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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】口臭改善剤又は口臭予防剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/197 20060101AFI20230619BHJP
   A61K 41/00 20200101ALI20230619BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20230619BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
A61K31/197
A61K41/00
A61P1/02
A61P31/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021551697
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 JP2020038103
(87)【国際公開番号】W WO2021070896
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2019186000
(32)【優先日】2019-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】508123858
【氏名又は名称】SBIファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】沖永 敏則
(72)【発明者】
【氏名】南部 隆之
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹
(72)【発明者】
【氏名】石井 琢也
(72)【発明者】
【氏名】多田 大
(72)【発明者】
【氏名】説田 章平
【審査官】深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/047868(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/005379(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0326383(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/285766(US,A1)
【文献】Journal of Breath Research,2016年,Vol.10,Article No.046009
【文献】PROCEEDINGS OF SPIE,2004年,Vol.5610,p.218-223
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 41/00-41/17
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)
【化1】
(式中、Rは、水素原子、アシル基又はアルコキシカルボニル基を表し、Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基又はアラルキル基を表す。)で表される化合物又は薬学的に許容されるその塩を含み、口腔内に式(I)で表される化合物又は薬学的に許容されるその塩を投与し、その後360nm~700nmの波長の光を口腔内に照射する5-アミノレブリン酸-光線力学的療法(ALA-PDT)のための口臭改善剤又は口臭予防剤であって、前記口臭の原因菌が、バクテロイデス門に属する菌、フソバクテリウム門に属する菌、及びソロバクテリウム属に属する菌である、前記口臭改善剤又は口臭予防剤
【請求項2】
360nm~700nmの光が、発光ダイオード又はレーザーによる光である請求項1に記載の口臭改善剤又は口臭予防剤。
【請求項3】
口腔内に投与し、その後360nm~700nmの波長の光を口腔内に照射する口臭の改善又は予防に用いられる改善剤又は予防剤の製造に用いるための上記式(I)で表される化合物又は薬学的に許容されるその塩の利用であって、前記口臭の原因菌が、バクテロイデス門に属する菌、フソバクテリウム門に属する菌、及びソロバクテリウム属に属する菌である、前記利用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5-アミノレブリン酸(以下「ALA」ということがある。)若しくはその誘導体又はそれらの塩を含有し、360nm~700nmの波長の光を照射するALA-光線力学的療法(以下「ALA-PDT」いうことがある。)において用いられる口臭改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光に反応する化合物を投与し、光を照射することにより標的箇所を治療する方法である光線動力学的療法(以下PDTという。)が開発されてきた。PDTは、治療が簡便で、生体侵襲性が小さく、臓器温存が可能であること等から、クオリティ・オブ・ライフ(Quality Of Life;QOL)を考慮した新たながん治療法として注目されている。
【0003】
PDTに用いられる薬剤の一つであるALAは、動物や植物や菌類に広く存在する色素生合成経路の中間体として知られており、通常ALAシンセターゼにより、スクシニルCoAとグリシンとから生合成される。ALA自体には光感受性はないが、細胞内でヘム生合成経路の一連の酵素群によりプロトポルフィリンIX(以下「PpIX」ともいう)に代謝活性化され、直接腫瘍組織や新生血管へ特異的に集積し、かかるPpIX集積部位にレーザー光を照射すると、光の励起により生ずる一重項酸素及び/又はヒドロキシルラジカル、スーパーオキシド等に代表される活性酸素種によりがん細胞が変性・壊死することが知られている。
【0004】
一方、口臭のほとんどが口の中の菌体が原因であることが明らかとなっている。口腔内の細菌が唾液、血液、細胞や食べかすに含まれるタンパク質などを分解して硫化水素などの揮発性硫黄化合物を産生することで口臭が生じる。
このため、口臭を予防するために種々の殺菌剤が市販されている。エタノールは細胞膜の脂質を溶かすことや、細菌のタンパク質を変性させること、もしくはその脱水作用により殺菌作用を示すとされる。
【0005】
その他厚生労働省より発出されている「薬用歯みがき類製造販売基準について」(平成27年3月25日 厚生労働省医薬食品局長)においては、以下の成分が口臭防止に係る成分として記載されている。
アズレンスルホン酸ナトリウム水和物、イソプロピルメチルフェノール、アスコルビン酸、L-アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸ナトリウム、ゼオライト、塩化リゾチーム、リゾチーム塩酸塩、銅クロロフィルナトリウム、ヒノキチオール、ラウロイルサルコシンナトリウム。
【0006】
上記成分の作用機序は明らかでないものも多いが、口臭原因菌を選択的に殺菌できるという報告はない。
また、口臭との関連が指摘されているSolobacterium moorei(Tanabe S, Grenier D. : Characterization of volatile sulfur compound production by Solobacterium moorei. Arch Oral Biol. 2012, 57(12), 1639-43.参照)に対し、抹茶抽出物やアルファビサボロールとティーツリーオイルが効果を示したという報告がある(非特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Morin et al. : Green tea extract and its major constituentepigallocatechin-3-gallate inhibit growth and halitosis-related properties of Solobacterium moorei. BMC Complementary and Alternative Medicine 2015, 15, 48
【文献】Forrer M, Kulik EM, Filippi A, Waltimo T. The antimicrobial activity of alpha-bisabolol and tea tree oil against Solobacterium moorei, a Gram-positive bacterium associated with halitosis. Arch Oral Biol. 2013, 58(1),10-6.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
エタノールなどは口腔内の殺菌には粘膜への刺激が強く消費者が使用しづらいという問題がある。また、従来の殺菌成分は菌への選択性がないため、口腔環境の維持に必要な菌まで殺菌してしまうという欠点を抱えており、口臭原因菌を選択的に殺菌する方法が望まれていた。
本発明は、身体の侵襲性が少なく、口臭原因菌を選択的に殺菌できる製剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ALAを口腔内に投与し、特に紫色の光を照射することで、口臭原因菌を選択的に殺菌できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の事項により特定される次のとおりのものである。
[1]下記式(I)
【化1】
(式中、Rは、水素原子、アシル基又はアルコキシカルボニル基を表し、Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基又はアラルキル基を表す。)で表される化合物又は薬学的に許容されるその塩(以下、これらを総称して「ALA類」ということがある。)を含み、口腔内に式(I)で表される化合物又は薬学的に許容されるその塩を投与し、その後360nm~700nmの波長の光を口腔内に照射する5-アミノレブリン酸-光線力学的療法のための口臭改善剤又は口臭予防剤。
[2]口臭の原因菌が、バクテロイデス門、フソバクテリウム門及び/又はソロバクテリウム属に属する菌である[1]に記載の口臭改善剤又は口臭予防剤。
[3]360nm~700nmの光が、発光ダイオード又はレーザーによる光である[1]又は[2]に記載の口臭改善剤又は口臭予防剤。

[4]上記式(I)で表される化合物又は薬学的に許容されるその塩を口腔内に投与し、その後360nm~700nmの波長の光を口腔内に照射する口臭の改善方法又は予防方法。
[5]口腔内に投与し、その後360nm~700nmの波長の光を口腔内に照射する口臭の改善又は予防に用いるための上記式(I)で表される化合物又は薬学的に許容されるその塩。
[6]口腔内に投与し、その後360nm~700nmの波長の光を口腔内に照射する口臭の改善又は予防に用いられる改善剤又は予防剤の製造に用いるための上記式(I)で表される化合物又は薬学的に許容されるその塩の利用。
【発明の効果】
【0011】
従来の方法では口臭原因菌を含め、口腔内の細菌を非選択的に殺菌するしかなく、結果的に口腔内細菌叢の割合(口臭原因菌とその他の細菌の比率)に変化がなく、むしろ口腔細菌叢のバランスを悪くし、口臭の改善に寄与していないことが考えられる。本発明の口臭改善剤又は口臭予防剤を用いたALA-PDTによる殺菌作用により、口臭原因菌を優先的に殺菌できるようになり、この口腔内細菌叢のバランスがより口臭原因菌の少ない方向にシフトし、口臭に対する根本的な解決アプローチを提供できる。
また、ヒトの口腔内に常在する口臭原因菌は口腔細菌叢中の割合が変化することにより、強い口臭を誘導していると考えられる。しかし、口臭は本人自身よりも他人が感じるものでもある。本発明の薬剤を用いてALA-PDTを行うことで、口臭原因菌の増殖が抑制され、結果的に口臭を予防することができる。
なお、「口臭原因菌を選択的に殺菌できる」とは、口臭原因菌のみを殺菌し、口臭原因菌以外の菌は殺菌しないという意味と、口臭原因菌を口臭原因菌以外の菌に比して優先的に殺菌するという意味を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】被験者から採取されたプラークの希釈溶液にALAを所定濃度添加した溶液に紫色LEDを照射した時の各照射強度におけるノンメトリック多次元尺度構成法より求められた口腔内の細菌のβ多様性を示す。四角の中に記載された数字は、照射した光の強度(J/cm2)を示す。plaqueは、採取したプラーク(未培養)を示す。
図2】被験者A~Fから採取されたプラークの希釈溶液にALAを所定濃度添加した溶液に紫色LEDを照射した時の各照射強度における細菌の累積相対的存在量(cumulative relative abundance)を、門レベルでの分類にて示す。
図3】被験者から採取されたプラークの希釈溶液にALAを所定濃度添加した溶液に紫色LEDを照射した時の各照射強度におけるOTUレベルの解析によるSolobacte moorei、Fusobacterium nucleatum subsp. vincentii、 Fusobacterium nucleatum subsp. polymorphum、Prevotell salivae及びPrevotell orisの相対存在量(relative abundance)を示す。グラフの下の表は、フィッシャーの正確確率検定及びウィルコクソンの順位和検定で有意差が認められたグループを示す。グループは、左から右に1~5と設定している。
図4】被験者から採取されたプラークの希釈溶液にALAを所定濃度添加した溶液に紫色LEDを照射した時の各照射強度におけるOTUレベルの解析によるStreptococcus (Genus)及びStreptococcus mitisの相対存在量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の口臭改善剤又は口臭予防剤は、ALA類を含有し、360nm~700nmの波長の光を照射するALA-PDTのための口臭改善剤又は口臭予防剤であれば特に制限されない。360nm~700nmの波長の光を照射するALA-PDTの前に、360nm~420nmの波長の励起光を照射して、PpIX蓄積部位を検出する5-アミノレブリン酸-光線力学的診断(ALA-PDD)を行うこともできる。また、本発明の口臭改善剤又は口臭予防剤が適用されるシステムとしては、ALA-PDTデバイスを具備したシステムであればよく、ALA類の投与デバイスやALA-PDDを備えたものであってよい。
【0014】
式(I)で示される化合物中、Rは、水素原子、アシル基又はアルコキシカルボニル基を表し、Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
【0015】
におけるアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、ベンジルカルボニル基等の直鎖又は分岐状の炭素数1~8のアルカノイル基や、ベンゾイル基、1-ナフトイル基、2-ナフトイル基等の炭素数7~14のアロイル基を挙げることができる。
におけるアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロプロポキシカルボニル基等の直鎖又は分岐状の炭素数1~8アルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0016】
におけるアルキル基としては、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖又は分岐状の炭素数1~8のアルキル基を挙げることができる。
【0017】
におけるシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基等の炭素数3~8のシクロアルキル基を挙げることができる。
におけるシクロアルケニル基としては、1-シクロペンテニル基、1-シクロヘキセニル基等の炭素数3~8のシクロアルケニル基を挙げることができる。
【0018】
におけるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等の炭素数6~14のアリール基を挙げることができる。
【0019】
におけるアラルキル基としては、アリール部分は上記アリール基と同じ例示ができ、アルキル部分は上記アルキル基と同じ例示ができ、具体的には、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、ベンズヒドリル、トリチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等の炭素数7~20のアラルキル基を挙げることができる。
【0020】
上記R及びRは、必要に応じて化学的に許容される範囲で置換基を有していてもよく、そのような置換基として、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、アリール基等が挙げられる。
【0021】
式(I)で表される化合物として、生体内において、PpIXを形成することができるALAの任意の誘導体が好ましく、例えば、生体内でALAを形成し得るALAプロドラッグ又は中間体としてALAを形成せずにポルフィリンに変換(例えば、酵素的に)されるALAプロドラッグが挙げられ、中でも、ALAエステルが好ましく挙げられる。
【0022】
上記ALAエステルとして、例えば、ALA メチルエステル、ALA エチルエステル、ALA n-プロピルエステル、ALA n-ブチルエステル、ALA n-ペンチルエステル、ALA n-ヘキシルエステル、ALA n-オクチルエステル、ALA 2-メトキシエチルエステル、ALA 2-メチル-n-ペンチルエステル、ALA 4-メチル-n-ペンチルエステル、ALA 1-エチル-n-ブチルエステル、ALA 3,3-ジメチル-n-ブチルエステル、ALA ベンジルエステル、ALA 4-イソプロピルベンジルエステル、ALA 4-メチルベンジルエステル、ALA 2-メチルベンジルエステル、ALA 3-メチルベンジルエステル、ALA 4-(t-ブチル)ベンジルエステル、ALA 4-(トリフルオロメチル)ベンジルエステル、ALA 4-メトキシベンジルエステル、ALA 3,4-(ジクロロ)ベンジルエステル、ALA
4-クロロベンジルエステル、ALA 4-フルオロベンジルエステル、ALA 2-フルオロベンジルエステル、ALA 3-フルオロベンジルエステル、ALA 2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンジルエステル、ALA 3-ニトロベンジルエステル、ALA 4-ニトロベンジルエステル、ALA 2-フェニルエチルエステル、ALA 4-フェニルブチルエステル、ALA 3-ピリジル-メチルエステル、ALA 4-フェニルベンジルエステル、N-[(1-アセチルオキシ)エトキシカルボニル]ALA ベンジルエステル、N-ホルミル-ALA メチルエステル、N-アセチル-ALA エチルエステル、N-プロピオニル-ALA メチルエステル、N-ブチリル-ALA メチルエステル、N-ホルミル-ALA エチルエステル、N-アセチル-ALA エチルエステル、N-プロピオニル-ALA エチルエステル、N-ブチリル-ALA エチルエステル等が挙げられる。
【0023】
式(I)で表される化合物は、投与する形態に応じて、溶解性を上げるための各種の塩として投与することができる。式(I)で表される化合物の塩として、例えば、薬理学的に許容される酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩等が挙げられる。酸付加塩として、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の各無機酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、トルエンスルホン酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、グリコール酸塩、メタンスルホン酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩等の各有機酸付加塩等を例示することができる。金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等の各アルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム塩等の各アルカリ土類金属塩、アルミニウム、亜鉛等の各金属塩を例示することができる。アンモニウム塩としては、アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩等のアルキルアンモニウム塩等を例示することができる。有機アミン塩としては、トリエチルアミン塩、ピペリジン塩、モルホリン塩、トルイジン塩等の各塩を例示することができる。なお、これらの塩は使用時において溶液としても用いることができる。
【0024】
上記ALA類として、ALA;ALAメチルエステル、ALAエチルエステル、ALAプロピルエステル、ALAブチルエステル、ALAペンチルエステル等の各種エステル類;及びにこれらの塩酸塩、リン酸塩、硫酸塩が好ましく挙げられ、ALA塩酸塩やALAリン酸塩が特に好ましく挙げられる。
【0025】
上記ALA類は、化学合成、微生物による生産、酵素による生産のいずれの公知の方法によって製造することができる。また、上記ALA類は、水和物又は溶媒和物を形成していてもよく、またいずれかを単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0026】
上記ALA類を水溶液として調製する場合には、ALA類の分解を防ぐため、水溶液がアルカリ性とならないように留意する必要がある。アルカリ性となってしまう場合は、酸素を除去することによって分解を防ぐことができる。
【0027】
上記ALA類に加えて、必要に応じて以下に示す光増感剤を混合して使用することも同時投与することもできる。
ヘマトポルフィリン誘導体(HpD);フォトフリン[Photofrin](登録商標)(クアドラ ロジック テクノロジーズ社,バンクーバー,カナダ)、ヘマトポルフィリンIX(HpIX)等のヘマトポルフィリン;フォトサン[Photosan]III(シーホフ ラボラトリアム社,シーホフ,ヴェッセルブレーネルコーフ,ドイツ);テトラ(m-ヒドロキシフェニル)クロリン(m-THPC)、バクテリオクロリン(スコティア製薬会社,サリー州,イギリス)、モノ-L-アスパラチルクロリンe6(NPe6)(日本石油化学会社,カリフォルニア州,アメリカ)、クロリンe6(ポルフィリンプロダクト社)、ベンゾポルフィリン(クアドラ ロジック テクノロジーズ社,バンクーバー,カナダ)(例えば、benzoporphyrin derivative monoacid ring A、BPD-MA)、プルプリン[purpurine](PDT製薬会社,カリフォルニア州,アメリカ)(例えば、スズ-エチルエチオプルプリン[tin-ethyl etiopurpurin]、SnET2)等のクロリン;フタロシアニン(例えば、亜鉛-(クアドラロジック テクノロジーズ社,バンクーバー,カナダ)、いくらかのアルミニウム-又はシリコンフタロシアニン。これらはスルホン酸化されていてもよく、特にアルミニウムフタロシアニンジスルホン酸(AlPcS2a)、アルミニウムフタロシアニンテトラスルホン酸(AlPcS4)等のスルホン酸化フタロシアニン);ポルフィセン;ヒポクレリリン[hypocrellin];プロトポルフィリンIX(PpIX);ヘマトポルフィリンジ-エステル;ウロポルフィリン;コプロポルフィリン;ジュウテロポルフィリン;ポリヘマトポルフィリン(PHP)、ならびにそれらの前駆体、誘導体;テトラサイクリン(例えば、トピサイクリン[Topicycline](登録商標)、シャイアー社[Shire])。
これらは、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0028】
さらに、上記ALA類は、光感作効果を上げ、よってPDTを促進することができる他の活性を有する化合物と共に投与することができる。そのような化合物として、例えば、キレート剤が挙げられ、より具体的には、アミノポリカルボン酸、金属解毒に関する文献又は磁気共鳴映像法に用いる造影剤中の常磁性金属イオンのキレート化に関する文献に記載されているキレート剤等が挙げられ、さらに具体的には、エチレンジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸(EDTA)、1,2-ジアミノシクロヘキサン-N,N,N’,N’-四酢酸(CDTA)、ジエチレントリアミン-N,N,N’,N’’,N’’-五酢酸(DTPA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸(DOTA)、デスフェリオキサミン又は周知のそれらの誘導体/類似体が挙げられ、これらは、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
キレート剤を有する場合、該キレート剤は、標準的には0.05~20%(w/v)の濃
度で、例えば、0.1~10%(w/v)の濃度で用いられる。
【0029】
本発明においてALA類を口腔内に投与するとは、口腔内において、口臭原因菌が存在すると考えられる箇所に投与することをいい、特に噴霧や塗布が好ましい。本発明の口臭改善剤又は口臭予防剤を投与する方法は、特に限定されないが、例えば、スプレーによる噴霧、ローラーによる塗布等が挙げられる。
【0030】
本発明の口臭改善剤又は口臭予防剤の剤型として、例えば、ゲル、クリーム、軟膏、スプレー、ローション、エアロゾル、外用液剤等が挙げられる。
【0031】
本発明の口臭改善剤又は口臭予防剤において、含まれるALA類の濃度は、化合物の化学的性質、化学組成、投与方法及び改善又は予防されるべき口臭の程度を含むさまざまな要因に応じて変化するが、50%(w/v)未満の濃度範囲が好ましく、0.05~16%(w/v)がさらに好ましく、0.5~14%(w/v)が特に好ましく、例えば、1.5~12.0%(w/v)又は2~10%(w/v)の範囲を好適に例示することができる。
【0032】
上記本発明の口臭改善剤又は口臭予防剤を用いた口臭の改善方法又は予防方法は、ALA類を口腔内に投与し、ヘム生合成経路を経て誘導されたPpIXが口臭原因菌における細胞内に集積し、口臭原因菌細胞内に蓄積したPpIXを、光を照射して励起させることで、周囲の酸素分子を光励起し、その結果生成する光の励起により生ずる一重項酸素及び/又はヒドロキシルラジカル、スーパーオキシド等に代表される活性酸素種が、その強い酸化力による殺細胞効果を有することを利用する口臭の改善方法又は予防方法である。
本発明の口臭改善剤又は口臭予防剤を用いて口臭を改善又は予防した場合に、口臭原因菌とされている菌、具体的にはバクテロイデス(Bacteroidetes)門に属する菌、フソバクテリウム(Fusobacteria)門に属する菌、ソロバクテリウム(Solobacterium)属等の菌を殺菌することができるが、健康な口腔菌叢を構成している口臭原因菌以外の菌、例えばStreptococcus mitis等に影響を及ばせずに又は少なくして、優先的に口臭原因菌を殺菌することができる。
【0033】
本発明の口臭改善剤又は口臭予防剤は、口腔内に投与され、望ましい光感作効果を得るため、改善又は予防されるべき部位が露光される前に、特定の時間が経過していることが好ましい。露光前に、余剰の口臭改善剤又は口臭予防剤は除去されることが好ましい。
【0034】
投与した後、露光が行われるまでの時間は、ALA類の種類、改善又は予防すべき条件及び投与の形態によって決まる。その時間は、例えば、約3~6時間が挙げられ、0~90分間、5~90分間、30~90分間が好ましく挙げられ、10~50分間が特に好ましく挙げられる。
【0035】
本発明の口臭改善剤又は口臭予防剤を投与後、光活性化は、当該分野において公知である光源を用いて行うことができ、例えば紫色LED、青色LED、赤色LED等の発光ダイオード、紫色半導体レーザー、赤色半導体レーザー等の半導体レーザー等のレーザー、強い紫色、青色又は赤色発光スペクトルをもつ放電ランプ等を挙げることができるが、装置がコンパクトになり、コスト面や可搬性において有利であるという点では、紫色LED、青色LED、赤色LED等の発光ダイオード(LED)又はレーザーを好適に例示することができる。照射に使用する光の波長は、より効率的な光感作効果を得るために選択することができ、360~700nmの範囲の光が挙げられ、特に紫外光に近い紫色の波長の光であって、少なくとも360nm~420nmの範囲内の波長の光が好ましく、より具体的には、360~420nm、380~420nm、403~410nm等の範囲の波長の光を挙げることができ、中でも408nmが好ましい。
【0036】
また、エネルギー密度は、10~200J/cm2の範囲が好ましく、10~100J/cm2の範囲がさらに好ましく、20~60J/cm2の範囲が特に好ましい。
また、用いる光源のパワー密度は、本発明の効果を奏する範囲であれば特に制限を受けず、例えば、15~400mW/cmの範囲が好ましく、15~50mW/cm2、5~40mW/cm2、10~35mW/cm2の範囲がさらに好ましく、15~35mW/cm2の範囲が特に好ましい。
【0037】
また、照射光は、連続光であってもよく、パルス光であってもよいが、パルス光を利用することにより、正常な皮膚表面への損傷を小さくできる点で、パルス光がより好ましい。
【0038】
光照射時間は、エネルギー密度及びパワー密度にもよるが、5~30分間、好ましくは15分間行うことが望ましい。照射は1回だけであってもよく、あるいは、例えば照射の間隔を1~10分間とし、光照射量をいくつかに分割した光照射として用いてもよい。
【0039】
励起光照射デバイスとしては、光源用細径光ファイバーを挙げることができ、蓄積されたPpIXを励起させるALA-PDTステップにおいて照射する励起光の光源としては、微小な口臭原因菌の繁殖部位についてもPpIXの励起を行うことを可能とするために放射照度が強く、精確な自動識別を可能とするために照射面積が狭い半導体レーザー又はLED光源が好ましく、励起光を導光して一端から外部へ出射する励起光導光部を有することが好ましく、励起光導光部としては、具体的には細径光ファイバーが挙げられる。
光源に用いられる素子としては、InGaN等の半導体混晶を用いることができ、InGaNの配合比を変えることで、紫色光を発振することができる。具体的には直径5.6mm程度のコンパクトなレーザーダイオードを好適に例示することができる。レーザーダイオードから4レーザーアウトプットのポートと、スペクトル測定用のポートはビルトイン高感度スペクトロスコープで連結されたデスクトップPCほどのサイズである装置を例示することができる。
また、より作業性を向上させるために、ペン型LEDライト、スティック型LEDライト、懐中電灯型LEDライト、LEDライトを搭載/具備した歯ブラシ等を用いることもできる。
【0040】
前記のように、本発明の改善剤又は予防剤を用いる改善方法又は予防方法においては、ALA-PDDを行うこともできる。ALA-PDDは、本発明のALA-PDTの前に、口臭原因菌細胞内に蓄積したPpIXに紫色の光を照射すると赤色の蛍光を発することを利用して、口臭原因菌の付着部位を特定する判定方法である。かかるALA-PDDステップにおいて用いられるALA-PDDデバイスとしては、PpIXの励起光照射デバイスと、励起状態のPpIX特有の赤色蛍光検出デバイス、あるいは、これらが一体化されたデバイスを例示することができる。PpIXの励起光照射デバイスから照射する光としては、PpIXを励起させることで、PpIX特有の赤色蛍光が観察できる波長の光が好ましく、いわゆるソーレー帯に属するPpIXの吸収ピークに属する紫外光に近い紫色の波長の光であって、少なくとも360nm~420nmの範囲内の波長の光であればよく、例えば、360~420nm、403~410nm等を挙げることができるが、中でも408nmが好ましい。
【0041】
上記ALA-PDDステップにおける励起光を照射する光源としては、公知のものを使用することができ、例えば紫色LED、好ましくはフラッシュライト型紫色LEDや、半導体レーザー等の光源を挙げることができるが、装置がコンパクトになり、コスト面や可搬性において有利である紫色LED、中でもフラッシュライト型紫色LEDや、紫色半導体ダイオードを好適に例示することができる。また、PpIX蓄積部位を検出し、照射すべき口臭原因原菌の繁殖範囲を判断するための、赤色の蛍光、具体的には610nm~750nm、好ましくは625~638nmの波長の蛍光を検出するための赤色蛍光検出デバイスとしては、肉眼による検出デバイスやCCDカメラによる検出デバイスを挙げることができる。
【0042】
励起光照射デバイスと赤色蛍光検出デバイスとが一体化されたALA-PDDデバイスとしては、光源・計測用細径光ファイバーを挙げることができ、蓄積されたPpIXを励起させるALA-PDDステップにおいて照射する励起光の光源としては、微小な口臭原因菌の繁殖部位についてもPpIXの検出を行うことを可能とするために放射照度が強く、精確な自動識別を可能とするために照射面積が狭い半導体レーザー光源が好ましく、励起光を導光して一端から外部へ出射する励起光導光部を有することが好ましく、励起光導光部としては、具体的には細径光ファイバーを挙げることができる。光源に用いられる素子としては、InGaN等の半導体混晶を用いることができ、InGaNの配合比を変えることで、紫色光を発振することができる。具体的には直径5.6mm程度のコンパクトなレーザーダイオードを好適に例示することができる。レーザーダイオードから4レーザーアウトプットのポートと、スペクトル測定用のポートはビルトイン高感度スペクトロスコープで連結されたデスクトップPCほどのサイズである装置を例示することができる。また、前記励起光によって励起されたPpIXが発する蛍光を受光する受光工程においては計測用細径光ファイバーが用いられ、該計測用細径光ファイバーは前記光源用細径光ファイバーと一体化され、受光した蛍光を検出器に導光してPpIX蓄積部位の判定を行う。
【0043】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は、これら実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0044】
歯間プラークは、6名の健常成人よりデンタルフロス(オキナ社製)を用いて採取した。被検者は、採取1時間前より飲食を控えてもらい、採取前1ヶ月間に抗菌薬を使用していないことを確認した。採取した歯間プラークは、100μLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いてフロスから滅菌プラスチックチューブに移した。氷冷状態で嫌気チャンバー(80%窒素,10%水素,10%二酸化炭素の環境)内に入れ、ピペッティングにより均一なプラーク懸濁液を作成した。なお、本研究プロトコールは大阪歯科大学医の倫理委員会により審査、承認され(大歯医倫第111002号)、すべての被検者より同意を得ている。
【0045】
上記プラーク懸濁液100μLに500μLのSHI培地(Tian Y, He, et. al, Mol Oral Microbiol. 2010, 25(5), 357-67参照)を添加し、嫌気チャンバー内で20時間振盪培養した。遠心分離(13,000×g,5分)、上清破棄の後,沈殿したプラーク細菌を500μLのPBS(富士フィルム和光純薬、大阪)で懸濁した。光学濃度(OD)を測定し、プラーク細菌溶液をOD600が0.1となるように希釈してプラーク細菌希釈溶液を調製した。
【0046】
ALA0.15gをPBS1.2mlに溶解し、さらに10N NaOH溶液0.3mlを加えて、pH5.0のALA溶液を調整した。
上記プラーク細菌希釈溶液と前記ALA溶液を、12穴のプレートにいれ、ALAの最終濃度を0.1%(w/v)に調整した。37℃で嫌気条件下に暗所で静置し、2時間後にAladuck LS-DLED(SBIファーマ社製)を用いて紫色LED(ピーク波長400~410nm)を照射密度0.18W/cmで時間を調節し、照射エネルギー密度が5、10、25、50J/cmとなるよう各ウェルに照射した。
それぞれのウェルより100μL採取した菌液を900μL SHI培地と混合し、嫌気チャンバー内で20時間振盪培養した。サンプルを遠心分離の後、DNA抽出まで沈殿物を-80℃で保存した。
【0047】
上記プラーク細菌希釈溶液及び上記培養後の沈殿物からPathogen Lysis Tube (S)(Qiagen社製)とQIAamp UCP Pathogen Mini Kit(Qiagen社製)を用いて細菌DNAの抽出を行った。Qubit dsDNA BR Assay Kit(Thermo Fisher社製)によりDNA濃度を測定後、細菌16S rRNA遺伝子V3-V4領域を標的としたPCR増幅を行った。PCR産物をAMPure Beads(Beckman Coulter社製)で精製後、次世代シークエンサー(MiSeq、イルミナ社製)により、遺伝子配列の解読を網羅的に行った。得られた配列データの解析及び統計処理は、次世代シークエンス解析ソフトウエア(CLC Genomics Workbench、フィルジェン社製)及びRスクリプトワークフロー(Rhea)(Lagkouvardos I,Fischer S, Kumar N, Clavel T. Rhea: a transparent andmodular R pipeline for microbial profiling based on 16S rRNA gene amplicons. PeerJ. 2017, 11(5), e2836)により行い、細菌叢の変動を求めた。
【0048】
ノンメトリック多次元尺度構成法より光照射強度依存的に有意にβ多様性が変化することが明らかとなった(図1)。
光照射強度の増加に伴ってバクテロイデス(Bacteroidetes)門とフソバクテリウム(Fusobacteria)門の著しい減少とプロテオバクテリア(Proteobacteria)門の増加が確認された。(図2及び図3)。OTUレベルの解析では口臭との関連が指摘されているフソバクテリウム門やSolobacterium mooreiの減少が認められた(図3)。また、本発明の口臭改善剤を用いたALA-PDTによる改善方法は、例えば、健康な口腔菌叢を構成している口臭原因菌以外の菌として知られるStreptococcus mitis(Ogata K et al. : Effect of coffee on the compositional shift of oral indigenous microbiota cultured invitro. J Oral Sci. 2019, 61(3), 418-424; Takeshita T et al. : Bacterial diversity in saliva and oral health-related conditions: the Hisayama Study Sci Rep. 2016, 6. 22164. 参照)に対して、紫色LED照射前後でその相対存在量(relative abundance(%))に影響がなかった(図4)ことから、口臭原因菌以外の菌には影響を与えない可能性があることがわかった。
【0049】
β多様性が光照射により一定の方向にシフトしたこと(図1)、並びに図2及び図3により、本発明の口臭改善剤又は口臭予防剤を用いたALA-PDTにより口腔内細菌叢のバランスが一定の方向にシフトすることが示唆された。また、図3より、口臭との関連が指摘されている細菌を殺菌できることが示唆された。さらに、図4により、健康な口腔菌叢を構成する口臭原因菌以外の菌には影響を与えなかったことから、本発明の口臭改善剤又は口臭予防剤を用いたALA-PDTは口臭の原因となる細菌を口臭原因菌以外の菌に影響を与えず又は少なくして殺菌できる方法であることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の口臭改善剤、口臭予防剤、並びに口臭の改善方法及び予防方法は、口臭原因菌を選択的に殺菌でき、しかも生体侵襲性が小さいことから、口臭を改善又は予防する医療分野及びヘルスケア分野において利用することができる。
図1
図2
図3
図4