(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】評価システム及び評価方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20230620BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20230620BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2020046356
(22)【出願日】2020-03-17
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】大橋 政康
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-240628(JP,A)
【文献】特開2003-067022(JP,A)
【文献】特開2003-044546(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101881955(CN,A)
【文献】特開2019-101923(JP,A)
【文献】国際公開第2017/203492(WO,A1)
【文献】特開2007-093474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の生産要素に関して予め定められた評価指標の値である評価指標値を、生産された前記製品のロットについて収集する指標値収集部と、
複数の前記ロットについて前記評価指標値の分布を導出し、前記分布に対する前記評価指標値の偏差に基づいて、前記評価指標の公開用の値である公開値を前記ロットについて生成する評価部と
を備え
、
前記製品の生産要素は、前記製品の原料、前記製品の生産設備、前記製品の生産工程、及び前記製品の生産に携わる人材のうち、少なくとも2つを含み、
前記指標値収集部は、前記製品の原料に関する評価指標値である原料評価指標値、前記製品の生産設備に関する評価指標値である設備評価指標値、前記製品の生産工程に関する評価指標値である工程評価指標値、及び前記製品の生産に携わる人材に関する評価指標値である人評価指標値のうち、少なくとも2つを収集し、
前記評価部は、前記製品の原料に関する公開値である原料公開値、前記製品の生産設備に関する公開値である設備公開値、前記製品の生産工程に関する公開値である工程公開値、及び前記製品の生産に携わる人材に関する公開値である人公開値のうち、少なくとも2つを生成する、
評価システム。
【請求項2】
前記評価部は、複数の前記評価指標の前記公開値を前記生産要素ごとにグループ化することによって、グループ化された前記公開値であるグループ化公開値を前記生産要素ごとに生成する、請求項1に記載の評価システム。
【請求項3】
前記評価部は、複数の前記生産要素の前記グループ化公開値がさらにグループ化された結果である上位グループ化公開値を上位階層とし、前記生産要素ごとの前記グループ化公開値を下位階層とすることによって、階層化された前記グループ化公開値である階層化公開値を生成する、請求項2に記載の評価システム。
【請求項4】
前記評価部は、前記公開値、前記グループ化公開値及び前記階層化公開値のうちの少なくとも一つを、レーダーチャートの形式で生成する、請求項3に記載の評価システム。
【請求項5】
前記製品の品質に関して予め定められた評価指標の値である品質評価指標値に基づいて、前記製品の品質に関して予め定められた評価指標の分布に対する偏差の指標値である品質値を生成する品質値生成部を備え、
前記評価部は、前記公開値、前記グループ化公開値及び前記階層化公開値のうちの少なくとも一つと前記品質値とを対応付ける、請求項3又は請求項4に記載の評価システム。
【請求項6】
評価システムが実行する評価方法であって、
製品の生産要素に関して予め定められた評価指標の値である評価指標値を、生産された前記製品のロットについて収集する指標値収集ステップと、
複数の前記ロットについて前記評価指標値の分布を導出し、前記分布に対する前記評価指標値の偏差に基づいて、前記評価指標の公開用の値である公開値を前記ロットについて生成する評価ステップと
を含
み、
前記製品の生産要素は、前記製品の原料、前記製品の生産設備、前記製品の生産工程、及び前記製品の生産に携わる人材のうち、少なくとも2つを含み、
前記指標値収集ステップは、前記製品の原料に関する評価指標値である原料評価指標値、前記製品の生産設備に関する評価指標値である設備評価指標値、前記製品の生産工程に関する評価指標値である工程評価指標値、及び前記製品の生産に携わる人材に関する評価指標値である人評価指標値のうち、少なくとも2つを収集し、
前記評価ステップは、前記製品の原料に関する公開値である原料公開値、前記製品の生産設備に関する公開値である設備公開値、前記製品の生産工程に関する公開値である工程公開値、及び前記製品の生産に携わる人材に関する公開値である人公開値のうち、少なくとも2つを生成する、
評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、評価システム及び評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラントや工場等の生産設備では、工程制御システム等の生産システムが構築されており、高度な自動操業が実現されている。従来の生産システムでは、生産要素(製品を生産するための要素)に対する条件が、研究所で確立された科学技術や生産技術に基づいて設定されている。設定された条件が維持されることで、製品の品質は担保されてきた。ここで、原料(Material)と設備(Machine)と工程(Method)と人(Man)とは、「生産の4要素」と呼ばれることがある。また、「生産の4要素」は「4M」と呼ばれることもある。
【0003】
製品性能のばらつきを生じさせる阻害要因を特定し、製品性能及び製造性能を安定化させる技術が、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された技術では、工程データに基づいて生成された主成分得点に応じて製造工程のロットが複数のグループに区分され、プロダクトデータに基づいて複数のグループの優劣が判定される。また、グループの優劣に寄与する阻害要因が特定されることによって、製品性能及び製造性能が安定化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、製品の需要者から生産者に対する製品品質への要求がより厳しくなってきている。例えば、既に実績のある製品については、製品価格を抑えつつ、従来と変わらない品質を要求する等である。一方で、生産における生産要素のばらつきが顕著になっている。従来の生産システムでは、主に「生産の4要素」のうちの「工程」(実質的には、工程制御等の制御)に対して負担を強いることで、製品品質のばらつきを抑え込んでいる。しかしながら、各生産要素のばらつきは大きくなる傾向があり、「工程」のみでは製品の品質への影響を抑え込むことができない場合がある。
【0006】
一般的に、製品の需要者と生産者との売買契約においては、その製品の納入仕様が取り交わされることが通常である。この納入仕様に規定された仕様は、生産された製品から(必要に応じ、製品の需要者自身でも)実際に測定可能な数値(容量、質量、粘度、透明度、成分比等)であることが多い。以下、これら生産された製品から測定可能な数値(評価値)を「アウトプット評価値」という。一方、需要者にとって、製品に対する期待は、製品仕様(アウトプット評価値)に留まらないことが多い。例えば、その製品の経年劣化等がある(例えば、5年後の粘度、透明度の経年劣化等)。これらは抜き取りによる熱衝撃試験などの加速試験でもある程度は確認できるが、製品への期待が非常に高い場合(例えば、99.9%の製品の透明度が5年後も維持されていること等)の場合、抜き取りによる加速試験では対応できない(実質的に全数に加速試験が必要となり、かつ、加速試験によるストレスをその製品に与えてしまう)。製品の需要者にとって、その製品のアウトプット評価値以外の品質を期待(担保)するための一つの手段として、その製品の生産者を変更しないという方法がある。これは、同じ生産者であれば、同じ品質を有する製品を生産しつづけられるであろうという期待に基づいている。しかし、製品の需要者は、その製品の生産要素の変化を、製品のアウトプット評価値からは知ることができない。そこで、製品の需要者は、製品の生産要素の維持、強いては、その評価結果を、製品の生産者に対して要求する場合がある。以下、製品のアプトプット評価値で示すことのできない生産要素の変化等の評価値を「プロセス評価値」という。一方、製品の生産者にとって、製品のプロセス評価値をありのまま製品の需要者に提供した場合には、提供したプロセス評価値に基づいて他の生産者(競合他社)が生産工程を模倣してしまう可能性が生じる(生産ノウハウの流出)。また、需要者に対し、厳密な生産プロセスを公開(約束)することによって、生産者による生産コスト削減のための工夫の余地を狭めることにもなりかねない。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、製品の需要者の(いままでの製品と変わらないという)信頼を確保するとともに、製品の生産ノウハウ等の第三者への流出を防止することが可能である評価システム及び評価方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様による評価システム(1a)は、製品の生産要素に関して予め定められた評価指標の値である評価指標値を、生産された前記製品のロットについて収集する指標値収集部(10)と、複数の前記ロットについて前記評価指標値の分布を導出し、前記分布に対する前記評価指標値の偏差に基づいて、前記評価指標の公開用の値である公開値(101)を前記ロットについて生成する評価部(12a)とを備える。
【0009】
また、本発明の一態様による評価システム(1b)において、評価部(12b)は、複数の前記評価指標の前記公開値を前記生産要素ごとにグループ化することによって、グループ化された前記公開値であるグループ化公開値を前記生産要素ごとに生成する。
【0010】
また、本発明の一態様による評価システム(1c)において、評価部(12c)は、複数の前記生産要素の前記グループ化公開値がさらにグループ化された結果である上位グループ化公開値を上位階層とし、前記生産要素ごとの前記グループ化公開値を下位階層とすることによって、階層化された前記グループ化公開値である階層化公開値(102)を生成する。
【0011】
また、本発明の一態様による評価システムにおいて、前記評価部は、前記公開値、前記グループ化公開値及び前記階層化公開値のうちの少なくとも一つを、レーダーチャートの形式で生成する。
【0012】
また、本発明の一態様による評価システムは、前記製品の品質に関して予め定められた評価指標の値である品質評価指標値に基づいて、前記製品の品質に関して予め定められた評価指標の分布に対する偏差の指標値である品質値(103)を生成する品質値生成部(13)を備え、前記評価部は、前記公開値、前記グループ化公開値及び前記階層化公開値のうちの少なくとも一つと前記品質値とを対応付ける。
【0013】
本発明の一態様による評価方法は、評価システムが実行する評価方法であって、製品の生産要素に関して予め定められた評価指標の値である評価指標値を、生産された前記製品のロットについて収集する指標値収集ステップと、複数の前記ロットについて前記評価指標値の分布を導出し、前記分布に対する前記評価指標値の偏差に基づいて、前記評価指標の公開用の値である公開値(101)を前記ロットについて生成する評価ステップとを含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、製品の需要者の(いままでの製品と変わらないという)信頼を確保するとともに、製品の生産ノウハウ等の第三者への流出を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態における、生産システムの構成例を示す図である。
【
図2】第1実施形態における、工程評価指標定義の例を示す図である。
【
図3】第1実施形態における、評価システムの構成例を示す図である。
【
図4】第1実施形態における、ロットごとの反応時間に対応付けられる公開値の例を示す図である。
【
図5】第1実施形態における、各公開値の例を示す図である。
【
図6】第1実施形態における、評価システムの動作例を示すフローチャートである。
【
図7】第2実施形態における、生産システムの構成例を示す図である。
【
図8】第2実施形態における、評価システムの構成例を示す図である。
【
図9】第1実施形態における、各評価指標定義の例を示す図である。
【
図10】第2実施形態における、グループ化公開値の例を示す図である。
【
図11】第2実施形態における、階層化公開値の例を示す図である。
【
図12】第3実施形態における、生産システムの構成例を示す図である。
【
図13】第3実施形態における、品質評価指標定義の例を示す図である。
【
図14】第3実施形態における、評価システムの構成例を示す図である。
【
図15】第3実施形態における、ロットごとの透明度に対応付けられる品質値の例を示す図である。
【
図16】第3実施形態における、品質値の例を示す図である。
【
図17】第3実施形態における、階層化公開値のグループの樹形図の例を示す図である。
【
図18】第3実施形態における、階層化公開値のグループと品質値との散布図の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による、評価システム及び評価方法について詳細に説明する。以下では、まず本発明の実施形態の概要について説明し、続いて本発明の各実施形態の詳細について説明する。
【0017】
〔概要〕
本発明の実施形態は、製品の生産要素のばらつきの評価結果(プロセス評価値)を生産者が需要者に提出しても、その評価結果に基づいて他の生産者による生産工程の模倣の防止等を可能とするものである。
【0018】
装置産業では、長い歴史の中で技術が成熟しており、安定した操業が行われてきた。従来の生産方法では、研究所で確立された化学技術及び生産技術に基づいて、予め定められた生産条件が各生産要素に対して設定され、生産者はその生産条件を維持することで製品の品質を維持している。
【0019】
生産者は完成品の素材としての製品を生産する場合がある。例えば、生産者は完成品であるスマートフォンの素材としてのフィルム(樹脂)を生産する場合がある。このような生産者は、製品の品質重視を目的として、予め定められた同じ原料メーカから原料を購入し、予め定められた同じ生産工程を経て、予め定められた同じ品質チェックを製品に対して行い、製造業のサプライチェーンにおける生産者の客先である需要者に製品を提供する。
【0020】
生産者の客先である需要者は、必要量の製品を生産者に対して発注する。生産者は、製品を生産するために、必要量の原料を原料メーカに発注し、納期までに原料を受け取る。生産者は、受け取った原料を用いて製品を生産し、納期までに需要者に納入する。従来のサプライチェーンでは、長年の付き合い又は過去の品質実績に基づいて、同じ生産者が発注先となる場合が多い。
【0021】
このように生産者は過去の慣習に基づいて選定されており、需要者は、過去の慣習に基づいて選定された複数の生産者に対して製品を発注することによって、製品の納入遅れ又は低品質が需要者に影響することを回避していた。
【0022】
生産された製品の品質が所定レベルを維持するための生産条件は、生産要素ごとに定められている。例えば「4M」の生産要素ごとに、生産条件は以下のように定められている。
【0023】
・生産要素「原料」:通常では、原料は複数の組成から構成されている。この複数の組成の許容幅が、生産条件として定められている。
・生産要素「設備」:設備の建設又は改修時に、プラントユーザ又はプラントエンジニアが設備を設計する。この設計に基づいて設備は構築又は実装される。
・生産要素「工程」:従来では、原料及び設備の条件は一定に保たれており、生産要素におけるばらつきは、「工程」によって吸収されている。さらに従来では、目標とされた結果が得られるように、シーケンス制御ロジック又はPID(Proportional Integral Differential)制御ロジック等を用いるリアルタイム制御が、生産工程において行われている。
・生産要素「人」:人は、生産設備において自動化が難しい部分の処理を行う。自動化が難しい部分の処理とは、例えば、発生した異常に対処するための処置、生産対象の入れ替え、及び、生産設備の保守等である。
【0024】
「4M」を駆使して製品が原料から生産される手法と、そのシステム全体とは、「生産管理システム」と呼ばれる場合がある。「4M」のうちで「工程」以外の3Mを変化させない手法及び働きを提供するシステム全体、又は、「工程」でその変化を抑え込む手法及び働きを提供するシステム全体は、「プロセス制御システム」と呼ばれる場合がある。
【0025】
現在の生産業を取り巻く環境の例として、グローバル競争の激化と、エネルギー又は原料のコストの乱高下と、労働人口の減少及び高年齢化と、系列に依らないサプライチェーンの多様化とが挙げられる。このような環境の変化によって、以下の(1)から(4)までの現象が生産者の生産管理システムにおいて生じ始めている。
【0026】
(1)原料(Material)の品質が必ずしも一定ではなくなってきている。
(2)設備(Machine)の経年劣化が進んできている。
(3)工程(Method)においてこれまでに顕在化しなかったトラブルに、生産者が直面し始めている。
(4)ベテラン層の人(Man)が減少し、生産者が設備の運転ノウハウを喪失している。
【0027】
つまり、原料の品質がばらつき、経年劣化が進んだ設備を使い、かつ、設備の運転ノウハウも少ない人数を用いて、生産者はこれまで以上の高い品質で差別化された製品を需要者に提供しなければならない。
【0028】
さらに、サプライチェーンの下流工程である生産者は、高品質で均一な品質の製品を提供することを、需要者から厳しく求められている。例えば、生産者は、製品の品質が従来とかわらないこと(従来の品質が維持されていること)を証明するために、生産工程の提示を需要者から求められる場合がある。また例えば、需要者は、生産者が安い原料を使わないように、生産者が扱う原料について生産者に対して指示をする場合がある。
【0029】
このように、厳しい発注条件が生産者に対して需要者から加えられるようになっている。需要者からの要求に応えるためには、本来であれば製品の出荷前に製品の全点検査をすべきである。しかしながら、製品の破壊行為が必要な検査項目が含まれている場合には製品の全点検査ができず、生産コストが増加し、製品の出荷までに時間がかかるので、製品の出荷前の検証に工数をかけることには限界がある。しかしながら、品質不良を一度でも発生させてしまうと、次回以降の発注を生産者が需要者からもらえなくなってしまうというリスクがある。
【0030】
そこで、生産者が製品の品質を見える化する必要がある。製品の品質を見える化するための数値化として、需要者に提供される製品の品質に関する数値(アウトプット評価値)と、需要者に提供される製品の生産工程に関する数値(プロセス評価値)とがある。アウトプット評価値は、需要者に供給される製品の測定値及びばらつき等の製品自体から測定可能な評価値である。プロセス評価値は、生産工程内において、測定又は管理される数値である。需要者に対して、プロセス評価値を公開することによって、需要者に安心して製品を使っていただけるための証明書となる。しかし、ありのままの(生産工程内で測定した値そのものの)プロセス評価値は、ノウハウ流出防止等の観点から、従来では、需要者に対して直接示すことは極力避けられていた。
【0031】
本発明の実施形態では、評価システムは、製品の生産要素に関して予め定められた評価指標(Key Performance Indicator)の値である評価指標値を、生産された製品のロット(以下「製品ロット」という。)ごとに収集する。評価指標値は、ありのままのプロセス評価値であるとも言える。評価システムは、複数の製品ロットについて評価指標値の分布を導出する。評価システムは、評価指標値の分布の中心に対する評価指標値の偏差に基づいて、評価指標の公開用の値を製品ロットごとに生成する。これによって、本発明の実施形態では、製品の生産要素のプロセス評価結果として、評価指標の公開用の値を生産者が需要者に提出しても、そのプロセス評価結果に基づいて他の生産者(競合他社)が生産工程を模倣できないようすることが可能である。
【0032】
〔第1実施形態〕
〈生産システム〉
図1は、第1実施形態における、生産システム100aの構成例を示す図である。生産システム100aは、原料を用いて製品を生産するシステムである。生産システム100aは、生産者(例えば、素材メーカ)によって管理される。生産システム100aは、需要者システム200から取得された発注情報201に基づいて、原料300を用いて製品301を生産する。生産システム100aは、評価指標の公開用の値(以下「公開値」という。)と、製品301とを、需要者システム200に出力する。
【0033】
公開値101は、通常(いつも通り)の生産工程で生産された製品であることを証明するための証明書となる。公開値101は、評価指標値(例えば、生産設備に備えられた反応器の温度)そのものではないため、公開値101に基づいて他の生産者は生産工程を模倣できない。評価指標値は、製品301の各生産要素に関して予め定められる。各生産要素とは、例えば、原料と、設備と、工程と、人とである。評価指標値は、通常、生産要素ごとに複数有する(例えば、原料における産地、等級、粘度等)。ただし、第1実施形態の説明においては、各生産要素に対し、製品品質に最も影響を与えると思われる一つずつ評価指標値を設定した例を示す(各生産要素に対し、複数の評価指標値を設定した例については後述する)。なお、生産者が例えば素材メーカである場合、製品301は、生産システム100aにおいて生産された素材である。
【0034】
〈需要者システム〉
需要者システム200は、製品の需要者(リピータ)によって管理されるシステムである。需要者システム200は、製品301の発注情報201を生産システム100aに送信する。需要者が例えば完成品メーカである場合、製品301は、需要者システム200において生産される完成品の素材である。需要者システム200は、公開値101と製品301とを、生産システム100aから取得する。
【0035】
次に、生産システム100aの構成について説明する。
生産システム100aは、評価システム1aと、生産設備2と、人材管理システム3と、生産管理システム4aとを備える。生産管理システム4aは、原料管理システム40と、工程管理システム41と、設備管理システム42とを備える。
【0036】
生産設備2は、製品の生産に必要な設備を備える。必要な設備とは、例えば、配管、バルブ、ポンプ、反応器及びタンク等である。生産設備2は、生産管理システム4aによる制御に基づいて、原料300を用いて製品301を生産(製造)する。人材管理システム3は、人(製品の生産に携わる人材)に関して予め定められた評価指標の値(以下「人評価指標値」という。)を、生産管理システム4aを経由して、評価システム1aに出力する。
【0037】
生産管理システム4aは、発注情報201に基づいて、生産設備2の動作を制御する。原料管理システム40は、原料に関して予め定められた評価指標の値(以下「原料評価指標値」という。)を生成する。工程管理システム41は、生産工程に関して予め定められた評価指標の値(以下「工程評価指標値」という。)を生成する。設備管理システム42は、設備に関して予め定められた評価指標の値(以下「設備評価指標値」という。)を生成する。なお、生産管理システム4aは、生産設備の環境に関して予め定められた評価指標の値(以下「環境評価指標値」という。)を生成してもよい。
【0038】
図2は、第1実施形態における、工程評価指標値の例を示す図である。工程評価指標値は、製品の品質に最も影響を与えると想定されるプロセス評価値であり、例えば、生産設備2の反応器(不図示)における、反応前温度と、昇温傾きと、反応時間と、反応時内部圧力と、冷却傾きと、反応後温度とのうちの一つである。
【0039】
図1に示された評価システム1aは、各生産要素の評価指標値を製品301のロットごとに生産管理システム4aから収集する。評価システム1aは、通常(いつも通り)の生産工程で生産された製品であることを証明するための証明書として、製品301のロットごとに公開値101を生成する。評価システム1aは、公開値101を製品301のロットごとに需要者システム200に送信する。
【0040】
次に、評価システム1aの構成例を説明する。
図3は、第1実施形態における、評価システム1aの構成例を示す図である。評価システム1aは、指標値収集部10と、評価指標記憶部11aと、評価部12aとを備える。評価部12aは、公開値生成部120を備える。
【0041】
指標値収集部10は、原料評価指標値と、設備評価指標値と、工程評価指標値と、人評価指標値と、環境評価指標値とを、製品ロットごとに生産管理システム4aから収集する。指標値収集部10は、製品301の製品ロット番号を、製品ロットごとに生産管理システム4aから取得する。指標値収集部10は、原料評価指標値と、設備評価指標値と、工程評価指標値と、人評価指標値と、環境評価指標値と、製品301の製品ロット番号とを、評価部12aに送信する。評価指標記憶部11aは、各評価指標値を記憶する。評価指標記憶部11aは、各評価指標値を公開値生成部120に出力する。
【0042】
公開値生成部120は、過去の製品ロットにおける各評価指標値を評価指標記憶部11aから取得する。公開値生成部120は、生産中のロットにおける、原料評価指標値と、設備評価指標値と、工程評価指標値と、人評価指標値と、環境評価指標値と、製品301の製品ロット番号とを、指標値収集部10から取得する。公開値生成部120は、生産中のロットの各評価指標値と、過去の複数の製品ロットについての評価指標値とを比較し、その分布を導出する。公開値生成部120は、評価指標値の分布に対する偏差に基づいて、公開値をロットごとに生成する。つまり、公開値とは、現在生産中のロットにおけるプロセス評価値である各評価指標値が、過去の製品ロットにおける各評価指標値の分布に対し、どのあたりに位置づけられるかを示す数値となる。したがって、公開値からは、需要者はありのままの評価指標値(プロセス評価値)を導出することは困難であり、生産ノウハウの流出等を防止することができる。なお、公開値は、例えば1から5までの整数(点数)で表される。
【0043】
図4は、第1実施形態における、製品ロットごとの反応時間に対応付けられる公開値の例を示す図である。横軸は、各製品ロットにおける評価指標値(例えば、反応時間)の偏差(反応時間の分布の中心からの距離)を示す。縦軸は、製品ロットの頻度を示す。公開値生成部120は、現在のロットにおける評価指標としての反応時間に関する公開値を、過去の製品ロットにおける反応時間の分布(ばらつき)から生成する。例えば、分布の中心から近い反応時間であるほど、反応時間に関する公開値は高くなる。すなわち、通常(いつも通り)の反応時間であるほど公開値が5点(最高点)に近くなり、通常とは異なる反応時間であるほど公開値が1点(最低点)に近くなる。
【0044】
なお、公開値生成部120は、過去の製品ロットにおける各評価指標値の分布との比較ではなく、過去の製品ロットにおいて、より好ましいと判断された製品ロット(以下「基準ロット」という。)との比較から、公開値を生成してもよい。例えば、基準ロットから構成された基準空間に対してマハラノビス・タグチ方法(Mahalanobis Taguchi Method:MT Method)を用いて、マハラノビス距離(Mahalanobis Distance :MD)を、公開値として導出してもよい。また、公開値生成部120は、各生産要素の重要度に応じて、公開値の重み付けを生産要素ごとに変更してもよい。
【0045】
以下、原料評価指標に関する公開値を「原料公開値」という。設備評価指標に関する公開値を「設備公開値」という。工程評価指標に関する公開値を「工程公開値」という。人評価指標に関する公開値を「人公開値」という。環境評価指標に関する公開値を「環境公開値」という。
【0046】
図5は、第1実施形態における、各公開値の例を示す図である。
図5では、原料公開値と、設備公開値と、工程公開値と、人公開値とが、製品ロット番号ごとに対応付けられている。各公開値は、例えばレーダーチャートの形式で生成される。公開値生成部120は、原料公開値、設備公開値、工程公開値及び人公開値のうちの少なくとも一つと、製品301のロット番号とを、需要者の要求に応じて需要者システム200に送信する。なお、原料公開値と、設備公開値と、工程公開値と、人公開値と、環境公開値とが、製品ロット番号ごとに対応付けられていてもよい。公開値生成部120は、環境公開値を需要者システム200に送信してもよい。
【0047】
次に、評価システム1aの動作例を説明する。
図6は、第1実施形態における、評価システム1aの動作例を示すフローチャートである。指標値収集部10は、生産された製品ロットごとに、各生産要素の評価指標値を生産管理システム4aから収集する(ステップS101)。評価部12aは、現在の製品ロットの評価指標値と過去の複数の製品ロットにおける評価指標値の分布との比較結果を、評価指標値の第1公開値(ばらつき公開値)として導出する。例えば
図4に示されているように、評価部12aは、現在の製品ロットの反応時間と過去の製品ロットの反応時間の値の分布との比較結果を、反応時間の第1公開値として導出する(ステップS102)。評価部12aは、過去の製品ロットの分布の中心に対する現在のロットの評価指標値の偏差「σ」に基づいて、評価指標値の第2公開値(偏差公開値)として生成する。例えば
図4に示されているように、評価部12aは、過去の製品ロットの反応時間の値の分布の中心に対する偏差「σ」に基づいて、1点から5点までの点数を生産中のロットの反応時間の第2公開値を生成する(ステップS103)。評価部12aは、第1公開値及び第2公開値のうちの少なくとも一方を含む公開値101を、需要者システム200に出力する(ステップS104)。
【0048】
以上説明した通り、指標値収集部10は、製品301の生産要素に関して予め定められた評価指標(例えば、原料、設備、工程、人、環境)の値である評価指標値を、生産中の製品301のロットごとに収集する。公開値生成部120は、過去の複数の製品ロットについて評価指標値の分布を導出する。公開値生成部120は、過去の複数の製品ロットにおける評価指標値の分布の中心に対する現在生産中のロットの評価指標値の偏差に基づいて、公開値101を生成する。
【0049】
これによって、第1実施形態では、製品301の生産プロセスの評価結果として公開値101を生産者が需要者に提出しても、公開値101は評価指標値(プロセス評価値)そのものではないので、公開値101に基づいて他の生産者が生産工程を模倣できないようすることが可能である。需要者は、製品301の生産工程を公開値101に基づいて客観的に評価することができる。
【0050】
〔第2実施形態〕
第2実施形態では、グループ化部及び階層化部を評価部が備える点等が、第1実施形態と相違する。第2実施形態では、第1実施形態との相違点を主に説明する。
【0051】
以下、生産要素ごとにグループ化された公開値を「グループ化公開値」という。階層化されたグループ化公開値を「階層化公開値」という。
【0052】
図7は、第2実施形態における、生産システム100bの構成例を示す図である。生産システム100bは、評価システム1bと、生産設備2と、人材管理システム3と、生産管理システム4bとを備える。生産管理システム4aは、原料管理システム40と、工程管理システム41と、設備管理システム42とを備える。
【0053】
生産システム100bは、需要者システム200から取得された発注情報201に基づいて、原料300を用いて製品301を生産する。生産システム100bは、階層化公開値102と製品301とを、需要者システム200に出力する。
【0054】
次に、評価システム1bの構成例を説明する。
図8は、第2実施形態における、評価システム1bの構成例を示す図である。評価システム1bは、指標値収集部10と、評価指標記憶部11bと、評価部12bとを備える。評価部12bは、公開値生成部120と、グループ化部121と、階層化部122とを備える。
【0055】
指標値収集部10は、1又は複数の評価指標値を、各生産要素から収集する。第1実施形態では、各生産要素につき一つの評価指標を収集したが、実際には生産要素ごとに対象とすべき評価指標値が複数あることが多い。
【0056】
図9に、生産要素ごと抽出した評価指標値のリスト例を示す。以下、生産要素ごとの評価指標値をまとめて、「評価指標定義」という。
図9では、原料評価指標定義と、設備評価指標定義と、工程評価指標定義と、人評価指標定義と、環境評価指標定義とが例示されている。例えば、原料評価指標定義は、原料の産地と、原料の等級と、原料の特性Aと、原料の特性Bと、原料の保管期間とで構成されている。評価指標定義の構成内容は、生産者自身が決定してもよいし、需要者の指示のもと、決定されてもよい。なお、各評価指標定義(生産要素ごとに選択された評価指標)は、評価指標記憶部に記憶されても良い。
【0057】
図8の公開値生成部120は、指標値収集部10が収集した評価指標値それぞれに対し、(第1実施実施形態と同様の方法で)公開値を生成する。グループ化部121は、原料公開値、設備公開値、工程公開値及び人公開値と、製品301のロット番号とを、公開値生成部120から取得する。グループ化部121は、これらの評価指標の公開値を前述の各評価指標定義に基づき、生産要素ごとにグループ化することによって、グループ化公開値を生産要素ごとに生成する。
【0058】
図10は、第2実施形態における、グループ化公開値の例を示す図である。生産要素ごとのグループ化公開値は、複数の評価指標に関して、例えばレーダーチャートの形式で生成される。
図10では、生産要素「工程」のグループ化公開値は、評価指標「反応前温度」と、評価指標「反応後温度」と、評価指標「冷却傾き」と、評価指標「反応時内部圧力」と、評価指標「反応時間」と、評価指標「昇温傾き」とに関して、レーダーチャートの形式で生成される。本例において、レーダーチャート縦軸の公開値としては、通常(いつも通り)であるほど5点(最高点)に近くなり、通常とは異なるほど1点(最低点)に近くなるように示したが、公開値には別の表現を用いてもよい。
【0059】
生産要素ごとのグループ化公開値は、運転条件として予め定められた評価指標についてまとめられる。
図10では、一例として、生産要素「工程」のグループ化公開値と、生産要素「原料」のグループ化公開値と、生産要素「設備」のグループ化公開値と、生産要素「人」のグループ化公開値とが、運転条件としての環境評価指標「昼、気温、湿度、曜日」についてまとめられる。グループ化部121は、グループ化公開値と製品ロット番号とを、階層化部122に出力する。
【0060】
なお、グループ化部121は、グループ化公開値と製品ロット番号とを、需要者システム200に送信してもよい。
図10に示されたようなグループ化公開値は、需要者システム200の表示装置(不図示)に表示されてもよい。
【0061】
図11は、第2実施形態における、階層化公開値の例を示す図である。階層化部122は、グループ化公開値を製品ロットごとにグループ化部121から取得する。
図11では、階層化部122は、生産要素「原料」のグループ化公開値と、生産要素「設備」のグループ化公開値と、生産要素「工程」のグループ化公開値と、生産要素「人」のグループ化公開値とを、製品ロットごとにグループ化部121から取得する。
【0062】
階層化部122は、複数の生産要素のグループ化公開値を、さらにグループ化する。以下、複数の生産要素のグループ化公開値がさらにグループ化された結果を「上位グループ化公開値」という。
図11では、上位グループ化公開値は、生産要素「原料」のグループ化公開値と、生産要素「設備」のグループ化公開値と、生産要素「工程」のグループ化公開値と、生産要素「人」のグループ化公開値とに関して、レーダーチャートの形式で生成される。階層化部122は、上位グループ化公開値を上位階層とし、生産要素ごとのグループ化公開値を下位階層とすることによって、階層化公開値102を生成する。
【0063】
階層化公開値102は、複数の生産要素に関して、例えば階層化されたレーダーチャートの形式で生成される。
図11では、階層化公開値102は、一例として、生産要素「原料」と生産要素「設備」と生産要素「工程」と生産要素「人」とに関して、階層化されたレーダーチャートの形式で生成される。例えば、レーダーチャートにおける縦軸(0~4)は、各生産要素の公開値のバランス等から決定されてもよい。階層化部122は、階層化公開値102と製品ロット番号とを、需要者システム200に送信する。階層化公開値102は、需要者システム200の表示装置(不図示)に表示される。
【0064】
なお、評価部12cは、評価指標値の階層を下げて評価指標値の項目をさらに詳細にするための操作(ドリルダウン操作)の信号として、例えばクリック操作の信号を受信してもよい。
図11に示された階層化公開値が表示装置(不図示)に表示されており、且つ、生産要素「原料」のグループ化公開値のレーダーチャートが表示されていない状態で、上位グループ化公開値において例えば「原料」と表示されている領域がクリック操作された場合、評価部12cは、生産要素「原料」のグループ化公開値のレーダーチャートが表示されるようにしもよい。
【0065】
以上説明した通り、グループ化部121は、複数の評価指標の公開値を生産要素ごとにグループ化することによって、グループ化公開値を生産要素ごとに生成する。階層化部122は、上位グループ化公開値を上位階層とし、生産要素ごとのグループ化公開値を下位階層とすることによって、階層化公開値102を生成する。
【0066】
これによって、第2実施形態では、製品の生産要素の評価結果としてグループ化公開値又は階層化公開値102を生産者が需要者に提出しても、グループ化公開値又は階層化公開値102は評価指標値そのものではないので、グループ化公開値又は階層化公開値102に基づいて他の生産者が生産工程を模倣できないようすることが可能である。階層化部122は、レーダーチャートを用いて、製品品質のばらつきを生じさせる阻害要因となる評価指標を分かり易く表示装置(不図示)に表示させることができる。階層化部122は、階層化公開値に対するドリルダウン処理によって、製品品質のばらつきを生じさせる阻害要因となる評価指標を分かり易く表示装置(不図示)に表示させることができる。
【0067】
〔第3実施形態〕
第3実施形態では、品質管理システムを生産管理システムが備える点と、品質値生成部を評価システムが備える点等が、第2実施形態と相違する。第3実施形態では、第2実施形態との相違点を主に説明する。
【0068】
図12は、第3実施形態における、生産システム100cの構成例を示す図である。生産システム100cは、評価システム1cと、生産設備2と、人材管理システム3と、生産管理システム4cとを備える。生産管理システム4cは、原料管理システム40と、工程管理システム41と、設備管理システム42と、品質管理システム43とを備える。品質管理システム43は、製品の品質に関して予め定められたアウトプット評価値(以下「品質評価指標値」という。)を生成する。
【0069】
図13は、第3実施形態における、予め定められた複数のアウトプット評価値を構成項目として定義する品質評価指標定義の例を示す図である。
図13では、品質評価指標定義は、一例として、透明度と、ひっかき強度と、柔軟性と、面粗さと、光沢度とである。生産管理システム4cは、品質評価指標値を評価システム1cに送信する。なお、品質評価指標定義は、後述する評価指標記憶部に記憶されてもよい。
【0070】
次に、評価システム1cの構成例を説明する。
図14は、第3実施形態における、評価システム1cの構成例を示す図である。評価システム1cは、指標値収集部10と、評価指標記憶部11cと、評価部12cと、品質値生成部13とを備える。
【0071】
指標値収集部10は、プロセス評価値である原料評価指標値と、設備評価指標値と、工程評価指標値と、人評価指標値と、環境評価指標値と、アウトプット評価値である品質評価指標値とを、製品ロットごとに生産管理システム4cから収集する。指標値収集部10は、製品301の製品ロット番号を、生産管理システム4cから取得する。指標値収集部10は、原料評価指標値と、設備評価指標値と、工程評価指標値と、人評価指標値と、環境評価指標値と、製品301の製品ロット番号とを、評価部12cに送信する。指標値収集部10は、各品質評価指標の品質評価指標値と、製品301の製品ロット番号とを、品質値生成部13に送信する。
【0072】
品質値生成部13は、品質評価指標値と、製品301の製品ロット番号とを、指標値収集部10から取得する。品質値生成部13は、品質評価指標定義を評価指標記憶部11cから取得する。品質値生成部13は、各品質評価指標の品質評価指標値に基づいて、製品の品質に関して予め定められた評価指標の分布に対する偏差の指標値(以下「品質値」という。)を生成する。
【0073】
図15は、第3実施形態における、複数の製品ロットごとの透明度に対応付けられる品質値の例を示す図である。横軸は、複数の製品ロットにおける透明度の分布を示す。縦軸は、製品ロットの頻度を示す。公開値生成部120は、評価指標としての透明度に関する品質値を、製品ロットごとに導出する。透明度の分布の中心から近い透明度であるほど、透明度に関する公開値は高くなる。すなわち、通常(いつも通り)の透明度であるほど、公開値が5点(最高点)に近くなる。通常とは異なる透明度であるほど、透明度に関する公開値が1点(最低点)に近くなる。
【0074】
なお、品質値生成部13は、過去の製品ロットにおける品質値の分布との比較ではなく、過去の製品ロットにおいて、より好ましいと判断された製品ロット(以下、基準ロットと記す)との比較から、品質値を生成してもよい。品質値生成部13は、例えば、基準ロットから構成された基準空間に対してマハラノビス・タグチ方法を用いて、マハラノビス距離を、品質値として導出してもよい。また、品質値生成部13は、評価指標の重要度に応じて、品質値の重み付けを評価指標ごとに変更してもよい。
【0075】
図16は、第3実施形態における、品質値の例を示す図である。品質値生成部13は、複数の品質評価指標の品質評価指標値をグループ化(クラスタリング)することによって、品質値を生成する。
図16では、品質値生成部13は、一例として、透明度に関する品質評価指標値と、ひっかき強度に関する品質評価指標値と、柔軟性に関する品質評価指標値と、面粗さに関する品質評価指標値と、光沢度に関する品質評価指標値とを含む品質値を、製品ロットごとに生成する。品質値生成部13は、例えばレーダーチャートの形式で品質値を生成する。本例において、レーダーチャート縦軸の品質値として、通常(いつも通り)であるほど5点(最高点)に近くなり、通常とは異なるほど1点(最低点)に近くなるように示したが、品質値は別の表現を用いてもよい。品質値生成部13は、品質値103を需要者システム200に送信する。
【0076】
図17は、第3実施形態における、評価指標値の公開値、および、品質値を樹形図化した例を示す図である。品質値生成部13は、透明度の経年劣化を抑えたいというアウトプット評価値に表せられない期待を証明するために、プロセス評価項目の公開値と、アウトプット評価項目の品質値とを、製品ロット番号に対応付けて需要者システム200に送信してもよい。
図17においては、例えば、原料・産地の公開値は3であり、いつもと違うことを示している。これに対処するため、いつもと若干異なる昇温速度(公開値=4)で処理を行っている。結果として、中間工程の透明度はいつも通り(公開値=5)となっている。さらに、攪拌装置がいつもと若干異なる分布(公開値=4、例えば攪拌速度が若干ばらついたとか)をしていたが、いつもと同じ作業者が作業する(公開値=5)ことで、製品としても、いつもと同じ透明度分布(品質値=5)を得られている。これらの数値を、需要者に提供することで、同製品ロットに対する信頼を得ることができる。
【0077】
図18は、第3実施形態における、プロセス評価指標である公開値とアウトプット評価指標である品質値との散布図の例を示す図である。横軸は、複数の製品ロット番号に対応付けられたアウトプット評価指標の品質値を示す。縦軸は、複数の製品ロット番号に対応付けられたプロセス評価指標の公開値を示す。品質値生成部13は、品質値と公開値の散布図を、需要者システム200に送信してもよい。
図18では、一例として、過去の複数の製品ロットがA~Eの5つのクラスタに分かれ分布していることがわかる。なお、点線の四角枠は許容範囲を示すものであり、この例ではすべての製品ロットが共用範囲内に収まっていることを示している。ここで、例えば、現在生産中のロット(もしくは今回集荷する生産ロット)が、どの位置に分布するか示してもよい(図中の星印)。また、基準ロットを設けている場合は、それを明示してもよい。以上の通り、品質生成部は、製品ロットにおける、プロセス評価指標の公開値と、アウトプット評価指標の品質値を紐づけて、需要者に提供する機能を有する。
【0078】
なお、
図12に示された品質管理システム43は、生産中の製品301のロットがどのグループに属することになるのかを、製品301の生産中に、散布図を用いて判定してもよい。この場合、品質管理システム43は、
図18の横軸を例えば、プロセス評価指標の公開値Zとしてもよい。現在生産中のロットの状況が星印の位置にあるとすれば、基準ロットであるクラスタDにより近づくよう、後工程を調整するようにしてもよい。
【0079】
品質値生成部13は、品質値103と製品ロット番号とを、需要者システム200に送信する。品質値生成部13は、製品ロット番号を評価部12cに出力する。製品ロット番号は、評価部12cによって、階層化公開値102に対応付けられる。
【0080】
以上説明した通り、品質値生成部13は、品質評価指標値に基づいて品質値103を生成する。品質値生成部13は、品質値103と製品ロット番号とを、需要者システム200に送信する。評価部12cは、公開値101、グループ化公開値及び階層化公開値102のうちの少なくとも一つと、品質値103とを対応付ける。評価部12cは、公開値、グループ化公開値及び階層化公開値のうちの少なくとも一つと、製品ロット番号とを、需要者システム200に送信する。
【0081】
これによって、第3実施形態では、製品301の生産要素のばらつきの評価結果としての階層化公開値102を生産者が需要者に提出しても、階層化公開値102は評価指標値(工程管理ポイントの値)そのものではないので、階層化公開値102に基づいて他の生産者が生産工程を模倣できないようすることが可能である。また、階層化公開値102と、アウトプット評価指標である品質値との紐づけ情報を需要者が知ることができるので、需要者は安心して製品301を受領することができる。
【0082】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0083】
上述した生産システム及び需要者システムの各機能部の一部又は全部は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが、記憶部に記憶されたプログラムを実行することにより、ソフトウェア的に実現される。つまり、評価システムの各機能部の一部又は全部の機能は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することによって実現される。生産システムの評価システムは、クラウドコンピューティングによって実現されてもよい。
【0084】
上記のプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置などの非一時的な記録媒体である。プログラムは、通信回線を経由して受信されてもよい。
【0085】
なお、上述した評価システムの各機能部の一部又は全部は、ハードウェアによって実現されてもよい。例えば、LSI(Large Scale Integration circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いた電子回路(electronic circuit又はcircuitry)によって実現されても良い。
【符号の説明】
【0086】
1a,1b,1c…評価システム、2…生産設備、3…人材管理システム、4a,4b,4c…生産管理システム、10…指標値収集部、11a,11b,11c…評価指標記憶部、12a,12b,12c…評価部、13…品質値生成部、40…原料管理システム、41…工程管理システム、42…設備管理システム、43…品質管理システム、100a,100b,100c…生産システム、101…公開値、102…階層化公開値、103…品質値、120…公開値生成部、121…グループ化部、122…階層化部、200…需要者システム、201…発注情報、300…原料、301…製品