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特許7298537エアジェット織機のサブノズル噴射方向調整装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】エアジェット織機のサブノズル噴射方向調整装置
(51)【国際特許分類】
   D03D 47/30 20060101AFI20230620BHJP
   D03J 1/00 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
D03D47/30
D03J1/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020083975
(22)【出願日】2020-05-12
(65)【公開番号】P2021179033
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】濱口 真崇
(72)【発明者】
【氏名】谷内 宏史
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-89055(JP,A)
【文献】特開平6-41846(JP,A)
【文献】特開平4-153341(JP,A)
【文献】特開平2-53935(JP,A)
【文献】特開平9-176937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D29/00-51/46
D03J 1/00- 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緯入れ用のメインノズルと、
緯入れ用のサブノズルと、
緯入れ方向に複数の筬羽が配列された筬と、
複数の前記筬羽のガイド凹部によって形成された筬内通路と、を備え、
前記メインノズル及び前記サブノズルからのエア噴射により、前記筬内通路を経て緯糸が緯入れされるエアジェット織機のサブノズル噴射方向調整装置であって、
前記サブノズルからのエア噴射の風圧を3点以上の測定点からなる測定点群で測定する圧力センサと、
前記測定点群での前記圧力センサによる測定値に基づいて、前記測定点群を含む平面上の位置であって且つ前記サブノズルからのエア噴射の風圧が最大になる最大風圧位置を算出する算出部と、
前記最大風圧位置及び前記最大風圧位置の目標位置を表示するとともに、前記測定点群を含む平面上の軌跡であって且つ前記サブノズルの延びる軸線を中心とした周方向に前記サブノズルを回転させることによる前記最大風圧位置の移動軌跡及び前記目標位置の移動軌跡の少なくとも一方を表示する表示部と、を備えることを特徴とするエアジェット織機のサブノズル噴射方向調整装置。
【請求項2】
前記表示部は、前記最大風圧位置の移動軌跡と前記目標位置の移動軌跡との軌跡ずれとして、前記サブノズルに対する前記測定点群の距離調整量を表示する請求項1に記載のエアジェット織機のサブノズル噴射方向調整装置。
【請求項3】
前記表示部は、前記最大風圧位置と前記目標位置との位置ずれとして、前記サブノズルの前記周方向への回転調整量を表示する請求項1又は請求項2に記載のエアジェット織機のサブノズル噴射方向調整装置。
【請求項4】
前記圧力センサは、前記測定点群の外側に位置する3点以上の測定点からなる予備測定点群で前記サブノズルから噴射されるエアの風圧を測定し、
前記表示部は、前記予備測定点群での前記圧力センサによる測定値に基づいて、前記サブノズルに対する前記測定点群の距離の予備調整が必要であることを表示する請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載のエアジェット織機のサブノズル噴射方向調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアジェット織機のサブノズル噴射方向調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアジェット織機において、緯糸は、メインノズル及びサブノズルからのエア噴射により、筬内通路を飛走する。例えば、特許文献1には、サブノズルから噴射されるエアの方向を調整するサブノズル噴射方向調整装置が開示されている。このサブノズル噴射方向調整装置においては、筬壁面に沿って複数のピトー管を配置するとともに、複数のピトー管を緯入れ方向に移動させながらサブノズルからのエア噴射による最高風圧値を計測している。そして、作業者がデジタル表示器およびバー表示器を見ながらサブノズルの回転角度及び高さを調整することにより、最高風圧値が計測される位置を所望の位置に調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平09-176937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のサブノズル噴射方向置調整装置では、サブノズルの回転角度及び高さを探索的に動かしてサブノズルの噴射方向を調整する必要がある。そのため、サブノズルの噴射方向の調整をより効率良くに行うことが望まれている。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、サブノズルの噴射方向の調整をより効率良く行うことのできるエアジェット織機のサブノズル噴射方向調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するエアジェット織機のサブノズル噴射方向調整装置は、緯入れ用のメインノズルと、緯入れ用のサブノズルと、緯入れ方向に複数の筬羽が配列された筬と、複数の前記筬羽のガイド凹部によって形成された筬内通路と、を備え、前記メインノズル及び前記サブノズルからのエア噴射により、前記筬内通路を経て緯糸が緯入れされるエアジェット織機のサブノズル噴射方向調整装置であって、前記サブノズルからのエア噴射の風圧を3点以上の測定点からなる測定点群で測定する圧力センサと、前記測定点群での前記圧力センサによる測定値に基づいて、前記測定点群を含む平面上の位置であって且つ前記サブノズルからのエア噴射の風圧が最大になる最大風圧位置を算出する算出部と、前記最大風圧位置及び前記最大風圧位置の目標位置を表示するとともに、前記測定点群を含む平面上の軌跡であって且つ前記サブノズルの延びる軸線を中心とした周方向に前記サブノズルを回転させることによる前記最大風圧位置の移動軌跡及び前記目標位置の移動軌跡の少なくとも一方を表示する表示部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、最大風圧位置の移動軌跡が表示部に表示される場合、表示部に表示される最大風圧位置の移動軌跡が目標位置を含むようになるまで、作業者によってサブノズルに対する測定点群の位置調整が行われる。目標位置の移動軌跡が表示部に表示される場合、表示部に表示される最大風圧位置が目標位置の移動軌跡上に位置するようになるまで、作業者によってサブノズルに対する測定点群の位置調整が行われる。最大風圧位置の移動軌跡及び目標位置の移動軌跡の両方が表示部に表示される場合、表示部に表示される最大風圧位置の移動軌跡が目標位置の移動軌跡に一致するようになるまで、作業者によってサブノズルに対する測定点群の位置調整が行われる。こうしてサブノズルに対する測定点群の位置調整が行われた状態で、最大風圧位置が目標位置に一致するまで作業者によってサブノズルの周方向への回転調整が行われることにより、最大風圧位置を目標位置に調整できる。このように、サブノズルの軸線方向への調整を行わずに、サブノズルの噴射方向の調整ができる。したがって、サブノズルの噴射方向の調整をより効率良くに行うことができる。
【0008】
エアジェット織機のサブノズル噴射方向調整装置において、前記表示部は、前記最大風圧位置の移動軌跡と前記目標位置の移動軌跡との軌跡ずれとして、前記サブノズルに対する前記測定点群の距離調整量を表示することが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、作業者が、表示部に表示された距離調整量だけ測定点群の位置を調整することで、最大風圧位置の移動軌跡上に最大風圧位置の目標位置がある状態にできる。したがって、表示部を見ながら作業者が測定点群の位置を調整する場合と比較して、サブノズルの噴射方向の調整をより効率良くに行うことができる。
【0010】
エアジェット織機のサブノズル噴射方向調整装置において、前記表示部は、前記最大風圧位置と前記目標位置との位置ずれとして、前記サブノズルの前記周方向への回転調整量を表示することが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、作業者が、表示部に表示された回転調整量だけサブノズルを周方向に回転調整することで、最大風圧位置を目標位置に一致させることができる。したがって、表示部を見ながら作業者がサブノズルを周方向に回転調整する場合と比較して、サブノズルの噴射方向の調整をより効率良くに行うことができる。
【0012】
エアジェット織機のサブノズル噴射方向調整装置において、前記圧力センサは、前記測定点群の外側に位置する3点以上の測定点からなる予備測定点群で前記サブノズルから噴射されるエアの風圧を測定し、前記表示部は、前記予備測定点群での前記圧力センサによる測定値に基づいて、前記サブノズルに対する前記測定点群の距離の予備調整が必要であることを表示することが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、表示部での予備調整が必要であることの表示に伴って、作業者が測定点群の位置を調整することで、サブノズルの最大風圧位置が測定点群で囲まれた位置にある状態で、サブノズルの噴射方向の調整を行うことができる。したがって、サブノズルの噴射方向の調整に際して作業者が模索的に測定点群の位置を調整する場合と比較して、サブノズルの噴射方向の調整をより効率よく行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、サブノズルの噴射方向の調整をより効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】エアジェット織機の緯入れ装置を示す概略図。
図2】エアジェット織機の緯入れ装置を部分的に示す概略斜視図。
図3】エアジェット織機の緯入れ装置を示す概略側面図。
図4】サブノズル及びサブノズル噴射方向調整装置を示す概略斜視図。
図5】圧力測定装置を示す正面図。
図6】表示部による表示画像を拡大して示す概略図。
図7】表示部を示す概略図。
図8】表示部を示す概略図。
図9】サブノズル噴射方向調整処理の処理手順を示すフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、エアジェット織機のサブノズル噴射方向調整装置を具体化した一実施形態を図1図9にしたがって説明する。なお、以下の説明において、緯糸を経糸開口内に緯入れして緯糸を搬送する緯入れ方向に対し、緯入れ方向とは反対側を上流側、緯入れ方向側を下流側とする。また、説明の都合上、緯入れ装置の説明をした後に、サブノズル噴射方向調整装置の説明を行う。
【0017】
図1に示すように、緯入れ装置10は、緯入れノズル11、給糸部12、緯糸測長貯留装置13、筬14、複数の緯入れ用のサブノズル15、及び制御装置16を備えている。制御装置16には、表示機能及び入力機能を有する表示装置16aが付属されている。給糸部12は、緯入れノズル11の上流側に配設されている。給糸部12の緯糸Yは、緯糸測長貯留装置13の図示しない巻付けアームの回転により引き出され、貯留ドラム17に巻き付けられた状態で貯留される。
【0018】
緯糸測長貯留装置13には、緯糸係止ピン18、及び緯糸Yの緯糸測長貯留装置13からの解舒を検出するバルーンセンサ19が設けられている。緯糸係止ピン18及びバルーンセンサ19は、貯留ドラム17の周囲に配設されている。緯糸係止ピン18は、制御装置16と電気的に接続されている。緯糸係止ピン18は、制御装置16に予め設定された織機回転角度において、貯留ドラム17に貯留された緯糸Yを解舒する。緯糸係止ピン18による緯糸Yの解舒が行われるタイミングは、緯入れ開始タイミングである。
【0019】
バルーンセンサ19は、制御装置16と電気的に接続されている。バルーンセンサ19は、緯入れ中に貯留ドラム17から解舒される緯糸Yを検出し、制御装置16に緯糸解舒信号を発信する。制御装置16は、予め設定された回数(本実施形態では4回)の緯糸解舒信号を受信すると、緯糸係止ピン18を作動する。緯糸係止ピン18は、貯留ドラム17から解舒される緯糸Yを係止し、緯入れを終了させる。
【0020】
なお、緯糸係止ピン18が緯糸Yを係止するための作動タイミングは、織幅TLに相当する長さの緯糸Yを貯留ドラム17に貯留するために要する巻き付け回数に応じて設定されている。本実施形態では、制御装置16は、バルーンセンサ19の緯糸解舒信号を4回受信すると、緯糸Yを係止する動作信号が緯糸係止ピン18に発信されるように設定されている。したがって、本実施形態の緯入れ装置10では、貯留ドラム17の4巻分の緯糸貯留長さに相当する緯糸Yが緯入れされる。
【0021】
バルーンセンサ19の緯糸検出信号は、貯留ドラム17からの緯糸Yの解舒信号であり、制御装置16において、エンコーダ20から得られる織機回転角度信号に基づき緯糸解舒タイミングとして認識される。
【0022】
緯入れノズル11は、貯留ドラム17の緯糸Yを引き出すタンデムノズル21と、緯糸Yを筬14の筬内通路14aに緯入れする緯入れ用のメインノズル22と、を有する。エアジェット織機においては、メインノズル22及びサブノズル15からのエア噴射により、筬内通路14aを経て緯糸Yが緯入れされる。タンデムノズル21の上流側には、緯入れ終了前に、飛走する緯糸Yを制動するブレーキ23が設けられている。
【0023】
メインノズル22は、配管22aを介してメインバルブ22vに接続されている。メインバルブ22vは、配管22bを介してメインエアタンク26に接続されている。タンデムノズル21は、配管21aを介してタンデムバルブ21vに接続されている。タンデムバルブ21vは、配管21bを介してメインバルブ22vと共通のメインエアタンク26に接続されている。
【0024】
メインエアタンク26は、メイン圧力計27、メインレギュレータ28、元圧力計29、及びフィルタ30を介して、織布工場に設置された共通のエアコンプレッサ31に接続されている。メインエアタンク26では、エアコンプレッサ31から供給され、メインレギュレータ28により設定圧力に調整された圧縮エアが貯蔵される。また、メインエアタンク26に供給される圧縮エアの圧力は、メイン圧力計27により常時検出されている。
【0025】
複数のサブノズル15は、1例として6群に分けられ、各群は、4本のサブノズル15により構成されている。各群に対応して6個のサブバルブ32が配設され、各群のサブノズル15は、それぞれ配管33を介して各サブバルブ32に接続されている。各サブバルブ32は、共通のサブエアタンク34に接続されている。
【0026】
サブエアタンク34は、サブ圧力計35を介してサブレギュレータ36に接続されている。また、サブレギュレータ36は、配管36aにより、メイン圧力計27とメインレギュレータ28とを接続している配管28aに接続されている。サブエアタンク34では、エアコンプレッサ31から供給され、サブレギュレータ36により設定圧力に調整された圧縮エアが貯蔵される。また、サブエアタンク34に供給される圧縮エアの圧力は、サブ圧力計35により常時検出されている。
【0027】
メインバルブ22v、タンデムバルブ21v、サブバルブ32、元圧力計29、メイン圧力計27、サブ圧力計35、及びブレーキ23は、制御装置16と電気的に接続されている。制御装置16には、メインバルブ22v、タンデムバルブ21v、サブバルブ32、及びブレーキ23を作動するための作動タイミングや作動期間が予め設定されている。また、制御装置16は、元圧力計29、メイン圧力計27、及びサブ圧力計35の検出信号を受信する。
【0028】
メインバルブ22v及びタンデムバルブ21vには、緯糸係止ピン18が作動する緯入れ開始タイミングよりも早いタイミングで制御装置16から作動指令信号が出力され、メインノズル22及びタンデムノズル21から圧縮エアが噴射される。ブレーキ23には、緯糸係止ピン18が作動して貯留ドラム17の緯糸Yを係止する緯糸先端到達タイミングよりも早い時期に制御装置16から作動指令信号が出力される。ブレーキ23は、高速で飛走する緯糸Yを制動して緯糸Yの飛走速度を低下させ、緯糸先端到達タイミングにおける緯糸Yの衝撃を緩和する。
【0029】
制御装置16には、各種の織物条件及び製織条件が登録され、記憶されている。織物条件としては、例えば、緯糸Yに使用する糸の材質、番手等の緯糸種類、緯糸密度、経糸に使用する糸の材質、番手等の経糸種類、経糸密度、織幅、織物組織等が含まれている。製織条件としては、例えば、織機の回転数、メインエアタンク26及びサブエアタンク34の圧縮エアの圧力、メインバルブ22v及びタンデムバルブ21vの開度、緯入れ開始タイミング、目標緯糸先端到達タイミング等が含まれる。
【0030】
タンデムノズル21、ブレーキ23、緯糸測長貯留装置13、及び給糸部12は、図示は省略しているが、エアジェット織機のフレーム又は床面に取り付けられたブラケット等に固定されている。
【0031】
図2に示すように、メインノズル22、サブノズル15、及び筬14は、スレイ24上に配設され、エアジェット織機の前後方向に往復揺動される。筬14は、ガイド凹部14bを有する筬羽14cが緯入れ方向に複数列設されて構成されている。筬内通路14aは、複数の筬羽14cのガイド凹部14bによって形成されている。
【0032】
複数のサブノズル15は、支持ブロック25を介してスレイ24上にそれぞれ固定されている。サブノズル15は、スレイ24の揺動に伴って経糸Tの列の間から経糸Tの開口内に対して出入り可能となっている。
【0033】
図3に示すように、サブノズル15の先端にはエアが噴射される噴射口15aが形成されている。サブノズル15は、噴射口15aから筬羽14cのガイド凹部14bに向けてエア噴射することにより、筬内通路14aへのエア噴射を行う。
【0034】
サブノズル15は、制御装置16において設定される織物条件や製織条件が変更される都度、作業者によってエアの噴射方向の調整が行われる。このサブノズル15の噴射方向の調整は、サブノズル15の延びる軸線方向に沿ってサブノズル15を支持ブロック25に対して移動させることと、サブノズル15の軸線を中心とした周方向にサブノズル15を支持ブロック25に対して回転させることによって行う。以下では、サブノズル15の軸線方向を単に軸線方向S11という。サブノズル15の軸線を中心とした周方向を単に周方向S12という。
【0035】
図4に示すように、サブノズル15の噴射方向の調整に際しては、調整用筬羽114c、サブノズル15、及びサブノズル噴射方向調整装置40がスレイ24上に設置される。調整用筬羽114cは、スレイ24上の筬14の設置箇所に設置される。調整用筬羽114cは筬羽14cと同形状であり、筬羽14cのガイド凹部14bと同形状の調整用ガイド凹部114bを有する。調整用ガイド凹部114bによって区画形成された空間を調整用筬内通路114aという。この調整用筬内通路114aは、筬羽14cのガイド凹部14bによって形成される筬内通路14aと同位置に形成される。
【0036】
サブノズル15は、作業者によってスレイ24に取り付けられる際に、軸線方向S11において支持ブロック25からの突出長さを規定の突出長さに設定される。なお、既定の突出長さとは、織物条件や製織条件に応じて設定された値である。織物条件や製織条件に応じた突出長さになるように、作業者が軸線方向S11に沿ってサブノズル15を調整した後、サブノズル15が支持ブロック25に固定される。
【0037】
サブノズル15の噴射方向の調整はサブノズル噴射方向調整装置40を用いて行われる。サブノズル噴射方向調整装置40は、圧力測定装置41、算出部51、及び表示部52を備える。圧力測定装置41、算出部51、及び表示部52は電気的に接続されている。表示部52は、第1画面52a、第2画面52b、及び第3画面52cを備える。
【0038】
圧力測定装置41は、サブノズル15から噴射されるエアの風圧を測定する。圧力測定装置41は、調整用筬内通路114aの下流側に作業者によって取り付けられる。圧力測定装置41は、スレイ24に着脱可能なセンサ土台部42と、センサ土台部42に取り付けられた圧力センサ43と、を有している。センサ土台部42は、矩形柱状の土台軸部42aと、土台軸部42aの軸線方向の第1端部に位置する矩形板状の土台本体部42bと、を有する。土台軸部42aの軸線方向における土台本体部42bとは反対側の第2端部側がスレイ24に取り付けられている。土台本体部42bは、調整用筬羽114cの緯入れ方向の下流側において、調整用筬羽114cに並ぶように位置している。
【0039】
圧力センサ43は、流体の流れの速さを測定する複数のピトー管44から構成されている。本実施形態の圧力センサ43は、8本のピトー管44を有している。各ピトー管44は、土台本体部42bから緯入れ方向に沿って調整用筬羽114cに向けて延びている。各ピトー管44によって、圧力センサ43はサブノズル15からのエア噴射の風圧を8点の測定点で測定可能となっている。
【0040】
図5に示すように、各ピトー管44は、緯入れ方向の上流側から見たときに、調整用筬羽114cにおける調整用ガイド凹部114bの内部、調整用ガイド凹部114bを形成する調整用筬羽114cの縁、及び調整用ガイド凹部114bの周りの部分と重なるように位置している。4つのピトー管44は、緯入れ方向の上流側から見たときに、一辺の長さが第1長さAを有する正方形をなすように位置している。この4つのピトー管44を第1ピトー管44aという。第1ピトー管44a以外の4つのピトー管44は、緯入れ方向の上流側から見たときに、一辺の長さが第2長さBを有する正方形をなすように位置している。この4つのピトー管44を第2ピトー管44bという。第2長さBは第1長さAよりも長い。第2ピトー管44bは、緯入れ方向の上流側から見たときに、4つの第1ピトー管44aの外側に位置している。
【0041】
図6に示すように、表示部52の第1画面52aは、4つの第1ピトー管44aでの測定点を4つの測定点からなる測定点群P1として表示するとともに、4つの第2ピトー管44bでの測定点を4つの測定点からなる予備測定点群P2として表示する。第1ピトー管44aと第2ピトー管44bとの位置関係と同様に、4つの予備測定点群P2は4つの測定点群P1の外側に位置している。第1画面52aは、直交するX軸とY軸とを有するXY座標を表示しており、測定点群P1の測定点及び予備測定点群P2の測定点を座標の点として表示する。
【0042】
第1画面52aに表示される測定点群P1の4つの測定点を、第1測定点P11、第2測定点P12、第3測定点P13、及び第4測定点P14という。第1測定点P11と第2測定点P12はX座標値が同じである。第2測定点P12と第3測定点P13はY座標値が同じである。第3測定点P13と第4測定点P14はX座標値が同じである。第3測定点P13及び第4測定点P14のX座標値は、第1測定点P11及び第2測定点P12のX座標値よりも大きい。第4測定点P14と第1測定点P11はY座標値が同じである。第4測定点P14及び第1測定点P11のY座標値は、第2測定点P12及び第3測定点P13のY座標値よりも大きい。
【0043】
第1画面52aに表示される予備測定点群P2の4つの測定点を、第1予備測定点P21、第2予備測定点P22、第3予備測定点P23、及び第4予備測定点P24という。第1予備測定点P21と第2予備測定点P22はX座標値が同じである。第2予備測定点P22と第3予備測定点P23はY座標値が同じである。第3予備測定点P23と第4予備測定点P24はX座標値が同じである。第3予備測定点P23及び第4予備測定点P24のX座標値は、第1予備測定点P21及び第2予備測定点P22のX座標値よりも大きい。第4予備測定点P24と第1予備測定点P21はY座標値が同じである。第4予備測定点P24及び第1予備測定点P21のY座標値は、第2予備測定点P22及び第3予備測定点P23のY座標値よりも大きい。
【0044】
さらに、第1画面52aは、第1ピトー管44aによって測定された測定値に基づいて、最大風圧位置Pcを中心とした風圧分布を表示する。第1画面52aに表示される風圧分布はドットハッチで図示している。なお、図6には、第1画面52aによる風圧分布の表示部分を拡大して示したものである。最大風圧位置Pcは、サブノズル15からのエア噴射の風圧が最大になる位置である。第1画面52aでは、風圧分布が最大風圧位置Pcを中心として円形をなすように最大風圧位置Pcよりも外側に位置するほど風圧が低く表示されている。予備測定点群P2は測定点群P1の外側に位置しているため、最大風圧位置Pcが測定点群P1で囲まれた位置にあるとき、予備測定点群P2で測定される風圧は測定点群P1で測定される風圧よりも低くなる。
【0045】
図4及び図6に示すように、表示部52は、予備測定点群P2での圧力センサ43による測定値に基づいて、サブノズル15に対する測定点群P1の距離Lの予備調整が必要であることを表示する。具体的には、予備測定点群P2における各測定点間での測定値の偏差が所定の閾値以上であるときに、表示部52は、予備調整要と表示して作業者に予備調整を指示する。なお、上記閾値は、予備測定点群P2における各測定点間での測定値の偏差が閾値未満である場合に、測定点群P1で囲まれた位置に最大風圧位置Pcが位置していると推定できる値に設定されている。
【0046】
算出部51は、第1ピトー管44aによる測定値に基づいて最大風圧位置Pcの位置を算出する。言い換えると、算出部51は、測定点群P1での圧力センサ43による測定値に基づいて最大風圧位置Pcを算出する。本実施形態の算出部51は、第1測定点P11、第2測定点P12、及び第3測定点P13での測定値に基づいて最大風圧位置Pcを算出する。最大風圧位置Pcは、測定点群P1を含む平面上の位置である。
【0047】
算出部51は、最大風圧位置Pcの算出に際して、まず第1測定点P11及び第2測定点P12での各測定値について、あらかじめ設定された任意の定数との差を第1代表値としてそれぞれ算出する。なお、任意の定数としては、例えば作業者によって予め設定された最大風圧位置Pcでの風圧である。そして、算出部51は、第1測定点P11に対応する第1代表値と第2測定点P12に対応する第1代表値との比を算出する。
【0048】
次に、算出部51は、第2測定点P12及び第3測定点P13での各測定値について、あらかじめ設定された任意の定数との差を第2代表値としてそれぞれ算出する。なお、任意の定数としては、例えば作業者によって予め設定された最大風圧位置Pcでの風圧である。そして、算出部51は、第2測定点P12に対応する第2代表値と第3測定点P13に対応する第2代表値との比を算出する。
【0049】
算出部51は、算出した第1代表値の比及び第2代表値の比に基づいて最大風圧位置Pcを算出する。具体的には、算出した第1代表値の比が第1測定点P11と第2測定点P12との間の距離の比と等しくなる点を結んだ線を第1測定線L1とする。算出した第2代表値の比が第2測定点P12と第3測定点P13との間の距離の比と等しくなる点を結んだ線を第2測定線L2とする。そして、算出部51は、第1測定線L1と第2測定線L2との交点を最大風圧位置Pcとして算出する。なお、図6に示す第1画面52aには、説明の便宜上、第1測定線L1及び第2測定線L2を破線で示しているが、第1測定線L1及び第2測定線L2は第1画面52aに表示されなくてもよいし、表示されていてもよい。
【0050】
なお、算出部51による最大風圧位置Pcの算出は、測定点群P1で囲まれた位置に最大風圧位置Pcが位置していることを前提としたものである。そのため、測定点群P1で囲まれた位置に最大風圧位置Pcが位置するときは、算出部51によって最大風圧位置Pcの算出が行われ、第1画面52aは最大風圧位置Pcを表示する。その一方で、測定点群P1で囲まれた位置に最大風圧位置Pcが位置しないときは、算出部51によって最大風圧位置Pcの算出が行われず、第1画面52aは最大風圧位置Pcを表示しない。
【0051】
第1画面52aが最大風圧位置Pcを表示しない場合は、表示部52が予備調整を指示する表示を行う。この表示を受けて作業者が圧力測定装置41を緯入れ方向に動かすことで、サブノズル15に対する測定点群P1の距離Lが調整される。これにより、測定点群P1で囲まれた位置に最大風圧位置Pcが位置した状態になると、算出部51による最大風圧位置Pcの算出が行われるとともに、第1画面52aに最大風圧位置Pcが表示されるようになる。
【0052】
算出部51は、算出され最大風圧位置Pcに基づいて、周方向S12にサブノズル15を回転させることによる最大風圧位置Pcの移動軌跡Tpを算出する。表示部52は、算出部51によって算出された移動軌跡Tpを第1画面52aに表示する。移動軌跡Tpは、測定点群P1を含む平面上の軌跡である。また、移動軌跡Tpは、算出された最大風圧位置Pcを含むとともに、設定された織物条件及び製織条件に基づいて設定された傾きを有する一次関数を示す直線である。第1画面52aが表示する移動軌跡Tpは、同じ織物条件で且つ同じ製織条件において、サブノズル15に対する測定点群P1の距離Lに応じて、同じ傾きのままY軸方向に変位したものとなる。
【0053】
さらに、第1画面52aは、サブノズル15の最大風圧位置Pcの目標位置Ptを表示するとともに、目標位置Ptの移動軌跡を表示する。目標位置Ptの移動軌跡を目標移動軌跡Ttとする。目標位置Ptは、織物条件及び製織条件に基づいて予め設定された最大風圧位置Pcである。目標移動軌跡Ttは、目標位置Ptを含むとともに、設定された織物条件及び製織条件に基づいて予め設定された傾きを有する一次関数を示す直線である。目標位置Pt及び目標移動軌跡Ttは、測定点群P1を含む平面上に位置する。なお、図6は、最大風圧位置Pcと目標位置Ptとが一致している場合の第1画面52aによる表示画像を示している。この場合は、移動軌跡Tpと目標移動軌跡Ttとも一致している。
【0054】
図7に示すように、表示部52は、移動軌跡Tpと目標移動軌跡Ttとの軌跡ずれを表示する。具体的には、表示部52は、サブノズル15に対する測定点群P1の緯入れ方向への距離Lの調整量である距離調整量Lbを上記軌跡ずれとして第2画面52bに表示する。距離調整量Lbは、距離Lを距離調整量Lbだけ調整すると移動軌跡Tpと目標移動軌跡Ttとが一致する値であり、設定される織物条件及び製織条件ごとに移動軌跡Tpに応じた値が設定されている。
【0055】
図7は、移動軌跡Tpと目標移動軌跡Ttとがずれている場合の表示部52による表示画像を示している。第1画面52aには、移動軌跡Tpと目標移動軌跡Ttとが同じ傾きのままY軸方向にずれて表示される。さらに、第1画面52aにおいては、移動軌跡Tp上に最大風圧位置Pcが表示され、目標移動軌跡Tt上に目標位置Ptが表示される。そのため、第1画面52aには、最大風圧位置Pcと目標位置Ptとがずれて表示される。
【0056】
なお、X座標値が同じ第3座標値X3であって、移動軌跡Tp上にあるY座標値を第1座標値Y1とし、目標移動軌跡Tt上にあるY座標値を第2座標値Y2とする。表示部52は、第1座標値Y1と第2座標値Y2の差である第1偏差ΔYに基づいて、距離調整量Lbを第2画面52bに表示する。すなわち表示部52は、移動軌跡Tpと目標移動軌跡TtとのY軸方向のずれ量に基づいて、距離調整量Lbを第2画面52bに表示する。第2画面52bに表示される距離調整量Lbだけ作業者が圧力測定装置41を緯入れ方向に動かすことにより、サブノズル15に対する測定点群P1の距離Lを距離調整量Lbだけ調整できる。
【0057】
図8に示すように、距離調整量Lbをもって作業者による距離Lの調整が完了すると、移動軌跡Tpと目標移動軌跡Ttとが一致するようになる。第1画面52aには、互いに一致した移動軌跡Tpと目標移動軌跡Ttとが表示されるようになる。
【0058】
表示部52は、算出部51によって算出された最大風圧位置Pcと目標位置Ptとの位置ずれを表示する。具体的には、表示部52は、サブノズル15の周方向S12への回転調整量Lcを上記位置ずれとして第3画面52cに表示する。回転調整量Lcは、移動軌跡Tpと目標移動軌跡Ttとが一致した状態でサブノズル15を周方向S12へ回転調整量Lcだけ調整した場合に、最大風圧位置Pcと目標位置Ptとが一致する値である。回転調整量Lcは、設定される織物条件及び製織条件ごとに最大風圧位置Pcに応じた値が設定されている。
【0059】
図8は、移動軌跡Tpと目標移動軌跡Ttとが一致し、且つ最大風圧位置Pcと目標位置Ptとがずれている場合の表示部52による表示画像を示している。なお、目標位置PtのX座標値を第4座標値X1とし、最大風圧位置PcのX座標値を第5座標値X2とする。表示部52は、第4座標値X1と第5座標値X2の差である第2偏差ΔXに基づいて、回転調整量Lcを第3画面52cに表示する。すなわち表示部52は、最大風圧位置Pcと目標位置PtとのX軸方向のずれ量に基づいて、回転調整量Lcを第3画面52cに表示する。第3画面52cに表示される回転調整量Lcだけ作業者がサブノズル15を周方向S12へ回転調整することにより、移動軌跡Tpと目標移動軌跡Ttとは一致したまま、最大風圧位置PcがX軸方向へずれて目標位置Ptと一致するようになる。
【0060】
次に、サブノズル噴射方向調整装置40によるサブノズル15の噴射方向調整処理について、本実施形態の作用と共に説明する。なお、サブノズル15の噴射方向調整処理は、スレイ24に設置されるサブノズル15毎に行われる。すなわち、1つのサブノズル15に対して噴射方向の調整が完了する度に、次のサブノズル15に対応する位置に作業者が調整用筬羽114c及び圧力測定装置41を順次移動させながら、サブノズル15の噴射方向の調整が行われる。
【0061】
サブノズル15の噴射方向の調整に際しては、まずスレイ24にサブノズル15、調整用筬羽114c、及び圧力測定装置41が作業者によって取り付けられる。そして、作業者によるサブノズル噴射方向調整装置40の操作によって、サブノズル噴射方向調整装置40による処理が開始される。
【0062】
図9に示すように、サブノズル噴射方向調整装置40による処理が開始されると、まずサブノズル15の噴射が開始されたか否かが判断される(ステップS1)。ここでは、第2ピトー管44bに対応する予備測定点群P2での測定値が圧力センサ43によって検出された場合、サブノズル15の噴射が開始されたと判断される。サブノズル15の噴射が開始されたと判断されない間は(ステップS1:NO)、ステップS1の判断が繰り返し行われる。作業者の操作によってサブノズル15の噴射が開始されると、サブノズル15の噴射が開始されたと判断される(ステップS1:YES)。
【0063】
続いて、予備測定点群P2における各測定点間での測定値の偏差が所定の閾値以上であるか否かが判断される(ステップS2)。予備測定点群P2における各測定点間での測定値の偏差が閾値以上である場合(ステップS2:YES)、表示部52に予備調整要と表示された後(ステップS3)、作業者は圧力測定装置41を移動させる。作業者によって圧力測定装置41の移動が行われて、予備測定点群P2における各測定点間での測定値の偏差が閾値未満であると判断されると(ステップS2:NO)、次の処理に移行する。
【0064】
そして、算出部51によって測定点群P1での測定値に基づいて最大風圧位置Pc及び移動軌跡Tpが算出される(ステップS4)。さらに、最大風圧位置Pc、移動軌跡Tp、目標位置Pt、及び目標移動軌跡Ttが表示部52の第1画面52aに表示される(ステップS5)。
【0065】
続いて、移動軌跡Tpと目標移動軌跡Ttとが一致するか否かが判断される(ステップS6)。移動軌跡Tpと目標移動軌跡Ttとが一致しないときは(ステップS6:NO)、表示部52の第2画面52bに移動軌跡Tpと目標移動軌跡Ttとの軌跡ずれ量に対応した距離調整量Lbが表示された後(ステップS7)、作業者は圧力測定装置41を距離調整量Lbだけ移動させる。作業者によって距離調整量Lbだけ圧力測定装置41の移動が行われ、ステップS6において移動軌跡Tpと目標移動軌跡Ttとが一致すると判断された場合は次のステップに進む(ステップS6:YES)。
【0066】
次に、最大風圧位置Pcと目標位置Ptとが一致するか否かが判断される(ステップS8)。最大風圧位置Pcと目標位置Ptとが一致しない場合(ステップS8:NO)、表示部52の第3画面52cに最大風圧位置Pcと目標位置Ptとの位置ずれ量に対応した回転調整量Lcが表示された後(ステップS9)、作業者はサブノズル15を周方向S12に回転調整量Lcだけ回転させる。作業者によって回転調整量Lcだけサブノズル15を周方向S12に回転させる調整が行われ、ステップS8において最大風圧位置Pcと目標位置Ptとが一致していると判断された場合には(ステップS8:YES)、サブノズル15の噴射方向の調整が完了したものと判断され、処理が終了される。
【0067】
本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)表示部52は、最大風圧位置Pc、目標位置Pt、最大風圧位置Pcの移動軌跡Tp、及び目標移動軌跡Ttを表示する。表示部52に表示される移動軌跡Tpが目標移動軌跡Ttに一致するようになるまで、作業者によってサブノズル15に対する測定点群P1の位置調整が行われる。こうしてサブノズル15に対する測定点群P1の位置調整が行われた状態で、最大風圧位置Pcが目標位置Ptに一致するまで作業者によってサブノズル15の周方向S12への回転調整が行われることにより、最大風圧位置Pcを目標位置Ptに調整できる。このように、サブノズル15の軸線方向S11への調整を行わずに、サブノズル15の噴射方向の調整ができる。したがって、サブノズル15の噴射方向の調整をより効率良くに行うことができる。
【0068】
(2)表示部52は、移動軌跡Tpと目標移動軌跡Ttとの軌跡ずれとして、サブノズル15に対する測定点群P1の距離調整量Lbを表示する。そのため、作業者が、表示部52に表示された距離調整量Lbだけ測定点群P1の位置を調整することで、移動軌跡Tp上に目標位置Ptがある状態にできる。したがって、表示部52を見ながら作業者が測定点群P1の位置を調整する場合と比較して、サブノズル15の噴射方向の調整をより効率良くに行うことができる。
【0069】
(3)表示部52は、最大風圧位置Pcと目標位置Ptとの位置ずれとして、サブノズル15の周方向S12への回転調整量Lcを表示する。そのため、作業者が、表示部52に表示された回転調整量Lcだけサブノズル15を周方向S12に回転調整することで、最大風圧位置Pcを目標位置Ptに一致させることができる。したがって、表示部52を見ながら作業者がサブノズル15を周方向S12に回転調整する場合と比較して、サブノズル15の噴射方向の調整をより効率良くに行うことができる。
【0070】
(4)圧力センサ43は、測定点群P1に加えて、測定点群P1の外側に位置する予備測定点群P2でサブノズル15から噴射されるエアの風圧を測定している。表示部52は、予備測定点群P2での圧力センサ43による測定値に基づいて、サブノズル15に対する測定点群P1の距離Lの予備調整が必要であることを表示する。そのため、表示部52での予備調整が必要であることの表示に伴って、作業者が測定点群P1の位置を調整することで、サブノズル15の最大風圧位置Pcが測定点群P1で囲まれた位置にある状態で、サブノズル15の噴射方向の調整を行うことができる。したがって、サブノズル15の噴射方向の調整に際して作業者が模索的に測定点群P1の位置を調整する場合と比較して、サブノズル15の噴射方向の調整をより効率よく行うことができる。
【0071】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0072】
○ サブノズル15の噴射方向の調整に調整用筬羽114cは必須ではない。言い換えると、エアジェット織機の筬羽14cを用いてサブノズル15の噴射方向の調整を行ってもよい。この場合、算出部51や表示部52の仕様や、圧力センサ43による風圧測定の仕様等、サブノズル噴射方向調整装置40の仕様を筬羽14cの仕様に合わせて変更すればよい。
【0073】
○ 圧力センサ43は、4つの第1ピトー管44aで囲まれて位置するピトー管44をさらに有してもよい。このピトー管44の位置としては、例えば、このピトー管44と各第1ピトー管44aとの距離が全て等距離になる位置が挙げられる。このピトー管44によって風圧分布の中心位置での風圧を測定できる。
【0074】
○ 表示部52は、サブノズル15に対する測定点群P1の距離Lの予備調整が必要であることに加えて、予備測定点群P2での圧力センサ43による測定値に基づいて、予備調整に関する情報をさらに表示してもよい。例えば、表示部52は、サブノズル15に対して測定点群P1を遠ざけるか近づけるかといった、測定点群P1の調整方向を表示してもよい。この場合の表示部52は、例えば、サブノズル15に対して測定点群P1を遠ざける予備調整が必要な場合に「+」と表示するとともに、サブノズル15に対して測定点群P1を近づける予備調整が必要な場合に「-」と表示する。また例えば、表示部52は、サブノズル15に対する測定点群P1の距離Lの調整量を表示してもよい。
【0075】
○ 圧力センサ43が有する第2ピトー管44bの数は3つ以上であれば適宜変更可能である。要するに、第2ピトー管44bによって測定点群P1の外側に位置する3点以上の測定点からなる予備測定点群P2での風圧を測定できればよい。
【0076】
○ 圧力センサ43から第2ピトー管44bを省略してもよい。この場合は、各種の織物条件及び製織条件に応じて複数の距離Lの設定値を予め設定しておき、サブノズル15の噴射方向の調整に際して作業者が織物条件及び製織条件に対応した距離Lの設定値をもってサブノズル15に対する測定点群P1の位置調整を行う。サブノズル噴射方向調整装置40においては、予備測定点群P2での風圧の測定及び表示部52での予備調整が必要であることの表示が省略される。図9に示すサブノズル噴射方向調整処理においては、ステップS2及びステップS3の処理が省略される。
【0077】
○ 圧力センサ43が有する第1ピトー管44aの数は3つ以上であれば適宜変更可能である。要するに、第1ピトー管44aによって3点以上の測定点からなる測定点群P1での風圧を測定できればよい。
【0078】
○ 表示部52は、距離調整量Lbの表示にかえて、サブノズル15に対する測定点群P1の位置調整が必要であることを表示してもよい。この場合、図9に示すステップS7において、サブノズル15に対する測定点群P1の位置調整が必要であることを表示部52が表示する。また、表示部52は、距離調整量Lbの表示や、サブノズル15に対する測定点群P1の位置調整が必要であることの表示を省略してもよい。この場合、図9に示すステップS7の処理を省略するとともに、ステップS6において否定判断がされる間は、ステップS6の処理を繰り返すようにする。
【0079】
○ 表示部52は、回転調整量Lcの表示にかえて、サブノズル15の回転調整が必要であることを表示してもよい。この場合、図9に示すステップS9において、サブノズル15の回転調整が必要であることを表示部52が表示する。また、表示部52は、回転調整量Lcの表示や、サブノズル15の回転調整が必要であることの表示を省略してもよい。この場合、図9に示すステップS9の処理を省略するとともに、ステップS8において否定判断がされる間は、ステップS8の処理を繰り返すようにする。
【0080】
○ 表示部52は目標移動軌跡Ttを表示しなくてもよい。この場合、表示部52は、最大風圧位置Pc、目標位置Pt、及び移動軌跡Tpを表示する。そして、表示部52に表示される目標位置Ptが移動軌跡Tp上にないときは、移動軌跡Tpが目標位置Ptを含むようになるまで、作業者によってサブノズル15に対する測定点群P1の位置調整が行われる。
【0081】
また、表示部52は移動軌跡Tpを表示しなくてもよい。この場合、表示部52は、最大風圧位置Pc、目標位置Pt、及び目標移動軌跡Ttを表示する。そして、表示部52に表示される最大風圧位置Pcが目標移動軌跡Tt上にないときは、最大風圧位置Pcが目標移動軌跡Tt上に位置するようになるまで、作業者によってサブノズル15に対する測定点群P1の位置調整が行われる。
【0082】
上記のように目標移動軌跡Tt及び移動軌跡Tpのいずれかを表示部52が表示しない場合でも、測定点群P1の位置調整が行われた後に、作業者によってサブノズル15の周方向S12への回転調整が行われることにより、最大風圧位置Pcを目標位置Ptに調整できる。このように、この変更例によっても、サブノズル15の軸線方向S11への調整を行わずにサブノズル15の噴射方向の調整ができるため、サブノズル15の噴射方向の調整をより効率良くに行うことができる。
【符号の説明】
【0083】
L…距離、P1…測定点群、P2…予備測定点群、Pc…最大風圧位置、Pt…目標位置、Tp…移動軌跡、Tt…目標移動軌跡、Y…緯糸、14…筬、14a…筬内通路、14b…ガイド凹部、14c…筬羽、15…サブノズル、22…メインノズル、40…サブノズル噴射方向調整装置、43…圧力センサ、51…算出部、52…表示部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9