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特許7298612フラットケーブルおよびフラットケーブルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】フラットケーブルおよびフラットケーブルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/08 20060101AFI20230620BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
H01B7/08
H01B13/00 525
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020530082
(86)(22)【出願日】2019-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2019025184
(87)【国際公開番号】W WO2020012952
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2018131852
(32)【優先日】2018-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小島 千明
(72)【発明者】
【氏名】松田 龍男
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-181775(JP,A)
【文献】特開昭58-094708(JP,A)
【文献】特開2002-352631(JP,A)
【文献】特開2013-073693(JP,A)
【文献】特開2017-068984(JP,A)
【文献】特開2011-165393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/08
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に配列された複数本の導体と、
前記複数本の導体の第1面上と前記第1面に対向する面である第2面上とに前記複数本の導体に沿って形成された絶縁層と、
前記複数本の導体の端部の前記第1面が外部に露出されている露出部と、
前記露出部に対向する前記第2面上に形成された補強板とを有するフラットケーブルであって、
前記絶縁層は、前記複数本の導体の前記第1面に接して設けられた第1の絶縁層と、前記複数本の導体の前記第2面に接して設けられ、前記第1の絶縁層と対向する第2の絶縁層と、を含み、
前記補強板は、前記露出部に対向する前記第2面上において、前記複数本の導体上に直接形成されており、前記露出部に連なる前記第1面に対向する前記第2面上において、前記複数本の導体と前記第2面上の前記第2の絶縁層との間に形成されており、
前記補強板は前記露出部に対向する位置にスペーサ部材を有し、前記スペーサ部材の、前記複数本の導体と向かい合う面と反対の面が露出しているフラットケーブル。
【請求項2】
前記露出部に連なる前記第1面に対向する前記第2面上において、前記補強板は前記複数本の導体上に直接形成されている請求項1に記載のフラットケーブル。
【請求項3】
平行に配列された複数本の導体と、
前記複数本の導体の第1面上と前記第1面に対向する面である第2面上とに前記複数本の導体に沿って形成された絶縁層と、
前記複数本の導体の端部の前記第1面が外部に露出されている露出部と、
前記露出部に対向する前記第2面上に形成された補強板と、を有するフラットケーブルであって、
前記絶縁層は、前記複数本の導体の前記第1面に接して設けられた第1の絶縁層と、前記複数本の導体の前記第2面に接して設けられた第2の絶縁層と、前記第2の絶縁層上に設けられた第3の絶縁層と、を含み、
前記補強板は、前記露出部に対向する前記第2面上において、前記複数本の導体上に直接形成されており、前記露出部に連なる前記第1面に対向する前記第2面上において、前記第2の絶縁層と前記第3の絶縁層との間に形成されており、
前記補強板は前記露出部に対向する位置にスペーサ部材を有し、前記スペーサ部材の、前記複数本の導体と向かい合う面と反対の面が露出しているフラットケーブル。
【請求項4】
前記絶縁層を覆うシールド層をさらに有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフラットケーブル。
【請求項5】
平行に配列された複数本の導体と、
前記複数本の導体の第1面上と前記第1面に対向する面である第2面上とに前記複数本の導体に沿って形成された絶縁層と、
前記複数本の導体の端部の前記第1面が外部に露出されている露出部と、
前記露出部に対向する前記第2面上に形成された補強板とを有するフラットケーブルの製造方法であって、
前記第1面上に第1の間隔を空けて配置した第1の絶縁層と、
前記第2面上に前記第1の間隔を空けた箇所と対応する箇所に第2の間隔を空けて配置した第2の絶縁層と、
前記第2の間隔よりも長い補強板と、を前複数本の導体に貼り付ける貼付工程と、
前記補強板を前記複数本の導体の長手方向に分割する分割工程と、を有し、
前記貼付工程において、前記第1の絶縁層は、前記複数本の導体の前記第1面と接するように、前記第2の絶縁層は、前記複数本の導体の前記第2面と接するように貼り付けられ、
前記補強板はスペーサ部材を有しており、
前記貼付工程において、前記補強板は、前記第1の間隔から露出した部分に連なる前記第1面に対向する前記第2面上において、前記複数本の導体と前記第2面上の前記第2の絶縁層との間に配置され、かつ前記スペーサ部材の、前記複数本の導体と向かい合う面と反対の面が、前記第2の間隔において、前記第2の絶縁層から露出するように配置されるフラットケーブルの製造方法。
【請求項6】
平行に配列された複数本の導体と、
前記複数本の導体の第1面上と前記第1面に対向する面である第2面上とに前記複数本の導体に沿って形成された絶縁層と、
前記複数本の導体の端部の前記第1面が外部に露出されている露出部と、
前記露出部に対向する前記第2面上に形成された補強板と、を有するフラットケーブルの製造方法であって、
前記第1面上に第1の間隔を空けて配置した第1の絶縁層と、
前記第2面上に前記第1の間隔を空けた箇所と対応する箇所に第2の間隔を空けて配置した第2の絶縁層と、
前記第2の間隔よりも長い補強板と、を前記複数本の導体に貼り付ける貼付工程と、
前記補強板を前記複数本の導体の長手方向に分割する分割工程と、を有し、
前記貼付工程において、前記補強板が前記第2の絶縁層に貼り付けられ、前記第2の絶縁層上の前記補強板の上に第3の絶縁層が配置されるフラットケーブルの製造方法。
【請求項7】
前記補強板が、前記第2の間隔を空けた位置に前記複数本の導体に貼り付けられる面とは反対側の面にスペーサ部材を有する、請求項に記載のフラットケーブルの製造方法。
【請求項8】
前記第3の絶縁層は前記補強板全体を覆う、請求項6または請求項7に記載のフラットケーブルの製造方法。
【請求項9】
前記補強板の前記複数本の導体に対向する面、および、前記第1の間隔に接する前記第1の絶縁層の端部の前記複数本の導体に対向する面に、予め接着層が設けられている、請求項から請求項のいずれか1項に記載のフラットケーブルの製造方法。
【請求項10】
前記複数本の導体の前記露出部に金メッキを施すメッキ工程をさらに備える、請求項から請求項のいずれか1項に記載のフラットケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フラットケーブルおよびフラットケーブルの製造方法に関する。
【0002】
本出願は、2018年7月11日出願の日本出願第2018-131852号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0003】
フラットケーブルの一種である、フレキシブルフラットケーブル(FFC)は、CDやDVDプレーヤ等のAV機器、コピー機やプリンタ等のOA機器、その他電子・情報機器の内部配線等の多くの分野で、省スペース化と簡便な接続を目的として用いられている。また、機器の信号周波数が高くなるとノイズの影響が大きくなることから、シールドされたシールドフラットケーブルが用いられる。
【0004】
フラットケーブルは、平行に配列された複数本の導体と、これらの導体の両端部が露出するように導体の並列面の両面に絶縁層が貼り付けられている。フラットケーブルの端部は端子部として機能し、特許文献1に開示されているように、コネクタとの電気接続の信頼性を高める観点から、所定の強度を持たせるために補強板を設けたり、ウィスカーの発生を防止するために、金メッキが施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-156258号公報
【発明の概要】
【0006】
本開示の一態様に係るフラットケーブルは、平行に配列された複数本の導体と、前記複数本の導体の第1面上と前記第1面に対向する面である第2面上とに前記複数本の導体に沿って形成された絶縁層と、前記導体の端部の前記第1面が外部に露出されている露出部と、前記露出部に対向する前記第2面上に形成された補強板とを有するフラットケーブルであって、前記補強板は、前記露出部に対向する前記第2面上において、前記導体上に直接形成されており、前記露出部に連なる前記第1面に対向する前記第2面上において、前記導体と前記第2面上の前記絶縁層との間に形成されている。
【0007】
また、本開示の一態様に係るフラットケーブルの製造方法は、平行に配列された複数本の導体と、前記複数本の導体の第1面上と前記第1面に対向する面である第2面上とに前記複数本の導体に沿って形成された絶縁層と、前記導体の端部の前記第1面が外部に露出されている露出部と、前記露出部に対向する前記第2面上に形成された補強板とを有するフラットケーブルの製造方法であって、前記第1面上に第1の間隔を空けて配置した第1の絶縁層と、前記第2面上に前記第1の間隔を空けた箇所と対応する箇所に第2の間隔を空けて配置した第2の絶縁層と、前記第2の間隔よりも長い補強板とを、前記導体に貼り付ける貼付工程と、前記補強板を前記導体の長手方向に分割する分割工程を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の第1の実施形態に係るフラットケーブルの平形導体を含む箇所における長手方向に沿った断面図である。
図2】第1の実施形態に係るフラットケーブルの製造方法を説明するための断面図である。
図3】第1の実施形態に係るフラットケーブルの製造方法を説明するための断面図である。
図4】第1の実施形態に係るフラットケーブルの製造方法を説明するための模式図である。
図5】第1の実施形態に係るフラットケーブルの端子部の斜視図である。
図6】第2の実施形態に係るフラットケーブルの製造方法を説明するための断面図である。
図7】第2の実施形態に係るフラットケーブルの製造方法を説明するための断面図である。
図8】第2の実施形態に係るフラットケーブルの端子部の斜視図である。
図9】第3の実施形態に係るフラットケーブルの製造方法を説明するための断面図である。
図10】第3の実施形態に係るフラットケーブルの製造方法を説明するための断面図である。
図11】第3の実施形態に係るフラットケーブルの端子部の斜視図である。
図12】従来のフラットケーブルの平形導体を含む箇所における長手方向に沿った断面図である。
図13】従来のフラットケーブルの平形導体を含む箇所における長手方向に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【本開示が解決しようとする課題】
【0009】
近年、信号の高速伝送の必要性が高まっており、フラットケーブルの絶縁耐圧や高周波特性を確保する必要がある。このため、フラットケーブルの絶縁層として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、あるいはポリフェニレンサルファイド等の厚い樹脂が用いられる。
【0010】
例えば、図12に示すように、平形導体110の並列面の両面に第1の絶縁層121と第2の絶縁層122を貼り合わせて絶縁層120を形成したフラットケーブルの場合、第2の絶縁層122が厚いと、端末部の補強のために補強板130を第2の絶縁層122の下面側に設けると、端末部の厚さdが大きくなって、コネクタに挿入できない場合が生じる。また、補強板130を設けないと端末部が柔らかすぎてコネクタの挿入が困難になる。
【0011】
また、図13に示すように、第1の絶縁層121と第2の絶縁層122の端部を除去し、第2の絶縁層122の下面側に補強板130を設けて、この補強板130を平形導体110に貼り付けた場合、端末部の厚さは、補強板130の厚さによって所定の厚さとすることができる。しかし、第2の絶縁層122が厚いため、平形導体110と補強板130との間に大きな隙間Aが生じ、平形導体110が補強板130から剥がれることがあった。また、平形導体110の露出面を金メッキする際に、金メッキ液が隙間Aに残るという問題があり、平形導体110と絶縁層120との間に浸透し、金メッキ液による腐食が発生するおそれがあった。
【0012】
本開示は、これらの実情に鑑みてなされたものであり、コネクタと電気接続される端末部の厚みの調整が容易であり、金メッキを行った場合に、金メッキ液が導体と絶縁層の界面に侵入することがなく、十分な端末強度を得ることができる、フラットケーブルおよびその製造方法を提供することをその目的とする。
【本開示の効果】
【0013】
本開示によれば、コネクタと電気接続される端末部の厚みの調整が容易であり、金メッキを行った場合に、金メッキ液が導体と絶縁層の界面に侵入することがなく、十分な端末強度を得ることができる、フラットケーブルおよびその製造方法を提供することができる。
(本開示の実施形態の説明)
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
(1)本開示の一態様に係るフラットケーブルは、平行に配列された複数本の導体と、前記複数本の導体の第1面上と前記第1面に対向する面である第2面上とに前記複数本の導体に沿って形成された絶縁層と、前記導体の端部の前記第1面が外部に露出されている露出部と、前記露出部に対向する前記第2面上に形成された補強板とを有するフラットケーブルであって、前記補強板は、前記露出部に対向する前記第2面上において、前記導体上に直接形成されており、前記露出部に連なる前記第1面に対向する前記第2面上において、前記導体と前記第2面上の前記絶縁層との間に形成されている。
【0014】
この構成により、コネクタと電気接続されるフラットケーブルの端末部の厚みの調整が容易となり、金メッキを行った場合に、金メッキ液が導体と絶縁層の界面に侵入することがなく、十分な端末強度を得ることができる。
【0015】
(2)フラットケーブルにおいて、前記露出部に連なる前記第1面に対向する前記第2面上において、前記補強板は前記導体上に直接形成されていてもよい。
【0016】
(3)フラットケーブルにおいて、前記露出部に連なる前記第1面に対向する前記第2面上において、前記絶縁層は前記導体上に形成された第2の絶縁層と前記第2の絶縁層上に形成された第3の絶縁層を有し、前記補強板は前記第2の絶縁層と前記第3の絶縁層の間に形成されていてもよい。
【0017】
(4)フラットケーブルにおいて、前記補強板は前記露出部に対向する位置にスペーサを有していてもよい。
【0018】
(5)フラットケーブルにおいて、前記導体の長手方向に沿う断面において、前記第3の絶縁層は前記補強板の前記導体に対向する側の面の反対の面の全体を覆っていてもよい。
【0019】
(6)フラットケーブルは、前記絶縁層を覆うシールド層をさらに有していてもよい。この構成により、コネクタと電気接続されるフラットケーブルの端末部の厚みの調整が容易で、金メッキを行った場合に、金メッキ液が導体と絶縁層の界面に侵入することがなく、十分な端末強度を有するシールドフラットケーブルを得ることができる。
【0020】
(7)本開示の一態様に係るフラットケーブルの製造方法は、平行に配列された複数本の導体と、前記複数本の導体の第1面上と前記第1面に対向する面である第2面上とに前記複数本の導体に沿って形成された絶縁層と、前記導体の端部の前記第1面が外部に露出されている露出部と、前記露出部に対向する前記第2面上に形成された補強板とを有するフラットケーブルの製造方法であって、前記第1面上に第1の間隔を空けて配置した第1の絶縁層と、前記第2面上に前記第1の間隔を空けた箇所と対応する箇所に第2の間隔を空けて配置した第2の絶縁層と、前記第2の間隔よりも長い補強板とを、前記導体に貼り付ける貼付工程と、前記補強板を前記導体の長手方向に分割する分割工程を有する。
【0021】
この構成により、補強板をケーブル内部に位置させることができ、コネクタと電気接続されるフラットケーブルの端末部の厚みの調整が容易となり、金メッキを行った場合に、金メッキ液が導体と絶縁層の界面に侵入することがなく、十分な端末強度を有するフラットケーブルを得ることができる。
【0022】
(8)前記貼付工程は、前記補強板が前記第2の絶縁層に貼り付けられ、前記第2の絶縁層上の前記補強板の上に第3の絶縁層が配置されてもよい。この構成により、補強板の一部を絶縁層で挟むことによって、補強板の一部を導体から離すことができる。
【0023】
(9)前記補強板が、前記第2の間隔を空けた位置に前記導体に貼り付けられる面とは反対側の面にスペーサ部材を有していてもよい。この構成により、スペーサ部材の厚さを変えることによって、コネクタと電気接続される端末部の厚みの調整が可能となる。
【0024】
(10)前記第3の絶縁層は前記補強板全体を覆っていてもよい。この構成により、補強板の一部を絶縁層で挟むことによって、補強板の一部を導体から離すことができる。
【0025】
(11)前記補強板の前記導体に対向する面、および、前記第1の間隔に接する前記第1の絶縁層の端部の前記導体に対向する面に、予め接着層が設けられていることが望ましい。これにより、金メッキを行った場合に、金メッキ液が導体と絶縁層の界面に侵入することがなくなる。
【0026】
(12)前記導体の露出部に金メッキを施すメッキ工程をさらに備えていることが望ましい。この構成により、ウィスカーの発生を防止することができる。
(本開示の実施形態の詳細)
以下に、本開示に係るフラットケーブルおよびその製造方法の具体例を、図面を参照しながら説明する。以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。なお、本開示は以下の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、複数の実施形態について組み合わせが可能である限り、本開示は任意の実施形態を組み合わせたものを含む。
(第1の実施形態)
図1は、本開示の第1の実施形態に係るフラットケーブルの平形導体を含む箇所における長手方向に沿った断面図であり、図2図3は、それぞれ第1の実施形態に係るフラットケーブルの製造方法を説明するための断面図である。また、図4は、第1の実施形態に係るフラットケーブルの製造方法を説明するための模式図である。図5は、第1の実施形態に係るフラットケーブルの端子部の斜視図である。
【0027】
本実施形態のフラットケーブル100は、図1及び図5に示すように、複数本の平形導体110、第1の絶縁層121と第2の絶縁層122からなる絶縁層120、および、フラットケーブル100の両端部に設けた補強板130を有している。また、図5に示すように、第1の絶縁層121、第2の絶縁層122の表面の少なくとも一方をシールド層150で覆っていてもよい。なお、図1図4においては、シールド層150の図示を省略している。さらに、図示していないが、絶縁層120とシールド層全体を保護層で覆うようにしてもよい。本実施形態のフラットケーブル100は、補強板130が平形導体110の露出部を支持するとともに、補強板130の一部(平形導体110の露出部より絶縁層120側)が、図5に示すように、表面側(Z軸正方向側、以下同様。)に位置する第1の絶縁層121に接着層141によって接着されており、裏面側(Z軸負方向側、以下同様。)に位置する第2の絶縁層122に裏面側接着層133によって接着されている。
【0028】
同じく、図5に示すフラットケーブル100の端部の斜視図を参照すると、フラットケーブル100は、断面が平形形状でX軸方向に延びる
+平形導体110をY軸方向に複数本平行に並べ、平形導体110の並列面(XY平面)と直交する方向(Z方向)の両面を、表面側の第1の絶縁層121、裏面側の第2の絶縁層122により挟んで構成される。絶縁層120のない平形導体110の露出部が、コネクタと接続する際の接続端子部となる。平形導体110は、第1面111と第2面112を有する。また、平形導体110は、露出面113を有する。
【0029】
フラットケーブル100は、平行に配列された複数本の平形導体110と、複数本の平形導体110の第1面111上と第1面111に対向する面である第2面112上とに複数本の平形導体110に沿って形成された絶縁層120と、平形導体110の端部の第1面111が外部に露出されている露出部と、露出部に対向する第2面112上に形成された補強板130とを有する。
【0030】
平形導体110は、例えば、銅箔、ニッケルメッキ軟銅箔等の金属からなり、例えば、厚さが12μm~100μmで、幅が0.2~0.8mm程度であり、ピッチPが0.4~1.5mmの適宜の大きさで配列される。この平形導体110の配列状態は、第1の絶縁層121、第2の絶縁層122により挟まれて保持される。平形導体110は信号伝送用として用いられるが、所定の平形導体110は、基板側のコネクタ端子に接続された際に、接地されてもよい。図5では、4本の平形導体110を記載しているが、平形導体110の本数は4本に限らない。
【0031】
第1の絶縁層121および第2の絶縁層122は、フラットケーブル100の絶縁耐圧や高周波特性を確保するための層であって、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、あるいはポリフェニレンサルファイド等の樹脂から形成されている。第1の絶縁層121の平形導体110の露出部との際を含む部分に、平形導体110および第1の絶縁層121との接着性を向上させる材料の接着層141を設けている。
【0032】
補強板130は、本実施形態の場合、樹脂層132の表面側全面に表面側接着層131を設け、樹脂層132の裏面側中央に樹脂からなるスペーサ部材134を設け、さらにスペーサ部材134の載置面以外に裏面側接着層133を設けた構成をしており、X-Z断面で凸形状となっている。樹脂層132としては、例えば、ポリプロピレンが用いられ、表面側接着層131としては、平形導体110および樹脂層132との接着性の良好な材料が用いられる。また、裏面側接着層133としては、絶縁層120との接着性が良好な材料が用いられる。スペーサ部材134の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートが用いられる。図5で示すように、本実施形態では、スペーサ部材134の厚さを変更することによって、端子部の厚さdを調整することができる。
【0033】
補強板130は、平形導体110の端部の第1面111が外部に露出されている露出部に対向する第2面112上において、平形導体110上に直接形成されており、露出部に連なる第1面111に対向する第2面112上において、平形導体110と第2面112上の絶縁層122との間に形成されている。また、露出部に連なる第1面111に対向する第2面112上において、補強板130は平形導体110上に直接形成されている。また、補強板130のスペーサ部材134は、露出部に対向する位置に設けられている。
【0034】
次に、本実施形態のフラットケーブルの製造方法の一例について説明する。本実施形態のフラットケーブル100は、補強板130は、図12図13で示す従来例のように、絶縁層120の外表面に貼り付けられているものではなく、平形導体110と第2の絶縁層122との間に設けられる。このため、平形導体110の並列面の両面に第1の絶縁層121、第2の絶縁層122を加熱ローラで熱を加えながら接合する際に、補強板130も平形導体110に接着するようにしている。
【0035】
図2に示すように、複数本の平形導体110を平行に配列し、表面側に、所定の間隔を空けて第1の絶縁層121を配置する。この間隔を空けた部分に位置する平形導体110が、露出部として接続端子部となる。第1の絶縁層121の端部の平形導体110側には、予め接着層141を設けておく。なお、間隔を空けて配置した第1の絶縁層121は、その表面側(平形導体110とは反対側)に設けた図示しない支持フィルムによって、互いに連結されている。
【0036】
平形導体110の並列面の裏面側には、表面側の第1の絶縁層121の間隔を空けた箇所に対応する位置に、同じく間隔を空けて、第2の絶縁層122を配置する。また、平形導体110の並列面と第2の絶縁層122との間には、第2の絶縁層122の間隔を空けた箇所に位置するように、補強板130を配置する。ここで、補強板130のスペーサ部材134の長手方向(X軸方向)の長さは、第2の絶縁層122間に設けた間隔の長さにほぼ等しい。補強板130は、先述したように、表面側接着層131および裏面側接着層133を有している。また、第2の絶縁層122間は、その裏面側(平形導体110とは反対側)に設けた図示しない支持フィルムによって、互いに連結しておく。表面側の第1の絶縁層121の間隔が本開示の第1の間隔L1に相当し、第2の絶縁層122の間隔が本開示の第2の間隔L2に相当する。表面側接着層131は、第2の間隔L2よりも長い。
【0037】
そして、第1の絶縁層121、並列した複数の平形導体110、補強板130、および、第2の絶縁層122を、例えば加熱ローラによって押圧し、互いに貼り合わせることで、フラットケーブル100を得る。
【0038】
より具体的な方法として、図4で示すように、第2の絶縁層122と補強板130とを予め貼り合わせてテープ状に形成しておいてもよい。この場合、第2の絶縁層122を連結するための支持フィルムは不要となる。そして、一対の加熱ローラRの間に、複数本の並列した平形導体110を供給するとともに、平形導体110の表面側に図示しない支持フィルムで連結された第1の絶縁層121を供給し、さらに、平形導体110の裏面側に、第2の絶縁層122と補強板130とを予め貼り合わせたテープ状部材を供給する。そして、貼付工程として、第1の絶縁層121と第2の絶縁層122で平形導体110を挟み込んで、一対の第1の絶縁層121と第2の絶縁層122を貼り合わせ、複数のフラットケーブルが連結された長尺のフラットケーブルを作製する。
【0039】
その際、フラットケーブル100の端部では、図3に示すように、第1の絶縁層121は、接着層141が平形導体110および補強板の表面接着層と貼り合わされる。また、補強板130の表面側が平形導体110および第1の絶縁層121の接着層141と貼り合わされ、さらに、補強板130の裏面側は、第2の絶縁層122と貼り合わされる。このため、平形導体110と第1の絶縁層121および第2の絶縁層122との間に隙間が発生することがない。
【0040】
次に、図4に示すような複数のフラットケーブルが連結された長尺のフラットケーブルを、補強板130の箇所で分割する分割工程を行う。分割工程では、図3で示すように、補強板130のほぼ中央の線C-Cに沿ってカットすることによって、個々のフラットケーブル100を得ることができる。その後、必要に応じて、端子部で露出した平形導体110を金メッキしたり、絶縁層120を覆うシールド層を設けてもよい。なお、シールド層を設ける場合は、予め、第1の絶縁層121、第2の絶縁層122の少なくとも一方にシールド層を設けておき、貼付工程で一体にしてもよく、また、分割工程の前に、シールド層を絶縁層120の表面に貼り付けるシールド層貼付工程を追加してもよい。
(第2の実施形態)
図6図7は、第2の実施形態に係るフラットケーブルの製造方法を説明するための断面図であり、図8は、第2の実施形態に係るフラットケーブルの端子部の斜視図である。第2の実施形態のフラットケーブル101は、第1の実施形態のフラットケーブル100に対して、平形導体110の並列面の裏面側の構成が異なっている。
【0041】
第2の実施形態のフラットケーブル101では、図6に示すように、平形導体110の並列面の裏面側に配設される第2の絶縁層122を、第2の絶縁層122a、第3の絶縁層122bとして厚さ方向に2分割している。そして、分割した第2の絶縁層122a、第3の絶縁層122bの間に、補強板130を配置する。すなわち、平形導体110上に形成された第2の絶縁層122aと第2の絶縁層122a上に形成された第3の絶縁層122bの間に、補強板130は形成される。そして、貼付工程では、第1の絶縁層121、並列した複数の平形導体110、補強板130、および、第2の絶縁層122a、第3の絶縁層122bを、例えば加熱ローラによって押圧し、互いに貼り合わせることで、フラットケーブル101を得る。第2の実施形態では、平形導体110の裏面側の露出部の際に第2の絶縁層122aが配置されるため、第2の絶縁層122aにおける平形導体110の露出部との際を含む部分に、平形導体110および第2の絶縁層122aとの接着性を向上させる接着層142を設けている。
【0042】
補強板130の構成については、第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。本実施形態では、第1の絶縁層121、並列した複数の平形導体110、補強板130、および、第2の絶縁層122a、第3の絶縁層122bを貼り合わせた構成は、図7に示すように、補強板130の長手方向(X軸方向)端部が、第2の絶縁層122a、第3の絶縁層122bで挟まれ、補強板130の端部を平形導体110から離すことができる。
【0043】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、複数のフラットケーブル101を連結させたフラットケーブルを作製し、補強板130のほぼ中央の線C-Cに沿ってカットすることによって、図8に示した端末部を有する個々のフラットケーブル100を得ることができる。その後、必要に応じて、端子部で露出した平形導体110を金メッキしたり、絶縁層120を覆うシールド層を設けてもよい。なお、本実施形態においても、第1の実施形態と同様、スペーサ部材134の厚さを変更することによって、端子部の厚さdを調整することができる。
(第3の実施形態)
図9図10は、第3の実施形態に係るフラットケーブルの製造方法を説明するための断面図であり、図11は、第3の実施形態に係るフラットケーブルの端子部の斜視図である。第3の実施形態のフラットケーブル102は、第1の実施形態のフラットケーブル101および第2の実施形態のフラットケーブル101に対して、平形導体110の並列面の裏面側の構成が異なっている。
【0044】
第3の実施形態のフラットケーブル102では、図9に示すように、平形導体110の並列面の裏面側に配設される第2の絶縁層122を、第2の絶縁層122a、第3の絶縁層122cとして厚さ方向に2分割している。ここで、平形導体110から遠い側の一方の第3の絶縁層122cについては、間隔を設けず連続した絶縁層としている。そして、分割した第2の絶縁層122a、第3の絶縁層122cの間に、補強板130’を配置する。平形導体110の長手方向に沿う断面において、第3の絶縁層122cは補強板130の平形導体110に対向する側の面の反対の面の全体を覆う。ここで、補強板130’は、樹脂層132の表面側全面に表面側接着層131を有したものであり、第1、第2の実施形態で用いた補強板130のように、スペーサ部材134を有していない。
【0045】
そして、貼付工程で、第1の絶縁層121、並列した複数の平形導体110、補強板130’、および、第2の絶縁層122a、第3の絶縁層122cを、例えば加熱ローラによって押圧し、互いに貼り合わせることで、フラットケーブル102を得る。第3の実施形態では、第2の実施形態と同様に、平形導体110の裏面側の露出部の際に第2の絶縁層122aが配置されるため、第2の絶縁層122aにおける平形導体110の露出部との際を含む部分に、平形導体110および絶縁層120との接着性の良好な材料の接着層142を設けている。
【0046】
本実施形態では、第1の絶縁層121、並列した複数の平形導体110、補強板130、および、第2の絶縁層122a、第3の絶縁層122cを貼り合わせた構成は、図10に示すように、補強板130の長手方向(X軸方向)端部が、第2の絶縁層122a、第3の絶縁層122cで挟まれ、補強板130の端部を平形導体110から離すことができる。
【0047】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、複数のフラットケーブル101を連結させたフラットケーブルを作製し、補強板130のほぼ中央の線C-Cに沿ってカットすることによって、図11に示した端末部を有する個々のフラットケーブル102を得ることができる。その後、必要に応じて、端子部で露出した平形導体110を金メッキしたり、絶縁層120を覆うシールド層を設けてもよい。
【符号の説明】
【0048】
100、101、102…フラットケーブル、
110…平形導体、
111:第1面
112:第2面
113:露出面
120…絶縁層、
121…第1の絶縁層、
122、122a…第2の絶縁層、
122b、122c…第3の絶縁層、
130、130’…補強板、
131…表面側接着層、
132…樹脂層、
133…裏面側接着層、
134…スペーサ部材、
141、142…接着層
150…シールド層
L1:第1の間隔
L2:第2の間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13