(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20230620BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20230620BHJP
B60C 11/00 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
B60C11/13 C
B60C11/13 B
B60C11/03 100B
B60C11/00 Z
B60C11/03 300E
(21)【出願番号】P 2019146850
(22)【出願日】2019-08-08
【審査請求日】2022-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】元満 隆昌
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/170788(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/037941(WO,A1)
【文献】特開2016-159861(JP,A)
【文献】特開平11-078433(JP,A)
【文献】特開2018-134915(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170946(WO,A1)
【文献】特開2009-227264(JP,A)
【文献】特開平07-081323(JP,A)
【文献】国際公開第2015/004913(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0126688(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00-11/03
B60C 11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在する一対の周方向主溝と、前記周方向主溝に区画されて成る一対のショルダー陸部および単一のセンター陸部とを備える空気入りタイヤであって、
前記センター陸部が、前記センター陸部をタイヤ幅方向に貫通する複数のセンター細浅溝を備
え、
前記センター細浅溝の溝深さH21が、前記周方向主溝の最大溝深さHgに対して0.025≦H21/Hg≦0.150の範囲にあ
り、且つ、
前記センター細浅溝が、2.5[mm]以上の溝幅W21および5.0[mm]以下の溝深さH21を有することを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記センター細浅溝の溝幅W21の最大値W21_maxと最小値W21_minとの比が、1.00≦W21_max/W21_min≦1.10の範囲にある請求項
1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記センター陸部の接地幅Wb2が、タイヤ接地幅TWに対して0.35≦Wb2/TW≦0.50の関係を有する請求項
1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記センター陸部が、屈曲形状あるいは湾曲形状を有すると共に、少なくとも一方の端部にて前記周方向主溝に開口するセンター屈曲溝を備え、且つ、前記センター屈曲溝の溝深さH22が、前記周方向主溝の最大溝深さHgに対して0.50≦H22/Hg≦0.90の範囲にある請求項1~
3のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記センター屈曲溝が、直線形状、円弧形状あるいはS字形状を有し、且つ、前記センター屈曲溝のタイヤ幅方向への延在長さL22が、前記センター陸部の接地幅Wb2に対して0.45≦L22/Wb2≦0.65の範囲にある請求項
4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記センター屈曲溝が、前記周方向主溝に対する開口部に底上部を有する請求項
4または5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
トレッド踏面から前記センター屈曲溝の前記底上部の頂面までの距離H22’が、前記周方向主溝の最大溝深さHgに対して0.025≦H22’/Hg≦0.150の範囲にある請求項
6に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
少なくとも1本の前記センター細浅溝が、隣り合う前記センター屈曲溝の間に配置される請求項
4~7のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記センター陸部が、タイヤ周方向に延在する周方向細溝を備え、且つ、前記周方向細溝の溝深さH23が、前記周方向主溝の最大溝深さHgに対して0.70≦H23/Hg≦0.90の範囲にある請求項1~
8のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記センター陸部が、タイヤ周方向に延在する周方向細溝と、屈曲形状あるいは湾曲形状を有すると共に一方の端部にて前記周方向細溝に開口するセンター屈曲溝とを備え、且つ、前記センター屈曲溝が、前記周方向細溝に対する開口部に底上部を有する請求項1~
9のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記ショルダー陸部が、前記ショルダー陸部をタイヤ幅方向に貫通する複数のショルダー細浅溝を備え、且つ、前記ショルダー細浅溝の溝深さH11が、前記周方向主溝の最大溝深さHgに対して0.025≦H11/Hg≦0.150の範囲にある請求項1~
10のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記ショルダー細浅溝が、前記センター細浅溝の延長線上にある請求項
11に記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
前記一対の周方向主溝が、ストレート形状を有し、且つ、前記周方向主溝の溝幅Wgが、タイヤ接地幅TWに対して0.05≦Wg/TW≦0.10の範囲にある請求項1~
12のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項14】
建設車両用タイヤである請求項1~
13のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項15】
タイヤ周方向に延在する一対の周方向主溝と、前記周方向主溝に区画されて成る一対のショルダー陸部および単一のセンター陸部とを備える空気入りタイヤであって、
前記センター陸部が、前記センター陸部をタイヤ幅方向に貫通する複数のセンター細浅溝を備
え、
前記センター細浅溝の溝深さH21が、前記周方向主溝の最大溝深さHgに対して0.025≦H21/Hg≦0.150の範囲にあ
り、
前記センター陸部が、屈曲形状あるいは湾曲形状を有すると共に、少なくとも一方の端部にて前記周方向主溝に開口するセンター屈曲溝を備え、且つ、
前記センター屈曲溝の溝深さH22が、前記周方向主溝の最大溝深さHgに対して0.50≦H22/Hg≦0.90の範囲にあることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項16】
タイヤ周方向に延在する一対の周方向主溝と、前記周方向主溝に区画されて成る一対のショルダー陸部および単一のセンター陸部とを備える空気入りタイヤであって、
前記センター陸部が、前記センター陸部をタイヤ幅方向に貫通する複数のセンター細浅溝を備
え、
前記センター細浅溝の溝深さH21が、前記周方向主溝の最大溝深さHgに対して0.025≦H21/Hg≦0.150の範囲にあ
り、
前記センター陸部が、タイヤ周方向に延在する周方向細溝を備え、且つ、
前記周方向細溝の溝深さH23が、前記周方向主溝の最大溝深さHgに対して0.70≦H23/Hg≦0.90の範囲にあることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項17】
タイヤ周方向に延在する一対の周方向主溝と、前記周方向主溝に区画されて成る一対のショルダー陸部および単一のセンター陸部とを備える空気入りタイヤであって、
前記センター陸部が、前記センター陸部をタイヤ幅方向に貫通する複数のセンター細浅溝を備
え、
前記センター細浅溝の溝深さH21が、前記周方向主溝の最大溝深さHgに対して0.025≦H21/Hg≦0.150の範囲にあ
り、
前記センター陸部が、タイヤ周方向に延在する周方向細溝と、屈曲形状あるいは湾曲形状を有すると共に一方の端部にて前記周方向細溝に開口するセンター屈曲溝とを備え、且つ、
前記センター屈曲溝が、前記周方向細溝に対する開口部に底上部を有することを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項18】
タイヤ周方向に延在する一対の周方向主溝と、前記周方向主溝に区画されて成る一対のショルダー陸部および単一のセンター陸部とを備える空気入りタイヤであって、
前記センター陸部が、前記センター陸部をタイヤ幅方向に貫通する複数のセンター細浅溝を備
え、
前記センター細浅溝の溝深さH21が、前記周方向主溝の最大溝深さHgに対して0.025≦H21/Hg≦0.150の範囲にあ
り、且つ、
前記一対の周方向主溝が、ストレート形状を有し、且つ、前記周方向主溝の溝幅Wgが、タイヤ接地幅TWに対して0.05≦Wg/TW≦0.10の範囲にあることを特徴とする空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、タイヤの耐偏摩耗性能を維持しつつ耐発熱性能を向上できる空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、港湾ストラドルキャリアに装着される建設車両用タイヤは、装着車両の車高が高いため、その横揺れにより偏摩耗が発生し易いという課題がある。このため、従来の建設車両用タイヤは、タイヤの耐偏摩耗性能を高めるために、一対の周方向主溝と、これらの周方向主溝に区画されて成る一対のショルダー陸部および単一のセンター陸部とを備えるトレッドパターンを採用している。かかる構成を採用する従来の建設車両用タイヤとして、非特許文献1および2に記載される技術が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】インターネット<URL:https://www.michelinearthmover.com/eng_ca/tyres-straddle-carriers/michelin-x-straddle/81222>
【文献】インターネット<URL:https://tire.bridgestone.co.jp/tb/truck_bus/catalog/industrial-truck/premises-dump_straddle-carrier/vchr/index.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、近年の建設車両用タイヤでは、舗装路にて25[km/h]程度の高速走行を可能とすべき要請があるため、高速走行時におけるタイヤの発熱を抑制すべき課題がある。
【0005】
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、タイヤの耐偏摩耗性能を維持しつつ耐発熱性能を向上できる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明にかかる空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在する一対の周方向主溝と、前記周方向主溝に区画されて成る一対のショルダー陸部および単一のセンター陸部とを備える空気入りタイヤであって、前記センター陸部が、前記センター陸部をタイヤ幅方向に貫通する複数のセンター細浅溝を備え、前記センター細浅溝の溝深さH21が、前記周方向主溝の最大溝深さHgに対して0.025≦H21/Hg≦0.150の範囲にあり、且つ、前記センター細浅溝が、2.5[mm]以上の溝幅W21および5.0[mm]以下の溝深さH21を有することを特徴とする。
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在する一対の周方向主溝と、前記周方向主溝に区画されて成る一対のショルダー陸部および単一のセンター陸部とを備える空気入りタイヤであって、前記センター陸部が、前記センター陸部をタイヤ幅方向に貫通する複数のセンター細浅溝を備え、前記センター細浅溝の溝深さH21が、前記周方向主溝の最大溝深さHgに対して0.025≦H21/Hg≦0.150の範囲にあり、前記センター陸部が、屈曲形状あるいは湾曲形状を有すると共に、少なくとも一方の端部にて前記周方向主溝に開口するセンター屈曲溝を備え、且つ、前記センター屈曲溝の溝深さH22が、前記周方向主溝の最大溝深さHgに対して0.50≦H22/Hg≦0.90の範囲にあることを特徴とする。
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在する一対の周方向主溝と、前記周方向主溝に区画されて成る一対のショルダー陸部および単一のセンター陸部とを備える空気入りタイヤであって、前記センター陸部が、前記センター陸部をタイヤ幅方向に貫通する複数のセンター細浅溝を備え、前記センター細浅溝の溝深さH21が、前記周方向主溝の最大溝深さHgに対して0.025≦H21/Hg≦0.150の範囲にあり、前記センター陸部が、タイヤ周方向に延在する周方向細溝を備え、且つ、前記周方向細溝の溝深さH23が、前記周方向主溝の最大溝深さHgに対して0.70≦H23/Hg≦0.90の範囲にあることを特徴とする。
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在する一対の周方向主溝と、前記周方向主溝に区画されて成る一対のショルダー陸部および単一のセンター陸部とを備える空気入りタイヤであって、前記センター陸部が、前記センター陸部をタイヤ幅方向に貫通する複数のセンター細浅溝を備え、前記センター細浅溝の溝深さH21が、前記周方向主溝の最大溝深さHgに対して0.025≦H21/Hg≦0.150の範囲にあり、前記センター陸部が、タイヤ周方向に延在する周方向細溝と、屈曲形状あるいは湾曲形状を有すると共に一方の端部にて前記周方向細溝に開口するセンター屈曲溝とを備え、且つ、前記センター屈曲溝が、前記周方向細溝に対する開口部に底上部を有することを特徴とする。
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在する一対の周方向主溝と、前記周方向主溝に区画されて成る一対のショルダー陸部および単一のセンター陸部とを備える空気入りタイヤであって、前記センター陸部が、前記センター陸部をタイヤ幅方向に貫通する複数のセンター細浅溝を備え、前記センター細浅溝の溝深さH21が、前記周方向主溝の最大溝深さHgに対して0.025≦H21/Hg≦0.150の範囲にあり、且つ、前記一対の周方向主溝が、ストレート形状を有し、且つ、前記周方向主溝の溝幅Wgが、タイヤ接地幅TWに対して0.05≦Wg/TW≦0.10の範囲にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明にかかる空気入りタイヤでは、(1)単一のセンター陸部が配置されることにより、トレッド部の剛性が高まり、車両の横揺れが低減される。これにより、横揺れに起因する偏摩耗が抑制されて、タイヤの耐偏摩耗性能が向上する利点がある。また、(2)センター陸部がセンター陸部を貫通する複数のセンター細浅溝を備えるので、センター細浅溝の冷却作用により、タイヤの耐発熱性能が向上する利点がある。また、(3)比H21/Hgの上記下限により、センター細浅溝の冷却作用が確保され、上記上限により、トレッド部の剛性が確保される利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に記載した空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図2に記載した空気入りタイヤのセンター陸部を示す拡大図である。
【
図4】
図4は、
図3に記載したセンター陸部のA視断面図である。
【
図5】
図5は、
図3に記載したセンター陸部のB視断面図である。
【
図6】
図6は、
図3に記載したセンター屈曲溝および周方向細溝の拡幅部を示す拡大図である。
【
図7】
図7は、
図2に記載した空気入りタイヤの要部を示す拡大図である。
【
図8】
図8は、
図2に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、
図2に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。
【
図11】
図11は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【
図12】
図12は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0010】
[空気入りタイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、空気入りタイヤの一例として、ORタイヤ(Off the Road Tire)と呼ばれる建設車両用タイヤを示している。
【0011】
同図において、タイヤ子午線方向の断面は、タイヤ回転軸(図示省略)を含む平面でタイヤを切断したときの断面として定義される。また、タイヤ赤道面CLは、JATMAに規定されたタイヤ断面幅の測定点の中点を通りタイヤ回転軸に垂直な平面として定義される。また、タイヤ幅方向は、タイヤ回転軸に平行な方向として定義され、タイヤ径方向は、タイヤ回転軸に垂直な方向として定義される。
【0012】
空気入りタイヤ1は、タイヤ回転軸を中心とする環状構造を有し、一対のビードコア11、11と、一対のビードフィラー12、12と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、一対のサイドウォールゴム16、16と、一対のリムクッションゴム17、17とを備える(
図1参照)。
【0013】
一対のビードコア11、11は、スチールから成る1本あるいは複数本のビードワイヤを環状かつ多重に巻き廻して成り、ビード部に埋設されて左右のビード部のコアを構成する。一対のビードフィラー12、12は、一対のビードコア11、11のタイヤ径方向外周にそれぞれ配置されてビード部を補強する。
【0014】
カーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造あるいは複数枚のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、左右のビードコア11、11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードコア11およびビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。また、カーカス層13のカーカスプライは、スチールから成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で80[deg]以上110[deg]以下のコード角度(タイヤ周方向に対するカーカスコードの長手方向の傾斜角として定義される。)を有する。また、カーカスコードのコード径が、1.5[mm]以上2.5[mm]以下の範囲にある。
【0015】
ベルト層14は、複数のベルトプライ141~145を積層して成り、カーカス層13の外周に掛け廻されて配置される。特に、ORタイヤでは、4~8枚(
図1では5枚)のベルトプライが積層されて、ベルト層14が構成される。また、ベルトプライ141~145が、スチールコードをコートゴムで被覆して圧延加工して成る。また、各ベルトプライ141~145が、隣り合うベルトプライに対して異符号のコード角度(タイヤ周方向に対するベルトコードの長手方向の傾斜角として定義される。)を有し、ベルトコードの傾斜方向を交互に反転させて積層される。これにより、クロスプライ構造が形成されて、ベルト層14の構造強度が高められている。また、ベルトコードの外径が、1.5[mm]以上2.5[mm]以下の範囲にある。
【0016】
トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤのトレッド部を構成する。一対のサイドウォールゴム16、16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されて左右のサイドウォール部を構成する。一対のリムクッションゴム17、17は、左右のビードコア11、11およびカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側からタイヤ幅方向外側に延在して、ビード部のリム嵌合面を構成する。
【0017】
[トレッドパターン]
図2は、
図1に記載した空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。同図は、一例として、港湾ストラドルキャリア用ラジアルタイヤのトレッド面を示している。同図において、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸周りの方向をいう。また、符号Tは、タイヤ接地端であり、寸法記号TWは、タイヤ接地幅である。なお、
図2では、後述するセンター細浅溝321よりも深い溝深さを有する細溝部に、ハッチングが付されている。
【0018】
図2に示すように、空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する一対の周方向主溝2、2と、これらの周方向主溝2、2に区画されて成る一対のショルダー陸部31、31および単一のセンター陸部32とをトレッド面に備える。
【0019】
主溝は、JATMAに規定されるウェアインジケータの表示義務を有する溝であり、20[mm]以上の溝幅および40[mm]以上の溝深さを有する。
【0020】
溝幅は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、溝開口部における対向する溝壁間の距離として測定される。切欠部あるいは面取部を溝開口部に有する構成では、溝幅方向かつ溝深さ方向に平行な断面視におけるトレッド踏面の延長線と溝壁の延長線との交点を測定点として、溝幅が測定される。
【0021】
溝深さは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、トレッド踏面から溝底までの距離として測定される。また、部分的な底上部、サイプあるいは凹凸部を溝底に有する構成では、これらを除外して溝深さが測定される。
【0022】
規定リムとは、JATMAに規定される「標準リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が規定内圧での最大負荷能力の88[%]である。
【0023】
例えば、
図2の構成では、空気入りタイヤ1が、タイヤ赤道面CL上に中心点をもつ点対称なトレッドパターンを有している。また、タイヤ赤道面CLを境界とする左右の領域が単一の周方向主溝2、2をそれぞれ有している。また、これらの周方向主溝2、2が、ストレート形状を有し、タイヤ赤道面CLを中心として左右対称に配置されている。また、これらの周方向主溝2、2により、一対のショルダー陸部31、31および単一のセンター陸部32が区画されている。また、センター陸部32が、タイヤ赤道面CL上に配置されている。
【0024】
また、周方向主溝2の溝幅Wgが、タイヤ接地幅TWに対して0.05≦Wg/TW≦0.10の範囲にあることが好ましい。
【0025】
タイヤ接地幅TWは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を付与したときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大直線距離として測定される。
【0026】
また、
図2において、ショルダー陸部31の最大接地幅Wb1が、タイヤ接地幅TWに対して0.15≦Wb1/TW≦0.35の範囲にあることが好ましく、0.20≦Wb1/TW≦0.30の範囲にあることがより好ましい。また、センター陸部32の最大接地幅Wb2が、タイヤ接地幅TWに対して0.35≦Wb2/TW≦0.50の範囲にあることが好ましく、0.40≦Wb2/TW≦0.45の範囲にあることがより好ましい。
【0027】
陸部の接地幅Wb1、Wb2は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を付与したときの陸部と平板との接触面におけるタイヤ軸方向の直線距離として測定される。
【0028】
[センター陸部]
図3は、
図2に記載した空気入りタイヤのセンター陸部を示す拡大図である。
図4および
図5は、
図3に記載したセンター陸部32のA視断面図(
図4)およびB視断面図(
図5)である。これらの図は、後述するセンター細浅溝321(
図4)およびセンター屈曲溝322(
図5)に沿った溝深さ方向の断面図を示している。
【0029】
図2に示すように、センター陸部32は、複数のセンター細浅溝321と、複数のセンター屈曲溝322と、単一の周方向細溝323とを備える。
【0030】
センター細浅溝321は、センター陸部32をタイヤ幅方向に貫通して、センター陸部32の左右のエッジ部に開口する。また、複数のセンター細浅溝321が、タイヤ周方向に所定間隔で配列される。かかる構成では、センター細浅溝321の冷却作用により、タイヤの耐発熱性能が向上する。
【0031】
また、
図2の構成では、センター細浅溝321が、直線形状を有している。しかし、これに限らず、センター細浅溝321が、緩やかに湾曲した円弧形状あるいはS字形状を有しても良い(図示省略)。
【0032】
また、
図3において、センター細浅溝321の溝幅W21が、2.5[mm]≦W21≦7.5[mm]の範囲にあることが好ましく、4.0[mm]≦W21≦6.0[mm]の範囲にあることがより好ましい。また、
図3に示すように、センター細浅溝321が、略一定の溝幅を有することが好ましい。具体的には、センター細浅溝321の溝幅W21の最大値W21_maxと最小値W21_minとの比が、1.00≦W21_max/W21_min≦1.10の範囲にあることが好ましい。
【0033】
また、
図3に示すように、センター細浅溝321がタイヤ周方向に対して傾斜しつつタイヤ幅方向に延在する。また、センター細浅溝321の傾斜角θ21が、65[deg]≦θ21≦90[deg]の範囲にあることが好ましく、75[deg]≦θ21≦85[deg]の範囲にあることがより好ましい。
【0034】
センター細浅溝321の傾斜角θ21は、センター細浅溝321の左右の開口部を通る仮想直線とタイヤ周方向とのなす角として測定される。
【0035】
また、
図3において、センター細浅溝321のピッチ長P21が、センター陸部32の接地幅Wb2に対して0.75≦P21/Wb2≦1.00の範囲にあることが好ましく、0.85≦P21/Wb2≦0.90の範囲にあることがより好ましい。
【0036】
また、
図4において、センター細浅溝321の溝深さH21が、周方向主溝2の最大溝深さHgに対して0.025≦H21/Hg≦0.150の範囲にあり、0.040≦H21/Hg≦0.060の範囲にあることが好ましい。また、センター細浅溝321の溝深さH21が、H21≦5.0[mm]の範囲にあることが好ましい。したがって、センター細浅溝321の溝深さH21が周方向主溝2の最大溝深さHgに対して非常に浅く設定される。
【0037】
上記の構成では、非常に浅い溝深さH21をもつセンター細浅溝321が、タイヤ周方向に所定間隔で配置されることにより、センター陸部32におけるタイヤ新品時からの摩耗進行が均一化される。これにより、タイヤの耐偏摩耗性能が向上する。
【0038】
センター屈曲溝322は、
図2に示すように、屈曲形状あるいは湾曲形状を有し、タイヤ幅方向に延在して少なくとも一方の端部にて周方向主溝2に開口する。また、複数のセンター屈曲溝322が、タイヤ周方向に所定間隔で配列される。
【0039】
図2の構成では、センター屈曲溝322が、2つの屈曲点を有するステップ形状を有している。かかる構成では、タイヤ接地時にて、センター屈曲溝322の溝壁が噛み合うことにより、センター陸部32の剛性が確保される。しかし、これに限らず、センター屈曲溝322が、2つの変曲点を有するS字形状を有しても良い(図示省略)。
【0040】
また、センター陸部32内におけるセンター屈曲溝322のタイヤ幅方向への延在長さL22(
図3参照)が、センター陸部32の接地幅Wb2に対して0.45≦L22/Wb2≦0.65の範囲にあることが好ましく、0.50≦L22/Wb2≦0.60の範囲にあることがより好ましい。
【0041】
また、
図2の構成では、センター細浅溝321とセンター屈曲溝322とが、タイヤ周方向に交互に配置されている。しかし、これに限らず、複数のセンター細浅溝321が、隣り合うセンター屈曲溝322の間に配置されても良い(図示省略)。
【0042】
また、
図2の構成では、センター陸部32が、後述する周方向細溝323を備え、センター屈曲溝322が、周方向細溝323に区画された左右の領域にそれぞれ配置されている。また、タイヤ幅方向に隣り合うセンター屈曲溝322、322が、周方向細溝323に対して相互に異なる位置で開口している。言い換えれば、タイヤ幅方向に隣り合うセンター屈曲溝322、322が、周方向細溝323を介して連結されている。しかし、これに限らず、隣り合うセンター屈曲溝322、322が、周方向細溝323に対してタイヤ周方向の同位置で開口しても良い(図示省略)。
【0043】
また、
図3において、センター屈曲溝322の溝幅W22が、2.5[mm]≦W22≦7.5[mm]の範囲にあることが好ましく、4.0[mm]≦W22≦6.0[mm]の範囲にあることがより好ましい。また、
図3に示すように、センター屈曲溝322が、後述する屈曲点の拡幅部3222を除外した領域にて、略一定の溝幅を有することが好ましい。具体的には、上記領域におけるセンター屈曲溝322の溝幅W22の最大値W22_maxと最小値W22_minとの比が、1.00≦W22_max/W22_min≦1.10の範囲にあることが好ましい。
【0044】
また、
図3に示すように、周方向主溝2に対するセンター細浅溝321の開口部とセンター屈曲溝322の開口部とのタイヤ周方向の距離Deが、センター細浅溝321のピッチ長P21に対して0.30≦De/P21≦0.70の範囲にあることが好ましく、0.35≦De/P21≦0.65の範囲にあることがより好ましい。
【0045】
また、
図3に示すように、センター屈曲溝322が周方向主溝2に対して略直交して開口する。具体的には、周方向主溝2に対するセンター屈曲溝322の開口部における溝中心線のタイヤ周方向に対する傾斜角(図示省略)が、70[deg]以上110[deg]以下の範囲にあることが好ましく、80[deg]以上100[deg]以下の範囲にあることがより好ましい。これにより、センター屈曲溝322の開口部における局所的なブロック剛性の低下が抑制される。
【0046】
また、
図5において、センター屈曲溝322の溝深さH22が、周方向主溝2の最大溝深さHgに対して0.50≦H22/Hg≦0.90の範囲にあることが好ましく、0.70≦H22/Hg≦0.85の範囲にあることがより好ましい。また、センター屈曲溝322の溝深さH22が、35[mm]≦H22の範囲にあることが好ましい。したがって、センター屈曲溝322の溝深さH22が、上記したセンター細浅溝321の溝深さH21よりも深く設定される。
【0047】
また、
図3および
図5に示すように、センター屈曲溝322が、周方向主溝2に対する開口部および周方向細溝323に対する開口部のそれぞれに、底上部3221、3221を有する。また、トレッド踏面からセンター屈曲溝322の底上部3221の頂面までの距離H22’(
図5参照)が、周方向主溝2の最大溝深さHgに対して0.025≦H22’/Hg≦0.150の範囲にあることが好ましく、0.040≦H22’/Hg≦0.060の範囲にあることがより好ましい。また、底上部3221の距離H22’が、H22’≦5.0[mm]の範囲にあることが好ましい。したがって、底上部3221の距離H22’が周方向主溝2の最大溝深さHgに対して非常に浅く設定される。
【0048】
距離H22’は、センター屈曲溝322の最小溝深さに相当し、トレッド踏面からセンター屈曲溝322の底上部3221の頂面までの距離の最小値として測定される。
【0049】
また、
図3において、センター屈曲溝322の底上部3221のタイヤ幅方向への延在長さL22’が、センター陸部32の接地幅Wb2に対して0.20≦L22’/Wb2≦0.35の範囲にあることが好ましい。
【0050】
底上部3221の延在長さL22’は、底上部3221の距離H22’が上記比H22’/Hgの条件を満たす領域にて測定される。
【0051】
また、
図3の構成では、センター屈曲溝322が、ステップ形状を有し、その両端部の溝中心線が周方向主溝2および後述する周方向細溝323の溝中心線に対して直交して開口している。そして、センター屈曲溝322が、そのステップ形状の左右の直線部に底上部3221をそれぞれ有している。これにより、周方向主溝2に対するセンター屈曲溝322の開口部が第一の底上部3221により補強され、また、周方向細溝323に対するセンター屈曲溝322の開口部が第二の底上部3221により補強されている。これにより、センター陸部32の剛性が確保されている。
【0052】
周方向細溝323は、
図2に示すように、センター陸部32の中央部に配置されて、タイヤ周方向に延在する。
図2の構成では、単一かつストレート形状の周方向細溝323が、タイヤ赤道面CL上に配置されている。しかし、これに限らず、周方向細溝323がタイヤ赤道面CLから外れた位置に配置されても良い(図示省略)。具体的には、
図3において、センター陸部32の一方のエッジ部から周方向細溝323までのタイヤ幅方向の距離(図中の寸法記号省略)が、センター陸部32の接地幅Wb2に対して40[%]以上60[%]以下の範囲にあれば良い。
【0053】
また、
図3において、周方向細溝323の溝幅W23が、2.5[mm]≦W23≦7.5[mm]の範囲にあることが好ましく、4.0[mm]≦W23≦6.0[mm]の範囲にあることがより好ましい。また、
図3に示すように、周方向細溝323が、後述する屈曲点の拡幅部3232を除外した領域にて、略一定の溝幅を有することが好ましい。具体的には、上記領域における周方向細溝323の溝幅W23の最大値W23_maxと最小値W23_minとの比が、1.00≦W23_max/W23_min≦1.10の範囲にあることが好ましい。
【0054】
また、
図4において、周方向細溝323の最大溝深さH23が、周方向主溝2の最大溝深さHgに対して0.70≦H23/Hg≦0.90の範囲にあることが好ましく、0.75≦H23/Hg≦0.85の範囲にあることがより好ましい。また、周方向細溝323の溝深さH23が、35[mm]≦H23の範囲にあることが好ましい。したがって、周方向細溝323の溝深さH23がセンター細浅溝321の溝深さH21よりも深く設定される。
【0055】
また、
図3および
図5に示すように、周方向細溝323が、センター屈曲溝322との接続部に底上部3231を有する。また、トレッド踏面から周方向細溝323の底上部3231の頂面までの距離H23’が、センター屈曲溝322の溝深さH22に対して0.040≦H23’/H22≦0.075の範囲にあることが好ましく、0.050≦H23’/H22≦0.070の範囲にあることがより好ましい。また、
図3および
図4に示すように、周方向細溝323の底上部3231が、周方向細溝323とセンター細浅溝321との接続部から外れた位置に配置される。
【0056】
また、
図3および
図5に示すように、周方向細溝323の底上部3231が、センター屈曲溝322の底上部3221に対して連結される。これにより、センター陸部32の剛性がさらに高まる。また、トレッド踏面から周方向細溝323の底上部3231の頂面までの距離H23’が、センター屈曲溝322の底上部3221の距離H22’に対して0.90≦H23’/H22’≦1.10の範囲にあることが好ましく、0.95≦H23’/H22’≦1.05の範囲にあることがより好ましい。したがって、周方向細溝323の底上部3231の頂面とセンター屈曲溝322の底上部3221の頂面とが、略同一の深さ位置にある。
【0057】
[センター屈曲溝および周方向細溝の拡幅部]
図6は、
図3に記載したセンター屈曲溝322および周方向細溝323の拡幅部3222、3232を示す拡大図である。同図は、センター屈曲溝322と周方向細溝323との接続部の拡大平面図を示している。
【0058】
図3および
図6に示すように、センター屈曲溝322は、その屈曲形状の屈曲点に拡幅部3222を有する。拡幅部3222は、トレッド平面視にて円形状を有し、センター屈曲溝322の溝幅を拡幅する。また、
図3の構成では、拡幅部3222が、センター屈曲溝322の底上部3221の立ち上げ部(深い溝部との境界部)に形成されている。また、拡幅部3222の径φ1が、同位置におけるセンター屈曲溝322の溝幅W22に対して1.05≦φ1/W22≦1.40の関係を有することが好ましい。
【0059】
また、
図3および
図6に示すように、周方向細溝323が、周方向細溝323の底上部3231の立ち上げ部(深い溝部との境界部)に、拡幅部3232を有する。拡幅部3222は、トレッド平面視にて円形状を有し、センター屈曲溝322の溝幅を拡幅する。また、拡幅部3232の径φ2が、同位置における周方向細溝323の溝幅W23に対して1.05≦φ2/W22≦1.40の関係を有することが好ましい。
【0060】
[ショルダー陸部]
図7は、
図2に記載した空気入りタイヤの要部を示す拡大図である。同図は、ショルダー細浅溝311およびセンター細浅溝321の周方向主溝2に対する開口位置の拡大平面図を示している。
【0061】
図2に示すように、ショルダー陸部31は、複数のショルダー細浅溝311と、複数のショルダー屈曲溝312とを備える。
【0062】
ショルダー細浅溝311は、ショルダー陸部31をタイヤ幅方向に貫通して、ショルダー陸部31の周方向主溝2側のエッジ部およびタイヤ接地端Tに開口する。また、複数のショルダー細浅溝311が、タイヤ周方向に所定間隔で配列される。また、
図2の構成では、ショルダー細浅溝311が、直線形状を有している。しかし、これに限らず、ショルダー細浅溝311が、緩やかに湾曲した円弧形状あるいはS字形状を有しても良い(図示省略)。
【0063】
また、ショルダー細浅溝311の溝幅W11(図中の寸法記号省略)が、2.5[mm]≦W11≦7.5[mm]の範囲にある。また、
図2に示すように、ショルダー細浅溝311がタイヤ周方向に対して傾斜しつつタイヤ幅方向に延在する。また、ショルダー細浅溝311の傾斜角θ11(図中の寸法記号省略)が、65[deg]≦θ11≦90[deg]の範囲にある。ショルダー細浅溝311の溝深さH11(図中の寸法記号省略)が、周方向主溝2の最大溝深さHgに対して0.025≦H11/Hg≦0.150の範囲にある。また、ショルダー細浅溝311の溝幅W11、傾斜角θ11および溝深さH11が、センター細浅溝321の溝幅W21、傾斜角θ21および溝深さH21に対して同一であることが好ましい。
【0064】
また、
図2の構成では、左右のショルダー陸部31、31のショルダー細浅溝311が、センター細浅溝321の延長線上に配置されている。このため、すべての陸部31、32のショルダー細浅溝311およびセンター細浅溝321が同一直線上に配置されて、タイヤ接地領域の全体を横断する長尺な細浅溝(311、321)が形成されている。これにより、ショルダー細浅溝311およびセンター細浅溝321によるトレッド踏面の冷却作用が高まり、タイヤの耐発熱性が向上する。
【0065】
また、
図7に示すように、ショルダー細浅溝311が、センター細浅溝321の延長線に対してタイヤ周方向に若干オフセットして配置されても良い。具体的に、ショルダー細浅溝311の延長線およびセンター細浅溝321の延長線と周方向主溝2の溝中心線との交点の距離Do(
図7参照)が、センター細浅溝321のピッチ長P21(
図3参照)に対して0≦Do/P21≦0.05の範囲にあれば、ショルダー細浅溝311がセンター細浅溝321の延長線上に配置されているといえる。
【0066】
ショルダー屈曲溝312は、
図2に示すように、屈曲形状あるいは湾曲形状を有し、ショルダー陸部31をタイヤ幅方向に貫通して、ショルダー陸部31の周方向主溝2側のエッジ部およびタイヤ接地端Tに開口する。また、複数のショルダー屈曲溝312が、タイヤ周方向に所定間隔で配列される。また、
図2の構成では、ショルダー屈曲溝312が、2つの屈曲点を有するステップ形状を有している。しかし、これに限らず、ショルダー屈曲溝312が、2つの変曲点を有するS字形状を有しても良い(図示省略)。
【0067】
また、ショルダー屈曲溝312の溝幅W12(図中の寸法記号省略)が、2.5[mm]≦W12≦7.5[mm]の範囲にある。また、ショルダー屈曲溝312の最大溝深さH12(図中の寸法記号省略)が、周方向主溝2の最大溝深さHgに対して0.025≦H12/Hg≦0.150の範囲にある。また、ショルダー陸部31のショルダー屈曲溝312の溝幅W12および最大溝深さH12が、センター陸部32のセンター細浅溝321の溝幅W21および溝深さH21に対して同一であることが好ましい。
【0068】
[変形例]
図8~
図10は、
図2に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。これらの図において、
図2に記載した構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0069】
図2の構成では、上記のように、ショルダー陸部31が、複数のショルダー細浅溝311および複数のショルダー屈曲溝312を備えている。かかる構成では、ショルダー細浅溝311およびショルダー屈曲溝312により、トレッド踏面が効果的に冷却されて、タイヤの耐発熱性が向上する点で好ましい。
【0070】
しかし、これに限らず、
図8に示すように、ショルダー細浅溝311およびショルダー屈曲溝312が省略されても良い。
図8の構成では、ショルダー陸部31が溝を有しておらず、タイヤ周方向に連続した踏面を有している。
【0071】
また、
図2および
図8の構成では、上記のように、センター陸部32が周方向細溝323を備え、センター屈曲溝322が周方向細溝323に区画された左右の領域にそれぞれ配置されている。また、タイヤ幅方向に隣り合うセンター屈曲溝322、322が、周方向細溝323に対して相互に異なる位置で開口している。かかる構成では、周方向細溝323の冷却作用により、タイヤの耐発熱性能が向上する点で好ましい。
【0072】
しかし、これに限らず、
図9および
図10に示すように、周方向細溝323が省略されても良い。
図9および
図10の構成では、センター細浅溝321およびセンター屈曲溝322がセンター陸部32をタイヤ幅方向に貫通することにより、センター陸部32がタイヤ周方向に区画されている。また、センター細浅溝321およびセンター屈曲溝322により区画された各領域が、タイヤ幅方向に連続した踏面を有している。かかる構成では、センター陸部32がタイヤ幅方向に連続した踏面を有するので、センター陸部32の剛性が増加して、タイヤの耐偏摩耗性能が向上する。また、相互に異なる最大深さH21、H22(
図4および
図5)をもつセンター細浅溝321およびセンター屈曲溝322がタイヤ周方向に配置されるので、深溝のみが配置される構成と比較して、センター陸部32の剛性が増加して、タイヤの耐偏摩耗性能が向上する。
【0073】
[効果]
以上説明したように、この空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する一対の周方向主溝2、2と、周方向主溝2、2に区画されて成る一対のショルダー陸部31、31および単一のセンター陸部32とを備える(
図2、
図8、
図9および
図10参照)。また、センター陸部32が、センター陸部32をタイヤ幅方向に貫通する複数のセンター細浅溝321を備える。また、センター細浅溝321の溝深さH21が、周方向主溝2の最大溝深さHgに対して0.025≦H21/Hg≦0.150の範囲にある(
図4参照)。
【0074】
かかる構成では、(1)単一のセンター陸部32が配置されることにより、トレッド部の剛性が高まり、車両の横揺れが低減される。これにより、横揺れに起因する偏摩耗が抑制されて、タイヤの耐偏摩耗性能が向上する利点がある。また、(2)センター陸部32がセンター陸部32を貫通する複数のセンター細浅溝321を備えるので、センター細浅溝321の冷却作用により、タイヤの耐発熱性能が向上する利点がある。また、(3)比H21/Hgの上記下限により、センター細浅溝321の冷却作用が確保され、上記上限により、トレッド部の剛性が確保される利点がある。また、(4)非常に浅い溝深さH21をもつセンター細浅溝321が、タイヤ周方向に所定間隔で配置されることにより、センター陸部32におけるタイヤ新品時からの摩耗進行が均一化される。これにより、タイヤの耐偏摩耗性能が向上する利点がある。
【0075】
また、この空気入りタイヤ1では、センター細浅溝321が、2.5[mm]以上の溝幅W21(
図3参照)および5.0[mm]以下の溝深さH21(
図4参照)を有する。これにより、センター細浅溝321の溝幅W21および溝深さH21が適正に確保される利点がある。
【0076】
また、この空気入りタイヤ1では、センター細浅溝321の溝幅W21(
図3参照)の最大値W21_maxと最小値W21_minとの比が、1.00≦W21_max/W21_min≦1.10の範囲にある。かかる構成では、センター細浅溝321が略一定の溝幅を有するので、センター陸部32の剛性が均一化されて、タイヤの耐偏摩耗性能が向上する利点がある。
【0077】
また、この空気入りタイヤ1では、センター陸部32の接地幅Wb2が、タイヤ接地幅TWに対して0.35≦Wb2/TW≦0.50の関係を有する(
図2参照)。上記下限、センター陸部32の接地幅Wb2が確保されて、装着車両の横揺れに起因するタイヤの耐偏摩耗性能が確保される利点がある。また、上記上限により、左右のショルダー陸部31、31の接地幅Wb2が適正に確保される利点がある。
【0078】
また、この空気入りタイヤ1では、センター陸部32が、屈曲形状あるいは湾曲形状を有すると共に、少なくとも一方の端部にて周方向主溝2に開口するセンター屈曲溝322を備える(
図2参照)。また、センター屈曲溝322の溝深さH22が、周方向主溝2の最大溝深さHgに対して0.50≦H22/Hg≦0.90の範囲にある(
図5参照)。かかる構成では、センター陸部32がセンター屈曲溝322を備えるので、センター屈曲溝322の冷却作用により、タイヤの耐発熱性能が向上する利点がある。また、センター屈曲溝322の溝深さH22が上記したセンター細浅溝321の溝深さH21と比較して深いので、センター屈曲溝322の冷却作用により、タイヤの耐発熱性能が効果的に向上する利点がある。
【0079】
また、この空気入りタイヤ1では、センター屈曲溝322が、直線形状(
図2参照)、円弧形状あるいはS字形状(図示省略)を有する。また、センター屈曲溝322のタイヤ幅方向への延在長さL22(
図3参照)が、センター陸部32の接地幅Wb2に対して0.45≦L22/Wb2≦0.65の範囲にある。上記下限により、センター屈曲溝322による陸部の冷却作用が確保されて、タイヤの耐発熱性能が確保される利点がある。また、上記上限により、陸部の剛性が確保されて、タイヤの耐偏摩耗性能が確保される利点がある。
【0080】
また、この空気入りタイヤ1では、センター屈曲溝322が、周方向主溝2に対する開口部に底上部3221を有する(
図3および
図5参照)。これにより、センター陸部32の剛性が確保されて、タイヤの耐偏摩耗性能が向上する利点がある。
【0081】
また、この空気入りタイヤ1では、トレッド踏面からセンター屈曲溝322の底上部3221の頂面までの距離H22’が、周方向主溝2の最大溝深さHgに対して0.025≦H22’/Hg≦0.150の範囲にある(
図5参照)。上記下限により、センター屈曲溝322による陸部の冷却作用が確保される利点がある。また、上記上限により、底上部3221による陸部の剛性の補強作用が確保される利点がある。
【0082】
また、この空気入りタイヤ1では、少なくとも1本のセンター細浅溝321が、隣り合うセンター屈曲溝322、322の間に配置される(
図2参照)。これにより、陸部の剛性を確保しつつセンター細浅溝321およびセンター屈曲溝322による陸部の冷却作用を効率的に高め得る利点がある。
【0083】
また、この空気入りタイヤ1では、センター陸部32が、タイヤ周方向に延在する周方向細溝323を備える(
図2参照)。また、周方向細溝323の溝深さH23が、周方向主溝2の最大溝深さHgに対して0.70≦H23/Hg≦0.90の範囲にある。かかる構成では、センター陸部32が周方向細溝323を備えるので、周方向細溝323の冷却作用により、タイヤの耐発熱性能が向上する利点がある。また、周方向細溝323の溝深さH23が上記したセンター細浅溝321の溝深さH21と比較して深いので、周方向細溝323の冷却作用により、タイヤの耐発熱性能が効果的に向上する利点がある。
【0084】
また、この空気入りタイヤ1では、センター陸部32が、タイヤ周方向に延在する周方向細溝323と、屈曲形状あるいは湾曲形状を有すると共に一方の端部にて周方向細溝323に開口するセンター屈曲溝322とを備える(
図2参照)。また、上記した周方向細溝323が、センター屈曲溝322に対する開口部に底上部3231を有する。これにより、センター陸部32の剛性が確保されて、タイヤの耐偏摩耗性能が向上する利点がある。
【0085】
また、この空気入りタイヤ1では、ショルダー陸部31が、ショルダー陸部31をタイヤ幅方向に貫通する複数のショルダー細浅溝311を備える(
図2参照)。また、ショルダー細浅溝311の溝深さH11が、周方向主溝2の最大溝深さHgに対して0.025≦H11/Hg≦0.150の範囲にある。かかる構成では、ショルダー陸部31がショルダー陸部31を貫通する複数のショルダー細浅溝311を備えるので、ショルダー細浅溝311の冷却作用により、タイヤの耐発熱性能が向上する利点がある。また、比H11/Hgの上記下限により、ショルダー細浅溝311の冷却作用が確保され、上記上限により、トレッド部の剛性が確保される利点がある。
【0086】
また、この空気入りタイヤ1では、ショルダー細浅溝311が、センター細浅溝321の延長線上にある(
図2参照)。これにより、ショルダー細浅溝311、321によるトレッド踏面の冷却作用が高まり、タイヤの耐発熱性が向上する利点がある。
【0087】
また、この空気入りタイヤ1では、一対の周方向主溝2が、ストレート形状を有する(
図2参照)。また、周方向主溝2の溝幅Wgが、タイヤ接地幅TWに対して0.05≦Wg/TW≦0.10の範囲にある。かかる構成では、周方向主溝2がストレート形状を有するので、トレッド踏面の冷却作用が高まり、タイヤの耐発熱性が向上する利点がある。
【0088】
[適用対象]
また、この空気入りタイヤ1は、建設車両用タイヤであり、特に、港湾ストラドルキャリアに装着される建設車両用タイヤであることが好ましい。かかる建設車両用タイヤを適用対象とすることにより、タイヤの耐偏摩耗性能および耐発熱性能の向上作用を効果的に得られる利点がある。
【実施例】
【0089】
図11および
図12は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【0090】
この性能試験では、複数種類の試験タイヤについて、(1)耐発熱性能および(2)耐偏摩耗性能に関する評価が行われた。また、タイヤサイズ1600R25の試験タイヤがリムサイズ25×11.25-2.0のリムに組み付けられ、この試験タイヤに1000[kPa]の内圧およびJATMAの規定荷重の85[%]が付与される。
【0091】
(1)耐発熱性能に関する評価では、室内ドラム試験機が用いられ、速度25[km/h]にて4時間走行した後のタイヤの発熱量が測定される。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど好ましい。
【0092】
(2)耐偏摩耗性能に関する評価では、試験タイヤが、試験車両である港湾ストラドルキャリアの総輪に装着される。そして、試験車両が舗装路を速度25[km/h]にて3000時間走行した後のタイヤの偏摩耗が観察される。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど好ましい。また、評価が98以上であれば、耐偏摩耗性能が適正に確保されているといえる。
【0093】
実施例の試験タイヤは、
図2の構成を備え、ストレート形状を有する一対の周方向主溝2、2と、一対のショルダー陸部31、31および単一のセンター陸部32とを備える。また、センター陸部32が、センター陸部32を貫通するセンター細浅溝321を有する。また、タイヤ接地幅TWが360[mm]であり、周方向主溝2の溝深さHgが50[mm]である。
【0094】
従来例の試験タイヤは、実施例1の試験タイヤにおいて、センター陸部が細浅溝を備えておらず、プレーンな踏面を有する。
【0095】
試験結果が示すように、実施例の試験タイヤでは、タイヤの耐偏摩耗性能を維持しつつ耐発熱性能を向上できることが分かる。
【符号の説明】
【0096】
1 空気入りタイヤ;2 周方向主溝;11 ビードコア;12 ビードフィラー;13 カーカス層;14 ベルト層;141~145 ベルトプライ;15 トレッドゴム;16 サイドウォールゴム;17 リムクッションゴム;31 ショルダー陸部;32 センター陸部;311 ショルダー細浅溝;312 ショルダー屈曲溝;321 センター細浅溝;322 センター屈曲溝;3221 底上部;3222 拡幅部;323 周方向細溝;3231 底上部;3232 拡幅部