IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミネベア株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-センサ装置 図1
  • 特許-センサ装置 図2
  • 特許-センサ装置 図3
  • 特許-センサ装置 図4
  • 特許-センサ装置 図5
  • 特許-センサ装置 図6
  • 特許-センサ装置 図7
  • 特許-センサ装置 図8
  • 特許-センサ装置 図9
  • 特許-センサ装置 図10
  • 特許-センサ装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】センサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/162 20200101AFI20230620BHJP
   G01L 1/18 20060101ALI20230620BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20230620BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
G01L5/162
G01L1/18 A
H01L29/84 A
B81B3/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019014734
(22)【出願日】2019-01-30
(65)【公開番号】P2020122713
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-12-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】工藤 康博
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-302917(JP,A)
【文献】特開2014-135391(JP,A)
【文献】特開2018-044811(JP,A)
【文献】特開2018-021796(JP,A)
【文献】特開昭59-195135(JP,A)
【文献】特開2008-082835(JP,A)
【文献】特開2000-223717(JP,A)
【文献】特開2004-109112(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0261567(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/18-1/22,5/162,
H01L 29/84,
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板内に形成され、前記半導体基板とは反対の極性を有するピエゾ抵抗素子と、
前記半導体基板内に形成され、前記半導体基板とは反対の極性を有する拡散配線と、
前記半導体基板内の隣接する前記拡散配線の間に形成され、前記半導体基板と同一の極性を有する第1バリア層と、
前記ピエゾ抵抗素子と前記拡散配線との表層に形成され、前記第1バリア層と同一の極性を有する第2バリア層と、
前記第2バリア層上の絶縁膜を介して前記拡散配線の上方に形成され、前記絶縁膜を貫通するコンタクトプラグを介して前記拡散配線と接続される配線と、
を有し、
前記第1バリア層及び前記第2バリア層のそれぞれは、平面視において、前記コンタクトプラグと重なる領域を有さず、かつ、前記コンタクトプラグに向けて上方に延びる部分を有する前記拡散配線と隣り合い、
多軸方向の力及び/又は力のモーメントを検知可能なセンサ装置。
【請求項2】
前記第1バリア層は、さらに隣接する前記ピエゾ抵抗素子の間に形成されている請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記第1バリア層は前記半導体基板より不純物濃度が高く、前記第2バリア層は前記第1バリア層より不純物濃度より高い請求項1または2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記拡散配線は、前記ピエゾ抵抗素子より不純物濃度が高い請求項3に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記絶縁膜上に形成されたプルアップ用の電極パッドを有し、前記電極パッドは、前記絶縁膜を貫通するコンタクトプラグを介して前記第1バリア層に接続されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記半導体基板の極性はn型である請求項5に記載のセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ装置に関し、特に多軸方向の力を検出する力覚センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属からなる起歪体にセンサ素子を取り付け、外力が印加されることにより生じる起歪体の弾性変形をセンサ素子で検出することで、多軸の力を検出する力覚センサが知られている。
【0003】
上記力覚センサには、センサ素子として、SOI(Silicon On Insulator)基板等の半導体基板を用いて製造されたセンサチップが用いられる(例えば、特許文献1、2参照)。センサチップを構成する半導体基板内には、歪検出素子としてのピエゾ抵抗や拡散配線層が形成され、半導体基板上には金属配線層が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4011345号
【文献】特開2018-185296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、センサチップの小型化のために、ピエゾ抵抗、拡散配線、金属配線等の間隔が狭くなる傾向にあり、配線間に意図しない寄生MOS(Metal-Oxide-Semiconductor)構造が生じる可能性が高まっている。寄生MOS構造が生じると、隣接する拡散配線間、拡散配線と金属配線との間等でリーク電流が生じる可能性がある。リーク電流が発生すると、センサ素子の出力特性を劣化させてしまう。
【0006】
開示の技術は、上記の点に鑑みてなされたものであって、リーク電流の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術は、半導体基板内に形成され、前記半導体基板とは反対の極性を有するピエゾ抵抗素子と、前記半導体基板内に形成され、前記半導体基板とは反対の極性を有する拡散配線と、前記半導体基板内の隣接する前記拡散配線の間に形成され、前記半導体基板と同一の極性を有する第1バリア層と、前記ピエゾ抵抗素子と前記拡散配線との表層に形成され、前記第1バリア層と同一の極性を有する第2バリア層と、前記第2バリア層上の絶縁膜を介して前記拡散配線の上方に形成され、前記絶縁膜を貫通するコンタクトプラグを介して前記拡散配線と接続される配線と、を有し、前記第1バリア層及び前記第2バリア層のそれぞれは、平面視において、前記コンタクトプラグと重なる領域を有さず、かつ、前記コンタクトプラグに向けて上方に延びる部分を有する前記拡散配線と隣り合い、多軸方向の力及び/又は力のモーメントを検知可能なセンサ装置である。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、リーク電流の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るセンサチップをZ軸方向上側から視た図である。
図2】第1実施形態に係るセンサチップをZ軸方向下側から視た図である。
図3】各軸にかかる力及びモーメントを示す符号を説明する図である。
図4】センサチップのピエゾ抵抗素子の配置を例示する図である。
図5】センサチップにおける電極配置と配線を例示する図である。
図6図5中の支持部の領域における電極パッド及び配線のレイアウトを例示する図である。
図7図5中のピエゾ抵抗素子を含む領域における配線のレイアウトを例示する図である。
図8図7中のA-A線に沿った断面を示す図である。
図9】第1バリア層の形成領域を示す平面図である。
図10】第2バリア層の形成領域を示す平面図である。
図11】センサチップの要部の断面を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
<第1実施形態>
(概略構成)
図1及び図2は、第1実施形態に係る力覚センサに用いられるセンサ素子としてのセンサチップ110の概略を示す図である。
【0012】
図1は、センサチップ110をZ軸方向上側から視た図であり、図1(a)は斜視図、図1(b)は平面図である。図2は、センサチップ110をZ軸方向下側から視た図であり、図2(a)は斜視図、図2(b)は底面図である。なお、センサチップ110の上面の一辺に平行な方向をX軸方向、垂直な方向をY軸方向、センサチップ110の厚さ方向(センサチップ110の上面の法線方向)をZ軸方向としている。X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向は、互いに直交している。
【0013】
センサチップ110は、1チップで最大6軸方向の力及び/又は力のモーメントを検知可能なMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサチップであり、SOI基板等の半導体基板から形成されている。センサチップ110の平面形状は、例えば、3000μm角程度の正方形とすることができる。
【0014】
センサチップ110は、柱状の5つの支持部111a~111eを備えている。支持部111a~111eの平面形状は、例えば、500μm角程度の正方形とすることができる。第1の支持部である支持部111a~111dは、センサチップ110の四隅に配置されている。第2の支持部である支持部111eは、支持部111a~111dの中央に配置されている。
【0015】
支持部111a~111eは、例えば、SOI基板の活性層、BOX層、及び支持層から形成することができ、それぞれの厚さは、例えば、500μm程度とすることができる。
【0016】
支持部111aと支持部111bとの間には、支持部111aと支持部111bとに両端を固定された(隣接する支持部同士を連結する)、構造を補強するための補強用梁112aが設けられている。支持部111bと支持部111cとの間には、支持部111bと支持部111cとに両端を固定された(隣接する支持部同士を連結する)、構造を補強するための補強用梁112bが設けられている。
【0017】
支持部111cと支持部111dとの間には、支持部111cと支持部111dとに両端を固定された(隣接する支持部同士を連結する)、構造を補強するための補強用梁112cが設けられている。支持部111dと支持部111aとの間には、支持部111dと支持部111aとに両端を固定された(隣接する支持部同士を連結する)、構造を補強するための補強用梁112dが設けられている。
【0018】
言い換えれば、第1の補強用梁である4つの補強用梁112a、112b、112c、及び112dが枠状に形成され、各補強用梁の交点をなす角部が、支持部111b、111c、111d、111aとなる。
【0019】
支持部111aの内側の角部と、それに対向する支持部111eの角部とは、構造を補強するための補強用梁112eにより連結されている。支持部111bの内側の角部と、それに対向する支持部111eの角部とは、構造を補強するための補強用梁112fにより連結されている。
【0020】
支持部111cの内側の角部と、それに対向する支持部111eの角部とは、構造を補強するための補強用梁112gにより連結されている。支持部111dの内側の角部と、それに対向する支持部111eの角部とは、構造を補強するための補強用梁112hにより連結されている。第2の補強用梁である補強用梁112e~112hは、X軸方向(Y軸方向)に対して斜めに配置されている。つまり、補強用梁112e~112hは、補強用梁112a、112b、112c、及び112dと非平行に配置されている。
【0021】
補強用梁112a~112hは、例えば、SOI基板の活性層、BOX層、及び支持層から形成することができる。補強用梁112a~112hの太さ(短手方向の幅)は、例えば、140μm程度とすることができる。補強用梁112a~112hのそれぞれの上面は、支持部111a~111eの上面と略面一である。
【0022】
これに対して、補強用梁112a~112hのそれぞれの下面は、支持部111a~111eの下面及び力点114a~114dの下面よりも数10μm程度上面側に窪んでいる。
【0023】
支持部111aと支持部111bとの間の補強用梁112aの内側には、補強用梁112aと所定間隔を空けて平行に、支持部111aと支持部111bとに両端を固定された(隣接する支持部同士を連結する)、歪を検知するための検知用梁113aが設けられている。
【0024】
検知用梁113aと支持部111eとの間には、検知用梁113a及び支持部111eと所定間隔を空けて検知用梁113aと平行に、検知用梁113bが設けられている。検知用梁113bは、補強用梁112eの支持部111e側の端部と補強用梁112fの支持部111e側の端部とを連結している。
【0025】
検知用梁113aの長手方向の略中央部と、それに対向する検知用梁113bの長手方向の略中央部とは、検知用梁113a及び検知用梁113bと直交するように配置された検知用梁113cにより連結されている。
【0026】
支持部111bと支持部111cとの間の補強用梁112bの内側には、補強用梁112bと所定間隔を空けて平行に、支持部111bと支持部111cとに両端を固定された(隣接する支持部同士を連結する)、歪を検知するための検知用梁113dが設けられている。
【0027】
検知用梁113dと支持部111eとの間には、検知用梁113d及び支持部111eと所定間隔を空けて検知用梁113dと平行に、検知用梁113eが設けられている。検知用梁113eは、補強用梁112fの支持部111e側の端部と補強用梁112gの支持部111e側の端部とを連結している。
【0028】
検知用梁113dの長手方向の略中央部と、それに対向する検知用梁113eの長手方向の略中央部とは、検知用梁113d及び検知用梁113eと直交するように配置された検知用梁113fにより連結されている。
【0029】
支持部111cと支持部111dとの間の補強用梁112cの内側には、補強用梁112cと所定間隔を空けて平行に、支持部111cと支持部111dとに両端を固定された(隣接する支持部同士を連結する)、歪を検知するための検知用梁113gが設けられている。
【0030】
検知用梁113gと支持部111eとの間には、検知用梁113g及び支持部111eと所定間隔を空けて検知用梁113gと平行に、検知用梁113hが設けられている。検知用梁113hは、補強用梁112gの支持部111e側の端部と補強用梁112hの支持部111e側の端部とを連結している。
【0031】
検知用梁113gの長手方向の略中央部と、それに対向する検知用梁113hの長手方向の略中央部とは、検知用梁113g及び検知用梁113hと直交するように配置された検知用梁113iにより連結されている。
【0032】
支持部111dと支持部111aとの間の補強用梁112dの内側には、補強用梁112dと所定間隔を空けて平行に、支持部111dと支持部111aとに両端を固定された(隣接する支持部同士を連結する)、歪を検知するための検知用梁113jが設けられている。
【0033】
検知用梁113jと支持部111eとの間には、検知用梁113j及び支持部111eと所定間隔を空けて検知用梁113jと平行に、検知用梁113kが設けられている。検知用梁113kは、補強用梁112hの支持部111e側の端部と補強用梁112eの支持部111e側の端部とを連結している。
【0034】
検知用梁113jの長手方向の略中央部と、それに対向する検知用梁113kの長手方向の略中央部とは、検知用梁113j及び検知用梁113kと直交するように配置された検知用梁113lにより連結されている。
【0035】
検知用梁113a~113lは、支持部111a~111eの厚さ方向の上端側に設けられ、例えば、SOI基板の活性層から形成することができる。検知用梁113a~113lの太さ(短手方向の幅)は、例えば、75μm程度とすることができる。検知用梁113a~113lのそれぞれの上面は、支持部111a~111eの上面と略面一である。検知用梁113a~113lのそれぞれの厚さは、例えば、50μm程度とすることができる。
【0036】
検知用梁113aの長手方向の中央部の下面側(検知用梁113aと検知用梁113cとの交点)には、力点114aが設けられている。検知用梁113a、113b、及び113cと力点114aとにより、1組の検知ブロックをなしている。
【0037】
検知用梁113dの長手方向の中央部の下面側(検知用梁113dと検知用梁113fとの交点)には、力点114bが設けられている。検知用梁113d、113e、及び113fと力点114bとにより、1組の検知ブロックをなしている。
【0038】
検知用梁113gの長手方向の中央部の下面側(検知用梁113gと検知用梁113iとの交点)には、力点114cが設けられている。検知用梁113g、113h、及び113iと力点114cとにより、1組の検知ブロックをなしている。
【0039】
検知用梁113jの長手方向の中央部の下面側(検知用梁113jと検知用梁113lとの交点)には、力点114dが設けられている。検知用梁113j、113k、及び113lと力点114dとにより、1組の検知ブロックをなしている。
【0040】
力点114a~114dは、外力が印加される箇所であり、例えば、SOI基板のBOX層及び支持層から形成することができる。力点114a~114dのそれぞれの下面は、支持部111a~111eの下面と略面一である。
【0041】
このように、力または変位を4つの力点114a~114dから取り入れることで、力の種類毎に異なる梁の変形が得られるため、6軸の分離性が良いセンサを実現することができる。
【0042】
なお、センサチップ110において、応力集中を抑制する観点から、内角を形成する部分はR状とすることが好ましい。
【0043】
図3は、各軸にかかる力及びモーメントを示す符号を説明する図である。図3に示すように、X軸方向の力をFx、Y軸方向の力をFy、Z軸方向の力をFzとする。また、X軸を軸として回転させるモーメントをMx、Y軸を軸として回転させるモーメントをMy、Z軸を軸として回転させるモーメントをMzとする。
【0044】
図4は、センサチップ110のピエゾ抵抗素子の配置を例示する図である。4つ力点114a~114dに対応する各検知ブロックの所定位置には、ピエゾ抵抗素子が配置されている。
【0045】
具体的には、力点114aに対応する検知ブロックにおいて、ピエゾ抵抗素子MxR3及びMxR4は、検知用梁113aを長手方向に二等分する線上であって、かつ、検知用梁113aの検知用梁113cに近い領域において検知用梁113cを長手方向(Y方向)に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。また、ピエゾ抵抗素子FyR3及びFyR4は、検知用梁113aを長手方向に二等分する線よりも補強用梁112a側であって、かつ、検知用梁113aの検知用梁113cから遠い領域において検知用梁113cを長手方向に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。
【0046】
また、力点114bに対応する検知ブロックにおいて、ピエゾ抵抗素子MyR3及びMyR4は、検知用梁113dを長手方向に二等分する線上であって、かつ、検知用梁113dの検知用梁113fに近い領域において検知用梁113fを長手方向(X方向)に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。また、ピエゾ抵抗素子FxR3及びFxR4は、検知用梁113dを長手方向に二等分する線よりも補強用梁112b側であって、かつ、検知用梁113dの検知用梁113fから遠い領域において検知用梁113fを長手方向に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。
【0047】
また、ピエゾ抵抗素子MzR3及びMzR4は、検知用梁113dを長手方向に二等分する線上であって、かつ、検知用梁113dの検知用梁113fから遠い領域において検知用梁113fを長手方向に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。ピエゾ抵抗素子FzR2及びFzR3は、検知用梁113eを長手方向に二等分する線よりも支持部111e側であって、かつ、検知用梁113eの検知用梁113fに近い領域において検知用梁113fを長手方向に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。
【0048】
また、力点114cに対応する検知ブロックにおいて、ピエゾ抵抗素子MxR1及びMxR2は、検知用梁113gを長手方向に二等分する線上であって、かつ、検知用梁113gの検知用梁113iに近い領域において検知用梁113iを長手方向(Y方向)に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。また、ピエゾ抵抗素子FyR1及びFyR2は、検知用梁113gを長手方向に二等分する線よりも補強用梁112c側であって、かつ、検知用梁113gの検知用梁113iから遠い領域において検知用梁113iを長手方向に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。
【0049】
また、力点114dに対応する検知ブロックにおいて、ピエゾ抵抗素子MyR1及びMyR2は、検知用梁113jを長手方向に二等分する線上であって、かつ、検知用梁113jの検知用梁113lに近い領域において検知用梁113lを長手方向(X方向)に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。また、ピエゾ抵抗素子FxR1及びFxR2は、検知用梁113jを長手方向に二等分する線よりも補強用梁112d側であって、かつ、検知用梁113jの検知用梁113lから遠い領域において検知用梁113lを長手方向に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。
【0050】
また、ピエゾ抵抗素子MzR1及びMzR2は、検知用梁113jを長手方向に二等分する線上であって、かつ、検知用梁113jの検知用梁113lから遠い領域において検知用梁113lを長手方向に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。ピエゾ抵抗素子FzR1及びFzR4は、検知用梁113kを長手方向に二等分する線よりも支持部111e側であって、かつ、検知用梁113kの検知用梁113lから遠い領域において検知用梁113lを長手方向に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。
【0051】
このように、センサチップ110では、各検知ブロックに複数のピエゾ抵抗素子を分けて配置している。これにより、力点114a~114dに印加(伝達)された力の向き(軸方向)に応じた、所定の梁に配置された複数のピエゾ抵抗素子の出力の変化に基づいて、所定の軸方向の変位を最大で6軸検知することができる。
【0052】
また、センサチップ110では、検知用梁113c、113f、113i、及び113lをできるだけ短くして、検知用梁113b、113e、113h、及び113kを検知用梁113a、113d、113g、及び113jに近つけ、検知用梁113b、113e、113h、及び113kの長さをできるだけ確保する構造としている。この構造により、検知用梁113b、113e、113h、及び113kが弓なりに撓みやすくなって応力集中を緩和でき、耐荷重が向上する。
【0053】
また、センサチップ110では、短くしたことで応力に対する変形が小さくなった検知用梁113c、113f、113i、及び113lにはピエゾ抵抗素子を配置していない。その代り、検知用梁113c、113f、113i、及び113lよりも細くて長く、弓なりに撓みやすい検知用梁113a、113d、113g、及び113j、並びに検知用梁113b、113e、113h、及び113kの応力が最大になる位置の近傍にピエゾ抵抗素子を配置している。その結果、センサチップ110では、効率よく応力を取り込むことが可能となり、感度(同じ応力に対するピエゾ抵抗素子の抵抗変化)が向上する。
【0054】
なお、センサチップ110では、歪の検出に用いるピエゾ抵抗素子以外にも、ダミーのピエゾ抵抗素子が配置されている。ダミーのピエゾ抵抗素子は、歪の検出に用いるピエゾ抵抗素子も含めた全てのピエゾ抵抗素子が、支持部111eの中心に対して点対称となるように配置されている。
【0055】
ここで、ピエゾ抵抗素子FxR1~FxR4は力Fxを検出し、ピエゾ抵抗素子FyR1~FyR4は力Fyを検出し、ピエゾ抵抗素子FzR1~FzR4は力Fzを検出する。また、ピエゾ抵抗素子MxR1~MxR4はモーメントMxを検出し、ピエゾ抵抗素子MyR1~MyR4はモーメントMyを検出し、ピエゾ抵抗素子MzR1~MzR4はモーメントMzを検出する。
【0056】
このように、センサチップ110では、各検知ブロックに複数のピエゾ抵抗素子を分けて配置している。これにより、力点114a~114dに印加(伝達)された力または変位の向き(軸方向)に応じた、所定の梁に配置された複数のピエゾ抵抗素子の出力の変化に基づいて、所定の軸方向の変位を最大で6軸検知することができる。
【0057】
具体的には、センサチップ110において、Z軸方向の変位(Mx、My、Fz)は、所定の検知用梁の変形に基づいて検知することができる。すなわち、X軸方向及びY軸方向のモーメント(Mx、My)は、第1の検知用梁である検知用梁113a、113d、113g、及び113jの変形に基づいて検知することができる。また、Z軸方向の力(Fz)は、第2の検知用梁である検知用梁113e及び113kの変形に基づいて検知することができる。
【0058】
また、センサチップ110において、X軸方向及びY軸方向の変位(Fx、Fy、Mz)は、所定の検知用梁の変形に基づいて検知することができる。すなわち、X軸方向及びY軸方向の力(Fx、Fy)は、第1の検知用梁である検知用梁113a、113d、113g、及び113jの変形に基づいて検知することができる。また、Z軸方向のモーメント(Mz)は、第1の検知用梁である検知用梁113d及び113jの変形に基づいて検知することができる。
【0059】
センサチップ110において、1つの軸につき1個ずつ形成されたブリッジ回路から各軸の出力が得られる。
【0060】
但し、ピエゾ抵抗素子の数を減らし、5軸以下の所定の軸方向の変位を検知するセンサチップとすることも可能である。
【0061】
図5は、センサチップ110における電極配置と配線を例示する図であり、センサチップ110をZ軸方向上側から視た平面図である。図5に示すように、センサチップ110は、電気信号を取り出すための複数の電極パッド15を有している。各電極パッド15は、力点114a~114dに力が印加された際の歪みが最も少ない、センサチップ110の支持部111a~111dの上面に配置されている。各ピエゾ抵抗素子から電極パッド15までの配線16は、各補強用梁上及び各検知用梁上を適宜引き回すことができる。
【0062】
このように、各補強用梁は、必要に応じて配線を引き出す際の迂回路としても利用できるため、検知用梁とは別に補強用梁を配置することで、配線設計の自由度を向上することができる。これにより、各ピエゾ抵抗素子を、より理想的な位置に配置することが可能となる。
【0063】
また、センサチップ110は、基板電位を電源電圧でプルアップするための電極パッド15aを有している。
【0064】
図6は、図5中の支持部111bの領域10における電極パッド及び配線のレイアウトを例示する図である。配線16は、基板上に形成されたアルミニウム等からなる金属配線である。各配線16は、同一の層からなり、各部に引き回されるため、配線16が交差する部分には、拡散配線17が形成されている。拡散配線17は、基板内の拡散層により形成された配線であり、コンタクトプラグ18を介して配線16に接続されている。
【0065】
図7は、図5中のピエゾ抵抗素子MzR4,FxR4を含む領域11における配線のレイアウトを例示する図である。ピエゾ抵抗素子MzR4,FxR4は、それぞれ一対の拡散配線17の間に形成されている。ピエゾ抵抗素子MzR4,FxR4は、拡散配線17と同一の極性であって、かつ不純物濃度が拡散配線17より低濃度の拡散領域である。拡散配線17は、コンタクトプラグ18を介して配線16に接続されている。
【0066】
拡散配線17及びピエゾ抵抗素子MzR4,FxR4の周囲には、拡散配線17及びピエゾ抵抗素子MzR4,FxR4とは反対の極性の拡散領域からなる第1バリア層19が形成されている。すなわち、第1バリア層19は、拡散配線17及びピエゾ抵抗素子の形成領域19aを除く領域に形成されている。
【0067】
第1バリア層19は、少なくとも隣接する拡散配線17間(ピエゾ抵抗素子が接続される部分は除く)に形成される。
【0068】
図8は、図7中のA-A線に沿った断面を示す図である。図8に示すように、センサチップ110は、半導体基板200を用いて形成されている。SOI基板を用いてセンサチップ110を形成する場合には、半導体基板200は、例えば、SOI基板の活性層である。半導体基板200は、例えば、単結晶シリコンにn型不純物を注入してなるn型半導体基板である。半導体基板200の不純物濃度は、例えば、1.0×10-15[m-3]である。
【0069】
拡散配線17は、半導体基板200の表層の所定領域にp型不純物を注入することにより形成されている。
【0070】
第1バリア層19は、半導体基板200の表層の所定領域にn型不純物を注入することにより形成されている。第1バリア層19の不純物濃度は、半導体基板200の不純物濃度より高く、例えば、4.0×10-15[m-3]である。第1バリア層19は、拡散配線17の端部から間隔S1だけ離すように形成されている。間隔S1は、例えば3.5μmである。
【0071】
ピエゾ抵抗素子MzR4は、半導体基板200の表層の所定領域にp型不純物を注入することにより形成されている。ピエゾ抵抗素子MzR4の不純物濃度は、拡散配線17の不純物濃度よりも低い。他のピエゾ抵抗素子についても同様であり、ピエゾ抵抗素子MzR4と同一の製造工程により形成される。
【0072】
さらに、半導体基板200の表層には、第2バリア層20が形成されている。第2バリア層20は、半導体基板200の表層の所定領域にn型不純物を注入することにより形成されている。第2バリア層20は、拡散配線17、第1バリア層19、及びピエゾ抵抗素子よりも浅い表層に形成されている。第2バリア層20の不純物濃度は、第1バリア層19の不純物濃度より高く、例えば、1.0×10-13[m-3]である。
【0073】
第2バリア層20は、コンタクトプラグ18の形成領域18a(図7参照)を除く領域に形成されている。また、第2バリア層20は、拡散配線17の端部から間隔S2だけ離すように形成されている。間隔S2は、例えば2~3μm程度である。
【0074】
半導体基板200上には、酸化シリコン(SiO)からなる表面絶縁膜201が形成されている。また、表面絶縁膜201上には、窒化シリコン(Si)からなる層間絶縁膜202が形成されている。
【0075】
コンタクトプラグ18は、層間絶縁膜202及び表面絶縁膜201をエッチングすることにより形成した貫通孔に金属材料を充填することにより形成されている。
【0076】
配線16は、層間絶縁膜202上に製膜したアルミニウム等からなる金属膜をパターニングすることにより形成されている。また、電極パッド15は、配線16と同一の金属膜により形成されている。
【0077】
なお、半導体基板200には、拡散配線17、第1バリア層19、ピエゾ抵抗素子、第2バリア層20が、この順に形成される。第1バリア層19は、例えば、50KeVの加速電圧でn型不純物をイオン注入することにより形成される。第1バリア層19及び第2バリア層20の深さは、それぞれほぼ一定である。
【0078】
図9は、第1バリア層19の形成領域を示す平面図である。第1バリア層19は、基本的に、拡散配線17及びピエゾ抵抗素子の形成領域19aを除く領域に形成されるが、本実施形態では、電極パッド15の形成領域19bも除いている。
【0079】
図10は、第2バリア層20の形成領域を示す平面図である。第2バリア層20は、基本的に、コンタクトプラグ18の形成領域18aを除く領域に形成されるが、本実施形態では、電極パッド15の形成領域18bも除いている。また、第2バリア層20は、上述のプルアップ用の電極パッド15aを半導体基板200とコンタクトするためのコンタクト部18cが除かれている。
【0080】
図11は、センサチップ110の要部の断面を概略的に示す図である。図11に示すように、電極パッド15の下方には、第1バリア層19及び第2バリア層20は設けられていない。これは、電極パッド15にはボンディングワイヤが接続されるので、ワイヤボンディング時の応力により、第1バリア層19及び第2バリア層20の全体に影響が生じることを抑制するためである。なお、本実施形態では、ワイヤボンディング時の応力の影響を考慮して、電極パッド15の下方に第1バリア層19及び第2バリア層20を設けていないが、ワイヤボンディング時の応力が第1バリア層19及び第2バリア層20に与える影響を無視できるような場合には、第1バリア層19と第2バリア層20のいずれか1つ又は両方を電極パッド15の下方に設けてもよい。
【0081】
プルアップ用の電極パッド15aに接続されたコンタクトプラグ15bの下方には、第2バリア層20は設けられていないが、第1バリア層19が設けられている。したがって、プルアップ用の電極パッド15aは、層間絶縁膜202及び表面絶縁膜201を貫通するコンタクトプラグ15bを介して第1バリア層19に接続されており、第1バリア層19の電位を電源電圧VDDでプルアップする。
【0082】
(効果)
拡散配線17の周囲には空乏層DLが生じるが、配線16と半導体基板200との電位差等により、空乏層DLが薄くなり、寄生MOS構造が生じることにより、隣接する拡散配線17にリークパスが発生する可能性がある。本実施形態に係るセンサチップ110では、隣接する拡散配線17に、拡散配線17とは極性が反対の第1バリア層19が形成されているので、逆方向バイアスにより空乏層DLが広がり、リーク電流の発生が抑制される。同様に、本実施形態に係るセンサチップ110では、隣接するピエゾ抵抗素子間にもピエゾ抵抗素子とは極性が反対の第1バリア層19が形成されているので、ピエゾ抵抗素子間におけるリーク電流の発生が抑制される。
【0083】
また、センサチップ110の表面に、帯電した異物が付着した場合に、配線16と拡散配線17との間や、配線16とピエゾ抵抗素子との間でリークパスが生じる可能性がある。本実施形態に係るセンサチップ110では、拡散配線17及びピエゾ抵抗素子の表層に、拡散配線17及びピエゾ抵抗素子とは極性が反対の第2バリア層20が形成されているので、拡散配線17及びピエゾ抵抗素子と第2バリア層20との間にも空乏層DLが形成され、配線16と拡散配線17との間や、配線16とピエゾ抵抗素子との間におけるリーク電流の発生が抑制される。
【0084】
リーク電流の発生を抑制することにより、センサチップ110の出力におけるオフセット特性やノイズ特性が向上する。オフセット特性とは、ブリッジ回路からの出力電圧のオフセット電圧の特性である。リーク電流が発生することにより、オフセット電圧にはリーク電流に応じた変動が生じ、力及びモーメントの検出値に誤差が生じてしまう。リーク電流の発生を抑制することにより、検出精度を向上させることが可能となる。特に、6軸検知を可能とするセンサチップ110では、Z軸方向の力及びモーメントに対する出力が小さく、リーク電流の影響を受けやすいため、リーク電流の発生を抑制することによる改善効果が大きい。
【0085】
なお、上記実施形態では、半導体基板200、第1バリア層19、及び第2バリア層20をn型とし、拡散配線17及びピエゾ抵抗素子をp型としているが、これとは逆に、第1バリア層19、及び第2バリア層20をp型とし、拡散配線17及びピエゾ抵抗素子をn型としてもよい。各層の不純物濃度の関係は、上記と同様である。
【0086】
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0087】
15 電極パッド、15a 電極パッド、15b コンタクトプラグ、16 配線、17 拡散配線、18 コンタクトプラグ、18c コンタクト部、19 第1バリア層、20 第2バリア層、110 センサチップ、200 半導体基板、201 表面絶縁膜、202 層間絶縁膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11