(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】ラベル取付構造
(51)【国際特許分類】
G09F 3/14 20060101AFI20230620BHJP
A41D 27/24 20060101ALN20230620BHJP
【FI】
G09F3/14 D
G09F3/14 M
A41D27/24 Z
(21)【出願番号】P 2019145365
(22)【出願日】2019-08-07
【審査請求日】2022-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】荒川 和彦
(72)【発明者】
【氏名】黒田 幸司
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-155922(JP,A)
【文献】特開2011-095353(JP,A)
【文献】特開2014-160159(JP,A)
【文献】特開2002-149072(JP,A)
【文献】特開平07-215153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 3/00- 3/20
A41D 27/00-27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類の表面側にラベルを縫糸で取り付けるためのラベル取付構造であって、
前記ラベルは、2枚のシートの少なくとも一部が重ねられた形状または1枚のシートが折り曲げられて少なくとも一部が重ねられた形状を備え、
上下方向の長さは下側のシートの方が上側のシートよりも長く前記下側のシートの上方で前記上側のシートが重ねられた形状、または、上下方向の長さは上側のシートの方が下側のシートよりも長く前記上側のシートの上方で前記下側のシートが重ねられた形状であって、
重ねられた部分の少なくとも一部が、前記ラベルの表面側に露出する上糸と、前記ラベルが取り付けられる前記衣類の裏面側に露出する下糸とからなる前記縫糸を用いて本縫いで縫着され、
前記上糸の破断強度と前記下糸の破断強度とが異なる、ラベル取付構造。
【請求項2】
前記ラベルは、前記重ねられた部分における上側のシートを手指で把持して下側のシートから離隔させることが可能な形状を備える、請求項1に記載のラベル取付構造。
【請求項3】
前記重ねられた部分における上側のシートを手指で把持して下側のシートから離隔させることにより前記上糸および前記下糸のうちの破断強度が小さい糸が破断する、請求項1に記載のラベル取付構造。
【請求項4】
前記重ねられた部分における上側のシートを手指で把持して下側のシートから離隔させると前記上糸および前記下糸のうちの破断強度が小さい糸が、前記本縫いの縫着線の一端から他端へ向けて順に破断する、請求項1に記載のラベル取付構造。
【請求項5】
前記上側のシートにおいて特定されない領域、または、前記下側のシートにおいて前記上側のシートで覆われていない領域に前記衣類の商品情報として横書きの文字が表示され、
前記文字が正立するように前記衣類に前記ラベルが取り付けられ、
前記縫糸を用いた本縫いの縫着線が前記文字の並ぶ方向に対して平行でない、請求項4に記載のラベル取付構造。
【請求項6】
前記重ねられた部分において、前記下側のシートが存在するが前記上側のシートが存在しない領域
を備える場合には前記領域外における前記上側のシートを手指で把持する、または、前記上側のシートが存在するが前記下側のシートが存在しない領域を備え
る場合には前記領域における前記上側のシートを手指で把持する、請求項2~請求項5のいずれかに記載のラベル取付構造。
【請求項7】
前記ラベルは、1枚のシートが折り曲げ線で折り曲げられて少なくとも一部が重ねられ、上下方向の長さが下側のシートの方が上側のシートよりも長くなるように折り曲げられた形状、または、上下方向の長さが上側のシートの方が下側のシートよりも長くなるように折り曲げられた形状であって、
前記上側のシートが手指で把持する手指把持シートとなり、
前記上側のシートおよび前記下側のシートのうちの面積が大きいシートが情報表示シートとなり、前記
情報表示シートが前記上側のシートの場合には特定されない領域、前記情報表示シートが前記下側のシートの場合には前記上側のシートで覆われていない領域に前記衣類の商品情報が表示され、
前記縫糸を用いた本縫いの縫着線が前記折り曲げ線に対して平行でなく、
前記重ねられた部分において、前記下側のシートが存在するが前記上側のシートが存在しない部分を形成するために上側のシートが切り欠き部を備える、または、前記上側のシートが存在するが前記下側のシートが存在しない部分を形成するために下側のシートが切り欠き部を備える、請求項1に記載のラベル取付構造。
【請求項8】
前記下糸の破断強度は前記上糸の破断強度の50%以下、または、前記上糸の破断強度は前記下糸の破断強度の50%以下である、請求項1~請求項7のいずれかに記載のラベル取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラベルの取付構造に関し、たとえばアンダーシャツ、ショーツ等のアンダーウェアを含む各種の衣類の所定部位に取り付けられるシート状のラベルの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
インナーウェアを含む各種の衣類には、製造元、連絡先、サイズ、素材、製品名、価格等の商品情報が表示されたラベルがその表面側に縫着されている。このような衣類の使用者は、着用前に衣類からこのラベルを取り外す必要がある。その際、ハサミ等の工具を用いて縫糸を切断してラベルを取り外すような作業、または、ラベル自体を縫目に沿って切断してラベルを除去するような作業が要求される。場合によっては、縫目に沿って力ずくでラベルを破断する場合もある。
【0003】
このようなラベルの取外し作業中に誤ってラベルが取り付けられた衣類に解れや裂け等の損傷を与える可能性があるため、衣類に縫糸が残存したり損傷を与えたりすることなくラベルを容易に取り外すことができるラベル取付構造が提案されている。
特開2011-237500号公報(特許文献1)は、表面に下げ札を取り付けてなる衣料品において、下げ札を衣料品に取り付ける際に、水溶性繊維糸を用いて、下げ札を衣料品に縫着することを特徴とする衣料品への下げ札取付方法を開示する。
【0004】
肌着等の衣料品において、その製品のサイズ、素材等の商品情報を使用者に知らせるためにラベル、タグ等の下げ札を製品に縫着しなければならず、使用時には下げ札を取り外さなければならないが、この特許文献1に開示された下げ札取付方法によると、下げ札を水溶性繊維糸で衣料品に縫着してあるため、下げ札を取り去る際には衣料品を洗濯するなどして水溶性繊維糸を溶かすことによって全く衣料品の生地を傷めるようなことがなく下げ札を取り容易に除くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、下げ札(ラベル)を水溶性繊維糸で衣料品に縫着してあるとしても、水溶性繊維糸を溶解させるための最初の洗濯等よりも前の初めての着用段階で下げ札を除去する必要があり、縫着糸である水溶性繊維糸抜取用糸を引っ張って抜き取る際に縫着糸が破断する場合があり、そのような事態が発生すると、従前と同様にハサミ等の工具を用いてラベルを取り外すか、縫目に沿って力ずくでラベルを破断する以外に方法はなく、衣類に損傷を与える可能性が完全に払拭されるものではない。
【0007】
特に、視力が衰えたり、指先の細かな操作が衰えたりしている者が、縫着糸を手指先で摘んで引っ張って抜き取ったり、縫着糸を手指先で摘んでハサミ等の工具を用いて切断したりすることは、非常に困難である。
さらに、仮に紙製のラベルが縫着された状態で衣類を洗濯すると、洗濯槽内でラベルが水に溶解して紙の繊維くずが衣類に付着し、その後に繊維くずを衣類から除去する非常に煩雑な作業が必要になる。
【0008】
本発明は、従来技術の上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、衣類に損傷を与えることなく衣類に縫着されたラベルを極めて容易に取り外すことのできるラベル取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るラベル取付構造は以下の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明に係るラベル取付構造は、衣類の表面側にラベルを縫糸で取り付けるためのラベル取付構造であって、前記ラベルは、2枚のシートの少なくとも一部が重ねられた形状または1枚のシートが折り曲げられて少なくとも一部が重ねられた形状を備え、上下方向の長さは下側のシートの方が上側のシートよりも長く前記下側のシートの上方で前記上側のシートが重ねられた形状、または、上下方向の長さは上側のシートの方が下側のシートよりも長く前記上側のシートの上方で前記下側のシートが重ねられた形状であって、重ねられた部分の少なくとも一部が、前記ラベルの表面側に露出する上糸と、前記ラベルが取り付けられる前記衣類の裏面側に露出する下糸とからなる前記縫糸を用いて本縫いで縫着され、前記上糸の破断強度と前記下糸の破断強度とが異なる。
【0010】
好ましくは、前記ラベルは、前記重ねられた部分における上側のシートを手指で把持して下側のシートから離隔させることが可能な形状を備えるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記重ねられた部分における上側のシートを手指で把持して下側のシートから離隔させることにより前記上糸および前記下糸のうちの破断強度が小さい糸が破断するように構成することができる。
さらに好ましくは、前記重ねられた部分における上側のシートを手指で把持して下側のシートから離隔させると前記上糸および前記下糸のうちの破断強度が小さい糸が、前記本縫いの縫着線の一端から他端へ向けて順に破断するように構成することができる。
【0011】
さらに好ましくは、前記上側のシートにおいて特定されない領域、または、前記下側のシートにおいて前記上側のシートで覆われていない領域に前記衣類の商品情報として横書きの文字が表示され、前記文字が正立するように前記衣類に前記ラベルが取り付けられ、前記縫糸を用いた本縫いの縫着線が前記文字の並ぶ方向に対して平行でないように構成することができる。
さらに好ましくは、前記重ねられた部分において、前記下側のシートが存在するが前記上側のシートが存在しない領域、または、前記上側のシートが存在するが前記下側のシートが存在しない領域を備え、前記領域における前記上側のシートを手指で把持するように構成することができる。
【0012】
さらに好ましくは、前記ラベルは、1枚のシートが折り曲げ線で折り曲げられて少なくとも一部が重ねられ、上下方向の長さが下側のシートの方が上側のシートよりも長くなるように折り曲げられた形状、または、上下方向の長さが上側のシートの方が下側のシートよりも長くなるように折り曲げられた形状であって、前記上側のシートが手指で把持する手指把持シートとなり、前記上側のシートおよび前記下側のシートのうちの面積が大きいシートが情報表示シートとなり、前記表情報示シートが前記上側のシートの場合には特定されない領域、前記情報表示シートが前記下側のシートの場合には前記上側のシートで覆われていない領域に前記衣類の商品情報が表示され、前記縫糸を用いた本縫いの縫着線が前記折り曲げ線に対して平行でなく、前記重ねられた部分において、前記下側のシートが存在するが前記上側のシートが存在しない部分を形成するために上側のシートが切り欠き部を備える、または、前記上側のシートが存在するが前記下側のシートが存在しない部分を形成するために下側のシートが切り欠き部を備えるように構成することができる。
【0013】
さらに好ましくは、前記下糸の破断強度は前記上糸の破断強度の50%以下、または、前記上糸の破断強度は前記下糸の破断強度の50%以下であるように構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るラベル取付構造によれば、衣類に損傷を与えることなく衣類に縫着されたラベルを極めて容易に取り外すことのできるラベル取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態に係るラベル取付構造を用いて、アンダーシャツ10にラベル100を縫糸300で取り付けた例を示す正面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るラベル取付構造に用いられるラベル100およびラベル200の平面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係るラベル取付構造に用いられるラベル100およびラベル200を取り外す手順を説明するための図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係るラベル取付構造に用いられる縫糸300の上糸310および下糸320の組み合わせの例を示すための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係るラベル取付構造を、図面に基づき詳しく説明する。より詳しくは、アンダーシャツ10にラベル100またはラベル200を縫糸300で取り付ける取付構造について
図1および
図2を参照して説明するとともに、このようにして取り付けられたラベル100またはラベル200をアンダーシャツ10から取り外す手順を
図2および
図3を参照して説明する。なお、本実施の形態に係るラベル取付構造に好適に用いられるラベルの一例として、
図2(A)および
図2(B)にラベル100の平面図を、
図2(C)および
図2(D)にラベル200の平面図を、それぞれ示す。
【0017】
ここで、
図2(B)は
図2(A)に示すラベル100を折り曲げ線130(長さL(1)に相当)で折り曲げた平面図であって、
図2(D)は
図2(C)に示すラベル200を折り曲げ線230(長さL(2)に相当)で折り曲げた平面図である。また、ラベル100またはラベル200をアンダーシャツ10から取り外す手順を説明するための
図3は、本実施の形態に係るラベル取付構造を用いてラベル100またはラベル200がアンダーシャツ10に取り付けられた
図1に対応する状態を示す
図3(A)、この
図3(A)に示す状態から白抜き矢示の方向へ上側のシート(および上糸310)を下側のシート(および下糸320)から離隔させた状態を示す
図3(B)、および、この
図3(B)に示す状態からさらに離隔させた状態を示す
図3(C)からなる。すなわち、ラベル100またはラベル200をアンダーシャツ10から外す際の時系列順に、
図3(A)、
図3(B)、
図3(C)の順に示されている。なお、
図3は模式的な図に過ぎず、下糸320が上糸310に係合するループ数は、大幅に少なく記載している。
【0018】
また、
図3は
図2に示した矢示3方向から見た拡大側面図であって、発明の理解のために、ラベルの表面側に露出する上糸310とラベルが取り付けられるアンダーシャツ10の裏面側に露出する下糸320とからなる縫糸300を用いた本縫いの状態(上糸310にループ状に係合された下糸320)をさらに拡大して記載している。なお、
図2および
図3には(折り曲げ線を支点として)上側のシートを下側のシートから離隔させる方向を白抜き矢示で示しており(
図2においては紙面の奥側から手前側へ上側のシートを立ち上げるようにして離隔)、この白抜き矢示の方向は縫糸300の方向(本縫いの縫着線の方向)と少なくとも垂直に交差しない方向(後述するように上側のシートを下側のシートから離隔させて破断強度の弱い下糸320を破断させる際に下糸320の全てのループ部分を一度に破断させない方向)であって、
図2に示すように略45度(垂直でなければよくこの角度に限定されない)で交差する。
【0019】
ここで、
図2の矢示3方向から見た側面拡大図である
図3には表せることができないが、
図3における本縫いの縫着線の方向(上糸310とその上糸310にループ状に係合された下糸320とが進む方向)は
図3の紙面の手前側から奥側へ進む方向(またはその逆)、かつ、紙面の右側から左側へ進む方向(またはその逆)である。そして、ラベルをアンダーシャツ10から取り外す際には、縫糸300における縫着線の一端(開始端300S)から他端(終了端300E)へ向けて(
図3の紙面の手前側から奥側へ、かつ、紙面の右側から左側へ)上糸に係合されている下糸のループ部分が(全てのループ部分が一度に破断するのではなく)順々に破断する、もしくは1~3ヵ所破断した後は糸が抜けていく(破断強度:上糸>下糸の場合)。なお、全てのループを破断させることは必須ではなく、上下シートを離隔させる速度や上糸および下糸の破断強度によっては、最初のループ破断した後、ループがほどけることで離隔させることもある。
【0020】
このような
図1~
図3を参照して、本実施の形態に係るラベル取付構造を詳しく説明する。
図1には、折り畳まれていない状態の肌着の一例であるアンダーシャツ10およびそのアンダーシャツ10に縫糸300で取り付けられた商品表示用の紙製のラベル100(またはラベル200)が示されている。限定されるものではないが、ラベル100(またはラベル200)がアンダーシャツ10に取り付けられる位置は、限定されるものではないが、アンダーシャツ10の表面側胸元に配置され、Vネック形状の襟ぐり部の縁縫製処理部にラベル縫着処理(ラベルの表面側に露出する上糸310とラベルが取り付けられるアンダーシャツ10の裏面側に露出する下糸320とからなる縫糸300を用いて上下方向に対して略45度傾けた方向で本縫いにより縫着する処理)にて縫着されている。このような状態で販売用のハンガー(図示しない)にアンダーシャツ10が掛けられて、ラベル100(またはラベル200)の方向が揃えられた複数本の(アンダーシャツ10が掛けられた)ハンガーが商品陳列用のハンガーラックにぶら下げられている。このため、アンダーシャツ10のラベル100(またはラベル200)は隣接するアンダーシャツ10に接触することになる。
【0021】
なお、本発明に係るラベル取付構造に用いられるラベルは紙製に限定されるものではなく、プラスチック等の合成樹脂製の薄いシートであっても構わない。後述するように、破断強度が小さい糸が破断するよりも先にラベルが破断すると本発明の作用効果が発現しないために、ラベルにはある程度の強度が必要であり、紙製に比較して合成樹脂製のラベルは厚くすることなくある程度の強度が得られる点では合成樹脂製が好ましく、合成樹脂製に比較して紙製が安価であるのでラベル作成費用の点では紙製が好ましい。
以下の説明では、ラベル100およびラベル200を代表させてラベルと、手指把持シート110と手指把持シート210とを代表させて手指把持シート(または上側のシート)と、情報表示シート120と情報表示シート220とを代表させて情報表示シート(または下側のシート)と、それぞれ記載する場合がある。
【0022】
本実施の形態に係るラベル取付構造は、衣類(ここではアンダーシャツ10)の表面側にラベル100(またはラベル200)を縫糸300で取り付けるためのラベル取付構造である。
図2(A)および
図2(B)に示すラベル100は、1枚のシートが折り曲げ線130で谷折りされることにより折り曲げられて少なくとも一部が重ねられた形状を備え(手指把持シート110が紙面手前側に来る)、上下方向の長さは下側のシート(情報表示シート120)の方が上側のシート(手指把持シート110)よりも長く、下側のシート(情報表示シート120)の上方の表面側に上側のシート(手指把持シート110)が重ねられた形状である。また、
図2(C)および
図2(D)に示すラベル200は、1枚のシートが折り曲げ線230で山折りされることにより折り曲げられて少なくとも一部が重ねられた形状を備え(この段落では手指把持かつ情報表示シートが紙面手前側に来る)、上下方向の長さは上側のシート(この段落では手指把持かつ情報表示シート、この段落以外では情報表示シート220)の方が下側のシート(この段落では下側のシート、この段落以外では手指把持シート210)よりも長く、上側のシートの上方の裏面側に下側のシートが重ねられた形状である。なお、この段落以外の説明においては、ラベル200はラベル100と同様に、折り曲げ線230が山折りではなく折り曲げ線130と同様に谷折りされているもの(手指把持シート210が情報表示シート220よりも紙面手前側に配置されるもの)として説明する。すなわち、この段落以外において、ラベル100もラベル200も折り曲げ線を谷折りとすると、ラベル100もラベル200も1枚のシートが折り曲げられて少なくとも一部が重ねられた形状を備え、上下方向の長さは下側のシート(情報表示シート120、情報表示シート220)の方が上側のシート(手指把持シート110、手指把持シート210)よりも長く、下側のシート(情報表示シート120、情報表示シート220)の上方で上側のシート(手指把持シート110、手指把持シート210)が重ねられた形状である。このように、折り曲げ線は山折りにしても谷折りにしても構わない。さらに、本発明に係るラベルは、1枚のシートが折り曲げられて少なくとも一部が重ねられた形状を備えて、かつ、上下方向の長さが下側のシートと上側のシートとで異なっていれば構わない。さらに、本発明に係るラベルは、このように1枚のシートが山折りまたは谷折りで折り曲げられて少なくとも一部が重ねられた形状である以外に、1枚ではなく2枚のシートの少なくとも一部が重ねられた形状であっても構わない。
【0023】
そして、重ねられた部分(
図2において一点鎖線の四角形で囲った領域Sにより示される部分)の少なくとも一部が、ラベル100またはラベル200の表面側に露出する上糸(
図3に示す上糸310)と、ラベル100またはラベル200が取り付けられるアンダーシャツ10の裏面側に露出する下糸(
図3に示す下糸320)とからなる縫糸300を用いて本縫い(針糸2本使いで一方の糸とその糸に他方の糸が係合されたループが連続して繰り返す縫い方)で縫着されている。そして、最も特徴的であるのは、上糸310の破断強度と下糸320の破断強度とが異なる点である。なお、
図3においては下糸320がループを形成しているように記載しているが、本縫いであるため一方の糸が他方の糸に対してループを形成していればよいために、上糸がループを形成しているようにも、双方がループを形成しているようにも記載できるが、本縫いであることに違いはない。
【0024】
なお、破断強度のより強い糸が下糸であっても上糸であっても構わないが、以下においては、下糸の破断強度よりも上糸の破断強度が強いものとして説明する(破断強度:上糸>下糸)。また、本実施の形態に係るラベル取付構造に好適に用いられるラベルは、このようなラベル100およびラベル200のように1枚のシートが折り曲げられて少なくとも一部が重ねられた形状に限定されるものではなく、2枚のシートの少なくとも一部が重ねられた形状に形成されていても構わない。すなわち、たとえば、折り曲げ線で折り曲げられているのではなくその折り曲げ線の部分が切断されている上側と下側の2枚のラベルが上端を揃えて重ねられているものであっても、それ以外の折り曲げ線以外の部分が切断されている2枚のシートであっても(上端が揃っていない等を含む)、上下方向の長さは下側のシートの方が上側のシートよりも長く、下側のシートの上方で上側のシートが重ねられた形状(少なくとも一部が重ねられた形状)を備えた2枚のシートであれば構わない。
【0025】
これらのラベル100およびラベル200は、重ねられた部分における上側のシート(手指把持シート110または手指把持シート210)を手指Fで把持して下側のシート(情報表示シート120または情報表示シート220)から離隔させることが可能な形状を備える。ここでは、折り曲げ線130または折り曲げ線230を支点として手指F(1)および手指F(2)で把持された手指把持シート110または手指把持シート210が(必要に応じて別途手指F(3)で押さえられた)情報表示シート120または情報表示シート220から離隔する。
【0026】
ここで、上述したように上側のシート(手指把持シート110または手指把持シート210)を手指Fで把持して下側のシート(情報表示シート120または情報表示シート220)から離隔させることにより、上側のシートとともに移動した上糸310が、手指F(3)で押さえられて下側のシートとともに移動が規制された下糸320から離隔する。下糸320は上糸310にループ状に係合されており、かつ、上糸310が下糸320から離隔するために、上糸310および下糸320のうちの破断強度が小さい糸(ここでは下糸320)が破断することになる。なお、破断強度が小さい糸(下糸320)が破断するよりも先にラベルが破断しないように、ラベルの強さ、または、(破断強度が弱い方の下)糸の破断強度の絶対値が設定されている。
【0027】
ここで、上述したように上側のシート(手指把持シート110または手指把持シート210)を手指Fで把持して下側のシート(情報表示シート120または情報表示シート220)から離隔させることにより、上糸310および下糸320のうちの破断強度が小さい糸(下糸320)が破断する場合において、本縫いの縫着線の一端から他端へ向けて順に破断する。
図2および
図3に示すように、折り曲げ線130または折り曲げ線230を支点として手指F(1)および手指F(2)で把持された手指把持シート110または手指把持シート210が(別途手指F(3)で押さえられた)情報表示シート120または情報表示シート220から離隔するために、縫糸300における縫着線の一端(ここでは開始端300S)から他端(ここでは終了端300E)へ向けて順に破断する。
【0028】
すなわち、白抜き矢示で示すように、手指把持シートが情報表示シートから立ち上がるようにして手指把持シートが情報表示シートから離隔していく。この白抜き矢示の方向は、縫糸300の方向(本縫いの縫着線の方向)と少なくとも垂直に交差しない方向(ここでは略45度で交差する方向)であるために、縫糸300における開始端300S側の下糸320のループ部分がまず破断して、この破断によりさらに手指把持シートが情報表示シートからさらに立ち上がることができるようになり縫糸300における終了端300E側へと下糸320のループ部分の破断が進んで行く。このようにすると、強い破断強度の上糸310にループ状に係合された下糸320の全てのループ部分を一度に全て破断させる必要がなくなり下糸320のループ部分を順々に破断させていくために、小さい力で下糸320のループ部分を破断させることができ結果的にラベルを小さな力で極めて容易に取り外すことができる。
【0029】
ここで、上述したように強い破断強度の上糸310にループ状に係合された下糸320の全てのループ部分を一度に全て破断させることなく、下糸320のループ部分を順々に破断させていくために小さい力で下糸320のループ部分を破断させることができ結果的にラベルを小さな力で極めて容易に取り外すことができるためには、より具体的には以下のような構成である。
【0030】
図2に示すように、下側のシート(情報表示シート120または情報表示シート220)において上側のシート(手指把持シート110または手指把持シート210)で覆われていない領域にアンダーシャツ10の商品情報として横書きの文字が表示され、これらの横文字が正立するようにアンダーシャツ10にラベル100またはラベル200が
図1に示すように取り付けられ、縫糸300を用いた本縫いの縫着線が横文字の並ぶ方向に対して平行でない。このことは、上側のシートを下側のシートから離隔させる方向を示す
図2および
図3の白抜き矢示の方向と縫糸300の方向(本縫いの縫着線の方向)とが少なくとも垂直ではないことと同義となる。なお、この白抜き矢示の方向と縫糸300の方向(本縫いの縫着線の方向)とは、一例として
図2に示すように略45度で交差するものであるが、上述したように少なくとも垂直ではなければ(縫糸300を用いた本縫いの縫着線が横文字の並ぶ方向に対して少なくとも平行でなければ)構わない。なお、
図2(C)および
図2(D)に示すラベル200において情報表示シート220が手指把持シート210よりも表面側に配置される場合(折り曲げ線230が山折りされる場合)には、アンダーシャツ10の商品情報が表示される領域は特に限定されない。
【0031】
下側のシートにおいて上側のシートで覆われていない領域に下側のシートには、たとえば、
図2に示すように、製造元、連絡先、サイズ、素材、商品名、商品コード(バーコード)、価格等の商品情報が印刷表示されている。
ここで、上述したように、重ねられた部分における上側のシート(手指把持シート110または手指把持シート210)を手指Fで把持して下側のシート(情報表示シート120または情報表示シート220)から離隔させる場合において、
図2(B)に示すように下側の情報表示シート120が存在するが上側の手指把持シート110が存在しない領域(切り欠き部140により形成される領域)、または、
図2(D)に示すように上側の手指把持シート210が存在するが下側の情報表示シート220が存在しない領域(切り欠き部240により形成される領域)を備える。
図3(B)に示すように、これらの領域
外(切り欠き部140により形成される領域
外)における上側のシートである手指把持シート110、または
、領域(切り欠き部240により形成される領域)における上側のシートであ
る手指把持シート210を手指F(1)と手指F(2)とで挟んで把持する。
【0032】
このように領域(切り欠き部140により形成される領域)または領域(切り欠き部240により形成される領域)があるので(存在するので)手指把持シート110または手指把持シート210を手指F(1)とF(2)とで容易に挟んで把持することができる。
このように、本実施の形態に係るラベル取付構造は、ラベル100またはラベル200を本縫いでアンダーシャツ10に縫着している縫糸300自体を手指で挟んで抜いたり切ったりするのではなく、縫糸300よりもはるかに大きな上側のシートを手指で挟んで動かす(および必要に応じて下側のシートを手指で押さえる)だけの操作でラベル100またはラベル200をアンダーシャツ10から取り外す。すなわち、下側のシート(情報表示シート120または情報表示シート220)を手指F(3)で押さえて、手指F(1)および手指F(2)で挟んだ上側のシート(手指把持シート110または手指把持シート210)を上側に立ち上げるようにして破断強度がより弱い下糸または上糸を切断することによりラベル100またはラベル200をアンダーシャツ10から取り外す。この上側のシートを手指で挟んで把持する際に、切り欠き部140により形成される領域または切り欠き部240により形成される領域があるので、ラベル取り外し操作がさらに行いやすくなる。
【0033】
ラベル100またはラベル200は、1枚のシートが折り曲げ線130または折り曲げ線230で折り曲げられて少なくとも一部が重ねられた形状を備え、重ねられた部分(
図2において領域Sにより示される部分)における上側のシートであって手指で把持する手指把持シート110または手指把持シート210と、下側のシートであって文字を含むアンダーシャツ10の商品情報が表示された情報表示シート120または情報表示シート220とを含む。これらの情報表示シート120または情報表示シート220は、手指把持シート110または手指把持シート210よりも面積が大きく、少なくとも上側の手指把持シート110または手指把持シート210で覆われている領域以外の領域に商品情報(製造元、連絡先、サイズ、素材、商品名、商品コード(バーコード)、価格等の情報)が表示されている。縫糸300を用いた本縫いの縫着線が折り曲げ線130または折り曲げ線230に対して平行でなく略45度傾いている。重ねられた部分(
図2において領域Sにより示される部分)において、
図2(A)および
図2(B)に示すように、下側の情報表示シート120が存在するが上側の手指把持シート110が存在しない部分を形成するために上側の手指把持シート110は切り欠き部140を備え、
図2(C)および
図2(D)に示すように、上側の手指把持シート210が存在するが下側の情報表示シート220が存在しない部分を形成するために下側の情報表示シート220が切り欠き部240を備える。なお、
図2(A)および
図2(B)に示すラベル100のように折り曲げ線130が谷折りされる場合であっても、
図2(C)および
図2(D)に示すラベル200のように折り曲げ線230が山折りされる場合であっても、上下方向の長さが下側のシートと上側のシートとで異なり、上側のシートが少なくとも手指把持シートとして機能して、上側のシートおよび下側のシートの少なくとも一方が情報表示シートとして機能する。
【0034】
このような構成を備えるために、上述したように、強い破断強度の上糸310にループ状に係合された下糸320の全てのループ部分を極めて容易に破断させることができるので、ラベル100およびラベル200をアンダーシャツ10から極めて容易に取り外すことができる。
なお、折り曲げ線130または折り曲げ線230には連続した小穴またはスジを備えるようにすると上側の手指把持シートに折り曲げのくせが付いており、縫糸300を用いて本縫いでラベル100または200をアンダーシャツ10に縫着させるときに上側の手指把持シートが下側の情報表示シートから離隔してくること(上側の手指把持シートが立ち上がってくること)を防止できるので、縫糸300を用いて容易に本縫いすることができる。
【0035】
ここで、
図2(C)の拡大図に示すように、折り曲げ線230をたとえば2つの領域に分けて、折り曲げ状態を別の形態とした半押し部230Aと切込み部230Bとを設けるようにしてもかまわない。半押し部230Aとして完全に折り曲げるのではなく半押し状態でつぶしておくことにより商品展示時に手指把持シート210が不用意にちぎれることを防止できたり、切込み部230Bとして切込みを入れておくことにより手指把持シート210と情報表示シート220とを分離させやすくできたりするという作用効果を奏する。なお、半押し部230Aと切込み部230Bとの配置は逆であってもかまわないし、それぞれの長さは上述した作用効果を奏すれば特に限定されるものではないし、折り曲げ線130もこのような2領域に分けた折り曲げ線とすることも好ましい。
【0036】
また、下糸320の破断強度は上糸310の破断強度の50%以下(さらに好ましくは20%~40%)、または、上糸310の破断強度は下糸320の破断強度の50%以下(さらに好ましくは20%~40%)であることが好ましい。本実施の形態においては破断強度が小さい糸は下糸320であるために、下糸320の破断強度は上糸310の破断強度の50%以下(さらに好ましくは20%~40%)が好ましいことになる。このように本縫いの縫糸300を構成する上糸と下糸の破断強度に差異を50%以下(さらに好ましくは20%~40%)で持たせると、商品であるアンダーシャツ10の輸送時および展示販売時においてラベルの自重またはハンガーにかけられたアンダーシャツ10どうしの接触等によっても破断強度が小さい糸が破断しないでラベルが自然に落下することなく、使用者がラベルをアンダーシャツ10から極めて容易に取り外すことができる。なお、上述したように破断強度が小さい糸(ここでは下糸320)が破断するよりも先にラベルが破断しないように、ラベルの強さ、または、(破断強度が弱い方の下)糸の破断強度の絶対値が設定されている。このような破断強度の差異(小さい糸が大きい糸の好ましくは50%以下さらに好ましくは20%~40%)は主として使用者がラベルをアンダーシャツ10から極めて容易に取り外すためのものであるが、上述したように輸送時および展示販売時においてラベルの自重、アンダーシャツ10どうしの接触等により自然に落下することがないように考慮して、ラベルの強さ、本縫いされる縫糸(上糸、下糸)の破断強度の差異、破断強度の絶対値を設定しなければならない。
【0037】
以上のような構成を備えたラベル取付構造を用いて取り付けられたラベル100またはラベル200をアンダーシャツ10から取り外す手順について、主として
図3を参照して以下に説明する。
図3(A)に示す状態が、本実施の形態に係るラベル取付構造を用いてアンダーシャツ10にラベル100またはラベル200が取り付けられた状態を示し、アンダーシャツ10の表面側胸元のVネック形状の襟ぐり部の縁縫製処理部にラベル縫着処理(ラベルの表面側に露出する上糸310と、ラベルが取り付けられるアンダーシャツ10の裏面側に露出する下糸320とからなる縫糸300を用いて本縫いで縫着する処理)にてラベル100またはラベル200が縫着されている。このような状態で販売用のハンガーにアンダーシャツ10が掛けられて、複数本の(アンダーシャツ10が掛けられた)ハンガーが商品陳列用のハンガーラックにぶら下げられている。
【0038】
このようにして展示販売されているアンダーシャツ10を購入して使用する使用者が初めて使用(初めての着用、初めての着用前の洗濯等)するにあたり自宅等でラベル100をアンダーシャツ10から取り外す。
図3(A)に示す状態から
図3(B)に示すように、ラベル100における下側の情報表示シート120が存在するが上側の手指把持シート110が存在しない領域
外(切り欠き部140により形成される領域
外)における上側のシートである手指把持シート110、または、ラベル200における上側の手指把持シート210が存在するが下側の情報表示シート220が存在しない領域(切り欠き部240により形成される領域)における上側のシートであ
る手指把持シート210を手指F(1)とF(2)とで挟んで把持する。このとき、重ねられた部分(
図2において一点鎖線の四角形で囲った領域Sにより示される部分)において上側のシートまたは下側のシートしか存在しない領域があるので(切り欠き部140または切り欠き部240により形成される領域が存在するので)手指把持シート110または手指把持シート210を手指F(1)と手指F(2)とで容易に挟んで把持することができる。
【0039】
このようにして手指F(1)と手指F(2)とで挟んで把持した手指把持シート110または手指把持シート210を
図3(B)に示す白抜き矢示の方向へ移動させる。このとき、折り曲げ線130または折り曲げ線230を支点として手指F(1)および手指F(2)で把持された手指把持シート110または手指把持シート210が、別途手指F(3)で押さえられた情報表示シート120または情報表示シート220から離隔する。より具体的には、情報表示シート120または情報表示シート220およびアンダーシャツ10を押さえておいて、手指把持シート110または手指把持シート210を上側に立ち上げるようにして、手指把持シートを情報表示シートから離隔させる。
【0040】
この際、上糸310は、ラベル100またはラベル200の表面側に露出するように本縫いで縫着されているので手指把持シート110または手指把持シート210ととも移動するとともに、下糸320は、アンダーシャツ10の裏面側に露出するように本縫いで縫着されているので情報表示シート120または情報表示シート220およびアンダーシャツ10とともに移動が規制される。
【0041】
手指把持シート110または手指把持シート210を
図3(B)に示す白抜き矢示の方向へ移動させると、
図3(B)の一点鎖線の円形で囲った一番右のループ部分のように上糸310および下糸320のうちの破断強度が小さい下糸320のループ部分が破断する。この際、
図2および
図3に示す上側のシートを下側のシートから離隔させる方向を示す白抜き矢示の方向と縫糸300の方向(本縫いの縫着線の方向)とが少なくとも垂直ではなく(縫糸300の方向(本縫いの縫着線の方向)と情報表示シートの横文字の並ぶ方向とが少なくとも平行でないことと同義)、
図2に示すように略45度(この角度に限定されるものではない)で交差している。このため、手指把持シートが情報表示シートから立ち上がるようにして手指把持シートが情報表示シートか離隔していくので、縫糸300における開始端300S側の下糸320のループ部分がまず破断して、この破断によりさらに手指把持シートが情報表示シートからさらに立ち上がることができるようになり縫糸300における終了端300E側へと下糸320のループ部分の破断が進んで行く(たとえばB5用紙の一方端に設けられた26個程度の穴で閉じられたルーズリーフを上から下へ穴の反対側へ引っ張って穴を上から下へ順々に破って用紙を引きちぎる場合に穴の破断が進んで行くようにしてループ部分の破断が順次進んで行く)。
【0042】
すなわち、縫糸300における縫着線の一端(開始端300S)から他端(終了端300E)へ向けて、
図3の紙面手前側から奥側へ、かつ、紙面右側から左側へ、順に上糸に係合されている下糸のループ部分が破断する。このため、強い破断強度の上糸310にループ状に係合された下糸320の全てのループ部分を一度に全て破断させる必要がなくなり、下糸320のループ部分を順々に破断させていくために小さい力で下糸320のループ部分を破断させることができるので、結果的にラベルを小さな力で極めて容易に取り外すことができる。
【0043】
このようにして、強い破断強度の上糸310にループ状に係合された下糸320の全てのループ部分において、上糸310よりも破断強度が弱い下糸320が破断される。この状態を
図3(C)に示す。この
図3(C)に示すように、ラベル100またはラベル200が取り付けられるアンダーシャツ10の裏面側に露出する下糸320は切断されているために縫糸300を用いた本縫いによりラベル100またはラベル200がアンダーシャツ10に縫着された状態ではない。下糸320が切断されているので、ラベル100またはラベル200を構成する上側の手指把持シート110または手指把持シート210および下側の情報表示シート120または情報表示シート220を、アンダーシャツ10から取り外すことができる。この際、ラベル100またはラベル200の表面側に露出した状態で切断されていない上糸310と、アンダーシャツ10の裏面側に露出した状態で切断された下糸320とは、手指先で摘んでアンダーシャツ10から取り除く(取り除き忘れてもアンダーシャツ10に糸くずが付着しているに過ぎない)。
【0044】
このようにアンダーシャツに損傷を与えることなくアンダーシャツに縫着されたラベルを極めて容易に取り外すラベル取付構造に好適に採用され、上糸310と下糸320とからなり、ラベルをアンダーシャツに本縫いして縫着するための縫糸300の例について、
図4を参照して説明する。
図4には、本実施の形態に係るラベル取付構造に好適に採用される本縫いのための縫糸300(上糸310と下糸320との組み合わせ)の一例を示している。評価として、一重の丸印が記載されている上糸310と下糸320との組み合わせが好ましく、二重の丸印が記載されている上糸310と下糸320との組み合わせが特に好ましく、評価として丸印が記載されていない上糸310と下糸320との組み合わせが好ましくない。
【0045】
本実施の形態においては上糸310の破断強度が下糸320の破断強度よりも大きいので、下糸320の破断強度は上糸310の破断強度の50%以下が好ましく、20%~40%がさらに好ましい。破断強度の差異がこの範囲であるとアンダーシャツ10の輸送時および展示販売時においてラベルの自重またはハンガーにかけられたアンダーシャツ10どうしの接触等によっても破断強度が小さい糸が破断しないでラベルが自然に落下することなく、使用者がラベルをアンダーシャツ10から極めて容易に取り外すことができる。なお、上述したように破断強度が小さい糸(ここでは下糸320)が破断するよりも先にラベルが破断しないように、ラベルの強さ、または、(破断強度が弱い方の下)糸の破断強度の絶対値が設定されている。
【0046】
また、下糸320の破断強度が1000cN以上の場合は、強度比が50%以下であっても紙製タグの場合は、下糸320が切断される前に紙製のラベルが破断する可能性が高い。下糸320の破断強度が200cN以下の場合は、強度が弱すぎるため、縫製自体が困難になる。
また、縫糸300(上糸310と下糸320との組み合わせ)によるその他の縫製条件としては、縫いピッチは、粗いほうがよく(7~9目)、10目以上では紙製ラベルが先に破断する可能性が高い。一方、ラベルの破断を防止するためにプラスチック製ラベルなどの強度が高く頑丈なラベルを採用すると、アンダーシャツ10の生地自体が破損する可能性が高い。なお、本実施の形態において縫いピッチは8目(1インチ間の縫い目の数)であって、1針の長さは約3.1mmである。
【0047】
なお、確認的に記載するが、上糸と下糸とからなる縫糸を用いて本縫いで縫着されることにより衣類に取り付けられたラベルを、衣類から取り外す際において、本発明に係るラベル取付構造は、縫糸を手指先で摘んで上糸または/および下糸を抜き取るものでもなく上糸または/および下糸を切断するものでもない。本発明に係るラベル取付構造は、上糸と下糸との破壊強度の差異に基づいて、上糸および下糸のうちの破壊強度の強い糸(または弱い糸)を手指を用いてラベルの一部とともに移動せしめて破壊強度の弱い糸を破断(切断)することにより本縫いで縫着された状態を解放してラベルを衣類から取り外すものである。すなわち、本発明に係るラベル取付構造は、ラベルを本縫いで衣類に縫着している縫糸自体を手指で挟んで抜いたり切ったりするのではなく、縫糸よりもはるかに大きな上側のシートを手指で挟んで動かす(および下側のシートを必要に応じて手指で押さえる)だけの極めて操作でラベルを衣類から取り外すものである。このため、視力が衰えたり、指先の細かな操作が衰えたりしている場合でも、衣類に損傷を与えることなく衣類に縫着されたラベルを極めて容易に取り外すことができる。
【0048】
以上のようにして、本実施の形態に係るラベル取付構造によると、衣類に損傷を与えることなく衣類に縫着されたラベルを極めて容易に取り外すことができる。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、衣類に縫着されたラベルを衣類に損傷を与えることなく取り外すことができる点で好適であり、極めて容易に衣類からラベルを取り外すことができる点で特に好ましい。
【符号の説明】
【0050】
10 アンダーシャツ
100、200 ラベル
110、210 (上側の)手指把持シート
120、220 (下側の)情報表示シート
130、230 折り曲げ線
140、240 切り欠き部
300 縫糸
310 上糸
320 下糸