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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/00 20060101AFI20230620BHJP
   B60C 15/02 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
B60C15/00 M
B60C15/00 K
B60C15/02 D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019063906
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020163898
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】杉山 直樹
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/126098(WO,A1)
【文献】特開2007-022218(JP,A)
【文献】特開平09-164821(JP,A)
【文献】特開2017-193194(JP,A)
【文献】特開2014-125144(JP,A)
【文献】特開2015-145114(JP,A)
【文献】特開2015-212112(JP,A)
【文献】米国特許第07004218(US,B1)
【文献】米国特許第05253692(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 15/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部を有する空気入りタイヤであって、
前記一対のビード部のそれぞれは、ビードトウからタイヤ軸方向外側に延びるビードベース面と、リムのフランジ部と当接するようにタイヤ半径方向に延びるビードフランジ面と、前記ビードベース面と前記ビードフランジ面との間のコーナ部を形成するビードヒール面とを含み、
前記ビード部の横断面において、前記ビードヒール面は、曲率半径が大きい主部と、前記主部よりも曲率半径が小さい副部とを含み、
前記主部は、前記副部を介して、前記ビードベース面又は前記ビードフランジ面に連なり、
前記副部の曲率半径は、3~7mmである、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
一対のビード部を有する空気入りタイヤであって、
前記一対のビード部のそれぞれは、ビードトウからタイヤ軸方向外側に延びるビードベース面と、リムのフランジ部と当接するようにタイヤ半径方向に延びるビードフランジ面と、前記ビードベース面と前記ビードフランジ面との間のコーナ部を形成するビードヒール面とを含み、
前記ビード部の横断面において、前記ビードヒール面は、曲率半径が大きい主部と、前記主部よりも曲率半径が小さい副部とを含み、
前記主部は、前記副部を介して、前記ビードベース面又は前記ビードフランジ面に連なり、
前記ビードフランジ面は、前記ビードヒール面に接続されたフランジ内側部を有し、
前記ビード部の横断面において、前記フランジ内側部は、直線状に延びており、
前記ビードベース面は、前記ビードヒール面に接続されたベース外側部を有し、
前記ベース外側部をタイヤ軸方向外側へ延長させた第1仮想線、及び、前記フランジ内側部をタイヤ半径方向内側へ延長させた第2仮想線の交点と、前記ベース外側部のタイヤ軸方向の外端との間のタイヤ軸方向の長さは、4.5~7.5mmである、
空気入りタイヤ。
【請求項3】
一対のビード部を有する空気入りタイヤであって、
前記一対のビード部のそれぞれは、ビードトウからタイヤ軸方向外側に延びるビードベース面と、リムのフランジ部と当接するようにタイヤ半径方向に延びるビードフランジ面と、前記ビードベース面と前記ビードフランジ面との間のコーナ部を形成するビードヒール面とを含み、
前記ビード部の横断面において、前記ビードヒール面は、曲率半径が大きい主部と、前記主部よりも曲率半径が小さい副部とを含み、
前記主部は、前記副部を介して、前記ビードベース面又は前記ビードフランジ面に連なり、
前記ビードフランジ面は、前記ビードヒール面に接続されたフランジ内側部を有し、
前記ビード部の横断面において、前記フランジ内側部は、直線状に延びており、
前記ビードベース面は、前記ビードヒール面に接続されたベース外側部を有し、
前記ベース外側部をタイヤ軸方向外側へ延長させた第1仮想線、及び、前記フランジ内側部をタイヤ半径方向内側へ延長させた第2仮想線の交点と、前記フランジ内側部のタイヤ半径方向の内端との間のタイヤ半径方向の長さは、4.5~7.5mmである、
空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ビードヒール面は、前記主部と、前記主部の前記ビードベース面側に連なる第1副部と、前記主部の前記ビードフランジ面側に連なる第2副部とからなる、請求項1ないし3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記主部の曲率半径が、9mm以上である、請求項1ないし4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記ビードベース面は、前記ビードヒール面に接続されたベース外側部を有し、
前記ビード部の横断面において、前記ベース外側部は、直線状に延びている、請求項1ないし5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記ベース外側部の長さは3mm以上である、請求項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記フランジ内側部の長さは3mm以上である、請求項2又は3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記ビードヒール面は、前記主部の前記ビードフランジ面側に連なる第2副部を含み、
前記主部又は前記第2副部には、タイヤ軸方向に突出する凸部が設けられる、請求項1ないし8のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記凸部は、タイヤ周方向に連続している、請求項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記凸部の長手方向と直交する幅は1.5mm以下である、請求項9又は10に記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記凸部の突出高さは1.0mm以下である、請求項9ないし11のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
前記空気入リタイヤは、乗用車用である、請求項1ないし12のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビード部を有する空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ビード部のビードヒール部を直線状かつ所定の角度で面取りした空気入りタイヤが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4415460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、リムとの均一な嵌合を実現する空気入りタイヤが望まれている。特に、空気入りタイヤのビード部とリムとの間の嵌合圧が、タイヤ周方向に一定となることが望まれており、このようなタイヤは、周上均一嵌合性能が良いとされる。周上均一嵌合性能が良い空気入りタイヤは、例えば、ラジアルフォースバリエーション(以下、単に、「RFV」と表す場合がある。)が小さく、リム組時のタイヤのユニフォミティに優れる利点がある。
【0005】
本発明は、以上のような実情に鑑みなされたもので、周上均一嵌合性能を向上することができる空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一対のビード部を有する空気入りタイヤであって、前記一対のビード部のそれぞれは、ビードトウからタイヤ軸方向外側に延びるビードベース面と、リムのフランジ部と当接するようにタイヤ半径方向に延びるビードフランジ面と、前記ビードベース面と前記ビードフランジ面との間のコーナ部を形成するビードヒール面とを含み、前記ビード部の横断面において、前記ビードヒール面は、曲率半径が大きい主部と、前記主部よりも曲率半径が小さい副部とを含み、前記主部は、前記副部を介して、前記ビードベース面又は前記ビードフランジ面に連なる。
【0007】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記ビードヒール面が、前記主部と、前記主部の前記ビードベース面側に連なる第1副部と、前記主部の前記ビードフランジ面側に連なる第2副部とからなるのが望ましい。
【0008】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記主部の曲率半径が、9mm以上であるのが望ましい。
【0009】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記副部の曲率半径が、3~7mmであるのが望ましい。
【0010】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記ビードベース面が、前記ビードヒール面に接続されたベース外側部を有し、前記ビード部の横断面において、前記ベース外側部は、直線状に延びているのが望ましい。
【0011】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記ベース外側部の長さが3mm以上であるのが望ましい。
【0012】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記ビードフランジ面が、前記ビードヒール面に接続されたフランジ内側部を有し、前記ビード部の横断面において、前記フランジ内側部は、直線状に延びているのが望ましい。
【0013】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記フランジ内側部の長さが3mm以上であるのが望ましい。
【0014】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記ビードベース面が、前記ビードヒール面に接続されたベース外側部を有し、前記ベース外側部をタイヤ軸方向外側へ延長させた第1仮想線、及び、前記フランジ内側部をタイヤ半径方向内側へ延長させた第2仮想線の交点と、前記ベース外側部のタイヤ軸方向の外端との間のタイヤ軸方向の長さは、4.5~7.5mmであるのが望ましい。
【0015】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記ビードベース面が、前記ビードヒール面に接続されたベース外側部を有し、前記ベース外側部をタイヤ軸方向外側へ延長させた第1仮想線、及び、前記フランジ内側部をタイヤ半径方向内側へ延長させた第2仮想線の交点と、前記フランジ内側部のタイヤ半径方向の内端との間のタイヤ半径方向の長さは、4.5~7.5mmであるのが望ましい。
【0016】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記ビードヒール面が、前記主部の前記ビードフランジ面側に連なる第2副部を含み、前記主部又は前記第2副部には、タイヤ軸方向に突出する凸部が設けられるのが望ましい。
【0017】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記凸部が、タイヤ周方向に連続しているのが望ましい。
【0018】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記凸部の長手方向と直交する幅が1.5mm以下であるのが望ましい。
【0019】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記凸部の突出高さが1.0mm以下であるのが望ましい。
【0020】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記空気入リタイヤが、乗用車用であるのが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の空気入りタイヤは、ビード部の横断面において、ビードヒール面が、主部と、前記主部よりも曲率半径が小さい副部とを含み、前記主部は、前記副部を介して、ビードベース面又はビードフランジ面に連なっている。
【0022】
発明者らは、タイヤの周上均一嵌合性が悪化する原因について、種々の研究を行った。一般に、タイヤをリムに装着するリム組工程では、先ず、ビード部がリムのリムシート面に載せられ、次に、ビード部がタイヤ軸方向外側に徐々に移動し、最後に、ビード部がリムフランジに当接することで完了する。ここで、ビードヒール面の曲率半径が小さいと、ビードヒール面が先鋭化し、ひいては、リム組過程で、タイヤ周方向のいずれかの位置で局部的に大きな圧力でリムと嵌合することがある。これは、以後のビード部の移動を妨げ、ひいては、ビード部とリムとの間の嵌合圧が、タイヤ周方向に一定になることを妨げる。
【0023】
本発明では、前記ビードヒール面の前記主部は、前記ビードヒール面において相対的に大きい曲率半径を有するので、リム組時に、リムとの間で局部的に大きな嵌合圧が生じるのを抑制する。一方、曲率半径が大きい主部をビードヒール面に設けると、前記ビードベース面や前記ビードフランジ面が相対的に小さくなりやすいが、前記副部を相対的に小さい曲率半径で形成することにより、この点を解消する。すなわち、前記ビードベース面又は前記ビードフランジ面と前記リムとの接触長さを十分に維持し、嵌合圧の上昇を抑制することができる。
【0024】
したがって、本発明の空気入りタイヤは、前記ビード部と前記リムとの間の嵌合圧をタイヤ周方向に亘って均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の空気入りタイヤの一実施形態を示す断面図である。
図2図1のビード部の拡大図である。
図3図2のビードヒール面の拡大図である。
図4】(a)、(b)は、他の実施形態のビード部の断面図である。
図5】さらに、他の実施形態のビード部の断面図である。
図6】さらに、他の実施形態のビード部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明の一実施形態を示す空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある)1のリム組しない自由状態でのタイヤ回転軸(図示省略)を含む横断面(タイヤ子午線断面)図である。本発明は、乗用車用のタイヤ1の他、自動二輪車用や重荷重用等の種々のタイヤ1に好適に用いられる。以下、特に言及されない場合、タイヤ1の各部の寸法等は、この自由状態で測定された値である。
【0027】
図1に示されるように、タイヤ1は、本実施形態では、トレッド部2からサイドウォール部3をへて両側のビード部4のビードコア5に至るカーカス6と、このカーカス6の半径方向外側かつトレッド部2の内部に配されるベルト層7とを具えている。カーカス6及びベルト層7には、公知の態様が適宜採用される。ビード部4には、リムR(図2に示す)が装着される。
【0028】
図2は、図1のビード部4の拡大図である。図2に示されるように、リムRは、例えば、正規リムRAが用いられる。「正規リム」RAとは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば "Design Rim" 、或いはETRTOであれば "Measuring Rim"である。
【0029】
リムRは、本実施形態では、ビード部4のビードトウ4eと当接するベース部Raと、ベース部Raのタイヤ軸方向の外端からタイヤ半径方向外側かつタイヤ軸方向外側へ滑らかに湾曲しながら突出するフランジ部Rbとを有している。ビードトウ4eは、ビード部4のタイヤ半径方向の内端である。ベース部Raは、例えば、そのタイヤ軸方向内側に、タイヤ1がリムRからはずれることを防止するためのタイヤ半径方向外側に隆起するハンプ(図示省略)を有する。
【0030】
本実施形態のビード部4は、それぞれ、ビードベース面10とビードフランジ面11とビードヒール面12とを含んでいる。ビードベース面10は、本実施形態では、ビードトウ4eからタイヤ軸方向外側に延びている。ビードフランジ面11は、本実施形態では、リムRのフランジ部Rbと当接するようにタイヤ半径方向に延びている。ビードヒール面12は、本実施形態では、ビードベース面10とビードフランジ面11との間のコーナ部Cを形成している。
【0031】
ビードヒール面12は、曲率半径が大きい主部14と、主部14よりも曲率半径が小さい副部15とを含んでいる。主部14は、副部15を介して、ビードベース面10又はビードフランジ面11に連なっている。このように、主部14は、ビードヒール面12において相対的に大きい曲率半径R1を有しているので、リム組時に、リムRとの間で局部的に大きな嵌合圧が生じるのを抑制する。一方、曲率半径が大きい主部14をビードヒール面12に設けると、ビードベース面10やビードフランジ面11が相対的に小さくなりやすいが、副部15を相対的に小さい曲率半径R2で形成することにより、この点を解消する。すなわち、ビードベース面10又はビードフランジ面11とリムRとの接触長さを十分に維持し、嵌合圧の上昇を抑制することができる。
【0032】
また、タイヤ1は、一般に、未加硫ゴムで作られた生タイヤ(図示省略)を周知の加硫金型で加硫成形して得られる。タイヤ1は、例えば、前記加硫成形時、前記加硫金型と前記生タイヤとの間に空気が残ると、タイヤ1の表面が凹むベアと呼ばれる損傷が生じる。本実施形態では、主部14及び副部15が曲率半径を有する円弧状で形成されているので、前記生タイヤが主部14及び副部15を形成する加硫金型の内面と当接しやすく、空気が前記加硫金型内に残りづらい。このため、本実施形態のタイヤ1は、ベアの発生が抑制される。
【0033】
本実施形態のビードヒール面12は、主部14と、主部14のビードベース面10側に連なる第1副部16と、主部14のビードフランジ面11側に連なる第2副部17とから構成されている。換言すると、副部15は、本実施形態では、ビードベース面10側の第1副部16と、ビードフランジ面11側の第2副部17とで構成されている。このようなビードヒール面12は、ビードベース面10及びビードフランジ面11とリムRとの接触長さを十分に維持することができる。
【0034】
主部14の曲率半径R1は、好ましくは、9mm以上である。主部14の曲率半径R1が9mm未満の場合、主部14とリムRとの間の嵌合圧が大きくなり、ビードベース面10又はビードフランジ面11とリムRとの嵌合圧が均一とならないおそれがある。
【0035】
副部15の曲率半径R2は、好ましくは、3~7mmである。曲率半径R2が3mm未満の場合、副部15とリムRとの間の嵌合圧が大きくなり、ビードベース面10又はビードフランジ面11とリムRとの間の嵌合圧が均一とならないおそれがある。また、ベアの発生を抑制できないおそれがある。曲率半径R2が7mmを超える場合、上述の通り、ビードベース面10又はビードフランジ面11とリムRとの接触長さが小さくなり、これらの嵌合圧が過度に大きくなるおそれがある。
【0036】
特に、限定されるものではないが、主部14のタイヤ半径方向長さLaは、ビードヒール面12のタイヤ半径方向長さL1の50%~60%が望ましい。第1副部16のタイヤ半径方向の長さLbは、例えば、ビードヒール面12のタイヤ半径方向長さL1の7%~15%が望ましい。第2副部17のタイヤ半径方向の長さLcは、例えば、ビードヒール面12のタイヤ半径方向長さL1の30%~38%が望ましい。
【0037】
ビードベース面10は、本実施形態では、ビードヒール面12に接続されたベース外側部18を含んで形成されている。ベース外側部18は、本実施形態では、ビードトウ4eからビードヒール面12の第1副部16のタイヤ軸方向の内端16iまで延びている。
【0038】
ベース外側部18は、直線状に延びている。このようなベース外側部18は、リムRのベース部Raとの嵌合圧を小さく維持するのに役立つ。本明細書において、前記「直線状」とは、一つの直線で形成されるものは勿論、タイヤ半径方向又はタイヤ軸方向に対して一方側へ凸の円弧状かつその曲率半径が15mm以上で形成される態様をいう。ベース外側部18は、例えば、一つの直線で形成されている。
【0039】
ベース外側部18の長さL3は、3mm以上であるのが望ましい。これにより、上述の作用が効果的に発揮される。
【0040】
ベース外側部18は、本実施形態では、第1副部16と滑らかに連なっている。前記「滑らかに」とは、第1副部16のタイヤ軸方向の内端16iでの接線16tとベース外側部18との間の角度θ1が±5度以下であることを意味する。本実施形態では、角度θ1は、0度である。
【0041】
図3は、ビード部4のコーナ部Cの拡大図である。図3に示されるように、ビードフランジ面11は、本実施形態では、ビードヒール面12に接続されたフランジ内側部21と、フランジ内側部21のタイヤ半径方向外側に配されたフランジ外側部22とを含んでいる。
【0042】
フランジ内側部21は、本実施形態では、直線状に延びている。フランジ内側部21は、例えば、一つの直線で形成されている。
【0043】
フランジ内側部21の長さL2は、3mm以上であるのが望ましい。これにより、フランジ内側部21とリムRのフランジ部Rbとの間の嵌合圧が小さくなる。
【0044】
フランジ内側部21は、本実施形態では、第2副部17と滑らかに連なっている。前記「滑らかに」とは、第2副部17のタイヤ半径方向の外端17eでの接線17tとフランジ内側部21との間の角度θ2が±5度以下であることを意味する。本実施形態では、角度θ2は、0度である。
【0045】
本実施形態の第2副部17には、タイヤ軸方向に突出する凸部25が設けられる。前記加硫金型と前記生タイヤとの間の空気を排出するために、前記加硫金型には、例えば、その内面と外面とを継ぐ孔状のベント流路が設けられる場合がある。また、凸部25を形成するためには、前記加硫金型の前記内面に、凸部25の反転模様となる溝状部が形成される。そして、前記ベント流路の一端を前記溝状部と接続し、他端を前記外面に設けることで、前記空気がスムーズに前記加硫金型の外部に排出できる。このように、凸部25は、ベアの発生を抑制するのに役立つ。また、凸部25は、リムRのフランジ部Rb(図2に示す)と当接し、リム組時のタイヤ内腔の気密性を高め、内圧充填によるリム組を容易にし得る。凸部25は、例えば、主部14に設けられても良い。また、凸部25は、例えば、第2副部17及び主部14に跨って設けられても良い。
【0046】
凸部25は、タイヤ周方向に連続しているのが望ましい。これにより、ベアの発生抑制効果が、タイヤ周方向に連続して発揮される。
【0047】
凸部25のタイヤ軸方向の外端25eは、フランジ内側部21をタイヤ半径方向内側へ延長させた第2仮想線21cよりもタイヤ軸方向の内側に形成されるのが望ましい。このような凸部25は、フランジ部Rbとの間の嵌合圧を過度に高めることを抑制するので、周上均一嵌合性能を高く維持する。
【0048】
凸部25は、例えば、その長手方向と直交する幅waは、1.5mm以下であるのが望ましい。また、凸部25の突出高さhaは、1.0mm以下であるのが望ましい。凸部25の幅waが1.5mmを超える場合、又は、凸部25の突出高さhaが1.0mmを超える場合、フランジ部Rbとの間の嵌合圧が過度に大きくなり、周上均一嵌合性能が低下する。
【0049】
ベース外側部18をタイヤ軸方向外側へ延長させた第1仮想線18c、及び、第2仮想線21cの交点K1と、ベース外側部18のタイヤ軸方向の外端18eとの間のタイヤ軸方向の長さL4は、4.5~7.5mmであるのが望ましい。長さL4が4.5mm未満の場合、第1副部16やベース外側部18とリムRとの間の嵌合圧が大きくなるおそれがある。長さL4が7.5mmを超える場合、ビードベース面10とリムRとの接触長さが十分に維持されず、その嵌合圧が過度に大きくなるおそれがある。
【0050】
上述の作用を効果的に高めるために、交点K1とフランジ内側部21のタイヤ半径方向の内端21iとの間のタイヤ半径方向の長さL5は、4.5~7.5mmであるのが望ましい。
【0051】
図1に示されるように、ビード部4は、例えば、耐摩耗性に優れる硬質ゴムからなるゴムチェーファー8が配されている。ゴムチェーファー8は、例えば、ビードベース面10を形成する中央部8a、中央部8aのタイヤ軸方向内側をタイヤ半径方向の内外に延びる内片部8b、及び、ビードフランジ面11を形成する外片部8cを有する断面略U字状で形成される。このようなゴムチェーファー8は、リムRとの摩擦による損傷やリムずれ等の不具合を防止し得る。
【0052】
図4(a)は、他の実施形態のビード部4の横断面図、図4(b)は、さらに他の実施形態のビード部4の横断面図である。本実施形態の構成要素と同じ構成要素には、同じ符号が付されて、その詳細な説明が省略される。図4(a)に示されるように、この実施形態のビード部4では、副部15は、第1副部16のみで形成されている。この実施形態では、フランジ内側部21と主部14とが滑らかに連なっている。このような実施形態でも、周上均一嵌合性能が向上される。
【0053】
図4(b)に示されるように、この実施形態のビード部4では、副部15は、第2副部17のみで形成されている。この実施形態では、ベース外側部18と主部14とが滑らかに連なっている。
【0054】
図5及び図6は、さらに他の実施形態のビード部4の横断面図である。本実施形態の構成要素と同じ構成要素には、同じ符号が付されて、その詳細な説明が省略される。図5に示されるように、この実施形態のビード部4では、主部14が直線(曲率半径R1は∞)で形成される。このような主部14も、先鋭化が抑制され、ひいてはリムRとの間の嵌合圧を低減するのに役立つ。
【0055】
図6に示されるように、この実施形態のビード部4では、ビードベース面10が、ベース外側部18と、ベース外側部18に連なるベース内側部19とから構成される。この実施形態では、ベース内側部19がビードトウ4eを含んでいる。ベース内側部19は、例えば、タイヤ半径方向内側に凹の円弧状で形成されている。このようなベース内側部19も、周上均一嵌合性能を向上させる。ベース内側部19の曲率半径R4は、例えば、3~10mmであるのが望ましい。
【0056】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例
【0057】
図1の基本構造をなすサイズ245/45R18の乗用車用の空気入りタイヤが、表1の仕様に基づき試作され、このときに生じているビード部のベアが確認されるとともに、各試供タイヤについて周上均一嵌合性能がテストされた。なお、比較例1には、副部が設けられていない。テスト方法は、以下の通りである。
【0058】
<ベア発生率>
生タイヤを周知構造の加硫金型で加硫成形することで試供タイヤが製造された。そして、ビード部にベアが発生した試供タイヤの割合が算出された。結果は、百分率で示される。数値が小さい程、ベア発生率が小さく優れている。生タイヤは、周知の成形方法で成形されている。
【0059】
<周上均一嵌合性能>
上記試供タイヤのRFV(ラジアルフォースバリエーション)が測定された。測定は、タイヤユニフォミティ試験機を用い、JASO C607:2000の「自動車用タイヤのユニフォミティ試験方法」に準拠して、各タイヤにつき2回行われた。2回目の測定は、1回目の測定の後、一度リムを取り外し、再度リム組みした後に行われた。結果は、1回目及び2回目のRFVの測定値をフーリエ変換して1次波形を算出し、これら1次波形の波形差(最大値と最小値との差(N))で表される。数値が小さい程、周上均一嵌合性能に優れている。
リム:正規リム
内圧:200kPa
荷重:4.88kN
走行速度:7km/h
テストの結果が表1に示される。
【0060】
【表1】
【0061】
表1から明らかなように、実施例のタイヤは、比較例のタイヤに比べてベア発生率が小さく、周上均一嵌合性能に優れていることが確認できた。
【符号の説明】
【0062】
1 空気入りタイヤ
4 ビード部
4e ビードトウ
10 ビードベース面
11 ビードフランジ面
12 ビードヒール面
14 主部
15 副部
R リム
Rb フランジ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6