(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】電力料金割引システムおよび電力料金割引方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20230620BHJP
G06Q 30/04 20120101ALI20230620BHJP
【FI】
G06Q50/06
G06Q30/04
(21)【出願番号】P 2019109824
(22)【出願日】2019-06-12
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】福田 駿
(72)【発明者】
【氏名】山本 晋司
(72)【発明者】
【氏名】吉谷 淳
(72)【発明者】
【氏名】正垣 裕誠
(72)【発明者】
【氏名】上河内 蓉子
【審査官】岩井 一央
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-107901(JP,A)
【文献】特開2010-044595(JP,A)
【文献】特開2007-206990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給可能電力と総需要電力とを含む電力需給情報を継時的に記憶する電力需給記憶手段と、
前記電力需給情報に基づいて、所定電力以上の余剰電力が予測される余剰期間を予測し、前記余剰期間であって所定の条件を満たす期間を割引期間として選定する割引期間選定手段と、
所定時間ごとの各需要家の電力使用量を記憶する使用量記憶手段と、
電力料金の対象期間における前記電力使用量と、所定の料金単価と、前記割引期間と、該割引期間における割引率または割引単価とに基づいて、請求金額を算出する料金算出手段と、
を備え
、前記割引期間選定手段は、前記割引期間における単位時間当たりの総需要電力量が年間平均の前記単位時間当たりの総需要電力量よりも低いことを、前記所定の条件とする、ことを特徴とする電力料金割引システム。
【請求項2】
前記料金算出手段は、所定の会に入会している需要家に対してのみ前記割引率または割引単価を適用して、前記請求金額を算出する、
ことを特徴とする請求項
1に記載の電力料金割引システム。
【請求項3】
割引料金の総額を含む割引結果情報に基づいて、前記割引率または割引単価を調整する割引調整手段を備える、
ことを特徴とする請求項1
または2のいずれか1項に記載の電力料金割引システム。
【請求項4】
供給可能電力と総需要電力とを含む電力需給情報を継時的に記憶する電力需給記憶ステップと、
前記電力需給情報に基づいて、所定電力以上の余剰電力が予測される余剰期間を予測し、前記余剰期間であって所定の条件を満たす期間を割引期間として選定する割引期間選定ステップと、
所定時間ごとの各需要家の電力使用量を記憶する使用量記憶ステップと、
電力料金の対象期間における前記電力使用量と、所定の料金単価と、前記割引期間と、該割引期間における割引率または割引単価とに基づいて、請求金額を算出する料金算出ステップと、
を備え
、前記割引期間選定ステップは、前記割引期間における単位時間当たりの総需要電力量が年間平均の前記単位時間当たりの総需要電力量よりも低いことを、前記所定の条件とする、ことを特徴とする電力料金割引方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力の需要家に対して所定の期間の電力使用料金を割り引く電力料金割引システムおよび電力料金割引方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力事業者(電力供給側)の発電設備を含む電力設備は、全体の使用電力が一時的に上昇する場合であっても、電力の供給が停止しないように、上昇時の電力に応じた電力を供給可能な容量にしなければならず、過剰な電力設備となるおそれがある。一方、需要家が電力使用量を抑えてくれたり、全体の電力需要が低い期間に電力を使用してくれたりすれば、発電量を低くすることができ、その結果、電力設備の過剰化を抑制することができる。換言すれば、需要家が自身の電力使用量に関心を持って電力を使用してくれれば、電力設備の過剰化を抑制することができ、発電コストなどを低減することが可能となる。
【0003】
また、需要家に電力使用量への関心を促すために、定額電力料金で契約している需要家に対して、契約時に需要家から受け付けた電力使用予定量と実際の電力使用量とを比較し、実際の電力使用量が電力使用予定量よりも低かった場合に、需要家に対して様々な商品やサービスとの交換が可能なポイントを付与するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、いわゆる電力自由化が進む近年においては、各電力事業者は、電力料金の適正化(低料金化)をより図るとともに、サービスの向上や多様化などを図ることが期待されている。一方、各需要家は、自己の電力使用態様や各電力事業者から提供される料金メニュー、サービスなどに基づいて、自己に最適な電力事業者を選定するとともに、使用電力の適正化(省エネ・節電)を図ることが期待される。
【0006】
このように、需要家がこれまで以上に電力使用や電力事業者に関心を持ち、電力需給に関わっていく(参加していく)ことが期待される。さらに、電力事業者にとっては、需要家により関心を寄せてもらい、永く安定した需給関係を築くことが望ましい。
【0007】
しかしながら、例えば、特許文献1に記載のシステムでは、需要家がポイントを取得できる手段が省エネルギーしかなく、省エネルギーには需要家の我慢を伴う。また、電気機器の高性能化・省エネ化などが進んだ現代社会では、省エネルギーにも限界があるため、取得できるポイントが少なくなってしまう。このような理由から、特許文献1に記載のシステムでは、需要家が早期に関心を失ってしまうおそれがあり、需要家が電力事業者に関心を寄せて永く安定した需給関係を築く、ということが期待できない。
【0008】
そこでこの発明は、電力使用および電力事業者に対する需要家の関心を高めることが可能な、電力料金割引システムおよび電力料金割引方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、供給可能電力と総需要電力とを含む電力需給情報を継時的に記憶する電力需給記憶手段と、前記電力需給情報に基づいて、所定電力以上の余剰電力が予測される余剰期間を予測し、前記余剰期間であって所定の条件を満たす期間を割引期間として選定する割引期間選定手段と、所定時間ごとの各需要家の電力使用量を記憶する使用量記憶手段と、電力料金の対象期間における前記電力使用量と、所定の料金単価と、前記割引期間と、該割引期間における割引率または割引単価とに基づいて、請求金額を算出する料金算出手段と、を備え、前記割引期間選定手段は、前記割引期間における単位時間当たりの総需要電力量が年間平均の前記単位時間当たりの総需要電力量よりも低いことを、前記所定の条件とする、ことを特徴とする電力料金割引システムである。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電力料金割引システムにおいて、前記料金算出手段は、所定の会に入会している需要家に対してのみ前記割引率または割引単価を適用して、前記請求金額を算出する、ことを特徴とする。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の電力料金割引システムにおいて、割引料金の総額を含む割引結果情報に基づいて、前記割引率または割引単価を調整する割引調整手段を備える、ことを特徴とする。
【0016】
請求項4の発明は、供給可能電力と総需要電力とを含む電力需給情報を継時的に記憶する電力需給記憶ステップと、前記電力需給情報に基づいて、所定電力以上の余剰電力が予測される余剰期間を予測し、前記余剰期間であって所定の条件を満たす期間を割引期間として選定する割引期間選定ステップと、所定時間ごとの各需要家の電力使用量を記憶する使用量記憶ステップと、電力料金の対象期間における前記電力使用量と、所定の料金単価と、前記割引期間と、該割引期間における割引率または割引単価とに基づいて、請求金額を算出する料金算出ステップと、を備え、前記割引期間選定ステップは、前記割引期間における単位時間当たりの総需要電力量が年間平均の前記単位時間当たりの総需要電力量よりも低いことを、前記所定の条件とする、ことを特徴とする電力料金割引方法である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1および請求項4の発明によれば、料金メニューとは関係なく割引期間における電力料金が割り引かれるため、料金的に魅力がある電力事業者に対する需要家の関心を高めることが可能となる。また、割引期間での電力料金のみが割り引かれるため、需要家は、できるだけ割引期間で電力を使用しようとし、電力使用に対する需要家の関心を高めることが可能となる。しかも、所定電力以上の余剰電力が予測される余剰期間から割引期間が選定されるため、余剰電力があって電力事業者にとって電力を使用してほしいときに、需要家に使用してもらうことが可能となり、料金割引サービスを永く安定して提供、継続することが可能となる。このようにして、需要家と電力事業者との永く安定した需給関係を築くことが期待できる。
【0018】
また、単位時間当たり(例えば、1時間当たり)の総需要電力量が年間平均の単位時間当たりの総需要電力量よりも低い期間が割引期間として選定されるため、総需要電力量が低く電力事業者にとって電力を使用してほしいときに、需要家に使用してもらうことが可能となる。この結果、需要家に料金割引サービスを提供しつつ、電力需給の均衡(平準化)を図って安定した電力供給を維持することが可能となる。
【0022】
請求項2の発明によれば、所定の会に入会している需要家に対してのみ料金割引サービスが提供されるため、需要家に入会を促進して、電力使用および電力事業者に対する需要家の関心を高めることが可能となる。
【0023】
請求項3の発明によれば、割引結果情報に基づいて割引率または割引単価が調整されるため、料金割引に要する費用と料金割引による効果(需要家の関心上昇など)に見合った割引率または割引単価に調整して、料金割引サービスを永く安定して提供、継続することが可能となる。この結果、需要家と電力事業者との永く安定した需給関係を築くことが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】この発明の実施の形態に係る電力料金割引システムを示す概略構成図である。
【
図2】
図1の電力料金割引システムのウェブサーバを示す概略構成ブロック図である。
【
図3】
図1の電力料金割引システムの料金サーバを示す概略構成ブロック図である。
【
図4】
図3の料金サーバの使用量データベースのデータ構成を示す図である。
【
図5】
図4の使用量データベースの使用量データ例を示す図である。
【
図6】
図3の料金サーバの料金算出タスクを示すフローチャートである。
【
図7】
図1の電力料金割引システムの作用、動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0026】
図1は、この発明の実施の形態に係る電力料金割引システム1を示す概略構成図である。この電力料金割引システム1は、電力の需要家Mに対して所定の期間の電力使用料金を割り引くシステムであり、各需要家Mが操作する通信端末2と、検針サーバ3と、ウェブサーバ4と、料金サーバ5と、を備える。通信端末2は、パーソナルコンピュータやスマートフォン(多機能携帯端末)などを含み、インターネットなどの通信網NWを介してウェブサーバ4と料金サーバ5とに通信可能で、料金サーバ5は、検針サーバ3とウェブサーバ4とに通信自在に接続されている。
【0027】
検針サーバ3は、各需要家宅に配設された通信機能付き電力量計(以下、「スマートメーター」という)から計量値を受信して記憶するサーバ(MDMS:スマートメーター運用管理システム)である。具体的には、各スマートメーターから30分ごとの電力使用量(以下、「30分値データ」という)を受信して記憶し、定期的に、または料金サーバ5からの要求に応じて、30分値データ群を料金サーバ5に送信する。
【0028】
ウェブサーバ4は、電力事業者のウェブサイトを提供するサーバであり、
図2に示すように、主として、メモリ41と、需要家データベース42と、メインタスク43と、これらを制御などする中央処理部44と、を備える。
【0029】
メモリ41は、各種情報・データを記憶する記憶部であり、例えば、後述するようにして料金割引サービスの申込時に需要家Mによって入力された情報や、料金サーバ5から受信した情報などを記憶する。
【0030】
需要家データベース42は、各需要家Mに関する情報を記憶したデータベースであり、各需要家Mの識別情報に対して、契約番号、契約名義、契約住所、契約種別、スマートメーターの有無、需要家Mのメールアドレスおよび、後述する料金情報などが記憶されている。また、この電力事業者が提供するWebサービスのWeb会員(所定の会の入会者)であるか否か、会員である場合のIDとパスワード、付与されたポイント・特典に関する情報などが記憶されている。このように、この実施の形態では、ウェブサーバ4に需要家データベース42を備えているが、需要家データベース42のデータのすべてまたは一部を料金サーバ5や他のコンピュータ・サーバに記憶してもよい。
【0031】
メインタスク43は、ウェブサイトを提供、運営するためのタスク・プログラム群であり、この実施の形態では、電力事業者のウェブサイトのうち、各需要家Mに料金割引サービスを提供するためのタスクについて主として説明し、申込タスク431を備える。
【0032】
メインタスク43は、まず、ログイン画面・ページを通信端末2に表示させ、Web会員のIDとパスワードが入力されると、この需要家Mのマイページを通信端末2に表示させる。このマイページには、この需要家Mの氏名や契約住所、電力事業者と契約している料金メニュー、各月の電力使用量、請求金額、割引料金などとともに、料金割引メニューと後述する割引期間などが表示される。
【0033】
申込タスク431は、マイページで料金割引メニューが選択され、さらに、申込ボタンが選択されると起動され、料金割引サービスへの申込処理を行うタスク・プログラムである。まず、この需要家Mが料金割引サービスを受けられるか否かを判定する。すなわち、第1に、この需要家MがWeb会員であり、第2に、この需要家Mが契約している料金メニューが所定の料金メニューの場合に、サービス可と判定する。このように、料金割引サービスを受けるには、Web会員である(所定の会に入会している)ことを要し、この要件を満たしていない場合には、ログイン画面において登録が可能である。ここで、所定の料金メニューとは、例えば、時間帯により単価を区分せずに、1カ月の総電力使用量をもとに料金を算出するメニューなどであるが、どのようなメニューであってもよい。
【0034】
さらに、スマートメーターが設定されていない需要家Mの場合、月単位である割引期間に対してのみ料金割引サービスを受けられることを第3の要件とする。すなわち、30分値データが得られない電力量計では、日時ごとの電力量を取得できないため、月単位の割引期間(例えば、6月分料金として請求される各需要家で所定の1カ月間)に対してのみ料金割引サービスを受けられることとする。また、スマートメーターが設定されていない場合には、割引施策により、割引対象の可否を選択できるようにしてもよい。
【0035】
そして、申込可と判定した場合に、この需要家Mが料金割引サービスを受ける旨が、後述する料金サーバ5の使用量データベース52に記憶される。ここで、この実施の形態では、割引期間ごとに料金割引サービスへの申込処理を行い、料金割引サービスを受ける旨と対象の割引期間とが、使用量データベース52に記憶される。
【0036】
料金サーバ5は、需要家Mに対する請求金額を算出などするサーバであり、
図3に示すように、主として、需給データベース(電力需給記憶手段)51と、使用量データベース(使用量記憶手段)52と、期間選定タスク(割引期間選定手段)53と、料金算出タスク(料金算出手段)54と、単価調整タスク(割引調整手段)55と、これらを制御などする中央処理部56と、を備える。このように、この実施の形態では、料金サーバ5に各データベース51、52と各タスク53~55を備えているが、これらの一部または各タスク内の一部分を他のコンピュータ・サーバに備えてもよい。
【0037】
需給データベース51は、供給可能電力と総需要電力とを含む電力需給情報を継時的に記憶するデータベースである。すなわち、電力の使用可能量である総供給力(供給可能電力)と、電力の総使用量である総需要(総需要電力)とを、電力需給情報として過去から現在に至るまで時系列的に記憶するデータベースであり、供給可能電力と総需要電力を計測、監視する設備からデータを受信して記憶する。
【0038】
使用量データベース52は、所定時間ごとの各需要家Mの電力使用量などを記憶するデータベースであり、
図4に示すように、契約番号521、需要家名522、料金メニュー523、割引対象524、使用量データ525、料金データ526およびその他527が記憶されている。具体的に、契約番号521には、電力事業者との契約を識別するための識別情報が記憶され、需要家名522には、電力事業者と契約している需要家Mの氏名が記憶されている。
【0039】
料金メニュー523には、電力事業者と契約している料金メニューが記憶され、割引対象524には、この需要家Mが料金割引サービスを受けるか否かと、受ける場合の割引期間とが記憶される。使用量データ525には、この需要家Mの30分ごとの(所定時間ごとの)電力使用量が記憶される。具体的に、この実施の形態では、定期的に検針サーバ3から各スマートメーターつまり各需要家Mの30分値データを受信すると、
図5に示すように、この30分値データが30分ごとの電力使用量として使用量データ525に記憶される。料金データ526は、後述するようにして算出された各月の正規電力料金や割引料金、請求金額などが記憶される。ここで、このような使用量データベース52と上記の需要家データベース42とを統合したデータベースを、ウェブサーバ4と料金サーバ5で共用してもよい。
【0040】
期間選定タスク53は、需給データベース51の電力需給情報に基づいて、所定電力以上の余剰電力が予測される余剰期間を予測し、余剰期間であって所定の条件を満たす期間を割引期間として選定するタスク・プログラムである。すなわち、まず、過去の供給可能電力と総需要電力とに基づいて、供給可能電力と総需要電力との差(余剰電力)が所定の電力値よりも大きいと予測される将来の余剰期間を抽出する。この際、将来の余剰電力を予測する手法は、どのような周知の手法であってもよいが、例えば、過去と同じ季節で同じ曜日の同じ時間帯の場合には、その過去の余剰電力とほぼ同じ余剰電力である、などといった仮定に基づいて予測する。また、至近の需要構造の変化、自社の発電設備の稼働状況、他者との相対取引の状況等により余剰電力の予測値を調整してもよい。なお、所定の電力値は、料金割引サービスが適用されることで需要が増大しても、総需要電力が供給可能電力を超えない十分な値に設定されている。
【0041】
次に、抽出した余剰期間のなかから、所定の条件を満たす期間を割引期間として選定する。この実施の形態では、主として、次の4つの条件のうちの少なくとも1つを満たす期間を割引期間として選定する。ただし、選定したすべての割引期間に対して料金割引サービスを提供してもよいし、一部の割引期間に対してのみ提供してもよく、例えば、優先させる条件や条件数などを指定してもよい。
【0042】
第1の条件として、割引期間における単位時間当たり(例えば、1時間当たり)の総需要電力量が、年間平均の単位時間当たりの総需要電力量よりも低いことを要する。すなわち、1年を通じての平均的な単位時間当たりの総電力需要(全需要家Mの需要合計)よりも、単位時間当たりの総電力需要が低い期間を割引期間とする。例えば、月単位では、電力需要が低下する端境期である6月、7月の初夏や、11月、12月の初冬を割引期間とする。なお、例示した割引期間は、他の条件も満たして選定される場合があり、このことは、後述する他の条件の例示期間についても同様である。
【0043】
第2の条件として、需要家Mが電力使用を調整しやすい期間であることを要する。すなわち、需要家Mが電力を使用しやすい、あるいは、その期間に使用してもらえやすい期間を割引期間とする。例えば、曜日単位では、需要家Mの在宅が見込まれ、洗濯機などを使用してもらえる土曜日や日曜日を割引期間とする。また、特定日としては、多くの人が在宅して、いずれかの人に電気機器を使用してもらえるお盆休みやお正月休みの期間を割引期間とする。
【0044】
第3の条件として、需要家Mに電力使用を促進しやすい期間であることを要する。すなわち、電力を使用しようと需要家Mに促せる期間を割引期間とする。例えば、梅雨時期の13時~16時を割引期間とし、これにより、エアコンのドライ機能や洗濯機の乾燥機能などの使用を促す。同様に、端境期である秋季の朝晩(6時~8時、19時~23時)を割引期間とし、これにより、秋冷え対策としてエアコンの使用を促す。また、需要家が在宅しており電気機器の使用が見込まれるゴールデンウイークの日中(9時~17時)を割引期間とし、これにより、太陽光発電による電力を使用してもらえるようにする。
【0045】
第4の条件として、需要家Mに記憶されやすい期間であることを要する。すなわち、需要家Mの記憶に残りやすくその期間に電力を使用してもらえる期間を割引期間とする。例えば、毎月の特定日(例えば、20日)を割引期間とし、毎月その日に意識して集中的かつ計画的に電力を使用してもらえるようにする。また、語呂がよく覚えやすい日、例えば、ニコニコ割引というサービス名称に語呂合わせして、25日を割引期間とし、その日に忘れずに集中的かつ計画的に電力を使用してもらえるようにする。あるいは、需要家M毎に割引期間を設定する場合に、需要家Mの誕生日の日付けを毎月の割引期間とする。
【0046】
料金算出タスク54は、電力料金の対象期間における電力使用量と、所定の料金単価と、割引期間と、該割引期間における割引率または割引単価とに基づいて、請求金額を算出するタスク・プログラムである。すなわち、電力料金の請求対象である1カ月(対象期間)における電力使用量と所定の料金単価とに基づいて料金を算出するとともに、この対象期間に割引期間が含まれる場合に、その割引率または割引単価に基づく割引料金を減算して請求金額を算出する。なお、当該割引料金について、次月以降に請求する電力料金から減算してもよい。
【0047】
具体的には、
図6に示すように、まず、使用量データベース52の対象需要家Mの使用量データ525から当月の30分ごとの電力使用量を取得し(ステップS1)、この電力使用量と所定の料金単価とに基づいて正規電力料金を算出する(ステップS2)。ここで、所定の料金単価は、この需要家Mが契約している料金メニュー(料金メニュー523)に基づく単位電力量当たりの単価であり、時間帯などによって単価が異なる場合には、電力使用量の時間帯などに応じた単価となる。
【0048】
次に、この需要家Mが割引対象者でない場合(ステップS3で「N」の場合)、つまり、料金割引サービスを受ける旨が割引対象524に記憶されていない場合には、ステップS7に進み料金の割引を行わない。ここで、料金割引サービスを受けるには、上記のように、Web会員である(所定の会に入会している)ことに加えて、申込タスク431で料金割引サービスの申込を完了していることを要するため、それらの条件を満たす需要家に対してのみ後述する割引率または割引単価が適用されて、請求金額が算出される。同様に、当月に割引期間が含まれない場合(ステップS4で「N」の場合)、つまり、割引対象524に記憶された割引期間が当月内に含まれない場合には、ステップS7に進み料金の割引を行わない。
【0049】
そして、需要家Mが割引対象者であって当月に割引期間が含まれる場合には、割引料金を算出する(ステップS5)。すなわち、この割引期間における30分ごとの電力使用量と、所定の割引率または割引単価(例えば、単位電力量当たりの単価)とに基づいて割引料金を算出する。ここで、割引率または割引単価は、予め初期値が入力、設定されているが、外部入力および後述する単価調整タスク55で変更可能となっている。続いて、この割引料金をステップS2の正規電力料金から減算して請求金額を算出する(ステップS6)。なお、当該割引料金について、次月以降に請求する電力料金から減算してもよい。
【0050】
その後、算出した正規電力料金と割引料金と請求金額を使用量データベース52の料金データ526に記憶する(ステップS7)。このような処理をすべての対象需要家Mに対して行うものである。
【0051】
単価調整タスク55は、料金割引による効果を含む割引結果情報(費用対効果)に基づいて、割引率または割引単価を調整するタスク・プログラムである。すなわち、料金割引による効果を含む割引結果情報に見合った、適正な割引率または割引単価を割り出すものである。具体的に、この実施の形態では、料金割引による効果を、Web会員の増加数または電力需要の平準化率とし、予め定めた関係式および実績等に基づいて、目標とする増加数と平準化率(効果値)を達成することが期待できる適正な割引率または割引単価を割り出す。その他、料金割引サービスのための予算などに基づいて割引率または割引単価を調整してもよく、例えば、予算に対して、料金割引に要する費用の総額が高いと想定される場合には割引率または割引単価を引き下げ、割引料金割引に要する費用の総額が低いと想定される場合には割引率または割引単価を引き上げる。
【0052】
次に、このような構成の電力料金割引システム1の作用および、電力料金割引システム1による電力料金割引方法などについて説明する。
【0053】
まず、前提として電力需給情報が継時的に料金サーバ5の需給データベース51に記憶され(電力需給記憶ステップ)、
図7に示すように、期間選定タスク53が定期的に、または外部からの要求を受けて起動され、割引期間が選定される(ステップS11、割引期間選定ステップ)。そして、需要家Mがウェブサーバ4にアクセスして、上記のようにして料金割引サービスへの申込を行うと、料金割引サービスを受ける旨と対象の割引期間とが、使用量データベース52の割引対象524に記憶される。一方、各スマートメーターからの30分値データが、定期的に、または要求を受けて検針サーバ3から料金サーバ5に送信され(ステップS12)、対応する各需要家Mの使用量データ525に記憶される(ステップS13、使用量記憶ステップ)。
【0054】
次に、請求金額などを算出する日時になると料金算出タスク54が起動され(ステップS14、料金算出ステップ)、上記のようにして、各需要家Mに対する正規電力料金、該当する場合の割引料金、請求金額が算出、記憶される。なお、当該割引料金について、次月以降に請求する電力料金から減算してもよい。さらに、各需要家Mの正規電力料金、割引料金、請求金額と当月の電力使用量を含む料金情報がウェブサーバ4に送信され(ステップS15)、この料金情報が需要家データベース42に記憶される(ステップS16)。そして、需要家Mがウェブサーバ4にアクセスすると(ステップS17)、マイページに各月の電力使用量、請求金額、割引料金などが表示される(ステップS18)。なお、料金情報は、「検針のお知らせ」(請求書)などとしても各需要家Mに送られる。
【0055】
一方、料金サーバ5の単価調整タスク55が定期的に、または外部からの要求を受けて起動されると(ステップS19)、上記のようにして割引率または割引単価が調整、変更される。その後、料金算出タスク54が起動されると、変更された割引率または割引単価に基づいて割引料金が算出されるものである。
【0056】
このように、この電力料金割引システム1および電力料金割引方法によれば、料金メニューとは関係なく割引期間における電力料金が割り引かれるため、料金的に魅力がある電力事業者に対する需要家Mの関心を高めることが可能となる。また、割引期間での電力料金のみが割り引かれるため、需要家Mは、できるだけ割引期間で電力を使用しようとし、電力使用に対する需要家Mの関心を高めることが可能となる。しかも、所定電力以上の余剰電力が予測される余剰期間から割引期間が選定されるため、余剰電力があって電力事業者にとって電力を使用してほしいときに、需要家Mに使用してもらうことが可能となり、料金割引サービスを永く安定して提供、継続することが可能となる。このようにして、需要家Mと電力事業者との永く安定した需給関係を築くことが期待できる。
【0057】
また、単位時間当たりの総需要電力量が年間平均の単位時間当たりの総需要電力量よりも低い期間が割引期間として選定されるため、総需要電力量が低く電力事業者にとって電力を使用してほしいときに、需要家Mに使用してもらうことが可能となる。この結果、需要家Mに料金割引サービスを提供しつつ、電力需給の均衡(平準化)を図って安定した電力供給を維持することが可能となる。
【0058】
また、需要家Mが電力使用を調整しやすい期間が割引期間として選定されるため、その割引期間に電力を需要家Mに使用してもらうことがより可能となる。この結果、需要家Mに料金割引サービスをより確実に提供して、電力使用および電力事業者に対する需要家Mの関心を高めることが可能となる。
【0059】
また、需要家Mに電力使用を促進しやすい期間が割引期間として選定されるため、その割引期間に電力を需要家Mに使用してもらうように促進することがより可能となる。この結果、需要家Mに料金割引サービスをより確実に提供しつつ、電力需給の均衡などを図って安定した電力供給を維持することが可能となる。
【0060】
また、需要家Mに記憶されやすい期間が割引期間として選定されるため、需要家Mに割引期間を覚えてもらい、割引期間に電力を使用してもらうことがより可能となる。この結果、需要家Mに料金割引サービスをより確実に提供して、電力使用および電力事業者に対する需要家Mの関心を高めることが可能となる。
【0061】
一方、電力事業者のWeb会員である需要家Mに対してのみ料金割引サービスが提供されるため、需要家Mに入会を促進して、電力使用および電力事業者に対する需要家Mの関心を高めることが可能となる。
【0062】
さらに、割引結果情報(費用対効果)および予算に基づいて割引率または割引単価が調整されるため、料金割引に要する費用と料金割引による効果(需要家Mの関心上昇など)に見合った割引率または割引単価に調整して、料金割引サービスを永く安定して提供、継続することが可能となる。この結果、需要家Mと電力事業者との永く安定した需給関係を築くことが期待できる。
【0063】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、割引率または割引単価に基づき割引料金を算出し、正規電力料金から割引料金を減算して請求金額を算出しているが、その他の算出方法であってもよい。例えば、割引期間においては、料金単価から割引率または割引単価を減算した単価に基づいて請求金額を算出してもよい。
【0064】
また、上記の実施の形態では、割引期間に関わらず割引率または割引単価を一定としているが、割引期間ごとに異なる割引率または割引単価を設定してもよい。一方、需要家Mがウェブサーバ4にアクセスして料金割引サービスへの申込を行っているが、割引期間ごとに割引対象となり得る需要家Mに対して、ウェブサーバ4などから割引期間を含む情報を電子メールなどで送信し、需要家Mが割引を受けるか否かを返信するようにしてもよい。さらに、申込タスク431でサービス可と判定された全需要家Mに割引を行っているが、サービス可と判断された需要家Mのなかから抽選で割引対象者を選定してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 電力料金割引システム
2 通信端末
3 検針サーバ
4 ウェブサーバ
5 料金サーバ
51 需給データベース(電力需給記憶手段)
52 使用量データベース(使用量記憶手段)
53 期間選定タスク(割引期間選定手段)
54 料金算出タスク(料金算出手段)
55 単価調整タスク(割引調整手段)
M 需要家