(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】セシウムおよびテクネチウムを分離するための方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/32 20060101AFI20230620BHJP
G21F 9/06 20060101ALI20230620BHJP
G21F 9/30 20060101ALI20230620BHJP
G21F 9/02 20060101ALI20230620BHJP
G21F 9/08 20060101ALI20230620BHJP
G21F 9/10 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
G21F9/32 Z
G21F9/06 581Z
G21F9/30 561F
G21F9/02 Z
G21F9/06 551Z
G21F9/08 511F
G21F9/10 B
(21)【出願番号】P 2020563815
(86)(22)【出願日】2019-02-05
(86)【国際出願番号】 EP2019052701
(87)【国際公開番号】W WO2019149951
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-11-29
(31)【優先権主張番号】102018102510.6
(32)【優先日】2018-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】523127844
【氏名又は名称】フランツ・ストロマー
(73)【特許権者】
【識別番号】523127855
【氏名又は名称】マルコ・クリプフェル
(73)【特許権者】
【識別番号】523127866
【氏名又は名称】セバスティアン・バール
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【氏名又は名称】長谷川 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100218800
【氏名又は名称】河内 亮
(72)【発明者】
【氏名】フランツ・ストロマー
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・クリプフェル
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン・バール
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-329692(JP,A)
【文献】米国特許第05787353(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性物質の混合物からセシウムおよびテクネチウム同位体を分離するための方法であって、過テクネチウム酸セシウム(CsTcO
4)の昇華を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
昇華が、ガラス化、焼結、乾燥、燃焼、セメンティングまたは焼成プラントを含む処理プラントの排気ガス流中で進行する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
核燃料の再処理からの、もしくは再処理プラントからの残渣、またはHAWCもしくは洗浄溶液からの他の残渣、または物質の他の混合物が、昇華の出発物質として使用される、請求項1および/または2に記載の方法。
【請求項4】
昇華した過テクネチウム酸セシウムが、固化を用いて気相から堆積され、次いで分離される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
固化が、並列および/または直列で接続され得る1つまたは複数のガス冷却器で行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
堆積した過テクネチウム酸セシウムが、使用された装置からその場で分離される、または、過テクネチウム酸セシウムが分離される前に、使用された装置が別の場所に移送される、請求項4および/または5に記載の方法。
【請求項7】
過テクネチウム酸セシウムが、水を含む無機もしくは有機溶媒またはそれらの混合物を用いて溶解することにより分離される、請求項4から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
さらなるステップにおいて、過テクネチウム酸セシウムが還元され、この還元の間、過テクネチウム酸が二酸化テクネチウムに変換され、次いで分離される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
水溶液中での過テクネチウム酸セシウムの還元が、LiAlH
4、NaBH
4、アルカリ金属水素化物、ヒドラジン、一酸化炭素、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ギ酸、またはシュウ酸から選択される還元剤を用いて行われ、形成された二酸化テクネチウムは固体として分離される一方、セシウムは水溶液中に残留する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
水溶液が、蒸発により濃縮され、セシウムが、固体セシウム塩の形態で得られる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
放射性物質の混合物からセシウムおよびテクネチウム同位体を分離するためのデバイスであって、並列および/または直列で接続された複数のガス冷却器を備え
、前記デバイスが、直列で接続された少なくとも3つのガス冷却器をそれぞれ有する少なくとも2つのガス冷却ユニットを備え、少なくとも2つのガス冷却ユニットが並列で接続されており、前記デバイスが、過テクネチウム酸セシウムを分離するための、ガラス化、焼結、乾燥、燃焼、セメンティングまたは焼成プラントを含む処理プラントの排気ガス流に統合
されていることを特徴とするデバイス。
【請求項12】
直列で接続された3つのガス冷却器をそれぞれ有する2つのガス冷却ユニットを備え、2つのガス冷却ユニットは、排気ガス流から過テクネチウム酸セシウムを堆積させるため、および分離された過テクネチウム酸セシウムを得るために交互に使用され、したがって連続操作を可能にするように並列で接続されていることを特徴とする、請求項
11に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質の混合物からセシウムおよびテクネチウムを分離するための方法、ならびにその方法を行うためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
民間または軍事的使用のための反応炉からの使用済み燃料元素が再処理される場合、高放射性廃棄物の溶液が生じるが(高レベル放射性廃液、HAWC;高レベル放射性廃棄物、HLWまたはHLLWおよびHAW)、これらの溶液は、一般に硝酸溶液に溶解した核分裂生成物を含有する。現行の先行技術によれば、この廃棄物を最終処分に適した形態に調整する1つの手法は、それをガラスマトリックス中に安全に一体化すること(ガラス化)である。濃縮形態の廃棄物は溶融ガラスに注ぎ込まれ、次いで、形成される廃棄物ガラス中に安全に固定される。ステンレススチールキャニスタ内に保存されると、この形態の高放射性廃棄物は、深い地質学的岩石層への最終処分に好適となる。
【0003】
1年未満の半減期を有する短寿命のガス状核分裂生成物(例えばヨウ素-131)は、再処理および貯蔵期間中に完全に分解またはガス放出するため、これらの核種は最終処分および放射能活性においてはほとんど役割を果たさない。10,000年を超える半減期を有する極めて長寿命の核種、例えばテクネチウム-99(Tc-99、半減期211,500年)は、それらの放射能が緩やかにしか崩壊しないため、貯蔵所でのガラスモールドの安全な長期的格納を必要とする。しかしながら、これらの核種は低い崩壊速度でのみ崩壊するため、HAWC溶液およびモールドの全放射能に対するそれらの寄与はわずかである。一方、極めて重要なのは、それぞれ30年および28.9年の半減期を有する核種セシウム-137(Cs-137)およびストロンチウム-90(Sr-90)であり、これらは比較的急速に崩壊し、したがってHAWC溶液およびガラスモールドの全放射能に著しく寄与する。
【0004】
セシウムの核種(すなわち、例えばCs-137、Cs-133、Cs-134、Cs-135)はまた、ある特定の条件下で、核分裂生成物Tc-99と共に過テクネチウム酸セシウム(CsTcO4)を形成する特性を有する。これは主に、再処理プラント内で、硝酸を用いた溶液中での酸化条件下で生じる。しかしながら、過テクネチウム酸セシウムは、その高い水溶性および蒸気中での高い揮発性に起因して、最終処分に関して極めて問題となると考えられている。これはまた、強い酸化特性および高い熱揮発性を有する。例えば、HAWC溶液がそれに供給された場合、過テクネチウム酸セシウムは、ガラス化プロセス中に不必要にガラス溶融物から揮発し、排気システムの冷えた領域に堆積し、そのようにして排気システムを部分的に詰まらせることが観察されている。したがって、一般に、ガラス化プラントにおける過テクネチウム酸セシウムの形成を防止するための試みがなされている。
【0005】
ガラス化プラントに堆積した過テクネチウム酸セシウムの問題はこれまで、通常は、例えば600℃超のガラス溶融温度でのHAWC溶液のガラス化の間に形成され、排気システムに堆積した過テクネチウム酸セシウムを、機械的に、または水/酸での溶解により除去することによって対処されており、したがって逃げたセシウムおよびテクネチウム核種はガラス化プロセスに返される。しかしながら、これらの対策はしばしば不十分な結果をもたらし、その有効性は通常短期間である。
【0006】
しかしながら、過テクネチウム酸セシウム含量が増大したそれらの溶液または固体を再び加えることは、追加のセシウム濃度の上昇に伴う高い揮発性に起因してガラス化プラントの排気システム内の堆積物の増大ももたらされるため、持続可能な方法では問題を解決しない。したがって、ほとんどのガラス化プラントにおいて、連続的なガラス化操作は排気システムにおけるセシウムの長期蓄積をもたらす。平均して全セシウムの約15%および全テクネチウム-99の少なくとも同程度が、ガラス生成物に追加されないと推測される。原則的に、この技術的問題は、世界中の全HAWCガラス化プラントについて存在する。さらに、過テクネチウム酸塩(すなわち、酸化数VIIのテクネチウム化合物)はまた、モールドの最終的なガラス中でも極めて問題となる。すなわち、より低い酸化数(例えばTcO2では酸化数IV)とは対照的に、それらは水によって凝固したガラス融解物から容易に浸出する。
【0007】
DE2609223は、放射性過テクネチウム酸塩の水溶液を生成するための方法を説明している。テクネチウムは、カラムを介してモリブデン-99から分離されるが、セシウムについては言及されていない。
【0008】
WO97/37995は、放射性廃棄物から過テクネチウム酸塩を分離するための方法を説明している。しかしながら、分離は、カリックスピロールおよび他の大環状分子等の錯化剤を使用して達成される。
【0009】
WO01/95342は、放射性廃棄物を処理するための方法であって、ヒドラジンによる酸化テクネチウム化合物の還元を含む方法に関する。しかしながら、この文献は、過テクネチウム酸セシウムの昇華はもちろん、セシウムおよびテクネチウムの分離を記載していない。
【0010】
US5,185,104は、500℃~3000℃の間の温度で放射性廃棄物を処理するための方法を記載している。様々な酸化物質が、真空蒸留を使用して分画される。過テクネチウム酸セシウムの昇華は記載されておらず、また単離された過テクネチウム酸セシウムを介したセシウムおよびテクネチウム核種の分離も記載されていない。
【発明の概要】
【0011】
したがって、上述の問題を確実に克服する、放射性廃棄物の改善された調整および最終処分が依然として必要とされている。
【0012】
したがって、本発明の根本的な目的は、放射性廃棄物材料を再処理するための改善された方法を提供することである。
【0013】
この目的は、驚くべきことに、後述の特許請求の範囲に従う本発明による方法および本発明によるデバイスを使用して達成された。デバイスは、好ましくは方法を行うのに適しており、適宜それに適合される。
【0014】
驚くべきことに、放射性廃棄物からのセシウムおよびテクネチウム核種の理想的な完全分離によって、残留廃棄物の改善された最終処分が可能になることが判明した。また、驚くべきことに、分離された核種は、様々な技術分野において、例えば医療技術における放射線源として、および中性子バリアとして再使用可能であることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の1つの好ましい実施形態による、直列で接続された3つのガス冷却器のガス冷却ユニットを示す図である。
【
図2】直列で接続された3つのガス冷却器(冷却ゾーン)をそれぞれ有する2つのガス冷却ユニットを含む、本発明による特に好ましいガス冷却器配置を示す図である。2つのガス冷却ユニットは、例えばガラス化デバイスの排気ガス流において、a)排気ガス流から過テクネチウム酸セシウムを堆積させるため、およびb)堆積した過テクネチウム酸セシウムを得るため、に交互に使用され、したがって連続操作を可能にするように並列で接続されている。
【
図3】本発明の1つの好ましい実施形態による、核燃料の再処理からのもしくはガラス化プロセスからの乾燥残渣、およびHAWC溶液からの他の乾燥残渣、またはブラスト剤(blasting agents)を用いて提供される他の固体から過テクネチウム酸セシウムを分離するために使用され得る槽を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、核ガラス化プラントからの、または再処理プラントからの排気ガス流、および放射性廃棄物、特にHAWC溶液が処理され、最終処分用に調製される、または技術的な目的に使用されるそのようなプラントの残渣から、セシウム同位体(特にセシウム-137)およびテクネチウム同位体(特にテクネチウム-99)を分離するための改善された方法を提供する。本発明による方法の目的は、処分される廃棄物の活性を効果的に低減すること、分離された核種を得ること、ならびにそれらを経済的および技術的に使用することである。
【0017】
放射性廃棄物からの「セシウムおよびテクネチウムの分離」という語句は、廃棄物から2つの核種を一緒に得ること(過テクネチウム酸セシウムとしての単離)、および2つの元素の互いからの好ましいその後の分離(分離された元素の単離)の両方を包含する。あるいは、方法はまた、放射性廃棄物からセシウムおよびテクネチウムを得るための方法と呼ぶことができ、得られた物質は、過テクネチウム酸セシウムの形態であってもよく、または2つの別個の元素、セシウムおよびテクネチウムの形態であってもよい。2つの元素が別個に得られる場合、それらは最終的に好ましくは固体の二酸化テクネチウムおよびセシウム塩(好ましくはCsClまたはCs2SO4)として存在し、これらは例えば医療技術において再使用可能である。いずれの場合も、本発明には、方法が過テクネチウム酸セシウム(CsTcO4)の標的化された昇華を含むこと(すなわち、昇華を使用して放射性廃棄物から2つの元素を持続可能に分離する、または得ること)が必須である。
【0018】
本発明による方法の1つの必須のステップは、昇華を用いて過テクネチウム酸セシウムを得ること(ステップ1)である。
【0019】
本発明によれば、この昇華は、再処理プラントの排気ガス流中で直接、または核燃料の再処理からもしくはガラス化プロセスからの固体残渣(例えば、乾燥、ペースト、もしくは湿った形態)、およびHAWC溶液からの他の固体残渣、または他の固体から生じ得る(たとえそれらが他の物質との混合物中に、または湿った状態で存在するとしても)。本発明による放射性物質の混合物に適した再処理プラントは、例えば、(従来の)ガラス化プラント、焼結プラント、乾燥プラント、燃焼プラント、セメンティング(cementing)プラントおよび焼成プラントから選択される。例えばガラス化プラントにおいて行われる場合、排気ガス流からの過テクネチウム酸セシウムは、固化(気相からの堆積)を使用した好適な冷却手段を用いて堆積され、次いで分離される。他の処理プラントにおけるこの方法の実行は、それに応じて行われる。乾燥残渣が使用される場合、それらは好適な槽内で(好ましくは減圧下で)加熱され、昇華した過テクネチウム酸セシウムが冷えた表面に再固化し(気相から堆積し)、次いでそこから分離される。両方の場合において、過テクネチウム酸セシウムは、容易に得ることができる極めて純粋な固体として堆積する。
【0020】
昇華がガラス化プラントの排気ガス流中で直接行われる場合、すなわち、本発明による方法がガラス化方法に含まれる場合、排気ガス流の下流に接続されたガス冷却器を用いて高温の排気ガス流中に存在する過テクネチウム酸セシウムを除去することが好ましい(好ましくは周囲圧力下であるが、減圧下でもまた可能である)。この目的のために、高温のガラス化排気ガスは、好ましくは、ガス冷却器の冷却コイル(「冷却フィンガ」としても知られる)上の空気流中に流され、過テクネチウム酸セシウムは排気ガス流中に拡散してガス冷却器に進入し、そこで化学的に純粋な結晶形態で堆積する。ガス冷却器は、直列で接続されてもよく(例えば多段階排気ガス冷却器またはガス冷却ユニット)、または並列で接続されてもよく、これは過テクネチウム酸セシウム分離の効率をさらに増大させる。
【0021】
1つの好ましい方法は、直列で接続された2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上のガス冷却器を有するガス冷却ユニットを使用することを含む。特に好ましいのは、直列で接続された3つの冷却ゾーンに対応する3つのガス冷却器を有するガス冷却ユニットを使用することである。そのようなガス冷却ユニットを、
図1に示す。互いに並列で接続された2つ、3つまたは4つ(好ましくは2つ)のそのようなガス冷却ユニットの使用が、極めて特に好ましい。ゾーンの温度制御は、ガラス化プロセスおよびガラス化プラントに大きく依存する。1つの好ましい実施形態において、冷却ゾーンの温度は、ガス冷却器の入口領域における約600℃から出口領域における約250℃までの範囲である。
【0022】
最も好ましい方法は、直列で接続された3つのガス冷却器(冷却ゾーン)をそれぞれ有する2つのガス冷却ユニットを使用することを含み、2つのガス冷却ユニットは、a)排気ガス流から過テクネチウム酸セシウムを堆積させるため、およびb)堆積した過テクネチウム酸セシウムを得るために交互に使用され、したがって連続操作を可能にするように並列で接続されている。「交互」とは、排気ガス流からの過テクネチウム酸セシウムが単位時間当たりに2つのガス冷却ユニットのうちの1つに堆積し、その間に他方のガス冷却ユニット内に以前に堆積した過テクネチウム酸セシウムがそこで得られることを意味するように解釈される。清掃後、2つのユニットのタスクは逆転し、したがって方法は、冷却ユニットの全ての獲得/清掃によりダウンタイムを引き起こすことなく、全体として連続的に行われる。そのような特に好ましい方法を、
図2に示す。
【0023】
ガラス化炉の別法として、本発明による方法はまた、核燃料の再処理からの、または他の再処理方法(例えば焼結等)からの残渣、およびHAWC溶液からの一般的残渣、または混合物中に存在し過テクネチウム酸セシウムを含む他の固体と共に使用され得る。この場合、残渣は好ましくは槽(例えばボイラ)内に収集され、CsTcO
4は、好適な温度(および好ましくは減圧下)で加熱することにより気相に変換され、冷えたガス冷却器表面または冷却フィンガに、ガラス化炉の排気ガス流における実施形態でのものと同様の形態で堆積する。好適な槽を、
図3に示す。
【0024】
使用される温度は、好ましくは500℃未満の範囲内、好ましくは100℃~500℃、特に好ましくは150℃~450℃、極めて特に好ましくは300℃~400℃の範囲内である。例えば10-8~10-10bar、好ましくは10-9~10-10barの範囲内の減圧が好ましくは適用される。これは、過テクネチウム酸セシウムの昇華温度を著しく低下させ、それによってプロセスはより迅速、より容易、およびより経済的となる。
【0025】
本発明によれば、方法は、堆積した過テクネチウム酸セシウムが使用された槽からその場で(すなわち冷却フィンガ/冷却コイルから)分離されるように、または過テクネチウム酸セシウムが堆積した使用された槽の一部(すなわち冷却フィンガ/冷却コイル)が槽から取り外されてから過テクネチウム酸セシウムが分離され、別の適した場所に移送され、次いで過テクネチウム酸セシウムが分離される、および得られるように行われてもよい。分離は、両方の場合において、機械的除去を使用して、または好適な溶媒もしくは水で濯ぐことにより達成され得る。これは、残留廃棄物からのさらにより効率的および経済的な分離をもたらす。
【0026】
本発明による方法の上述の実施形態のいずれかに従って堆積した純粋な過テクネチウム酸セシウムは、好ましくは、水を含む無機または有機溶媒を用いて溶解することにより分離される。好適な無機溶媒は、液体アンモニアおよび二酸化炭素である。好適な有機溶媒は、不活性溶媒、例えばハロゲン化炭化水素である。好ましくは純水が使用される。その根拠は、40℃で8.79g/lの過テクネチウム酸セシウムの水に対する溶解度である。溶媒の温度は、好ましくは20℃~60℃、好ましくは30℃~50℃である(ステップ2)。次いで、ガス冷却器(すなわち冷却フィンガ)は、分離プロセスに再使用され得る。
【0027】
このようにして、過テクネチウム酸セシウム水溶液が得られ、これはさらなる処理に供され得る。別法として、分離された過テクネチウム酸セシウムは、過テクネチウム酸セシウム水溶液として単離されず、代わりに、分離された過テクネチウム酸セシウムを用いたさらなる処理が直接行われる(例えば冷却フィンガ上で)。
【0028】
本発明による過テクネチウム酸セシウムの好ましく行われる処理は、以下の2つの任意選択的ステップ(ステップ3およびステップ4)を含む。テクネチウムは、ステップ3においてセシウムから化学的に分離され、これは好ましくは本発明に従って行われる。この目的のために、過テクネチウム酸セシウムは、水溶液中または非水溶液中(好ましくは水溶液中)で還元され、この還元において、過テクネチウム酸塩は、二酸化テクネチウム(TcO2・1~2H2O)に変換され、これが固体として溶液から沈殿する一方で、セシウムは水溶液中に残留する。好適な還元剤は、原則的に、過テクネチウム酸塩を還元することができる全ての物質、例えばLiAlH4、NaBH4、およびアルカリ金属水素化物等である。特に好適なのは、その生成物が反応後の溶液中にいかなる追加の元素も導入しない還元剤、例えばヒドラジン、一酸化炭素、および有機還元剤、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ギ酸、シュウ酸等である。ヒドラジンが特に好ましい。
【0029】
固体として沈殿した二酸化テクネチウムは、次いで、好ましくは濾過により分離されてもよい。濾液が中和された後(例えば硫酸または塩酸で)、セシウムは水相中に溶解したセシウム塩として(例えば硫酸セシウムまたは塩化セシウムとして)存在する。このようにして、セシウムおよびテクネチウムは、湿式化学法を使用して効率的に分離される。有機溶媒による水相からの抽出に基づくセシウム-テクネチウム分離は、従来、シクロヘキサノン中のトリ-n-オクチルリン酸化物を使用して行われる。しかしながら、これらの反応は、テクネチウムを有機相から水相に戻すために、溶媒のさらなる分離または水溶液による有機相の再抽出を常に必要とする。有機溶媒からのこの再抽出は、非常に複雑である。
【0030】
任意選択的なその後のステップ4において、水相は蒸発により濃縮され(例えば真空下、30℃~50℃の範囲内の温度で)、セシウムが固体セシウム塩の形態で得られ、これはさらなる精製および処理に供されてもよい。塩は、好ましくは、真空中、80℃~100℃の範囲内の温度(例えば90℃)で無水塩に変換されてもよい。特に好ましいのは、硫酸セシウムまたは塩化セシウムであり、これらは、無水形態において、特性評価および活性測定後にセシウム-137放射線源の生成のために直接医薬品に使用され得る。
【0031】
濾過された二酸化テクネチウムは、接着性のセシウム塩が取り除かれ、乾燥される。これは、真空中高温(200℃超、例えば300℃)でその無水形態に変換され得る。粉末状の無水二酸化テクネチウムは、次いでペレットに圧縮されてもよく、例えば反応炉内での変換のために送られてもよく、または核貯蔵所内に放出されてもよい。
【0032】
本発明による方法は、特に先行技術からの従来の方法と比較して、以下の利点を有する。
【0033】
過テクネチウム酸セシウムの分離により、ガラス化プラントの排気システム内への過テクネチウム酸セシウムの進入を最小限とし、したがって多くのガラス化プラントの長年の技術的問題を解決することが可能となる。これによって、稼働中のガラス化プラントを維持および操作することがより容易になり、排気システム内に残留する放射性残渣がより少なくなる。本発明による方法はまた、乾燥または固体残渣が、例えば過テクネチウム酸セシウムのHAWCまたは洗浄溶液を含まないことを可能にする。これによって、この廃棄物の処理および最終処分はより経済的に、また環境に優しくなる。さらに、得られるセシウムが化学的に純粋である(例えば無水硫酸セシウムまたは塩化セシウムとして)ため、本発明による方法により、セシウム同位体は、医療または技術的用途のためのセシウム放射線源の製造における経済的使用に供され得る。
【0034】
また、本発明による方法によって、ウランおよびプルトニウムの核分裂の他の核分裂生成物からセシウム同位体およびテクネチウム同位体を分離することが可能になる。その結果、核分裂中に生成された放射性廃棄物の残留活性、ひいては核分裂における廃棄物の量が、大幅に低減される。したがって、核分裂の平和的または軍事的使用からの廃棄物の中期活性の最大41%を、商業的使用に戻すことができる。最終的には、本発明による方法によって、放射性廃棄物(例えばHAWC)から長寿命核分裂材料の活性の最大81%を占めるテクネチウム-99を分離することも可能となる。化学的に安定な無水二酸化テクネチウムは、変換に利用可能とすることができ、またはその水に不溶性の特性に起因して、最終処分のために深い地質学的岩石層に直接送ることができる。方法は、説明された様式において、全てのセシウムおよびテクネチウム同位体に好適である。二酸化テクネチウムは化学的および熱的に安定であり、水に不溶性であり、予想される周囲条件下では揮発性でないことから、全般的に、本発明によれば、テクネチウム-99を最終処分に供する能力が大幅に改善される。したがって、最終処分のためにさらなる固定化対策は必要ない。
【0035】
本発明は、さらに、放射性廃棄物からセシウムおよびテクネチウムを分離するためのデバイスを提供する。デバイスは、好ましくは、本発明による方法に適合され、本発明による方法を行うのに適している。これは、特に、ガラス化プラントの排気ガス流における実践のための実施形態に該当する。本発明によるデバイスによって、ガラス化プラントの排気ガス流中にガス状形態で存在する、あるいは核燃料の再処理からもしくはガラス化プロセスからの乾燥残渣、またはHAWC溶液からの他の残渣からの昇華を用いて得られた、純粋な形態の過テクネチウム酸セシウムを得ること、および単離することが可能である。得られた結晶性過テクネチウム酸セシウムは、次いで、上述されたように、本発明による方法において2つの元素セシウムおよびテクネチウムに分離されてもよい。
【0036】
本発明によるデバイスは、複数のガス冷却器(すなわち冷却ゾーン/ゾーンガス冷却器)を有し、これらは原則的に市販されており、昇華した過テクネチウム酸セシウムを分離するための冷却フィンガまたは冷却コイルがその中に存在する。ガス冷却器は、並列および/または直列で接続されてもよく、これによりガス冷却ユニットが得られる。好ましくは、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上のガス冷却器が順次直列で接続される。3つのガス冷却器を有するガス冷却ユニットが特に好ましい。本発明によるデバイスは、好ましくは、ガラス化プラントからの排気ガス流の上流に接続される。換言すれば、気相中に過テクネチウム酸セシウムを含有するガラス化プラントからの排気ガスは、過テクネチウム酸セシウムが純粋な形態および高い効率でそこに堆積し得るように、本発明によるデバイスに導入される。本発明によるデバイス(ガス冷却ユニット)を、
図1に示す。2つ、3つまたは4つ(好ましくは2つ)のそのようなガス冷却ユニットが連続して互いに並列で接続されたデバイスが極めて特に好ましい。
【0037】
本発明による最も好ましいデバイスは、直列で接続された3つのガス冷却器(冷却ゾーン)をそれぞれ有する2つのガス冷却ユニットを含み、2つのガス冷却ユニットは、a)排気ガス流から過テクネチウム酸セシウムを堆積させるため、およびb)堆積した過テクネチウム酸セシウムを得るために交互に使用され得、したがって連続操作を可能にするように並列で接続されている。「交互」とは、排気ガス流からの過テクネチウム酸セシウムが単位時間当たりに2つのガス冷却ユニットのうちの1つに堆積し、その間に他方のガス冷却ユニット内に以前に堆積した過テクネチウム酸セシウムがそこで得られることを意味するように解釈される。清掃後、2つのユニットのタスクは逆転し、したがって方法は、冷却ユニットの全ての獲得/清掃によりダウンタイムを引き起こすことなく、全体として連続的に行われる。そのような特に好ましいデバイスを、
図2に示す。このデバイスは、結晶性過テクネチウム酸セシウムを得るための、ガラス化プラントの排気ガス流における使用に特に好適である。
【0038】
本発明の方法および本発明のデバイスによる、過テクネチウム酸セシウムを得るため、ならびにセシウムおよびテクネチウムの分離を伴うさらなる処理のための好ましい実施形態を、以下でより詳細に説明する。
【0039】
1.
ガラス化プラントの排気システムにおける本発明による方法の統合
これには、
図2に示されるようなシステムが使用される。中心部分は
図1に詳細に示されるガス冷却ユニット(ゾーンガス冷却器)であり、その2つがシステムに提供されている。このガス冷却ユニットは、弁V11(V21)を介してガラス化炉(図示せず)の排気エアフランジに接続される。ガラス化炉の排気エアフランジとV11/V21との間の接続は断熱され、約600℃まで電気加熱される。システムは冗長に(redundantly)設計されている。操作中、1つの冷却器が操作され、その間他方は清掃される。
【0040】
ガス冷却ユニット(ゾーンガス冷却器)WT10を使用した操作を以下で説明する。WT20ユニットは、同様に機能する。ガス冷却ユニット(ゾーンガス冷却器)WT10が操作されている時、弁V11、V12は開いており、弁V13、V14は閉じている。ガラス化炉からの排気ガスは、炉から加熱ラインを通ってV11を介してゾーンガス冷却器WT10に流入し、冷却コイル上で徐々に、すなわち第1の冷却コイル束の下部領域では第1の冷却コイルの上縁で約600℃から500℃に、中間領域では冷却コイルの第2の束の上縁で500℃から約350℃に、また上部領域では冷却コイルの第3の束で約250℃に冷却される。このプロセス中、過テクネチウム酸セシウムが純粋な(結晶性)形態で冷却コイルに堆積する。温度制御により、結晶化は、冷却コイルの第2の束の上縁で開始する。第2および第3の束にわたって、排気エア中に存在する過テクネチウム酸セシウムの全てが冷却コイル上で結晶化する。WT10の直径は連続操作を通して低減されるため、圧力測定部P11およびP12は、圧力差P11-P12を決定することができ、それを起点としてゾーンガス冷却器が清掃される。別法として、計量速度センサDL1で測定された計量速度を使用して、ゾーンガス冷却器の清掃の時期を決定することができる。
【0041】
清掃のために弁V21およびV22が開かれ、ゾーンガス冷却器WT20が操作される。次いでV11が閉じられる。ここで、冷却器WT10は、全ての冷却コイルに対し40℃の冷媒を用いて操作される。全ての冷却温度が40℃で安定となったらすぐに、V40およびV13を介して冷却器WT10を溶媒としての水で充填する(100℃までの、より高い温度が可能であり、これはまた過テクネチウム酸塩の溶解度を増大させるが、過テクネチウム酸セシウムがその後再び沈殿するためさらなる処理中に溶液が冷却されないことを確実にするように注意しなければならない)。充填レベルは、充填レベルセンサL1を使用してチェックされてもよい。また、最上部の冷却コイル束は溶媒で完全に覆われなければならない。結晶化した過テクネチウム酸セシウムは、V13およびV14を介して、ポンプ1による循環を用いて約40℃で冷却コイルから溶解される。プロセスは、サンプリングによって監視され得る。過テクネチウム酸セシウムは、溶液中で活性濃度のさらなる増大が確認され得なくなったら、完全に溶解したものと考えられる。次いで、WT10は、弁V30を介して排液される。得られる溶液は、さらなる処理(すなわち後述のようなセシウムおよびテクネチウムの分離)に提供されてもよい。冷却器WT10は、再び操作に利用可能である。冷却器WT10およびWT20は共に、ガラス化の間交互に操作および清掃され、したがって過テクネチウム酸セシウムは、ガラス化プロセスの間水溶液中に連続的に分離され得る。
【0042】
2.
放射性セシウム-137-過テクネチウム酸塩-99を主に含む再処理またはガラス化からの固体残渣を処理するための、本発明による方法の適用
本発明による方法を、容器内に直接存在する残渣に適用する。本発明による方法はまた、例えばサンドブラストまたは同様の方法から生じる残渣にも使用可能であり、過テクネチウム酸セシウムは、例えばブラストサンドで部品表面から剥され、ブラスト材料と一緒に、またはそれとは別個に収集容器内に収集される。これらの残渣は、
図3に示されるように、外部から(例えば電気的に)加熱され得る特別に構築された放射線遮蔽容器内に収集される。この容器は、冷却フィンガを有する真空密閉フランジ蓋を有する。容器は真空密閉様式で閉じられ、蓋接続部を介して減圧が適用される。好ましくは10
-9~10
-10barの圧力が設定される(高真空)。次いで残渣は、各圧力での過テクネチウム酸セシウムの昇華温度+50~100Kまで加熱される。純粋な(結晶性)過テクネチウム酸セシウムは、冷却フィンガに堆積する。冷却フィンガ温度は、約20℃であってもよい(冷却水の戻り温度)。
【0043】
昇華後、システムを冷却し、次いで容器に空気を通し、冷却フィンガと共に蓋を遮蔽可能な容器に移し、そのフランジでしっかりとねじ留めする。この容器はすでに遮蔽されているか、または次回の移送用に遮蔽され得る。
【0044】
過テクネチウム酸セシウムは、容器の洗浄用接続部および蓋の接続部を介して、約40℃の純水で溶解される。溶液は、好ましくは、蓋の接続部を介してポンプ(圧力側でより低い容器接続部に接続されている)で循環される。水溶液の試料中のセシウム-137活性がもはや増大しない場合、溶解プロセスは完了したとされる。生成された過テクネチウム酸セシウム水溶液は分離され、さらなる処理(すなわち後述のようなセシウムおよびテクネチウムの分離)に送られる。清掃された蓋フランジは、次の昇華に使用され得る。このようにして生成された昇華した過テクネチウム酸セシウムは、化学的に純粋であり、問題なくさらに処理され得る。
【0045】
3.過テクネチウム酸セシウム溶液の処理/元素テクネチウムおよびセシウムの分離
得られた過テクネチウム酸セシウム溶液を30℃~40℃の間の温度に加熱し、撹拌しながら20%のヒドラジン水溶液を滴下により添加する。灰色に色付き、ヒドラジン溶液のさらなる添加により褐色-黒色固体が分離する。
【0046】
以下の反応が生じる。
【0047】
【0048】
滴下により添加されたヒドラジンは、過テクネチウム酸と反応して二酸化テクネチウムを形成するが、これは水に不溶であり、二水和物として沈殿する。水酸化セシウム水溶液が残留する。二酸化テクネチウムがそれ以上沈殿しなくなるまで慎重にヒドラジンを続けて量り入れる。完全な還元および加えることの完了後、過テクネチウム酸が存在しないことを確実にするために、10~20mg/kgの過剰のヒドラジンが検証可能な形で溶液中に30℃で10分間残留すべきである。反応の最後には、pHはアルカリ範囲内である(pH8超)。次いで、形成した二酸化テクネチウム二水和物が沈降できるように、溶液を約1時間静置する。沈殿物を濾過し、ガンマセンサ測定を用いて沈殿物中に有意なセシウム濃度が測定されなくなるまで、冷水で洗浄する。
【0049】
濾過された二酸化テクネチウム二水和物を300℃および減圧下で乾燥させ、結晶水を除去してもよい。
【0050】
【0051】
次いで、二酸化テクネチウムは、最終処分に直接送られるか、または変換のためにペレットに圧縮されて燃料ロッド状構造に焼結されてもよい。
【0052】
残留セシウムの処理:
洗浄水および濾液を合わせ、好適な酸でpH7に中和する。好適な酸は、硫酸、塩酸およびリン酸等の無機酸である。反応が以下のように進行する塩酸が、特に好ましい。
CsOH+HCl→CsCl+H2O
【0053】
中和により塩化セシウムが生成し、これは真空中40℃で水を蒸発させることにより結晶化が可能で、また真空中で90℃で乾燥されて無水塩を形成可能である。無水塩化セシウムは、医療用放射線の出発材料として使用され得る。プレスを用いて圧縮された秤量済のタブレットが、例えば医療用または技術的放射源に使用され得る。
【実施例】
【0054】
以下の実施例は、本発明による方法をさらに例示する。
【0055】
1.昇華
5gの固体ブラスト材料(例えばガーネットブラストサンド)および3.5gの過テクネチウム酸セシウム(CsTcO4)を昇華装置に加え、約8.5×10-5mbarの減圧下および390℃で昇華させる。約3.1gの純白のCsTcO4が、冷却フィンガの表面に微細結晶形態で堆積する。生成物は、約50℃の1Lの蒸留水で除去することができ、真空中60℃での蒸発による濃縮後、約3.1gのCsTcO4が生成される。別法として、昇華したCsTcO4は冷却フィンガに残され、以下の還元分離に直接使用されてもよい。
【0056】
2.還元分離
還元分離のために、昇華からの蒸発による濃縮後に、または冷却フィンガに付着する微細結晶性固体として得られた3.1gのCsTcO4を使用する。70mLの20%ヒドラジン水溶液を固体に加える。撹拌中、黒色の二酸化テクネチウムが二水和物(TcO2・1~2H2O)として堆積する。蒸発による慎重な濃縮によって、反応を完了させる。得られる湿った結晶スラリーを蒸留水に取り込み、0.5μmテフロンフィルタを通して吸引濾過する。フィルタケーキ中の所望の残留セシウム-137活性が達成されるまで、フィルタケーキを水で洗浄する。洗浄したフィルタケーキをフィルタ上で乾燥させ、次いで機械的に除去する。得られたTcO2・1~2H2Oは、高真空中300℃で結晶水から脱離されてもよい。
【0057】
得られた水酸化セシウム溶液の合わせた濾液および溶出液を、希塩酸でpH7に中和し、次いで真空中での蒸発により濃縮する。沈殿する塩化セシウムを乾燥室内で真空下100℃で乾燥させると、無水塩が形成される。