(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】森林地域での立木の評価方法、及びこの評価方法における評価対象エリアの特定に適した境界線測量方法
(51)【国際特許分類】
G01C 7/04 20060101AFI20230620BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20230620BHJP
【FI】
G01C7/04
G06T7/00 640
(21)【出願番号】P 2019151996
(22)【出願日】2019-08-22
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】399014163
【氏名又は名称】株式会社 ジツタ
(73)【特許権者】
【識別番号】500513480
【氏名又は名称】株式会社ビィーシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【氏名又は名称】辻田 幸史
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】山内 延恭
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 博幸
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-344048(JP,A)
【文献】特開2018-084472(JP,A)
【文献】特開2014-119449(JP,A)
【文献】特開2012-098247(JP,A)
【文献】特開2008-111724(JP,A)
【文献】特開2016-070708(JP,A)
【文献】特開2008-046837(JP,A)
【文献】特開2015-152340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 7/04
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上空から撮影された撮影データを用いた森林地域での立木の評価方法であって、
サーバーが、
前記撮影データから点群データを生成する点群データ生成ステップと、
評価対象エリアの中の一部である代表エリアを基準値で格子に区分し、区分された前記格子内の前記点群データから最高位置データを頂点として抽出する代表エリア内頂点抽出ステップと、
前記代表エリア内頂点抽出ステップで抽出された前記頂点が立木頂点か否かを判定する代表エリア内立木頂点判定ステップと、
前記代表エリア内立木頂点判定ステップで前記立木頂点と判定された代表エリア内立木頂点数を算出する代表エリア内立木頂点数算出ステップと、
前記代表エリア内立木頂点数算出ステップで算出された前記代表エリア内立木頂点数を、前記代表エリア内の実立木数と比較する立木数比較ステップと、
前記立木数比較ステップで比較した前記代表エリア内立木頂点数と前記実立木数との差が閾値を超える場合には、前記
代表エリア内立木頂点数と前記実立木数との差が前記閾値内となるように前記基準値を変更する基準値変更ステップと、
前記基準値変更ステップで変更した変更基準値を用いて前記評価対象エリアを前記格子に区分し、区分された前記格子内の前記点群データから前記最高位置データを前記頂点として抽出する評価対象エリア内頂点抽出ステップと、
前記評価対象エリア内頂点抽出ステップで抽出された前記頂点が前記立木頂点か否かを判定する評価対象エリア内立木頂点判定ステップと、
前記評価対象エリア内立木頂点判定ステップで前記立木頂点と判定された評価対象エリア内立木頂点数を算出立木数として決定する算出立木数決定ステップと
を有し、
前記代表エリア内立木頂点判定ステップ、又は前記評価対象エリア内立木頂点判定ステップでは、
抽出された前記頂点を含む前記格子内を、複数の区画に区分けし、
区分けした前記区画内での前記最高位置データの高さデータ値を抽出し、
前記頂点を含む前記区画に隣接するいずれか一つの前記区画の前記最高位置データの前記高さデータ値が、抽出された前記頂点の高さデータ値より大きい場合には、抽出された前記頂点を前記立木頂点でないと判定する
ことを特徴とする森林地域での立木の評価方法。
【請求項2】
前記サーバーが、
前記点群データの中から地形が撮影された基準点を基に、前記点群データとは異なる前記評価対象エリアの地形データを、前記点群データに位置合わせを行う地形データ対応ステップと、
前記評価対象エリア内立木頂点判定ステップで前記立木頂点と判定された前記頂点について、前記地形データを基に前記立木頂点の高さを算出する立木頂点算出ステップと、
前記立木頂点算出ステップで算出された前記立木頂点の前記高さを用いて材積量を算出する材積量算出ステップと
を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の森林地域での立木の評価方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の森林地域での立木の評価方法における前記評価対象エリアの特定に適した境界線測量方法において、
測量対象とする境界又は前記境界の近傍であって、上空から撮影可能な位置に基準点を設置する基準点設置ステップと、
前記境界に沿った飛行経路を決定する飛行経路決定ステップと、
前記飛行経路決定ステップで決定した前記飛行経路に沿って無人航空機を飛行させる飛行ステップと、
前記飛行ステップにおいて、前記無人航空機に搭載した撮影装置で前記基準点を含む領域を撮影する撮影ステップと、
前記撮影ステップにおける撮影時に、前記撮影装置の撮影位置データと撮影方向データとを計測する撮影情報計測ステップと、
前記撮影ステップで撮影する撮影データとともに、前記撮影情報計測ステップで計測する前記撮影位置データと前記撮影方向データとを記憶する撮影データ記憶ステップと、
前記撮影データ記憶ステップで記憶した前記撮影データ、前記撮影位置データ、及び前記撮影方向データを用いて前記基準点の座標データを確定する基準点座標確定ステップと、
前記境界と前記基準点との測量データを取得するコンパス測量ステップと
を有し、
前記基準点座標確定ステップで確定した前記基準点の前記座標データと、前記コンパス測量ステップで取得する前記測量データとから境界線を確定する
ことを特徴とする境界線測量方法。
【請求項4】
前記基準点設置ステップでは、地球航法衛星システム受信装置を用いて前記基準点の座標データを測定し、
前記飛行経路決定ステップでは、測定した前記基準点の前記座標データを用いて前記飛行経路を決定する
ことを特徴とする請求項3に記載の境界線測量方法。
【請求項5】
前記コンパス測量ステップを、前記基準点設置ステップとともに行い、
前記コンパス測量ステップで取得した前記測量データを、前記基準点座標確定ステップで確定した前記基準点の前記座標データを用いて再計算して前記境界線を確定する
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の境界線測量方法。
【請求項6】
前記代表エリア内立木頂点判定ステップ、又は前記評価対象エリア内立木頂点判定ステップでは、
前記頂点を含む前記区画を中心にして放射状に複数の仮想線を引き、
前記仮想線に沿って隣接する前記区画同士で前記最高位置データの前記高さデータ値を比較し、
前記仮想線に位置する外方の前記区画の前記高さデータ値が内方の前記区画の前記高さデータ値より小さいという条件を満たす仮想線長さを、それぞれの前記仮想線に対して算出し、
算出した前記仮想線長さの平均長を樹冠の半径長さと決定し、
決定した前記樹冠の前記半径長さが、設定した最少長さ以下、又は/及び最大長さ以上であれば、抽出された前記頂点を前記立木頂点でないと判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の森林地域での立木の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、森林地域での立木数や材積量を評価する方法、及び特に山林境界を測量する境界線測量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
森林地域での立木数や材積量を評価する方法として、画像情報やレーザー計測情報を用いることが提案されている。
特許文献1は、森林地域の上空から取得した森林撮影画像情報と樹高情報から当該森林地域の樹木材積を自動計測する森林情報処理システムを提案している。
特許文献1では、高解像度衛星又は航空機によって取得された森林画像情報から、ウォーターシェド(Watershed)アルゴリズムという領域分割手法により樹冠形状を抽出することで立木本数を計測し、GPS/IMUや距離計測センサを用いることで樹高を取得している。
特許文献2は、航空測量データから、地面上の樹木の3次元位置を示すDSMデータと、地面の3次元位置を示すDTMデータを算出し、DSMデータから梢端を抽出し、梢端から樹頂を抽出し、樹頂とDTMデータとから樹頂の樹高を算出し、樹頂とDSMデータとから各樹頂に対する樹冠を抽出することを提案している。
特許文献2では、航空測量データは、レーザー測距装置による計測データ(距離と照射角度、ファースト/ラストの区別)、ジャイロにより計測されたヘリコプターの姿勢、及びGPS受信装置によるヘリコプターの3次元位置データであり、ラストパルスの計測値からDTMデータを生成し、ファーストパルスの計測値からDSMデータを生成している。
また特許文献2では、梢端の抽出にDSMメッシュデータを用いている。すなわち、対象領域を正方眼のタイルに区分し、そのタイル単位で最も標高の高い梢端を抽出する。ここでタイルの区切り位置に依存するエラーや大きさの異なる複数の樹種に対応するために、複数のタイルサイズで試行し、各タイルサイズで検出されたデータを格納している。
特許文献3は、上空からレーザパルスを掃射し、その反射信号波形を計測する航空レーザー計測により取得された森林の三次元の点群データを用いて樹木の位置を検出する樹木位置検出装置を提案している。
特許文献3では、点群データが表す高さを地表からの実質高さに換算して正規化点群データを生成する正規化手段と、当該森林の樹冠領域とその下の枝下領域とでの正規化点群データの分布の違いに基づいて、当該森林内で一定した高さ範囲を枝下層として設定する枝下層設定手段と、枝下層に属する正規化点群データを抽出し、地表に沿った平面に投影して二次元頻度分布を求める平面投影手段と、所定基準に基づいて、二次元頻度分布にて正規化点群データが集まる箇所を検出して樹木位置とする位置検出手段とを備えている。
一方、一般に、地図の作成のためなどの地形データの測量には、トータルステーションが用いられる。
トータルステーションによる測量は、高精度であるが熟練を要し、生産性が低いという問題がある。
熟練を要することなく生産性の高い測量機器として、コンパス測量機器があるが、コンパス測量機器は、トータルステーションと比較して測量精度が低く、特に基準点が少ない場合には、累加的に誤差が影響するという問題がある。
特許文献4及び特許文献5は、コンパス測量機器を用いた測量方法を開示している。
また、特許文献6及び特許文献7は、航空機から撮影することで地上にある基準点の座標データを決定する方法を開示している。
また、特許文献8は、地上測量と空中測量の双方の測量結果を統合して地図情報を作成する測量方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-344048号公報
【文献】特開2007-198760号公報
【文献】特開2012-098247号公報
【文献】特開2010-085217号公報
【文献】特開2015-143625号公報
【文献】特開2011-169658号公報
【文献】特開2006-027331号公報
【文献】特開2016-017931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1から特許文献3で提案されている立木の評価方法は、撮影や計測して取得したデータだけを用いてデータ処理を行うものであるため、取得したデータの正確性に依存しやすい。特許文献1から特許文献3には、代表エリア内の立木を実際に計測した実立木数を用いることは開示されていない。
一方、境界線測量方法に関しては、特許文献4から特許文献8には、コンパス測量と撮影データによる測量とを併用することで、コンパス測量を利用しつつ、コンパス測量の精度劣化を撮影データによる測量で補うことは開示されていない。
【0005】
本発明は、評価対象エリアに適した基準値の格子を用いて立木頂点を抽出でき、誤差の少ない立木数を算出することができる森林地域での立木の評価方法を提供することを目的とする。
また本発明は、撮影データによる測量によって正確な基準点を計測し、この基準点を利用して境界の多くはコンパス測量を行うことで、特に森林地域での境界線の測量を、高効率で高精度に行うことができる境界線測量方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の森林地域での立木の評価方法は、上空から撮影された撮影データを用いた森林地域での立木の評価方法であって、サーバーが、前記撮影データから点群データ60dを生成する点群データ生成ステップと、評価対象エリアの中の一部である代表エリアを基準値で格子に区分し、区分された前記格子内の前記点群データ60dから最高位置データを頂点として抽出する代表エリア内頂点抽出ステップと、前記代表エリア内頂点抽出ステップで抽出された前記頂点が立木頂点か否かを判定する代表エリア内立木頂点判定ステップと、前記代表エリア内立木頂点判定ステップで前記立木頂点と判定された代表エリア内立木頂点数を算出する代表エリア内立木頂点数算出ステップと、前記代表エリア内立木頂点数算出ステップで算出された前記代表エリア内立木頂点数を、前記代表エリア内の実立木数と比較する立木数比較ステップと、前記立木数比較ステップで比較した前記代表エリア内立木頂点数と前記実立木数との差が閾値を超える場合には、前記代表エリア内立木頂点数と前記実立木数との差が前記閾値内となるように前記基準値を変更する基準値変更ステップと、前記基準値変更ステップで変更した変更基準値を用いて前記評価対象エリアを前記格子に区分し、区分された前記格子内の前記点群データ60dから前記最高位置データを前記頂点として抽出する評価対象エリア内頂点抽出ステップと、前記評価対象エリア内頂点抽出ステップで抽出された前記頂点が前記立木頂点か否かを判定する評価対象エリア内立木頂点判定ステップと、前記評価対象エリア内立木頂点判定ステップで前記立木頂点と判定された評価対象エリア内立木頂点数を算出立木数として決定する算出立木数決定ステップとを有し、前記代表エリア内立木頂点判定ステップ、又は前記評価対象エリア内立木頂点判定ステップでは、抽出された前記頂点を含む前記格子内を、複数の区画に区分けし、区分けした前記区画内での前記最高位置データの高さデータ値を抽出し、前記頂点を含む前記区画に隣接するいずれか一つの前記区画の前記最高位置データの前記高さデータ値が、抽出された前記頂点の高さデータ値より大きい場合には、抽出された前記頂点を前記立木頂点でないと判定することを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の森林地域での立木の評価方法において、前記サーバーが、前記点群データ60dの中から地形が撮影された基準点60a、60bを基に、前記点群データ60dとは異なる前記評価対象エリアの地形データ60cを、前記点群データ60dに位置合わせを行う地形データ対応ステップと、前記評価対象エリア内立木頂点判定ステップで前記立木頂点と判定された前記頂点について、前記地形データ60cを基に前記立木頂点の高さを算出する立木頂点算出ステップと、前記立木頂点算出ステップで算出された前記立木頂点の前記高さを用いて材積量を算出する材積量算出ステップとを有することを特徴とする。
請求項3記載の本発明の境界線測量方法は、請求項1又は請求項2に記載の森林地域での立木の評価方法における前記評価対象エリアの特定に適した境界線測量方法において、測量対象とする境界又は前記境界の近傍であって、上空から撮影可能な位置に基準点1を設置する基準点設置ステップと、前記境界に沿った飛行経路を決定する飛行経路決定ステップと、前記飛行経路決定ステップで決定した前記飛行経路に沿って無人航空機10を飛行させる飛行ステップと、前記飛行ステップにおいて、前記無人航空機10に搭載した撮影装置11で前記基準点1を含む領域を撮影する撮影ステップと、前記撮影ステップにおける撮影時に、前記撮影装置11の撮影位置データと撮影方向データとを計測する撮影情報計測ステップと、前記撮影ステップで撮影する撮影データとともに、前記撮影情報計測ステップで計測する前記撮影位置データと前記撮影方向データとを記憶する撮影データ記憶ステップと、前記撮影データ記憶ステップで記憶した前記撮影データ、前記撮影位置データ、及び前記撮影方向データを用いて前記基準点1の座標データを確定する基準点座標確定ステップと、前記境界と前記基準点1との測量データを取得するコンパス測量ステップとを有し、前記基準点座標確定ステップで確定した前記基準点1の前記座標データと、前記コンパス測量ステップで取得する前記測量データとから境界線を確定することを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項3に記載の境界線測量方法において、前記基準点設置ステップでは、地球航法衛星システム受信装置12を用いて前記基準点1の座標データを測定し、前記飛行経路決定ステップでは、測定した前記基準点1の前記座標データを用いて前記飛行経路を決定することを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項3又は請求項4に記載の境界線測量方法において、前記コンパス測量ステップを、前記基準点設置ステップとともに行い、前記コンパス測量ステップで取得した前記測量データを、前記基準点座標確定ステップで確定した前記基準点1の前記座標データを用いて再計算して前記境界線を確定することを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項1に記載の森林地域での立木の評価方法において、前記代表エリア内立木頂点判定ステップ、又は前記評価対象エリア内立木頂点判定ステップでは、前記頂点を含む前記区画を中心にして放射状に複数の仮想線を引き、前記仮想線に沿って隣接する前記区画同士で前記最高位置データの前記高さデータ値を比較し、前記仮想線に位置する外方の前記区画の前記高さデータ値が内方の前記区画の前記高さデータ値より小さいという条件を満たす前記仮想線長さを、それぞれの仮想線に対して算出し、算出した前記仮想線長さの平均長を樹冠の半径長さLと決定し、決定した前記樹冠の前記半径長さが、設定した最少長さLmin以下、又は/及び最大長さLmax以上であれば、抽出された前記頂点を前記立木頂点でないと判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の森林地域での立木の評価方法によれば、あらかじめ代表エリア内において代表エリア内立木頂点数を算出し、算出された代表エリア内立木頂点数が代表エリア内における実立木数と一致するか否かを比較し、代表エリア内立木頂点数と実立木数とが一致するように基準値を変更することで、評価対象エリアに適した基準値の格子を用いて立木頂点を抽出できるため、誤差の少ない立木数を算出することができる。
また本発明の境界線測量方法によれば、上空から撮影可能な位置に基準点を設置し、この基準点については無人航空機で取得した撮影データを用いて正確な座標データを求め、基準点の座標データと測量データとから境界線を確定することで、特に森林地域での境界線の測量を、高効率で高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施例による森林地域での立木の評価方法の処理流れを示すフローチャート
【
図2】同森林地域での立木の評価方法の撮影データ抽出ステップで抽出した撮影データ
【
図3】同森林地域での立木の評価方法の点群データ生成ステップで生成される点群データ
【
図4】同森林地域での立木の評価方法の代表エリア内頂点抽出ステップのイメージ図
【
図5】同森林地域での立木の評価方法の地形データ対応ステップのイメージ図
【
図6】同森林地域での立木の評価方法の評価対象エリア内頂点抽出ステップのイメージ図
【
図7】本発明の一実施例による境界線測量方法を実現するための装置を示すブロック図
【
図8】同境界線測量方法の処理流れを示すフローチャート
【
図9】同境界線測量方法における境界と基準点を示す説明図
【
図10】本発明の他の実施例による境界線測量方法の処理流れを示すフローチャート
【
図11】
図1に示すステップ55及びステップ63における判定の他の方法を示す図
【
図13】立木頂点の樹冠の半径長さ内に、立木頂点が位置する場合を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による森林地域での立木の評価方法は、サーバーが、撮影データから点群データを生成する点群データ生成ステップと、評価対象エリアの中の一部である代表エリアを基準値で格子に区分し、区分された格子内の点群データから最高位置データを頂点として抽出する代表エリア内頂点抽出ステップと、代表エリア内頂点抽出ステップで抽出された頂点が立木頂点か否かを判定する代表エリア内立木頂点判定ステップと、代表エリア内立木頂点判定ステップで立木頂点と判定された代表エリア内立木頂点数を算出する代表エリア内立木頂点数算出ステップと、代表エリア内立木頂点数算出ステップで算出された代表エリア内立木頂点数を、代表エリア内の実立木数と比較する立木数比較ステップと、立木数比較ステップで比較した代表エリア内立木頂点数と実立木数との差が閾値を超える場合には、代表エリア内立木頂点数と実立木数との差が閾値内となるように基準値を変更する基準値変更ステップと、基準値変更ステップで変更した変更基準値を用いて評価対象エリアを格子に区分し、区分された格子内の点群データから最高位置データを頂点として抽出する評価対象エリア内頂点抽出ステップと、評価対象エリア内頂点抽出ステップで抽出された頂点が立木頂点か否かを判定する評価対象エリア内立木頂点判定ステップと、評価対象エリア内立木頂点判定ステップで立木頂点と判定された評価対象エリア内立木頂点数を算出立木数として決定する算出立木数決定ステップとを有し、代表エリア内立木頂点判定ステップ、又は評価対象エリア内立木頂点判定ステップでは、抽出された頂点を含む格子内を、複数の区画に区分けし、区分けした区画内での最高位置データの高さデータ値を抽出し、頂点を含む区画に隣接するいずれか一つの区画の最高位置データの高さデータ値が、抽出された頂点の高さデータ値より大きい場合には、抽出された頂点を立木頂点でないと判定するものである。本実施の形態によれば、あらかじめ代表エリア内において代表エリア内立木頂点数を算出し、算出された代表エリア内立木頂点数が代表エリア内における実立木数と一致するか否かを比較し、代表エリア内立木頂点数と実立木数とが一致するように基準値を変更することで、評価対象エリアに適した基準値の格子を用いて立木頂点を抽出できるため、誤差の少ない立木数を算出することができる。また、本実施の形態によれば、代表エリア内立木頂点判定ステップ、又は評価対象エリア内立木頂点判定ステップにおける判定精度を高めることができる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による森林地域での立木の評価方法において、サーバーが、点群データの中から地形が撮影された基準点を基に、点群データとは異なる評価対象エリアの地形データを、点群データに位置合わせを行う地形データ対応ステップと、評価対象エリア内立木頂点判定ステップで立木頂点と判定された頂点について、地形データを基に立木頂点の高さを算出する立木頂点算出ステップと、立木頂点算出ステップで算出された立木頂点の高さを用いて材積量を算出する材積量算出ステップとを有するものである。本実施の形態によれば、点群データとは異なる評価対象エリアの地形データを用いることで立木の地表からの高さを算出することができ、立木の高さを用いて材積量を算出することができる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第1又は第2の実施の形態による森林地域での立木の評価方法における評価対象エリアの特定に適した境界線測量方法において、測量対象とする境界又は境界の近傍であって、上空から撮影可能な位置に基準点を設置する基準点設置ステップと、境界に沿った飛行経路を決定する飛行経路決定ステップと、飛行経路決定ステップで決定した飛行経路に沿って無人航空機を飛行させる飛行ステップと、飛行ステップにおいて、無人航空機に搭載した撮影装置で基準点を含む領域を撮影する撮影ステップと、撮影ステップにおける撮影時に、撮影装置の撮影位置データと撮影方向データとを計測する撮影情報計測ステップと、撮影ステップで撮影する撮影データとともに、撮影情報計測ステップで計測する撮影位置データと撮影方向データとを記憶する撮影データ記憶ステップと、撮影データ記憶ステップで記憶した撮影データ、撮影位置データ、及び撮影方向データを用いて基準点の座標データを確定する基準点座標確定ステップと、境界と基準点との測量データを取得するコンパス測量ステップとを有し、基準点座標確定ステップで確定した基準点の座標データと、コンパス測量ステップで取得する測量データとから境界線を確定するものである。本実施の形態によれば、上空から撮影可能な位置に基準点を設置し、この基準点については無人航空機で取得した撮影データを用いて正確な座標データを求め、基準点の座標データと測量データとから境界線を確定することで、特に森林地域での境界線の測量を、高効率で高精度に行うことができる。
【0012】
本発明の第4の実施の形態は、第3の実施の形態による境界線測量方法において、基準点設置ステップでは、地球航法衛星システム受信装置を用いて基準点の座標データを測定し、飛行経路決定ステップでは、測定した基準点の座標データを用いて飛行経路を決定するものである。本実施の形態によれば、基準点に沿って、より低空での飛行経路を決定することができる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態は、第3又は第4の実施の形態による境界線測量方法において、コンパス測量ステップを、基準点設置ステップとともに行い、コンパス測量ステップで取得した測量データを、基準点座標確定ステップで確定した基準点の座標データを用いて再計算して境界線を確定するものである。本実施の形態によれば、基準点の設置時に測量を行うため、測量場所に2回入る必要が無く、作業性が向上する。
【0014】
本発明の第6の実施の形態は、第1の実施の形態による森林地域での立木の評価方法において、代表エリア内立木頂点判定ステップ、又は評価対象エリア内立木頂点判定ステップでは、頂点を含む区画を中心にして放射状に複数の仮想線を引き、仮想線に沿って隣接する区画同士で最高位置データの高さデータ値を比較し、仮想線に位置する外方の区画の高さデータ値が内方の区画の高さデータ値より小さいという条件を満たす仮想線長さを、それぞれの仮想線に対して算出し、算出した仮想線長さの平均長を樹冠の半径長さと決定し、決定した樹冠の半径長さが、設定した最少長さ以下、又は/及び最大長さ以上であれば、抽出された頂点を立木頂点でないと判定するものである。本実施の形態によれば、代表エリア内立木頂点判定ステップ、又は評価対象エリア内立木頂点判定ステップにおける判定精度を高めることができる。
【実施例】
【0015】
以下本発明の実施例について図面とともに説明する。
図1は本実施例による森林地域での立木の評価方法の処理流れを示すフローチャート、
図2は撮影データ抽出ステップで抽出した撮影データ、
図3は点群データ生成ステップで生成される点群データ、
図4は代表エリア内頂点抽出ステップのイメージ図、
図5は地形データ対応ステップのイメージ図、
図6は評価対象エリア内頂点抽出ステップのイメージ図である。
【0016】
サーバーは、上空から撮影された撮影データから、例えば境界線で囲まれた評価対象エリアの撮影データを抽出する(ステップ51)。撮影データが静止画データであれば、異なる位置から撮影した複数の撮影データを抽出する。
図2は、撮影データ抽出ステップ51で抽出した撮影データを示している。
【0017】
サーバーは、撮影データ抽出ステップ51で抽出した撮影データから点群データを生成する(ステップ52)。点群データ生成ステップ52で生成される点群データは三次元データである。
図3は、点群データ生成ステップ52で生成される点群データを示している。
評価対象エリアの中の一部のエリアを代表エリアとして特定する。代表エリアは、実際の立木の数を現場にてカウントするため、カウントしやすいエリアを特定する。また、代表エリアは、評価対象エリアの中で立木状況が標準的なエリアを特定する。
代表エリアの特定は、例えば道路や空き地に面している、又は評価対象エリアの周辺に位置していることを条件にサーバーが特定することもできる。
また、標準的なエリアか否かについても、サーバーが画像データから抽出される特徴事項を基に判断することができる。
【0018】
サーバーは、代表エリアを基準値で格子に区分し(ステップ53)、区分された格子内の点群データから最高位置データを頂点として抽出する(ステップ54)。
図4は、代表エリア内頂点抽出ステップ54のイメージ図である。
図4(a)は代表エリアの特定イメージ図、
図4(b)はステップ53における代表エリアを基準値で格子に区分したイメージ図、
図4(c)はステップ54における最高位置データを頂点として特定したイメージ図である。
【0019】
サーバーは、代表エリア内頂点抽出ステップ54で抽出された頂点が立木頂点か否かを判定する(ステップ55)。
代表エリア内立木頂点判定ステップ55では、例えば、最高位置データの高さデータ値が明らかに立木の高さではないと判断されるものを除外する。
サーバーは、代表エリア内立木頂点判定ステップ55で立木頂点と判定された代表エリア内立木頂点数を算出する(ステップ56)。
サーバーは、代表エリア内立木頂点数算出ステップ56で算出された代表エリア内立木頂点数を、代表エリア内の実立木数と比較する(ステップ57)。
ここで立木数比較ステップ57で比較対象とする代表エリア内の実立木数は、現場にて調査によりカウントし、サーバーに記憶させる。なお、代表エリア内の実立木数は、現場における調査に代えて、画像データを基に目視によってカウントしてもよい。
サーバーは、立木数比較ステップ57で比較した代表エリア内立木頂点数と実立木数との差が閾値を超える場合には、代表エリア内立木頂点数と実立木数との差が閾値内となるように基準値を変更する(ステップ58)。
基準値変更ステップ58では、例えば実立木数が20本、実立木数の10%を閾値とすると、閾値は±2本となり、代表エリア内立木頂点数が18本~22本であれば、基準値の変更を行わない。代表エリア内立木頂点数が14本である場合、すなわち代表エリア内立木頂点数が実立木数より少ない場合には、基準値を小さい値に変更する。また、代表エリア内立木頂点数が25本である場合、すなわち代表エリア内立木頂点数が実立木数より多い場合には、基準値を大きい値に変更する。
基準値変更ステップ58では、基準値を変更した後、代表エリア内頂点抽出ステップ54から立木数比較ステップ57を繰り返し行い、エリア内立木頂点数と実立木数との差が閾値内となるまで行う。
【0020】
サーバーは、撮影データ抽出ステップ51で抽出した点群データの中から地形が撮影された基準点を特定し(ステップ59)、特定した基準点を基に、点群データとは異なる評価対象エリアの地形データを、点群データに位置合わせを行う(ステップ60)。
地形データ対応ステップ60で用いる地形データには、例えば国土地理院が提供する基盤地図情報(数値標高モデル)を用いることができる。
図5は、地形データ対応ステップ60のイメージ図である。
図5に示すように、地形が撮影された基準点60a、60bを基にして、地形データ60cを、点群データ60dに位置合わせする。なお、位置合わせには、基準点60a、60bに代えて、所定範囲の基準エリアを用いてもよい。
【0021】
サーバーは、基準値変更ステップ58で変更した変更基準値を用いて評価対象エリアを格子に区分し(ステップ61)、区分された格子内の点群データ60cから最高位置データを頂点として抽出する(ステップ62)。
図6は、評価対象エリア内頂点抽出ステップ62のイメージ図である。
サーバーは、評価対象エリア内頂点抽出ステップ62で抽出された頂点が立木頂点か否かを判定する(ステップ63)。評価対象エリア内立木頂点判定ステップ63での判定は、代表エリア内立木頂点判定ステップ55と同様である。
サーバーは、評価対象エリア内立木頂点判定ステップ63で立木頂点と判定された頂点について、地形データ60cを基に立木頂点の高さを算出する(ステップ64)。
サーバーは、評価対象エリア内立木頂点判定ステップ63で立木頂点と判定された評価対象エリア内立木頂点数を算出立木数として決定する(ステップ65)。
サーバーは、立木頂点算出ステップ64で地表からのそれぞれの立木の高さが算出されることで、材積量を算出することができる(ステップ66)。
このように、算出立木数決定ステップ65で立木数が算出され、材積量算出ステップ66で材積量が算出されることで、森林地域での立木の評価を行うことができる。
なお、本実施例で評価対象とする立木には、杉や檜のような円錐状の針葉樹が適している。
【0022】
図7は本実施例による境界線測量方法を実現するための装置を示すブロック図である。
図7に示すように、本実施例の境界線測量方法には、無人航空機10と、コンパス測量装置20と、処理装置30とを用いる。
【0023】
無人航空機10には、撮影装置11と、地球航法衛星システム受信装置12と、撮影位置計測装置13と、撮影方向計測装置14とが取り付けられている。
無人航空機10は、ドローンとも呼ばれる航空機であり、無人航空機10には、複数の回転翼を備えたマルチコプタータイプのヘリコプターが適している。
撮影装置11は、静止画像を撮影するものでも、動画像を撮影するものでもよい。撮影装置11では、基準点1を含む領域を撮影する。一つの基準点1に対して異なる飛行位置から複数枚の静止画像を取得する。
地球航法衛星システム受信装置12は、GPS、GLONASS、ガリレオなどのGNSSを用いて、無人航空機10の現在位置及び飛行高さを測定し、無人航空機10は、地球航法衛星システム受信装置12での測定データを用いて、あらかじめ設定している飛行経路で飛行する。
撮影位置計測装置13は、撮影装置11の撮影位置を計測する。撮影位置計測装置13には、地球航法衛星システム受信装置12を用いることができる。
撮影方向計測装置14は、撮影装置11のレンズ中心の光軸方向を計測する。撮影方向計測装置14は、無人航空機10に対する光軸方向を角度センサなどで計測し、無人航空機10の飛行方向は、地球航法衛星システム受信装置12による測定データやジャイロセンサを用いて計測できる。無人航空機10の飛行方向と無人航空機10に対する光軸方向とから撮影装置11の撮影方向を計測することができる。
【0024】
コンパス測量装置20は、方位と高低角とを計測する装置であり、デジタル方位計によるデジタルコンパスが好ましく、レーザー距離計を更に備えた装置が好ましい。コンパス測量装置20では、基準点1となる基準杭と、境界に沿って設置された境界杭2とを測量する。
【0025】
処理装置30は、飛行経路決定部31と、撮影データ記憶部32と、基準点座標データ算出部33と、測量データ記憶部34と、境界線算出部35とを有している。
飛行経路決定部31では、無人航空機10の飛行経路を決定する。飛行経路は、無人航空機10が境界に沿って、又は基準点1に沿って飛行するように決定される。
撮影データ記憶部32では、撮影装置11で撮影された撮影データとともに、撮影位置計測装置13で計測する撮影時における撮影位置データと、撮影方向計測装置14で計測する撮影時における撮影方向データとを記憶する。従って、それぞれの撮影データは、撮影時の撮影位置データと撮影時における撮影方向データとともに記憶される。
基準点座標データ算出部33では、撮影データ記憶部32に記憶した撮影データ、撮影位置データ、及び撮影方向データを用いて基準点1の座標データを算出する。
測量データ記憶部34では、コンパス測量装置20で取得した基準点1と境界杭2との測量データが記憶される。
境界線算出部35では、基準点座標データ算出部33で算出した基準点1の座標データと、測量データ記憶部34に記憶された測量データとから境界線が算出される。
【0026】
図8は同境界線測量方法の処理流れを示すフローチャートである。
基準点設置ステップ1では、測量対象とする境界又は境界の近傍であって、上空から撮影可能な位置に基準点1を設置する。
基準点設置ステップ1における基準点1の設置時に、基準点1の座標データを測定することが好ましい(ステップ2)。基準点1の座標データは、GPS、GLONASS、ガリレオなどのGNSSを用いた地球航法衛星システム受信装置12で測定することができる。
ステップ2で測定した基準点1の座標データは、記憶部に記憶し(ステップ3)、基準点1の座標データは、飛行経路決定ステップ4における飛行経路の決定に用いることができる。
【0027】
飛行経路決定ステップ4では、境界又は基準点1に沿った飛行経路を決定する。
無人航空機10は、飛行経路決定ステップ4で決定した飛行経路に沿って飛行する(飛行ステップ5)。
撮影ステップ6は、無人航空機10の飛行中に行われる。撮影ステップ6では、無人航空機10に搭載した撮影装置11で基準点1を含む領域を撮影する。撮影は、一つの基準点1に対して複数位置から複数枚の撮影データを取得する。
撮影ステップ6における撮影時に、撮影装置11の撮影位置データと撮影方向データとを計測する(撮影情報計測ステップ7)。
撮影データ記憶ステップ8では、撮影ステップ6で撮影する撮影データとともに、撮影情報計測ステップ7で計測する撮影位置データと撮影方向データとを記憶する。なお、撮影データ記憶ステップ8で記憶する撮影データと撮影位置データと撮影方向データとは、無人航空機10の飛行終了後に処理装置30の撮影データ記憶部32に転送すればよい。
【0028】
基準点座標確定ステップ9では、撮影データ記憶ステップ8で記憶した撮影データ、撮影位置データ、及び撮影方向データを用いて、基準点座標データ算出部33で基準点1の座標データを算出して確定する。
確定した基準点1の座標データは記憶され(ステップ10)、コンパス測量ステップ11における測量時に用いられる。
【0029】
コンパス測量ステップ11では、確定した基準点1の座標データを用いて、基準点1と境界杭2との測量データを取得する。
本実施例のように、あらかじめ基準点1の座標データを確定させ、この基準点1の座標データを用いてコンパス測量を行う場合には、コンパス測量ステップ11によって境界線を確定させることができる(ステップ12)。
【0030】
図9は同境界線測量方法における境界と基準点を示す説明図である。
図9に示すように、境界杭2は境界に沿って設置し、基準点1は樹木などの障害物が無く上空から撮影可能な位置で、境界に近い位置に設置する。基準点1は、樹木などの障害物が無い位置では、境界に設置することが好ましい。
基準点1は、境界又は境界近傍に、可能な限り多く設置することで、コンパス測量による精度劣化を少なくすることができる。
【0031】
以上のように、本実施例によれば、上空から撮影可能な位置に基準点1を設置し、この基準点1については無人航空機10で取得した撮影データを用いて正確な座標データを求め、基準点1の座標データと測量データとから境界線を確定することで、特に森林地域での境界線の測量を、高効率で高精度に行うことができる。
また、本実施例によれば、基準点設置ステップ1では、地球航法衛星システム受信装置12を用いて基準点1の座標データを測定し、飛行経路決定ステップ4では、測定した基準点1の座標データを用いて飛行経路を決定することで、基準点1に沿って、より低空での飛行経路を決定することができる。
【0032】
図10は他の実施例による境界線測量方法の処理流れを示すフローチャートである。なお、
図8と同一処理については同一符号を付して説明を省略する。
本実施例では、基準点設置ステップ1における基準点1の設置時に、境界杭2を設置し(ステップ21)、基準点1と境界杭2との測量データを取得する(コンパス測量ステップ11)。
コンパス測量ステップ11で取得した基準点1と境界杭2との測量データは一旦記憶し(ステップ22)、基準点座標確定ステップ9で基準点1の座標データを確定した後に、測量データの再計算を行い(ステップ23)、境界線を確定する(ステップ12)。
【0033】
本実施例のように、コンパス測量ステップ11を、基準点設置ステップ1とともに行い、コンパス測量ステップ11で取得した測量データを、基準点座標確定ステップ9で確定した基準点1の座標データを用いて再計算して境界線を確定することで、基準点1の設置時に測量を行うため、測量場所に2回入る必要が無く、作業性が向上する。
【0034】
図11を用いて他の実施例について説明する。
図11は、
図1に示すステップ55及びステップ63における判定の他の方法を示す図である。
図11では、隣接する2つの格子XY10、XY20を示し、それぞれの格子XY10、XY20内を、複数の区画に区割りしている。区画の中の数値は、その区画の中での最高位置データの高さデータ値を示している。
格子XY10の最高位置データは、(X13、Y13)の区画にあり、格子XY20の最高位置データは、(X24、Y21)の区画にあることを示している。
格子XY10については、区画(X13、Y13)に隣接する8つの区画(X12、Y12)、(X12、Y13)、(X12、Y14)、(X13、Y12)、(X13、Y14)、(X14、Y12)、(X14、Y13)、(X14、Y14)の最高位置データの高さデータ値は、「24」「23」「25」「24」「24」「23」「23」「24」であり、区画(X13、Y13)の最高位置データの高さデータ値「26」よりも全て低い値となっている。このように、格子XY10の最高位置データの高さデータ値が、隣接する8方向のいずれの最高位置データの高さデータ値よりも大きい(高い)場合には、格子XY10における最高位置データは立木頂点であると判断する。
【0035】
これに対し、格子XY20については、区画(X24、Y21)に隣接する8つの区画(X13、Y15)、(X14、Y15)、(X15、Y15)、(X23、Y21)、(X25、Y21)、(X23、Y22)、(X24、Y22)、(X25、Y22)の最高位置データの高さデータ値は、「22」「22」「20」「19」「18」「18」「18」「16」であり、区画(X13、Y15)、(X14、Y15)の最高位置データの高さデータ値が「22」であり、区画(X24、Y21)の最高位置データの高さデータ値「20」よりも高い値となっている。
このように、格子XY20の最高位置データの高さデータ値が、隣接する8方向のいずれかの最高位置データの高さデータ値よりも小さい(低い)場合には、格子XY20における最高位置データは立木頂点ではないと判定する。
【0036】
以上のように、抽出された頂点を含む格子XY10、20内を、複数の区画に区分けし、区分けした区画内での最高位置データの高さデータ値を抽出し、頂点を含む区画に隣接するいずれか一つの区画の最高位置データの高さデータ値が、抽出された頂点の高さデータ値より大きい場合には、抽出された頂点を立木頂点でないと判定することで、代表エリア内立木頂点判定ステップ(ステップ55)、又は評価対象エリア内立木頂点判定ステップ(ステップ63)における判定精度を高めることができる。
この判定方法は、ステップ55及びステップ63における判定に加えて、又はステップ55及びステップ63における判定に代えて用いることができる。
【0037】
図12を用いて更に他の実施例について説明する。
図12は、樹冠の算出方法を示す図である。
図12では、格子XY30の最高位置データの高さデータ値が「26」であることを示し、格子XY30内を、複数の区画に区割りしている。区画の中の数値は、その区画の中での最高位置データの高さデータ値を示している。
格子XY30の最高位置データが存在する位置の区画(X35、Y35)を中心にして、放射状に複数の仮想線を引き、この仮想線に沿って隣接する区画同士で最高位置データの高さデータ値を比較する。この仮想線に位置する外方の区画の高さデータ値が内方の区画の高さデータ値より小さいという条件を満たす仮想線長さを算出する。そして、算出した仮想線長さの平均長を樹冠の半径長さ(樹冠底面半径)Lと決定する。
【0038】
例えば、区画(X35、Y35)から区画(X35、Y31)の方向への仮想線は、区画(X35、Y34)の高さデータ値「24」は区画(X35、Y35)の高さデータ値「26」より小さく、区画(X35、Y33)の高さデータ値「22」は区画(X35、Y34)の高さデータ値「24」より小さく、区画(X35、Y32)の高さデータ値「18」は区画(X35、Y33)の高さデータ値「22」より小さいが、区画(X35、Y31)の高さデータ値「20」は区画(X35、Y32)の高さデータ値「18」より大きいため、仮想線長さは3となる。
また、区画(X35、Y35)から区画(X35、Y39)の方向への仮想線は、区画(X35、Y36)の高さデータ値「24」は区画(X35、Y35)の高さデータ値「26」より小さく、区画(X35、Y37)の高さデータ値「16」は区画(X35、Y36)の高さデータ値「24」より小さいが、区画(X35、Y38)の高さデータ値「18」は区画(X35、Y37)の高さデータ値「16」より大きいため、仮想線長さは2となる。
また、区画(X35、Y35)から区画(X31、Y31)の方向への仮想線は、区画(X34、Y34)の高さデータ値「24」は区画(X35、Y35)の高さデータ値「26」より小さく、区画(X33、Y33)の高さデータ値「23」は区画(X34、Y34)の高さデータ値「24」より小さいが、区画(X32、Y32)の高さデータ値「24」は区画(X33、Y33)の高さデータ値「23」より大きいため、仮想線長さは2となる。
【0039】
図12(a)で区画中の数値に○を付けたものが、外方の区画の高さデータ値が内方の区画の高さデータ値より小さいという条件を満たす区画である。
図12(b)に、8方向の仮想線長さを示す。4方向の仮想線長さが2、4方向の仮想線長さが3であるため、8方向の平均仮想線長さは2.5となる。区割りを1mとしていた場合には、平均仮想線長さは2.5mであるため、樹冠の半径長さLは2.5mと決定することができる。
そして、決定した樹冠の半径長さLが、設定した最少長さLmin以下、又は/及び最大長さLmax以上であれば、立木頂点では無いと判定することができる。
【0040】
以上のように、抽出された頂点を含む格子XY30内を、複数の区画に区分けし、区分けした区画内での最高位置データの高さデータ値を抽出し、頂点を含む区画を中心にして放射状に複数の仮想線を引き、仮想線に沿って隣接する区画同士で最高位置データの高さデータ値を比較し、仮想線に位置する外方の区画の高さデータ値が内方の区画の高さデータ値より小さいという条件を満たす仮想線長さを、それぞれの仮想線に対して算出し、算出した仮想線長さの平均長を樹冠の半径長さLと決定し、決定した樹冠の半径長さLが、設定した最少長さ以下、又は/及び最大長さLmax以上であれば、抽出された頂点を立木頂点でないと判定するすることで、代表エリア内立木頂点判定ステップ(ステップ55)、又は評価対象エリア内立木頂点判定ステップ(ステップ63)における判定精度を高めることができる。
この判定方法は、ステップ55及びステップ63における判定に加えて、又はステップ55及びステップ63における判定に代えて用いることができる。
また、決定した樹冠の半径長さLを用いて材積量を算出することもできる。
図1に示すステップ66では、地表からのそれぞれの立木の高さを用いて材積量を算出したが、立木の高さと樹冠の半径長さLを用いて材積量を算出することで、更に精度よく材積量を算出することができる。
【0041】
なお、立木頂点から樹冠下端までの樹冠高さHaは、仮想線長さとともに決定することができる。
例えば、区画(X35、Y35)から区画(X35、Y31)の方向への仮想線長さは、区画(X35、Y32)までであり、区画(X35、Y32)の高さデータ値は「18」である。区画(X35、Y35)の高さデータ値は「26」であるため、立木頂点から樹冠下端までの樹冠高さHaは、「8」である。
同様に、区画(X35、Y35)から区画(X35、Y39)の方向への仮想線長さは、区画(X35、Y37)までであり、区画(X35、Y37)の高さデータ値は「16」であるため、立木頂点から樹冠下端までの樹冠高さHaは、「10」である。
図12(b)に、8方向について、立木頂点から樹冠下端までの樹冠高さHaを示す。8方向について立木頂点から樹冠下端までの樹冠高さHaは、「8」「6」「5」「8」「10」「8」「6」「3」であるため、立木頂点から樹冠下端までの平均樹冠高さHaは、「8.75」である。
例えば、
図1に示すステップ64において、地形データ60cを基に算出した立木頂点の高さが10mであったとすると、地盤から樹冠底面までの高さHbは、1.25m(10m-8.75m)となる。
そして算出した地盤から樹冠底面までの高さHbが、設定した最少高さHmin以下であれば、立木頂点では無いと判定することができる。
このように、算出した地盤から樹冠底面までの高さHbを用いた、立木頂点か否かの判定は、ステップ55及びステップ63における判定に加えて、又はステップ55及びステップ63における判定に代えて用いることができる。
【0042】
図13を用いて更に他の実施例について説明する。
図13では、立木頂点Wの樹冠の半径長さL内に、立木頂点Zが位置する場合を示している。このように、立木頂点Wの樹冠の半径長さL内に、立木頂点Zが位置する場合には、立木頂点では無いと判定することができる。
このように、立木頂点Wの樹冠の半径長さLを用いた、立木頂点か否かの判定は、ステップ55及びステップ63における判定に加えて、又はステップ55及びステップ63における判定に代えて用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、傾斜や起伏が大きく、樹木などの障害物の多い、森林での測量に適している。
【符号の説明】
【0044】
1 基準点
2 境界杭
10 無人航空機
11 撮影装置
12 地球航法衛星システム受信装置
13 撮影位置計測装置
14 撮影方向計測装置
20 コンパス測量装置
30 処理装置
31 飛行経路決定部
32 撮影データ記憶部
33 基準点座標データ算出部
34 測量データ記憶部
35 境界線算出部
60a、60b 基準点
60c 地形データ
60d 点群データ
Ha 樹冠高さ
Hb 地盤から樹冠底面までの高さ
L 樹冠の半径長さ
XY10、XY20、XY30 格子
W、Z 立木頂点