(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】基地局、端末装置、および通信システム
(51)【国際特許分類】
H04W 72/0457 20230101AFI20230620BHJP
H04W 92/20 20090101ALI20230620BHJP
H04W 88/08 20090101ALI20230620BHJP
H04W 24/04 20090101ALI20230620BHJP
【FI】
H04W72/0457 110
H04W92/20
H04W88/08
H04W24/04
(21)【出願番号】P 2021514782
(86)(22)【出願日】2019-04-19
(86)【国際出願番号】 JP2019016886
(87)【国際公開番号】W WO2020213169
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 昂
【審査官】吉村 真治▲郎▼
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/127057(WO,A1)
【文献】特開2011-250215(JP,A)
【文献】特表2013-520096(JP,A)
【文献】国際公開第2014/021447(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/122783(WO,A1)
【文献】特表2020-503804(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0085646(US,A1)
【文献】CMCC,Flow control function enhancement in LTE-NR DC[online],3GPP TSG RAN WG2 adhoc_2017_06_NR R2-1706991,2017年06月17日
【文献】Huawei, HiSilicon,Support of Multi-Connectivity in NR[online],3GPP TSG RAN WG2 #97 R2-1701215,2017年02月04日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の基地局の通信処理状態に関する情報を前記他の基地局から受信する第1の受信部と、
端末装置
に送信するデータの複製を前記他の基地局へ送信する第1の送信部と、
前記データを無線通信により前記端末装置へ送信する第2の送信部と
、
前記第2の送信部による前記データの送信が完了した後に、前記通信処理状態に関する情報に
基づいて、前記他の基地局が前記端末装置への前記データの複製の送信を完了しているか判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に応じて、前記データの送信が完了したことを示す送信完了通知を前記他の基地局へ送信
するか否かを制御する制御部と
を有することを特徴とする基地局。
【請求項2】
前記第1の送信部は、
前記判定部によって前記他の基地局による前記端末装置への前記データの複製の送信が完了していないと判定された場合には、前記データの送信が完了したことを示す送信完了通知を前記他の基地局に送信
し、
前記他の基地局による前記端末装置への前記データの複製の送信が完了していると判定された場合には、前記送信完了通知を前記他の基地局に送信しないことを特徴とする請求項1に記載の基地局。
【請求項3】
前記通信処理状態に関する情報には、
前記他の基地局のRLC(Radio Link Control)レイヤおよびMAC(Media Access Control)レイヤの少なくともいずれかを処理する処理部の負荷状況を示す情報が含まれることを特徴とする請求項1に記載の基地局。
【請求項4】
前記第1の受信部は、
前記他の基地局から前記通信処理状態に関する情報を周期的に受信することを特徴とする請求項1に記載の基地局。
【請求項5】
前記第1の受信部は、
前記他の基地局の通信処理状態に所定以上の変化があった場合に、前記他の基地局の通信処理状態に関する情報を受信することを特徴とする請求項1に記載の基地局。
【請求項6】
前記他の基地局から送信された前記送信完了通知を受信する第2の受信部を備え、
前記第2の送信部は、
前記端末装置への前記データの送信が完了する前に、前記第2の受信部が前記他の基地局から前記送信完了通知を受信した場合、前記端末装置への前記データの送信をキャンセルすることを特徴とする請求項1に記載の基地局。
【請求項7】
自装置の通信処理状態に関する情報を他の基地局へ送信する第1の送信部と、
前記他の基地局が端末装置へ送信
するデータの複製を前記他の基地局から受信する受信部と、
前記データの複製を無線通信により前記端末装置へ送信する第2の送信部と
を備え、
前記受信部は、
前記他の基地局が前記通信処理状態に応じて、前記データの複製を完了しているかの判定に対応して送信される前記データの送信が完了したことを示す送信完了通知を前記他の基地局から受信し、
前記第2の送信部は、
前記端末装置への前記データの複製の送信が完了する前に、前記受信部が前記他の基地局から前記送信完了通知を受信した場合、前記端末装置への前記データの複製の送信をキャンセルすることを特徴とする基地局。
【請求項8】
前記通信処理状態に関する情報には、
RLCレイヤおよびMACレイヤの少なくともいずれかを処理する自装置の処理部の負荷状況を示す情報が含まれることを特徴とする請求項7に記載の基地局。
【請求項9】
前記第1の送信部は、
前記通信処理状態に関する情報を前記他の基地局へ周期的に送信することを特徴とする請求項7に記載の基地局。
【請求項10】
前記第1の送信部は、
前記通信処理状態に所定以上の変化があった場合に、前記通信処理状態に関する情報を前記他の基地局へ送信することを特徴とする請求項7に記載の基地局。
【請求項11】
第1の基地局であって、第2の基地局の通信処理状態に関する情報を前記第2の基地局から受信し、端末装置へ送信されるデータの複製を前記第2の基地局へ送信し、前記データを無線通信により前記端末装置へ送信し、前記データの送信が完了した後に、前記第2の基地局の通信処理状態に関する情報
に基づいて前記第2の基地局が前記データの複製の送信を完了しているか判定し、前記データの送信が完了したことを示す送信完了通知を前記第2の基地局へ送信する
か否か制御する第1の基地局から送信された前記データ、
および、前記第2の基地局であって、前記第2の基地局の通信処理状態に関する情報を前記第1の基地局へ送信し、前記端末装置へ送信される前記データの複製を前記第1の基地局から受信し、前記データの複製を無線通信により前記端末装置へ送信し、前記送信完了通知を前記第1の基地局から受信し、前記端末装置への前記データの複製の送信が完了する前に、前記第1の基地局から前記送信完了通知が受信された場合、前記端末装置への前記データの複製の送信をキャンセルする第2の基地局から送信された前記データの複製の、少なくともいずれかを受信する受信部
を備えることを特徴とする端末装置。
【請求項12】
第1の基地局、第2の基地局、および端末装置を備える通信システムにおいて、
前記第1の基地局は、
前記第2の基地局の通信処理状態に関する情報を前記第2の基地局から受信する第1の受信部と、
前記端末装置へ送信されるデータの複製を前記第2の基地局へ送信する第1の送信部と、
前記データを無線通信により前記端末装置へ送信する第2の送信部と
、
前記第2の送信部による前記データの送信が完了した後に、前記通信処理状態に関する情報に基づいて、前記第2の基地局が前記端末装置への前記データの複製の送信を完了しているか判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に応じて、前記データの送信が完了したことを示す送信完了通知を前記第2の基地局へ送信するか否かを制御する制御部と、
を有し、
前記第1の送信部は、
前記第2の送信部による前記データの送信が完了した後に、
前記制御部による制御に応じて、前記データの送信が完了したことを示す送信完了通知を
送信する場合に、前記送信完了通知を前記第2の基地局へ送信し、
前記第2の基地局は、
前記第2の基地局の通信処理状態に関する情報を前記第1の基地局へ送信する第3の送信部と、
前記端末装置へ送信される前記データの複製を前記第1の基地局から受信する第2の受信部と、
前記データの複製を無線通信により前記端末装置へ送信する第4の送信部と
を有し、
前記第2の受信部は、
前記送信完了通知を前記第1の基地局から受信し、
前記第4の送信部は、
前記端末装置への前記データの複製の送信が完了する前に、前記第2の受信部が前記第1の基地局から前記送信完了通知を受信した場合、前記端末装置への前記データの複製の送信をキャンセルすることを特徴とする通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局、端末装置、および通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在のネットワークは、モバイル端末(スマートフォンやフィーチャーホン)のトラフィックがネットワークのリソースの大半を占めている。また、モバイル端末が使うトラフィックは、今後も拡大していく傾向にある。
【0003】
一方で、IoT(Internet of a things)サービス(例えば、交通システム、スマートメータ、装置等の監視システム)の展開にあわせて、多様な要求条件を持つサービスに対応することが求められている。そのため、第5世代移動体通信(5Gまたは、NR(New Radio))の通信規格では、4G(第4世代移動体通信)の標準技術に加えて、さらなる高データレート化、大容量化、低遅延化を実現する技術が求められている。なお、第5世代通信規格については、3GPPの作業部会(例えば、TSG-RAN WG1、TSG-RAN WG2等)で技術検討が進められており、2017年の末に標準規格書の初版が出されている。
【0004】
上記で述べたように、多種多様なサービスに対応するために、5Gでは、eMBB、Massive MTC(またはMassive IoT)、およびURLLCに分類される多くのユースケースのサポートが想定されている。なお、eMBBは、enhanced Mobile BroadBandの略であり、MTCは、Machine Type Communicationsの略であり、URLLCは、Ultra-Reliable and Low Latency Communicationの略である。
【0005】
中でも、URLLCは実現が最も困難なユースケースである。まず、無線部には、エラーレート10-5という高い信頼性が要求される。このような高い信頼性を実現する1つの方法として、使用リソース量を増やしてデータに冗長性を持たせる方法がある。しかし、無線リソースは限りがあるので、無制限に使用リソースを増やすことは難しい。
【0006】
低遅延に関しても、URLLCでは、上り回線および下り回線におけるユーザプレーンの無線部での遅延を0.5ミリ秒とすることが目標とされている。これは4G無線システムであるLTE(Long Term Evolution)の1/10未満という高い要求である。URLLCは上記のような超高信頼性と低遅延の2つの要求を、同時に満たすことが求められている。
【0007】
このような要求を達成するための一つの方法として、PDCP(Packet Data Convergence Protocol) Duplicationという技術が知られている(例えば、下記非特許文献1参照)。PDCP Duplicationでは、複数の基地局間でPDCPレイヤのパケットが複製され、複製されたパケットが複数の基地局から端末装置へ送信される。これにより、端末装置におけるパケットの受信の信頼性の向上と遅延の低減が可能となる。
【0008】
それぞれの基地局は、パケットの送信が完了した場合、他の基地局にパケットの送信完了通知を送信する。パケットの送信が完了する前に他の基地局から送信完了通知を受信した基地局は、パケットの送信をキャンセルする。これにより、同一のパケットの無駄な送信が抑制される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】3GPP TS 38.300 V15.3.0(2018-09)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、基地局間では、さまざまな制御信号が伝送される。基地局間のネットワークに輻輳が発生すると、制御信号のロスが発生する。制御信号のロスが発生すると、基地局間における連係動作が困難となる。また、制御信号のロスが発生すると、制御信号の再送や、基地局間の通信路の再確立等が行われ、制御信号の伝送における遅延が大きくなる。
【0011】
PDCP Duplicationでは、それぞれの基地局においてパケットの送信が完了した場合に、他の基地局にパケットの送信完了通知が送信される。しかし、他の基地局の処理状況によっては、送信完了通知が受信される前に、パケットの送信が完了してしまう場合がある。その場合には、送信完了通知の送信は無駄となる。PDCP Duplicationを行う2つの基地局では、パケットが送信される都度、少なくともいずれか基地局から送信完了通知が送信されることになる。
【0012】
パケットが送信される都度、送信完了通知が送信されると、基地局間のネットワークのトラフィックが増加し、輻輳が発生する場合がある。パケットが送信されるタイミングによっては、両方の基地局から送信完了通知が送信される場合もある。その場合には、基地局間のネットワークのトラフィックはさらに増加することになる。
【0013】
また、送信完了通知を受信した基地局は、パケットの送信が完了したか否かを確認する処理を行うことになる。パケットの送信が完了していない場合には、パケットの送信をキャンセルすることができるが、パケットの送信が既に完了していた場合には、パケットの送信が完了したか否かを確認する処理は、無駄な処理となる。送信完了通知は、パケットが送信される都度、少なくともいずれかの基地局から送信されるため、パケットの送信が完了したか否かを確認する処理も、少なくともいずれかの基地局ではパケットが送信される都度、実行されることになる。そのため、各基地局の処理負荷が増加する。
【0014】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、基地局間のトラフィックの増加を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願が開示する基地局は、1つの態様において、第1の受信部と、第1の送信部と、第2の送信部とを備える。第1の受信部は、他の基地局の通信処理状態に関する情報を他の基地局から受信する。第1の送信部は、端末装置へ送信されるデータの複製を他の基地局へ送信する。第2の送信部は、データを無線通信により端末装置へ送信する。また、第1の送信部は、第2の送信部によるデータ送信が完了した後に、他の基地局の通信処理状態に関する情報に応じて、データの送信が完了したことを示す送信完了通知を他の基地局へ送信する。
【発明の効果】
【0016】
本願が開示する基地局、端末装置、および通信システムの1つの態様によれば、基地局間のトラフィックの増加を抑えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、通信システムの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、MCGとして機能する基地局の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、レイヤ毎の基地局の機能構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、SCGとして機能する基地局の一例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、端末装置の一例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、PDCP Duplicationにおける通信システムの処理の一例を示すシーケンス図である。
【
図7】
図7は、MCGとして機能する基地局の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、SCGとして機能する基地局の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、基地局のハードウェアの一例を示す図である。
【
図10】
図10は、基地局のハードウェアの他の例を示す図である。
【
図11】
図11は、端末装置のハードウェア一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本願が開示する基地局、端末装置、および通信システムの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施形態により開示の技術が限定されるものではない。
【0019】
[通信システム10]
図1は、通信システム10の一例を示す図である。通信システム10は、複数の基地局20-1および20-2と、端末装置30とを備える。
図1の例では、基地局20-1は、セル13-1を形成し、基地局20-2は、セル13-2を形成している。なお、以下では、複数の基地局20-1および20-2のそれぞれを区別することなく総称する場合に基地局20と記載する。それぞれの基地局20は、ネットワーク12を介してコアネットワーク11に接続されており、端末装置30の無線接続を制御し、端末装置30とコアネットワーク11との間の通信を中継する。
【0020】
本実施形態において、2つの基地局20-1および基地局20-2は、PDCP Duplicationにより、同一のパケットを端末装置30へ送信する。また、本実施形態では、PDCP Duplicationの処理において、基地局20-1は、MCG(Master Cell Group)として機能し、基地局20-2は、SCG(Secondary Cell Group)として機能する。
【0021】
端末装置30は、2つの基地局20-1および基地局20-2の少なくともいずれかからパケットを受信する。これにより、一方の基地局20との間の無線環境が悪い場合でも、他方の基地局20からパケットを受信することができ、端末装置30においてパケットの受信の信頼性を向上させることができる。また、一方の基地局20において、パケットの遅延が大きい場合でも、他方の基地局20から低遅延でパケットを受信することができ、端末装置30においてパケットの遅延を低減することができる。
【0022】
[MCGの構成]
図2は、MCGとして機能する基地局20-1の一例を示すブロック図である。基地局20-1は、パケット受信部21、PDCP Duplication制御部22、低レイヤ処理部23、および無線送信部24を備える。
【0023】
パケット受信部21は、ネットワーク12を介してコアネットワーク11から、端末装置30宛のパケットを受信する。そして、パケット受信部21は、受信したパケットを、PDCP Duplication制御部22へ出力する。
【0024】
PDCP Duplication制御部22は、基地局20-2との間で、ネットワーク12を介してPDCP Duplicationに関する処理を実行する。
【0025】
低レイヤ処理部23は、PDCP Duplication制御部22から出力されたパケットに対して、RLCレイヤおよびMACレイヤの処理を実行し、処理後のパケットを無線送信部24へ出力する。また、低レイヤ処理部23は、パケットの送信完了を無線送信部24から通知された場合、パケットの送信完了をPDCP Duplication制御部22に通知する。
【0026】
無線送信部24は、低レイヤ処理部23から出力されたパケットに対して、符号化や変調等の物理レイヤの処理を実行し、処理後の信号を、アンテナ25から無線信号として端末装置30へ送信する。無線送信部24は、低レイヤ処理部23から出力されたパケットの送信が完了した場合、送信完了を低レイヤ処理部23に通知する。
【0027】
PDCP Duplication制御部22は、複製部220、送信部221、調整部222、受信部223、および判定部224を有する。複製部220は、パケット受信部21から出力されたパケットを複製する。そして、複製部220は、パケット受信部21から出力されたパケットを低レイヤ処理部23へ出力し、複製されたパケットを送信部221へ出力する。送信部221は、複製部220から出力されたパケットをネットワーク12を介して基地局20-2へ送信する。
【0028】
調整部222は、送信部221および受信部223を介して、基地局20-2との間で、PDCP Duplicationに関する調整を行う。例えば、調整部222は、PDCP Duplicationを開始するか否かを判定や、基地局20-2との間でPDCP Duplicationを実施する際の処理単位(例えば、ベアラ単位、パケット単位、時間単位等)の調整等を行う。また、調整部222は、通信処理状態(例えば負荷状況等)として通知される情報の種類や、通信処理状態に関する情報を通知する条件等を、基地局20-2との間で調整する。なお、以下では、負荷状況を通信処理状態に関する情報の一例として記載するが、通信処理状態に関する情報は、負荷状況に限定するわけでない。
【0029】
本実施形態において、基地局20-2の負荷状況として通知される情報としては、例えば、RLCレイヤにおける平均キュー長、RLCレイヤにおけるHARQ(Hybrid ARQ)の成功率、MACレイヤにおけるHARQの成功率等が挙げられる。また、基地局20-2の負荷状況として通知される情報には、基地局20-2のメモリやプロセッサの使用率等が含まれていてもよい。
【0030】
また、本実施形態において、負荷状況は、例えば所定周期毎に基地局20-2から通知される。なお、他の例として、負荷状況は、負荷状況に所定値以上の変化が発生した場合に基地局20-2から通知されてもよい。これにより、負荷状況の変化が少ない場合には、負荷状況が通知されず、通信トラフィックの増加を抑えることができる。
【0031】
受信部223は、ネットワーク12を介して基地局20-2から負荷状況を受信した場合、受信した負荷状況を判定部224へ出力する。
【0032】
判定部224は、受信部223から出力された基地局20-2の負荷状況を保持する。既に負荷状況のデータを保持している場合には、判定部224は、受信部223から出力された負荷状況のデータで、保持している負荷状況のデータを更新する。また、判定部224は、端末装置30へのパケットの送信が完了したことを低レイヤ処理部23から通知された場合、基地局20-2において、複製されたパケットの送信が完了しているか否かを判定する。複製されたパケットの送信が完了しているか否かの判定は、例えば、基地局20-1の負荷状況と、無線送信部24が保持している基地局20-2の負荷状況とに基づいて行われる。
【0033】
例えば、判定部224は、基地局20-1の負荷状況に基づいて、低レイヤ処理部23および無線送信部24によるパケットの送信に要する処理時間t1を算出する。また、判定部224は、保持している基地局20-2の負荷状況に基づいて、基地局20-2によるパケットの送信に要する処理時間t2を算出する。そして、判定部224は、端末装置30へのパケットの送信が完了したことを低レイヤ処理部23から通知された場合に、処理時間t1と処理時間t2とを比較することにより、基地局20-2において、複製されたパケットの送信が完了しているか否かを判定する。
【0034】
例えば、処理時間t2が処理時間t1よりも長い場合、あるいは、処理時間t2が処理時間t1よりも所定時間以上長い場合に、判定部224は、基地局20-2において、複製されたパケットの送信が完了していないと判定する。
【0035】
基地局20-2において、複製されたパケットの送信が完了していないと判定された場合、判定部224は、パケットの送信が完了したことを示す送信完了通知を作成し、送信部221へ出力する。送信部221は、判定部224から出力された送信完了通知を、ネットワーク12を介して基地局20-2へ送信する。
【0036】
図3は、レイヤ毎の基地局20の機能構成の一例を示す図である。基地局20は、NG Entity200、PDCP Entity201、RLC Entity202、MAC Entity203、PHY Entity204、およびF1/Xn Entity205を有する。
【0037】
パケット受信部21は、例えばNG Entity200によって実現される。PDCP Duplication制御部22の複製部220、調整部222、および判定部224は、例えばPDCP Entity201によって実現される。PDCP Duplication制御部22の送信部221および受信部223は、例えばF1/Xn Entity205によって実現される。低レイヤ処理部23は、例えばRLC Entity202およびMAC Entity203によって実現される。無線送信部24は、例えばPHY Entity204によって実現される。
【0038】
複製部220によって複製されたパケットは、例えばF1/Xn Entity205のF1インターフェイス(
図3の実線矢印)を介して送信される。また、負荷状況や送信完了通知は、例えばF1/Xn Entity205のXnインターフェイス(
図3の点線矢印)を介して送信および受信される。F1インターフェイスおよびXnインターフェイスでは、トランスポートレイヤのプロトコルとして、例えばSCTP(Stream Control Transmission Protocol)が用いられる。
【0039】
[SCGの構成]
図4は、SCGとして機能する基地局20-2の一例を示すブロック図である。基地局20-2は、低レイヤ処理部23、無線送信部24、およびPDCP Duplication処理部26を備える。なお、
図4において、
図2と同じ符号が付されたブロックは、以下に説明する点を除き、
図2において説明されたブロックと同様であるため、重複する説明を省略する。
【0040】
PDCP Duplication処理部26は、基地局20-1との間で、PDCP Duplicationに関する処理を実行する。PDCP Duplication処理部26は、受信部260、調整部261、送信部262、および取消部263を有する。
【0041】
調整部261は、受信部260および送信部262を介して、基地局20-1との間で、PDCP Duplicationに関する調整を行う。例えば、調整部261は、PDCP Duplicationを実施する際の処理単位、負荷状況として通知される情報の種類、負荷状況を通知する条件等を、基地局20-1との間で調整する。そして、調整部261は、調整された条件を送信部262へ出力する。
【0042】
送信部262は、調整部261から出力された負荷状況を通知する条件を保持する。そして、送信部262は、保持している条件が満たされた場合、基地局20-2の負荷状況を取得し、取得された負荷状況を、ネットワーク12を介して基地局20-1へ送信する。RLCレイヤやMACレイヤの情報が負荷状況として取得される場合、送信部262は、低レイヤ処理部23から負荷状況を取得する。
【0043】
なお、基地局20-2も、例えば
図3に例示された機能構成である。PDCP Duplication処理部26の調整部261および取消部263は、例えばPDCP Entity201によって実現され、PDCP Duplication処理部26の受信部260および送信部262は、例えばF1/Xn Entity205によって実現される。また、低レイヤ処理部23は、例えばRLC Entity202およびMAC Entity203によって実現され、無線送信部24は、例えばPHY Entity204によって実現される。
【0044】
送信部262が、負荷状況としてRLCレイヤの情報を取得する場合、F1/Xn Entity205は、例えばPDCP Entity201を介してRLC Entity202からRLCレイヤの情報を取得する。また、送信部262が、負荷状況としてMACレイヤの情報を取得する場合、F1/Xn Entity205は、例えばPDCP Entity201およびRLC Entity202を介してMAC Entity203からMACレイヤの情報を取得する。
【0045】
なお、F1/Xn Entity205は、RLC Entity202との間で、RLCレイヤの情報を取得するためのインターフェイスを構築し、PDCP Entity201を経由せずにRLC Entity202からRLCレイヤの情報を取得してもよい。また、F1/Xn Entity205は、MAC Entity203との間で、MACレイヤの情報を取得するためのインターフェイスを構築し、PDCP Entity201およびRLC Entity202を経由せずにMAC Entity203からMACレイヤの情報を取得してもよい。
【0046】
受信部260は、ネットワーク12を介して基地局20-1から複製されたパケットを受信した場合、受信したパケットを低レイヤ処理部23へ出力する。低レイヤ処理部23および無線送信部24は、受信部260から出力されたパケットに対して低レイヤの処理を行い、処理後のパケットをアンテナ25を介して無線送信する。
【0047】
また、受信部260は、ネットワーク12を介して基地局20-1から送信完了通知を受信した場合、受信した送信完了通知を取消部263へ出力する。取消部263は、受信部260から送信完了通知が出力された場合、低レイヤ処理部23にパケットの送信が完了したか否かを問い合わせる。パケットの送信が完了していない場合、取消部263は、パケットの送信キャンセルを低レイヤ処理部23に指示する。低レイヤ処理部23は、取消部263から送信キャンセルが指示されたパケットを送信キューから削除することにより、送信をキャンセルする。これにより、基地局20-1から送信されたパケットと同一のパケットが重複して端末装置30へ送信されることが抑制され、無線リソースの無駄な消費を抑制することができる。
【0048】
なお、取消部263は、受信部260から送信完了通知が出力された場合、低レイヤ処理部23にパケットの送信が完了したか否かを問い合わせることなく、パケットの送信キャンセルを低レイヤ処理部23に指示してもよい。
【0049】
[端末装置30の構成]
図5は、端末装置30の一例を示すブロック図である。端末装置30は、データ処理部31、無線受信部32、およびアンテナ33を有する。
【0050】
無線受信部32は、アンテナ33を介して、基地局20-1および基地局20-2の少なくともいずれかから無線送信されたパケットを受信し、受信したパケットをデータ処理部31へ出力する。データ処理部31は、無線受信部32から出力されたパケットに含まれるデータに基づいて、所定の処理を実行する。
【0051】
[通信システム10の処理]
図6は、PDCP Duplicationにおける通信システム10の処理の一例を示すシーケンス図である。
【0052】
まず、基地局20-1と基地局20-2との間で、PDCP Duplicationが有効化される(S100)。ステップS100では、基地局20-1と基地局20-2との間で、PDCP Duplicationを実施する際の処理単位、負荷状況として通知される情報の種類、負荷状況を通知する条件等が調整される。
【0053】
次に、基地局20-2は、基地局20-1との間で調整した条件を満たした場合に、基地局20-2の負荷状況を基地局20-1へ送信する(S101)。
【0054】
次に、基地局20-1は、コアネットワーク11から端末装置30宛のパケットを受信する(S102)。基地局20-1は、受信したパケットを複製し(S103)、複製されたパケットを基地局20-2へ送信する(S104)。複製されたパケットを受信した基地局20-2は、複製されたパケットに対してRLCレイヤ以降の処理を開始する。
【0055】
次に、基地局20-1は、コアネットワーク11から受信したパケットに対して、RLCレイヤ以降の処理を実行する(S105)。そして、基地局20-1は、RLCレイヤ以降の処理が実行されたパケットを端末装置30へ無線送信する(S106)。
【0056】
次に、基地局20-1は、基地局20-1の負荷状況と、ステップS101において基地局20-2から受信した負荷状況とに基づいて、基地局20-2よりも先にパケットの送信が完了したか否かを判定する(S107)。
【0057】
基地局20-2よりも先にパケットの送信が完了したと判定された場合(S107:Yes)、基地局20-1は、基地局20-1に送信完了通知を送信する(S108)。一方、基地局20-2の方が先にパケットの送信が完了したと判定された場合(S107:No)、基地局20-1は、基地局20-1への送信完了通知の送信を行わない。これにより、送信完了通知の無駄な送信を抑制することができる。
【0058】
送信完了通知を受信した基地局20-2は、ステップS104において受信されたパケットの送信が完了しているか否かを判定する(S109)。パケットの送信が完了していない場合(S109:No)、基地局20-2は、ステップS104において受信されたパケットの送信をキャンセルする(S110)。一方、パケットの送信が既に完了している場合(S109:Yes)、基地局20-2は、パケットの送信キャンセルを行わない。
【0059】
[MGCの動作]
図7は、MCGとして機能する基地局20-1の動作の一例を示すフローチャートである。例えば、基地局20-1の調整部222が、PDCP Duplicationを開始すると判定した場合に、基地局20-1は、本フローチャートに示される動作を開始する。
【0060】
まず、調整部222は、基地局20-2との間で、PDCP Duplicationを有効化する(S200)。そして、調整部222は、基地局20-2との間で、PDCP Duplicationを実施する際の処理単位、負荷状況として通知される情報の種類、負荷状況を通知する条件等を調整する。
【0061】
次に、受信部223は、ネットワーク12を介して基地局20-2から負荷状況を受信したか否かを判定する(S201)。負荷状況を受信した場合(S201:Yes)、受信部223は、受信された負荷状況を判定部224へ出力する。判定部224は、受信部223から出力された負荷状況を保持する(S202)。そして、再びステップS201に示された処理が実行される。
【0062】
受信部223が負荷状況を受信していない場合(S201:No)、パケット受信部21は、ネットワーク12を介してコアネットワーク11から端末装置30宛のパケットを受信したか否かを判定する(S203)。コアネットワーク11から端末装置30宛のパケットを受信していない場合(S203:No)、再びステップS201に示された処理が実行される。
【0063】
一方、コアネットワーク11から端末装置30宛のパケットを受信した場合(S203:Yes)、パケット受信部21は、受信したパケットをPDCP Duplication制御部22へ出力する。PDCP Duplication制御部22の複製部220は、パケット受信部21から出力されたパケットを複製する(S204)。そして、複製部220は、パケット受信部21から出力されたパケットを低レイヤ処理部23へ出力し、複製されたパケットを送信部221へ出力する。送信部221は、複製部220から出力されたパケットを、ネットワーク12を介して基地局20-2へ送信する。
【0064】
次に、低レイヤ処理部23は、PDCP Duplication制御部22から出力されたパケットに対して、RLCレイヤ以降の処理を開始する(S205)。そして、判定部224は、低レイヤ処理部23から送信完了が通知されたか否かを判定することにより、パケットの送信が完了したか否かを判定する(S206)。パケットの送信が完了していない場合(S206:No)、再びステップS206の処理が実行される。
【0065】
一方、パケットの送信が完了した場合(S206:Yes)、判定部224は、基地局20-1の負荷状況と、保持している基地局20-2の負荷状況とに基づいて、基地局20-2よりも先にパケットの送信が完了したか否かを判定する(S207)。基地局20-2の方が先にパケットの送信が完了したと判定された場合(S207:No)、再びステップS201に示された処理が実行される。
【0066】
一方、基地局20-2よりも先にパケットの送信が完了したと判定された場合(S207:Yes)、判定部224は、送信完了通知を作成し、作成された送信完了通知を送信部221へ出力する。送信部221は、判定部224から出力された送信完了通知を、ネットワーク12を介して基地局20-2へ送信する(S208)。そして、再びステップS201に示された処理が実行される。
【0067】
[SGCの動作]
図8は、SCGとして機能する基地局20-2の動作の一例を示すフローチャートである。例えば、基地局20-2の調整部261が、基地局20-1からPDCP Duplicationの開始を指示された場合に、基地局20-2は、本フローチャートに示される動作を開始する。
【0068】
まず、調整部261は、基地局20-1との間で、PDCP Duplicationを有効化する(S300)。そして、調整部261は、基地局20-1との間で、PDCP Duplicationを実施する際の処理単位、負荷状況として通知される情報の種類、負荷状況を通知する条件等を調整する。そして、調整部261は、負荷状況を通知する条件を送信部262に通知する。
【0069】
次に、送信部262は、調整部261から通知された条件が満たされたか否かを判定することにより、負荷状況の送信タイミングであるか否かを判定する(S301)。負荷状況の送信タイミングである場合(S301:Yes)、送信部262は、基地局20-2の負荷状況を取得し、取得した負荷状況を、ネットワーク12を介して基地局20-1へ送信する(S302)。そして、再びステップS301に示された処理が実行される。
【0070】
負荷状況の送信タイミングではない場合(S301:No)、受信部260は、基地局20-1からパケットの複製を受信したか否かを判定する(S303)。パケットの複製を受信した場合(S303:Yes)、受信部260は、受信したパケットを低レイヤ処理部23へ出力する。低レイヤ処理部23は、PDCP Duplication処理部26から出力されたパケットに対して、RLCレイヤ以降の処理を開始する(S304)。そして、再びステップS301に示された処理が実行される。
【0071】
受信部260がパケットの複製を受信していない場合(S303:No)、受信部260は、基地局20-1から送信完了通知を受信したか否かを判定する(S305)。送信完了通知を受信していない場合(S305:No)、再びステップS301に示された処理が実行される。
【0072】
基地局20-1から送信完了通知を受信した場合(S305:Yes)、受信部260は、送信完了通知を取消部263へ出力する。取消部263は、低レイヤ処理部23にパケットの送信が完了したか否かを問い合わせることにより、パケットが未送信か否かを判定する(S306)。パケットが既に送信済みである場合(S306:No)、再びステップS301に示された処理が実行される。
【0073】
一方、パケットが未送信である場合(S306:Yes)、取消部263は、パケットの送信キャンセルを低レイヤ処理部23に指示する。低レイヤ処理部23は、取消部263から送信キャンセルが指示されたパケットを送信キューから削除することにより、送信をキャンセルする(S307)。そして、再びステップS301に示された処理が実行される。
【0074】
[ハードウェア]
上記した基地局20-1および基地局20-2は、例えば
図9に示されるようなハードウェアにより実現される。
図9は、基地局20のハードウェアの一例を示す図である。基地局20は、CU(Central Unit)40およびDU(Distributed Unit)41を備える。
【0075】
基地局20が、例えばMCGとして機能する場合、CU40は、例えばパケット受信部21およびPDCP Duplication制御部22の機能を実現し、DU41は、例えば低レイヤ処理部23および無線送信部24の機能を実現する。また、基地局20が、例えばSCGとして機能する場合、CU40は、例えばPDCP Duplication処理部26の機能を実現し、DU41は、例えば低レイヤ処理部23および無線送信部24の機能を実現する。なお、1つの基地局20に、MCGおよびSCGの両方の機能が設けられていてもよい。
【0076】
CU40は、メモリ400、プロセッサ401、および有線通信インターフェイス402を有する。有線通信インターフェイス402は、ネットワーク12を介して、DU41、コアネットワーク11、および他の基地局20との間で有線通信を行うためのインターフェイスである。メモリ400は、パケット受信部21、PDCP Duplication制御部22、およびPDCP Duplication処理部26等の機能を実現するための各種プログラムやデータ等を格納する。プロセッサ401は、メモリ400からプログラムを読出し、読み出されたプログラムを実行することにより、例えばパケット受信部21、PDCP Duplication制御部22、およびPDCP Duplication処理部26等の機能を実現する。
【0077】
なお、メモリ400内のプログラムやデータ等は、必ずしも全てが最初からメモリ400内に記憶されていなくてもよい。例えば、プログラムやデータ等が記憶されたメモリカードなどの可搬型記録媒体がCU40に挿入され、プロセッサ401がこのような可搬型記録媒体からプログラムやデータ等を適宜取得して実行するようにしてもよい。また、プログラムやデータ等を記憶させた他のコンピュータまたはサーバ装置などから、無線通信回線、公衆回線、インターネット、LAN、WANなどを介して、プロセッサ401がプログラム等を適宜取得して実行するようにしてもよい。
【0078】
DU41は、有線通信インターフェイス410、メモリ411、プロセッサ412、および無線回路413を有する。有線通信インターフェイス410は、ネットワーク12を介して、CU40、コアネットワーク11、および他の基地局20との間で有線通信を行うためのインターフェイスである。なお、CU40の有線通信インターフェイス402とDU41の有線通信インターフェイス410とは、ネットワーク12を介さずに、基地局20内で互いに通信を行ってもよい。
【0079】
メモリ411は、低レイヤ処理部23および無線送信部24等の機能を実現するための各種プログラムやデータ等を格納する。プロセッサ412は、メモリ411からプログラムを読出し、読み出されたプログラムを実行することにより、例えば低レイヤ処理部23および無線送信部24等の機能を実現する。無線回路413は、プロセッサ412による制御に応じて、アンテナ25を介して端末装置30との間で無線信号の送受信を行う。
【0080】
なお、メモリ411内のプログラムやデータ等は、必ずしも全てが最初からメモリ411内に記憶されていなくてもよい。例えば、プログラムやデータ等が記憶されたメモリカードなどの可搬型記録媒体がDU41に挿入され、プロセッサ412がこのような可搬型記録媒体からプログラムやデータ等を適宜取得して実行するようにしてもよい。また、プログラムやデータ等を記憶させた他のコンピュータまたはサーバ装置などから、無線通信回線、公衆回線、インターネット、LAN、WANなどを介して、プロセッサ412がプログラム等を適宜取得して実行するようにしてもよい。
【0081】
また、
図9に例示されたCU40およびDU41には、メモリおよびプロセッサが1つずつ設けられているが、メモリおよびプロセッサは、それぞれ2つ以上設けられていてもよい。また、CU40およびDU41は、複数のメモリおよびプロセッサを有する計算機リソースの一部によって実現されてもよい。
【0082】
また、
図9の例では、基地局20はCU40およびDU41を有するが、他の例として、基地局20は、例えば
図10に示されるような構成であってもよい。
図10は、基地局20のハードウェアの他の例を示す図である。
図10に例示された基地局20は、有線通信インターフェイス42、メモリ43、プロセッサ44、および無線回路45を備える。
【0083】
有線通信インターフェイス42は、ネットワーク12を介して、コアネットワーク11および他の基地局20との間で有線通信を行うためのインターフェイスである。メモリ43は、パケット受信部21、PDCP Duplication制御部22、低レイヤ処理部23、無線送信部24、およびPDCP Duplication処理部26等の機能を実現するための各種プログラムやデータ等を格納する。プロセッサ44は、メモリ43からプログラムを読出し、読み出されたプログラムを実行することにより、例えばパケット受信部21、PDCP Duplication制御部22、低レイヤ処理部23、無線送信部24、およびPDCP Duplication処理部26等の機能を実現する。無線回路45は、プロセッサ44による制御に応じて、アンテナ25を介して端末装置30との間で無線信号の送受信を行う。
【0084】
また、上記した端末装置30は、例えば
図11に示されるようなハードウェアにより実現される。
図11は、端末装置30のハードウェアの一例を示す図である。端末装置30は、メモリ50、プロセッサ51、および無線回路52を有する。
【0085】
メモリ50は、データ処理部31等の機能を実現するための各種プログラムやデータ等を格納する。プロセッサ51は、メモリ50からプログラムを読出し、読み出されたプログラムを実行することにより、例えばデータ処理部31等の機能を実現する。無線回路52は、プロセッサ51による制御に応じて、アンテナ33を介して基地局20との間で無線信号の送受信を行う。
【0086】
以上、一実施形態について説明した。上記したように、本実施形態の基地局20-1は、送信部221と、受信部223と、無線送信部24とを備える。受信部223は、他の基地局20-2の通信処理状態に関する情報を他の基地局20-2から受信する。送信部221は、端末装置30へ送信されるデータの複製を他の基地局20-2へ送信する。無線送信部24は、データを無線通信により端末装置30へ送信する。また、送信部221は、無線送信部24によるデータの送信が完了した後に、他の基地局20-2の通信処理状態に関する情報に応じて、データの送信が完了したことを示す送信完了通知を他の基地局20-2へ送信する。これにより、基地局20間のトラフィックの増加を抑えることができる。また、送信完了通知の送信が抑制されることにより、それぞれの基地局20において、パケットの送信が完了したか否かの確認処理に実行頻度を削減することができる。これにより、それぞれの基地局20の処理負荷を低減することができる。
【0087】
また、上記した実施形態において、送信部221は、無線送信部24によるデータの送信が完了した後に、通信処理状態に関する情報に基づいて、他の基地局20-2による端末装置30へのデータの複製の送信が完了していないと判定された場合に、データの送信が完了したことを示す送信完了通知を他の基地局20-2へ送信する。これにより、送信完了通知の無駄な送信を抑えることができる。
【0088】
また、上記した実施形態において、通信処理状態に関する情報には、他の基地局20-2のRLCレイヤおよびMACレイヤの少なくともいずれかを処理する処理部の負荷状況を示す情報が含まれる。これにより、他の基地局20-2の通信処理状態に関する情報に基づいて、他の基地局20-2による端末装置30へのデータの複製の送信が完了しているか否かを判定することができる。
【0089】
また、上記した実施形態において、受信部223は、他の基地局20-2の通信処理状態に関する情報を他の基地局20-2から周期的に受信してもよい。これにより、他の基地局20-2の通信処理状態に基づいて、他の基地局20-2による端末装置30へのデータの複製の送信が完了しているか否かを精度よく判定することができる。
【0090】
また、上記した実施形態において、受信部223は、他の基地局20-2の通信処理状態に所定以上の変化があった場合に、他の基地局20-2の通信処理状態に関する情報を受信する。これにより、基地局20間のトラフィックの増加を抑えることができる。
【0091】
また、上記した実施形態における基地局20-2は、受信部260、送信部262と、無線送信部24とを備える。送信部262は、自装置の通信処理状態に関する情報を他の基地局20-1へ送信する。受信部260は、端末装置30へ送信されるデータの複製を他の基地局20-1から受信する。無線送信部24は、データの複製を無線通信により端末装置30へ送信する。また、受信部260は、データの送信が完了したことを示す送信完了通知を他の基地局20-1から受信する。また、無線送信部24は、端末装置30へのデータの複製の送信が完了する前に、受信部260が他の基地局20-1から送信完了通知を受信した場合、端末装置30へのデータの複製の送信をキャンセルする。これにより、無線リソースの無駄な消費を抑制することができる。
【0092】
また、上記した実施形態において、送信部262は、自装置の通信処理状態に関する情報を他の20-1へ周期的に送信する。これにより、他の20-1は、基地局20-2の通信処理状態に関する情報に基づいて、基地局20-2による端末装置30へのデータの複製の送信が完了しているか否かを精度よく判定することができる。
【0093】
また、上記した実施形態において、送信部262は、自装置の通信処理状態に所定以上の変化があった場合に、自装置の通信処理状態に関する情報を他の基地局20-1へ送信する。これにより、基地局20間のトラフィックの増加を抑えることができる。
【0094】
[その他]
なお、開示の技術は、上記した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0095】
例えば、上記した実施形態では、基地局20-1が、パケットの送信が完了した場合に、基地局20-2から受信した通信処理状態に関する情報に基づいて、基地局20-2においてパケットが未送信であるか否かを判定する。そして、基地局20-2においてパケットが未送信であると判定された場合、基地局20-1は、基地局20-2に送信完了通知を送信する。しかし、開示の技術はこれに限られない。
【0096】
例えば、基地局20-1も、基地局20-1の通信処理状態に関する情報を所定のタイミング毎に基地局20-2に通知してもよい。そして、基地局20-2は、パケットの送信が完了した場合に、基地局20-1から受信した通信処理状態に関する情報に基づいて、基地局20-1においてパケットが未送信であるか否かを判定し、未送信であると判定された場合、基地局20-1に送信完了通知を送信してもよい。
【0097】
基地局20-1の受信部223は、基地局20-2から送信された送信完了通知を受信した場合、受信した送信完了通知を、判定部224へ出力する。判定部224は、受信部223から送信完了通知が出力された場合、低レイヤ処理部23にパケットの送信が完了したか否かを問い合わせる。パケットの送信が完了していない場合、判定部224は、パケットの送信キャンセルを低レイヤ処理部23に指示する。低レイヤ処理部23は、判定部224から送信キャンセルが指示されたパケットを送信キューから削除することにより、送信をキャンセルする。これにより、基地局20-2から送信されたパケットと同一のパケットが重複して端末装置30へ送信されることが抑制され、無線リソースの無駄な消費を抑制することができる。
【0098】
また、上記した実施形態において、基地局20-1、基地局20-2、および端末装置30が有するそれぞれの処理ブロックは、実施形態におけるそれぞれの装置の理解を容易にするために、主な処理内容に応じて機能別に区分したものである。そのため、処理ブロックの区分方法やその名称によって、開示の技術が制限されることはない。また、基地局20-1、基地局20-2、および端末装置30がそれぞれ有する各処理ブロックは、処理内容に応じてさらに多くの処理ブロックに細分化することもできるし、複数の処理ブロックを1つの処理ブロックに統合することもできる。また、それぞれの処理ブロックによって実行される処理の一部または全部は、ソフトウェアによる処理として実現されてもよく、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用のハードウェアにより実現されてもよい。
【符号の説明】
【0099】
10 通信システム
11 コアネットワーク
12 ネットワーク
13 セル
20 基地局
200 NG Entity
201 PDCP Entity
202 RLC Entity
203 MAC Entity
204 PHY Entity
205 F1/Xn Entity
21 パケット受信部
22 PDCP Duplication制御部
220 複製部
221 送信部
222 調整部
223 受信部
224 判定部
23 低レイヤ処理部
24 無線送信部
25 アンテナ
26 PDCP Duplication処理部
260 受信部
261 調整部
262 送信部
263 取消部
30 端末装置
31 データ処理部
32 無線受信部
33 アンテナ
40 CU
400 メモリ
401 プロセッサ
402 有線通信インターフェイス
41 DU
410 有線通信インターフェイス
411 メモリ
412 プロセッサ
413 無線回路
42 有線通信インターフェイス
43 メモリ
44 プロセッサ
45 無線回路
50 メモリ
51 プロセッサ
52 無線回路