(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】超電導体
(51)【国際特許分類】
C01G 1/00 20060101AFI20230620BHJP
H01B 12/02 20060101ALI20230620BHJP
C01G 29/00 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
C01G1/00 S ZAA
H01B12/02
C01G29/00
(21)【出願番号】P 2019048908
(22)【出願日】2019-03-15
【審査請求日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2018074414
(32)【優先日】2018-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100150876
【氏名又は名称】松山 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】水口 佳一
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 遼太
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-058725(JP,A)
【文献】特開2014-031307(JP,A)
【文献】特開昭63-252952(JP,A)
【文献】特開平02-311396(JP,A)
【文献】国際公開第2005/088653(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 1/00-23/08
C01G 25/00-47/00
C01G 49/10-99/00
H01B 12/00-12/16
H01B 13/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導挙動を示す超電導層と、上記超電導層に隣接し、高エントロピー構造を有するブロック層とを具備
し、組成が、La
0.3
Ce
0.3
Pr
0.2
Nd
0.1
Sm
0.1
O
0.5
F
0.5
BiS
2
、La
0.2
Ce
0.2
Pr
0.2
Nd
0.2
Sm
0.2
O
0.5
F
0.5
BiS
2
、La
0.1
Ce
0.1
Pr
0.3
Nd
0.3
Sm
0.2
O
0.5
F
0.5
BiS
2
、La
0.1
Ce
0.1
Pr
0.3
Nd
0.2
Sm
0.3
O
0.5
F
0.5
BiS
2
、又はY
0.1
Ce
0.1
Pr
0.3
Nd
0.3
Sm
0.2
O
0.5
F
0.5
BiS
2
である、超電導体。
【請求項2】
上記ブロック層は、上記高エントロピー構造
とO及びFを具備してなる連結構造とを含むブロック層であり、
上記高エントロピー構造は、一つの原子サイトを2種以上の異種元素が占有する請求項1記載の超電導体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、より高い超電導特性(転移温度や臨界電流密度)を持ち、かつその特性を使途に合わせて自在に制御できる超電導体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超電導(超伝導)とは特定の物質を極低温まで冷却したときに、ある温度(臨界温度、Tc、超電導転移温度、転移温度)を境に電気抵抗がゼロになる現象である。超電導状態になる物質を超電導体(超電導物質)という。特に、液体窒素の沸点である−196℃(77K)以上で超電導現象を起こすものは高温超電導物質(高温超電導体)と呼ばれる。
超電導の性質を生かし、超電導体は電力ケーブルや強磁場マグネットなどに応用されており、現在主に実用化されている超電導体はNb−Ti合金、Nb3Sn等であるが、(液体ヘリウムで冷却しないと超電導現象を発現しないため高コストである。)さらなる超電導技術の発展のために、より高温・強磁場下で超電導を示し、低コスト、加工の簡便性などを備えた新しい超電導体の開発が求められている。
かかる観点から、非特許文献1~4等の超電導体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】Bednorz, J. G. and Muller, K. A. Possible high Tc superconductivity in the Ba-La-Cu-O system. Z. Physik B Condensed Matter 64, 189-193 (1986).
【文献】Maeda, H. et al. A New High-Tc Oxide Superconductor without a Rare Earth Element. Jpn. J. Appl. Phys. 27, L209-L210 (1988).
【文献】Kamihara, Y. et al. Iron-Based Layered Superconductor La[O1-xFx]FeAs (x = 0.05-0.12) with Tc = 26 K. J. Am. Chem. Soc. 130, 3296-3297 (2008).
【文献】P. Kozelj et al. Discovery of a superconducting high-entropy alloy. Phys. Rev. Lett. 113, 107001 (2014).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に示すように、ベドノルツとミューラーが1986年に銅酸化物超電導体を初めて発見し、非特許文献2に示すように、1988年にはマエダらが希土類元素を含まない銅酸化物系の新しい高温超電導体を発見し、臨界温度Tcが約105Kであることを報告した。また、非特許文献3に示すように、2008年にカミハラらが層状鉄系超電導体を発見し報告している。
これらは次世代の超電導体として期待されており、銅酸化物(高温)超電導体は共通の超電導構造としてCuO2層を、鉄系超電導体は共通の超電導構造としてFeAs層やFeSe層を含み、層状構造をとっているという特性がある。
しかしながら、上記の層状超電導体を利用するうえで、その特性を使途に合わせて自在に制御できる提案はなされていないのが現状であり、超電導体の特性を自在に制御するための手法の開発が求められている。
また、転移温度においても、現時点では銅酸化物系超電導体の135kが常圧下で最も高い転移温度であり、より高い超電導特性(より高い転移温度、臨界電流密度)の超電導体が求められている。
また、非特許文献4においては、高エントロピー合金(HEA)が超電導体として使用できる可能性を示しているが、未だ超伝導体として機能する高エントロピー合金を含む物質の提案はなされていないのが現状である。
したがって、本発明の目的は、超電導転移温度(Tc)や臨界電流密度において従来の提案にかかる超電導体を凌駕できる可能性を有し、かつその特性を使途に合わせて自在に制御できる新しい超電導体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上述の課題を解消するために鋭意検討した結果、超電導層(電導層、電気が電導し超電導が発現する電導層)とブロック層(電気的に絶縁な物質の層)の積層による結晶構造を取る超電導体において、ブロック層について種々検討した結果、かかるブロック層に高エントロピー構造を有する層を採用することで上記目的を達成し得ることを知見し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、従来の提案のように高エントロピー構造を、超電導層として用いるのではなく、高エントロピー構造を、超電導層に隣接して設けることで上記目的を達成しうることを見出したものである。
本発明はかかる観点から完成されたものであり、以下の発明を提案するものである。
1.超電導挙動を示す超電導層と、上記超電導層に隣接し、高エントロピー構造を有するブロック層とを具備する超電導体。
2.上記ブロック層は、上記高エントロピー構造とOFとを含むブロック層であり、上記高エントロピー構造は、一つの原子サイトを2種以上の異種元素が占有する1記載の超電導体。
3.上記高エントロピー構造を5種以上の異種元素が占有し、構成する各元素の含有比率が、それぞれ、高エントロピー構造全体に対して5~35モル%である1記載の超電導体。
4.上記高エントロピー構造は、La若しくはY, Ce, Pr, Nd及びSmを含む合金により一つの原子サイトが占有されている1又は2記載の超電導体。
5.上記超電導層が、BiS2系の層である1~3のいずれか記載の超電導体。
6.上記超電導体は、下記化学式で表される1~4のいずれか記載の超電導体。
(MvCewPrxNdySmz)(O1―aFa)BiS2〔式中,Mは、LaまたはYを示し、v, w, x, y及びzはそれぞれ0.1~0.3の数を示し、aは0~1の数を示す。〕
【発明の効果】
【0006】
本発明の超電導体は、超伝導転移温度(Tc)や臨界電流密度において従来の提案にかかる超電導体を凌駕できる可能性を有し、かつその特性を使途に合わせて自在に制御できる新しい超電導体である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の超電導体の1実施形態を示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施例1における各超電導体1〜4の磁化率の温度依存性を示したチャートである。
【
図3】
図3は、実施例1における超電導体2(La
0.2Ce
0.2Pr
0.2Nd
0.2Sm
0.2O
0.5F
0.5BiS
2)のX線回折結果を示すチャートである。
【
図4】
図4は、実施例1における超電導体1〜4の電気抵抗率の測定結果を示すグラフである。
【
図5】
図5は、実施例1における超電導体5(Y
0.1Ce
0.1Pr
0.3Nd
0.3Sm
0.2O
0.5F
0.5BiS
2)における温度と磁化率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明の超電導体は、超電導挙動を示す超電導層と、上記超電導層に隣接し、高エントロピー構造を有するブロック層とを具備し、それぞれ1層ずつ積層した積層体またはランダムにもしくは交互に複数積層した積層構造体であるのが好ましく、このように交互に積層構造をとることで結晶化しているものが好ましい。好ましくは空間群P4/nmmの正方晶構造である。ここで、超電導体の結晶構造はX線回折を用いた構造解析により行うことができる。
以下さらに詳細に説明する。
【0009】
〔超電導層〕
(組成、構造)
上記超電導層の組成は、BiS
2、Bi(S,Se)
2等のBiS
2系、FeAs等のFeAs系、層状ビスマスカルコゲナイド系(BiCh
2系)、CuO
2等の銅酸化物系の層等が挙げられる。
また、上記超電導層の構造は、例えば、超電導層としてBiS
2系を用いた場合、
図1に示すように、BiS
2層が2枚重なった状態になっていると考えられる。これらの2枚のBiS
2層はファンデルワールス力で結合していると考えられる。
(層の厚みなど)
上記超電導層の厚みは各原子の結合状態及び結晶構造に起因し、特に制限されるものではなく、比較的大きい硫黄イオンや酸素イオンの大きさがそのまま層の厚さとなる場合や、硫黄イオンとビスマスイオンからなる層の厚さとなる場合もある。特に、BiS
2系及びFeAs系の超電導層においては、ある程度3次元構造となることもあり、硫黄イオンの大きさよりも厚みのほうが大きくなる場合があるが、銅酸化物系においてはOイオンの半径とほぼ同じとなると考えられる。
また、超電導層及びブロック層の間隔は、超電導層を構成する成分とブロック層を構成する成分分子のイオン半径やそれらの間の化学結合力により決定されるため、特に制限されない。
【0010】
〔ブロック層〕
上記ブロック層は、高エントロピー構造を有し、好ましくは高エントロピー構造と連結構造(
図1に示すOF)とが結合されてなる。
また、上記ブロック層は、希土類単体または希土類元素の酸化物により構成されているのが好ましい。上記希土類元素の酸化物における希土類と酸化物部分については後述するが、希土類元素部分が以下に記述する高エントロピー構造を有し、酸化物部分が、以下に記述する連結構造を有するものであるのが好ましい。
本発明におけるブロック層は、電気的に絶縁な物質の層であることが好ましく、結晶構造を有するのが好ましい。
【0011】
(高エントロピー構造)
本発明において高エントロピー構造とは、好ましくは5種以上16種以下の元素からなる、固溶した多結晶試料で構成された構造を意味する。上記高エントロピー構造は、従来、ブロック層やスペーサー層を構成する希土類元素の酸化物において、1つまたは2つの希土類元素(RE)が占有していたサイト(原子の配置場所)を当該高エントロピー構造で置換するように、上記ブロック層に存在するのが好ましい。
上記多結晶試料を構成する上記元素としては以下の元素を挙げることができる。
希土類元素(RE)=La,Pr,Ce,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,YまたはBi
上記REは高エントロピー構造中における各種原子の組成比がそれぞれ5~35モル%の範囲内で定義され、好ましくは10~30モル%の範囲内で組成され、5種以上16種以下の元素で構成されているのが好ましい。
特に本発明における上記高エントロピー構造は、LaまたはY、Ce、Pr、Nd、Smの5種元素で固溶した多結晶試料で構成されているのが好ましい。すなわち、具体的にはLa、Ce、Pr、Nd及びSmの5種元素;又はY、Ce、Pr、Nd及びSmの5種元素からなるのが好ましい。
すなわち、上記高エントロピー構造の組成は、以下の例などが挙げられる。 La0.3Ce0.3Pr0.2Nd0.1Sm0.1、La0.2Ce0.2Pr0.2Nd0.2Sm0.2、La0.1Ce0.1Pr0.3Nd0.3Sm0.2、La0.1Ce0.1Pr0.3Nd0.2Sm0.3、Y0.1Ce0.1Pr0.3Nd0.3Sm0.2
【0012】
(連結構造、OF)
本明細書において連結構造とは、従来、希土類酸化物ブロック層において、酸素原子(O)が占有していたサイト(原子の配置場所)の一部または全部をフッ素原子(F)で置き換えた構造を意味する。好ましくは酸素とフッ素のモル比(物質量比)が1対1であるが、これに限定されるものではなく、この比率に特に制限されることなく自由に配合可能である。例えば高エントロピー構造が鉄を含有する系である場合には酸素とフッ素のモル比(物質量比)が8対2を限度として種々配合比を採用することができる。
(含有比率)
ブロック層における高エントロピー構造と連結構造とのモル比(物質量比)は1対1であることが好ましいが、これに限定されるものではなく、この比率に特に制限されることなく自由に量比を変えて配合可能である。
(層の厚みなど)
ブロック層の厚みは各原子の結合状態および構造に起因し、特に制限されるものではない。
【0013】
〔超電導体〕
本発明の超電導体は、超電導挙動を示す上記超電導層と、高エントロピー構造を有し電気的に絶縁なブロック層とを具備し、それぞれ1層ずつ積層した積層体またはランダムにもしくは交互に複数積層した積層構造体であり、好ましくは結晶構造である。
本発明の超電導体の構造を模式的に
図1に示す。
図1に示す本実施形態の超電導体1は、超電導層10とブロック層20とが交互に積層されている。超電導層10は、Bi12と2つのS14とが複数連結されてなる。ブロック層20は、高エントロピー構造(RE)22と連結構造24とが複数連結されてなる。このように複数の超電導層10と複数のブロック層20とが積層されて形成されている。本実施形態において、高エントロピー構造(RE)22としてはLa
0.2Ce
0.2Pr
0.2Nd
0.2Sm
0.2が、連結構造24としてはO
0.5F
0.5が、用いられている。
(組成)
上記超電導体は、上述の通り高エントロピー構造を有するブロック層と超電導層とが積層されていればその組成は特に制限されるものではないが、下記化学式で表される組成を有するのが好ましい。
(La又はY
vCe
wPr
xNd
ySm
z)(O
1―aF
a)BiS
2
〔式中、v, w, x, y及びzはそれぞれ0.1~0.3の数を示し、aは0~1の数を示す。〕
本発明の超電導体の組成は、特に制限されないが、具体的には好ましくは以下の例が挙げられる。
La
0.3Ce
0.3Pr
0.2Nd
0.1Sm
0.1O
0.5F
0.5BiS
2、
La
0.2Ce
0.2Pr
0.2Nd
0.2Sm
0.2O
0.5F
0.5BiS
2、
La
0.1Ce
0.1Pr
0.3Nd
0.3Sm
0.2O
0.5F
0.5BiS
2、
La
0.1Ce
0.1Pr
0.3Nd
0.2Sm
0.3O
0.5F
0.5BiS
2、
Y
0.1Ce
0.1Pr
0.3Nd
0.3Sm
0.2O
0.5F
0.5BiS
2
上述の組成には制限されず、酸化銅系の高温超電導体においては以下の組成等を上げることができる。
Y
0.2La
0.2Pr
0.2Nd
0.2Sm
0.2Ba
2Cu
3O
7-d
この場合ブロック層が2種存在し、具体的には、Ba
2CuO
3-dブロック層/CuO
2層・REブロック層・CuO
2層・Ba
2CuO
3-dブロック層の積層構造を取る。なお、式中、dは0でないのが通常であり、超電導性を示す範囲で且つ酸素量が0とならない範囲(すなわち7未満)である。これは通常超電導体が銅酸化物系である場合は酸素量の不定比性が一般的であるためであり、dが0でないことにより超電導性を示すことになる。
また、組成比はエネルギー分散型X線分光(EDX)により分析できる。
【0014】
(物性)
本発明の超電導体は、後述する実施例に示すように、超電導転移を示すものである。ここで、超電導転移は、磁化率測定の反磁性シグナルが発現する温度を超電導転移温度として評価でき、超電導転移温度とは冷却により物質が常電導状態から超電導状態に転移する温度のことである。
また、超電導転移は、電気抵抗率の測定からも確認できる。
【0015】
〔製造方法〕
本実施形態の超電導体の製造方法は、例えば以下の通りである。
ランタン(またはイットリウム)、セシウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム(LaまたはY, Ce, Pr, Nd, Sm)の硫化物、ビスマス酸化物、ビスマスフッ化物、ビスマス単体元素、硫黄単体元素の粉末を秤量し、乳鉢ですり潰し、上記原料混合物を、圧力(好ましくは5〜30MPa)を加えてペレット状に押し固めるペレット作成工程、
上記ペレットを、石英管に真空封入して電気炉にて700℃程度で20時間焼結して結晶を作る焼結工程、
上記結晶試料を粉砕し、混合する二次混合物形成工程、
上記二次混合物を、5-30MPaの圧力を加えペレット状にする第二次ペレット作成工程、及び
上記第二次ペレット試料を均質化するために、石英管に真空封入して電気炉にて700℃程度(好ましくは500〜900℃)で20時間程度(好ましくは5〜50時間)焼結して結晶を作る第二次焼結工程、
を行うことにより目的の超電導体を得ることができる。
【0016】
以下、本発明について実施例を示してさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
〔実施例1〕La0.3Ce0.3Pr0.2Nd0.1Sm0.1O0.5F0.5BiS2(超電導体1)の製造
出発原料にBi2O3(高純度化学社製、Bi2O3粉末、99.99%)、、La2S3(高純度化学社製、La2S3粉末、99.9%)、Bi2S3、Bi(高純度化学社製、Bi粒状、99.99%)、Ce2S3(99.9%)、Bi(99.999%)、BiF3(99.9%)、Bi(99.9%)、Pr2S3(99.9%)、Nd2S3(99.999%)、S(高純度化学社製、S粒状、99.99%)を用い、組成比がLa0.3Ce0.3Pr0.2Nd0.1Sm0.1O0.5F0.5BiS2になるように秤量した。これらを混合して原料混合物を得、これをペレット状に成形することで原料のペレットを得た。
続いて、得られたペレットを石英ガラス管に真空封入し、電気炉にて700℃で20時間焼成した。
得られた試料を粉砕し、混合し、ペレット化して第2次ペレットを得、この第2次ペレットについて試料を均質化するために再度700℃で20時間加熱し、目的の超電導体1を得た。
【0017】
次に、下記の組成となるように秤量してペレットを作成した以外は、上述の超電導体1と同様にして以下の超電導体2~5を得た。
La0.2Ce0.2Pr0.2Nd0.2Sm0.2O0.5F0.5BiS2(超電導体2)、
La0.1Ce0.1Pr0.3Nd0.3Sm0.2O0.5F0.5BiS2(超電導体3)、
La0.1Ce0.1Pr0.2Nd0.3Sm0.3O0.5F0.5BiS2(超電導体4)、
Y0.1Ce0.1Pr0.2Nd0.3Sm0.3O0.5F0.5BiS2(超電導体5)
【0018】
得られた種々の超電導体1~4について、粉末X線回折(XRD)を用いて相純度および結晶構造を調べた結果を表1に示す。
粉末X線回折はCuKα放射線を用いて-2Δ法で測定した。RIETAN-FPソフトウェアを使用し、リートベルト法により得られたXRDデータを解析した。また、結晶構造を視覚化するために、VESTAソフトウェアを使用した。
高エネルギー構造における組成は、エネルギー分散線分光分析(EDX)を用いて分析した。表1に示すように、分析した希土類の配合濃度は、すべてのサンプルの公称値にほぼ一致した。
電気抵抗率の温度依存性を、4端子法にて1mAの電流を流し計測した。その結果を
図4に示す。
超電導体1〜4の磁化率の温度依存性を、両方のゼロ磁場中冷却後にSQUID(Superconducting Quantum lnerference Device :超電導量子干渉素子)磁束計(米国Quantum Design社製Magnetic Property Measurement System (MPMS)、感度:1x10
-8emu、試料温度:1.8K~300K)によって測定した。SQUIDは磁束変化に伴う誘導起電力を測定する方法(電磁誘導法)である。その結果を
図2に示す。
なお、ゼロ磁場中冷却(ZFC)および磁場中冷却(FC)は典型的な適用分野10Oeで実施した。
また、
図3に、超電導体2(La
0.2Ce
0.2Pr
0.2Nd
0.2Sm
0.2O
0.5F
0.5BiS
2)の典型的なXRDパターンとリートベルトフィッティングの結果を示す。なお、リートベルト解析では正方晶P4/nmmモデルを用いて精密化した。
【0019】
【0020】
表1に示すように、ブロック層の高エントロピー構造の組成を変化させることで、格子定数aが大きいものから小さいものまで作り分けることができ、転移温度を変化させられることがわかった。
また、超電導体5についても超電導特性(磁化率の温度依存性)を評価した。その結果を
図5に示す。この結果から、Yでも超電導特性が得られることがわかった。