(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】ポリオレフィン多孔質フィルム、蓄電デバイス用セパレータ、および蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
C08J 9/00 20060101AFI20230620BHJP
B32B 5/32 20060101ALI20230620BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20230620BHJP
C08L 23/04 20060101ALI20230620BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20230620BHJP
H01G 11/06 20130101ALI20230620BHJP
H01G 11/52 20130101ALI20230620BHJP
H01M 50/409 20210101ALI20230620BHJP
【FI】
C08J9/00 A CES
B32B5/32
B32B27/32 E
C08L23/04
C08L23/10
H01G11/06
H01G11/52
H01M50/409
(21)【出願番号】P 2019068600
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三村 貴信
(72)【発明者】
【氏名】崎本 亮
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-234578(JP,A)
【文献】国際公開第2011/108235(WO,A1)
【文献】特開2017-141428(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03415556(EP,A1)
【文献】特開平06-212006(JP,A)
【文献】特開2014-118535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
B29C 44/00-44/60、67/20
B32B 1/00-43/00
C08L 1/00-101/14
H01M 50/409
H01G 11/06、11/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂層と、ポリプロピレン系樹脂を含むポリプロピレン系樹脂層とを有するポリオレフィン多孔質フィルムであって、
前記ポリエチレン系樹脂の重量平均分子量が45万以下であり、前記ポリエチレン系樹脂中における、分子量が100万以上である高分子量成分の含有割合が2~11質量%である、ポリオレフィン多孔質フィルム。
【請求項2】
前記ポリエチレン系樹脂の分子量分布が2~20である請求項1に記載のポリオレフィン多孔質フィルム。
【請求項3】
前記ポリエチレン系樹脂のメルトフローレートが0.1~10g/10分である請求項1または2に記載のポリオレフィン多孔質フィルム。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれかに記載のポリオレフィン多孔質フィルムを有する蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項5】
請求項
4に記載の蓄電デバイス用セパレータと、正極と、負極とを備える蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐裂性および透気性に優れたポリオレフィン多孔質フィルム、ならびに、このポリオレフィン多孔質フィルムを有する蓄電デバイス用セパレータ、および蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池などの蓄電デバイスは、携帯電話、ノート型パソコンなどの小型電子機器、電気自動車などの電源用途として、広く普及している。このようなリチウム二次電池は、正極と、負極と、正極と負極との間に介在する短絡防止用のセパレータと、非水電解液とから構成されている。セパレータとしては、たとえば、ポリオレフィンを原料とし、これを薄膜状に形成して多孔化したポリオレフィン多孔質フィルムが利用されている。
【0003】
このようなポリオレフィンを原料とするポリオレフィン多孔質フィルムからなるセパレータの製造方法としては、湿式法および乾式法が知られている。湿式法では、たとえば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂に、溶媒などの添加物を混合した樹脂組成物を、フィルム状に製膜した後、製膜したフィルムから添加物を抽出し、次いで、添加物を抽出したフィルムを延伸することにより、ポリオレフィン多孔質フィルムが製造される。
【0004】
一方、乾式法は、延伸時の開裂を利用して空隙を形成することで、ポリオレフィン多孔質フィルムを得る方法である。ポリオレフィン多孔質フィルムの製造方法として乾式法を採用した場合、湿式法では必須となる溶媒などの添加物の抽出工程を必要としないため、湿式法に比べて一般的に生産性に優れている。
【0005】
たとえば、特許文献1には、乾式法によりポリオレフィン多孔質フィルムを得る技術として、インフレーション成形により得られたフィルムと、螺旋スリットしたフィルムと、Tダイから押出成形することにより得られたフィルムとを、貼り合わせた後、これを一軸延伸により多孔化することで、ポリオレフィン多孔質フィルムを得る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術においては、螺旋スリットしたフィルムを用いることで、配向方向と延伸方向とに所定角度を持たせた交差層を導入し、これにより、耐裂性に優れたポリオレフィン多孔質フィルムを得るものであるが、このような交差層は、延伸による開孔性が十分でなく、そのため、得られるポリオレフィン多孔質フィルムは、透気性が十分でないという課題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、耐裂性および透気性に優れたポリオレフィン多孔質フィルム、ならびに、このようなポリオレフィン多孔質フィルムを有する蓄電デバイス用セパレータ、および蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記目的を達成すべく、鋭意検討を行ったところ、ポリエチレン系樹脂を含むポリオレフィン多孔質フィルムを形成するためのポリエチレン系樹脂として、重量平均分子量が45万以下であり、かつ、分子量が100万以上である高分子量成分の含有割合が2~11質量%であるものを用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記の[1]~[7]を提供するものである。
[1]ポリエチレン系樹脂を含むポリオレフィン多孔質フィルムであって、
前記ポリエチレン系樹脂の重量平均分子量が45万以下であり、前記ポリエチレン系樹脂中における、分子量が100万以上である高分子量成分の含有割合が2~11質量%である、ポリオレフィン多孔質フィルム。
【0011】
[2]前記ポリエチレン系樹脂の分子量分布が2~20である[1]に記載のポリオレフィン多孔質フィルム。
【0012】
[3]前記ポリエチレン系樹脂のメルトフローレートが0.1~10g/10分である[1]または[2]に記載のポリオレフィン多孔質フィルム。
【0013】
[4]さらに、ポリプロピレン系樹脂を含む[1]~[3]のいずれかに記載のポリオレフィン多孔質フィルム。
【0014】
[5]前記ポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂層と、前記ポリプロピレン系樹脂を含むポリプロピレン系樹脂層とを有する[4]に記載のポリオレフィン多孔質フィルム。
【0015】
[6][1]~[5]のいずれかに記載のポリオレフィン多孔質フィルムを有する蓄電デバイス用セパレータ。
【0016】
[7][6]に記載の蓄電デバイス用セパレータと、正極と、負極とを備える蓄電デバイス。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、耐裂性および透気性に優れたポリオレフィン多孔質フィルム、ならびに、このようなポリオレフィン多孔質フィルムを有する蓄電デバイス用セパレータ、および蓄電デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のポリオレフィン多孔質フィルムは、ポリエチレン系樹脂を含むポリオレフィン多孔質フィルムであって、
前記ポリエチレン系樹脂の重量平均分子量が45万以下であり、前記ポリエチレン系樹脂中における、分子量が100万以上である高分子量成分の含有割合が2~11質量%の範囲にあるものである。
【0019】
本発明者等は、ポリエチレン系樹脂を含むポリオレフィン多孔質フィルムの耐裂性および透気性を向上させるために、ポリエチレン系樹脂に着目し、検討を行ったところ、ポリエチレン系樹脂として、重量平均分子量が45万以下であり、かつ、分子量が100万以上である高分子量成分の含有割合が2~11質量%の範囲にあるものを用いることで、ポリオレフィン多孔質フィルムを耐裂性および透気性に優れたものとすることができることを見出したものである。
【0020】
[ポリオレフィン多孔質フィルム]
本発明のポリオレフィン多孔質フィルムは、ポリエチレン系樹脂を含む。
本発明においては、ポリオレフィン多孔質フィルムを構成するポリエチレン系樹脂として、重量平均分子量が45万以下であり、かつ、分子量が100万以上である高分子量成分の含有割合が2~11質量%の範囲にあるものを用いる。
【0021】
ポリエチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、45万以下であり、好ましくは26万~43万であり、より好ましくは27万~40万、さらに好ましくは28万~38万である。また、ポリエチレン系樹脂中における、分子量が100万以上である高分子量成分の含有割合は、2~11質量%であり、好ましくは5~10質量%であり、より好ましくは6~9質量%である。重量平均分子量を、45万以下とすることでガーレ値を小さくすることが可能となる。この詳しい原因は判明していないがタイ分子数が減少して空孔径が大きくなることが要因と考えられる。分子量が100万以上である高分子量成分の含有割合が11質量%を超える場合には、ポリオレフィン多孔質フィルムは、耐裂性に劣るものとなってしまう。この詳しいメカニズムは判明していないがおそらく製膜後の配向緩和が抑制されてしまうことで分子鎖がMDに高配向してしまうことが考えられる。また、分子量が100万以上である高分子量成分の含有割合が2質量%未満であると、開孔性に劣るものとなり、ガーレ値(透気度)が大きく上昇してしまう。なお、ポリエチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)、および分子量が100万以上である高分子量成分の含有割合は、たとえば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により、ポリスチレン換算の値として求めることができる。
【0022】
ポリエチレン系樹脂の分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、特に限定されないが、2~20であることが好ましく、より好ましくは4~17、さらに好ましくは6~13である。分子量分布が、上記範囲にあると、開孔性を良好なものとすることができる。なお、ポリエチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、たとえば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により、ポリスチレン換算の値として求めることができる。
【0023】
また、ポリエチレン系樹脂は、メルトフローレート(MFR)が、好ましくは0.1~10g/10分であり、より好ましくは0.3~5g/10分、さらに好ましくは0.6~3g/10分である。メルトフローレートが、上記範囲にあると、ポリオレフィン多孔質フィルムをセパレータとして蓄電デバイスに組み込んだ際に、当該蓄電デバイスが異常発熱したとき、ポリエチレン系樹脂の溶融を適切に進行させることができ、これにより、電池機能を適切に消失(シャットダウン)させることができる。メルトフローレートは、JIS K6758に準拠し、190℃、2.16kgの荷重で測定することができる。
【0024】
なお、本発明において、ポリエチレン系樹脂としては、エチレン単位を80質量%以上、好ましくは90質量%以上含有する樹脂であればよく、エチレン単独重合体、エチレンと他のオレフィンとの共重合体等が挙げられる。ポリエチレン系樹脂としては、一種の重合体を単独で用いてもよいし二種以上を併用してもよい。また、ポリエチレン系樹脂には、一般的に界面活性剤、老化防止剤、可塑剤、難燃剤、着色剤等の添加剤を、目的に応じて含有していてもよい。
【0025】
ポリエチレン系樹脂の密度は、特に限定されないが、0.950~0.970g/cm3であることが好ましい。ポリエチレン系樹脂としては、密度が0.960g/cm3以上の高密度ポリエチレンがより好ましいが、中密度ポリエチレンでもよい。
【0026】
ポリエチレン系樹脂の融点は、特に限定されないが、好ましくは125~140℃であり、より好ましくは130~136℃である。
【0027】
ポリエチレン系樹脂の製造方法としては、従来公知の方法を用いることができ、特に限定されない。たとえば、ポリエチレン系樹脂は、チーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒といった触媒を用いて製造することができ、特にチーグラー・ナッタ触媒を用いた方法が好ましい。重合方法は単段、多段どちらでも構わないが多段の方が好ましい。ポリエチレン系樹脂の重量平均分子量や、分子量が100万以上である高分子量成分の含有割合は、重合温度、触媒量等の各種製造条件を調節することにより制御することができる。
【0028】
多段重合においては、直列または並列に接続された複数の重合反応器で順次連続的に重合を行うことが好ましい。重合は、有機溶媒中、液状単量体中、もしくは気相中で行うことができる。多段重合では、たとえば、まず、第一段目において、エチレンあるいは、エチレンとα-オレフィンとを重合/共重合させることで、高分子量成分となるポリエチレンを製造する。次いで、第二段目において、重合系中にエチレンおよび水素を導入し、低分子量成分となるポリエチレンを製造する。すなわち、多段重合では、高分子量成分および低分子量成分を含むポリエチレン系樹脂を製造することができ、このような態様を採用することが好ましく、このような方法によれば、重量平均分子量や、分子量が100万以上である高分子量成分の含有割合が所望の範囲にあるポリエチレン系樹脂を得ることができる。あるいは、第一段目で低分子量成分のポリエチレンを、第二段目で高分子量成分のポリエチレンを順次製造する方法を採用してもよい。なお、エチレンと共重合させるα-オレフィンとしては、たとえば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセンなどが挙げられる。
【0029】
本発明のポリオレフィン多孔質フィルムは、上述したポリエチレン系樹脂に加えて、ポリプロピレン系樹脂を含有していてもよい。
【0030】
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単位を80質量%以上、好ましくは95質量%以上含有する樹脂であればよく、プロピレン単独重合体、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体等が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂としては、一種の重合体を単独で用いてもよいし二種以上を併用してもよい。また、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体のいずれであってもよい。プロピレンと共重合されるオレフィンとしては、たとえば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセンなどのα-オレフィン等が挙げられる。また、ポリプロピレン系樹脂には、一般的に界面活性剤、老化防止剤、可塑剤、難燃剤、着色剤等の添加剤を、目的に応じて含有していてもよい。
【0031】
ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは25万~120万であり、より好ましくは50万~100万、さらに好ましくは50万~90万であり、特に好ましくは55万~85万である。重量平均分子量が上記範囲にあるポリプロピレン系樹脂によれば、共押出法により、前駆体フィルム(延伸多孔化により、ポリオレフィン多孔質フィルムとするためのフィルム)の製造を行った場合でも、良好な開孔を有するポリオレフィン多孔質フィルムを提供することができる。とりわけ、重量平均分子量が60万~85万のポリプロピレン樹脂を用いた場合は、開孔性と強度に優れたポリオレフィン多孔質フィルムを製造することができる。
【0032】
また、ポリプロピレン系樹脂の分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、特に限定されないが、好ましくは7.5~15.0であり、より好ましくは8.0~14.5、さらに好ましくは8.5~14.0である。分子量分布を上記範囲とすることで、ポリオレフィン多孔質フィルムの開口率をより高めることができ、これにより、ポリオレフィン多孔質フィルムのガーレ値をより高めることができる。ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、たとえば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により、ポリスチレン換算の値として求めることができる。
【0033】
ポリプロピレン系樹脂のメソペンタッド分率は、特に限定されないが、好ましくは90%以上であり、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは96.1%以上、特に好ましくは96.2%以上である。ペンタッド分率が90%以上であるポリプロピレン系樹脂によれば、共押出法により、前駆体フィルム(延伸多孔化により、ポリオレフィン多孔質フィルムとするためのフィルム)の製造を行った際に、ラメラ結晶をより適切に成長させることができ、これにより、前駆体フィルムを延伸多孔化して多孔質フィルムとした際に、得られるポリオレフィン多孔質フィルムを、良好な空孔率を有するものとすることができる。なお、メソペンタッド分率の上限は、特に限定されないが、好ましくは98%以下であり、より好ましくは97.8%以下である。メソペンタッド分率は、たとえば、13C-核磁気共鳴スペクトルのピーク帰属に基づいて定量されたポリプロピレン系樹脂中におけるプロピレンモノマー単位が5個連続して等しい立体構造を有する割合を意味しており、立体規則性の指標として一般的に用いられている。
【0034】
ポリプロピレン系樹脂の製造方法としては、従来公知の方法を用いることができ、特に限定されない。たとえば、ポリプロピレン系樹脂は、チーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒といった触媒を用いて製造することができ、特にチーグラー・ナッタ触媒を用いた方法が好ましい。重合方法は単段、多段いずれでもよい。重量平均分子量、分子量分布、メソペンタッド分率等は、重合温度、触媒量等の各種製造条件を調節することにより制御することができる。
【0035】
本発明のポリオレフィン多孔質フィルムは、ポリエチレン系樹脂を含むものであればよく、ポリエチレン系樹脂のみから構成されるものであってもよいし、あるいは、ポリエチレン系樹脂と、ポリプロピレン系樹脂とを含むものであってもよい。
【0036】
本発明のポリオレフィン多孔質フィルムが、ポリエチレン系樹脂と、ポリプロピレン系樹脂とを含むものである場合には、ポリエチレン系樹脂と、ポリプロピレン系樹脂とを混練等によりブレンドし、単層のフィルムとしてしてもよいし、あるいは、ポリエチレン系樹脂と、ポリプロピレン系樹脂とが積層されたものであってもよい。ポリエチレン系樹脂と、ポリプロピレン系樹脂とが積層されたものである場合において、その構成は特に限定されないが、上述したポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂層(以下、PE層)の上に、上述したポリプロピレン系樹脂を含むポリプロピレン系樹脂層(以下、PP層)を有するような構成であればよく、たとえば、PE層/PP層/PE層、PP層/PE層/PP層といった三層構造、PP層/PE層/PP層/PE層/PP層、PE層/PP層/PE層/PP層/PE層といった五層構造などが挙げられる。これらの中でも、ポリエチレン系樹脂を含むPE層の両面に、一対のポリプロピレン系樹脂を含むPP層が配置されてなる構成、すなわち、PP層/PE層/PP層の三層構造が好適である。
【0037】
本発明のポリオレフィン多孔質フィルムは、膜厚が、好ましくは40μm以下であり、より好ましくは35μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。膜厚が40μm以下であると、蓄電デバイス用のセパレータとして用いた場合に、イオン伝導性を十分なものとすることができ、これにより、蓄電デバイスのレート特性を良好なものとすることができる。本発明のポリオレフィン多孔質フィルムの膜厚の下限は、好ましくは7μm以上であり、より好ましくは8μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。膜厚が7μm以上であると、蓄電デバイス用のセパレータとして用いた場合に、破膜の発生を適切に抑制することができ、蓄電デバイスの短絡の発生を有効に抑制することができる。
【0038】
ポリオレフィン多孔質フィルムの膜厚は、たとえば、走査型電子顕微鏡(SEM)により、ポリオレフィン多孔質フィルムの断面を撮影した画像を画像解析する方法や、打点式の厚み測定装置を用いる方法などにより測定することができる。
【0039】
本発明のポリオレフィン多孔質フィルムの空孔率は、特に限定されないが、好ましくは45~70%であり、より好ましくは45~55%である。
【0040】
また、本発明のポリオレフィン多孔質フィルムを蓄電デバイス用のセパレータとして用いる場合、ガーレ値(透気度)は230秒/100cc以下であることが好ましく、200秒/100cc以下がより好ましい。ポリオレフィン多孔質フィルムのガーレ値が230秒/100cc以下であると、セパレータとしてポリオレフィン多孔質フィルムを用いた蓄電デバイスにおいて、高温保存時におけるインピーダンスの上昇を効果的に抑制できる。なお、ポリオレフィン多孔質フィルムのガーレ値が低すぎると、セパレータとしてポリオレフィン多孔質フィルムを用いた蓄電デバイスにおいて、蓄電デバイスを作動させた際に短絡が発生しやすくなる。このため、ポリオレフィン多孔質フィルムのガーレ値は、50秒/100cc以上であることが好ましく、65秒/100cc以上であることがより好ましく、75秒/100cc以上であることがさらに好ましい。
【0041】
また、ポリオレフィン多孔質フィルムのガーレ値(全層のガーレ値、総ガーレ値)に対するPE層のガーレ値の割合(PE層のガーレ値の割合(%)=(PE層のガーレ値/総ガーレ値)×100)は、好ましくは20%以下であり、より好ましくは17%以下、さらに好ましくは14%以下である。PE層のガーレ値の割合を上記のように低くすることで、蓄電デバイス用のセパレータとして用いた場合に、安全性を十分なものとしながら、イオン移動を良好なものとすることができる。
【0042】
ポリオレフィン多孔質フィルム中における、ポリエチレン系樹脂の含有割合は、ポリオレフィン多孔質フィルムの全重量100質量%に対して、好ましくは20~70質量%、より好ましくは30~60質量%、さらに好ましくは35~55質量%である。ポリエチレン系樹脂の含有割合を上記範囲とすることにより、ポリオレフィン多孔質フィルムを、ポリエチレン系樹脂と、ポリプロピレン系樹脂とが積層されたものとした場合に、得られる多孔質フィルムをセパレータとして蓄電デバイスに組み込んだ際に、当該蓄電デバイスが異常発熱したとき、十分な量のポリエチレン系樹脂が溶融し、これにより、PP層に形成された開孔を適切に塞ぐことができ、電池機能を適切に消失(シャットダウン)させることができる。
【0043】
[ポリオレフィン多孔質フィルムの製造方法]
本発明のポリオレフィン多孔質フィルムの製造方法としては特に限定されないが、製造時に溶媒を使用しない乾式プロセスが好ましい。溶媒を使用する湿式法で製造したポリオレフィン多孔質フィルムは、溶媒を用いることから乾式法と比較して生産性に劣り、さらには、得られるポリオレフィン多孔質フィルム中に、除去できない溶媒成分が残留し、これが可塑剤として作業することに起因し、メルトダウン温度が向上しないため、好ましくない。
【0044】
以下、本発明のポリオレフィン多孔質フィルムを製造する工程について説明する。
本発明のポリオレフィン多孔質フィルムは、たとえば、前駆体フィルムの製造工程、前駆体フィルムの加熱工程、および前駆体フィルムの延伸工程の3つの工程を経ることで製造することができる。以下においては、PE層を中間層とし、その両面にPP層を設けた前駆体フィルムを製造する場合を例示して説明するが、このような態様に特に限定されるものではない。
【0045】
[前駆体フィルムの製造工程]
前駆体フィルムの製造工程では、上述したポリエチレン系樹脂と上述したポリプロピレン系樹脂とを一括してフィルム状に押し出すことで、製膜する方法、すなわち、共押出しにより製膜する方法により、前駆体フィルムを製造する工程である。
【0046】
ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂とを共押出しする際における、共押出しに使用する装置としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。そのような共押出し用の装置としては、たとえば、サーキュラーダイを備えた共押出機、フィードブロックまたはマルチマニホールド型のTダイを備えた共押出機などが挙げられる。
【0047】
共押出機を用いて共押出しする際における、ダイ温度(すなわち、製膜温度)は、好ましくは185~240℃であり、より好ましくは190~235℃、さらに好ましくは195~230℃である。ダイ温度を185℃以上とすることにより、製膜時に破断することなく前駆体フィルムを形成できる。また、ダイ温度を240℃以下とすることにより、熱によるポリプロピレン系樹脂の劣化を低減でき、最終的に得られるポリオレフィン多孔質フィルムの特性の低下を抑制することができる。
【0048】
[前駆体フィルムの加熱工程]
前駆体フィルムの加熱工程は、上記した前駆体フィルムの製造工程において得られた前駆体フィルムについて、熱処理を行う工程である。前駆体フィルムについて、熱処理を行うことにより、前駆体フィルムを構成するポリエチレン系樹脂およびポリプロピレン系樹脂を結晶化させることができ、これにより、前駆体フィルムを延伸による多孔化により適したものとすることができ、延伸による多孔化をより好適に行うことができる。また、熱処理条件により、前駆体フィルムの結晶化度をコントロールすることができ、熱処理条件により結晶化度をコントロールすることにより、延伸多孔化により得られるポリオレフィン多孔質フィルムの開孔特性を調整することができる(すなわち、間接的にコントロールすることができる)。
【0049】
熱処理の方法としては、たとえば、前駆体フィルムを予め加熱したロールに当接させる方法や、前駆体フィルムを所定温度に加温された環境下を通過させる方法などが挙げられ、適切な方法を用いるとよい。
【0050】
熱処理温度は、好ましくは110℃以上145℃以下であり、より好ましくは128℃超140℃以下、さらに好ましくは130℃以上136℃以下である。熱処理温度を上記範囲とすることにより、前駆体フィルムの結晶化度をより適切に高めることができ、得られるポリオレフィン多孔質フィルムのガーレ値(透気度)を十分に低いものとすることができる。また、熱処理時間は、好ましくは20秒間~60分間であり、より好ましくは40秒間~40分間、さらに好ましくは70秒間~20分間である。熱処理時間は、上述の熱処理の温度に応じて適宜定めればよい。
【0051】
PE層とPP層との層厚比は、目的に応じて適宜変更するとよい。たとえば、PP層/PE層/PP層の三層構造とする場合には、PE層の熱処理を確実に実施してPP層に良好な開孔を形成するという観点より、それぞれの表層のPP層の厚みを、少なくともPE層の厚みと同じ厚み、もしくはPE層の厚みよりも薄くするとよい。このような層構造とすることで、PE層を確実に熱処理することができ、延伸時にPE層に良好な開孔を形成することが可能となる。また、このような構成により、得られるポリオレフィン多孔質フィルムをセパレータとして蓄電デバイスに組み込んだ際に、当該蓄電デバイスが異常発熱したとき、十分な量のポリエチレン系樹脂が溶融し、これにより、PP層に形成された開孔を適切に塞ぐことができ、電池機能を適切に消失(シャットダウン)させることができる。
【0052】
熱処理された前駆体フィルムのPP層におけるラメラ厚みは、X線小角散乱法で測定した値で、好ましくは90~150Åであり、より好ましくは95~140Å、さらに好ましくは100~130Å、特に好ましくは100~120Åである。ラメラ厚みを上記範囲とすることで、PP層を、PE層と比べて細やかな開孔を有し、かつ、PE層のガーレ値と比較して高いガーレ値を有するものとすることができる。また、このような構造とすることで、保液性を高められる効果が期待でき、本発明のポリオレフィン多孔質フィルムを、蓄電デバイス用のセパレータとして用いた場合に、液枯れ等の発生を効果的に低減でき、また、蓄電デバイスの耐電圧特性の向上も期待できる。
【0053】
また、熱処理された前駆体フィルムのPE層のラメラ厚みは、X線小角散乱法で測定した値で、好ましくは130~300Åであり、その下限は140Å以上であることがより好ましく、150Å以上であることがさらにより好ましい。ラメラ厚みが130Å以上であると、延伸多孔化処理を経ることによって孔径の比較的大きな細孔をPE層内に形成することができ、得られるポリオレフィン多孔質フィルムのガーレ値(透気度)を十分に低いものとすることができる。一方、PE層のラメラ厚みが130Å未満であると、得られるポリオレフィン多孔質フィルムは、耐電圧特性は良好となるものの、ガーレ値が高くなり過ぎてしまい、ポリオレフィン多孔質フィルムを蓄電デバイス用のセパレータとして用いた場合に、蓄電デバイス用のセパレータとして適さなくなってしまう可能性が生じてしまう。また、耐電圧特性の観点からも好ましくない。
【0054】
また、熱処理された前駆体フィルムにおけるPE層とPP層とのラメラ厚みを上記のようにすることで、前駆体フィルムを延伸して多孔化したフィルムのPE層とPP層との層間のガーレ値を比較的低い値に制御できる。
【0055】
[前駆体フィルムの延伸工程]
前駆体フィルムの延伸工程は、上述した前駆体フィルムの加熱工程により加熱された前駆体フィルムを延伸することで多孔化(延伸多孔化)させ、これにより、ポリオレフィン多孔質フィルムを得る工程である。
【0056】
延伸工程における延伸方式としては、特に限定されないが、機械方向(MD)への一軸延伸方式、機械方向と略垂直をなす幅方向(TD)への一軸延伸方式、機械方向(MD)に次いで幅方向(TD)に延伸する逐次二軸延伸方式、機械方向(MD)と幅方向(TD)とでほぼ同時に延伸する同時二軸延伸方式、チューブラー二軸延伸方式等が挙げられる。これらの中で目的に応じて適した延伸方式を採用するとよい。
【0057】
延伸多孔化の具体的な方法としては、たとえば、熱処理された前駆体フィルムを、低温延伸ゾーンにて低温延伸し、次いで高温延伸ゾーンにて低温延伸よりも高い温度で延伸することで多孔化することで、ポリオレフィン多孔質フィルムを得る方法が挙げられる。低温延伸と高温延伸のうちのどちらか一方の延伸だけでは、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂の両方を十分に多孔化することができず、ポリオレフィン多孔質フィルムを形成できなくなってしまう場合がある。
【0058】
低温延伸の温度は、特に限定されないが、好ましくは-20℃以上、+50℃以下であり、より好ましくは+20℃以上、+40℃以下である。低温延伸の温度が低すぎると延伸中に前駆体フィルムの破断が生じやすくなり好ましくない。一方、低温延伸の温度が高すぎると、前駆体フィルム中のポリエチレン系樹脂が開孔されにくくなるので好ましくない。
【0059】
低温延伸の延伸倍率は、特に限定されないが、3%以上、200%以下の範囲が好ましく、より好ましくは5%以上、100%以下の範囲である。低温延伸の延伸倍率が3%以上であると、ガーレ値が十分に低いポリオレフィン多孔質フィルムが得られやすくなる。一方、低温延伸の延伸倍率が200%を超えると、発生したクレーズがクラックに変化し、破膜の原因となる。このため低温延伸の延伸倍率は、200%以下であることが好ましい。
【0060】
高温延伸の温度は、好ましくは70℃以上150℃以下であり、より好ましくは80℃以上145℃以下である。高温延伸の温度をこの範囲とすることにより、高温延伸における多孔化を十分なものとすることができ、ガーレ値が十分に低いポリオレフィン多孔質フィルムが得られやすくなる。
【0061】
高温延伸の延伸倍率は、特に限定されないが、100%以上、400%以下の範囲であることが好ましい。高温延伸の延伸倍率が低すぎると、ポリオレフィン多孔質フィルムのガーレ値が十分に低くならないおそれがある。また、高温延伸の延伸倍率が高すぎると、ポリオレフィン多孔質フィルムのガーレ値が低くなりすぎる場合がある。
【0062】
以上のようにして、本発明のポリオレフィン多孔質フィルムを製造することができる。
【0063】
なお、上記においては、共押出しにより前駆体フィルムを製造する方法、すなわち、共押出法を例示したが、共押出法に代えて、ポリエチレン系樹脂フィルム、およびポリプロピレン系樹脂フィルムを別個に準備し、これらを別個に熱処理した後、貼り合わせて、貼り合わせたフィルムを延伸多孔化することで、ポリオレフィン多孔質フィルムを製造するラミネート法により、ポリオレフィン多孔質フィルムを製造してもよい。
【0064】
ラミネート法においては、ポリエチレン系樹脂フィルム、およびポリプロピレン系樹脂フィルムを、それぞれ別個に、Tダイによる溶融成形などにより製造する。溶融成形においては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂のそれぞれについて、溶融温度の20℃以上60℃以下の温度で、ドラフト比10以上1000以下、好ましくは50以上500以下の条件で、Tダイによる溶融成形を行うことで、ポリエチレン系樹脂フィルム、およびポリプロピレン系樹脂フィルムを製造することができる。この際における、引取速度は、特に限定はされないが、好ましくは10~200m/分で成形される。
【0065】
次いで、Tダイによる溶融成形などにより得られた、ポリエチレン系樹脂フィルム、およびポリプロピレン系樹脂フィルムを、熱圧着によって積層することで、前駆体フィルムを得る。ポリエチレン系樹脂フィルムと、ポリプロピレン系樹脂フィルムとは、これらを加熱されたロール間を通すことで熱圧着される。具体的には、ポリエチレン系樹脂フィルムと、ポリプロピレン系樹脂フィルムとが複数組の原反ロールスタンドから巻きだされ、加熱されたロール間でニップされ圧着されて積層される。たとえば、PP層/PE層/PP層の三層構造とする場合には、この順で熱圧着による積層が行われるように、ポリエチレン系樹脂フィルムおよびポリプロピレン系樹脂フィルムを、加熱されたロール間に供給すればよい。
【0066】
各フィルムを熱圧着させる際における、ロ-ルの温度(熱圧着温度)は、120℃以上160℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは125℃以上150℃以下である。熱圧着温度が低すぎると、フィルム間の剥離強度が弱くなり、その後の延伸工程で剥がれが生じる。逆に熱圧着温度が高すぎると、ポリエチレン系樹脂フィルムが溶融してしまう。
そして、このようなラミネート方法により得られる前駆体フィルムに対ついて、上述した共押出しにより得られる前駆体フィルムと同様にし、延伸による多孔化を行うことで、本発明のポリオレフィン多孔質フィルムを得ることができる。
【0067】
以上のように、本発明のポリオレフィン多孔質フィルムは、共押出しによる方法、あるいはラミネート法により、前駆体フィルムを得て、これを延伸により多孔化させることで製造することができるものであるが、本発明においては、ラミネート法と比較して、高い生産効率にてポリオレフィン多孔質フィルムを製造することができるという観点より、共押出しによる方法が好ましい。すなわち、ラミネート法では、前駆体フィルムを得るためには、まず、ポリエチレン系樹脂フィルム、およびポリプロピレン系樹脂フィルムを個別に成形した後、次いで、熱処理した後、これらを貼り合わせて融着させる必要がある一方で、共押出法によれば、ポリエチレン系樹脂と、ポリプロピレン系樹脂とを一括して押し出すことで、ポリエチレン系樹脂層と、ポリプロピレン系樹脂層とを有する前駆体フィルムを一括で成形できることから、ラミネート法と比較して、高い効率にて前駆体フィルムおよびポリオレフィン多孔質フィルムを生産できるものであり、そのため、好ましい。
【0068】
特に、本発明のポリオレフィン多孔質フィルムは、ポリエチレン系樹脂として、重量平均分子量が45万以下であり、分子量が100万以上である高分子量成分の含有割合が2~11質量%であるものを含有するものであるため、ポリプロピレン系樹脂と組み合わせて、共押出法により、製造を行った場合でも、優れた耐裂性および透気性を実現することができるものである。
【0069】
[蓄電デバイス]
本発明の蓄電デバイスは、上述した本発明のポリオレフィン多孔質フィルムを含む蓄電デバイス用セパレータと、正極と、負極とを備えるものである。
【0070】
(非水電解液)
本発明の蓄電デバイスは、上述した本発明のポリオレフィン多孔質フィルムを含む蓄電デバイス用セパレータと、正極と、負極とに加えて、通常、非水電解液を含有する。非水電解液に使用される非水溶媒としては、環状カーボネート、鎖状エステルが好適に挙げられる。広い温度範囲、特に高温での電気化学特性が相乗的に向上するため、鎖状エステルが含まれることが好ましく、鎖状カーボネートが含まれることがさらに好ましく、環状カーボネートと鎖状カーボネートの両方が含まれることがもっとも好ましい。なお、「鎖状エステル」なる用語は、鎖状カーボネートおよび鎖状カルボン酸エステルを含む概念として用いる。
【0071】
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ビニレンカーボネート(VC)から選ばれる一種または二種以上が挙げられ、ECとVCの組み合わせ、PCとVCの組み合わせが特に好ましい。
【0072】
また、非水溶媒がエチレンカーボネートおよび/またはプロピレンカーボネートを含むと電極上に形成される被膜の安定性が増し、高温、高電圧サイクル特性が向上するので好ましい。エチレンカーボネートおよび/またはプロピレンカーボネートの含有量は、非水溶媒の総体積に対し、好ましくは3体積%以上、より好ましくは5体積%以上、さらに好ましくは7体積%以上である。また、その上限としては、好ましくは45体積%以下、より好ましくは35体積%以下、さらに好ましくは25体積%以下である。
【0073】
鎖状エステルとしては、非対称鎖状カーボネートとして、メチルエチルカーボネート(MEC)、対称鎖状カーボネートとして、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、鎖状カルボン酸エステルとして酢酸エチル(以下、EA)が好適に挙げられる。前記鎖状エステルの中でも、MECとEAのような非対称かつエトキシ基を含有する鎖状エステルの組み合わせが可能である。
【0074】
鎖状エステルの含有量は、特に制限されないが、非水溶媒の総体積に対して、60~90体積%の範囲で用いるのが好ましい。鎖状エステルの含有量が60体積%以上であれば非水電解液の粘度が高くなりすぎず、90体積%以下であれば非水電解液の電気伝導度が低下して広い温度範囲、特に高温での電気化学特性が低下するおそれが少ないので上記範囲であることが好ましい。
【0075】
鎖状エステルの中でもEAが占める体積の割合は、非水溶媒中に1体積%以上が好ましく、2体積%以上がより好ましい。その上限としては、10体積%以下がより好ましく、7体積%以下であるとさらに好ましい。非対称鎖状カーボネートはエチル基を有するとより好ましく、メチルエチルカーボネートが特に好ましい。
環状カーボネートと鎖状エステルの割合は、広い温度範囲、特に高温での電気化学特性向上の観点から、環状カーボネート:鎖状エステル(体積比)が10:90~45:55が好ましく、15:85~40:60がより好ましく、20:80~35:65が特に好ましい。
【0076】
非水電解液に使用される電解質塩としては、リチウム塩が好適に挙げられる。リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiN(SO2F)2、LiN(SO2CF3)2からなる群より選ばれる1種または2種以上が好ましく、LiPF6、LiBF4およびLiN(SO2F)2から選ばれる1種または2種以上がより好ましく、LiPF6を用いることがさらに好ましい。
【0077】
非水電解液は、たとえば、上述した非水溶媒を混合し、これに上述した電解質塩および溶解助剤などを特定の混合比率で混合させた組成物を添加する方法により得ることができる。この際、用いる非水溶媒および非水電解液に加える化合物は、生産性を著しく低下させない範囲内で、予め精製して、不純物が極力少ないものを用いることが好ましい。
【0078】
本発明のポリオレフィン多孔質フィルムを含む蓄電デバイス用セパレータは、たとえば、下記の第1、第2の蓄電デバイスに使用することができる。また、この場合において、非水電解質として、液体状のものだけでなくゲル化されているものも使用できる。中でも電解質塩としてリチウム塩を使用するリチウムイオン電池(第1の蓄電デバイス)用やリチウムイオンキャパシタ(第2の蓄電デバイス)用のセパレータとして用いることが好ましく、リチウムイオン電池用に用いることがより好ましく、リチウムイオン二次電池用に用いることがさらに好ましい。
【0079】
(第1の蓄電デバイス)
第1の蓄電デバイスとしてのリチウムイオン二次電池は、正極、負極および上述した非水電解液を有する。正極、負極等の構成部材は特に制限なく使用できる。
【0080】
たとえば、リチウムイオン二次電池用正極活物質としては、コバルト、マンガン、およびニッケルからなる群より選ばれる1種または2種以上を含有するリチウムとの複合金属酸化物が使用される。これらの正極活物質は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
このようなリチウム複合金属酸化物としては、たとえば、LiCoO2、LiCo1-xMxO2(ただし、MはSn、Mg、Fe、Ti、Al、Zr、Cr、V、Ga、Zn、およびCuから選ばれる1種または2種以上の元素)、LiMn2O4、LiNiO2、LiCo1-xNixO2、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2、LiNi0.5Mn0.3Co0.2Mn0.3O2、LiNi0.8Mn0.1Co0.1O2、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、Li2MnO3とLiMO2(Mは、Co、Ni、Mn、Fe等の遷移金属)との固溶体、およびLiNi1/2Mn3/2O4から選ばれる1種以上が好適に挙げられる。
【0082】
正極は、上述した正極活物質をアセチレンブラック、導電剤、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンとブタジエンの共重合体(SBR)、アクリロニトリルとブタジエンの共重合体(NBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の結着剤と混合し、これに溶剤を加えて混練して正極合剤とした後、この正極合剤を集電体のアルミニウム箔やステンレス製板等に塗布して、乾燥、加圧成型した後、所定条件のもとに加熱処理することにより作製することができる。導電剤としては、化学変化を起こさない電子伝導材料であれば特に限定されないが、たとえば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛等)、人造黒鉛等のグラファイト、アセチレンブラックなどから選ばれる1種または2種以上のカーボンブラック等が挙げられる。
【0083】
リチウムイオン二次電池用負極活物質としては、リチウム金属やリチウム合金、およびリチウムを吸蔵および放出することが可能な炭素材料、スズ(単体)、スズ化合物、ケイ素(単体)、ケイ素化合物、またはLi4Ti5O12等のチタン酸リチウム化合物等を一種単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0084】
これらの中では、リチウムイオンの吸蔵および放出能力が高いという観点より、人造黒鉛や天然黒鉛等の高結晶性の炭素材料を使用することがより好ましい。
【0085】
特に複数の扁平状の黒鉛質微粒子が互いに非平行に集合または結合した塊状構造を有する人造黒鉛粒子や、圧縮力、摩擦力、剪断力等の機械的作用を繰り返し与え、鱗片状天然黒鉛を球形化処理した粒子、を用いることが好ましい。
【0086】
負極は、上記した正極の作製と同様な導電剤、結着剤、高沸点溶剤を用いて混練して負極合剤とした後、この負極合剤を集電体の銅箔等に塗布して、乾燥、加圧成型した後、所定条件のもとに加熱処理することにより作製することができる。
【0087】
第1の蓄電デバイスとしてのリチウムイオン二次電池の構造に特に限定はなく、コイン型電池、円筒型電池、角型電池、またはラミネート電池等を適用できる。
【0088】
巻回型のリチウムイオン二次電池は、たとえば、電極体が非水電解液と共に電池ケースに収容された構成を有する。電極体は、正極と負極とセパレータとによって構成されている。非水電解液の少なくとも一部は、電極体に含浸されている。
【0089】
巻回型のリチウムイオン二次電池では、正極として、長尺シート状の正極集電体と、正極活物質を含み、かつ正極集電体上に設けられた正極合材層とを含む。負極として、長尺シート状の負極集電体と、負極活物質を含み、かつ負極集電体上に設けられた負極合材層とを含む。セパレータは、正極および負極と同様に、長尺シート状に形成されている。正極および負極は、それらの間にセパレータを介在させ筒状に巻回される。
【0090】
電池ケースは、有底円筒状のケース本体と、ケース本体の開口部を塞ぐ蓋とを備える。蓋およびケース本体は、たとえば金属製であり互いに絶縁されている。蓋は正極集電体に電気的に接続され、ケース本体は負極集電体に電気的に接続されている。なお、蓋が正極端子、ケース本体が負極端子をそれぞれ兼ねるようにしてもよい。
【0091】
リチウムイオン二次電池は、-40~100℃、好ましくは-10~80℃で充放電することができる。また、巻回型リチウムイオン二次電池の内圧上昇の対策として、電池の蓋に安全弁を設ける方法、あるいは、電池のケース本体やガスケット等の部材に切り込みを入れる方法も採用することができる。また、過充電防止の安全対策として、電池の内圧を感知して電流を遮断する電流遮断機構を蓋に設けることもできる。
【0092】
一例として、リチウムイオン二次電池の製造手順について以下に説明する。
まず、正極、負極、およびセパレータをそれぞれ作製する。次に、それらを重ね合わせて円筒状に巻回することにより、電極体を組み立てる。次いで電極体をケース本体に挿入し、ケース本体内に非水電解液を注入する。これにより、電極体に非水電解液が含浸する。ケース本体内に非水電解液を注入した後、ケース本体に蓋を被せ、蓋およびケース本体を密封する。なお、巻回後の電極体の形状は円筒状に限られない。たとえば、正極とセパレータと負極とを巻回した後、側方から圧力を加えることにより、偏平形状に形成してもよい。
【0093】
上記のリチウムイオン二次電池は、各種用途向けの二次電池として利用可能である。たとえば、自動車等の車両に搭載され、車両を駆動するモータ等の駆動源用の電源として好適に利用することができる。車両の種類は特に限定されないが、たとえば、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車等があげられる。かかるリチウムイオン二次電池は、単独で使用されてもよく、直列および/または並列に複数の電池を接続して使用してもよい。
【0094】
なお、上記では巻回型リチウムイオン二次電池について例示したが、本発明においては、このような態様に限定されず、ラミネート型リチウムイオン二次電池に適用してもよい。
【0095】
(第2の蓄電デバイス)
また、第2の蓄電デバイスとして、リチウムイオンキャパシタが挙げられる。リチウムイオンキャパシタは、セパレータとして、上述した本発明のポリオレフィン多孔質フィルムを有する蓄電デバイス用セパレータ、非水電解液、正極、および負極を有する。リチウムイオンキャパシタは、負極であるグラファイト等の炭素材料へのリチウムイオンのインターカレーションを利用してエネルギーを貯蔵することができる。正極は、たとえば活性炭電極と電解液との間の電気二重層を利用したものや、π共役高分子電極のドープ/脱ドープ反応を利用したもの等が挙げられる。電解液には少なくともLiPF6等のリチウム塩が含まれる。
【実施例】
【0096】
次に、実施例および比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から容易に類推可能な様々な組み合わせを包含する。
【0097】
表1に示す特性を有するポリエチレン系樹脂およびポリプロピレン系樹脂を用いて、以下に示す方法により、共押出法により前駆体フィルムを成形した後、各前駆体フィルムを延伸して多孔化することにより、実施例1~4、比較例1~3のポリオレフィン多孔質フィルムを形成した。実施例1~4、比較例1~3の前駆体フィルムおよびポリオレフィン多孔質フィルムは、PP層/PE層/PP層を有する三層構造とした。
【0098】
各特性は、以下に示す方法により測定した。
【0099】
[ポリエチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、分子量100万以上の高分子量成分の含有割合]
ポリエチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、分子量100万以上の高分子量成分の含有割合は、Agilent社製ゲル浸透クロマトグラフを用いて、標準ポリスチレン換算によって求めた。カラムにはAgilent PLgel Olexisの2本を使用し、0.05wt/vol%に調製したオルトジクロロベンゼン中、145℃で測定を行った。検出器には、示差屈折計(RI)を用いた。
【0100】
[ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)]
ポリエチレン系樹脂のメルトフローレートは、JIS K6758に準拠し、190℃、2.16kgの荷重で測定した。
【0101】
[ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)]
ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)は、Agilent社製ゲル浸透クロマトグラフを用いて、標準ポリスチレン換算によって求めた。カラムにはAgilent PLgel Olexisの2本を使用し、0.05wt/vol%に調製したオルトジクロロベンゼン中、145℃で測定を行った。検出器には、示差屈折計(RI)を用いた。
【0102】
[ポリプロピレン系樹脂のメソペンタッド分率[mmmm](NMR(核磁気共鳴)測定)]
ODCB(1,2-ジクロロベンゼン)/C6D6(4/1)溶媒に10wt/vol%の濃度でポリプロピレン系樹脂を溶かし、13C-NMR測定を、分解能100MHz、温度130℃、積算回数8000回の条件で行い、ピーク高さ法よりメソペンタッド分率を算出した。
【0103】
[ポリオレフィン多孔質フィルムの膜厚]
ポリオレフィン多孔質フィルムの膜厚は、ダイヤルゲージ(尾崎製作所社製、商品名「PEACOCK No.25」)を用いて測定した。
【0104】
[ポリオレフィン多孔質フィルムのガーレ値(透気度)]
製造したポリオレフィン多孔質フィルムからMDに80mm、全幅の試験片を採取し、中央部と左右の端部(端面から50mm内側)の3点について、B型ガーレ式デンソメーター(株式会社東洋精機社製)を用いてJIS P8117に準じて、ポリオレフィン多孔質フィルムのガーレ値の測定を行った。3点の平均値をポリオレフィン多孔質フィルムのガーレ値として評価した。
【0105】
[ポリエチレン系樹脂層のガーレ値(透気度)]
製造したポリオレフィン多孔質フィルムからMDに80mm、全幅の試験片を採取し、中間のポリエチレン系樹脂層と、両面のポリプロピレン系樹脂層とを剥離することで、ポリエチレン系樹脂層のみを取り出し、中央部と左右の端部(端面から50mm内側)の3点について、B型ガーレ式デンソメーター(株式会社東洋精機社製)を用いてJIS P8117に準じて、ポリエチレン系樹脂層のガーレ値の測定を行った。3点の平均値をポリエチレン系樹脂層のガーレ値として評価した。
【0106】
[引裂き試験(耐裂性)]
製造したポリオレフィン多孔質フィルムからMDに200mm、全幅の試験片を採取し、中央部と左右の端部(端面から50mm内側)の3点について、JIS K7128-1のトラウザー引裂法に基づき、MD150mm×TD50mmの試験片を作製し、中央から75mmのスリットを入れて引裂き試験を行った。
【0107】
[ポリオレフィン多孔質フィルムの空孔率]
ポリオレフィン多孔質フィルムの幅方向両端部より型枠を用いて100mm×100mmの試験片を、両端面に沿って2枚採取し、採取した2枚の各試験片の重量を0.1mgまで測定した。測定した重量から下記式を用いて空孔率を算出した。
空孔率(%)={(1-試験片重量(g)/密度(g/cm3))/(試験片面積(100cm2)×膜厚(cm))}×100
【0108】
<実施例1>
表1に示す特性を有するポリエチレン系樹脂およびポリプロピレン系樹脂を使用し、マルチマニホールド型のTダイを備えた共押出機を用い、ダイ温度(共押出温度)210℃にて、PE層を中間層とし、その両面にPP層が形成されるように、ポリプロピレン系樹脂と、ポリエチレン系樹脂とを共押出しすることで、PP層/PE層/PP層の三層構造からなる前駆体フィルムを得た。なお、前駆体フィルム中におけるポリエチレン系樹脂の含有割合が37質量%となるように、各層の厚みを調整した。
【0109】
そして、得られた前駆体フィルムに対し、130.2℃~135.7℃の温度領域で30分間の熱処理を行い、次いで、熱処理した前駆体フィルムを、35℃の冷延伸ゾーンにて18%の延伸倍率(初期延伸倍率)で低温延伸した。そして、低温延伸された前駆体フィルムを130℃の熱延伸ゾーンで190%の延伸倍率(最大延伸倍率)で高温延伸し、次いで、125%の延伸倍率(最終延伸倍率)になるまで熱緩和させた。その後、133℃の温度で熱固定することでポリオレフィン多孔質フィルムを作製した。そして、作製したポリオレフィン多孔質フィルムについて、ガーレ値(総ガーレ値)およびPE層のガーレ値の測定、および、引裂き試験を行った。なお、本実施例においては、前駆体フィルムの延伸は、機械方向(MD)への一軸延伸方式により行った。結果を表1に示す。
【0110】
<実施例2~4、比較例1~3>
表1に示す特性を有するポリエチレン系樹脂およびポリプロピレン系樹脂をそれぞれ使用したこと、ポリオレフィン多孔質フィルム中におけるポリエチレン系樹脂の含有割合を表1に示すものとしたこと以外は、前駆体フィルムおよび多孔質フィルムを作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【表1】
表1中、引裂き試験(耐裂性)の評価結果のうち、「3/3」は、3か所について行った試験のうち、3か所とも引裂きが起こらなかったことを示し、「0/3」は、3か所について行った試験のうち、3か所とも引裂きが起こったこと(3か所ともNG)を示している。
【0111】
表1に示すように、実施例1~4によれば、表1に示す特性を有するポリエチレン系樹脂を用いて、共押出しによる前駆体フィルムを得て、これを延伸多孔化することにより、ガーレ値が230秒/100cc以下であり、透気性に優れ、また、引裂き試験の結果も良好であり、耐裂性に優れるポリオレフィン多孔質フィルムを得ることができた。また、実施例1~4により得られたポリオレフィン多孔質フィルムについて空孔率を測定したところ、空孔率はいずれも45~70%の範囲内にあるものであった。そして、この結果より、実施例1~4により得られたポリオレフィン多孔質フィルムは、たとえば、リチウムイオン電池用のセパレータとして好適に用いることができるものであるといえる。
【0112】
一方、ポリエチレン系樹脂として、分子量が100万以上である高分子量成分の含有割合が11質量%を超えるものとを使用した比較例1,2においては、得られるポリオレフィン多孔質フィルムは、ポリエチレン系樹脂からなるPE層の開孔が十分に進行せず、ガーレ値が高くなる結果となり、また、耐裂性にも劣る結果となった。
また、ポリエチレン系樹脂として、分子量が100万以上である高分子量成分の含有割合が2質量%未満であるものを使用した比較例3においては、得られるポリオレフィン多孔質フィルムは、ポリエチレン系樹脂からなるPE層の開孔が進行せず、開孔を有しないものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明のポリオレフィン多孔質フィルムは、リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ等を含む蓄電デバイス用のセパレータとして好適に用いられる。