(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】窒素含有保護層を有する鋼製部材の製造方法およびそれに対応して製造された部材
(51)【国際特許分類】
C21D 9/08 20060101AFI20230619BHJP
C23C 8/26 20060101ALI20230619BHJP
C22C 38/18 20060101ALI20230619BHJP
C22C 38/58 20060101ALI20230619BHJP
C21D 1/06 20060101ALI20230619BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
C21D9/08 E
C23C8/26
C22C38/18
C22C38/58
C21D1/06 A
C22C38/00 302Z
(21)【出願番号】P 2021502875
(86)(22)【出願日】2019-07-08
(86)【国際出願番号】 EP2019068246
(87)【国際公開番号】W WO2020016040
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-01-18
(31)【優先権主張番号】102018212111.7
(32)【優先日】2018-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ヴェールレ トマス
(72)【発明者】
【氏名】ファイエク パトリック
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102004039926(DE,A1)
【文献】特開平09-287058(JP,A)
【文献】国際公開第2015/110199(WO,A1)
【文献】特開2007-073433(JP,A)
【文献】特開2006-233282(JP,A)
【文献】特開2010-248540(JP,A)
【文献】特開2009-103291(JP,A)
【文献】国際公開第2019/002044(WO,A1)
【文献】特開2015-094015(JP,A)
【文献】国際公開第01/068933(WO,A2)
【文献】中国特許出願公開第108118260(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
C21D 9/08
C21D 1/06
C23C 8/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素含有保護層(22)を有する鋼製部材(20)を製造する方法であって、
以下の工程:
‐窒素含有雰囲気中900℃を超える温度まで前記部材(20)の焼鈍しをする工程、
‐前記部材(20)の焼入れをする工程、
‐-70℃より低い温度で前記部材(20)の低温冷却をする工程、
‐150℃を超える温度で前記部材(20)の焼戻しをする工程、
を含み、
前記部材(20)の焼鈍しを50ミリバールから5バールの間の窒素分圧で実施し、
前記部材(20)は、燃料電池システム(70)で使用される水素輸送管路であり,
前記部材(20)内への水素の浸透拡散を制限する前記窒素含有保護層(22)が前記水素輸送管路の
内側の表面に形成される、
方法。
【請求項2】
前記部材(20)の焼入れを1バールから40バールの間の焼入れ圧力で実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記部材(20)の焼入れを、窒素、アルゴンおよびヘリウムの群から選ばれた1つの焼入れ媒体によって実施する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記部材(20)の焼入れを50℃より低い温度まで実施する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記部材(20)の低温冷却を15分間から30分間にわたって実施する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記部材(20)の焼戻しを窒素含有雰囲気中で実施する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記部材(20)の鋼はクロムを10重量%から20重量%の間で含有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に燃料電池システムで使用される、窒素含有保護層を有する鋼製部材の製造方法に関する。本発明はまた、この方法によって製造された部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特にマルテンサイトまたはフェライトの形状の鋼含有部材は、例えば燃料電池の分野において、とりわけ水素雰囲気下での用途に使用されている。このとき、この部材中への水素の浸透拡散が原因で、水素脆化とも称される部材の機械特性の劣化と、それによる部材の破損が起こりうる。
【0003】
部材の高温窒化により、マルテンサイトおよびフェライトの辺縁範囲で窒素が溶解でき、それによりオーステナイト表層が形成されうる。このオーステナイト表層および部材の材料内部に入り込んだ窒素により、部材内への水素の浸透拡散は著しく制限される。このように処理された鋼は、水素下での使用において相応して明らかな利点をもたらす。
【0004】
特許文献1はセルフタッピングねじを製造する方法に関するものであり、その際、マルテンサイトに硬化可能な鋼からなる未加工品を用意し、その未加工品からねじ型を製造し、そのねじ型を引き続き窒素含有ガス雰囲気中>900℃の温度で硬化させている。窒素含有ガス雰囲気中での硬化の温度は、有利には1000℃から1200℃の間である。この熱化学的プロセスにより、辺縁領域が窒化し、それに関連して基材に比べて高い硬度が生じる。この未加工品の鋼は、有利には>12%のクロム含有量および/または>2.5%のニッケル含有量を有する。硬化に続いて、および場合により焼入れに続いて、ねじ型は150℃から450℃の間の温度で焼戻しされる。
【0005】
特許文献2はオーステナイトおよび/またはマルテンサイトを形成する方法に関し、少なくとも窒素を温度T1で材料中に溶解させる。有利には、N2のような、窒素を含有するガスを使用し、このガスの圧力は数バールであるが、0.1バールのように1バール未満であってもよい。温度T1は、有利には1000℃を超えかつ1350℃未満であり、温度T1での高温処理は、例えば20分を超えて、または15時間を超えて実施される。さらに、中間冷却工程を実施してもよい。冷却ガスは、6から10バールの圧力で窒素であってよい。有利には、冷却ガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンまたはラドンのような希ガスである。
【0006】
特許文献3は、フェライト系クロム鋼からなる装飾品を開示しており、このクロム鋼は主にマルテンサイトである表層を有するフェライト芯部から形成されている。この表層が鋼材料に混入しているCおよびN含有量に依存した少量の残留オーステナイトを依然として有している実施態様も含まれている。マルテンサイト表層の形成は、有利には窒化のような熱処理により行なわれ、鋼材料は窒素含有ガス雰囲気中1000℃から1200℃の間の温度で処理され、その後に続いて冷却される。1つの例によれば、鋼種1.4016を窒素で1,050℃より高い温度で窒化させ、焼入れまたは低温冷却し、そして焼戻しをしている。窒素を混入させることにより、オーステナイトに変態し、それに続く焼入れでマルテンサイトが生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】ドイツ国特許出願公開第102012216117号明細書
【文献】国際公開第2012/146254号パンフレット
【文献】ドイツ国特許出願公開第102008050458号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
窒素含有保護層を有する鋼製部材の製造方法を提案する。本発明により製造された部材は、例えば燃料電池システムで使用可能である。この方法は、少なくとも以下に挙げた工程を含む。
【0009】
まず、窒素含有雰囲気中900℃を超える温度まで前記鋼製部材の焼鈍しを行なう。特に前記鋼製部材の焼鈍しは900℃から1300℃の間の温度まで行ない、その温度で1分間から12時間の間で等温保持を実施してもよい。
【0010】
上述の、窒素含有雰囲気下での前記部材の焼鈍しにより、窒素溶解度は上昇する。窒素含有雰囲気から窒素が鋼の中へ拡散し、窒素含有拡散領域を形成する。この過程は高温窒化とも称される。焼鈍しの際にフェライトである鋼の中では、窒素の流入が十分な場合オーステナイト表層が生じる。焼鈍しの際にオーステナイト、例えばマルテンサイト種である鋼の中では、十分な窒素流入により表層内のオーステナイトに窒素が添加されて化学的に安定化する。窒素流入が十分な場合はしたがって窒素含有オーステナイト拡散領域が生じ、これが部材内への水素の浸透拡散を減少させる。
【0011】
続いて、前記鋼製部材の焼入れが行なわれる。焼入れでは、焼鈍しの際に得られた温度から比較的短時間で前記部材を冷却する。焼鈍しおよび焼入れにより、場合により前記鋼製部材の硬化が行なわれる。特にそれ以前に表層内に拡散した窒素はこのとき前記表層内に残留する。焼鈍しの際に完全なオーステナイト構造を有する鋼では、焼入れの際、窒素が十分増加していない芯部でマルテンサイトへの変態が起こり、そのため硬化する。焼鈍しの際にフェライトである鋼は、焼入れの際、芯部の中はフェライトのままである。しかし、表層は両方の場合とも十分高い窒素含有量でオーステナイトのままである。
【0012】
その後、必要に応じて-70℃より低い温度で前記部材の低温冷却を行なってもよい。低温冷却は、-70℃から-273℃の間の温度範囲で行なうことができる。低温冷却は、マルテンサイト種において芯部範囲の残留オーステナイト含分を減少させるのに役立つ。マルテンサイトへの変態では、芯部範囲に、残留オーステナイトと称される変態しなかったオーステナイト含分が残るかもしれない。この残留オーステナイトは、低温冷却によりマルテンサイトに変態する。
【0013】
続いて、場合によりさらに、150℃を超える温度で前記鋼製部材の焼戻しを行なう。焼戻しは、例えば150℃から600℃の間の温度範囲で行なうことができる。焼戻しにより、焼戻さない状態と比較して強度が低下する。これは、そのようにして適切な強度を管理し調整することができるので望ましい。同様に、例えば靭性、破断伸びおよび延性が改善される。
【0014】
本発明の好適な態様によれば、前記鋼製部材の焼鈍しを50ミリバールから5バールの間の窒素分圧で実施する。この圧力によって、表層中の窒素含有量を調整することができる。鋼に応じて、この圧力によって、適合した最適な窒素含有量を調整することができる。
【0015】
本発明の有利な態様によれば、前記鋼製部材の焼入れを1バールから40バールの間の焼入れ圧力で実施する。本発明の特に有利な態様によれば、前記鋼製部材の焼入れを1.5バールから10バールの間の焼入れ圧力で実施する。
【0016】
本発明の好適な態様によれば、前記鋼製部材の焼入れを焼入れ媒体によって実施する。前記焼入れ媒体は、好ましくは、窒素、アルゴンおよびヘリウムの群から選ばれた1つのガスである。アルゴンおよびヘリウムは希ガスである。これらは高い熱容量を有し、それにより高い冷却作用を得ることができる。その上、希ガスは鋼と反応しない。窒素は基本的に鋼表面と反応するが、しかし、このプロセスを通していずれにせよすでに材料中に含まれている。アルゴンおよびヘリウムに比べて、大抵の場合、窒素の方が明らかに好都合である。
【0017】
好ましくは、前記鋼製部材の焼入れを50℃より低い温度まで実施する。
【0018】
好ましくは、前記鋼製部材の焼入れを比較的迅速に実施する。迅速な焼入れにより、前記部材内での窒化クロムの形成が好適に防止される。窒化クロムは前記部材の耐食性を低下させる。
【0019】
本発明の好適な態様では、前記鋼製部材の低温冷却を15分間から30分間にわたって実施する。
【0020】
有利には、前記部材の焼戻しを、同様に窒素含有雰囲気中で実施する。窒素含有雰囲気中での焼戻しにより、材料からの窒素流出および表面の酸化が防止される。窒素分圧は、例えば大気圧と同じでよい。期間はこのとき好ましくは30分から8時間の間でよい。
【0021】
好ましくは、前記部材の鋼はクロムを10重量%から20重量%の間で含有する。この鋼の他の成分は、例えば:
炭素 0重量%から 2重量%まで、
窒素 0重量%から 2重量%まで、
ニッケル 0重量%から 2重量%まで、
マンガン 0重量%から 2重量%まで、
モリブデン 0重量%から 2重量%まで、
コバルト 0重量%から 2重量%まで、
銅 0重量%から 2重量%まで、
アルミニウム 0重量%から 2重量%まで、
鉄 64重量%から90重量%まで、
である。
【0022】
例えばケイ素のような他の元素も、前記鋼中に成分として含まれていてもよい。前記成分の重量パーセントの合計は、このとき100重量%である。
【0023】
本発明による方法で製造された、窒素含有保護層を有する部材も提案する。この部材は、例えば、特に燃料電池システムで使用される水素輸送管路である。
【0024】
本発明による部材は、特に水素輸送管路の形状の、燃料電池システムに好適に使用される。
【発明の効果】
【0025】
すでに述べたように、窒素含有保護層により、前記部材内への水素の浸透拡散が制限される。これにより、前記部材の水素脆化が好適に低減または完全に防止されている。水素含有雰囲気中での前記部材の脆弱性はしたがって減少し、それにより、前記部材を水素含有雰囲気中で使用することができる。前記保護層は、窒素の浸透拡散およびそれに関連した安定オーステナイト表層形成により好適かつ容易に生じる。好適には、このとき、前記部材の基材の性質、とりわけ前記鋼の機械特性が得られる。特に前記部材の硬度を必要に応じて調整することができる。好適には、したがって前記部材の所望の弾性変形性は維持されたままである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】窒素含有保護層を有する鋼製部材の製造方法の概略をフローチャートの形で表したものである。
【
図2】
図1に図示された方法で製造された管状部材の断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施態様を、図面および以下の説明により詳細に説明する。
【0028】
以下の本発明の実施態様の説明では、同一または類似の部材を同じ符号で表しており、これらの部材の説明を個別に繰り返すことは省略する。これらの図は、本発明の対象を概略的に表しているだけである。
【0029】
図1は、窒素含有保護層22を有する鋼製部材20の製造方法の概略をフローチャートの形で表したものである。
【0030】
開始の工程100では、鋼からなる部材20を用意する。鋼は鉄の他に複数の成分、例えば炭素0.5重量%およびクロム15重量%を含む。部材20は、例えば管状に形成されており、つまり例えば円形の断面を有し、内部にある空洞を囲んでいる。
【0031】
次の工程101では、部材20を窒素含有雰囲気中900℃から1300℃の間の温度まで加熱する。焼鈍しは、1分間から12時間の間で実施する。焼鈍しの際に調整された窒素含有雰囲気中では、このとき50ミリバールから5バールの間の窒素分圧である。
【0032】
焼鈍しと、窒素含有雰囲気から部材20への窒素の浸透拡散により、鋼のオーステナイト表層が生じる、または安定化する。この表層は部材20を取り囲んでいる。部材20のオーステナイト表層はこのときから窒素含有拡散領域を含み、これが部材20の窒素含有保護層22を形成する。
【0033】
後続の工程102では、部材20を焼入れする。このとき、部材20を、焼鈍しの際に得られた温度から比較的短い時間で50℃より低い温度まで冷却する。部材20の焼入れは、ここでは1.5バールから10バールの間の焼入れ圧力で行なう。部材の焼入れを、焼入れ媒体によって実施する。焼入れ媒体は、ここでは1つのガスであり、例えば窒素、アルゴンまたはヘリウムである。
【0034】
焼鈍しおよび焼入れにより、部材20を硬化する。それ以前にオーステナイト表層中に拡散した窒素は、このとき前記表層中に残留している。部材20の保護層22は、つまり焼入れの後も維持されている。
【0035】
続く工程103では、部材20を-70℃から-273℃の間の温度範囲で低温冷却する。部材20の低温冷却は、15分間から30分間にわたって実施される。
【0036】
次の工程104ではさらに、部材20の焼戻しを150℃から600℃の間の温度範囲で行なう。部材20の焼戻しも、すでに述べた焼鈍しのように、窒素含有雰囲気中で実施する。
【0037】
任意の工程105では、部材20の別の加工を行なってよい。例えば、部材20を成形あるいはフライス加工または旋盤加工により切削加工して、それにより後の使用に必要な形状にしてもよい。
【0038】
図2は、
図1に図示された方法で製造された管状部材20の断面の概略図である。管状部材20は、すでに述べたように、鋼から製造されている。
【0039】
部材20は、管状に形成されており、円形の断面を有し、内部にある空洞を囲んでいる。部材20は、鋼からなる芯材25を含む。芯材25は
図1に記載した方法によりわずかに変化するだけである。
【0040】
部材20は、さらに
図1に記載された方法により生成された2つの保護層22を含む。両保護層22は、それぞれ部材20の表面に形成されている。両保護層22は、特に部材20への水素の浸透拡散を減少させる。
【0041】
芯材25および両保護層22は、それぞれ円環形状に形成されている。両保護層22は、このとき、芯材25を同心で囲んでいる。保護層22のうち一方は、半径方向で内部にある空洞の方を向き、保護層22のうち他方は半径方向で外側を向いている。
【0042】
部材20は、例えば、特に燃料電池システム70で使用される水素輸送管路として使用可能である。このとき、燃料電池システム70に必要とされる水素が、内側の保護層22に沿って部材内20を内部にある空洞を通って流れる。
【0043】
ここで言及されている、燃料電池システム70内における管路としての部材20の使用では、外側にある保護層22は重要な機能を持たない。外側にある保護層22は、単に部材20に残っていてよい。外側にある保護層22はしかし、旋盤加工またはフライス加工を用いて部材20から完全にまたは部分的に除去されてもよい。
【0044】
図3は、燃料電池システム70の概略図を示す。燃料電池システム70は、ここには明示されていない複数の燃料電池を有する燃料電池ユニット75を含む。燃料電池ユニット75は、アノード73およびカソード74を有する。個々の燃料電池はそれぞれ負極を有し、それらが一緒になって燃料電池ユニット75のアノード73を形成する。個々の燃料電池はそれぞれ正極を有し、それらが一緒になって燃料電池ユニット75のカソード74を形成する。
【0045】
燃料電池ユニット75は、アノード73と電気結合している負端子71を有する。同様に、燃料電池ユニット75は、カソード74と電気結合している正端子72を有する。燃料電池ユニット75の負端子71と正端子72の間に、燃料電池システム70の稼働中、電圧が加わる。燃料電池ユニット75の負端子71と正端子72は、例えば自動車、特に電気自動車の、ここには図示されていない電力供給システムと結合している。
【0046】
燃料電池システム70は、燃料、特に水素をアノード73へ供給する第1の供給管56を含む。そのため、第1の供給管56は圧力ガス貯蔵装置36と結合しており、そこでは水素が例えば350バールから700バールまでの圧力で貯蔵されている。燃料電池システム70の稼働中、水素は圧力ガス貯蔵装置36から燃料電池ユニット75のアノード73へ第1の流れ方向51に流れる。燃料電池システム70は、燃料電池ユニット75のアノード73から過剰な燃料、特に水素を排出する第1の排出管57も含む。
【0047】
水素を供給する第1の供給管56および水素を排出する第1の排出管57は、それぞれ、
図2に示されたような1つの部材20または互いに連結した複数の部材20から形成されている。
【0048】
燃料電池システム70は、さらに、酸化剤、特に酸素を含む空気をカソード74に供給する第2の供給管66を含む。そのため、第2の供給管66は、例えばここには図示されていない圧縮機と結合している。圧縮機は、圧縮された空気を燃料電池ユニット75のカソード74へ第2の流れ方向61に送る。燃料電池システム70は、カソード74から過剰な酸化剤を排出する第2の排出管67も含む。第2の排出管67は、電気化学反応により燃料電池ユニット75の燃料電池内で生じる生産水を排出するためにも使用される。
【0049】
本発明は、ここに記載された実施例およびそこで強調された態様に限定されるものではない。むしろ、請求項により記載された範囲内で多くの変形が可能であり、それらは当業者の行為の範囲である。
【符号の説明】
【0050】
20 部材
22 保護層
36 圧力ガス貯蔵装置
51 第1の流れ方向
56 第1の供給管
57 第1の排出管
61 第2の流れ方向
66 第2の供給管
67 第2の排出管
70 燃料電池システム
71 負端子
72 正端子
73 アノード
74 カソード
75 燃料電池ユニット