(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造
(51)【国際特許分類】
B60N 2/876 20180101AFI20230620BHJP
A47C 7/38 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
B60N2/876
A47C7/38
(21)【出願番号】P 2019063263
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井口 正晴
(72)【発明者】
【氏名】安田 慎太郎
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-001230(JP,A)
【文献】特開2006-199231(JP,A)
【文献】特開2004-262351(JP,A)
【文献】特開2018-094976(JP,A)
【文献】特開2018-094974(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0274800(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102012106271(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
A47C 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座面部と背面部とが開かれ前記背面部の上方にヘッドレストが位置する使用状態と、前記ヘッドレストを車両前方に回動させて前記背面部に重ねるとともに前記背面部を前記座面部に向かい折り畳み、前記ヘッドレストが前記背面部と前記座面部の間に挟まれた状態で車両後方に回動されてフロア上に収納された収納状態と、に移動可能な座席と、
前記座席が収納状態において、前記ヘッドレストの車両前方に位置して当該ヘッドレストと車両前後方向で対向する対向面を有する板状部材と、を備え
、
前記座席は、使用状態において前記車両のフロア上に搭載された車載部品の車両上方に位置するとともに、収納状態において前記車載部品の車両後方に位置し、
前記板状部材は、前記座席の収納状態において、前記車載部品と前記ヘッドレストとの間に位置する、ことを特徴とする車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造。
【請求項2】
前記板状部材は、前記座席の骨格部材を構成するシートフレームに設けられている、ことを特徴とする請求項
1に記載の車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造。
【請求項3】
前記板状部材は、前記座席が収納状態において、前記座面部と前記背面部との間を跨いで車両上下方向に延伸した第1延伸部を備えている、ことを特徴とする請求項
2に記載の車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造。
【請求項4】
前記板状部材は、前記座席が使用状態において、前記第1延伸部と接合され前記座面部の下方で車両前後方向に延伸した第2延伸部を備えている、ことを特徴とする請求項
3に記載の車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造。
【請求項5】
前記第2延伸部には、前記座席が収納状態において車幅方向に延びるとともに下方に凹む窪部が形成されている、ことを特徴とする請求項
4に記載の車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造。
【請求項6】
前記シートフレームは、前記座席が使用状態において、
車幅方向に間隔をおいて車両前後方向に延びる一対の側部フレームと、
一対の前記側部フレームの車両前部に位置し車幅方向に延びて一対の前記側部フレームを繋ぐ前部フレームと、
一対の前記側部フレームの車両後部に位置し車幅方向に延びて一対の前記側部フレームを繋ぐ後部フレームと、を備え、
前記第2延伸部は、前記前部フレームと前記後部フレームとに接合され、一対の前記側部フレームには接合されない、ことを特徴とする請求項
4又は
5に記載の車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造。
【請求項7】
前記側部フレームは、車幅方向に屈折した屈折部を備えている、ことを特徴とする請求項
6に記載の車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、折り畳み可能な座席(シート装置)を車両に設け、シートを折り畳んだ状態で車両に収納する技術が知られている。例えば、特許文献1では、ヘッドレストをシートバックに沿うように車両前方に回転させ、シートバックを車両前方に回転させてシートクッションに重ね合わせ、ヘッドレストをシートバックとシートクッションで挟み込んだ状態でシートを収納する技術が開示されている。また、特許文献2では、シートバックを車両前方に回転させてシートクッションに重ね合わせた状態でシートを車両後方に回転させて収納する技術が開示されている。ところで、車両は、車両後方からの衝突によって、車両後部が変形することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-001230号公報
【文献】特開2004-008493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヘッドレストをシートバックとシートクッションで挟み込んだ状態でシートを車両後方に回転させてシートを収納した状態で、車両後方からの衝突を受け、車両後部が変形した場合、車両後部の変形に伴いシートが車両前方に押される場合がある。このとき、ヘッドレストはシートの後部に位置しているため、シートが車両前方に押されることにより車両前方に移動する。このような構造において、シートを収納した状態で、シートの前方に破損を抑制したい車載部品が位置している場合、ヘッドレストの車両前方への移動を規制するものがないため、ヘッドレストが車載部品に衝突し、車載部品を破損させる虞がある。
【0005】
本発明の目的は、車両後部における衝突時に、ヘッドレストの移動を抑制できる車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明の車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造は、座席と、板状部材と、を備えている。座席は、座面部と背面部とが開かれ背面部の上方にヘッドレストが位置する使用状態と、ヘッドレストを車両前方に回動させて背面部に重ねるとともに背面部を座面部に向かい折り畳み、ヘッドレストが背面部と座面部の間に挟まれた状態で車両後方に回動されてフロア上に収納された収納状態と、に移動可能である。板状部材は、座席が収納状態において、ヘッドレストの車両前方に位置して当該ヘッドレストと車両前後方向で対向する対向面を有している。座席は、使用状態において車両のフロア上に搭載された車載部品の車両上方に位置するとともに、収納状態において車載部品の車両後方に位置し、板状部材は、座席の収納状態において、車載部品とヘッドレストとの間に位置する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両後部における衝突時に、ヘッドレストの移動を抑制できる車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造の構成を示す斜視図であって、3rdシート120を使用状態で示している。
【
図3】
図1の構成を3rdシート120を収納状態にして示す斜視図。
【
図7】
図5の3rdシート120を分解して示す斜視図。
【
図8】実施形態の車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造の作用を示す上面図であって、車両後部が衝突によって変形した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
各々の図において、車両前後方向Dh(車両前部Dfと車両後部Dr)、車幅方向Dw及び車両上下方向Dv(上方Duと下方Dd)を矢印によって示している。
【0010】
[車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造の構成]
図1から
図7を参照して、実施形態における車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造の構成を説明する。
【0011】
図1は、実施形態における車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造の構成を示す斜視図であって、3rdシート120を使用状態で示している。
図2は、
図1の構成を示す上面図である。
図3は、
図1の構成を3rdシート120を収納状態にして示す斜視図である。
図4は、
図3の構成を示す上面図である。
図5は、
図3の構成の要部を示す斜視図である。
図6は、
図5の構成を模式的に示す側面図である。
図7は、
図5の3rdシート120を分解して示す斜視図である。
【0012】
実施形態における車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造は、
図1から
図6に示すように、車両100の後部に設けられた構造であって、EV(Electric Vehicle)コンポ110(車載部品)と、3rdシート120(座席)と、ヘッドレストストッパ130(板状部材)と、を有している。
【0013】
EVコンポ110は、
図1から
図6に示され、車両100のフロア101上に取り付けられている。EVコンポ110は、高電圧の電力の受電及び送電を伴う電気機器であって、図示せぬ車載バッテリーと接続されている。
【0014】
3rdシート120は、
図1から
図7に示し、車両100において3列目となる後部座席であって、乗員が座らない場合等に折り畳んで収納可能に構成されている。3rdシート120は、収納状態の場合、荷物を載置可能に構成されている。3rdシート120は、
図1から
図7において、カバーや緩衝材等を省略している。
【0015】
3rdシート120は、
図1等に示すように、乗員が座る座面部120Mと、乗員が背中を付ける背面部120Nを含んでいる。3rdシート120は、
図1及び
図2に示す座面部120Mと背面部120Nが開かれた状態が使用状態に相当し、
図3から
図6に示すように、背面部120Nが座面部120Mに重ねられた状態で車両後方に回転させた状態が収納状態に相当する。
【0016】
3rdシート120の構造を、使用状態において説明する。以下、特に記載がない場合は、3rdシート120の車両前後方向Dh及び上下方向Dvは、3rdシート120使用状態における方向を指す。
【0017】
座面部120Mは、
図7に示すように、その骨格部材を構成する、車幅方向Dw一対の座面側部フレーム121(側部フレーム)、座面前部フレーム123(前部フレーム)及び座面後部フレーム124(後部フレーム)を含んでいる。背面部120Nは、
図7に示すように、その骨格部材を構成する、車幅方向Dw一対の背面側部フレーム125、背面上部フレーム127、を含んでいる。背面部120Nには、ヘッドレスト128が取り付けられている。
【0018】
座面側部フレーム121は、
図5等に示すように、フロア101上の車幅方向Dw両側に間隔をおいて車両前後方向Dhに延びている。座面側部フレーム121は、
図7に示すように、基端側延伸部121a、屈折部121b、先端側延伸部121c、及び連結孔部121fを含んでいる。
【0019】
基端側延伸部121aは、座面側部フレーム121の後端から車両前方Dfに延びている。屈折部121bは、基端側延伸部121aの車両前端と接続され、車両前方Dfに向かって車幅方向Dwの外側に傾斜している。先端側延伸部121cは、屈折部121bの車両前端と接続され、車両前方Dfに延びている。基端側延伸部121a、屈折部121b及び先端側延伸部121cは、一体的に形成されている。
【0020】
座面前部フレーム123は、
図5等に示すように、一対の座面側部フレーム121の車両前端部を連結するように車幅方向Dwに延びている。
【0021】
座面後部フレーム124は、
図5等に示すように、一対の座面側部フレーム121の車両後端部を連結するように車幅方向Dwに延びている。座面後部フレーム124は、
図3等に示すように、座面側部フレーム121よりも車幅方向Dw外側まで延びており、フロア101から上方に突出し車幅方向Dwに対向して設けられた一対の取付台102に、回転可能に取り付けられている。
【0022】
連結孔部121fは、基端側延伸部121aに形成された貫通穴であって、背面側部フレーム125の連結ピン部125eが回転可能に挿入されている。連結孔部121fは、座面後部フレーム124よりも下方に位置している。
【0023】
背面側部フレーム125は、
図5等に示すように、車幅方向Dw両側に間隔をおいて、車両上下方向Dvに延びている。背面側部フレーム125は、
図7に示すように、基端側延伸部125a、屈折部125b、先端側延伸部125c、及び連結ピン部125eを含んでいる。
【0024】
基端側延伸部125aは、背面側部フレーム125の下端から車両上下方向Dvに延びている。屈折部125bは、基端側延伸部125aの車両上端部と接続され、車両上方Duに向かって車幅方向Dwの内側に傾斜している。先端側延伸部125cは、屈折部125bの車両上端部と接続され、車両上方に延びている。基端側延伸部125a、屈折部125b及び先端側延伸部125cは、一体的に形成されている。
【0025】
連結ピン部125eは、基端側延伸部125aに接合されたピンであって、座面側部フレーム121の連結孔部121fに回転可能に挿入される。
【0026】
背面上部フレーム127は、
図5等に示すように、一対の背面側部フレーム125の上端部を接続するように、車幅方向Dwに延びている。
【0027】
ヘッドレスト128は、
図1等に示すように、背面上部フレーム127に車両前方Dfへ回動可能に取り付けられている。ヘッドレスト128は、
図7に示すように、背面上部フレーム127に固定された基部128aと、基部128aから車両上方Duに延び、基部128aに対して回転可能に連結されたヘッド部128bを含んでいる。本実施形態では、ヘッドレスト128は車幅方向に間隔を置いて2つ設けられている。
【0028】
ここで、3rdシート120は、
図1及び
図2に示す使用状態と、
図3から
図6に示す収納状態に、それぞれ移動可能に構成されている。詳細には、使用状態にある3rdシート120において、ヘッドレスト128を基部128aを中心に車両前方Dfに回転させ、ヘッド部128bを背面部120Nの車両前方Dfに位置させる。次に、背面部120Nを連結ピン部125eを回転中心に車両前方Dfに回転させ、座面部120Mの上方に重なるようにする。このとき、ヘッドレスト128は座面部120Mと背面部120Nとに挟まれた状態になる。この状態で、3rdシート120を座面後部フレーム124の取付台102への取り付け部分を回転中心に車両後方Drに回転させ、3rdシート120を反転させることにより、3rdシート120は収納状態となる。なお、3rdシート120を収納状態から使用状態に移動させる際は、これと逆の操作をすればよい。
【0029】
図1及び
図2に示す使用状態において、3rdシート120は、EVコンポ110の上方Duに位置する。
【0030】
図3から
図6に示す収納状態において、3rdシート120は、EVコンポ110の車両後部Drに収納される。収納状態において、ヘッドレスト128は3rdシート120の車両後部に位置している。この状態で、車両がその後方から衝突されたとき(後突)、車体の変形に伴って、収納状態における3rdシート120の車両後部は車両前方Dfに向かって押される。これにより、ヘッドレスト128も車両前方Dfに移動する。このヘッドレスト128の車両前方Dfへの移動を抑制するため、ヘッドレストストッパ130が設けられている。
【0031】
ヘッドレストストッパ130は、
図1から
図7に示され、3rdシート120が収納状態において、ヘッドレスト128の車両前方Dfへの移動を抑制する。
【0032】
ヘッドレストストッパ130は、
図5等に示すように、3rdシート120に設けられている。ヘッドレストストッパ130は、
図7等に示すように、第1延伸部131、第2延伸部132及び窪部133を含んでいる。
【0033】
第1延伸部131は、
図3等に示すように、3rdシート120が収納状態において、座面後部フレーム124の車両前方Dfに位置している。本実施形態では、第1延伸部131は、EVコンポ110とヘッドレスト128との間に位置している。第1延伸部131は、3rdシート120が収納状態において、ヘッドレスト128の前方でヘッドレスト128と車両前後方向Dhで対向するように車幅方向Dwに延び、座面部120Mと背面部120Nとの間を跨いで車両上下方向Dvに延伸している。よって、第1延伸部131には、
図6に示すように、ヘッドレスト128と車両前後方向で対向する対向面131aが形成されている。
【0034】
第2延伸部132は、
図1等に示すように、3rdシート120が使用状態において、座面部120Mの下方Ddに位置している。第2延伸部132は、
図5等に示すように、第1延伸部131の下端から車両前方Dfに延伸し、第1延伸部131と一体的に形成されている。第2延伸部132は、座面前部フレーム123と座面後部フレーム124に接合されており、座面側部フレーム121には接合されていない。
【0035】
窪部133は、
図3等に示すように、車幅方向Dwに延びた凸状のビードからなり、第2延伸部132の車両前後方向Dhに間隔をおいて複数形成されている。窪部133は、
図5等に示すように、3rdシート120が収納状態において、第2延伸部132を下方Ddに向かって部分的に凹ませて形成されている。このため、窪部133が形成されていても、第2延伸部132は、3rdシート120の収納状態において上面がフラットに近くなり、荷物を載置し易い。
【0036】
[車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造の作用]
図8を参照して、実施形態における車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造の作用を説明する。
【0037】
図8は、実施形態における車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造の作用を示す上面図であって、3rdシート120の収納状態において車両後部が後突によって変形した状態を示している。
【0038】
後突時に、車体の変形に伴って、収納状態における3rdシート120は、その後部が車両前方Dfに向かって押される。収納状態における3rdシート120の前部は、取付台102によって固定されているため、車両前方Dfへの移動が抑制されている。収納状態における3rdシート120の後部が車両前方Dfに押されることにより、ヘッドレスト128は車両前方Dfに移動し、ヘッドレストストッパ130に衝突する。ヘッドレストストッパ130の第1延伸部131には、ヘッドレスト128から衝突荷重Pが入力される。第1延伸部131は、第2延伸部132によって支持されている。第2延伸部132は、複数の窪部133をそれぞれ起点として車両前方Dfに蛇腹状に屈折し易くなっている。ここで、第2延伸部132は、座面側部フレーム121には接合されていないことから、車両前後方向Dhに沿った変形が阻害され難い。更に、座面側部フレーム121は、屈折部121bを起点として座屈するように変形し易くなっている。このように、座面側部フレーム121及びヘッドレストストッパ130は、3rdシート120の車両前方Dfへの変形を阻害しないため、後突時に3rdシート120が車両前方Dfへ押された際に、3rdシート120全体が車両前方Dfに移動することを抑制している。
【0039】
[車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造の効果]
実施形態における車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造の効果を説明する。
【0040】
実施形態における車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造では、ヘッドレストストッパ130は、3rdシート120が収納状態において、ヘッドレスト128の車両前方Dfに位置しヘッドレスト128の車両前方Dfへの移動を抑制する。また、ヘッドレストストッパ130は、ヘッドレスト128に対向する対向面131aを有する板状部材であるため、ヘッドレストストッパ130がヘッドレスト128に押され車両前方に移動したとしても、ヘッドレストストッパ130を介することで物品等に広い面で衝突することになる。
【0041】
これにより、後突時に、ヘッドレスト128が車両前方Dfに移動して、収納状態におけるヘッドレスト128の前方Dfにある物品等に衝突することを抑制できる。また、衝突したとしても、ヘッドレストストッパ130を介して広い面で接触することとなるので物品等の破損を抑制することができる。
【0042】
実施形態における車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造において、3rdシート120は使用状態においてEVコンポ110の上方Duに位置するとともに、収納状態においてEVコンポ110の車両後方Drに位置し、ヘッドレストストッパ130は、3rdシート120の収納状態においてEVコンポ110とヘッドレスト128の間に位置している。
【0043】
これにより、EVコンポ110を使用状態における3rdシート120の下方Ddに配置してスペースの有効活用をすることができるとともに、衝突時には、ヘッドレストストッパ130の移動を抑制して破損させたくないEVコンポ110等の車載部品を保護することができる。
【0044】
実施形態における車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造において、ヘッドレストストッパ130は、3rdシート120の骨格部材を構成するシートフレームに取り付けられている。
【0045】
ヘッドレストストッパ130は、十分な剛性を備えた骨格部材を構成するシートフレームに設けられていることから、ヘッドレスト128を十分に受け止めることができ、後突時に、EVコンポ110をより確実に保護できる。
また、ヘッドレストストッパ130が3rdシート120に設けられることになるため、ヘッドレストストッパ130を予め3rdシート120に取り付けておけば、車両への3rdシート120の取り付け作業によってヘッドレストストッパ130も車両に取り付けられることとなるため、作業性が向上する。さらに、3rdシート120を収納状態から使用状態に移動したとき、ヘッドレストストッパ130も3rdシート120とともに移動するため、3rdシート120の使用状態において、EVコンポ110の車両後方Drにはヘッドレストストッパ130が位置することはなく、スペースの確保や見栄えの向上につながる。
【0046】
実施形態における車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造において、ヘッドレストストッパ130の第1延伸部131は、3rdシート120が収納状態において、座面部120Mと背面部120Nとの間を跨いで車両上下方向Dvに延伸している。
【0047】
これにより、後突時に、ヘッドレスト128が車両前方Dfに移動し、座面部120Mと背面部120Nとの間から車両前方Dfに飛び出そうとすることをより確実に抑制することができる。
【0048】
実施形態における車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造において、ヘッドレストストッパ130の第2延伸部132は、第1延伸部131と接続され、3rdシート120が使用状態において座面部120Mの下方Ddで車両前後方向Dhに延伸している。
【0049】
これにより、後突時に、ヘッドレスト128から押圧される第1延伸部131を第2延伸部132によって支持することができる。更に、第2延伸部132は、3rdシート120が使用状態において、3rdシート120に対して上方Duから下方Ddに向かって大きな荷重が入力された場合に、その荷重を第2延伸部132によって受け止めることができる。
【0050】
実施形態における車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造において、第2延伸部132には、3rdシート120の収納状態において車幅方向Dwに延びる凹状の窪部133が形成されている。
【0051】
これにより、後突時に、窪部133を起点として第2延伸部132を車両前後方向Dhに対して屈折させることができる。この結果、第2延伸部132の変形を促進させて3rdシート120全体の車両前方Dfへの移動を抑制することができる。更に、窪部133によって第2延伸部132の車両上下方向Dvに対する剛性を高めて、第2延伸部132の車両上下方向Dvへの撓みを抑制することができる。
【0052】
実施形態における車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造において、第2延伸部132は、座面前部フレーム123と座面後部フレーム124とに接合され、座面側部フレーム121には接合されていない。
【0053】
これにより、第2延伸部132を座面前部フレーム123と座面後部フレーム124によって支持していることから、第2延伸部132の車両上下方向Dvに対する剛性を維持できる一方、座面側部フレーム121には接合されていないことから、第2延伸部132の車両前後方向Dhへの変形を促進できる。
【0054】
実施形態における車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造において、座面側部フレーム121は、車幅方向Dwに屈折した屈折部(屈折部121b)を備えている。
【0055】
これにより、座面側部フレーム121を、屈折部121bを起点として座屈するように変形させることができる。したがって、後突時に、座面側部フレーム121の変形を車両前後方向Dhに促進させて、第2延伸部132の変形を阻害せず、3rdシート120全体の車両前方への移動を抑制できる。
【0056】
[車両用シート装置のヘッドレスト移動抑制構造の態様]
本発明を実施するに当たり、上記の実施形態は、一例であり、具体的な態様を種々に変更して実施できる。
【0057】
例えば、実施形態において、車載部品は、一例として、EVコンポ110を想定しているが、EVコンポ110に限定されない。車載部品は、車両100の後突時に特に破損を抑制して保護することが好ましいものに相当する。
【0058】
又、実施形態において、ヘッドレストストッパ130の1つの第1延伸部131が、2つのヘッドレスト128に車両前後方向で対向するように車幅方向に延びているものとしたが、第1延伸部131を各ヘッドレスト128に対応するように複数設けてもよい。
【0059】
又、実施形態において、後部座席は、一例として、車両100において3列目となる3rdシート120を想定しているが、車両100において2列目となる2ndシートとしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
100…車両、101…フロア、102…取付台、110…EVコンポ(車載部品)、120…3rdシート(座席)、120M…座面部、120N…背面部、121…座面側部フレーム(側部フレーム)、121a…基端側延伸部、121b…屈折部、121c…先端側延伸部、121f…連結孔部、123…座面前部フレーム(前部フレーム)、124…座面後部フレーム(後部フレーム)、125…背面側部フレーム、125a…基端側延伸部、125b…屈折部、125c…先端側延伸部、125e…連結ピン部、127…背面上部フレーム、128…ヘッドレスト、128a…基部、128b…ヘッド部、130…ヘッドレストストッパ(板状部材)、131…第1延伸部、131a…対向面、132…第2延伸部、133…窪部、P…車両100の後突に伴う衝突荷重、Dh…車両前後方向、Df…車両前部、Dr…車両後部、Dw…車幅方向、Dv…鉛直方向、Du…上方、Dd…下方。