(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】絶縁電線の製造方法および絶縁電線
(51)【国際特許分類】
H01B 13/32 20060101AFI20230620BHJP
H01B 7/285 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
H01B13/32
H01B7/285
(21)【出願番号】P 2022099678
(22)【出願日】2022-06-21
(62)【分割の表示】P 2020191990の分割
【原出願日】2017-07-26
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】弁理士法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 豊貴
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102011083952(DE,A1)
【文献】特開2013-97922(JP,A)
【文献】特開2000-11771(JP,A)
【文献】特表2014-519137(JP,A)
【文献】特開2009-135073(JP,A)
【文献】特開2009-289606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/32
H01B 7/285
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料よりなる素線が複数撚り合わせられた導体と、前記導体の外周を被覆する絶縁被覆と、を有する絶縁電線において、
前記絶縁電線は、長手軸方向の中途部にて前記絶縁被覆が前記導体の外周から除去された露出部と、前記絶縁被覆が前記導体の外周を被覆した状態にある被覆部と、を長手軸方向に沿って隣接して有し、
前記露出部における前記素線の間の空間に、絶縁性材料よりなる封止剤が充填されて、止水部が形成されており、
前記絶縁電線の末端部から前記止水部と同じ長さを切り出した部分の前記導体の質量を100として、前記止水部における前記導体の質量が129以上であることを特徴とする絶縁電線。
【請求項2】
前記素線の撚りピッチが、前記露出部において、前記絶縁電線の末端部から前記止水部と同じ長さを切り出した部分よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の絶縁電線。
【請求項3】
前記素線の撚りピッチが、前記露出部において、前記被覆部のうち前記露出部に隣接する領域よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の絶縁電線。
【請求項4】
前記露出部における単位長さあたりの前記導電性材料の密度が、前記絶縁電線の末端部から前記止水部と同じ長さを切り出した部分における単位長さあたりの前記導電性材料の密度の1.5倍以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の絶縁電線。
【請求項5】
導電性材料よりなる素線が複数撚り合わせられた導体と、前記導体の外周を被覆する絶縁被覆とを有する絶縁電線において、長手軸方向の中途部にて前記絶縁被覆が前記導体の外周から除去された露出部と、前記絶縁被覆が前記導体の外周を被覆した状態にある被覆部と、を前記絶縁電線の長手軸方向に沿って隣接させて設ける部分露出工程と、
前記露出部における単位長さあたりの前記導電性材料の密度を高めながら、前記露出部における前記素線の間隔を広げる密度変調工程と、
前記露出部における前記素線の間の空間に、絶縁性材料よりなる封止剤を充填する充填工程と、を実行することで、
請求項1から4のいずれか1項に記載の絶縁電線を製造することを特徴とする絶縁電線の製造方法。
【請求項6】
前記密度変調工程において、前記露出部における前記素線の撚りを緊密にする緊密化工程の後、前記露出部における前記素線の撚りを緩める弛緩工程を実行することで、前記露出部における単位長さ当たりの前記導電性材料の密度を高めながら、前記露出部における前記素線の間隔を広げることを特徴とする請求項5に記載の絶縁電線の製造方法。
【請求項7】
前記充填工程の後に、前記露出部における前記素線の間隔を狭める再緊密化工程をさらに実行することを特徴とする請求項5または6に記載の絶縁電線の製造方法。
【請求項8】
前記封止剤は、硬化性樹脂組成物よりなり、
前記充填工程において前記封止剤を充填した後、充填した前記封止剤が硬化する前あるいは硬化する途中で、前記再緊密化工程を実行することを特徴とする請求項7に記載の絶縁電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁電線の製造方法および絶縁電線に関し、さらに詳しくは、絶縁被覆が除去されて封止剤によって止水処理を施された部位を有する絶縁電線の製造方法、およびそのような絶縁電線に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁電線において、長手軸方向の一部の部位に止水処理が施される場合がある。この際、従来一般には、
図8に示すように、絶縁電線91の止水部94を形成する位置において、絶縁被覆93を除去して導体92を露出させた状態で、導体92を構成する素線の間に封止剤(止水剤)95を浸透させる。素線間に封止剤95を浸透させる方法は、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
さらに、封止剤95を素線間に導入した止水部94の外周に、収縮チューブ等の保護材99を配置することも多い。この場合、保護材99は、止水部94を物理的に保護することに加え、導体92を露出させた部分に隣接して存在する絶縁被覆93と導体92との間を止水する役割も果たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように絶縁電線に止水処理を行うに際し、導体を構成する素線の間に十分に封止剤を浸透させる必要がある。そのためには、封止剤として、低粘度のものを用いる必要があり、使用可能な封止剤の種類が限定されてしまう。
【0006】
また、素線間への封止剤の浸透には、場所ごと、個体ごとのばらつきが生じやすく、止水性能の信頼性が低くなってしまう。特許文献1においては、芯線間の小さい隙間にも止水材を確実に浸透させることを目的として、被覆電線の一部を加圧室に収容し、加圧室内に送り込んだ気体を被覆電線の絶縁被覆内を通して加圧室外に排出しながら、ホットメルト材よりなる止水材を芯線の間に強制的に浸透させている。このような特殊性の高い方法を用いる場合には、素線間に封止剤を確実に浸透させられるとしても、止水処理の工程が煩雑化してしまう。
【0007】
本発明の課題は、封止剤を用いて絶縁電線に対して止水処理を施すに際し、素線間への封止剤の浸透を、高い均一性をもって効率的に行うことができる絶縁電線の製造方法を提供すること、また、止水処理を施した素線間の部位において、高い止水性能を備えた絶縁電線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明にかかる絶縁電線の製造方法は、導電性材料よりなる素線が複数撚り合わせられた導体と、前記導体の外周を被覆する絶縁被覆とを有する絶縁電線において、前記絶縁被覆が前記導体の外周から除去された露出部と、前記絶縁被覆が前記導体の外周を被覆した状態にある被覆部と、を前記絶縁電線の長手軸方向に沿って隣接させて設ける部分露出工程と、前記露出部における単位長さあたりの前記導電性材料の密度を高めながら、前記露出部における前記素線の間隔を広げる密度変調工程と、前記露出部における前記素線の間の空間に、絶縁性材料よりなる封止剤を充填する充填工程と、を実行するものである。
【0009】
ここで、前記密度変調工程において、前記露出部における前記素線の撚りを緊密にする緊密化工程の後、前記露出部における前記素線の撚りを緩める弛緩工程を実行することで、前記露出部における単位長さ当たりの前記導電性材料の密度を高めながら、前記露出部における前記素線の間隔を広げるとよい。
【0010】
また、前記被覆部は、前記露出部に隣接した隣接域と、前記隣接域に隣接し、前記露出部から離間した遠隔域と、を有し、前記密度変調工程を経て、単位長さあたりの前記導電性材料の密度が、前記露出部において最も高く、前記遠隔域において次に高く、前記隣接域において最も低くなるとよい。この場合に、前記露出部を前記絶縁電線の長手軸方向の中途部に設け、前記露出部の両側の前記被覆部に、前記隣接域および前記遠隔域を設けるとよい。
【0011】
前記充填工程の後に、前記露出部における前記素線の間隔を狭める再緊密化工程をさらに実行するとよい。この場合に、前記再緊密化工程を経て、前記素線の撚りピッチが、前記露出部において、前記隣接域よりも小さくなるとよい。また、前記封止剤は、硬化性樹脂組成物よりなり、前記充填工程において前記封止剤を充填した後、充填した前記封止剤が硬化する前あるいは硬化する途中で、前記再緊密化工程を実行するとよい。
【0012】
前記充填工程は、前記露出部において、前記素線の間の空間と連続させて、前記導体の外周を、前記封止剤によって被覆するものであるとよい。この場合に、前記充填工程の後に、前記被覆部に配置された前記絶縁被覆を前記露出部に向かって移動させ、前記絶縁被覆の端部を前記露出部に充填された前記封止剤に接触させる被覆移動工程を実行することで、前記露出部の外周を被覆する前記封止剤と連続させて、前記被覆部の前記端部における前記絶縁被覆の外周に、前記封止剤を配置するとよい。
【0013】
前記充填工程において、前記封止剤を、粘度4000mPa・s以上の状態で充填するとよい。
【0014】
本発明にかかる絶縁電線は、導電性材料よりなる素線が複数撚り合わせられた導体と、前記導体の外周を被覆する絶縁被覆と、を有する絶縁電線において、前記絶縁電線は、前記絶縁被覆が前記導体の外周から除去された露出部と、前記絶縁被覆が前記導体の外周を被覆した状態にある被覆部と、を長手軸方向に沿って隣接して有し、前記被覆部は、前記露出部に隣接した隣接域と、前記隣接域に隣接し、前記露出部から離間した遠隔域とを有し、単位長さあたりの前記導電性材料の密度が、前記露出部において、前記遠隔域よりも高くなっており、前記露出部における前記素線の間の空間に、絶縁性材料よりなる封止剤が充填されているとよい。
【0015】
ここで、単位長さあたりの前記導電性材料の密度は、前記露出部において最も高く、前記遠隔域において次に高く、前記隣接域において最も低いとよい。
【0016】
また、前記素線の撚りピッチが、前記露出部において、前記隣接域よりも小さいとよい。
【0017】
前記露出部において、前記封止剤は、前記素線の間の空間と連続して、前記導体の外周を被覆しているとよい。この場合に、前記封止剤は、前記露出部において前記導体の外周を被覆する領域と連続して、前記被覆部の前記露出部に隣接する端部において、前記絶縁被覆の外周を被覆しているとよい。
【0018】
前記露出部における単位長さあたりの前記導電性材料の密度が、前記遠隔域における単位長さあたりの前記導電性材料の密度の1.01倍以上であるとよい。
【0019】
前記露出部における単位長さあたりの前記導電性材料の密度が、前記遠隔域における単位長さあたりの前記導電性材料の密度の1.5倍以下であるとよい。
【0020】
前記絶縁電線は、前記露出部を、前記絶縁電線の長手軸方向の中途部に有し、前記露出部の両側の前記被覆部に、前記隣接域および前記遠隔域を有するとよい。
【0021】
前記封止剤は、硬化性樹脂組成物よりなるとよい。
【発明の効果】
【0022】
上記発明にかかる絶縁電線の製造方法においては、密度変調工程において、露出部における素線の間隔を広げた状態で、充填工程において、露出部における素線の間の空間に、封止材を充填している。これにより、素線の間の空間への封止剤の浸透を、高い均一性をもって、かつ効率的に行うことができる。特に、封止剤の粘度が比較的高い場合でも、封止剤を素線間の空間に浸透させやすい。さらに、密度変調工程において、露出部における単位長さあたりの導電性材料の密度を高めることにより、露出部において、素線の間隔を大きく広げやすくなっている。これにより、素線間への封止剤の浸透の均一性を一層高めることができる。
【0023】
ここで、密度変調工程において、露出部における素線の撚りを緊密にする緊密化工程の後、露出部における素線の撚りを緩める弛緩工程を実行することで、露出部における単位長さ当たりの導電性材料の密度を高めながら、露出部における素線の間隔を広げる場合には、緊密化工程において、露出部に隣接する被覆部から露出部へと導体を繰り出すことができ、その状態で弛緩工程を実行すると、導体が繰り出された状態のままで素線の撚りが緩むことになる。その結果、露出部における単位長さあたりの導電性材料の密度を高めながら素線の間隔を広げる操作を、効果的に、また簡便に行うことができる。
【0024】
また、被覆部が、露出部に隣接した隣接域と、隣接域に隣接し、露出部から離間した遠隔域と、を有し、密度変調工程を経て、単位長さあたりの導電性材料の密度が、露出部において最も高く、遠隔域において次に高く、隣接域において最も低くなる場合には、隣接域において導電性材料の単位長さあたりの密度を低くし、その分の導電性材料を、露出部に充当することで、露出部における導電性材料の単位長さあたりの密度を高めやすい。その結果、露出部において素線の間に大きな空間を形成し、封止剤を充填しやすくできる。
【0025】
この場合に、露出部を絶縁電線の長手軸方向の中途部に設け、露出部の両側の被覆部に、隣接域および遠隔域を設ける形態によれば、露出部の両側の隣接域から、露出部に導電性材料を充当することができるので、特に効果的に露出部における導電性材料の単位長さあたりの密度を高めて、素線間に大きな空間を形成しやすい。
【0026】
充填工程の後に、露出部における素線の間隔を狭める再緊密化工程をさらに実行する場合には、充填した封止剤を素線間の空間に保持しやすくなるので、得られる絶縁電線において、優れた止水性能を達成しやすい。
【0027】
この場合に、再緊密化工程を経て、素線の撚りピッチが、露出部において、隣接域よりも小さくなる形態によれば、充填した樹脂を、垂下や流出を避けて、素線間の空間に均一に保持しやすい。そのため、得られる絶縁電線において、特に優れた止水性能を達成しやすくなる。
【0028】
この場合に、封止剤が、硬化性樹脂組成物よりなり、充填工程において封止剤を充填した後、充填した封止剤が硬化する前あるいは硬化する途中で、再緊密化工程を実行する場合には、再緊密化工程において、封止剤の存在に妨げられることなく、素線の間隔を狭めやすい。そのようにして素線の間隔を狭めた状態で封止剤を硬化させるので、狭めた素線間の空間に封止剤を高度に保持したまま硬化させることになり、優れた止水性能を達成しやすくなる。
【0029】
充填工程が、露出部において、素線の間の空間と連続させて、導体の外周を、封止剤によって被覆するものである場合には、導体の外周に配置された封止剤に、導体を保護する保護部材の役割を担わせることができる。このように、素線間の止水と導体の保護を、共通の封止剤を用いて、また共通の工程で、簡便に達成することができる。また、止水部の外周に、収縮チューブ等、別部材としての保護材を設ける必要がなくなるので、そのような保護材の設置に要するコストを削減することができるとともに、保護材の使用による絶縁電線の大径化を避けることができる。
【0030】
この場合に、充填工程の後に、被覆部に配置された絶縁被覆を露出部に向かって移動させ、絶縁被覆の端部を露出部に充填された封止剤に接触させる被覆移動工程を実行することで、露出部の外周を被覆する封止剤と連続させて、被覆部の端部における絶縁被覆の外周に、封止剤を配置する形態によれば、被覆部の絶縁被覆と封止剤の間に生じる可能性のある空隙を解消することができる。同時に、封止剤によって、被覆部の絶縁被覆と導体の間の止水を行うことができる。これにより、素線間の止水と止水部の物理的保護、さらには導体と絶縁被覆の間の止水を、全て共通の封止剤を用いて、また共通の工程で、簡便に達成できるようになる。すると、止水部の物理的保護という意味に加え、導体と絶縁被覆の間の止水を担う部材という意味でも、収縮チューブ等、別部材としての保護材を止水部の外周に設ける必要がなくなる。
【0031】
充填工程において、封止剤を、粘度4000mPa・s以上の状態で充填する場合には、素線間に封止剤を均一に保持しやすく、高い止水性能を得ることができる。また、封止剤を導体の外周や隣接する被覆部の絶縁被覆の外周にも留まらせやすいので、それらの部位にも封止剤の層を形成しやすくなる。封止剤が高粘度であっても、密度変調工程において、露出部における導電性材料の密度を高めながら素線の間隔を広げた状態で、封止剤を充填することにより、封止剤を素線の間の空間に浸透させやすい。
【0032】
上記発明にかかる絶縁電線においては、露出部における単位長さあたりの導電性材料の密度が、隣接する被覆部の遠隔域よりも高くなっている。そのため、露出部において、素線間に大きな空隙を設け、その状態で素線間に封止剤を充填したものとすることができる。その結果、露出部の素線の間の空間に封止剤が高い均一性をもって浸透され、素線間において、高い止水性能が発揮される。
【0033】
ここで、単位長さあたりの導電性材料の密度が、露出部において最も高く、遠隔域において次に高く、隣接域において最も低い場合には、隣接域において導電性材料の単位長さあたりの密度が低くなっており、その分の導電性材料が露出部に充当されることで、露出部における導電性材料の単位長さあたりの密度が効果的に高められる。その結果、露出部において素線の間に大きな隙間が形成されやすく、その隙間に封止剤が高い均一性で充填されることで、高い止水性能が得られやすい。
【0034】
また、素線の撚りピッチが、露出部において、隣接域よりも小さい場合には、露出部において、素線の間の空間に封止剤が保持されやすく、高い止水性能が得られやすい。
【0035】
露出部において、封止剤が、素線の間の空間と連続して、導体の外周を被覆している場合には、導体の外周に配置された封止剤が、止水部を物理的に保護する保護部材の役割を果たしうる。そのため、止水部の外周に、収縮チューブ等、別部材としての保護材を設ける必要がなくなる。
【0036】
この場合に、封止剤が、露出部において導体の外周を被覆する領域と連続して、被覆部の露出部に隣接する端部において、絶縁被覆の外周を被覆している構成によれば、封止剤によって、被覆部の絶縁被覆と導体との間の止水も行うことができる。すると、止水部の保護という意味に加え、導体と絶縁被覆の間の止水を担う部材という意味でも、収縮チューブ等、別部材としての保護材を止水部の外周に設ける必要がなくなる。
【0037】
露出部における単位長さあたりの導電性材料の密度が、遠隔域における単位長さあたりの導電性材料の密度の1.01倍以上である場合には、素線の間の空間を十分に広くした状態で封止剤を素線間の空間に充填することができるので、高い止水性能を達成しやすい。
【0038】
露出部における単位長さあたりの導電性材料の密度が、遠隔域における単位長さあたりの導電性材料の密度の1.5倍以下である場合には、露出部における単位長さあたりの導電性材料の密度を過度に高めることなく、止水性能を向上させることができる。
【0039】
絶縁電線が、露出部を、絶縁電線の長手軸方向の中途部に有し、露出部の両側の被覆部に、隣接域および遠隔域を有する場合には、露出部の両側の隣接域から、露出部に導電性材料が充当されることで、露出部における導電性材料の単位長さあたりの密度が高められ、素線間に大きな隙間が形成されやすい。そのため、封止剤の均一な充填により、高い止水性能を有する絶縁電線が得られやすい。
【0040】
封止剤が、硬化性樹脂組成物よりなる場合には、封止剤を、未硬化の状態で、露出部の素線間の領域、さらには導体の外周部や隣接する被覆部の絶縁被覆の外周部に配置し、その状態で硬化させることで、それらの領域において、高い止水性能および保護性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる絶縁電線を模式的に示す断面図である。
【
図3】上記絶縁電線を構成する導体の状態を示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態にかかる絶縁電線の製造方法における各工程を示すフロー図である。
【
図5】上記製造方法を説明する絶縁電線の断面図であり、(a)は止水部を形成する前の状態、(b)は部分露出工程を示している。
【
図6】上記製造方法を説明する絶縁電線の断面図であり、(a)は緊密化工程、(b)は弛緩工程を示している。
【
図7】上記製造方法を説明する絶縁電線の断面図であり、(a)は充填工程、(b)は再緊密化工程、(c)は被覆移動工程を示している。
【
図8】従来一般の絶縁電線における止水部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を用いて本発明の一実施形態にかかる絶縁電線および絶縁電線の製造方法について、詳細に説明する。
【0043】
[絶縁電線]
まず、本発明の一実施形態にかかる絶縁電線1について説明する。
図1~3に、絶縁電線1、および絶縁電線1を構成する導体2の概略を示す。
【0044】
(絶縁電線の概略)
絶縁電線1は、導電性材料よりなる素線2aが複数撚り合わせられた導体2と、導体2の外周を被覆する絶縁被覆3と、を有している。そして、絶縁電線1の長手軸方向の中途部に、止水部4が形成されている。
【0045】
導体2を構成する素線2aは、いかなる導電性材料よりなってもよいが、絶縁電線の導体の材料としては、銅を用いることが一般的である。銅以外にも、アルミニウム、マグネシウム、鉄などの金属材料を用いることもできる。これらの金属材料は、合金であってもよい。合金とするための他の金属材料としては、鉄、ニッケル、マグネシウム、シリコン、これらの組み合わせなどが挙げられる。全ての素線2aが同じ金属材料よりなっても、複数の金属材料よりなる素線2aが混合されてもよい。
【0046】
導体2における素線2aの撚り合わせ構造は、特に指定されないが、止水部4を形成する際に、後述する製造方法の中の密度変調工程において、導電性材料の密度に変調を加える操作や、素線2aの間隔を広げる操作の行いやすさの観点からは、単純な撚り合わせ構造を有していることが好ましい。例えば、複数の素線2aを撚り合わせてなる撚線を複数集合させて、さらに撚り合わせる親子撚構造よりも、全ての素線2aを一括して撚り合わせた構造とする方が良い。また、導体2全体や各素線2aの径も特に指定されるものではないが、導体2全体および各素線2aの径が小さい場合ほど、止水部4において、素線2aの間の微細な隙間に封止剤を充填して止水の信頼性を高めることの効果および意義が大きくなるので、おおむね、導体断面積を8mm2以下、素線径を0.45mm以下とするとよい。
【0047】
絶縁被覆3を構成する材料も、絶縁性の高分子材料であれば、特に指定されるものではなく、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、オレフィン系樹脂等を挙げることができる。また、高分子材料に加えて、適宜フィラーや添加剤を含有してもよい。さらに、高分子材料は架橋されていてもよい。絶縁被覆3の導体2に対する密着性は、後述する製造方法の中の部分露出工程、密度変調工程、被覆移動工程において、導体2と絶縁被覆3の間の相対運動を妨げない程度の大きさに抑えられていることが好ましい。
【0048】
止水部4には、絶縁被覆3が導体2の外周から除去された露出部10が含まれている。そして、露出部10において、導体2を構成する素線2aの間の空間に、封止剤5が充填されている。封止剤5は、露出部10の素線2aの間の空間と連続して、露出部10の導体2の外周も被覆している。さらに、封止剤5は、それら露出部10の素線2aの間の空間および外周部と連続して、露出部10の両側に隣接する被覆部20の端部の外周、つまり絶縁被覆3が導体2の外周を被覆したままの状態にある領域の端部の絶縁被覆3の外周にも配置されている。つまり、封止剤5は、露出部10の一方側に位置する被覆部20の端部から他方側に位置する被覆部20の端部までにわたる領域の外周、好ましくは全周を連続して被覆するとともに、それら外周部と連続して、露出部10の素線2aの間の領域に充填された状態にある。
【0049】
封止剤5を構成する材料は、水等の流体を容易に透過させず、止水性を発揮することのできる絶縁性材料であれば、特に限定されないが、絶縁性樹脂組成物、特に、流動性の高い状態で素線2aの間の空間に均一に充填しやすい等の理由で、熱可塑性樹脂組成物、または硬化性樹脂組成物よりなることが好ましい。それらの樹脂組成物を流動性の高い状態で素線2aの間や露出部10と被覆部20の端部の外周(外周域)に配置した後、流動性の低い状態とすることで、止水性能の高い止水部4を安定して形成することができる。中でも、硬化性樹脂を用いることが好ましい。硬化性樹脂としては、熱硬化性、光硬化性、湿気硬化性、二液反応硬化性等の硬化性をいずれか1つまたは複数有するものであるとよい。
【0050】
封止剤5を構成する具体的な樹脂種は、特に限定されるものではない。シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂等を例示することができる。これらの樹脂材料には、適宜、封止剤としての樹脂材料の特性を損なわない限りにおいて、各種添加剤を添加してもよい。また、構成の簡素性の観点からは、封止剤5を1種のみ用いることが好ましいが、必要に応じて、2種以上を混合または積層等して用いてもよい。
【0051】
封止剤5としては、充填時の状態において、4000mPa・s以上、さらには5000mPa・s以上、10,000mPa・s以上の粘度を有する樹脂組成物を用いることが好ましい。素線2aの間の領域や外周域、特に外周域に、封止剤5を配置した際に、流出や垂下等を起こさずに、それらの領域に均一性の高い状態で保持されやすいからである。一方、封止剤5の充填時の粘度は、200,000mPa・s以下に抑えられていることが好ましい。粘度が高すぎると、素線2aの間の領域に十分に浸透させることが難しくなるからである。
【0052】
上記のように、封止剤5が露出部10の素線2aの間の空間に充填されることで、素線2aの間の領域が止水され、素線2aの間の領域に、水等の流体が外部から進入するのが防止される。加えて、封止剤5は、露出部10の導体2の外周部を被覆することで、露出部10を物理的に保護する役割を果たす。さらに、露出部10に隣接する被覆部20の端部の外周も一体に被覆することで、絶縁被覆3と導体2の間の止水、つまり絶縁被覆3と導体2の間の空間に水等の流体が外部から進入するのを防止する役割も果たす。
【0053】
図8に示すように、従来一般の絶縁電線91の止水部94においては、止水部94の物理的な保護と、絶縁被覆93と導体92の間の止水を目的として、封止剤95を充填した部位の外周に、収縮チューブ等、別部材としての保護材99を設けていた。しかし、上記のように、共通の封止剤5を、素線2aの間の領域に加えて、外周域にも配置することで、素線間の止水材としての役割と、保護材としての役割を、封止剤5に兼ねさせることができるので、封止剤5の外周にさらに別部材としての保護材を設ける必要がなくなる。これにより、保護材の設置に要するコストを削減することができ、また、保護材による絶縁電線1の大径化、さらには絶縁電線1を含むワイヤーハーネス全体の大径化を回避することができる。ただし、本実施形態において、封止剤5の外周にさらに別部材としての保護材を設けることを妨げるものではない。そのような場合をはじめ、封止剤5を、外周域には配置せず、素線2aの間の空間にのみ配置するものとしてもよい。
【0054】
なお、本実施形態においては、需要の大きさや、後述するように導電性材料の密度の変調を利用して素線2aの間隔を広げる際の効果の大きさ等の観点から、止水部4を、絶縁電線1の長手軸方向中途部に設けているが、同様の止水部4を、絶縁電線1の長軸方向端部に設けてもよい。その場合、絶縁電線1の端部は、端子金具等、別の部材を接続した状態にあっても、何も接続していない状態にあってもよい。また、封止剤5に被覆された止水部4の中に、導体2および絶縁被覆3に加えて、接続部材等、別の部材を含んでもよい。別の部材を含む場合の例として、複数の絶縁電線1を接合したスプライス部に止水部4を設ける形態を挙げることができる。
【0055】
(止水部における導体の状態)
本実施形態にかかる絶縁電線1を構成する導体2においては、導電性材料の単位長さあたり(絶縁電線1の長手軸方向における単位長さあたり)の導電性材料の密度が、均一になっておらず、不均一な分布を有している。なお、絶縁電線1の長手軸方向全域にわたって、各素線2aは連続した略均一な径の線材として設けられており、本明細書において、導電性材料の単位長さあたりの密度が領域間で異なる状態とは、素線2aの径や本数は一定であるが、撚り合わせの状態等、素線2aの集合状態が変化している状態を指す。
【0056】
具体的には、露出部10の両側の被覆部20において、露出部10に隣接する領域を隣接域21とし、隣接域21に隣接し、露出部10から離間した領域を遠隔域22として、単位長さあたりの導電性材料の密度を露出部10、隣接域21、遠隔域22の3つの領域で比較すると、露出部10において最も高く、遠隔域22において次に高く、隣接域21において最も低くなっている。遠隔域22においては、単位長さあたりの導電性材料の密度をはじめとする導体2の状態は、止水部4を設けないままの絶縁電線1における状態と実質的に等しい。
【0057】
図1に、そのような導電性材料の密度の分布を含む導体2の状態を模式的に示す。
図1および後の
図5~8においては、導体2が占める領域の内部に斜線を付しているが、その斜線の密度が高いほど、素線2aの撚りピッチが小さい、つまり素線2aの間隔が狭いことを示している。また、導体2として示している領域の幅(上下の寸法)が広いほど、導体2の径が大きく広がっていることを示している。ただし、それら図示したパラメータは、素線2aの撚りピッチおよび導体径に比例するものではなく、領域ごとの相対的な大小関係を模式的に示すものである。また、図示したパラメータは、各領域の間で不連続になっているが、実際の絶縁電線1においては、導体2の状態が領域間で連続的に変化している。
【0058】
図1に示すように、露出部10においては、被覆部20の遠隔域22よりも、導体2の径が大きく広がっており、導体2を構成する素線2aが、撓んだ状態で封止剤5によって相互に固定されている。素線2aの撓みにより、露出部10においては、遠隔域22よりも、単位長さあたりの導電性材料の密度が高くなっている。つまり、単位長さあたりに含まれる導電性材料の質量が大きくなっている。隣接域21においては、導体2の単位長さ当たりの密度が、遠隔域22よりも低くなっている。なお、隣接域21における導体2の径は、露出部10よりも小さく、多くの場合、遠隔域22とほぼ変わらないか、それよりも小さい。
【0059】
次の絶縁電線の製造方法の項で詳しく説明するが、露出部10においては、導電性材料の単位長さあたりの密度を遠隔域22よりも高くすることで、導体2の径を広げた状態において、素線2aの間隔を広く取り、素線2aの間に大きな空間を確保することができる。その結果、素線2aの間の空間に封止剤5を浸透させやすくなり、露出部10の各部に、封止剤5を、ムラなく高い均一性をもって充填しやすくなる。すると、露出部10の素線2aの間の領域において、信頼性の高い止水を達成することができる。そのような止水性能向上の効果を十分に得る観点から、露出部10における単位長さあたりの導電性材料の密度は、遠隔域22における単位長さあたりの導電性材料の密度を基準として、1.01倍以上(101%以上)、さらには1.2倍以上(120%以上)であることが好ましい。
【0060】
一方、露出部10における単位長さあたりの導電性材料の密度を過度に高めると、露出部10や被覆部20において導体2に負荷が生じる可能性があり、また、素線2aの間隔が広がりすぎて封止剤5を素線2aの間の空間に留めることが難しくなる。よって、露出部10における単位長さあたりの導電性材料の密度は、遠隔域22における単位長さあたりの導電性材料の密度を基準として、1.5倍以下(150%以下)であることが好ましい。
【0061】
隣接域21において、導電性材料の単位長さあたりの密度が、遠隔域22よりも低くなっていることは、止水性能の向上において直接的な効果を有する訳ではない。しかし、次の絶縁電線の製造方法の項で詳しく説明するように、隣接域21において導電性材料の単位長さあたりの密度を下げることで、その分の導電性材料を露出部10に充当することができる。それにより、露出部10における導電性材料の単位長さあたりの密度を上げやすくなり、結果として、露出部10の素線2aの間の領域において高い止水性能を達成しやすくなる。
【0062】
さらに、露出部10において、素線2aの撚りピッチが小さくなり、素線2aの間隔が狭くなっていることも、止水性能の向上に効果を有する。封止剤5が流動性の高い状態のまま素線2aの間の空間に充填された、止水部4の形成途中の状態において、素線2aの間隔を狭めておくことで、封止剤5を、垂下したり流出したりすることなく、素線2aの間の空間に均一に留まらせやすいからである。その状態から、硬化性樹脂の硬化等によって封止剤5の流動性を下げると、露出部10において、高い止水性能が得られる。露出部10における素線2aの撚りピッチは、少なくとも隣接域21における撚りピッチよりも小さいことが好ましい。なお、隣接域21と遠隔域22における素線2aの撚りピッチの関係は、特に規定されるものではないが、隣接域21の方が遠隔域22よりも大きい撚りピッチを有していることが好ましい。つまり、撚りピッチは、露出部10において最も小さく、遠隔域22において次に小さく、隣接域21において最も大きい状態にあることが好ましい。
【0063】
[絶縁電線の製造方法]
次に、本発明の一実施形態にかかる絶縁電線の製造方法について説明する。上記実施形態にかかる絶縁電線1における止水部4の形成を、本実施形態にかかる製造方法によって行うことができる。
【0064】
図4に、本実施形態にかかる絶縁電線の製造方法の概略を示す。ここでは、(1)部分露出工程、(2)密度変調工程、(3)充填工程、(4)再緊密化工程、(5)被覆移動工程、(6)硬化工程をこの順に実行することで、絶縁電線1の長手軸方向の一部の領域に、止水部4を形成する。(2)密度変調工程は、(2-1)緊密化工程と、それに続く(2-2)弛緩工程より構成することができる。以下、各工程について説明する。なお、ここでは、絶縁電線1の中途部に止水部4を形成する場合を扱うが、各工程における具体的な操作や、各工程の順序は、止水部4を形成する位置等、形成すべき止水部4の構成の詳細に応じて、適宜調整すればよい。
【0065】
(1)部分露出工程
まず、部分露出工程において、
図5(a)に示したような連続した線状の絶縁電線1を用いて、
図5(b)のように、露出部10を形成する。露出部10の長手方向両側には、被覆部20が隣接して存在する。
【0066】
このような露出部10を形成する方法の一例として、まず、露出部10を形成すべき領域の略中央に当たる位置において、絶縁被覆3の外周に、略円環状の切込みを形成する。この際、導体2には切込みや傷を形成しないようにする。そして、切込みの両側において絶縁被覆3を外周から把持し、相互に離間させるように、絶縁電線1の軸方向に沿って移動させる(運動M1)。移動に伴って、両側の絶縁被覆3の間に、導体2が露出されるようになる。このようにして、被覆部20に隣接した状態で、露出部10を形成することができる。ここで、露出部10の長手軸方向に沿った長さは、絶縁被覆3の移動量によって決まるが、後の被覆移動工程において、絶縁被覆3を再度接近させることを考慮して、最終的に所望される露出部10の長さよりも、長めに露出部10を形成しておくとよい。
【0067】
(2)密度変調工程
次に、密度変調工程において、露出部10、および被覆部20の隣接域21および遠隔域22の間で、導電性材料の密度に不均一な分布を形成するとともに、露出部10における導体2の素線2aの間隔を広げる。導電性材料の密度の不均一な分布としては、具体的には、単位長さあたりの導電性材料の密度が、露出部10において最も高く、遠隔域22において次に高く、隣接域21において最も低くなった状態を形成する。そのような密度の分布の形成は、例えば、緊密化工程と、それに続く弛緩工程によって、露出部10における素線2aの間隔の拡大と同時に達成することができる。
【0068】
(2-1)緊密化工程
緊密化工程においては、
図6(a)に示すように、一旦、露出部10における撚りを、元の状態よりも緊密にする。具体的には、絶縁電線1を、素線2aが撚り合わせられている方向に捩るように回転させ、さらに撚りを強くかけるようにする(運動M2)。これにより、露出部10における素線2aの撚りピッチが小さくなり、素線2aの間隔が小さくなる。
【0069】
この際、露出部10の両側の被覆部20において、露出部10に隣接する部位を外側から把持して、把持した部位(把持部30)を相互に対して逆向きに回転させるようにして、導体2に捻りを加えれば、把持部30から露出部10へと導体2を繰り出すことができる。導体2の繰り出しにより、
図6(a)に示すように、把持部30において、当初よりも、素線2aの撚りピッチが大きくなり、単位長さあたりの導電性材料の密度が低くなる。その分、当初把持部30に存在していた導電性材料の一部が露出部10に充当され、露出部10における素線2aの撚りピッチが小さくなる。そして、露出部10における単位長さあたりの導電性材料の密度が高くなる。なお、把持部30から露出部10に円滑に導体2を繰り出させるために、把持部30において絶縁電線1を外周から挟み込む力は、絶縁被覆3に対して導体2が相対移動できる程度に抑えておくことが好ましい。
【0070】
(2-2)弛緩工程
その後、弛緩工程において、
図6(b)に示すように、露出部10における素線2aの撚りを、緊密化工程において緊密化した状態から、再度緩める。撚りの弛緩は、単に把持部30における把持を解放することにより、あるいは、把持部30を把持して、緊密化工程と反対方向に、つまり導体2が撚り合わせられている方向と逆方向に、捻るように回転させることにより(運動M3)、行うことができる。いずれの方法で撚りの弛緩を行うかは、緊密化工程における緊密化の程度や導体2の剛性、所望の弛緩の程度等に応じて選択すればよい。
【0071】
この際、導体2の剛性により、緊密化工程において露出部10の両側の把持部30から繰り出された導体2が、再度、絶縁被覆30に被覆された領域の中に完全に戻ることはなく、少なくとも一部は露出部10に留まる。その結果、導体2が露出部10に繰り出された状態のままで、その導体2における素線2aの撚りが緩むので、露出部10において、緊密化工程実施前に比べて実長として長い素線2aが、撓んだ状態で配置された状態となる。つまり、
図6(b)に示すように、露出部10において、緊密化工程実施前の状態(
図5(b))に比べて、導体2が全体として占める領域の径が大きくなり、単位長さ当たりの導電性材料の密度が高くなる。露出部10における撚りピッチは、少なくとも、緊密化工程によって撚りを緊密化した状態よりも大きくなり、弛緩の程度によっては、緊密化工程実施前よりも大きくなる。素線2aの間隔を大きく広げる観点からは、緊密化工程実施前よりも撚りピッチを大きくする方がよい。
【0072】
被覆部20において、緊密化工程で絶縁被覆3を外側から把持していた把持部30は、弛緩工程を経て、単位長さあたりの導電性材料の密度が露出部10よりも低く、さらには緊密化工程実施前の状態よりも低くなった隣接域21となる。被覆部20において、緊密化工程で把持部30としていなかった領域、つまり、露出部10から離間した領域は、遠隔域22となる。遠隔域22においては、単位長さあたりの導電性材料の密度、素線2aの撚りピッチ等、導体2の状態が、緊密化工程実施前から実質的に変化していない。緊密化工程と弛緩工程を経た状態で、例えば、露出部10における単位長さあたりの導電性材料の密度が、遠隔域22における単位長さあたりの導電性材料の密度を基準として、1.01倍以上、また1.5倍以下となるようにすればよい。
【0073】
ここでは、それぞれ単位長さあたりの導電性材料の密度が異なる露出部10、隣接域21、遠隔域22を形成する手段として、密度変調工程において、緊密化工程と弛緩工程を実施したが、単位長さあたりの導電性材料の密度に所定の変調を形成できるのであれば、どのような方法をとっても構わない。上記で、絶縁電線1の構造に関連して説明したように、隣接域21において遠隔域22よりも単位長さあたりの導電性材料の密度を低くしているのは、露出部10における単位長さあたりの導電性材料の密度を高めやすくするための手段としてであり、そのこと自体が直接的に止水部4における止水性能の向上に寄与する訳ではない。そこで、露出部10における単位長さあたりの導電性材料の密度を密度変調工程実施前よりも高めながら、露出部10における素線2aの間隔を密度変調工程実施前よりも広げることができるのであれば、遠隔域22よりも単位長さあたりの導電性材料の密度が低くなった隣接域21は必ずしも設けなくてもよい。例えば、導体2を素線2aの撚り合わせの方向と逆向きに捻るように回転させる弛緩工程のみで、露出部10における単位長さあたりの導電性材料の密度を高め、素線2aの間隔を広げることができるのであれば、緊密化工程を実施しなくてもよい。
【0074】
さらに、緊密化工程や弛緩工程のように、均一な線状の連続体としての絶縁電線1に対して、捻り等の加工を後から加えることで、単位長さあたりの導電性材料の密度に変調を加える以外に、導体2を製造する段階からそのような変調を導入しておくことも考えられる。例えば、均一な線状の導体2を用いる代わりに、素線2aを撚り合わせて導体2を製造する段階で、撚り合わせ方を導体2の長手軸方向に沿って変化させることで、単位長さあたりの導電性材料の密度に所定の分布を有する導体2を形成することができる。その導体2の外周に絶縁被覆3を形成したうえで、部分露出工程を実施すれば、露出部10を有し、露出部10および被覆部20において、単位長さあたりの導電性材料の密度に所定の分布を有する絶縁電線1を得ることができる。
【0075】
(3)充填工程
次に、充填工程において、
図7(a)のように、露出部10における素線2aの間の空間に、封止剤5を充填する。封止剤5は、流動性のある状態で、素線2aの間の空間に浸透させることが好ましい。封止剤5の充填操作は、滴下、塗布、注入等、封止剤5の粘度等の特性に応じた任意の方法で、素線2aの間の空間に、流動性のある状態の樹脂組成物を導入することによって行えばよい。
【0076】
この際、充填工程よりも後に被覆移動工程を実施する場合には、封止剤5の導入は、絶縁電線1の長手軸方向に沿って露出部10の端から端まで行わなくてもよく、
図7(a)に示すように、両側の被覆部20との間に、封止剤5が導入されない空隙Gが残ってもよい。また、充填工程を実施している間、絶縁電線1の各部には、力を印加しなくてもよいが、上記弛緩工程において把持部30(隣接域21)に捻りを加えた力を解放すると露出部10における素線2aの間隔が狭まってしまうような場合には、弛緩工程から引き続いてその力を印加した状態のまま、充填工程を実施すればよい。
【0077】
充填工程においては、封止剤5を素線2aの間の空間に充填するとともに、露出部10の導体2の外周にも、封止剤5を配置することが好ましい。そのためには、例えば、露出部10に導入する封止剤5の量を、素線2aの間の空間を埋めても余剰が生じる量に設定しておくとともに、封止剤5の導入を、露出部10の周方向における複数の方向から行うようにすればよい。この際、封止剤5を、露出部10の外周に加えて、さらに被覆部20の端部の絶縁被覆3の外周部にも配置してもよいが、充填工程よりも後に被覆移動工程を実施する場合には、被覆移動工程において、露出部10に導入された封止剤5の一部を、被覆部20の絶縁被覆3の外周部に移動させることができる。よって、素線2aの間の空間に加えて、露出部10の外周に封止剤5を配置しておけば十分である。
【0078】
本実施形態にかかる製造方法においては、上記密度変調工程で、露出部10の素線2aの間隔を広げたうえで、充填工程において、露出部10に封止剤5を導入しているので、広げられた素線2aの間の部位に、封止剤5が浸透しやすくなっている。そのため、封止剤5を、露出部10の各部において、高い均一性をもって、ムラなく浸透させやすい。その結果、封止剤5の硬化等を経て、優れた止水性能を有する信頼性の高い止水部4を形成することができる。さらに、特許文献1に記載されている加圧室の利用のような特別な方法を用いなくても、簡便に、均一性の高い封止剤5の浸透を達成することができる。
【0079】
また、上記のように、封止剤5が、充填時の状態で、4000mPa・s以上のような高い粘度を有しており、封止剤5の流動性が低い場合でも、素線2aの間隔を十分に広げておくことで、素線2aの間の空間に、封止剤5を高い均一性をもって浸透させることができる。粘度の高い封止剤5を使用することができれば、使用可能な封止剤5の種類の幅が広がる。また、充填工程において、素線2aの間の空間だけでなく、露出部10の導体2の外周にも封止剤5を配置する場合に、封止剤5が、流出、垂下等を起こすことなく導体2の外周部に留まりやすい。よって、導体2の外周部にも、高い均一性をもって封止剤5を配置しやすくなる。
【0080】
(4)再緊密化工程
次に、再緊密化工程において、
図7(b)に示すように、素線2aの間の空間に封止剤5が充填された状態の露出部10の素線2aの間隔を狭める。この工程は、例えば、先の密度変調工程における緊密化工程と同様に、露出部10の両側の被覆部20を、隣接域21において絶縁被覆3の外側から把持して、導体2を素線2aの撚り合わせ方向に、捻るように回転させ、素線2aの撚りを緊密化することによって、実行することができる(運動M4)。再緊密化工程は、素線2aの間に充填した封止剤5が流動性を有する間、つまり、硬化性樹脂組成物よりなる封止剤5であれば、封止剤5が硬化する前、あるいは硬化の途中で行うことが好ましい。すると、再緊密化の操作が、封止剤5の存在によって妨げられにくい。
【0081】
再緊密化工程により、露出部10の素線2aの間の空間が狭められると、その狭い空間に封止剤5が閉じ込められることになるので、硬化等によって封止剤5の流動性が十分に低下するまでの間に、封止剤5が、流出や垂下等を起こさずに素線2aの間の空間に留まりやすい。それにより、封止剤5の硬化等を経て、優れた止水性能を有する信頼性の高い止水部4を形成しやすくなる。そのような効果を高く得るため、再緊密化工程において、露出部10における素線2aの撚りピッチを小さくすることが好ましく、例えば、再緊密化工程を経た後の状態で、隣接域21よりも露出部10の撚りピッチが小さくなるようにすればよい。
【0082】
封止剤5として粘度の高いものを用いていれば、再緊密化の操作自体に起因して、封止剤5が素線2aの間の空間から排除されるような事態も、回避しやすい。なお、流動性が十分に低下するまでの間の封止剤5の流出や垂下が大きな問題にならない場合等には、再緊密化の工程を省略してもよい。
【0083】
(5)被覆移動工程
次に、被覆移動工程において、
図7(c)に示すように、露出部10の両側の被覆部20に配置された絶縁被覆3を、相互に接近させるようにして、露出部10に向かって移動させる(運動M5)。被覆移動工程も、再緊密化工程と同様、露出部10に充填した封止剤5が流動性を有する間、つまり、硬化性樹脂組成物よりなる封止剤5であれば、封止剤5が硬化する前、あるいは硬化の途中で行うことが好ましい。被覆移動工程は、再緊密化工程と合わせて、実質的に一度の操作で行うようにすることもできる。
【0084】
被覆移動工程を経ることで、露出部10の両端の一部の領域において、露出していた導体2が、絶縁被覆3に被覆された状態となる。さらに、被覆移動工程を、封止剤5が流動性を有する状態で行うことにより、露出部10の端部に存在していた封止剤5が配置されない空隙Gが解消され、露出部10に充填された封止剤5と、絶縁被覆3の端部が接触した状態となる。これにより、露出部10において導体2が露出した部位の全域において、素線2aの間に封止剤5が充填された状態となる。さらに、露出部10の導体2の外周に配置されていた封止剤5の一部を、被覆部20の絶縁被覆3の外周に移動させることができる。これにより、露出部10の素線2aの間の空間、露出部10の導体2の外周、被覆部20の端部の絶縁被覆3の外周の3つの領域に、封止剤5が連続して配置された状態となる。
【0085】
上記3つの部位に封止剤5が配置されることで、次の硬化工程を経て、素線2aの間の領域における止水性能に優れるとともに、外周が物理的に保護され、さらに導体2と絶縁被覆3の間の止水性能にも優れた止水部4を、共通の材料から、同時に形成することができる。なお、
図7(c)や
図1では厳密な図示を省略しているが、被覆移動工程において、露出部10の両側の絶縁被覆3を相互に接近する方向に移動させていることに伴って、素線2aの間隔が狭められるとともに素線2aの間に封止剤5が充填された露出部10に相当する領域が、導体2が絶縁被覆3から露出された部位だけでなく、一部、導体2が絶縁被覆3に覆われた部位に及んで存在していてもよい。充填工程において、露出部10の端から端まで、さらには両側の被覆部20の端部まで含む領域に封止剤5を導入している場合、また露出部10の外周や被覆部20の外周に封止剤5を配置する必要がない場合等には、被覆移動工程を省略してもよい。
【0086】
(6)硬化工程
最後に、硬化工程において、封止剤5を流動性の低い状態にする。封止剤5が、各種硬化性樹脂組成物よりなる場合には、その種類に応じた硬化方法を適用すればよい。つまり、封止剤5が熱硬化性を有する場合は加熱により、光硬化性を有する場合は光照射により、湿気硬化性を有する場合には大気中での放置等による加湿により、封止剤5の硬化を行えばよい。封止剤5が湿気硬化性を有する場合等、封止剤5の硬化に比較的長い時間を要する場合もあるが、封止剤5として高い粘度を有するものを用いていれば、硬化に要する時間の間に、硬化が不完全な封止剤5が流出や垂下を起こし、露出部10の素線2aの間の空間や、露出部10および被覆部20の外周域に正常に保持されなくなる事態を回避することができる。硬化工程を経て、最終的に、高い止水性能を有する止水部4を備えた絶縁電線1を得ることができる。
【実施例】
【0087】
以下に本発明の実施例を示す。なお、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。以下、実施例4は、参考例4と読み替えるものとする。
【0088】
絶縁電線に止水部を形成する際の止水の方法と、得られる止水部における止水性能の関係を検証した。
【0089】
(試験方法)
(1)試料の作製
導体断面積0.5mm2(素線径0.18mm、素線数20)の銅撚線導体の外周に、ポリ塩化ビニルよりなる厚さ0.35mmの絶縁被覆を形成した絶縁電線の中途部に、長さ8mmの露出部を形成した。そして、露出部に対して、以下の各方法によって止水処理を施し、止水部を形成した。
【0090】
各実施例および比較例における止水方法は以下のとおりである。
・実施例1:
図4にフロー図で示したとおり、緊密化工程と弛緩工程を含む方法で、高粘度封止剤を用いて止水を行った。
・実施例2:
図4にフロー図で示したとおり、緊密化工程と弛緩工程を含む方法で、低粘度封止剤を用いて止水を行った。
・実施例3:実施例2の止水部の外周に、さらに接着層付き収縮チューブを配置した。
・実施例4:緊密化工程を実施せず、弛緩工程のみによって素線の間隔を広げたうえで、低粘度封止剤を用いて止水を行った。
・比較例1:緊密化工程も弛緩工程も実施せず、単に露出部に低粘度封止剤を導入するだけで、止水を行った。
【0091】
上記各実施例および比較例において用いた封止剤は、以下のとおりである。
・高粘度封止剤:湿気硬化性シリコーン系樹脂、粘度5000mPa・s(@23℃)、信越化学工業社製「KE-4895」
・低粘度封止剤:湿気硬化性アクリル系樹脂、粘度2mPa・s(@23℃)、スリーボンド社製「7781」
【0092】
(2)止水性能の評価
各実施例および比較例にかかる絶縁電線の止水部について、リーク試験により、素線間、また導体と絶縁被覆の間の止水性能を評価した。具体的には、各絶縁電線の止水部を水中に浸漬し、絶縁電線の一端から、150kPaまたは200kPaで空気圧を印加した。そして、止水部および空気圧を印加していない方の絶縁電線の端部を目視にて観察した。
【0093】
150kPaおよび200kPaの空気圧印加によって、止水部の素線間の部位、つまり止水部の中途部と、空気圧を印加していない方の絶縁電線の端部のいずれの部位からも、気泡が発生するのが確認されなかった場合には、素線間の止水性能が特に高い「◎」と評価した。150kPaの空気圧印加によって、それらいずれの部位からも気泡が発生するのが確認されなかった場合には、素線間の止水性能が高い「○」と評価した。150kPaの空気圧印加であっても、いずれか少なくとも一方の部位から気泡が発生するのが確認された場合には、素線間の止水性能が不十分である「×」と評価した。
【0094】
一方、150kPaおよび200kPaの空気圧印加によって、導体と絶縁被覆の間の部位、つまり止水部の端部から気泡が発生するのが確認されなかった場合には、導体-絶縁被覆間の止水性能が特に高い「◎」と評価した。150kPaの空気圧印加によって、そのような部位から気泡が発生するのが確認されなかった場合には、導体-絶縁被覆間の止水性能が高い「○」と評価した。150kPaの空気圧印加であっても、そのような部位から気泡が発生するのが確認された場合には、導体-絶縁被覆間の止水性能が不十分である「×」と評価した。
【0095】
(3)止水部における導電性材料の密度
さらに、各実施例および比較例にかかる絶縁電線について、止水部における単位長さあたりの導電性材料の密度を実測した。
【0096】
まず、上記で作製した各絶縁電線の止水部の長さを測定したうえで、止水部を分解し、止水部を構成していた導体を取り出した。そして、取り出した導体の質量を計測した(質量1とする)。さらに、遠隔域に相当する部位として、絶縁電線の末端部から、止水部と同じ長さの部分を切り出した。そして、切り出した部分を分解し、導体の質量を測定した(質量2とする)。質量1と質量2を比較し、質量2を100として、質量1の値を換算したものを、止水部相対密度とした。
【0097】
(結果)
表1に、止水試験および導体密度計測の結果を、止水方法の概要とともに示す。止水方法の工程を示す各欄において、「○」はその工程を行っていることを示し、「-」は行っていないことを示す。
【0098】
【0099】
表1に示されるように、実施例1~4においては、少なくとも素線間において、高い止水性能が達成されている。これは、少なくとも弛緩工程を実施して、露出部における素線の間隔を広げることで、素線の間の空間に封止剤を十分に浸透させられていることの結果であると解釈される。導体の単位長さ当たりの密度が遠隔域よりも高くなっていることも、素線の間隔が広げられていることと対応している。
【0100】
中でも、実施例1~3においては、素線間において、特に高い止水性能が達成されている。これは、緊密化工程と弛緩工程を両方経ることで、露出部において素線の間隔を大きく広げられており、その状態で封止剤を露出部に導入することで、素線の間の空間に封止剤を特に効果的に浸透させられていることの結果であると解釈される。止水部相対密度が約130となり、止水部において、導体の単位長さ当たりの密度が特に高くなっていることも、素線の間隔が大きく広げられていることと対応している。
【0101】
高粘度封止剤を使用している実施例1においては、素線間のみならず、導体-絶縁被覆間でも、高い止水性能が達成されている。これは、封止剤が高粘度であることで、硬化前の状態において、露出部の導体の外周および両側の被覆部の絶縁被覆の外周の領域に安定に留まるためであると解釈される。これに対し、低粘度封止剤を使用している実施例2,4においては、これらの領域における硬化前の封止剤の保持が十分に行えないために、素線間では十分な止水性能を確保できるにもかかわらず、導体-絶縁被覆間では十分な止水性能が得られていない。ただし、実施例3のように収縮チューブを補助的に用いることで、導体-絶縁被覆間で十分な止水性能を確保することができる。
【0102】
比較例1においては、素線間、導体-絶縁被覆間のいずれにおいても、十分な止水性能が得られていない。これは、素線の間隔を広げておらず、素線の間の空間に封止剤を均一性高く浸透させられていないことと、低粘度の封止剤を用いており、露出部の導体の外周および両側の被覆部の絶縁被覆の外周の領域にも、封止剤を安定に配置できていないことの結果であると解釈される。
【0103】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0104】
1 絶縁電線
2 導体
2a 素線
3 絶縁被覆
4 止水部
5 封止剤
10 露出部
20 被覆部
21 隣接域
22 遠隔域
30 把持部