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特許7297993低いタイミングチェーンの伸長のためのエンジン油配合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】低いタイミングチェーンの伸長のためのエンジン油配合物
(51)【国際特許分類】
   C10M 141/12 20060101AFI20230619BHJP
   C10M 163/00 20060101ALI20230619BHJP
   C10M 137/10 20060101ALN20230619BHJP
   C10M 139/00 20060101ALN20230619BHJP
   C10M 135/18 20060101ALN20230619BHJP
   C10M 159/22 20060101ALN20230619BHJP
   C10M 159/24 20060101ALN20230619BHJP
   C10M 135/10 20060101ALN20230619BHJP
   C10M 129/10 20060101ALN20230619BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20230619BHJP
   C10N 10/12 20060101ALN20230619BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20230619BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20230619BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20230619BHJP
【FI】
C10M141/12
C10M163/00
C10M137/10 A
C10M139/00 Z
C10M135/18
C10M159/22
C10M159/24
C10M135/10
C10M129/10
C10M139/00 A
C10N10:04
C10N10:12
C10N20:02
C10N40:25
C10N30:00 Z
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022118535
(22)【出願日】2022-07-26
(65)【公開番号】P2023021208
(43)【公開日】2023-02-10
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】17/390,867
(32)【優先日】2021-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391007091
【氏名又は名称】アフトン・ケミカル・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100196449
【弁理士】
【氏名又は名称】湯澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】ケン・ガレリック
(72)【発明者】
【氏名】レスリー・シュミット
(72)【発明者】
【氏名】クリスティ・エンゲルマン
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0346839(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0321146(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0325834(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M
C10N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油組成物であって、
前記潤滑油組成物の総重量に基づいて50重量%超の基油と、
添加剤組成物と、を含み、前記添加剤組成物が、
前記潤滑油組成物の総重量に基づいて350ppm~2200ppmの亜鉛を前記潤滑油組成物に提供するのに十分な量の1種類以上のジアルキルジチオリン酸亜鉛と、
前記潤滑油組成物の総重量に基づいて1ppm超~3000ppmのモリブデンを前記潤滑油組成物に提供するのに十分な量の1種類以上のモリブデン含有化合物と、
1種類以上のホウ素含有分散剤と、
前記潤滑油組成物の総重量に基づいて2050ppm未満のマグネシウムを前記潤滑油組成物に提供するのに十分な量の1種類以上のマグネシウム含有清浄剤と、を含み、
前記潤滑油組成物が、ASTM D-2896の方法によって測定されるとき、7.5mg KOH/g未満の総TBNを有し、
前記1種類以上のジアルキルジチオリン酸亜鉛由来の亜鉛のppmの、前記1種類以上のモリブデン含有化合物由来のモリブデンのppmに対する重量比が、10未満であり、
前記1種類以上のホウ素含有分散剤由来のホウ素のppmの、ASTM D-2896の方法によって測定されるとき、mg KOH/gでの前記潤滑油組成物の総TBNに対する重量比が、32~36である、潤滑油組成物。
【請求項2】
前記潤滑油組成物が、前記潤滑油組成物の総重量に基づいて2重量%以下の総硫酸灰分を有する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記1種類以上のジアルキルジチオリン酸亜鉛由来の亜鉛のppmの、前記1種類以上のモリブデン含有化合物由来のモリブデンのppmに対する重量比が、6未満である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記1種類以上のジアルキルジチオリン酸亜鉛が、一級アルキルアルコールに由来する第1のジアルキルジチオリン酸亜鉛と、二級アルキルアルコールに由来する第2のジアルキルジチオリン酸亜鉛とを含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
前記1種類以上のモリブデン含有化合物が、有機アミドの硫黄不含有機モリブデン錯体、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸モリブデン、及びそれらの混合物から選択される1種類以上の化合物を含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
前記1種類以上のモリブデン含有化合物が、有機アミドの硫黄不含有機モリブデン錯体を含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
前記1種類以上のモリブデン含有化合物が、ジチオカルバミン酸モリブデンを含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
前記1種類以上のマグネシウム含有清浄剤が、ASTM D-2896の方法によって測定されるとき、225mg KOH/g超の総塩基価を有する過塩基性マグネシウム含有清浄剤を含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
前記1種類以上のマグネシウム含有清浄剤が、マグネシウムスルホネート及びマグネシウムフェネートから選択される清浄剤を含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
前記1種類以上のマグネシウム含有清浄剤が、前記潤滑油組成物の総重量に基づいて50ppm~1000ppmのマグネシウムを前記潤滑油組成物に提供するのに十分な量で存在する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
前記潤滑油組成物の総重量に基づいて500ppm~2000ppmのカルシウムを前記潤滑油組成物に提供するのに十分な量の1種類以上のカルシウム含有清浄剤を更に含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
前記1種類以上のカルシウム含有清浄剤が、カルシウムスルホネート清浄剤及びカルシウムフェネート清浄剤から選択される清浄剤を含む、請求項11に記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
前記ホウ素含有分散剤が、前記潤滑油組成物の総重量に基づいて250ppm未満のホウ素を前記潤滑油組成物に提供するのに十分な量で存在する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項14】
前記潤滑油組成物が、酸化防止剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、及び粘度指数向上剤からなる群から選択される1種類以上の添加剤を更に含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項15】
前記基油が、ASTM-445-19に従って測定されるとき、100℃で3.8cSt~12cStの動粘度を有する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項16】
前記基油が、ASTM-445-19に従って測定されるとき、100℃で5cSt~10cStの動粘度を有する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項17】
前記潤滑油組成物がエンジン油組成物である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項18】
前記潤滑油組成物が、エンジンを潤滑するために使用された場合、ASTM D8279のシーケンスXチェーン摩耗試験によって測定されるとき、0.1%以下のエンジンにおけるタイミングチェーン伸びを達成する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項19】
エンジンにおけるタイミングチェーン伸びを制御するための方法であって、前記タイミングチェーンを潤滑油組成物で潤滑する工程を含み、前記潤滑油組成物が、
前記潤滑油組成物の総重量に基づいて50重量%超の基油と、
添加剤組成物と、を含み、前記添加剤組成物が、
前記潤滑油組成物の総重量に基づいて350ppm~2200ppmの亜鉛を前記潤滑油組成物に提供するのに十分な量の1種類以上のジアルキルジチオリン酸亜鉛と、
前記潤滑油組成物の総重量に基づいて1ppm超~3000ppmのモリブデンを前記潤滑油組成物に提供するのに十分な量の1種類以上のモリブデン含有化合物と、
前記潤滑油組成物の総重量に基づいて2050ppm未満のマグネシウムを前記潤滑油組成物に提供するのに十分な量の1種類以上のマグネシウム含有清浄剤と、
1種類以上のホウ素含有分散剤と、を含み、
前記潤滑油組成物が、ASTM D-2896の方法によって測定されるとき、7.5mg KOH/g未満の総TBNを有し、
前記1種類以上のジアルキルジチオリン酸亜鉛由来の亜鉛のppmの、前記1種類以上のモリブデン含有化合物由来のモリブデンのppmに対する重量比が、10未満であり、
前記1種類以上のホウ素含有分散剤由来のホウ素のppmの、ASTM D-2896の方法によって測定されるとき、mg KOH/g単位での前記潤滑油組成物の総TBNに対する重量比が、32~36であり、
前記潤滑油組成物が、ASTM D8279のシーケンスXエンジン試験によって測定されるとき、0.1%以下のエンジンにおけるタイミングチェーン伸びを達成する、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、潤滑油組成物、特に潤滑油添加剤組成物、および潤滑油組成物を使用してタイミングチェーンの伸長を制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内部燃焼エンジンにおいて、軸受ピン、ローラ、ブッシュ、ならびに内側および外側プレートからなる、タイミングチェーンとしても知られている金属チェーンが存在し得る。このタイミングチェーンにかかる著しい負荷および摩擦に起因して、タイミングチェーンは、腐食摩耗を含む著しい摩耗の影響を受けやすい。この問題に対処するために、潤滑剤が、金属と金属との接触がある可動部品間の摩耗を低減するために使用される。
【0003】
チェーンの伸長、またはタイミングチェーンの伸長は、摩耗に起因して劣化したタイミングチェーンを有する内部燃焼エンジンにおいて生じる現象である。チェーンの伸長は、主に、ピン、ブッシュ、およびサイドプレートの摩耗接触界面で発生する。タイミングチェーンの伸長は、内部燃焼エンジンの運転に重大な問題を引き起こす可能性があり、エンジン性能、燃費、および排気量のうちの1つ以上に悪影響を与える可能性がある。
【0004】
チェーンの伸長は、タイミングチェーンに動作可能に接続された部品の望ましいタイミングからのずれを引き起こす可能性がある。そのようなずれは、例えば、運転中にチェーンが1つ以上のスプロケット歯を飛ばすことによって、またはカム位相器の調節能力を超えることによって引き起こされ得る。これらのずれは、バルブおよび点火の相対的なタイミングを変化させ得る。吸気バルブタイミングは、空気および/または燃料混合物がいつシリンダ内に引き込まれるかに影響を与える。排気バルブが適切なときに開かない場合、排気バルブを介してガスが漏れることを理由に力が失われる可能性があるため、排気バルブタイミングは出力に影響する。さらに、排気バルブタイミングがずれている場合、そのような状況下では未燃焼燃焼ガスが排気バルブを介して漏れる可能性があるため、未燃焼炭化水素排気量が増加し得る。
【0005】
ディーゼルエンジンのタイミングチェーンの摩耗に対する種々の基油の影響は、“Investigation of Lubrication Effect on a Diesel Engine Timing Chain Wear,”Polat,Ozay,M.Sc.Thesis Istanbul Technical University Institute of Science and Technology(January 2008)において調査された。この論文は、基油の選択が、ディーゼルエンジンのタイミングチェーンの摩耗に影響を与える可能性があると結論付けた。
【0006】
軽負荷ディーゼルエンジンにおけるタイミングチェーンの摩耗は、様々な要因によるものであり得、要因のうちの1つは、煤の研磨摩耗への寄与である。Li,Shoutian,et al.,“Wear in Cummins M-11/EGR Test Engines,”Society of Automotive Engineers,Inc.(2001),paper no.2002-01-1672。この論説は、排気ガス再循環(EGR)システムを有するエンジンにおいて、煤が、ライナー、クロスヘッド、およびトップリング面に摩耗を引き起こしたことを述べている。この論説はまた、非EGRディーゼルエンジンにおいて煤によって誘発される摩耗が、GM6.2Lエンジンではローラピンの摩耗、およびCummins M-11エンジンではクロスヘッドの摩耗に主に集中するとも述べている。
【0007】
ガソリンエンジンにおけるチェーンの伸長は、典型的にはローラピンの摩耗の結果である。結果として、タイミングチェーンの伸長に対処するための従来技術の方法は、典型的には、耐摩耗剤の使用および選択に焦点を当てている。TGDiエンジンの実装の結果、煤は、今やガソリンエンジンの燃焼の副生成物であり、したがって、チェーンの伸長が、そのようなエンジンでの煤の生成から生じる可能性がある。
【0008】
タイミングチェーンの伸長を制御するためにガソリンエンジンにおいて現在使用されている潤滑剤は、典型的には耐摩耗剤を含有する。というのも、これらの添加剤は、タイミングチェーンの摩耗を低減することができると考えられているからである。しかしながら、本出願の実施例に示されるように、特定の典型的な耐摩耗剤は、実際には、タイミングチェーンの伸長を悪化させた。タイミングチェーンの伸長をもたらす摩耗問題を克服するために、ローラピンの摩耗を引き起こす転がり摩擦力および摺動摩擦力を低減するための解決策が求められている。
【0009】
いくつかの場合においては、分散剤および分散剤粘度指数向上剤が摩耗の問題に対処するために使用されてきた。例えば、米国特許第7,572,200(B2)号は、チェーンおよびスプロケットを含むシステムの摺動部品を、10原子パーセント以下の水素含有量を有する薄い硬質炭素コーティング膜で被覆して、チェーン駆動システム上の摩擦および摩耗の量を低減するように設計された潤滑剤を用いる、チェーン駆動システムを開示している。
【0010】
当技術分野において、タイミングチェーンの伸長の問題に対処するために、潤滑油およびそれらを使用する方法を改善する必要性が依然としてある。
【0011】
発明の概要
本開示は、50重量%超の潤滑粘度の基油と添加剤組成物とを含む、潤滑油組成物に関する。本発明の潤滑油組成物は、エンジンにおけるタイミングチェーンの伸長を制御することが可能であり得る。
【0012】
以下の文において、本発明のいくつかの実施形態を説明する。
1.第1の態様では、本開示は、潤滑油組成物であって、
潤滑油組成物の総重量に基づいて50重量%超の基油と、
添加剤組成物であって、
潤滑油組成物の総重量に基づいて約350ppm~約2200ppmの亜鉛を潤滑油組成物に提供するのに十分な量の1つ以上の亜鉛ジアルキルジチオホスフェート、
潤滑油組成物の総重量に基づいて1ppm超~約3000ppmのモリブデンを潤滑油組成物に提供するのに十分な量の1つ以上のモリブデン含有化合物、および
潤滑油組成物の総重量に基づいて2050ppm未満のマグネシウムを潤滑油組成物に提供するのに十分な量の1つ以上のマグネシウム含有洗浄剤を含む、添加剤組成物と、を含み、
潤滑油組成物が、ASTM D-2896の方法によって測定した場合に、7.5mgKOH/g未満の総TBNを有し、
1つ以上のモリブデン含有化合物からのモリブデンのppmに対する1つ以上の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートからの亜鉛のppmの重量比率が10未満である、潤滑油組成物に関する。
2.潤滑油組成物が、潤滑油組成物の総重量に基づいて2重量%以下の総硫酸塩灰分含有量を有し得る、文章1に記載の潤滑油組成物。
3.1つ以上のモリブデン含有化合物からのモリブデンのppmに対する1つ以上の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートからの亜鉛のppmの重量比率が6未満であり得る、文章1または2に記載の潤滑油組成物。
4.1つ以上の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートが、一級アルキルアルコール、二級アルキルアルコール、またはそれらの混合物から誘導され得る、文章1~3のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
5.1つ以上のモリブデン含有化合物が、有機アミドの1つ以上の硫黄不含有機モリブデン錯体、1つ以上のモリブデンジチオカルバメート、1つ以上のモリブデンジチオホスフェート、およびそれらの混合物を含み得る、文章1~4のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
6.1つ以上のモリブデン含有化合物が、有機アミドの硫黄不含有機モリブデン錯体を含み得る、文章1~5のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
7.1つ以上のモリブデン含有化合物がモリブデンジチオカルバメートを含み得る、文章1~6のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
8.1つ以上のマグネシウム含有洗浄剤が、ASTM D-2896の方法によって測定した場合に、225mgKOH/g超の総塩基価を有する過塩基性マグネシウム含有洗浄剤を含み得る、文章1~7のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
9.1つ以上のマグネシウム含有洗浄剤が、スルホン酸マグネシウムおよび石炭酸マグネシウムから選択される洗浄剤を含み得る、文章1~8のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
10.1つ以上のマグネシウム含有洗浄剤が、潤滑油組成物の総重量に基づいて50ppm~1000ppmのマグネシウムを潤滑油組成物に提供するのに十分な量で存在し得る、文章1~9のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
11.潤滑油組成物の総重量に基づいて500ppm~2000ppmのカルシウムを潤滑油組成物に提供するのに十分な量で存在する1つ以上のカルシウム含有洗浄剤をさらに含む、文章1~10のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
12.1つ以上のカルシウム含有洗浄剤が、スルホン酸カルシウム洗浄剤および石炭酸カルシウム洗浄剤から選択される洗浄剤を含み得る、文章11に記載の潤滑油組成物。
13.潤滑油組成物の総重量に基づいて250ppm未満のホウ素を潤滑油組成物に提供するのに十分な量の1つ以上のホウ素含有分散剤をさらに含む、文章1~12のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
14.潤滑油組成物が、ASTM D-2896の方法によって測定した場合に、mgKOH/g潤滑油組成物での潤滑油組成物の総TBNに対する1つ以上のホウ素含有分散剤からのホウ素のppmの重量比率が32~36であり得る、文章1~13のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
15.潤滑油組成物が、酸化防止剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、および粘度指数向上剤からなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含み得る、文章1~14のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
16.基油が、ASTM-445-19に従って測定した場合に、100℃で3.8cSt~12cStの動粘度を有する、文章1~15のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
17.基油が、ASTM-445-19に従って測定した場合に、100℃で約5cSt~約10cStの動粘度を有する、文章1~16のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
18.潤滑油組成物がエンジン油組成物であり得る、文章1~17のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
19.潤滑油組成物が、エンジンを潤滑させるために使用される際に、シーケンスXエンジン試験(ASTM D8279)によって測定した場合に、エンジンにおいて、0.1%以下、または0.095%以下、または0.09%以下のタイミングチェーンの伸長を達成し得る、文章1~18のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
20.第2の態様では、本発明は、エンジンにおけるタイミングチェーンの伸長を制御するための方法であって、該タイミングチェーンを、潤滑油組成物であって、
潤滑油組成物の総重量に基づいて50重量%超の基油と、
添加剤組成物であって、
潤滑油組成物の総重量に基づいて約350ppm~約2200ppmの亜鉛を潤滑油組成物に提供するのに十分な量の1つ以上の亜鉛ジアルキルジチオホスフェート、
潤滑油組成物の総重量に基づいて1ppm超~約3000ppmのモリブデンを潤滑油組成物に提供するのに十分な量の1つ以上のモリブデン含有化合物、
潤滑油組成物の総重量に基づいて2050ppm未満のマグネシウムを潤滑油組成物に提供するのに十分な量の1つ以上のマグネシウム含有洗浄剤を含む、添加剤組成物と、を含む、潤滑油組成物を用いて潤滑させるステップを含み、
潤滑油組成物が、ASTM D-2896の方法によって測定した場合に、7.5mgKOH/g未満の総TBNを有し、
1つ以上のモリブデン含有化合物からのモリブデンのppmに対する1つ以上の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートからの亜鉛のppmの重量比率が10未満であり、かつ
潤滑油組成物が、シーケンスXエンジン試験(ASTM D8279)によって測定した場合に、エンジンにおいて、0.1%以下、または0.095%以下、または0.09%以下でタイミングチェーンの伸長を達成することができる、方法に関する。
21.潤滑油組成物が、潤滑油組成物の総重量に基づいて2重量%以下の総硫酸塩灰分含有量を有し得る、文章20に記載の潤滑油組成物。
22.1つ以上のモリブデン含有化合物からのモリブデンのppmに対する1つ以上の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートからの亜鉛のppmの重量比率が6未満であり得る、文章20または21に記載の方法。
23.1つ以上の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートが、一級アルキルアルコール、二級アルキルアルコール、またはそれらの混合物から誘導され得る、文章20~22のいずれか1つに記載の方法。
24.1つ以上のモリブデン含有化合物が、有機アミドの硫黄不含有機モリブデン錯体、1つ以上のモリブデンジチオカルバメート、1つ以上のモリブデンジチオホスフェート、およびそれらの混合物を含み得る、文章20~23のいずれか1つに記載の方法。
25.1つ以上のモリブデン含有化合物が、有機アミドの硫黄不含有機モリブデン錯体を含み得る、文章20~24のいずれか1つに記載の方法。
26.1つ以上のモリブデン含有化合物がモリブデンジチオカルバメートを含み得る、文章20~25のいずれか1つに記載の方法。
27.1つ以上のマグネシウム含有洗浄剤が、ASTM D-2896の方法によって測定した場合に、225mgKOH/g超の総塩基価を有する過塩基性マグネシウム含有洗浄剤を含み得る、文章20~26のいずれか1つに記載の方法。
28.1つ以上のマグネシウム含有洗浄剤が、スルホン酸マグネシウムおよび石炭酸マグネシウムから選択される洗浄剤を含み得る、文章20~27のいずれか1つに記載の方法。
29.1つ以上のマグネシウム含有洗浄剤が、潤滑油組成物の総重量に基づいて50ppm~1000ppmのマグネシウムを潤滑油組成物に提供するのに十分な量で存在し得る、文章20~28のいずれか1つに記載の方法。
30.潤滑油組成物の総重量に基づいて500ppm~2000ppmのカルシウムを潤滑油組成物に提供するのに十分な量の1つ以上のカルシウム含有洗浄剤をさらに含む、文章20~29のいずれか1つに記載の方法。
31.1つ以上のカルシウム含有洗浄剤が、スルホン酸カルシウム洗浄剤および石炭酸カルシウム洗浄剤から選択される洗浄剤を含み得る、文章30に記載の方法。
32.潤滑油組成物が、潤滑油組成物の総重量に基づいて250ppm未満のホウ素を潤滑油組成物に提供するのに十分な量の1つ以上のホウ素含有分散剤を含む、文章20~31のいずれか1つに記載の方法。
33.潤滑油組成物が、ASTM D-2896の方法によって測定した場合に、mgKOH/g潤滑油組成物での潤滑油組成物の総TBNに対する1つ以上のホウ素含有分散剤からのホウ素のppmの重量比率が32~36であり得る、文章20~32のいずれか1つに記載の方法。
34.潤滑油組成物が、酸化防止剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、および粘度指数向上剤からなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含み得る、文章20~33のいずれか1つに記載の方法。
35.基油が、ASTM-445-19に従って測定した場合に、100℃で3.8cSt~10cStの動粘度を有し得る、文章20~34のいずれか1つに記載の方法。
36.基油が、ASTM-445-19に従って測定した場合に、100℃で約3.8cSt~約7.5cStの動粘度を有し得る、文章20~35のいずれか1つに記載の方法。
37.潤滑油組成物がエンジン油組成物であり得る、文章20~36のいずれか1つに記載の方法。
【0013】
本明細書で使用される特定の用語の意味を明確にするために、以下の用語の定義が提供される。
【0014】
用語「油組成物」、「潤滑組成物(lubrication composition)」、「潤滑油組成物」、「潤滑油」、「潤滑剤組成物」、「潤滑組成物(lubricating composition)」、「完全配合潤滑剤組成物」、「潤滑剤」、「クランクケース油」、「クランクケース潤滑剤」、「エンジン油」、「エンジン潤滑剤」、「モータ油」、および「モータ潤滑剤」は、主要量の基油に加えて少量の添加剤組成物を含む最終潤滑生成物を指す、同義の完全に互換性のある専門用語であるとみなされる。
【0015】
本明細書で使用される場合、用語「添加剤パッケージ」、「添加剤濃縮物」、「添加剤組成物」、「エンジン油添加剤パッケージ」、「エンジン油添加剤濃縮物」、「クランクケース添加剤パッケージ」、「クランクケース添加剤濃縮物」、「モータ油添加剤パッケージ」、「モータ油濃縮物」は、主要量の基油原料混合物を除外する潤滑油組成物の一部を指す、同義の完全に互換性のある専門用語であるとみなされる。添加剤パッケージは、粘度指数向上剤または流動点降下剤を含む場合も含まない場合もある。
【0016】
用語「過塩基性」は、存在する金属の量が化学量論的量を超える、スルホネート、カルボキシレート、サリチレート、および/またはフェネートの金属塩などの金属塩に関する。そのような塩は、100%超の変換レベルを有し得る(すなわち、それらは、酸をその「標準」、「中性」の塩に変換するのに必要な理論的金属量の100%超を含み得る)。多くの場合MRと略される表現「金属比率」は、既知の化学反応性および化学量論に従って、過塩基性塩中の金属の総化学当量と中性塩中の金属の化学当量との比率を示すために使用される。標準または中性塩では金属比率は1であるが、過塩基性塩ではMRは1より大きい。これらは、一般的に、過塩基性、高塩基性、または超塩基性塩と呼ばれ、有機硫黄酸、カルボン酸、サリチレート、および/またはフェノールの塩であってもよい。
【0017】
本明細書で使用される場合、用語「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」は当業者に既知の通常の意味で使用される。具体的には、分子の残りに直接結合した炭素原子を有し、主に炭化水素特性を有する基を指す。各ヒドロカルビル基は、独立して炭化水素置換基から選択され、置換炭化水素置換基は、ハロ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、酸素、および窒素のうちの1つ以上を含有し、ヒドロカルビル基中の10個の炭素原子毎に2つ以下の非炭化水素置換基が存在する。
【0018】
本明細書で使用される場合、用語「ヒドロカルビレン置換基」または「ヒドロカルビレン基」は、当業者に周知のその通常の意味で使用される。具体的には、分子の2つの場所で炭素原子によって分子の残りの部分に直接結合し、主に炭化水素特性を有する基を指す。各ヒドロカルビレン基は、二価炭化水素置換基から独立して選択され、置換二価炭化水素置換基は、ハロ基、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、酸素、および窒素を含有し、ヒドロカルビレン基中の10個の炭素原子毎に2つ以下の非炭化水素置換基が存在する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「重量パーセント」という用語は、他に明確に述べられていない限り、記載された成分が組成物全体の重量に対して表すパーセンテージを意味する。
【0020】
本明細書で使用される「可溶性」、「油溶性」、または「分散性」という用語は、化合物または添加剤が可溶性、溶解性、混和性、または油中にあらゆる割合で懸濁可能であることを示し得るが、必ずしもそうではない。しかしながら、前述の用語は、それらが、例えば、油が採油される環境においてその意図された効果を発揮するのに十分な程度に、油中で可溶性、懸濁性、溶解性、または安定に分散性であることを意味する。さらに、他の添加剤のさらなる組み込みはまた、所望であれば、特定の添加剤のより高いレベルの組み込みを可能にすることができる。
【0021】
本明細書で使用される「TBN」という用語は、ASTM D2896またはASTM D4739またはDIN51639-1の方法によって測定した場合に、mgKOH/gでの総塩基価を示すのに使用される。
【0022】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、約1~約100個の炭素原子の直鎖、分岐鎖、環状、および/または置換飽和鎖部分を指す。
【0023】
本明細書で使用される「アルケニル」という用語は、約3~約10個の炭素原子の直鎖、分岐鎖、環状、および/または置換の不飽和鎖部分を指す。
【0024】
本明細書で使用される「アリール」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキルアリール、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロ置換基、および/またはこれらに限定されないが、窒素、酸素、および硫黄を含むヘテロ原子を含むことができる単環式および多環式の芳香族化合物を指す。
【0025】
本明細書の潤滑剤、成分の組み合わせ、または個々の成分は、様々な種類の内部燃焼エンジン内のタイミングチェーンを潤滑させるための使用に好適であり得る。内部燃焼エンジンは、ガソリンを燃料とするエンジン、ガソリン/バイオ燃料の混合を燃料とするエンジン、アルコールを燃料とするエンジン、またはガソリン/アルコールの混合を燃料とするエンジンであってもよい。ガソリンエンジンは、火花点火式エンジンであってもよい。内燃エンジンはまた、電気またはバッテリ電源と組み合わせて使用してもよい。このように構成されたエンジンは、一般的にハイブリッドエンジンとして知られている。内部燃焼エンジンは、2行程エンジン、4行程エンジン、またはロータリーエンジンであり得る。好適な内部燃焼エンジンとしては、船舶用エンジン、航空機用ピストン式エンジン、ならびにバイク、自動車、エンジン車、およびトラックのエンジンが挙げられる。
【0026】
内燃エンジンは、アルミニウム合金、鉛、スズ、銅、鋳鉄、マグネシウム、セラミック、ステンレス鋼、複合材、および/またはそれらの混合物のうちの1つ以上の成分を含むことができる。成分は、例えば、ダイヤモンド様カーボンコーティング、潤滑コーティング、リン含有コーティング、モリブデン含有コーティング、グラファイトコーティング、ナノ粒子含有コーティング、および/またはそれらの混合物でコーティングされてもよい。アルミニウム合金は、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、または他のセラミック材料を含んでいてもよい。一実施形態では、アルミニウム合金はケイ酸アルミニウム表面である。本明細書で使用される場合、用語「アルミニウム合金」は、「アルミニウム複合体」と同義であり、その詳細な構造にかかわらず、顕微鏡レベルまたはほぼ顕微鏡レベルで混合または反応するアルミニウムおよび他の成分を含む成分または表面を表すことが意図される。これには、アルミニウム以外の金属を有する従来の合金だけでなく、セラミック様材料のような非金属元素または化合物を有する複合または合金様構造が含まれる。
【0027】
本開示の潤滑剤組成物は、硫黄、リン、または硫酸塩灰分(ASTM D-874)含有量とは無関係に、あらゆるエンジンに好適であってもよい。潤滑油の硫黄含有量は、約1重量%以下、または約0.8重量%以下、または約0.5重量%以下、または約0.3重量%以下であってもよい。一実施形態では、硫黄含有量は、約0.001重量%~約0.5重量%、または約0.01重量%~約0.3重量%の範囲であってもよい。リン含有量は、約0.5重量%以下、または約0.1重量%以下、または約0.094重量%以下、または約0.001重量%~約0.5重量%、または約0.01重量%~約0.1重量%であってもよい。
【0028】
一実施形態では、本開示の潤滑剤組成物のリン含有量は、約100ppm~約1000ppm、または約325ppm~約950ppmであってもよい。総硫酸塩灰分含有量は、約2重量%以下、または約1.5重量%以下、または約1.2重量%以下であってもよい。一実施形態では、硫酸塩灰分含有量は、約0.05重量%~約1.5重量%、または約0.1重量%もしくは約0.2重量%~約1.15重量%であってもよい。別の実施形態では、硫黄含有量は、約0.4重量%以下であってもよく、リン含有量は、約0.08重量%以下であってもよく、硫酸塩灰分含有量は、約1.2重量%以下である。さらに別の実施形態では、硫黄含有量は、約0.3重量%以下であってもよく、リン含有量は、約0.05重量%以下であってもよく、硫酸塩灰分は、約1.15重量%以下であってもよい。
【0029】
一実施形態では、タイミングチェーン潤滑組成物は、エンジン油としての、例えばエンジンのクランクケースを潤滑させるための使用にも好適である。他の実施形態では、潤滑油組成物は、(i)約0.5重量%以下の硫黄含有量、(ii)約0.1重量%以下のリン含有量、および(iii)約1.5重量%以下の硫酸塩灰分含有量のうちの1つ以上を有し得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、潤滑組成物は、これらに限定されないが、船舶用エンジンの動力供給に使用される燃料の高硫黄含有量および海洋に適したエンジン油に必要な高いTBN(例えば、海洋に適したエンジン油では約40TBN超)を含む、1つ以上の理由のために、2行程または4行程船舶用ディーゼル内部燃焼エンジンに好適ではない。
【0031】
いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、約1~約5%の硫黄を含有する燃料などの低硫黄燃料を動力源とするエンジンでの使用に好適である。高速道路車両燃料は、約15ppmの硫黄(または約0.0015%の硫黄)を含有する。
【0032】
低速ディーゼルは、典型的に船舶用エンジンを指し、中速ディーゼルは、一般に機関車を指し、高速ディーゼルは、典型的に高速道路車両を指す。潤滑油組成物は、これらの種類のうちの1つのみまたはすべてのものに好適であってもよい。
【0033】
さらに、本明細書の潤滑剤は、ILSAC GF-3、GF-4、GF-5、GF-6、PC-11、CF、CF-4、CH-4、CK-4、FA-4、CJ-4、CI-4Plus、CI-4、API SG、SJ、SL、SM、SN、ACEA A1/B1、A2/B2、A3/B3、A3/B4、A5/B5、C1、C2、C3、C4、C5、E4/E6/E7/E9、Euro5/6、JASO DL-1、Low SAPS、Mid SAPSなどの1つ以上の業界仕様要件、またはDexosTM1、DexosTM2、MB-Approval229.1、229.3、229.5、229.51/229.31、229.52、229.6、229.71、226.5、226.51、228.0/.1、228.2/.3、228.31、228.5、228.51、228.61、VW501.01、502.00、503.00/503.01、504.00、505.00、505.01、506.00/506.01、507.00、508.00、509.00、508.88、509.99、BMW Longlife-01、Longlife-01FE、Longlife-04、Longlife-12FE、Longlife-14FE+、Longlife-17FE+、Porsche A40、C30、Peugeot Citroen Automobiles B71 2290、B71 2294、B71 2295、B71 2296、B71 2297、B71 2300、B71 2302、B71 2312、B71 2007、B71 2008、Renault RN0700、RN0710、RN0720、Ford WSS-M2C153-H、WSS-M2C930-A、WSS-M2C945-A、WSS-M2C913A、WSS-M2C913-B、WSS-M2C913-C、WSS-M2C913-D、WSS-M2C948-B、WSS-M2C948-A、GM6094-M、Chrysler MS-6395、Fiat9.55535 G1、G2、M2、N1、N2、Z2、S1、S2、S3、S4、T2、DS1、DSX、GH2、GS1、GSX、CR1、Jaguar Land Rover STJLR.03.5003、STJLR.03.5004、STJLR.03.5005、STJLR.03.5006、STJLR.03.5007、STJLR.51.5122などの元の機器メーカーの仕様、またはここで言及されていない過去または将来のPCMOもしくはHDDの仕様を満たすのに好適であり得る。乗用車用モータ油(PCMO)用途のためのいくつかの実施形態では、最終流体中のリンの量は、1000ppm以下、または900ppm以下、または800ppm以下である。
【0034】
他のハードウェアは、開示された潤滑剤とともに使用するのに好適ではない可能性がある。「機能性流体」は、トラクタの作動流体、自動変速機流体を含む動力伝達流体、連続可変トランスミッション流体および手動トランスミッション流体、トラクタの作動流体を含む作動流体、一部のギア油、パワーステアリング流体、風力タービン、圧縮機に使用される流体、一部の工業用流体、および動力伝達装置の部品に関連する流体を含むがこれらに限定されない様々な流体を包含する用語である。例えば自動変速機流体などのこれらの流体の各々の中には、顕著に異なる機能特性の流体を必要する異なる設計を有する様々なトランスミッションのために様々な異なる種類の流体が存在することに留意すべきである。これは、動力の発生または伝達に使用されない用語「潤滑流体」とは対照的である。
【0035】
例えば、トラクタの作動流体に関しては、これらの流体は、エンジンを潤滑させることを除いて、トラクタのすべての潤滑剤用途に使用される汎用品である。これらの潤滑用途には、ギアボックス、パワーテイクオフおよびクラッチ、リアアクスル、リダクションギア、湿式ブレーキ、および油圧アクセサリーの潤滑が含まれてもよい。
【0036】
機能性流体が自動変速機流体である場合、自動変速機流体は、クラッチ板が動力を伝達するのに十分な摩擦を有していなければならない。しかしながら、流体の摩擦係数は、動作中に流体が加熱されるので温度の影響により低下する傾向がある。トラクタの作動流体または自動変速機流体は高温で高い摩擦係数を維持することが重要であり、さもなければブレーキシステムまたは自動変速機が故障する可能性がある。これは、エンジン油の機能ではない。
【0037】
トラクタ流体、例えば、スーパートラクタユニバーサル油(STUO)またはユニバーサルトラクタトランスミッション油(UTTO)は、エンジン油の性能と、変速機、ディファレンシャル、ファイナルドライブプラネタリギア、湿式ブレーキ、および油圧性能とを組み合わせてもよい。UTTOまたはSTUO流体を配合するのに使用される添加剤の多くは機能的に類似しているが、適切に組み込まれなければ有害な影響を与えるおそれがある。例えば、エンジン油に使用される一部の耐摩耗添加剤および極圧添加剤は、油圧ポンプの銅成分に対して極めて強い腐食性を有し得る。ガソリンまたはディーゼルエンジンの性能に使用される洗浄剤および分散剤は、湿式ブレーキの性能に有害であり得る。静粛な湿式ブレーキ鳴きに特有の摩擦調整剤は、エンジン油性能に必要な熱安定性を欠いている可能性がある。これらの流体の各々は、機能性、トラクタ、または潤滑性にかかわらず、特定の厳格な製造業者の要件を満たすように設計されている。
【0038】
本開示は、自動車用クランクケース潤滑剤としての使用のために配合された新規の潤滑油ブレンドを提供する。本開示は、2Tおよび/または4Tオートバイ用クランクケース潤滑剤としての使用のために配合された新規の潤滑油ブレンドを提供する。本開示の実施形態は、クランクケース用途に好適であり、かつ空気混入、アルコール燃料適合性、酸化防止性、耐摩耗性能、バイオ燃料適合性、気泡低減特性、摩擦低減、燃費、プレイグニッション防止、錆抑制、汚泥および/または煤煙分散性、ピストン清浄性、堆積物形成、および耐水性の特性に改善を有する潤滑油を提供してもよい。
【0039】
本開示のエンジン油は、以下に詳細に説明されるように、1つ以上の添加剤を適切な基油配合物に添加することによって配合されてもよい。添加剤は、添加剤パッケージ(または濃縮物)の形態で基油と組み合わせてもよく、または代替的に、基油(または両方の混合物)と個々に組み合わせてもよい。完全に配合されたエンジン油は、添加された添加剤およびそのそれぞれの割合に基づいて、改善された性能特性を示し得る。
【0040】
本開示のさらなる詳細および利点は、以下の説明に部分的に記載される、かつ/または本開示の実施によって習得し得る。本開示の詳細および利点は、添付の特許請求の範囲に特に指摘された要素および組み合わせによって実現および達成し得る。前述の一般的な説明および以下の詳細な説明が、両方とも例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求される本開示を限定するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】比較例CE-4を除いて、表3の例について、1つ以上のモリブデン含有化合物からのモリブデンのppmに対する1つ以上の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートからの亜鉛のppmの重量比率がチェーンの伸長に与える影響を示すグラフである。
図2】類似したTBNを有する組成物について、1つ以上のモリブデン含有化合物からのモリブデンのppmに対する1つ以上の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートからの亜鉛のppmの重量比率がチェーンの伸長に与える影響を示すグラフである。具体的には、比較例CE-2、CE-5およびCE-6、ならびに本発明の例IE-1およびIE-3の結果が示されている。
図3】比較例CE-2、CE-3、CE6およびCE-7、ならびに本発明の例IE-1について、TBNと、1つ以上のモリブデン含有化合物からのモリブデンのppmに対する1つ以上の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートからの亜鉛のppmの重量比率とがチェーンの伸長に与える影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本開示の様々な実施形態は、エンジンにおけるタイミングチェーンの伸長を制御するための潤滑油組成物および方法を提供する。
【0043】
一態様では、本開示は、潤滑油組成物であって
潤滑油組成物の総重量に基づいて50重量%超の基油と、
添加剤組成物であって、
潤滑油組成物の総重量に基づいて約350ppm~約2200ppmの亜鉛を潤滑油組成物に提供するのに十分な量の1つ以上の亜鉛ジアルキルジチオホスフェート、
潤滑油組成物の総重量に基づいて1ppm超~約3000ppmのモリブデンを潤滑油組成物に提供するのに十分な量の1つ以上のモリブデン含有化合物、および
潤滑油組成物の総重量に基づいて2050ppm未満のマグネシウムを潤滑油組成物に提供するのに十分な量の1つ以上のマグネシウム含有洗浄剤を含む、添加剤組成物と、を含み、
潤滑油組成物が、ASTM D-2896の方法によって測定した場合に、7.5mgKOH/g未満の総TBNを有し、
1つ以上のモリブデン含有化合物からのモリブデンのppmに対する1つ以上の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートからの亜鉛のppmの重量比率が10未満である、潤滑油組成物に関する。
【0044】
第2の態様では、本発明は、エンジンにおけるタイミングチェーンの伸長を制御するための方法であって、該タイミングチェーンを、潤滑油組成物であって、
潤滑油組成物の総重量に基づいて50重量%超の基油と、
添加剤組成物であって、
潤滑油組成物の総重量に基づいて約350ppm~約2200ppmの亜鉛を潤滑油組成物に提供するのに十分な量の1つ以上の亜鉛ジアルキルジチオホスフェート、
潤滑油組成物の総重量に基づいて1ppm超~約3000ppmのモリブデンを潤滑油組成物に提供するのに十分な量の1つ以上のモリブデン含有化合物、
潤滑油組成物の総重量に基づいて2050ppm未満のマグネシウムを潤滑油組成物に提供するのに十分な量の1つ以上のマグネシウム含有洗浄剤を含む、添加剤組成物と、を含む、潤滑油組成物を用いて潤滑させるステップを含み、
潤滑油組成物が、ASTM D-2896の方法によって測定した場合に、7.5mgKOH/g未満の総TBNを有し、
1つ以上のモリブデン含有化合物からのモリブデンのppmに対する1つ以上の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートからの亜鉛のppmの重量比率が10未満であり、かつ
潤滑油組成物が、216時間にわたるシーケンスX Fordチェーン摩耗試験によって測定した場合に、エンジンにおいて、0.1%以下、または0.095%以下、0.09%以下のタイミングチェーンの伸長を達成することができる、方法に関する。
【0045】
いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、ASTM D-2896の方法によって測定した場合に、7.25mgKOH/g未満、または7mgKOH/g未満の総TBNを有する。
【0046】
基油
本明細書の潤滑油組成物中に使用される基油は、米国石油協会(American Petroleum Institute(API)Base Oil Interchangeability Guidelines)に明記される、I~V群における基油のいずれかから選択されてもよい。5つの基油の群は、以下のとおりである。
【表1】
【0047】
グループI、グループII、およびグループIIIは、鉱物油プロセス原料である。グループIVの基油は、オレフィン性不飽和炭化水素の重合によって生成される、真の合成分子種を含有する。多くのグループVの基油も真の合成生成物であり、ジエステル、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、アルキル化芳香族、ポリリン酸エステル、ポリビニルエーテル、および/またはポリフェニルエーテルなどが含まれてもよいが、植物油などの天然に存在する油であってもよい。グループIIIの基油は鉱油から誘導されるが、これらの流体が受ける酷烈な加工はそれらの物理的特性をPAOなどの一部の真の合成物と非常に類似したものにすることに留意すべきである。したがって、グループIIIの基油から誘導される油は、業界では合成流体と呼ばれることがある。II+グループは、高粘度指数グループIIを含んでいてもよい。
【0048】
開示される潤滑油組成物中に使用される基油は、鉱物油、動物油、植物油、合成油、合成油ブレンド物、またはそれらの混合物であり得る。好適な油は、水素化分解、水素化、水素化仕上げ、未精製、精製および再精製油、ならびにそれらの混合物から誘導されてもよい。
【0049】
未精製油は、精製処理を行わないか、それ以上の精製処理はほとんど行われない天然源、鉱物源、または合成源から誘導されるものである。精製油は、1つ以上の特性の改善をもたらし得る、1つ以上の精製ステップで処理されていることを除き、未精製油と類似である。好適な精製技術の例は、溶媒抽出、二次蒸留、酸または塩基抽出、濾過、浸透などである。食用品質に精製された油は、有用である場合または有用ではない場合がある。食用油は、ホワイトオイルとも呼ばれる場合がある。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、食用油またはホワイトオイル不含である。
【0050】
再精製油はまた、再生油または再処理油としても知られている。これらの油は、同一のまたは類似のプロセスを使用する清製油と同様に得られる。多くの場合、これらの油は、使用済み添加剤および油分解生成物の除去を対象とする技術によってさらに処理される。
【0051】
鉱物油には、掘削によって得られる油、または植物および動物から得られる油、またはそれらの任意の混合物が含まれてもよい。例えば、そのような油には、ヒマシ油、ラード油、オリーブ油、ピーナツ油、トウモロコシ油、大豆油、および亜麻仁油、ならびに液体石油、パラフィン系、ナフテン系、またはパラフィン-ナフテン混合系の種類の溶媒処理または酸処理鉱物潤滑油などの鉱物潤滑油が含まれてもよいが、これらに限定されることはない。そのような油は、必要に応じて部分的または完全に水素化されてもよい。石炭または頁岩から誘導される油も、有用であってもよい。
【0052】
有用な合成潤滑油には、重合、オリゴマー化、もしくは内部重合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー)などの炭化水素油;ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、1-デセンのトリマーもしくはオリゴマー、例えば、ポリ(1-デセン)(そのような材料は多くの場合α-オレフィンと呼ばれる)、およびそれらの混合物;アルキル-ベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ-(2-エチルヘキシル)-ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル);ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルエーテル、およびアルキル化ジフェニルスルフィド、ならびにそれらの誘導体、類似体、および相同体、またはそれらの混合物が含まれてもよい。ポリアルファオレフィンは、典型的には水素化材料である。
【0053】
他の合成潤滑油には、ポリオールエステル、ジエステル、リン含有酸の液体エステル(例えば、トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート、デカンホスホン酸のジエチルエステル)、またはポリマーテトラヒドロフランが含まれる。合成油は、フィッシャー・トロプシュ反応によって生成されてもよく、典型的には、水素化異性化フィッシャー・トロプシュ炭化水素またはワックスであってもよい。一実施形態では、油は、フィッシャー・トロプシュガス・ツー・リキッド合成手順だけでなく他のガス・ツー・リキッド油によって調製してもよい。
【0054】
潤滑組成物に含まれる主要量の基油は、グループI、グループII、グループIII、グループIV、グループV、および前述の2つ以上の組み合わせからなる群から選択されてもよく、主要量の基油は、組成物中の添加剤成分または粘度指数向上剤の提供に起因する基油以外である。別の実施形態では、潤滑組成物に含まれる主要量の基油は、グループII、グループIII、グループIV、グループV、および前述の2つ以上の組み合わせからなる群から選択されてもよく、主要量の基油は、組成物中の添加剤成分または粘度指数向上剤の提供に起因する基油以外である。
【0055】
存在する潤滑粘度を有する油の量は、粘度指数向上剤および/または流動点降下剤および/または他のトップトリート添加剤を含む性能添加剤の量の合計を100重量%から差し引いた残りの残量であってもよい。例えば、完成した流体中に存在し得る潤滑粘度の油は、約50重量%超、約60重量%超、約70重量%超、約80重量%超、約85重量%超、または約90重量%超、などの過半量であってもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、基油は、ASTM-445-19に従って測定した場合に、100℃で、約3.8cSt~10cSt、または約3.8~約7.5cStの動粘度を有し得る。いくつかの実施形態では、基油は、5W-20または5W-30のSAE粘度グレード、または0W-20のSAE粘度グレードを有し得る。
【0057】
亜鉛ジアルキルジチオホスフェート
本開示の添加剤組成物は、潤滑油組成物の総重量に基づいて約350ppm~約2200ppmの亜鉛を潤滑油組成物に提供するのに十分な量の1つ以上の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートを含有する。
【0058】
ZDDP化合物は、一級アルキルアルコール、二級アルキルアルコール、または一級および二級アルキルアルコールの組み合わせから誘導されたZDDPを含み得る。
【0059】
亜鉛ジアルキルジチオホスフェート(ZDDP)は、ジアルキルジチオホスフェート酸の油溶性塩であり、以下の式によって表すことができる:
【化1】
式中、RおよびRは、1~18個の炭素原子、または2~12個の炭素原子、または2~8個の炭素原子を含む同じまたは異なるアルキルおよび/もしくはシクロアルキル基であってもよい。したがって、アルキルおよび/またはシクロアルキル基は、例えば、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、アミル、n-ヘキシル、i-ヘキシル、n-オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、2-エチルヘキシル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、プロペニル、またはブテニルであってもよい。
【0060】
ZDDP化合物についてのリン1モル当たりの炭素原子の総数の平均数は、ZDDP化合物を生成するために使用されたアルコールによってZDDP化合物に提供された4つのアルキル基RおよびR内の炭素原子の合計を2で割ることによって計算することができる。例えば、単一のZDDP化合物の場合、RがCアルキル基であり、RがCアルキル基である場合、炭素原子の総数は、3+3+6+6=18である。これをZDDP1モル当たり2モルのリンで割ると、リン1モル当たりの炭素原子の平均総数は9になる。
【0061】
1つ以上のZDDP化合物を含有する組成物についてのリン1モル当たりの炭素原子の平均総数(ATCP)は、以下の式に従って、ZDDP化合物を生成するために使用されるアルコールから計算することができる:
ATCP=2[(alc1のモル%alc1におけるC原子の数)+(alc2のモル%alc2におけるC原子の数)+(alc3のモル%alc3におけるC原子の数)+…など]
式中、alc1、alc2、およびalc3はそれぞれ、ZDDP化合物を生成するために使用される異なるアルコールを表し、モル%は、ZDDP化合物を生成するために使用される反応混合物中に存在する各アルコールのモルパーセンテージである。「など」は、3つより多くのアルコールを使用してZDDP化合物を生成する場合、式を拡張して、反応混合物中に存在する各アルコールを含めることができることを示す。
【0062】
ZDDPのRおよびRにおける炭素原子の平均総数は、リン1モル当たり4個超の炭素原子であり、一実施形態では、4個超~約20個の炭素原子の範囲にあり、一実施形態では、4個超~約16個の炭素原子の範囲にあり、一実施形態では、リン1モル当たり約6個~約10個の炭素原子の範囲にある。
【0063】
亜鉛ジアルキルジチオホスフェート金属塩は、ジアルキルジチオリン酸(DDPA)をまず形成することによって、通常1つ以上のアルコールの反応によって、次いで、形成されたDDPAを金属化合物で中和することによって、既知の技術に従って調製され得る。金属塩を製造するために、任意の塩基性または中性の金属化合物が使用され得るが、酸化物、水酸化物、およびカーボネートが最も一般的に使用される。亜鉛ジアルキルジチオホスフェートは、米国特許第7,368,596号に一般的に記載されているプロセスなどのプロセスによって生成され得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの亜鉛ジアルキルジチオホスフェート塩は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約350ppm~約2200ppmの亜鉛、または約350ppm~約2180ppmの亜鉛、または約375ppm~約1500ppmの亜鉛、または約375ppm~約1000ppmの亜鉛を提供するのに十分な量で潤滑油中に存在し得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの金属ジアルキルジチオホスフェート塩は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約200~約1000ppmのリン、または約300~約900ppmのリン、または約400~約800ppmのリン、または約550~約700ppmのリンを提供するのに十分な量で潤滑油中に存在し得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、添加剤パッケージは、2つ以上の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートを含み得る。2つ以上の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートは、約350ppm~約2200ppmの亜鉛を潤滑油組成物に送達し得る。2つ以上の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートを含む実施形態では、第1の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートは、一級アルキルアルコールまたは二級アルキルアルコールから誘導され得、第2の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートは、一級アルキルアルコールまたは二級アルキルアルコールから誘導され得、第1および第2の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートは、同じまたは異なるアルコールから誘導される。
【0067】
亜鉛ジアルキルジチオホスフェート化合物は、潤滑組成物の総重量に基づいて、約0.01重量%~約15重量%、または約0.05重量%~約10重量%、または約0.1重量%~約5重量%、または約0.1重量%~約3.5重量%を含む範囲で存在し得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、1つ以上のモリブデン含有化合物からのモリブデンのppmに対する1つ以上の亜鉛ジアルキルジチオホスフェートからの亜鉛のppmの重量比率が、10未満、または8未満、または6未満である。
【0069】
モリブデン含有成分
本開示の潤滑油組成物は、潤滑油組成物の総重量に基づいて1ppm超~約3000ppmのモリブデンを潤滑油組成物に提供するのに十分な量の1つ以上のモリブデン含有化合物を含有する。1つ以上のモリブデン含有化合物は、油溶性モリブデン化合物であり得、耐摩耗剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、またはそれらの混合物の機能的性能を有し得る。
【0070】
油溶性モリブデン化合物の好適な例は、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジアルキルジチオホスフェート、モリブデンジチオホスフィネート、モリブデン化合物のアミン塩、モリブデンキサンテート、モリブデンチオキサンテート、モリブデンスルフィド、モリブデンカルボキシレート、モリブデンアルコキシド、三核有機モリブデン化合物、および/またはそれらの混合物を含み得る。モリブデンスルフィドは、モリブデンジスルフィドを含む。モリブデンジスルフィドは、安定した分散の形態であり得る。一実施形態では、油溶性モリブデン化合物は、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジアルキルジチオホスフェート、モリブデン化合物のアミン塩、およびそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。いくつかの実施形態では、油溶性モリブデン化合物は、有機アミド、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジオチオホスフェート、およびそれらの混合物の硫黄不含の有機モリブデン錯体であり得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のモリブデン含有化合物は、有機アミドの硫黄不含有機モリブデン錯体を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のモリブデン含有化合物は、モリブデンジチオカルバメートを含む。
【0071】
使用され得るモリブデン化合物の好適な例としては、R.T.Vanderbilt Co.,Ltd.からのMolyvan 822(商標)、Molyvan(商標)A、Molyvan 2000(商標)、Molyvan 3000、Molyvan(商標)1055、およびMolyvan 855(商標)、ならびにAdeka Corporationから入手可能なSakura-Lube(商標)S-165、S-200、S-300、S-310G、S-525、S-600、S-700およびS-710などの商品名で販売されている市販の材料、ならびにそれらの混合物が挙げられる。好適なモリブデン成分は、US5,650,381、US RE37,363E1、US RE38,929E1、およびUS RE40,595E1に記載されている。
【0072】
さらに、モリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物であってもよい。モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、および他のモリブデン酸アルカリ金属および他のモリブデン塩、例えば、モリブデン酸水素ナトリウム、MoOCl、MoOBr、MoCl、三酸化モリブデン、または類似した酸性モリブデン化合物が含まれる。あるいは、組成物は、例えば、米国特許第4,263,152号、同第4,285,822号、同第4,283,295号、同第4,272,387号、同第4,265,773号、同第4,261,843号、同第4,259,195号、および同第4,259,194号、ならびにWO94/06897に記載される、塩基性窒素化合物のモリブデン/硫黄錯体によってモリブデンが提供されてもよい。
【0073】
好適な有機モリブデン化合物の別のクラスは、式Moのもの、およびそれらの混合物などの三核モリブデン化合物であり、式中、Sは、硫黄を表し、Lは、化合物を油溶性または油分散性にするのに十分な数の炭素原子を有する有機基を有する、独立して選択されるリガンドを表し、nは、1~4であり、kは、4~7まで変動し、Qは、水、アミン、アルコール、ホスフィン、およびエーテルなどの中性電子供与性化合物の群から選択され、zは、0~5の範囲であり、非化学量論値を含む。すべての配位子の有機基の中に、少なくとも21個の総炭素原子が存在していてもよく、例えば少なくとも25個、少なくとも30個、または少なくとも35個の炭素原子が存在していてもよい。さらなる好適なモリブデン化合物は、米国特許第6,723,685号に記載されている。
【0074】
油溶性モリブデン化合物は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約1ppm~約3000ppm、または約50ppm~約2500ppm、または約90ppm~約2200、または約90ppm~約2100ppm、約95ppm~約300ppmのモリブデンを潤滑油組成物に提供するのに十分な量で存在し得る。別の実施形態では、モリブデン化合物は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約100ppm~約1000ppm、または約150ppm~約600ppmのモリブデンを潤滑油組成物に提供するのに十分な量で存在し得る。
【0075】
マグネシウム洗浄剤
潤滑油組成物は、1つ以上のマグネシウム含有洗浄剤を含む。好適な洗浄剤基質には、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、カリキサラート、サリキサレート、サリチレート、カルボン酸、リン酸、モノおよび/もしくはジチオリン酸、アルキルフェノール、硫黄結合アルキルフェノール化合物、またはメチレン架橋フェノールが含まれる。好適な洗浄剤およびその調製方法は、US7,732,390およびその中に引用されている参考文献を含む多数の特許公報により詳細に記載されている。洗浄剤基質は、アルカリまたはアルカリ土類金属、例えばマグネシウムで塩にされてもよい。いくつかの実施形態では、洗浄剤は、バリウム不含である。好適な洗浄剤は、石油スルホン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩、および長鎖モノまたはジアルキルアリールスルホン酸を含み得、アリール基が、ベンジル、トリル、およびキシリルである。好適なさらなる洗浄剤の例としては、石炭酸カルシウム、カルシウム硫黄含有フェネート、スルホン酸カルシウム、カルシウムカリキサラート、カルシウムサリキサレート、サリチル酸カルシウム、カルボン酸カルシウム、リン酸カルシウム、カルシウムモノおよび/もしくはジチオリン酸、カルシウムアルキルフェノール、カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、カルシウムメチレン架橋フェノール、石炭酸マグネシウム、マグネシウム硫黄含有フェネート、スルホン酸マグネシウム、マグネシウムカリキサラート、マグネシウムサリキサレート、サリチル酸マグネシウム、カルボン酸マグネシウム、マグネシウムリン酸、マグネシウムモノおよび/もしくはジチオリン酸、マグネシウムアルキルフェノール、マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、マグネシウムメチレン架橋フェノール、石炭酸ナトリウム、ナトリウム硫黄含有フェネート、スルホン酸ナトリウム、ナトリウムカリキサラート、ナトリウムサリキサレート、サリチル酸ナトリウム、カルボン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、モノおよび/もしくはジチオリン酸ナトリウム、ナトリウムアルキルフェノール、ナトリウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、またはナトリウムメチレン架橋フェノールが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0076】
過塩基性洗浄剤は、当該技術分野においてよく知られており、アルカリ金属またはアルカリ土類金属過塩基性洗浄剤であり得る。そのような洗浄剤は、金属酸化物または金属水酸化物を基材および二酸化炭素ガスと反応させることによって調製され得る。基質は、典型的には、酸、例えば、脂肪族置換スルホン酸、脂肪族置換カルボン酸、または脂肪族置換フェノールなどの酸である。
【0077】
用語「過塩基性」は、存在する金属の量が化学量論的量を超える、スルホネート、カルボキシレート、およびフェネートの金属塩などの金属塩に関する。そのような塩は、100%超の変換レベルを有していてもよい(すなわち、これらは、酸をその「標準」「中性」の塩に変換するのに必要な理論的量の金属の100%より多くを含んでいてもよい)。多くの場合MRと略される表現「金属比率」は、既知の化学反応性および化学量論に従って、過塩基性塩中の金属の総化学当量と中性塩中の金属の化学当量との比率を示すために使用される。標準または中性塩では金属比率は1であるが、過塩基性塩ではMRは1より大きい。これらは、一般的に、過塩基性、高塩基性、または超塩基性塩と呼ばれ、有機硫黄酸、カルボン酸、またはフェノールの塩であってもよい。
【0078】
過塩基性洗浄剤は、225mgKOH/グラム超、またはさらなる例として、約250mgKOH/グラム以上のTBN、または約300mgKOH/グラム以上のTBN、または約350mgKOH/グラム以上、または約375mgKOH/グラム以上のTBN、または約400mgKOH/グラム以上のTBNを有する。
【0079】
好適な過塩基性洗浄剤の例としては、過塩基性石炭酸マグネシウム、過塩基性マグネシウム硫黄含有フェネート、過塩基性スルホン酸マグネシウム、過塩基性マグネシウムカリキサレート、過塩基性マグネシウムサリキサレート、過塩基性サリチル酸マグネシウム、過塩基性マグネシウムカルボン酸、過塩基性マグネシウムリン酸、過塩基性マグネシウムモノ-および/もしくはジ-チオリン酸、過塩基性マグネシウムアルキルフェノール、過塩基性マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、または過塩基性マグネシウムメチレン架橋フェノールが挙げられるが、それらに限定されない。
【0080】
過塩基性洗浄剤は、1.1:1から、または2:1から、または4:1から、または5:1から、または7:1から、または10:1からの金属対基質比を有していてもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、洗浄剤は、エンジン内の錆を低減または防止するのに有効である。
【0082】
洗浄剤全体は、潤滑油組成物の総重量を基準として、最大10重量%、または最大約8重量%、または最大約4重量%、または約4重量%超~約8重量%で存在し得る。
【0083】
洗浄剤全体は、潤滑油組成物の総重量に基づいて約900~約3500ppmの金属を潤滑油組成物に提供する量で存在し得る。他の実施形態では、洗浄剤全体は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約1000~約2500ppmの金属、または約1150~約2200ppmの金属、または約1200~約2400ppmの金属を潤滑油組成物に提供し得る。
【0084】
1つ以上のマグネシウム含有洗浄剤の量は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約2050ppmw未満のマグネシウム、または50ppmw~1000ppmのマグネシウム、または100ppm~600ppmw未満のマグネシウム、または100ppm~450ppm未満のマグネシウムを潤滑油組成物に提供するのに十分であり得る。
【0085】
1つ以上のマグネシウム含有洗浄剤は、ASTM D-2896の方法によって測定した場合に、225mgKOH/グラム超の総塩基数、またはさらなる例として、約250mgKOH/グラム以上のTBN、または約300mgKOH/グラム以上のTBN、または約350mgKOH/グラム以上のTBN、または約375mgKOH/グラム以上のTBN、または約400mgKOH/グラム以上のTBNを有する過塩基性マグネシウム含有洗浄剤であり得、1つ以上の過塩基性マグネシウム含有洗浄剤は、過塩基性スルホン酸マグネシウム洗浄剤、過塩基性石炭酸マグネシウム洗浄剤、過塩基性サリチル酸マグネシウム洗浄剤、およびそれらの混合物から選択され得る。あるいは、マグネシウム含有洗浄剤は、低塩基性/中性マグネシウム含有洗浄剤を含む、上記のマグネシウム含有洗浄剤のうちの1つ以上を含み得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、潤滑油組成物のTBNに対する総ミリモル金属(M)の比率が、4.5超~約10.0の範囲にある。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物のTBNに対する総ミリモル金属(M)の比率は、8超~10.0未満、または8~9.5、または8.1~9.0の範囲にある。
【0087】
潤滑油組成物はまた、以下に説明する様々な添加剤から選択される1つ以上の任意選択的な成分を含み得る。
【0088】
ホウ素含有化合物
本明細書の潤滑油組成物は、任意選択的に、1つ以上のホウ素含有化合物を含有していてもよい。
【0089】
ホウ素含有化合物の例としては、米国特許第5,883,057号に開示されているように、ボレートエステル、ホウ酸化脂肪アミン、ホウ酸化エポキシド、ホウ酸化洗浄剤、およびホウ酸化スクシンイミド分散剤などのホウ酸化分散剤が挙げられる。
【0090】
ホウ素含有化合物は、存在する場合には、潤滑油組成物の最大約8重量%まで、約0.01重量%~約7重量%、約0.05重量%~約5重量%、または約0.1重量%~約3重量%を提供するのに十分な量で使用することができる。
【0091】
任意選択的なさらなる洗浄剤
潤滑油組成物は、任意選択的に、1つ以上の中性、低塩基性、または過塩基性洗浄剤、またはそれらの混合物をさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、500ppm~2000ppmのカルシウム、または1000ppm~1800ppmのカルシウムを提供するのに十分な量で存在する1つ以上のカルシウム含有洗浄剤をさらに含む。
【0092】
好適な洗浄剤基質には、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、カリキサラート、サリキサレート、サリチレート、カルボン酸、リン酸、モノおよび/もしくはジチオリン酸、アルキルフェノール、硫黄結合アルキルフェノール化合物、またはメチレン架橋フェノールが含まれる。好適な洗浄剤およびその調製方法は、US7,732,390およびその中に引用されている参考文献を含む多数の特許公報により詳細に記載されている。
【0093】
清浄剤基質は、限定されないが、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、リチウム、バリウム、またはそれらの混合物などのアルカリ金属またはアルカリ土類金属で塩にされてもよい。いくつかの実施形態では、洗浄剤は、バリウム不含である。いくつかの実施形態では、洗浄剤は、マグネシウムまたはカルシウムなどの微量の他の金属を、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、20ppm以下、または10ppm以下などの量で含有していてもよい。好適な洗浄剤には、石油スルホン酸およびアリール基がベンジル、トリル、およびキシリルである長鎖モノまたはジアルキルアリールスルホン酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩が含まれてもよい。好適な洗浄剤の例としては、石炭酸カルシウム、カルシウム硫黄含有フェネート、スルホン酸カルシウム、カルシウムカリキサラート、カルシウムサリキサレート、カルシウムサリチレート、カルシウムカルボン酸、カルシウムリン酸、カルシウムモノおよび/もしくはジチオリン酸、カルシウムアルキルフェノール、カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、カルシウムメチレン架橋フェノール、石炭酸マグネシウム、マグネシウム硫黄含有フェネート、スルホン酸マグネシウム、マグネシウムカリキサラート、マグネシウムサリキサレート、サリチル酸マグネシウム、マグネシウムカルボン酸、マグネシウムリン酸、マグネシウムモノおよび/もしくはジチオリン酸、マグネシウムアルキルフェノール、マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、マグネシウムメチレン架橋フェノール、石炭酸ナトリウム、ナトリウム硫黄含有フェネート、スルホン酸ナトリウム、ナトリウムカリキサラート、ナトリウムサリキサレート、サリチル酸ナトリウム、ナトリウムカルボン酸、ナトリウムリン酸、ナトリウムモノおよび/もしくはジチオリン酸、ナトリウムアルキルフェノール、ナトリウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、またはナトリウムメチレン架橋フェノールが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0094】
過塩基性清浄剤添加剤は、当該技術分野において既知であり、アルカリまたはアルカリ土類金属過塩基性清浄剤添加剤であり得る。そのような清浄剤添加剤は、金属酸化物または金属水酸化物を基質および二酸化炭素ガスと反応させることによって調製されてもよい。基質は、典型的には、酸、例えば、脂肪族置換スルホン酸、脂肪族置換カルボン酸、または脂肪族置換フェノールなどの酸である。
【0095】
用語「過塩基性」は、存在する金属の量が化学量論的量を超える、スルホネート、カルボキシレート、およびフェネートの金属塩などの金属塩に関する。そのような塩は、100%超の変換レベルを有していてもよい(すなわち、これらは、酸をその「標準」「中性」の塩に変換するのに必要な理論的量の金属の100%より多くを含んでいてもよい)。多くの場合MRと略される表現「金属比率」は、既知の化学反応性および化学量論に従って、過塩基性塩中の金属の総化学当量と中性塩中の金属の化学当量との比率を示すために使用される。標準または中性塩では金属比率は1であるが、過塩基性塩ではMRは1より大きい。これらは、一般的に、過塩基性、高塩基性、または超塩基性塩と呼ばれ、有機硫黄酸、カルボン酸、またはフェノールの塩であってもよい。
【0096】
潤滑油組成物の過塩基性洗浄剤は、約200mgKOH/グラム以上、またはさらなる例として、約250mgKOH/グラム以上、もしくは約350mgKOH/グラム以上、もしくは約375mgKOH/グラム以上、もしくは約400mgKOH/グラム以上の総塩基価(TBN)を有していてもよい。
【0097】
好適な過塩基性洗浄剤の例としては、過塩基性石炭酸カルシウム、過塩基性カルシウム硫黄含有フェネート、過塩基性スルホン酸カルシウム、過塩基性カルシウムカリキサラート、過塩基性カルシウムサリキサレート、過塩基性カルシウムサリチレート、過塩基性カルシウムカルボン酸、過塩基性カルシウムリン酸、過塩基性カルシウムモノおよび/またはジチオリン酸、過塩基性カルシウムアルキルフェノール、過塩基性カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、過塩基性カルシウムメチレン架橋フェノール、過塩基性マグネシウムフェネート、過塩基性マグネシウム硫黄含有フェネート、過塩基性スルホン酸マグネシウム、過塩基性マグネシウムカリキサラート、過塩基性マグネシウムサリキサレート、過塩基性サリチル酸マグネシウム、過塩基性マグネシウムカルボン酸、過塩基性マグネシウムリン酸、過塩基性マグネシウムモノおよび/またはジチオリン酸、過塩基性マグネシウムアルキルフェノール、過塩基性マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、または過塩基性マグネシウムメチレン架橋フェノールが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0098】
過塩基性石炭酸カルシウム洗浄剤は、すべてASTM D-2896の方法によって測定した場合に、少なくとも約150mgKOH/g、少なくとも約225mgKOH/g、少なくとも約225mgKOH/g~約400mgKOH/g、少なくとも約225mgKOH/g~約350mgKOH/g、または約230mgKOH/g~約350mgKOH/gの総塩基価を有する。そのような洗浄剤組成物が不活性希釈剤、例えば、プロセス油、通常鉱物油で形成される場合、総塩基価は、希釈剤、および洗浄剤組成物に含有され得る任意の他の材料(例えば、促進剤など)を含む組成物全体の塩基性を反映する。
【0099】
過塩基性洗浄剤は、1.1:1から、または2:1から、または4:1から、または5:1から、または7:1から、または10:1からの金属対基質比を有していてもよい。
【0100】
いくつかの実施形態では、洗浄剤は、エンジン内の錆を低減または防止するのに有効である。
【0101】
洗浄剤は、約0重量%~約10重量%、または約0.1重量%~約8重量%、または約1重量%~約4重量%、または約4重量%超~約8重量%で存在し得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、1つ以上のカルシウム含有洗浄剤をさらに含み、カルシウム含有洗浄剤は、過塩基性カルシウム含有洗浄剤、低塩基性/中性洗浄剤、またはそれらの混合物を含む。好ましくは、カルシウム含有洗浄剤は、スルホン酸カルシウム洗浄剤および石炭酸カルシウム洗浄剤から選択される。
【0103】
分散剤
潤滑油組成物は、任意選択的に、1つ以上の分散剤またはそれらの混合物をさらに含んでいてもよい。分散剤は、潤滑油組成物に混合する前に灰分を形成する金属を含まず、潤滑剤に添加するとき通常灰分に寄与しないため、しばしば無灰タイプの分散剤と呼ばれている。無灰型の分散剤は、極性基が比較的高分子量の炭化水素鎖に結合することを特徴とする。典型的な無灰分散剤には、N-置換長鎖アルケニルスクシンイミドが含まれる。N置換長鎖アルケニルスクシンイミドの例としては、ポリイソブチレン置換基の数平均分子量が、GPCにより測定した場合に、約350~約50,000、または~約5,000、または~約3,000の範囲にある、ポリイソブチレンスクシンイミドが挙げられる。スクシンイミド分散剤およびそれらの調製は、例えば、米国特許第7,897,696号または米国特許第4,234,435号に開示されている。ポリオレフィンは、約2~約16個、または約2~約8個、または約2~約6個の炭素原子を含有する重合性モノマーから調製することができる。スクシンイミド分散剤は、典型的には、典型的にポリ(エチレンアミン)であるポリアミンから形成されたイミドである。
【0104】
好ましいアミンは、ポリアミンおよびヒドロキシアミンから選択される。使用され得るポリアミンの例としては、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、およびペンタエチルアミンヘキサミン(PEHA)などのより高い同族体が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0105】
好適な重質ポリアミンは、TEPAおよびPEHA(ペンタエチレンヘキサミン)などの少量の低級ポリアミンオリゴマーを含むが、主に6つ以上の窒素原子、分子当たり2つ以上の一級アミン、および従来のポリアミン混合物より広範な分岐を有するオリゴマーを含むポリアルキレン-ポリアミンの混合物である。重質ポリアミンは、好ましくは、分子当たり7つ以上の窒素を含有し、分子当たり2つ以上の一級アミンを有するポリアミンオリゴマーを含む。重質ポリアミンは、28重量%超(例えば、32重量%超)の総窒素と、当量当たり120~160グラムの当量の一級アミン基とを含む。
【0106】
好適なポリアミンは、一般にPAMとして知られており、TEPAとペンタエチレンヘキサミン(PEHA)がポリアミンの主要部分であり、通常は約80%未満であるエチレンアミンの混合物を含有する。
【0107】
典型的には、PAMは、1グラム当たり8.7~8.9ミリ当量の一級アミン(一級アミンの当量当たり115~112グラムの当量)および約33~34重量%の総窒素含有量を有する。実質的にTEPAを含まず、ごく少量のPEHAを含むが、主に6つ以上の窒素およびより広範な分岐を有するオリゴマーを含有するPAMオリゴマーのより重質なカットは、分散性が改善された分散剤を生成してもよい。
【0108】
ある実施形態では、本開示は、GPCにより決定される場合に、約350~約50,000、または~約5000、または~約3000の範囲の数平均分子量を有するポリイソブチレンから誘導される少なくとも1つのポリイソブチレンスクシンイミド分散剤をさらに含む。ポリイソブチレンスクシンイミドは、単独で、または他の分散剤と組み合わせて使用され得る。
【0109】
いくつかの実施形態では、ポリイソブチレンは、含まれる場合に、50モル%超、60モル%超、70モル%超、80モル%超、または90モル%超の末端二重結合の含有量を有していてもよい。そのようなPIBは、高反応性PIB(「HR-PIB」)とも呼ばれる。GPCにより決定される場合に約800~約5000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBが、本開示の実施形態における使用に好適である。従来のPIBは、典型的には、50モル%未満、40モル%未満、30モル%未満、20モル%未満、または10モル%未満の末端二重結合の含有量を有する。
【0110】
GPCにより決定される場合に、約900~約3000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBが、好適であってもよい。そのようなHR-PIBは、市販されているか、またはBoerzelらに対する米国特許第4,152,499号およびGateauらに対する米国特許第5,739,355号に記載されているように三塩化ホウ素などの非塩素化触媒の存在下でのイソブテンの重合によって合成することができる。前述の熱エン反応で使用される場合、HR-PIBは、反応性の増大により、反応中のより高い変換率、およびより少量の沈殿物の形成をもたらし得る。好適な方法は、米国特許第7,897,696号に記載されている。
【0111】
一実施形態では、本開示は、ポリイソブチレン無水コハク酸(「PIBSA」)から誘導される少なくとも1つの分散剤をさらに含む。PIBSAは、ポリマー当たり平均約1.0~約2.0のコハク酸部分を有していてもよい。
【0112】
アルケニルまたはアルキル無水コハク酸の活性%は、クロマトグラフィー技術を使用して決定することができる。この方法は、米国特許第5,334,321号の第5欄および第6欄に記載されている。
【0113】
ポリオレフィンの変換率は、米国特許第5,334,321号の第5欄および第6欄の式を使用する活性%から計算される。
【0114】
別途明記しない限り、すべてのパーセンテージは、重量パーセントであり、すべての分子量は、市販のポリスチレン標準(較正基準として180~約18,000の数平均分子量を有する)を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される数平均分子量である。
【0115】
一実施形態では、分散剤は、ポリアルファオレフィン(PAO)無水コハク酸から誘導されてもよい。
【0116】
一実施形態では、分散剤は、オレフィン無水マレイン酸コポリマーから誘導されてもよい。例として、分散剤は、ポリPIBSAとして記載されてもよい。
【0117】
ある実施形態では、分散剤は、エチレン-プロピレンコポリマーにグラフト化される無水物から誘導されてもよい。
【0118】
好適な種類の窒素含有分散剤は、オレフィンコポリマー(OCP)、より具体的には、無水マレイン酸でグラフト化され得るエチレン-プロピレン分散剤から誘導され得る。機能性OCPと反応させることができる窒素含有化合物のより完全なリストは、米国特許第7,485,603号、同第7,786,057号、同第7,253,231号、同第6,107,257号、および同第5,075,383号に記載され、および/または市販されている。
【0119】
代替的に、ヒドロカルビル-ジカルボン酸のヒドロカルビル部分または成分A)の無水物は、エチレン-アルファオレフィンコポリマーから誘導され得る。本明細書に記載のコポリマーは、複数のエチレン単位および複数の1つ以上のC~C10アルファ-オレフィン単位を含む。C~C10アルファ-オレフィン単位は、プロピレン単位を含んでいてもよい。
【0120】
好適な分散剤の1つの種類は、マンニッヒ塩基であり得る。マンニッヒ塩基は、より高分子量のアルキル置換フェノール、ポリアルキレンポリアミン、およびホルムアルデヒドのようなアルデヒドの縮合によって形成される物質である。マンニッヒ塩基は、米国特許第3,634,515号により詳細に記載されている。
【0121】
好適な種類の分散剤は、高分子量エステルまたは半エステルアミドであり得る。
【0122】
好適な分散剤はまた、種々の薬剤のいずれかとの反応による従来の方法によって後処理することができる。これらの中には、ホウ素、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、無水マレイン酸、ニトリル、エポキシド、カーボネート、環状カーボネートヒンダードフェノールエステル、およびリン化合物がある。US7,645,726、US7,214,649、およびUS8,048,831は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0123】
カーボネートおよびホウ酸の後処理に加えて、化合物はいずれも、異なる特性を改善または付与するように設計された様々な後処理により後処理、またはさらに後処理されてもよい。そのような後処理には、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,241,003号の27~29欄に要約されたものが含まれる。そのような処理には、
無機リン酸または無水物(例えば、米国特許第3,403,102号および同第4,648,980号)、
有機リン化合物(例えば、米国特許第3,502,677号)、
五硫化リン、
既に上述したホウ素化合物(例えば、米国特許第3,178,663号および第4,652,387号)、
カルボン酸、ポリカルボン酸、無水物、および/または酸ハライド(例えば、米国特許第3,708,522号および第4,948,386号)、
エポキシドポリエポキシド、またはチオエポキシド(例えば、米国特許第3,859,318号および同第5,026,495号)、
アルデヒドまたはケトン(例えば、米国特許第3,458,530号)、
二硫化炭素(例えば、米国特許第3,256,185号)、
グリシドール(例えば、米国特許第4,617,137号)、
尿素、チオ尿素、またはグアニジン(例えば、米国特許第3,312,619号、同第3,865,813号、および英国特許第1,065,595号)、
有機スルホン酸(例えば、米国特許第3,189,544号および英国特許第2,140,811号)、
シアン化アルケニル(例えば、米国特許第3,278,550号および同第3,366,569号)、
ジケテン(例えば、米国特許第3,546,243号)、
ジイソシアネート(例えば、米国特許第3,573,205号)、
アルカンスルトン(例えば、米国特許第3,749,695号)、
1,3-ジカルボニル化合物(例えば、米国特許第4,579,675号)、
アルコキシル化アルコールまたはフェノールの硫酸塩(例えば、米国特許第3,954,639号)、
環状ラクトン(例えば、米国特許第4,617,138号、同第4,645,515号、同第4,668,246号、同第4,963,275号、および同第4,971,711号)、
環状炭酸塩もしくはチオ炭酸塩、直鎖状モノ炭酸塩もしくはポリ炭酸塩、またはクロロギ酸塩(例えば、米国特許第4,612,132号、同第4,647,390号、同第4,648,886号、同第4,670,170号)、
窒素含有カルボン酸(例えば、米国特許第4,971,598号および英国特許第2,140,811号)、
ヒドロキシ保護クロロジカルボニルオキシ化合物(例えば、米国特許第4,614,522号)、
ラクタム、チオラクタム、チオラクトン、またはジチオラクトン(例えば、米国特許第4,614,603号および同第4,666,460号)、
環状炭酸塩もしくはチオ炭酸塩、直鎖状モノ炭酸塩もしくはポリ炭酸塩、またはクロロギ酸塩(例えば、米国特許第4,612,132号、同第4,647,390号、同第4,646,860号、同第4,670,170号)、
窒素含有カルボン酸(例えば、米国特許第4,971,598号および英国特許第2,440,811号)、
ヒドロキシ保護クロロジカルボニルオキシ化合物(例えば、米国特許第4,614,522号)、
ラクタム、チオラクタム、チオラクトン、またはジチオラクトン(例えば、米国特許第4,614,603号および同第4,666,460号)、
環状カルバメート、環状チオカルバメート、または環状ジチオカルバメート(例えば、米国特許第4,663,062号および同第4,666,459号)、
ヒドロキシ脂肪族カルボン酸(例えば、米国特許第4,482,464号、同第4,521,318号、同第4,713,189号)、
酸化剤(例えば、米国特許第4,379,064号)、
五硫化リンおよびポリアルキレンポリアミンの組み合わせ(例えば、米国特許第3,185,647号)、
カルボン酸またはアルデヒドまたはケトンおよび硫黄または塩化硫黄の組み合わせ(例えば、米国特許第3,390,086号、同第3,470,098号)、
ヒドラジンおよび二硫化炭素の組み合わせ(例えば、米国特許第3,519,564号)、
アルデヒドおよびフェノールの組み合わせ(例えば、米国特許第3,649,229号、同第5,030,249号、同第5,039,307号)、
アルデヒドおよびジチオリン酸のO-ジエステルの組み合わせ(例えば、米国特許第3,865,740号)、
ヒドロキシ脂肪族カルボン酸およびホウ酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,554,086号)、
ヒドロキシ脂肪族カルボン酸、それに次ぐホルムアルデヒドおよびフェノールの組み合わせ(例えば、米国特許第4,636,322号)、
ヒドロキシ脂肪族カルボン酸、およびそれに次ぐ脂肪族ジカルボン酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,663,064号)、
ホルムアルデヒドおよびフェノール、ならびにそれに次ぐグリコール酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,699,724号)、
ヒドロキシ脂肪族カルボン酸またはシュウ酸およびそれに次ぐジイソシアネートの組み合わせ(例えば、米国特許第4,713,191号)、
リンの無機酸もしくは無水物またはその部分もしくは完全硫黄類似体およびホウ素化合物の組み合わせ(例えば、米国特許第4,857,214号)、
有機二酸、それに次ぐ不飽和脂肪酸、およびそれに次ぐニトロソ芳香族アミン、任意選択的にそれに続くホウ素化合物、ならびにそれに次ぐグリコール化剤の組み合わせ(例えば、米国特許第4,973,412号)、
アルデヒドおよびトリアゾールの組み合わせ(例えば、米国特許第4,963,278号)、
アルデヒドおよびトリアゾール、それに次ぐホウ素化合物の組み合わせ(例えば、米国特許第4,981,492号)、
環状ラクトンとホウ素化合物との組み合わせ(例えば、米国特許第4,963,275号および同第4,971,711号)などによる処理が含まれる。ここで、先に言及した特許は、それらの全体が組み込まれる。
【0124】
好適な分散剤のTBNは、約50%の希釈油を含有する分散剤試料で測定した場合に、約5~約30TBNに匹敵する、油不含の基準で約10~約65mgKOH/gの分散剤であってもよい。TBNは、ASTM D2896の方法によって測定される。
【0125】
分散剤は、存在する場合、潤滑油組成物の最終重量に基づいて最大約20重量%を提供するのに十分な量で使用することができる。使用することができる分散剤の別の量は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0.1重量%~約15重量%、または約0.1重量%~約10重量%、または約3重量%~約10重量%、または約1重量%~約6重量%、または約7重量%~約12重量%であり得る。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は混合分散剤系を利用する。単一のタイプまたは任意の所望の比率の2つ以上のタイプの分散剤の混合物を使用することができる。
【0126】
いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、任意選択的に、潤滑油組成物の総重量に基づいて250ppm未満のホウ素を潤滑油組成物に提供するのに十分な1つ以上のホウ素含有分散剤を含む。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、ASTM D-2896の方法によって測定した場合に、mgKOH/g潤滑油組成物での潤滑油組成物の総TBNに対する1つ以上のホウ素含有分散剤からのホウ素のppmの重量比率が32~36である。
【0127】
酸化防止剤
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上の酸化防止剤を含有していてもよい。酸化防止剤化合物は既知のものであり、例えば、フェネート、フェネートスルフィド、硫化オレフィン、ホスホ硫化テルペン、硫化エステル、芳香族アミン、アルキル化ジフェニルアミン(例えば、ノニルジフェニルアミン、ジ-ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジ-オクチルジフェニルアミン)、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、アルキル化フェニル-アルファ-ナフチルアミン、ヒンダード非芳香族アミン、フェノール、ヒンダードフェノール、油溶性モリブデン化合物、高分子酸化防止剤、またはそれらの混合物が挙げられる。酸化防止剤化合物は、単独で、または組み合わせて使用され得る。
【0128】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は、立体障害基として、二級ブチル基および/または三級ブチル基を含んでいてもよい。フェノール基は、ヒドロカルビル基および/または第2の芳香族基に結合する架橋基でさらに置換されていてもよい。好適なヒンダードフェノール酸化防止剤の例としては、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-プロピル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールまたは4-ブチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、または4-ドデシル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールが挙げられる。一実施形態では、ヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであってもよく、例えばBASFから入手可能なIrganox(商標)L-135または2,6-ジ-tert-ブチルフェノールおよびアルキルアクリレートから誘導される付加生成物を含んでいてもよく、アルキル基は、約1~約18個、または約2~約12個、または約2~約8個、または約2~約6個、または約4個の炭素原子を含有していてもよい。別の市販のヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであってもよく、Albemarle Corporationから入手可能なEthanox(商標)4716を含んでいてもよい。
【0129】
有用な酸化防止剤は、ジアリールアミンおよび高分子量フェノールを含み得る。ある実施形態では、潤滑油組成物は、ジアリールアミンと高分子量フェノールとの混合物を含有していてもよいため、各酸化防止剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、最大約5重量%を提供するのに十分な量で存在していてもよい。一実施形態では、酸化防止剤は、本潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0.3~約1.5重量%のジアリールアミンと約0.4~約2.5重量%の高分子量フェノールとの混合物であり得る。
【0130】
硫化されて硫化オレフィンを形成してもよい好適なオレフィンの例としては、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ポリイソブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、またはそれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、またはそれらの混合物、ならびにそれらの二量体、三量体、および四量体は、特に有用なオレフィンである。代替的に、オレフィンは、1,3-ブタジエンなどのジエンのディールス・アルダー付加物およびブチルアクリレートなどの不飽和エステルであってもよい。
【0131】
別の分類の硫化オレフィンには、硫化脂肪酸およびそのエステルが含まれる。脂肪酸は、多くの場合、植物油または動物油から得られ、典型的には約4~約22個の炭素原子を含有する。好適な脂肪酸およびそのエステルの例としては、トリグリセリド、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、またはそれらの混合物が挙げられる。多くの場合、脂肪酸は、ラード油、トール油、ピーナツ油、大豆油、綿実油、ヒマワリ種子油、またはそれらの混合物から得られる。脂肪酸および/またはエステルは、α-オレフィンなどのオレフィンと混合してもよい。
【0132】
別の代替の実施形態では、酸化防止剤組成物は、上述のフェノール性および/またはアミン性酸化防止剤に加えて、モリブデン含有酸化防止剤も含有する。これらの3つの酸化防止剤の組み合わせが使用される場合、好ましくは、フェノール、アミン、およびモリブデン含有の比率は、(0~2):(0~2):(0~1)である。
【0133】
1つ以上の酸化防止剤は、潤滑油組成物の約0重量%~約20重量%、または約0.1重量%~約10重量%、または約1重量%~約5重量%の範囲で存在し得る。
【0134】
耐摩耗剤
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上の耐摩耗剤を含有していてもよい。好適な耐摩耗剤の例としては、金属チオホスフェート、金属ジアルキルジチオホスフェート、これらのリン酸エステルまたは塩、ホスフェートエステル、ホスファイト、リン含有カルボン酸エステル、エーテル、またはアミド、硫化オレフィン、チオカルバメートエステル、アルキレン結合チオカルバメート、およびビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドを含むチオカルバメート含有化合物、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されることはない。好適な耐摩耗剤は、モリブデンジチオカルバメートであってもよい。リン含有耐摩耗剤は、欧州特許第612839号により詳細に記載されている。ジアルキルジチオホスフェート塩中の金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅、チタン、または亜鉛であってもよい。有用な耐摩耗剤は、亜鉛ジアルキルジチオホスフェートであってもよい。
【0135】
好適な耐摩耗剤のさらなる例としては、チタン化合物、タータラート、タルトリミド、リン化合物の油溶性アミン塩、硫化オレフィン、ホスファイト(例えば、ジブチルホスファイト)、ホスホネート、チオカルバメート含有化合物、例えば、チオカルバメートエステル、チオカルバメートアミド、チオカルバミン酸エーテル、アルキレン結合チオカルバメート、およびビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドが挙げられる。タータラートまたはタルトリミドは、アルキル-エステル基を含有していてもよく、アルキル基上の炭素原子の合計は、少なくとも8であってもよい。耐摩耗剤は、一実施形態では、シトラートを含んでいてもよい。
【0136】
耐摩耗剤は、潤滑油組成物の約0重量%~約15重量%、または約0.01重量%~約10重量%、または約0.05重量%~約5重量%、または約0.1重量%~約3重量%を含む範囲で存在し得る。
【0137】
摩擦調整剤
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上の摩擦調整剤を含有していてもよい。好適な摩擦調整剤には、金属含有および金属不含摩擦調整剤が含まれてもよく、イミダゾリン、アミド、アミン、スクシンイミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、アミンオキシド、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、四級アミン、イミン、アミン塩、アミノグアニジン、アルカノールアミド、ホスホネート、金属含有化合物、グリセロールエステル、硫化脂肪化合物およびオレフィン、ヒマワリ油、他の天然に生成する植物油または動物油、ジカルボン酸エステル、ポリオールと1つ以上の脂肪族もしくは芳香族カルボン酸とのエステルまたは部分エステルなどが含まれてもよいが、これらに限定されることはない。
【0138】
好適な摩擦調整剤は、直鎖状、分岐鎖状、もしくは芳香族ヒドロカルビル基、またはそれらの混合物から選択されるヒドロカルビル基を含有していてもよく、かつ飽和であっても不飽和であってもよい。ヒドロカルビル基は、炭素および水素または硫黄もしくは酸素などのヘテロ原子で構成されてもよい。ヒドロカルビル基は、約12~約25個の炭素原子の範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、摩擦調整剤は、長鎖脂肪酸エステルであってもよい。別の実施形態では、長鎖脂肪酸エステルは、モノエステル、またはジエステル、または(トリ)グリセリドであってもよい。摩擦調整剤は、長鎖脂肪アミド、長鎖脂肪エステル、長鎖脂肪エポキシド誘導体、または長鎖イミダゾリンであってもよい。
【0139】
他の好適な摩擦調整剤には、有機、無灰(金属不含)、窒素不含有機摩擦調整剤が含まれてもよい。そのような摩擦調整剤は、カルボン酸および無水物をアルカノールと反応させることによって形成されるエステルを含んでいてもよく、一般に、親油性炭化水素鎖に共有結合した極性末端基(例えば、カルボキシルまたはヒドロキシル)を含む。有機無灰窒素不含摩擦調整剤の例は、一般に、オレイン酸のモノ-、ジ-、およびトリ-エステルを含有し得るモノオレイン酸グリセロール(GMO)として知られている。他の好適な摩擦調整剤は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,723,685号に記載されている。
【0140】
アミン性摩擦調整剤は、アミンまたはポリアミンを含んでいてもよい。そのような化合物は、直鎖、飽和もしくは不飽和のいずれか、またはそれらの混合物であるヒドロカルビル基を有することができ、約12~約25個の炭素原子を含有していてもよい。好適な摩擦調整剤のさらなる例としては、アルコキシル化アミンおよびアルコキシル化エーテルアミンが挙げられる。そのような化合物は、直鎖、飽和、不飽和のいずれか、またはそれらの混合物であるヒドロカルビル基を有していてもよい。これらは、約12~約25個の炭素原子を含有していてもよい。例としては、エトキシル化アミンおよびエトキシル化エーテルアミンが挙げられる。
【0141】
アミンおよびアミドは、それ自体として、または酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、メタボレート、ホウ酸またはモノ-、ジ-、もしくはトリ-アルキルボレートなどのホウ素化合物との付加物もしくは反応生成物の形態で使用してもよい。他の好適な摩擦調整剤は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,300,291号に記載されている。
【0142】
摩擦調整剤は、任意選択的に、約0重量%~約10重量%、または約0.01重量%~約8重量%、または約0.1重量%~約4重量%などの範囲内で存在し得る。
【0143】
さらなるモリブデン含有成分
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上のさらなるモリブデン含有化合物を含有していてもよい。さらなる油溶性モリブデン化合物は、耐摩耗剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、またはそれらの混合物の機能的性能を有し得る。油溶性モリブデン化合物には、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジアルキルジチオホスフェート、モリブデンジチオホスフィナート、モリブデン化合物のアミン塩、モリブデンキサンタート、モリブデンチオキサンタート、モリブデンスルフィド、モリブデンカルボキシレート、モリブデンアルコキシド、三核有機モリブデン化合物、および/またはそれらの混合物が含まれてもよい。モリブデンスルフィドは、モリブデンジスルフィドを含む。モリブデンジスルフィドは、安定な分散剤の形態であってもよい。一実施形態では、油溶性モリブデン化合物は、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジアルキルジチオホスフェート、モリブデン化合物のアミン塩、およびそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。一実施形態では、油溶性モリブデン化合物は、モリブデンジチオカルバメートであってもよい。
【0144】
使用され得るモリブデン化合物の好適な例としては、R.T.Vanderbilt Co.,Ltd.からのMolyvan 822(商標)、Molyvan(商標)A、Molyvan 2000(商標)およびMolyvan 855(商標)などの商品名で、ならびにAdeka Corporationから入手可能なSakura-Lube(商標)S-165、S-200、S-300、S-310G、S-525、S-600、S-700、およびS-710などの商品名で販売されている市販の材料、ならびにそれらの混合物が挙げられる。好適なモリブデン成分は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、US5,650,381、US RE37,363 E1、US RE38,929E1、およびUS RE40,595E1に記載されている。
【0145】
さらに、モリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物であってもよい。含まれるものは、モリブデン酸、アンモニウムモリブレート、ナトリウムモリブレート、カリウムモリブレート、および他のアルカリ金属モリブレートおよび他のモリブデン塩、例えば、水素ナトリウムモリブレート、MoOCl4、MoO2Br2、Mo2O3Cl6、三酸化モリブデンまたは類似の酸性モリブデン化合物である。代替的に、組成物には、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,263,152号、同第4,285,822号、同第4,283,295号、同第4,272,387号、同第4,265,773号、同第4,261,843号、同第4,259,195号、および同第4,259,194号、ならびにWO94/06897に記載されている塩基性窒素化合物のモリブデン/硫黄錯体によるモリブデンが提供され得る。
【0146】
別のクラスの好適な有機モリブデン化合物は、式Mo3SkLnQzの化合物などの三核モリブデン化合物およびそれらの混合物であり、式中、Sは、硫黄を表し、Lは、有機基が化合物を油中に可溶性または分散性にするのに十分な数の炭素原子を有する独立して選択された配位子を表し、nは、1~4であり、kは、4~7で変動し、Qは、水、アミン、アルコール、ホスフィン、およびエーテルなどの中性電子供与性化合物の群から選択され、zは、0~5の範囲にあり、非化学量論値を含む。すべての配位子の有機基の中に、少なくとも25個、少なくとも30個、または少なくとも35個の炭素原子など、少なくとも21個の総炭素原子が存在していてもよい。さらなる好適なモリブデン化合物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,723,685号に記載されている。
【0147】
油溶性モリブデン化合物は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.5ppm~約2000ppm、約1ppm~約700ppm、約1ppm~約550ppm、約5ppm~約300ppm、または約20ppm~約250ppmのモリブデンを潤滑油組成物に提供するのに十分な量で存在し得る。
【0148】
遷移金属含有化合物
別の実施形態では、油溶性化合物は、遷移金属含有化合物または半金属であってもよい。遷移金属には、チタン、バナジウム、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、タンタル、タングステンなどが含まれ得るが、これらに限定されることはない。好適な半金属には、ホウ素、ケイ素、アンチモン、テルルなどが含まれるが、これらに限定されることはない。
【0149】
ある実施形態では、油溶性遷移金属含有化合物は、耐摩耗剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、付着制御添加剤、またはこれらの機能のうちの2つ以上として機能してもよい。ある実施形態では、油溶性遷移金属含有化合物は、チタン(IV)アルコキシドなどの油溶性チタン化合物であってもよい。開示された技術に使用され得る、または開示された技術の油溶性材料の調製に使用され得るチタン含有化合物の中では、チタン(IV)オキシド、チタン(IV)スルフィド、チタン(IV)ニトラートなどの様々なTi(IV)化合物;チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンプロポキシド、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシド、チタン2-エチルヘキソキシドなどのチタン(IV)アルコキシド;およびチタンフェネートを含むがこれに限定されない、他のチタン化合物または錯体;チタン(IV)2-エチル-1-3-ヘキサンジオエートまたはチタンシトラートまたはチタンオレアートなどのチタンカルボキシレート、およびチタン(IV)(トリエタノールアミナート)イソプロポキシドである。開示された技術に包含される他の形態のチタンには、チタンジチオホスフェート(例えば、ジアルキルジチオホスフェート)およびチタンスルホネート(例えば、アルキルベンゼンスルホネート)などのチタンホスフェート、または一般に、油溶性塩などの塩を形成するチタン化合物と様々な酸物質との反応生成物が含まれる。したがって、チタン化合物は、とりわけ、有機酸、アルコール、およびグリコールから誘導され得る。Ti化合物はまた、Ti-O-Ti構造を含有する二量体またはオリゴマー形態でも存在していてもよい。そのようなチタン材料は、市販されているか、または当業者に明白である適切な合成技術によって容易に調製することができる。これらは、特定の化合物に依存して、固体または液体として室温で存在していてもよい。これらは、適切な不活性溶媒中の溶液形態でも提供されてもよい。
【0150】
一実施形態では、チタンは、スクシンイミド分散剤などのTi変性分散剤として供給され得る。そのような材料は、チタンアルコキシドとアルケニル-(またはアルキル)無水コハク酸などのヒドロカルビル置換無水コハク酸との間にチタン混合無水物を形成することによって調製されてもよい。得られたチタン酸コハク酸塩中間体は、直接使用してもよいか、または(a)遊離の縮合可能な--NH官能基を有するポリアミン系スクシンイミド/アミド分散剤、(b)ポリアミン系スクシンイミド/アミド分散剤、すなわちアルケニル-(またはアルキル-)無水コハク酸およびポリアミンの成分、(c)置換無水コハク酸とポリオール、アミノアルコール、ポリアミンとの反応により調製されるヒドロキシ含有ポリエステル分散剤、またはそれらの混合物などの多数の物質のいずれかと反応させてもよい。代替的に、チタン酸コハク酸塩中間体をアルコール、アミノアルコール、エーテルアルコール、ポリエーテルアルコールもしくはポリオール、または脂肪酸などの他の薬剤と反応させてもよく、その生成物は、潤滑剤にTiを付与するために直接使用してもよいか、または上述のようにコハク酸分散剤とさらに反応させてもよい。例として、チタン変性分散剤または中間体を提供するために、テトライソプロピルチタネート1部(モル)をポリイソブテン置換無水コハク酸約2部(モル)と140~150℃で5~6時間反応させてもよい。得られた材料(30g)を、150℃で1.5時間、ポリイソブテン置換無水コハク酸およびポリエチレンポリアミン混合物(127グラム+希釈油)からのスクシンイミド分散剤とさらに反応させて、チタン変性スクシンイミド分散剤を生成させてもよい。
【0151】
別のチタン含有化合物は、チタンアルコキシドとC~C25カルボン酸との反応生成物であってもよい。反応生成物は、以下の式によって表されてもよく、
【化2】
式中、nは、2、3、および4から選択される整数であり、Rは、約5~約24個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基であり、または以下の式によって表されてもよく、
【化3】
式中、m+n=4であり、nは、1~3の範囲であり、Rは、1~8の範囲の炭素原子を有するアルキル部分であり、Rは、約6~25個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、RおよびRは、同一もしくは異なり、1~6個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、またはチタン化合物は、以下の式によって表されてもよく、
【化4】
(式中、xは0~3の範囲であり、Rは、約6~25個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、R、およびRは、同一または異なり、約1~6個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、Rは、H、またはC~C25カルボン酸部分のいずれかからなる群から選択される)によって表され得る。
【0152】
好適なカルボン酸には、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、ネオデカン酸などが含まれ得るが、これらに限定されることはない。
【0153】
ある実施形態では、油溶性チタン化合物は、約0~約3000重量ppmのチタン、または約25~約1500重量ppmのチタン、または約35重量ppm~約500重量ppmのチタン、または約50ppm~約300ppmを提供する量で潤滑油組成物中に存在していてもよい。
【0154】
粘度指数向上剤
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上の粘度指数向上剤を含有していてもよい。好適な粘度指数向上剤には、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン-イソプレンポリマー、スチレン/マレイン酸エステルコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンコポリマー、水素化イソプレンポリマー、アルファ-オレフィン無水マレイン酸コポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、またはそれらの混合物が含まれ得る。粘度指数向上剤は、星型ポリマーを含んでいてもよく、好適な例は、米国公開第2012/0101017(A1)号に記載されている。
【0155】
本明細書の潤滑油組成物は、任意選択的に、粘度指数向上剤に加えて、または粘度指数向上剤の代わりに、1つ以上の分散剤粘度指数向上剤も含有していてもよい。好適な粘度指数向上剤には、官能化ポリオレフィン、例えば、アシル化剤(無水マレイン酸など)とアミンとの反応生成物で官能化されているエチレン-プロピレンコポリマー、アミンで官能化されたポリメタクリレート、またはアミンと反応させたエステル化無水マレイン酸-スチレンコポリマーが含まれてもよい。
【0156】
粘度指数向上剤および/または分散剤粘度指数向上剤の総量は、潤滑油組成物の約0重量%~約20重量%、約0.1重量%~約15重量%、約0.1重量%~約12重量%、または約0.5重量%~約10重量%であり得る。
【0157】
他の任意選択的な添加剤
他の添加剤は、潤滑流体に要求される1つ以上の機能を実行するように選択されてもよい。さらに、前述の添加剤のうちの1つ以上が、多官能性であってもよく、本明細書で記述される機能に追加して機能を提供してもよく、またはそれ以外の機能を提供してもよい。
【0158】
本開示に従う潤滑油組成物は、任意選択的に、他の性能添加剤を含んでいてもよい。他の性能添加剤は、本開示の特定の添加剤に対する追加であってもよく、ならびに/または金属不活性化剤、粘度指数向上剤、洗浄剤、無灰TBNブースター、摩擦調整剤、耐摩耗剤、腐食防止剤、防錆剤、分散剤、分散剤粘度指数向上剤、極圧剤、酸化防止剤、泡抑制剤、解乳化剤、乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤、およびそれらの混合物のうちの1つ以上を含んでいてもよい。典型的には、完全配合潤滑油は、これらの性能添加剤のうちの1つ以上を含有する。
【0159】
好適な金属不活性化剤には、ベンゾトリアゾール誘導体(典型的にトリルトリアゾール)、ジメルカプトチアジアゾール誘導体、1,2,4-トリアゾール、ベンズイミダゾール、2-アルキルジチオベンズイミダゾール、または2-アルキルジチオベンゾチアゾール;エチルアクリレートおよび2-エチルヘキシルアクリレートならびに任意選択的に酢酸ビニルのコポリマーを含む泡抑制剤;トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、および(エチレンオキシド-プロピレンオキシド)ポリマーを含む解乳化剤;無水マレイン酸-スチレンのエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、またはポリアクリルアミドを含む流動点降下剤が含まれてもよい。
【0160】
好適な泡抑制剤には、シロキサンなどのケイ素系化合物が含まれる。
【0161】
好適な流動点降下剤には、ポリメチルメタクリレートまたはそれらの混合物が含まれてもよい。流動点降下剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0重量%~約1重量%、約0.01重量%~約0.5重量%、または約0.02重量%~約0.04重量%を提供するのに十分な量で存在し得る。
【0162】
好適な防錆剤は、フェラスメタル表面の腐食を抑制する特性を有する単一の化合物、または化合物の混合物であってもよい。本明細書で有用な防錆剤の非限定的な例としては、2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、およびセロチン酸などの油溶性高分子量有機酸、ならびにトール油脂肪酸、オレイン酸、およびリノール酸から生成されたものなどの二量体および三量体酸を含む油溶性ポリカルボン酸が挙げられる。他の好適な腐食防止剤には、約600~約3000の分子量範囲の長鎖アルファ、オメガ-ジカルボン酸、およびテトラプロペニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、およびヘキサデセニルコハク酸などの、アルケニル基が約10個以上の炭素原子を含有するアルケニルコハク酸が含まれる。他の有用な種類の酸性腐食防止剤は、アルケニル基中に約8~約24個の炭素原子を有するアルケニルコハク酸と、ポリグリコールなどのアルコールとの半エステルである。そのようなアルケニルコハク酸の対応する半アミドも有用である。有用な防錆剤は、高分子量の有機酸である。いくつかの実施形態では、エンジン油は、防錆剤を含まない。
【0163】
防錆剤は、存在する場合、潤滑油組成物の最終重量に基づき、約0重量%~約5重量%、約0.01重量%~約3重量%、約0.1重量%~約2重量%を提供するのに十分な量で使用することができる。
【0164】
一般的に言えば、好適なクランクケース潤滑剤は、以下の表に列挙する範囲にある添加剤成分を含んでいてもよい。
【表2】
【0165】
上記各成分のパーセンテージは、最終潤滑油組成物の重量に基づく各成分の重量パーセントを表す。潤滑油組成物の残りは、1つ以上の基油からなる。
【0166】
本明細書に記載の組成物の配合に使用される添加剤は、個々にまたは様々な部分組み合わせで基油にブレンドされてもよい。しかしながら、添加剤濃縮物(すなわち、添加剤プラス炭化水素溶媒などの希釈剤)を使用して、成分のすべてを同時にブレンドすることが好適であってもよい。
【実施例
【0167】
以下の実施例は、本開示の組成物および方法を例示するものであって、限定するものではない。
【0168】
一連の試験を実施して、1つ以上の亜鉛ジアルキルジチオホスフェート、1つ以上のモリブデン含有化合物、および1つ以上のマグネシウム含有洗浄剤がタイミングチェーンの伸長に与える影響を決定した。タイミングチェーンの運転を、以下により詳細に説明されるFordチェーン摩耗試験によって模擬実験した。
【0169】
潤滑油組成物の各々は、主要量の基油および従来の分散剤抑制剤(DI)パッケージを含有しており、ベースDIパッケージは、潤滑油組成物の総重量の約2~約10重量パーセントを提供した。ベースDIパッケージは、表2に記載されているように、従来の量の分散剤、耐摩耗添加剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、および粘度指数向上剤を含有していた。変更された成分は、以下に提供されている実施例の表および考察で指定されている。列挙された値のすべては、別段特定されていない限り、潤滑油組成物の総重量に基づく(すなわち、成分の量は、活性原料、加えてもしあれば希釈油を反映する)成分の重量パーセントとして記述されている。
【0170】
Fordチェーン摩耗試験
以下に記載されている比較例1~8および本発明の例1~3の潤滑油を、ASTM D8279に従って、ILSACシーケンスX試験を使用して試験した。
【0171】
ASTM D8279に従ったシーケンスX試験では、エンジンの慣らし後と216時間の試験の終了時にタイミングチェーンの長さを測定する。試験は54サイクルで実施し、4時間のサイクルの各々は、216時間の合計試験長さにわたる、異なる動作条件を伴う2つの段階での動作からなる。動作条件は各サイクル内で変化するが、これらは、全体として、低いおよび中程度の温度の軽負荷および中負荷の動作条件の混合として特徴付けることができる。
【0172】
用いられる試験エンジンは、タイミングチェーン、シリンダ1つ当たり4つのバルブ、および電子式燃料噴射によって駆動されるデュアルオーバーヘッドカムシャフトを有する、Ford 2.0L、火花点火、4行程、4気筒、ガソリン、ターボチャージャー付きの直接噴射(GTDI)エンジンである。
【0173】
SASH
硫酸塩灰分(SASH)は、潤滑剤組成物中の各金属元素の量を乗じた以下の係数に従って、潤滑剤組成物中のSASHに寄与する金属元素の合計に基づいて計算した。
【表3】
【0174】
各潤滑油組成物中に存在する硫酸塩灰分の量を決定するために、硫酸塩灰分に寄与すると考えられる潤滑油組成物中に存在する各金属元素のppmw含有量に、対応する係数を掛ける。各金属元素の積を合計し、10000で除算する。
【0175】
例えば、比較例1(CE-1)は、217ppmwのホウ素、1320ppmwのカルシウム、341ppmwのマグネシウム、24ppmwのモリブデン、および814ppmwの亜鉛からなっていた。したがって、CE-1中に存在するSASHの量を決定するために、以下の計算を実行した:
217ppmwのホウ素×3.22=699
1320ppmwのカルシウム×3.4=4488
341ppmwのマグネシウム×4.95=1688
24ppmwのモリブデン×1.5=36
814ppmwの亜鉛×1.5=1221
【数1】
【0176】
本出願で与えられているすべての硫酸塩灰分(SASH)含有量を、この計算方法を使用して計算した。
【0177】
タイミングチェーンの伸長の結果を以下の表3に示す。
【表4】
【0178】
本発明の例IE-1~IE-3から分かるように、潤滑油組成物の低い総TBNと、モリブデン含有化合物からのモリブデンのppmに対する亜鉛ジチオホスフェートからの亜鉛のppmの比率についての10以下の低い重量比率との組み合わせは、予想外なことに、潤滑油組成物の低い硫酸塩灰分含有量を維持しながら、チェーンの伸長の低減を示す。
【0179】
比較例CE-5およびCE-6で実証されているように、潤滑油組成物の総TBNを増加させると、チェーンの伸長が低減することが知られている。しかしながら、本発明は、モリブデン含有化合物からのモリブデンのppmに対する亜鉛ジチオホスフェートからのppmの亜鉛の重量比率が10未満であることを確実にすることによって、潤滑油組成物の総TBNが7.5未満である場合でも、同様の結果が達成可能であることを実証する。
【0180】
図3は、モリブデン含有化合物からのモリブデンのppmに対する亜鉛ジチオホスフェートからの亜鉛のppmの低い重量比率の影響を示すグラフである。比較例CE-1および本発明の例IE-1の潤滑油組成物は、潤滑油組成物の総TBN値が6.9であり、モリブデン含有化合物からのモリブデンのppmに対する亜鉛ジチオホスフェートからの亜鉛のppmの重量比率が、それぞれ33.9および4.0であった。しかしながら、表3および図3から分かるように、モリブデン含有化合物からのモリブデンのppmに対する亜鉛ジチオホスフェートからの亜鉛のppmを33.9から4.0に低減させると、チェーンの伸長が0.136から0.074に低減された。
【0181】
本開示の他の実施形態は、本明細書の考慮および本明細書に開示される実施形態の実施から当業者に明らかとなるであろう。明細書および特許請求の範囲を通して使用されているように、「a」および/または「an」は1つまたは2つ以上を指し得る。他に指示がなければ、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量、分子量、パーセント、比率、反応条件などの特性を表すすべての数字は、用語「約」が存在するか否かにかかわらず、すべての場合において用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載される数値パラメータは本開示によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。最低限、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各々の数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数および通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。広範囲の開示を記載する数値範囲およびパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に記載される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いかなる数値も、それらのそれぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる、所定の誤差を本質的に含有する。本明細書および実施例が、例示的なものにすぎず、本開示の真の範囲および趣旨は以下の特許請求の範囲によって示されるものとみなされることが意図される。
【0182】
前述の実施形態は、実際にかなりの変動を受けやすい。したがって、実施形態は上記の特定の例示に限定されるものではない。むしろ、上述の実施形態は、法的に利用可能なそれらの等価物を含む、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内にある。
【0183】
特許権所有者は、いずれかの開示される実施形態を、一般に開放することを意図せず、いずれかの開示される修正または変形が文字どおり特許請求の範囲に該当し得ない程度まで、それらは均等論下でこれらの一部であるとみなされる。
【0184】
本明細書に開示される各成分、化合物、置換基、またはパラメータは、単独で、または本明細書に開示されるありとあらゆる他の成分、化合物、置換基、もしくはパラメータのうちの1つ以上との組み合わせでの使用について開示されていると解釈されるべきであることを理解されたい。
【0185】
本明細書に開示される各成分、化合物、置換基、またはパラメータについての各量/値または量/値の範囲は、本明細書に開示される任意の他の成分、化合物、置換基、またはパラメータについて開示される各量/値または量/値の範囲と組み合わせて開示されていると解釈されるべきであり、本明細書に開示される2つ以上の成分、化合物、置換基、またはパラメータについての量/値または量/値の範囲の任意の組み合わせも、したがって、この説明の目的のために互いに組み合わせて開示されることも理解されたい。
【0186】
本明細書に開示される各範囲は、同じ有効数字の数を有する開示範囲内の各特定値の開示として解釈されるべきであることをさらに理解されたい。したがって、1~4の範囲は、1、2、3、および4の値の明確な開示として解釈されるべきである。
【0187】
本明細書に開示される各範囲の各下限が、同じ成分、化合物、置換基、またはパラメータについて本明細書に開示される各範囲の各上限および各範囲内の各特定値と組み合わせて開示されると解釈されるべきであることをさらに理解されたい。したがって、本開示は、各範囲の各下限を各範囲の各上限と、もしくは各範囲内の各特定値と組み合わせることによって、または各範囲の各上限を各範囲内の各特定値と組み合わせることによって誘導されるすべての範囲の開示として解釈されるべきである。
【0188】
さらに、説明または実施例において開示される成分、化合物、置換基、またはパラメータの特定量/値は、範囲の下限または上限のいずれかの開示として解釈されるべきであり、したがって、本出願の他の個所で開示される同じ成分、化合物、置換基、またはパラメータについての範囲の任意の他の下限もしくは上限または特定量/値と組み合わせて、その成分、化合物、置換基、またはパラメータについての範囲を形成することができる。
【0189】
当分野で通常遭遇する種々の条件およびパラメータの好適な改変および適合は、当業者に明らかであり、本開示の範囲内である。本明細書で引用したすべての特許および刊行物は、それらの全体が参照により本明細書に完全に組み込まれる。

図1
図2
図3