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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】クレーンの組立方法、およびクレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/26 20060101AFI20230620BHJP
   B66C 23/36 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
B66C23/26 C
B66C23/36 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019173801
(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公開番号】P2021050063
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】松井 大朗
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-075294(JP,A)
【文献】特開平11-060165(JP,A)
【文献】特開2016-222359(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112368230(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0065616(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/26
B66C 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーン本体と、
前記クレーン本体に起伏可能に取り付けられるブームと、
前記ブームの先端部に起伏可能に取り付けられるストラットと、
前記クレーン本体または前記ブームに設けられ、引き起こし用ロープを巻き取る引き起こし用ウインチと、
前記クレーン本体に起伏可能に取り付けられるブーム起伏部材と、
前記ブーム起伏部材に取り付けられ、伸縮可能なシリンダと、
前記シリンダに着脱可能な引き起こし用シーブと、
を備えるクレーンの組立方法であって、
前記ブームが、前記クレーン本体から前側に延びるように伏せられた状態にされるブーム配置工程と、
前記ストラットが、前記ブームから前側に延びるように伏せられた状態にされるストラット配置工程と、
前記ブーム起伏部材が、前記クレーン本体に対して起こされた状態にされるブーム起伏部材配置工程と、
前記シリンダが前記ブーム起伏部材から吊り下げられ、前記引き起こし用シーブが前記シリンダの下側部分に取り付けられた状態にされるシーブ配置工程と、
前記引き起こし用ロープが、前記引き起こし用シーブに掛けられ、前記ストラットに取り付けられた状態にされるロープ配策工程と、
前記ブーム配置工程、前記ストラット配置工程、前記ブーム起伏部材配置工程、前記シーブ配置工程、および前記ロープ配策工程の後、前記引き起こし用ウインチが前記引き起こし用ロープを巻き取ることで、前記ストラットが前記ブームに対して引き起こされる、ストラット引き起こし工程と、
を備える、クレーンの組立方法。
【請求項2】
請求項1に記載のクレーンの組立方法であって、
前記引き起こし用シーブが前記ブームに支えられた状態で、前記シリンダに対して前記引き起こし用シーブが着脱される、
クレーンの組立方法。
【請求項3】
請求項2に記載のクレーンの組立方法であって、
前記シリンダから取り外された状態の前記引き起こし用シーブは、前記ブームに格納される、
クレーンの組立方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のクレーンの組立方法であって、
前記引き起こし用ロープは、吊荷を吊るためのフックを巻き上げるための巻上ロープである、
クレーンの組立方法。
【請求項5】
クレーン本体と、
前記クレーン本体に起伏可能に取り付けられ、前記クレーン本体から前側に延びるように伏せられたブームと、
前記ブームの先端部に起伏可能に取り付けられ、前記ブームから前側に延びるように伏せられたストラットと、
前記クレーン本体または前記ブームに設けられ、引き起こし用ロープを巻き取る引き起こし用ウインチと、
前記クレーン本体に起伏可能に取り付けられ、前記クレーン本体に対して起こされたブーム起伏部材と、
前記ブーム起伏部材から吊り下げられ、伸縮可能なシリンダと、
前記シリンダの下側部分に取り付けられた引き起こし用シーブと、
を備え、
前記引き起こし用ウインチから引き出された前記引き起こし用ロープは、前記引き起こし用シーブに掛けられ、前記ストラットに取り付けられる、
クレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストラットを有するクレーンの組立方法、およびクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図12に記載の技術では、ウインチから引き出されたロープが、シーブ(同文献におけるガイド用滑車)に掛けられ、ストラットに取り付けられている。ウインチがロープを巻き取ることで、ストラットが引き起こされる(同文献の図13参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-167973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同文献の図12に記載の技術では、ストラットを引き起こす際に用いられるシーブが、ブームガイライン(同文献におけるメインガイライン)に取り付けられる。そのため、シーブが上下方向に揺れ、シーブの上下方向の位置を適切に調整することが難しいおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、ストラットを引き起こすためのシーブの上下方向における位置を容易に調整できる、クレーンの組立方法、およびクレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の手段のクレーンの組立方法は、次のように構成される。前記クレーンは、クレーン本体と、ブームと、ストラットと、引き起こし用ウインチと、ブーム起伏部材と、シリンダと、引き起こし用シーブと、を備える。前記ブームは、前記クレーン本体に起伏可能に取り付けられる。前記ストラットは、前記ブームの先端部に起伏可能に取り付けられる。前記引き起こし用ウインチは、前記クレーン本体または前記ブームに設けられ、引き起こし用ロープを巻き取る。前記ブーム起伏部材は、前記クレーン本体に起伏可能に取り付けられる。前記シリンダは、前記ブーム起伏部材に取り付けられ、伸縮可能である。前記引き起こし用シーブは、前記シリンダに着脱可能である。クレーンの組立方法は、ブーム配置工程と、ストラット配置工程と、ブーム起伏部材配置工程と、シーブ配置工程と、ロープ配策工程と、ストラット引き起こし工程と、を備える。前記ブーム配置工程は、前記ブームが、前記クレーン本体から前側に延びるように伏せられた状態にされる工程である。前記ストラット配置工程は、前記ストラットが、前記ブームから前側に延びるように伏せられた状態にされる工程である。前記ブーム起伏部材配置工程は、前記ブーム起伏部材が、前記クレーン本体に対して起こされた状態にされる工程である。前記シーブ配置工程は、前記シリンダが前記ブーム起伏部材から吊り下げられ、前記引き起こし用シーブが前記シリンダの下側部分に取り付けられた状態にされる工程である。前記ロープ配策工程は、前記引き起こし用ロープが、前記引き起こし用シーブに掛けられ、前記ストラットに取り付けられた状態にされる工程である。前記ストラット引き起こし工程は、前記ブーム配置工程、前記ストラット配置工程、前記ブーム起伏部材配置工程、前記シーブ配置工程、および前記ロープ配策工程の後に行われる。前記ストラット引き起こし工程は、前記引き起こし用ウインチが前記引き起こし用ロープを巻き取ることで、前記ストラットが前記ブームに対して引き起こされる工程である。
【0007】
第2の手段のクレーンは、クレーン本体と、ブームと、ストラットと、引き起こし用ウインチと、ブーム起伏部材と、シリンダと、引き起こし用シーブと、を備える。前記ブームは、前記クレーン本体に起伏可能に取り付けられ、前記クレーン本体から前側に延びるように伏せられる。前記ストラットは、前記ブームの先端部に起伏可能に取り付けられ、前記ブームから前側に延びるように伏せられる。前記引き起こし用ウインチは、前記クレーン本体または前記ブームに設けられ、引き起こし用ロープを巻き取る。前記ブーム起伏部材は、前記クレーン本体に起伏可能に取り付けられ、前記クレーン本体に対して起こされる。前記シリンダは、前記ブーム起伏部材から吊り下げられ、伸縮可能である。前記引き起こし用シーブは、前記シリンダの下側部分に取り付けられる。前記引き起こし用ウインチから引き出された前記引き起こし用ロープは、前記引き起こし用シーブに掛けられ、前記ストラットに取り付けられる。
【発明の効果】
【0008】
上記の第1の手段および第2の手段のそれぞれにより、ストラットを引き起こすためのシーブの上下方向における位置を容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】クレーン1を横方向Yから見た図である。
図2図1に示すクレーン1の組立中の状態を示す図である。
図3図2に示す引き起こし用シーブ83aがブーム20に支えられた状態を示す図である。
図4図3に示す引き起こし用シーブ83aがブーム20に格納された状態を示す図である。
図5】第2実施形態の図2相当図である。
図6】第3実施形態の図2相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
図1図4を参照して、第1実施形態のクレーン1について説明する。
【0011】
クレーン1は、図1に示すように、ブーム20などを用いて作業を行う機械である。クレーン1は、建設作業を行う建設機械である。クレーン1は、クレーン本体10と、ブーム20と、ブーム起伏装置30と、ジブ40と、ジブ起伏装置50と、フック巻上装置60と、シリンダ81と、シーブ装置83と、を備える。
【0012】
クレーン本体10は、クレーン1の本体部分である。クレーン本体10は、下部走行体11と、上部旋回体13と、を備える。下部走行体11は、クレーン1を走行させる。下部走行体11は、例えばクローラ11aを備えてもよく、ホイールを備えてもよい。上部旋回体13は、下部走行体11に対して旋回可能である。上部旋回体13には、ブーム20が起伏可能に取り付けられる。上部旋回体13は、カウンタウエイト13aを備える。カウンタウエイト13aは、前後方向Xのバランスをとるための、おもりである。
【0013】
(方向)
上部旋回体13に対するブーム20の回転軸が延びる方向を、横方向Yとする。鉛直方向を上下方向Z(上側Z1、下側Z2)とする。横方向Yおよび上下方向Zのそれぞれに直交する方向を、前後方向Xとする。前後方向Xにおいて、カウンタウエイト13aから、クレーン本体10への(上部旋回体13への)ブーム20の取付部に向かう側(向き)を、前側X1とする。前後方向Xにおける前側X1とは逆側を、後側X2とする。
【0014】
ブーム20は、クレーン本体10に(さらに詳しくは上部旋回体13に)起伏可能に取り付けられる。図2に示すように、ブーム20の長手方向が水平方向に延びるようにブーム20を伏せた状態としたときのブーム20の上面を、ブーム背面20bとする。ブーム20は、ブーム20の長手方向に分解可能である。ブーム20は、下部ブーム21と、中間ブーム22と、上部ブーム23と、を備える。下部ブーム21は、ブーム20の基端部(上部旋回体13に取り付けられる側の端部)に配置される。中間ブーム22は、下部ブーム21の先端部(上部旋回体13に取り付けられる側とは反対側の端部)に連結される。上部ブーム23(ブームヘッド)は、中間ブーム22の先端部に連結され、ブーム20の先端部に配置される。
【0015】
ブーム起伏装置30は、図1に示すように、上部旋回体13に対してブーム20を起伏させる装置である。ブーム起伏装置30は、マスト31(ブーム起伏部材)と、下部スプレッダ32と、上部スプレッダ33と、ブームガイライン34と、ブーム起伏ロープ35と、を備える。
【0016】
マスト31(ブーム起伏部材)は、上部旋回体13に起伏可能に取り付けられる。マスト31は、箱形の構造物を有してもよく、ラチス構造を有してもよい。下部スプレッダ32は、複数のシーブ(滑車)を有する装置であり、上部旋回体13の後側X2端部に設けられる。上部スプレッダ33は、複数のシーブを有する装置であり、マスト31の先端部(上部旋回体13に取り付けられる側とは反対側の端部)に設けられる。ブームガイライン34は、マスト31の先端部とブーム20の先端部とに接続される。ブーム起伏ロープ35は、下部スプレッダ32のシーブと上部スプレッダ33のシーブとに掛けられる。ブーム起伏ロープ35が、図示しないウインチにより、巻き取りおよび繰り出しされる。すると、下部スプレッダ32と上部スプレッダ33との間隔が変わる。すると、マスト31が、上部旋回体13に対して起伏する。マスト31の先端部とブーム20の先端部とがブームガイライン34で接続されているので、マスト31が上部旋回体13に対して起伏すると、ブーム20が、上部旋回体13に対して起伏する。
【0017】
ジブ40は、ブーム20(さらに詳しくは上部ブーム23)に起伏可能に取り付けられる。ジブ40は、ジブ40の長手方向に分解可能である。ジブ40は、下部ジブ41と、中間ジブ42と、上部ジブ43と、を備える。下部ジブ41は、ジブ40の基端部(ブーム20に取り付けられる側の端部)に配置される。中間ジブ42は、下部ジブ41の先端部(ブーム20に取り付けられる側とは反対側の端部)に連結される。上部ジブ43は、中間ジブ42の先端部に連結され、ジブ40の先端部に配置される。
【0018】
ジブ起伏装置50は、ブーム20に対してジブ40を起伏させる装置である。ジブ起伏装置50は、ストラット50s(リアストラット51およびフロントストラット52)と、ストラットガイライン53と、ジブガイライン54と、ジブ起伏ロープ55と、を備える。
【0019】
リアストラット51は、シーブを備え、ブーム20の先端部に回転可能に取り付けられる。リアストラット51には、バックストップ51bが取り付けられる。バックストップ51bは、リアストラット51の先端部がブーム20に近づく向きへの、ブーム20に対するリアストラット51の回転を制限する。例えば、バックストップ51bは、リアストラット51と、ブーム20と、につながれる。
【0020】
フロントストラット52は、シーブを備え、ブーム20の先端部に回転可能に取り付けられてもよく、ジブ40の基端部に回転可能に取り付けられてもよい。ストラットガイライン53は、ブーム20とリアストラット51の先端部とに接続される。ジブガイライン54は、フロントストラット52の先端部(ブーム20またはジブ40に取り付けられる側とは反対側の端部)とジブ40の先端部とに接続される。ジブ起伏ロープ55は、リアストラット51のシーブと、フロントストラット52のシーブとに掛けられる。ジブ起伏ロープ55が、図示しないウインチにより、巻き取りおよび繰り出しされる。すると、リアストラット51とフロントストラット52との間隔が変わる。すると、ブーム20に対してフロントストラット52が起伏する。フロントストラット52の先端部とジブ40の先端部とがジブガイライン54で接続されているので、フロントストラット52がブーム20に対して起伏すると、ジブ40がブーム20に対して起伏する。
【0021】
フック巻上装置60は、吊荷を吊るためのフック63の巻き上げおよび巻き下げ(昇降)を行う装置である。フック巻上装置60は、ポイントシーブ61と、フック63と、巻上ロープ65(引き起こし用ロープ)と、巻上ウインチ67(引き起こし用ウインチ)と、を備える。ポイントシーブ61は、ジブ40の先端部(上部ジブ43の先端部)に設けられる。フック63は、ポイントシーブ61から巻上ロープ65を介して吊り下げられ、吊荷を掛けることが可能である。巻上ロープ65は、ポイントシーブ61に掛けられる。巻上ロープ65は、フック63に取り付けられ、例えばフック63に設けられたシーブに掛けられてもよく、フック63に固定されてもよい。巻上ウインチ67は、上部旋回体13またはブーム20に搭載されるウインチである。巻上ウインチ67が、巻上ロープ65を巻き取りおよび繰り出しすると、フック63が巻き上げおよび巻き下げされる。なお、このフック63と同様のフック63Bが、ブーム20の先端部から巻上ロープ65Bを介して吊り下げられてもよい。
【0022】
シリンダ81は、図2に示すように、マスト31に取り付けられ、例えばマスト31の先端部に取り付けられる。なお、シリンダ81は、マスト31の先端部よりも基端側(上部旋回体13に取り付けられる側)に取り付けられてもよい。シリンダ81は、マスト31に回転可能に取り付けられる。マスト31に対するシリンダ81の回転軸が延びる方向は、横方向Yである。シリンダ81は、マスト31から吊り下げられる場合がある。さらに詳しくは、マスト31の基端部に対してマスト31の先端部が真上または前側X1に配置されるようにマスト31が配置されたときに、シリンダ81は、マスト31から垂れ下がるように、マスト31に上側Z1から支えられる。図1に示すように、マスト31の基端部よりもマスト31の先端部が後側X2に配置されるようにマスト31が配置されたときには、シリンダ81は、マスト31の上に乗り、マスト31から垂れ下がらなくてもよい。
【0023】
このシリンダ81は、クレーン1の組立時に使われる、自力組立シリンダである。さらに詳しくは、シリンダ81は、例えば、クレーン1の組立時に、カウンタウエイト13aの吊り上げ、クローラ11aの吊り上げ、ブーム20(主に下部ブーム21)の吊り上げなどに用いられるシリンダである。例えば、シリンダ81は、吊り上げたブーム20を上部旋回体13に接続する作業などに用いられる。シリンダ81は、シリンダ81の長手方向に伸縮可能である。シリンダ81は、例えば油圧式である(油圧シリンダである)。図3に示すように、シリンダ81は、シリンダチューブ81aと、シリンダロッド81bと、を備える。シリンダチューブ81aは、マスト31に取り付けられ、例えばリンク部材L1を介してマスト31に取り付けられてもよい。以下では、シリンダ81がマスト31から吊り下げられた状態について説明する。シリンダロッド81bは、シリンダチューブ81aの内部、および、シリンダロッド81bよりも下側Z2に配置される。なお、シリンダロッド81bが、シリンダチューブ81aよりも上側Z1に配置されてもよい。
【0024】
シーブ装置83は、引き起こし用シーブ83aと、格納用ブラケット83bと、を備える。図2に示すように、引き起こし用シーブ83aは、リアストラット51の引き起こし作業が行われるときに、巻上ロープ65が掛けられるシーブである。引き起こし用シーブ83aは、巻上ロープ65のうち引き起こし用シーブ83aに掛けられた部分が下側Z2に移動することを規制する(巻上ロープ65を持ち上げる)。引き起こし用シーブ83aは、シリンダ81に取り付け可能であり、シリンダ81に着脱可能である。引き起こし用シーブ83aは、シリンダ81の下端部(先端部)に取り付けられ、例えばシリンダロッド81b(図3参照)の下端部に取り付けられる。引き起こし用シーブ83aは、例えば引き起こし用シーブ83aを回転可能に支持する部材(図示なし)を介して、シリンダ81に取り付けられる。格納用ブラケット83bは、シーブ装置83をブーム20に格納するためのブラケットである(詳細は後述)。
【0025】
(作動)
クレーン1は、次のように組立可能に構成される。クレーン1の組立方法は、準備工程と、ストラット引き起こし工程と、シーブ着脱工程と、シーブ格納工程と、を備える。
【0026】
準備工程は、リアストラット51を引き起こすための準備(ストラット引き起こし工程のための準備)を行う工程である。準備工程は、マスト配置工程(ブーム起伏部材配置工程)と、ブーム配置工程と、ストラット配置工程と、シーブ配置工程と、ロープ配策工程と、を備える。
【0027】
マスト配置工程(ブーム起伏部材配置工程)では、マスト31が、クレーン本体10に対して起こされた状態にされる。さらに詳しくは、マスト31は、上部旋回体13から上側Z1に突出する状態(姿勢)にされる。このとき、マスト31の先端部は、例えば、マスト31の基端部よりも前側X1に配置される。このとき、マスト31の先端部は、マスト31の基端部の真上に配置されてもよく、マスト31の基端部よりも後側X2に配置されてもよい。
【0028】
ブーム配置工程では、クレーン本体10から(さらに詳しくは上部旋回体13から)前側X1に延びるように、ブーム20が伏せられた状態にされる。ブーム20が伏せられた状態とは、ブーム20の長手方向に延びるブーム20の中心軸が、水平方向または略水平方向に延びるように、ブーム20が配置された状態である。
【0029】
ストラット配置工程では、リアストラット51が、ブーム20から前側X1に延びるように、伏せられた状態にされる。リアストラット51が伏せられた状態とは、リアストラット51の長手方向に延びるリアストラット51の中心軸が、水平方向または略水平方向に延びるように、リアストラット51が配置された状態である。このとき、フロントストラット52が、ブーム20から前側X1に延びるように、伏せられた状態で、上部ブーム23に取り付けられた状態でもよい。このとき、リアストラット51の先端部が、フロントストラット52に載せられた状態でもよい。このとき、下部ジブ41が、ブーム20から前側X1に延びるように、伏せられた状態で、上部ブーム23に取り付けられた状態でもよい。なお、リアストラット51が上部ブーム23に取り付けられた状態のときに、下部ジブ41が上部ブーム23に取り付けられていなくてもよく、フロントストラット52が上部ブーム23に取り付けられていなくてもよい。
【0030】
シーブ配置工程では、シリンダ81がマスト31から吊り下げられ、引き起こし用シーブ83aがシリンダ81の下側Z2部分に取り付けられた状態にされる。
【0031】
ロープ配策工程では、巻上ロープ65が引き起こし用シーブ83aに掛けられ(通され)、巻上ロープ65がリアストラット51に取り付けられる。このとき、巻上ロープ65は、リアストラット51に直接固定されてもよく、例えばストラット側シーブ285(図5参照)や突出部材387(図6参照)などを介してリアストラット51に取り付けられてもよい。巻上ロープ65のうち、引き起こし用シーブ83aと、リアストラット51への取付部と、の間の部分は、他のシーブに掛けられていない。
【0032】
準備工程に含まれる各工程、具体的には、マスト配置工程、ブーム配置工程、ストラット配置工程、シーブ配置工程、およびロープ配策工程は、この記載の順序で行われてもよく、どのような順序で行われてもよい。準備工程に含まれる各工程の少なくとも一部が同時に行われてもよい。なお、マスト31が、リアストラット51を引き起こし可能な状態となる前に、吊り上げたクローラ11aを下部走行体11の本体部(カーボディ)に取り付ける作業や、吊り上げたブーム20を上部旋回体13に取り付ける作業などに用いられてもよい。
【0033】
ストラット引き起こし工程は、準備工程(ブーム配置工程、ストラット配置工程、マスト配置工程、シーブ配置工程、およびロープ配策工程)の後に行われる。ストラット引き起こし工程では、巻上ウインチ67が巻上ロープ65を巻き取ることで、リアストラット51がブーム20に対して引き起こされる。このとき、リアストラット51の先端部が後側X2および上側Z1に移動する向きに、リアストラット51が、ブーム20に対して回転する。そして、リアストラット51の先端部が、リアストラット51の基端部よりも後側X2に配置されるように、リアストラット51が回転(反転)する。リアストラット51が引き起こされるとき、リアストラット51の引き起こしに必要な、引き起こし用シーブ83aの高さが確保される。張られた状態の巻上ロープ65は、リアストラット51よりも上側Z1に配置される。巻上ウインチ67が巻上ロープ65を巻き取ることで、リアストラット51の引き起こしが行われるので、リアストラット51を引き起こすために補助クレーン(クレーン1とは別の、クレーン1の組立分解用のクレーン)を用いる必要はない。
【0034】
ストラット引き起こし工程の後、例えば、ストラットガイライン53の接続が行われる(ストラットガイライン接続工程)。具体的には、ストラットガイライン53の先端側部分53aが、リアストラット51から吊り下げられる。ストラットガイライン53の基端側部分53bが、ブーム背面20bに配置される。そして、先端側部分53aの下側Z2端部と、基端側部分53bの前側X1端部とが接続される。この作業が可能な姿勢となるように、上記のリアストラット51の引き起こし(反転)が行われる。
【0035】
シーブ着脱工程では、図3に示すシリンダ81に対してシーブ装置83が(引き起こし用シーブ83aが)着脱される。この工程では、シーブ装置83の着脱の作業を行いやすいように、上下方向Zにおけるシーブ装置83の位置(上下方向Z位置)が調整される。シーブ装置83の上下方向Z位置の調整は、水平面に対するマスト31の起伏角度θ31の調整、およびシリンダ81の伸長量の調整により行われる。このとき、マスト31の基端部よりもマスト31の先端部が前側X1に配置されるように、マスト31が、上部旋回体13に対して起こされた状態にされる。起伏角度θ31の調整は、ブーム起伏ロープ35の巻き取りおよび繰り出しにより行われる。シリンダ81に対してシーブ装置83が着脱されるときのマスト31の起伏角度θ31は、ストラット引き起こし工程(図2参照)のときの起伏角度θ31に比べ、例えば小さい。シリンダ81に対してシーブ装置83が着脱されるときのシリンダ81は、ストラット引き起こし工程のときのシリンダ81(図2参照)に比べ、例えば長く、例えば最も伸張した状態でもよい。
【0036】
シリンダ81に対するシーブ装置83の着脱は、下部ブーム21のブーム背面20bで行われる。シリンダ81に対するシーブ装置83の着脱は、シーブ装置83がブーム背面20bに支えられた(下側Z2から支持された、預けられた)状態で行われる。シリンダ81に対してシーブ装置83が取り外された場合、リアストラット51の引き起こしとは異なる用途にシリンダ81が用いられる際に、シーブ装置83が邪魔になることがない。
【0037】
シーブ格納工程では、図4に示すように、シリンダ81から取り外された状態のシーブ装置83が、ブーム20に格納される。シーブ装置83は、例えば下部ブーム21に格納され、例えば下部ブーム21のブーム背面20bに格納される。シリンダ81に対してシーブ装置83が着脱される位置(ブーム20における位置、ブーム背面20bにおける位置)と、ブーム20にシーブ装置83が格納される位置とは、同じ位置、または略同じ位置である。例えば、シーブ装置83の格納用ブラケット83bが、ブーム20に取り付けられる(例えば固定される)。
【0038】
なお、シーブ装置83の着脱の作業は、ブーム背面20bで行われなくてもよく、例えば地上などで行われてもよい。また、シーブ装置83は、ブーム20に格納されなくてもよく、例えばクレーン1のうちブーム20以外の部分に格納されてもよい。また、シーブ装置83は、シリンダ81に取り付けられたままでもよい。
【0039】
(検討)
図2に示すリアストラット51の引き起こしが、補助クレーンで行われることも考えられる。しかし、補助クレーンが用いられる場合は、補助クレーンを用意する必要があり、補助クレーンを配置するスペースが必要である。一方、本実施形態では、引き起こし用シーブ83aに掛けられた巻上ロープ65がリアストラット51を引き起こす。よって、リアストラット51の引き起こしに補助クレーンを用いる必要がない。
【0040】
また、リアストラット51の引き起こしが、バックストップ51b(図1参照)の推力で行われることも考えられる。しかし、バックストップ51bの推力でリアストラット51を引き起こす場合は、巻上ウインチ67で巻上ロープ65を巻き取ることでリアストラット51を引き起こす場合に比べ、時間がかかるおそれがある。一方、本実施形態では、巻上ウインチ67で巻上ロープ65を巻き取ることでリアストラット51を引き起こすので、リアストラット51を引き起こしに要する時間を短縮することができる。
【0041】
引き起こし用シーブ83aのようなシーブが、ブームガイライン34(図1参照)に取り付けられることも考えられる。[例1]しかし、この場合、リアストラット51の引き起こしの作業が行われる前に、ブームガイライン34が、マスト31と上部ブーム23とに接続されている必要がある。そのため、クレーン1の組立の手順が制限される。[例2]また、リアストラット51の引き起こしに適した高さにシーブを配置するために、ブームガイライン34のうち、できるだけ高い部分にシーブを取り付けようとすると、取り付けの作業に補助クレーンが必要となるおそれがある。[例3]また、ブームガイライン34に対するシーブの着脱をブーム20上で行える程度に、ブームガイライン34の低い部分にシーブを取り付けると、リアストラット51の引き起こしに必要なシーブの高さを確保できないおそれがある。[例4]また、ブームガイライン34に対してシーブを着脱するために、マスト31を伏せ、ブームガイライン34をたわませると、ブームガイライン34が上下方向Zに揺れ、シーブが上下方向Zに揺れるおそれがある。すると、シーブの着脱の作業が困難になるおそれがある。一方、本実施形態では、引き起こし用シーブ83aが、シリンダ81に取り付けられるので、上記の[例1]~[例4]の問題が生じない。
【0042】
なお、クレーン1の組立方法およびクレーン1は、上記の問題の一部のみを解決できてもよい。
【0043】
(効果)
図2に示すクレーン1の組立方法、およびクレーン1による効果は次の通りである。
【0044】
(第1の発明の効果)
クレーン1は、クレーン本体10と、ブーム20と、リアストラット51(ストラット50s)と、巻上ウインチ67(引き起こし用ウインチ)と、マスト31(ブーム起伏部材)と、シリンダ81と、引き起こし用シーブ83aと、を備える。ブーム20は、クレーン本体10に起伏可能に取り付けられる。リアストラット51は、ブーム20の先端部に起伏可能に取り付けられる。巻上ウインチ67は、クレーン本体10またはブーム20に設けられ、巻上ロープ65(引き起こし用ロープ)を巻き取る。マスト31は、クレーン本体10に起伏可能に取り付けられる。シリンダ81は、マスト31に取り付けられ、伸縮可能である。引き起こし用シーブ83aは、シリンダ81に着脱可能である。
【0045】
クレーン1の組立方法は、ブーム配置工程と、ストラット配置工程と、マスト配置工程(ブーム起伏部材配置工程)と、シーブ配置工程と、ロープ配策工程と、ストラット引き起こし工程と、を備える。ブーム配置工程は、ブーム20が、クレーン本体10から前側X1に延びるように伏せられた状態にされる工程である。ストラット配置工程は、リアストラット51が、ブーム20から前側X1に延びるように伏せられた状態にされる工程である。
【0046】
[構成1-1]マスト配置工程は、マスト31が、クレーン本体10に対して起こされた状態にされる工程である。シーブ配置工程は、シリンダ81がマスト31から吊り下げられ、引き起こし用シーブ83aがシリンダ81の下側Z2部分に取り付けられた状態にされる工程である。
【0047】
[構成1-2]ロープ配策工程は、巻上ロープ65が、引き起こし用シーブ83aに掛けられ、リアストラット51に取り付けられた状態にされる工程である。ストラット引き起こし工程は、ブーム配置工程、ストラット配置工程、マスト配置工程、シーブ配置工程、およびロープ配策工程の後、巻上ウインチ67が巻上ロープ65を巻き取ることで、リアストラット51がブーム20に対して引き起こされる工程である。
【0048】
上記[構成1-2]では、巻上ウインチ67が巻上ロープ65を巻き取ることで、リアストラット51がブーム20に対して引き起こされる。上記[構成1-1]では、この巻上ロープ65は、引き起こし用シーブ83aに掛けられる。引き起こし用シーブ83aは、マスト31から吊り下げられたシリンダ81の下側Z2部分に取り付けられる。よって、マスト31の起伏、およびシリンダ81の伸縮により、引き起こし用シーブ83aの上下方向Z位置を調整することができる。よって、例えばブームガイライン34に引き起こし用シーブ83aが取り付けられる場合などに比べ、引き起こし用シーブ83aの上下方向Z位置を容易に調整することができる。その結果、リアストラット51を引き起こすのに必要な高さに、引き起こし用シーブ83aを容易に配置することができる。また、引き起こし用シーブ83aを着脱しやすい高さに、引き起こし用シーブ83aを容易に配置することができる。
【0049】
(第2の発明の効果)
[構成2]図3に示すように、引き起こし用シーブ83aがブーム20に支えられた状態で、シリンダ81に対して引き起こし用シーブ83aが着脱される。
【0050】
例えば、ブーム20から上側Z1に離れた位置(空中)で、引き起こし用シーブ83aを着脱する作業を行う場合は、補助クレーンなどで引き起こし用シーブ83aを吊り上げる必要が生じ得る。一方、上記[構成2]では、引き起こし用シーブ83aがブーム20に支えられた状態で、シリンダ81に対して引き起こし用シーブ83aが着脱される。よって、引き起こし用シーブ83aを安定させた状態で、引き起こし用シーブ83aの着脱の作業を容易に行うことができる。
【0051】
(第3の発明の効果)
[構成3]図4に示すように、シリンダ81から取り外された状態の引き起こし用シーブ83aは、ブーム20に格納される。
【0052】
上記[構成2]および上記[構成3]により、次の効果が得られる。上記[構成2]では、引き起こし用シーブ83aがブーム20に支えられた状態で、シリンダ81から引き起こし用シーブ83aが取り外される場合がある。この場合、シリンダ81から取り外されたときの引き起こし用シーブ83aの位置から、引き起こし用シーブ83aを移動させなくても(またはほぼ移動させなくても)、引き起こし用シーブ83aをブーム20に格納することができる。また、上記[構成2]では、引き起こし用シーブ83aがブーム20に支えられた状態で、引き起こし用シーブ83aがシリンダ81に取り付けられる場合がある。この場合、引き起こし用シーブ83aがブーム20に格納された状態から、引き起こし用シーブ83aを移動させなくても(またはほぼ移動させなくても)、シリンダ81に引き起こし用シーブ83aを取り付けることができる。
【0053】
(第4の発明の効果)
[構成4]図2に示すように、引き起こし用ロープ(リアストラット51の引き起こし用のロープ)は、図1に示すように、吊荷を吊るためのフック63を巻き上げるための巻上ロープ65である。
【0054】
通常、巻上ロープ65は、クレーン1の組立作業の最終段階(具体的には例えば、ブーム20、ブーム起伏装置30、ジブ40、ジブ起伏装置50の組立が終わった段階)で配策される。そのため、図2に示すリアストラット51の引き起こしの作業に巻上ロープ65を用いることが、リアストラット51の引き起こし以外の作業に影響を与えにくい。
【0055】
(第5の発明の効果)
クレーン1は、クレーン本体10と、ブーム20と、リアストラット51(ストラット50s)と、巻上ウインチ67(引き起こし用ウインチ)と、マスト31(ブーム起伏部材)と、シリンダ81と、引き起こし用シーブ83aと、を備える。ブーム20は、クレーン本体10に起伏可能に取り付けられ、クレーン本体10から前側X1に延びるように伏せられる。ストラット50sは、ブーム20の先端部に起伏可能に取り付けられ、ブーム20から前側X1に延びるように伏せられる。巻上ウインチ67は、クレーン本体10またはブーム20に設けられ、巻上ロープ65(引き起こし用ロープ)を巻き取る。マスト31は、クレーン本体10に起伏可能に取り付けられ、クレーン本体10に対して起こされる。
【0056】
[構成5-1]シリンダ81は、マスト31から吊り下げられ、伸縮可能である。引き起こし用シーブ83aは、シリンダ81の下側Z2部分に取り付けられる。
【0057】
[構成5-2]巻上ウインチ67から引き出された巻上ロープ65は、引き起こし用シーブ83aに掛けられ、リアストラット51に取り付けられる。
【0058】
上記[構成5-2]では、巻上ロープ65がリアストラット51に取り付けられているので、巻上ウインチ67が巻上ロープ65を巻き取れば、リアストラット51がブーム20に対して引き起こされる。この巻上ロープ65は、引き起こし用シーブ83aに掛けられる。また、上記[構成5-1]では、引き起こし用シーブ83aは、マスト31から吊り下げられたシリンダ81の下側Z2部分に取り付けられる。よって、マスト31の起伏、およびシリンダ81の伸縮により、引き起こし用シーブ83aの上下方向Z位置を調整することができる。よって、例えばブームガイライン34に引き起こし用シーブ83aが取り付けられる場合などに比べ、引き起こし用シーブ83aの上下方向Z位置を容易に調整することができる。よって、リアストラット51を引き起こすのに必要な高さに、引き起こし用シーブ83aを容易に配置することができる。また、引き起こし用シーブ83aを着脱しやすい高さに、引き起こし用シーブ83aを容易に配置することができる。
【0059】
(第2実施形態)
図5を参照して、第2実施形態のクレーン201について、第1実施形態との相違点を説明する。なお、第2実施形態のクレーン201のうち、第1実施形態との共通点については、説明を省略する。第2実施形態のクレーン201のうち、第1実施形態と同一の符号を付した部分は、第1実施形態との共通点である。共通点の説明を省略する点については、後述する第3実施形態の説明も同様である。相違点は、クレーン201が、ストラット側シーブ285を備える点である。
【0060】
第1実施形態では、図2に示すように、巻上ロープ65は、リアストラット51に固定(接続)され、一本掛けであった。一方、本実施形態では、図5に示すように、巻上ロープ65は、ストラット側シーブ285に掛けられ、2本掛けである。さらに詳しくは、巻上ロープ65は、引き起こし用シーブ83aから前側X1に延び、ストラット側シーブ285に掛けられ、ストラット側シーブ285から後側X2に延び、例えばブーム20に固定される。なお、巻上ロープ65は、3本掛け以上でもよい。この場合、ブーム20にもシーブ(ストラット側シーブ285と同様のシーブ)が設けられる。この場合、巻上ロープ65は、ストラット側シーブ285とブーム20に設けられたシーブとに掛け回される。なお、巻上ロープ65の掛け数は、リアストラット51の引き上げに必要な荷重や巻上ウインチ67の能力に応じて、適切に設定される。
【0061】
(第3実施形態)
図6を参照して、第3実施形態のクレーン301について、第1実施形態との相違点を説明する。第3実施形態のクレーン301は、突出部材387と、接続部材388と、を備える。
【0062】
突出部材387は、伏せられた状態のリアストラット51を引き起こす際に、リアストラット51に作用する力のモーメントを大きくするための部材である。突出部材387は、リアストラット51を引き起こすのに必要な力(具体的には巻上ロープ65の張力)を抑制するための部材である。突出部材387は、リアストラット51に取り付けられる。突出部材387は、リアストラット51に回転可能に取り付けられてもよく、リアストラット51に固定されてもよい(回転可能でなくてもよい)。突出部材387は、リアストラット51が伏せられた状態のとき、上側Z1の面(背面)から上側Z1に突出する。巻上ロープ65は、突出部材387を介してリアストラット51に取り付けられる。巻上ロープ65は、突出部材387に取り付けられ、突出部材387の例えば先端部(リアストラット51側とは反対側の端部)に取り付けられる。突出部材387は、例えば棒状(引き起こしバー)でもよく、ブロック状などでもよい。突出部材387は、リアストラット51に対して着脱可能でもよい。クレーン1の作業時(図1参照)には、突出部材387は、リアストラット51から取り外されてもよい。
【0063】
接続部材388は、突出部材387とリアストラット51とに接続される。接続部材388は、例えばロープでもよく、リンク部材などでもよい。接続部材388は、突出部材387の例えば先端部に接続される。接続部材388は、突出部材387よりも、リアストラット51における先端側で、リアストラット51に接続される。なお、突出部材387がリアストラット51に固定される場合は、接続部材388は設けられなくてもよい。
【0064】
(検討)
巻上ウインチ67から引き出された巻上ロープ65が、引き起こし用シーブ83aに掛けられることなく、突出部材387に取り付けられる場合は、次の問題が生じ得る。[例B1]例えば、突出部材387がリアストラット51に回転可能に取り付けられ、接続部材388が突出部材387とリアストラット51とに接続される場合、リアストラット51が引き起こされるときに、突出部材387に圧縮荷重が作用する。[例B2]例えば、突出部材387がリアストラット51に固定されている場合は、リアストラット51への突出部材387の取付部分(基端部)に、曲げ荷重が作用する。上記[例B1]および[例B2]のいずれの場合も、リアストラット51への突出部材387の取付部分および突出部材387の強度を、上記の荷重に耐えられる強度に設定する必要がある。すると、リアストラット51への突出部材387の取付部分および突出部材387の、大型化、および質量増大が生じる。[例B3]また、巻上ロープ65が引き起こし用シーブ83aに掛けられない場合は、巻上ロープ65が引き起こし用シーブ83aに掛けられる場合に比べ、リアストラット51に対する突出部材387の突出量を大きくする必要がある。すると、突出部材387が大型化し、突出部材387の質量が増大する。
【0065】
一方、クレーン301では、巻上ロープ65が、引き起こし用シーブ83aに掛けられ、突出部材387に取り付けられる。よって、巻上ロープ65が引き起こし用シーブ83aに掛けられない場合に比べ、突出部材387にかかる荷重を抑制できる。よって、リアストラット51への突出部材387の取付部分、および突出部材387のそれぞれに必要な強度を小さくすることができる。よって、リアストラット51への突出部材387の取付部分および突出部材387を、小型化および軽量化することができる(例えば突出部材387を細くできる)。また、クレーン301では、引き起こし用シーブ83aに巻上ロープ65が掛けられない場合に比べ、突出部材387の突出量を小さく(低く、短く)できる。よって、突出部材387を軽量化することができる。
【0066】
(変形例)
上記実施形態は様々に変形されてもよい。例えば、互いに異なる実施形態の構成要素どうしが組み合わされてもよい。例えば、各構成要素の配置や形状が変更されてもよい。例えば、構成要素の数が変更されてもよく、構成要素の一部が設けられなくてもよい。例えば、構成要素どうしの固定や連結などは、直接的でも間接的でもよい。例えば、互いに異なる複数の部材や部分として説明したものが、一つの部材や部分とされてもよい。例えば、一つの部材や部分として説明したものが、互いに異なる複数の部材や部分に分けて設けられてもよい。
【0067】
例えば、図5に示すストラット側シーブ285と同様のシーブが、図6に示す突出部材387に設けられてもよい。この場合、図5に示す巻上ロープ65が、ストラット側シーブ285と、突出部材387(図6参照)に設けられたシーブと、に掛け回され、複数本掛け(3本掛け以上)にされる。
【0068】
例えば、図2に示すリアストラット51の引き起こしに用いられる引き起こし用ロープは、巻上ロープ65でなくてもよく、引き起こし用ウインチは、巻上ウインチ67でなくてもよい。例えば、引き起こし用ロープは、図1に示すブーム20から吊り下げられるフック63Bに取り付けられる巻上ロープ65Bでもよい。引き起こし用ウインチは、巻上ロープ65Bを巻き取るウインチでもよい。
【0069】
例えば、クレーン1が作業可能な姿勢のときに、ジブ40は、ブーム20に対して起伏しなくてもよい。例えば、ストラット50sは1本のみ設けられてもよい。ストラット50sが1本のみ設けられる場合、ストラット50sの先端部に、ストラットガイライン53およびジブガイライン54が接続されてもよい。このような1本のストラット50sが、図2に示すクレーン1の組立時に、巻上ロープ65(引き起こし用ロープ)により引き起こされてもよい。
【0070】
例えば、図1に示すマスト31に代えて、ガントリが設けられてもよい。この場合、ガントリは、コンプレッションメンバ(ブーム起伏部材)と、テンションメンバと、を備える。コンプレッションメンバは、マスト31と同様に、上部旋回体13に起伏可能に取り付けられ、シリンダ81が取り付けられる。テンションメンバは、コンプレッションメンバの先端部と、上部旋回体13とにつながれる。下部スプレッダ32は、コンプレッションメンバの先端部に設けられる。上部スプレッダ33は、コンプレッションメンバの先端部とブーム20の先端部との間に配置される。ブームガイライン34は、上部スプレッダ33とブーム20の先端部とに接続される。ブーム起伏ロープ35が、図示しないウインチで巻き取りおよび繰り出しされると、下部スプレッダ32と上部スプレッダ33との間隔が変わる。上部スプレッダ33とブーム20の先端部とがブームガイライン34で接続されているので、下部スプレッダ32と上部スプレッダ33との間隔が変わると、上部旋回体13に対してブーム20が起伏する。
【符号の説明】
【0071】
1、201、301 クレーン
10 クレーン本体
20 ブーム
31 マスト(ブーム起伏部材)
50s ストラット
51 リアストラット(ストラット)
63、63B フック
65、65B 巻上ロープ(引き起こし用ロープ)
67 巻上ウインチ(引き起こし用ウインチ)
81 シリンダ
83a 引き起こし用シーブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6