(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】応力による影響を受け易いMEMSをパッケージングするための構造及び方法
(51)【国際特許分類】
B81C 3/00 20060101AFI20230620BHJP
B81B 7/02 20060101ALI20230620BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20230620BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20230620BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20230620BHJP
H01L 25/065 20230101ALI20230620BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20230620BHJP
【FI】
B81C3/00
B81B7/02
H01L23/30 B
H01L25/08 Y
(21)【出願番号】P 2021166547
(22)【出願日】2021-10-11
(62)【分割の表示】P 2018536857の分割
【原出願日】2017-01-13
【審査請求日】2021-11-02
(32)【優先日】2016-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】カート ぺーター ワクトゥラ
(72)【発明者】
【氏名】吉野 誠
(72)【発明者】
【氏名】黒田 歩
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン イー グッドリン
(72)【発明者】
【氏名】カレン キルムス
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン クック
(72)【発明者】
【氏名】矢野 元気
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート ヤコブセン
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0067667(US,A1)
【文献】特開2015-227870(JP,A)
【文献】特開平09-289269(JP,A)
【文献】特開昭58-107657(JP,A)
【文献】特表2009-503888(JP,A)
【文献】実開昭59-042043(JP,U)
【文献】実開昭56-112942(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2008/0197514(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0207207(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B81C 3/00
B81B 7/02
H01L 23/29
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路(IC)パッケージであって、
基板と、
シリコーン化合物により前記基板の表面に取り付けられるマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)デバイスと、
第1の弾性を有する第1の材料であって、前記MEMSデバイスを覆う、前記第1の材料と、
第2の弾性を有する第2の材料であって、前記第1の材料と前記基板の一部とを覆う、前記第2の材料と、
前記基板の表面上のポリイミドの閉鎖構造であって、前記MEMSデバイスを囲む、前記閉鎖構造と、
を含
み、
前記第1の材料が前記第2の材料に対する非接着性の面を含む、ICパッケージ。
【請求項2】
請求項1に記載のICパッケージであって、
前記基板が半導体チップである、ICパッケージ。
【請求項3】
請求項2に記載のICパッケージであって、
前記MEMSデバイスが前記半導体チップに電気的に接続される、ICパッケージ。
【請求項4】
請求項2に記載のICパッケージであって、
前記半導体チップがパッドに取り付けられて前記パッドを囲むリードに電気的に接続される、ICパッケージ。
【請求項5】
請求項4に記載のICパッケージであって、
前記半導体チップが
エポキシベースの重合体化合物によって前記パッドに取り付けられる、ICパッケージ。
【請求項6】
請求項1に記載のICパッケージであって、
前記第2の材料が前記基板の表面の一部を覆う、ICパッケージ。
【請求項7】
請求項1に記載のICパッケージであって、
前記第1の材料がシリコーンである、ICパッケージ。
【請求項8】
請求項1に記載のICパッケージであって、
前記第2の材料がモールディング化合物である、ICパッケージ。
【請求項9】
請求項1に記載のICパッケージであって、
前記第1の材料が10メガパスカルより小さい弾性を有する、ICパッケージ。
【請求項10】
請求項1に記載のICパッケージであって、
前記第1の材料が前記閉鎖構造の内部で前記基板の表面の一部に制約される、ICパッケージ。
【請求項11】
請求項1に記載のICパッケージであって、
前記MEMSデバイスが応力による影響を受け易い、ICパッケージ。
【請求項12】
請求項1に記載のICパッケージであって、
前記閉鎖構造が円形
又は矩形の形状を有する、ICパッケージ。
【請求項13】
集積回路(IC)パッケージであって、
リードとパッドとを含む基板と、
重合体化合物を介して前記パッドに取り付けられる半導体チップであって、第1及び第2の端子を含み、前記第2の端子が前記リードにワイヤボンドされる、前記半導体チップと、
シリコーン化合物の層により前記半導体チップの表面に取り付けられるマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)デバイスであって、前記第1の端子に電気的に接続される端子を含む、前記MEMSデバイスと、
前記MEMSデバイスと前記半導体チップの表面の一部とを覆う第1のシリコーン材料と、
前記第1のシリコーン材料の表面を覆う第2のシリコーン材料と、
前記第2のシリコーン材料の表面と前記半導体チップの一部とを覆うモールディング化合物
であって、前記第2のシリコーン材料に対して非接着性である、前記モールディング化合物と、
を含む、ICパッケージ。
【請求項14】
請求項13に記載のICパッケージであって、
前記第1及び第2のシリコーン材料が10メガパスカルより小さい
弾性係数を有する低
弾性係数シリコーン材料である、ICパッケージ。
【請求項15】
請求項13に記載のICパッケージであって、
前記モールディング化合物がエポキシベースの熱硬化性モールディング配合物である、ICパッケージ。
【請求項16】
請求項13に記載のICパッケージであって、
前記MEMSデバイスが圧力に高感度である、ICパッケージ。
【請求項17】
請求項13に記載のICパッケージであって、
前記半導体チップの表面上のポリイミドの閉鎖構造であって、前記MEMSデバイスと前記第1の端子とを囲む、前記閉鎖構造を更に含む、ICパッケージ。
【請求項18】
請求項17に記載のICパッケージであって、
前記閉鎖構造が円形
又は矩形の形状を有する、ICパッケージ。
【請求項19】
請求項17に記載のICパッケージであって、
前記第1のシリコーン材料が前記閉鎖構造の内部の前記半導体チップの表面の一部に対して制約される、ICパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、概して半導体デバイス及びプロセスに関し、更に特定して言えば、電子デバイスチップ上にスタックされる応力による影響を受け易いマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)のためのパッケージの構造及び製造方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)デバイスと総称される様々な製品は、マイクロメートルからミリメートルスケールの、小さく軽量なデバイスであり、これらは、センサ又は機械的可動部品、及び時には、可動電力供給及び制御を有し得、又はこれらは、機械的、熱的、音響的、又は光学的エネルギーに感受性のある部品を有し得る。MEMSは、機械的、熱的、化学的、放射性、磁気的、及び生物学的な量及び入力を感知し、出力として信号を生成するように開発されてきている。このような感受性のある部品及び可動部品のため、MEMSは、物理的及び大気的保護の必要性を有する。従って、MEMSは、基板上又は基板内に置かれ、また、雰囲気的及び電気的外乱から及び機械的及び熱的応力からMEMSを遮蔽する必要がある筐体又はパッケージにより囲まれる必要がある。
【0003】
MEMSデバイスは、機械的要素、センサ、アクチュエータ、及び電子機器を共通基板上で集積する。MEMSの製造アプローチは、マイクロエレクトロニクスデバイスに用いられるものに類似するバッチ製造手法を用いることを意図している。そのため、MEMSは、良好に制御された集積回路技術を利用することを試みる一方で、製造コストを低くするための大量生産や材料消費最小化の利点を得る。MEMSの機械的可動部品及び電気的能動部品は、半導体チップ上の電子集積回路(IC)のプロセスフローを用いて共に製造される。
【0004】
小型化、集積化、及びコスト削減の技術トレンドに続いて、最近開発された基板及びボードは、電力管理、電気的性能、及び応用分野を増大させる一方で、ボード面積、厚み、及びフットプリントを低減するために、チップ及びパッケージを埋め込み及び相互接続し得る。その例には、集積されたボードの、オートモーティブ市場、ワイヤレス製品、及び産業応用例への浸透が含まれる。
【0005】
例として、ウェハレベルパッケージ、受動部品、パワーチップ、スタックされ、ボンディングされたチップ、ワイヤレスモジュール、パワーモジュール、縮小されたエリア及び縮小された厚みを必要とする応用例のための概して能動及び受動のデバイスを埋め込むために、集積ボードが成功裏に適用されてきている。
【発明の概要】
【0006】
記載される例において、パッケージングされたマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)デバイスが、リードを備える基板のパッドに取り付けられる回路要素チップと、低弾性シリコーン化合物の層によりチップ表面に垂直に取り付けられるMEMSとを含む。チップ表面上で、MEMSデバイスは、シリコーン化合物に親和性のない表面を備えるポリイミドリングにより囲まれる。硬化された低弾性シリコーン材料のドーム形状の塊(glob)が、MEMSとMEMS端子ボンディングワイヤのスパンを覆う。塊は、ポリイミドリング内部のチップ表面エリアに制約され、エポキシベースのモールディング化合物に対して非接着性の表面を有する。重合体モールディング化合物のパッケージが、MEMSと、チップと、基板の一部とを埋め込む塊の垂直アッセンブリを封止し、モールディング化合物は、塊表面には接着しないが、全ての他の表面に接着する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】基板に取り付けられる回路要素チップ上の、応力による影響を受け易いMEMSデバイス垂直アッセンブリを含む集積された重合体パッケージデバイスの断面を示し、MEMSは保護低弾性材料により囲まれる。
【0008】
【
図2】例示の実施例に従った半導体ウェハ製造におけるプロセスフローの図を示す。
【0009】
【
図3】例示の実施例に従った、半導体アッセンブリ工場におけるプロセスフローの一部を示す。
【0010】
【
図4】例示の実施例に従った、半導体アッセンブリ工場におけるプロセスフローの別の部分を示す。
【0011】
【
図5】例示の実施例に従った、半導体アッセンブリ工場におけるプロセスフローの更に別の部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
電子業界の一般的なトレンドは、システムにおいて必要とされる構成要素をより少なくより小さくすることである。このトレンドでは、システムにおける構成要素の数が減らされ、製品が消費するスペース及び動作電力が小さいが、それでも、改善された電気的特性及び一層高い信頼性を提供する場合に、技術的及び市場利点が認められる。半導体デバイスの場合、部品を統合又はなくすことによる小型化、及び外乱を吸収又は遮蔽することによる保護を促進するように、低コストパッケージング技術が実現され得る場合に、特定の利点が得られ得る。
【0013】
マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)では、MEMSデバイスが、既に製造において既存の電子回路デバイス上にスタックされ得、同じデバイスパッケージが用いられ得る場合に、特定の性能及び市場利点を得ることができる。各ケースにおいて解決されるべき問題は、想定中のMEMSによって監視されるべき特定のパラメータが影響を受けないままであり、パッケージが、監視されるべきパラメータに対する外乱から新たなデバイスを効率的に遮蔽するように、スタッキング及びパッケージングのプロセスを実施するための要件である。
【0014】
機械的及び熱的応力に高度に感受性のあるMEMSでは、機械的及び熱的応力外乱に対するデバイス集積及び保護の問題に対する解決策として、応力による影響を受け易いMEMSデバイスを保護するために、プロセスフローが、低弾性材料の固有の適用及び処理工程の固有のセットを有する一方で、それでも製造において実践される標準の低コストパッケージアッセンブリ材料及びアッセンブリ方法を用いる。
【0015】
固有の材料及び処理工程を、クワッドフラットノーリード(QFN)パッケージなどの標準的なモールディングされたパッケージをアセンブルするために用いられる材料セット及びプロセスフローに統合することは、回路要素チップ上に堆積される親和性のない表面特性を備えるポリイミドリング、全ての側で六面体形状のMEMSデバイスを囲むように制御された条件下でこれらの化合物をディスペンスするための低弾性シリコーン化合物及び方法、及び、重合体パッケージング化合物への制御された構成要素接着を含む。
【0016】
図1は、端子106を備える半導体チップ101を含むデバイス100の一例を図示する。チップ101の表面の一部が、MEMSデバイス150の取り付けに適している。この例では、MEMSは応力感受性を有する。例示のチップ101は、正方形形状とし得、2.5mmなど、数ミリメートルの辺長を有し得、充分に機能性のある集積回路を含み得る。
図1において、チップ101は、好ましくは接着性エポキシベースの重合体化合物120を用いて、リードフレームのパッド110に取り付けられる。チップ101の端子106は、金属性リードフレームのそれぞれのリード111にボンディングワイヤ181によって接続され、好ましいワイヤ金属は銅合金であるが、代替として金又はアルミニウムが用いられ得る。MEMSの垂直アッセンブリ、チップ、及びリードフレームチップ101の一部が、好ましくはエポキシベースのモールディング化合物でつくられる絶縁性パッケージ190に埋め込まれる。
【0017】
図1の例示のデバイスにおいて、リードフレームは、クワッドフラットノーリード(QFN)に属するか、又はスモールアウトラインノーリード(SON)ファミリである。これらのリードフレームは、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄ニッケル合金、及びKovarを含む群から選択されるベース金属の平坦なシートでつくられることが好ましい。多くのデバイスに対し、リードフレームベース金属の平行な表面は、プラスチック化合物、特にモールディング化合物に対する接着のために強い親和性を生み出すように処理される。一例として、銅酸化物表面がモールディング化合物に対する良好な接着を示すことが知られているので、銅リードフレームの表面は酸化され得る。他の方法には、表面のプラズマ処理(本願において後述する)、又はベース金属表面上の他の金属の薄層の堆積が含まれる。銅リードフレームの一例として、錫のめっきされた層が用いられてきており、又はニッケルの層(約0.5~2.0μmの厚み)の後、パラジウムの層(約0.01~0.1μmの厚み)が続き、その後任意選択で金の最外層(0.003~0.009μmの厚み)が続く。
【0018】
他の実施例が、細長いリードを備える、カンチレバー状リードを備える、又はリードの平面からオフセットされた平面において一つ又は複数のパッドを有するフレームを備えるリードフレームなど、チップ取り付けパッドを備える他の種類のリードフレームを用い得る。更に他の実施例が、導電性層で交互にされる絶縁性材料でつくられたラミネートされた基板を用い得る。これらの基板は、一つ又は複数のチップを取り付けるために適したエリア、及びスティッチボンディングワイヤに適した導電性接続を有し得る。
【0019】
図1で図示するように、チップ101の一つの表面は、エポキシベースの化合物120によりリードフレームパッド110に取り付けられ、反対のチップ表面は、化合物140を用いてMEMSデバイス150を垂直に取り付けるために適した直径151のエリアを含む。しかしながら、2GPaより大きい弾性を有する重合体取り付け化合物120とは対照的に、化合物140は、10MPa未満の、比較して非常に低い弾性を有するシリコーン化合物でつくられる。
【0020】
一例として、化合物140は、Dow Corning Corporation(米国ミシガン州ミッドランド、コーポレートセンター)より市販されているシリコーン化合物であり得る。化合物は更に、低粘性及び揺変性の挙動により特徴付けられ得、そのため、それが、妨害される場合弱い組成を示し、そのままであるとき強い挙動を示す。材料の弾性は、印加される応力(又は圧力)に対するその歪み応答を特徴付けるので、化合物140は、非常に従順な機械的特性を有する。低弾性材料は、応力を送らず、むしろ、応力を分布させ及び吸収するので、この特徴は、応力による影響を受け易いMEMSを保護するために必須である。従って、MEMSなど、応力による影響を受け易いデバイスの側に適用されるとき、低弾性材料は、覆われた側からの外部応力に対してこのデバイスを保護し得る。材料140の応力保護特性は、MEMS端子(下記参照)をワイヤボンディングするために高められた温度が必要とされる間に生じるシリコーン重合サイクルを介して保たれる必要がある。
【0021】
半導体デバイスに関連して外部応力に対して全ての側で応力による影響を受け易い六面体形状のMEMSを保護するため、応力吸収及び応力分配材料の周りの保護膜は、半導体製品に関連して機能を実施するために適切な厚みを有する必要がある。一例として、こういった材料は、MEMSの半導体デバイスの一部への取り付けを可能にする厚みを有する必要がある。別の例として、こういった材料は、ボンディングワイヤのアーチ状のスパンの組み込みを可能にするための厚みを有する必要がある。
【0022】
図1は、シリコーン取り付け層の直径151が、ポリイミド材料のリング130の内径131内に置かれることを示す。しかしながら、チップ101の端子106はリング130の外に残る。リング130はポリイミド化合物でつくられる。本明細書においてこれ以降に記載するように、リング130の、円形、矩形、又は任意の他の閉鎖構造としての構成は、半導体(好ましくは、シリコン)ウェハ上に堆積されるポリイミド層からパターニングされ、半導体ウェハは、集積回路(IC)を備える複数のチップを含む。パターニングの後、プロセスサイクルにおけるポリイミド表面エネルギーを低減させることにより、ポリイミドリングは、非可溶性、及びシリコーン材料に対して反発性とされ、このプロセスサイクルには、第1硬化サイクル、その後続くアッシングプロセス、及び、その後続く第2硬化サイクルが含まれる。シリコーン反発性表面特性を有する、ポリイミド以外の材料も用いられ得る。
【0023】
ポリイミドリングが反発性にされた後、ICチップはウェハからシンギュレートされる。その後、各チップが、
図1に示すような金属性リードフレームのパッド110になど、基板のパッドに取り付けられ得る。取り付け層120に用いられる接着剤は、エポキシベースの重合体配合物であることが好ましい。
【0024】
図1の例において、応力による影響を受け易いMEMS150は、その取り付けが、シリコーンリング130の直径131内部となるように、低弾性シリコーン層140によりICチップ101上に垂直にスタックされ、層140は、チップ101の方向からの応力に対してMEMS150を保護する。MEMS取り付けの後、MEMS150の端子が、ボンディングワイヤ180を用いてチップ101のコンタクトパッド105に接続され得る。パッド105は、シリコーンリング130の直径131の内部に位置する。その後、チップ端子106が、ボンディングワイヤ181を用いて基板コネクタ(リードフレームリード111など)に接続される。
【0025】
図1で図示するように、MEMS150は塊160によって囲まれ、塊160は、ボンディングワイヤ180及びパッド105も覆い、従って、ドーム形状の構成を有する。塊160は低弾性シリコーン材料、好ましくは層140と同じシリコーン材料、でつくられる。一例として、塊160のシリコーンは、Dow Corning Corporationから市販されているシリコーンであり得る。シリコーン材料は、封止化合物として選択されている重合体モールディング配合物に対して疎水性及び非接着性特性を有するように選択される。シリコーン材料の粘度、弾性、及び揺変性の指標は、塊160が正確な量でディスペンスされ得、塊160がポリイミドリング130内部の表面エリアに制約され、リングを超えて外に出ないように選択される。
【0026】
ディスペンスプロセスの後、塊160のシリコーン化合物は、硬化プロセスにおいて重合される。その後、塊160は、六面体形状のMEMSデバイスの取り付けられていない5つの側、及びその接続ワイヤボンドを囲む。塊160は、略半球の形状を有し得る。そのため、取り付け材料の低弾性シリコーン化合物と共に、MEMSデバイスの全ての6つの側は、塊表面に到達する外部応力を弱めること、分配すること、及び吸収することにより、如何なる応力からもMEMSを保護するように動作し得る低弾性材料により囲まれる。
【0027】
基板110上に搭載される回路チップ101上にスタックされるMEMS150を含むデバイスは、堅く及び強いパッケージ内にある必要がある。
図1の実施例は、QFN/SON製品ファミリに属するデバイス100のためのパッケージを形成する封止材料190を示す。他の実施例は異なる製品ファミリに属し得る。パッケージ及びリードフレームの実際の構成とは関係なく、パッケージ材料190は、MEMS150のオペレーションに影響を及ぼしてはいけない。従って、
図1の応力による影響を受け易いMEMSに対し、この要件は、パッケージ材料190が、MEMS150を囲む塊160を除き、(剥離を防止するため)内部にパッケージングされる全ての部品に対して、強く接着する必要があることを意味する。2つの方法がこの目標を達成しており、異なるプロセスフローを本明細書においてこれ以降に記載する。
【0028】
図1は、表面上に層170を備える塊160の表面160aを示す。第1のプロセスフロー(
図3及び
図4に記載される)に基づいて、表面160aは、プラズマエッチングによりアクティベートされており、その後、硬化された低弾性シリコーン化合物を含む層170により覆われる。パッケージング化合物190は、硬化された(及びそのため、ディアクティベートされた)シリコーン化合物でつくられた層170に接着しない。第2のプロセスフロー(
図3及び
図5に記載される)に基づいて、表面160aは、硬化された(及びそのためディアクティベートされた)低弾性シリコーンを構成し、これは、パッケージング化合物190に接着せず、硬化されたエポキシ化合物を含む層170により覆われる。エポキシ化合物のパッケージング化合物190は、層170に接着し、最終的に層170にマージされ、非接着性の硬化されたシリコーン表面160aに面する。
【0029】
要約すると、これらの方法のいずれか一つにより、パッケージング化合物190(好ましくは、モールディング化合物)は、硬化された塊160に接着せず、そのため、外部応力を塊160内に、及び応力による影響を受け易いMEMS150に伝えることができない。従って、MEMS150は、外部応力により妨害されずに動作し得る。
【0030】
別の実施例は、半導体回路要素チップ上に垂直にスタックされる、応力による影響を受け易いマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)のための、共通パッケージを製造するための方法である。この方法をプロセスフローとして説明し、このプロセスフローは、半導体ウェハ工場において実施されるプロセス(
図2)、及び半導体アッセンブリ工場において実施されるプロセス(
図3及び
図4、又は
図3及び
図5)を含む。
【0031】
この方法は、シリコンウェハを提供することによりウェハ工場において開始し、シリコンウェハは、複数の集積回路(IC)チップを含み、ICを製造するためのフロントエンドプロセスを完了している。その意図は、ディスクリートICチップを、応力による影響を受け易いMEMSと結合するため、及び、IC及びMEMSが妨害されずに動作し得るようにそれらを実行される共通パッケージにまとめるためである。プロセスフローは、
図2に列挙されるプロセスで開始する。
【0032】
プロセスフローの第1のステップ201において、集積回路(IC)を備える複数のチップを含む半導体ウェハが提供される。プロセス202において、ポリイミド材料の層が、チップの表面の上に被覆される。その後、各チップ上にポリイミドリングを形成するようにポリイミド層がパターニングされ、ポリイミドリングは、アセンブルされるべきMEMSデバイスの最大線形寸法より大きな内径を有する。パターニングプロセスでは、フォトリソグラフィ法が用いられ、これは、フォトレジスト層をスピンオンすること、フォトレジストをマスキングすること、マスク保護された層を照射に曝すこと、及び層を現像することの順次プロセスを用いる。
【0033】
パターニングの後、第1の時間の間ポリイミド化合物を硬化させるプロセス、その後、ポリイミド化合物をアッシングするプロセス、及び第2の時間の間ポリイミド化合物を最終的に硬化させるプロセス、をポリイミド材料に連続的に受けさせることにより、ポリイミドリングの表面エネルギーがプロセス203において低減される。アッシングプロセスは、酸素プラズマ及び高温に関与し、代替として、水素プラズマが用いられ得る。低減された表面エネルギーは、ポリイミドリングを、疎水性に、及び低粘性及び低弾性シリコーン化合物に対して反発性にし、ポリイミドリング内部に堆積されたシリコーン材料はポリイミドリングを超えて外に出ない。プロセス204においてICチップがウェハからシンギュレートされる。
【0034】
プロセス301において、ディスクリートチップは、アッセンブリ工場において基板のそれぞれのアッセンブリパッドに取り付けられ得る。アッセンブリパッドは、リードフレームのチップパッドであり得、又は代替として、ラミネートされた基板のアッセンブリパッドであり得る。好ましくは、チップは、エポキシベースの化合物を用いてパッドに取り付けられ、エポキシベースの化合物は、後のプロセスにおいて(ワイヤボンディングの間など)高められた温度で硬化され得る。
【0035】
MEMSデバイスを回路要素チップに取り付けるため、及び、単一の、及び好ましくはICチップ及びMEMSの組み合わせの小型のパッケージのみを用いるため、MEMSはICチップに垂直に取り付けられる必要がある。MEMSデバイスをICチップ上に垂直にアセンブルするプロセス302において、MEMSは、低弾性シリコーン材料の層を用いてそれぞれのポリイミドリング内部のチップ表面に取り付けられる。このような材料は、Dow Corning Corporation(ミシガン州ミッドランド)などから市販されている。低弾性材料では、約20μm~30μmの間の取り付け層厚みが、外部応力に対する保護のために充分であり得る。好ましくは、取り付け層のシリコーンは、ワイヤボンディングプロセスに進む前に重合される。
【0036】
MEMSデバイスの端子の、リング内部のチップ表面上のそれぞれのコンタクトパッドへのワイヤボンディングプロセスでは、金又は銅を含むワイヤが用いられ得る。ボンディングオペレーションの間、ワイヤは、通常、MEMS端子からチップコンタクトパッドまで弧を有して掛けられる(spanned)。
【0037】
MEMSのためのワイヤボンディングプロセスに関連して、回路要素チップの端子106を基板のそれぞれのコンタクトパッドにワイヤボンディングするプロセスが実施され得る。好ましくは、ボンディングワイヤは銅でつくられる。
図1において、チップボンディングワイヤは181と示される。
【0038】
プロセス303において、MEMSデバイス及びMEMSボンディングワイヤの上に低弾性シリコーン材料をディスペンスすることによって、塊が形成される一方で、塊をポリイミドリング内部の表面エリアに制約する。ボンディングワイヤの弧に起因して、塊はドーム形状の構成を有する。塊のシリコーン材料は、疎水性であり、熱硬化性モールディング化合物に対して非接着性である。その低粘性及び揺変性の指標に起因して、それは、正確な量でディスペンスされ得る。プロセス304において、シリコーン塊が硬化される。
【0039】
図1の例示の実施例のMEMSが、応力による影響を受け易く、応力の伝送に対して保護される必要があるので、また、MEMSが、回路要素チップを備える同じ全体的なパッケージを共有するので、アッセンブリを封止するパッケージング化合物は、MEMSを覆う塊の表面に接着してはならず、パッケージ内部の全ての他の表面に信頼性を持って接着する必要がある。この二分する要件は、2つの方法論によって達成され得る。
【0040】
第1の方法論は
図4において要約されている。モールディング化合物に対する良好な接着を達成するため、プロセス401は、全ての表面をプラズマエッチに晒す。プラズマは、所定の時間の間のその気体混合物及びパワーに関与し、好ましくは、冷却された表面上で動作する。プラズマは、吸着された膜から、特に水単分子層からの表面の徹底的な洗浄を達成し、それにより、電気的接合を開放する。また、プラズマは、表面の幾らかの粗化を誘発する。これらの効果が、重合体フィラー充填モールディング化合物への接着を高める。
【0041】
塊の硬化されたシリコーンは、プロセス401のプラズマによって影響を受けているので、塊は、それが元の低弾性特性に効率的に戻るように、付加的なプロセスを必要とする。その目的のため、プロセス402において、塊の表面上に低弾性シリコーン材料の層がディスペンスされる。シリンジのノズルは、シリコーン材料の制御された滴を放出し、これは、塊に当たり、あまり均一ではない厚みの層内に広がる。滴の主たる量は、塊の衝突位置上に残り得るが、幾らかの材料が、外に出て、
図1において層170で例示されるような幾らか不均一な層となる。
図1の例の寸法では、滴が、約30μmの直径を有し得、最大で約13μm高さの高さを有する不均一な厚みの層をつくり得る。
【0042】
プロセス403において、シリコーン層が硬化される。その後、プロセス404において、応力阻止塊に埋め込まれ、且つ、半導体回路要素チップに垂直に取り付けられる、応力による影響を受け易いMEMSを含むアッセンブリが、上にチップが取り付けられワイヤボンディングされる基板の部分と共に、重合体モールディング化合物に封止される。統合されたデバイスはこのようにパッケージされる。
【0043】
第2の方法論は
図5において要約されている。プロセス303及び304において上述した、MEMS及びワイヤのスパンの上に低弾性シリコーン材料をディスペンスすることによってドーム形状の塊を形成するプロセスと、シリコーン塊を硬化させるプロセスの後、プロセス501において、塊の表面上にエポキシ化合物の層がディスペンスされる。エポキシは、モールディング化合物と同じであってもよく、又は、日本の住友商事株式会社から市販されているCRP-4160Gなどの配合物であってもよい。この層は均一であり得、又は、
図1の層170に類似するように見え得る。層の性質により、それは重合体封止化合物とマージし得るか又は重合体封止化合物に吸収され得る。
【0044】
プロセス502において、エポキシ層が硬化される。その後、プロセス503において、モールディング化合物に対する信頼性の高い接着を達成するために、全ての表面がプラズマエッチングを受ける。プラズマは、所定の時間の間のその気体混合物及びパワーに関与し、好ましくは、冷却された表面上で動作する。プラズマは、吸着された膜、特に水単分子層からの表面の徹底的な洗浄を達成し、それにより、電気的接合を開放する。また、プラズマは、表面の幾らかの粗化を誘発する。これらの効果は、重合体フィラー充填モールディング化合物への接着を高める。
【0045】
プロセス504において、応力阻止塊に埋め込まれ、且つ、半導体回路要素チップに垂直に取り付けられる、応力による影響を受け易いMEMSを含むアッセンブリが、上にチップが取り付けられワイヤボンディングされる基板の部分と共に、重合体モールディング化合物に封止される。統合されたデバイスはこのようにパッケージされる。
【0046】
例えば、実施例は、任意のタイプの半導体チップ、ディスクリート又は集積回路を用いる製品に適用可能であり、半導体チップの材料は、シリコン、シリコンゲルマニウム、ガリウムヒ化物、ガリウム窒化物、又は集積回路製造において用いられる任意の他の半導体又は化合物材料を含み得る。
【0047】
別の例として、実施例は、エネルギーフロー(音響的、熱的、又は光学的)、圧力、温度又は電圧差、又は、外力又はトルクの影響下で、機械的に動く部品を有するMEMSに適用可能である。膜、プレート、又はビームを備える或るMEMSが、圧力センサ(マイクロフォン又はスピーカーなど)、慣性センサ(加速度計など)、又は容量性センサ(ひずみゲージ又はRFスイッチなど)として有用である。他のMEMSが、移動又は傾きのための動きセンサとして動作する。バイメタル膜が温度センサとして働く。
【0048】
本発明の特許請求の範囲内で、説明した例示の実施例に改変が成され得、他の実施例が可能である。