(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】積層シート、及び発泡積層シート
(51)【国際特許分類】
B32B 27/18 20060101AFI20230620BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20230620BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230620BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20230620BHJP
E04F 13/07 20060101ALN20230620BHJP
E04F 13/08 20060101ALN20230620BHJP
C12N 9/99 20060101ALN20230620BHJP
【FI】
B32B27/18 Z
B32B5/18
B32B27/30 101
B32B27/32 Z
E04F13/07 B
E04F13/08 A
C12N9/99
(21)【出願番号】P 2021132807
(22)【出願日】2021-08-17
(62)【分割の表示】P 2017029073の分割
【原出願日】2017-02-20
【審査請求日】2021-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】塩田 歩
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-006700(JP,A)
【文献】特開2013-226794(JP,A)
【文献】特開平09-300507(JP,A)
【文献】特開2015-080887(JP,A)
【文献】特開2012-201023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
E04F 13/00-13/30
C12N 9/00-9/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、非発泡層と、発泡剤を含有する発泡剤含有樹脂層と、亜鉛イオン、又は錫イオンを少なくとも含む機能層とが積層されており、
前記機能層を構成する樹脂成分は、塩化ビニル樹脂及びオレフィン系樹脂の少なくとも一方であり、
前記機能層は、塩化物イオン、又は硫酸イオンをさらに含むことを特徴とする積層シート。
【請求項2】
前記機能層を構成する樹脂成分は、エチレン系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
前記非発泡層を構成する樹脂成分は、オレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層シート。
【請求項4】
前記発泡剤含有樹脂層を構成する樹脂成分は、オレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の積層シート。
【請求項5】
請求項1~請求項
4のいずれか1項に記載の積層シートの前記発泡剤含有樹脂層が発泡して形成されていることを特徴とする発泡積層シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層シート、及び発泡積層シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の壁面装飾等に用いられる壁紙の接着剤としては、例えば、澱粉等を含んだ水系接着剤が広く利用されている。しかしながら、この水系接着剤は、壁紙の表面に付着し、その接着剤に含まれる澱粉等が経時によって変色すると、壁紙が変色したように見えるという問題がある。
これに対し、例えば、特許文献1、2に記載の技術では、化合合成物を添加した水系接着剤を用いるようになっている。また、例えば、特許文献3に記載の技術では、壁紙への澱粉等を含んだ水系接着剤の付着を防止するための切断用下敷テープを用いるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭63-277291号公報
【文献】特許第2990651号
【文献】特許第4811943号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1~3に記載の技術では、コストが高かったり煩雑であったりするため、壁紙の施工業者にあまり採用されていない。そのため、上記問題、つまり、水系接着剤に含まれる澱粉等が変色することにより、壁紙が変色したかのように見えるという問題が未解決であった。
本発明は、上記のような点に着目したもので、水系接着剤に含まれる澱粉等に起因する変色を抑制可能な積層シート、及び発泡積層シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る積層シートは、基材上に、非発泡層と、発泡剤を含有する発泡剤含有樹脂層と、亜鉛イオン、又は錫イオンを少なくとも含む機能層とが積層されており、前記機能層を構成する樹脂成分は、塩化ビニル樹脂及びオレフィン系樹脂の少なくとも一方である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様に係る積層シートによれば、亜鉛イオン、又は錫イオンを少なくとも含む機能層を備えているので、その積層シートを用いた発泡積層シート上に澱粉等を含有した水系接着剤が付着した場合であっても、上記イオンが、その澱粉等を分解するアミラーゼ等の加水分解酵素の活性を阻害する。そのため、水系接着剤に含まれる澱粉等の分解反応が抑制され、水系接着剤に含まれる澱粉等に起因する変色を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る壁紙用原反の構成を表す端面図である。
【
図2】変形例に係る壁紙用原反の構成を表す端面図である。
【
図3】実施形態に係る発泡壁紙の構成を表す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、及び構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
(壁紙用原反1)
図1に示すように、本実施形態の壁紙用原反(積層シート)1は、基材2に、第1の非発泡層3(非発泡剤含有樹脂層)、発泡剤含有樹脂層4、第2の非発泡層5(非発泡剤含有樹脂層)、絵柄模様層6、及び変色防止機能層7がこの順に形成されている。なお、絵柄模様層6と変色防止機能層7との間、基材2と第1の非発泡層3との間等には、必要に応じて、他の層を形成してもよい。例えば、
図2に示すように、絵柄模様層6と変色防止機能層7との間に、絵柄模様層6と変色防止機能層7との接着性を増すための中間層(プライマー層)8を形成してもよい。また、第1の非発泡層3と第2の非発泡層5とのいずれかを省略してもよい。つまり、発泡剤含有樹脂層4は、その片面又は両面に非発泡樹脂層を有していればよい。
【0010】
(基材2)
基材2としては、特に限定されず、例えば公知の繊維質シートを使用できる。繊維質シートとしては、例えば、パルプ主体のシートを既知のサイズ剤でサイズ処理した壁紙用一般紙、パルプ主体のシートをスルファミン酸グアニジン、リン酸グアジニン等の難燃剤で処理した難燃紙、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の無機添加剤を含む無機質紙、上質紙、薄用紙を使用できる。なお、不織布に該当するものも含まれる。基材2の坪量は、例えば、50g/m2以上300g/m2以下の範囲内が好ましく、50g/m2以上120g/m2以下の範囲内がより好ましい。
【0011】
(第1の非発泡層3)
第1の非発泡層3は、基材2と発泡剤含有樹脂層4との密着性を向上するための層である。第1の非発泡層3の樹脂成分としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体を使用できる。第1の非発泡層3には、樹脂成分以外に公知の添加剤を含んでもよいが、樹脂成分の含有量が70質量%以上100質量%以下の範囲内となるように配合することが好ましい。また、第1の非発泡層3の厚さは、10μm以上50μm以下の範囲内が好ましく、10μm以上20μm以下の範囲内がより好ましい。
【0012】
(発泡剤含有樹脂層4)
発泡剤含有樹脂層4は、発泡剤を含有し、加熱で発泡される樹脂層である。発泡剤含有樹脂層4は、発泡剤を含有する樹脂組成物を溶融押出して得られる。樹脂成分としては、例えば、塩化ビニル樹脂及びオレフィン系樹脂の少なくとも一方を使用できる。特に、耐久性の向上、エンボス賦型等を考慮すると、オレフィン系樹脂が好ましく、エチレン系樹脂がより好ましい。
エチレン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、エチレンとエチレン以外の成分とをモノマーとするエチレン共重合体の少なくとも1種を含有することが好ましい。ポリエチレンとしては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンを使用できる。特に、低密度ポリエチレンが好ましい。
【0013】
エチレン共重合体としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-αオレフィン共重合体を単独又は2種以上を混合して使用できる。特に、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体及びエチレン-メタクリル酸共重合体の少なくとも1種が好ましく、これらと他の樹脂とを併用する場合には、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体及びエチレン-メタクリル酸共重合体の少なくとも1種は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
【0014】
また、発泡剤としては、例えば、アゾ化合物、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム及び亜硝酸アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種を使用できる。アゾ化合物としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスホルムアミド等が好ましい。発泡剤の含有量は、発泡倍率を考慮すると、樹脂成分100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下の範囲内が好ましい。また、発泡剤含有樹脂層4は、化学架橋法または放射線照射により樹脂架橋されている。また、発泡剤含有樹脂層4の厚さは、10μm以上50μm以下の範囲内が好ましく、10μm以上20μm以下の範囲内がより好ましい。
【0015】
(第2の非発泡層5)
第2の非発泡層5は、発泡剤含有樹脂層4を保護するための層である。第2の非発泡層5の樹脂成分としては、例えば、アクリル酸(CH2=CHCOOH)及びメタクリル酸(CH2=C(CH3)COOH)の少なくとも1種をモノマーとして得られる重合体を樹脂成分として含む樹脂組成物を使用できる。特に、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種のモノマーとエチレンとの組み合わせにより得られる共重合体が好ましい。
【0016】
より具体的には、エチレンメタクリル酸(EMAA)、エチレン-アクリル酸共重合体及びアイオノマー樹脂の少なくとも1種を用いることが望ましい。アイオノマー樹脂としては、EMAA及び/又はエチレン-アクリル酸共重合体の分子間をナトリウム、亜鉛等の金属のイオンで分子間結合した構造を有する樹脂を使用できる。このような樹脂成分を用いる場合には、特に樹脂中の水素結合等に起因する強固な層を形成することができるので、優れた耐スクラッチ性、耐摩耗性等を得ることができる。上述した樹脂は、公知又は市販のものを使用することができる。また、第2の非発泡層5には、樹脂成分以外に公知の添加剤を含んでもよいが、樹脂成分の含有量が70質量%以上100質量%以下の範囲内となるように配合することが好ましい。また、第2の非発泡層5の厚さは、10μm以上50μm以下の範囲内が好ましく、10μm以上20μm以下の範囲内がより好ましい。
【0017】
(絵柄模様層6)
絵柄模様層6は、壁紙用原反1に絵柄模様を付加するための層である。絵柄模様としては、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形がある。絵柄模様は、壁紙用原反1の種類に応じて適宜選択できる。
絵柄模様層6の形成方法としては、例えば、絵柄模様を印刷することで形成できる。なお、絵柄模様層6を形成する際には、必要に応じてあらかじめプライマー層を形成してもよい。印刷手法としては、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷が挙げられる。印刷インキとしては、例えば、着色剤、結着材樹脂、溶剤を含む印刷インキを使用できる。これらのインキは、公知のものを使用してもよい。
【0018】
結着材樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等を使用できる。また、溶剤(または分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸-2-メトキシエチル、酢酸-2-エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等を使用できる。
【0019】
(変色防止機能層7)
変色防止機能層7は、最表層に配置され、絵柄模様層6を保護するための層である。変色防止機能層7の樹脂成分(以下、「マトリックス樹脂」とも呼ぶ)としては、例えば、塩化ビニル樹脂及びオレフィン系樹脂の少なくとも一方を使用できる。また、変色防止機能層7は、マトリックス樹脂以外に添加剤として酵素阻害剤を含んでいる。
酵素阻害剤は、例えば、アミラーゼ等の加水分解酵素の活性を阻害する阻害剤であって、例えば、イオン半径が67pm以上95pm以下の陽イオンを少なくとも含む化合物を含有している。また、上記陽イオンとしては、例えば、2価の亜鉛イオン(Zn2+)や2価の錫イオン(Sn2+)が挙げられる。
【0020】
酵素阻害剤の含有量は、マトリックス樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下の範囲内とすることが好ましい。また、0.1質量部以上10質量部以下の範囲内とすることがさらに好ましい。酵素阻害剤の含有量が0.01質量部未満の場合には、酵素の活性を十分に阻害することができず、水系接着剤に含まれる澱粉等の分解に起因する変色が発生する場合がある。また、酵素阻害剤の含有量が20質量部を超える場合には、水系接着剤に含まれる澱粉等の分解に起因する変色の発生は十分に抑制される。しかしながら、酵素阻害剤の含有量が多いため、変色防止機能層7は機械的に弱くなり、壁紙用原反1及び発泡壁紙9の耐スクラッチ性が低下する場合がある。
また、変色防止機能層7の厚さは、0.1μm以上20μm以下の範囲内が好ましく、0.5μm以上10μm以下の範囲内がより好ましい。
【0021】
(発泡壁紙9の製造方法)
次に、発泡壁紙(発泡積層シート)9の製造方法について説明する。
本実施形態の発泡壁紙9の製造方法は、上記の壁紙用原反1を加熱することにより、発泡剤含有樹脂層4を発泡させて発泡壁紙9を製造するものである。加熱温度は、180℃以上240℃以下の範囲内が好ましく、210℃以上230℃以下の範囲内がより好ましい。加熱時間は、20秒以上60秒以下の範囲内が好ましく、25秒以上40秒以内の範囲内がより好ましい。発泡倍率は、3倍以上、好ましくは4~5倍とする。発泡倍率が低すぎると、優れた外観意匠を付与し難く、また、発泡倍率が高過ぎると、
図3に示す発泡樹脂層4aが機械的に弱くなり、耐スクラッチ性が低下しやすいためである。なお、発泡樹脂層4aは、発泡剤含有樹脂層4の発泡剤が発泡して形成された層である。
【0022】
第2の非発泡層5の形成前には、発泡剤含有樹脂層4に化学架橋法または放射線照射により樹脂架橋してもよい。これにより、発泡壁紙9の耐傷性を向上できる。
また、少なくとも変色防止機能層7(最表層)にエンボス加工を行うようにしてもよい。これにより、例えば、
図3に示すように、発泡壁紙9の表面にエンボス10を設け、絵柄模様層6による意匠性に加え、エンボス10による意匠性を感じさせることができる。
【0023】
(本実施形態の効果)
(1)このように、本実施形態の壁紙用原反1では、基材2上に、発泡剤を含有する発泡剤含有樹脂層4と、最表層に配置され、イオン半径が67pm以上95pm以下の陽イオン(例えば、亜鉛イオンや錫イオン)を少なくとも含む酵素阻害剤を含有する変色防止機能層7とがこの順に積層されている構成とした。これにより、酵素阻害剤に含まれている上記陽イオンが、壁紙用原反1または発泡壁紙9の表面側に付着した水系接着剤に含まれる澱粉等を分解するアミラーゼ等の加水分解酵素の活性を阻害することができる。ここで、経時変化に起因する水系接着剤の変色要因の一つに、水系接着剤に含まれる澱粉等の有機物質そのものの分解(具体的には、澱粉から糖への分解)があるが、この分解反応は、例えば唾液等に含まれるアミラーゼ等の酵素の存在下では促進され、当該酵素の活性を阻害する酵素阻害剤の存在下では抑制される。そのため、酵素阻害剤を含有する変色防止機能層7を備える壁紙用原反1または発泡壁紙9であれば、水系接着剤に含まれる澱粉等を分解反応が抑制され、水系接着剤に含まれる澱粉等の分解に起因する変色を抑制することができる。
【0024】
(2)また、酵素阻害剤が、加水分解酵素の阻害剤である構成とした。そのため、安全性を向上できる。
(3)また、酵素阻害剤が、アミラーゼの阻害剤である構成とした。そのため、安全性をさらに向上できる。また、当該酵素阻害剤の入手も容易となる。
(4)また、発泡剤含有樹脂層4が、化学架橋法または放射線照射により樹脂架橋がされている構成とした。そのため、発泡壁紙9の耐傷性を向上することができる。
(5)さらに、発泡剤含有樹脂層4が、その片面または両面に非発泡剤含有樹脂層を有している構成とした。そのため、表面を平滑にし、さらに、印刷適性を向上できる。
【0025】
(6)また、発泡剤含有樹脂層4を構成する樹脂成分は、塩化ビニル樹脂及びオレフィン系樹脂の少なくとも一方とする構成とした。そのため、発泡壁紙9に適したシート成形を行うことができる。
(7)また、変色防止機能層7のマトリックス樹脂は、塩化ビニル樹脂及びオレフィン系樹脂の少なくとも一方とする構成とした。そのため、発泡壁紙9に適したシート成形を行うことができる。
(8)また、酵素阻害剤が、変色防止機能層7のマトリックス樹脂成分100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下の範囲内で含有されている構成とした。そのため、水系接着剤に含まれる澱粉等の分解に起因する変色を確実に抑制できる。
【0026】
(9)さらに、発泡剤を、アゾ化合物、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、及び亜硝酸アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種とする構成とした。そのため、安全性や発泡性の制御性を向上できる。
(10)また、基材2を、繊維質を含有する繊維質シートとした。そのため、汎用的な壁紙用原反1として扱うことができる。
(11)さらに、本実施形態の発泡壁紙9は、壁紙用原反1の発泡剤含有樹脂層4が発泡して形成されている。そのため、発泡壁紙9上に澱粉等を含有した水系接着剤が付着した場合、酵素阻害剤に含まれている上記陽イオンが、その澱粉等を分解するアミラーゼ等の加水分解酵素の活性を阻害する。よって、水系接着剤に含まれる澱粉等を分解反応が抑制され、水系接着剤に含まれる澱粉等の分解に起因する変色を抑制できる。
【0027】
(12)また、少なくとも変色防止機能層7(最表層)にエンボス10が形成されている構成とした。そのため、エンボス10による高意匠性を有する発泡壁紙9を形成できる。(13)さらに、本実施形態の発泡壁紙9の製造方法では、基材2と、発泡剤を含有する発泡剤含有樹脂層4と、最表層に配置され、イオン半径が67pm以上95pm以下の陽イオン(例えば、亜鉛イオンや錫イオン)を少なくとも含む酵素阻害剤を含有する変色防止機能層7とがその順に積層された壁紙用原反1を形成し、形成した壁紙用原反1の発泡剤含有樹脂層4を発泡させるようにした。これにより、発泡壁紙9の最表層に、上記陽イオンを少なくとも有する添加剤(酵素阻害剤)を含有する変色防止機能層7を形成できる。
【0028】
[実施例]
本発明に係る実施例について説明する。
(実施例1)
実施例1では、公知のTダイ押出機を用いて、第1の非発泡層3、発泡剤含有樹脂層4、及び第2の非発泡層5をこの順に、各層の厚みが10μm、70μm、10μmになるように製膜して3層からなる積層体を得た。ここで、第1の非発泡層3、第2の非発泡層5の樹脂としては、低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)、商品名:LJ802A)を100質量部としたものを用いた。また、発泡剤含有樹脂層4としては、低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)、商品名:LJ802A)100質量部に対して、発泡剤(永和化成工業(株)製、商品名ADCA#3)8質量部、炭酸カルシウム(備北粉化(株)製、商品名:ソフトン1000)30質量部、二酸化チタン(顔料)(石原産業(株)製、商品名:TIPAQUE CR-60-2)20質量部、発泡助剤((株)ADEKA製、商品名:アデカスタブOF-101)8質量部としたものを用いた。
【0029】
そして、上記した3層からなる積層体の第1の非発泡層3を裏打紙(米秤量65g/m2、興人(株)製、WK-655T)に積層することで、積層シート(壁紙用原反)1を形成した。また、その積層シート1の第2の非発泡層5に加速電圧200kV、照射線量55kGyの電子線を照射して、発泡剤含有樹脂層4に樹脂架橋を行った。次いで、グラビア印刷により、その積層シート1の第2の非発泡層5に水性インキ(大日精化工業(株)製、商品名:ハイドリック)を用いて布目模様を印刷することで、絵柄模様層6を形成した。続いて、その絵柄模様層6の上に、変色防止機能層7のマトリックス樹脂となるアクリル系エマルジョン(日信化学(株)、商品名:ビニブラン892)100質量部に対して、塩化亜鉛を含む添加剤(酵素阻害剤)(純正化学(株)製、商品名:塩化亜鉛)1質量部を含むインキ(アクリル樹脂系水性インキ)をグラビアダイレクトコーター法で塗布した。インキの塗布量は、乾燥後の膜厚が約1μmとなるように調整した。続いて、塗布したインキを、140℃の乾燥炉によって乾燥硬化させることで、変色防止機能層7を形成した。続いて、230℃の加熱発熱炉によって、発泡剤含有樹脂層4を発泡させて発泡樹脂層4aを形成した後、冷却ロールと加圧ロールとの間を通し、エンボス賦型をしながら熱圧着させることにより、表面にエンボス10(凹凸模様)を有する発泡壁紙9を形成した。
【0030】
(実施例2)
実施例2では、変色防止機能層7の添加剤(酵素阻害剤)の添加量を0.01質量部とした。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
(実施例3)
実施例3では、変色防止機能層7の添加剤(酵素阻害剤)の添加量を20質量部とした。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
(実施例4)
実施例4では、変色防止機能層7の添加剤(酵素阻害剤)を硫酸亜鉛とした。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
【0031】
(実施例5)
実施例5では、変色防止機能層7の添加剤(酵素阻害剤)を硫酸亜鉛とした。それ以外は実施例2と同様の構成とした。
(実施例6)
実施例6では、変色防止機能層7の添加剤(酵素阻害剤)を硫酸亜鉛とした。それ以外は実施例3と同様の構成とした。
(実施例7)
実施例7では、変色防止機能層7の添加剤(酵素阻害剤)を塩化錫(II)とした。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
【0032】
(実施例8)
実施例8では、変色防止機能層7の添加剤(酵素阻害剤)を塩化錫(II)とした。それ以外は実施例2と同様の構成とした。
(実施例9)
実施例9では、変色防止機能層7の添加剤(酵素阻害剤)を塩化錫(II)とした。それ以外は実施例3と同様の構成とした。
(実施例10)
実施例10では、変色防止機能層7の添加剤(酵素阻害剤)を硫酸錫(II)とした。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
【0033】
(実施例11)
実施例11では、変色防止機能層7の添加剤(酵素阻害剤)を硫酸錫(II)とした。それ以外は実施例2と同様の構成とした。
(実施例12)
実施例12では、変色防止機能層7の添加剤(酵素阻害剤)を硫酸錫(II)とした。それ以外は実施例3と同様の構成とした。
【0034】
(比較例1)
比較例1では、変色防止機能層7の添加剤(酵素阻害剤)を塩化ナトリウムとした。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
(比較例2)
比較例2では、変色防止機能層7の添加剤を塩化カルシウムとした。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
(比較例3)
比較例3では、変色防止機能層7の添加剤を塩化マグネシウムとした。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
【0035】
(評価)
実施例1~12及び比較例1~3について、発泡壁紙9の変色状態の評価を実施した。
具体的には、発泡壁紙9の変色防止機能層7上に澱粉を含んだ水系接着剤を薄く塗布した後、紫外線を予め定めた時間照射して、塗布した水系接着剤の変色状態を目視で評価した。そして、変色がない場合を合格「○」、変色はあるが、使用し得る程度である場合を合格「△」、使用に適さない程度の変色がある場合を不合格「×」と判定した。
評価結果を表1に示す。
【0036】
【0037】
表1より、実施例1~6では、変色防止機能層7上に塗布した澱粉を含んだ水系接着剤に変色がなかった。また、実施例7~12では、当該水系接着剤に変色はあったものの、その程度は発泡壁紙9を使用し得る程度であった。これに対し、比較例1~3では、発泡壁紙9の使用に適さない程度の変色があった。なお、各実施例及び各比較例において、変色防止機能層7に添加した添加剤に含まれる各種陽イオン、即ち亜鉛イオン(Zn2+)、錫イオン(Sn2+)、ナトリウムイオン(Na+)、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)の各イオン半径は、それぞれ74pm、93pm、97pm、99pm、66pmである。
【0038】
これにより、変色防止機能層7(最表層)に、イオン半径が67pm以上95pm以下の陽イオン(例えば、亜鉛イオンや錫イオン)の塩を含む添加剤(酵素阻害剤)を含有させることで、澱粉を含んだ水系接着剤の変色を抑制できることが確認できた。
なお、実施例1の場合、即ち添加剤(酵素阻害剤)の含有量が1質量部の場合であれば、変色防止機能層7に、上述した変色抑制機能とともに機械的強度も付与することができる。
本発明によれば、触感及び意匠性をより一層高めた化粧シート及びその化粧シートを備えた化粧板を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0039】
1…壁紙用原反、2…基材、3…第1の非発泡層、4…発泡剤含有樹脂層、4a…発泡樹脂層、5…第2の非発泡層、6…絵柄模様層、7…変色防止機能層、8…中間層、9…発泡壁紙、10…エンボス