(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】石灰化した心臓弁尖を治療するための経カテーテル装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/22 20060101AFI20230620BHJP
【FI】
A61B17/22 528
(21)【出願番号】P 2020515758
(86)(22)【出願日】2018-08-28
(86)【国際出願番号】 IB2018056553
(87)【国際公開番号】W WO2019053538
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2017/055477
(32)【優先日】2017-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(73)【特許権者】
【識別番号】520085578
【氏名又は名称】アオルティクラブ エスアールエル
【氏名又は名称原語表記】AORTICLAB SRL
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】パスキノ, エンリコ
(72)【発明者】
【氏名】ボネッティ, フランセスコ
(72)【発明者】
【氏名】オスタ, フランコ
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0135828(US,A1)
【文献】特表2011-528963(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0253358(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 ― 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の外側シャフト(5)と、前記外側シャフト(5)内に摺動自在に収容された中空の内側シャフト(4)と、前記内側シャフト(4)内に摺動自在に収容された軸部本体(6)とを備える、石灰化した生来の心臓弁尖を治療するための経カテーテル装置において
、前記装置が、
前記軸部本体(6)の遠位端部に配置された交連部デブリードマンシステム(7)
であって、生来の交連部に挿入さ
れ前記生来の交連部と位置合わせされるようになっている少なくとも2つの半径方向に拡張可能なアーム(7)から作製され
た交連部デブリードマンシステム(7)と、
前記少なくとも2つの半径方向に拡張可能なアーム(7)とは別体である弁尖支持体(8)と、
前記外側シャフト(5)と前記内側シャフト(4)との間に摺動自在に収容された弁尖デブリーダ(9)と、
を備え、前記弁尖支持体(8)および前記弁尖デブリーダ(9)が、半径方向に拡張可能であり、前記弁尖の両側に配置されるようになっている、経カテーテル装置。
【請求項2】
拡張された際に互いの間に120°の角度を形成する3つの拡張可能なアーム(7)を備える、請求項1に記載の経カテーテル装置。
【請求項3】
前記弁尖デブリーダ(9)が振動素子(11)を備える、請求項
1または2に記載の経カテーテル装置。
【請求項4】
前記振動素子(11)が圧電素子である、請求項
3に記載の経カテーテル装置。
【請求項5】
前記
弁尖デブリーダ(9)が、それぞれ閉ループからなる複数のアーム(10)から本質的に作製されている、請求項
1~
4のいずれか一項に記載の経カテーテル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石灰化した心臓弁尖、特に大動脈弁尖を治療するための経カテーテル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大動脈硬化症とも呼ばれる大動脈石灰化とは、心臓の大動脈弁にカルシウム沈着物が蓄積することである。
【0003】
これは多くの場合、心臓の上から聴診器をあてると容易に聞こえ得る心雑音をもたらす。もっとも、大動脈石灰化は通常、大動脈弁の機能に大きな影響を与えない。
【0004】
しかし、場合によっては、異栄養性のカルシウム沈着物により弁尖が厚くなり、大動脈弁の開口部の狭窄を引き起こす。これは弁を通る血流を損ない、呼吸困難、胸痛または心臓発作を引き起こす。医師はそのような狭窄を大動脈弁狭窄と呼んでいる。
【0005】
大動脈石灰化は、典型的には、高齢者に発生する。しかし、大動脈石灰化が若年成人に発生する場合、出生時に腎不全などの他の疾病に関連して存在する大動脈弁欠損(二尖(bicuspidia))に関連していることが多い。心臓の超音波診断(心エコー検査)は、大動脈石灰化の重症度を決定し、弁プロテーゼを用いた生来の弁の置換術を進める必要性について医師に指標を提供することもできる。
【0006】
現時点で、大動脈弁の石灰化に対する特定の治療法は存在しない。一般的な治療法には、心疾患がさらに進行するのを監視することが含まれる。また、コレステロール値を確認して、生来の大動脈弁の石灰化の進行を予防するためにコレステロールを低下させる薬剤の必要性が決定される。
【0007】
弁が重度に狭窄すると、大動脈弁置換術が必要になる場合がある。
【0008】
大動脈弁開口面積は、心臓カテーテル法とほぼ同じ方法で導入されるバルーンカテーテル(バルーン弁形成術)を用いて開口または拡大することができる。
【0009】
バルーン弁形成術では、典型的には、大動脈弁の面積がわずかに増加する。したがって、重大な大動脈弁狭窄を有する患者であれば、この処置により一時的な改善をもたらすことができる。
【0010】
残念なことに、これらの弁のほとんどは、6カ月から18カ月の間に狭窄する。したがって、バルーン弁形成術は、大動脈弁置換術の候補ではない患者の症状を一時的に緩和する短期的な手段として有用である。
【0011】
人工股関節置換術などの緊急の非心臓手術を必要とする患者であれば、手術前に大動脈弁形成術から恩恵を受ける可能性がある。弁形成術は、心機能と非心臓手術の生存率とを改善する。大動脈弁形成術はまた、心室機能が不良な高齢患者では、大動脈弁置換術への架け橋としても有用であり得る。バルーン弁形成術は、心室筋機能を一時的に改善し、ひいては中期生存率を改善する可能性がある。
【0012】
弁形成術に応答して心室機能が改善した患者であれば、大動脈弁置換術からさらに多くの恩恵を受けることを期待することができる。これらの高リスク高齢患者に対する大動脈弁形成術では、死亡率(5%)および重篤な合併症率(5%)が、手術候補者に対する大動脈弁置換術と同等である。
【0013】
このデータにもかかわらず、単独でのバルーン弁形成術は、その臨床結果が現時点では安定していないため、もはや実施されていない。弁形成術用バルーンの作用は粗雑であり、主に弁の交連部に作用する。形状的な開口面積の増加は主に機械的拡張によるものであり、カルシウムデブリードマン(calcium debridement)は実際には生じておらず、弁尖は硬いままである。
【0014】
今日、バルーン弁形成術は、あらゆる経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)に関連して、依然として広く使用されている。バルーン弁形成術は、自己拡張型またはバルーン拡張型バイオプロテーゼの展開を最適化するための準備処置として意図されている。弁形成術の準備作業とは、開口面積を機械的に増加させることである。それにもかかわらず、弁尖の石灰化の程度が非対称であり、弁形成術では均一な開口が残らないことが非常に多い。そのため、TAVIの展開は最善ではない結果をもたらし得る。TAVIの展開の主な臨床的帰結は弁傍漏出の顕著な発生率である。
【発明の概要】
【0015】
特許請求の範囲で定義されるように、本発明は、狭窄および石灰化した大動脈弁のための代替治療システムを提供する。後に分かるように、本明細書に記載される実施形態は、現在実施されている大動脈弁置換術よりも、石灰化した大動脈弁の微細かつ忍容性の高い治療を提供する。
【0016】
本発明の目的の装置は、バルーン弁形成術よりもはるかに効果的かつ耐久性のある、狭窄した大動脈弁の治療を提供することを意図している。
【0017】
本発明の装置は、石灰化した生来の弁尖からの選択的なカルシウムデブリードマンを提供することができる。実際、装置の1つの作用部分は、弁開口を狭窄する病的異栄養性石灰化の結果として多くの場合融合する弁交連部を修復するように設計される。本発明の好ましい実施形態では、装置の第2の作用部分は、例えば流入(心室)側および流出(大動脈)側から各生来の弁尖を包含するか、各生来の弁尖を挟んで、弁尖の表面上に存在する石灰性増殖物の断片化によるカルシウムデブリードマンを実施するように向けられる。
【0018】
生来の弁のデブリードマン処置は、好ましくは、単独でまたは組み合わせて使用される1つ以上のエネルギー源の適用に基づく。好適には、装置は、外因性の石灰性形成物を摩耗させ、断片化し、処置の終了時に、生来の弁尖の柔軟性を高め、開口面積を増加させ、弁内外の圧力勾配を低下させ、結果として患者の生活の質を向上させることができる局所的な空洞形成現象を生じ得る。必要に応じて、装置構造によって、二酸化炭素(CO2)または他の生体適合性ガスのマイクロバブルの流れが生成されて、空洞形成活性を増強する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】生来の弁が狭窄し石灰化した大動脈根。石灰性増殖物3は、生来の弁尖の大動脈側に主に存在し、大動脈根に浸潤している。
【
図2】生来の弁を通してガイドワイヤ1を配置した後、弁を越えて装置の内側中空シャフト4を配置する。
【
図3】内側中空シャフト4は、外側中空シャフト5の内側に部分的に後退しており、交連拡張器およびデブリーダ7が露出している。
【
図4】120°で3つのアームを有する交連デブリーダ7が開かれている。
【
図5】3つの大動脈弁尖支持体8が内側中空シャフト4から開かれている。これらは、デブリードマン処置の間、弁尖を維持する機能を有する。
【
図6】3つの大動脈弁尖デブリーダ9が外側中空シャフト5から開かれている。これらは、生来の弁尖上に存在する石灰性沈着物の活発なデブリードマンの機能を有する。
【
図7】大動脈弁尖支持体8は、内側中空シャフト4と軸部本体6との間の間隙に後退している。
【
図8】大動脈弁尖デブリーダ9は、外側中空シャフト5と内側中空シャフト4との間の間隙に後退している。
【
図9】装置は狭窄した大動脈弁の内側に配置される。交連デブリーダ7は依然として閉位置にある。
【
図10】3D心エコー検査ガイダンスによって交連デブリーダ7が配向/回転されて、弁の生来の交連部と位置合わせされる。
【
図11】交連デブリーダ7が開かれている。その機能は、石灰性沈着物によって融合された生来の線維性交連部をデブリードマンする開裂を見出すことである。
【
図12】大動脈弁尖デブリーダ9が外側中空シャフト5から開かれている。3つの大動脈弁尖デブリーダ9は、生来の弁尖の腹部の内側に着座し、石灰化組織と接触するように設計されている。作用機構は、空洞形成状態が得られるようにエネルギー源を供給することに基づく。本実施形態では、デブリーダのアームは、マイクロ圧電素子11を保持している。デブリーダアーム10には、マイクロ圧電シリンダまたはプレートが搭載されている。空洞形成によって石灰性組織の浸食機構を増幅するために、同じデブリーダアームをCO
2ガスを運ぶ微小孔を有するワイヤまたは管とすることができる。
【
図13】デブリーダアーム10の形状の実施形態である。装置の他の構成要素は、視覚化を簡単にするために省略されている。
【
図14】デブリーダアーム10の形状の別の実施形態である。装置の他の構成要素は、視覚化を簡単にするために省略されている。
【
図15】デブリーダアーム10の形状のさらに別の実施形態である。装置の他の構成要素は、視覚化を簡単にするために省略されている。
【
図16】デブリーダアーム10の形状のさらに別の実施形態である。装置の他の構成要素は、視覚化を簡単にするために省略されている。
【
図17】デブリーダアーム10の形状のさらに別の実施形態である。装置の他の構成要素は、視覚化を簡単にするために省略されている。
【
図18】デブリーダアーム10の形状のさらに別の実施形態である。装置の他の構成要素は、視覚化を簡単にするために省略されている。
【
図19】デブリーダアーム10の形状のさらに別の実施形態である。装置の他の構成要素は、視覚化を簡単にするために省略されている。
【
図20】デブリーダアーム10の形状のさらに別の実施形態である。装置の他の構成要素は、視覚化を簡単にするために省略されている。
【
図21】旋回機構が示されている。デブリーダのアーム10の動きは、空洞形成によって作り出されるデブリードマン効果を最大化することを目的としている。
【
図22】2つの同軸管(外管14および内管16)は、デブリーダアーム10の構造を特徴付ける。圧電材料15が中間空間を満たす。この圧電材料15は、セラミック、またはPVDF(ポリフッ化ビニリデン)などのポリマーのように固体であり得る。ルーメン17の内部では、冷却液(例えば、冷水)または冷却ガス(例えば、CO
2)を循環させて、必要に応じて、処置中の過度の温度上昇を回避することができる。
【
図23】
図22で報告した通りであるが、デブリーダアーム10は、上記と同じ構造を維持しているにもかかわらず、表面に穿孔された一連の微小孔12を示している。これらの微小孔12の目的は、空洞形成機構を強化することを目的としてCO
2ガスの注入を可能にすることである。
【
図24】別の実施形態では、デブリードマンのバルーン19に取り付けられた圧電素子18を用いてデブリードマンアーム10を実現することができる。この図では、バルーンは収縮状態で示されている。
【
図25】
図24と同じであるが、デブリーダバルーン19が放射性薬用液によって膨張されている。この構成では、圧電素子が弁尖の腹部の石灰性組織とさらによく接触する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、いずれも大動脈弁の治療に言及する例示された例を用いて、以下でさらによく理解されるであろう。
【0021】
当然ながら、本発明はそれらの例に限定されない。
【0022】
[図中で使用されている参照符号]
1-ガイドワイヤ。
2-装置の遠位先端。
3-弁尖上および大動脈根の内壁上に存在する異栄養性石灰化(バルサルバの膨隆)。
4-装置の内側中空シャフト。
5-装置の外側中空シャフト。
6-ガイドワイヤ1を収容する金属製の軸部本体。
7-軸部本体6に統合された交連拡張器およびデブリーダ。120°に配置された3つのアームが、外側に配置されたブレードを保持する。
8-大動脈弁尖支持体。120°に配置された3つのアーム。
9-大動脈弁尖デブリーダ。120°に配置された3つのアーム。
10-デブリーダアーム。通常、弁尖ごとに2つのアーム(ワイヤまたは管)があり、弁尖の腹部の内側に適合する特定の形状を作成する。
11-デブリーダアーム10上に搭載されたマイクロ圧電素子。
12-CO2ガスを運ぶ交連デブリーダ7または大動脈弁尖デブリーダアーム9(管を有する実施形態)の微小孔。
13-柔軟性と、弁尖の腹部に対する優れた順応性とをもたらすデブリーダアーム10表面の微小切開部。切開部は、管の厚さ全体を切断することなく、表面的なものでなければならない。
14-デブリーダアーム10の外管。この層は、正電荷または負電荷に接続することができる。
15-圧電材料(セラミック、ポリマーなど)を特徴とするデブリーダアーム10の中間層
16-デブリーダアーム10の内管。この層は、正電荷または負電荷に接続することができる。
17-内管16の内部ルーメン。このルーメンの内部では、冷却液(例えば、水)または冷却ガス(例えば、CO2)を循環させて、必要に応じて、処置中の過度の温度上昇を回避することができる。
18-デブリーダバルーンに搭載されたマイクロ圧電素子、およびそれらの相対的な電気接続。
19-圧電素子を支持するデブリーダバルーン。
【0023】
[処置]
生来の弁尖上の異栄養性の石灰性形成物のデブリードマン処置は、石灰化した弁尖にエネルギーを放出することにより達成され、それにより、局所的な空洞形成状態を誘導する。空洞形成現象は、蒸気のマイクロバブルを生成する。生成されたマイクロバブルの内破は、石灰性の小塊および増殖物を割ることができる大量の運動エネルギーを放出している。その結果、弁開口面積が増加し、弁尖の柔軟性が高まるため、圧力勾配が低下し、患者の臨床状態が改善される。
【0024】
装置は、大腿動脈の穿刺に基づく統合された介入処置を採用して挿入される。装置は、先に配置されたガイドワイヤを介して、上行大動脈に到達し、生来の大動脈弁を越えるまで動脈血流に押し込まれる(
図1)。
【0025】
装置の外側中空シャフト5が後退し、内側中空シャフト4が露出する(
図2)。内側中空シャフト4も後退し、軸部本体6の交連デブリーダ7部分の構造が露出する(
図3)。
【0026】
この段階で、交連デブリーダ7が拡張され、生来の弁が拡張される(
図4)。120°に配置された、デブリーダの3つのアームは、機械的作用と、デブリーダによって組織に供給されるエネルギーとの結果、石灰化した交連部を再び開く傾向がある(
図9、
図10、
図11)。この実施形態では、好ましいエネルギー源の例は、CO
2マイクロバブルの放出に関連する高周波であり得るが、他のエネルギー源もそのような目的に適している可能性がある。
【0027】
次いで、大動脈弁尖支持体8が内側中空シャフト4から引き出され(
図5)、処置中に生来の弁尖を維持することを意図して、生来の弁尖に対応して、その下に配置される。
【0028】
図6では、内側中空シャフト4と外側中空シャフト5との間の間隙に収容された大動脈弁尖デブリーダ9が引き出され、石灰化した弁尖の腹部に配置される。
【0029】
したがって、交連デブリーダ7が開いている間に、デブリードマン処置が実施される(
図6)。優れた治療効果を得るために、石灰性の小塊および増殖物を破壊する際に、弁尖デブリーダ9の旋回運動を行うべきである(
図21)。デブリードマン処置は数分間(約1から15~20分)続き、その間に生来の弁は開位置に留まり、機能不全の重大な問題、および塞栓デブリのリスクを生じる。この重大な血行力学的状態を克服するために、一時的な弁機能、および塞栓フィルタ保護を予測すべきである。
【0030】
処置の最後に、軸部本体6の壁で交連デブリーダ7が閉じられ、大動脈弁尖支持体8が内側中空シャフト4の内側に後退する(
図7)。
【0031】
続いて、
図8に記載されているように、大動脈弁尖デブリーダ9も、外側中空シャフト5の内側に後退する。
【0032】
最後の操作は、先端2に到達するまで外側中空シャフト5を前進させ、装置を完全に閉じることである。次いで、ガイドワイヤ1と一緒に装置が患者の動脈から取り出される。
【0033】
[発明の詳細な説明]
このデブリードマン装置は、独立して適用することができる2つの主な機能を有する。第1のものは弁の生来の交連部を再び開くことにあり、第2のものは生来の石灰化した弁尖に特定の柔軟性を取り戻すことを目的としている。
【0034】
特に大動脈弁の交連融合が巨大である複雑なTAVI処置では、交連デブリードマン処置は間違いなく重要である。これらの場合、交連部を再び開くことなく、および/または弁尖の柔軟性を高めることなくTAVIを展開すると、結果として1つ以上の遅延した弁尖と弁周囲の漏出とを伴う補綴の非対称性のリスクが高くなる。
【0035】
交連部でのデブリードマン処置は、約120°に配置された3つの交連デブリーダ7による機械的作用を適用して達成される。交連デブリーダ7の外面に配置された3つのブレードは、最初の切断機械的作用を提供することができる。完全に効果的であるために、切断作用(定圧、または高周波でのパルス)は、CO
2の存在の有無にかかわらず、高周波などの別のエネルギー源と関連することが好ましいが、これに限定されるものではない。切断とCO
2を用いた高周波または超音波作用との組合せにより、交連部に対するデブリードマン効果が最大化され、空洞形成状態が達成される。空洞形成効果は電磁エネルギー源がCO
2と組み合わされた際に最大化され、その結果、多数のマイクロバブルが内破し、石灰化組織を侵食する衝撃波を放出する。交連デブリードマンは、
図9、
図10、
図11でさらに詳細に説明されている。液体CO
2の注入は、交連デブリーダ7を冷却し、組織の過熱を回避する効果も有する。
【0036】
別の例では、石灰化組織に向かって外側に配置された3つの交連デブリーダ7ブレードは、ミネラル化組織に対するデブリードマン作用の侵攻性を高めることを目的として、生理食塩水の局所高圧マイクロジェットを供給することができる。
【0037】
別の例では、3つの交連デブリーダ7は、側方拡散でレーザファイバを用いて実現され得る。また、この場合、レーザビームの放出により、石灰化した弁尖組織に対する侵食効果を増強することを目的として、CO2マイクロバブルの放出に関連し得る空洞形成状態が生じる。
【0038】
本発明の概念の別の重要な目的は、TAVI留置術を最適化することを目的として弁尖の柔軟性を回復することに加えて、TAVIの適応症を有しない患者に対して大動脈弁機能の緩和改善を提供することである。
【0039】
交連デブリーダ7について上述した実施形態は、大動脈弁尖デブリーダ9およびそれらのデブリーダアーム10に大部分が適用可能である。
【0040】
推奨されないブレードの適用がこのデブリードマン機能には危険すぎることを除いて、他の実施形態は完全に適用可能である。
【0041】
図12には、デブリーダアーム10の形状を有する3つの大動脈弁尖デブリーダ9の例が示されている。この実施形態では、3つの大動脈弁尖デブリーダ9は、各大動脈弁尖の腹部に適合するように成形されている。これらは、特定の数の圧電素子11を保持するデブリーダアーム10を特徴とする。前述のように、デブリーダアーム10は、ワイヤであってよいが、本実施形態で説明されるように、空洞形成効果の増強を達成するために、CO
2を分配することを目的として微小孔12が穿孔された可撓性金属管(ステンレス鋼、ニチノールなど)である。
【0042】
さらに、操作者は、大動脈弁尖デブリーダ9に旋回作用を適用して(
図21)、さらに大きな弁尖表面を対象とし、優れた効果を得ることができる。
【0043】
図13から
図20では、大動脈弁尖デブリーダ9の様々な形状構成に関する他の様々な実施形態が示されている。
【0044】
さらなる実施形態では、上記のあらゆる形状構成に記載されたデブリーダアーム10は、
図22および
図23に示されるような同軸形状を用いて実現することができる。
【0045】
2本の同軸管が、このデブリーダアーム10の構造を特徴付けている。外管14(ステンレス鋼、ニチノール、ナノチューブを有する導電性ポリマーなど)は、必要な柔軟性を提供することを目的として、管全体の厚さを貫通しない周囲微小切開部13を支持する。これらの微小切開部13は、例えば、全周を覆わない、それらの間の距離を変化させるなど、あらゆる可変実施形態に適用することができる。同軸内管16(ステンレス鋼、ニチノール、ナノチューブを有する導電性ポリマーなど)は、この実施形態では、圧電材料15を満たすことができるように(
図22)、外管14との間に空間間隙を作り出す。この圧電材料15は、セラミック、またはPVDF(ポリフッ化ビニリデン)などのポリマーのように固体であり得る。圧電材料15によって誘発される強い振動は、デブリードマン作用を誘発する。圧電材料は、電源に接続された内管16および外管14によって活性化される。処置の間、内管16の内部ルーメン17内に冷却流体を循環させて、低温を維持することができる。
図23に示す別の実施形態では、デブリーダアーム10には、CO
2を分配して空洞形成効果を増強することを目的として多数の微小孔12が穿孔されている。
【0046】
生来の大動脈弁に対するデブリードマン作用は、大動脈弁尖腹部の内部にバルーンの形状の大動脈弁尖デブリーダ9を適合させるさらに異なる方法で達成することができる。バルーンデブリーダ19の壁には、それらの相対的な電気的接続を有するマイクロ圧電素子18が埋め込まれている。このデブリードマン溶液は、
図24および
図25に示されており、デブリーダバルーンは、それぞれ収縮および膨張状態にある。デブリーダバルーン19は、治療処置中にX線可視性が必要な場合、単純な冷生理食塩水または放射性薬用液によって膨張させることができる。