(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】ガラス繊維強化プラスチックをリサイクルさせるための方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20230619BHJP
B29B 17/04 20060101ALI20230619BHJP
C08J 11/12 20060101ALI20230619BHJP
C08J 11/24 20060101ALI20230619BHJP
C07C 51/09 20060101ALI20230619BHJP
C07C 63/26 20060101ALI20230619BHJP
C07C 31/20 20060101ALI20230619BHJP
C07C 27/02 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
B29B17/04
C08J11/12
C08J11/24
C07C51/09
C07C63/26
C07C31/20 B
C07C27/02
(21)【出願番号】P 2021560882
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(86)【国際出願番号】 EP2020059789
(87)【国際公開番号】W WO2020212186
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-10-13
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505422707
【氏名又は名称】ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ヴィット
(72)【発明者】
【氏名】デトレフ・ヨアヒミ
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-037726(JP,A)
【文献】特開2010-215676(JP,A)
【文献】特開2000-034363(JP,A)
【文献】特開平08-041241(JP,A)
【文献】特開平02-121806(JP,A)
【文献】特開平09-221565(JP,A)
【文献】米国特許第05776989(US,A)
【文献】特表2004-502811(JP,A)
【文献】特開2001-172426(JP,A)
【文献】特開2013-064219(JP,A)
【文献】特表2018-522107(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104017205(CN,A)
【文献】特表平11-508913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 17/02
B29B 17/04
C08J 11/12
C08J 11/24
C07C 51/09
C07C 63/26
C07C 31/20
C07C 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GRPをリサイクルさせるためのプロセスであって、
a)GRPのポリマーマトリックスの最大80重量%までを解重合させ、前記ポリマーマトリックスから生成した開裂反応生成物を除去し、その残った残分を濃縮して、ガラスベースの構成成分、残存マトリックス、モノマー、開裂反応生成物、及びリサイクル上問題となる構成成分の混合物とする工程
、
b)プロセス工程a)の最後に、前記残分の中に残っている有機物部分をエネルギー源として利用して、その燃焼熱を、前記ガラスベースの構成成分を加熱及び融解させるために使用し、それと同時に、前記有機物の構成成分を、ガス状の燃焼反応生成物に転換させることによって除去する工程、
並びに
c)さらなる加工のために、そのガラスの溶融物を分離する工程、
(ただし、そのポリマーマトリックスは、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、又はPBTとPETとのコポリマーをベースとするものである)
を特徴と
し、
リサイクル上問題となる前記構成成分が、不純物、添加物、及びこれらの分解反応生成物であり、前記添加物が、UV安定剤、熱安定剤、γ線安定剤、帯電防止剤、エラストマー変性剤、流動促進剤、離型剤、難燃剤、乳化剤、成核剤、可塑剤、滑沢剤、染料、顔料から選択される機能性添加物、並びに導電率を増大させるための添加物であり、前記不純物が、ダスト、土類、錆の形態にある酸化鉄、又はポリマーマトリックスの中に貫入しているか、又はそれに付着した異物から選択される、プロセス。
【請求項2】
前記ポリマーマトリックスの少なくとも50重量
%が、解重合されることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
プロセス工程a)において採用される前記GRP構成成分が、類似タイ
プの様式で前もって集められ、類似タイ
プの様式でプロセス工程a)に採用されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
プロセス工程a)において採用される前記GRP構成成分が、解重合で使用される前に、破砕されて小片となることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
プロセス工程a)において採用される前記GRPが、前記解重合の前に、クリーニングにかけられることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
プロセス工程a)において採用されるGRPが、加熱され、添加物を添加された後で、空気の非存在下での、熱分解的開裂にかけられることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
プロセス工程a)において採用されるGRPが、水又はアルコールの存在下で解重合されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
プロセス工程a)の途中又は終了後に、前記開裂反応生成物及び/又は添加された加水分解/加溶媒分解用の液体が、減圧下で蒸留除去されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
プロセス工程a)において、元々のポリマーマトリックスの少なくとも20重量%が、前記
残分の中に残っている有機物部分中に残っていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
プロセス工程a)において、ポリマー鎖の開裂によって生成した、前記GRP(マトリックス)ポリマーの開裂反応生成物が、それに続く再重合にかけられて、未使用材料の特性を有するリサイクル物プラスチックが製造されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記開裂反応生成物が、ε-カプロラクタムであり、前記リサイクル物プラスチックが、ポリアミド6であることを特徴とする、請求
項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記開裂反応生成物が、テレフタル酸、並びに1,4-ブタンジオール/その脱水反応生成物であるテトラヒドロフランであり、前記リサイクル物プラスチックが、ポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする、請求
項10に記載のプロセス。
【請求項13】
プロセス工程a)において、前記ポリマー鎖の開裂により生成した、前記GRP(マトリックス)ポリマーの前記開裂反応生成物が、少なくとも部分的に、プロセス工程b)における燃焼操作のための燃料としても採用されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
残存する少なくとも20重量%の有機物質を使用して、前記ガラスの構成成分の上に残ってい
る不純物、添加物、及び分解反応生成物
を、プロセス工程b)における燃焼プロセスで、ガラス充填材/ガラスの溶融物から除去
することを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
プロセス工程b)において
、追加のエネルギーを供給することを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維強化したプラスチック、特には、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、又はポリエチレンテレフタレートをベースとするプラスチックをリサイクルして、そのポリマーのモノマー、及びそれらのガラス繊維のために使用されたガラスを回収するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
現代の高弾性複合材料プラスチックは、今日では、多くの場合、ガラス繊維強化した熱可塑性プラスチック、特にはポリアミド、又はテレフタル酸をベースとするポリエステルをベースとしている。LANXESS Deutschland GmbH(Cologne)は、チョップトガラス繊維強化のプラスチックペレット材料を商品名Durethan(登録商標)及びPocan(登録商標)として上市し、そして連続繊維強化した半製品/複合材料を、商品名TEPEX(登録商標)として上市している。それら上市されているペレット材料の強化ガラス繊維の質量分率は、典型的には、5~80重量パーセントの範囲である。
【0003】
ガラスベースの、特には繊維の形態にある充填材及び補強材により、充填材又は補強材なしの場合のプラスチック構成成分に比較して、強度、靱性、及び剛性の点で、かなりの改良が達成されている。近年においては、このことにより、特に自動車の製造において、多くの金属ベースの構成材料を、ガラス繊維強化プラスチック(GRP)によって置き換えることが可能となった。
【0004】
今や、熱安定化添加物を追加することによって、GRPを、特に自動車のエンジンルームの分野においては、それらの添加物を用いた安定化がされていない純粋なポリマーでは不可能であるような高熱応力の領域において使用することも可能となった。
【0005】
GRPベースの構成成分は、今日では、すべての運輸分野において、経済性に優れた軽量構造物が可能になった。自動車において重量削減を達成することによって、エネルギー消費量(燃料又は電気エネルギー)を顕著に低減させることが可能となった。
【0006】
しかしながら、使用期間が終了した時点では、自動車の廃車の場合には、車のリサイクル業者に送られるが、GRPベースの構成成分は、特に、同一の物質からなる新規な材料を置き換えようとすると、リサイクル作業には極めて高い困難さをもたらす。このことは、使用時の品質低下を回避若しくは低減させる目的で、目標用途のために添加物を大量に加えなければならないGRP構成成分には、よりいっそうあてはまる。本発明の文脈においては、「品質低下(downgrading)」という用語は、特に、その(マトリックス)ポリマーの分子鎖が開裂した結果としての、機械的性質のレベル劣化を意味していると理解されたい。
【0007】
不純物もまた、GRPベースのプラスチックのリサイクル物の品質レベルには、重要な役割を果たす。機械的リサイクルでは、リサイクル物を、同じ用途又は他の要求の厳しい用途での製造に使用しようとすると、リサイクルされるプラスチック廃棄物に対する要求が特に高くなる。機械的リサイクルでは、物理的プロセスのみが採用される。物理的プロセスとしては、たとえば、洗浄、乾燥、微粉砕、融解、コンパウンディング、溶融濾過、及び再ペレット化が挙げられる。言うまでもないことではあるが、物理的プロセスを介して、プラスチック廃棄物が、良好な品質のリサイクル物へとリサイクルされ得るという例も存在する。それには通常、以下のような前提条件が必要となる。
【0008】
GRPで作製された構成成分は、同一のタイプの形態で回収しなければならず、汚れの程度は低くなくてはならず、その使用期間の間に顕著なポリマーの分解が起きていてはならず、そしてそれに加えて、その全使用期間を通じて、そのポリマーマトリックスが、極めてわずかな異物しか吸収していてはならないが、そのような異物としては、たとえば乗用車及びトラックの場合のエンジン及びトランスミッションオイルパンの場合における、特殊なオイル及びそれらへの添加物、或いは、冷却循環経路の構成要素、たとえば冷却剤のタンクの場合における冷却剤が挙げられる。そのようなプラスチックベースのリサイクル物質は、慣用される射出成形機を使用して、新規な構成成分を製造するために再使用することが可能である。
【0009】
しかしながら、単純な物理的プロセスを使用した機械的リサイクルで、元の未使用製品と同等の品質レベルが得られるのは、極めて希な場合に限られるということが見出された。
【0010】
品質低下をもたらし、その結果として、特に純粋な物理的プロセスを介しての機械的リサイクルを妨げる、GRPを悪化させる態様を、以下に示す:
- チョップトガラス繊維の含量が高いために、コンパウンディングの際の、特に連続クリーニング及び分離された不純物の排出の場合において、充填剤非使用の熱可塑性プラスチックの機械的リサイクルにおいて得られるリサイクル物の品質改良において決定的な役割を果たす溶融濾過の使用が妨げられる、
- そこで典型的に使用される、好ましくは慣用される共回転二軸スクリューエクストルーダーを用いたコンパウンディングの際に、ガラス繊維が、機械的に短くなってしまうが、その現象は、GRP/コンパウンド物/複合材料の強度及び靱性に、直接的に悪影響をもたらす、
- 添加物、特に難燃剤又は熱安定剤が、GRPを長期にわたって使用する間に、特に使用温度が持続的に高い場合には、変質する。しかしながら、そのような添加物の分解反応生成物は、機械的リサイクルの循環経路(recycling circuit)の中、したがってそのGRPリサイクル物の中に残ってしまう。
【0011】
言うまでもないことではあるが、物理的方法を使用するGRPの機械的リサイクルにおける品質低下に対処するための、多様な提案が存在している。たとえば、リサイクル物における繊維の長さが減った影響を、より長い繊維をさらに添加することによって補償することも可能である。しかしながら、このプロセスは、当然のことながら、連続繊維で強化する複合材料には不適切であり、したがってチョップトガラス繊維で強化したGRPの場合のみに限定される。
【0012】
しかしながら、ポリマーの分解もまた、目標とする付加反応(additization)による、特には化学的に活性化させて鎖を延伸させることによる、各種の方法で補償することも可能である。
【0013】
しかしながら、次のことには注目すべきである:品質低下は、GRPの機械的リサイクルにおける本質的な問題であって、品質、及び製品の特性、特に靱性、強度、剛性、クリープ、耐熱性などに、顕著な影響を与えることなく、GRPの場合、使用-リサイクルの循環経路を繰り返して通すことは不可能である。
【0014】
先に述べたように、再コンパウンディングによって、繊維の長さが低下する。さらに、溶融状態にあって、高度に粘稠である(マトリックス)ポリマーから、チョップトガラス繊維を直接除去する、すなわちポリマーマトリックスから繊維を分離することは、一般的には不可能である。
【0015】
マトリックスから繊維を分離し、場合によってはそれらをさらにクリーニングして、リサイクルした繊維として使用することは、高コスト且つ複雑であるので、究極的にはやはり、低コストの未使用ガラス繊維と比較しなければならない。
【0016】
三つの理由のすべてが、使用済みの(postconsumer)GRP物質からのガラス繊維が、これまで、ほとんどリサイクルされずに、充填材又は補強材としての再利用にまわされていた理由を説明している。
【0017】
(特許文献1)には、非強化のポリエチレンテレフタレートを解重合させて、それからテレフタル酸及びエチレングリコールを得るプロセスが記載されている。この目的のためには、そのポリマーを、ポリマーを膨潤させる無極性溶媒と、エステル官能基を解裂させて解重合させる薬剤との混合物に添加している。(特許文献1)では、充填材又は補強材、特にはガラス繊維のリサイクルについての記述はない。
【0018】
(特許文献2)には、特には炭素繊維複合材料プラスチックの場合の、繊維を回収することを可能にするプロセスが開示されている。これには、最初に主反応器中、400~600℃で、複合材料プラスチックのポリマーマトリックスを熱分解させることが含まれる。そのようにして残った、繊維の残分を煤残分と共に、洗浄して、それによりその繊維に水を吸着させる。次いで、その湿った残分を主反応器に戻し、そこで、酸化条件下、350~400℃で、その繊維をクリーニングする。第一の工程において熱分解で形成された開裂反応生成物は、物質回収にかけることなく、第二の反応器へ移送し、そこで熱プラズマを使用して、最高15,000℃までで、有毒な開裂反応生成物を中和する。
【0019】
(特許文献3)には、チョップトガラス繊維強化ポリアミド6複合材料プラスチックを解重合するためのプロセスが記載されているが、そこでは、そのポリマーマトリックスを、最初に、約280℃の温度で解重合させ、次いでその反応混合物全体を水へ添加して、解重合で得られたカプロラクタム(すなわち、ポリアミド6のモノマー構成単位)を水の中に溶解させる。そのカプロラクタム水溶液の粘度が、多くの場合、わずか1~100mPa・sと顕著に低いために、ガラス繊維を連続の水相から除去して、洗浄することができる。
【0020】
(特許文献3)のプロセスの欠点は、カプロラクタムの希薄水溶液から高純度のカプロラクタムを得るための、エネルギーを大量に必要とする蒸留である。それに加えて、(特許文献3)で分離され、洗浄されたガラス繊維の再使用に、問題がないわけではない。加工工程の影響を受けて繊維の長さが短くなっているために、(特許文献3)で除去され洗浄されたガラス繊維は、未使用ガラス繊維を使用したときと同じ補強効果を達成することは、もはや不可能である。それに加えて、最近の複合材料プラスチックは、多数の添加物を含んでおり、それらが繊維の上に残り、水を用いても、完全に洗い落とすことはできない。これらの場合においては、(特許文献3)によるプロセスでは、リサイクル繊維を供給することもできない。
【0021】
最後に、ガラスベースの補強繊維を最適に機能させるためには、ガラス繊維の表面とポリマーマトリックスとが良好な相容性を有している必要があるが、これは、典型的には、ニーズに合わせた表面コーティング(サイジングとも呼ばれる)によって達成される。(特許文献3)に従って得られた、乾燥させた、リサイクルガラス繊維のアグロメレートに対して、適切なサイジングを施すことは、不可能であることが分かった。水性サイジング剤を用いて処理したその繊維のアグロメレートは、乾燥させた後に、再分離させて、フィード可能な形状にすることができなかった。いずれの場合においても、(特許文献3)に記載のプロセスを使用して、未使用ガラス繊維の品質を達成することはできなかった。
【0022】
(特許文献4)にはさらに、ポリアミド6(PA6)ベースの複合材料プラスチックをリサイクルさせたときに、ガラス繊維(この場合、チョップトガラス繊維)を除去するプロセスについても記載がある。(特許文献4)には、最初にPA6ポリマーマトリックスを解重合させ、次いでガラス繊維からそれを分離することが含まれている。(特許文献4)にはさらに、解重合の最後に、採用された繊維の上に残存している、マトリックスポリマーとして採用されたPA6の残存構成成分を400℃~700℃に加熱することによる加熱的分解によりガス状の構成成分に転換させることによって、ガラス繊維を回収することが原理的に可能であるとの記述がある。熱分解させるために必要な温度は、そのプロセスに外部の熱源から供給しなければならない。(特許文献4)には、最後に、この方法で「奇麗にした(cleaned)」繊維を、次いでそれらの溶融温度よりも高い温度に加熱する選択肢についても記載がある。ガラス繊維を融解させるためのこのエネルギーは、やはり、外部熱源から供給しなければならない。
【0023】
(特許文献3)又は(特許文献4)のいずれにおいても、プラスチックの中に追加的に採用された添加物について、それらの分解反応生成物や、洗浄水又は熱分解反応生成物からそれらを除去する基本的な問題点には触れていない。それにしても、後者は、これら、多くの場合、環境的に心配が無いとは言えない物質を環境に放出することを防止するためには必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【文献】国際公開第2017/007965A1号パンフレット
【文献】欧州特許出願公開第3 023 478A2号明細書
【文献】特開2000-034363号公報
【文献】特開2000-037726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
上で述べた従来技術から出発して、本発明が取り組む課題は、GRP、好ましくはポリアミド6ベース、ポリブチレンテレフタレート(PBT)ベース及びポリエチレンテレフタレート(PET)ベースのGRPを、ガラス繊維をクリーニングするための(洗浄)水を使用することなく、リサイクルさせるためのプロセスを提供することであり、その手段によって、(マトリックス)ポリマーをそのモノマーの形態で回収できるだけでなく、ガラス繊維もガラス繊維製造に適したガラスの形態で回収できること、並びにその重合プロセス/ガラス繊維製造プロセスにおいて、未使用品質のポリマー/ガラス繊維に加工することが可能となる。それと同時に、添加物類も、そのリサイクル循環経路から、効果的、且つ環境に悪影響を与えることなく除去されるようにし、そしてそのプロセスも、大規模な工業的スケールで適用しても十分に経済的であって、コスト的に実施可能であるようにする。
【0026】
驚くべきことには、以下のことが見出された:上述の従来技術の教示とは対照的に、使用済みのGRP物質から、特にはPA6、PET、又はPBTをベースとするガラス繊維強化熱可塑性プラスチックから、未使用品質のガラス繊維を製造することが可能であり、それと同時に、解重合させることによって、そのポリマーマトリックスの大部分を除去し、それを再構成すると、元と同等のポリマーを得ることが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0027】
その課題の解決法、したがって本発明の主題は、次の工程による、GRPをリサイクルさせるためのプロセスである:
a)GRPのポリマーマトリックスの最大80重量%までを解重合させ、そのポリマーマトリックスから生成した開裂反応生成物を除去し、そして、その残った残分を濃縮して、ガラスベースの構成成分、残存マトリックス、モノマー、開裂反応生成物、及びリサイクル上問題となる構成成分の混合物とする工程、並びに
b)プロセス工程a)の最後に、その残分の中に残っている有機物部分をエネルギー源として利用して、その燃焼熱を、ガラスベースの構成成分を加熱及び融解させるために使用し、そしてそれと同時に、有機物の構成成分を、ガス状の燃焼反応生成物に転換させることによって除去する工程。
【0028】
したがって、ポリマーマトリックス及びその開裂反応生成物は、プロセス工程a)において、ガラス繊維から定量的に除去される訳ではない。
【0029】
本発明においては、「問題となる構成成分(problematic constituents)」とは、特には、不純物、及びそのGRPの元々目的とした用途のために採用された添加物である。
【0030】
本発明において、GRPのリサイクル上問題となる構成成分は、好ましくは機能性添加物、具体的には以下のものである:UV安定剤、熱安定剤、γ線安定剤、帯電防止剤、エラストマー変性剤、流動促進剤、離型剤、難燃剤、乳化剤、成核剤、可塑剤、滑沢剤、染料、顔料、又は導電率を増大させるための添加物。これら、及びさらなる添加物については、たとえば、以下の文献に記載がある:Gaechter,Mueller,Kunststoff-Additive[Plastics Additives],3rd edition,Hanser-Verlag,Munich,Vienna,1989、及びPlastics Additives Handbook,5th Edition,Hanser-Verlag,Munich,2001。本発明の文脈における不純物は、好ましくは、添加物の分解反応生成物、並びに不純物、具体的には、ダスト、土類、錆の形態にある酸化鉄、又はポリマーマトリックスの中に貫入しているか、又はそれに付着した異物である。
【0031】
したがって、本発明におけるプロセスは、二つの別々のプロセスからなっており、そこでは、GRPを製造するために元々採用された構成成分が、一方ではモノマー及び開裂反応生成物へ、そして他方ではガラスの溶融物へと分離される。
【0032】
本発明におけるプロセスによってさらに、リサイクル上問題となる構成成分、特には不純物を除去し、それにより、未使用材料の特性を有するリサイクル物を製造することが可能となった。
【0033】
使用-リサイクルのサイクルを繰り返しても、そのGRPがベースとしている(マトリックス)ポリマーの製品品質が、開裂反応生成物として再生させたモノマーから前記ポリマーを再合成させたときに、実質的に損なわれることがないということが本発明におけるプロセスの特徴である。本発明におけるプロセスにおいては、ポリマーマトリックス/リサイクルされるべき(マトリックス)ポリマーが、50重量%より大から約80重量%までの程度、リサイクルされる。
【0034】
誤解が無いように付言すれば、本発明の範囲には、一般的又は好ましい範囲とされた、記載された定義及びパラメーターのすべてが、各種所望の組合せで包含されていることに注意されたい。このことは、物質のパラメーターのみならず、本発明の文脈において記述されたような、各種の使用及びプロセスの形態にもあてはまる。特に断らない限り、引用した標準規格類は、本願出願日に有効となっている版を意味していると理解されたい。特に断らない限り、記述されたパーセントは、重量パーセントである。本発明の文脈においては、(マトリックス)ポリマー及びポリマーマトリックスという用語は、同じ定義を有しているが、ポリマーマトリックスという用語の焦点/強調点はマトリックスにあり、それに対して、(マトリックス)ポリマーという用語では、その強調点がポリマーにある。
【0035】
https://www.kunststoffe.de/themen/basics/recycling/werkstoffliches-recycling/artikel/begriffsdefinitionen-fuer-das-werkstoffliche-recycling-1001597.htmlにある、W.Hellerich,G.Harsch,E.Baur,Werkstoff-Fuehrer Kunststoffe,10/2010,p.55からの抜粋の、Kunststoffe.de、「Begriffsdefinitionen fuer das werkstoffliche Recycling」によれば、リサイクル物というのは、所定の物性を有する、成形材料/加工されたプラスチックを指す総称(umbrella term)である。多くの場合において、リサイクル物は、未使用物質と混合される。リサイクル物は、過去に製造プロセスを経験したという履歴を有している。加工することによって、すなわち製造プロセスにおいて、2種以上のプラスチックから製造されたマスターバッチ又はブレンド物は、リサイクル物とはみなされない。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、好ましくは、プロセス工程a)において、採用されたGRPを加熱し、場合によっては触媒又は解重合促進助剤を添加した後で、そのGRPのポリマーマトリックスを、空気の非存在下に開裂させるプロセスに関する。
【0037】
したがって、本発明は、プロセス工程a)の途中又はその後で、その開裂反応生成物及び/又は添加された助剤、具体的には加水分解液又は加溶媒分解液を、圧力を低下させることによって蒸留除去するプロセスに関する。
【0038】
本発明は、好ましくは、プロセス工程a)において、そのポリマーマトリックスの少なくとも50重量%を解重合させる、GRPをリサイクルさせるためのプロセスに関する。
【0039】
本発明は、特に好ましくは、プロセス工程a)において、そのポリマーマトリックスの少なくとも50重量%、且つ最大でも80重量%を解重合させる、GRPをリサイクルさせるためのプロセスに関する。
【0040】
プロセス工程b)を、ガラス製造のための炉で実施しない場合においては、プロセス工程b)の後に、さらに加工するためにそのガラス溶融物を除去することによる、さらなるプロセス工程c)を続ける。
【0041】
プロセス工程a)
プロセス工程a)における解重合は、解重合を促進させるための助剤又は触媒を添加して実施するのが好ましい。(マトリックス)ポリマーの解重合を促進する好ましい触媒は、塩基若しくは酸又はそれらの塩である。無機塩基若しくは無機酸又はそれらの塩が、特に好ましい。水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、又はリン酸を採用するのが、極めて特に好ましい。(マトリックス)ポリマーの解重合を促進させるそれらの触媒は、それぞれの場合において、プロセス工程a)に導入される全部のポリマーマトリックスを基準にして、0.1重量%~20重量%の範囲の濃度、好ましくは0.5重量%~10重量%の範囲の濃度、特に好ましくは1重量%~7重量%の範囲で採用される。
【0042】
本発明におけるプロセスにおいて採用されるGRPのポリマーマトリックスが、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、又はPETとPBTとのコポリマーの群からの、少なくとも1種のポリマーを実質的に含んでいるのが好ましい。実質的に(essentially)とは、好ましくは、プロセス工程a)に導入されるポリマーマトリックスを基準にして、少なくとも70重量%を意味していると理解されたい。
【0043】
本発明におけるプロセスにおいて採用されるGRPのポリマーマトリックスには、実質的に、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、又はPBTとPETとのコポリマーが含まれているのが好ましい。
【0044】
本発明におけるプロセスにおいて採用されるGRPのポリマーマトリックスに、実質的に、ポリアミド6(PA6)又はポリアミド66(PA66)が含まれているのが好ましい。
【0045】
本発明におけるプロセスにおいて採用されるGRPのポリマーマトリックスには、実質的に、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、又はPBTとPETとのコポリマーが含まれているのが好ましい。
【0046】
PA6の場合においては、ε-カプロラクタムが、プロセス工程a)における解重合反応生成物として得られる。プロセス工程a)における解重合で、PA6から、それの製造において元々採用されたε-カプロラクタムの50重量%~80重量%が回収可能となれば、好ましい。
【0047】
本発明を実施する検討の文脈において、プロセス工程a)において実施される、ガラス繊維強化PA6をベースとするGRPの解重合の開始時点では、高い分解速度が達成され、そしてその開裂反応生成物の中には異物がほとんど観察されないということが、見出された。本発明においては、プロセス工程a)において実施されるPA6の解重合での好ましい開裂反応生成物は、ε-カプロラクタムである。特に、炭酸カリウム又は炭酸ナトリウムが、ε-カプロラクタムの高い収率を与える。
【0048】
解重合で使用する前に、プロセス工程a)において採用されるGRP構成成分を、類似タイプの様式(type-similar fashion)で集めておき、プロセス工程a)において、類似タイプの様式で採用するのが好ましい。類似タイプ(type-similar)とは、その加工されるプラスチックが、それらのベースポリマーの点では同一であるが、特には性質、たとえば難燃剤添加物の点で相互に異なっているということを意味していると理解されたい。参照:https://www.kunststoffe.de/themen/basics/recycling/werkstoffliches-recycling/artikel/begriffsdefinitionen-fuer-das-werkstoffliche-recycling-1001597.htmlにある、W.Hellerich,G.Harsch,E.Baur,Werkstoff-Fuehrer Kunststoffe,10/2010,p.55からの抜粋の、Kunststoffe.de、「Begriffsdefinitionen fuer das werkstoffliche Recycling」。
【0049】
解重合で使用するより前に、プロセス工程a)において採用されるGRP構成成分を、同一タイプの様式(type-identical fashion)で集めておき、さらにはプロセス工程a)において同一タイプの様式で採用して、プロセス工程a)で除去される開裂反応生成物を、高コストで、ややこしい作業にかける必要がないようにするのが、特に好ましい。
【0050】
本発明の文脈においては、同一タイプ(type-identical)という用語は、DIN EN ISO 11469/VDA260に従うと同一の呼称の、場合によっては別々の原料製造業者からの、プラスチックを加工するということを意味していると理解されたい。参照:https://www.kunststoffe.de/themen/basics/recycling/werkstoffliches-recycling/artikel/begriffsdefinitionen-fuer-das-werkstoffliche-recycling-1001597.htmlにある、W.Hellerich,G.Harsch,E.Baur,Werkstoff-Fuehrer Kunststoffe,10/2010,p.55からの抜粋の、Kunststoffe.de、「Begriffsdefinitionen fuer das werkstoffliche Recycling」。
【0051】
プロセス工程a)において採用されるGRP構成成分は、解重合で使用する前に、最初にプロセス工程a)の熱分解に導入されることにより不純物が付着することを防止するために、クリーニングにかけておくのが好ましい。
【0052】
プロセス工程a)において採用されるGRP構成成分は、解重合で使用する前に、破砕して小片として、その(マトリックス)ポリマーの取扱性、運搬性、及び解重合性を単純化/加速させるのが好ましい。本発明の文脈においては、「破砕(shredding)」は、各種の微粉砕プロセス、特には機械的微粉砕プロセスで代表される。本発明におけるプロセス工程a)より上流側に配する微粉砕プロセスは、たとえば、「Recycling von Polymeren aus Schredderfraktionen」(プロジェクトパートナー:UNISENSOR Sensorsysteme GmbH(Karlsruhe))のプロジェクトにおいて、科学的に検討された。そのプロジェクトからもたらされた独国特許公告第10 2014 111871B1号明細書は、好ましくはリサイクル可能なプラスチックの塊からの、自由流動性のバルク物質の少なくとも1種の物質ストリームからの、1種又は複数の物質画分を分離するための、装置及びそれに相当するプロセスに関する。独国特許公告第10 2014 111871B1号明細書の内容をすべて、本出願に組み入れたものとする。
【0053】
さらなる好ましい変法においては、その破砕された画分を、プロセス工程a)における解重合より前に摩砕して、10mm未満、特に好ましくは5mm未満の粒径を有する粒子状物質とする。この文脈において使用される、プラスチックの摩砕によって得られる、摩砕された物質(milled material)という用語は、特に好ましくは、2~5mmの範囲の各種且つ不規則な粒径を有していて、ダストの画分を含んでいてもよい。この点に関しては、次の文献を参照されたい:https://www.kunststoffe.de/themen/basics/recycling/werkstoffliches-recycling/artikel/begriffsdefinitionen-fuer-das-werkstoffliche-recycling-1001597.htmlにある、W.Hellerich,G.Harsch,E.Baur,Werkstoff-Fuehrer Kunststoffe,10/2010,p.55からの抜粋の、Kunststoffe.de、「Begriffsdefinitionen fuer das werkstoffliche Recycling」。
【0054】
さらなる好ましい変法においては、その破砕された画分を、プロセス工程a)における解重合よりも前に、摩砕して、1mm未満の粒径を有する粉体、及び少なくとも1種の解重合促進性助剤及び/又は触媒と混合した粉体を得る。
【0055】
一つの実施態様においては、必要があれば、破砕から得られた画分(破砕された画分)を、プロセス工程a)において解重合で使用する前に、さらなる作業にかけてもよい。(マトリックス)ポリマーに付着している金属構成成分は、追加のプロセス工程を使用して除去し、別途にリサイクルするのが好ましい。この場合においては、磁力セパレーター又は誘導セパレーターを使用するのが好ましい。
【0056】
少なくとも1種の解重合促進性触媒及び/又は助剤の選択は、エネルギーを供給するためのプロセス工程b)において残渣が残らない燃焼をするか、又はガラス構成成分の中、究極的には回収されたガラスの中に、ガラスの品質に顕著な影響を与えることない無機の構成成分として留まることも可能であるようにして実施するのが好ましい。
【0057】
プロセス工程a)において、元のポリマーマトリックスの少なくとも20重量%が、有機残分として残っているのが好ましい。このようにして残った少なくとも20重量%のポリマーマトリックスが、プロセス工程b)において、燃焼プロセスを介して、そしてそのようにして得られた燃焼熱が、ガラスベースの構成成分、好ましくはガラス繊維を融解させることに利用される。
【0058】
このことが同時に、そのガラスベースの構成成分から有機不純物を取り除くのであれば好ましい。プロセス工程a)において、容易且つ迅速に解重合することが可能なポリマーをベースとしたGRP構成成分が採用されれば、好ましい。本発明の文脈において好ましい、容易且つ迅速に解重合することが可能なポリマーは、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、又はポリアミド6(PA6)である。
【0059】
PA6ベースのGRP部分の場合においては、その解重合を、酸素の非存在下、特に好ましくは少なくとも1種の塩基性触媒の存在下、350℃未満の温度で加熱することにより実施するのが好ましいが、この場合では、その解重合を熱分解と呼ぶことができる。
【0060】
リサイクルされるのがPBTベースのGRPである場合には、プロセス工程a)における解重合を、解重合促進性助剤としての水の存在下で実施するのが好ましい。PBTベースのGRPの解重合は、240℃~350℃の範囲の温度で実施するのが好ましい。これによって、生成するのは、テレフタル酸及び1,4-ブタンジオール/その脱水反応生成物であるテトラヒドロフランである。助剤としてのアルコールの存在下で、加溶媒分解の形態で、解重合を実施することも同様に可能であり、それによって、相当するエステルが得られる結果となる。
【0061】
リサイクルされるのがPETベースのGRPである場合には、その解重合を、水及び/又はアルコールの存在下に、280℃よりも高い温度で実施するのが好ましい。
【0062】
好ましくは、そして一つの実施態様においては、プロセス工程a)においてポリマー鎖を開裂させることにより生成するGRP(マトリックス)ポリマーの開裂反応生成物を、好ましくは何らかの必要とされる精製、特には蒸留による精製をしてから、それに続く再重合に供給して、未使用材料の特性を有するリサイクル物のプラスチックを製造する。開裂反応生成物を再重合させることによって、特には、それらの開裂反応生成物を、モノマーと呼べるほどにさらに精製してから、同一のポリマー/同一のプラスチックを再生産すること、特にはリサイクル物をベースとして新規なGRPを製造することが可能となる。このプロセス変法は、そのGRPの(マトリックス)ポリマーが、数種だけのモノマー、理想的には1種だけのモノマーを含み、得られるモノマーが、分離可能であり、そして工業的な大スケールで確立されているプロセス、好ましくは蒸留又は精留によって精製することが可能であるような場合に採用するのが好ましい。
【0063】
本発明におけるプロセスによって実施するのに特に好ましいGRPは、(マトリックス)ポリマーとしてPA6をベースとするものであるが、PA6は、さらに遡れば、モノマーとしてのε-カプロラクタムをベースとしている。
【0064】
場合によっては、又は好ましい実施態様においては、再重合させてリサイクル物のプラスチックを製造するより前に、プロセス工程a)で生成したモノマー/開裂反応生成物を、工業的な大スケールの加工プラントに送り、古典的な石油化学の手段により製造されたモノマーと共に精製する。この場合もまた、好ましい工業的な大スケールの加工プラントは、蒸留プラント又は精留プラントである。
【0065】
好ましくは、そしてさらなる実施態様においては、プロセス工程a)においてポリマー鎖を開裂させることによって生成したGRPの(マトリックス)ポリマーのモノマー/開裂反応生成物の一部が、プロセス工程b)における燃焼操作のための追加の燃料としても採用される。このプロセス変法は、そのGRPの(マトリックス)ポリマーが、少なくとも2種の異なったモノマーで構成されているか、或いはそのポリマーマトリックスが少なくとも2種の異なったプラスチックのブレンド物からなっているか、或いはそうでなければ、フィードストリームとして同一タイプの使用済みのプラスチックが利用不可能であるという場合に採用するのが好ましい。フィードストリーム(feed stream)というのは、プロセスエンジニアリングにおいては、確立された用語である。これは、プロセスの中への反応物の流入(フィード)、本発明の場合においてはリサイクルされているGRPを指している。
【0066】
元になる(マトリックス)ポリマーに応じて、好ましくは加水分解、加溶媒分解、又は熱分解(pyrolysis/thermolysis)を意味していると理解されるべき解重合は、各種のプロセスエンジニアリング装置で実施することができる。
【0067】
本発明において採用されるGRP、特にはポリアミドベースのGRPは、適切な助剤/触媒、特には塩基性触媒を添加してから、酸素の非存在下、好ましくは窒素雰囲気下で直接加熱して、熱分解させるのが好ましい。これは、バッチ反応器を使用して実施するのが好ましく、それは、時間的にずらせたスタートアップを採用することによって、準連続の様式で、物質に第二のプロセス工程b)を与えることができる。
【0068】
(マトリックス)ポリマー、特にはPBT又はPETを、プロセス工程a)で、過熱水蒸気を介するか又はアルコールを使用して、解重合させるような場合においては、高圧オートクレーブを採用するのが好ましい。曝露時間が経過したら、揮発性の構成成分を、好ましくは減圧下で、蒸留除去し、そこで残った残分をプロセス工程b)へと移行させる。
【0069】
プロセス工程b)
プロセス工程b)は、ロータリーキルンの中で実施するのが好ましい。参照:U.Richers,Thermische Behandlung von Abfaellen in Drehrohroefen,Forschungszentrum,Karlsruhe GmbH,Karlsruhe,1995。
【0070】
プロセス工程a)において、元々の(マトリックス)ポリマーの20重量%以下が、有機残分として残っていて、それが、ガラスベースの構成成分と共にプロセス工程b)へと供給されるのが好ましい。その有機残分が、プロセス工程b)において燃焼されるが、その燃焼熱が、ガラスベースの構成成分を、初期の内は加熱し、究極的には溶融させる。プロセス工程b)を、1300℃±300℃の範囲温度で実施するのが好ましい。
【0071】
残存している有機物質を燃焼させることによって、ガラスベースの構成成分の上に残っている不純物、添加物、及び分解反応生成物が、同時に除去される。有機不純物、添加物、及び分解反応生成物を酸化して、CO2と水とすることが、効果的に実施される。
【0072】
プロセス工程b)のためのエネルギーのすべてが、ガラスベースの構成成分と共にプロセス工程b)の中に導入された有機物質/残分を燃焼させることによって発生されれば、好ましい。
【0073】
しかしながら、一つの実施態様においては、プロセス工程b)に、好ましくは慣用されるガスバーナーを使用して、追加のエネルギーが供給される。好ましい実施態様においては、それらは、燃焼用燃料としてのC1~C4-炭化水素をベースとした気体燃料を用いて供給される。この目的のためには、天然ガス又はバイオガスを採用するのが好ましい。
【0074】
プロセス工程b)における追加のエネルギーの供給は、好ましくは、有機物質/残分、又は有機残分の中にまだ存在しているポリマーの燃焼熱が、ガラスベースの構成成分の溶融温度に到達させるか、及び/又は次の加工までの、溶融状態でのガラスベースの構成成分の通常の滞留時間を埋め合わせるには不十分であるような場合に使用するべきである。
【0075】
プロセス工程b)における有機物質/残分の燃焼は、空気、空気-酸素混合物、又は純酸素を供給して実施するのが好ましい。
【0076】
プロセス工程b)は、ガラス繊維製造プラントの融解領域で直接実施するのが好ましいが、そこでは、追加で導入した空気/酸素を使用して、有機物質/有機残分が燃焼される。プロセス工程a)で得られた残分が、ガラス繊維製造プラントの炉の融解領域の中に、無機ガラス原料混合物のメインフィードストリームに対して、サイドストリームとしてフィードされるか、或いは場合によっては、微粉砕、特には微粉化した後の固形物として、ガラス繊維製造プラントの炉に供給される。固形物のフィードは、別途に実施しても、或いは、ガラス原料混合物のメインフィードストリームへの添加物の形で実施してもよい。
【0077】
プロセス工程b)を、ガラス繊維製造プラントのすぐ近くで実施して、プロセス工程b)から得られたガラスの溶融物を、ガラス繊維製造プラントのガラスの溶融物と直接組み合わせるのも、同様に好ましい。
【0078】
そのGRPのガラスベースの構成成分が、ガラス繊維であるような場合には、プロセス工程b)における燃焼操作が、ガラス繊維の表面上の不純物又はサイジングを酸化させて、燃焼ガスを介して、好ましくはCO2の形態で放出させる。
【0079】
プロセス工程b)において、酸化によりCO2とすることができない、採用されたGRPのポリマーマトリックスからの不純物又は分解反応生成物は、燃焼ガスを介して放出するのが好ましい。
【0080】
不純物、添加物、又はそれらの分解反応生成物は、プロセス工程b)において有害物質を形成する可能性がある。それらは、発生した燃焼ガスと共に排ガス精製装置に送って、そこで、有害物質を捕捉して、法律で定められた排ガス規制に適合させるのが好ましい。
【0081】
特に、プロセス工程b)において、臭素含有若しくはリン含有の添加物残分を含む(マトリックス)ポリマーの燃焼を実施する場合には、原理的には、人及び環境に対して望ましくない毒性のある副生物が形成され、その結果、その燃焼ガスの中に存在している可能性がある。しかしながら、近代的な排ガス精製装置の結果として、今日では、それらを排ガスから容易に分離することが可能であって、その結果、それらの物質が環境の中へ出て行くことはなく、法律で定められた排出規制には適合する。German Federal Immissions Control Act(大気汚染、騒音、振動、及び類似の出来事からの有害な環境への影響からの保護に関連した法律)、特にその最新版(2019/04/12,BGBI I p.432)は、環境法令の重要な部門を規制し、そして侵害及び排出物(immissions and emissions)から、人、動物、植物、土壌、水、大気、及び文化的資産を保護するための、実務に関わる規制の枠組みである。
【0082】
プロセス工程b)の一つのプロセス変法においては、ガラスベースの構成成分、好ましくはガラス繊維に付着した有機(マトリックス)ポリマーを、最初に高温で熱分解させ、次いでガラス構成成分/ガラス繊維に付着した炭化残分の燃焼熱と、発生した熱分解ガス及び/又は熱分解オイルの燃焼熱とを合わせて利用して、ガラス構成成分/ガラス繊維を融解させる。
【0083】
プロセス工程b)で発生した熱分解ガスを、本発明におけるプロセスにおける融解操作の別の時点で導入するのが特に好ましい。その熱分解ガスを、プロセス工程b)における融解操作のために使用するのに好適な天然ガスと直接混合することも、同様に好ましい。このプロセス変法によって、プロセス工程a)において(マトリックス)ポリマーを完全に解重合させた後であってさえも、依然として、プロセス工程b)において、ガラスベースの構成成分、好ましくはガラス繊維を融解させ、そしてそれを、さらなる加工を施すまで溶融温度に保持するのに十分な燃焼熱を供給することが可能となる。
【0084】
プロセス工程b)を直接、ガラス繊維製造プラントの融解領域において直ちに実施する場合においては、慣用されるガラス繊維への添加物、具体的には、SiO2、Al2O3、MgO、B2O3、CaOを、プロセス工程a)で生成したガラス/マトリックス残分の組成物の中に、導入するのが好ましい。
【0085】
プロセス工程c)
プロセス工程b)が、ガラス製造のための炉の中、又は炉の近傍で既に実施されていないような場合には、後に続くさらなる加工のために、ガラスの溶融物を除去することが、プロセス工程c)において実施される。
【0086】
プロセス工程c)で生成したガラスの溶融物が、ガラス繊維の製造又はガラスの粉体若しくはガラスの球体の製造に供給されれば、好ましい。プロセス工程c)で生成したガラスの構成成分が、ガラス繊維を製造するために、通常通りに運転されている炉に供給され、再紡糸してガラス繊維にすることに利用されれば、特に好ましい。
【0087】
ほとんど全部の不純物が、プロセス工程a)の最後には有機残分の中に濃縮され、次いでプロセス工程b)における燃焼プロセスにより燃焼ガスの形態で放出され、それによってガラスの構成成分から除去されるので、本発明におけるプロセスによって、高品質のガラスの溶融物を製造することが可能となり、それに続けてそれから、さらなる加工工程において、高品質のガラスリサイクル物、特にはガラス繊維、摩砕ガラス、又はガラスの粉体の形態にあるガラスリサイクル物の製造が可能となった。
【0088】
プロセス工程a)において、ポリマーマトリックスを、元のGRPマトリックスの80重量%以下の範囲までで解重合/熱分解させる、好ましい場合においては、そのガラスの構成成分の上に、それを燃焼させて、GRPのガラスベースの構成成分、好ましくはガラス繊維を溶融させ、そしてそれを機械的リサイクルに供給するのに十分な燃焼熱を与えるのに、十分な量の有機物質が残っている。元の(マトリックス)ポリマーから20重量%以下の量で残った有機物質を使用して、ガラスベースの構成成分の上に残存している不純物、添加物、及び分解反応生成物を、燃焼プロセスにおいて酸化させてCO2とし、それによって除去する。
【0089】
本発明の特に好ましい実施態様
本発明は特に、以下の工程によってGRPをリサイクルするためのプロセスに関する:
a)GRPのポリマーマトリックスの最大80重量%までを解重合させ、そのポリマーマトリックスから生成した開裂反応生成物を除去し、そして、その残った残分を濃縮して、ガラスベースの構成成分、残存マトリックス、モノマー、開裂反応生成物、及びリサイクル上問題となる構成成分の混合物とする工程、並びに
b)プロセス工程a)の最後にその残分の中に残っている有機物部分をエネルギー源として利用して、その燃焼熱を使用することにより、ガラスベースの構成成分を加熱及び融解させ、それと同時に有機物の構成成分をガス状の燃焼反応生成物に転換させることによって除去する工程(ただし、そのポリマーマトリックスは、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、又はPBTとPETとのコポリマーをベースとするものである)。
【0090】
本発明は特にはさらに、以下の工程によってGRPをリサイクルするためのプロセスに関する:
a)GRPのポリマーマトリックスの最大80重量%までを解重合させ、そのポリマーマトリックスから生成した開裂反応生成物を除去し、そして、その残った残分を濃縮して、ガラスベースの構成成分、残存マトリックス、モノマー、開裂反応生成物、及びリサイクル上問題となる構成成分の混合物とする工程、並びに
b)プロセス工程a)の最後にその残分の中に残っている有機物部分をエネルギー源として利用して、その燃焼熱を使用することにより、ガラスベースの構成成分を加熱及び融解させ、それと同時に有機物の構成成分をガス状の燃焼反応生成物に転換させることによって除去する工程(ただし、そのポリマーマトリックスは、ポリアミド6(PA6)又はポリアミド66(PA66)、特にはPA6をベースとするものである)。
【0091】
本発明は特にはさらに、以下の工程によってGRPをリサイクルするためのプロセスに関する:
a)GRPのポリマーマトリックスの最大80重量%までを解重合させ、そのポリマーマトリックスから生成した開裂反応生成物を除去し、そして、その残った残分を濃縮して、ガラスベースの構成成分、残存マトリックス、モノマー、開裂反応生成物、及びリサイクル上問題となる構成成分の混合物とする工程、並びに
b)プロセス工程a)の最後にその残分の中に残っている有機物部分をエネルギー源として利用して、その燃焼熱を使用することにより、ガラスベースの構成成分を加熱及び融解させ、それと同時に有機物の構成成分をガス状の燃焼反応生成物に転換させることによって除去する工程(ただし、そのポリマーマトリックスは、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、又はPBTとPETとのコポリマーをベースとするものである)。
【0092】
本発明は特にはさらに、以下の工程によってGRPをリサイクルするためのプロセスに関する:
a)GRPのポリマーマトリックスの最大80重量%までを解重合させ、そのポリマーマトリックスから生成した開裂反応生成物を除去し、そして、その残った残分を濃縮して、ガラスベースの構成成分、残存マトリックス、モノマー、開裂反応生成物、及びリサイクル上問題となる構成成分の混合物とする工程、並びに
b)プロセス工程a)の最後に、その残分の中に残っている有機物部分をエネルギー源として利用して、その燃焼熱を、ガラスベースの構成成分を加熱、融解させるために使用し、そしてそれと同時に、有機物の構成成分を、ガス状の燃焼反応生成物に転換させることによって除去する工程、及び
c)さらなる加工のために、そのガラスの溶融物を分離する工程、
(ただし、そのポリマーマトリックスは、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、又はPBTとPETとのコポリマーをベースとするものである)。
【0093】
本発明は特にはさらに、以下の工程によってGRPをリサイクルするためのプロセスに関する:
a)GRPのポリマーマトリックスの最大80重量%までを解重合させ、そのポリマーマトリックスから生成した開裂反応生成物を除去し、そして、その残った残分を濃縮して、ガラスベースの構成成分、残存マトリックス、モノマー、開裂反応生成物、及びリサイクル上問題となる構成成分の混合物とする工程、並びに
b)プロセス工程a)の最後に、その残分の中に残っている有機物部分をエネルギー源として利用して、その燃焼熱を、ガラスベースの構成成分を加熱、融解させるために使用し、そしてそれと同時に、有機物の構成成分を、ガス状の燃焼反応生成物に転換させることによって除去する工程、及び
c)さらなる加工のために、そのガラスの溶融物を分離する工程、
(ただし、そのポリマーマトリックスは、ポリアミド6(PA6)又はポリアミド66(PA66)、特にはPA6をベースとするものである)。
【0094】
本発明は、特に最後に、以下の工程によってGRPをリサイクルするためのプロセスに関する:
a)GRPのポリマーマトリックスの最大80重量%までを解重合させ、そのポリマーマトリックスから生成した開裂反応生成物を除去し、そして、その残った残分を濃縮して、ガラスベースの構成成分、残存マトリックス、モノマー、開裂反応生成物、及びリサイクル上問題となる構成成分の混合物とする工程、並びに
b)プロセス工程a)の最後に、その残分の中に残っている有機物部分をエネルギー源として利用して、その燃焼熱を、ガラスベースの構成成分を加熱、融解させるために使用し、そしてそれと同時に、有機物の構成成分を、ガス状の燃焼反応生成物に転換させることによって除去する工程、及び
c)さらなる加工のために、そのガラスの溶融物を分離する工程、
(ただし、そのポリマーマトリックスは、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、又はPBTとPETとのコポリマーをベースとするものである)。
【実施例】
【0095】
Durethan(登録商標)BKV30H2.0(Lanxess Deutschland GmbH製)から作製した、破砕したGRPの150gを、KPGスターラー(ブレードスターラー及びトルク測定)を備えたガラス装置の中、金属浴(T=320℃)中の500mLの丸底フラスコの中で、溶融させた。その使用済みのプラスチックを基準にして、5%の炭酸カリウムを、微粉砕した解重合触媒として添加した。
【0096】
融解プロセスは静的に実施し、わずかに定期的に(ほぼ5分ごとに)約2~3回転させて撹拌した。約40分後には、その150gの破砕GRPの融解が完了した。
【0097】
12回転/分(rpm)で、緩やかに撹拌しながら、その内圧を50mbar刻みで下げて20~30mbarとすると、かなりの泡が発生するのが観察された。
【0098】
ポリアミド6の出発物質であるカプロラクタムが転換されて、ガス状態となり、次いで、その装置全体を、68℃の融点を有するこのモノマーが、固形物の状態になって装置に閉塞をもたらすようなことがないように、加熱空気ブロワーを使用して連続的に加熱した。
【0099】
表1に示したような、カプロラクタムの留分が得られた:
【0100】
【0101】
カプロラクタムの留分1~3について、クロマトグラフにより分析した。留分1から留分3へと純度が低下したが、それぞれの場合において、加水分解的重合による、再重合に適したものが得られた。これらの留分におけるカプロラクタムの比率は、99.5重量%を越えていた。
【0102】
解重合させた後に残った残分を分けて、ガラスボートに移し、その中を純酸素によって囲って、マッフル炉の中で、ブンゼンバーナーを用いて着火させ、さらに加熱をすることなく、燃焼させた。
【0103】
その燃焼プロセスが終わったら、そのガラス残分を単離し、DIN 52331に従って115℃で乾燥させ、均質化させた。次いでそれらのサンプルを、ICP-OES分析にかけた。
【0104】
採用したDurethan(登録商標)グレードを熱安定化させるためのCuOの濃縮物が測定された以外は、そのガラス残分のガラス組成物の中では、Durethan(登録商標)BKV30H2.0で使用されたガラス繊維に比較して、目立つようなズレは無かった。