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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】通話制御装置、及び通話制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/40 20180101AFI20230620BHJP
   H04W 4/08 20090101ALI20230620BHJP
   H04W 64/00 20090101ALI20230620BHJP
   H04M 3/56 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
H04W76/40
H04W4/08
H04W64/00 171
H04M3/56 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019172670
(22)【出願日】2019-09-24
(65)【公開番号】P2021052259
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 保馬
(72)【発明者】
【氏名】細野 英一
(72)【発明者】
【氏名】萬浪 一貴
(72)【発明者】
【氏名】冨安 恵巳
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 広晴
(72)【発明者】
【氏名】高宮 和貴
【審査官】望月 章俊
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-520425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W4/00-H04W99/00
H04B7/24-H04B7/26
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線機から、各無線機のグループを識別するグループID及び前記無線機の位置
情報を含む組合せを受信する第1の受信部と、
前記複数の無線機のうちの第1の無線機から、送信先のグループIDが特定されたグル
ープ通話送信要求を受信する第2の受信部と、
前記複数の無線機のうちの前記送信先のグループIDと一致するグループIDに対応す
る第2の無線機の位置情報を抽出する抽出部と、
前記抽出部で抽出した位置情報と第1の無線機との距離を算出する算出部と、
前記算出部で算出した距離に基づいて、前記グループ通話を行う際に第1の無線機が使
用すべき伝達手段を選択する選択部と、
前記選択部で選択した伝達手段を、第1の無線機に通知する伝達手段通知情報を送信す
る送信部と、を備え、
前記選択部が選択する伝達手段は、第1の無線機に接続されている拡声器を含み、前記
算出部で算出した距離のうちの全てが所定の距離以下である場合に、前記伝達手段として
、前記拡声器を選択する、
ことを特徴とする通話制御装置。
【請求項2】
前記第2の受信部は、第1の無線機に接続されている拡声器の位置情報をさらに受信し

前記算出部は、前記抽出部で抽出した位置情報と、前記第2受信部で受信した拡声器
の位置情報との距離を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の通話制御装置。
【請求項3】
複数の無線機から、各無線機のグループを識別するグループID及び前記無線機の位置
情報を含む組合せを受信する第1の受信部と、
前記複数の無線機のうちの第1の無線機から、送信先のグループIDが特定されたグル
ープ通話送信要求を受信する第2の受信部と、
前記複数の無線機のうちの、前記送信先のグループIDと一致するグループIDに対応
する第2の無線機の位置情報を抽出する第1の抽出部と、
1または複数の拡声器を識別する情報と、前記1または複数の拡声器の位置を示す位置
情報を抽出する第2の抽出部と、
第1の抽出部で抽出した位置情報と第2の抽出部で抽出した1または複数の位置情報と
の距離を算出する算出部と、
前記算出部で算出した距離に基づいて、前記グループ通話を行う際に第1の無線機が使
用すべき伝達手段を選択する選択部と、
前記選択部で選択した伝達手段を、第1の無線機に通知する伝達手段通知情報を送信す
る送信部と、を備え、
前記選択部が選択する伝達手段は、少なくとも第1の無線機に接続されている前記1ま
たは複数の拡声器を含み、前記算出部で算出した距離の全てが所定の距離よりも短い場合
、前記伝達手段として前記拡声器を選択する、
ことを特徴とする通話制御装置。
【請求項4】
複数の無線機から、各無線機のグループを識別するグループID及び前記無線機の位置
情報の組合せを受信するステップと、
前記複数の無線機のうちの第1の無線機から、送信先のグループIDが特定されたグル
ープ通話送信要求を受信するステップと、
前記複数の無線機のうちの前記送信先のグループIDと一致するグループIDに対応す
る第2の無線機の位置情報を抽出するステップと、
出した前記位置情報と第1の無線機との距離を算出するステップと、
出した前記距離に基づいて、前記グループ通話を行う際に第1の無線機が使用すべき
伝達手段を選択するステップと、
択した前記伝達手段を、第1の無線機に通知する伝達手段通知情報を送信するステッ
プと、を含み、
選択する前記伝達手段は、第1の無線機に接続されている拡声器を含み、算出した前記
距離のうちの全てが所定の距離以下である場合に、前記伝達手段として、前記拡声器を選
択する、通話制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信技術に関し、特に音声データ通信を制御する制御装置、制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信端末装置を使用した通信手段として長距離無線通信がある。また、基地局装置などの中継装置を介することによって、さらに長い距離間の長距離無線通信が可能である。
【0003】
このような技術背景において、無線通信端末装置を用いて相手に情報を伝達しようとするユーザが多数いた場合に、常に長距離無線通信手段を使用すると、たとえ通信相手が送信者から比較的近い場所にいるような状況であっても、他の送信者は通信が終了するまで待つなど、通話相手との接続がしにくくなり、ユーザにとって負担が大きいという問題があった。
【0004】
このような問題を鑑み、特許文献1では、通話に係る2つの通信端末間の距離に応じて、遠距離にいる相手に対しては長距離無線通信手段を用い、近距離にいる相手に対しては「Bluetooth(登録商標)」や「Wi-Fi」(Wireless Fidelity)などに代表される近距離無線通信手段を用いるように切り替える技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-64791号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、通信相手が近距離にいた場合に近距離無線通信手段を使用したとしても、他の無線機器も近距離無線通信手段を使用した場合には、通信相手との接続がしにくくなるという問題が依然として残っていた。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は通信する相手との状況に応じて最適な情報伝達手段を自動的に選択することにより、無線通信手段による無線通信帯域の使用頻度を抑え、かつユーザ負担を増やさずに情報を伝達する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の端末装置は、複数の無線機から、各無
線機のグループを識別するグループID及び前記無線機の位置情報を含む組合せを受信す
る第1の受信部と、前記複数の無線機のうちの第1の無線機から、送信先のグループID
が特定されたグループ通話送信要求を受信する第2の受信部と、前記複数の無線機のうち
の前記送信先のグループIDと一致するグループIDに対応する第2の無線機の位置情報
を抽出する抽出部と、前記抽出部で抽出した位置情報と第1の無線機との距離を算出する
算出部と、前記算出部で算出した距離に基づいて、前記グループ通話を行う際に第1の無
線機が使用すべき伝達手段を選択する選択部と、前記選択部で選択した伝達手段を、第1
の無線機に通知する伝達手段通知情報を送信する送信部と、を備え、前記選択部が選択す
る伝達手段は、第1の無線機に接続されている拡声器を含み、前記算出部で算出した距離
のうちの全てが所定の距離以下である場合に、前記伝達手段として、前記拡声器を選択す
ることを特徴とする通話制御装置を提供する。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の端末装置は、複数の無線機から、各無線機のグループを識別するグループID及び前記無線機の位置情報を含む組合せを受信する第1の受信部と、前記複数の無線機のうちの第1の無線機から、送信先のグループIDが特定されたグループ通話送信要求を受信する第2の受信部と、前記複数の無線機のうちの、前記送信先のグループIDと一致するグループIDに対応する第2の無線機の位置情報を抽出する第1の抽出部と、1または複数の拡声器を識別する情報と、前記1または複数の拡声器の位置を示す位置情報を抽出する第2の抽出部と、第1の抽出部で抽出した位置情報と第2の抽出部で抽出した1または複数の位置情報との距離を算出する算出部と、前記算出部で算出した距離に基づいて、前記グループ通話を行う際に第1の無線機が使用すべき伝達手段を選択する選択部と、前記選択部で選択した伝達手段を、第1の無線機に通知する伝達手段通知情報を送信する送信部と、を備え、前記選択部が選択する伝達手段は、少なくとも第1の無線機に接続されている前記1または複数の拡声器を含み、前記算出部で算出した距離の全てが所定の距離よりも短い場合、前記伝達手段として前記拡声器を選択することを特徴とする通話制御装置を提供する。
【0010】
本発明のさらに別の態様は、通話制御方法である。この方法は、複数の無線機から、各
無線機のグループを識別するグループID及び前記無線機の位置情報の組合せを受信する
ステップと、前記複数の無線機のうちの第1の無線機から、送信先のグループIDが特定
されたグループ通話送信要求を受信するステップと、前記複数の無線機のうちの前記送信
先のグループIDと一致するグループIDに対応する第2の無線機の位置情報を抽出する
ステップと、抽出した前記位置情報と第1の無線機との距離を算出するステップと、算
した前記距離に基づいて、前記グループ通話を行う際に第1の無線機が使用すべき伝達手
段を選択するステップと、選択した前記伝達手段を、第1の無線機に通知する伝達手段通
知情報を送信するステップと、を含み、選択する前記伝達手段は、第1の無線機に接続さ
れている拡声器を含み、算出した前記距離のうちの全てが所定の距離以下である場合に、
前記伝達手段として、前記拡声器を選択する
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、通信装置を使用して通信相手へ情報を伝達する状況において、ユーザ操作の負担を増やすことなく、通信相手との距離に応じた最適な手段によって情報伝達を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1に係る通信システムの構成を示す図である。
図2】実施の形態1に係る無線機のブロック図である。
図3】実施の形態1に係る通話制御装置のブロック図である。
図4】実施の形態1に係る通信システムのグループ通信(ケース1、3)を示す図である。
図5】実施の形態1に係る通信システムのグループ通信(ケース2)を示す図である。
図6】実施の形態2に係る通信システムのグループ通信を示す図である。
図7】実施の形態1~4に係る通信システムの処理の流れのうち、伝達手段としてスピーカ出力を選択した場合を示すシーケンス図である。
図8】実施の形態1~4に係る通信システムの処理の流れのうち、伝達手段として無線通信を選択した場合を示すシーケンス図である。
図9】実施の形態1に係る記憶部2に記憶させるテーブル情報のデータ構成を示す図である。
図10】実施の形態4に係る通信システムの各無線機と通話制御装置との通信を示す図である。
図11】実施の形態4に係る無線機のブロック図である。
図12】実施の形態4に係る記憶部2に記憶させるテーブル情報のデータ構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図面において、同一または対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0015】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1に係る無線システム100aの構成について説明する。図1に示すように、無線システム100aは、通話制御装置20と、無線機10aと、無線機10bと、無線機10cと、無線機10dとを含む。なお、本実施の形態では、無線機10aと無線機10bと無線機10cと無線機10dとを総称する場合に、単に無線機10と呼ぶこととする。
【0016】
通話制御装置20は、無線機10のそれぞれと音声、テキスト、及び画像などのデータ、並びに無線機10を制御するための制御信号の通信を行うことができる装置であり、例えば、基地局やレピータなどである。
【0017】
無線機10は、通話制御装置20を介した半二重通信方式により、互いに音声信号、データ信号、及び制御信号などの送受信を行うことができる装置である。本実施の形態では、無線機10のそれぞれには、自機を特定することが可能なUnit ID(以下UIDと呼ぶ)が設定されている。ここでは、無線機10aにはUID=1、無線機10bにはUID=2、無線機10cにはUID=3、無線機10dにはUID=4が設定されている。さらに、無線機10はグループ通話を行うことができる。グループ通話とは、各無線機10に設定されたGroup ID(以下、GIDとも呼ぶ)が同じである無線機間で行うことができる通話である。ここでは、無線機10a、無線機10b及び無線機10cには、GID=1とGID=2との両方が設定され、無線機10dにはGID=2だけが設定されているものとする。このように、無線機10はGIDを指定してグループ通話送信要求(Group Call)を行うことにより、グループ通話を開始できる。
【0018】
図2を用いて、無線機10の内部の構成を説明する。無線機10は、GPS受信部110と、記憶部120と、通話制御部130と、無線通信部140と、音声入力部150と、音声出力部160と、PTT検出部170とを備えている。
【0019】
GPS受信部110は、自身の位置(自位置)を検出する。自位置を検出する手段は、ここではGPS衛星などからの信号を受信して測位する方法だが、複数基地局からの情報を用いて測位する方法など、周知の位置検出技術のいずれかによって構成されてもよい。GPS受信部110は、取得した位置情報データを記憶部120へ出力する。記憶部120は、GPS受信部110から入力した位置情報データを位置情報管理部121へ記憶する。更に、記憶部120は、自機のGID、UIDを記憶する識別情報管理部122を備えている。
【0020】
PTT検出部170は、PTT(Push To Talk)ボタンが押下されたかどうかを検知するものであり、検知した結果を通話制御部130、及び無線通信部140へ通知する。
【0021】
通話制御部130は、通話手段選択部131を備える。通話手段選択部131は、PTTボタンが押下されていないことをPTT検出部170から通知された場合に、無線通信部140に対して無線機10が受信状態になるように制御する。PTTボタンが押下されていることをPTT検出部170から通知された場合には、音声入力部150から入力された音声を、無線通信部140あるいは音声出力部160のいずれかへ出力する。いずれに出力するかは、通話制御装置20から無線通信部140を介して取得した通話手段情報に応じて決定される。
【0022】
無線通信部140は、無線受信部141と、無線送信部142と、無線通信制御部143とを備える。無線通信部140は、音声信号と、テキスト及び画像などのデータと、無線機10を制御するための制御信号とを、無線受信部141を介して受信し、また、無線送信部142を介して送信する。さらに、無線通信部140は、無線通信制御部143によって、記憶部120から自位置を示す位置情報データ、自機が属するGID、及び自機を特定するUIDを取得し、無線送信部142を介して通話制御装置20へ送信する。
【0023】
音声入力部150は、ユーザが発話した音声を通話制御部130へ出力する。音声入力部150は、例えばユーザが発話した音声を集音するマイクである。音声出力部160は、通話制御部130から入力した音声データを、音声に変換し出力する。音声出力部160は、例えば拡声器(スピーカ)である。通話制御部130から入力した音声データは、例えば音声入力部150が集音した音声をコード化した音声データ、あるいは無線通信部140が受信した音声信号をコード化した音声データである。
【0024】
すなわち無線機10は、音声入力部150(マイク)が集音した音声を、無線通信部140から無線通信によって送信する機能と、音声出力部160(スピーカ)から出力する機能とを備える。PTT検出部170がPTTボタンの押下を検知すると、通話制御装置20から受信した通話手段情報に従って、いずれかの機能を選択し出力する。本実施の形態における無線機10は、音声出力部160として、スピーカを備えるものとする。
【0025】
なお、無線システム100aは、例えば、業務用無線システムであるが、これに限らない。無線システム100aは、例えば携帯電話回線などの公衆回線を用いた無線通信システムであってもよい。スピーカを備える無線機は無線機10bに限らず、他の無線機であってもよく、また複数の無線機であってもよい。
【0026】
次に、通話制御装置20の構成について、図3のブロック図を用いて説明する。通話制御装置20は、記憶部2と、通信制御部3と、無線通信部4とを備えている。
【0027】
無線通信部4は、無線受信部41と、無線送信部42と、無線通信制御部43とを含む。無線受信部41は、無線機10から音声データ、制御データ、位置情報データ、UID、GIDなどを受信する。無線送信部42は、無線機10へ音声データ、制御データ、位置情報データなどを送信する。無線通信制御部43は、無線受信部41が受信した位置情報データ、GID、UIDを記憶部2へ出力する。また、無線通信部4は、無線機10a、10b、10c、そして10dから、位置情報データ、GID、UIDを定期的に受信し、それらを無線機毎に対応付けて記憶部2へ出力する。
【0028】
記憶部2は、無線機10の位置情報データとGIDとUIDとを無線機毎に対応付け、テーブル情報として記憶する。また、無線通信制御部43から同じ無線機10についての位置情報データとGIDとUIDとが入力された場合には、テーブル情報を更新して記憶する。
【0029】
通信制御部3は、距離算出部32と、通話手段選択部33とを含む。距離算出部32は、記憶部2に記憶された無線機10のそれぞれの位置情報データに基づいて、送信側の無線機と受信側の複数の無線機それぞれとの間の距離を算出し、その結果を通話手段選択部33へ出力する。なお、通信制御部3による位置情報データの取得は、無線通信部4から距離取得依頼を受け取った場合に行うようにしてもよい。
【0030】
通話手段選択部33は、通話する相手の無線機との間の通信手段を選択する。例えば無線通信部4が無線機10bからGroup Call発呼許可要求を受信した場合、要求元である無線機10bから、そのグループ(GID=1)に属するすべての無線機までのそれぞれの距離を、記憶部2に記憶されたテーブル情報から取得する。ここで、Group Call発呼許可要求は、グループ通話送信要求とも称し、送信側の無線機10がグループ通話を開始する場合に、通話制御装置20に対して要求する制御データである。すなわち送信側の無線機10は、要求元である。通話手段選択部33は、グループに属する全ての無線機が、要求元の無線機10bから所定の範囲内(例えば10m以内)にある場合は、無線機10bのマイク151で集音した音声を無線機10bのスピーカ161で再生させるように音声データを音声出力部に出力することを選択する。また、通話手段選択部33が取得した各無線機までの距離のうち、1台でも要求元である無線機10bから所定の範囲内(10m以内)にない場合は、無線機10bのマイク151で集音した音声を長距離無線通信で送信させるように音声データを無線通信部に出力することを選択する。
【0031】
通信制御部3は、CPU(Central Processing Unit)などにプログラムを実行させることにより、記憶部2の位置情報管理部31に記憶された送信側の無線機10bの位置と、受信側のGID=1のグループに属する複数の無線機10a、10c及び10dそれぞれの位置情報及びUIDを取得して距離算出部32へ出力させ、距離算出部32に対して送信側の無線機と受信側のGID=1のグループに属する複数の無線機それぞれとの間の距離を算出させ、算出された距離を通話手段選択部33へ出力し、通話手段選択部33に対して通信手段を選択させるまでの流れを実現するようにしてもよい。
【0032】
続いて、図4に示すような通話制御装置20及び各無線機10の位置関係を例に、図7を用いて無線システム100aの処理の流れを具体的に説明する。ここで、発話側(送信側)を第1の無線機と呼び、受話側(受信側)を第2の無線機と呼ぶこととする。本実施の形態では、第1の無線機は無線機10bが相当し、第2の無線機は無線機10a、無線機10c、及び無線機10dが相当する。そして第1の無線機10bから、複数の第2の無線機10a、10c及び10dで構成される無線機グループへのグループ通話送信要求を行うことによってグループ通話を開始する。
【0033】
(ケース1)
まず、各無線機は、電源が投入されると、定期的に自身の位置情報データを取得し、位置情報データと自機を特定するUIDと所属するグループを特定するGIDとを通話制御装置20へ送信する(S10a~S10d)。なお、位置情報データの具体例は緯度・経度情報である。
【0034】
次に、通話制御装置20は、無線通信部4が各無線機10から受信した位置情報データ、UID及びGIDを記憶部2の位置情報管理部へテーブル情報として記憶する(S20)。テーブル情報は、図9に示すように各無線機10の位置情報データとUIDとGIDを対応付ける。
【0035】
無線機10bは、送信先のグループIDとしてGID=1を持つ無線機を指定する。GID=1のグループに属する無線機は、図4に示すとおり、無線機10a、無線機10b、無線機10cである。無線機10dはGID=1のグループに属さない。無線機10bはGID=1のグループ通話送信要求を、通話制御装置20へ向けて送信する(S30)。
【0036】
通話制御装置20は、無線受信部41によって無線機10bからグループ通話送信要求を受信すると、無線通信制御部43が通信制御部3に対して、記憶部2に記憶されたテーブル情報(図9)から、GID=1に属する全ての無線機10の位置情報データを検索し、無線機10a及び無線機10cの位置情報データ及びUIDを抽出するよう通知する。通信制御部3は、距離算出部32において要求元である無線機10bから、無線機10a及び無線機10cまでの距離を算出し、通話手段選択部33へ出力する。
【0037】
通話手段選択部33は、距離算出部32から入力された全ての距離、すなわち要求元である無線機10bから無線機10aまでの距離Dba、及び無線機10bから無線機10cまでの距離Dbcについて、所定の距離Dth(例えば10m)と比較し、その結果に応じて通信手段を選択する。本実施の形態においては、比較の結果、全ての距離がDth以内であれば通信手段として「スピーカ出力」を選択し、それ以外であれば通信手段として「無線通信」を選択する(S40)。
【0038】
各無線機10が図4に示すような位置関係にある場合、通話手段選択部33は、Dthと比較した結果、無線機10bから、GID=1に属する全ての無線機10、すなわち無線機10aまでの距離Dbaと、無線機10cまでの距離DbcがDth以内であるという条件に合致するので、通信手段として「スピーカ出力」を選択し、選択結果を通話手段情報として無線通信制御部43へ出力する。無線通信制御部43は、無線送信部52を介して、通話手段情報である「スピーカ出力」応答を無線機10bへ送信する(S50)。
【0039】
無線機10bは、グループ通話送信要求に対して通話制御装置20から「スピーカ出力」応答を受信し、他の無線機への長距離無線通信によるグループ通話を行う代わりに、マイク151で集音した音声を拡声してスピーカから出力することによってグループ通話を成立させる(S60)。このため、他の無線機は、無線機10bとのグループ通話による音声再生をすることはない。また、無線機10bが通話制御装置20から「無線通信」応答を受信した場合は、他の無線機10へ長距離無線通信を実行してグループ通話を成立させる。長距離無線通信を使用したグループ通話は、公知の技術を用いて実行すればよいので、本例での説明は省略する。
【0040】
(ケース2)
一方、GID=1に属する無線機10のうち、例えば無線機10cが無線機10bから所定の距離Dthよりも離れていた状況(図5)において、通話制御装置20が無線機10bからグループ通話送信要求を受信した場合について説明する。通話制御装置20において、無線機10bからグループ通話送信要求を受信すると、通話手段選択部33は距離算出部32から入力された全ての距離について所定の距離Dthを比較する。その結果、無線機10bから無線機10aまでの距離Dbaが所定の距離Dth以内であり、無線機10bから無線機10cまでの距離Dbcが所定の距離よりも大きいので、全ての距離がDth以内であるという条件に合致しない。したがって通話手段選択部33は、通信手段として「無線通信」を選択し、選択結果を通話手段情報として無線通信制御部43へ出力する。無線通信制御部43は、無線送信部52を介して、通話手段情報である「無線通信」応答を無線機10bへ送信する(S50)。
【0041】
無線機10bは、グループ通話送信要求に対して「無線通信」応答を受信すると、通話制御装置20へGID=1のグループ送信を行い、長距離無線通信によるグループ通話を成立させる。長距離無線通信を使用したグループ通話は、公知の技術を用いて実行すればよいので、本実施の形態での説明は省略する。
【0042】
(ケース3)
次に、無線機10bがGID=2に属する無線機に対してグループ通話を開始する場合について、図4及び図8を用いて説明する。このケースでは、図4に示すとおり、無線機10a、無線機10b、無線機10c、及び無線機10dがGID=2に属し、無線機10dが無線機10bから所定の距離よりも離れた場所に位置している。ここではケース1との差異を中心に説明する。
【0043】
通話制御装置20が、無線通信部4の無線受信部41によって、無線機10bからGID=2に属する無線機に対するグループ通話送信要求を受信した場合、位置情報抽出部31が図9に示すテーブル情報から、GID=2に属する全ての無線機10の位置情報データを検索し、無線機10a、無線機10c、及び無線機10dの位置情報データ及びUIDを抽出する。距離算出部32は要求元である無線機10bから、無線機10a、無線機10c及び無線機10dまでの距離を、抽出した位置情報データを基に算出し、通話手段選択部33へ出力する。
【0044】
通話手段選択部33は、距離算出部32から入力された全ての距離、すなわち要求元である無線機10bから無線機10aまでの距離Dba、無線機10bから無線機10cまでの距離Dbc、及び無線機10bから無線機10dまでの距離Dbdについて、所定の距離Dth(例えば10m)と比較し通信手段を選択する(S40)。
【0045】
通話手段選択部33は、Dba、Dbc及びDbdのうち、DbdがDth以内に位置していないことを検出すると、通信手段として長距離無線通信を選択し、選択結果を無線通信部4の無線通信制御部43へ出力し、無線機10bへ「無線通信」応答を送信する(S55)。無線機10bはグループ通話を実行する(S110)。すなわち通話手段選択部33は、GID=2に属する複数の第2の無線機のうちひとつでも要求元である無線機10bから所定の範囲内にない場合は、通信手段として長距離無線通信を選択してグループ通話を実行する。
【0046】
また、無線機10bがGID=1に属する無線機に対してグループ通話を開始し、第1の無線機から第2の無線機それぞれまでの距離が、すべてDth以内である場合、つまり無線機10bから半径Dth以内にGID=1に属する無線機だけでなく、GID=2に属する無線機も位置していた場合、通話選択部33はグループ通話を成立させるために長距離無線を選択してグループ通話を実行する。
【0047】
本実施の形態においては、無線機10bからグループ通話を行った場合を例に説明したが、無線機10bから他の無線機10のうちのいずれかの無線機への個別通話(Individual Call)であってもよい。また、無線機10bが備えるスピーカの代わりに、外部装置としてPA(Public Address)装置を接続し、そのPA装置が備えるスピーカを用いてもよい。この場合、無線機10b自体の位置情報データを通話制御装置20に送信していたが、PA装置が無線機10bに接続され、無線機10bから離れていれば、PA装置が備えるスピーカの位置を無線機10bの位置情報データとして送信してもよい。この場合、記憶部2に記憶される無線機10bの位置は、実際にはスピーカの位置ということになる。また、所定の距離Dthは、スピーカから出力される音声の到達可能距離に応じて設定される。
【0048】
本実施の形態によれば、無線機10bを使用するユーザは、指定したグループIDに属する無線機10に向けて発話した内容を、各無線機との距離に応じて適した通信手段で送信することができるので、必要以上に無線通信を行うことによって通信相手との接続がしにくくなることを抑えることができ、通信手段の切替えにおいてもユーザ負担が無く行うことができる。
【0049】
(実施の形態2)
実施の形態2を説明する。本実施の形態は、実施の形態1と同様に、通話制御装置20を介して互いに通信する複数の無線機10が含まれる通信システムに関する。本実施の形態に係る通話制御装置20、無線機10、図1と同様のタイプであり、GIDやUIDに関しても同様の設定である。ここでは、実施の形態1との差異を中心に説明する。
【0050】
図6に係る無線システム100bの構成に示すように、GID=1に属する無線機10(無線機10a、無線機10b、無線機10c)及び、GID=2に属する無線機10(無線機10b、無線機10d)は、無線機10bの位置を中心として所定の距離の半径以内に位置している。このような状況において、無線機10bがGID=1に属する無線機10に向けたグループ通話を開始した場合について説明する。
【0051】
通話制御装置20が、無線受信部41によって無線機10bからGID=1に属する無線機10に向けたグループ通話送信要求を受信すると、無線通信制御部43が通信制御部3に対して、記憶部2に記憶されたテーブル情報(図9)から、通話制御装置20が管理する全ての無線機10(無線機10a、無線機10b、無線機10c、無線機10d)の位置情報データ、UID、及びGIDを抽出するよう通知する。通信制御部3は距離算出部32において、抽出した位置情報データを基に、要求元である無線機10bから無線機10a、無線機10c及び無線機10dまでのそれぞれの距離を算出する。距離算出部32は算出したそれぞれの距離を通話手段選択部33へ出力する。
【0052】
無線手段選択部33は、距離算出部32から入力した距離のうち、GID=1に属する全ての無線機10から無線機10bまでの距離と、所定の距離Dthとの比較を行うとともに、GID=1以外のグループに属する無線機10から無線機10bまでの距離と、所定の距離Dthとの比較を行う。その結果、無線機10bからGID=1に属さない無線機10までの距離がDth以内であった場合、つまり無線機10bから半径Dth以内にGID=1に属する無線機だけでなく、GID=2に属する無線機も位置していた場合、通話選択部43はグループ通話を成立させるために、通信手段として「無線通信」を選択し、長距離無線通信によるグループ通話を実行する。
【0053】
本実施の形態によれば、所定のグループに向けたグループ通話を行う際に、その通話内容が他のグループに属する無線機を携えるユーザに漏れることなく、行うことができる。所定のグループに属する無線機の位置と所定のグループに属さない無線機の位置に応じて、適切な通信手段を用いつつ、所定のグループ以外のユーザに通話内容を漏らさずに通話を行うことができる。
【0054】
(実施の形態3)
実施の形態3を説明する。本実施の形態も、これまで説明した実施の形態と同様に、通話制御装置20を介して互いに通信する複数の無線機10が含まれる通信システムに関する。ここでは、実施の形態1との差異を中心に説明する。
【0055】
本実施の形態における無線機は、さらに近距離無線通信を行うための近距離無線通信部170を有する。近距離無線通信とは、例えばBluetoothやWi-Fiなどに代表される通信手段を用いた無線通信であり、長距離無線通信よりも狭い範囲で行う。無線機は近距離無線通信を用いて、通話制御装置20を中継せずに直接他の無線機と通信を行う。近距離無線通信の仕組みに関しては公知の技術を用いるので、詳細な説明は省略する。本実施の形態においては近距離無線通信手段としてBluetoothを用いることを前提として説明する。
【0056】
本実施の形態において、GID=1のグループIDに属する無線機10が、無線機10bから半径100m以内に位置しているとする。すなわち、図4に示すような通話制御装置20及び各無線機10の位置関係であり、無線機10a及び無線機10cが無線機10bを中心に半径10m以内とあるところを半径100m以内と置き換えて考えた場合を例とし、無線システム100aの処理の流れを具体的に説明する。ここで100mとはBluetoothで通信可能な最大距離の例として挙げた距離であり、Bluetoothで通信可能な最大距離であれば100mに限らない。また、実施の形態1及び実施の形態2における距離の閾値としてDthを採用していたが、本実施の形態では2段階の閾値を設ける。すなわち第1の閾値Dth1(例えば10m)と第2の閾値Dth2(例えば100m)である。
【0057】
実施の形態1と同様に発話側(送信側)を第1の無線機と呼び、受話側(受信側)を第2の無線機と呼ぶこととする。第1の無線機10bから、複数の第2の無線機10a、10c及び10dで構成される無線機グループへのグループ通話送信要求を行うことによってグループ通話を開始する。
【0058】
まず、各無線機は、電源が投入されると、定期的に自身の位置情報データを取得し、位置情報データと自機を特定するUIDと所属するグループを特定するGIDとを通話制御装置20へ送信する。なお、位置情報データの具体例は緯度・経度情報である。
【0059】
次に、全ての無線機10は、互いにペアリングを行うことによってBluetoothによる通信が可能な状態にする。
【0060】
通話制御装置20は、無線通信部4が各無線機10から受信した位置情報データ、UID及びGIDを記憶部2の位置情報管理部へテーブル情報として記憶する。
【0061】
無線機10bは、送信先のグループIDとしてGID=1を持つ無線機を指定する。GID=1のグループに属する無線機は、図4に示すとおり、無線機10a、無線機10b、無線機10cである。無線機10dはGID=1のグループに属さない。無線機10bはGID=1のグループ通話送信要求を、通話制御装置20へ向けて送信する。
【0062】
通話制御装置20は、無線受信部41によって無線機10bからグループ通話送信要求を受信すると、無線通信制御部43が通信制御部3に対して、記憶部2に記憶されたテーブル情報(図示しない)から、GID=1に属する全ての無線機10の位置情報データを検索し、無線機10a及び無線機10cの位置情報データ及びUIDを抽出するよう通知する。通信制御部3は、距離算出部32において要求元である無線機10bから、無線機10a及び無線機10cまでの距離を算出し、通話手段選択部33へ出力する。
【0063】
通話手段選択部33は、距離算出部32から入力された全ての距離、すなわち要求元である無線機10bから無線機10aまでの距離Dba、及び無線機10bから無線機10cまでの距離Dbcについて、第1の閾値Dth1及び第2の閾値Dth2と比較する。その結果に応じて通信手段を選択する。本実施の形態においては、比較の結果、全ての距離がDth1以内であれば通信手段として「スピーカ出力」を選択し、DbaまたはDbcの少なくともいずれかがDth1よりも大きく、両方ともDth2以内である場合に、通信手段としてBluetoothを選択し、Dba、Dbcのうち少なくともいずれかがDth2よりも大きければ「長距離無線」を選択する。
【0064】
通話手段選択部33は、選択結果を通話手段情報として無線通信制御部43へ出力する。無線通信制御部43は、無線送信部52を介して、通話手段情報であるBluetooth応答を無線機10a、10b、10cへ送信する。
【0065】
通話手段情報としてBluetooth応答を受信した無線機10a、10b、10cは、通信手段としてBluetooth通信を実行するための準備を行い、通信に備える。各無線機10は通信相手がペアリングで接続されていることを認識しているので、即座にグループ通話による無線通信をBluetooth通信により実行することができる。Bluetoothを用いたグループ通話は、公知の技術を用いて実行すればよいので、本例での説明は省略する。
【0066】
(実施の形態4)
続いて、実施の形態4について説明する。本実施の形態にかかる無線システム200では、施設内において無線機10a、無線機10b、無線機10c、及び無線機10dと無線通話制御装置20とを備え、さらに複数のスピーカが施設内の複数の箇所に固定的に配置されている。このような施設内において本発明を実施する場合について説明する。また、第1の無線機及び第2の無線機の意味するところは、実施の形態1と同じである。
【0067】
図10に示すように、本実施例における施設には互いに離れた箇所に複数のスピーカが設置されてある。複数のスピーカを中心とする点線の円は、それぞれのスピーカから発せられる音声の到達範囲を示す。送信側である無線機10bは、図11のブロック図に示すように無線機10bの音声出力部としてPA装置161が用いられ、PA装置161に複数のスピーカ161-1、161-2、161-3が接続されている。以降、スピーカ161-1をスピーカA、スピーカ161-2をスピーカB、スピーカ161-3をスピーカCと称する。これら複数のスピーカ161からは、無線機10bのマイクから集音した音声が拡声され、同時に出力される。複数のスピーカ161それぞれの位置情報データは、通話制御装置20の記憶部2にあらかじめ記憶され、位置情報抽出部31によって適宜読み出されるものとする。また他の無線機10a、10c、及び10dは、この施設内の任意の箇所にいるユーザが携行しているものとする。なお、図10に示す各部屋間の壁は、音声の伝達を妨げないものとする。
【0068】
図7を用いて無線システム200の処理の流れを具体的に説明する。実施の形態1と同様に、第1の無線機10bから、複数の第2の無線機10a、10c及び10dで構成される無線機グループへのグループ通話送信要求を行う場合を例とする。
【0069】
まず、各無線機10は、電源がオンされると、定期的に自身の位置情報データを取得し、位置情報データとGIDとUIDとを通話制御装置20へ送信する(S10a~S10d)。なお、位置情報データの具体例は実施の形態1と同じく緯度・経度情報である。
【0070】
次に、通話制御装置20は、無線受信部41が各無線機10から受信した位置情報データ、GID、UIDを記憶部2の位置情報管理部21へテーブル情報として記憶する(S20)。また、本実施の形態において通話制御装置20は、無線システム200が備える複数のスピーカの位置情報データも、各スピーカの識別情報とともに、テーブル情報としてあらかじめ記憶部2の位置情報管理部21へ記憶している。記憶する形態は実施例1と同様に、図12に示すような形式に沿う。
【0071】
ここで、無線機10bが送信先のグループIDとしてGID=1を持つ無線機を指定し、グループ通話を開始する場合について説明する。本実施例でも実施の形態1と同様に、GID=1を持つ無線機は、無線機10a、無線機10b、無線機10cである。無線機10bはグループ通話送信要求を、通話制御装置20へ向けて送信する(S30)。
【0072】
通話制御装置20は、無線通信部4の無線受信部41によって無線機10bからグループ通話送信要求を受信すると、通信制御部3の位置情報抽出部31が記憶部2から、GID=1に属する全ての無線機10の位置情報データを検索し、無線機10a及び無線機10cの位置情報データ及びUIDを抽出する。また、位置情報抽出部31は無線システム200が備える複数のスピーカの位置情報データも取得する。距離算出部32は、複数のスピーカそれぞれの位置から、抽出した無線機10a及び無線機10cまでの距離をそれぞれ算出し、通話手段選択部33へ出力する。すなわちスピーカA、スピーカB、スピーカCのそれぞれから無線機10aまでの距離、及びスピーカA、スピーカB、スピーカCのそれぞれから無線機10cまでの距離を算出し、通話手段選択部33へ出力する。
【0073】
通話手段選択部33は、距離算出部32から入力された全ての距離、すなわちスピーカAから無線機10aまでの距離Dsaa、スピーカBから無線機10aまでの距離Dsba、スピーカCから無線機10aまでの距離Dsca、スピーカAから無線機10cまでの距離Dsac、スピーカBから無線機10cまでの距離Dsbc、及びスピーカCから無線機10cまでの距離Dsccについて、所定の距離Dsth(例えば6m)と比較し通信手段を選択する(S40)。
【0074】
通話手段選択部33は、Dsthと比較した結果、距離Dsaa、距離Dsba及びは距離Dscaのいずれかが距離Dsth以内であり、かつ距離Dsac、距離Dsbc及びは距離Dsccのいずれかが距離Dsth以内にあるので、通信手段として「スピーカ出力」を選択し、選択結果を無線通信部4へ出力する。つまり通話手段選択部33は、GID=1に属する複数の第2の無線機が、複数のスピーカのうち少なくともひとつのスピーカと距離Dth以内にある場合に「スピーカ出力」を選択する。なお、通話手段選択部33の処理は、CPUなどにプログラムを実行させることによって実現できる。
【0075】
無線機10bは、グループ通話送信要求に対して通話制御装置20から「スピーカ出力」を受信した場合、無線機10a及び無線機10cへの長距離無線通信によるグループ通話を行う代わりに、マイクで集音した音声をスピーカから出力することによってグループ通話を成立させる。このため、無線機10a及び無線機10cは、無線機10bとのグループ通話による音声再生をすることはない。
【0076】
一方、無線機10bがGID=2に属する無線機に対してグループ通話を開始する場合について説明する。このケースでは、図10に示すとおり、無線機10a、無線機10b、無線機10c、及び無線機10dがGID=2に属している。
【0077】
通話制御装置20が、無線通信部4の無線受信部41によって無線機10bからGID=2に属する無線機に対するグループ通話送信要求を受信した場合、通信制御部3の位置情報抽出部31は、記憶部2からGID=2に属する複数の第2の無線機10の位置情報データを検索し、無線機10a、無線機10c、及び無線機10dの位置情報データ及びUIDを抽出する。距離算出部32は複数のスピーカそれぞれの位置から、抽出した無線機10a、無線機10c及び無線機10dまでの距離をそれぞれ算出し、通話手段選択部33へ出力する。
【0078】
通話手段選択部33は、距離算出部32から入力された全ての距離、すなわちスピーカAから無線機10aまでの距離Dsaa、スピーカBから無線機10aまでの距離Dsba、スピーカCから無線機10aまでの距離Dsca、スピーカAから無線機10cまでの距離Dsac、スピーカBから無線機10cまでの距離Dsbc、スピーカCから無線機10cまでの距離Dscc、スピーカAから無線機10dまでの距離Dsad、スピーカBから無線機10dまでの距離Dsbd、及びスピーカCから無線機10dまでの距離Dscdについて、所定の距離Dsth(例えば8m)と比較し通信手段を選択する(S40)。
【0079】
通話手段選択部33は、無線機10a、無線機10c及び無線機10dのうち、無線機10dと各スピーカとの距離Dsad、Dsbd、及びDscdが、いずれもDsth以内にないことを検出すると、通信手段として「無線通信」を選択し、選択結果を無線通信部4へ出力し、無線機10bへ「無線通信」応答を送信する。無線機10bはグループ通話を実行する(S110)。つまり通話手段選択部33は、GID=2に属する全ての無線機10のうちひとつでも、複数のスピーカのいずれのスピーカとも所定の範囲内にない場合は、通信手段として「無線通信」を選択する。
【0080】
本例によれば、無線機10bを使用するユーザは、指定したグループIDに属する無線機10に向けて発話した内容を、各無線機と施設内の各スピーカとの距離に応じて最適な通信手段で送信することができるので、無線周波数帯域を多くのユーザが使用することにより通信相手との接続がしにくくなるということを抑えることができ、通信手段の切替えにおいてもユーザ操作が煩雑になることを抑えつつ行うことができる。
【0081】
本例においては、無線機10bからグループ通話を行った場合を例に説明したが、実施の形態1同様に、無線機10bから他の無線機10のうちのいずれかの無線機への個別通話(Individual Call)であってもよい。また、本実施例では無線機10bのみが複数のスピーカと接続されていたが、他の無線機が複数のスピーカと接続され、いずれの無線機からもスピーカ再生が成されるようになっていてもよい。
【0082】
以上に説明した実施の形態における構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックによって描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0083】
以上に示した実施の形態においては、無線通信として長距離無線通信技術を用いた業務用無線を使用している。しかしながら長距離無線通信技術に限らず例えば、BluetoothやWi-Fiのような近距離無線通信技術による無線通信が使用されてもよく、送信側の無線機と受信側無線機との間の距離に応じて、適宜、長距離無線通信と近距離無線通信とスピーカ出力とを切替えるようにしてもよい。この場合は、例えば送信側の無線機から見て受信側の無線機が、スピーカ出力で音声が届く範囲にあるか、それよりも遠い近距離無線通信によって通信が可能な範囲にあるか、それ以上に遠い範囲にあるかに応じて通話手段選択部33が判断し、切替えるようにすればよい。本実施例によれば、構成の自由度を向上できる。
【符号の説明】
【0084】
20 無線通話制御装置、2 記憶部、3 通信制御部、4 無線通信部、150 音声入力部、160 音声出力部、170 PTT検出部、10 無線機、100a 無線通信システム(実施の形態1)、100b 無線通信システム(実施の形態2)、200 無線通信システム(実施の形態4)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12