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特許7297941液圧ブレーキシステムを動作させる方法、及び装置、ブレーキシステム、ならびに車両
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  • 特許-液圧ブレーキシステムを動作させる方法、及び装置、ブレーキシステム、ならびに車両 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】液圧ブレーキシステムを動作させる方法、及び装置、ブレーキシステム、ならびに車両
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/18 20060101AFI20230619BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
B60T17/18
B60T8/17 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021571647
(86)(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-18
(86)【国際出願番号】 EP2020061128
(87)【国際公開番号】W WO2020249290
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】102019208404.4
(32)【優先日】2019-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ロクテ グイード
【審査官】前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-007524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 15/00 - 17/22
B60T 7/12 - 8/1769
8/32 - 8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両、特に自動車(1)の液圧ブレーキシステム(2)を動作させる方法であって、前記ブレーキシステム(2)が運転者により操作可能な主ブレーキシリンダ(6)と、前記主ブレーキシリンダ(6)と接続された少なくとも1つのブレーキ回路(8)と、を備え、前記ブレーキ回路が、少なくとも1つの液圧により操作可能なホイールブレーキ(3)であって、前記ホイールブレーキ(3)のブレーキ力を調整するための少なくとも1つの制御可能なインレットバルブ(5)が前記ホイールブレーキ(3)の上流に接続されている、ホイールブレーキと、圧力要求が発生した場合に、前記主ブレーキシリンダ(6)の操作とは無関係に前記少なくとも1つのブレーキ回路(8)に液圧を生成するようにも形成されている制御可能な圧力生成ユニット(11)と、前記少なくとも1つのブレーキ回路(8)に前記液圧を代わりに生成するように形成されている制御可能な補助圧力生成ユニット(13)と、を有し、前記圧力生成ユニット(11)が機能不良について監視され、かつ機能不良が検知された場合、前記液圧を生成するために前記補助圧力生成ユニット(13)が制御され、前記補助圧力生成ユニット(13)との接続を作成または遮断するために、前記圧力生成ユニット(11)に第1切替バルブ(16;16‘、16‘‘)が割り当てられ、前記主ブレーキシリンダ(6)との接続を遮断または作成するために、前記補助圧力生成ユニット(13)に制御可能な第2切替バルブ(9;9‘、9‘‘)が割り当てられている、方法において、前記ブレーキシステム(2)がブレーキ要求発生について監視されることと、ブレーキ要求が検出された場合、前記第2切替バルブ(9;9‘、9‘‘)が、前記主ブレーキシリンダ(6)との接続を遮断するように制御され
前記第2切替バルブ(9;9‘、9‘‘)は、ブレーキ要求の検出ごとに、前記接続を毎回遮断するように制御されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第2切替バルブ(9;9‘、9‘‘)はそれぞれ、前記それぞれ検出されたブレーキ要求の継続中、前記接続を遮断するように制御されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ブレーキ要求が検出された場合、前記第1切替バルブ(16;16‘、16‘‘)は、前記補助圧力生成ユニット(13)との接続を作成するように制御されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記接続を作成するように前記第1切替バルブ(9)を制御することによって、前記圧力生成ユニット(11)が前記第2切替バルブ(9;9‘、9‘‘)と液圧的に接続されることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ブレーキ要求を検出するために、前記主ブレーキシリンダ(6)に割り当てられ、かつ運転者により操作可能なブレーキペダル(7)が前記ブレーキペダルの操作について、および/または前記車両の制御装置がブレーキ要求の自動化された発出について監視されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記主ブレーキシリンダ(6)は、通常動作において前記ブレーキシステム(2)のペダル感覚シミュレータと接続され、前記第1切替バルブ(16;16‘、16‘‘)は、前記圧力生成ユニット(11)の接続を前記補助圧力生成ユニット(13)から切り離すように制御されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
車両の液圧ブレーキシステム(2)を動作させる装置であって、前記ブレーキシステム(2)が運転者により操作可能な主ブレーキシリンダ(6)と、前記主ブレーキシリンダ(6)と接続された少なくとも1つのブレーキ回路と、を備え、前記ブレーキ回路が、少なくとも1つの液圧により操作可能なホイールブレーキ(3)であって、前記ホイールブレーキ(3)の制御可能なブレーキ力を調整するための少なくとも1つの制御可能なインレットバルブ(5)が前記ホイールブレーキ(3)の上流に接続されている、ホイールブレーキと、ブレーキ要求が検出された場合に、前記主ブレーキシリンダ(6)の操作とは無関係に前記少なくとも1つのブレーキ回路(8)に液圧を生成するようにも形成されている制御可能な圧力生成ユニット(11)と、前記少なくとも1つのブレーキ回路に前記液圧を代わりに生成するように形成されている制御可能な補助圧力生成ユニット(13)と、を有し、前記圧力生成ユニット(11、13)に、前記補助圧力生成ユニット(13)との接続を作成または遮断するための第1切替バルブ(16;16‘、16‘‘)が割り当てられ、前記補助圧力生成ユニット(13)に、前記主ブレーキシリンダ(6)との接続を作成または遮断するための第2制御可能な切替バルブ(9;9‘、9‘‘)が割り当てられている、装置において、規定どおりに使用した場合に、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法を実行するために設定されている制御装置(14)を特徴とする、装置
【請求項8】
車両、特に自動車(1)の液圧ブレーキシステム(2)であって、前記ブレーキシステム(2)が運転者により操作可能な主ブレーキシリンダ(6)を有し、前記ブレーキシステム(2)が運転者により操作可能な主ブレーキシリンダ(6)と、前記主ブレーキシリンダ(6)と接続された少なくとも1つのブレーキ回路と、を備え、前記ブレーキ回路が、少なくとも1つの液圧により操作可能なホイールブレーキ(3)であって、前記ホイールブレーキ(3)の制御可能なブレーキ力を調整するための少なくとも1つの制御可能なインレットバルブ(5)が前記ホイールブレーキ(3)の上流に接続されている、ホイールブレーキと、ブレーキ要求が検出された場合に、前記主ブレーキシリンダ(6)の操作とは無関係に前記少なくとも1つのブレーキ回路(8)に液圧を生成するようにも形成されている制御可能な圧力生成ユニット(11)と、前記少なくとも1つのブレーキ回路に前記液圧を代わりに生成するように形成されている制御可能な補助圧力生成ユニット(13)と、を有し、前記圧力生成ユニット(11、13)に、前記補助圧力生成ユニット(13)との接続を作成または遮断するための第1切替バルブ(16;16‘、16‘‘)が割り当てられ、前記補助圧力生成ユニット(13)に、前記主ブレーキシリンダ(6)との接続を作成または遮断するための第2制御可能な切替バルブ(9;9‘、9‘‘)が割り当てられている、液圧ブレーキシステムにおいて、請求項7に記載の装置を特徴とする、液圧ブレーキシステム
【請求項9】
車両、特に自動車(1)であって、請求項8に記載の液圧ブレーキシステム(2)を備える、車両

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、特に自動車の液圧ブレーキシステムを動作させる方法に関し、ブレーキシステムが運転者により操作可能な主ブレーキシリンダと、主ブレーキシリンダと接続された少なくとも1つのブレーキ回路と、を備え、ブレーキ回路が、少なくとも1つの液圧により操作可能なホイールブレーキであって、ホイールブレーキのブレーキ力を調整するための少なくとも1つの制御可能なインレットバルブがホイールブレーキの上流に接続されている、ホイールブレーキと、圧力要求が発生した場合に、主ブレーキシリンダの操作とは無関係に少なくとも1つのブレーキ回路に液圧を生成するようにも形成されている圧力生成ユニットと、少なくとも1つのブレーキ回路に液圧を代わりに生成するように形成されている補助圧力生成ユニットと、を有し、圧力生成ユニットが機能不良について監視され、かつ機能不良が検知された場合、補助圧力生成ユニットが制御され、補助圧力生成ユニットとの接続を作成または遮断するために、圧力生成ユニットに第1切替バルブが割り当てられ、主ブレーキシリンダとの接続を遮断または作成するために、補助圧力生成ユニットに第2制御可能な切替バルブが割り当てられている。
【0002】
さらに、本発明は、上記のブレーキシステムを動作させる装置、およびこの種の装置を有する相応に形成されたブレーキシステムに関する。さらに、本発明は、この種のブレーキシステムを有する車両、特に自動車に関する。
【背景技術】
【0003】
冒頭で述べた種類の方法、装置、およびブレーキシステムは、従来技術からすでに知られている。自動車の電気化が進むにつれ、かつ自律運転機能の程度が進むにつれてブレーキペダル操作とは無関係に制動プロセスを実行できるブレーキシステムの開発も進められる。従来の液圧ブレーキシステムでは、運転者は、ブレーキペダルを操作することによって少なくとも1つのブレーキ回路と接続された主ブレーキシリンダを操作し、それによりブレーキ回路に液圧を生成することが可能であり、この液圧が1つまたは複数のホイールブレーキに作用する。その場合、ホイール個別にブレーキ力を調整するために、ホイールブレーキの上流にそれぞれ1つの圧力制御バルブまたはインレットバルブが接続されている。制動プロセスを自律的に実行できるブレーキシステムでは、主ブレーキシリンダがブレーキ回路から切り離されるか、または切り離し可能であり、それによりブレーキペダルが操作された場合に、主ブレーキシリンダによって調整された液圧がブレーキ回路ではなく、いわゆるペダル感覚シミュレータへ移動される。その場合、ブレーキ回路の液圧は、特に電気モータにより駆動可能な圧力生成ユニットにより1つまたは複数のポンプを用いて生成される。したがって、ブレーキペダルがそれぞれのホイールブレーキから液圧的に切り離される、いわゆるブレーキ・バイ・ワイヤ制動が実行される。さらに、この機能が常に利用可能であることを確保するために、ブレーキシステムに補助圧力生成装置を設けることが知られ、それにより圧力生成装置が機能不良を示して故障した場合もブレーキ回路に液圧を生成することができる。したがって圧力生成ユニットが機能不良の場合でもブレーキシステムの継続動作が保証される。
【0004】
この種の構造では、主ブレーキシリンダをホイールブレーキと液圧的に接続するために、液圧生成ユニットを補助圧力生成ユニットと接続可能な第1切替バルブが液圧生成ユニットに割り当てられ、補助圧力生成ユニットを、したがって圧力生成ユニットも主ブレーキシリンダと接続可能な第2切替バルブが補助圧力生成ユニットに割り当てられていることが企図される。したがって、補助圧力生成ユニットと圧力生成ユニットとが特に直列に接続されている。それによって、2つの圧力生成ユニットが故障したとしても、運転者が依然としてブレーキペダル、および主ブレーキシリンダとブレーキ回路の液圧結合を操作することにより自動車を停止させることが保証されている。このような場合、次に主ブレーキシリンダが圧力生成ユニットと、したがってホイールブレーキとも液圧的に結合されるように切替バルブが操作される。
【発明の概要】
【0005】
請求項1の特徴を有する本発明による方法は、圧力生成ユニットから補助圧力生成ユニットへ切り替えられる場合に、ブレーキ力発生の遅延が確実に回避されるという利点を有する。この方法によって、補助圧力生成ユニットもしくは主ブレーキシリンダとの接続を作成するように第1切替バルブが操作される場合に、ホイールブレーキもしくは圧力生成ユニットから作動媒体が逆流してホイールブレーキの圧力低下をもたすことがないことが保証される。本発明によれば、このために、ブレーキシステムが、例えばブレーキペダル操作または制御装置によって予め与えられるブレーキ要求の有無について監視されることと、ブレーキ要求が検出された場合に、補助圧力生成ユニットを主ブレーキシリンダと接続する第2切替バルブが、主ブレーキシリンダとの接続を遮断するように制御されることと、が企図される。それによって、第1切替バルブが開いた場合に補助圧力生成ユニットの方向に流れる作動媒体が主ブレーキシリンダに流出してブレーキ回路に圧力損失をもたらし得ることが回避される。すなわちブレーキ要求が発生すると直ちに、接続を遮断するために第2切替バルブが閉じられ、補助圧力生成ユニットによってホイールブレーキの液圧を提供できることを保証するために第1切替バルブが開かれる。
【0006】
本発明の好ましい一実施形態では、第2切替バルブは、圧力要求の検出ごとに接続を遮断するように制御される。それにより、ブレーキ要求が存在する場合にはいつも第2バルブを閉じることによって、ブレーキシステムおよびブレーキ回路における圧力損失が回避されるようにブレーキシステムが付勢される(vorgespannt)ことが確保される。
【0007】
第2切替バルブはそれぞれ、それぞれ検出されたブレーキ要求の継続中、前記接続を遮断するように制御されることが特に好ましい。すなわち第2切替バルブは、ブレーキ要求が存在する間は閉じられる。それにより、制動プロセスの全時間中、ブレーキシステムまたはブレーキ回路の液圧が実質的な圧力損失を受けないことが保証されている。
【0008】
さらに、好ましくは、ブレーキ要求が検出された場合、第1切替バルブが補助圧力生成装置との接続を作成するように制御されることが企図されている。上記ですでに述べたように、そのことによって、ブレーキ回路もしくはホイールブレーキが補助圧力生成装置により提供される液圧によって加圧されることが保証される。所望により、圧力生成ユニットは、第1バルブが開かれる場合に開放されるバイパスを有し、作動媒体は別の選択肢として圧力生成装置を通過する。
【0009】
本発明の好ましい一発展形態では、ブレーキ要求を検出するために、主ブレーキシリンダに割り当てられ、かつ運転者により操作可能なブレーキペダルがブレーキペダルの操作について、および/または車両の制御装置がブレーキ要求の自動化された発出について監視される。したがって、ブレーキペダルには、例えばブレーキペダルをその操作およびその操作状態について監視するブレーキペダルストロークセンサが割り当てられ、この検出されたブレーキペダルストロークに依存して、圧力生成ユニットによって、または圧力生成ユニットの故障時には補助圧力生成ユニットによって満たされるべきブレーキ要求が生成される。自動または自律制動プロセスを可能にする車両では、ブレーキ要求および圧力要求は、例えばナビゲーションデータおよび/または車両の周辺センサ系のデータに依存して生成される。
【0010】
主ブレーキシリンダが、通常動作においてブレーキシステムのペダル感覚シミュレータと接続され、第1切替バルブが、圧力生成ユニットと補助圧力生成ユニットの接続を分離するように制御されることが好ましく、それにより冒頭ですでに述べたように、運転者は走行ペダルを操作し、かつブレーキ背圧を感じ取ることができはするが、ブレーキシステムの実際の増圧は圧力生成装置によって行われる。
【0011】
請求項8の特徴を有する本発明による装置は、規定通りに使用された場合に本発明による方法を実行もしくは実施するために特に設定されている制御装置を特徴とする。これによって上述した利点が生じる。
【0012】
請求項9の特徴を有する本発明によるブレーキシステムは、本発明による装置を特徴とする。このことからも上述の利点が生じる。上記ですでに述べたように、ブレーキ要求を検出するため、ならびに圧力生成ユニットまたは補助圧力生成ユニットを相応に制御するために、特に、制御装置は、ブレーキペダルストロークセンサおよび/またはブレーキシステムの制御装置と接続、またはブレーキシステムの制御装置として形成されている。特に、制御装置は、圧力生成ユニットを機能不良について監視するように、および第1切替バルブと第2切替バルブを制御するように形成され、それにより上記ですでに説明したように、必要な場合に圧力生成ユニットを作動停止させ、かつ所望の液圧を提供するために補助圧力生成ユニットが制御される。
【0013】
請求項10の特徴を有する本発明による車両、特に自動車は、本発明によるブレーキシステムを特徴とする。これによって上述の利点が得られる。
【0014】
他の利点および好ましい特徴ならびに特徴の組み合わせは、特に上記の記載および請求項から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】有利なブレーキシステムを有する自動車の簡略化された図である。
図2】ブレーキシステムの簡略化された図である。
図3】有利なブレーキシステムの機能方式を説明する線図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0017】
図1は、有利なブレーキシステム2を有する自動車1の簡略化された上面図を示す。明瞭にする理由から自動車1の駆動システムは示されていない。
【0018】
ブレーキ2は複数のホイールブレーキ3を有し、ホイールブレーキは、必要な場合にホイール個別のブレーキ力を生成できるようにするために自動車1のそれぞれ1つのホイールに割り当てられている。そのために、ホイールブレーキ3は、提供された液圧をホイールブレーキ3に分配するブレーキシステムの圧力分配器4と接続されている。その場合、提供された液圧をホイール個別に利用できるようにするインレットバルブ5が各ホイールブレーキ3にそれぞれ割り当てられるか、または圧力分配器4が、それぞれのホイールブレーキ3に相応のインレットバルブを有する。
【0019】
さらに、ブレーキシステム2は主ブレーキシリンダ6を有する。主ブレーキシリンダ6は、車室内にあり自動車の運転者により操作され得るブレーキペダル7と機械的に結合されている。主ブレーキシリンダ6は簡単なブレーキシリンダとして、またはタンデムブレーキシリンダとして形成され、自動車1の1つまたは複数のブレーキ回路を操作する。この実施例では、自動車は、ホイールブレーキ3が割り当てられているブレーキ回路8を有する。主ブレーキシリンダ6に切替バルブ9が割り当てられ、この切替バルブによって、第1切替位置において主ブレーキシリンダがブレーキ回路8と接続され、第2位置においてペダル感覚シミュレータ10と接続される。切替バルブ9が第2切替位置にある場合、ブレーキペダル7の操作により主ブレーキシリンダ6によって提供される液量がブレーキペダル感覚シミュレータ10へ移動され、ブレーキ回路8には到達せず、それにより主ブレーキシリンダ6がブレーキ回路8から液圧的に切り離される。
【0020】
第1切替位置において、切替バルブ9が主ブレーキシリンダ6を圧力生成ユニット11と接続する。この圧力生成ユニットは、必要な場合にブレーキ回路8に液圧を生成するように形成されている。そのために、圧力生成ユニット11は、例えば作動媒体を収容および提供するためのタンク12と接続され、かつ例えば電気モータを有する1つまたは複数の、図1に示されない液圧ポンプを有し、この液圧ポンプによって、ホイールブレーキ3に分配可能な液圧をブレーキシステム8において圧力生成ユニット11の下流に生成することができる。さらに、ブレーキ回路8が補助圧力生成ユニット13を有し、この補助圧力生成ユニットも同様にタンク12と接続され、かつホイールブレーキ3に分配することができる液圧を、必要な場合にブレーキ回路8に生成するように形成されている。その場合、補助圧力生成ユニット13は、特に圧力生成ユニット11と同様であるので、補助圧力生成ユニット13も、特に電気モータで駆動可能であるか、または駆動される1つまたは複数の液圧ポンプを有する。
【0021】
ブレーキシステム2が制御装置14をさらに有し、制御装置は、圧力生成ユニット11、13、圧力分配器4、および/またはインレットバルブ5、ならびにブレーキペダル7に割り当てられたブレーキペダルストロークセンサ15と接続されている。ブレーキ回路11において、補助圧力生成ユニット13の下流に圧力生成ユニット11が接続され、圧力生成ユニット11、13間に第2切替バルブ16が介在し、この第2切替バルブは、第1切替位置において圧力生成ユニット11を補助圧力生成ユニット13と接続し、第2切替位置において補助圧力生成ユニットから分離もしくは接続を遮断する。制御装置14は、2つの切替バルブ9および16とも接続されていてこれらを制御する。制御装置14の上記の接続は、明瞭にする理由から図1に示されていない。
【0022】
通常動作において、ブレーキシステム2はブレーキ・バイ・ワイヤブレーキシステムとして、すなわち機械的または液圧的に切り離されたブレーキシステムとして作動する。そのために、制御装置14はブレーキペダル位置、したがってブレーキペダル7の操作状態をブレーキペダルストロークセンサ15によって検出し、かつブレーキペダル位置によって検知されたブレーキ要求に依存して圧力生成ユニット11を制御し、それによりこの圧力生成ユニットが液圧を提供し、この液圧がインレットバルブ5、特に圧力制御バルブ、または圧力分配器4によってホイールブレーキ3にホイール個別に分配されて最適な制動プロセスが実行される。その場合、切替バルブ9は、主ブレーキシリンダ6をペダルストローク感覚シミュレータ(Pedalweggefuehlsimulator)10と接続するように制御される。さらに、補助圧力生成ユニット13との接続を遮断するように切替バルブ16が切り替えられる。それにより、圧力生成ユニット11によって生成される液圧がホイールブレーキ3にだけ役立てられることが保証される。
【0023】
制御装置14は、さらに、圧力生成ユニット11の機能を監視するように形成されている。制御装置14がブレーキ要求を検出した場合、制御装置は切替バルブ9を制御し、それにより圧力生成ユニット13と主ブレーキシリンダ6の接続が遮断される。制御装置がさらに圧力生成ユニット11の機能不良またはその故障を検出した場合、制御装置は切替バルブ16を制御し、それにより圧力生成ユニット11と補助圧力生成ユニット13の接続が作成される。さらに、ブレーキペダル操作7によって生成されたブレーキ要求が制御装置14により補助圧力生成ユニット13に送られることとなり、それにより補助圧力生成ユニットがブレーキシステム8に所望の液圧を生成する。
【0024】
バルブ16が開かれ、接続が作成されることによって、ブレーキ回路8に圧力がすでに生成されたことにもとづき、作動媒体がブレーキ回路8から主ブレーキシリンダ6またはペダル感覚シミュレータ10の方向に逆流して戻り、それによりブレーキ回路8の液圧を新たに増圧されることが必要になり、そのことによって、図3に示されるようにブレーキ回路8もしくはホイールブレーキ3の圧力が減少する可能性のある短い期間dTが生じる。
【0025】
その場合、図3は、時間t上にプロットされたブレーキ回路8内の液圧pを、ブレーキ要求の結果としての圧力プロファイルを示す特性曲線Kで示す。その場合、特性曲線Kは、従来の場合の圧力プロファイルを期間dTに破線区分で示す。
【0026】
しかしブレーキ要求が検出された場合に、制御装置14が主ブレーキシリンダ6との接続を遮断するように切替バルブ9を制御することによって、作動媒体が主ブレーキシリンダ6またはタンク12に逆流できないことが実現され、それにより図3の区分dTに実線で示されるように、ブレーキ回路8の液圧がほとんど維持される。
【0027】
したがって、制御装置14により実施される有利な方法によって、圧力生成ユニット11から圧力生成ユニット13へ切り替えられるときの、ブレーキ回路8の液圧の一時的な低下が回避されることが実現される。
【0028】
図2は、別の実施例によるブレーキシステム2の簡略化された図を示す。図1からすでに知られる要素には同じ参照符号が付され、その限りで上記の説明を参照されたい。以下においては実質的に相違にのみ言及する。
【0029】
図1の実施例とは異なり、ここではブレーキシステム2が2つのブレーキ回路8‘および8‘‘を有し、2つのブレーキ回路が圧力生成ユニット11および13と接続され、それぞれ第1切替バルブ16‘もしくは16‘‘と第2切替バルブ9‘もしくは9‘‘とを有する。その場合、主ブレーキシリンダ6はタンデムシリンダとして形成され、それぞれブレーキ回路8‘もしくは8‘‘のうちの1つと接続されている2つの液圧室を有している。
【0030】
さらに、ブレーキシステム2がマスタユニット17とスレーブユニット18に分割されている。マスタユニット17は、主ブレーキシリンダ6と、切替バルブ16‘、16‘‘と、圧力生成ユニット11と、圧力分配器4と、ホイールブレーキ3とを備えている。その限りで補助ユニットまたは非常用ユニットと呼ぶことができるスレーブユニット18は、切替バルブ9‘および9‘‘と圧力生成ユニット13とを有する。
【0031】
圧力生成ユニット11、13が直列に接続されていることにより、圧力生成ユニット13が液圧を生成する場合、この液圧は圧力生成ユニット11によってホイールブレーキ3に(よって)供給されることになる。圧力生成ユニット11が故障した場合、切替バルブ9‘および9‘‘が両方とも閉じられ、主ブレーキシリンダ6、したがってタンク12との接続が遮断され、それにより作動媒体がそこへ流出できなくなり、それにより図3に示されるように、ブレーキ回路8‘および8‘‘の液圧pが維持される。
【0032】
さらにブレーキ液もしくは作動媒体の流出も回避するために、制御装置14が圧力要求またはブレーキ要求を検出した場合に毎回、制御装置14によって切替バルブ9または9‘、9‘‘が制御もしくは閉鎖される。それによって、圧力生成ユニット11が液圧を生成するように制御される場合に毎回、切替バルブ9または9‘、9‘‘がすでに閉鎖されることが確保され、それにより圧力生成ユニット11の故障時に迅速に、かつ圧力損失なしに圧力生成ユニット13に切り替えることができる。
【0033】
そのために、制御装置14は、一方でブレーキペダル7のブレーキペダル位置、および場合によっては存在する自律ブレーキシステムをブレーキ要求発生について監視する。ブレーキ要求発生が検知されると直ちに、制御装置14が切替バルブ9または9‘、9‘‘を相応に制御し、それにより切替バルブが閉じ、主ブレーキシリンダ6と補助圧力生成ユニット13の接続が遮断される。
【0034】
自動車1の運転者がブレーキペダル7を操作することにより自身で制動を引き受けたい場合、これもまた可能である。なぜなら、好ましくはスレーブユニット18に存在する運転者ブレーキ要求検出が切替バルブ9‘、9‘‘または9の早期の切り替えによる影響を受けないからである。さらに、通常の場合、すなわちマスタユニットもしくは圧力生成ユニット11が規定どおりに機能する場合、背圧が存在しないことから切替バルブ9‘、9‘‘に液圧負荷がかからず、その結果、有利な方法によって、切替バルブ9‘、9‘‘、9の負荷が高くならない。
【符号の説明】
【0035】
1 自動車
2 ブレーキシステム
3 ホイールブレーキ
4 圧力分配器
5 インレットバルブ
6 主ブレーキシリンダ
7 ブレーキペダル
8、8‘、8‘‘ ブレーキ回路
9、9‘、9‘‘ 第2切替バルブ
10 ブレーキペダル感覚シミュレータ
11 圧力生成ユニット
12 タンク
13 補助圧力生成ユニット
14 制御装置
15 ブレーキペダルストロークセンサ
16、16‘、16‘‘ 第1切替バルブ
図1
図2
図3