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特許7298669ポリカーボネート樹脂、その製造方法及び光学レンズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂、その製造方法及び光学レンズ
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/02 20060101AFI20230620BHJP
   C08G 64/00 20060101ALI20230620BHJP
   C08G 64/16 20060101ALI20230620BHJP
   C08G 64/30 20060101ALI20230620BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
C08G64/02
C08G64/00
C08G64/16
C08G64/30
G02B1/04
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021193915
(22)【出願日】2021-11-30
(62)【分割の表示】P 2018528825の分割
【原出願日】2017-07-19
(65)【公開番号】P2022037011
(43)【公開日】2022-03-08
【審査請求日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2016143321
(32)【優先日】2016-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016214750
(32)【優先日】2016-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100176094
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 満
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宣之
(72)【発明者】
【氏名】近藤 光輝
(72)【発明者】
【氏名】石原 健太朗
(72)【発明者】
【氏名】白武 宗憲
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 晃司
(72)【発明者】
【氏名】池田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】大島 健輔
(72)【発明者】
【氏名】永山 修也
(72)【発明者】
【氏名】村田(鈴木) 章子
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-179323(JP,A)
【文献】国際公開第2014/073496(WO,A1)
【文献】特開2011-168721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 64/00 - 64/42
G02B 1/00 - 1/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂であって、
【化1】
(一般式(1)中、Xは炭素数1~4のアルキレン基を表し、a及びbは、各々独立に、1~10の整数を表す。)
下記一般式(A)で表される末端構造を有するポリマー及び/又は一般式(B)で表される化合物
【化2】
[式(A)及び(B)において、
Xは炭素数1~4のアルキレン基を表し、
a及びbは、各々独立に、1~10の整数を表し、
Hmは、それぞれ水素原子であり、
*はポリマー鎖である]
を有することを特徴と
前記ポリカーボネート樹脂に含まれる一般式(A)で表される末端構造を有するポリマーおよび一般式(B)で表される化合物の合計含有量が、ポリカーボネート樹脂のH -NMRスペクトルを測定した場合に、以下の関係
【数1】
を満たす量である、ポリカーボネート樹脂。
【請求項2】
PCT試験後の全光線透過率が60%以上である、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項3】
23℃、波長589nmにおける屈折率(nD)が1.635~1.695である、請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項4】
ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が20,000~200,000である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項5】
アッベ数(ν)が24以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項6】
ガラス転移温度(Tg)が90~180℃である、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項7】
b値が5以下である、請求項1~6のいずれか一項のポリカーボネート樹脂。
【請求項8】
残存フェノール量が500ppm以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項9】
残存ジフェニルカーボネート(DPC)量が200ppm以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項10】
酸化防止剤の含有量が、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001~0.3重量部である、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項11】
離型剤の含有量が、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.005~2.0重量部である、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項12】
下記一般式(4)の化合物を主成分とするモノマー組成物と、
【化3】
(一般式(4)中、Xは炭素数1~4のアルキレン基を表し、a及びbは、各々独立に、1~10の整数を表す。)
炭酸ジエステルとを溶融重縮合することを含み、
前記一般式(4)の化合物を主成分とするモノマー組成物が、一般式(4)の化合物におけるa及びbのいずれかが0である化合物を含み、その含有量が一般式(4)の化合物を主成分とするモノマー組成物中で合計で1000ppm以下である、ポリカーボネートの製造方法。
【請求項13】
前記一般式(4)の化合物を主成分とするモノマー組成物がフルオレノンを含み、その含有量が一般式(4)の化合物を主成分とするモノマー組成物中で1000ppm以下である、請求項12に記載のポリカーボネートの製造方法。
【請求項14】
前記一般式(4)の化合物を主成分とするモノマー組成物が一般式(4)においてa≠bである化合物を含み、その含有量が前記一般式(4)の化合物を主成分とするモノマー組成物中で合計で50ppm以下である、請求項12または13に記載のポリカーボネートの製造方法。
【請求項15】
全光線透過率が85%以上である、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂を用いて得られる光学成形体。
【請求項16】
PCT試験後の全光線透過率が60%以上である、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂を用いて得られる光学成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂及びその製造方法に関する。また、本発明は、ポリカーボネート樹脂を含む光学レンズにも関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ、フィルム一体型カメラ、ビデオカメラ等の各種カメラの光学系に使用される光学レンズの材料として、光学ガラスあるいは光学用樹脂が使用されている。光学ガラスは、耐熱性、透明性、寸法安定性、耐薬品性等に優れるが、材料コストが高く、成形加工性が悪く、生産性が低いという問題点を有している。
【0003】
一方、光学用樹脂からなる光学レンズは、射出成形により大量生産が可能であるという利点を有している。例えば、カメラ用レンズにおいて、ポリカーボネート樹脂等が使用されている。しかしながら、近年、製品の軽薄短小化により、高い屈折率の樹脂の開発が求められている。一般に光学材料の屈折率が高いと、同一の屈折率を有するレンズエレメントを、より曲率の小さい面で実現できるため、この面で発生する収差量を小さくできる。その結果、レンズの枚数を減らしたり、レンズの偏心感度を低減したり、レンズ厚みを薄くして軽量化することが可能になる。
【0004】
また、一般に、カメラの光学系では、複数枚の凹レンズと凸レンズを組み合わせる事で収差補正を行っている。即ち、凸レンズで出来た色収差に対し、凸レンズと反対の符号の色収差を有する凹レンズを組み合わせることにより、合成的に色収差を打ち消している。この時、凹レンズには高分散(すなわち、低アッベ数)である事が要求される。
【0005】
そこで、屈折率が高く、低アッベ数である光学レンズ向け樹脂の開発が行われてきた。例えば、ビスフェノールA型のポリカーボネート構成単位と下記式(E)で表される構成単位との共重合体は、屈折率が向上することが特許文献1に開示されている。特許文献1の実施例には、屈折率1.62~1.64、アッベ数23~26を達成したことが記載されている。このように屈折率が向上するのは、式(E)で表される構成単位によるためと考えられる。
【化1】
【0006】
また、フルオレン構造を有する構成単位を含むポリカーボネート樹脂とビスフェノールAの共重合体が、特許文献2に開示されている。この文献の実施例には、屈折率1.616~1.636を達成したことが記載されている。なお、この文献に開示されている構成単位は、式(E)とは異なる。
【0007】
上記のように、高い屈折率及び低アッベ数を有するポリカーボネート樹脂及び光学レンズは、未だ提供されていなかった。
【0008】
さらに近年では、各種電子機器に耐水性及び耐熱性が求められている。そのような電子機器の耐水性及び耐熱性を評価する環境試験として、「PCT試験」(プレッシャークッカー試験)が実施されている。この試験は、耐湿熱性試験であり、試料内部への水分の侵入を時間的に加速して評価する。従って、電子機器に使用される光学用樹脂からなる光学レンズには、高い屈折率及び低アッベ数を有するだけでなく、PCT試験後も光学物性を維持することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2007/142149号
【文献】特開平6-25398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、高屈折率、低アッベ数及び高耐湿熱性を有するポリカーボネート樹脂を提供することである。また、この樹脂を使用することにより、優れた光学レンズを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、下記ポリカーボネート樹脂及び光学レンズによって、上記課題を解決することができることを見出し、本発明に到達した。
本発明は、例えば以下の通りである。
[1]下記一般式(1)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂。
【化2】

(一般式(1)中、Xは炭素数1~4のアルキレン基を表し、a及びbは、各々独立に、1~10の整数を表す。)
[2]下記一般式(2)及び/又は下記一般式(3)で表される構成単位をさらに含む、[1]に記載のポリカーボネート樹脂。
【化3】

(一般式(2)中、Yは炭素数1~4のアルキレン基を表し、c及びdは、各々独立に、1~10の整数を表す。)
【化4】

(一般式(3)中、
Zは炭素数1~4のアルキレン基を表し、
~Rは、各々独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシル基、炭素数5~20のシクロアルキル基、炭素数5~20のシクロアルコキシル基、炭素数6~20のアリール基又は炭素数6~20のアリールオキシ基を表し、
e及びfは、各々独立に、0~5の整数を表す。)
[3]一般式(1)~(3)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂であって、
一般式(1)で表される構成単位の割合が10~80モル%であり、
一般式(2)で表される構成単位の割合が10~60モル%であり、
一般式(3)で表される構成単位の割合が5~80モル%である、[2]に記載のポリカーボネート樹脂。
[4]一般式(1)~(3)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂であって、
一般式(1)で表される構成単位の割合が20~80モル%であり、
一般式(2)で表される構成単位の割合が10~60モル%であり、
一般式(3)で表される構成単位の割合が5~70モル%である、[2]に記載のポリカーボネート樹脂。
[5]一般式(1)及び(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂であって、
一般式(1)で表される構成単位の割合が10~80モル%であり、
一般式(2)で表される構成単位の割合が20~90モル%である、[2]に記載のポリカーボネート樹脂。
[6]一般式(1)及び(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂であって、
一般式(1)で表される構成単位の割合が30~60モル%であり、
一般式(2)で表される構成単位の割合が40~70モル%である、[2]に記載のポリカーボネート樹脂。
[7][1]~[6]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂を含む、光学レンズ。
[8][1]~[6]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法であって、
下記一般式(4)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを溶融重縮合する工程を含む、方法。
【化5】

(一般式(4)中、Xは炭素数1~4のアルキレン基を表し、a及びbは、各々独立に、1~10の整数を表す。)
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリカーボネート樹脂は、高屈折率、低アッベ数及び高耐湿熱性を示す。また、樹脂を使用することにより、優れた光学レンズを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1で製造した樹脂のH-NMRチャート。
図2】実施例2で製造した樹脂のH-NMRチャート。
図3】実施例14で製造した樹脂のH-NMRチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
(1)ポリカーボネート樹脂
本発明のポリカーボネート樹脂は、一般式(1)で表される構成単位(以下、「構成単位(1)」ともいう)を有するポリカーボネート樹脂である。
【化6】

(一般式(1)中、Xは炭素数1~4のアルキレン基を表し、a及びbは、各々独立に、1~10の整数を表す。)
【0015】
本発明のポリカーボネート樹脂は、構成単位(1)以外にも1種以上の他の構成単位を含んでいてもよい。他の構成単位としては、フルオレン誘導体単位や、ビナフトール誘導体単位などが好ましい。
【0016】
具体的には、本発明のポリカーボネート樹脂は、下記一般式(2)で示されるビナフトール誘導体単位及び/又は下記一般式(3)で表されるフルオレン誘導体単位をさらに含むことが好ましい。
【化7】

(一般式(2)中、Yは炭素数1~4のアルキレン基を表し、c及びdは、各々独立に、1~10の整数を表す。)
【化8】

(一般式(3)中、
Zは炭素数1~4のアルキレン基を表し、
~Rは、各々独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシル基、炭素数5~20のシクロアルキル基、炭素数5~20のシクロアルコキシル基、炭素数6~20のアリール基又は炭素数6~20のアリールオキシ基を表し、
e及びfは、各々独立に、0~5の整数を表す。)
【0017】
本発明のポリカーボネート樹脂は、好ましくは一般式(1)~(3)で表される構成単位を含み、より好ましくは一般式(1)~(3)で表される構成単位から実質的になる。本明細書において「~から実質的になる」とは、本発明のポリカーボネート樹脂が、発明の効果を損なわない範囲で他の構成単位を含み得ることを意味する。例えば、本発明のポリカーボネート樹脂の構成単位のうち、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上が一般式(1)~(3)で表される構成単位からなる。本発明のポリカーボネート樹脂が一般式(1)~(3)で表される構成単位を含む場合、一般式(1)で表される構成単位の割合が10~80モル%であり、一般式(2)で表される構成単位の割合が10~60モル%であり、一般式(3)で表される構成単位の割合が5~80モル%であることが好ましい。また、より高い屈折率が得られることから、一般式(1)で表される構成単位の割合が20~80モル%であり、一般式(2)で表される構成単位の割合が10~60モル%であり、一般式(3)で表される構成単位の割合が5~70モル%であることがより好ましい。より好ましい割合の組成を有する本発明のポリカーボネート樹脂は、これまで達成されていなかった1.670以上という非常に高い屈折率を有する。
【0018】
本発明のポリカーボネート樹脂は、好ましくは一般式(1)及び(2)で表される構成単位を含み、より好ましくは一般式(1)及び(2)で表される構成単位から実質的になる。例えば、本発明のポリカーボネート樹脂の構成単位のうち、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上が一般式(1)及び(2)で表される構成単位からなる。本発明のポリカーボネート樹脂が一般式(1)及び(2)で表される構成単位を含む場合、一般式(1)で表される構成単位の割合が10~80モル%であり、一般式(2)で表される構成単位の割合が20~90モル%であることが好ましい。このような割合とすることで、これまで達成されていなかった1.670以上という非常に高い屈折率を有するポリカーボネート樹脂を得ることができる。また、より良好な成形性が得られることから、一般式(1)で表される構成単位の割合が30~60モル%であり、一般式(2)で表される構成単位の割合が40~70モル%であることがより好ましい。
【0019】
本発明のポリカーボネート樹脂が一般式(1)~(3)で表される構成単位を含む場合、または一般式(1)及び(2)で表される構成単位を含む場合、これらの構成単位がどのように樹脂に含まれるかは特に限定されない。本発明の一態様において、ポリカーボネート樹脂は、一般式(1)~(3)で表される構成単位または一般式(1)及び(2)で表される構成単位を含む共重合体を含んでいてもよく、それぞれの構成単位からなるホモポリマーを含む三元系樹脂または二元系樹脂であってもよい。あるいは、一般式(1)と(2)で表される構成単位を含む共重合体と一般式(3)で表される構成単位を含むホモポリマーとをブレンドしたものであってもよく、一般式(1)と(2)で表される構成単位を含む共重合体と一般式(1)と(3)で表される構成単位を含む共重合体とをブレンドしたものであってもよい。
【0020】
本発明のポリカーボネート樹脂は、ランダム、ブロック及び交互共重合構造のいずれを含んでもよい。
【0021】
本発明のポリカーボネート樹脂の好ましいポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、20,000~200,000である。
【0022】
より好ましくは、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、25,000~120,000であり、さらに好ましくは28,000~55,000であり、特に好ましくは30,000~45,000である。
【0023】
Mwが20,000より小さいと、成形体が脆くなるため好ましくない。Mwが200,000より大きいと、溶融粘度が高くなるため製造後の樹脂の取り出しが困難になり、更には流動性が悪くなり溶融状態で射出成形しにくくなるため好ましくない。
【0024】
本発明のポリカーボネート樹脂の23℃、波長589nmにおける屈折率(nD)は、好ましくは1.635~1.695、より好ましくは1.640~1.690、さらに好ましくは1.645~1.685であり、特に好ましくは1.670~1.685である。本発明のポリカーボネート樹脂は、屈折率(nD)が高く、光学レンズ材料に適している。屈折率は、厚さ0.1mmフィルムについて、アッベ屈折計を用いて、JIS-K-7142の方法で測定することができる。
【0025】
本発明のポリカーボネート樹脂のアッベ数(ν)は、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、さらに好ましくは20以下である。アッベ数は、23℃下での波長486nm、589nm及び656nmの屈折率から、下記式を用いて算出することができる。
ν=(nD-1)/(nF-nC)
nD:波長589nmでの屈折率
nC:波長656nmでの屈折率
nF:波長486nmでの屈折率
【0026】
本発明のポリカーボネート樹脂に他の樹脂をブレンドして、成形体の製造に供することができる。他の樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が例示される。
【0027】
さらに本発明のポリカーボネート樹脂には、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、流動性改質剤、結晶核剤、強化剤、染料、帯電防止剤あるいは抗菌剤等を添加することができる。
【0028】
成形方法としては、射出成形の他、圧縮成形、注型、ロール加工、押出成形、延伸などが例示されるがこれに限らない。
【0029】
本発明のポリカーボネート樹脂を射出成形に使用する場合、好ましいガラス転移温度(Tg)は90~180℃であり、より好ましくは95~175℃であり、さらに好ましくは100~170℃、さらにより好ましくは130~170℃、特に好ましくは135~150℃である。Tgが90℃より低いと、使用温度範囲が狭くなるため好ましくない。また180℃を越えると、樹脂の溶融温度が高くなり、樹脂の分解や着色が発生しやすくなるため好ましくない。樹脂のガラス転移温度が高すぎると、汎用の金型温調機では、金型温度と樹脂ガラス転移温度の差が大きくなってしまう。そのため、製品に厳密な面精度が求められる用途においては、ガラス転移温度が高すぎる樹脂の使用は難しく、好ましくない。また、成形流動性及び成形耐熱性の観点からは、Tgの下限値は130℃が好ましく、135℃がより好ましく、Tgの上限値は、160℃が好ましく、150℃がより好ましい。
【0030】
本発明のポリカーボネート樹脂を用いて得られる光学成形体は、全光線透過率が85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましい。全光線透過率が85%以上であれば、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂などと比べても遜色ない。
【0031】
本発明のポリカーボネート樹脂は、高い耐湿熱性を有する。耐湿熱性は、ポリカーボネート樹脂を用いて得られる光学成形体に対して、「PCT試験」(プレッシャークッカー試験)を行い、試験後の光学成形体の全光線透過率を測定することで評価することができる。PCT試験は、直径50mm、厚さ3mmの射出成形物を、120℃、0.2Mpa、100%RH、20時間の条件で保持することで行うことができる。本発明のポリカーボネート樹脂は、PCT試験後の全光線透過率が60%以上であり、70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらにより好ましく、85%以上であることが特に好ましい。全光線透過率が60%以上であれば、従来のポリカーボネート樹脂に対して高い耐湿熱性を有すると言える。
【0032】
本発明のポリカーボネート樹脂のb値は、好ましくは5以下である。b値が小さいほど黄色味が弱いことを示し、色相が良好となる。
【0033】
本発明のポリカーボネート樹脂に含まれる残存フェノール量は、500ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることがさらに好ましい。
【0034】
本発明のポリカーボネート樹脂に含まれる残存ジフェニルカーボネート(DPC)量は、200ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることがさらに好ましい。
【0035】
(ビニル末端基量)
本発明のポリカーボネート樹脂は、後述のように、下記一般式(4)
【化9】

(一般式(4)中、Xは炭素数1~4のアルキレン基を表し、a及びbは、各々独立に、1~10の整数を表す。)
で表される化合物をジヒドロキシ成分として使用し、炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質と反応させることで得られる樹脂である。しかし、樹脂を製造する際に、上記一般式(4)の化合物から、下記式(A)で表される末端構造を有するポリマー及び式(B)で表される化合物が副生成物として発生して、本発明のポリカーボネート樹脂に含有される場合や、また、式(1)のポリマーが得られた後に末端がビニル基へ変性し、下記式(A)で表される末端構造を有するポリマーとなる場合がある。
【化10】

[式(A)及び(B)において、
Xは炭素数1~4のアルキレン基を表し、
a及びbは、各々独立に、1~10の整数を表し、
Hmは、それぞれ水素原子であり、
*はポリマー鎖である]
【0036】
本発明の好ましい態様によれば、ポリカーボネート樹脂に含まれる一般式(A)で表される末端構造を有するポリマー及び一般式(B)で表される化合物の合計含有量は、ポリカーボネート樹脂のH-NMRスペクトルを測定した場合に、以下の関係を満たすような量であることが好ましい(すなわち、「フルオレン系ビニル末端基量1」)。
【数1】
【0037】
式(I)によって計算されるフルオレン系ビニル末端基量1は、より好ましくは0.001~0.8であり、特に好ましくは0.01~0.5である。式(I)によって計算されるフルオレン系ビニル末端基量1が上記範囲内であれば、ポリカーボネート樹脂は流動性及び強度、例えば、曲げ強度及び引張り強度、に優れるため好ましい。
【0038】
式(I)は、下記式に対応する。
【数2】
【0039】
上記式において、「式(4)の化合物に由来する繰返し単位におけるHa」とは、式(4)のXに含まれる全水素原子を意味する。例えば、Xがエチレン基である場合、Haの位置は、以下のとおりである。なお、一般式(5)及び/又は(6)で表される化合物をジヒドロキシ成分としてさらに使用した場合には、「式(5)の化合物に由来する繰返し単位におけるHb」及び「式(6)の化合物に由来する繰返し単位におけるHc」の積分値が上記式の分母に加えられるが、この点については後述する。
【化11】
【0040】
ここで、「プロトンピークの積分値」及び「ピーク積分値」とは、NMR(核磁気共鳴)分光法により、水素核HについてのNMRスペクトル(H-NMRスペクトル)を測定した際の、NMRスペクトルのシグナルの面積値、即ち積分値である。一般に、NMR分光法は、物質の原子核に着目した測定法であり、それぞれの分子を構成する原子核そのものを定量的に測定できる。すなわち、H-NMRの場合、観測されたシグナルの積分値は、分子におけるHの存在率を示す。本発明では、H-NMRスペクトルのケミカルシフト値より、Hの帰属を推測し、各ケミカルシフト値について、Hシグナルの積分値を求めた。
【0041】
本発明のポリカーボネート樹脂は、好ましくは、上記一般式(4)で表される化合物に加えて、下記一般式(5)及び/又は(6)
【化12】

(一般式(5)中、Yは炭素数1~4のアルキレン基を表し、c及びdは、各々独立に、1~10の整数を表す。)
【化13】


(一般式(6)中、
Zは炭素数1~4のアルキレン基を表し、
~Rは、各々独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシル基、炭素数5~20のシクロアルキル基、炭素数5~20のシクロアルコキシル基、炭素数6~20のアリール基又は炭素数6~20のアリールオキシ基を表し、 e及びfは、各々独立に、0~5の整数を表す。)
で表される化合物をジヒドロキシ成分として使用し、炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質と反応させることで得られる樹脂である。しかし、このような樹脂を製造する際に、上記一般式(5)及び/又は(6)の化合物から、下記式(C)及び/又は(E)で表される末端構造を有するポリマー及び式(D)及び/又は(F)で表される化合物が副生成物として発生して、本発明のポリカーボネート樹脂に含有される場合や、また、ポリマーが得られた後に末端がビニル基へ変性し、下記式(C)及び/又は(E)で表される末端構造を有するポリマーとなる場合がある。
【化14】

[式(C)~(F)において、
Y及びZは、各々独立に、炭素数1~4のアルキレン基を表し、
~Rは、各々独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシル基、炭素数5~20のシクロアルキル基、炭素数5~20のシクロアルコキシル基、炭素数6~20のアリール基又は炭素数6~20のアリールオキシ基を表し、
c及びdは、各々独立に、1~10の整数を表し、
eは、1~5の整数を表し、
fは、0~5の整数を表し、かつ、f-1は0以上であり、
Hn及びHоは、それぞれ水素原子であり;
*はポリマー鎖である]
【0042】
本発明の好ましい態様によれば、ポリカーボネート樹脂に含まれる一般式(C)で表される末端構造を有するポリマー及び一般式(D)で表される化合物の合計含有量は、ポリカーボネート樹脂のH-NMRスペクトルを測定した場合に、以下の関係を満たすような量であることが好ましい(すなわち、「ビナフトール系ビニル末端基量」)。
【数3】
【0043】
式(II)によって計算されるビナフトール系ビニル末端基量は、より好ましくは0.05~0.8であり、特に好ましくは0.1~0.6である。式(II)によって計算されるビナフトール系ビニル末端基量が上記範囲内であれば、ポリカーボネート樹脂は流動性及び強度に優れるため好ましい。
【0044】
式(II)は、下記式に対応する。
【数4】
【0045】
上記式において、「式(5)の化合物に由来する繰返し単位におけるHb」及び「式(6)の化合物に由来する繰返し単位におけるHc」とは、それぞれ、式(5)及び(6)のYとZに含まれる全水素原子を意味する。例えば、YとZがエチレン基である場合、Hb及びHcの位置は、それぞれ以下のとおりである。
【化15】

【0046】
本発明の好ましい態様によれば、ポリカーボネート樹脂に含まれる一般式(E)で表される末端構造を有するポリマー及び一般式(F)で表される化合物の合計含有量は、ポリカーボネート樹脂のH-NMRスペクトルを測定した場合に、以下のいずれかの関係を満たすような量であることが好ましい(すなわち、「フルオレン系ビニル末端基量2」及び「フルオレン系ビニル末端基量3」)。
【数5】
【0047】
ここで、式(5’)、(E)及び(F)中のR~Rが、いずれも炭素数6~20のアリール基及び炭素数6~20のアリールオキシ基でない場合、上記数式(III)が適用され、式(5’)、(E)及び(F)中のR~Rの少なくとも1つが炭素数6~20のアリール基又は炭素数6~20のアリールオキシ基である場合、上記数式(IV)が適用される。
【0048】
式(III)によって計算されるフルオレン系ビニル末端基量2は、より好ましくは0.001~0.8であり、特に好ましくは0.01~0.5である。式(III)によって計算されるフルオレン系ビニル末端基量2が上記範囲内であれば、ポリカーボネート樹脂は流動性及び強度に優れるため好ましい。
【0049】
式(IV)によって計算されるフルオレン系ビニル末端基量3は、より好ましくは0.001~0.8であり、特に好ましくは0.01~0.5である。式(IV)によって計算されるフルオレン系ビニル末端基量3が上記範囲内であれば、ポリカーボネート樹脂は流動性及び強度に優れるため好ましい。
【0050】
式(III)及び(IV)は、下記式に対応する。
【数6】
【0051】
(2)ポリカーボネート樹脂の製造方法
本発明による一般式(1)で表される構成単位を有するポリカーボネート樹脂は、下記一般式(4)
【化16】


(一般式(4)中、Xは炭素数1~4のアルキレン基を表し、a及びbは、各々独立に、1~10の整数を表す。)
で表される化合物をジヒドロキシ成分として使用し、炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質と反応させて製造することができる。具体的には、一般式(4)で表される化合物及び炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を、塩基性化合物触媒もしくはエステル交換触媒もしくはその双方からなる混合触媒の存在下、又は無触媒下において、溶融重縮合法により反応させて製造することができる。
【0052】
一般式(4)の化合物としては、9,9-ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類が挙げられる。例えば、一般式(4)の化合物として、9,9-ビス[6-(1-ヒドロキシメトキシ)ナフタレン-2-イル]フルオレン、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)ナフタレン-2-イル]フルオレン、9,9-ビス[6-(3-ヒドロキシプロポキシ)ナフタレン-2-イル]フルオレン、及び9,9-ビス[6-(4-ヒドロキシブトキシ)ナフタレン-2-イル]フルオレンなどが挙げられる。なかでも9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)ナフタレン-2-イル]フルオレンが好ましい。これらは単独で使用してもよく、又は二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0053】
一般式(4)の化合物を製造する際、不純物としてa及びbのいずれかが0である化合物が不純物として副生されることがある。このような不純物の含有量は、一般式(4)の化合物を主成分とするモノマー中で合計で、1000ppm以下であることが好ましく、500ppm以下であることがより好ましく、200ppm以下であることがさらに好ましく、100ppm以下であることが特に好ましい。さらに、このような不純物以外に、原料の一つであるフルオレノンも不純物として含まれることがある。フルオレノンの含有量は、一般式(4)の化合物を主成分とするモノマー中で、1000ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることがさらに好ましく、10ppm以下であることが特に好ましい。一般式(4)の化合物を主成分とするモノマー中に含まれるフルオレノンは、重合後に樹脂中に残存する場合がある。フルオノレンの含有量が少ないほど、樹脂の色相が良好となるため好ましい。さらに、不純物ではないが、一般式(4)中のa及びbが同一でない(すなわちa≠b)化合物は一般式(4)の化合物を主成分とするモノマー中で合計で50ppm以下であることが好ましく、20ppm以下であることがより好ましい。
【0054】
一般式(4)の化合物は、種々の合成方法で製造することができる。例えば、特許第5442800号公報に記載のように、(a)塩化水素ガス及びメルカプトカルボン酸の存在下、フルオレノン類とヒドロキシナフタレン類とを反応させる方法、(b)酸触媒(及びアルキルメルカプタン)の存在下、9-フルオレノンとヒドロキシナフタレン類とを反応させる方法、(c)塩酸及びチオール類(メルカプトカルボン酸など)の存在下、フルオレノン類とヒドロキシナフタレン類とを反応させる方法、(d)硫酸及びチオール類(メルカプトカルボン酸など)の存在下、フルオレノン類とヒドロキシナフタレン類とを反応させ、炭化水素類と極性溶媒とで構成された晶析溶媒で晶析させてビスナフトールフルオレンを製造する方法などを利用して9,9-ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類を得、これに[XO]a基及び[XO]b基に対応する化合物(アルキレンオキサイドやハロアルカノールなど)を反応させることにより製造することができる。例えば、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)ナフチル]フルオレンは、9,9-ビス[6-ヒドロキシナフチル]フルオレンと2-クロロエタノールとをアルカリ条件下にて反応させることにより得てもよい。
【0055】
本発明による一般式(1)で表される構成単位を有するポリカーボネート樹脂は、一般式(4)の化合物に加えて、芳香族ジヒドロキシ化合物や脂肪族ジヒドロキシ化合物(例えば、フルオレン骨格を有するジヒドロキシ化合物やビナフトール類)をジヒドロキシ成分として併用することができる。
【0056】
好ましくは、本発明のポリカーボネート樹脂は、上記一般式(4)で表される化合物に加え、下記一般式(5)で示される化合物及び/又は下記一般式(6)で表される化合物をジヒドロキシ成分として使用して製造することができる。
【化17】

(一般式(5)中、Yは炭素数1~4のアルキレン基を表し、c及びdは、各々独立に、1~10の整数を表す。)
【化18】

(一般式(6)中、
Zは炭素数1~4のアルキレン基を表し、
~Rは、各々独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシル基、炭素数5~20のシクロアルキル基、炭素数5~20のシクロアルコキシル基、炭素数6~20のアリール基又は炭素数6~20のアリールオキシ基を表し、
e及びfは、各々独立に、0~5の整数を表す。)
【0057】
式(5)で表されるジヒドロキシ化合物の例として、2,2’-ビス(1-ヒドロキシメトキシ)-1,1’-ビナフタレン、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン、2,2’-ビス(3-ヒドロキシプロピルオキシ)-1,1’-ビナフタレン、2,2’-ビス(4-ヒドロキシブトキシ)-1,1’-ビナフタレン等が挙げられる。なかでも2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン(以下“BHEBN”と省略することがある)が好ましい。これらは単独で使用してもよく、又は二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0058】
一般式(5)の化合物を製造する際、不純物としてc及びdのいずれかが0である化合物が不純物として副生されることがある。このような不純物の含有量は、一般式(5)の化合物を主成分とするモノマー中で合計で、1000ppm以下であることが好ましく、500ppm以下であることがより好ましく、200ppm以下であることがさらに好ましく、100ppm以下であることが特に好ましい。さらに、不純物ではないが、一般式(5)中のc及びdが同一でない(すなわちc≠d)化合物は一般式(5)の化合物を主成分とするモノマー中で合計で50ppm以下であることが好ましく、20ppm以下であることがより好ましい。
【0059】
式(6)で表されるジヒドロキシ化合物の例として、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレン(以下“BPPEF”と省略することがある)等が挙げられる。なかでも9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン及び9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンが好ましい。これらは単独で使用してもよく、又は二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0060】
一般式(6)の化合物を製造する際、不純物としてe及びfのいずれかが0である化合物が不純物として副生されることがある。このような不純物の含有量は、一般式(6)の化合物を主成分とするモノマー中で合計で、1000ppm以下であることが好ましく、500ppm以下であることがより好ましく、200ppm以下であることがさらに好ましく、100ppm以下であることが特に好ましい。さらに、不純物ではないが、一般式(6)中のe及びfが同一でない(すなわちe≠f)化合物は一般式(6)の化合物を主成分とするモノマー中で合計で50ppm以下であることが好ましく、20ppm以下であることがより好ましい。
【0061】
上記以外に併用することができる芳香族ジヒドロキシ化合物として、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールAF、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールG、ビスフェノールM、ビスフェノールS、ビスフェノールP、ビスフェノールPH、ビスフェノールTMC、及びビスフェノールZ等が例示される。
【0062】
本発明に用いられる炭酸ジエステルとしては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m-クレジルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等が挙げられる。これらの中でも特に、ジフェニルカーボネートが好ましい。ジフェニルカーボネートは、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して0.97~1.20モルの比率で用いられることが好ましく、更に好ましくは0.98~1.10モルの比率である。
【0063】
エステル交換触媒のうち、塩基性化合物触媒としては、特にアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、及び含窒素化合物等が挙げられる。
【0064】
本願発明に使用されるアルカリ金属化合物としては、例えばアルカリ金属の有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物又はアルコキシド等が挙げられる。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩もしくは2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩もしくはリチウム塩等が用いられる。
【0065】
アルカリ土類金属化合物としては、例えばアルカリ土類金属化合物の有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物又はアルコキシド等が挙げられる。具体的には、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、フェニルリン酸マグネシウム等が用いられる。
【0066】
含窒素化合物としては、例えば4級アンモニウムヒドロキシド及びそれらの塩、アミン類等が挙げられる。具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル基、アリール基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類;トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類;ジエチルアミン、ジブチルアミン等の2級アミン類;プロピルアミン、ブチルアミン等の1級アミン類;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類;あるいは、アンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート等の塩基もしくは塩基性塩等が用いられる。
【0067】
エステル交換触媒としては、亜鉛、スズ、ジルコニウム、鉛等の塩が好ましく用いられ、これらは単独もしくは組み合わせて用いることができる。
【0068】
エステル交換触媒としては、具体的には、酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシド、酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)等が用いられる。
【0069】
これらの触媒は、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、1×10-9~1×10-3モルの比率で、好ましくは1×10-7~1×10-4モルの比率で用いられる。
【0070】
溶融重縮合法は、前記の原料及び触媒を用いて、加熱下で、さらに常圧又は減圧下で、エステル交換反応により副生成物を除去しながら溶融重縮合を行うものである。
【0071】
本組成系での溶融重縮合は、一般式(4)で表される化合物及び炭酸ジエステルを反応容器中で溶融後、副生するモノヒドロキシ化合物を滞留させた状態で、反応を行うことが望ましい。滞留させるために、反応装置を閉塞したり、減圧したり加圧したりするなど圧力を制御することができる。この工程の反応時間は、20分以上240分以下であり、好ましくは40分以上180分以下、特に好ましくは60分以上150分以下である。この際、副生するモノヒドロキシ化合物を生成後すぐに留去すると、最終的に得られるポリカーボネート樹脂は高分子量体の含有量が少ない。しかし、副生したモノヒドロキシ化合物を反応容器中に一定時間滞留させると、最終的に得られるポリカーボネート樹脂は高分子量体の含有量が多いものが得られる。
【0072】
溶融重縮合反応は、連続式で行ってもよくまたバッチ式で行ってもよい。反応を行うに際して用いられる反応装置は、錨型攪拌翼、マックスブレンド攪拌翼、ヘリカルリボン型攪拌翼等を装備した縦型であっても、パドル翼、格子翼、メガネ翼等を装備した横型であっても、スクリューを装備した押出機型であってもよい。また、重合物の粘度を勘案してこれらの反応装置を適宜組み合わせた反応装置を使用することが好適に実施される。
【0073】
本発明に使用されるポリカーボネート樹脂の製造方法では、重合反応終了後、熱安定性及び加水分解安定性を保持するために、触媒を除去もしくは失活させてもよい。公知の酸性物質の添加による触媒の失活を行う方法を好適に実施できる。酸性物質としては、具体的には、安息香酸ブチル等のエステル類、p-トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類;p-トルエンスルホン酸ブチル、p-トルエンスルホン酸ヘキシル等の芳香族スルホン酸エステル類;亜リン酸、リン酸、ホスホン酸等のリン酸類;亜リン酸トリフェニル、亜リン酸モノフェニル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジn-プロピル、亜リン酸ジn-ブチル、亜リン酸ジn-ヘキシル、亜リン酸ジオクチル、亜リン酸モノオクチル等の亜リン酸エステル類;リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニル、リン酸モノフェニル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸モノオクチル等のリン酸エステル類;ジフェニルホスホン酸、ジオクチルホスホン酸、ジブチルホスホン酸等のホスホン酸類;フェニルホスホン酸ジエチル等のホスホン酸エステル類;トリフェニルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン等のホスフィン類;ホウ酸、フェニルホウ酸等のホウ酸類;ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等の芳香族スルホン酸塩類;ステアリン酸クロライド、塩化ベンゾイル、p-トルエンスルホン酸クロライド等の有機ハロゲン化物;ジメチル硫酸等のアルキル硫酸;塩化ベンジル等の有機ハロゲン化物等が好適に用いられる。これらの失活剤は、触媒量に対して0.01~50倍モル、好ましくは0.3~20倍モル使用される。触媒量に対して0.01倍モルより少ないと、失活効果が不充分となり好ましくない。また、触媒量に対して50倍モルより多いと、樹脂の耐熱性が低下し、成形体が着色しやすくなるため好ましくない。
【0074】
触媒失活後、ポリマー中の低沸点化合物を、0.1~1mmHgの圧力、200~350℃の温度で脱揮除去する工程を設けてもよい。この工程には、パドル翼、格子翼、メガネ翼等、表面更新能の優れた攪拌翼を備えた横型装置、あるいは薄膜蒸発器が好適に用いられる。
【0075】
本発明のポリカーボネート樹脂は、異物含有量が極力少ないことが望まれ、溶融原料の濾過、触媒液の濾過等が好適に実施される。フィルターのメッシュは、5μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以下である。さらに、生成する樹脂のポリマーフィルターによる濾過が好適に実施される。ポリマーフィルターのメッシュは、100μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以下である。また、樹脂ペレットを採取する工程は、当然低ダスト環境でなければならず、クラス6以下であることが好ましく、より好ましくはクラス5以下である。
【0076】
本発明の他の一態様における、一般式(1)~(3)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂、または一般式(1)及び(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂を製造する場合、一般式(4)~(6)で表される化合物を用いて、一般式(1)~(3)で表される構成単位または一般式(1)及び(2)で表される構成単位を含む共重合体を製造してもよく、一般式(4)~(6)で表される化合物を別々に重合させてそれぞれの構成単位からなるホモポリマーを含む三元系樹脂または二元系樹脂として製造してもよい。あるいは、一般式(1)と(2)で表される構成単位を含む共重合体と一般式(3)で表される構成単位を含むホモポリマーを重合した後にブレンドしてもよく、一般式(1)と(2)で表される構成単位を含む共重合体と一般式(1)と(3)で表される構成単位を含む共重合体を重合した後にブレンドしてもよい。
【0077】
(3)光学成形体
本発明のポリカーボネート樹脂を用いて光学成形体を製造できる。例えば射出成形法、圧縮成形法、押出成形法、溶液キャスティング法など任意の方法により成形される。本発明のポリカーボネート樹脂は、成形性及び耐熱性に優れているので、射出成形が必要となる光学レンズにおいて特に有利に使用することができる。成形の際には、本発明のポリカーボネート樹脂を他のポリカーボネート樹脂やポリエステル樹脂などの他の樹脂と混合して使用することが出来る。また、酸化防止剤、加工安定剤、光安定剤、重合金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、離型剤、紫外線吸収剤、可塑剤、相溶化剤等の添加剤を混合しても構わない。
【0078】
酸化防止剤としては、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマイド)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルホスホネート-ジエチルエステル、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート及び3,9-ビス{1,1-ジメチル-2-[β-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどが挙げられる。ポリカーボネート樹脂中の酸化防止剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001~0.3重量部であることが好ましい。
【0079】
加工安定剤としては、リン系加工熱安定剤、硫黄系加工熱安定剤等が挙げられる。リン系加工熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸及びこれらのエステル等が挙げられる。具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト及びビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂中のリン系加工熱安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001~0.2重量部が好ましい。
【0080】
硫黄系加工熱安定剤としては、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ステアリルチオプロピオネート)、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂中の硫黄系加工熱安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001~0.2重量部が好ましい。
【0081】
離型剤としては、その90重量%以上がアルコールと脂肪酸とのエステルからなるものが好ましい。アルコールと脂肪酸とのエステルとしては、具体的には一価アルコールと脂肪酸とのエステルや、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルが挙げられる。上記一価アルコールと脂肪酸とのエステルとしては、炭素原子数1~20の一価アルコールと炭素原子数10~30の飽和脂肪酸とのエステルが好ましい。また、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルとしては、炭素原子数1~25の多価アルコールと炭素原子数10~30の飽和脂肪酸との部分エステル又は全エステルが好ましい。
【0082】
具体的に、一価アルコールと飽和脂肪酸とのエステルとしては、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート等が挙げられる。多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステル又は全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、カプリン酸モノグリセリド、ラウリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ビフェニルビフェネ-ト、ソルビタンモノステアレート、2-エチルヘキシルステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等のジペンタエリスルトールの全エステル又は部分エステル等が挙げられる。これら離型剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.005~2.0重量部の範囲が好ましく、0.01~0.6重量部の範囲がより好ましく、0.02~0.5重量部の範囲がさらに好ましい。
【0083】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤及びシアノアクリレート系紫外線吸収剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の紫外線吸収剤が好ましい。すなわち、以下に挙げる紫外線吸収剤は、いずれかを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0084】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2N-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2,2’-メチレンビス(4-クミル-6-ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’-p-フェニレンビス(1,3-ベンゾオキサジン-4-オン)、2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾ-ル等が挙げられる。
【0085】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5-ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0086】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(オクチル)オキシ]-フェノール等が挙げられる。
【0087】
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、2,2’-ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-p-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-m-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(4,4’-ジフェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(2,6-ナフタレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(1,5-ナフタレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(2-メチル-p-フェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(2-ニトロ-p-フェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)及び2,2’-(2-クロロ-p-フェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)などが挙げられる。
【0088】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、1,3-ビス-[(2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、及び1,3-ビス-[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼンなどが挙げられる。
【0089】
紫外線吸収剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01~3.0重量部であり、より好ましくは0.02~1.0重量部であり、さらに好ましくは0.05~0.8重量部である。かかる配合量の範囲であれば、用途に応じ、ポリカーボネート樹脂に十分な耐候性を付与することが可能である。
【0090】
本発明のポリカーボネート樹脂は、高屈折率と低いアッベ数を有する。さらに、光学レンズの他に、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、太陽電池等に使用される透明導電性基板、光学ディスク、液晶パネル、光カード、シート、フィルム、光ファイバー、コネクター、蒸着プラスチック反射鏡、ディスプレイなどの光学部品の構造材料又は機能材料用途に適した光学用成形体として有利に使用することができる。
【0091】
光学成形体の表面には、必要に応じ、反射防止層あるいはハードコート層といったコート層が設けられていてもよい。反射防止層は、単層であっても多層であってもよく、有機物であっても無機物であっても構わないが、無機物であることが好ましい。具体的には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム等の酸化物あるいはフッ化物が例示される。
【0092】
(4)光学レンズ
本発明のポリカーボネート樹脂を用いて製造される光学レンズは、高屈折率であり、低アッベ数であり、高耐湿熱性であるため、望遠鏡、双眼鏡、テレビプロジェクター等、従来、高価な高屈折率ガラスレンズが用いられていた分野に用いることができ、極めて有用である。必要に応じて、非球面レンズの形で用いることが好ましい。非球面レンズは、1枚のレンズで球面収差を実質的にゼロとすることが可能であるため、複数の球面レンズの組み合わせによって球面収差を取り除く必要がなく、軽量化及び生産コストの低減化が可能になる。従って、非球面レンズは、光学レンズの中でも特にカメラレンズとして有用である。
光学レンズは、例えば射出成形法、圧縮成形法、射出圧縮成形法など任意の方法により成形される。本発明により、ガラスレンズでは技術的に加工の困難な高屈折率低複屈折非球面レンズをより簡便に得ることができる。
【0093】
光学レンズへの異物の混入を極力避けるため、成形環境も当然低ダスト環境でなければならず、クラス6以下であることが好ましく、より好ましくはクラス5以下である。
【0094】
(5)光学フィルム
本発明のポリカーボネート樹脂を用いて製造される光学フィルムは、透明性及び耐熱性に優れるため、液晶基板用フィルム、光メモリーカード等に好適に使用される。
【0095】
光学フィルムへの異物の混入を極力避けるため、成形環境も当然低ダスト環境でなければならず、クラス6以下であることが好ましく、より好ましくはクラス5以下である。
【0096】
<実施例>
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に何らの制限を受けるものではない。なお、実施例中の測定値は以下の方法あるいは装置を用いて測定した。
1)ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw):ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を用い、テトラヒドロフランを展開溶媒として、既知の分子量(分子量分布=1)の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。この検量線に基づいて、GPCのリテンションタイムからMwを算出した。
2)屈折率(nD):実施例で製造したポリカーボネート樹脂からなる厚さ0.1mmフィルムについて、アッベ屈折計を用い、JIS-K-7142の方法で測定した。
3)アッベ数(ν):実施例で製造したポリカーボネート樹脂からなる厚さ0.1mmフィルムについて、アッベ屈折計を用い、23℃下での波長486nm、589nm及び656nmの屈折率を測定し、さらに下記式を用いてアッベ数を算出した。
ν=(nD-1)/(nF-nC)
nD:波長589nmでの屈折率
nC:波長656nmでの屈折率
nF:波長486nmでの屈折率
4)ガラス転移温度(Tg):示差熱走査熱量分析計(DSC)により測定した。
5)全光線透過率:下記b値の測定用に作成したポリカーボネート樹脂からなる厚さ3mmのプレートについて、日本電色工業(株)製 SE2000型分光式色差計を用い、JIS-K-7361-1の方法で測定した。
6)b値: 製造した樹脂を120℃で4時間真空乾燥した後、射出成型機(FANUC ROBOSHOT α-S30iA)によりシリンダー温度270℃、金型温度Tg-10℃にて射出成形し、直径50mm、厚さ3mmの円盤状試験プレート片を得た。このプレート片を用いて、JIS K7105に準じb値を測定した。b値が小さいほど黄色味が弱いことを示し、色相が良好となる。成形プレートの測定には、日本電色工業(株)製 SE2000型分光式色差計を用いた。
7)ビニル末端基量:H-NMRの測定は、下記の条件で行った。
H-NMR測定条件
装置:ブルカー AVANZE III HD 500MHz
フリップ角:30度
待ち時間:1秒
積算回数:500回
測定温度:室温(298K)
濃度:5wt%
溶媒:重クロロホルム
内部標準物質:テトラメチルシラン(TMS) 0.05wt%
8)残存フェノール及び残存ジフェニルカーボネート(DPC)量:秤量したポリカーボネート樹脂1.0gを精秤し、ジクロロメタン10mlに溶解し、攪拌しながら100mlのメタノールに徐々に添加して樹脂を再沈殿させた。十分に攪拌を行った後、沈殿物を濾別し、濾液をエバポレータにより濃縮して得られた固体へ標準物質溶液1.0gを精秤して加えた。さらに1gのクロロホルムを加えて希釈した溶液をGC-MSにより定量した。
標準物質溶液:200ppm、2,4,6-トリメチルフェノールのクロロホルム溶液
測定装置(GC-MS):Agilent HP6890/5973MSD
カラム:キャピラリーカラム DB-5MS, 30m×0.25mm I.D.,膜厚0.5μm
昇温条件:50℃(5min hold)~300℃(15min hold),10℃/min
注入口温度:300℃、打ち込み量:1.0μl(スプリット比25)
イオン化法:EI法
キャリアーガス:He,1.0ml/min
Aux温度:300℃
質量スキャン範囲:33-700
9)残存BHEBN量及び残存BPPEF量:
秤量したポリカーボネート樹脂0.5gをテトラヒドロフラン(THF)50mlに溶解し、試料溶液とした。標品として各化合物の純品より検量線を作成し、試料溶液2μLをLC-MSにより以下の測定条件で定量した。なお、この測定条件での検出限界値は0.01ppmである。
LC-MS測定条件:
測定装置(LC部分):Agilent Infinity 1260 LC System
カラム:ZORBAX Eclipse XDB-18、及びガードカートリッジ
移動相:
A: 0.01mol/L-酢酸アンモニウム水溶液
B:0.01mol/L-酢酸アンモニウムのメタノール溶液
C:THF
移動相のグラジエントプログラム:
【表1】
流速:0.3ml/分
カラム温度:45℃
検出器:UV(225nm)
測定装置(MS部分):Agilent 6120 single quad LCMS System
イオン化ソース:ESI
極性: Positive
フラグメンタ: 100V
ドライガス:10L/分、350℃
ネブライザ:50psi
キャピラリ電圧:3000V
測定イオン:
BHEBN:イオン種=[M+NH]、m/z=392.1
BPPEF:イオン種=[M+NH]、m/z=608.3
10)成形性:上記b値の測定にて成形した際、下記の基準に基づいて成形性を評価した。
A:成形片に空隙、表面に波打ちがない。
B:成形片に空隙がある。
C:成形片の表面に波打ちがある。
D:成形片に空隙があり、表面に変形がある。
11)PCT(プレッシャークッカー試験):直径50mm、厚さ3mmの射出成形物をHIRAYAMA社製 PC-305SIIIで、120℃、0.2Mpa、100%RH、20時間の条件で保持後、サンプルを取り出し、日本電色工業(株)製 SE2000型分光式色差計を用い、JIS-K-7361-1の方法で測定した。
【0097】
[ポリカーボネート樹脂の製造]
(実施例1)
原料として、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)ナフタレン-2-イル]フルオレン(以下“BNEF”と省略することがある)18.85g(0.035モル)、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン(以下“BHEBN”と省略することがある)18.35g(0.049モル)、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(以下“BPEF”と省略することがある)7.02g(0.016モル)、ジフェニルカーボネート(以下“DPC”と省略することがある)21.70g(0.101モル)、及び2.5×10-2モル/リットルの炭酸水素ナトリウム水溶液32μl(8.0×10-7モル、即ち、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、8.0×10-6モル)を攪拌機及び留出装置付きの300ml四口フラスコに入れ、窒素雰囲気760mmHgの下、180℃に加熱した。加熱開始10分後に原料の完全溶解を確認し、その後同条件で110分間攪拌を行った。その後、減圧度を200mmHgに調整すると同時に、60℃/hrの速度で200℃まで昇温を行った。この際、副生したフェノールの留出開始を確認した。その後、20分間200℃に保持して反応を行った。さらに、75℃/hrの速度で230℃まで昇温し、昇温終了10分後、その温度で保持しながら、1時間かけて減圧度を1mmHg以下とした。その後、60℃/hrの速度で245℃まで昇温し、さらに30分間攪拌を行った。反応終了後、反応器内に窒素を導入して常圧に戻し、生成したポリカーボネート樹脂を取り出した。
【0098】
得られた樹脂の物性値を表2に示す。また、該樹脂のH-NMRスペクトルの比率を確認したところ、(4.75~4.69ppmのピーク積分値)/(4.85~2.80ppmのピーク積分値)×100=0.029、(4.59~4.55ppmのピーク積分値)/(4.85~2.80ppmのピーク積分値)×100=検出なし、(3.62~3.26ppmのピーク積分値)/(4.85~2.80ppmのピーク積分値)×100=0.189、(4.83~4.76ppmのピーク積分値)/(4.85~2.80ppmのピーク積分値)×100=0.026であり、b値は4.1、樹脂中の残存フェノール量は300ppm、残存DPC量は50ppmであった。得られたNMRチャートを図1に示す。
【0099】
(実施例2)
原料として、BNEF17.77g(0.033モル)、BHEBN18.72g(0.050モル)、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレン(以下“BPPEF”と省略することがある)10.04g(0.017モル)、DPC21.70g(0.101モル)、及び2.5×10-2モル/リットルの炭酸水素ナトリウム水溶液32μl(8.0×10-7モル、即ち、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、8.0×10-6モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。
【0100】
得られた樹脂の物性値を表2に示す。また、該樹脂のH-NMRスペクトルの比率を確認したところ、(4.75~4.69ppmのピーク積分値)/(4.85~2.80ppmのピーク積分値)×100=検出なし、(4.59~4.55ppmのピーク積分値)/(4.85~2.80ppmのピーク積分値)×100=0.068、 (3.62~3.26ppmのピーク積分値)/(4.85~2.80ppmのピーク積分値)×100=0.184、(4.83~4.76ppmのピーク積分値)/(4.85~2.80ppmのピーク積分値)×100=0.022であり、b値は4.2、樹脂中の残存フェノール量は300ppm、残存DPC量は50ppmであった。得られたNMRチャートを図2に示す。
【0101】
(実施例3)
原料として、BNEF8.08g(0.015モル)、BPPEF 50.21g(0.085モル)、DPC21.70g(0.101モル)、及び2.5×10-2モル/リットルの炭酸水素ナトリウム水溶液32μl(8.0×10-7モル、即ち、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、8.0×10-6モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表2に示す。
【0102】
(実施例4)
原料として、BNEF29.62g(0.055モル)、BPPEF 26.58g(0.045モル)、DPC21.70g(0.101モル)、及び2.5×10-2モル/リットルの炭酸水素ナトリウム水溶液32μl(8.0×10-7モル、即ち、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、8.0×10-6モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表2に示す。
【0103】
(実施例5)
原料として、BNEF40.40g(0.075モル)、BPPEF 14.77g(0.025モル)、DPC21.70g(0.101モル)、及び2.5×10-2モル/リットルの炭酸水素ナトリウム水溶液32μl(8.0×10-7モル、即ち、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、8.0×10-6モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表2に示す。
【0104】
(実施例6)
原料として、BNEF8.08g(0.015モル)、BHEBN18.72g(0.050モル)、BPEF 15.35g(0.035モル)、DPC21.70g(0.101モル)、及び2.5×10-2モル/リットルの炭酸水素ナトリウム水溶液32μl(8.0×10-7モル、即ち、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、8.0×10-6モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表2に示す。
【0105】
(実施例7)
原料として、BNEF29.62g(0.055モル)、BHEBN13.11g(0.035モル)、BPEF 4.39g(0.010モル)、DPC21.70g(0.101モル)、及び2.5×10-2モル/リットルの炭酸水素ナトリウム水溶液32μl(8.0×10-7モル、即ち、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、8.0×10-6モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表2に示す。
【0106】
(実施例8)
原料として、BNEF40.40g(0.075モル)、BHEBN7.49g(0.020モル)、BPEF2.19g(0.005モル)、DPC21.70g(0.101モル)、及び2.5×10-2モル/リットルの炭酸水素ナトリウム水溶液32μl(8.0×10-7モル、即ち、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、8.0×10-6モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表2に示す。
【0107】
(実施例9)
原料として、BNEF8.08g(0.015モル)、BHEBN16.85g(0.045モル)、BPPEF23.63g(0.040モル)、DPC21.70g(0.101モル)、及び2.5×10-2モル/リットルの炭酸水素ナトリウム水溶液32μl(8.0×10-7モル、即ち、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、8.0×10-6モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表2に示す。
【0108】
(実施例10)
原料として、BNEF29.62g(0.055モル)、BHEBN14.98g(0.040モル)、BPPEF2.95g(0.005モル)、DPC21.70g(0.101モル)、及び2.5×10-2モル/リットルの炭酸水素ナトリウム水溶液32μl(8.0×10-7モル、即ち、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、8.0×10-6モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表2に示す。
【0109】
(実施例11)
原料として、BNEF40.40g(0.075モル)、BHEBN7.49g(0.020モル)、BPPEF2.95g(0.005モル)、DPC21.70g(0.101モル)、及び2.5×10-2モル/リットルの炭酸水素ナトリウム水溶液32μl(8.0×10-7モル、即ち、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、8.0×10-6モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表2に示す。
【0110】
(実施例12)
原料として、BNEF10.77g(0.020モル)、BHEBN29.95g(0.080モル)を用い、BPEFを用いなかった以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表2に示す。
【0111】
(実施例13)
原料として、BNEF18.64g(0.035モル)、BHEBN23.70g(0.063モル)、DPC21.30g(0.099モル)、及び2.5×10-2モル/リットルの炭酸水素ナトリウム水溶液32μl(8.0×10-7モル、即ち、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、8.1×10-6モル)を用いた以外は実施例12と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表2に示す。
【0112】
(実施例14)
原料として、BNEF29.28g(0.054モル)、BHEBN16.41g(0.044モル)、DPC21.30g(0.099モル)、及び2.5×10-2モル/リットルの炭酸水素ナトリウム水溶液32μl(8.0×10-7モル、即ち、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、8.1×10-6モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表2に示す。
また、該樹脂のH-NMRスペクトルの比率を確認したところ、(4.75~4.69ppmのピーク積分値)/(4.85~2.80ppmのピーク積分値)×100=検出なし、(4.59~4.55ppmのピーク積分値)/(4.85~2.80ppmのピーク積分値)×100=検出なし、(3.62~3.26ppmのピーク積分値)/(4.85~2.80ppmのピーク積分値)×100=0.4925、(4.83~4.76ppmのピーク積分値)/(4.85~2.80ppmのピーク積分値)×100=0.023であった。得られたNMRチャートを図3に示す。
【0113】
(実施例15)
原料として、BNEF40.00g(0.074モル)、BHEBN9.12g(0.024モル)、DPC21.40g(0.100モル)、及び2.5×10-2モル/リットルの炭酸水素ナトリウム水溶液32μl(8.0×10-7モル、即ち、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、8.1×10-6モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた樹脂の物性値を表2に示す。
【0114】
(実施例16)
原料として、BNEF8.0kg(14.85モル)、BHEBN7.5kg(20.03モル)、BPPEF7.5kg(12.70モル)、DPC10.5kg(49.02モル)、及び2.5×10-2モル/リットルの炭酸水素ナトリウム水溶液16ミリリットル(4.0×10-4モル、即ち、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、8.4×10-6モル)を攪拌機及び留出装置付きの50L反応器に入れ、窒素雰囲気760mmHgの下、180℃に加熱した。加熱開始30分後に原料の完全溶解を確認し、その後同条件で120分間攪拌を行った。その後、減圧度を200mmHgに調整すると同時に、60℃/hrの速度で200℃まで昇温を行った。この際、副生したフェノールの留出開始を確認した。その後、20分間200℃に保持して反応を行った。さらに、75℃/hrの速度で230℃まで昇温し、昇温終了10分後、その温度で保持しながら、2時間かけて減圧度を1mmHg以下とした。その後、60℃/hrの速度で245℃まで昇温し、さらに40分間攪拌を行った。反応終了後、反応器内に窒素を導入して常圧に戻し、生成したポリカーボネート樹脂をペレタイズして取り出した。得られた樹脂のb値は4.2、樹脂中の残存フェノール量は100ppm、残存DPC量は50ppm、残存BHEBNは20ppm、残存BPPEFは5ppmであった。
【0115】
(実施例17)
原料として、BNEF6.9kg(12.81モル)、BHEBN9.3kg(24.84モル)、BPPEF5.9kg(9.99モル)、DPC10.5kg(49.02モル)、及び2.5×10-2モル/リットルの炭酸水素ナトリウム水溶液16ミリリットル(4.0×10-4モル、即ち、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、8.4×10-6モル)を用いた以外は実施例16と同様の操作を行い、生成したポリカーボネート樹脂をペレタイズして取り出した。得られた樹脂のb値は2.7、樹脂中の残存フェノール量は200ppm、残存DPC量は160ppm、残存BHEBNは15ppm、残存BPPEFは5ppmであった。
【0116】
(比較例1)
原料として、BHEBN28.05g(0.075モル)、BPEF10.96g(0.025モル)、DPC21.70g(0.101モル)、及び2.5×10-2モル/リットルの炭酸水素ナトリウム水溶液32μl(8.0×10-7モル、即ち、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、8.0×10-6モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。
【0117】
得られた樹脂の物性値を表2に示す。また、該樹脂のH-NMRスペクトルの比率を確認したところ、(4.75~4.69ppmのピーク積分値)/(4.85~2.80ppmのピーク積分値)×100=1.013、(4.59~4.55ppmのピーク積分値)/(4.85~2.80ppmのピーク積分値)×100=検出なし、(3.62~3.26ppmのピーク積分値)/(4.85~2.80ppmのピーク積分値)×100=1.615、(4.83~4.76ppmのピーク積分値)/(4.85~2.80ppmのピーク積分値)×100=検出なしであり、b値は5.3であった。
【0118】
(比較例2)
原料として、BHEBN28.05g(0.075モル)、BPPEF14.77g(0.025モル)、DPC21.70g(0.101モル)、及び2.5×10-2モル/リットルの炭酸水素ナトリウム水溶液32μl(8.0×10-7モル、即ち、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、8.0×10-6モル)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。
【0119】
得られた樹脂の物性値を表2に示す。また、該樹脂のH-NMRスペクトルの比率を確認したところ、(4.75~4.69ppmのピーク積分値)/(4.85~2.80ppmのピーク積分値)×100=検出なし、(4.59~4.55ppmのピーク積分値)/(4.85~2.80ppmのピーク積分値)×100=1.120、0.021、(3.62~3.26ppmのピーク積分値)/(4.85~2.80ppmのピーク積分値)×100=1.570、(4.83~4.76ppmのピーク積分値)/(4.85~2.80ppmのピーク積分値)×100=検出なしであり、b値は6.0であった。
【0120】
(比較例3)
原料として、BPEF5.6kg(12.81モル)、BHEBN9.3kg(24.84モル)、BPPEF5.9kg(9.99モル)、DPC10.5kg(49.02モル)、及び2.5×10-2モル/リットルの炭酸水素ナトリウム水溶液16ミリリットル(4.0×10-4モル、即ち、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、8.4×10-6モル)を用いた以外は実施例16と同様の操作を行い、生成したポリカーボネート樹脂をペレタイズして取り出した。得られた樹脂のb値は4.1であった。得られた樹脂の物性値を表2に示す。
【0121】
【表2】



図1
図2
図3