(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】車両の制御システム、車両の制御装置及び該制御装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
F02D 29/06 20060101AFI20230619BHJP
B60K 6/485 20071001ALI20230619BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20230619BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20230619BHJP
B60W 10/26 20060101ALI20230619BHJP
B60W 20/13 20160101ALI20230619BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20230619BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20230619BHJP
B60L 58/13 20190101ALI20230619BHJP
【FI】
F02D29/06 E
B60K6/485 ZHV
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60W10/26 900
B60W20/13
B60L50/16
B60L50/60
B60L58/13
(21)【出願番号】P 2022508147
(86)(22)【出願日】2021-02-16
(86)【国際出願番号】 JP2021005752
(87)【国際公開番号】W WO2021186991
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2020050338
(32)【優先日】2020-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003333
【氏名又は名称】ボッシュ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】許 鼎昌
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-013741(JP,A)
【文献】特開2004-222443(JP,A)
【文献】特開2011-251648(JP,A)
【文献】特開2015-217690(JP,A)
【文献】特開2012-183915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/06
B60K 6/485
B60W 10/06
B60W 10/08
B60W 10/26
B60W 20/13
B60L 50/16
B60L 50/60
B60L 58/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動トルクを出力する内燃機関(10)と、
前記内燃機関(10)の出力トルクにより駆動されて発電するモータ(13)と、
前記モータ(13)の発電電力を蓄電可能な蓄電装置(25)と、
前記蓄電装置(25)の蓄電率が所定の下限値を下回っている場合に前記内燃機関(10)の出力トルクを利用して前記蓄電装置(25)に充電する電力を前記モータ(13)に発電させる強制発電制御を実行可能な制御装置(101)と、を備え、
前記制御装置(101)は、
所定の目標充電時間内に前記蓄電率を所定の目標蓄電率まで上昇させるための目標発電電流を設定するとともに、前記目標発電電流を生成するために必要な前記内燃機関(10)の出力トルクである発電用トルクを求め、前記発電用トルクに基づいて前記内燃機関(10)を制御
し、
前記目標発電電流にしたがって前記蓄電装置(25)を蓄電した場合の基準蓄電率変化線に応じた基準蓄電率よりも実際の蓄電率が下回っている場合、前記基準蓄電率と、前記実際の蓄電率と、の差に基づいて前記発電用トルクを逐次フィードバック制御することを特徴とする、車両の制御システム。
【請求項2】
前記制御装置(101)は、
前記強制発電制御の実行開始時に、現在の蓄電率と前記目標蓄電率との差に基づいて必要充電電力を求め、前記必要充電電力と前記所定の目標充電時間とに基づいて前記目標発電電流を設定することを特徴とする、請求項1に記載の車両の制御システム。
【請求項3】
前記制御装置(101)は、
前記必要充電電力と前記所定の目標充電時間と前記モータ(13)の発電効率とに基づいて前記目標発電電流を設定することを特徴とする、請求項2に記載の車両の制御システム。
【請求項4】
前記制御装置(101)は、
少なくとも前記駆動トルクと前記発電用トルクとの和に基づいて、前記内燃機関(10)を制御することを特徴とする、請求項1~
3のいずれか1項に記載の車両の制御システム。
【請求項5】
前記制御装置(101)は、
さらに前記車両に設けられた補機に消費させる補機用発電電流を前記目標発電電流に加算して前記発電用トルクを求めることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか1項に記載の車両の制御システム。
【請求項6】
前記制御装置(101)は、
前記目標発電電流に基づいて前記目標充電時間又は充電完了までの残時間を前記車両の乗員に通知することを特徴とする、請求項1~
5のいずれか1項に記載の車両の制御システム。
【請求項7】
車両の駆動トルクを出力する内燃機関(10)と、前記内燃機関(10)の出力トルクにより駆動されて発電するモータ(13)と、前記モータ(13)の発電電力を蓄電可能な蓄電装置(25)とを備える車両の制御装置(101)であって、
前記制御装置(101)は、前記蓄電装置(25)の蓄電率が所定の下限値を下回っている場合に前記内燃機関(10)の出力トルクを利用して前記蓄電装置(25)に充電する電力を前記モータ(13)に発電させる強制発電制御を実行し、
前記強制発電制御では、
所定の目標充電時間内に前記蓄電率を所定の目標蓄電率まで上昇させるための目標発電電流を設定するとともに、前記目標発電電流を生成するために必要な前記内燃機関(10)の出力トルクである発電用トルクを求め、前記発電用トルクに基づいて前記内燃機関(10)を制御し、
前記目標発電電流にしたがって前記蓄電装置(25)を蓄電した場合の基準蓄電率変化線に応じた基準蓄電率よりも実際の蓄電率が下回っている場合、前記基準蓄電率と、前記実際の蓄電率と、の差に基づいて前記発電用トルクを逐次フィードバック制御する
車両の制御装置。
【請求項8】
車両の駆動トルクを出力する内燃機関(10)と、前記内燃機関(10)の出力トルクにより駆動されて発電するモータ(13)と、前記モータ(13)の発電電力を蓄電可能な蓄電装置(25)とを備える車両の制御装置(101)の制御方法であって、
前記制御装置(101)は、前記蓄電装置(25)の蓄電率が所定の下限値を下回っている場合に前記内燃機関(10)の出力トルクを利用して前記蓄電装置(25)に充電する電力を前記モータ(13)に発電させる強制発電制御を実行し、
前記強制発電制御は、
前記蓄電装置(25)の現在の蓄電率及び目標蓄電率を取得するステップと、
所定の目標充電時間内に前記蓄電率を所定の目標蓄電率まで上昇させるための目標発電電流を設定するとともに、前記目標発電電流を生成するために必要な前記内燃機関(10)の出力トルクである発電用トルクを求め、前記発電用トルクに基づいて前記内燃機関(10)を制御するステップと、
前記目標発電電流にしたがって前記蓄電装置(25)を蓄電した場合の基準蓄電率変化線に応じた基準蓄電率よりも実際の蓄電率が下回っている場合、前記基準蓄電率と、前記実際の蓄電率と、の差に基づいて前記発電用トルクを逐次フィードバック制御するステップと、
を備える車両の制御装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の出力トルクを利用して発電可能なモータを備えた車両の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両において、燃料消費量の削減あるいは排気エミッションの低減を目的としてアイドルストップ制御が実用化されている。アイドルストップ制御を実行可能な車両においては、アイドルストップ制御による内燃機関の自動停止後の内燃機関の再始動を所定回数以上実行可能な状態を維持するために、車両の走行中に蓄電装置の蓄電率が所定値未満になると蓄電装置の蓄電率を上昇させる強制発電制御が行われるものがある(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような強制発電制御では、運転者の運転操作や車両の運転状況に応じてバッテリへの充電電流が変動するため、強制充電走行制御を開始してからバッテリの蓄電率が所定の閾値になるまでの時間が変動することで、強制発電制御により蓄電装置の蓄電率が所定の目標蓄電率まで上昇されるまでの期間が当初予定より延長されてしまうことがある。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、目標時間内に蓄電装置の蓄電率を所定の目標蓄電率まで上昇させることができる車両の制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、車両の駆動トルクを出力する内燃機関と、内燃機関の出力トルクにより駆動されて発電するモータと、モータの発電電力を蓄電可能な蓄電装置と、蓄電装置の蓄電率が所定の下限値を下回っている場合に内燃機関の出力トルクを利用して蓄電装置に充電する電力をモータに発電させる強制発電制御を実行可能な制御装置と、を備え、制御装置は、所定の目標充電時間内に蓄電率を所定の目標蓄電率まで上昇させるための目標発電電流を設定するとともに、目標発電電流を生成するために必要な内燃機関の出力トルクである発電用トルクを求め、発電用トルクに基づいて内燃機関を制御し、目標発電電流にしたがって蓄電装置を蓄電した場合の基準蓄電率変化線に応じた基準蓄電率よりも実際の蓄電率が下回っている場合、基準蓄電率と、実際の蓄電率と、の差に基づいて発電用トルクを逐次フィードバック制御する車両の制御システムが提供される。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、車両の駆動トルクを出力する内燃機関と、前記内燃機関の出力トルクにより駆動されて発電するモータと、前記モータの発電電力を蓄電可能な蓄電装置とを備える車両の制御装置であって、前記制御装置は、前記蓄電装置の蓄電率が所定の下限値を下回っている場合に前記内燃機関の出力トルクを利用して前記蓄電装置に充電する電力を前記モータに発電させる強制発電制御を実行し、前記強制発電制御では、所定の目標充電時間内に蓄電率を所定の目標蓄電率まで上昇させるための目標発電電流を設定するとともに、目標発電電流を生成するために必要な内燃機関の出力トルクである発電用トルクを求め、発電用トルクに基づいて内燃機関を制御し、目標発電電流にしたがって蓄電装置を蓄電した場合の基準蓄電率変化線に応じた基準蓄電率よりも実際の蓄電率が下回っている場合、基準蓄電率と、実際の蓄電率と、の差に基づいて発電用トルクを逐次フィードバック制御する車両の制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本発明によれば、目標充電時間内に蓄電装置の蓄電率を所定の目標蓄電率まで上昇させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係る車両の制御システムの基本構成を示す模式図である。
【
図2】同実施形態に係る車両の制御システムの制御装置(エンジンECU)の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】強制発電制御の参考例を説明するための図である。
【
図4】同実施形態に係る強制発電制御を説明するための図である。
【
図6】エンジンECUの処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
<1.車両の制御システムの基本構成>
まず、本発明の実施の形態に係る車両の制御システムの基本構成の一例を説明する。
図1は、車両の制御システム1の基本構成を示す模式図である。
図1に示した車両の制御システム1は、駆動源として内燃機関10を備え、アイドルストップ制御を実行可能に構成されている。
【0012】
車両の制御システム1は、内燃機関10、自動変速機20、モータジェネレータ(ISG)13及び駆動輪60を備える。自動変速機20及びモータジェネレータ13は、内燃機関10に接続されている。モータジェネレータ13は、本発明のモータに相当する。
【0013】
内燃機関10は、ガソリン又はディーゼル等を燃料として車両の駆動トルクを生成する内燃機関である。内燃機関10は、あらかじめ設定された所定の自動停止条件の成立時に自動的に停止され、その後、あらかじめ設定された所定の再始動条件の成立時に自動的に再始動される。内燃機関10は、出力軸としてのクランクシャフト17を有する。内燃機関10は、クランクシャフト17の回転角度を検出するクランク角センサ15を備える。
【0014】
自動変速機20は、例えば無段変速機構(CVT:Continuously Variable Transmission)又は有段式変速機構等の変速機構を備える。変速機構は、トルクコンバータ21を介して内燃機関10のクランクシャフト17に接続されている。自動変速機20は、内燃機関10のクランクシャフト17から入力された回転トルクを所定の変速比で変換して駆動軸59に伝達する。
【0015】
モータジェネレータ13は、内燃機関10の初始動時あるいはアイドルストップ制御による内燃機関10の始動時等に、内燃機関10をクランキングさせるために用いられる。モータジェネレータ13の回転軸13aは、ギヤあるいは駆動ベルト等を介して内燃機関10のクランクシャフト17に連結されている。モータジェネレータ13は、二次電池25に接続され、内燃機関10の始動時に二次電池25から供給される電力で内燃機関10をクランキングする。モータジェネレータ13は、整流回路や電圧レギュレータを一体的に備え、内燃機関10の動力を利用して発電を行う発電機としての機能を有している。モータジェネレータ13は、内燃機関10からギヤ等を介して回転駆動されて発電し、二次電池25を充電する。二次電池25は、スタータモータ11の他にも車両に搭載された各種補機49に電力を供給するように構成されていてもよい。
【0016】
二次電池25は、例えば定格200Vのリチウムイオンバッテリであってもよい。二次電池25は、センサユニット41を備える。センサユニット41は、二次電池25の開放電圧(以下、「バッテリ電圧」ともいう)を検出する電圧センサ及び二次電池25の温度(以下、「電池温度」ともいう)を検出する温度センサの機能を有する。
【0017】
なお、二次電池25は、本発明における蓄電装置の一態様であり、蓄電装置は、モータジェネレータ13の発電電力を蓄電可能な装置であれば二次電池に限られない。例えば、蓄電装置は、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛蓄電池、アルカリ蓄電池、キャパシタ、フライホイールを用いた蓄電装置等のいずれかであってもよい。
【0018】
車両の制御システム1は、CAN(Controller Area Network)等の通信バス100に接続される複数の電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)を備える。各ECUは、例えばマイクロコンピュータ又はマイクロプロセッサユニット等を備えて構成されている。なお、各ECUの一部又は全部は、ファームウェア等の更新可能なもので構成されていてもよく、CPU(Central Processing Unit)等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0019】
また、各ECUは、マイクロコンピュータ等により実行されるプログラムや種々の演算に用いるパラメータ、検出データ、演算結果の情報等を記憶する図示しない記憶装置を備える。記憶装置は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶素子であってもよく、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、CD-ROM、ストレージ装置等の記憶装置であってもよい。
【0020】
ECUは、エンジンECU101及びトランスミッションECU103を含む。エンジンECU101は、モータジェネレータ13を含む内燃機関10を制御する。トランスミッションECU103は、トルクコンバータ21を含む自動変速機20を制御する。各ECUには、各種センサ類からの信号や通信バス100を介して送信される各種制御情報が入力される。各ECUは、これらの入力に基づいて駆動系の各種アクチュエータ類を駆動する。
【0021】
<2.制御装置(エンジンECU)>
以下、本発明の制御装置に相当するエンジンECU101の構成例を具体的に説明する。エンジンECU101は、二次電池25の蓄電率が所定の閾値を下回ったときに、モータジェネレータ13を用いて二次電池25に充電する電力を発電する強制発電制御を実行可能に構成されている。強制発電制御とは、内燃機関10を停止させることなく迅速に二次電池25の充電を行う制御をいう。例えば、車両のアクセサリスイッチがオンの状態で、内燃機関10を始動させないまま補機を使用し続けた後にイグニッションスイッチをオンにした場合や、長期間車両を停止させた後に車両の制御システム1を起動させた場合、さらには、車両の使用中であっても補機を高負荷で使用し続けた場合等に強制発電制御が実行され得る。
【0022】
図2は、エンジンECU101の構成のうち、二次電池25の強制発電制御に関連する機能構成を示すブロック図である。エンジンECU101は、蓄電率取得部111、ISG制御部113、要求トルク算出部115、発電用トルク算出部117、目標駆動トルク算出部119及びエンジン制御部121を備える。蓄電率取得部111、ISG制御部113、要求トルク算出部115、発電用トルク算出部117、目標駆動トルク算出部119及びエンジン制御部121は、マイクロコンピュータ等によるプログラムの実行により実現される機能であってよい。
【0023】
エンジンECU101には、クランク角センサ15、イグニッションスイッチ61及びセンサユニット41が接続されている。クランク角センサ15は、内燃機関10のクランクシャフト17の回転角度を検出し、検出した信号をエンジンECU101に出力する。センサユニット41は、バッテリ電圧及び電池温度を検出し、検出した信号をエンジンECU101に出力する。
【0024】
(蓄電率取得部)
蓄電率取得部111は、二次電池25を含むバッテリユニットから二次電池25の蓄電率(SOC:State of Charge)の情報を取得する。なお、二次電池25を含むバッテリユニットが、蓄電率を算出する機能を有していない場合、蓄電率取得部111が蓄電率を算出するように構成されていてもよい。蓄電率の算出方法は特に限定されるものではないが、例えば、蓄電率取得部111は、センサユニット41から出力されるバッテリ電圧及び電池温度に基づいて、二次電池25の蓄電率を算出する。
【0025】
(ISG制御部)
ISG制御部113は、モータジェネレータ13の駆動を制御する。ISG制御部113は、内燃機関10を始動させる際にモータジェネレータ13を駆動して、内燃機関10のクランクシャフト17を回転させるクランキング動作を行う。本実施形態に係る車両の制御システム1において、ISG制御部113は、少なくともアイドルストップ制御による内燃機関10の再始動時に内燃機関10のクランキング動作を行う。また、ISG制御部113は、車両の減速時に、駆動輪60の回転エネルギを利用して二次電池25に充電する電力を発電する回生制御を実行する。
【0026】
さらに、ISG制御部113は、二次電池25の蓄電率が所定の下限値を下回っている場合に、内燃機関10の出力トルクを利用して二次電池25に充電する電力を発電する強制発電制御を実行する。所定の下限値は、例えば、内燃機関10のクランキング動作を所定回数以上実行するために必要な蓄電率以上に設定される。これにより、アイドルストップ制御による内燃機関10の再始動ができなくなるおそれが低減され、アイドルストップ制御を継続させることが可能になる。
【0027】
また、ISG制御部113は、強制発電制御を実行する際、目標蓄電率を設定し、二次電池25の蓄電率が目標蓄電率に到達するまで強制発電制御を実行する。その際、本実施形態においては、ISG制御部113は、強制発電制御の実行時間が、あらかじめ設定された所定の最大目標充電時間内に完了するように目標発電電流を設定しながら強制発電制御を実行する。目標蓄電率は、例えば、二次電池25の劣化度合い又は充放電効率の少なくとも一方に基づいて設定される。また、最大目標充電時間は、例えば、モータジェネレータ13の発電効率又は充放電効率の少なくとも一方に基づいて設定される。係る最大目標充電時間は、あらかじめ設定された固定値であってもよく、強制発電制御の実行開始ごとに設定されてもよい。
【0028】
このとき、ISG制御部113は、設定した最大目標充電時間を車両の乗員に通知してもよい。例えば、ISG制御部113は、車内のインストルメントパネルやナビゲーション装置の表示装置等の表示画面に、強制発電制御の実行時間あるいは残時間を表示させてもよい。あるいは、ISG制御部113は、スピーカーを介して、音声により最大目標充電時間あるいは充電完了までの残時間を通知してもよい。その他、ISG制御部113は、適宜の手段により最大目標充電時間あるいは充電完了までの残時間を通知してもよい。
【0029】
(要求トルク算出部)
要求トルク算出部115は、車両の要求駆動力を出力するために内燃機関10から出力させる要求トルクを算出する。例えば、要求トルク算出部115は、要求加速度及びエンジン回転数に基づいて要求トルクを算出する。要求加速度は、ドライバにより操作されるアクセルペダルの操作量に基づいて求めることができる。あるいは、車両が自動運転制御を実行可能な車両である場合、要求加速度は、自動運転を司る制御装置から取得されてもよい。エンジン回転数は、クランク角センサ15から出力される信号に基づいて求めることができる。
【0030】
(発電用トルク算出部)
発電用トルク算出部117は、二次電池25に充電する電力を発電するために内燃機関10から出力させる発電用トルクを算出する。本実施形態に係る車両の制御システム1において、発電用トルク算出部117は、二次電池25の強制発電制御を実行する際に、所定の最大目標充電時間内に蓄電率を所定の目標蓄電率まで上昇させるための目標発電電流を設定するとともに、目標発電電流を生成するために必要な発電用トルクを算出する。目標蓄電率は、少なくとも強制発電制御の実行の判定に用いられる下限値よりも大きい適切な値に設定される。
【0031】
発電用トルク算出部117は、強制発電制御の実行開始時に、現在の蓄電率と目標蓄電率との差に基づいて必要充電電力を求める。また、発電用トルク算出部117は、当該必要充電電力と所定の最大目標充電時間とに基づいて目標発電電流を設定する。発電用トルク算出部117は、補機の消費電力の情報を取得して、当該補機に消費させる補機用発電電流を目標発電電流に加算して発電用トルクを求めてもよい。
【0032】
(目標駆動トルク算出部)
目標駆動トルク算出部119は、目標トルクと発電用トルクとを加算して内燃機関10の目標駆動トルクを算出する。
【0033】
(エンジン制御部)
エンジン制御部121は、目標駆動トルクに基づいて内燃機関10の駆動を制御する。具体的に、エンジン制御部121は、目標駆動トルクに基づいて内燃機関10に備えられた燃料噴射弁、スロットルバルブ、EGRバルブ(排気再循環バルブ)等の駆動量を算出し、これらの制御を行う。これにより、内燃機関10から出力されるトルクの一部が二次電池25に充電される電力の発電に用いられ、残りの一部が車両の駆動力として用いられる。
【0034】
<3.強制発電制御の具体例>
次に、エンジンECU101により実行される強制発電制御を具体的に説明する。
【0035】
(参考例)
まず、発電用トルクを一定の値に維持するとともに、モータジェネレータ13に一定の発電用トルク相当の発電をさせる強制発電制御を実行する参考例を簡単に説明する。
図3は、二次電池25の蓄電率SOCが下限値SOC_loを下回った状態の内燃機関10の始動直後に実行される参考例の強制発電制御を示す説明図であり、強制発電制御中のエンジン回転数Ne、発電用トルクTq_gen、発電電流cur_mg及び二次電池25の蓄電率SOCの推移を示している。制御システム1の温度が低い場合にモータジェネレータ13の発電効率は低下することから、
図3に示した例では、車両の制御システム1が起動してからの経過時間が長くなるにつれて目標発電電流cur_mg_αが大きくなっている。
【0036】
発電用トルクTq_genを一定の値とし、モータジェネレータ13に定電圧発電をさせる場合、モータジェネレータ13の発電電流cur_mgは、エンジン回転数Neの変動やモータジェネレータ13の発電効率の変化に伴って変動する。つまり、モータジェネレータ13の発電電流cur_mgは、ドライバの運転操作によって変動する。このため、強制発電制御を開始してから蓄電率SOCが目標蓄電率SOC_tgtに到達するまでの時間Ti_genを予測することはできない。また、強制発電制御を開始してから蓄電率が目標蓄電率SOC_tgtに到達するまでの間に、モータジェネレータ13の発電電流cur_mgが、効率よく発電を行う場合の目標発電電流cur_mg_αを下回る期間が多くなり、強制発電制御の実行時間が長くなるおそれがある。
【0037】
(実施形態の例)
次に、本実施形態に係る車両の制御システム1のエンジンECU101により実行される強制発電制御の例を説明する。
図4は、本実施形態に係る車両の制御システム1のエンジンECU101による強制発電制御を示す説明図であり、強制発電制御中のエンジン回転数Ne、発電用トルクTq_gen、発電電流cur_mg及び二次電池25の蓄電率SOCの推移を示している。また、
図4中には、目標発電電流cur_mg_αが示されるとともに、目標発電電流cur_mg_αを発電させて二次電池25を充電した場合の基準蓄電率変化線SOC_αが示されている。なお、
図4に示す基準蓄電率変化線SOC_αは、あくまでも一例にすぎず、基準蓄電率変化線SOC_αは、目標発電電流cur_mg_αの設定の仕方により様々に変化し得る。
【0038】
本実施形態において、エンジンECU101は、強制発電制御の実行開始時に、現在の蓄電率SOC_stと目標蓄電率SOC_tgtとの差ΔSOCに基づいて必要充電電力を求め、求められた必要充電電力と所定の最大目標充電時間Ti_tgtとに基づいて目標発電電流cur_mg_αを設定する。必要充電電力は、現在の蓄電率SOC_stと目標蓄電率SOS_tgtとの差ΔSOC(%)に、二次電池25の100%充電容量を乗じることにより求めることができる。この必要充電電力を、二次電池25の充電電圧及び最大目標充電時間Ti_tgtで割ることによって目標発電電流cur_mg_αを算出することができる。
【0039】
図4に示した例では、モータジェネレータ13の発電効率及び二次電池25の充電効率を考慮して目標発電電流cur_mg_αが設定されている。
図4に示した例は内燃機関10の始動直後に強制発電制御を実行する例であり、制御システム1の温度は低温の状態から上昇する。これに伴って、モータジェネレータ13の発電効率及び二次電池25の充電効率も徐々に上昇する。なお、フィードバック制御により補正されない状態での目標発電電流cur_mg_αは、モータジェネレータ13の発電効率及び二次電池25の充電効率を考慮することなく、必要充電電力を、二次電池25の充電電圧及び最大目標充電時間Ti_tgtで割ることによって求められる一定値であってもよい。
【0040】
モータジェネレータ13の発電効率及び二次電池25の充電効率は、ともに温度に依存する。このため、モータジェネレータ13の目標発電電流cur_mg_αも温度上昇とともに漸増するように設定されている。例えば、センサユニット41から出力されるバッテリ温度T_batと二次電池25の充電効率η_batあるいはモータジェネレータ13の発電効率η_mgとの関係を示すマップ情報をあらかじめ格納しておき、当該マップ情報を参照することにより、目標発電電流cur_mg_αを設定することができる。基準蓄電率変化線SOC_αは、最大目標充電時間Ti_tgtの経過時に二次電池25の蓄電率SOCが目標蓄電率SOC_tgtとなるように、目標発電電流cur_mg_αにしたがってモータジェネレータ13に発電させた場合の蓄電率SOCの推移を示している。
【0041】
ここで、本実施形態において発電用トルク算出部117は、基準蓄電率変化線SOC_αに応じた基準蓄電率SOC_Xと、実際の蓄電率SOC_actとの差に基づいて、発電用トルクを逐次フィードバック制御する。具体的に、発電用トルク算出部117は、実際の蓄電率SOC_actが基準蓄電率SOC_Xより下回った場合、基準蓄電率SOC_Xと実際の蓄電率SOC_actとの差に基づいて発電用トルクをフィードバック制御する。これにより、実際の蓄電率SOC_actが基準蓄電率SOC_Xに追いつくまでの間、発電電流cur_mgは目標発電電流cur_mg_αよりも増大され、最大目標充電時間内に二次電池25の蓄電率SOCが目標蓄電率SOC_tgtに到達するようになる。
【0042】
図5は、
図4中に示す蓄電率SOCの推移のうち点線で囲んだ領域Oを拡大して示す説明図である。発電用トルク算出部117は、所定の演算サイクルTi_1~Ti_4ごとに基準蓄電率変化線SOC_αに応じた基準蓄電率SOC_X_1(SOC_X_2,SOC_X_3,SOC_X_4)と、実際の蓄電率SOC_act_1(SOC_act_2,SOC_act_3,SOC_act_4)との差を求め、この差に基づくPID制御を行い、発電用トルクを算出する。所定の演算サイクルは、例えば、エンジンECU101の処理能力により規定される演算サイクルであってもよい。これにより、二次電池25の蓄電率SOCを基準蓄電率変化線SOC_αに沿って効率よく目標蓄電率SOC_tgtまで上昇させることができる。
【0043】
なお、発電用トルク算出部117は、実際の蓄電率SOC_actが基準蓄電率SOC_Xを下回った場合に、実際の蓄電率SOC_actと基準蓄電率SOC_Xとの差に基づいて発電用トルクをフィードバック制御するが、実際の蓄電率SOC_actが基準蓄電率SOC_Xを上回っている場合には最大目標充電時間よりも早く充電が完了することも考えられるため、補正は行わないように設定されている。
【0044】
<4.動作例>
次に、本実施形態に係る車両の制御システム1の制御装置(エンジンECU)101による強制充電制御の動作例を説明する。
【0045】
図6は、エンジンECU101の処理動作を示すフローチャートである。
まず、エンジンECU101の蓄電率取得部111は、二次電池25に設けられたバッテリコントローラにより算出された二次電池25の蓄電率SOCの情報を取得する(ステップS11)。蓄電率取得部111は、二次電池25に設けられたセンサユニット41から出力される情報に基づいて蓄電率SOCを算出してもよい。
【0046】
次いで、エンジンECU101のISG制御部113は、蓄電率取得部111が取得した二次電池25の蓄電率SOCが所定の下限値SOC_loを下回っているか否かを判別する(ステップS13)。下限値SOC_loは、例えば、アイドルストップ制御による内燃機関10の再始動時のクランキング動作を実行可能な蓄電率以上に設定される。つまり、アイドルストップ制御による内燃機関10の自動停止後の内燃機関10の再始動が不可能とならないように、二次電池25の蓄電率SOCの下限値SOC_loが設定される。
【0047】
二次電池25の蓄電率SOCが下限値SOC_lo以上の場合(S13/No)、ISG制御部113は、蓄電率SOCの算出(ステップS11)及び蓄電率SOCが下限値SOC_lo以上であるかの判別(ステップS13)を繰り返す。一方、二次電池25の蓄電率SOCが下限値SOC_loを下回った場合(S13/Yes)、ISG制御部113は、強制発電制御による目標蓄電率SOC_tgtを設定する(ステップS15)。上述のとおり、目標蓄電率SOC_tgtは、例えば、二次電池25の劣化度合い又は充放電効率の少なくとも一方に基づいて設定される。
【0048】
次いで、エンジンECU101の発電用トルク算出部117は、最大目標充電時間Ti_tgt内に二次電池25の蓄電率SOCを目標蓄電率SOC_tgtまで上昇させるために、最大目標充電時間Ti_tgtに応じて目標発電電流cur_mg_αを設定する(ステップS17)。上述のとおり、最大目標充電時間は、例えば、モータジェネレータ13の発電効率又は充放電効率の少なくとも一方に基づいて設定される。係る最大目標充電時間は、あらかじめ設定された固定値であってもよく、強制発電制御の実行開始ごとに設定されてもよい。また、目標発電電流cur_mg_αは、例えば、現在の蓄電率SOC_stと目標蓄電率SOC_tgtとの差ΔSOCに基づいて求められる必要充電電力を、二次電池25の充電電圧及び最大目標充電時間Ti_tgtで割ることによって算出することができる。
【0049】
目標発電電流cur_mg_αは、一定の値であってもよく、二次電池25の充電効率やモータジェネレータ13の発電効率に影響を与える温度に基づいて設定されてもよい。本実施形態においては、上述のとおり、モータジェネレータ13の発電効率及び二次電池25の充電効率を考慮して、時間の経過に伴って目標発電電流cur_mg_αの値が漸増するように設定される。温度に依存するモータジェネレータ13の発電効率マップ及び温度に依存する二次電池25の充電効率マップは、あらかじめ作成されてエンジンECU101の図示しない記憶部に記憶されており、発電用トルク算出部117は、これらのマップ情報を参照して目標発電電流cur_mg_αを設定する。
【0050】
次いで、発電用トルク算出部117は、モータジェネレータ13を用いて二次電池25に充電する電力を発電するために内燃機関10に出力させる発電用トルクを算出する(ステップS19)。例えば、発電用トルクTq_genは、目標発電電流cur_mg_αと、温度に依存するモータジェネレータ13の発電効率マップと、温度に依存する二次電池25の充電効率マップと、車両に設けられた補機の消費電力とに基づいて算出することができる。これ以外にも、内燃機関10や二次電池25、モータジェネレータ13、ドライバの要求加速度等に基づいて、発電用トルクに制限をかけてもよい。
【0051】
次いで、目標駆動トルク算出部119は、発電用トルク算出部117が算出した発電用トルクTq_genと、要求トルク算出部115が車両の要求加速度に基づいて算出した要求トルクTq_vehとを足して内燃機関10の目標駆動トルクTq_iceを算出する(ステップS21)。
【0052】
次いで、エンジン制御部121は、目標駆動トルク算出部119が算出した目標駆動トルクTq_iceに基づいて内燃機関10の駆動を制御するとともに、ISG制御部113は、発電用トルク算出部117が算出した発電用トルクに相当する発電が行われるようにモータジェネレータ13の駆動を制御する(ステップS23)。これにより、モータジェネレータ13による発電電力が二次電池25に充電される。このとき、強制発電制御の開始時において、ISG制御部113は、最大目標充電時間あるいは充電完了までの残時間を車両の乗員に通知してもよい。
【0053】
次いで、発電用トルク算出部117は、二次電池25の蓄電率SOCが基準蓄電率変化線SOC_αに沿って上昇しているか否かを判別する(ステップS25)。発電用トルク算出部117は、例えば、エンジンECU101の処理能力により規定される演算サイクルごとにステップS25の判別を行う。二次電池25の蓄電率SOCが基準蓄電率変化線SOC_αに沿って上昇していない場合(S25/No)、つまり、基準蓄電率変化線SOC_α上の基準蓄電率SOC_Xから二次電池25の実際の蓄電率SOC_actを引いた差の値が所定値以上となった場合、発電用トルク算出部117は、基準蓄電率変化線SOC_α上の基準蓄電率SOC_Xと実際の蓄電率SOC_actとの差に基づいてPID演算を行う(ステップS29)。次いで、発電用トルク算出部117は、ステップS19に戻り、PID演算の結果を反映させて発電用トルクTq_genを算出する。発電用トルク算出部117は、基準蓄電率SOC_Xと実際の蓄電率SOC_actとの差に基づいて発電用トルクTq_genの補正係数を設定し、設定した補正係数を用いて発電用トルクTq_genを算出してもよい。
【0054】
一方、二次電池25の蓄電率SOCが基準蓄電率変化線SOC_αに沿って、あるいは、基準蓄電率変化線SOC_αを上回った状態で上昇している場合(S25/Yes)、つまり、基準蓄電率変化線SOC_α上の基準蓄電率SOC_Xから二次電池25の実際の蓄電率SOCを引いた差の値が所定値未満である場合、発電用トルク算出部117は、二次電池25の蓄電率SOCが、目標蓄電率SOC_tgtに到達したか否かを判別する(ステップS27)。二次電池25の蓄電率SOCが目標蓄電率SOC_tgtに到達していない場合(S27/No)、発電用トルク算出部117は、ステップS25に戻り、二次電池25の蓄電率SOCが基準蓄電率変化線SOC_αに沿って、あるいは、基準蓄電率変化線SOC_αを上回った状態で上昇しているか否かの判別を繰り返す。
【0055】
一方、二次電池25の蓄電率SOCが目標蓄電率SOC_tgtに到達した場合(S27/Yes)、ISG制御部113及び発電用トルク算出部117は、強制発電制御に関連する演算を終了する(ステップS31)。これにより、強制発電制御が終了する。
【0056】
なお、ISG制御部113が、最大目標充電時間あるいは充電完了までの残時間を車両の乗員に通知する場合、実際の蓄電率SOC_actが基準蓄電率SOC_Xを上回っているときには、すでに算出されている最大目標充電時間Ti_tgtを補正し、最大目標充電時間あるいは充電完了までの残時間を通知してもよい。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る車両の制御システム1によれば、二次電池25の蓄電率SOCが低下して下限値SOC_loを下回り強制発電制御を実行する場合に、所定の最大目標充電時間Ti_tgt内に強制発電制御を完了させることができる。その際に、制御装置(エンジンECU101)は、最大目標充電時間Ti_tgtに応じて、蓄電率SOCを目標蓄電率SOC_tgtまで上昇させるための目標発電電流cur_mg_αを設定し、目標発電電流cur_mg_αを生成するために必要な内燃機関10の発電用トルクTq_genを求める。そして、制御装置は、この発電用トルクTq_genに基づいて内燃機関10及びモータジェネレータ13の駆動を制御する。このため、アイドルストップ制御による内燃機関10の停止が禁止される状態が長時間になったり内燃機関10の出力トルクが過度に増大したりしてドライバビリティや商品性が低下することを抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態に係る車両の制御システム1において、制御装置は、モータジェネレータ13の発電効率及び二次電池25の充電効率を考慮して目標発電電流cur_mg_αを設定する。このため、発電効率のよい駆動状態でモータジェネレータ13による発電を行いながら、二次電池25を充電させることができ、エネルギ効率を向上させることができる。
【0059】
また、本実施形態に係る車両の制御システム1において、制御装置は、目標発電電流にしたがって二次電池25を充電した場合の基準蓄電率変化線SOC_α上の基準蓄電率SOC_Xと、実際の蓄電率SOC_actとの差に基づいて、発電用トルクTq_genのPID制御を実行する。このため、発電効率が高い状態を維持しつつ、最大目標充電時間Ti_tgt内で二次電池25の蓄電率SOCを目標蓄電率SOC_tgtに上昇させることができる。
【0060】
また、本実施形態に係る車両の制御システム1において、制御装置は、設定した最大目標充電時間Ti_tgtあるいは充電完了までの残時間を車両の乗員に通知してもよい。これにより、乗員は、強制発電制御が終了する時期を知ることができ、アイドルストップ制御による内燃機関10の自動停止が行われない場合であっても、乗員が違和感を持たないようにすることができる。
【0061】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0062】
例えば、上記実施形態に係る車両の制御システム1は、車両の駆動源として内燃機関10を備えた車両の制御システムであったが、本発明は係る例に限定されない。車両の制御システムは、車両の駆動源として内燃機関及び駆動用モータを備えたハイブリッド車両の制御システムであってもよい。この場合、アイドルストップ制御による内燃機関10の自動停止後に、駆動用モータによって車両を再発進させるのであれば、強制発電制御により、駆動用モータに供給される電力の供給源となる二次電池に充電が行われる。
【0063】
また、上記実施形態に係る車両の制御システム1では、エンジンECU101が、強制発電制御を実行する際の最大目標充電時間、目標発電電流及び発電用トルクを算出する機能を有していたが、本発明は係る例に限定されない。エンジンECU101や、モータジェネレータ13又は駆動用モータの制御装置を統合的に制御する制御装置が当該機能を有していてもよい。
【0064】
また、上記実施形態に係る車両の制御システム1は、自動変速機を備えた制御システムの例であったが、本発明は係る例に限定されない。本発明は、マニュアル式の変速機(Manual Transmission)を備えた車両の制御システム1に適用することもできる。