熱流体の熱流体リザーバであって、前記第1の熱交換器に前記熱流体を提供するように動作可能に配置された熱流体リザーバと、
(e)任意選択的に、圧縮ガスを前記プロセス流体処理構成から受け取るように動作可能に配置され、それを貯蔵するように構成された1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器と、
(f)前記プロセス流体処理構成から圧縮ガスを受け取るように動作可能に配置され、かつ/または、存在する場合は、前記1つ以上の貯蔵容器から圧縮ガスを受け取るように動作可能に配置され、かつ圧縮ガスを前記圧縮ガスレシーバに分配するように構成されたディスペンサと、を備え
、
前記プロセス流体処理構成から圧縮ガスを受け取るように動作可能に配置され、かつ/または、存在する場合は、前記1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器から圧縮ガスを受け取るように動作可能に配置された第2の熱交換器を備え、前記第2の熱交換器は、前記熱流体との間接的熱交換によって前記受け取った圧縮ガスを冷却するように構成され、前記熱流体リザーバは、前記第2の熱交換器に前記熱流体を提供するように動作可能に配置されている、
前記熱流体に関して、第1の枝路と、前記第1の枝路と並列に配置された第2の枝路とを有する熱流体回路を備え、前記第1の枝路は、前記熱流体リザーバと、前記第1の熱交換器と、前記熱流体リザーバの前記熱流体を、前記熱流体リザーバおよび前記第1の熱交換器を通して、前記第1の枝路内を循環させるように動作可能に配置および構成された第1のポンプとを備え、前記第2の枝路は、前記熱流体リザーバと、前記第2の熱交換器と、前記熱流体リザーバの前記熱流体を、前記熱流体リザーバおよび前記第2の熱交換器を通して、前記第2の枝路内を循環させるように動作可能に配置および構成された第2のポンプとを備える、
システム。
【請求項8】
前記第1の熱交換器は、前記熱流体リザーバと、前記熱流体リザーバの前記熱流体を前記第1の熱交換器および前記熱流体リザーバを通して循環させるように動作可能に配置および構成された1つ以上のポンプとを含む熱流体回路内に配置されている、請求項
7に記載のシステム。
【請求項9】
前記熱流体リザーバは、前記熱流体の浴を包含するリザーバ容器を備え、前記熱流体リザーバは、前記熱流体を前記第1の熱交換器に前記浴から提供するように動作可能に配置されている、請求項
7または8に記載のシステム。
【請求項10】
前記熱流体回路は、総質量M
11の熱流体を包含し、前記リザーバ容器は、この総質量のうちの質量m
12の熱流体を包含し、比率m
12/M
11は、関係m
12/M
11≧0.5、またはm
12/M
11≧0.6、またはm
12/M
11≧0.7.を満たす、請求項
9に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1の熱交換器
および/または、存在するのであれば、請求項7記載の前記第2の熱交換器は、
-前記熱流体および前記加圧されたプロセス流体のうちの一方であるケーシング側流体のための入口および出口を有するケーシングと、
-前記ケーシング内に取り付けられ、チャネル側流体を受け取るように動作可能に配置され、前記ケーシングを通して前記チャネル
側流体を搬送するように構成された1つ以上の流体チャネルであって、前記チャネル側流体は、前記加圧されたプロセス流体および前記熱流体のうちの他方である、流体チャネルと、を備え、
-前記
それぞれの熱交換器は、前記チャネル側流体のために、前記ケーシング側流体を前記1つ以上の流体チャネルと直接接触させるように構成されている、請求項
7~10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1の熱交換器
および/または、存在するのであれば、請求項7記載の前記第2の熱交換器は、ケーシング側流体としての、前記熱流体および前記加圧されたプロセス流体のうちの一方のためのケーシングと、前記加圧されたプロセス流体および前記熱流体のうちの他方をチャネル側流体として前記ケーシングを通して搬送するための、前記ケーシング内に取り付けられた1つ以上のらせん形コイル状流体チャネルとを備えるらせん形コイル状熱交換器である、請求項
7~11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記プロセス流体処理構成は、前記第1の熱交換器から加圧されたプロセス流体を受け取るように動作可能に配置され、このプロセス流体をさらに加熱するように構成されたヒータを備え
、および/または、
例えば前記熱流体リザーバ内に動作可能に配置され、前記熱流体を加熱するように構成された熱流体ヒータをさらに備える、
請求項7~12のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温で提供されるプロセス流体から圧縮ガスを形成し、圧縮ガスを圧縮ガスレシーバに分配するための方法およびシステムに関する。より具体的には、本発明は、例えば、液体または液相-気相混合で提供される水素、天然ガス、1種以上の炭化水素、およびこれらの混合物のようなプロセス流体から圧縮ガス、例えば圧縮燃料ガスを形成し、例えば車両燃料タンク、あるいは分配ステーションに定常的に配置された、またはタンクトラックもしくはチューブトレーラに取り付けられた1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器のような受入れ容器に圧縮ガスを分配するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮ガスは、ヘルスケア、化学物質、製造を含む多くの産業で使用され、特に車両用燃料ガスとして使用されている。液化ガスは、低圧で高密度であるため、流通に便益をもたらす。したがって、これらの流体は、例えば、圧縮ガスを車両燃料タンクおよび/または圧縮ガス分配ステーションもしくは移動式圧縮ガス貯蔵トレーラの1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器に分配するために、圧縮ガスがオンデマンドで形成される極低温液体として、より長時間およびより大量に輸送および貯蔵される。
【0003】
車両の燃料補給および/または圧縮ガス貯蔵容器への充填などの多くの用途で、容器の温度制限に違反することなく、それぞれの圧縮ガスレシーバを時間効率的な方法で充填することが望ましい。例えば、水素動力車は、車両燃料タンクでは典型的には85℃である受入れ容器の温度制限に違反することなく、3分以内に700バールにまで充填することが規定されている。同時に、充填中に燃料タンクに入る間、水素の温度が-40℃を下回らないことが要求される。周囲圧力および周囲温度で気体である水素または他のプロセス流体が液体として貯蔵され、次いで、例えば燃料供給車両または他の高圧用途もしくは貯蔵における使用のために高圧でポンプ送達される場合、圧縮された流体は典型的には-150℃よりも低い温度でポンプを出る。温度は、圧縮ガスを通常の貯蔵タンクに貯蔵するか、または大半の顧客プロセスに送るには、低温すぎる。
【0004】
この問題の一般的な解決策は、何らかの種類の気化器、通常は強制喫水周囲空気気化器を使用して、圧縮されたプロセス流体を、それを利用することができる温度にまで加温することである。この解決策には2つの問題がある。第1に、気化器を通る空気が大きな霧雲を作り出すことがあり、これは、見ている人を不安にさせ、潜在的に危険であり得ることである。第2の問題は、プロセス流体、例えば水素を冷蔵するために使用されたエネルギーが、圧縮流体が温められただけで浪費されることである。
【0005】
霧化問題の1つの解決策は、抵抗熱を使用して、周囲空気ではなく、圧縮流体を温めることである。しかしながら、この解決策では、エネルギーが2回浪費される。流体を冷蔵するために使用されたエネルギーが失われるだけでなく、追加エネルギーが、冷蔵エネルギーを消散させるために使用される。水素燃料供給ステーションなどのシステムにおけるエネルギー浪費に対する従来の解決策は、ガスの一部に気化器を迂回させ、圧縮ガスレシーバに直接行くことを可能にすることである。このアプローチは、圧縮と分配とが同時であることを必要とする。
【0006】
圧縮時間対分配時間の問題に対処するために使用されてきた解決策は、圧縮ガスに、圧縮ポイントと分配ポイントとの間のアルミニウムブロックなどの熱リザーバを通過させることである。例えば、US2015/0267865A1は、圧縮水素ガスを車両燃料タンクに分配するための方法およびシステムを開示し、システムの下流端に配置された低温アキュムレータおよびシステムの上流端に配置されたさらなる低温アキュムレータ内での間接的熱交換によって、圧縮水素ガスの温度を制御することを提案している。2つの低温アキュムレータは、熱流体が2つの低温アキュムレータ間を循環する熱流体回路によって接続されている。アルミニウムブロック低温アキュムレータは、予熱されるべき圧縮ガスの量の変化に反応する能力において制限されている。必要に応じて熱と低温とを蓄積する能力は、ブロックの設計によって制限される。
【0007】
例えば液体水素(LHY)および/または液体天然ガス(LNG)などの極低温プロセス流体を圧縮ガスに変換し、圧縮ガスを、例えば車両燃料タンクなどの圧縮ガスレシーバに、時間およびエネルギー効率の良い方法で分配することができる方法およびシステムを提供することが、本発明の目的である。
【0008】
極低温プロセス流体および/または圧縮ガスの流量および/または温度の変化につながる可能性のある需要の変化に柔軟に適応することができる方法およびシステムを有することは望ましい。
【0009】
車両および/またはタンクトラックおよび/またはチューブトレーラに燃料供給するための分配ステーションにおける圧縮燃料ガスの需要を満たすのに必要なエネルギーを低減する必要がある。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、極低温プロセス流体を加圧し、まだ依然として極低温の加圧されたプロセス流体を、熱流体リザーバ内に提供された熱流体との間接的熱交換によって加熱することによって、時間およびエネルギー効率の良い方法で、極低温プロセス流体を圧縮ガスに変換し、圧縮ガスを、特に受入れ容器としての圧縮ガスレシーバに分配することを達成する。熱流体リザーバは、従来技術の熱交換器のアルミニウムブロック材を置き換える。熱流体リザーバのサイズ、したがって、熱流体の総量および全体的熱容量は、熱流体リザーバを設計するときに、特定の用途のニーズに柔軟に合わせることができる。一方の熱流体リザーバの質量および熱容量と、他方の熱伝達とは、金属ブロック熱交換器の場合よりも高度に分離される。アルミニウムまたは他の固体熱交換材料の(かさばる)ブロックの代わりに、熱容量を熱流体リザーバの形態で提供することにより、加圧されたプロセス流体への熱伝達のより柔軟で正確な制御が可能となる。
【0011】
したがって、本発明は、極低温プロセス流体から圧縮ガスを形成し、圧縮ガスを圧縮ガスレシーバに分配するための方法およびシステムを対象とする。プロセス流体は、後述するような極低(低)温であることを明言するためにのみ「極低温プロセス流体」と称される。
【0012】
方法において、プロセス流体は、極低温で提供される。極低温プロセス流体の少なくとも一部分は、液体状態で提供され得る。極低温プロセス流体は、加圧され、依然として極低温で第1の熱交換器に供給される。加圧された極低温プロセス流体から圧縮ガスを形成することは、例えばD-リモネンなどの熱流体との間接的熱交換によって、第1の熱交換器内で、加圧された極低温プロセス流体を加熱することを含むか、またはそれからなる。熱流体は、第1の熱交換器に入るときに、加圧された極低温プロセス流体の極低温を超える熱流体温度で、熱流体リザーバ内に提供される。
【0013】
方法は、加圧されたプロセス流体から形成された圧縮ガスをディスペンサに供給することをさらに含む。圧縮ガスは、形成され、ディスペンサに、形成されるとインラインで直接、または、そのようなものが提供される場合、中間圧縮ガス貯蔵の後に間接的に、送られ得る。圧縮ガスは、現場に定常的におよび/またはチューブトレーラなどの移動式貯蔵トレーラに存在する場合は、中間貯蔵器、例えば1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器内に供給され得る。形成された圧縮ガスおよび/または1つ以上の任意選択的な圧縮ガス貯蔵容器からの圧縮ガスは、ディスペンサを介して圧縮ガスレシーバに分配される。
【0014】
第1の熱交換器内で間接的熱交換を行うために、加圧されたプロセス流体および熱流体のうちの一方は、第1の熱交換器を通して、1つ以上の流体チャネル内を搬送され得、他方は、1つ以上の流体チャネルを直接接触して取り囲み得る。便宜的な実施形態では、加圧されたプロセス流体は、熱流体を通して搬送されることによって、熱流体との間接的熱交換において、第1の熱交換器内で加熱される。
【0015】
第1の熱交換器を出る加圧されたプロセス流体が、それを貯蔵器に分配または送出するにはまだ低温すぎる場合、圧縮ガスを形成するステップは、さらなる熱交換器または、好ましくは、例えば電気抵抗ヒータのようなトリムヒータによって、第1の熱交換器からの加圧されたプロセス流体をさらに加熱することを含み得る。必要に応じて、加圧されたプロセス流体は、任意選択的なさらなる加熱ステップにおいて、例えば-40℃~0℃の範囲内の温度にまで加熱され得る。
【0016】
例えば、本発明に典型的な用途では、極低温プロセス流体は、極低温ポンプおよび/または極低温コンプレッサなどの極低温供給デバイスによって加圧および供給され、-150℃未満の温度で極低温供給デバイスを出る。受入れ容器、例えば燃焼機関または燃料電池車両の燃料タンクを充填するために、加圧された極低温プロセス流体は、-40℃以上でかつ便宜的には-17.5℃以下の温度にまで、好ましくは-33℃未満の温度にまで加熱される。
【0017】
本発明は、圧縮ガスを形成し、それを圧縮ガスレシーバに分配するためのシステムであって、極低温のプロセス流体の供給源、例えば極低温のプロセス流体を包含する貯蔵容器と、供給源から極低温プロセス流体を受け取るように動作可能に配置され、プロセス流体を加圧し、依然として極低温の加圧されたプロセス流体を供給するように構成された極低温供給デバイスとを備えるシステムをさらに対象とする。極低温供給デバイスは、1つ以上の極低温ポンプおよび/または1つ以上の極低温コンプレッサを備え得る。システムは、加圧された極低温プロセス流体から圧縮ガスを形成するためのプロセス流体処理構成と、圧縮ガスを圧縮ガスレシーバに分配するように構成されたディスペンサとをさらに備える。プロセス流体処理構成は、加圧されたプロセス流体を極低温供給デバイスから依然として極低温で受け取るように動作可能に配置され、加圧されたプロセス流体を、熱流体との間接的熱交換によって加熱するように構成された第1の熱交換器を備える。第1の熱交換器は、極低温供給デバイスによって加圧および供給される全部のプロセス流体を受け取るように配置され得る。または、極低温供給デバイスによって加圧および供給されるプロセス流体の一部分のみを受け取るように配置され得、一方、別の部分は、例えば気化器に供給される。
【0018】
本発明によれば、システムは、加圧されたプロセス流体の極低温を超える温度の熱流体の熱流体リザーバを備え、熱流体リザーバは、第1の熱交換器に熱流体を提供するように動作可能に配置される。
【0019】
熱流体は、好ましくは液体として熱流体リザーバ内に提供され、すなわち、リザーバは、熱流体の浴を包含し得る。熱流体がリザーバを含む熱流体回路内を循環する実施形態では、熱流体リザーバは、熱流体回路内で熱流体を循環させるのに必要な量を超える量の熱流体を包含する。熱回路が総質量M11の熱流体を包含し、リザーバ容器がこの総質量のうちの質量m12を包含する場合、比率m12/M11は、有利には、関係m12/M11≧0.5を満たし得、すなわち、リザーバ容器内の質量m12は、循環中、熱流体回路のすべての他の構成要素内の熱流体の質量以上であり得る。より好ましくは、m12/M11≧>0.6、またはm12/M11≧0.7、またはm<4781>12</4781>/m12/M11≧0.8である。例えば、車両燃料補給ステーションでは、熱流体がD-リモネンであるか、または同等以上の熱容量を有し、同様の広い温度範囲にわたって動作することができる熱流体である場合、リザーバ容器内の熱流体の量は、1000~2000リットルの範囲であり得、リザーバ容器外を循環する熱流体の量は、50~200リットルの範囲であり得る。
【0020】
熱流体は、特に、少なくとも50℃、または少なくとも80℃、または少なくとも100℃まで液体のままであるものであり得る。それは、現場で遭遇する最高周囲温度下で液体のままであらねばならない。便宜的には、-50℃未満、または-70℃未満の温度まで液体のままであらねばならない。D-リモネンおよびD-リモネンを含有する組成物は、熱流体の好適な例である。好適な組成物は、例えばUS6974552B1に開示されている。
【0021】
システムは、圧縮ガスをプロセス流体処理構成から受け取るように動作可能に配置され、貯蔵するように構成された1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器を備え得る。有利な実施形態では、プロセス流体処理構成、1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器、およびディスペンサは、プロセス流体処理構成内に形成された圧縮ガスの流れが、1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器に、もしくは1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器を迂回してディスペンサに選択的に供給されるか、または1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器とディスペンサとの間で分割することができるように、動作可能に配置される。
【0022】
ディスペンサは、プロセス流体処理装置から圧縮ガスを、すなわちプロセス流体処理装置によって形成された圧縮ガスの全部もしくは一部分のみを受け取るように動作可能に配置され、かつ/またはディスペンサは、存在する場合は、1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器から圧縮ガスを受け取るように動作可能に配置されている。プロセス流体処理構成からインラインで、および/または存在する場合は、1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器から、受け取られた圧縮ガスは、ディスペンサを介して分配される。
【0023】
ディスペンサは、存在する場合は、1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器からのみ圧縮ガスを受け取るように動作可能に配置され得る。そのような実施形態では、プロセス流体処理構成からの圧縮ガスは、1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器内にのみ供給される。しかしながら、システムが1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器を備える好ましい実施形態では、ディスペンサは、プロセス流体処理構成と流体連通し、さらに、1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器と流体連通し、したがって、圧縮ガスは、プロセス流体処理構成から、1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器を迂回してディスペンサに、または1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器に、またはディスペンサおよび1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器の両方に同時に、供給され得る。
【0024】
第1の熱交換器は、ケーシング側流体のための入口および出口を有するケーシングと、ケーシング内に取り付けられ、チャネル側流体を受け取るように動作可能に配置された1つ以上の流体チャネルとを備え得る。ケーシング側流体は、熱流体および加圧された極低温プロセス流体のうちの一方である。チャネル側流体は、加圧された極低温プロセス流体および熱流体のうちの他方である。便宜的な実施形態では、加圧された極低温プロセス流体が、第1の熱交換器を通して、1つ以上の流体チャネル内を搬送されるチャネル側流体である。第1の熱交換器は、ケーシング側流体、有利には熱流体を、チャネル側流体用の1つ以上の流体チャネルと直接接触させるように構成されている。
【0025】
熱流体リザーバは、第1の熱交換器と一体的であり得る。第1の熱交換器のケーシングは、熱流体の浴を包含し得、加圧されたプロセス流体を搬送するための1つ以上の流体チャネルは、したがって第1の熱交換器によって包囲された熱流体リザーバ内に提供された熱流体内に浸漬され得る。
【0026】
しかしながら、より好ましい実施形態では、熱流体は、第1の熱交換器とは別個の熱流体リザーバ内に提供される。第1の熱交換器は、熱流体リザーバの外部に配置される。第1の熱交換器は、熱流体リザーバ容器の外側に取り付けられてもよいし、または熱流体リザーバまである距離をおいて配置されてもよい。熱流体リザーバおよび第1の熱交換器は、熱流体リザーバから第1の熱交換器に至り、第1の熱交換器を通り、そこから熱流体リザーバに戻り、熱流体リザーバを通る熱流体回路内を熱流体が循環することができるように流体流連通する熱流体回路内に配置されている。熱流体回路は、熱流体を循環させるための1つ以上のポンプを備え得る。
【0027】
可変ドライブ、例えば可変周波数ドライブ(VFD)が設けられ、1つ以上のポンプに結合されて、1つ以上のポンプの速度を変化させることを、それによって第1の熱交換器を通して供給される熱流体の流量を変化させることを、可能し得る。2つ以上のポンプが熱流体を循環させるために使用される実施形態では、可変ドライブは、各ポンプに対して1つずつ、2つ以上の電気駆動モータを備え得る。それぞれの駆動モータは、それぞれのポンプに直接取り付けられ得る。可変ドライブは、熱流体の温度に応答して、1つ以上のポンプを加速および減速するように構成され得る。システムは、第1の熱交換器を出る熱流体の温度を感知するために、例えば、可変ドライブと結合され、第1の熱交換器の熱流体出口にまたはその近くに配置された熱流体温度センサを備え得る。可変ドライブは、熱流体の測定温度が、熱流体温度が熱流体の凝固点に近づきすぎたことを示す所定のより低温レベルを下回る場合、それぞれのポンプを加速し得る。
【0028】
圧縮ガスが1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器からディスペンサに送られる実施形態では、および/または分配動作の初期段階の間には、一定の休止時間が経過した後、圧縮ガスが加温され、許容分配温度を超える温度に達している可能性がある。これらの条件下では、ディスペンサを介して圧縮ガスを分配する前に、圧縮ガスを冷却する必要が生じ得る。システムは、第1の熱交換器の下流に、および/または、存在する場合は、1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器の下流に配置された第2の熱交換器を備え、したがって、方法はそれを使用して、ディスペンサに供給される前か、またはディスペンサを通して供給され圧縮ガスレシーバに分配されている間に、圧縮ガスを冷却し得る。
【0029】
第2の熱交換器は、熱流体、すなわち熱流体リザーバ内に提供された熱流体との間接的熱交換で圧縮ガスを冷却するように構成され得る。熱流体は、熱流体リザーバ、第1の熱交換器、および第2の熱交換器を含む熱流体回路内を循環され得る。熱流体は、第1の熱交換器内で、加圧されたプロセス流体との間接的熱交換によって冷却され、第2の熱交換器内で、圧縮ガスとの間接的熱交換によって加熱される。第2の熱交換器内で熱流体を加熱することは、第1の熱交換器内での熱流体の冷却を少なくとも部分的に補償し、逆も同様であり、それによって、圧縮ガスの調節のエネルギー効率をさらに増加させる。
【0030】
第2の熱交換器内で間接的熱交換を行うために、加圧されたプロセス流体および熱流体のうちの一方は、第2の熱交換器を通して、1つ以上の流体チャネル内を搬送され得、他方は、1つ以上の流体チャネルを直接接触して取り囲む。便宜的な実施形態では、加圧されたプロセス流体が、熱流体を通して搬送されることによって、第2の熱交換器内で加熱される。
【0031】
好ましい実施形態では、第2の熱交換器は、熱流体リザーバの外部に配置される。しかしながら、原則として、熱流体リザーバは、第2の熱交換器と一体的であり得る。一体的である場合、第2の熱交換器のケーシングは、熱流体の浴を包含し得、加圧されたプロセス流体を搬送するための1つ以上の流体チャネルは、したがって第2の熱交換器によって包囲された熱流体リザーバ内に提供された熱流体内に浸漬され得る。
【0032】
第1の熱交換器および第2の熱交換器は、熱流体回路内に、直列に配置され得る。例えば、第1の熱交換器の1つ以上の流体チャネルおよび第2の熱交換器の1つ以上の流体チャネルは、熱流体リザーバとして提供される熱流体浴中に浸漬され得、すなわち、熱交換器は、熱流体リザーバ内に形成され得る。
【0033】
しかしながら、より有利な実施形態では、熱流体回路は、第1の枝路と、第1の枝路と並列に配置された第2の枝路とを含む。熱流体リザーバは、有利には、両方の枝路に共通であり得る。第1の枝路は、第1の熱交換器と、熱流体リザーバと、第1の枝路内の熱流体を循環させるための第1のポンプとを備え得、第2の枝路は、第2の熱交換器と、熱流体リザーバと、第2の枝路内の熱流体を循環させるための第2のポンプとを備え得る。並列枝路内の熱交換器の構成は、温度に関して圧縮ガスを調節する際の柔軟性を増大させ、圧縮ガスの温度をより正確に制御することを可能にする。
【0034】
上述したように、可変ドライブが設けられる場合、可変ドライブは、第1のポンプの速度および第2のポンプの速度を互いに独立して変化させるように構成され得る。例えばVFDなどの可変ドライブは、第1のポンプと結合された第1の電気駆動モータと、第2のポンプと結合された第2の電気駆動モータとを備え得る。第1の電気駆動モータは、第1のポンプに直接取り付けられ得、かつ/または第2の電気駆動モータは、第2のポンプに直接取り付けられ得る。第1の電気駆動モータは、上述したように、第1の熱交換器を出る熱流体の温度に依存して制御され得る。可変ドライブは、熱流体の温度および/または第2の熱交換器を出る圧縮ガスの温度が制御されるように、例えばそれぞれの所定温度範囲内に保たれるように、第2のポンプの速度を変化させるように構成され得る。第1の熱交換器でより少ない加熱が必要とされるとき、および/または第2の熱交換器でより少ない冷却が必要とされるときにポンプ速度を遅くすることは、エネルギー入力を低減し、したがって、全体的なエネルギー効率を増加させる。
【0035】
第1の熱交換器および/または、存在する場合は、第2の熱交換器は、有利には、らせん形コイル状の第1の熱交換器および/またはらせん形コイル状の第2の熱交換器として設計され得、それぞれの熱交換器は、ケーシング側流体としての、熱流体および加圧されたプロセス流体うちの一方のためのケーシングと、チャネル側流体としての、加圧されたプロセス流体および熱流体のうちの他方をケーシングを通して搬送するためにケーシング内に取り付けられた1つ以上のらせん形コイル状流体チャネルとを備える。それぞれのらせん形コイル状熱交換器は、便宜的には、2つの流体の対向または交差する流れで熱交換を行うように構成および動作され得、ケーシング側流体は、渦巻き形流路内の1つ以上のらせん形コイル状流体チャネルを取り囲む。
【0036】
1つ以上の熱流体ヒータが、第2の熱交換器の代わりに、または好ましくは第2の熱交換器に加えて、必要に応じて熱流体を加熱するために設けられ得る。熱流体ヒータは、熱流体リザーバ容器内もしくはその壁上に、またはリザーバ容器から離れて配置されて、熱流体リザーバ内の熱流体、または第1の熱交換器に向かうもしくはそこから来る熱流体を加熱する。1つ以上の熱流体ヒータは、便宜的には、電気抵抗ヒータ(複数可)として提供され得る。
【0037】
熱流体回路が第2の熱交換器を含む場合、熱流体回路内の熱流体の総質量M11は、第2の熱交換器を通って循環する熱流体を含む。比率m12/M11について上記で指定した関係は、拡大された熱流体回路に対しても保持される。
【0038】
プロセス流体処理構成は、極低温供給デバイスからプロセス流体の一部分を受け取るように動作可能に配置され、プロセス流体のこの部分を気化させるように構成された気化器を備え得る。任意選択的な気化器は、例えば第1の熱交換器と並列に配置され得、任意選択的には、存在する場合は、1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器に、または任意選択的な1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器を迂回してディスペンサに、ガスを送るように動作可能に配置され得る。
【0039】
プロセス流体は、液体状態で提供されてもよいし、または液相-気相混合流体として提供されてもよい。それは、供給容器内に提供され得る。好ましい実施形態では、圧縮ガスは、その主成分(複数可)として、水素、および/または天然ガス、および/またはメタン、エタン、プロパン、ブタンなどの1種以上の気体炭化水素(複数可)からなるか、またはそれらを含む。これらの実施形態では、プロセス流体は、提供されたとき、主成分または唯一の成分として、液体状態または液相-気相混合状態の水素および/または1種以上の炭化水素(複数可)を含む。これは、プロセス流体が、提供されたとき、原則として、例えば液体酸素、液体窒素、液体アルゴン、液体ヘリウム、液化空気、液体二酸化炭素、またはこれらの任意の混合物のような、任意の他の極低温流体を含むかまたはそれらからなり得ることを除外しない。
【0040】
本明細書で使用される場合、「極低温プロセス流体」という用語は、-70℃未満の温度を有する液体、気体、または混合相流体を意味することが意図される。本明細書で使用される場合、この用語は、気体の温度が-70℃を超えない限り、気体流体をさらに含む。極低温プロセス流体の例としては、液体水素(LHY)、液体窒素(LIN)、液体酸素(LOX)、液体アルゴン(LAR)、液体ヘリウム、液体二酸化炭素および加圧混合相極低温プロセス流体(例えば、LIHと気体水素の混合物)が挙げられる。本発明の目的のため、温度は、-70℃未満である場合、「極低温」と称される。したがって、極低温のプロセス流体は、-70℃未満の温度を有する液体、液相-気相混合、または気体の流体である。
【0041】
プロセス流体は、例えばプロセスガスが水素を含むかまたは水素からなる場合のように、プロセス流体またはその成分の臨界点圧力を超える圧力にまで加圧され得る。したがって、加圧されたプロセス流体は、超臨界流体であるか、または1つ以上の超臨界流体成分を含み得る。本明細書で使用される場合、「圧縮ガス」という用語は、気体状態および超臨界状態のプロセス流体をカバーする。例えば、本発明が関連するプロセス流体の最有力候補としての水素は、超臨界流体として極低温供給デバイスを出得る。プロセス流体は、超臨界流体として第1の熱交換器に入り得る。それは、依然として超臨界状態または気体状態で、第1の熱交換器から出得る。
【0042】
本明細書で使用される場合、「第1の」、「第2の」、「第3の」などは、複数のステップ、および/または特徴部、および/または構成要素の間で区別するために使用され、そのように明示的に述べられない限り、総数、または時間および/または空間における相対位置を示すものではない。例えば、「第1の熱交換器」における「第1の」の使用は、本明細書に記載されるように、第2の熱交換器の使用は好ましいが、さらなる熱交換器の存在を示唆しない。
【0043】
特許請求の範囲では、特許請求されるステップ(例えば、(a)、(b)、および(c))を識別するために、文字が使用される。これらの文字は、方法ステップを参照する際の助けに使用され、特許請求の範囲においてそのような順序が具体的に列挙されていない限り、その範囲内でのみ、特許請求されたステップが実行される順序を示すことを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】図は、極低温で提供されるプロセス流体から圧縮ガスを形成し、圧縮ガスを圧縮ガスレシーバに分配するための方法およびシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
次の詳細な説明は、好ましい例示的な実施形態のみを提供し、本発明の範囲、適用可能性、または構成を限定することを意図しない。むしろ、次の好ましい例示的な実施形態の詳細な説明は、当業者に、本発明の好ましい例示的な実施を可能にする説明を提供し、さまざまな変更が、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、要素の機能および構成において行われ得ることが理解される。
【0046】
図は、圧縮ガスを形成し、圧縮ガスを、特に燃焼機関もしくは燃料電池車両の燃料タンクのような圧縮ガスレシーバ、または何らかの他の定格圧力受入れ容器に分配するためのシステムを示す。図はまた、極低温プロセス流体、すなわち極低温で提供されるプロセス流体から圧縮ガスを形成する方法を示す。圧縮ガスを形成することは、少なくとも、極低温プロセス流体を加圧および加熱することを含む。圧縮ガスが圧縮水素、圧縮天然ガス、またはこれらの混合物である場合、極低温プロセス流体は、提供されたとき、液体または液相-気相混合の水素、天然ガス、またはこれらの混合物である。
【0047】
システムは、例えば、極低温プロセス流体1、例えば液体または混合相の水素が充填された供給容器2のような、極低温プロセス流体の供給源を備える。システムは、供給容器2から極低温プロセス流体1を受け取るように動作可能に配置された極低温供給デバイス3をさらに備える。極低温供給デバイス3は、依然として極低温である加圧されたプロセス流体4のような、極低温供給デバイス3を出る極低温プロセス流体1を加圧するように構成されている。極低温供給デバイス3は、極低温プロセス流体1の圧力を、約0.5MPaから、車両燃料タンクを充填するのに有用な圧力、通常は20~100MPa、典型的には約80MPaに増加させるように構成され得る。加圧されたプロセス流体4は、極低温供給デバイス3を出るとき、依然として非常に低温、例えば-150℃である。
【0048】
したがって、システムは、極低温供給デバイス3を出た加圧された極低温プロセス流体4の少なくとも一部分を、ディスペンサ25を介して圧縮ガスレシーバ26に分配され、かつ/または、設けられている場合、中間貯蔵器に送られるのに好適な圧縮ガス7に変換するためのプロセス流体処理構成を備える。プロセス流体処理構成は、第1の熱交換器5を備える。それは、第1の熱交換器5と直列に配置された1つ以上のさらなる構成要素、および/または第1の熱交換器5と並列に配置された1つ以上のさらなる構成要素を備え得、これらの任意選択的なさらなる構成要素は、受入れ容器を充填するのに好適な圧縮ガス7を形成するのにさらなる処理が必要であるならば、極低温供給デバイス3からの加圧されたプロセス流体4を加熱および/もしくは気化させるように構成されている。
【0049】
極低温供給デバイス3からの加圧された極低温プロセス流体4は、極低温供給デバイス3によって加圧および供給された極低温プロセス流体4の少なくとも一部分を受け取るように動作可能に配置された第1の熱交換器5内で加熱される。例示的な実施形態では、第1の熱交換器5は、極低温供給デバイス3によって加圧および供給された極低温プロセス流体4の全部を受け取るように動作可能に配置されている。加圧された極低温プロセス流体4は、熱流体リザーバ12内に提供された熱流体11との間接的熱交換によって、第1の熱交換器5内で加熱される。
【0050】
熱流体リザーバ12は、第1の熱交換器5のプロセス流体入口で、加圧されたプロセス流体4の極低温を超える熱流体温度の熱流体11が充填されたリザーバ容器である。熱流体11は、熱流体リザーバ12と、第1の熱交換器5と、第1の熱流体ポンプ14とを含む熱流体回路であって、熱流体リザーバ12から第1の熱交換器5へ至り、第1の熱交換器5を通り、そこから熱流体リザーバ12に戻り、熱流体リザーバ12を通るように熱流体11を循環させるように構成された熱流体回路内を循環する。
【0051】
熱流体11は、有利には、液体として提供され得る。したがって、熱流体リザーバ12は、リザーバ容器内に包含される液体熱流体11の浴を含むか、またはそれからなり得る。熱流体11を熱流体回路内に循環させることは、浴から熱流体11を取り出すことと、熱流体11を浴に再導入することとを含む。有利な実施形態では、熱流体11は、1バールで50℃を超える、または80℃を超える、好ましくは100℃を超える標準沸点を有するように選択される。-50℃未満または-70℃未満の標準凝固点を有してもよい。
【0052】
シェルおよびチューブの設計が、第1の熱交換器5のために選択され得る。そのような設計では、第1の熱交換器5は、ケーシング側流体のための入口および出口を有するケーシングを備える。2つの熱交換流体のうちの他方は、ケーシングを通して、1つ以上のらせん形コイル状チューブとして形成された1つ以上の流体チャネル内を搬送される。例示的な実施形態では、加圧された極低温プロセス流体4が、流体チャネル内を搬送されるチャネル側流体であり、熱流体11が、流体チャネル(チューブ)と直接接触して流体チャネルを取り囲むケーシング側流体である。有利には、第1の熱交換器5は、コイル状チューブ熱交換器である。第1の熱交換器5がらせん形コイル状チューブ熱交換器として設計されている場合、熱交換流体4および11の両方は、第1の熱交換器5を通して、らせん形または渦巻き形の流路を、好ましくは向流または直交流で循環して、熱流体11から加圧された極低温プロセス流体4に熱を集中的に伝達させる。
【0053】
第1の熱交換器5内で冷却された熱流体11は、熱流体リザーバ12に戻される。第1の熱交換器5を出る加圧されたプロセス流体4は、その温度が許す限り、例えば、車両タンクおよび/または現場貯蔵容器などの受入れ容器としての圧縮ガスレシーバ26に直接送られ得る。
【0054】
しかしながら、加圧されたプロセス流体4は、それを圧縮ガスレシーバ26に分配したり、またはそれを中間貯蔵器に供給するには依然として低温すぎる温度で、第1の熱交換器5を出る場合がある。したがって、プロセス流体処理構成は、第1の熱交換器5を出る加圧されたプロセス流体4の一部または全部を加熱するために、ヒータ6、例えば電気抵抗ヒータを備え得る。ヒータ6は、インライン電気トリムヒータとして機能し得る。ヒータ6は、存在する場合は、加温されたプロセス流体4の少なくとも一部分を第1の熱交換器5から受け取るように動作可能に配置され、この加温されたプロセス流体4の少なくとも一部分を、便宜的には、ヒータ6を出る加圧され予熱されたプロセス流体を、車両タンクおよび/または現場貯蔵容器などの受入れ容器に、圧縮ガス7として直接充填することを可能にする温度にまでさらに加熱するように構成されている。
【0055】
システムは、プロセス流体処理構成内で形成された圧縮ガス7の中間貯蔵のための1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器20を備え得る。1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器20は、プロセス流体処理構成から圧縮ガス7の少なくとも一部分21を受け取るように動作可能に配置され得る。例示的な実施形態では、1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器20は、ヒータ6から圧縮ガス7を受け取るように動作可能に配置されている。1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器20は、定常的に配置される、すなわち現場に固定されてもよいし、または迅速な交換を可能にするための移動式圧縮ガス貯蔵トレーラ上に配置されてもよいし、あるいは1つ以上の定常圧縮ガス貯蔵容器20および1つ以上の移動式圧縮ガス貯蔵容器20の組み合わせを含んでもよい。
【0056】
ディスペンサ25は、1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器20を迂回して、この意味では、プロセス流体処理装置、ここではヒータ6から直接、圧縮ガス8を受け取るように動作可能に配置され得る。プロセス流体処理構成内で形成された圧縮ガス7の全部または一部のみは、形成されると、ディスペンサ25に直接搬送され、ディスペンサ25を介して、例えば車両燃料タンクのような圧縮ガスレシーバ26に分配され得る。
【0057】
システムが1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器20を備える場合、プロセス流体処理構成内で形成された圧縮ガス7の全部または一部のみは、1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器20に誘導され、後で使用するためにその中に貯蔵され得る。ディスペンサ25は、少なくとも原則として、1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器20から圧縮ガス22のみを、それを圧縮ガスレシーバ26に分配するために受け取るように動作可能に配置され得る。プロセス流体処理構成内で形成された圧縮ガス7の全部が、この前提で、1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器20に送られてもよい。しかしながら、例示的な実施形態では、1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器20は、圧縮ガス7の少なくとも一部分21を受け取るように動作可能に配置され、ディスペンサ25は、1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器20を迂回する圧縮ガス8を受け取るように、かつ1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器20から圧縮ガス22を受け取るように動作可能に配置されている。システムは、圧縮ガス画分8および22をディスペンサ25に選択的に、すなわち一度に1つずつ誘導するための流量調節手段、例えばバルブを備え得る。流量調節手段は、さらに、圧縮ガス画分8および22の両方を、例えば、混合物として、ディスペンサ25に同時に搬送することを可能にしてもよい。
【0058】
例えば極低温供給デバイス3が生成物をディスペンサ25に送る準備ができていない場合、1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器20からの圧縮ガス22がディスペンサ25に誘導され得る。ディスペンサ25は、ガスが十分に低温である場合、圧縮ガスを圧縮ガスレシーバ26に直接分配し得る。より一般的には、圧縮ガス22は、高温すぎて直接分配できない。同様に、圧縮ガス8が、直接分配するにはあまりにも高温すぎる場合がある。1つ以上の圧縮ガス貯蔵容器20を迂回する搬送ライン内の圧縮ガス8は、より長い休止時間の後、温められている可能性がある。
【0059】
システムは、圧縮ガス8および/または22の少なくとも一部分23を受け取るように動作可能に配置され、この少なくとも一部分23を、熱流体11との間接的熱交換によって冷却してから、ディスペンサ25に送るように構成された第2の熱交換器10を備え得る。第2の熱交換器10は、熱流体11との間接的熱交換によって、圧縮ガス8および/または9の少なくとも一部分23を、分配するのに好適な温度範囲内の温度に、例えば-17.5℃~-40℃の範囲内の温度に、好ましくは-33℃未満の温度にまで冷却するように構成されている。
【0060】
システム、例えばディスペンサ25は、ディスペンサ25に誘導された圧縮ガス8および/または22を表す温度を測定するための温度センサと、圧縮ガス8および/または22を受け取るように動作可能に配置された分配器24とをさらに含み得る。ディスペンサ25は、分配器24を介して圧縮ガスを受け取るように動作可能に配置されている。存在する場合は、分配器24は、測定温度が許すならば、圧縮ガス8および/または22をディスペンサ25を介して圧縮ガスレシーバ26に直接送るように構成され、測定温度が高すぎるならば、圧縮ガス8および/または22の少なくとも一部分23を第2の熱交換器10に送るようにさらに構成されている。第2の熱交換器10に送られる場合、少なくとも一部分23は、上述のように、熱流体11に対して、分配に好適な温度範囲内の温度にまで冷却される。好適に冷却された圧縮ガスは、次いで、ディスペンサ25を介して分配される。
【0061】
第2の熱交換器10は、熱流体回路の構成要素であり、熱流体リザーバ12から熱流体11を受け取るように動作可能に配置されている。したがって、熱流体11は、熱流体リザーバ12から第2の熱交換器10にも至り、第2の熱交換器10を通り、そこから熱流体リザーバ12に戻り、熱流体リザーバ12を通って循環し得る。
【0062】
シェルおよびチューブの設計が、第2の熱交換器10のために選択され得る。そのような設計では、第2の熱交換器10は、ケーシング側流体のための入口および出口を有するケーシングを備える。2つの熱交換流体のうちの他方は、ケーシングを通して、1つ以上のらせん形コイル状チューブとして形成された1つ以上の流体チャネル内を搬送される。例示的な実施形態では、圧縮ガス23が、流体チャネル内を搬送されるチャネル側流体であり、熱流体11が、流体チャネル(チューブ)に直接接触して流体チャネルを取り囲むケーシング側流体である。有利には、第2の熱交換器10は、コイル状チューブ熱交換器である。第2の熱交換器10がらせん形コイル状チューブ熱交換器として設計されている場合、熱交換流体23および11の両方は、第2の熱交換器10を通して、らせん形または渦巻き形の流路を、好ましくは対向または直交する流れで循環して、熱流体11から圧縮ガス23に熱を集中的に伝達させる。
【0063】
第1の熱交換器5および第2の熱交換器10は、循環熱流体11に対して直列に配置することができる。連続流構成では、熱流体リザーバ12は、熱流体リザーバ11から第1熱交換器5に至り、第1熱交換器5を通り、そこで加圧されたプロセス流体4を加温するように循環させることができる。次いで、冷却された熱流体11は、さらに第2の熱交換器10に至り、第2の熱交換器10を通り、そこで圧縮ガス23を冷却し、したがって再び加温されるように循環してから、熱流体リザーバ12に戻って完全な円を完成させることができる。連続流構成は、熱流体の流れ方向に関して変更することができる。1つ以上のポンプが、熱流体11を循環させるために、直列熱流体回路内に配置され得る。
【0064】
そのうちの1つが図に示されているより好ましい実施形態では、第1の熱交換器5および第2の熱交換器10は、熱流体11に関して並列に配置されている。熱流体回路は、第1の枝路13と、第1の枝路13と並列な第2の枝路15とを含む。第1の枝路13は、熱流体リザーバ12、第1の熱交換器5、および第1の枝路13内の熱流体11を循環させるように構成された第1の熱流体ポンプ14を備える。第2の枝路15は、熱流体リザーバ12、第2の熱交換器10、および第2の枝路15内の熱流体11を循環させるように構成された第2の熱流体ポンプ16を備える。
【0065】
熱流体回路は、ポンプ14および15ならびに熱交換器5および10の上流で2つの枝路13および15に分割され、2つの枝路13および15は、ポンプ14および15ならびに熱交換器5および10の下流で再び結合されている。熱流体回路は、熱流体リザーバ12の熱流体出口の下流で2つの枝路13および15に分割され得、かつ/または2つの枝路13および15は、熱流体リザーバ12の熱流体入口の上流で再び結合され得る。例示的な実施形態では、熱流体出口および熱流体入口は、枝路13および15の両方に共通である。
【0066】
熱流体ポンプ14および16は、互いに独立して動作するように構成され得る。したがって、熱流体11を、第1の枝路13内のみに、または第2の枝路15内のみに、または、ポンプ14および16の両方が動作して、両方の枝路13および15内に同時に、循環させ得る。第1の熱交換器5のために第1の枝路13内に第1の熱流体ポンプ14を設け、第2の熱交換器10のために第2の枝路15内にさらなる第2のポンプ16を設けることは、熱管理に関する柔軟性を増加させる。熱流体11の流量は、熱交換器5および10の各々について個別に最適化することができる。
【0067】
第1のポンプ14は、極低温供給デバイス3が稼働しているときはいつでも、および極低温供給デバイス3を冷却するために通気するときや、または供給容器2内で圧力が高まりすぎないように通気するときに、オンにすることができる。第2の熱流体ポンプ16は、第2の熱交換器10を正しい温度、典型的には約-40℃に保つ必要に応じて、熱流体11を循環させる。
【0068】
システムは、第1のポンプ14および/または第2のポンプ16をさまざまな速度で駆動するように構成された可変ドライブを備え得る。可変ドライブは、第1のポンプ14を駆動する第1の電気駆動モータおよび/または第2のポンプ16を駆動する第2の電気駆動モータを含み得る。可変ドライブは、有利には、それぞれの電気駆動モータの入力周波数を変化させることによってそれぞれのポンプの速度を変化させるための可変周波数ドライブ(VFD)であり得る。第1のポンプ14の速度は、第1の熱交換器5を出る熱流体の温度を所定の温度範囲内に保つように変化させ得る。第2のポンプ16の速度は、第2の熱交換器10を出る熱流体の温度を所定の温度範囲内に保つように、かつ/または第2の熱交換器10を出る圧縮ガスの温度を所定の温度範囲内に保つように変化させ得る。
【0069】
熱流体リザーバ12は、熱流体回路内の循環を維持するのに必要な量を超える量の熱流体11を包含する。枝路13および15の両方を含む熱回路が、総質量M11の熱流体11を包含、リザーバ容器が、この総質量のうちの質量m12を包含する場合、比率m12/M11は、有利には、関係m12/M11≧0.5、またはより好ましくは、m12/M11≧0.6、またはm12/M11≧0.7.を満たし得る。
【0070】
熱流体回路は、熱流体11を加熱するための、特に電気抵抗ヒータのような熱流体ヒータ18を備え得る。熱流体ヒータ18は、例えば、第1の熱交換器5内で熱流体11によって蓄積された低温が、第2の熱交換器10内の熱流体11への熱の伝達によって完全に補償されない場合、いかなる熱不足も補償するように機能し得る。熱流体ヒータ18は、熱流体11を第1の熱交換器5に搬送する搬送ライン内に、または熱流体11を熱流体リザーバ12に戻す搬送ライン内に配置され得る。例示的な実施形態では、熱流体ヒータ18は、リザーバ容器に配置され、熱流体リザーバ12の熱流体11中に浸漬されている。