(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】ガス炊飯器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20230620BHJP
【FI】
A47J27/00 109M
A47J27/00 109B
A47J27/00 105Z
(21)【出願番号】P 2019098684
(22)【出願日】2019-05-27
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】石川 芳誉
(72)【発明者】
【氏名】恒光 宏行
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-109974(JP,A)
【文献】特開2008-036249(JP,A)
【文献】特開平02-227698(JP,A)
【文献】特開2004-166786(JP,A)
【文献】特開2013-130346(JP,A)
【文献】特開2007-078405(JP,A)
【文献】特開平11-065694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
G04G 3/00- 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部を開口した炊飯釜と、
前記炊飯釜の前記開口を閉塞する蓋体と、
前記炊飯釜を下方から加熱するバーナと、
前記炊飯釜の底面温度を検出する底面温度センサと、
前記蓋体に設けられて前記炊飯釜の内部温度を検出する内部温度センサと、
水晶発振器からのクロックカウント数に基づいて現在時刻を計時する計時機能を備え、前記底面温度センサ及び前記内部温度センサの各検出温度に基づいて前記バーナの燃焼を制御する制御手段と、
電源プラグを有する電源コードと、を含んでなるガス炊飯器であって、
前記制御手段は、
前記炊飯釜及び前記バーナの下方に設けられており、
前記制御手段は、前記電源プラグからの電源が供給されている状態で、前記底面温度センサと前記内部温度センサとの温度差が所定温度以内の場合
で、且つ前記底面温度センサの検出温度が第2の所定温度以下の場合にのみ、前記底面温度センサの検出温度と、前記検出温度に対応する前記クロックカウント数の補正時間を予め設定した周波数変動テーブルとを用いて前記水晶発振器からのクロックカウント数を補正して現在時刻を補正
することを特徴とするガス炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナを熱源として炊飯等の調理が可能なガス炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス炊飯器においては、炊飯の完了時間を設定できるタイマー炊飯が行えるように、水晶発振器の発振クロック数をカウントし、その積算値に基づいて現在時刻を計時する計時機能を備えている。
この水晶発振器の発振クロック数は、周囲の温度によって影響を受けやすい。そこで、特許文献1には、水晶発振器の温度特性を予め測定して、各温度領域における発振周波数の標準値からのずれの値を周波数変動テーブルとして記憶しておき、温度センサによって測定された温度データから周波数変動テーブルを参照して誤差を計算し、時刻を補正する計時プログラムの発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この計時プログラムを、バーナを有するガス炊飯器に適用すると、バーナからの熱によってかえって大きな誤差が生じてしまい、タイマー炊飯を行うと炊き上がり時刻が実際の時刻から大きくズレるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、時刻のズレを軽減して信頼性の高い計時機能を備えたガス炊飯器を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、上部を開口した炊飯釜と、炊飯釜の開口を閉塞する蓋体と、炊飯釜を下方から加熱するバーナと、炊飯釜の底面温度を検出する底面温度センサと、蓋体に設けられて炊飯釜の内部温度を検出する内部温度センサと、水晶発振器からのクロックカウント数に基づいて現在時刻を計時する計時機能を備え、底面温度センサ及び内部温度センサの各検出温度に基づいてバーナの燃焼を制御する制御手段と、電源プラグを有する電源コードと、を含んでなるガス炊飯器であって、
制御手段は、炊飯釜及びバーナの下方に設けられており、
制御手段は、電源プラグからの電源が供給されている状態で、底面温度センサと内部温度センサとの温度差が所定温度以内の場合で、且つ底面温度センサの検出温度が第2の所定温度以下の場合にのみ、底面温度センサの検出温度と、検出温度に対応するクロックカウント数の補正時間を予め設定した周波数変動テーブルとを用いて水晶発振器からのクロックカウント数を補正して現在時刻を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、底面温度センサと内部温度センサとの検出温度の差が大きくなっている際の補正を回避できる。よって、時刻のズレを軽減して信頼性の高い計時機能を備えることができる。
特に、制御手段が炊飯釜及びバーナの下方に設けられ、制御手段は、底面温度センサの検出温度と周波数変動テーブルとを用いるので、水晶発振器と同等の温度環境にある底面温度センサの検出温度に基づいてより正確にクロックカウント数の補正が行える。
また、底面温度センサと同じ温度環境である水晶発振器の温度が高い状態での補正を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】クロックカウント数の補正特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、ガス炊飯器の一例を示す斜視図、
図2は概略図である。
ガス炊飯器1は、上部を開口した本体2と、本体2の上部開口を開閉する蓋体3とを備え、本体2の正面下部には、調理メニューの選択やタイマー炊飯等を行うための操作パネル4が備えられている。本体2には、外部のホースが接続されるガス管5と、図示しない電源コードとが設けられている。
本体2内には、上部を開口する炊飯釜6が着脱可能に収容され、蓋体3には、本体2の閉塞状態で炊飯釜6の上部開口を開閉する内蓋7が設けられている。
また、本体2内には、炊飯釜6を下方から加熱するバーナ8と、炊飯釜6の下部領域を加熱する釜ヒータ9とが設けられ、蓋体3内には、内蓋7の上面に接触する蓋ヒータ10が設けられている。
【0010】
一方、ガス管5には、ガス管5を開閉する元電磁弁11が設けられ、元電磁弁11の下流側で分岐された分岐路には、各分岐路を開閉する第1電磁弁12と第2電磁弁13とがそれぞれ設けられている。
また、本体2内には、炊飯釜6の底面中央部に当接して炊飯釜6の底部の温度を検出する釜サーミスタ14が設けられ、蓋体3内には、内蓋7の上面に当接して炊飯釜6内の温度を検出する蓋サーミスタ15が設けられて、各サーミスタ14,15の検出信号がコントローラ20へ入力可能となっている。
【0011】
コントローラ20は、炊飯釜6及びバーナ8の下方に設置されて、元電磁弁11及び第1、第2電磁弁12,13の開閉制御及びバーナ8の点火制御を行う。このコントローラ20には、CPUを用いて各種演算処理を行う演算部21と、ROMやRAM、EEPROM等を用いて調理プログラムや後述する周波数変動テーブル等を保存した記憶部22と、水晶発振器を備えて水晶発振器からのクロックカウント数を積算することで現在時刻を計時する計時部23と、図示しないバッテリ等とが設けられて、操作パネル4と電気的に接続されている。
【0012】
操作パネル4には、7セグメントディスプレイからなる表示画面25と、ケーキ調理やおかゆ調理等の通常の炊飯以外の調理メニューを選択するメニューボタン26、保温の有無を切り替える保温ボタン27、タイマー炊飯等のタイマー調理や現在時刻を設定する時刻設定ボタン28、タイマー炊飯等を予約する予約ボタン29、調理を開始するスタートボタン30、各ボタンで入力したメニュー等を取り消す取消ボタン31がそれぞれ設けられている。
よって、コントローラ20は、操作パネル4の操作で調理メニューが選択されてスタートボタン30がON操作されると、調理メニューに対応した調理プログラムに基づき、釜サーミスタ14及び蓋サーミスタ15によって検出される検出温度を監視して、各電磁弁11~13を開閉してバーナ8の燃焼を制御すると共に、釜ヒータ9及び蓋ヒータ10の通電を制御して、選択された調理を行う。
【0013】
また、コントローラ20は、電源プラグからの電源が供給されている状態で、予め設定した時間(例えば午前零時等)或いは所定時間毎に、所定の条件でのみ計時部23でカウントするクロックカウント数を補正して現在時刻を補正可能となっている。この条件は、
(1)釜サーミスタ14と蓋サーミスタ15との温度差が所定温度(例えば10℃)以内である場合。
(2)釜サーミスタ14の検出温度が40℃以下である場合。
である。
【0014】
ここで、(1)の釜サーミスタ14と蓋サーミスタ15との温度差を条件としたのは、例えば炊飯終了から時間がそれほど経過していない場合(例えば3時間以内)、釜サーミスタ14と蓋サーミスタ15との検出温度の差は大きくなっているため、このときに一方のサーミスタからの検出温度に基づいてクロックカウント数を補正すると、かえって現在時刻からのズレが大きくなるからである。
また、(2)で釜サーミスタ14の検出温度を条件としたのは、ここでは炊飯釜6の下方にコントローラ20が配置されて、計時部23の水晶発振器と釜サーミスタ14とが同等の温度環境にあるため、より正確にクロックカウント数の補正が行えるからで、また、40℃の上限温度を条件としたのは、釜サーミスタ14と同じ温度環境である水晶発振器の温度が高い状態での補正を避けるためである。
【0015】
よって、コントローラ20は、釜サーミスタ14と蓋サーミスタ15との温度差が所定温度以内で、且つ釜サーミスタ14の検出温度が40℃以下の場合は、釜サーミスタ14の検出温度と、記憶部22に保存された周波数変動テーブルとを用いて、所定のタイミングで計時部23における水晶発振器からのクロックカウント数の補正(例えば1秒のクロックカウント数に対してクロック数を加算或いは減算)を行うことになる。但し、停電や電源プラグが抜かれている状態でバッテリで動作している場合は、上記(1)(2)の条件を満たしていてもクロックカウント数の補正は行わない。
周波数変動テーブルは、例えば以下の表1のように設定される。表の左欄が釜サーミスタ14の検出温度(温度領域)、右欄が温度領域に対応する1日当たりの補正時間(秒)である。この補正時間から補正するクロック数が演算部21で演算されて計時部23で補正されることになる。
【0016】
【0017】
ここでの補正時間の設定では、11.4℃~15.0℃の温度領域と、35.0℃~38.6℃の温度領域とでは補正時間を0として、両温度領域間では21.6℃~28.4℃の温度領域へ行くに従って補正時間は減少している。逆に、11.4℃~15.0℃の温度領域から低下するに従って補正時間は増加し、35.0℃~38.6℃の温度領域から増加する場合も補正時間は増加するようになっている。すなわち、
図3に示すように全体が下向きに膨らんでカーブする形状に近似した補正特性となっている。
同図の点線は、先述の特許文献1に記載の発明による水晶発振器の補正特性である。補正前は温度が25℃のときの誤差が0で、ここから温度が25℃からずれるに従って誤差が増えることで、上向きに膨らんでカーブする特性であったものが、補正によりそのまま正側へシフトした形となっている。これに対して本形態では、下向きに膨らんでカーブする補正特性となっているため、温度変化に伴う誤差が効果的に相殺されることになる。
【0018】
このように、上記形態のガス炊飯器1によれば、コントローラ20(制御手段)は、釜サーミスタ14(底面温度センサ)と蓋サーミスタ15(内部温度センサ)との温度差が所定温度以内の場合、釜サーミスタ14の検出温度と、検出温度に対応するクロックカウント数の補正時間を予め設定した周波数変動テーブルとを用いて水晶発振器からのクロックカウント数を補正して現在時刻を補正するので、釜サーミスタ14と蓋サーミスタ15との検出温度の差が大きくなっている際の補正を回避できる。よって、時刻のズレを軽減して信頼性の高い計時機能を備えることができる。
【0019】
特にここでは、コントローラ20が炊飯釜6及びバーナ8の下方に設けられて、釜サーミスタ14と蓋サーミスタ15との検出温度の差が所定温度以内の場合、コントローラ20は、釜サーミスタ14の検出温度と周波数変動テーブルとを用いるので、水晶発振器と同等の温度環境にある釜サーミスタ14の検出温度に基づいてより正確にクロックカウント数の補正が行える。
また、コントローラ20は、釜サーミスタ14の検出温度が所定温度以下の場合に、釜サーミスタ14の検出温度と周波数変動テーブルとを用いるので、釜サーミスタ14と同じ温度環境である水晶発振器の温度が高い状態での補正を回避することができる。
【0020】
なお、クロックカウント数の補正を行う際の釜サーミスタと蓋サーミスタとの検出温度の差や、釜サーミスタの検出温度を使用する場合の上限温度は上記形態の数値に限らず、適宜変更可能である。周波数変動テーブルの温度領域や補正時間も適宜変更可能である。
また、上記形態では、コントローラが炊飯釜及びバーナの下方に配置されているが、コントローラが別の場所にあっても差し支えない。この場合はクロックカウント数の補正に蓋サーミスタの検出温度を用いてもよいし、釜サーミスタの上限温度を補正の条件にしなくてもよい。
さらに、底面温度センサ及び内部温度センサとしてはそれぞれ1つのサーミスタとせず、複数のサーミスタを用いて検出温度の平均を使用したりする設計変更は可能である。サーミスタ以外のセンサも採用できる。
【符号の説明】
【0021】
1・・ガス炊飯器、2・・本体、3・・蓋体、4・・操作パネル、5・・ガス管。6・・炊飯釜、7・・内蓋、8・・バーナ、11・・元電磁弁、12・・第1電磁弁、13・・第2電磁弁、14・・釜サーミスタ、15・・蓋サーミスタ、20・・コントローラ、21・・演算部、22・・記憶部、23・・計時部、25・・表示画面。