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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】頭部保護エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/232 20110101AFI20230620BHJP
   B60R 21/213 20110101ALI20230620BHJP
   B60R 21/2338 20110101ALI20230620BHJP
【FI】
B60R21/232
B60R21/213
B60R21/2338
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020058917
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021154942
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】林 信二
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-071856(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0132624(US,A1)
【文献】米国特許第06464250(US,B1)
【文献】特開2001-106014(JP,A)
【文献】特開2016-084125(JP,A)
【文献】特開2018-127139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車内側の窓の上縁側に収納されたエアバッグが、
膨張用ガスの流入時に、前記窓の車内側を覆うように展開膨張するバッグ本体と、
膨張完了時の前記バッグ本体に、前後方向に沿うテンションを発生させるように、上側端部を前記窓の上縁側における窓枠の上枠に取り付け、下側端部を、前記窓の横縁側における前記窓枠の横枠に取り付けて、前記上側端部と前記下側端部との間の部位を前記バッグ本体に連結させるストラップと、
を備え、
前記ストラップが、前記バッグ本体の前記窓の上縁側への収納時、前記上枠側から前記横枠側に収納され、前記バッグ本体の膨張に伴い、前記上側端部と前記下側端部との間の部位を前記窓の中央側に繰り出させて、前記バッグ本体に、前後方向に沿うテンションを発生させる構成の頭部保護エアバッグ装置であって、
前記バッグ本体が、
膨張完了時における前記ストラップの前記上側端部の前記上枠への取付位置の下方付近で、かつ、前記ストラップの前記下側端部の前記横枠への取付位置の側方付近に、非膨張部位を配設させるともに、該非膨張部位に、前記ストラップを挿通させる車内外方向に貫通する挿通孔、を配設させ、
前記挿通孔から前記下側端部までの部位に、膨張部位を、配設させ、
前記ストラップが、
前記上側端部と前記下側端部との間の部位に、前記バッグ本体の前記挿通孔を挿通する挿通部、を配設させて、
前記上側端部から前記挿通部までを、膨張完了状態の前記バッグ本体の車外側に配置される車外側部位とし、前記挿通部から前記下側端部までを、膨張完了状態の前記バッグ本体の車内側に配置される車内側部位として、
前記車内側部位が、前記バッグ本体の膨張完了時、前記膨張部位により、車内側に押圧されて、前記ストラップに前記テンションを発生させるように、構成されており、
前記バッグ本体が、膨張完了時の下縁側から前記挿通孔の配置領域までを下縁側を上縁側に接近させるように巻くロール折りにより折り畳まれるロール折り部とし、前記挿通孔の配置領域の上方側を上下方向に折り重ねる蛇腹折り部として、前記窓の上縁側に折り畳まれて収納されていることを特徴とする頭部保護エアバッグ装置。
【請求項2】
前記ストラップが、前記非膨張部位の前記挿通孔と前記膨張部位とを対応させて、前記バッグ本体の前後両側に、配設されていることを特徴とする請求項1に記載の頭部保護エアバッグ装置。
【請求項3】
前記バッグ本体が、膨張完了時、前記車内側部位を車内側に押圧する膨張部位を含めて、前記窓枠の全周に沿うように、環状に膨張部位を配設させる構成とするとともに、下縁側の下縁側膨張部位を、前記窓枠の下枠の車内側を覆って、前記下枠に支持されるように、配設させていることを特徴とする請求項1又は2に記載の頭部保護エアバッグ装置。
【請求項4】
前記バッグ本体が、上枠、下枠、及び、前記上枠と前記下枠とを連結する前後の横枠、を有した前記窓枠に囲まれた略四角形の前記窓の車内側を覆うように、配設されていることを特徴とする請求項に記載の頭部保護エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車内側の窓の上縁側に収納されたエアバッグが、乗員の頭部を保護可能に、膨張用ガスを流入させて、窓の車内側を覆うように展開膨張する構成の頭部保護エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、頭部保護エアバッグ装置としては、車両の車内側の窓の上縁側に収納されたエアバッグが、膨張用ガスの流入時に、窓の車内側を覆うように展開膨張するバッグ本体と、膨張完了時のバッグ本体に、乗員の室内側への拘束性能を向上させるために前後方向に沿うテンションを発生させるように、バッグ本体に連結されるストラップと、を備えて構成されるものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。ストラップは、上側端部を窓の上縁側における窓枠の上枠に取り付け、下側端部を、窓の横縁側における窓枠の横枠に取り付けて、上側端部と下側端部との間の部位(中間部位)をバッグ本体に連結させるストラップと、を備えていた。そして、ストラップが、バッグ本体の窓の上縁側への収納時、上枠側から横枠側に収納され、バッグ本体の膨張に伴ない、中間部位を窓の中央側に繰り出させて、バッグ本体に、前後方向に沿うテンションを発生させていた。ちなみに、特許文献1に記載のストラップは、上側端部からバッグ本体の上横セルの車内側を覆い、そして、バッグ本体の車内側から車外側に貫通し、上下方向の中間位置の中横セルの車外側を覆い、そして、バッグ本体の車外側から車内側に貫通し、下横セルの車内側を覆い、再度、バッグ本体の車内側から車外側に貫通して、その貫通部位であるストラップの中間部位から下端側部を、バッグ本体の前端から前方に延ばして、フロントピラー部に連結させており、幾重にも、バッグ本体を貫通することから、複数の横セル(上横セル、中横セル、及び、下横セル)の膨張によって、実質的なストラップの長さ寸法を短くでき、ストラップの中間部位から前方に延びる下側端部までの部位で、バッグ本体を前方側に引っ張り、バッグ本体にテンションを生じさせていた。また、特許文献2では、バッグ本体が、展開膨張した上下方向の中間部位の車内側に、剛性を有した金属等からなるリング(摺動部材)を配設させており、ストラップは、上側端部から下側端部までを、バッグ本体の車外側に配置させて、中間部位をリングに潜らせるように、構成されており、バッグ本体の展開膨張完了時、リングが窓の中央付近に配設されて、ストラップを、L字状に引っ張り、逆に、ストラップを連結させたリングを、ストラップにより、間接的に引っ張って、バッグ本体にテンションを発生させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-355261号公報(図1~8参照)
【文献】米国特許出願公開第2010/0013203号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の特許文献1に記載のエアバッグでは、ストラップが、上側端部から中間部位までにおいて、幾重にも、バッグ本体を貫通することから、ストラップの摩擦抵抗を考慮すれば、バッグ本体の展開を迅速に行う点に、課題があった。また、特許文献2に記載のエアバッグでは、バッグ本体の展開時、ストラップがリング内を滑ることから、バッグ本体が円滑に展開できるものの、バッグ本体に、別体のリングを設ける必要が生じて、部品点数が多くなり、また、ストラップが、単に、バッグ本体の車外側に配設されているだけで、ストラップの実質的な長さ寸法を、特許文献1のように、セルの膨張を利用して短くする構成でないことから、バッグ本体に十分なテンションを発生させる点に、課題があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、別部品を利用せずに、バッグ本体を迅速に展開でき、かつ、バッグ本体に十分なテンションを発生させることができる頭部保護エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、車両の車内側の窓の上縁側に収納されたエアバッグが、
膨張用ガスの流入時に、前記窓の車内側を覆うように展開膨張するバッグ本体と、
膨張完了時の前記バッグ本体に、前後方向に沿うテンションを発生させるように、上側端部を前記窓の上縁側における窓枠の上枠に取り付け、下側端部を、前記窓の横縁側における前記窓枠の横枠に取り付けて、前記上側端部と前記下側端部との間の部位を前記バッグ本体に連結させるストラップと、
を備え、
前記ストラップが、前記バッグ本体の前記窓の上縁側への収納時、前記上枠側から前記横枠側に収納され、前記バッグ本体の膨張に伴ない、前記上側端部と前記下側端部との間の部位を前記窓の中央側に繰り出させて、前記バッグ本体に、前後方向に沿うテンションを発生させる構成の頭部保護エアバッグ装置であって、
前記バッグ本体が、
膨張完了時における前記ストラップの前記上側端部の前記上枠への取付位置の下方付近で、かつ、前記ストラップの前記下側端部の前記横枠への取付位置の側方付近に、非膨張部位を配設させるともに、該非膨張部位に、前記ストラップを挿通させる車内外方向に貫通する挿通孔、を配設させ、
前記挿通孔から前記下側端部までの部位に、膨張部位を、配設させ、
前記ストラップが、
前記上側端部と前記下側端部との間の部位に、前記バッグ本体の前記挿通孔を挿通する挿通部、を配設させて、
前記上側端部から前記挿通部までを、膨張完了状態の前記バッグ本体の車外側に配置される車外側部位とし、前記挿通部から前記下側端部までを、膨張完了状態の前記バッグ本体の車内側に配置される車内側部位として、
前記車内側部位が、前記バッグ本体の膨張完了時、前記膨張部位により、車内側に押圧されて、前記ストラップに前記テンションを発生させるように、構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、バッグ本体が展開膨張して、挿通孔が窓の中央側に繰り出され、そのバッグ本体の展開に伴なって、ストラップも、窓枠の上枠から横枠にかけて収納されていた状態から、挿通孔の周縁に引っ張られて、挿通部付近を、窓の中央側に繰り出すこととなる。そして、バッグ本体が膨張して、膨張部位を膨らませれば、ストラップにおける挿通部から下側端部までの車内側部位が、その膨張部位により、車内側に押圧されて、ストラップの挿通部から下側端部までの車内側部位の実質的な前後方向の長さ寸法が短くなり、挿通孔周縁から下側端部までのバッグ本体の部位を、横枠側に押えつつ、下側端部側に引っ張ることから、バッグ本体に前後方向に沿う十分なテンションを発生させることとなる。また、バッグ本体の収納された窓の上縁側からの展開時、ストラップは、上側端部から挿通部までを略上下方向に配置され、そして、バッグ本体の車外側に配置させる構成であって、リング等の別部品を設けること無く、バッグ本体との摩擦抵抗を極力抑えることができて、バッグ本体の展開を抑制させるような作用を奏し難い。
【0008】
したがって、本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、別部品を利用せずに、バッグ本体を迅速に展開でき、かつ、バッグ本体に十分なテンションを発生させることができる。
【0009】
そして、本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、前記ストラップが、前記非膨張部位の前記挿通孔と前記膨張部位とを対応させて、前記バッグ本体の前後両側に、配設されていることが望ましい。
【0010】
このような構成では、バッグ本体にテンションを発生させるストラップが、バッグ本体の前後に配設されることとなって、一層、十分なテンションをバッグ本体に発生させることができる。
【0011】
また、本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、前記バッグ本体が、
膨張完了時の下縁側から前記挿通孔の配置領域までを、
下縁側を上縁側に接近させるように巻くロール折りにより折り畳まれるロール折り部、若しくは、上下方向に折り重ねる蛇腹折り部、とし、
前記挿通孔の配置領域の上方側を、上下方向に折り重ねる蛇腹折り部として、
前記窓の上縁側に、折り畳まれて収納されていることが望ましい。
【0012】
このような構成では、ストラップの上側端部から挿通部までの車外側部位を、蛇腹折り部の車外側に配置させ、挿通部から横方向に延びる下側端部までの車内側部位を、横方向に引き出しておけば、ストラップを、バッグ本体の折畳部位に折り込むこと無く、その略全長分を、窓枠の上枠から横枠に沿わせて、収納できる。そのため、ストラップは、バッグ本体の収納時に収納できる窓枠の上枠側の取付位置から横枠の取付位置までの長さ寸法分として、最も短く設定しておくことができて、その後のバッグ本体の展開時、ストラップを設定した短い状態で維持でき、膨張部位の車内側への押圧による実質的な長さ寸法を短くする挙動により、ストラップにテンションが発生して、的確に、バッグ本体に前後方向に沿うテンションを発生させることができる。また、折り畳まれたバッグ本体は、挿通孔より下方側を、ロール折りで折り畳む場合、例えば、ロール折りを外ロール折りとしていれば、展開時、バッグ本体は、窓に沿うように展開して、乗員が窓に接近していても、乗員より窓側で展開できて、窓と乗員との間に円滑にバッグ本体の下縁側を配置させることができる。また、ロール折りを内ロール折りとしていれば、窓の車内側付近の下部側に突起物がある場合、展開時のバッグ本体は、窓から離れて車内側に展開し易くなることから、突起物と干渉せずに、突起物の車内側で、円滑に、展開することができる。さらに、折り畳まれたバッグ本体が、挿通孔より下方側を、蛇腹折りとしていれば、展開時、迅速に展開することがができ、大きな窓の車内側を覆う場合、好適となる。
【0013】
そしてまた、本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、前記バッグ本体が、膨張完了時、前記車内側部位を車内側に押圧する膨張部位を含めて、前記窓枠の全周に沿うように、環状に膨張部位を配設させる構成とするとともに、下縁側の下縁側膨張部位を、前記窓枠の下枠の車内側を覆って、前記下枠に支持されるように、配設させていることが望ましい。
【0014】
このような構成では、バッグ本体が膨張を完了させれば、下縁側膨張部位が、窓枠の下枠の車内側に支持されて、窓の車外側への飛び出しが抑制されることから、乗員がバッグ本体の下縁側に当たっても、車室内に拘束することができる。
【0015】
この場合、本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、前記バッグ本体が、上枠、下枠、及び、前記上枠と前記下枠とを連結する前後の横枠、を有した前記窓枠に囲まれた略四角形の前記窓の車内側を覆うように、配設されていてもよい。
【0016】
すなわち、このような構成では、バッグ本体が、大型車両(例えば、大型バス)の運転席側方のような大きな略四角形の窓を覆う構成としていても、膨張完了時、前後方向のテンションを発生させ、かつ、運転者の車外放出を抑制できて、大型バスの運転手を好適に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る一実施形態の頭部保護エアバッグ装置の車両搭載状態の車内側から見た概略正面図である。
図2】実施形態の頭部保護エアバッグ装置のエアバッグを平らに展開した状態の正面図である。
図3】実施形態のバッグ本体を単体で膨張させた状態の断面図であり、図2のIII-III部位に対応する。
図4】実施形態のバッグ本体を単体で膨張させた状態の断面図であり、図2のIV-IV部位に対応する。
図5】実施形態のエアバッグの折畳状態を説明する図である。
図6】実施形態の頭部保護エアバッグ装置が作動した状態を示す車内側から見た概略正面図である。
図7】実施形態の作動時の概略断面図であり、図6のVII-VII部位に対応する。
図8】実施形態の作動時の概略断面図であり、図6のVIII-VIII部位に対応する。
図9】実施形態のエアバッグの変形例の折畳状態を説明する図である。
図10】実施形態の変形例のエアバッグを平らに展開した状態の正面図である。
図11】実施形態の他の変形例のエアバッグを平らに展開した状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Sは、図1に示すように、エアバッグ20と、膨張用ガスG(図6参照)を吐出するインフレーター16と、エアバッグカバー11と、取付ブラケット13,17と、を備えて構成されている。エアバッグ20は、車両Vの車内側I(図7,8参照)における窓Wの上縁側において、フロントピラー部FPの後縁側から中間ピラー部CPの前縁側までの範囲に、折り畳まれて収納されている。
【0019】
なお、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Sが搭載される車両Vは、大型バスであり、運転席側方において、大きな面積の略四角形の窓Wが配設されている。
【0020】
頭部保護エアバッグ装置Sのインフレーター16は、図1に示すように、略円柱状のシリンダタイプとして、エアバッグ20のバッグ本体21における膨張用ガスGを流入させるための接続口部23に挿入され、バッグ本体21と連結されている。このインフレーター16は、取付ブラケット17により保持され、取付ブラケット17がボルト18止めされることにより、中間ピラー部CPの上方付近におけるルーフサイドレール部RRのインナパネル2に対し、ルーフヘッドライニング5の下縁5aに覆われて、取付固定されている。
【0021】
なお、インナパネル2は、車両Vのボディ(車体)1側の部材であり、窓Wの周縁の窓枠3を構成する部位となり、実施形態の場合、窓枠3は、窓Wの上縁側におけるルーフヘッドライニング5側の上枠3a、窓Wの下縁側におけるドアトリムDT側の下枠3b、窓Wの横前縁側のフロントピラー部FP側の横枠3c、及び、窓Wの横後縁側の中間ピラー部CP側の横枠3d、から構成されて、略四角形からなる窓Wの周縁に、略四角環状として、配設されている。
【0022】
また、インフレーター16は、車両Vの側面衝突を検知した所定の制御装置により、作動されるものであり、その出力は、エアバッグ20(詳しくはバッグ本体21)の容量に対応し、バッグ本体21の後述する膨張部位24が車両Vの側面衝突時からロールオーバ時にわたって、所定の内圧を維持できるように、設定されている。
【0023】
各取付ブラケット13は、取付ボルト14によって、エアバッグ20の後述する各取付片部60,61,62をインナパネル2に取付固定している。なお、各取付ボルト14は、インナパネル2におけるナット等を設けたねじ孔に、締結されている。
【0024】
エアバッグカバー11は、図1に示すように、フロントピラー部FPに配置されるフロントピラーガーニッシュ4の後縁4a側と、ルーフサイドレール部RRに配置されるルーフヘッドライニング5の下縁5a側と、中間ピラー部CPに配置される中間ピラーガーニッシュ7の前縁7a、から構成されている。
【0025】
エアバッグ20は、膨張用ガスGの流入時に、窓Wの車内側を覆うように展開膨張するバッグ本体21と、バッグ本体21に連結されて、バッグ本体21の展開膨張時に前後方向に沿うテンションを発生させるストラップ70(F,B)と、を備えて構成されている。
【0026】
バッグ本体21は、図1~5に示すように、インフレーター16からの膨張用ガスGを流入させて、折り畳み状態から展開して、窓Wの車内側を覆うように展開膨張し、膨張用ガスGを流入させて対向する車内側壁部22aと車外側壁部22bとを離すように膨張するガス流入部22と、車内側壁部22aと車外側壁部22bとを結合させたような状態として膨張用ガスGを流入させない非膨張部としての非流入部45と、を備えて、ポリアミドやポリエステル等の糸から袋織りして製造されている。
【0027】
ガス流入部22は、インフレーター16と接続される接続口部23と、接続口部23と連通される膨張部位24と、を備えて構成されている。
【0028】
膨張部位24は、バッグ本体21の外周縁に配置される略四角環状の周縁膨張部25と、周縁膨張部25に囲まれたバッグ本体21の中央側に配置される中央側膨張部35と、を備えて構成されている。周縁膨張部25は、バッグ本体21の展開膨張完了時に、窓枠3の上枠3aの車内側Iに配設される上縁側膨張部26と、前横枠3cの車内側Iに配設される前縁側膨張部27、下枠3bの車内側Iに配設される下縁側膨張部28、及び、後横枠3dの車内側Iに配設される後縁側膨張部29、を備えて構成されている(図6~8参照)。上縁側膨張部26の前端26a側は、前縁側膨張部27の上端27aと交差して連通され、前縁側膨張部27の下端27bは、下縁側膨張部28の前端28aと交差して連通され、下縁側膨張部28の後端28bは、後縁側膨張部29の下端29bと交差して連通され、後縁側膨張部29の上端29aは、上縁側膨張部26の後端26bと交差して連通されている。さらに、上縁側膨張部26の後端26bと後縁側膨張部29の上端29aとの交差部位から後方側へ延びるように、接続口部23が配設されている。
【0029】
中央側膨張部35は、上縁側膨張部26と下縁側膨張部28とを連通するように、前後に並設される連通膨張部36,37と、連通膨張部36,37の上下方向の中間部位で連通膨張部36,37相互に連通される分岐膨張部39と、を備えて構成されている。連通膨張部36,37は、それぞれ、上縁側膨張部26に連通される上端36a,37aを、下縁側膨張部28に連通される下端36b,37bより、後方に配置させている。
【0030】
非流入部45は、バッグ本体21の外周縁に配置される周縁部46と、中央側膨張部35の領域に配設される閉じ部47,49,51,52,53と、を備えて構成されている。周縁部46は、上縁46a側に、窓枠3の上枠3a側にバッグ本体21を取り付けるための取付片部60,61,62、を配設させている。各取付片部60,61,62には、取付ブラケット13が固着され、さらに、取付ボルト14を挿通させる取付孔60a,61a,62aが形成されている。実施形態の場合、前端側と後端側との取付片部60,62は、ストラップ70F,70Bの上側端部71と共用され、さらに、ストラップ70Fの上側端部71と共用される取付片部60は、前縁側膨張部27の後方側近傍(詳しくは、後述する閉じ部47の上方)に配置され、ストラップ70Bの上側端部71と共用される取付片部62は、後縁側膨張部29の前方側近傍(詳しくは、後述する閉じ部49の上方)に配置されている。
【0031】
閉じ部47は、上縁側膨張部26の下方における前縁側膨張部27と連通膨張部36との間の略三角形の領域に配設され、閉じ部49は、上縁側膨張部26と下縁側膨張部28との間で、かつ、後縁側膨張部29と連通膨張部37との間の略三角形の領域に配設されている。閉じ部51は、閉じ部47の下方に配置され、閉じ部52,53は、連通膨張部36,37の間の分岐膨張部39の上下の領域で、上縁側膨張部26の下方と、下縁側膨張部28の上方とに、それぞれ、配設されている。
【0032】
そして、非膨張部位としての閉じ部47,49には、バッグ本体21の表裏(車内側Iと車外側O)を貫通するように、挿通孔48,50が配設されている。挿通孔48,50は、バッグ本体21の上下方向の中間位置付近で、バッグ本体21の下縁21bからの高さ位置を同等として、略円形に開口されている。さらに、挿通孔48は、取付片部60と共用される後述するストラップ70Fの上側端部71の直下付近に配置され、挿通孔50は、取付片部62と共用される後述するストラップ70Bの上側端部71の直下付近に配置されて、挿通孔48,50の左右方向の側方は、ストラップ70(F,B)の後述する下側端部76の窓枠3への取付位置PDF,PDB付近としている。
【0033】
ストラップ70(F,B)は、取付片部60と共用する上側端部71を窓Wの上縁側における窓枠3の上枠3aに取り付け、下側端部76を、窓Wの横縁側における窓枠3の横枠3c、3dに取り付けて、上側端部71と下側端部76との間の部位(中間部位)73をバッグ本体21に連結させている。上側端部71と下側端部76とは、取付片部61とともに、当板としての取付ブラケット13が取着されて、取付ボルト14を利用して、窓枠3の上枠3a側に、取り付けられている。なお、ストラップ70(F,B)の上側端部71は、取付ボルト14を貫通させる取付孔71aの下方付近で、バッグ本体21の上縁21a側における周縁部46の上縁46aに縫合させている。なお、各取付孔71aは、取付片部60,61の取付孔60a,62aとなる。また、下側端部76には、取付ボルト14を挿通させる取付孔77が設けられている。
【0034】
そして、ストラップ70Fの中間部位73は、バッグ本体21の閉じ部47の挿通孔48を、車外側Oから車内側Iに向かうように挿通させるとともに、挿通孔48を挿通させた挿通部74から下側端部76側に向かう部位を、前方側に向けるように屈曲させる構成としている。そのため、前側のストラップ70Fは、バッグ本体21の展開膨張完了時、上側端部71から挿通部74までを、膨張完了状態のバッグ本体21の車外側Oに配置される車外側部位81とし、挿通部74から下側端部76までを、膨張完了状態のバッグ本体21の車内側Iに配置される車内側部位82としている。
【0035】
また、ストラップ70Bの中間部位73は、バッグ本体21の閉じ部49の挿通孔50を、車外側Oから車内側Iに向かうように挿通させるとともに、挿通孔50を挿通させた挿通部74から下側端部76側に向かう部位を、後方側に向けるように屈曲させる構成としている。そのため、後側のストラップ70Bは、バッグ本体21の展開膨張完了時、上側端部71から挿通部74までを、膨張完了状態のバッグ本体21の車外側Oに配置される車外側部位81とし、挿通部74から下側端部76までを、膨張完了状態のバッグ本体21の車内側Iに配置される車内側部位82としている。
【0036】
そして、これらのストラップ70F,70Bは、バッグ本体21の窓Wの上縁側への収納時、上枠3a側から横枠3c,3d側に収納されて、上枠3a側から横枠3c,3d側に屈曲させて収納可能な長さ寸法として、設定されている。
【0037】
但し、各ストラップ70F,70Bは、挿通孔48,50を挿通する挿通部74から下側端部76までの車内側部位82が、バッグ本体21の膨張完了時、それぞれ、膨張部位としての前縁側膨張部27や後縁側膨張部29により、車内側Iに押圧されて湾曲し、実質的な前後方向の長さ寸法が短くなることから、閉じ部49の前側挿通孔周縁47bを前方側に引っ張るテンションや、閉じ部49の後側挿通孔周縁49bを後方側に引っ張るテンションを、発生させることとなる。
【0038】
実施形態の頭部保護エアバッグ装置Sの車両Vへの搭載は、まず、エアバッグ20を折り畳む。折り畳む際には、予め、図2に示すように、バッグ本体21を平らに展開させるとともに、ストラップ70F側では、取付片部60と共用の上側端部71から下方に延びる車外側部位81を、平らに展開したバッグ本体21の車外側Oに配置させて、ストラップ70Fの挿通部74を、車外側Oから車内側Iに向かうように、挿通孔48に挿通させ、そして、挿通部74から下側端部76に向かう車内側部位82を、前後方向に沿って前方側に向かうように、配置させておく。また、ストラップ70B側では、取付片部62と共用の上側端部71から下方に延びる車外側部位81を、平らに展開したバッグ本体21の車外側Oに配置させて、ストラップ70Bの挿通部74を、車外側Oから車内側Iに向かうように、挿通孔50に挿通させ、そして、挿通部74から下側端部76に向かう車内側部位82を、前後方向に沿って後方側に向かうように、配置させておく。
【0039】
そして、バッグ本体21を折り畳む。この折り畳みは、膨張完了時のバッグ本体21の下縁21b側から挿通孔48,50の配置領域までを、下縁21b側を上縁21a側に接近させるように巻くロール折りにより折り畳まれるロール折り部86を形成し、挿通孔48,50の配置領域の上方側を、上下方向に折り重ねる蛇腹折り部87を形成する折り畳みである(図5参照)。ロール折り部86のロール折りは、実施形態の場合、バッグ本体21の下縁21b側を、車外側Oに向けて巻く外ロール折りとしている。また、ストラップ70Fは、上側端部71側を蛇腹折り部87の車外側Oに配置させて、挿通孔48を挿通させた下側端部76側を、ロール折り部86の上面86a側から前方側に繰り出させておく。ストラップ70Bでは、上側端部71側を蛇腹折り部87の車外側Oに配置させて、挿通孔50を挿通させた下側端部76側を、ロール折り部86の上面86a側から後方側に繰り出させておく。そして、折り畳んだ後は、折り畳んだエアバッグ20を、折り崩れ防止用のラッピング材89により、包んでおく。
【0040】
その後、取付ブラケット17を取り付けたインフレーター16を、エアバッグ20の接続口部23と接続させ、また、エアバッグ20の各取付片部60,61,62や下側端部76に取付ブラケット13を取り付けてエアバッグ組付体90を形成する(図5参照)。
【0041】
その後、取付ブラケット13を組み付けた各取付片部60,61,62や下側端部76を、ボディ1側のインナパネル2の対応する取付部位に配置させ、各取付孔60a,61a,62a,77に挿通させて、取付ボルト14をインナパネル2のねじ孔に締結し、さらに、取付ブラケット17をボルト18止めし、インフレーター16をインナパネル2に固定して、エアバッグ組付体90をボディ1に取り付ける。ついで、インフレーター16に、所定のインフレーター作動用の制御装置から延びる図示しないリード線を結線し、ピラーガーニッシュ4,7やルーフヘッドライニング5をボディ1に取り付ければ、頭部保護エアバッグ装置Sを、車両Vに搭載することができる。
【0042】
実施形態の頭部保護エアバッグ装置Sの車両Vへの搭載後における車両Vの側面衝突時、インフレーター16が作動し膨張用ガスGを吐出させれば、膨張用ガスGが、接続口部23から周縁膨張部25や中央側膨張部35に流れて、バッグ本体21が、展開膨張して、窓Wの車内側Iを覆うこととなる(図6~8参照)。
【0043】
そして、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Sでは、バッグ本体21が展開膨張して、挿通孔48,50が窓Wの中央側に繰り出され、そのバッグ本体21の展開に伴なって、ストラップ70F,70Bも、窓枠3の上枠3aから横枠3c,3dにかけて収納されていた状態から、挿通孔48,50の周縁47a,47b,49a,49bに引っ張られて、挿通部74付近を、窓Wの中央側に繰り出すこととなる。そして、バッグ本体21が膨張して、膨張部位としての前縁側膨張部27や後縁側膨張部29を膨らませれば、ストラップ70F,70Bにおける挿通部74から下側端部76までの車内側部位82が、その膨張部位としての前縁側膨張部27や後縁側膨張部29により、車内側Iに押圧されて、ストラップ70F,70Bの挿通部74から下側端部76までの車内側部位82の実質的な前後方向の長さ寸法が短くなり(図7の括弧書き参照)、挿通孔周縁47b,49bから下側端部76までのバッグ本体21の部位(前縁側膨張部27や後縁側膨張部29)を、横枠3c,3d側に押えつつ、下側端部76側に引っ張ることから、バッグ本体21に前後方向に沿う十分なテンションを発生させることとなる。さらに付言すると、各ストラップ70F,70Bでは、上側端部71を取付位置PUF,PUBに固定させた車外側部位81側の挿通部74付近が、窓Wの上縁側から下方に展開膨張を完了させたバッグ本体21における挿通孔48,50の上側周縁47a,49aに、下方に引っ張られて、挿通孔48,50から車内側Iに繰り出されないことから、車内側部位82は、その長さ寸法が短く維持され、そして、前縁側膨張部27や後縁側膨張部29により、車内側Iに押圧されて実質的な長さ寸法を短くすることとなって、バッグ本体21に前後方向に沿う十分なテンションを発生させることとなる。
【0044】
また、バッグ本体21の収納された窓Wの上縁側からの展開時、ストラップ70F,70Bは、上側端部71から挿通部74までを略上下方向に配置され、そして、バッグ本体21の車外側Oに配置させる構成であって、リング等の別部品を設けること無く、バッグ本体21との摩擦抵抗を極力抑えることができて、バッグ本体21の展開を抑制させるような作用を奏し難い。
【0045】
したがって、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Sでは、別部品を利用せずに、バッグ本体21を迅速に展開でき、かつ、バッグ本体21に十分なテンションを発生させることができる。
【0046】
そして、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Sでは、ストラップ70F,70Bが、非膨張部位の閉じ部47,49の挿通孔48,50相互と、膨張部位としての前縁側膨張部27と後縁側膨張部29との相互と、を、前後で対応させて(前後方向で対称的として)、バッグ本体21の前後両側に、配設されている。
【0047】
そのため、実施形態では、バッグ本体21にテンションを発生させるストラップ70F,70Bが、バッグ本体21の前後に配設されることとなって、一層、十分なテンションをバッグ本体21に発生させることができる。
【0048】
また、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Sでは、バッグ本体21が、図5に示すように、膨張完了時の下縁21b側から挿通孔48,50の配置領域までを、下縁21b側を上縁21a側に接近させるように巻くロール折りにより折り畳まれるロール折り部86とし、挿通孔48,50の配置領域の上方側を、上下方向に折り重ねる蛇腹折り部87として、窓Wの上縁側に、折り畳まれて収納されている。
【0049】
そのため、実施形態では、ストラップ70F,70Bの上側端部71から挿通部74までの車外側部位81を、蛇腹折り部87の車外側Oに配置させ、挿通部74から横方向に延びる下側端部76までの車内側部位82を、横方向に引き出しておけば、ストラップ70F,70Bを、バッグ本体21の折畳部位に折り込むこと無く、その略全長分を、窓枠3の上枠3aから横枠3c,3dに沿わせて、収納できる。そのため、ストラップ70F,70Bは、バッグ本体21の収納時に収納できる窓枠3の上枠3a側の取付位置PUF,PUBから横枠3c,3dの取付位置PDF,PDBまでの長さ寸法LF,LB分として(図1,2参照)、最も短く設定しておくことができて、その後のバッグ本体21の展開時、ストラップ70F,70Bを設定した短い状態で維持でき、膨張部位としての前縁側膨張部27と後縁側膨張部29との車内側Iへの押圧による実質的な長さ寸法を短くする挙動により、ストラップ70F,70Bにテンションが発生して、的確に、バッグ本体21に前後方向に沿うテンションを発生させることができる。また、折り畳まれたバッグ本体21は、挿通孔48,50より下方側を、外ロール折りとしていることから、展開時、バッグ本体21は、窓Wに沿うように展開して、乗員が窓に接近していても、乗員より窓側で展開できて、窓と乗員との間に円滑にバッグ本体の下縁側を配置させることができる。
【0050】
なお、挿通孔48,50より下方側のロール折りは、内ロール折りとしていてもよく、その場合には、窓Wの車内側付近の下部側に突起物がある場合、展開時のバッグ本体21は、窓Wから離れて車内側に展開し易くなることから、突起物と干渉せずに、突起物の車内側で、円滑に、展開することができる。
【0051】
さらに、図9に示すエアバッグ組付体90Aのように、挿通孔48,50より下方側を、上下方向に折り重ねる蛇腹折りとした蛇腹折り部87、としてもよい。このエアバッグ組付体90Aでは、挿通孔48,50の下方側も、上方側と同様に、上下方向に折り重ねた蛇腹折り部87,87としていることから、折り畳まれたバッグ本体21の展開時、迅速に展開することができ、エアバッグ20が大きな窓Wの車内側Iを覆う場合、好適となる。
【0052】
そしてまた、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Sでは、バッグ本体21が、膨張完了時、車内側部位82を車内側Iに押圧する膨張部位(前縁側膨張部27や後縁側膨張部29)を含めて、窓枠3の全周に沿うように、環状に膨張部位(上縁側膨張部26、前縁側膨張部27、下縁側膨張部28、及び、後縁側膨張部29と)を配設させる構成とするとともに、下縁側の下縁側膨張部28を、窓枠3の下枠3bの車内側Iを覆って、下枠3bに支持されるように、配設させている。
【0053】
そのため、実施形態では、バッグ本体21が膨張を完了させれば、下縁側膨張部28が、窓枠3の下枠3bの車内側Iに支持されて、窓Wの車外側Oへの飛び出しが抑制されることから、乗員がバッグ本体21の下縁21c側に当たっても、車室内に拘束することができる。
【0054】
この場合、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Sでは、バッグ本体21が、上枠3a、下枠3b、及び、上枠3aと下枠3bとを連結する前後の横枠3c,3d、を有した窓枠3に囲まれた略四角形の窓Wの車内側Iを覆うように、配設されている。
【0055】
そのため、実施形態では、バッグ本体21が、大型バスの運転席側方のような大きな略四角形の窓Wを覆う構成としていても、膨張完了時、前後方向のテンションを発生させ、かつ、運転者の車外放出を抑制できて、大型バスの運転手を好適に保護することができる。
【0056】
なお、展開膨張完了時のバッグ本体の外周縁の周縁膨張部で囲まれる中央側膨部は、ストラップ70F,70Bを挿通させる挿通孔48,50を配設できれば、実施形態の構成に限らない。
【0057】
例えば、図10に示すエアバッグ20Aのバッグ本体21Aのように、中央側膨張部35Aが、上縁側膨張部26、前縁側膨張部27、下縁側膨張部28、及び、後縁側膨張部29を備えて、接続口部23と連通される周縁膨張部25Aに囲まれて配設されている。そして、中央側膨張部35Aが、連通膨張部40と分岐膨張部41,42,43とから、構成されている。なお、バッグ本体21Aは、実施形態と同様に、大型バスの運転席側方のような大きな略四角形の窓Wを覆う構成としている。
【0058】
連通膨張部40は、非膨張部としての非流入部45Aの前後方向に延びる閉じ部54の上方側に配設されて、下縁側膨張部28の上方における前縁側膨張部27と後縁側膨張部29との下端27b,29b近傍部位を相互に連通させている。分岐膨張部41,42,43は、連通膨張部40と上縁側膨張部26とを連通するように、上下方向に沿うように配設されて、前後方向に沿って並設されている。分岐膨張部41と前縁側膨張部27とを区画する閉じ部47Aには、ストラップ70Fの挿通部74を挿通させる挿通孔48が配設されている。また、分岐膨張部43と後縁側膨張部29とを区画する閉じ部49Aには、ストラップ70Bの挿通部74を挿通させる挿通孔50が配設されている。分岐膨張部41,42の間と、分岐膨張部42,43の間には、上下方向に離隔して、上下方向に沿って配設された閉じ部55が配設されている。
【0059】
このようなバッグ本体21Aでも、ストラップ70F,70Bと協働して、実施形態と同様な作用・効果を得ることができる。
【0060】
また、図11に示すエアバッグ20Bのバッグ本体21Bでは、中央側膨張部35Bが、上縁側膨張部26、前縁側膨張部27、下縁側膨張部28、及び、後縁側膨張部29を備えて、接続口部23と連通される周縁膨張部25Bに囲まれて配設されている。そして、中央側膨張部35Bは、連通膨張部40Bと分岐膨張部41B,43Bとから、構成されている。なお、このバッグ本体21Bも、実施形態と同様に、大型バスの運転席側方のような大きな略四角形の窓Wを覆う構成としている。
【0061】
連通膨張部40Bは、非膨張部としての非流入部45Bの前後方向に延びる閉じ部54Bの上方側に配設されて、下縁側膨張部28の上方における前縁側膨張部27と後縁側膨張部29との下端27b,29b近傍部位を相互に連通させている。分岐膨張部41B,43Bは、連通膨張部40Bと上縁側膨張部26とを連通するように、それぞれ、上下方向に沿って配設されて、前後方向に並設されている。分岐膨張部41Bと前縁側膨張部27とを区画する閉じ部47Bには、、ストラップ70Fの挿通部74を挿通させる挿通孔48が配設されている。また、分岐膨張部43Bと後縁側膨張部29とを区画する閉じ部49Bには、ストラップ70Bの挿通部74を挿通させる挿通孔50が配設されている。分岐膨張部41B,43Bの間には、上下方向に離隔して、閉じ部52B,53Bが配設されている。
【0062】
このようなバッグ本体21Bでも、ストラップ70F,70Bと協働して、実施形態と同様な作用・効果を得ることができる。
【0063】
なお、実施形態では、バッグ本体21に設けた挿通孔48,50を、バッグ本体21の上下方向の略中間付近に配設した場合を示したが、バッグ本体21の展開時の上下方向の中央付近を中心として、適宜、上方側、あるいは、下方側、例えば、窓Wの下縁付近側にずらして配置させてもよい。また、ストラップ70の下側端部76も、横枠3c,3dに対し、それらの上下方向の中央付近から、適宜、上方側、あるいは、下方側の窓Wの下縁付近まで、ずらして、取り付けてもよい。
【0064】
また、実施形態では、エアバッグ20のバッグ本体21の周縁膨張部25を略四角環状としたが、普通乗用車の窓、すなわち、フロンサイドウインドとリアサイドウインドとを覆えるように、三角環状の周縁膨張部を設けたバッグ本体を使用し、そして、ストラップとしては、ルーフサイドレール部からリヤピラー部に収納されるように、エアバッグの後部側に、1本、配設させるように構成してもよい。すなわち、本発明に係るエアバッグのバッグ本体としては、窓の周縁を囲む膨張部位は、四角環状に限定されず、三角環状としてもよく、その場合、ストラップは、バッグ本体の後部側だけに、あるいは、バッグ本体の前部側だけに、そして勿論、前後両側に、配設してもよい。
【符号の説明】
【0065】
3…窓枠、3a…上枠、3b…下枠、3c…(前)横枠、3d…(後)横枠、20,20A,20B…エアバッグ、21,21A,21B…バッグ本体、21a…上縁、21b…下縁、25,25A,25B…(膨張部位)周縁膨張部、26…(膨張部位)上縁側膨張部、27…(膨張部位)前縁側膨張部、28…(膨張部位)下縁側膨張部、29…(膨張部位)後縁側膨張部、47,47A,47B…(非膨張部位)(前側)閉じ部、48…挿通孔、49,49A,49B…(非膨張部位)(後側)閉じ部、50…挿通孔、70(F,B)…ストラップ、71…上側端部、73…中間部位、74…挿通部、76…下側端部、81…車外側部位、82…車内側部位、86…ロール折り部、87…蛇腹折り部、
V…車両、W…窓、I…車内側、O…車外側、G…膨張用ガス、S…頭部保護エアバッグ装置。
図1
図2
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図5
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図10
図11