(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】アークフラッシュ保護材料
(51)【国際特許分類】
B32B 5/02 20060101AFI20230619BHJP
A41D 13/00 20060101ALI20230619BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20230619BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20230619BHJP
B32B 37/12 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
B32B5/02 Z
A41D13/00 102
B32B7/027
B32B27/12
B32B37/12
(21)【出願番号】P 2021513191
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(86)【国際出願番号】 IB2019000993
(87)【国際公開番号】W WO2020115543
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-05-07
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391018178
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエーツ,ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(72)【発明者】
【氏名】ベルント ツィシュカ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン リュディガー
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-505501(JP,A)
【文献】特開2008-138336(JP,A)
【文献】特開2005-213671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 5/02
A41D 13/00
B32B 7/027
B32B 27/12
B32B 37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱を提供する積層構造体であって、
外側表面および内側表面を有する外側テキスタイル層と;
熱反応性材料と;
外側表面と内側表面を有する中間層であって、前記熱反応性材料が前記外側テキスタイル層の前記内側表面と前記中間層の前記外側表面の間に挟まれるような形で、前記熱反応性材料上において前記外側テキスタイル層の反対側に配置されており、ここで前記熱反応性材料は、前記中間層を前記外側テキスタイル層に対して固着している、中間層と;
難燃性接着材料と;
外側表面と内側表面を有する内側層であって、前記難燃性接着材料が前記中間層の前記内側表面と前記内側層の前記外側表面の間に挟まれるような形で、前記難燃性接着材料上で前記中間層の反対側に配置されており、ここで前記難燃性接着材料は、前記内側層を前記中間層に対して固着している、内側層と;
を含み、
前記難燃性接着材料が、複数のポケットを形成するように一定のパターンで配置されており、前記ポケットの各々が、(a)前記中間層、(b)前記内側層および(c)前記難燃性接着材料の一部分によって画定されている、積層構造体。
【請求項2】
前記外側テキスタイル層が、1平方メートルあたり30グラム(gsm)~250gsmの範囲内の重量を有する、請求項1に記載の積層構造体。
【請求項3】
前記内側層が、20gsm~250gsmの範囲内の重量を有する、請求項1または2に記載の積層構造体。
【請求項4】
前記外側テキスタイル層が、前記外側テキスタイル層の総重量に基づいて50重量パーセントから100重量パーセントの範囲内の一定量の溶融性繊維を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層構造体。
【請求項5】
前記外側テキスタイル層が、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、またはそれらの組合せを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層構造体。
【請求項6】
前記積層構造体が、熱収縮試験にしたがって試験された場合に10%未満だけ収縮する、請求項1~5のいずれか1項に記載の積層構造体。
【請求項7】
前記内側層が、難燃性テキスタイルまたは難燃性および溶融性の両方を有する繊維を含むテキスタイルを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の積層構造体。
【請求項8】
前記難燃性
テキスタイルが、p-アラミド、m-アラミド、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリフェニルスルフィド、ポリイミド、メラミン、フルオロポリマ、ポリテトラフルオロエチレン、モダクリリック、セルロース、FRビスコース、ポリ酢酸ビニル、鉱物、タンパク質繊維、またはそれらの組合せを含む、請求項7に記載の積層構造体。
【請求項9】
前記
積層構造体の総重量が、350gsm以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の積層構造体。
【請求項10】
前記中間層が、延伸ポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の積層構造体。
【請求項11】
前記中間層が、10gsm~50gsmの範囲内の重量を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の積層構造体。
【請求項12】
前記中間層が、(a)延伸ポリテトラフルオロエチレンの第1の層および(b)延伸ポリテトラフルオロエチレンまたはポリウレタン被覆延伸ポリテトラフルオロエチレンの第2の層を含む2層フィルムである、請求項1~11のいずれか1項に記載の積層構造体。
【請求項13】
前記熱反応性材料が、膨張性黒鉛およびポリマ樹脂の混合物を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の積層構造体。
【請求項14】
前記難燃性接着材料が前記内側層の外側表面の75%未満を覆う、請求項1~13のいずれか1項に記載の積層構造体。
【請求項15】
前記パターンが、第1の方向に配向された第1の一連の平行な線と第2の方向に配向された第2の一連の平行な線とを含む格子パターンを含み、前記第1の方向および前記第2の方向が、30度~90度の範囲内にある角度で互いにオフセットされている、請求項1~14のいずれか1項に記載の積層構造体。
【請求項16】
前記パターンが一連の平行な正弦線を含み、前記正弦線は、そのうちの第1の正弦線のピークが隣接する正弦線のトラフと整列するような形で互いにオフセットされている、請求項1~15のいずれか1項に記載の積層構造体。
【請求項17】
前記中間層が、熱的に安定したバリヤ層である、請求項1~16のいずれか1項に記載の積層構造体。
【請求項18】
前記難燃性接着材料が、複数のポケットを形成するように一定のパターンで配置されており、前記ポケットの各々が、(a)前記中間層、(b)前記内側層および(c)前記難燃性接着材料の一部分によって画定されており、前記パターンが前記内側層の75%未満を覆っている、請求項1~17のいずれか1項に記載の積層構造体。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の積層構造体を含み、着用者が着用したときに、前記内側層が着用者に対面するような形で構成されている、衣服。
【請求項20】
外側テキスタイル層および中間層を提供し、前記外側テキスタイル層上および/または前記中間層上に熱反応性材料の層を適用すること;
前記熱反応性材料が前記中間層を前記外側テキスタイル層に対して固着するようにして、前記外側テキスタイル層の前記内側表面と前記中間層の前記外側表面との間に前記熱反応性層を挟むこと;
前記中間層の内側および/または内側層の外側表面に対し一定のパターンで難燃性接着材料を適用すること;および
前記難燃性接着材料が前記内側層を前記中間層に固着し、複数のポケットが形成されるようにして、前記中間層の前記内側表面と前記内側層の前記外側表面の間に前記難燃性接着材料を挟むこと、ここで、前記ポケットの各々は、(a)前記中間層、(b)前記内側層および(c)前記難燃性接着材料の一部分によって画定されている;
を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の積層構造体の製造方法。
【請求項21】
前記中間層と内側層の間に圧力を適用して、前記難燃性接着材料が前記中間層の前記内側と前記内側層の外側を固着するようにすること;および/または前記外側テキスタイル層と前記中間層の間に圧力を適用して、前記熱反応性材料が前記外側テキスタイル層の前記内側と前記中間層の前記外側を固着するようにすることを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記外側テキスタイル層、前記熱反応性材料および前記中間層を含む構造に対して圧力を適用して、前記熱反応性材料が前記外側テキスタイル層の前記内側と前記中間層の前記外側を固着するようにすることを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記積層構造体に対し圧力を適用して、前記難燃性接着材料が前記中間層の前記内側と前記内側層の外側を固着するようにすることを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記外側テキスタイル層上に耐久性撥水コーティングを適用することを含む、請求項20~23のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護テキスタイルに関する。より詳細には、本発明は、電気アークフラッシュおよび類似のタイプの印加エネルギに対する保護を提供する軽量テキスタイルに関する。
【背景技術】
【0002】
傷害を削減する目的で、ユーティリティの修理など電気アークフラッシュへの短時間曝露が起きる可能性のある危険な環境内で作業する職業人のための保護衣が望まれる。これらの条件に曝露される作業員向けの保護服は、危険を改善するためではなくむしろ装用者が危険から迅速かつ安全に避難できるようにするための幾分か増強された保護を提供すべきである。
【0003】
従来、耐アーク性保護衣服は、防火および熱防御を提供する。このような衣服は、例えばアラミド、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリ-P-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール(PBO)、モダクリル配合物、ポリアミン、炭素、ポリアクリロニトリル(PAN)、およびそれらの配合物、並びに組合せでできた不燃性非溶融性ファブリックを含む集合体の最外側層を伴って製造される。これらの繊維は、本質的に難燃性であり得るが、いくつかの制約条件を有し得る。具体的には、所望の保護レベルを達成するために、比較的重く嵩高いファブリックが求められる。典型的には、これらのファブリックは、400グラム/メートル2を超える目付重量を有し得る。これらのファブリックを形成するために使用される繊維は非常に高価で、染めおよび印刷がむずかしい場合があり、かつ適切な耐摩耗性を有していない場合がある。さらに、これらの繊維は、ナイロンまたはポリエステル系のファブリックに比べてより多くの水を取込み、不充分な触覚快適性しか提供しない。アークフラッシュへの偶発的曝露の可能性がある環境における最適なユーザ性能のためには、熱傷保護が増強された軽量で通気性のある耐水性衣服が望まれる。防水性、耐アークフラッシュ性の保護衣のコストは、危険への曝露の頻度が高い利用分野にとっての重要な考慮事項であり続けており、このため、消防活動団体において使用されているものなどの本質的に耐燃性がある典型的なテキスタイルの使用は除外されている。
【発明の概要】
【0004】
一態様においては、断熱を提供する積層構造体において、
外側表面および内側表面を有する外側テキスタイル層と;
熱反応性材料と;
外側表面と内側表面を有する中間層であって、熱反応性材料が、外側テキスタイル層の内側表面と中間層の外側表面の間に挟まれるような形で、熱反応性材料上において外側テキスタイル層の反対側に配置されており、ここで熱反応性材料は、中間層を外側テキスタイル層に対して固着している、中間層と;
難燃性接着材料と;
外側表面と内側表面を有する内側層であって、難燃性接着材料が中間層の内側表面と内側層の外側表面の間に挟まれるような形で難燃性接着材料上において中間層の反対側に配置されており、ここで難燃性接着材料は、内側層を中間層に対して固着している、内側層と;
を含み、
難燃性接着材料が、複数のポケットを形成するように一定のパターンで配置されており、ポケットの各々が、(a)中間層、(b)内側層および(c)難燃性接着材料の一部分によって画定されている、積層構造体が提供されている。
【0005】
外側テキスタイル層は、ニット、織物または不織布であり得る。
【0006】
外側テキスタイル層は、溶融性であり得る。外側テキスタイル層は、中間層よりも低い融点を有し得る。外側テキスタイル層は、内側層よりも低い融点を有し得る。本明細書中で使用される「溶融性」材料とは、以下に記載の溶融および熱的安定性試験にしたがって試験された場合に溶融性を有する材料である。
【0007】
外側テキスタイル層は、可燃性または不燃性であり得る。本明細書中で使用される「可燃性」材料とは、可燃性であるか不燃性であるかを決定するために以下に記載のテキスタイル用垂直火炎試験にしたがって試験した場合に可燃性を有する材料である。
【0008】
外側テキスタイル層は、ホスフィネート変性ポリエステル(例えばドイツHattersheimのTrevira GmbHからTREVIRA(登録商標)CSの商品名で、および米国ニュージャージ州SecaucusのRose Brand社からAVORA(登録商標)FRの商品名で販売されている材料)などの溶融性で不燃性のテキスタイルであり得る。
【0009】
外側テキスタイル層は、比較的少量の難燃性繊維、非溶融性繊維および/または静電気防止繊維を含むことができる。存在する場合、難燃性繊維、非溶融性繊維および/または静電気防止繊維は、以下に記載の溶融および熱的安定性試験にしたがって試験された場合に外側テキスタイルがなおも溶融性テキスタイルであるような量で存在する。
【0010】
外側テキスタイル層は、溶融性繊維の重量で50%~100%の範囲内の一定量の溶融性繊維を含み得る。外側テキスタイル層は、75~100重量%の範囲内の一定量の溶融性繊維を含み得る。外側テキスタイル層は、90~100重量%の範囲内の一定量の溶融性繊維を含み得る。外側テキスタイル層は、95~99重量%の範囲内の一定量の溶融性繊維を含み得る。繊維の残余分は、静電気防止繊維、溶融性の弾性繊維、非溶融性の弾性繊維またはそれらの組合せであってよい。例えば、外側テキスタイル層が95~99重量%の範囲内の一定量の溶融性繊維を含む場合、静電気防止および/または弾性の繊維は、1~5重量%の範囲内で存在し得る。全ての重量百分率は、外側テキスタイル層の総重量に基づくものである。
【0011】
耐アーク性衣服の試験を支配する規格は、アーク試験(ASTM 1959)の認定目的のためでさえファブリックまたは積層体が耐炎性を有することを求めていることから、溶融性テキスタイルは典型的には耐アーク性積層体中で使用されない。溶融性である外側テキスタイル層を含む積層構造体を使用してアークフラッシュ事故に対する保護を提供できるというのは意外である。
【0012】
外側テキスタイル層は、1平方メートルあたり約250グラム(「gsm」)以下の重量を有し得る。外側テキスタイル層は、30gsm~250gsmの重量、または40gsm~200gsmの重量、または40gsm~175gsmの重量、または50gsm~175gsmの重量または約50gsmの重量、または50gsm~172gsmの重量、または約76gsmの重量、または50gsm~170gsmの重量、または約105gsmの重量、または100gsm~180gsmの重量、または約172gsmの重量を有し得る。
【0013】
外側テキスタイル層は、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、またはそれらの組合せを含み得る。好適なポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはそれらの組合せが含まれ得る。好適なポリアミドとしては、例えば、ナイロン6、ナイロン、6,6またはそれらの組合せが含まれ得る。好適なポリオレフィンとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレンまたはそれらの組合せが含まれ得る。
【0014】
熱反応性材料は、外側テキスタイル層と中間層の間に配置されてよい。
【0015】
熱反応性材料は、連続層として適用され得る。熱反応性材料は、不連続層として適用されてもよい。熱反応性材料は、100%未満の表面被覆率を有する熱反応性材料の層を形成するために不連続に適用され得る。熱反応性材料は、一定の不連続形状パターンで適用され得る。熱反応性材料は、ドットパターン、格子パターン、線パターン、波状パターン、若しくはその他の任意のパターン、またはそれらの組合せで適用され得る。
【0016】
熱反応性材料は、膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料はポリマ樹脂を含み得る。熱反応性材料は、膨張性黒鉛およびポリマ樹脂の混合物を含み得る。
【0017】
膨張性黒鉛は、約240℃まで加熱されたとき、本明細書中に記載のTMA膨張試験において少なくとも約400ミクロンだけ膨張し得る。膨張性黒鉛は、約240℃まで加熱されたとき、本明細書中に記載のTMA膨張試験において少なくとも約500ミクロンだけ膨張し得る。膨張性黒鉛は、約240℃まで加熱されたとき、本明細書中に記載のTMA膨張試験において少なくとも約600ミクロンだけ膨張し得る。膨張性黒鉛は、約240℃まで加熱されたとき、本明細書中に記載のTMA膨張試験において少なくとも約700ミクロンだけ膨張し得る。膨張性黒鉛は、約240℃まで加熱されたとき、本明細書中に記載のTMA膨張試験において少なくとも約800ミクロンだけ膨張し得る。膨張性黒鉛は、約280℃まで加熱されたとき、本明細書中に記載のTMA膨張試験において少なくとも約900ミクロンだけ膨張し得る。
【0018】
膨張性黒鉛は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合、300℃で、少なくとも1グラムあたり約4立法センチメートル(cc/g)、または少なくとも1グラムあたり約5立法センチメートル(cc/g)、または少なくとも1グラムあたり約6立法センチメートル(cc/g)、または少なくとも1グラムあたり約7立法センチメートル(cc/g)、または少なくとも1グラムあたり約8立法センチメートル(cc/g)、または少なくとも1グラムあたり約9立法センチメートル(cc/g)、または少なくとも1グラムあたり約10立法センチメートル(cc/g)、または少なくとも1グラムあたり約11立法センチメートル(cc/g)、または少なくとも1グラムあたり約12立法センチメートル(cc/g)、または少なくとも1グラムあたり約19立法センチメートル(cc/g)、または少なくとも1グラムあたり約20立法センチメートル(cc/g)、または少なくとも1グラムあたり約21立法センチメートル(cc/g)、または少なくとも1グラムあたり約22立法センチメートル(cc/g)、または少なくとも1グラムあたり約23立法センチメートル(cc/g)、または少なくとも1グラムあたり約24立法センチメートル(cc/g)、または少なくとも約25グラムあたり立法センチメートル(cc/g)の平均膨張を有し得る。例えば、膨張性黒鉛は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合、300℃で、約19cc/gの平均膨張を有し得る。
【0019】
膨張性黒鉛は、約50J/g以上、または約75J/g以上、または約100J/g以上、または約125J/g以上、または約150J/g以上、または約175J/g以上、または約200J/g以上、または約225J/g以上、または約250J/g以上の吸熱を有し得る。膨張性黒鉛材料の吸熱値を決定するためには、示差走査熱量測定法(DSC)を使用することができる。
【0020】
熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約4立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約100ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約6立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約100ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約8立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約100ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約9立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約100ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約10立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約100ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約12立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約100ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約14立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約100ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも約16グラムあたり立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約100ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも約18グラムあたり立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約100ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約19立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約100ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約20立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約100ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。
【0021】
熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約4立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約150ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約6立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約150ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約8立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約150ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約9立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約150ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約10立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約150ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約12立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約150ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約14立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約150ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約16立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約150ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約18立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約150ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約19立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約150ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約20立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約150ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。
【0022】
熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約4立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約200ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約6立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約200ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約8立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約200ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約9立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約200ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約10立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約200ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約12立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約200ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約14立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約200ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約16立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約200ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約18立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約200ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約19立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約200ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約20立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約200ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。
【0023】
熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約4立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約250ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約6立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約250ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約8立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約250ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約9立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約250ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約10立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約250ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約12立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約250ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約14立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約250ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約16立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約250ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約18立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約250ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約19立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約250ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。熱反応性材料は、本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験された場合に300℃で少なくとも1グラムあたり約20立法センチメートル(cc/g)の平均膨張、そして本明細書中に記載のDSC吸熱試験法にしたがって試験された場合少なくとも1グラムあたり約250ジュール(J/g)の吸熱を有する膨張性黒鉛を含み得る。
【0024】
膨張性黒鉛の粒径は、選択された適用方法で熱反応性材料を適用できるように選択され得る。例えば、熱反応性材料がグラビア印刷技術によって適用される場合には、膨張性黒鉛の粒径は、グラビアセルに嵌合するのに充分小さいものでなければならない。
【0025】
熱反応性材料は、ポリマ樹脂を含み得る。ポリマ樹脂は、約280℃未満の溶融温度または軟化温度を有し得る。ポリマ樹脂は、約300℃以下での熱曝露の時点で膨張性黒鉛が実質的に膨張できるようにするのに充分な流動性または変形能を有し得る。ポリマ樹脂は、約280℃以下での熱曝露の時点で膨張性黒鉛が実質的に膨張できるようにするのに充分な流動性または変形能を有し得る。ポリマ樹脂は、溶融性外側テキスタイルの熱分解温度より低い温度で膨張性黒鉛が充分に膨張できるようにすることができる。ポリマ樹脂の伸長粘度は、膨張性黒鉛の膨張を可能にするのに充分なほど低くかつ、ポリマ樹脂と膨張性黒鉛の混合物の膨張後における熱反応性材料の構造無欠性を維持するのに充分なほど高いものであり得る。これらの因子は、ポリマの貯蔵弾性率およびタンデルタによって定量化可能である。
【0026】
ポリマ樹脂は、少なくとも約103ダイン/cm2の貯蔵弾性率を有し得る。ポリマ樹脂は、103~108ダイン/cm2の貯蔵弾性率を有し得る。ポリマ樹脂は、103~107ダイン/cm2の貯蔵弾性率を有し得る。ポリマ樹脂は、103~106ダイン/cm2の貯蔵弾性率を有し得る。ポリマ樹脂は、103~105ダイン/cm2の貯蔵弾性率を有し得る。ポリマ樹脂は、103~104ダイン/cm2の貯蔵弾性率を有し得る。貯蔵弾性率は、ポリマの弾性挙動の尺度であり、動的機械分析(DMA)を用いて測定可能である。ポリマ樹脂は、200℃で約0.1~約10のタンデルタを有し得る。タンデルタは、損失弾性率対貯蔵弾性率の比であり、同じくDMA技術を用いて測定可能である。
【0027】
ポリマ樹脂は、膨張性黒鉛が膨張できるようにするのに好適な弾性率および伸びを約300℃前後またはそれ未満で有し得る。ポリマ樹脂は、エラストマ系ポリマ樹脂であってよい。ポリマ樹脂は架橋性ポリマ樹脂、例えば架橋性ポリウレタンであり得る。ポリマ樹脂は、熱可塑性ポリマ樹脂であり得る。熱可塑性ポリマ樹脂は、50℃~250℃の溶融温度を有し得る。
【0028】
ポリマ樹脂は、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアミド、アクリル、ビニルポリマ、ポリオレフィン、シリコーン、エポキシ、またはそれらの組合せを非限定的に含むポリマである。
【0029】
熱反応性材料および/またはポリマ樹脂は難燃性材料を含み得る。難燃性材料は、メラミン、リン、金属水酸化物、例えばアルミナ三水和物(ATH)、ホウ酸塩またはそれらの組合せを含み得る。難燃性材料は、臭素化化合物、塩素化化合物、酸化アンチモン、有機リン系化合物、ホウ酸亜鉛、ポリリン酸アンモニウム、シアヌル酸メラミン、ポリリン酸メラミン、モリブデン化合物、水酸化マグネシウム、リン酸トリフェニル、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールA(ジフェニルホスフェート)、リン酸トリクレシル、オルガノホスフィネート、ホスホン酸エステル、またはそれらの組合せを含み得る。
【0030】
存在する場合、難燃性材料は、ポリマ樹脂の総重量に基づいて1~50重量パーセントの割合で使用され得る。
【0031】
熱反応性材料は、電気アーク由来の熱に対する曝露の時点で、膨張性黒鉛を含む複数の巻きひげを形成し得る。熱反応性材料の総表面積は、膨張前の同じ混合物に比べて著しく増大し得る。例えば、熱反応性材料の表面積は、膨張後、少なくとも2倍、または少なくとも3倍、または少なくとも4倍、または少なくとも5倍、または少なくとも6倍、または少なくとも7倍、または少なくとも8倍、または少なくとも9倍、または少なくとも11倍、または少なくとも12倍、または少なくとも13倍、または少なくとも14倍、または少なくとも15倍増大され得る。
【0032】
巻きひげは、膨張した熱反応性材料から外向きに延在し得る。熱反応性材料が不連続形態で層上に位置している場合、巻きひげは、熱反応性材料の不連続領域間の開放部域を少なくとも部分的に充填するように延在し得る。
【0033】
巻きひげは引き伸ばされ得る。巻きひげは、少なくとも5対1の長さ対幅の縦横比を有し得る。
【0034】
ポリマ樹脂-膨張性黒鉛混合物を含む熱反応性材料が不連続形態パターンで適用される実施形態において、熱反応性材料は膨張して巻きひげを形成することができ、これらの巻きひげは膨張後ゆるく詰められ、巻きひげの間の間隙ならびに熱反応性材料のパターンの間の空間を創出する。理論により束縛されることは望まないものの、電気アーク由来の熱に曝露された時点で、溶融性外側テキスタイルは溶融し、概して、熱反応性材料の不連続形態の間の開放部域から離れるように移動する。
【0035】
熱反応性材料は、外側テキスタイル層と中間層の間で接着材料として作用し得る。
【0036】
熱反応性材料は、膨張性黒鉛の実質的な膨張をひき起こすことなく、ポリマ樹脂と延伸性黒鉛の緊密な配合物を提供する方法によって調製され得る。ポリマ樹脂および膨張性黒鉛は、表面界面上のいずれかの材料に対して連続または不連続パターンで適用され得る混合物を形成するように配合され得る。ポリマ樹脂と膨張性黒鉛の混合物は、任意の好適な混合方法により調製可能である。好適な混合方法には、非限定的に、パドルミキサ、配合および低せん断混合技術が含まれる。
【0037】
ポリマ樹脂と膨張性黒鉛の混合物は、ポリマ樹脂の重合に先立ち膨張性黒鉛とモノマまたはプレポリマを混合することによって調製され得る。ポリマ樹脂と膨張性黒鉛の混合物は、膨張性黒鉛を溶解したポリマと配合することによって調製され得、ここで溶剤は混合後に除去される。ポリマ樹脂と膨張性黒鉛の混合物は、黒鉛の膨張温度より低くポリマの溶融温度より高い温度で膨張性黒鉛を熱溶融性ポリマと混合することによって調製され得る。理論により束縛されることは望まないものの、これらの方法により調製された混合物は、ポリマ樹脂と膨張性黒鉛粒子の緊密な配合物を含み得る。
【0038】
ポリマ樹脂と膨張性黒鉛粒子または膨張性黒鉛の凝集体の緊密な配合物を提供する方法において、膨張性黒鉛は、黒鉛の膨張に先立ってポリマ樹脂によりコーティングまたはカプセル封入される。ポリマ樹脂と膨張性黒鉛の緊密な配合物は、熱反応性材料を内側テキスタイル層または中間層に対して適用する前に調製され得る。
【0039】
熱反応性材料は、熱反応性材料の総重量に基づいて約50重量%以下、または約40重量%以下、または約30重量%以下、または約20重量%以下、または約10重量%以下、または約5重量%以下、または約1重量%以上の膨張性黒鉛を含むことができ、残りは実質的にポリマ樹脂を含む。概して、熱反応性材料の総重量に基づいて約5重量%~約50重量%の膨張性黒鉛が望ましい。しかしながら、さらに低い量の膨張性黒鉛でも、所望の難燃性性能を達成することが可能である。いくつかの実施形態においては、1%といった低い添加量が有用であり得る。結果として得られる積層構造体の構成および所望される特性に応じて、他の実施形態のためには、他の膨張性黒鉛レベルも同様に好適であり得る。顔料、充填材、抗菌剤、加工助剤および安定剤などの他の添加物も同様に、熱反応性材料に対し添加可能である。
【0040】
熱反応性材料は、外側テキスタイル層の内側表面または中間層の外側表面の一方または両方に対して適用され得る。
【0041】
熱反応性材料は、連続的に適用され得る。熱反応性材料は、不連続的に適用され得る。例えば、通気性および/または風合いの増強が所望される場合、熱反応性材料を不連続に適用して、100%未満の表面被覆率を有する熱反応性材料の層を形成することができる。熱反応性材料の不連続な適用は、100%未満の表面被覆率を提供し得る。
【0042】
熱反応性材料は、一定のパターンで不連続に適用され得る。熱反応性材料は、内側テキスタイル層または中間層に適用されて、熱反応性材料を含む多数の離散的な膨張前構造体の形で熱反応性材料層を形成することができる。膨張の時点で、離散的な膨張前構造体は、構造的無欠性を有する多数の離散的な膨張済み構造体を形成することができる。構造的無欠性を有する離散的な膨張済み構造体は、本明細書中に記載の増強された特性を達成するのに充分な保護を積層構造体に対して提供し得る。構造的無欠性とは、膨張後の熱反応性材料が、実質的に崩壊または剥離することなく屈曲または曲げに耐え、本明細書中に記載の厚み変化試験にしたがって測定される場合の厚み測定時点での圧縮に耐える、ということを意味している。
【0043】
熱反応性材料は、熱反応性材料を含む多数の離散的な膨張前構造体を含む一定のパターンで不連続的に適用され得る。パターンは、ドット、円、偏菱形、卵形、星形、矩形、正方形、三角形、五角形、六角形、八角形、線形、波形などおよびそれらの組合せなどの形状を含み得る。
【0044】
熱反応性材料の不連続パターンの隣接する部域間の平均距離は、衝突する火炎のサイズより小さいものであり得る。不連続パターンの隣接する部域間の平均距離は、約10ミリメートル(mm)以下または約9mm以下、または約8mm以下、または約7mm以下、または約6mm以下、または約5mm以下、または約4mm以下、または約3.5mm以下、または約3mm以下、または約2.5mm以下または約2mm以下、または約1.5mm以下、または約1mm以下、または約0.5mm以下、または約0.4mm以下、または約0.3mm以下、または約0.2mm以下であり得る。例えば、内側テキスタイル層または中間層上に熱反応性材料で印刷されたドットパターンにおいては、熱反応性材料の2つの隣接するドットの縁部間の離隔距離が測定されるものと思われる。不連続パターンの隣接する部域間の平均距離は、利用分野に応じて、約40ミクロン以上、または約50ミクロン以上、または約100ミクロン以上、または約200ミクロン以上であり得る。本明細書中に記載のいくつかのパターンにおいては、約200ミクロン以上および約500ミクロン以下であるものと測定された平均ドット離隔距離が有用である。
【0045】
例えば、印刷されたパターンの付着量を説明するための1つの方法として、表面被覆率と組合せてピッチを使用することができる。概して、ピッチは、印刷されたパターンのドット、線または格子線などの隣接する形態間の平均中心間距離として定義される。平均は、例えば、不規則的に離隔された印刷パターンを説明するために使用される。熱反応性材料は、等価の重量の熱反応性材料の付着量を有する熱反応性混合物の連続的適用に比べて優れた難燃性性能を提供するピッチおよび表面被覆率を伴うパターンで不連続的に適用され得る。ピッチは、熱反応性材料の隣接する形状間の中心間距離の平均として定義され得る。例えば、ピッチは、熱反応性材料の隣接するドットまたは格子線の間の中心間距離の平均として定義され得る。ピッチは、約500ミクロン以上、約600ミクロン以上、約700ミクロン以上、約800ミクロン以上、約900ミクロン以上、約1000ミクロン以上、約1200ミクロン以上、約1500ミクロン以上、約1700ミクロン以上、約1800ミクロン以上、約2000ミクロン以上、約3000ミクロン以上、約4000ミクロン以上、または約5000ミクロン以上、または約6000ミクロン以上、またはそれらの間の任意の値であり得る。熱反応性材料の好ましいパターンは、約500ミクロン~約6000ミクロンのピッチを有し得る。
【0046】
風合い、通気性および/またはテキスタイル重量などの特性が重要である実施形態においては、約25%以上で約90%以下、または約80%未満、または約70%未満、または約60%未満、または約50%未満、または約40%未満または約30%未満の表面被覆率が使用され得る。電気アークに対する曝露時点で、外側テキスタイル層は、燃焼するのに充分なエネルギに曝露され得る。これらの実施形態において、より高い難燃性特性が必要とされる場合、内側テキスタイルまたは中間層の表面上に約30%~約100%という熱反応性材料の表面被覆率を有することが所望される可能性がある。より高い難燃性特性が必要とされる場合、約500ミクロン~約6000ミクロンのピッチで熱反応性材料の表面被覆率を有することが所望され得る。例えば、熱反応性材料の表面被覆率は、約500ミクロン~約6000ミクロンのピッチで内側テキスタイルまたは中間層の表面上にある熱反応性材料の約30%~約80%であり得る。
【0047】
熱反応性材料を外側テキスタイル層または中間層上に不連続に被着して100%未満の表面の被覆率を達成する方法には、前記層上に印刷することによって熱反応性材料を適用することが含まれ得る。外側テキスタイル層または中間層上への熱反応性材料の被着は、グラビア印刷、スクリーン印刷、スプレーコーティングまたは散乱コーティング、ナイフコーティングおよび、電気アーク由来の熱に曝露された時点で所望の特性が達成されるような形で熱反応性材料を適用できるようにする任意の同様の方法といった任意の好適な方法によって達成され得る。
【0048】
熱反応性材料は、熱反応性材料の約10gsm~約100gsmの追加重量を達成するために、外側テキスタイル層または中間層上に適用され得る。熱反応性材料は、熱反応性材料の約100gsm以下、または約75gsm以下、または約50gsm以下または約25gsm以下の追加重量を達成するために適用され得る。
【0049】
本明細書中に記載の積層構造体を製造する方法は、熱反応性材料が中間層と外側テキスタイル層の間の優れた固着を提供するような形で、外側テキスタイル層または中間層上に熱反応性材料の層を適用することを含み得る。熱反応性材料は、接着剤として機能し得る。例えば、熱反応性材料は、外側テキスタイル層の内側と中間層の外側を固着して、外側テキスタイル層と中間層の間に熱反応性材料の層を形成することができる。積層構造体の形成中、熱反応性材料は、外側テキスタイルまたは中間層に対して連続的または不連続的に適用され得る。このとき、外側テキスタイル層と中間層は互いに接着され得る。外側テキスタイル層および中間層はこのとき、圧力および/または熱によって、例えば2本のローラまたは加熱されたローラのニップを通って走行することによって互いに接着され得る。熱が使用される場合、温度は、熱が膨張性黒鉛の膨張を開始させることが無い程度に充分低いものでなければならない。圧力(例えばニップ由来)は、少なくとも熱反応性材料のポリマ樹脂を、少なくとも部分的に表面細孔、表面間隙または一方または両方の層の繊維間の間隙または空間の内部に配置させることができる。少なくとも熱反応性材料のポリマ樹脂は、外側テキスタイル層の繊維および/またはフィラメント間の間隙または空間に浸入し得る。少なくとも熱反応性材料のポリマ樹脂は、中間層内に浸入し得る。少なくとも熱反応性材料のポリマ樹脂は、外側テキスタイル材料の繊維間の間隙または空間に浸入することができ、中間層内に浸入することができる。
【0050】
中間層は、バリヤ層を含み得る。例えば、中間層は、ポリイミド、シリコーンまたはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)層を含み得る。中間層は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を含むことができる。
【0051】
中間層は2層フィルムであってよい。2層フィルムは、(a)延伸ポリテトラフルオロエチレンの第1の層と、(b)延伸ポリテトラフルオロエチレンの第2の層とを含み得る。2層フィルムは、(a)延伸ポリテトラフルオロエチレンの第1の層と(b)ポリウレタン被覆延伸ポリテトラフルオロエチレンを含むことができる。
【0052】
中間層は難燃性材料を含み得る。中間層は難燃性(FR)層であってよい。
【0053】
中間層は難燃性(FR)テキスタイル層であってよい。中間層としてテキスタイル層が使用される場合、テキスタイル層は、比較的高密度の縦糸および横糸繊維またはフィラメントを含み得る。これによって、積層構造体の重量および剛性が増大する可能性がある。
【0054】
中間層は、本明細書中に記載の柔軟性または風合い測定試験によって測定された場合に、約100以下の風合いおよび1ミリメートル(mm)以下の厚みを有するフィルムであり得る。
【0055】
フィルムは、熱安定性を有するまたは熱的に安定なフィルムなどの材料を含むことができ、ポリイミド、シリコーン、PTFE、例えば延伸PTFEなどの材料を含むことができる。材料の熱的安定性は、本明細書中に記載の溶融および熱的安定性試験を用いて査定され得る。
【0056】
中間層は、熱的安定性バリヤ層であり得る。いくつかの実施形態において、中間層は、本明細書中に記載のバリヤ熱的安定性試験によって測定される通りの熱的安定性バリヤ層である。中間層は、内側および外側テキスタイル層よりもさらに熱的に安定していてよい。熱的安定性バリヤ層は、電気アークに対する曝露中、積層構造体の外側から積層構造体の内側への熱伝達を防ぐのを補助することができる。本明細書中に記載の実施形態において中間層として使用するための熱的安定性バリヤ層は、通気度試験ISO9237(1995)にしたがって試験された場合、熱曝露後、約50リットル/メートル2/秒(l/m2/sec)の最大通気度を有する。本明細書中に記載の実施形態において中間層として使用するための熱的安定性バリヤ層は同様に、電気アークに対する曝露後の孔形成(直径5ミリメートル以上)に対する耐性も有する。他の実施形態において、中間層は、本明細書中で開示されている熱的安定性バリヤ層について通気度試験にしたがって試験された場合、熱曝露後約25l/m2/sec未満または約15l/m2/sec未満の最大通気度を有する。中間層がフィルムを含む場合、フィルムは、本明細書中に記載の溶融および熱的安定性試験方法により試験された場合に熱曝露後、約25l/m2/sec以下の最大通気度を有し得る。中間層がフィルムを含む場合、フィルムは、本明細書中に開示されている熱的安定性バリヤについて通気度試験にしたがって試験された場合、約15l/m2/sec以下の膨張性黒鉛を膨張するのに充分な電気アーク曝露後の通気度を有し得る。
【0057】
中間層は、本明細書中で開示されている熱的安定性バリヤ層について通気度試験にしたがって試験された場合、熱曝露後に約50l/m2/sec以下、または約45l/m2/sec以下、または約40l/m2/sec以下、または約35l/m2/sec以下、または約30l/m2/sec以下、または約25l/m2/sec以下、または約20l/m2/sec以下、または約15l/m2/sec以下または約10l/m2/sec以下、または約5l/m2/sec以下の最大通気度を有することができる。
【0058】
中間層は、10gsm~50gsmの範囲内、または20gsm~50gsmの範囲内、または30gsm~50gsmの範囲内、または40gsm~50gsmの範囲内、または10gsm~40gsmの範囲内、または10gsm~30gsmの範囲内、または10gsm~20gsmの範囲内、または20gsm~40gsmの範囲内、または30gsm~40gsmの範囲内、または20gsm~30gsmの範囲内、または15gsm~35gsmの範囲内、または20gsm~35gsmの範囲内、または25gsm~35gsmの範囲内、または30gsm~35gsmの範囲内、または15gsm~30gsmの範囲内、または25gsm~30gsmの範囲内、または15gsm~25gsmの範囲内、または20gsm~25gsmの範囲内、または15gsm~20gsmの範囲内、または21gsm~23gsmの範囲内、または29gsm~31gsmの範囲内、またはそれらの間の任意の値または約22gsm、または約30gsmの重量を有し得る。
【0059】
難燃性接着材料は、中間層と内側層の間に挟まれている。難燃性接着材料は難燃性添加物を含み得る。難燃性接着材料はポリマ樹脂を含むことができる。
【0060】
難燃性接着材料は、ポリマ樹脂と難燃性添加物を含み得る。難燃性接着材料は、1つ以上のポリマ樹脂と1つ以上の難燃性添加物を含み得る。難燃性接着材料は、1つ以上のポリマ樹脂および1つ以上の難燃性添加物で構成されるかまたは本質的に構成され得る。本明細書中で使用されるように、「~で本質的に構成される」とは、組成物が、列挙されたこれらの構成成分と、組成物に対し実質的に影響を及ぼし得ると思われる任意の追加の構成成分約5重量パーセント未満を含有することを意味する。
【0061】
難燃性接着材料組成物は、約4%以下、または約3%以下、または約2%以下または約1%以下、または約0.5%以下の任意の追加の構成成分を含有し得る。
【0062】
充分な量の難燃性添加物が存在することを条件として、熱反応性材料のために有用であるものとして記載されているポリマ樹脂のいずれかを、難燃性添加物のために使用することができる。好適なポリマ樹脂は、例えばポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアミド、アクリル、ビニルポリマ、ポリオレフィン、シリコーン、エポキシまたはそれらの組合せを含み得る。
【0063】
ポリマ樹脂は、熱可塑性であり得る。好適なポリマ樹脂は、約50℃~約250℃の溶融温度を有する熱可塑性物質、例えば、米国ペンシルバニア州ピッツバーグのBayer Material Science LLCによってDESMOMELT(登録商標)VP KA8702の商品名で販売されているものなどであり得る。
【0064】
ポリマ樹脂は架橋性であり得る。好適なポリマ樹脂は、例えば、米国ペンシルバニア州フィラデルフィアのRohm&HaasによりMOR-MELT(商標)R7001Eの商品名で販売されているものなどの架橋性ポリウレタンを含み得る。
【0065】
難燃性接着材料の難燃性特性は、ポリマ樹脂内に難燃性添加物を取込むことによって提供され得る。難燃性添加物としては、例えば臭素化化合物、塩素化化合物、酸化アンチモン、有機リン系化合物、ホウ酸亜鉛、ポリリン酸アンモニウム、シアヌル酸メラミン、ポリリン酸メラミン、モリブデン化合物、水酸化マグネシウム、リン酸トリフェニル、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールA(ジフェニルホスフェート)、リン酸トリクレシル、オルガノホスフィネート、ホスホン酸エステルの1つ以上またはそれらの組合せが含まれ得る。難燃性添加物は、ポリマ樹脂の総重量に基づいて、1重量%~10重量%、または1重量%~15重量%または1重量%~20重量%、または1重量%~30重量%または1重量%~35重量%、または1重量%~40重量%、または1重量%~50重量%、または10重量%~40重量%、または10重量%~40重量%、または10重量%~30重量%、または10重量%~20重量%、または10重量%~15重量%、または20重量%~50重量%、または20重量%~40重量%、または20重量%~30重量%、または20重量%~25重量%、または30重量%~50重量%、または30重量%~40重量%、または30重量%~35重量%、または40重量%~50重量%、または45重量%~50重量%、または40重量%~45重量%の割合で使用され得る。
【0066】
難燃性接着材料は、中間層と内側層を固着し得る。難燃性接着材料は不連続的に適用され得る。難燃性接着材料は不連続的に適用されて、難燃性接着材料の層を形成することができる。難燃性接着材料は、中間層および内側層の表面を横断して100%未満、または約95%以下、または90%以上、または約80%以下、または約75%以下、または約70%以下、または約65%以下、または約60%以下、または約55%以下、または約50%以下、または約45%以下、または約30%以下の表面被覆率を有するパターンで、不連続的に適用され得る。例えば、難燃性接着材料は、内側層の外側表面の75%未満を覆うことができる。
【0067】
例えば、難燃性接着材料は、各々が(a)中間層、(b)内側層および(c)難燃性接着材料の一部分によって画定されている複数のポケットを形成するように一定のパターンで配置され得、ここでこのパターンは内側層の75%未満を覆っている。
【0068】
難燃性接着材料は、一定のパターンで適用され得る。難燃性接着材料は、格子様のパターン、ドット付きパターン、波形パターン、線形パターンまたは任意の規則的または不規則的形状、例えばドット、円、正方形、矩形、偏菱形、卵形、五角形、六角形、八角形、星形、線形、波形または任意の多角形または不規則形状で、不連続的に適用され得る。
【0069】
難燃性接着材料のパターンは、複数のポケットを画定し得る。ポケットは、中間層と内側層が互いに固着されていない領域を表わし得る。具体的には、ポケットは、中間層と内側層が互いに接触できるものの互いから分離不可能である非固着部域であり得る。各々のポケットは、難燃性接着材料、中間層および内側層により形成され、それらによって境界画定または包囲され得る。難燃性接着材料は、難燃性接着材料のパターンによって画定された部域内で中間層と内側層を固着することができ、一方ポケットは、中間層と内側層が互いに固着されていない非固着領域を画定することができる。
【0070】
ポケット自体は、難燃性接着材料を含まないか、または本質的に含まなくてよい。ここで使用されているように、「~を本質的に含まない」なる言い回しは、ポケットの部域を測定した場合に、非固着領域が約5%未満、約4%未満または約3%未満、または約2%未満または約1%未満、または約0.5%未満の難燃性接着剤しか含有しないことを意味する。比較的弱接着性の組成物は、通常の使用下で中間層と内側層が分離しないように、中間層と内側層を「一時的に」接着させる。しかしながら、電気アークに対する曝露中、電気アーク由来のエネルギは、ポケット領域内の弱接着性組成物を溶融または分解させて、本明細書中に記載されているように中間層と内側層の分離およびポケットの膨張を可能にするのに充分なものであるはずである。
【0071】
パターンは、難燃性接着材料の実線として適用され得る。パターンは、難燃性接着材料の一連の緊密な離隔距離のドットまたは形状を含む線として適用され得る。例えば、難燃性接着剤は、約0.3~約2.0ミリメートル(mm)の範囲内の平均直径および約0.4~約3.0mmの範囲内の隣接するドット間の平均中心間離隔距離(ピッチ)を各々有する一連のドットまたは形状として適用され得る。パターンは、ポケットを画定する任意の規則的に反復するパターンであり得る。パターンは、矩形/正方形ポケットを形成する格子パターンであり得る。パターンは、正弦波が第1の方向に進行し、第1の方向と直交する第2の方向で互いに離隔されている一連の正弦線であり得る。一連の正弦線は、1つの正弦波のピークが、隣接する正弦波のトラフと整列するような程度まで、第1の方向に沿って互いにオフセットされ得る。正弦線のピークとトラフは接触していてよい。正弦線のピークとトラフは重複し得る。正弦線または正弦波は、固着部域またはパターンおよび非固着部域またはポケットを画定し得る。例えば、パターンは一連の正弦線を含むことができ、正弦線は、第1の正弦線のピークが隣接する正弦線のトラフと整列するような形で互いにオフセットされている。
【0072】
他の規則的に反復するパターンを使用することができる。例えば、円、矩形、五角形、六角形、多角形のパターンを使用することができる。隣接する多角形または形状は共通の(隣接する)縁部を共有し得る。隣接する多角形または形状は、互いに独立した縁部を有することができる。多角形または他の形状が互いに独立しており、隣接する縁部間に非固着領域が存在する場合には、隣接する縁部間の距離が比較的小さく、例えば約5mm以下、または約4mm以下、または約3mm以下、または約2mm以下または約1mm以下、または約0.5mm以下に保たれるように注意しなければならない。規則的に反復する多角形は各々、隣接する多角形と共通の辺を共有し得る。パターンは、比較的小さい開口部を有し得る。例えば、円形パターンは比較的小さな開口部を有することができ、このため難燃性接着剤のパターンは、「C」字形に似ている。開口部は、可能なかぎり小さく保たれなければならない。パターンは、いかなる開口部も伴わない連続パターンであり得る。いかなる開口部も伴わない連続パターンは、閉鎖形状(例えば円、正方形、矩形または他の任意の規則的または不規則的形状)の外周を画定し得る。パターンまたは形状の外周は、難燃性接着材料により画定され得る。難燃性接着材料により画定される形状またはパターンの内部は難燃性接着材料を含まなくてもよい。難燃性接着材料により画定される形状またはパターンの内部は、ポケットを画定し得る。
【0073】
ポケットは、中間層と内側層の間の非固着部域を表わす。ポケットは、最小約25ミリメートル2(mm2)から最大約22,500mm2、または約25mm2~約22,000mm2、または約30mm2~約22,000mm2、または約35mm2~約22,0000mm2、または約40mm2~約22,000mm2、または約45mm2~約22,000mm2、または約50mm2~約22,000mm2、または約75mm2~約22,000mm2、または約100mm2~約22,000mm2、または約100mm2~約20,000mm2、または約100mm2~約15,000mm2、または約100mm2~約10,000mm2、または約100mm2~約9,000mm2、または約100mm2~約8,000mm2、または約100mm2~約7,000mm2、または約100mm2~約6,000mm2、または約100mm2~約5,000mm2、または約100mm2~約4,000mm2、または約100mm2~約3,000mm2、または約100mm2~約2,000mm2、または約100mm2~約1,000mm2、または約100mm2~約900mm2、または約100mm2~約800mm2、または約100mm2~約700mm2、または約100mm2~約600mm2、または約100mm2~約500mm2、または約100mm2~約400mm2、または約100mm2~約300mm2、または約100mm2~約200mm2、または約100mm2~約150mm2の範囲内にある面積を有する。
【0074】
ポケットの面積は、積層構造体の個別のポケットの平均面積を意味する。積層構造体が、異なる形状および/またはサイズのポケットを含む場合には、ポケットの少なくとも約80%が、約25mm2~約22,500mm2の範囲内にある面積を有していなければならない。パターンが共通縁部を全くもたない形状で作られている場合、ポケット面積を計算するために、複数のポケットの複数の面積のみが使用される。隣接する縁部の間の距離が大きくなるにつれて、複数のポケットの面積はより大きくなることが求められ得る。例えば、約50mm2の面積を有する正方形のポケットの規則的反復パターンが使用される場合には、隣接する正方形のポケットの縁部間の距離は、可能なかぎり小さくなくてはならない。隣接するポケットの縁部間の距離は、2mm以下または1mm以上であり得る。
【0075】
難燃性接着材料は、接着性スクリムなどを用いて、例えばグラビア印刷、スクリーン印刷またはインクジェット印刷など、所望のパターンを生成するために使用可能である公知の積層技術を用いて適用され得る。難燃性接着材料は、各々が(a)中間層、(b)内側層および(c)難燃性接着材料の一部分によって画定されている複数のポケットを形成するように配置(または適用)され得、ここで、このパターンは、内側層の外側表面の75%未満を覆っている。難燃性接着材料は、中間層および/または内側層上に一定のパターンで適用され得る。パターンは、第1の方向に配向された第1の一連の平行線、および第2の方向に配向された第2の一連の平行線を含む格子パターンを含むことができ、第1の方向および第2の方向は、30度~90度の範囲内の角度で互いにオフセットされている。難燃性接着材料は、第1の一連の平行線およびこの第1の一連の平行線に対して約90度で配向された第2の一連の平行線を有する格子様パターンとして適用され得る。難燃性接着材料は、グラビアロールまたは他の任意の好適な被着技術を用いて適用され得る。
【0076】
内側層は、任意の公知のテキスタイル繊維またはフィラメントから生成され得る内側テキスタイル層であり得る。内側テキスタイル層は、難燃性繊維、非難燃性繊維、合成繊維、天然繊維またはそれらの組合せを含み得る。内側テキスタイル層は、織物、ニットまたは不織布であり得る。ニットは、丸編ニット、平編ニット、経編ニットまたはラッセル編ニットであり得る。
【0077】
内側テキスタイル層が難燃性テキスタイルまたは繊維を含む場合、難燃性テキスタイルは、p-アラミド、m-アラミド、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリフェニルスルフィド、ポリイミド、メラミン、フルオロポリマ、ポリテトラフルオロエチレン、モダクリル、セルロース、FRビスコース、ポリビニルアセテート、無機物、タンパク繊維またはそれらの組合せから製造されたテキスタイルを含むことができる。
【0078】
内側テキスタイル層が非難燃性テキスタイルを含む場合、非難燃性テキスタイルは、合成繊維、天然繊維または合成繊維と天然繊維の両方を含むテキスタイルを含むことができる。好適な合成繊維としては例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル、ポリウレタンまたはそれらの組合せが含まれ得る。好適な天然繊維としては、例えば、綿、羊毛、セルロース、獣毛、ジュート、大麻または他の任意の天然に発生する繊維が含まれ得る。それらの組合せも同様に使用可能である。
【0079】
いくつかの実施形態においては、小さな割合、例えば10重量%未満の静電気防止繊維またはフィラメントをテキスタイルに添加することができ、ここで重量百分率は、テキスタイルの総重量に基づいている。当該技術分野では、好適な静電気防止繊維/フィラメントが公知であり、それには例えば導電性金属、銅、ニッケル、ステンレス鋼、鋼、金、銀、チタン、炭素繊維が含まれ得る。さらなる実施形態においては、内側テキスタイル層は、低い百分率の弾性フィラメントを含むことができる。好適なフィラメントは、例えばポリウレタン、エラスティン、スパンデックス、シリコーン、ゴムまたはそれらの組合せを含み得る。
【0080】
内側層は、15gsm~450gsm、または20gsm~450gsm、または25gsm~450gsm、または15gsm~400gsm、または20gsm~400gsm、または25gsm~400gsm、または15gsm~375gsm、または20gsm~375gsm、または25gsm~375gsm、または15gsm~350gsm、または20gsm~350gsm、または25gsm~350gsm、または15gsm~325gsm、または20gsm~325gsm、または25gsm~325gsm、または15gsm~300gsm、または20gsm~300gsm、または25gsm~300gsm、または15gsm~275gsm、または20gsm~275gsm、または25gsm~275gsm、または15gsm~250gsm、または20gsm~250gsm、または25gsm~250gsm、または15gsm~225gsm、または20gsm~225gsm、または25gsm~225gsm、または15gsm~200gsm、または20gsm~200gsm、または25gsm~200gsm、または20gsm~250gsm、または30gsm~250gsm、または40gsm~250gsm、または50gsm~250gsm、または50gsm~200gsm、または50gsm~190gsm、または50gsm~180gsm、または50gsm~170gsm、または50gsm~160gsm、または50gsm~150gsm、または50gsm~140gsm、または50gsm~130gsm、または50gsm~120gsm、または50gsm~110gsm、または50gsm~100gsm、または50gsm~90gsmの範囲内の重量を有する織物、ニットまたは不織布を含み得る。例えば、内側層は、20gsm~250gsmの範囲内の重量を有し得る。
【0081】
内側層は、1~50重量パーセントの範囲内の一定量の溶融性繊維を含み得る。内側層は、1~25重量パーセントの範囲内の一定量の溶融性繊維を含み得る。内側層は、1~10重量パーセントの範囲内の一定量の溶融性繊維を含み得る。内側層は、25~50重量パーセントの範囲内の一定量の溶融性繊維を含み得る。
【0082】
内側層は、テキスタイル層であり得、ここでこのテキスタイル層は難燃性テキスタイルまたは難燃性繊維と溶融性繊維の両方を含むテキスタイルを含む。内側層は、アラミドおよび難燃性ビスコースから製造される織物であり得る。内側層は、約50%のアラミドと約50%のビスコースを含むアラミドと難燃性ビスコースの織物を含み得る。内側層は、約50gsm~約250gsmの重量を有するアラミドと難燃性ビスコースの織物を含み得る。
【0083】
内側層は、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)インタロック織物を含み得る。内側層は、約50gsm~200gsm、50gsm~200gsm、または100gsm~200gsm、または150gsm~200gsm、または50gsm~100gsm、または50gsm~150gsmの重量を有するPET編物を含み得る。内側層は、50~200gsmの重量および約5パーセント以下の静電気防止繊維を有するPET編物であり得る。内側層は、モダクリル/綿配合物(MAC/CO)編物を含むことができる。内側層は、約50gsm~200gsm、または100gsm~200gsm、または150gsm~200gsm、または50gsm~100gsm、または50gsm~150gsmの重量を有するMAC/CO編物を含み得る。内側層は、5パーセント以下の静電気防止繊維をさらに含み約100gsm~200gsmの重量を有するMAC/CO編物を含むことができる。内側層は、モダクリルニットであり得る。内側層は、約50gsm~200gsmの重量を有するモダクリルニットであり得る。内側層は、50gsm~200gsmの重量および約5パーセント以下の静電気防止繊維を有するモダクリルニットであり得る。
【0084】
積層構造体は、約500gsm以下、または約400gsm以下、または約375gsm以下、または約350gsm以下、または約325gsm以下、または約300gsm以下または約275gsm以下、または約250gsm以下、または約225gsm以下、または約200gsm以下、または約150gsm以下、または約100gsm以下、または約50gsm以下の総重量を有し得る。
【0085】
積層構造体は、0.5mm~2.5mm、0.5mm~2.0mm、0.5mm~1.5mm、0.5mm~1.0mm、0.5mm~0.7mm、または約0.6mm、または約0.7mm、または約0.8mm、または約0.9mm、または約1.0mm、または約1.2mm、または約1.4mm、または約1.6mm、または約1.8mm、または約2.0mmの範囲内の全厚みを有し得る。厚みは、ISO5084(1996)により決定可能である。
【0086】
積層構造体は、ユーザに対して「アークフラッシュ保護」とも呼ばれる電気アークに対する曝露からの保護を提供することができる。積層構造体は、パネル形態および衣服形態の両方においてEN規格、EN61482-1-1:2014および/またはEN61482-1-2:2014を満たすアークフラッシュ保護を提供することができる。積層構造体は、クラス2のアークフラッシュ保護を提供し、EN規格、EN61482-1-2:2014を満たすことができる。EN規格、EN61482-1-2:2014を満たすために、パネル形態でEN規格、EN61482-1-2;2014中に定義されているようにアークフラッシュに曝露される積層構造体は、以下の基準の1つ以上を提供し得る:透過された入射エネルギと時間の関係のプロットが、ストール曲線として知られている規格よりも低いこと;5秒以下の残炎時間;または形成されたあらゆる孔のサイズが5ミリメートル以下でなければならないこと。
【0087】
パネル形態でEN規格、EN61482-1-2:2014中に定義されているようにアークフラッシュに曝露される積層構造体を含む品物(例えば衣服)は、以下の基準のうちの1つ以上を有し得る品物を提供することができる:5秒以下の残炎時間;形成されたあらゆる孔のサイズが5ミリメートル以下でなければならない;または品物は、いかなる溶融も滴下も示してはならない;または衣服のフロントジッパーは容易に開放しなければならない。
【0088】
本明細書中に記載の積層構造体が、規格EN61482-1-1:2014および/またはEN61482-1-2:2014にしたがって適用されるものなどの電気アークに曝露される場合、積層構造体の各部分は膨張し互いに離れるように撓む可能性がある。電気アークに対する曝露の時点で、外側テキスタイル層は溶融し得、熱反応性材料は膨張し得る。熱反応性材料が膨張するにつれて、膨張する熱反応性材料は、溶融したまたは溶融している外側テキスタイル層を吸収し、それにより外側テキスタイル層が火炎を持続させるのを防ぐと同時に外側テキスタイル層が滴下するのを防ぐこともできる。電気アークに対する曝露の時点で、熱反応性材料の層は、膨張性黒鉛の存在に起因して膨張し得る。電気アークに対する曝露の時点で、中間層、内側層および難燃性接着材料により画定されたポケットは膨張して、中間層と内側層が互いに分離することになり、こうして空隙を形成し得る。
【0089】
アークフラッシュの適用時点で、積層構造体は、ポケットに重なる膨張済み領域を含み得る。膨張済み領域は、積層構造体内部に空隙を形成し得る。空隙は、改善された断熱を提供でき、本明細書中に記載のストール曲線に対する試験などの試験における積層構造体の性能を改善し得る。膨張済み領域によって提供される断熱は、同じまたは類似の材料を含むものの上述の膨張済み領域を生成するために作用する固着部域およびポケットを含むパターンが欠如している積層構造体よりも軽量の材料の層を含む一方で、積層体が規格EN61482-1-1:2014および/またはEN61482-1-2:2014に適合できるようにすることができる。
【0090】
積層構造体は、規格EN61482-1-1:2014および/またはEN61482-1-2:2014に適合し、500gsm以下の重量を有することができる。積層構造体は、規格EN61482-1-1:2014および/またはEN61482-1-2:2014に適合し、475gsm以下の重量を有することができる。積層構造体は、規格EN61482-1-1:2014および/またはEN61482-1-2:2014に適合し、450gsm以下の重量を有することができる。積層構造体は、規格EN61482-1-1:2014および/またはEN61482-1-2:2014に適合し、425gsm以下の重量を有することができる。積層構造体は、規格EN61482-1-1:2014および/またはEN61482-1-2:2014に適合し、400gsm以下の重量を有することができる。積層構造体は、規格EN61482-1-1:2014および/またはEN61482-1-2:2014に適合し、375gsm以下の重量を有することができる。積層構造体は、規格EN61482-1-1:2014および/またはEN61482-1-2:2014に適合し、350gsm以下の重量を有することができる。積層構造体は、規格EN61482-1-1:2014および/またはEN61482-1-2:2014に適合し、325gsm以下の重量を有することができる。積層構造体は、規格EN61482-1-1:2014および/またはEN61482-1-2:2014に適合し、300gsm以下の重量を有することができる。積層構造体は、規格EN61482-1-1:2014および/またはEN61482-1-2:2014に適合し、275gsm以下の重量を有することができる。積層構造体は、規格EN61482-1-1:2014および/またはEN61482-1-2:2014に適合し、265gsm以下の重量を有することができる。
【0091】
積層構造体は、電気アークに対する曝露の時点で、収縮に耐えることができる。積層構造体は、本明細書中で開示されている熱収縮試験にしたがって試験された場合に、約10%未満、または約9%未満、または約8%未満、または約7%未満、または約5%未満、または約4%未満、または約3%未満、または約2%未満、または約1%未満だけ収縮し得る。
【0092】
積層構造体は、以下に記載のMVTR(水蒸気透過率)試験にしたがって試験された場合に、約1000g/m2/day、約2000g/m2/day以上、または約3000g/m2/day以上、または約4000g/m2/day以上、または約5000g/m2/day以上、または約6000g/m2/day以上、または約7000g/m2/day以上、または約8000g/m2/day以上、または約9000g/m2/day以上、または約10000g/m2/day以上、または11000g/m2/day以上、または12000g/m2/day以上、またはそれよりも高い水蒸気透過率(「MVTR」)を有し得る。
【0093】
積層構造体は、1~20、1~19、1~18、1~17、1~16、1~15、1~14、1~13、1~12、1~11、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、1~2のRET値を有し得る。衣服は、約6、約6.5、約7、約7.5、約8、約8.5、約9、約9.5、約10、約10.5、約11、約11.5、約12、約12.5、約13、約13.5、または約14のRET値を有し得る。
【0094】
積層構造体は、本明細書中に記載のES ISO15025、方法A1を用いて行なわれた水平火炎試験用の方法にしたがって試験した場合、約50秒超、約60秒超、約70秒超、約80秒超、約90秒超、約100秒超、約110秒超、さらには120秒超の開裂時間を有し得る。
【0095】
積層構造体は、本明細書中に記載の水平火炎試験にしたがって試験した場合に、約20秒以下、または約15秒以下、または約14秒以下、または約13秒以下、または約12秒以下、または約11秒以下、または約10秒以下、または約9秒以下、または約8秒以下、または約7秒以下、または約6秒以下、または約5秒以下の残炎を有し得る。
【0096】
積層構造体は、本明細書中に記載の水平火炎試験にしたがって試験した場合に、実質的に一切の溶融物滴下挙動を示さない可能性がある。
【0097】
積層構造体は、耐久性撥水材料のコーティングを含み得る。耐久性撥水材料は、フルオロカーボン系撥水材料、ケイ素系撥水材料、炭化水素系撥水材料、フルオロポリマ系撥水材料、またはそれらの任意の組合せを含み得る。例えば、積層体は、外側テキスタイル層の外側表面上に耐久性撥水材料のコーティングを含み得る。
【0098】
積層構造体は、衣服として使用され得、ここで衣服は、着用者がその衣服を着用したとき内側層が着用者に対面するように構成されている。好適な衣服としては、例えば、ジャケット、シャツ、パンツ、カバーオール、手袋、ヘッドカバー、レッグカバー、エプロン、履物類またはそれらの組合せが含まれ得る。衣服は、着用者が着用する最も外側の層であり得、または別の衣服によって覆われるよう意図された下着でもあり得る。しかしながら典型的には、衣服は最も外側の衣服である。
【0099】
衣服は、着用者がその衣服を着用したとき内側層が着用者に対面するように構成され得る。衣服は、着用者がその衣服を着用したときに外側テキスタイル層が環境に対面するように構成され得る。積層構造体は、単独であるかまたは組合せの形であるかに関わらず、本明細書中で定義されている特徴のいずれかを含むことができる。積層構造体は、本明細書中で開示されているいずれかの個別の特性および/またはそれらの任意の組合せを有することができる。
【0100】
別の態様においては、本開示は、本明細書中に記載の積層構造体の製造方法において、
- 外側テキスタイル層および中間層を提供し、外側テキスタイル層上および/または中間層上に熱反応性材料の層を適用すること;
- 熱反応性材料が中間層を外側テキスタイル層に対して固着するようにして、外側テキスタイル層の内側表面と中間層の外側表面との間に熱反応性層を挟むこと;
- 中間層の内側および/または内側層の外側表面に対し一定のパターンで難燃性接着材料を適用すること;および
- 中間層の内側表面と内側層の外側表面の間に難燃性接着材料を挟み、こうして、難燃性接着材料が内側層を中間層に固着し、複数のポケットが形成されるようにすること、ここで、ポケットの各々は、(a)中間層、(b)内側層および(c)難燃性接着材料の一部分によって画定されている、;
を含む方法に関する。
【0101】
該方法は、中間層と内側層の間に(例えば積層構造体に対して、または中間層、内側層および難燃性接着材料を含む構造に対して)圧力および/または熱を加えて、難燃性接着材料が中間層の内側と内側層の外側を固着するようにすることを含み得る。
【0102】
該方法は、外側テキスタイル層と中間層の間に(例えば外側テキスタイル層、熱反応性材料および中間層を含む構造に対して、または積層構造体に対して)圧力および/または熱を加えて、熱反応性材料が外側テキスタイル層の内側と中間層の外側を固着するようにすることを含み得る。熱が加えられる場合、熱は、膨張性黒鉛の膨張を開始させないよう充分に低いものでなければならない。
【0103】
該方法は、外側テキスタイル層上に耐久性撥水コーティングを適用することを含み得る。
【0104】
該方法は、熱反応性材料が中間層を外側テキスタイル層に対して固着するようにして、外側テキスタイル層の内側表面と中間層の外側表面との間に熱反応性層を挟むこと、;その後一定のパターンで難燃性接着材料を適用すること、および難燃性接着材料が内側層を中間層に固着するようにして、中間層の内側表面と内側層の外側表面の間に難燃性接着材料を挟むこと、を含むことができる。
【0105】
以上で説明した通り、熱反応性材料は、外側テキスタイルおよび/または中間層に対して連続的にまたは不連続的に適用され得る。
【0106】
以上で説明した通り、難燃性接着材料は、内側テキスタイルおよび/または中間層に対して、連続的にまたは不連続的に適用され得る。
【0107】
圧力は、任意の好適な方法によって加えることができる。例えば、積層体に対する圧力は、2本のローラのニップを用いて適用され得る。圧力(例えばニップ由来の)は、少なくとも熱反応性材料のポリマ樹脂を、少なくとも部分的に表面細孔、表面間隙または一方のまたは両方の層の繊維間の間隙または空間の内部に配置させることができる。少なくとも熱反応性材料のポリマ樹脂は、外側テキスタイル層の繊維および/またはフィラメント間の間隙または空間に浸入し得る。少なくとも熱反応性材料のポリマ樹脂は、中間層内に浸入し得る。少なくとも熱反応性材料のポリマ樹脂は、外側テキスタイル材料の繊維間の間隙または空間に浸入することができ、中間層内に浸入することができる。
【0108】
積層構造体を含む衣服の快適性を増大させることのできる伸縮性布地を積層構造体内に組込むことが可能である。1方向伸縮性布地を、例えば、開示全体が参照により本明細書中に組込まれている国際公開第2018/067529号の開示にしたがって組込むことができる。本明細書中で使用する1方向伸縮性布地とは、積層構造体が、縦目または横目の一方の方向で回復可能な弾性を有するものの典型的に両方向には有していないことを意味する。伸縮性布地を積層構造体、特に本質的に弾性でない1つ以上の層を含む積層構造体内に組込むための他の方法が、当該技術分野において公知である。好適な例としては、例えば、開示全体が参照により本明細書中に組込まれている欧州特許第110626号および第1852253号の教示が含まれ得る。
【0109】
本開示は同様に、積層構造体が約500gsm以下の総重量を有する、衣服の製造における積層構造体の使用にも関する。
【0110】
本開示は同様に、積層構造体が約500gsm以下の総重量を有しかつ積層構造体がEN61482-1-2:2014規格を満たしている、衣服の製造における積層構造体の使用にも関する。
【0111】
積層体は、外側テキスタイル層と内側層の間に挟まれた中間層を含み得る。
【0112】
積層体は、外側テキスタイル層と内側層の間に挟まれた中間層を含み得る。熱反応性材料は、接着材料であり得る。熱反応性材料は、外側テキスタイル層と中間層を固着することができる。
【0113】
積層構造体は、中間層と内側層の間に接着材料を含み得る。接着材料は、難燃性接着材料であり得る。接着材料は、中間層と内側層を固着することができる。接着材料は、各々(a)中間層、(b)内側層および(c)接着材料の一部分により画定されている複数のポケットを形成するように一定のパターンで配置され得る。
【0114】
各々の態様または実施形態に関連して開示されているさらなる特徴は、本発明の各々の他の態様または実施形態のさらなる特徴に対応する、ということを理解すべきである。例えば、該方法は、第1の態様にしたがった積層材料を製造することを含むことができ、したがって、それに関連して開示されている任意の材料調製、コーティングまたは製造方法を含み得る。その上、本発明は、本明細書中に開示された方法によって得ることのできるあらゆる積層構造体にまで及ぶ。
【0115】
積層構造体は、アークフラッシュに対する曝露から着用者を保護することのできる優れた軽量保護衣服を提供する。積層構造体が電気アークに曝露された時点で、積層構造体は、着用者を傷害から遮蔽する目的で多くの変化を遂げる。外側テキスタイルは、熱反応性材料が膨張する間に溶融し、高いエネルギおよび溶融するテキスタイルを吸収して、溶融性織物が燃焼して着用者上に滴下しないように保つことができる。電気アークの高エネルギが衣服を通って移動するにつれて、熱は、中間層と内側層間の非接着領域を含む領域を分離または膨張させ(膨化)、こうして追加の断熱効果を提供する。外側テキスタイル層の溶融、熱反応性材料の膨張および中間層と内側層の間の膨化の組合せは、着用者に優れた快適性を提供しそれでもなおアークフラッシュ曝露からの保護を提供することのできる比較的軽量の積層構造体を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【
図1B】
図1Bは、一例示的実施形態に係る、中間層と内側層の間に難燃性接着材料を適用し得るドットの格子様パターンの図である。
【
図1C】
図1Cは、一例示的実施形態に係る、外側
テキスタイル層と中間層の間に熱反応性材料を適用し得るドットパターンの図である。
【
図2A】
図2Aは、一例示的実施形態に係る、外側
テキスタイル層と中間層の間に熱反応性材料を適用し得るドットパターンの図である。
【
図2B】
図2Bは、一例示的実施形態に係る、中間層と内側層の間に難燃性接着材料を適用し得る格子パターンの図である。
【
図3A】
図3Aは、一例示的実施形態に係る、中間層と内側層の間に難燃性接着材料を適用し得る
図3B由来のドットパターンのクローズアップ図である。
【
図3B】
図3Bは、一例示的実施形態に係る、中間層と内側層の間に難燃性接着材料を適用し得る格子パターンの図である。
【
図3C】
図3Cは、
図3Bに示されている格子パターンで適用された難燃性接着材料を含む例示的積層構造体の写真である。
【
図3D】
図3Dは、一例示的実施形態に係る、中間層と内側層の間に難燃性接着材料を適用し得る正弦波パターンの例示である。
【
図4A】
図4Aは、一例示的実施形態に係る積層構造体の写真である。
【
図5】
図5は、ストール曲線と比べた、第1の例示的積層体(積層体例1)構造の第1の試験中の、透過入射エネルギと時間の関係のプロットである。
【
図6】
図6は、ストール曲線と比べた、第2の例示的積層体(積層体例2)構造の第1の試験中の、透過入射エネルギと時間の関係のプロットである。
【
図7】
図7は、ストール曲線と比べた、第3の例示的積層体(積層体例3)構造の第1の試験中の、透過入射エネルギと時間の関係のプロットである。
【
図8】
図8は、ストール曲線と比べた、第4の例示的積層体(積層体例4)構造の第1の試験中の、透過入射エネルギと時間の関係のプロットである。
【
図9】
図9は、ストール曲線と比べた、第5の例示的積層体(積層体例5)構造の第1の試験中の、透過入射エネルギと時間の関係のプロットである。
【
図10】
図10は、ストール曲線と比べた、第6の例示的積層体(積層体例8)構造の第1の試験中の、透過入射エネルギと時間の関係のプロットである。
【
図11】
図11は、ストール曲線と比べた、比較用積層体(比較例E)構造の第1の試験中の、透過入射エネルギと時間の関係のプロットである。
【
図12A】
図12Aは、一例示的実施形態に係る中間層と内側層の間の難燃性接着材料の第1のパターンの一部分の図である。
【
図12B】
図12Bは、一例示的実施形態に係る中間層と内側層の間の難燃性接着材料の第2のパターンの一部分の図である。
【
図12C】
図12Cは、一例示的実施形態に係る中間層と内側層の間の難燃性接着材料の第3のパターンの一部分の図である。
【
図12D】
図12Dは、一例示的実施形態に係る中間層と内側層の間の難燃性接着材料の第4のパターンの一部分の図である。
【
図12E】
図12Eは、一例示的実施形態に係る中間層と内側層の間の難燃性接着材料の第5のパターンの一部分の図である。
【
図12F】
図12Fは、一例示的実施形態に係る中間層と内側層の間の難燃性接着材料の第6のパターンの一部分の図である。
【発明を実施するための形態】
【0117】
本発明について、添付図面を参照しながらさらに説明するが、図面中類似の構造は複数の図全体を通して同じ番号により言及されている。示された図は必ずしも原寸に比例しておらず、概して、本発明の原理を例示することに重点が置かれている。さらに、いくつかの特徴は、特定の構成要素の詳細を示すために誇張されている場合がある。
【0118】
図は、本明細書の一部を構成しており、本発明の例示的実施形態を含み、そのさまざまな目的および特徴を例示する。さらに、図は必ずしも原寸に比例しておらず、いくつかの特徴は、特定の構成要素の詳細を示すために誇張されている場合がある。さらに、図中に示されているあらゆる測定値、仕様などは、限定的なものではなく例示的ものである。したがって、本明細書中で開示されている具体的な構造的および機能的詳細は、限定的なものとして解釈されるべきものではなく、単に当業者に本発明をさまざまな形で活用するよう教示するための代表的な基礎として解釈されるべきものである。
【0119】
開示したこれらのメリットおよび改善の中でも、本発明の他の目的および利点は、添付図と併せて以下の説明を考慮することで明白になるものである。本発明の詳細な実施形態が、本明細書中に開示されている。ただし、開示された実施形態は本発明を単に例示するにすぎず、本発明はさまざまな形態で具体化され得るものであるということを理解すべきである。さらに、本発明のさまざまな実施形態と関連して提供されている実施例の各々は、限定的ではなく例示的であるものとして意図されている。
【0120】
明細書およびクレームの全体を通して、文脈上明白に別段の指示があるのでないかぎり、以下の用語は、本明細書中で明示的に結び付けられている意味をもつ。本明細書中で使用される「一実施形態において」および「いくつかの実施形態において」なる言い回しは、必ずしも同じ実施形態を意味しないものの同じ実施形態を意味することもできる。さらに、本明細書中で使用される「別の実施形態において」および「いくつかの他の実施形態において」なる言い回しは、必ずしも異なる実施形態を意味しないものの異なる実施形態を意味することもできる。したがって、以下で説明するように、本発明のさまざまな実施形態は、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、容易に組合せ可能である。
【0121】
「~に基づく」なる用語は、排他的でなく、文脈上明白に別段の指示があるのでないかぎり、説明されていない付加的な要因に基づいていることを可能にするものである。さらに、明細書全体を通して、「a」、「an」、および「the」の意味には、複数の意味が含まれる。「in」の意味には、「in」および「on」が含まれる。
【0122】
本明細書中で使用される「ポケット」なる用語は、積層構造体の非接着または非固着領域を意味し、ここでポケットは、中間層、内側層、および難燃性接着材料の一部分によって画定されている。
【0123】
「繊維」および「フィラメント」なる用語は、本明細書中互換的に使用される。繊維およびフィラメントは、その長さに比べて比較的小さい幅および高さを有する。繊維およびフィラメントの横断面は、1つ以上の裂片を有するものを含めて、丸形、正方形または事実上任意の形状をとり得、当該技術分野において周知である。典型的には、繊維は、例えば30センチメートル以下などの比較的短かい長さを有するが、一方フィラメントは30センチメートル超の長さを有し、本質的に無限、例えば数千メートルなどの長さを有することができる。
【0124】
積層構造体の層を説明するために使用される場合、「内側」および「外側」なる用語は、層の互いに対するおよび中間層に対する位置を示すように意図され、完成した品物内の個別の層の配列に基づく。例えばジャケットといった衣服などの完成した品物において、外側テキスタイル層は衣服の最も外側の層となるように意図され、一方内側層は、着用者の体に最も近い最も内側の層となるように意図されている。
【0125】
本明細書中で使用される水蒸気透過率(MVTR)は、24時間以内にどれほどの量の水蒸気が1平方メートルの膜を通過できるかの尺度である。MVTRが大きくなればなるほど、通気性は高くなる。
【0126】
本開示は、断熱を提供し、(a)外側
テキスタイル層と;(b)熱反応性材料と;(c)熱反応性材料が中間層を外側
テキスタイル層に対して固着するような形で,熱反応性材料上において外側
テキスタイル層の反対側に
配置されている中間層と;(d)難燃性接着材料と;(e)難燃性接着材料が内側層を中間層に対して固着するような形で難燃性接着材料上において中間層の反対側に
配置されている内側層と;を含む積層構造体に関する。難燃性接着材料は、複数のポケットを形成するように一定のパターンで
配置されており、ポケットの各々は、中間層、内側層および難燃性接着材料の一部分によって画定されている。ポケットは、中間層と内側層が互いに接触できるが、互いから分離可能である非固着部域を表わす。各ポケットは、難燃性接着材料、中間層および内側層により形成され、これらにより境界画定または包囲されている。
図1Aを参照すると、積層構造体(2)は、外側
テキスタイル層(10)、中間層(30)、内側層(50)、外側
テキスタイル層(10)と中間層(30)の間に挟まれこれらを共に固着する熱反応性材料の層(20)、および中間層(30)と内側層(50)の間に挟まれこれらを共に固着する難燃性接着材料のパターン化された層(40)を含む多層構造を含む。難燃性接着材料のパターン化された層(40)は、その一部分が
図1Bに示されている一定のパターン(42)を画定し、これにより、中間層(30)と内側層(50)の間には非固着領域内の複数のポケット(44)が形成される。本開示は、同様に、断熱を提供する積層構造体において、(a)外側
テキスタイル層と;(b)熱反応性材料と;(c)熱反応性材料が中間層を外側
テキスタイル層に対して固着するような形で熱反応性材料上において外側
テキスタイル層の反対側に
配置されている中間層と;(d)難燃性接着材料と;(e)難燃性接着材料が内側層を中間層に対して固着するような形で難燃性接着材料上において中間層の反対側に
配置されている内側層と;で構成された積層構造体にも関する。本開示はさらに、断熱を提供する積層構造体において、(a)外側
テキスタイル層と;(b)熱反応性材料と;(c)熱反応性材料が中間層を外側
テキスタイル層に対して固着するような形で熱反応性材料上において外側
テキスタイル層の反対側に
配置されている中間難燃性(FR)層と;(d)難燃性接着材料と;(e)難燃性接着材料が内側層を中間層に対して固着するような形で難燃性接着材料上において中間層の反対側に
配置されている内側層と;で本質的に構成された積層構造体に関する。ここで使用される「で本質的に構成された」なる言い回しは、積層構造体が列挙された要素を含み、例えば、電気アークまたは高温に曝露された場合に溶融物滴下に耐える積層構造体の能力に影響を及ぼす可能性があると思われる外側
テキスタイル層または積層構造体を通って積層構造体でできた衣服の着用者までの熱の伝導を増大し得る他の要素など、積層構造体の性能に著しく影響を及ぼすと思われる他の要素を全く含まないことを意味する。
【0127】
ひき続き
図1Aを参照すると、外側
テキスタイル層(10)は、内側(11)と外側(12)を有し、熱反応性材料(20)は、外側
テキスタイル層(10)の内側(11)に具備されている。中間層(30)は、内側(31)と外側(32)を有し、熱反応性材料(20)は、外側
テキスタイル層(10)の内側(11)と中間層(30)の外側(32)の間に挟まれ、外側
テキスタイル層(10)を中間層(30)に固着する。中間層(30)は、内側(31)と外側(32)を有し、難燃性接着材料(40)は、中間層(30)の内側(31)に具備されている。内側層(50)は、内側(51)と外側(52)を有し、難燃性接着材料(40)は、中間層(30)の内側(31)と内側層(50)の外側(52)の間に挟まれ、内側層(50)を中間層(30)に固着する。
【0128】
積層構造体は、外側テキスタイル層(10)を含む。いくつかの実施形態において、外側テキスタイルは、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維またはそれらの組合せを含むことができる。好適なポリエステルは、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはそれらの組合せを含むことができる。好適なポリアミドは、例えばナイロン6、ナイロン、6,6またはそれらの組合せを含むことができる。好適なポリオレフィンは、例えばポリエチレン、ポリプロピレンまたはそれらの組合せを含むことができる。さらなる実施形態において、外側テキスタイル層(10)は、ホスフィネート変性ポリエステル(例えばドイツHattersheimのTrevira GmbHからTREVIRA(登録商標)CSの商品名で、および米国ニュージャージ州SecaucusのRose Brand社からAVORA(登録商標)FRの商品名で販売されている材料)などの溶融性で不燃性のテキスタイルであり得る。外側テキスタイル層(10)は、ニット、織物または不織布であり得る。いくつかの実施形態において、外側テキスタイル層(10)は、溶融性である。本明細書中で使用される「溶融性」材料とは、以下に記載の溶融および熱的安定性試験にしたがって試験された場合に溶融性を有する材料である。いくつかの実施形態において外側テキスタイル層(10)は、可燃性または不燃性である。本明細書中で使用される「可燃性」材料とは、可燃性であるか不燃性であるかを決定するために以下に記載のテキスタイル用垂直火炎試験にしたがって試験した場合に可燃性を有する材料である。
【0129】
さらに、外側テキスタイル層は、比較的少量の難燃性繊維、非溶融性繊維および/または静電気防止繊維を含むことができる。存在する場合、難燃性繊維、非溶融性繊維および/または静電気防止繊維は、以下に記載の溶融および熱的安定性試験にしたがって試験した場合に外側テキスタイルがなおも溶融性テキスタイルであるような量で存在する。いくつかの実施形態において、外側テキスタイル層は、溶融性繊維の重量で50パーセント~100パーセントの範囲内の一定量の溶融性繊維を含む。さらなる実施形態において、溶融性繊維は、75~100重量パーセントの範囲内で外側テキスタイル層中に存在する。さらなる実施形態において、溶融性繊維は、95~99重量パーセントの範囲内の一定量で存在し、繊維の残余分は、1~5重量パーセントの範囲内の静電気防止繊維である。全ての重量百分率は、外側テキスタイル層の総重量に基づくものである。
【0130】
いくつかの実施形態において、外側テキスタイル層(10)は、1平方メートルあたり約250グラム(「gsm」)以下の重量を有する。いくつかの実施形態において、外側テキスタイル層(10)は、30gsm~250gsmの重量、または40gsm~200gsmの重量、または40gsm~175gsmの重量、または50gsm~175gsmの重量または約50gsmの重量、または50gsm~172gsmの重量、または約76gsmの重量、または50gsm~170gsmの重量、または約105gsmの重量、または100gsm~180gsmの重量、または約172gsmの重量を有する。
【0131】
耐アーク性衣服の試験を支配する規格は、アーク試験(ASTM 1959)の認定目的のためにでさえファブリックまたは積層体が耐炎性を有することを求めていることから、溶融性テキスタイルは典型的には耐アーク性積層体中で使用されない。溶融性である外側テキスタイル層を含む積層構造体を使用してアークフラッシュ事故に対する保護を提供できるというのは意外である。
【0132】
積層構造体は、さらに熱反応性材料を含む。いくつかの実施形態において、熱反応性材料(20)は、膨張性黒鉛を含む。さらなる実施形態において、熱反応性材料(20)は、膨張性黒鉛とポリマ樹脂の混合物を含む。熱反応性材料は、外側テキスタイル層と中間層の間に配置される。
【0133】
本明細書中で開示されている実施形態において使用するのに最も好適な膨張性黒鉛は、約180℃~280℃で少なくとも9ミクロン/℃の平均膨張率を有する。積層構造体の所望される特性に応じて、約180℃~280℃で9ミクロン/℃超の膨張率、または約180℃~280℃で12ミクロン/℃超の膨張率、または約180℃~280℃で15ミクロン/℃超の膨張率を有する膨張性黒鉛を使用することが望ましい可能性がある。一定の実施形態において使用するのに好適な1つの膨張性黒鉛は、約280℃まで加熱された場合に本明細書中に記載のTMA膨張試験において少なくとも900ミクロンだけ膨張する。一定の実施形態において使用するのに好適な別の膨張性黒鉛は、約240℃まで加熱された場合に本明細書中に記載のTMA膨張試験において少なくとも400ミクロンだけ膨張する。本明細書中に記載の炉膨張試験を用いて試験した場合、本明細書中に記載の熱反応性材料および方法において使用するのに好適な膨張性黒鉛は、300℃で少なくとも1グラムあたり9立方センチメートル(cc/g)の平均膨張を有する。一実施例において、本明細書中に記載の炉膨張試験によって試験した場合、膨張性黒鉛等級3626(Asbury Graphite Mills Incより入手可)は、300℃で約19cc/gの平均膨張を有し、一方膨張性黒鉛等級3538(Asbury Graphite Mills Incより入手可)は、300℃でわずか約4cc/gの膨張しか有していない。本発明に好適である膨張性黒鉛の粒径は、選択された適用方法で熱反応性材料を適用できるように選択されなければならない。例えば、熱反応性材料がグラビア印刷技術によって適用される場合、膨張性黒鉛の粒径は、グラビアセルに適合するように充分な程度に小さくなければならない。
【0134】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載のDSC吸熱試験方法にしたがって試験された場合に少なくとも1グラムあたり約100ジュール(J/g)の吸熱と前述の膨張を有する膨張性黒鉛を含む熱反応性材料が形成される。他の実施形態においては、約150J/g以上、約200J/g以上、または約250J/g以上の吸熱を有する膨張性黒鉛を使用することが望ましい可能性がある。
【0135】
熱反応性材料に好適であるポリマ樹脂は、280℃未満の溶融温度または軟化温度を有し得る。いくつかの実施形態において、使用されるポリマ樹脂は、約300℃以下での熱曝露の時点で膨張性黒鉛が実質的に膨張できるようにするのに充分な流動性または変形能を有する。いくつかの実施形態において、使用されるポリマ樹脂は、約280℃以下での熱曝露の時点で膨張性黒鉛が実質的に膨張できるようにするのに充分な流動性または変形能を有する。いくつかの実施形態において、熱反応性材料中で使用するのに好適なポリマ樹脂は、溶融性外側テキスタイルの熱分解温度より低い温度で膨張性黒鉛が充分に膨張できるようにすることができる。いくつかの実施形態において、ポリマ樹脂の伸長粘度は、膨張性黒鉛の膨張を可能にするのに充分なほど低くかつ、ポリマ樹脂と膨張性黒鉛の混合物の膨張後の熱反応性材料の構造無欠性を維持するのに充分なほど高いものである。いくつかの実施形態において、103~108ダイン/cm2の貯蔵弾性率および200℃で約0.1~約10のタンデルタを有するポリマ樹脂が使用される。別の実施形態においては、103~106ダイン/cm2の貯蔵弾性率を有するポリマ樹脂が使用される。別の実施形態においては、103~104ダイン/cm2の貯蔵弾性率を有するポリマ樹脂が使用される。いくつかの実施形態において使用するのに好適なポリマ樹脂は、膨張性黒鉛が膨張できるようにするのに好適な、300℃前後での伸びおよび弾性率を有する。いくつかの実施形態において使用するのに好適なポリマ樹脂は、エラストマ系ポリマ樹脂である。いくつかの実施形態において使用するのに好適なポリマ樹脂は、架橋性ポリマ樹脂、例えばMOR-MELT(商標)接着剤R7001Eとして(Rohm&Haasから)入手可能な架橋性ポリウレタンである。他の実施形態において、好適なポリマ樹脂は、50℃~250℃の溶融温度を有する熱可塑性物質、例えば、DESMOMELT(登録商標)VP KA8702(Bayer Material Science LLC製)などである。本明細書中に記載の実施形態において使用するのに好適なポリマ樹脂は、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアミド、アクリル、ビニルポリマ、ポリオレフィン、シリコーン、エポキシ、またはそれらの組合せを非限定的に含むポリマを含む。
【0136】
メラミン、リン、金属水酸化物、例えばアルミナ三水和物(ATH)、ホウ酸塩またはそれらの組合せなどの難燃性材料が、熱反応性材料またはポリマ樹脂内に組込まれ得る。他の難燃性材料としては、例えば臭素化化合物、塩素化化合物、酸化アンチモン、有機リン系化合物、ホウ酸亜鉛、ポリリン酸アンモニウム、シアヌル酸メラミン、ポリリン酸メラミン、モリブデン化合物、水酸化マグネシウム、リン酸トリフェニル、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールA(ジフェニルホスフェート)、リン酸トリクレシル、オルガノホスフィネート、ホスホン酸エステル、またはそれらの組合せが含まれ得る。存在する場合、難燃性材料は、ポリマ樹脂の総重量に基づいて1~50重量パーセントの割合で使用され得る。
【0137】
熱反応性材料のいくつかの実施形態において、熱反応性材料は混合物であり、電気アーク由来の熱に対する曝露の時点で、膨張性黒鉛を含む複数の巻きひげを形成し得る。熱反応性材料の総表面積は、膨張前の同じ混合物に比べて著しく増大する。一実施形態において、混合物の表面積は、膨張後、少なくとも5倍増大させられる。別の実施形態では、混合物の表面積は、膨張後少なくとも10倍増大させられる。さらに、巻きひげは、多くの場合膨張した混合物から外向きに延在することになる。熱反応性材料が不連続形態で外側テキスタイル層または中間層上に位置している一実施形態において、巻きひげは、不連続領域間の開放部域を少なくとも部分的に充填するように延在し得る。さらなる一実施形態において、巻きひげは引き伸ばされて、少なくとも5対1の長さ対幅の縦横比を有することになる。ポリマ樹脂-膨張性黒鉛混合物を含む熱反応性材料が不連続形態パターンで適用される一実施形態において、熱反応性材料は、膨張して巻きひげを形成することができ、これらの巻きひげは膨張後ゆるく充填され、巻きひげの間の間隙ならびに熱反応性材料のパターンの間の空間を創出する。電気アーク由来の熱に曝露された時点で、溶融性外側テキスタイルは溶融し、概して、熱反応性材料の不連続形態の間の開放部域から離れるように移動する。
【0138】
中間層は、膨張中熱反応性材料に対する支持体を提供することができ、溶融性外側テキスタイルの溶融物は、溶融中に膨張する熱反応性材料により吸収され保持される。溶融物を吸収し保持することによって、いかなる溶融物滴下も示さない積層体が形成され得、可燃性は抑制される。中間層は、溶融物の吸収中、膨張する熱反応性材料を支持し、こうして積層構造体が開裂するのを防ぎ孔の形成を防止するかまたは最小限に抑えると考えられている。膨張時点の熱反応性材料の表面積の増大により、電気アーク由来の熱に対する曝露時点で膨張した熱反応性材料による溶融性テキスタイルからの溶融物の吸収が可能になる。
【0139】
いくつかの実施形態において、熱反応性材料は、膨張性黒鉛の実質的な膨張をひき起こすことなく、ポリマ樹脂と膨張性黒鉛の緊密な配合物を提供する方法によって生成され得る。いくつかの実施形態において、ポリマ樹脂および少なくとも100J/gの吸熱を有する膨張性黒鉛は、外側テキスタイル層または中間層またはその両方に対して連続または不連続パターンで適用され得る混合物を形成するように配合され得る。好適な混合方法には、非限定的に、パドルミキサ、配合および低せん断混合技術が含まれる。1つの方法においては、ポリマ樹脂と膨張性黒鉛粒子の緊密な配合は、ポリマ樹脂の重合化に先立って膨張性黒鉛とモノマまたはプレポリマを混合することによって達成される。別の方法においては、膨張性黒鉛を溶解したポリマと配合することができ、ここで、溶媒は、混合の後または外側テキスタイル層、中間層またはその両方に対する適用の後に除去される。別の方法においては、膨張性黒鉛は、黒鉛の膨張温度よりは低くポリマの溶融温度よりは高い温度でホットメルトポリマと配合される。ポリマ樹脂および膨張性黒鉛粒子または膨張性黒鉛の凝集体の緊密な配合物を提供する方法において、膨張性黒鉛は、黒鉛の膨張に先立ちポリマ樹脂によりコーティングまたはカプセル封入される。いくつかの実施形態において、緊密な配合は、外側テキスタイル層または中間層に熱反応性材料を適用する前に達成される。
【0140】
いくつかの実施形態において、熱反応性材料は、熱反応性材料の総重量に基づいて約50重量%以下、または約40重量%以下、または約30重量%以下の膨張性黒鉛を含み、残りは実質的にポリマ樹脂を含む。他の実施形態では、膨張性黒鉛は、約20重量%以下、または約10重量%以下、または約5重量%以下の膨張性黒鉛を含み、残りは実質的にポリマ樹脂を含む。概して、熱反応性材料の総重量に基づいて約5重量%~約50重量%の膨張性黒鉛が望ましい。いくつかの実施形態において、さらに低い量の膨張性黒鉛でも、所望の難燃性性能を達成することが可能である。いくつかの実施形態においては、1%といった低い添加量が有用であり得る。結果として得られる積層構造体の構成および所望される特性に応じて、他の実施形態のためには、他の膨張性黒鉛レベルも同様に好適であり得る。顔料、充填材、抗菌剤、加工助剤および安定剤などの他の添加物も同様に、熱反応性材料に対し添加可能である。
【0141】
熱反応性材料は、
図1Cに例示されているような外側
テキスタイル層(10)の内側表面(11)または中間層(30)の外側表面(32)の一方または両方に対して適用され得る。いくつかの実施形態において、熱反応性材料は、連続的層として適用され得る。いくつかの実施形態において、通気性および/または風合いの増強が所望される場合、熱反応性材料を不連続に適用して、100%未満の表面被覆率を有する熱反応性材料の層を形成することができる。
図1Cに示されているように、熱反応性材料(20)はドットパターンで適用することができる。熱反応性材料の不連続な適用は、非限定的に、ドット、格子、線およびそれらの組合せを含む形態によって100%未満の表面被覆率を提供し得る。不連続な被覆率を伴ういくつかの実施形態においては、熱反応性材料の不連続パターンの隣接する部域間の平均距離は、衝突する火炎のサイズよりも小さい。不連続な被覆率を伴ういくつかの実施形態において、不連続パターンの隣接する部域間の平均距離は、10ミリメートル(mm)未満、または5.0mm未満、または3.5mm未満、または2.5mm以下、または1.5mm以下、または0.5mm以下である。例えば、外側
テキスタイル層または中間層上に熱反応性材料で印刷されたドットパターンにおいては、熱反応性材料の2つの隣接するドットの縁部間の離隔距離が測定されるものと思われる。不連続パターンの隣接する部域間の平均距離は、利用分野に応じて、40ミクロン超、または50ミクロン超、または100ミクロン超、または200ミクロン超であり得る。本明細書中に記載のいくつかの積層体においては、200ミクロン超および500ミクロン超であるものと測定された平均ドット離隔距離が有用である。
【0142】
いくつかの実施形態において、例えば印刷されたパターンの付着量を描写するための方法として、表面被覆率と組合せて、ピッチが使用される。概して、ピッチは、印刷されたパターンのドット、線または格子線などの隣接する形態間の平均中心間距離として定義される。平均は、例えば不規則に離隔された印刷パターンを考慮に入れるために使用される。いくつかの実施形態においては、等価の重量の熱反応性材料の付着量を有する熱反応性混合物の連続的適用に比べて優れた難燃性性能を提供するピッチおよび表面被覆率を伴うパターンで、熱反応性材料(20)を不連続的に適用することができる。不規則パターンのいくつかの実施形態において、ピッチは、隣接するドットまたは格子線間の中心間距離の平均として定義される。いくつかの実施形態において、ピッチは、500ミクロン超、または1000ミクロン超、または2000ミクロン超、または5000ミクロン超である。本明細書中に記載のほとんどの積層体中で使用するためには、500ミクロン~6000ミクロンのピッチを有する熱反応性材料のパターンが好適である。風合い、通気性および/またはテキスタイル重量などの特性が重要である実施形態においては、約25%超で約90%未満、または約80%未満、または約70%未満、または約60%未満、または約50%未満、または約40%未満または約30%未満の表面被覆率が使用され得る。例えばより高い難燃性特性が必要とされる一定の実施形態においては、500ミクロン~6000ミクロンのピッチで外側テキスタイル層または中間層の表面上に約30%~約80%の熱反応性材料の表面被覆率を有することが所望される可能性がある。
【0143】
いくつかの実施形態において、100%未満の被覆率を達成する方法には、例えばグラビア印刷により外側
テキスタイルまたは中間層の表面上に印刷することによって熱反応性材料を適用することが含まれる。
図2Aおよび2Bは、例えば中間層(30)の外側(32)、または外側
テキスタイル層(10)の内側(11)など外側
テキスタイル層(10)に対して、ドット(2A)および格子(2B)のパターンで熱反応性材料層(20)が提供されている実施例を示している。いくつかの実施形態において、熱反応性材料は、熱反応性材料で約10gsm~約100gsmの追加重量を達成するように適用される。いくつかの実施形態において、熱反応性材料は、100gsm未満、または75gsm未満、または50gsm未満、または25gsm未満の追加重量を達成するように、外側
テキスタイル層または中間層に対して適用される。
【0144】
図2A内の離散的ドット(20)の適用の場合などのいくつかの実施形態において、熱反応性材料は、外側
テキスタイル層(10)に適用されて、熱反応性材料を含む多数の離散的
な膨張前構造
体の形で熱反応性材料層(20)を形成する。
膨張時点で、離散的ドットは、構造的無欠性を有する多数の離散的
な膨張済み構造
体を形成して、本明細書中に記載の増強された特性を達成するために充分な保護を積層構造体に提供する。構造的無欠性とは、
膨張後の熱反応性材料が外側
テキスタイル層または中間層またはその両方を実質的に崩壊または剥離させることなく、屈曲または曲げに耐えることを意味する。
【0145】
いくつかの実施形態において、熱反応性材料は、ドット、線または格子に加えて他の形態で適用可能である。熱反応性材料を適用するための他の方法としては、電気アークに由来する熱に対する曝露の時点で所望の特性が達成されるような形で熱反応性材料を適用できることを条件として、スクリーン印刷、スプレーコーティングまたは散乱コーティングまたはナイフコーティングが含まれ得る。
【0146】
いくつかの実施形態において、熱反応性材料層(20)は、熱反応性材料が中間層(30)と外側テキスタイル層(10)の間に優れた固着を提供するような形で、外側テキスタイル層(10)上または中間層(30)上に配置され得る。熱反応性材料は、例えば外側テキスタイル層(10)の内側(11)と中間層(30)の外側(32)を固着して外側テキスタイル層(10)と中間層(30)の間に熱反応性材料層を形成するように、接着剤として機能する。積層構造体の形成中、熱反応性材料は、外側テキスタイルまたは中間層に対して連続的または不連続的に適用され、その後、概して2本のローラのニップを通って走行することによって、外側テキスタイル層および中間層は互いに接着される。ニップ由来の圧力は、少なくとも熱反応性材料のポリマ樹脂を少なくとも部分的に表面細孔、表面間隙または層(10および30)の一方または両方の繊維間の間隙または空間の内部に配置させることができる。いくつかの実施形態において、少なくとも熱反応性層のポリマ樹脂は、外側テキスタイル層の繊維および/またはフィラメント間の間隙または空間に浸入することができる。他の実施形態において、少なくとも熱反応性材料のポリマ樹脂は、中間層内に浸入できる。さらなる実施形態において、少なくとも熱反応性材料のポリマ樹脂は、外側テキスタイル材料の繊維間の間隙または空間に浸入できる。
【0147】
積層構造体は同様に、中間層を含む。中間層は、バリヤ層、例えばポリイミド、シリコーンまたはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)層を含む。いくつかの実施形態において、中間層は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)であり得る。さらなる実施形態において、中間層は、(a)延伸ポリテトラフルオロエチレンの第1の層および(b)延伸ポリテトラフルオロエチレンまたはポリウレタン被覆の延伸ポリテトラフルオロエチレンの第2の層を含む2層フィルムである。中間層は、FRテキスタイル層であり得るが、テキスタイル層が中間層として使用される場合には、テキスタイル層は、積層構造体の重量および剛性を増大させ得る比較的高密度の縦糸および横糸繊維を含んでいるはずである。中間層は、結果として得られる積層構造体(2)の特定の厚みおよび風合いを達成するため、本明細書中に記載の柔軟性または風合い測定試験により測定された場合に、1ミリメートル(mm)未満の厚みおよび100未満の風合いを有するフィルムであり得る。好適なフィルムは、熱安定性フィルムなどの材料を含み、かつポリイミド、シリコーン、PTFE、例えばPTFEまたは延伸PTFEなどの材料を含むことができる。いくつかの実施形態において、中間層は、電気アークからその背後にある層への熱伝達を防止するかまたは最小限に抑えることができる。さらに、いくつかの実施形態において、中間層は、溶融物吸収を容易にすることができる。中間層として好適でない材料としては、充分な熱的安定性が欠如しているフィルム、例えば多くの通気性ポリウレタンフィルムおよび通気性ポリエステルフィルム(例えばSYMPATEX(登録商標)フィルム、詳細には熱可塑性物質)が含まれる。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載の実施形態において使用するためのフィルムは、本明細書中に記載のバリヤ熱安定性試験方法により試験された場合に熱曝露後に約25l/m2/sec未満の最大通気度を有する。いくつかの実施形態において、フィルムは、曝露後に膨張性黒鉛を膨張させるのに充分な3Frazier未満の通気度を有する。
【0148】
いくつかの実施形態において、中間層(30)は、10gsm~50gsmの範囲内、または20gsm~50gsmの範囲内、または30gsm~50gsmの範囲内、または40gsm~50gsmの範囲内、または10gsm~40gsmの範囲内、または20gsm~40gsmの範囲内、または30gsm~40gsmの範囲内、または10gsm~30gsmの範囲内、または20gsm~30gsmの範囲内、または15gsm~35gsmの範囲内、または20gsm~35gsmの範囲内、または25gsm~35gsmの範囲内、または30gsm~35gsmの範囲内、または15gsm~30gsmの範囲内、または25gsm~30gsmの範囲内、または15gsm~25gsmの範囲内、または20gsm~25gsmの範囲内、または15gsm~20gsmの範囲内、または21gsm~23gsmの範囲内、または29gsm~31gsmの範囲内、または約22gsm、または約30gsmの重量を有し得る。
【0149】
いくつかの実施形態において、中間層は、熱的安定性バリヤ層である。熱的安定性バリヤ層は、電気アークに対する曝露中、積層構造体の外側から積層構造体の内側への熱伝達を防ぐのを補助することができる。本明細書中に記載の実施形態において中間層として使用するための熱的安定性バリヤ層は、本明細書中で開示されている熱安定性バリヤのための通気度試験にしたがって試験された場合、熱曝露後50l/m2/secの最大通気度を有する。他の実施形態において、中間層は、熱曝露後25l/m2/sec未満または15l/m2/sec未満の最大通気度を有する。
【0150】
積層構造体はさらに難燃性接着剤(40)を含み、ここで難燃性接着剤(40)は、中間層と内側層の間に挟まれている。熱反応性材料のために有用であるものとして説明されているポリマ樹脂のいずれも、充分な量の難燃性添加物が存在することを条件として、難燃性接着剤のために使用可能である。難燃性接着剤(40)は、典型的には1つ以上のポリマ樹脂と1つ以上の難燃性添加物を含む。いくつかの実施形態において、難燃性接着剤(40)は、1つ以上のポリマ樹脂および1つ以上の難燃性添加物で構成されるかまたは本質的に構成されている。本明細書中で使用されるように、「~で本質的に構成される」とは、組成物が、列挙されたこれらの構成成分と、組成物に対し実質的に影響を及ぼし得ると思われる5パーセント未満の任意の追加の構成成分を含有することを意味する。他の実施形態において、組成物は、4パーセント未満、または3%パーセント未満、または2%未満、または1%パーセント未満の任意の追加の構成成分を含有し得る。好適なポリマ樹脂は、例えばポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアミド、アクリル、ビニルポリマ、ポリオレフィン、シリコーン、エポキシまたはそれらの組合せを含み得る。いくつかの実施形態において、ポリマ樹脂は、熱可塑性であり得、一方、他の実施形態では、ポリマ樹脂は架橋性であり得る。いくつかの実施形態において使用する好適なポリマ樹脂としては、例えば米国ペンシルバニア州フィラデルフィアのRohm&HaasによりMOR-MELT(商標)R7001Eの商品名で販売されているものなどの架橋性ポリウレタンが含まれ得る。他の実施形態において、好適なポリマ樹脂は、約50℃~約250℃の溶融温度を有する熱可塑性物質、例えば、米国ペンシルバニア州ピッツバーグのBayer Material Science LLCによってDESMOMELT(登録商標)VP KA8702の商品名で販売されているものなどである。いくつかの実施形態において、難燃性接着材料(40)の難燃性特性は、ポリマ樹脂内に難燃性材料を取込むことによって提供される。難燃性材料としては、例えば臭素化化合物、塩素化化合物、酸化アンチモン、有機リン系化合物、ホウ酸亜鉛、ポリリン酸アンモニウム、シアヌル酸メラミン、ポリリン酸メラミン、モリブデン化合物、水酸化マグネシウム、リン酸トリフェニル、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールA(ジフェニルホスフェート)、リン酸トリクレシル、オルガノホスフィネート、ホスホン酸エステルの1つ以上またはそれらの組合せが含まれ得る。いくつかの実施形態において、難燃性材料は、ポリマ樹脂の総重量に基づいて、1重量パーセント~50重量パーセントの割合で使用され得る。
【0151】
難燃性接着材料(40)は、中間層と内側層を固着し、不連続に適用されて難燃性接着材料(40)の層を形成する。難燃性接着材料(40)は、中間層および内側層の表面を横断して100%未満の表面被覆率を有するパターン(42)で適用される。
図3Bおよび3Cは、複数のポケット(44)を画定する難燃性接着材料の可能性のある格子様パターン(42)を示す。ポケット(44)は、中間層と内側層が互いに固着されていない領域を表わす。ポケットはさらに、各ポケットを包囲する難燃性接着剤(40)によって画定される。難燃性接着材料は、難燃性接着剤のパターン(42)により画定される部域で中間層と内側層を固着し、一方ポケット(44)は、中間層および内側層が互いに固着されない非固着領域を画定する。ポケット自体は難燃性接着材料を含まないかまたは、難燃性接着材料を本質的に含まない。ここで使用されている「~を本質的に含まない」なる言い回しは、ポケットの部域を測定したとき、非固着領域は5パーセント未満または4パーセント未満または3パーセント未満または2パーセント未満または1パーセント未満の難燃性接着剤しか含有しないことを意味する。いくつかの実施形態において、比較的弱接着性の組成物は、中間層と内側層を「一時的に」接着し、こうして中間層と内側層が通常の使用下では分離しないようになっている。しかしながら、電気アークに対する曝露中、電気アーク由来のエネルギは、ポケット領域内の弱接着性組成物を溶融または分解して、中間層と内側層の分離および本明細書中に記載のポケットの
膨張を可能にするのに充分なものになるはずである。
【0152】
難燃性接着材料(40)は、ポケット(44)を形成するようなパターンで
配置され得る。パターン(42)は、難燃性接着材料の実線として適用され得、あるいはパターンは、
図3Aおよび3Bに示されているように、難燃性接着材料の一連の接近状態で間隔を開けたドットを含む線であり得る。「ドット」なる用語は、適用された難燃性接着剤の形状を描写するために使用されているものの、難燃性接着剤は、例えばドット、正方形、五角形、六角形、線、規則的または不規則的形状などの任意の規則的または不規則的形状を用いて適用され得る。
図3Aは、難燃性接着剤が0.5ミリメートル(mm)の直径および隣接するドット間で0.713mmの中心間離隔距離(ピッチ)を各々有する一連のドットとして適用され得る、1つの具体的実施形態を示す。難燃性接着剤は一定のパターンで
配置または適用され得る。パターンは、ポケットを画定する任意の規則的に反復するパターンであり得る。
図3Bに示されているように、パターンは、矩形/正方形ポケットを形成する格子パターンである。
図3Dに示されているように、パターンは、正弦波が第1の方向(例えば
図3D中「進行方向」とラベル付けされた矢印により示されている通り)に進行し、第1の方向に直交する第2の方向(
図3D中「離隔方向」とラベル付けされた矢印によって示されている通り)で互いに離隔され、1つの正弦波のピークが隣接する正弦波のトラフと整列するような程度まで第1の方向に沿って互いにオフセットされている、一連の正弦線である。いくつかの実施形態において、ピークとトラフは接触する。いくつかの実施形態において、ピークとトラフは重なり合う。いくつかの実施形態において、正弦波は、
図3Bに関連して以上で説明されている通り、固着部域またはパターン(42)と非固着部域またはポケット(44)を画定する。さらなる実施形態においては、他の規則的に反復するパターンを使用することができる。例えば、図示されているように、円、矩形、五角形、六角形、多角形のパターン(42)などを使用できると考えられる。さらなる実施形態においては、パターン(42)には、
図12Eに描かれているような異なる多角形または形状の組合せが含まれ得る。隣接する多角形または形状は、例えば、
図12A、12Cおよび12Eに示されているように、共通の(隣接する)縁部を共有することができ、または例えば
図12B、12Dおよび12Fに示されているように、互いに独立した縁部を有することもできる。多角形または他の形状が互いに独立しており、隣接する縁部間に非固着領域が存在する場合、隣接する縁部間の距離が、例えば5mm以下、または4mm未満、または3mm未満、または2mm未満、または1mm未満と、比較的小さく保たれるように注意しなければならない。いくつかの実施形態において、規則的に反復する多角形が各々、
図12Aに示されているように隣接する多角形と共通の辺を共有する。さらなる実施形態において、パターンは、比較的小さい開口部を有することができる。具体的実施例において、円形パターンは、難燃性接着剤のパターンが文字「C」に似るように、比較的小さい開口部を有することができる。しかしながら、開口部は可能なかぎり小さく保たれなければならない。他の実施形態において、パターンは、例えば
図4Bに示されたパターンのように、開口部が全く無い連続したパターンである。
【0153】
いくつかの実施形態においては、難燃性接着材料(40)のランダムパターン(図示せず)を生成するために、デジタル印刷を使用することができる。ランダムパターンは、形状および/または多角形の任意の組合せを含み得る。
【0154】
中間層と内側層の間の非固着部域を表わすポケット(44)は、最小25ミリメートル
2(mm
2)から最大22,500mm
2の範囲内の面積を有することができる。ポケットの面積は、積層構造体の個別のポケットの平均面積を意味する。積層構造体が異なる形状および/またはサイズのポケットを含む場合には、ポケットの少なくとも80%が、25mm
2~22,500mm
2の範囲内にある面積を有していなければならない。パターンが共通縁部を全くもたない形状で作られている
図12Bに示されているような実施形態においては、ポケット面積を計算するために、複数のポケットの面積のみが使用され;隣接する縁部の間の距離が大きくなるにつれて、複数のポケットの面積はより大きくなることが求められ得る。例えば、約50mm
2の面積を有する正方形のポケットの規則的反復パターンが使用される場合には、隣接する正方形のポケットの縁部間の距離は、例えば2mm未満または1mm未満など、可能なかぎり小さくなくてはならない。他の実施形態においては、ポケットは25mm
2~22,000mm
2または30mm
2~22,000mm
2または35mm
2~22,0000mm
2または40mm
2~22,000mm
2または45mm
2~22,000mm
2または50mm
2~22,000mm
2または75mm
2~22,000mm
2または100mm
2~22,000mm
2または100mm
2~20,000mm
2または100mm
2~15,000mm
2または100mm
2~10,000mm
2または100mm
2~9,000mm
2または100mm
2~8,000mm
2または100mm
2~7,000mm
2または100mm
2~6,000mm
2または100mm
2~5,000mm
2または100mm
2~4,000mm
2または100mm
2~3,000mm
2または100mm
2~2,000mm
2または100mm
2~1,000mm
2または100mm
2~900mm
2または100mm
2~800mm
2または100mm
2~700mm
2または100mm
2~600mm
2または100mm
2~500mm
2または100mm
2~400mm
2の面積を有することができる。
【0155】
難燃性接着剤は、例えばグラビア印刷、スクリーン印刷またはインクジェット印刷など、所望のパターンを生成するために使用可能である公知の積層技術を用いて適用され得る。いくつかの実施形態において、難燃性接着材料は、各々が(a)中間層、(b)内側層および(c)難燃性接着材料の一部分によって画定されている複数のポケットを形成するように配置(または適用)され得、ここで難燃性接着材料のパターンは内側層外側表面の75%未満を覆っている。一実施形態において、難燃性接着材料のパターンは、第1の方向に配向された第1の一連の平行線、および第2の方向に配向された第2の一連の平行線を含む格子パターンを含み、第1の方向および第2の方向は、30度~90度の範囲内の角度で互いにオフセットされている。一実施形態において、難燃性接着剤は、グラビアロールを用いて適用され得、ここで、グラビアロールは、第1の一連の平行線とこの第1の一連の平行線に対して90度で配向されている第2の一連の平行線を有する格子様のパターンを有する。例えば、各線は、個別のドットから形成され得、ドットは0.5ミリメートル(mm)のドットサイズを有し、ドットは0.713mmの中心間距離(ピッチ)を有し、線の幅は3.4mmであり、2本の隣接する平行線は23.53mmの中心間距離を有する。難燃性接着材料の線により画定されるポケットは、例えば約404平方ミリメートルであり得る。
【0156】
積層構造体はさらに内側層(50)を含む。内側層(50)は、任意の公知のテキスタイル繊維またはフィラメントから生成され得る内側テキスタイル層であってよい。テキスタイルは、難燃性繊維、非難燃性繊維、合成繊維、天然繊維またはそれらの組合せを含み得る。テキスタイルは、織物、ニットまたは不織布であり得る。いくつかの実施形態において、ニットは、丸編ニット、平編ニット、経編ニットまたはラッセル編ニットであり得る。好適な難燃性テキスタイルの例としては、p-アラミド、m-アラミド、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリフェニルスルフィド、ポリイミド、メラミン、フルオロポリマ、ポリテトラフルオロエチレン、モダクリル、セルロース、ポリビニルアセテート、無機物、タンパク繊維またはそれらの組合せから製造されたテキスタイルが含まれる。難燃性ではない他のテキスタイル、例えば合成繊維、天然繊維または合成繊維と天然繊維の両方を含むテキスタイルも同様に使用可能である。好適な合成繊維としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル、ポリウレタンまたはそれらの組合せが含まれ得る。好適な天然繊維としては、例えば、綿、羊毛、セルロース、獣毛、ジュート、大麻または他の任意の天然に発生する繊維が含まれ得る。それらの組合せも同様に使用可能である。いくつかの実施形態においては、小さな割合、例えば10重量パーセント未満の静電気防止繊維またはフィラメントをテキスタイルに添加することができ、ここで重量百分率は、テキスタイルの総重量に基づいている。当該技術分野では、好適な静電気防止繊維/フィラメントが公知であり、それには例えば導電性金属、銅、ニッケル、ステンレス鋼、鋼、金、銀、チタン、炭素繊維が含まれ得る。さらなる実施形態においては、内側テキスタイル層は、低い百分率の弾性フィラメントを含むことができる。好適な弾性フィラメントは例えば、ポリウレタン、エラスティン、スパンデックス、シリコーン、ゴムまたはそれらの組合せを含み得る。
【0157】
いくつかの実施形態において、内側層(50)は、15gsm~450gsmの範囲内の重量を有する織物、ニットまたは不織布を含む。他の実施形態において、内側層は、20gsm~450gsmまたは25gsm~450gsmまたは15gsm~400gsmまたは20gsm~400gsmまたは25gsm~400gsmまたは15gsm~375gsmまたは20gsm~375gsmまたは25gsm~375gsmまたは15gsm~350gsmまたは20gsm~350gsmまたは25gsm~350gsmまたは15gsm~325gsmまたは20gsm~325gsmまたは25gsm~325gsmまたは15gsm~300gsmまたは20gsm~300gsmまたは25gsm~300gsmまたは15gsm~275gsmまたは20gsm~275gsmまたは25gsm~275gsmまたは15gsm~250gsmまたは20gsm~250gsmまたは25gsm~250gsmまたは15gsm~225gsmまたは20gsm~225gsmまたは25gsm~225gsmまたは15gsm~200gsmまたは20gsm~200gsmまたは25gsm~200gsmまたは30gsm~250gsmまたは40gsm~250gsmまたは50gsm~250gsmまたは50gsm~200gsmまたは50gsm~190gsmまたは50gsm~180gsmまたは50gsm~170gsmまたは50gsm~160gsmまたは50gsm~150gsmまたは50gsm~140gsmまたは50gsm~130gsmまたは50gsm~120gsmまたは50gsm~110gsmまたは50gsm~100gsmまたは50gsm~90gsmの範囲内の重量を含む。内側層は、テキスタイル層であり得、ここでこのテキスタイル層は難燃性テキスタイル、溶融性テキスタイルを含むか、または難燃性繊維と溶融性繊維の両方を含むテキスタイルである。いくつかの実施形態において、内側層は、アラミドおよび難燃性ビスコースから製造される織物である。いくつかの実施形態において、内側層(50)は、50%のアラミドと50%のビスコースを含むアラミドと難燃性ビスコースの織物を含む。いくつかの実施形態において、内側層(50)は、約50gsm~約250gsmの重量を有するアラミドと難燃性ビスコースの織物を含む。いくつかの実施形態において、内側層(50)は、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)インタロックテキスタイルを含む。いくつかの実施形態において、内側層(50)は、約50gsm~200gsmの重量を有するPET編物を含む。いくつかの実施形態において、内側層(50)は、モダクリル/綿配合物(MAC/CO)編物を含む。いくつかの実施形態において、内側層(50)は、約50gsm~200gsmの重量を有するMAC/CO編物を含む。いくつかの実施形態において、内側層(50)は、約50gsm~200gsmの重量を有するPET編物を含む。いくつかの実施形態において、内側層(50)はモダクリル/綿配合物(MAC/CO)編物を含む。いくつかの実施形態において、内側層(50)は、約100gsm~200gsmの重量を有するMAC/CO編物を含む。いくつかの実施形態において、内側層(50)は、約5パーセント以下の静電気防止繊維をさらに含み約100gsm~200gsmの重量を有するMAC/CO編物を含む。いくつかの実施形態において、内側層(50)は、モダクリルニットである。いくつかの実施形態において、内側層(50)は、約50gsm~200gsmの重量を有するモダクリルニットである。
【0158】
いくつかの実施形態において、以上で開示されている積層構造体(2)は、500gsm以下の重量を有することができる。他の実施形態においては、積層構造体の重量は、400gsm未満または375gsm未満または350未満または325gsm未満または300gsm未満または275gsm未満であり得る。
【0159】
いくつかの実施形態において、積層構造体(2)は、ユーザに対して「アークフラッシュ保護」とも呼ばれる電気アークに対する曝露からの保護を提供することができる。いくつかの実施形態において、積層構造体(2)は、パネル形態および衣服形態の両方においてEN規格、EN61482-1-1:2014および/またはEN61482-1-2:2014を満たすアークフラッシュ保護を提供する。いくつかの実施形態において、積層構造体(2)は、クラス2のアークフラッシュ保護を提供し、EN規格、EN61482-1-2:2014を満たす。いくつかの実施形態において、EN規格、EN61482-1-2:2014を満たすために、パネル形態でEN規格、EN61482-1-2;2014中に定義されているように、アークフラッシュに曝露される積層構造体は、以下の基準の1つ以上を提供し得る:透過された入射エネルギと時間の関係のプロットがストール曲線として知られている規格よりも低いこと;5秒以下の残炎時間;または形成されたあらゆる孔のサイズが5ミリメートル以下でなければならないこと。他の実施形態において、パネル形態でEN規格、EN61482-1-2:2014中に定義されているようにアークフラッシュに曝露される積層構造体を含む品物(例えば衣服)は、以下の基準のうちの1つ以上を有し得る品物を提供することができる:5秒以下の残炎時間;形成されたあらゆる孔のサイズが5ミリメートル以下でなければならない;または品物は、いかなる溶融も滴下も示してはならない;または衣服のフロントジッパーは容易に開放しなければならない。
【0160】
いくつかの実施形態において、以上に記載の積層構造体(2)は、規格EN61482-1-1:2014および/またはEN61482-1-2:2014にしたがって適用されるものなどの電気アークに曝露される場合、積層構造体(2)の各部分は、
膨張し互いに離れるように撓む。いくつかの実施形態において、電気アークに対する曝露の時点で、外側
テキスタイル層(10)は溶融し、熱反応性材料(20)は
膨張する。熱反応性材料が
膨張するにつれて、
膨張する熱反応性材料は、溶融したまた溶融している外側
テキスタイル層を吸収し、それにより外側
テキスタイル層が火炎を持続させるのを防ぐと同時に外側
テキスタイル層が滴下するのを防ぐ。いくつかの実施形態において、電気アークに対する曝露の時点で、熱反応性材料(20)の層は、
膨張性黒鉛の存在に起因して
膨張する。電気アークに対する曝露の時点で、中間層、内側層および難燃性接着材料により画定されたポケットは、中間層と内側層が互いに分離することになり、こうして空隙を形成する。中間層および内側層によって画定されるポケットの分離は、
図4A(電気アークに対する曝露前)および4B(電気アークに対する曝露後)中の積層構造体の外観の差異によって分かる。
【0161】
図4Aは、アークフラッシュの適用前の例示的積層構造体(2)の内側層を示し、一方
図4Bは、アークフラッシュの適用後の積層構造体(2)の内側層を示す。ここで分かるように、
図4B中に示されている固着部域(42)を含む積層構造体(2)は、ポケット(44)に重なる
膨張済み領域(46)を含む。いくつかの実施形態において、
膨張済み領域(46)は、積層構造体(2)の内部で空隙を形成し、これにより、改善された断熱を提供し、かつ以上に記載の通りのストール曲線に対する試験などの試験における積層構造体(2)の性能を改善する。いくつかの実施形態において、
膨張済み領域(46)によって提供される断熱は、同じまたは類似の材料を含むものの、上述の
膨張済み領域(46)を生成するように作用する固着部域(42)およびポケット(44)を含むパターンが欠如している積層構造体に比べて軽量の材料の層を含む一方で、積層構造体(2)が規格EN61482-1-1:2014および/またはEN61482-1-2:2014に適合できるようにする。
【0162】
いくつかの実施形態において、積層構造体(2)は規格EN61482-1-1:2014および/またはEN61482-1-2:2014に適合し、500gsm以下の重量を有する。いくつかの実施形態において、積層構造体(2)は規格EN61482-1-1:2014および/またはEN61482-1-2:2014に適合し、475gsm以下の重量を有する。いくつかの実施形態において、積層構造体(2)は規格EN61482-1-1:2014および/またはEN61482-1-2:2014に適合し、450gsm以下の重量を有する。いくつかの実施形態において、積層構造体(2)は規格EN61482-1-1:2014および/またはEN61482-1-2:2014に適合し、425gsm以下の重量を有する。いくつかの実施形態において、積層構造体(2)は規格EN61482-1-1:2014および/またはEN61482-1-2:2014に適合し、400gsm以下の重量を有する。いくつかの実施形態において、積層構造体(2)は規格EN61482-1-1:2014および/またはEN61482-1-2:2014に適合し、375gsm以下の重量を有する。いくつかの実施形態において、積層構造体(2)は規格EN61482-1-1:2014および/またはEN61482-1-2:2014に適合し、350gsm以下の重量を有する。いくつかの実施形態において、積層構造体(2)は規格EN61482-1-1:2014および/またはEN61482-1-2:2014に適合し、325gsm以下の重量を有する。いくつかの実施形態において、積層構造体(2)は規格EN61482-1-1:2014および/またはEN61482-1-2:2014に適合し、300gsm以下の重量を有する。いくつかの実施形態において、積層構造体(2)は規格EN61482-1-1:2014および/またはEN61482-1-2:2014に適合し、275gsm以下の重量を有する。いくつかの実施形態において、積層構造体(2)は規格EN61482-1-1:2014および/またはEN61482-1-2:2014に適合し、265gsm以下の重量を有する。
【0163】
開示されている積層構造体は、同様に、電気アークに対する曝露の時点で、収縮に耐えることができる。いくつかの実施形態において、積層構造体は、以下で開示されている熱収縮試験にしたがって試験された場合に、10%未満だけ収縮する。さらなる実施形態において、積層構造体は、電気アークに対する曝露の時点で5%未満または4%未満または3%未満または2%未満だけ収縮する。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載の方法にしたがって作られた積層構造体は、以下に記載のMVTR試験にしたがって試験された場合に、約1000超、または約3000超、または約5000超、または約7000超、または約9000超、または約10000超、またはそれよりも高い水蒸気透過率(「MVTR」)を有する。いくつかの実施形態において、積層構造体は、本明細書中に記載の水平火炎試験用の方法にしたがって試験した場合、約50秒超、約60秒超さらには120秒超の開裂時間を有する。いくつかの実施形態において、積層構造体は同様に、本明細書中に記載の水平火炎試験にしたがって試験した場合に、20秒未満の残炎を有する。いくつかの実施形態において、積層構造体は、水平火炎試験により試験した場合に、15秒未満、または10秒未満、または5秒未満の残炎を有する。いくつかの実施形態において、積層構造体は、水平火炎試験において試験した場合に、実質的に全く溶融物滴下挙動を示さない。
【0164】
積層構造体(2)は、衣服として使用され得、ここで衣服は、着用者がその衣服を着用したとき内側層が着用者に対面するように構成されている。好適な衣服としては、例えば、ジャケット、シャツ、パンツ、カバーオール、手袋、ヘッドカバー、レッグカバー、エプロン、履物類またはそれらの組合せが含まれ得る。衣服は、着用者が着用する最も外側の層であり得、または別の衣服によって覆われるよう意図された下着でもあり得る。しかしながら典型的には、衣服は最も外側の衣服である。本開示は同様に、積層構造体が500gsm以下の総重量を有する、衣服の製造における積層構造体の使用にも関する。他の実施形態では、本開示は同様に、衣服を製造する上での積層構造体の使用において、積層構造体が500gsm以下の総重量を有しかつ積層構造体がEN61482-1-2:2014規格を満たしている使用、にも関する。本開示は同様に、衣服としての積層構造体の使用にも関する。
【0165】
積層構造体を含む衣服の快適性を増大させることのできる伸縮性布地を積層構造体内に組込むことが可能である。いくつかの実施形態において、1方向伸縮性布地を、例えば、開示全体が参照により本明細書中に組込まれている国際公開第2018/067529号の開示にしたがって組込むことができる。本明細書中で使用する1方向伸縮性布地とは、積層構造体が、縦目または横目の一方の方向で回復可能な弾性を有するものの、典型的に両方向には有していないことを意味する。積層構造体内に伸縮性布地を積層構造体、特に本質的に弾性でない1つ以上の層を含む構造内に組込むための他の方法が、当該技術分野において公知である。好適な例としては、例えば、開示全体が参照により本明細書中に組込まれている欧州特許第110626号および第1852253号の教示が含まれ得る。
【実施例】
【0166】
試験方法
TMA膨張試験:膨張性黒鉛粒子の膨張を測定する目的で、TMA(熱機械分析)を使用した。TA InstrumentsのTMA2940計器を用いて膨張を試験した。試料を保持するためには、およそ直径8mm、高さ12mmのセラミック(アルミナ)TGAパンを使用した。直径およそ6mmのマクロ膨張プローブを用いて、パンの底面をゼロに設定した。TMAプローブによって測定された奥行が約0.1~0.3mmである膨張性黒鉛の薄片を、パンの中に入れた。炉を閉じ、初期試料高さを測定した。炉を、10℃/分のランプ速度で、約25℃から600℃まで加熱した。TMAプローブ変位を温度に対してプロットし、膨張尺度としてこの変位を使用した。
【0167】
DSC吸熱試験:TZERO T(商標)密封パンを用いて、TA Instruments製のQ2000DSC上で試験を行なった。各試料について、パンの中に約3ミリグラム(mg)の膨張性黒鉛を置いた。かみそりの刃のコーナーを中心へと押圧しておよそ長さ2mm、幅1mm未満の通気口を創出することによってパンを通気した。DSCを20℃で平衡させた。その後、10℃/分で20℃から400℃まで試料を加熱した。吸熱値をDSC曲線から得た。
【0168】
バリヤ熱的安定性試験:好ましくは、熱的安定性バリヤ層は、25l/m2/sec未満の熱曝露後通気度を有する。熱的安定性バリヤ層の熱的安定性を決定するために、金属枠内に381mm(15in.)の正方形のファブリック供試体を挟持し、その後260℃(500°F)で強制空気循環式オーブン中に吊るした。5分間の曝露後、供試体をオーブンから取出した。供試体を冷ました後、供試体の通気度を、ISO9237(1995)にしたがって試験した。25l/m2/sec未満の供試体を、熱的安定性バリヤ層とみなした。
【0169】
EN ISO15025、方法A1にしたがって、水平火炎試験を行なった。水平火炎試験にしたがって10秒の曝露で試験を行った試料は、それらが5ミリメートル超の孔を示さず、2秒以下の残炎および2秒以下の残光を有していた場合に、合格とされた。外側テキスタイル層を水平火炎に曝露し、その後新しい試料で試験を反復し、内側テキスタイル層を水平火炎に曝露することによって、各試料を試験した。曝露した積層体の側に基づいて各試験を評定し、したがって一方の側が試験に合格し、もう一方の側が不合格となる可能性もあった。
【0170】
自己消火性試験:EN ISO15025。材料試料を、上述の水平火炎試験内で火炎から取出した後、材料を残炎について観察し、残炎時間を記録した。試料が、何らかの溶融物滴下または液滴落下を示した場合には、それも記録した。いかなる残炎も観察されなかった場合、または取出し後に残炎が観察されたが火炎から取出した後5秒以内に消失した場合、材料は自己消火性があるとされた。
【0171】
垂直火炎試験:これは、EN ISO15025、方法A2にしたがって行なわれた。3つの試料について残炎時間を平均した。2秒を超える残炎および残光のあるテキスタイルは、可燃性とみなされた。
【0172】
溶融および熱的安定性試験:試験は、テキスタイル材料の熱的安定性を決定するために使用された。この試験は、NFPA1975、2004版の第8.3節に記載の熱的安定性試験に基づいていた。試験用オーブンは、ISO17493において規定されている熱風循環式オーブンであった。以下の修正を加えた上で、高温における抵抗遮断手順(第89~93節)を用いて、ASTM D751、コーティングされたファブリック用の標準試験方法にしたがって、試験を行なった:
・ 100mm×100mm×3mm(4in.×4in.×1/8in)のホウケイ酸ガラス板を使用した。
・ 180℃±5℃の試験温度を使用した。オーブンからガラス板を取出した後、最低1時間にわたり供試体を冷却させた。
【0173】
ガラス板に粘着するか、広げた場合に自己粘着するか、または溶融または滴下の形跡を示す試料の側が全て、溶融性とみなされた。溶融性である側の形跡が無い試料の側は全て、熱的に安定であるものとみなされた。
【0174】
水蒸気透過率(MVTR):MVTRを測定するために利用される試験についての説明を以下に記す。手順は、フィルム、コーティングおよびコーティングされた製品を試験するために好適であることが分かっている。
【0175】
該手順においては、35重量部の酢酸カリウムと15重量部の精製水からなるおよそ70mlの溶液を、口部分で6.5cmの内径を有する133ml入りのポリプロピレンカップ内に入れた。米国特許第4,862,730号(Crosbyに対するもの)中に記載の方法によって試験して、およそ85,000g/m2/24hrs.の最低MVTRを有する延伸PTFE膜を、カップの唇状部に対し高温封止して、溶液を格納する張り詰めた漏れ防止微孔性バリヤを創出した。水浴の表面に対して、類似の延伸PTFE膜を組付けた。水浴アセンブリを、温度制御室および水循環浴を用いて23℃で制御した。試験手順の実施に先立ち、試験すべき試料を、23℃の温度および50%の相対湿度で状態調節した。微孔性膜が水浴の表面に組付けられた延伸PTFE膜と接触するように試料を置き、カップアセンブリの導入に先立ち少なくとも15分間平衡させた。カップアセンブリを、1/1000gの精度で秤量し、試験用試料の中心に倒置した形で設置した。その方向での拡散によって水の流束を提供する、飽和食塩水と水浴中の水との間の駆動力によって、水輸送を提供した。試料を15分間試験し、その後カップアセンブリを取出し、1/1000gの精度で再度秤量した。
【0176】
試料のMVTRを、カップアセンブリの重量増加から計算し、24時間1平方メートルの試料表面積あたりの水のグラム数で表現した。
【0177】
重量:ASTM D751、第10節で規定されている通りに、材料についての重量測定を行なった。
【0178】
空気透過性試験:好ましくは、中間層は、熱曝露後に25l/m2/sec未満の空気透過性を有する。中間層の熱的安定性を決定するために、381mm(15in.)の正方形の供試体を金属枠内に挟持し、その後、260℃の温度に設定した強制空気循環式オーブン内に吊した。5分間の曝露後、供試体をオーブンから取出した。供試体を冷ました後、供試体の通気度を、ISO9237(1995)なる表題の試験方法にしたがって試験した。
【0179】
柔軟性または風合い測定:積層構造体試料の風合い測定値を、Thwing-Albert Handle-o-meter(Thwing Albert Instrument Company,Philadelphia,PA製、型式番号211-5)を用いて得た。低い値は、試料を曲げるのに必要とされる負荷が低いことを表わし、より柔軟性の高い試料を示す。
【0180】
積層体の洗浄。ISO 6330 6N F60に示されている手順を用いて、各試料の洗浄を行なった。各洗浄/乾燥サイクルを5回行なった。ISO 6330 6N F60手順の前、および5回の全洗浄/乾燥サイクルの後に、各試料の重量を決定した。示された値は、3つの別個の試料の平均である。
【0181】
EN 61482-1-2:2014を用いて、電気アークボックス試験を行なった。
【0182】
IEC 61482-1-1:2009、方法Aを用いて、オープンアーク試験を行なった。
【0183】
炉膨張試験。摂氏300度で2分間、高温炉内でニッケルるつぼを加熱した。膨張性黒鉛の測定済み試料(約0.5g)をるつぼに添加し、摂氏300度の高温炉の中に3分間置いた。加熱期間後に、炉からるつぼを取出し、冷却させ、その後膨張した黒鉛を測定用シリンダに移して、膨張体積を測定した。膨張体積を試料の初期重量で除して、cc/g単位での膨張を得た。
【0184】
蒸発抵抗試験(RET)。水蒸気の透過に対する層または積層構造体の抵抗を評価し、こうして透湿度を査定するための手段である。Retは、ISO11092、1993年版によって実施され、m2Pa/Wで表わされる。より高いRet値は、透湿度がより低いことを表わす。
【0185】
多孔性。細孔径の測定は、Coulter Electronics,Inc.,Hialeah,Flaが生産するCoulter Porometer(商標)を用いて行なうことができる。Coulter Porometerは、ASTM規格E1298-89に記載の方法にしたがって多孔性媒質中の細孔径分布の自動測定値を決定する計器である。
【0186】
それでも、Coulter Porometerを用いて、利用可能な全ての多孔性材料について細孔径を決定することはできない。このような場合には、細孔径を、顕微鏡、例えば光学顕微鏡または電子顕微鏡などを用いて決定することも同様に可能である。
【0187】
厚み測定。ミツトヨ543-252BSスナップゲージの2枚のプレートの間に膜またはテキスタイル積層体を設置することによって、厚みを測定した。3回の測定の平均を使用した。
【0188】
別段の指摘の無いかぎり、以下の材料を使用した。
【0189】
外側テキスタイル層
外側テキスタイル層#1は、部品#FFM5318としてToray International UK,LTDから入手可能な、98%のポリエチレンテレフタレートと2%の静電気防止剤とを含む105グラム/メートル2(gsm)のあや織テキスタイルであった。外側テキスタイル層#1は、溶融および熱的安定性試験にしたがった溶融性テキスタイル層であった。
【0190】
外側テキスタイル層#2は、部品#6039647としてBorgini srlから入手可能な、50gsmのインタロックニットポリアミドテキスタイルであった。外側テキスタイル層#2は、溶融および熱的安定性試験にしたがった溶融性テキスタイル層であった。
【0191】
外側テキスタイル層#3は、部品#FFM2362としてToray International UK LTDから入手可能な、98%のポリエチレンテレフタレートと2%の静電気防止剤とを含む76gsmの平織テキスタイルであった。外側テキスタイル層#3は、溶融および熱的安定性試験にしたがった溶融性テキスタイル層であった。
【0192】
外側テキスタイル層#4は、部品#FFM2331としてToray International UK LTDから入手可能な、172gsmの織られた100%ポリエチレンテレフタレートであった。外側テキスタイル層#4は、溶融および熱的安定性試験にしたがった溶融性テキスタイル層であった。
【0193】
外側テキスタイル層#5は、部品#MGNY000DFとしてToray International UK LTDから入手可能な、1%の炭素を含む77gsmの織られた99%ナイロン6,6であった。外側テキスタイル層#5は、溶融および熱的安定性試験にしたがった溶融性テキスタイル層であった。
【0194】
外側テキスタイル層#6は、Borgini srlから入手可能な、75gsmの編まれたポリアミドであった。外側テキスタイル層#6は、溶融および熱的安定性試験にしたがった溶融性テキスタイル層であった。
【0195】
中間層
中間層#1は、部品番号4410078としてW.L.Gore and Associates,Elkton,Marylandから市販され、22gsmの目付重量、50%の多孔性、100マイクロメートルの厚みおよび20,000グラム/メートル2/日の水蒸気透過率(MVTR)を有する延伸ポリテトラフルオロエチレン(「ePTFE」)層であった。
【0196】
中間層#2は、米国特許第3,953,566号にしたがって生産され、22gsmの目付重量、60%の多孔性、90マイクロメートルの厚みおよび30,000グラム/メートル2/日の水蒸気透過率(MVTR)を有するePTFE層であった。
【0197】
中間層#3は、16.5gsmの重量を有する米国特許第3,953,566号にしたがって生産されたePTFE層であった。
【0198】
内側層
内側層#1は、部品#KRVC001としてSchuler&Co,KGから入手可能である、50%のアラミドと50%のFRビスコースでできた120gsmの平織テキスタイルであった。
【0199】
内側層#2は、部品#313602としてAmes Europe B.V.から入手可能な100%モダクリル製の90gsmのジャージーニットテキスタイルであった。
【0200】
内側層#3は、部品#1801としてTTI Technische Textilien Internation GmbHから入手可能な、60%モダクリルおよび38%綿/2%静電気防止繊維の配合物でできた200gsmのニットテキスタイルであった。
【0201】
熱反応性材料
熱反応性材料#1を、以下の手順にしたがって生産した。第1に共同所有された米国特許第4,532,316号にしたがって樹脂を形成し、反応装置内に約45重量%の量でリン系難燃性材料を添加することによって、難燃性ポリウレタン樹脂を調製した。ポリウレタン樹脂を形成した後、撹拌容器内において80℃で、76グラムのポリウレタン樹脂を24グラムの膨張性黒鉛(TMA膨張試験により決定される280℃で900マイクロメートル超の膨張を有する膨張性黒鉛)と混合した。混合物を冷却し、そのままの状態で使用した。
【0202】
熱反応性材料#2を、以下の手順にしたがって生産した。第1に共同所有された米国特許第4,532,316号にしたがって樹脂を形成し、反応装置内に約20重量%の量でリン系難燃性材料を添加することによって、難燃性ポリウレタン樹脂を調製した。ポリウレタン樹脂を形成した後、撹拌容器内において80℃で、65グラムのポリウレタン樹脂を24グラムの膨張性黒鉛(TMA膨張試験により決定される280℃で900マイクロメートル超の膨張を有する膨張性黒鉛)および追加の17グラムの別のリン系難燃性材料と混合した。混合物を冷却し、そのままの状態で使用した。
【0203】
熱反応性材料#3を以下のようにして生産した。メーカーの指示書にしたがって1:1の混合比で、ELASTOSIL(登録商標)LR6200A/BとしてWacker Chemieから入手可能な2成分(A/B)シリコーン混合物を混合した。混合して均質な混合物を形成した後、約12重量%の膨張性黒鉛(TMA膨張試験により決定される280℃で900マイクロメートル超の膨張を有する膨張性黒鉛)と約12重量%のリン系難燃性添加物を混合物に添加し、撹拌して均質な混合物を形成した。混合後、熱反応性材料#3をそのままの状態で使用した。
【0204】
難燃性接着剤層
難燃性接着剤#1は、第1に共同所有の米国特許第4,532,316号にしたがって樹脂を形成し、反応装置内に約20重量%の量でリン系難燃性材料を添加することによって調製された難燃性ポリウレタン樹脂である。
【0205】
グラビア
グラビア#1は、基板に対する約57%の接着剤被覆面積および45~55gsmの付着量を提供する反復するドットのパターンであった。ドットサイズは、約2ミリメートル(mm)×2mmで、各ドットの隣接する縁部間の離隔距離は、約0.6mmであった。
【0206】
グラビア#2は、第1の一連の平行線および、この第1の一連の平行線に対して90度配向された第2の一連の平行線を有する格子様のパターンであった。各々の線は、個別のドットで形成され、ドットは0.5mmのドットサイズを有し、ドットは0.713mmの中心間距離を有し、線の幅は3.4mmであり、2つの隣接する平行線は、23.53mmの中心間距離を有していた。接着剤を含まない面積すなわち接着剤の線によって境界画定されている面積は、約404平方ミリメートルであり、面積はスクリーンのサイズに基づくものであった。ドットパターンは、基板に対して約11%の接着剤被覆面積および約3~7gsmの接着剤付着量を提供する。
【0207】
グラビア#3は、約30%の接着剤被覆面積および約6.5~7.5gsmの接着剤付着量を提供する反復するドットのパターンであった。ドットサイズは0.4mmであり、各ドットの隣接する縁部間の離隔距離は約0.3mmであった。
【0208】
グラビア#4は、約35%の接着剤被覆面積およびおよそ100~110gsmの接着剤付着量を提供するドットパターンである。ドットのサイズは約1.6mmであり、各ドットの隣接する縁部間の離隔距離は約0.14mmであった。
【0209】
グラビア#5は、約40~41%の接着剤被覆面積および6.5~10gsmの接着剤付着量を提供する反復するドットのパターンである。ドットのサイズは約500マイクロメートルであり、各ドットの隣接する縁部間の離隔距離は約230マイクロメートルである。
【0210】
積層体例の調製
積層体例1~9の各々を、以下の手順にしたがって調製した。
【0211】
積層体例1
熱反応性材料#1を用いて、中間層#1に対して外側テキスタイル層#1を積層した。中間層上にグラビアロール#1(ドットパターン)を用いて熱反応性材料をグラビア印刷して、60~70グラム/メートル2(gsm)の範囲内の熱反応性材料の付着量を提供した。外側テキスタイル層を熱反応性材料層上に置き、2本のローラのニップの中を進ませた。この積層体をロール上に置いて、約2日間硬化させて前駆積層体を形成した。次に難燃性接着材料#1の層を、グラビアロール#2(格子様パターン)を用いて外側テキスタイル層とは反対の側で、前駆積層体の中間層に対して適用した。その後、内側層#1を難燃性接着材料上に置き、2本のローラのニップの中を進ませた。その後、積層体をロール上に置いて硬化させた。最後に、フルオロカーボン系の耐久性撥水材料のコーティングを外側テキスタイル層に適用し、水性溶媒を加熱によって除去した。
【0212】
積層体は、320.2gsmの初期重量、328.6gsmの洗浄後重量を有し、9300g/m2/dayの初期MVTR、および8637g/m2/dayの洗浄後MVTRを有していた。積層体は、8.6m2/Pa/Wの初期RETおよび8.3m2Pa/Wの洗浄後RETを有していた。
【0213】
積層体例2
熱反応性材料#2を用いて、中間層#1に対して外側テキスタイル層#1を積層した。中間層上にグラビアロール#1(ドットパターン)を用いて熱反応性材料をグラビア印刷して、60~70gsmの範囲内の熱反応性材料の付着量を提供した。外側テキスタイル層を熱反応性材料層上に置き、2本のローラのニップの中を進ませた。この積層体をロール上に置いて、約2日間硬化させて前駆積層体を形成した。次に難燃性接着材料#1の層を、グラビアロール#2(格子様パターン)を用いて外側テキスタイル層とは反対の側で、前駆積層体の中間層に対して適用した。その後、内側層#1を難燃性接着材料上に置き、2本のローラのニップの中を進ませた。その後、積層体をロール上に置いて硬化させた。最後に、フルオロカーボン系の耐久性撥水材料のコーティングを外側テキスタイル層に適用し、水性溶媒を加熱によって除去した。
【0214】
積層体は、322.2gsmの初期重量、330.1gsmの洗浄後重量を有し、7325g/m2/dayの初期MVTR、および6836g/m2/dayの洗浄後MVTRを有していた。積層体は、11.8m2/Pa/Wの初期RETおよび11.6m2Pa/Wの洗浄後RETを有していた。
【0215】
積層体例3
熱反応性材料#1を用いて、中間層#2に対して外側テキスタイル層#1を積層した。中間層上にグラビアロール#1(ドットパターン)を用いて熱反応性材料をグラビア印刷して、60~70gsmの範囲内の熱反応性材料の付着量を提供した。外側テキスタイル層を熱反応性材料層上に置き、2本のローラのニップの中を進ませた。この積層体をロール上に置いて、約2日間硬化させて前駆積層体を形成した。次に難燃性接着材料#1の層を、グラビアロール#2(格子様パターン)を用いて外側テキスタイル層とは反対の側で前駆積層体の中間層に対して適用した。その後、内側層#1を難燃性接着材料上に置き、2本のローラのニップの中を進ませた。その後、積層体をロール上に置いて硬化させた。最後に、フルオロカーボン系の耐久性撥水材料のコーティングを外側テキスタイル層に適用し、水性溶媒を加熱によって除去した。
【0216】
積層体は、305.3gsmの初期重量、314.8gsmの洗浄後重量を有し、9537g/m2/dayの初期MVTR、および8843g/m2/dayの洗浄後MVTRを有していた。積層体は、8.1m2/Pa/Wの初期RETおよび8.5m2Pa/Wの洗浄後RETを有していた。
【0217】
積層体例4
熱反応性材料#2を用いて、中間層#1に対して外側テキスタイル層#2を積層した。中間層上にグラビアロール#1(ドットパターン)を用いて熱反応性材料をグラビア印刷して、60~70gsmの範囲内の熱反応性材料の付着量を提供した。外側テキスタイル層を熱反応性材料層上に置き、2本のローラのニップの中を進ませた。この積層体をロール上に置いて、約2日間硬化させて前駆積層体を形成した。次に難燃性接着材料#1の層を、グラビアロール#2(格子様パターン)を用いて外側テキスタイル層とは反対の側で前駆積層体の中間層に対して適用した。その後、内側層#1を難燃性接着材料上に置き、2本のローラのニップの中を進ませた。その後、積層体をロール上に置いて硬化させた。最後に、フルオロカーボン系の耐久性撥水材料のコーティングを外側テキスタイル層に適用し、水性溶媒を加熱によって除去した。
【0218】
積層体は、263.5gsmの初期重量、327.1gsmの洗浄後重量を有し、11697g/m2/dayの初期MVTR、および7314g/m2/dayの洗浄後MVTRを有していた。積層体は、6.2m2/Pa/Wの初期RETおよび10.3m2Pa/Wの洗浄後RETを有していた。
【0219】
積層体例5
熱反応性材料#1を用いて、中間層#2に対して外側テキスタイル層#4を積層した。中間層上にグラビアロール#1(ドットパターン)を用いて熱反応性材料をグラビア印刷して、60~70gsmの範囲内の熱反応性材料の付着量を提供した。外側テキスタイル層を熱反応性材料層上に置き、2本のローラのニップの中を進ませた。この積層体をロール上に置いて、約2日間硬化させて前駆積層体を形成した。次に難燃性接着材料#1の層を、グラビアロール#2(格子様パターン)を用いて外側テキスタイル層とは反対の側で前駆積層体の中間層に対して適用した。その後、内側層#1を難燃性接着材料上に置き、2本のローラのニップの中を進ませた。その後、積層体をロール上に置いて硬化させた。最後に、フルオロカーボン系の耐久性撥水材料のコーティングを外側テキスタイル層に適用し、水性溶媒を加熱によって除去した。
【0220】
積層体は、380.7gsmの初期重量、393.0gsmの洗浄後重量を有し、8719g/m2/dayの初期MVTR、および7870g/m2/dayの洗浄後MVTRを有していた。積層体は、8.4m2/Pa/Wの初期RETおよび9.0m2Pa/Wの洗浄後RETを有していた。
【0221】
積層体例6
熱反応性材料#1を用いて、中間層#1に対して外側テキスタイル層#3を積層した。中間層上にグラビアロール#1(ドットパターン)を用いて熱反応性材料をグラビア印刷して、60~70gsmの範囲内の熱反応性材料の付着量を提供した。外側テキスタイル層を熱反応性材料層上に置き、2本のローラのニップの中を進ませた。この積層体をロール上に置いて、約2日間硬化させて前駆積層体を形成した。次に難燃性接着材料#1の層を、グラビアロール#2(格子様パターン)を用いて外側テキスタイル層とは反対の側で前駆積層体の中間層に対して適用した。その後、内側層#1を難燃性接着材料上に置き、2本のローラのニップの中を進ませた。その後、積層体をロール上に置いて硬化させた。最後に、フルオロカーボン系の耐久性撥水材料のコーティングを外側テキスタイル層に適用し、水性溶媒を加熱によって除去した。
【0222】
積層体は、278.3gsmの初期重量、285.3gsmの洗浄後重量を有し、6.9m2/Pa/Wの初期RETおよび7.0m2Pa/Wの洗浄後RETを有していた。
【0223】
積層体例7
熱反応性材料#1を用いて、中間層#3に対して外側テキスタイル層#3を積層した。中間層上にグラビアロール#1(ドットパターン)を用いて熱反応性材料をグラビア印刷して、60~70gsmの範囲内の熱反応性材料の付着量を提供した。外側テキスタイル層を熱反応性材料層上に置き、2本のローラのニップの中を進ませた。この積層体をロール上に置いて、約2日間硬化させて前駆積層体を形成した。次に難燃性接着材料#1の層を、グラビアロール#2(格子様パターン)を用いて外側テキスタイル層とは反対の側で前駆積層体の中間層に対して適用した。その後、内側層#1を難燃性接着材料上に置き、2本のローラのニップの中を進ませた。その後、積層体をロール上に置いて硬化させた。最後に、フルオロカーボン系の耐久性撥水材料のコーティングを外側テキスタイル層に適用し、水性溶媒を加熱によって除去した。
【0224】
積層体は、272.0gsmの初期重量、279.3gsmの洗浄後重量を有し、7.6m2/Pa/Wの初期RETおよび8.0m2Pa/Wの洗浄後RETを有していた。
【0225】
積層体例8
熱反応性材料#2を用いて、中間層#1に対して外側テキスタイル層#6を積層した。中間層上にグラビアロール#1(ドットパターン)を用いて熱反応性材料をグラビア印刷して、60~70gsmの範囲内の熱反応性材料の付着量を提供した。外側テキスタイル層を熱反応性材料層上に置き、2本のローラのニップの中を進ませた。この積層体をロール上に置いて、約2日間硬化させて前駆積層体を形成した。次に難燃性接着材料#1の層を、グラビアロール#2(格子様パターン)を用いて外側テキスタイル層とは反対の側で前駆積層体の中間層に対して適用した。その後、内側層#1を難燃性接着材料上に置き、2本のローラのニップの中を進ませた。その後、積層体をロール上に置いて硬化させた。
【0226】
積層体は、332.0gsmの洗浄後重量、6480g/m2/dayの洗浄後MVTR、12.1の洗浄後RETを有していた。
【0227】
積層体比較例A~Eの調製
比較用積層体A
熱反応性材料#3を用いて、中間層#3に対して外側テキスタイル層#3を積層した。内側層上にグラビアロール#4を用いて熱反応性材料をグラビア印刷して、60~70gsmの範囲内の接着剤付着量を提供した。外側テキスタイル層を熱反応性材料層上に置き、2本のローラのニップの中を進ませた。この積層体をロール上に置いて、約2日間硬化させて比較用積層体を形成した。最後に、フルオロカーボン系の耐久性撥水材料のコーティングを水分散液として外側テキスタイル層にスプレー適用し、試料を加熱することによって水分散液の溶媒を除去した。
【0228】
積層体は、349.0gsmの洗浄後重量、および12088g/m2/dayの洗浄後MVTRを有していた。
【0229】
比較用積層体B
熱反応性材料#3を用いて、中間層#1に対して外側テキスタイル層#2を積層した。内側層上にグラビアロール#4を用いて熱反応性材料をグラビア印刷して、60~70gsmの範囲内の接着剤付着量を提供した。外側テキスタイル層を熱反応性材料層上に置き、2本のローラのニップの中を進ませた。この積層体をロール上に置いて、約2日間硬化させて比較用積層体を形成した。最後に、フルオロカーボン系の耐久性撥水材料のコーティングを水分散液として外側テキスタイル層にスプレー適用し、試料を加熱することによって水分散液の溶媒を除去した。
【0230】
積層体は、269.0グラム/メートル2の洗浄後重量、および13502g/m2/day洗浄後MVTRを有していた。
【0231】
比較用積層体C
熱反応性材料#3を用いて、中間層#1に対して外側テキスタイル層#3を積層した。内側層上にグラビアロール#4を用いて熱反応性材料をグラビア印刷して、60~70gsmの範囲内の接着剤付着量を提供した。外側テキスタイル層を熱反応性材料層上に置き、2本のローラのニップの中を進ませた。この積層体をロール上に置いて、約2日間硬化させて比較用積層体を形成した。最後に、フルオロカーボン系の耐久性撥水材料のコーティングを水分散液として外側テキスタイル層にスプレー適用し、試料を加熱することによって水分散液の溶媒を除去した。
【0232】
積層体は、267.1グラム/メートル2の洗浄後重量、および13065g/m2/dayの洗浄後MVTRを有していた。
【0233】
比較用積層体D
熱反応性材料#3を用いて、中間層#3に対して外側テキスタイル層#5を積層した。内側層上にグラビアロール#4を用いて熱反応性材料をグラビア印刷して、60~70gsmの範囲内の接着剤の付着量を提供した。外側テキスタイル層を熱反応性材料層上に置き、2本のローラのニップの中を進ませた。この積層体をロール上に置いて、約2日間硬化させて比較用積層体を形成した。最後に、フルオロカーボン系の耐久性撥水材料のコーティングを水分散液として外側テキスタイル層にスプレー適用し、試料を加熱することによって水分散液の溶媒を除去した。
【0234】
積層体は、362.2グラム/メートル2の洗浄後重量、および10489g/m2/dayの洗浄後MVTRを有していた。
【0235】
比較例E
前駆積層体の幅を横断してドットパターンを用いるグラビアロール#1を使用して前駆積層体に対し内側層#1を接着させたという点を除いて、例8と同じ方法で、比較例Eを調製した。
【0236】
積層体例および比較用積層体を、試験方法EN61482-1-2:2014に準じてアークフラッシュ試験に付した。試験用の試料を調製する目的で、各積層体について目付重量を決定し、その後積層体を本明細書中の試験手順において提供されている通りの洗浄に付した。試料を洗浄し乾燥した後、目付重量を再度決定した。洗浄の前後に試験された積層体例4を除いて、洗浄後に積層体試料を試験方法EN61482-1-2:2014に付した。各試料を分析する目的で、30秒後の透過エネルギの差をキロジュール/メートル
2単位で決定した。差は、ストール曲線との関係における各試料を通して透過されたエネルギを表わす。ストール曲線は、曝露時間および伝達されたエネルギ量の両方の関数としての、例えば積層体などの基板を通した熱エネルギの伝達の1つの尺度である。ストール曲線は、適用された条件下で人が受けるものと予期しうる第2度熱傷傷害の予測因子である。ストール曲線の上方に入る値は、着用者が第2度熱傷を受け得ることの標示である。これと比較して、ストール曲線の下方に入る値は、第2度熱傷を受ける確率が低いことの標示であり、ストール曲線よりもさらに下方になればなるほど、すなわち差がマイナスになればなるほど、人が第2度熱傷による傷害を受ける尤度は低くなる。各積層体の試料を、以上で提供されている水平火炎試験にしたがって試験した。これらの試験の結果は表1にまとめられている。実施例1、2、3、4および5の試行の結果は、それぞれ
図5、6、7、8および9に見られ、例示的積層体はストール曲線の下方にある保護レベルを提供している。
【0237】
【0238】
結果は、一定のパターンで付着された難燃性接着剤を有し複数のポケットを形成する実施例1~8が、ストール曲線と比較した場合の透過エネルギの差から明らかであるように、電気アーク曝露に対する優れた保護を提供できる、ということを示している。比較例A、B、CおよびDは全て、ストール曲線の上方にある値を示しており、これは第2度熱傷傷害の尤度レベルが高いことを表わしている。
【0239】
実施例8および比較例Eは、試験方法EN61482-1-2:2014に付された。実施例8の4つの試料が試験されたのに対し、試験された比較例Eの試料はわずか2つであった。試験の結果は表2に示されている。実施例8の第1の試行の結果は
図10に見ることができ、積層体はストール曲線の下方にある保護レベルを提供している。比較例Eの第1の試行の結果は、
図11に見られ、値はストール曲線の上方に入り、第3度熱傷に対して着用者を保護できないことを表わしている。
【0240】
【0241】
実施例8のデータ点は全て、積層体がストール曲線よりも著しく下方にある結果を生み出すことを示している。
【0242】
ストール曲線の下方に入る値を生み出す衣服は、負の値として列挙され、ストール曲線の上方に入るデータ点は正の値として列挙されている。表2のデータにおいて、実施例8が比較例Eよりもはるかに低い値を生み出すことが分かる。2つの試料の間の差は、中間層と内側層の間のFR接着剤のパターンである。比較例Eは、2回だけ再現された。第1の試行は、全ての時点がストール曲線の下方にあるデータ点を結果としてもたらした。しかしながら、第2の試行においては、複数のデータ点がストール曲線の上方にあり、これは着用者が第2度熱傷を受けた可能性のあることの標示である。
【0243】
本発明の数多くの実施形態が説明されてきたが、これらの実施形態は単に例示的で非限定的なものであること、そして当業者には多くの修正が明らかになる可能性があること、が理解される。さらに、さまざまなステップは、任意の所望の順序で実施可能である(そして、任意の所望のステップを追加することおよび/または、任意の所望のステップを削除することも可能である)。