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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】筒状構造物の周囲に足場を設置する方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 3/24 20060101AFI20230620BHJP
   E04G 23/08 20060101ALN20230620BHJP
【FI】
E04G3/24 302E
E04G23/08 J
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019144687
(22)【出願日】2019-08-06
(65)【公開番号】P2021025329
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】592131696
【氏名又は名称】株式会社サンメイ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】田邉 英幸
【審査官】小林 英司
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-155219(JP,U)
【文献】特開2007-063874(JP,A)
【文献】実開平5-71342(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-0435044(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 3/24
E04G 5/06
E04G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状構造物の周囲に足場を設置する方法であって、
前記筒状構造物は、高さが60mを超える鋼製煙突であり、
当該方法は、
(1)筒状構造物の所定の高さ位置において、該筒状構造物の周囲に沿って、複数の固定部材を溶接する工程であって、各固定部材は、差し込み口用の凸部を有する、略帯状の形態を有し、前記凸部には、穴が形成されている、工程と、
(2)貫通孔を有する突出部材および水平部材を有する足場ブラケットを準備し、各固定部材の前記差し込み口に、前記足場ブラケットの前記突出部材を差し込む工程であって、前記貫通孔に、前記穴まで貫通するようにピンを差し込むことにより、前記足場ブラケットが前記固定部材に固定され、前記筒状構造物の周囲から、前記足場ブラケットの前記水平部材が放射状に突出される、工程と、
(3)前記足場ブラケットの前記水平部材を利用して、足場部材を設置する工程と、
を有する、方法。
【請求項2】
前記足場ブラケットは、前記水平部材の先端に接続された斜材を有し、
前記斜材は、前記突出部材よりも下方において、前記筒状構造物の外面と当接する当接部材を有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状構造物の周囲に足場を設置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大型煙突などの筒状構造物を解体する際には、まず、所定の高さ位置ごとに、煙突の周囲にわたって作業足場が設置される。次に、作業足場に乗った作業員により、上部から所定の長さ位置で筒状構造物が切断される。切断された部分は、クレーンにより、地上まで吊り下げられる。これを筒状構造物の上部から下部に沿って繰り返すことにより、筒状構造物が解体される。
【0003】
最近では、作業足場の設置をより効率的に行うため、所定の高さ位置に、筒状構造物の周囲にわたって鋼製バンドを設置し、該鋼製バンドに設けられた係止口に足場ブラケットを差し込む方法が提案されている(特許文献1)。
【0004】
足場ブラケットは、上部に水平部分を有する。従って、筒状構造物の周囲に設置された複数の足場ブラケットの水平部分にわたって足場板を設置することにより、筒状構造物の周囲に作業足場を構成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-170376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように、筒状構造物の解体のための足場の設置方法として、各種方法が提案されている。
【0007】
しかしながら、効率の観点からは、従来の方法においても未だ改善の余地がある。
【0008】
例えば、特許文献1に記載の方法では、複数の高さ位置において、筒状構造物の周囲に沿って鋼製バンドを取り付ける必要がある。
【0009】
各鋼製バンドは、周方向に沿って配置された複数のバンド用パーツをボルトで相互に連結することにより構成される。従って、筒状構造物の径が大きくなると、必要なバンド用パーツの数が多くなり、これに伴い、多数の連結作業が必要となる。特に、高さが60mを超えるような大型の筒状構造物の場合、鋼製バンドを設置すべき高さ位置の数が増加するため、より多くのパーツの連結作業を行うことが必要となる。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、本発明では、筒状構造物を解体する際に、より効率的に行うことが可能な足場の設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、筒状構造物の周囲に足場を設置する方法であって、
(1)筒状構造物の所定の高さ位置において、該筒状構造物の周囲に沿って、複数の固定部材を溶接する工程であって、各固定部材は、差し込み口を有する、工程と、
(2)突出部材および水平部材を有する足場ブラケットを準備し、各固定部材の前記差し込み口に、前記足場ブラケットの前記突出部材を差し込む工程であって、これにより、前記筒状構造物の周囲から、前記足場ブラケットの前記水平部材が放射状に突出される、工程と、
(3)前記足場ブラケットの前記水平部材を利用して、足場部材を設置する工程と、
を有する、方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、筒状構造物を解体する際に、より効率的に行うことが可能な足場の設置方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態による足場を設置する方法のフローを模式的に示した図である。
図2】筒状構造物の一例を模式的に示した図である。
図3】本発明の一実施形態による足場を設置する方法に利用される固定部材の模式的な斜視図である。
図4】本発明の一実施形態による足場を設置する方法の一工程を模式的に示した上面図である。
図5】本発明の一実施形態による足場を設置する方法に利用される足場ブラケットの模式的な側面図である。
図6】本発明の一実施形態による足場を設置する方法の一工程を模式的に示した上面図である。
図7】本発明の一実施形態による足場を設置する方法の一工程を模式的に示した上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明について説明する。
【0015】
(本発明の一実施例による筒状構造物の解体のための足場を設置する方法)
図1には、本発明の一実施例による足場を設置する方法(以下、「第1の設置方法」と称する)のフローを模式的に示す。
【0016】
図1に示すように、第1の設置方法は、
(1)筒状構造物の所定の高さ位置において、該筒状構造物の周囲に沿って、所定の間隔で、固定部材を溶接する工程であって、前記固定部材は、差し込み口を有する、工程(工程S110)と、
(2)突出部材および水平部材を有する足場ブラケットを準備し、各固定部材の前記差し込み口に、前記足場ブラケットの前記突出部材を差し込む工程であって、これにより、前記筒状構造物の周囲から、前記足場ブラケットの前記水平部材が放射状に突出される、工程(工程S120)と、
(3)前記足場ブラケットの前記水平部材を利用して、足場部材を設置する工程(工程S130)と、
を有する。
【0017】
以下、図2図7を参照して、各工程について、詳しく説明する。
【0018】
(工程S110)
図2には、第1の設置方法の適用対象となる、筒状構造物1の形態の一例を模式的に示す。
【0019】
図2に示した例では、筒状構造物1は、鋼製煙突で構成されている。筒状構造物1の高さは、特に限られないが、例えば、60m~250mの範囲であり、あるいは250m超であってもよい。
【0020】
なお、図2において、筒状構造物1の周囲には、鉄塔20が示されている。筒状構造物1が長身の鋼製煙突である場合、筒状構造物1を自立させることは難しいため、このような鉄塔支持型が採用されることが一般的である。
【0021】
ただし、鉄塔20の解体用の足場の設置方法としては、従来の方法が採用できる。従って、ここでは、鉄塔20の解体用の足場の設置方法についての説明は省略する。なお、一般に鉄塔支持型の筒状構造物1を解体する場合、筒状構造物1および鉄塔20の両方が、同時並行的に解体される。すなわち、両者は、上部から、高さレベルが同様に低下するようにして、解体される。
【0022】
筒状構造物1の解体用の足場を設置する際には、まず、筒状構造物1の周囲にわたって、固定部材が設置される。固定部材は、溶接により、筒状構造物1の外周面に設置される。
【0023】
図3には、固定部材110の一形態を模式的に示す。
【0024】
図3に示すように、固定部材110は、金属帯115で構成され、長手方向の中央部分に、差し込み口120用の凸部を有する。金属帯115は、例えば、鋼のような、筒状構造物1の外周面に溶接可能な材料で構成される。
【0025】
さらに、固定部材110は、差し込み口120用の凸部に、1または2以上の穴125を有してもよい。ただし、穴125は、必須の構成ではない。
【0026】
固定部材110は、筒状構造物1の所定の高さレベルにおいて、外周面に沿って複数設置される。通常、固定部材110が設置される高さレベルは、複数存在する。例えば、解体を開始する前に、筒状構造物1の上端から底面にわたって、必要な全ての固定部材110が設置されてもよい。
【0027】
固定部材110を筒状構造物1の複数の高さレベルに設置する場合、高さの間隔は、例えば、5m~30mの範囲であってもよい。
【0028】
なお、最も上方の固定部材110は、筒状構造物1の先端または鉄塔20の頂部に設置されてもよい。
【0029】
図4には、ある高さレベルにおいて、筒状構造物1の周囲にわたって、固定部材110が設置された状態を模式的に示す。
【0030】
図4に示した例では、固定部材110は、筒状構造物1の外周面5に、等間隔で12個設置されている。しかしながら、設置される固定部材110の数は、筒状構造物1の外周面5の寸法に応じて、適宜選定される。
【0031】
通常、各高さレベルにおいて、固定部材110は、周方向に沿って、相互に0.3m~1mの間隔で設置される。
【0032】
(工程S120)
次に、固定部材110のそれぞれの差し込み口120に、足場ブラケットが設置される。
【0033】
図5には、足場ブラケット140の構成の一例を模式的に示す。図5には、足場ブラケット140の側面図が示されている。
【0034】
図5に示すように、足場ブラケット140は、突出部材142、水平部材144、垂直部材146、および斜材148を有する。足場ブラケット140の各部材は、鋼製である。
【0035】
突出部材142は、鉛直方向に延在する略板状の形態を有する。突出部材142には、所定の位置に、1または2以上の貫通孔143が形成されていてもよい。ただし、貫通孔143は、必ずしも設置する必要はなく、省略されてもよい。
【0036】
水平部材144は、水平方向に延在する略角柱状の形態を有する。垂直部材146は、鉛直方向に延在する略角柱状の形態を有する。
【0037】
水平部材144の一端は、突出部材142と接合されており、水平部材144の他端は、斜材148と接合されている。垂直部材146は、水平部材144の長手方向の途中の部分に接合されている。斜材148の下端には、当接部材150が設置されている。
【0038】
当接部材150は、後述するように、足場ブラケット140が固定部材110の差し込み口120に装着された際に、当接部材150を筒状構造物1の外周面5に当接させ、足場ブラケット140を安定化させる役割を有する。
【0039】
ただし、当接部材150は任意に設けられる部材であり、足場ブラケット140は、必ずしも当接部材150を有する必要はない。
【0040】
足場ブラケット140を固定部材110に装着する際には、足場ブラケット140の突出部材142が、上方から下向きに、固定部材110の差し込み口120に挿入される。
【0041】
これにより、足場ブラケット140が固定部材110に装着され、固定部材110により足場ブラケット140を支持することができる。
【0042】
なお、この際に、足場ブラケット140の貫通孔143に、固定部材110の穴125を貫通するようにストップピン(図示されていない)を差し込んでもよい。ストップピンを挿入することにより、意図しないタイミングでの足場ブラケット140の固定部材110からの脱着を抑制することが可能となる。
【0043】
図6には、足場ブラケット140が固定部材110に装着された状態を模式的に示す。
【0044】
図6に示すように、足場ブラケット140の装着の結果、足場ブラケット140の水平部材144は、筒状構造物1の外周面5から放射状に突出される。
【0045】
(工程S130)
次に、足場ブラケット140の水平部材144の上に足場部材が設置され、足場部材を相互に連結することにより、足場が構成される。
【0046】
足場部材の構成および形状は、特に限られない。足場部材は、例えば、アルミニウム製の床材であってもよい。例えば、床材を水平部材144の上に掛け渡すことにより、足場が構成されてもよい。
【0047】
図7には、足場ブラケット140の水平部材144の上に、床材180が設置された状態を模式的に示す。水平部材144の上に床材180を設置することにより、筒状構造物1の外周面5にわたって、ドーナツ状の足場185を構成することができる。
【0048】
なお、図7に示した例では、2種類の形状の床材180を組み合わせることにより、足場185が構成される。ただし、より多くの種類の床材180を用いて、足場185を構成してもよい。
【0049】
足場185は、さらに、支柱および/または手すり(図示されていない)を有してもよい。
【0050】
以上の工程により、筒状構造物1の所定の高さレベルに足場185を設置することができる。
【0051】
第1の設置方法では、従来のような鋼製バンドを使用せずに、足場185を構成することができる。第1の設置方法では、バンド用パーツを相互に連結する必要がなく、より効率的に足場185を設置することが可能となる。
【0052】
また、第1の設置方法では、足場ブラケット140は、突出部材142を固定部材110の差し込み口120に挿入して使用される。従って、使用済みの足場ブラケット140は、突出部材142を差し込み口120から引き抜くことにより、簡単に回収することができる。このため、足場ブラケット140は、再利用することができる。
【0053】
このような足場185は、筒状構造物1の解体に利用されてもよい。
【0054】
筒状構造物1の解体は、以下のように実施されてもよい。
【0055】
まず、筒状構造物1の外周面において、必要な全ての高さレベルに固定部材110および足場ブラケット140を設置し、全ての足場185を構成する。
【0056】
次に、通常は一番上にある第1の足場に作業員が立ち、該作業員により筒状構造物1が第1の高さ位置で、外周面5にわたって切断される。切断された筒状構造物1の第1の部分は、クレーンにより、地上まで吊り下げられる。
【0057】
次に、第2の足場に立った作業員により、同様の方法により、筒状構造物1が第2の高さ位置で切断される。切断された第2の部分は、クレーンにより地上まで吊り下げられる。
【0058】
このような工程を繰り返すことにより、筒状構造物1が解体されてもよい。
【0059】
あるいは、まず、筒状構造物1の上方の外周面において、一つの高さレベルに固定部材110および足場ブラケット140を設置し、第1の高さレベルに第1の足場185を構成する。
【0060】
次に、第1の足場185に作業員が立ち、該作業員により筒状構造物1が第1の高さ位置で、外周面5にわたって切断される。切断された筒状構造物1の第1の部分は、クレーンにより、地上まで吊り下げられる。
【0061】
次に、同様の方法により、第2の高さレベルに第2の足場185を構成する。また、第2の足場185に立った作業員により、筒状構造物1が第2の高さ位置で、外周面5にわたって切断される。切断された筒状構造物1の第2の部分は、クレーンにより、地上まで吊り下げられる。
【0062】
このような工程を繰り返すことにより、筒状構造物1が解体されてもよい。
【0063】
なお、図2に示すように筒状構造物1の周囲に鉄塔20が存在する場合、筒状構造物1は、鉄塔20と同時進行的に解体される。
【0064】
このため、鉄塔20の周囲にも足場が構成される。この鉄塔20用の足場は、いかなる方法で構成されてもよい。
【0065】
以上、本発明の一実施形態による足場を設置する方法ついて説明した。しかしながら、本発明の一実施形態は、上記態様に限定されるものではない。
【0066】
例えば、上記例では、筒状構造物1として鋼製煙突を想定したが、筒状構造物1は、タワーなどの建造物であってもよい。
【0067】
また、足場185は、必ずしも筒状構造物1の解体のみに利用される必要はなく、例えば、筒状構造物1の塗装や補修の際にも、足場185を適用することができる。
【0068】
さらに、示された固定部材110および足場ブラケット140の形態は、単なる一例に過ぎない。足場ブラケット140は、固定部材110に装着することができ、上部に足場185を設置することができる限り、いかなる構成を有してもよい。
【0069】
その他にも、各種変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 筒状構造物
5 外周面
20 鉄塔
110 固定部材
115 金属帯
120 差し込み口
125 穴
140 足場ブラケット
142 突出部材
143 貫通孔
144 水平部材
146 垂直部材
148 斜材
150 当接部材
180 床材
185 足場
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7