(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】ダスト固形化装置
(51)【国際特許分類】
B30B 9/32 20060101AFI20230620BHJP
B30B 11/02 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
B30B9/32 Z
B30B11/02 J
B30B9/32 F
(21)【出願番号】P 2020124095
(22)【出願日】2020-07-21
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇
(72)【発明者】
【氏名】西川 心太郎
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-156560(JP,A)
【文献】特開2001-259959(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第66328(EP,A1)
【文献】特開昭62-259700(JP,A)
【文献】特開平8-300191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 9/32
B30B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダストを貯留する貯留槽と、
該貯留槽内に設けられる成形孔を有する成形部材と、
前記成形孔内に対して進入、退避自在とされた加圧ロッドと、を備え、
前記加圧ロッドを前記成形孔内に進入させてその内部に充填されたダストを固形化して固形化物を得るダスト固形化装置であって、
前記成形孔は、前記加圧ロッドの進入部と排出部を有して前記貯留槽内に連通しており、前記排出部の外部には、前記加圧ロッドが前記進入部に進入することによって前記排出部から押し出された前記ダストを、排出方向とは異なる方向に導いて撹拌する撹拌経路が設けられているダスト固形化装置。
【請求項2】
前記撹拌経路は、前記排出部から排出された前記ダストを、排出方向と交差する方向に導く第1のガイド壁と、前記交差する方向に導かれた前記ダストを前記排出方向と逆方向に導く第2のガイド壁とを備えたリターン経路により構成されている、請求項1に記載のダスト固形化装置。
【請求項3】
前記貯留槽内には、前記成形孔の前記進入部の近傍に軸体が回動自在に支持され、前記軸体には該軸体の径方向外方に延出する撹拌体が固定されるとともに、前記加圧ロッドが前記進入部に進出したときに該加圧ロッドに当接して前記軸体および前記撹拌体を回動させる突起が設けられている請求項1または2に記載のダスト固形化装置。
【請求項4】
前記貯留槽内には、
回動自在に支持された第2の軸体と、
該第2の軸体に固定された撹拌羽根と、が設けられ、
前記第2の軸体および前記撹拌羽根を回動させる駆動源と、を備えている請求項1または2に記載のダスト固形化装置。
【請求項5】
前記撹拌経路は、前記ダストを一定区間、一定の断面積をもって通過させる管路である、請求項1に記載のダスト固形化装置。
【請求項6】
ダストを貯留する貯留槽と、
該貯留槽内に設けられる成形孔を有する成形部材と、
前記成形孔内に対して進入、退避自在とされた加圧ロッドと、を備え、
前記加圧ロッドを前記成形孔内に進入させてその内部に充填されたダストを固形化して固形化物を得るダスト固形化装置であって、
前記成形孔は、前記加圧ロッドの進入部と排出部を有して前記貯留槽内に連通しており、
前記貯留槽内には、前記成形孔の前記進入部の近傍に軸体が回動自在に支持され、前記軸体には該軸体の径方向外方に延出する撹拌体が固定されるとともに、前記加圧ロッドが前記進入部に進出したときに該加圧ロッドに当接して前記軸体および前記撹拌体を回動させる突起が設けられているダスト固形化装置。
【請求項7】
ダストを貯留する貯留槽と、
該貯留槽内に設けられる成形孔を有する成形部材と、
前記成形孔内に対して進入、退避自在とされた加圧ロッドと、を備え、
前記加圧ロッドを前記成形孔内に進入させてその内部に充填されたダストを固形化して固形化物を得るダスト固形化装置であって、
前記貯留槽内には、
回動自在に支持された第2の軸体と、
該第2の軸体に固定された撹拌羽根と、が設けられ、
前記第2の軸体および前記撹拌羽根を回動させる駆動源と、を備えているダスト固形化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダスト固形化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料等のレーザー加工、プラズマ加工、および溶接などの際に、発生するヒュームを含むダストは、作業者が吸引すると健康に深刻な被害を与える恐れがある。そのため、作業環境を清浄に保つため集塵機を作動させて、ダストを作業環境から除去することが行われている。ここで集塵機に収集されたダストは、かさ密度が小さい状態であり、この状態のままでは取り扱いが難しいためダストを圧縮して固形化し、扱いやすい個体の状態に加工することが行われる。
【0003】
このダストを固形化することに関して、特許文献1には、廃棄物を固形化する装置が開示されている。この文献では、ホッパに貯留された廃棄物をこのホッパの下方に設けられた桶型圧縮室に供給し、この圧縮室の上方と側方から圧縮して廃棄物を固形化する。その後、圧縮室が側方に移動し押し出し手段によって固形化物が押し出されて排出することが記載されている。
【0004】
特許文献2には、捕集した微粉末をスクリューコンベアで成形室に供給し、微粉末が所定量に達したとき圧縮スライダを下降させて微粉末を圧縮して固化する処理装置が開示されている。圧縮は微粉末をさらに供給して複数回行われ、固化した成形品が所定の大きさに達したときに成形室の下方に設けられた排出孔を開放し前記圧縮スライダを下降させて成形品を排出する。
【0005】
特許文献3には、集塵機で集塵された粉粒体をホッパの下方に設けられた成形室に供給し、成形部材と開閉部材により粒粉体を固形化する固形化装置が開示されている。前記成形室は水平に配置され固形化された粒粉体は、前記成形部材により前記成形室の外部に移動され、上方より下降する清掃部材により前記成形部材の先端に付着している固形化された粒粉体を落下させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平04-123898号公報
【文献】特開2010-069536号公報
【文献】特開2011-156560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
集められたダストは、実際は全体にわたって均質な組成であるとは限らず、固形化しやすい成分と固形化しづらい成分とが局在している場合がある。たとえば固形化しやすい成分とは、ヒュームを多く含んでいる部分であり、固形化しづらい部分とは金属がヒュームより大きいサイズに析出して粒子状になっている部分等である。このように局在によりばらつきがあるダストをそのまま供給して圧力をかけて固形化しようとしても、ダストに金属粒子を多く含む部分ではうまく固形化できない恐れが生じる。
【0008】
上述した特許文献1~3に記載の固形化装置では、固形化する対象のダストは、捕集や集塵されて集められたダストをそのまま装置の固形化処理をする機構に供給している。したがって、上述したように固まる成分と固まりづらい成分が局在している場合、これらの固形化装置では、所望の固形化ができない恐れがある。
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、簡便な構造でダストの成分を均一化し、ダストの固形化を安定して行うことができるダスト固形化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明のダスト固形化装置は、ダストを貯留する貯留槽と、該貯留槽内に設けられる成形孔を有する成形部材と、前記成形孔内に対して進入、退避自在とされた加圧ロッドと、を備え、前記加圧ロッドを前記成形孔内に進入させてその内部に充填されたダストを固形化して固形化物を得るダスト固形化装置であって、前記成形孔は、前記加圧ロッドの進入部と排出部を有して前記貯留槽内に連通しており、前記排出部の外部には、前記加圧ロッドが前記進入部に進入することによって前記排出部から押し出された前記ダストを、排出方向とは異なる方向に導いて撹拌する撹拌経路が設けられている。
このような発明によれば、排出部から押し出されたダストを、排出方向とは異なる方向に導いて撹拌する撹拌経路が設けられているので、加圧ロッドの往復動によって、ダストの成分を均一に撹拌することができる。
【0010】
本発明の一態様においては、前記撹拌経路は、前記排出部から排出された前記ダストを、排出方向と交差する方向に導く第1のガイド壁と、前記交差する方向に導かれた前記ダストを前記排出方向と逆方向に導く第2のガイド壁とを備えたリターン経路により構成されている。
このような構成によれば、撹拌経路として効率のよい構造を採用することができる。
【0011】
本発明の一態様においては、前記貯留槽内には、前記成形孔の前記進入部の近傍に軸体が回動自在に支持され、前記軸体には該軸体の径方向外方に延出する撹拌体が固定されるとともに、前記加圧ロッドが前記進入部に進出したときに該加圧ロッドに当接して前記軸体および前記撹拌体を回動させる突起が設けられている。
このような構成によれば、ロッドに協働して動作する撹拌体が設けられるので、簡便な構造を採用して、ダストをさらによく撹拌することができる。
【0012】
本発明の一態様においては、前記貯留槽内には、回動自在に支持された第2の軸体と、該第2の軸体に固定された撹拌羽根と、が設けられ、前記第2の軸体および前記撹拌羽根を回動させる駆動源と、を備える。
このような構成によれば、駆動源を有する撹拌羽根によってダストを撹拌できるので、ダストを効率よく確実に撹拌することができる。
【0013】
本発明の一態様においては、前記撹拌経路は、前記ダストを一定区間、一定の断面積をもって通過させる管路である。
このような構成によれば、撹拌経路として適切な構造を採用することができる。
【0014】
本発明の別の観点によるダスト固形化装置は、ダストを貯留する貯留槽と、該貯留槽内に設けられる成形孔を有する成形部材と、前記成形孔内に対して進入、退避自在とされた加圧ロッドと、を備え、前記加圧ロッドを前記成形孔内に進入させてその内部に充填されたダストを固形化して固形化物を得るダスト固形化装置であって、前記成形孔は、前記加圧ロッドの進入部と排出部を有して前記貯留槽内に連通しており、前記貯留槽内には、前記成形孔の前記進入部の近傍に軸体が回動自在に支持され、前記軸体には該軸体の径方向外方に延出する撹拌体が固定されるとともに、前記加圧ロッドが前記進入部に進出したときに該加圧ロッドに当接して前記軸体および前記撹拌体を回動させる突起が設けられている。
このような発明によれば、ロッドに協働して動作する撹拌体が設けられるので、簡便な構造を採用して、ダストを効率よく撹拌することができる。
【0015】
本発明の他の観点によるダスト固形化装置は、ダストを貯留する貯留槽と、該貯留槽内に設けられる成形孔を有する成形部材と、前記成形孔内に対して進入、退避自在とされた加圧ロッドと、を備え、前記加圧ロッドを前記成形孔内に進入させてその内部に充填されたダストを固形化して固形化物を得るダスト固形化装置であって、前記貯留槽内には、回動自在に支持された第2の軸体と、該第2の軸体に固定された撹拌羽根と、が設けられ、前記第2の軸体および前記撹拌羽根を回動させる駆動源と、を備えている。
このような構成によれば、駆動源を有する撹拌羽根によってダストを撹拌できるので、ダストを効率よく確実に撹拌することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡便な構造でダストの成分を均一化し、ダストの固形化を安定して行うことができるダスト固形化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態として示したダスト固形化装置の側断面図である。
【
図2】
図1に示したダスト固形化装置の貯留槽内の要部の拡大斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態のダスト固形化装置の貯留槽内の要部の拡大斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態のダスト固形化装置の貯留槽内の要部の拡大斜視図である。
【
図9】本発明の実施形態のダスト固形化装置の貯留槽の側断面図である。
【
図10】本発明の実施形態のダスト固形化装置の貯留槽内の要部の側断面図である。
【
図11】本発明の実施形態のダスト固形化装置の貯留槽内の要部の側断面図である。
【
図13】第2実施形態の変形例に係る要部の模式的拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態のダスト固形化装置の側断面図である。
図1に示すようにダスト固形化装置1は、装置本体2と、該装置本体2に設けられるダストDを貯留する貯留槽3と、該貯留槽3内に設けられた成形孔4を有する成形部材5と、前記成形孔4内に対して進入、退避自在とされた加圧ロッド6と、前記加圧ロッド6に対向する閉止ロッド7と、加圧ロッド6を駆動する加圧ロッド駆動シリンダ61と、閉止ロッド7を駆動する閉止ロッド駆動シリンダ71と、を備えている。ダスト固形化装置1は、前記加圧ロッド6を前記成形孔内4に進入させてその内部に充填されたダストDを固形化して固形化物Kを得るように構成されている。
【0019】
前記成形孔4は、前記加圧ロッド6の進入部42と排出部41を有して前記貯留槽3内に連通しており、前記閉止ロッド7は、前記成形孔4の排出部41から進入、退避自在とされ、前記加圧ロッド6は、前記成形孔の進入部42から進入、退避自在とされている。
【0020】
前記成形孔4の排出部41および進入部42に対向してそれぞれ装置本体2の第1の壁部31と第2の壁部32が配設されている。前記第1の壁部31および第2の壁部32には、各々前記成形孔4の軸線上に位置し、前記閉止ロッド7と前記加圧ロッド6のいずれか一方、または双方が往復移動する第1の孔21、および第2の孔22が形成され、前記成形孔4内で固形化された前記固形化物Kが、前記閉止ロッド7と前記加圧ロッド6とともに前記第1の孔21を通して、前記貯留槽3外へ搬送可能とされている。なお、ここで第1の壁部31と第2の壁部32は、貯留槽3内部の側壁も構成している。
【0021】
前記装置本体2には、前記貯留槽3の外部近傍に、前記第1の孔21に交差して上下方向に延びる排出孔23が形成されている。前記排出孔23内に前記閉止ロッド7と前記加圧ロッド6との間に挟持された固形化物Kが移動したときに、該固形化物Kを前記排出孔23に落下排出させる。
【0022】
また、前記装置本体2には、前記貯留槽3、および前記排出孔23の近傍に、前記第1の孔21、および前記第2の孔22に交差して上下方向に延びる防塵孔24、25が形成されている。
【0023】
また、前記排出孔23は、前述したように前記第1の孔21に交差して上下方向に延び、前記第1の孔21の上部がウェイト付与部材配置部26とされ、前記第1の孔の下部が排出孔23とされるように形成されている。前記ウェイト付与部材配置部26には、前記第1の孔21内に前記加圧ロッド6、閉止ロッド7、およびこれらの間に挟持された固形化物Kが移動したときに、これら加圧ロッド6、閉止ロッド7上で転動自在、かつ前記固形化物K上に位置したときに該固形化物Kを前記排出孔23側へ排出するウェイト付与部材28が配設されている。本実施の形態では、ウェイト付与部材28は、一定値以上の重量を有する円柱形状の部材であって、ウェイト付与部材配置部26に2個縦積みに配置されている。
【0024】
前記排出部41の外部には、前記加圧ロッド6が前記進入部に進入することによって前記排出部41から押し出された前記ダストDを、排出方向hとは異なる方向に導いて撹拌する撹拌経路rが設けられている。
図2は、貯留槽3内の要部の斜視図であり、
図3は、
図2のA-A線断面矢視図である。なお、
図2、
図3は、ダストDが充満している貯留槽3内を図示しているが、図を見やすくするため、
図1で描写しているダストDを表す砂目模様の描写は省略している。以下、貯留槽3内を図示する場合においては同様の省略が行われる。
【0025】
図2、3に示すように本実施形態における撹拌経路rは、
図3に示す排出方向hと交差する方向に導く第1のガイド壁81と、前記交差する方向に導かれた前記ダストを前記排出方向hと逆方向に導く第2のガイド壁82とを備えたリターン経路r1により構成されている。第1のガイド壁81は、貯留槽3の側壁31とこの側壁31とほぼ面一に位置決めされた閉止ロッド7の先端部72によって構成されている。
図2に示す通り、第2のガイド壁82は、成形部材5の上部に位置する天板82aと成形部材5の左右に位置する側板82b、82bとでコの字型に成形部材5を囲むように構成されている。第2のガイド壁82は、第1のガイド壁81と隙間なく位置決めされ貯留槽3内に固定されている。このような構成のもと形成されたリターン経路r1は、貯留槽3内に開口している。
【0026】
次に上記のように構成されたダスト固形化装置1の動作について説明する。ダストDは、固形化しやすい成分を多く含む部分と固形化しづらい成分を多く含む部分とでその組成が貯留槽3内で局在していることがあるため、本実施形態におけるダスト固形化装置1は、固形化の工程を行う前にダストDを攪拌する工程をおこなう。
【0027】
ダストDを攪拌する工程においては、上述したように、閉止ロッド7の先端部72が、側壁31とほぼ面一の位置に固定されるとともに、加圧ロッド6を2点鎖線で示されたように成形孔4の外側から、進入部42を経て排出部41との間で往復動させる。この加圧ロッド6の往復動にともなってダストDが成形孔4内に押し込まれ、成形孔4内を排出方向hの向きに移動し排出部41から押し出される。ダストDは、流動性の粉体なので、排出部41から押し出されたダストDは、第1ガイド壁81に沿って
図3の紙面上で上側に移動する。上側に移動したダストDは、さらに第2のガイド壁82に沿って移動し結果として、符号r1で示されるようにリターン経路r1が構成され、進入部42の外部近傍まで運ばれ、貯留槽3内の加圧ロッド6の上部に充填されているダストDと混合され攪拌される。
【0028】
上述のリターン経路r1は、
図2における天板82aについて説明したが、この作用は、側板82b、82bについても同様のことが生じ、
図2に示すように、側板82b、82bについてもリターン経路r1、r1が形成されている。
【0029】
上述の攪拌工程が十分に行われ、ダストDの均一化が得られた後、固形化工程が行われる。固形化工程は、
図1に示すように、閉止ロッド7を成形孔4内で静止固定し、加圧ロッド6を上述の攪拌工程と同様に往復動をさせる。複数回の往復動によって成形孔4内にダストDが押し込まれ、圧力をかけられる。圧力をかけられたダストDは、固形化物Kに成形される。所望の大きさに固形化物Kが成形された後、固形化物Kは、加圧ロッド6と閉止ロッド7の間に挟持され、加圧ロッド6と閉止ロッド7とともに第1の孔21を通過して、貯留槽3外部の排出孔23まで搬送され排出孔23に落下排出される。以上の攪拌工程と固形化工程を適宜繰り返し貯留槽3内のダストDが連続的に固形化処理される。
【0030】
上述したとおり、本実施形態におけるダスト固形化装置1は、固形化工程の前に、攪拌工程を採用するので、ダストDの組成が不均一で固形化しやすい部分と固形化しづらい部分とが局在していたとしても、ダストDの組成を均一化し、固形化処理ができる。したがって、固形化処理を安定して実現することができる。本実施形態のダスト固形化装置1は、従来の構造に第2のガイド壁82を設けるという簡便な構造を付与するだけで、従来の構造を大きく改変することなくダストDの組成を均一化する攪拌機構を実現できる。また、攪拌工程は、閉止ロッド7の静止位置と、加圧ロッド6の往復動を適宜制御するだけなので、加圧工程とほぼ同等の制御によって攪拌工程を実現できる。したがって、簡便な構造、制御でダストの組成を均一化し、ダストの固形化を安定して行うことができる。
【0031】
(第2実施形態)
図4は、本実施形態の貯留槽3内の要部の拡大斜視図である。
図5と
図6は、
図4のB-B線断面矢視図である。本実施形態が第1実施形態と異なっているのは、第1実施形態の構成要素に加えて、
図5に示すように、貯留槽3内に、進入部42の近傍に軸体92が回動自在に支持され、軸体92にはこの軸体92の径方向外方に延出する撹拌体93が固定されるとともに、加圧ロッド6が進入部42に進出したときにこの加圧ロッド6に当接して軸体92および撹拌体93を回動させる突起94が設けられている点である。
【0032】
図4に示すように、軸体92は、貯留槽3内の側壁にボルトで固定された軸支持板91、91に回動自在に支持されている。撹拌体93は、固定フレーム93aとサイドフレーム93b、93bと支持ロッド93cとを備えている。撹拌体93は、軸体92に固定フレーム93aを介してボルトで固定されている。固定フレーム93aの両端には、サイドフレーム93b、93bが固定されており、サイドフレーム93b、93bを補強支持する支持ロッド93cがサイドフレーム93b、93b間に固定されている。
【0033】
サイドフレーム93bには、その下部にダストD攪拌のための撹拌板93dが設けられている。撹拌板93dは、ダストDを掬い上げることができるように、それぞれのサイドフレーム93b、93b下部から一定の角度を有して加圧ロッド6の方向に延びるように設けられている。
【0034】
次に、撹拌体93を含んで構成された本実施形態の装置の攪拌工程について
図5と
図6を参照して説明する。本実施形態の攪拌工程以外の動作については、第1実施形態と同じであるのでその説明を省略する。また、本実施形態におけるリターン経路r1の構成作用についても、第1実施形態と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0035】
図6に示すように、加圧ロッド6が、貯留槽3内に位置せず突起94に当接していないときは、撹拌体93は、撹拌板93dが貯留槽3の下方に位置するように図示しない付勢部材によって付勢されている。本実施形態では付勢部材としては、軸体92を付勢するねじりばね(図示せず)が使用されている。
【0036】
図5に示すように、加圧ロッド6が成形部材5に向かって移動すると、加圧ロッド6と突起94が当接する。それに連動して軸体92を軸として撹拌体93が回動する。したがって、
図5と
図6のように加圧ロッド6の往復動によって図上矢印Pで示すように撹拌体93が揺動する。この撹拌体93の揺動によって、撹拌板93dは、成形部材5の両側方であって紙面に垂直な方向にあるダストDを掬い上げるとともに、
図5の位置にあるときに、ダストDを撹拌板93dの傾斜に沿って進入部42の近傍へ移動させる。ダストDは、この移動に伴って、加圧ロッド6の上部近傍にあるダストDと混合され撹拌される。
【0037】
したがって、第1実施形態で得られた作用効果である、リターン経路r1によるダストDの撹拌に加え、撹拌体93の揺動によってさらにダストDを撹拌することができるので、撹拌効率を向上させることができる。撹拌体93の動作は、加圧ロッド6の往復動に共働するものなので、あらたに駆動源をもうけることなく従来の構造に大きな変更を加えることなく簡便な構造を採用して撹拌効率を向上することができる。
【0038】
本実施形態では、リターン経路r1を構成するのに、第2のガイド壁82として天板82aのみを採用しているが、第1実施形態と同様に側板82bを採用してもよい。
【0039】
本実施形態では、付勢部材としてねじりバネを採用したがこれに限定されず、撹拌体93を
図6に示す位置に付勢するものであればよい。例えばねじりばねに替えて、サイドフレーム93b、93bのいずれかの先端部と貯留槽3内の底部との間に、引っ張りばねを設けてもよい。
【0040】
本実施形態においては、撹拌板93dは、サイドフレーム93bの下部にダストDを掬い上げるように設けられたが、これに限定されず、サイドフレーム93bの任意の位置から加圧ロッド6側に延出するように複数の撹拌板92dが設けられてよい。撹拌板92dの形状や設けられる位置や数は、撹拌の効率を考慮して適宜選択可能である。
【0041】
(第2実施形態の変形例)
次に、
図12、
図13を参照して第2実施形態の変形例について説明する。
図12は、第2実施形態の加圧ロッド6と突起94とを含む要部の模式的拡大図である。
図13は、同じ部分の本変形例の模式図である。
図12に示すように、第2実施形態では、加圧ロッド6の往復動Tによって加圧ロッド6に突起94の先端が当接し摺動することによって、撹拌体93が矢印Pのごとく揺動する。この撹拌体93の揺動によってダストDを攪拌する。本変形例では
図13に示すように、突起94の先端にローラー94aが設けられている。このように突起94の先端にローラー94aを設けるので、加圧ロッド6と突起94の動作に係る抵抗を低減でき、第2実施形態の作用効果に加え、さらに滑らかな撹拌動作を実施することが可能となる。
【0042】
(第3実施形態)
図7は、本実施形態の貯留槽3内の要部の拡大斜視図である。
図8は、
図7のC-C線断面矢視図である。本実施形態が第1実施形態と異なっているのは、第1実施形態の構成要素に加えて、
図7に示すように、貯留槽3内に、回動自在に支持された第2の軸体96と、この第2の軸体96に固定された撹拌羽根96cとが設けられ、第2の軸体96および撹拌羽根96cを回動させる駆動源96dが設けられている点である。
【0043】
さらに詳細には、
図7に示すように、軸体96は、貯留槽3の側壁に固定された支持フレーム95により回動自在に支持されている。軸体96の一部を構成するロッド96aには、ロッド96aから左右の一定寸法離間した位置に1対の回転円盤96b、96bが固定されている。各回転円盤96b、96bの対向する内面には、それぞれ3つの撹拌羽根96cが固定されている。支持フレーム95には、軸体96を回転駆動する駆動源96dとしてロータリアクチュエータが固定されている。
【0044】
次に、撹拌羽根96cを含んで構成された本実施形態の装置の攪拌工程について
図7と
図8を参照して説明する。本実施形態の攪拌工程以外の動作については、第1実施形態と同じであるのでその説明を省略する。また、本実施形態におけるリターン経路r1の構成作用についても、第1実施形態と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0045】
本実施形態においては、撹拌工程の際に、ロータリアクチュエータ96dにより
図7に示す矢印Qの向きに回転羽根96cを回転させる。この撹拌羽根96cの回転により、ダストDの攪拌が行われる。すなわち、
図8に示す第1実施形態と同等の作用を有するリターン経路r1の効果に加えて撹拌羽根96cによりダストDを攪拌する。
【0046】
したがって、本実施形態では、第1実施形態と同様の作用効果に加えて撹拌羽根96cの攪拌効果を追加するので効率のよいダストDの撹拌を実現することができる。ロータリアクチュエータ96dによる撹拌羽根96cの回転駆動は、加圧ロッド6と閉止ロッド7による動作とは独立している。このことにより、加圧ロッド6と閉止ロッド7の固形化処理の工程中にも同時に撹拌動作を連続的に実行できるので、効率よくダストDの組成を均質化することができる。
【0047】
本実施形態では、撹拌羽根96cの回転方向として矢印Qの向きが採用されているが、これに限定されず、撹拌羽根96cを矢印Qの逆に回転させてもよい。また、矢印Qの回転とその逆回転を相互に加えるようにしてもよい。撹拌羽根96cの回転制御は、撹拌の状況を考察しながら適宜選択可能である。
【0048】
(第4実施形態)
図9は、本実施形態のダスト固形化装置1の貯留槽3の側断面図である。本実施形態が第1実施形態と異なっているのは、撹拌経路r2として、ダストDを一定区間、一定の断面積をもって通過させる管路97を採用する点である。管路97は、貯留槽3の下部から側壁31の外部を経由して貯留槽の上部に連通するように形成されている。
【0049】
図9に示すように、本実施形態の攪拌工程においては、閉止ロッド7が管路97の下部に管路97の内部面とほぼ面一になるように静止固定される。この状態で加圧ロッド6を矢印のように往復動させることにより、撹拌経路r2が矢印のようにダストを循環させダストDを攪拌することができる。したがって、第1実施形態と同様の作用を有し、同様の効果を得ることができる。
【0050】
(第5実施形態)
図10は、本実施形態のダスト固形化装置の貯留槽内の要部の側断面図である。本実施形態が第2実施形態と異なっているのは、リターン経路r1を形成していない点である。その他の撹拌体93を含む構成要素の作用効果は、第2実施形態と同様である。本実施形態においては、装置構成を簡便化することができる。
【0051】
(第6実施形態)
図11は、本実施形態のダスト固形化装置の貯留槽内の要部の側断面図である。本実施形態が第3実施形態と異なっているのは、リターン経路r1を形成していない点である。その他の撹拌羽根96cを含む構成要素の作用効果は、第3実施形態と同様である。本実施形態においては、装置構成を簡便化することができる。
【0052】
上述の実施形態においては、ダストDは、貯留槽3内に充満していることとされたが、ダストDの量に関係なく、すなわち貯留槽3内のダストDが充満するほど多くなくても、本発明の作用効果は有効に効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 ダスト固形化装置
3 貯留槽
4 成形孔
41 排出部
42 進入部
5 成形部材
6 加圧ロッド
81 第1のガイド壁
82 第2のガイド壁
92 軸体
93 撹拌体
94 突起
96 第2の軸体
96c 撹拌羽根
96d 駆動源(ロータリアクチュエータ)
97 管路
D ダスト
K 固形化物
r 撹拌経路
r1 リターン経路