(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】鋳型造型装置
(51)【国際特許分類】
B22C 13/16 20060101AFI20230620BHJP
B22C 5/04 20060101ALI20230620BHJP
B22C 15/02 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
B22C13/16
B22C5/04 D
B22C15/02
(21)【出願番号】P 2020049925
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 貴之
(72)【発明者】
【氏名】青木 知裕
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-192512(JP,A)
【文献】特開2002-239685(JP,A)
【文献】実開昭56-060561(JP,U)
【文献】特開昭56-068552(JP,A)
【文献】実開昭61-138451(JP,U)
【文献】特開昭57-171545(JP,A)
【文献】特開昭52-026316(JP,A)
【文献】実開昭51-119310(JP,U)
【文献】実開昭58-091433(JP,U)
【文献】実公昭49-009382(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡混練物を収納する射出釜と、
前記射出釜の上部に設けられた開口を開閉可能な蓋部材と、
前記射出釜内に空気を供給することにより前記発泡混練物を前記射出釜に設けられた射出口から射出させる空気供給部と、を備え、
前記蓋部材の周面には、流体の供給により膨張して前記射出釜の内周面に密着するシール体が設けられ、
前記空気供給部は、前記シール体への空気の供給および供給の停止を制御する空気供給制御部を備え、
前記シール体は、前記流体の供給が
停止されたとき前記射出釜の内周面から離間
し、
前記射出釜の前記開口への前記蓋部材の装着時、および前記射出釜の前記開口からの前記蓋部材の抜取時には、前記空気供給制御部は、前記シール体に対する前記流体の供給を停止し、
前記蓋部材は、前記装着時および前記抜取時に、前記射出釜の内周面に摺動することなく移動する、鋳型造型装置。
【請求項2】
前記射出釜は、
前記射出口が設けられた下側部と、
前記下側部に対向配置された上側部と、
前記下側部と前記上側部との間に配設された透明材料からなる側方部と、
前記側方部の外側に設けられた、前記下側部と前記上側部とを連結する複数の支柱部と、を有する請求項1に記載の鋳型造型装置。
【請求項3】
前記シール体は、前記射出釜の内周面に向けて凸曲面の断面を有するシール部と、当該シール部の両端に設けられた取付部とを有し、
前記周面には、前記シール部の凸部分側を露出させて当該露出させた部分以外を配置させるとともに、前記取付部に当接して前記取付部が前記射出釜の内周面側へ移動しないように規制する凹部が設けられた請求項1または2に記載の鋳型造型装置。
【請求項4】
前記シール部の両端に設けられた前記取付部の間には、前記取付部間の距離を所定の長さに維持するためのスペーサーが設けられた請求項3に記載の鋳型造型装置。
【請求項5】
前記シール体は、ゴム製であり、
前記スペーサーは、前記シール体よりも硬い材料からなる請求項4に記載の鋳型造型装置。
【請求項6】
発泡混練物を収納する射出釜と、
前記射出釜の上部に設けられた開口を開閉可能な蓋部材と、
前記射出釜内に空気を供給することにより前記発泡混練物を前記射出釜に設けられた射出口から射出させる空気供給部と、を備え、
前記蓋部材の周面には、流体の供給により膨張して前記射出釜の内周面に密着するシール体が設けられ、
前記シール体は、前記流体の供給が解除されたとき前記射出釜の内周面から離間し、
前記射出釜は、
前記射出口が設けられた下側部と、
前記下側部に対向配置された上側部と、
前記下側部と前記上側部との間に配設された透明材料からなる側方部と、
前記側方部の外側に設けられた、前記下側部と前記上側部とを連結する複数の支柱部と、を有する鋳型造型装置。
【請求項7】
発泡混練物を収納する射出釜と、
前記射出釜の上部に設けられた開口を開閉可能な蓋部材と、
前記射出釜内に空気を供給することにより前記発泡混練物を前記射出釜に設けられた射出口から射出させる空気供給部と、を備え、
前記蓋部材の周面には、流体の供給により膨張して前記射出釜の内周面に密着するシール体が設けられ、
前記シール体は、前記流体の供給が解除されたとき前記射出釜の内周面から離間し、
前記シール体は、前記射出釜の内周面に向けて凸曲面の断面を有するシール部と、当該シール部の両端に設けられた取付部とを有し、
前記周面には、前記シール部の凸部分側を露出させて当該露出させた部分以外を配置させるとともに、前記取付部に当接して前記取付部が前記射出釜の内周面側へ移動しないように規制する凹部が設けられ、
前記シール部の両端に設けられた前記取付部の間には、前記取付部間の距離を所定の長さに維持するためのスペーサーが設けられた鋳型造型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡混練物を加熱された金型のキャビティに圧入充填して鋳型を造型する鋳型造型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鋳造後の崩壊性が良いとして、粒子状骨材の粘結剤として水溶性バインダを用い、且つ加熱により水分を蒸発させて水溶性バインダを硬化させ、これにより鋳型を造型することが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、そのような鋳型の材料となる発泡混合物を製造して、当該発泡混合物を金型のキャビティに空気によって射出する鋳型造型装置が開示されている。特許文献1の鋳型造型装置は、底に充填孔が貫通形成された槽と、充填孔を開閉する止栓機構と、槽における開口部の側を密閉状に閉塞する蓋部材とを備えている。更に、鋳型造型装置は、下部に攪拌羽根が設けられた攪拌機構と、発泡混合物を充填孔から金型のキャビティに充填させる場合に圧縮空気を槽の内部に供給する圧縮空気供給機構とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の鋳型造型装置においては、蓋部材を装着して槽を閉塞する際、および、蓋部材を抜取して開放する際に蓋部材の周面に設けられたシール体が槽の内周面上を摺動することになる。このため、シール体に摩耗による劣化が生じ易いという問題があった。シール体に摩耗による劣化が生じ易いことは、例えば、メンテナンス工数の増加に繋がる。
【0006】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてされたものであり、蓋部材の周面に設けられたシール体に摩耗による劣化が生じ難い鋳型造型装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る鋳型造型装置は、発泡混練物を収納する射出釜と、前記射出釜の上部に設けられた開口を開閉可能な蓋部材と、前記射出釜内に空気を供給することにより前記発泡混練物を前記射出釜に設けられた射出口から射出させる空気供給部と、を備え、前記蓋部材の周面には、流体の供給により膨張して前記射出釜の内周面に密着するシール体が設けられ、前記シール体は、前記流体の供給が解除されたとき前記射出釜の内周面から離間する。
【0008】
前記の構成によれば、前記流体の供給を解除してシール体を離間させることによって、蓋部材を装着して射出釜を閉塞する際、および、蓋部材を抜取して開放する際にシール体が射出釜の内周面上を摺動することを回避することができる。これにより、シール体に摩耗による劣化が生じることを防止できる。
【0009】
また、シール体を膨張させることによって射出釜の上部開口を封止する構成となっているため、射出釜と蓋部材との芯出し精度を緩和して適切な密閉が可能である。
【0010】
また、射出釜の摩耗を考慮する必要がなくなるため、射出釜にアクリル等の透明素材の使用が可能となり、混練時および射出時の発泡混練物の挙動や、シール体による封止具合の目視が可能である。
【0011】
また、仮にシール体が蓋部材の装着時および抜取時に射出釜の内周面上を摺動すれば、射出釜に装着する際に射出釜内の圧力の変動することが懸念される。しかしながら、前記の構成によれば、蓋部材を上下動する際にシール体が射出釜の内周面から離間するため、そのような変動が生じず、良好な鋳型造型をおこなうことができる。
【0012】
また、本発明の一態様に係る鋳型造型装置は、前記の構成において、前記射出釜は、前記射出口が設けられた下側部と、前記下側部に対向配置された上側部と、前記下側部と前記上側部との間に配設された透明材料からなる側方部と、前記側方部の外側に設けられた、前記下側部と前記上側部とを連結する複数の支柱部と、を有する構成であってもよい。
【0013】
前記の構成によれば、射出釜の剛性を、下側部、上側部および支柱部によって確保できる。そのため、射出釜の側方部の厚さを内圧に耐えられる程度に比較的薄く実現できる。
【0014】
また、透明材料によって射出釜を構成すれば、金属から射出釜を構成した場合に比べ、部品重量を軽減することができて、メンテナンス作業の安全性が向上するほか、混練前または混練後に投入された各種材料の計量をおこなう際に精度よく計量をおこなうことができる。また、透明材料によって射出釜を構成すれば、造型終了後の清掃作業においても、目視確認が可能となることで作業性が向上し、残留する発泡混練物を無くし、綺麗に清掃することができる。
【0015】
また、本発明の一態様に係る鋳型造型装置は、前記の構成において、前記シール体は、前記射出釜の内周面に向けて凸曲面の断面を有するシール部と、当該シール部の両端に設けられた取付部とを有し、前記周面には、前記シール部の凸部分側を露出させて当該露出させた部分以外を配置させるとともに、前記取付部に当接して前記取付部が前記射出釜の内周面側へ移動しないように規制する凹部が設けられた構成であってもよい。
【0016】
前記の構成によれば、前記蓋部材の前記周面に設けられた凹部から露出したシール部の凸部分が前記流体の供給により変形して射出釜の内周面に密着し、前記流体の供給が解除されると当該凸部分が射出釜の内周面から離間する。このようにシール部が変形しても取付部に凹部が当接しているため、シール体が前記蓋部材から脱落することはなく、良好なシール性を実現できる。
【0017】
また、本発明の一態様に係る鋳型造型装置は、前記の構成において、前記シール部の両端に設けられた前記取付部の間には、前記取付部間の距離を所定の長さに維持するためのスペーサーが設けられた構成であってもよい。
【0018】
前記の構成によれば、前記取付部同士が近接する方向に過度に変形することを防ぐことができる。これにより、前記シール体が前記凹部から脱落することや位置ずれすることを防ぐことができるため、前記シール部に必要な膨らみは確保しつつも、組付け性も向上した前記シール体を実現することができる。
【0019】
また、本発明の一態様に係る鋳型造型装置は、前記の構成において、前記シール体は、ゴム製であり、前記スペーサーは、前記シール体よりも硬い材料からなる構成であってもよい。
【0020】
前記の構成によれば、ゴムによって前記シール体を構成するため、弾性変形しやすく、前記膨張を容易に制御することができる。また、このように弾性変形しやすい材料から前記シール体を構成している場合であっても、前記取付部間にスペーサーを配設していることにより、これら前記取付部の位置ずれを抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、蓋部材の周面が射出釜内において摺動せず、メンテナンス工数を削減させた鋳型造型装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る鋳型造型装置の射出釜周辺の斜視図である。
【
図2】
図1に示す鋳型造型装置の射出釜周辺の断面図である。
【
図3】
図1に示す鋳型造型装置のシール体を示す断面図である。
【
図5】
図1に示す鋳型造型装置の動作の一例について模式的に示す図である。
【
図6】
図1に示す鋳型造型装置の動作の一例について模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態の鋳型造型装置について、詳細に説明する。
【0024】
(1)鋳型造型装置1の全体構成
図1は、本実施形態の鋳型造型装置1の射出釜周辺の構成の斜視図である。また、
図2は、
図1に示す切断線A-A´において鋳型造型装置1を切断した様子を示す矢視断面図である。鋳型造型装置1は、金型のキャビティに材料を圧入充填して鋳型を造型するプロセスにおいて用いることができる。なかでも、粒子状骨材、水溶性バインダ、界面活性剤および水を攪拌して得た発泡混練物を鋳型の材料として用いて、中子を造型するプロセスにおいて好適に用いることができる。
【0025】
鋳型造型装置1は、
図1に示すように、発泡混練物を収納する射出釜2と、射出釜2の上部に設けられた開口を開閉可能な蓋部材60と、射出釜2内に空気を供給することにより発泡混練物を射出釜2の下端部に設けられた射出口20から射出させる射出用空気供給部65b(
図3)とを備えている。更に鋳型造型装置1は、蓋部材60の周面60aに、流体の供給により膨張して射出釜2の内周面に密着するシール体61(例えばインフレーションシール)が設けられ、シール体61は、流体の供給が解除されたとき射出釜2の内周面から離間する構成である。射出用空気供給部65bから供給されるのは、例えば圧縮空気であるが、圧縮されていない空気であってもよい。
【0026】
鋳型造型装置1は、更に
図1に示すように、撹拌機構5と、シール用空気供給部65a(
図2および
図3)と、上下駆動機構3と、連結部4とを含む。また、鋳型造型装置1は、
図2に示すように、射出釜2の射出口20を閉塞する止栓機構7を更に備えている。また、後述する
図5(iii)に示すように、鋳型造型装置1は更に、射出口20から射出された発泡混練物を受ける金型11を備えている。
【0027】
(2)鋳型造型装置1の各構成の詳細
射出釜2は、各種材料(鋳型材料)を混練して発泡混練物を生成するための容器であり、且つ、生成した発泡混練物を射出するまで収納するための容器である。射出釜2は、射出口20が設けられた下側部21と、下側部21に対向配置された上側部22と、下側部21と上側部22との間に配設された透明材料から構成された側方部23と、を有する。側方部23は筒型状であり、下端側の開口が下側部21によって封止されていることにより、下側部21が釜底となって内部に発泡混練物を収容できる。
図1に示すように、射出釜2は、側方部23の外側に、下側部21と上側部22とを連結する支柱部24が複数設けられている。
【0028】
下側部21は、
図2に示すように、側方部23の外径近傍から側方に突出した形状を有した下フランジ25と、下フランジ25の下に射出プレート体26とを有している。下フランジ25には、側方部23の外径よりも僅かに大きい開口径を有する開口部25aが設けられており、当該開口部25aに側方部23の下端が嵌合することによって、側方部23と連結する。射出プレート体26は、下フランジ25の下面に連結しており、上面の一部の領域が、釜内面に向かって露出している。この露出した部分が、射出釜2の釜底の上面を構成する。射出口20は、射出プレート体26に設けられた貫通孔であり、例えば
図1に示すように3つ設けられている。射出口20の数はこれに限定されない。各射出口20には、発泡混練物が漏れ出ないようにする弁構造体が設けられても良い。弁構造体は、例えば、ゴム製の周知の弁構造体でも良い。
【0029】
下側部21は、2枚構造になっており或る程度の厚さを確保することができ、射出釜2の剛性の向上に寄与する。下フランジ25および射出プレート体26は、耐アルカリ性および混練砂剥離性の優れた材料から構成することが好ましく、例えば、ステンレス等の金属、あるいはPTFE等のフッ素樹脂等から構成することができる。これらを金属により構成すればより一層の剛性向上を実現することができる。下フランジ25と射出プレート体26とは同一材料であっても異なる材料であってもよい。
【0030】
上側部22は、
図1および
図2に示すように、側方部23の外径近傍から側方に突出した形状を有した上フランジ27を有する。上フランジ27には、
図2に示すように、側方部23の外径よりも僅かに大きい開口径を有する開口部27aが設けられており、当該開口部27aに側方部23の上端が嵌合することによって、側方部23と連結する。上フランジ27は、ステンレス等の金属、あるいはPTFE等のフッ素樹脂から構成することができる。ただし、金属に限定されるものではない。上フランジ27は、或る程度の厚さを有していることにより、射出釜2の剛性の向上に寄与する。更にこれらを金属により構成すればより一層の剛性向上を実現することができる。
【0031】
上側部22は、更に、上フランジ27の上面に連結されたクランプブッシュ28を有する。クランプブッシュ28は、射出釜2の中心軸を挟んで対向する2箇所に設けられており、その各々には、後述するクランプピン43が挿入される穴28aが設けられている。クランプブッシュ28は、後述するクランプピン43とともに連結部4を構成する。クランプブッシュ28は、上フランジ27と同一材料から構成してもよく、別材料から構成してもよい。
【0032】
支柱部24は、
図1に示すように、下側部21と上側部22に連結されている。支柱部24も、下側部21および上側部22と同様に、金属から構成することが好ましい。これにより、支柱部24も、下側部21および上側部22と併せて、射出釜2の剛性向上に寄与することができる。また、支柱部24は、下側部21と上側部22との離間距離を、所定距離で維持する。また、本実施形態では、支柱部24は、側方部23の外周にそって等間隔に計4本設けられている。なお、支柱部24の設置数は、4本に限定されるものではない。
【0033】
側方部23は、下側部21と上側部22とに固定されており、発泡混練物を収容する釜の側面部分を構成している。側方部23は、透明材料から構成されている。これにより、射出釜2の内部の様子を良好に観察することができる。観察することにより、混練の程度、容量を確認でき、射出釜2の清掃時に除去されるべき付着物の有無および清掃時に当該付着物の残留の有無も確認できる。更に、後述するシール体61によるシールの具合も確認することができる。透明材料としては、透明性を有する熱可塑性樹脂(いわゆるプラスチック)を用いることができ、なかでも、アクリル樹脂、ポリカーボネート、塩化ビニル、ポリスチレン等の硬質プラスチックからなる群から選択されることが好ましい。
【0034】
側方部23は、収容した発泡混練物の重さ、および圧入充填の際の圧力に耐え得る強度を有していればよい。射出釜2の剛性は、下側部21、上側部22および支柱部24によって確保できるため、側方部23の厚さを内圧に耐えられる程度に比較的薄く実現できる。
【0035】
撹拌機構5は、射出釜2に供給された各種材料を混練する。撹拌機構5は、
図2に示すように、撹拌羽根51と、撹拌軸53と、撹拌モータ55とを有している。撹拌軸53は、鉛直方向に配置される。撹拌羽根51は、撹拌軸53の下端に設けられる。撹拌軸53には、撹拌モータ55が連結される。撹拌モータ55の駆動により、撹拌羽根51は回転される。撹拌機構5は、撹拌羽根51により、射出釜2内の各種材料を混練する。射出釜2の内部への各種材料(粒子状骨材、水溶性バインダ、界面活性剤および水)の投入は、例えば図示しない各々の供給機構からおこなわれる。
【0036】
この各種材料としては、例えば、粒子状骨材としての人工砂(例えばエスパール)、水溶性バインダとしての珪酸ナトリウム、界面活性剤としてのアニオン界面活性剤、および水が挙げられる。これらに限定されるものではなく、他の添加物等を含んでもよい。
【0037】
蓋部材60は、射出釜2の上側部22の側の開口の内周面に対向する周面60aを有しており、この周面60aにシール体61が設けられている。
【0038】
シール体61は、蓋部材60の中心部から周面60aに向かう放射方向(径方向)に変形することができる。シール体61を径方向に変形させると、シール体61の先端が射出釜2の内周面に密着して、射出釜2の上部の開口を密閉することができる。換言すれば、シール体61が変形する前は、シール体61と射出釜2の内周面との間に隙間ができている状態である。シール体61の変形は、シール体61に設けられた中空部分に対する、シール用空気供給部65aによる空気の圧送によっておこなわれる。蓋部材60が射出釜2の上部の開口を閉じてシール体61を射出釜2の内周面に密着させれば、射出釜2内が密閉された状態となる。この状態において、射出用空気供給部65bによって射出釜2内に空気を圧送すれば、射出釜2内の発泡混練物が圧縮空気によって押圧されて射出口20から射出される。
【0039】
以下、蓋部材60の周面60aの構成について、
図3を用いて詳述する。
図3は、
図1に示すB-B´断面図であり、蓋部材60の周面60a近傍の拡大断面図である。
【0040】
蓋部材60の周面60aには、蓋部材60の周方向に沿って、シール体61を配置させる凹部60bが設けられている。シール体61は、射出釜2の内周面に向けて凸曲面の断面を有するシール部61aと、当該シール部61aの両端に設けられた取付部61b,61cとを有する。取付部61b、61cは、当該シール部61aの上下方向の両端に設けられている。凹部60bは、シール部61aの凸部分側を露出させて当該露出させた部分以外を配置させるとともに、前記取付部61b,61cに当接して取付部61b,61cが前記射出釜2の内周面側へ移動しないように規制する。換言すると、凹部60bは、シール体61の当該露出させた部分以外を内部に収納するよう配置させる。シール部61aは、断面視において、蓋部材60の径方向(
図3中の矢印方向)に凸となっている円弧型形状を有している。取付部61b,61cは、シール部61aの両端に設けられたフランジであると換言することができる。シール体61は、周面60aの凹部60bに、シール部61aの円弧になっている先端部分が露出するように、当該先端部分以外の部分を配置させる。凹部60bには、取付部61b,61cに対応する鉛直方向に拡径している拡径部60cが設けられており、拡径部60cに取付部61b,61cが隙間を有して嵌まっている。凹部60bの底に当たる位置には、蓋部材60内に設けられた流路62の一端を構成する開口62aが設けられている。流路62の他端には、シール用空気供給部65aが連結しており、当該他端から開口62aに向かって空気が供給されたり当該供給が解除されたりする。開口62aから、当該開口62aと円弧型形状のシール部61aの内側の中空部分に空気が供給されると、シール部61aが先端において膨張し、蓋部材60の径方向に変形するかたちとなる。また、蓋部材60の凹部60bが拡径されてない部分(凹部60bの周面60a側の部分)は、換言すると、上下方向に立ち上がった壁部601a,602aが全周にわたって形成されているともいえる。壁部601a,602aが設けられていることにより、シール体61の取付部61b、61cは、射出釜2の内周面側へ移動しない。
【0041】
シール体61の内側の中空部分への空気の供給が停止されると、シール部61aがもとの状態(膨張前の状態)に戻る。すなわち、拡径していた蓋部材60のシール体61部分が縮径する。換言すると、シール体61は、空気の供給が解除されたとき射出釜の内周面から離間された状態である。
【0042】
シール体61は、射出釜2から発泡混練物を射出する工程において射出釜2を密閉封止するために変形(膨張)する。また、混練時にも変形(膨張)して射出釜2を密閉する。混練時にも密閉する理由は、混練による射出釜2のぐらつきを抑制するためである。後述するように混練時には射出釜2は止栓プレート7bに載った状態であるが、撹拌羽根51が撹拌すると、その振動で射出釜2がぐらつく可能性がある。そこで、上側部においてシール体61を膨張して射出釜2に密着させることでぐらつきを抑制できる。
【0043】
シール体61は、射出時および混練時以外は射出釜2の内周面に接触しない。射出釜2を密閉するために蓋部材60を上方から降ろして周面60aを射出釜2の内周面の所定位置に対向させるまでは、シール体61は内周面に非接触状態である。すなわち、シール体61が射出釜2の内周面に摺動することはない。密閉していた状態から蓋部材60を外すときも、同様にシール体61が射出釜2の内周面上を摺動することはない。
【0044】
このように、シール体61が射出釜2の内周面に対して摺動する構成となっていないため、摺動に伴うシール体61および射出釜2への傷の発生が無く、劣化しにくい鋳型造型装置1を実現している。
【0045】
また、このようなシール体61を有した蓋部材60を用いることにより、蓋部材60を射出釜2の上端側に配置する際に、蓋部材60を高い精度で芯出しする必要がない。これは、蓋部材60がシール体61を膨張させて拡径する構成であるためである。蓋部材60の周面60aと射出釜2の内周面との離間距離が周方向の位置において差があってもシール体61の膨張により相殺でき、射出釜2の開口の全周を適切に封止することができる。
【0046】
シール体61は、弾性変形する材料から構成される。代表的な材料としては、引張強さ、耐摩耗性、耐薬品性に優れたゴムを採用できる。特に、芯出しの容易性の観点からすれば、膨張率が大きく、ゴム硬度が比較的低い(つまり、柔らかい)材料のほうが望ましい。ゴム硬度は、例えばJIS規格のデュロメータ タイプA(ショアA)でA20~A70のものが好ましい。弾性率(ヤング率)としては、硬度1~6MPa程度のものを用いることが好ましい。具体例としては、シール体61は、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、天然ゴム等から選択される一つから構成されることが好ましい。
【0047】
シール体61の取付部61b,61cは、凹部60bの拡径部60c内に配置されている。例えば取付部61b,61cは、拡径部60cに適度な隙間を有して嵌まっている。ここで、
図4は
図3と同じ断面視した状態のシール体61を示している。
図4では、一方の取付部61b(下側)と他方の取付部61c(上側)との間には空隙が設けられている。そのため、
図4に示す態様において、空気供給によりシール体61が膨張したときに、取付部61b、61cの位置がずれてしまう可能性があり、空気供給を停止した後もシール体61が元の状態に戻らない可能性がある。
【0048】
そこで、本実施形態では、
図4において空隙であった箇所に、
図3に示すようにスペーサー63を配設する。スペーサー63は、蓋部材60の円周方向に沿ったリング状の構造体である。スペーサー63は、空気供給用の通気孔が設けられている。なお、スペーサー63は、例えば、多孔質体から構成してもよい。スペーサー63によって、シール体61が変形する際の取付部61b,61cが過度に変形して凹部60bから脱落してしまうことを防止できる。また、取付部61b,61cの位置がずれ、空気の供給が停止したときに、シール体61が元の状態に戻らないことを防止できる。以上のことから、スペーサー63を配設することにより、シールに必要な膨らみは確保しつつも、蓋部材60への組付け性も向上したシール体61を実現することができる。以上のようなスペーサー63は、シール体61よりも硬い材料から構成する。例えば、アクリル樹脂、ABS樹脂、スチロール樹脂、ジュラコン(登録商標)樹脂等を採用することができる。なお、
図4の態様も本発明の一形態の範囲に含まれる。なお、スペーサー63は、取り付けおよび取り外しの際に、リング状の外側に向けて変形可能な材料であってもよい。
【0049】
蓋部材60は、上下2つの分割体601,602を用いて構成できる。上側の分割体601と下側の分割体602との対向面にそれぞれ窪みを設け、これらを合わせると凹部60bを構成する。蓋部材60の清掃等のメンテナンスの際には、蓋部材60の2つの分割体601,602の間に隙間をあけることで、シール体61およびスペーサー63を容易に取り外すことができる。最初にシール体61を蓋部材60に組み付けるのも容易にできる。上側の分割体601は、蓋の剛性を担保するべく、鉄等の金属から構成することが好ましい。下側の分割体602は、射出釜2の内部に向いている面を有しており、清掃する必要が生じることを考慮して、軽量で、耐摩耗性を有する材料から構成することが好ましい。下側の分割体602は、一例として、フッ素樹脂から構成することができるが、これに限定されるものではない。
【0050】
蓋部材60には、撹拌羽根51を下端に備えた撹拌軸53が挿通する軸受68を有した撹拌軸挿通穴64(
図2)設けられている。蓋部材60の上下動と、撹拌軸53および撹拌羽根51の上下動とは、上下駆動機構3(
図1)によって一体的に駆動、制御されている。
【0051】
シール用空気供給部65aは、シール体61の先述の中空部分に空気を供給する。具体的には、シール用空気供給部65aは、蓋部材60内に設けられた流路62の他端に接続されており、射出釜2内の発泡混練物を射出口20から射出する工程において、シール体61を変形させるべく、先述の中空部分に空気を供給する。これにより、射出釜2の上部の開口が閉塞されて、射出釜2内が密閉された状態となる。
【0052】
シール体61への空気の供給に関し、シール用空気供給部65aは、蓋部材60に、不図示のポートおよび圧力ゲージを備え、当該ポートには、ホース、流量計および三方弁を介して圧縮空気供給装置が接続されている。この圧縮空気供給装置は、流量計、三方弁、ホースおよびポートを介して、シール体61への圧縮空気の供給が可能とされている。圧力ゲージは、シール体61の中空部分の圧力を測定する。
【0053】
また、シール用空気供給部65aは、圧力ゲージ、流量計、三方弁および圧縮空気供給装置にそれぞれ接続された空気供給制御部を備えている。空気供給制御部は、圧縮空気供給装置および三方弁の各作動を制御して、シール体61への空気の供給および供給の停止を行う。
【0054】
射出用空気供給部65bは、射出釜2内に空気を供給する。具体的には、射出用空気供給部65bは、
図3に示すように蓋部材60に設けられた導入管67に連結しており、導入管67を介して、射出釜2内に空気を供給することができる。射出用空気供給部65bは、後述する止栓機構7が射出釜2の射出口20を開放させた状態で、射出釜2内に空気を供給する。このとき、シール用空気供給部65aは、シール体61を膨らませて射出釜2内を密閉している。この状態において射出用空気供給部65bが射出釜2内に空気を供給することにより、射出釜2内の発泡混練物が射出口20から射出される。シール用空気供給部65aと、射出用空気供給部65bとは、空気を供給するタイミングが異なる。なお、シール用空気供給部65aは、射出用空気供給部65bよりも、供給する空気圧が高い。
【0055】
射出用空気供給部65bは、蓋部材60に、不図示のポートおよび圧力ゲージを備え、当該ポートには、ホース、流量計および三方弁を介して圧縮空気供給装置が接続されている。この圧縮空気供給装置は、流量計、三方弁、ホースおよびポートを介して、射出釜2内への圧縮空気の供給が可能とされている。圧力ゲージは、射出釜2内の圧力を測定する。
【0056】
また、射出用空気供給部65bは、圧力ゲージ、流量計、三方弁および圧縮空気供給装置にそれぞれ接続された空気供給制御部を備えている。空気供給制御部は、圧縮空気供給装置および三方弁の各作動を制御する。
【0057】
上下駆動機構3は、蓋部材60を、射出釜2の深さ方向に沿って上下動させる機構である。上下駆動機構3は、射出釜2を、必要に応じて蓋部材60と一体的に上下動させることができる。なお、上下駆動機構3は、蓋部材60と撹拌機構5とを常に一体的に上下動させる。
【0058】
上下駆動機構3は、装置上下方向を軸方向として配置されたシリンダ30aおよびロッド30bと、上下駆動用の電動サーボモータ(不図示)とを有している。ロッド30bの下端部は、蓋部材60、撹拌機構5と接続されている。これにより、電動サーボモータが作動することにより、蓋部材60と撹拌機構5とが一体的に射出釜2の底部に接近する方向およびその反対方向、言い換えれば装置上下方向、に移動する構成となっている。電動サーボモータは、上下動制御部(不図示)に接続されている。
【0059】
連結部4は、上下駆動機構3、蓋部材60および撹拌機構5と、射出釜2とを連結させたり、当該連結を解除したりする釜クランプ機構40を有する。連結は、釜クランプ機構40のクランプピン43が、射出釜2の上側部22の上フランジ27に連結されたクランプブッシュ28の穴28aに挿入されることによって実現される。したがって、釜クランプ機構40およびクランプブッシュ28によって連結部4が構成されている。連結部4の上部は、上下駆動機構3のロッド30bの下端部が連結固定されており、連結部4の下部には、板状部材4aが設けられており、板状部材4aに蓋部材60が連結固定されている。板状部材4aは、
図1および
図2に示すように、撹拌機構5の撹拌軸53を挟んで対向する2箇所に設けられ、それぞれに釜クランプ機構40が連結されている。
【0060】
釜クランプ機構40は、
図2に示すように、ロッド41を有するクランプシリンダ44と、クランプ基台42と、クランプピン43とを含む。釜クランプ機構40は、蓋部材60に固定されている板状部材4aに連結しており、ロッド41(
図2)が板状部材4aに軸支されている。ロッド41の先端には、クランプ基台42が連結しており、クランプ基台42には、板状部材4aに軸支されているクランプピン43が設けられている。クランプ基台42は、2つあり、各々に2本のクランプピン43が平行に並んで設けられている。
【0061】
各クランプピン43の突出端は、先述の射出釜2の上側部22の上フランジ27に連結されたクランプブッシュ28の穴28aに挿入される。クランプブッシュ28は、釜クランプ機構40に対応して上フランジ27の周方向に沿って2箇所設けられており、各クランプブッシュ28に、2つの穴28aが設けられている。
【0062】
クランプシリンダ44は、ロッド41を介して、クランプ基台42を移動させることができる。これにより、クランプ基台42から突出しているクランプピン43が、突出方向に沿って前進または後退し、これに伴って、穴28aへの挿入と当該挿入の解除(穴28aからの抜去)とを実現する。クランプシリンダ44は、クランプ制御部(不図示)により、クランプピン43を穴28aに挿入させたり、挿入を解除したりする。クランプピン43が穴28aに挿入することにより、射出釜2と蓋部材60とが連結した状態となる。これにより、上下駆動機構3によって蓋部材60が上下動するとともに、射出釜2も上下動することになる。
【0063】
止栓機構7は、
図2に示すように、射出釜2の下側部21の射出口20の閉塞用として止め栓7aを有している。止め栓7aは、水平配置された止栓プレート7bから上方側に突出している。また、止栓機構7は、図示しない機構によって
図2の紙面左右方向(水平方向)に移動するようになっている。
【0064】
金型11は、
図5(iii)に示すように、鋳型造型装置1の下部側に設けられ、撹拌機構5で混練された発泡混練物を所定の形状に成形して鋳型を造型するための金型である。金型11には、射出釜2の射出口20に隣接配置される被充填孔11aが貫通形成されている。また、鋳型造型装置1は、金型11を開くことで金型11から鋳型を取り出すための鋳型押出機構(不図示)も備えている。
【0065】
(3)鋳型造型装置1の動作
以下に、鋳型造型装置1の動作を説明する。内部に発泡混練物が収容されている状態から説明する。
図5および
図6では、発泡混練物の図示を省略している。
【0066】
まず、
図5(i)は、発泡混練物が収容されており、蓋部材60が射出釜2の上部の開口を閉じている状態を示す。クランプピン43は、クランプブッシュ28の穴28aに挿入されており、蓋部材60と射出釜2とが連結している。蓋部材60に設けられたシール体61は、射出釜2の上部の開口を密閉していない。また、止め栓7aが射出口20を閉塞している。
【0067】
次に、射出口20を閉塞していた止め栓7aを外す。
図5(i)から連結した状態の蓋部材60と射出釜2とが、上昇することによって、射出口20から止め栓7aを抜く。この状態を、
図5(ii)に示す。
図5(ii)の状態では、止栓機構7を水平方向に移動させて射出釜2の直下から退避させることができる。
【0068】
次に、射出口20が開放した状態の射出釜2から発泡混練物を射出する射出工程を行う。
図5(ii)の状態から止め栓7aを水平方向に移動させ、射出釜2を金型11の上に位置するように下降させ、射出釜2の射出口20を金型11の被充填孔11aに隣接配置させる。この状態を、
図5(iii)に示す。射出工程では、射出用空気供給部65bから射出釜2内に空気が供給される。射出釜2内の発泡混練物は、射出口20を介して、金型11のキャビティに充填される。金型11は、図示しない加熱手段によって加熱されており、キャビティに充填された発泡混練物は加熱硬化する。
【0069】
尚、射出する前に、シール体61が射出釜2の内周面に適切に密着しているかどうか、すなわち、射出釜2の開口を密閉できているかどうかを判定する。具体的には、シール用空気供給部65aからシール体61に供給される空気の圧力を計測し、計測値が閾値を超えているか否かにより判定する。計測値が閾値以上であれば、シール体61が射出釜2の内周面に適切に密着していることを意味する。一方で、計測値が閾値未満である場合は、シール体61から空気漏れなどが生じている可能性を意味する。供給の開始から所定時間がたったときまで閾値未満の状態が続く場合はエラー表示される。この場合、シール体61を点検、交換するなどのメンテナンスが行われる。
【0070】
射出工程が終了すると、
図5(iii)の状態から、射出釜2と蓋部材60と撹拌機構5とが一体的に天頂方向に向かって再び止栓走行位置まで引き上げられる。そして、止栓機構7が射出釜2の直下に移動して
図5(ii)に示すようになり、射出釜2と蓋部材60と撹拌機構5とを下降させ、止栓7aを射出口20に挿入し、
図5(i)に示すようになる。
図5(i)に示す状態となった時点で、クランプピン43をクランプブッシュ28の穴28aから外し、射出釜2と、蓋部材60および撹拌機構5との連結を解除する。金型11は、この間に、射出釜2の直下から移動させる。これにより、射出にかかる一連の動作が終了する。なお、圧入工程において、金型11が加熱されて発泡混練物を加熱硬化している間に、射出釜2と蓋部材60と撹拌機構5とが一体的に天頂方向に向かって止栓走行位置まで引き上げられてもよい。
【0071】
次に、射出釜2を止栓プレート7bに載せたまま、蓋部材60および撹拌機構5が、材料投入位置まで上昇する。この状態を、
図5(iv)に示す。この状態において、射出釜2内に、粒子状骨材、水溶性バインダ、界面活性剤および水を投入する材料投入工程を行う。投入は図示しない材料供給部から、射出釜2に設けた投入口あるいは上部の開口を介しておこなわれる。材料投入後に、材料の投入量を管理するべく、材料が投入された射出釜2の重量を計測する。計測は、止栓機構7に搭載された計量装置でおこなうことが可能である。この段階では、蓋部材60も撹拌羽根51も射出釜2に接触していないため、材料が投入された射出釜2の重量を正確に計測することができる。
【0072】
次に、射出釜2に向かって蓋部材60および撹拌機構5を下降させて、混練工程を行う。混練工程では、射出釜2に対する蓋部材60および撹拌機構5の位置は、クランプピン43がクランプブッシュ28の穴28aの高さよりも下にある。この状態を、
図5(v)に示す。換言すると、
図5(v)の混練状態では、
図5(i)の原位置やクランプ動作中の状態よりも撹拌羽根51が下方側に位置、すなわち釜底に近い位置にある。
【0073】
次に、混練が完了すると、クランプピン43がクランプブッシュ28の穴28aの高さと等しくなる位置まで蓋部材60および撹拌機構5を上昇させて、クランプピン43をクランプブッシュ28の穴28aに挿入する。この状態が、
図5(i)に示す状態である。
【0074】
上述した動作は、射出、材料投入、計量、混練の順で動作し、このサイクルを繰り返すことができる。
【0075】
尚、メンテナンスを行う場合には、
図5(i)に示す状態でサイクルを停止し、クランプピン43をクランプブッシュ28の穴28aから外して、射出釜2を蓋部材60および撹拌機構5から切り離す。これにより、射出釜2は、止栓機構7の止栓プレート7bに載置された状態となる。この状態において、蓋部材60および撹拌機構5を上昇させる。そして、撹拌軸53と撹拌羽根51とが接続している接続部分52が、
図6(vi)に示すように射出釜2の上端部の上まで上がり、接続部分52の周辺に作業スペースが確保できた時点で、上昇を止める。
【0076】
次に、接続部分52を操作して、
図6(vii)に示すように、撹拌軸53から撹拌羽根51を外し、撹拌羽根51のみを射出釜2内に収容させる。撹拌羽根51を収容した射出釜2は、止栓プレート7bに載った状態であるため、そのまま止栓プレート7bとともに水平方向に移動させることができる。連結部4の直下から外れた移動後の位置にて、射出釜2および撹拌羽根51を洗浄する等のメンテナンスを実施することができる。上述のように射出釜2が蓋部材60および撹拌機構5から切り離す構成とされているため、この鋳型造型装置1は、メンテナンス作業を格段に向上させることができる。また、上述のように撹拌羽根51を外す構成とすれば、撹拌羽根51の下端部を射出釜2の上端部よりも上に引き上げる必要がなく、撹拌機構5の上下動域を短く設定することができる。また、上下駆動機構3を小型化させることができる。
【0077】
(4)本実施形態の作用効果
本実施形態の鋳型造型装置1によれば、シール体61が設けられた周面60aを有する蓋部材60が具備されている。射出釜の上部の開口を密閉させたい場合に、シール体61を変形(膨張)させて、当該密閉を実現することができる。換言すれば、密閉が必要でない場合には、当該変形を起こさないようにして射出釜の内周面と、シール体61との間に間隙を設ける状態とすることが可能である。これにより、蓋部材60を上下動する際に、シール体61が射出釜の内周面と摺動しない。そのため、射出釜2および蓋部材60の双方の摺動摩擦による劣化を回避し、シール体61の使用可能期間が長くなる。また、消耗品およびメンテナンス工数を削減できる。
【0078】
また、シール体61を膨らませて封止をおこなうため、射出釜2と蓋部材60との芯出し精度が緩くて良い。換言すると芯出し精度を緩和しても適切な密閉が可能となる。
【0079】
また、射出釜2の摩耗を考慮する必要がなくなるため、アクリル等の透明素材の使用が可能となり、混練時および射出時の発泡混練物の挙動や、シール体61による封止具合の目視が可能である。支柱部24が剛性を高めるので透明素材を用いても強度を保つことができ、すなわち、透明素材の厚みも比較的薄くできる。また、透明材料を射出釜2の側方部23に用いることにより、金属に比べて重量を減らすことができる。そのため、メンテナンス作業の安全性が向上するほか、混練前あるいは混練後に投入された各種材料の計量をおこなう際に精度よく計量をおこなうことができる。また、透明材料を射出釜2の側方部23に用いることにより、造型終了後の清掃作業においても、目視確認が可能となることで作業性が向上する。
【0080】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
1 鋳型造型装置
2 射出釜
5 撹拌機構
20 射出口
21 下側部
22 上側部
23 側方部
24 支柱部
60 蓋部材
60a 周面
60b 凹部
61 シール体
61a シール部
61b,61c 取付部
63 スペーサー
65a シール用空気供給部
65b 射出用空気供給部