(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】海水中に設置されている淡水貯水槽
(51)【国際特許分類】
A01K 61/70 20170101AFI20230619BHJP
B63B 35/00 20200101ALI20230619BHJP
B63B 75/00 20200101ALI20230619BHJP
B63B 35/44 20060101ALI20230619BHJP
B65D 88/12 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
A01K61/70
B63B35/00 T
B63B75/00
B63B35/44 Z
B63B35/44 A
B65D88/12 M
(21)【出願番号】P 2022188110
(22)【出願日】2022-11-25
【審査請求日】2022-11-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】722014044
【氏名又は名称】宮田 邦代
(72)【発明者】
【氏名】宮田 憲明
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-111822(JP,A)
【文献】特開昭62-039484(JP,A)
【文献】特開2006-161533(JP,A)
【文献】特開2003-158948(JP,A)
【文献】特開2014-144787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/00-61/95
E03B 11/00-11/16
B65D 88/00-90/66
B63B 35/00
B63B 75/00
B63B 35/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が海水中に設置されている淡水貯水槽であって、
前記淡水貯水槽は、上面部材と、側面部材と、底面部材を備え、
前記上面部材は、密閉する事が出来る淡水注入口と排水口を備えた略平面状の略円形部材であって、略水平方向に形成されて、周縁部に前記側面部材が接続されており、
前記側面部材は、密閉されている円筒状部材であって、下方に前記底面部材が接続されており、
前記底面部材は、少なくとも一部が通水性を有する略円形部材であって、略平面状に形成され、或いは中央が下方へ下がった擂り鉢状に形成されて、中央に開口部を備えており、
前記底面部材は、前記通水性を有する略円形部材と前記開口部によって、淡水も海水も自由に出入りできる開放的な構造でありながら、淡水と海水の比重差を利用する事によって、前記淡水貯水槽内に安定した状態で淡水が貯水でき、増加した淡水水量に比例する海水が、底面の前記通水性を有する部材或いは前記開口部から排出され、また前記開口部は、淡水に混入した土砂を排出させる事ができる機能を有しており、
略円筒型になっている淡水貯水槽。
【請求項2】
前記淡水貯水槽の内部にあって、上方から注入された淡水を横方向へ転換させる水流の方向転換部材が、前記淡水注入口の下方に設置され、或いは接続されており、
前記水流の方向転換部材は、海水中に淡水が勢いよく注入されたならば、それが円筒型の内部であっても、即座に海水と混合されて分厚い汽水域帯が生まれるため、上方からの水流を球体で受け止め、水の分子同士が衝突する事によって位置エネルギーを消滅させ、前記球体上方の出口から円筒状の前記側面部材に沿って拡散させながら排出する事によって、前記淡水貯水槽内で穏やかな渦巻き水流を発生させて、汽水域の混合水量を少なくできる水流の方向転換部材を備えた、請求項1に記載されている淡水貯水槽。
【請求項3】
前記淡水貯水槽内の汽水域より下方にある海水は、絶え間ない潮汐や海流や波浪の影響を受けて流動的になっており、外海からの影響力を弱めるために、
前記淡水貯水槽の前記側面部材の下端の内側に、略中央に開口部を備える略円形の第二底面部材が略水平方向に接続されている、請求項1に記載されている淡水貯水槽。
【請求項4】
前記淡水貯水槽の前記上面部材に密閉できる開口部を備え、前記淡水貯水槽の内部に嵩比重が淡水よりも軽い浮力部材Aが入れられている、請求項1に記載されている淡水貯水槽。
【請求項5】
前記淡水貯水槽が、単独或いは複数の外部浮力部材Dによって吊り下げられている、或いは複数の前記淡水貯水槽が、単独の外部浮力部材Dによって吊り下げられている、請求項1に記載されている淡水貯水槽。
【請求項6】
前記淡水貯水槽の内部に、
比重が淡水よりも軽い上方部材に、比重が海水よりも重い重力部材を接続させる事によって、全体の暈比重が汽水域の混合水と釣り合って、汽水域帯で浮かぶ中間の浮力部材に、水中位置計測装置の少なくとも一部が装着された中間浮力部材Bが、入れられており、
前記中間浮力部材Bの水中位置を計測する事によって、淡水の貯水量が確認できる、請求項1に記載されている淡水貯水槽。
【請求項7】
前記淡水貯水槽の前記側面部材の外側に、略水平方向に広がるフランジが接続されて、前記フランジの上面に、天然鉱物、或いは産業廃棄物、或いは有機物、或いは人工物が設置されている、請求項1記載されている淡水貯水槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一部が海水中に設置されている淡水貯水槽に関する。
詳しくは、立方体の底面が解放されている水槽でありながら、海水と淡水の比重差を利用する事によって、海水と淡水が混合されるのを最小限に止めて、海水中に設置されている淡水貯水槽であって、淡水の一定量が確保されて利用する事が出来る、海水中に設置されている淡水貯水槽に係るものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化によって気象の変化が極端化し、集中豪雨災害と極度な干ばつが世界中で頻発し、急激な乾燥地が拡大して農業生産が困難になった地域が拡大しており、同時に、増大する世界人口に対する食糧危機が叫ばれており、農業生産を拡充する事が危急の課題となっている。
【0003】
また、大量の雨が集中する事で災害が発生する降水地帯も増加しており、この降雨地域から乾燥地域へ、大量の水を安価に運ぶ技術が強く求められている。
【0004】
そこで、例えば特許文献1及び特許文献2には、洋上風力発電所や洋上浮桟橋などの技術が紹介されているが、大量の水を積み込む為の設備が無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-188557号
【文献】特開2001-336131号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2に記載された浮体式風力発電所や浮体式桟橋は、海中或いは海上に設置された浮体構造物ではあるが、いずれも単独の風力発電所や桟橋であって、淡水貯水槽が設置されていなく、隣接されてもいない。
【0007】
本発明は、以上の点を鑑み創案されたものであり、河川から海へ流れ出る直前の淡水を活用して、近くの海水中に淡水貯水槽を設置する事を課題とする。
【0008】
その淡水貯水槽の複数個を連結させて大集団が結成されれば、新たな魚礁として利用されて、或いは津波避難タワーを併設し、或いは浮き桟橋として利用する事も課題とする。
【0009】
また本発明は、タンカーにて輸送される淡水を受け入れる乾燥地域の海岸に、同じ構造の淡水貯水槽を設置する事をも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、少なくとも一部が海水中に設置されている淡水貯水槽であって、前記淡水貯水槽は、上面部材と、側面部材と、底面部材を備え、前記上面部材は、密閉する事が出来る淡水注入口と排水口を備えた略平面状の略円形部材であって、略水平方向に形成されて、周縁部に前記側面部材が接続されており、前記側面部材は、密閉されている円筒状部材であって、下方に前記底面部材が接続されており、前記底面部材は、中央部に開口部を備え、少なくとも一部が通水性を有する略円形部材であって、略平面状に形成され、或いは中央部が下方へ下がった擂り鉢状に形成されて、略円筒型になっている、淡水貯水槽、を備える。
【0011】
本発明は、緩やかに流れる河川の下流域において、潮が満ちるに従って海水が層状になって淡水層の下に侵入し、薄い汽水域帯を挟み、同一地点で淡水魚と海水魚が共存している状態から考案した発明であって、淡水と海水の比重差を利用する事によって、底面の一部が解放されて海水が自由に出入りできる構造でありながら、海水中に設置した淡水貯水槽に安定した淡水が確保される淡水貯水槽を提供する。
【0012】
しかし、海水中に淡水が勢いよく注入されたならば、それが円筒型の内部であっても、即座に海水と混合されて分厚い汽水域帯が生まれ淡水量は激減する、従って本発明の請求項2に記載した水流の方向転換部材は、上方からの水流を滝壺状の球体で受け止め、水の分子同士が衝突する事によって位置エネルギーを消滅させ、球体上方の出口から円筒型の側面部材に沿って拡散させながら排出する事によって、緩やかな渦巻き水流が発生し、次第に下方へ伝播して、増加した淡水水量に比例する海水が底面から排出される。
【0013】
しかしながら、汽水域より下方にある海水は、絶え間ない潮流や潮の干満や波浪の影響を受けて流動的になっているので、請求項3に示すように、淡水貯水槽の側面部材の下端に、中央部に小さい開口部を持つ円形の第二底面部材を接続する事によって、外海からの影響力を弱め、半閉鎖状態になった静かな環境の海水中に、請求項2に記載した水流の方向転換部材が生み出す水流よりも弱くて、逆方向に流れる水流を生み出す逆方向の水流発生部材を第二底面部材の上方に設置する事によって、淡水と海水が共存する河川下流域の静かな自然現象に似た環境が生まれる。
【0014】
請求項4では、前記淡水貯水槽の上面部材に密閉する事が出来る開口部を備え、前記淡水貯水槽の内部に浮力部材Aを挿入すれば、淡水貯水槽全体を任意の高さまで持ち上げる事が可能になって、淡水貯水槽の一部が海面上に現れる要因となり、その結果が多方面で活躍できる多くの素地を生み出す事になる。
【0015】
請求項5に示した外部浮力部材Dは、複数の淡水貯水槽の上面を均一の高さに設置する事が容易になり、淡水貯水槽の集合体に淡水を注入させる際に或いは排出させる際に、作業工程が一層簡単になる。
【0016】
また請求項6に示す中間浮力部材Bは、比重が淡水よりも軽い素材からなる上方部材に水中位置を確認する装置の一部を付加させ、下方に比重が海水よりも重い重力部材を接続させる事によって、全体の暈比重が汽水域の混合水と釣り合う中間浮力部材Bが形成され、この中間浮力部材Bの水中位置を計測する事によって、淡水の貯水量が確認できる。
【0017】
また、淡水貯水槽の外側にフランジを接続して水生生物が繁殖しやすい環境を提供し、或いはこれらの淡水貯水槽を大集合させ、硬質或いは軟質の接続部材類によって一体化させて淡水貯水槽集合体を形成し、漁業資源の増殖を計るなど様々な用途に利用できる。
【0018】
請求項9から11に至る淡水貯水槽集合体は、請求項1から8に至る淡水貯水槽の応用例であって、洋上風力発電や太陽光発電装置と併設する事により、或いは魚礁として、或いは津波避難タワーを併設して万一の事態に備え、或いはタンカーが接岸できる桟橋として利用する事によって、多くのメリットが期待できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の最大の特徴は、底部が解放された淡水貯水槽を海水中に設置する事にある。
即ち、淡水貯水槽内に海水が自由に出入りできる開放的な構造でありながら、淡水が安定した状態で貯水できる事にあって、そこに数々のメリットが生まれる。
【0020】
第1は、淡水も海水も自由に出入りできるが故に、淡水貯水槽にかかる外圧と内圧が常に均衡しており、故に内圧及び外圧に備える為の頑強な隔壁が不要になり、よって規格化された小さな部品に分割する事が可能となって、工場での大量生産が実現し、現地で船上にて組み立てる事によって、製造から運搬や設置に至るまでの全工程での経費が、著しく削減できる。
【0021】
第2は、規格化された側面部品を幾重にも接続する事によって、より深く大きな容量の淡水貯水槽が可能になると同時に、横幅が規格化されているが故に、並列的に淡水貯水槽を連結する事が容易になって、大容量の巨大淡水貯水槽が簡単に作れる事になり、効率的で巨大化した淡水貯水槽集合体が実現し、よって水量当たりの単価が格段に安くなる。
【0022】
第3は、淡水貯水槽を設置する地域は、大型機械が搬入できない僻地の河川から都市近郊の河川に至るまでの全国各地の河川下流の沿岸海域であって、設置現場では、工場で製造された部品を船上で組み立て設置すれば完成です。
従って現地では、大型機械の搬入や道路建設などに伴う自然破壊や、環境問題からも解放されます。
【0023】
第4は、利用する淡水が、従来は利用される事なく海へ流れ出ていた河川の最下流域の淡水か、或いはその伏流水であって、たとえ下流域の河川水とは言え、世界的に見れば日本の河川は清らかな淡水であって、天が与えてくれた枯渇しない永遠の資源であるにも拘わらず、誰にも認められずに、見捨てられて、ただ海に消えていました。
本発明は、この見捨てられていた淡水を、資源として生かす事にあります。
【0024】
その時、底面部材の中央部にある底面の開口部は、大雨時には土砂が混入した淡水が浸入する公算は日常的にあり、その土砂が混入した淡水は、緩やかな渦巻き水流によって徐々に分離した土砂が中央に集まり、重量に従って底面の開口部から排出される。
【0025】
しかし河川から取水する淡水が河川全体のほんの一部分であっても、長期間にわたって取り続ければ周辺海域に何らかのデメリットが生まれる可能性も予想されます、従って本発明はそのデメリットの解消法をも考案した。
【0026】
そのデメリットを解消するため第5は、淡水貯水槽の側面の外側にフランジを設置し、そのフランジに製鉄所から出る製鉄スラグ等の産業廃棄物を設置する事によって、海藻が生育する環境を提供し、定期的に底面から淡水をオーバーフローさせる事によって海藻の成長を促進させ、よって淡水貯水槽集合体は多くの魚が集まる魚礁となって、漁業者にとって大きなメリットが生まれる事になるでしょう。
【0027】
第6は、この淡水貯水槽の巨大な集合体は、定置網を隣接させて設置する事もあれば、淡水貯水槽集合体の内側に定置網を設置して集まった魚類を誘導して定期的に捕獲する事ができ、或いは、淡水貯水槽集合体の一部をネットで囲って、海藻を食べつくして磯焼けの原因となる毒魚のアイゴから守り、稚魚を狙う大型魚類が侵入できない環境を提供すれば、沢山の稚魚が安心して暮らせる天然の育成場となって、中長期的な水産資源の増加にも寄与する。
【0028】
第7は、沿岸部に巨大な淡水の貯水槽が確保される事は、地元に淡水ダムが出現する事であって、地元自治体の新たな水道用水の水源となり、或いは渇水期の灌漑用水となって利用できるので、節水制限の必要がない水に恵まれた地域に生まれ変わります。
【0029】
また巨大津波の襲来が予想されている地域においては津波対策が必至条件であって、津波の避難タワーを併設して安全を確保する事も重要である。
【0030】
第8は、地球規模の異常気象によって干ばつに苦しむ地域が拡大しており、そこでは、何よりも清らかな淡水が欲しいのです。
巨大な淡水貯水槽集合体は、桟橋部材を設置するだけで大型タンカーの積み出し港となり、受け入れ地の沿岸部に同設備を設置すれば、其処は荷下ろし港になると同時に、パイプ輸送が可能な近場に巨大な淡水ダムが出現する事であって、食糧増産に大きく寄与する事ができます。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】は、本発明の根幹をなす淡水貯水槽(1)であって、上面部材(11)と側面部材(12)と底面部材(13)からなる円筒体が、海水中に設置されて、内部に淡水(31)と汽水域の混合水(34)が保管されて、その下方に海水が浸入している状態を表わした概略図である。
【0032】
【
図2】は、
図1の淡水貯水槽(1)の上面部材に密閉できる開口部を備え、淡水貯水槽(1)内の上方に浮力部材A(21)が入れられて淡水貯水槽の一部が海面上に浮上しており、内部に水流の方向転換部材(22)と中間浮力部材B(23)が入れられている状態を表しており、さらに側面部材(12)の下端に、中央位置に開口部を持つ第二底面部材(17)が接続されて、第二底面部材の上方に、逆方向の水流発生部材(25)が設置されている概略図である。
【0033】
【
図3】は、淡水注入口(15)に接続する水流の方向転換部材(22)を表した略図である。
【0034】
【
図4】は、淡水貯水槽内に於ける淡水(31)と海水(32)と汽水域の混合水(34)と、汽水域に浮かぶ中間浮力部材B(23)を表わした概念図である。
【0035】
【
図5】は、洋上風力発電所(42)の基礎部内に設置された淡水貯水槽(1)である。
【0036】
【
図6】は、
図2の淡水貯水槽(1)の外側にフランジ(18)が接続されて、フランジ上部に置かれた物体及び海藻(35)を表わし、淡水貯水槽(2)となった概略図である。
【0037】
【
図7】は、外部浮力部材D(24)から吊り下げられた淡水貯水槽(2)が、接続部材類(41)によって連結され一体化した淡水貯水槽集合体(3)に形成され、その上空に太陽光発電装置(43)が取り付けられている断面図である。
【0038】
【
図8】は、淡水貯水槽集合体(3)の内側に定置網(44)が設置されている様子を表した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の基となる海水中に設置された淡水貯水槽の実施の形態について、図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
【実施例】
【0040】
図1は、本発明の根幹をなす淡水貯水槽(1)の概略図であって、全体が海水中に設置された円筒型をしており、密閉できる淡水注入口(15)と排水口(16)が取り付けられた上面部材(11)と、中央部に底面の開口部を持ち擂り鉢状に下がった通水性を有する底面部材(13)とが、側面部材(12)によって接合された円筒型の概略図であって、その円筒型内に淡水(31)が保管され、汽水域の混合水(34)を挟んで円筒型の下方から周縁部全域に存在する海水(32)を表わした淡水貯水槽(1)を施設する。
【0041】
図2は、
図1に示した淡水貯水槽(1)の上面部材に密閉できる開口部(14)が設けられ、淡水貯水槽内に浮力部材A(21)が入れられて、一部が海面上に浮上した淡水貯水槽(1)であって、淡水貯水槽内の淡水注入口(15)に水流の方向転換部材(22)が接続され、中間浮力部材B(23)が汽水域(34)に浮かんでいる状態を表わし、底面部材(13)のさらに下方に第二底面部材(17)が備えられ、第二底面部材の上方に逆方向の水流発生部材(25)が備えられている、本発明の第2の基本形である。
【0042】
図3は、本発明の根幹を成す水流の方向転換部材(22)の概略図であって、上方の淡水注入口(15)から勢いよく流れ落ちた淡水を、滝壺を想定した球形の器で受け止め、水分子同士が衝突を繰返す事によって位置エネルギーを消滅させ、球体の上方の出口から横方向に徐々に拡散させながら排出する事によって、水流の勢いが弱まり、円筒型の貯水槽の壁面に沿わせるように排出させる事によって、貯水槽内で穏やかな渦巻き水流が生まれ、汽水域の混合水量を少なくする効果がある。
【0043】
図4は、淡水と海水が出合う汽水域に中間浮力部材B(23)が浮かんでいる状態を表した概略図である。
淡水も海水も水温や溶解物質などによって僅かではあるが誤差が生じる、従って淡水よりも軽い素材で造られた上部本体に水中位置を計測するセンサーの一部を装着して、海水よりも重い錘を接続する事によって、その錘は重量が僅かに異なる錘を選択する事によって、汽水域(34)帯で浮かぶ中間浮力部材B(23)を製作した。
【0044】
図5は、洋上風力発電所(42)の基礎部内に設置されている淡水貯水槽(1)である。
【0045】
図6に示す淡水貯水槽(2)は、
図2の淡水貯水槽の側面部材(12)の外側にフランジ(18)を取り付け、フランジの上方に、鉄分を含んだ製鉄所の廃鉱サイ等(35)を乗せる事によって海藻(35)が繁茂するのを加速させて、水面近くに浮かぶ魚礁として活躍できる素地を造った。
【0046】
図7は、前記の淡水貯水槽(2)の複数個を、硬質或いは軟質の接続部材類(41)によって海岸近くに設置した淡水貯水槽(2)の大集団を形成している、その一部を表わした立面図であって、側面部材(12)を積み重ねる事によって深く容量が大きい貯水槽になり、複数個の淡水貯水槽(2)が外部浮力部材D(24)によって吊り下げられ、さらにその上空に太陽光発電装置(43)が取り付けられている様子を表わした立面図である。
【0047】
図8は、この淡水貯水槽の複数個が一体化した淡水貯水槽集合体(3)の内側に定置網(44)を設置する事によって、魚礁に集まる魚群を誘導して捕獲する事ができる。
同時に一部をネット類(45)で囲み、大型魚類が侵入できない環境を造って稚魚の生育場(46)とする事で、中長期的な魚類全般の増殖を図る取り組みである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
この海水中に設置する淡水貯水槽は、大きな水圧対策から解放されているが為に、規格化された小型部品に分解する事が可能となって、工場での大量生産が可能になり、この部品を船上で組み立てて海中に設置するだけで淡水貯水槽が完成するので、至って簡便、短期間に、安価に、設置することが出来ます。
【0049】
その部品を独立した商品として輸出する事によって、受け入れ地の海域に淡水貯水槽集合体を作ることが出来る結果、タンカー輸送が格段に容易になると同時に、乾燥地域の輸入先では、欲しい時にいつでも利用できる淡水貯水槽集合体がすぐ近くの海中にでき、至って便利な淡水ダムが出現する。
【0050】
設置する地域は、海岸まで山が迫る小規模河川から、大都市圏を除く全国中小河川の河口の周辺海域が対象地であって、貴重な雨水を受け止める広大な流域面積を有する集落には販売した淡水の利益を還元する事で、町では水道水や灌漑用水が確保される事で、それが魚礁となって活躍する事で漁業者にも利益が生まれ、干ばつで苦しむ地域へ運ばれた淡水は、食料増産に大いに寄与する事でしょう。
【符号の説明】
【0051】
1 淡水貯水槽
2 フランジが接続された淡水貯水槽
3 淡水貯水槽集合体
11 上面部材
12 側面部材
13 底面部材(開口部を含む)
14 上面部材に備えた密閉できる開口部
15 密閉できる淡水注入口
16 密閉できる排水口
17 第二底面部材(開口部を含む)
18 フランジ
21 浮力部材A
22 水流の方向転換部材
23 中間浮力部材B
24 外部浮力部材D
25 逆方向の水流発生部材
31 淡水
32 海水
33 海面
34 汽水域の淡水と海水の混合水
35 (フランジ上部の)物体と海藻
36 アンカー
37 海底
41 硬質或いは軟質の接続部材類
42 洋上風力発電所
43 太陽光発電装置
44 定置網
45 ネット類
46 稚魚の生育場
【要約】
【課題】
河川水を海水中に設置する立方体で貯水する、淡水貯水槽を備える。
【解決手段】
通水性を有する底面部材(13)から海水(32)が自由に出入りできる開放的な円筒型の淡水貯水槽(1)を海水中に設置して、円筒型の上面部材(11)にある淡水注入口(15)から淡水(31)を注入して貯水し、排水口(16)から淡水(31)が排出できる、淡水貯水槽(1)を提供する。
【選択図】
図1