(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】抗菌性組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 59/06 20060101AFI20230620BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20230620BHJP
A01N 37/36 20060101ALI20230620BHJP
A01N 37/44 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
A01N59/06 Z
A01P3/00
A01N37/36
A01N37/44
(21)【出願番号】P 2019549277
(86)(22)【出願日】2018-10-15
(86)【国際出願番号】 JP2018038371
(87)【国際公開番号】W WO2019078173
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2017200181
(32)【優先日】2017-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】516194033
【氏名又は名称】株式会社日本抗菌総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100208889
【氏名又は名称】岡田 教子
(72)【発明者】
【氏名】富士野 彰宏
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-014801(JP,A)
【文献】特開2002-119241(JP,A)
【文献】特開2009-221177(JP,A)
【文献】特開2013-028544(JP,A)
【文献】国際公開第2011/058964(WO,A1)
【文献】特開2003-038146(JP,A)
【文献】特開2014-024780(JP,A)
【文献】特開2008-079579(JP,A)
【文献】特開2016-079097(JP,A)
【文献】特開平11-290044(JP,A)
【文献】特開平08-256703(JP,A)
【文献】特開平11-164675(JP,A)
【文献】特開平08-154640(JP,A)
【文献】特開2013-179907(JP,A)
【文献】特開2001-346556(JP,A)
【文献】特開平09-248166(JP,A)
【文献】東尾 久雄,浅漬用調味液の開発と技術,ニューフードインダストリー,第35巻第6号,宇田 守孝 株式会社食品資材研究会,1993年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成カルシウム100質量部と、
アスパラギン酸のアルカリ金属塩、
及びアスパラギン酸のアルカリ土類金属
塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の有機酸の金属塩100~600質量部とを含むことを特徴とする抗菌性組成物。
【請求項2】
焼成カルシウム100質量部と、
有機酸の金属塩100~600質量部とを含む抗菌性組成物であって、
上記有機酸の金属塩が、クエン酸のアルカリ金属塩及びクエン酸のアルカリ土類金属塩からなる群から選ばれた少なくとも一種のクエン酸の金属塩と、
アスパラギン酸のアルカリ金属塩、アスパラギン酸のアルカリ土類金属塩、エチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩及びエチレンジアミン四酢酸のアルカリ土類金属塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の有機酸の金属塩とを含有していることを特徴とする抗菌性組成物。
【請求項3】
有機酸の金属塩が、クエン酸の金属塩を30~70質量%含有していることを特徴とする
請求項2に記載の抗菌性組成物。
【請求項4】
有機酸の金属塩が、有機酸のナトリウム塩又は有機酸のカリウム塩であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌性組成物。
【請求項5】
炭酸塩又は炭酸水素塩を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の抗菌性組成物。
【請求項6】
炭酸塩が、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムであることを特徴とする
請求項5に記載の抗菌性組成物。
【請求項7】
炭酸水素塩が、炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウムであることを特徴とする
請求項5に記載の抗菌性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衛生環境に対する意識の向上から、屋内外での食事の際にウエットシート又はおしぼりが用いられている。また、トイレの使用後に汚れた部分を簡易に除去するためのトイレクリーナが用いられている。
【0003】
特許文献1には、水溶性バインダーが添加された原紙シートに対して薬液を含浸させた水解性シートであって、前記原紙シートは、複数枚の原紙をプライ加工したものであり、かつ目付が30~150gsmであり、広葉樹パルプに対する針葉樹パルプの配合比を1/1未満とし、当該原紙シートの厚み方向内側から表面及び裏面に向かうにつれて前記水溶性バインダーの含有量を増加させた状態とし、前記薬液には、前記水溶性バインダーに架橋反応を起こさせる架橋剤、及び除菌剤を含み、前記原紙シートの重量に対して150~300重量%の前記薬液を含浸させている水解性シートが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、下記(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)を含有する抗菌性組成物が開示されている。
(A)キトサン及び/又はその塩
(B)0.001~0.10質量%の第四級アンモニウム塩
(C)アルコール類
(D)0.01~1質量%のベタイン系両性界面活性剤
(E)水
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-223030号公報
【文献】特開2016-94410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の水解性シートは、原紙シートに薬液を含浸させて製造されている。そして、薬液は、特許文献2の抗菌性組成物の如く、一般的に塩化ベンザルコニウム(第四級アンモニウム塩)を水に溶解させて作製されている。
【0007】
しかしながら、塩化ベンザルコニウムを水に溶解させて沈澱を生じさせずに所定濃度の水溶液を作製するためには、製造条件をコントロールする必要があることから、通常、塩化ベンザルコニウムは、水に溶解させて水溶液とした上で供給されている。
【0008】
そのため、塩化ベンザルコニウムの輸送時において、水溶液に含まれる塩化ベンザルコニウム自体の含有量が少量であるにもかかわらず、塩化ベンザルコニウム水溶液の体積及び重量が大きくなり、輸送コスト及び保管コストがかさむという問題点を有している。
【0009】
本発明は、沈澱を殆ど生じさせることなく簡単に水に溶解させて薬液を製造することができ、輸送コスト及び保管コストを抑制することができる抗菌性組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の抗菌性組成物は、焼成カルシウム100質量部と、
クエン酸のアルカリ金属塩、クエン酸のアルカリ土類金属塩、グルコン酸のアルカリ金属塩、グルコン酸のアルカリ土類金属塩、アスコルビン酸のアルカリ金属塩、アスコルビン酸のアルカリ土類金属塩、リンゴ酸のアルカリ金属塩、リンゴ酸のアルカリ土類金属塩、コハク酸のアルカリ金属塩、コハク酸のアルカリ土類金属塩、アスパラギン酸のアルカリ金属塩、アスパラギン酸のアルカリ土類金属塩、酢酸のアルカリ金属塩、酢酸のアルカリ土類金属塩、エチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩及びエチレンジアミン四酢酸のアルカリ土類金属塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の有機酸の金属塩100~600質量部とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の抗菌性組成物は、水に溶解させる時の条件を殆ど制御することなく、水に容易に溶解させて、沈澱が殆ど生じていない薬液を製造することができる。そして、得られた薬液は、優れた抗菌性を有している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の抗菌性組成物は、焼成カルシウムと、有機酸の金属塩とを含む。
【0013】
(焼成カルシウム)
抗菌性組成物は、焼成カルシウムを含有している。焼成カルシウムとしては、ほたて貝殻焼成カルシウムが好ましい。
【0014】
焼成カルシウムは、牡蠣殻、ホタテ貝殻、ホッキ貝殻、卵殻、珊瑚殻などの焼成前の主成分が炭酸カルシウムである動物性由来のカルシウム原料を600℃以上、好ましくは900~1200℃の温度で15~60分程度焼成又は通電加熱して得られ、主成分を酸化カルシウムとするものである。
【0015】
(有機酸の金属塩)
抗菌性組成物は、有機酸の金属塩を含有している。
【0016】
有機酸の金属塩としては、クエン酸のアルカリ金属塩、クエン酸のアルカリ土類金属塩、グルコン酸のアルカリ金属塩、グルコン酸のアルカリ土類金属塩、アスコルビン酸のアルカリ金属塩、アスコルビン酸のアルカリ土類金属塩、リンゴ酸のアルカリ金属塩、リンゴ酸のアルカリ土類金属塩、コハク酸のアルカリ金属塩、コハク酸のアルカリ土類金属塩、アスパラギン酸のアルカリ金属塩、アスパラギン酸のアルカリ土類金属塩、酢酸のアルカリ金属塩、酢酸のアルカリ土類金属塩、エチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩及びエチレンジアミン四酢酸のアルカリ土類金属塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の有機酸の金属塩を含有している。なお、有機酸の金属塩は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0017】
クエン酸のアルカリ金属塩としては、特に限定されないが、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムが好ましく、クエン酸カリウムがより好ましい。
【0018】
クエン酸のアルカリ土類金属塩としては、特に限定されず、例えば、クエン酸マグネシウム、クエン酸カルシウム、クエン酸バリウムなどが挙げられ、クエン酸マグネシウム及びクエン酸カルシウムが好ましい。
【0019】
グルコン酸のアルカリ金属塩としては、特に限定されないが、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウムが好ましく、グルコン酸ナトリウムがより好ましい。
【0020】
グルコン酸のアルカリ土類金属塩としては、特に限定されず、例えば、グルコン酸マグネシウム、グルコン酸カルシウム、グルコン酸バリウムなどが挙げられ、グルコン酸マグネシウム及びグルコン酸カルシウムが好ましい。
【0021】
アスコルビン酸のアルカリ金属塩としては、特に限定されないが、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウムが好ましく、アスコルビン酸ナトリウムがより好ましい。
【0022】
アスコルビン酸のアルカリ土類金属塩としては、特に限定されず、例えば、アスコルビン酸マグネシウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸バリウムなどが挙げられ、アスコルビン酸マグネシウム及びアスコルビン酸カルシウムが好ましい。
【0023】
リンゴ酸のアルカリ金属塩としては、特に限定されないが、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウムが好ましく、リンゴ酸ナトリウムがより好ましい。
【0024】
リンゴ酸のアルカリ土類金属塩としては、特に限定されず、例えば、リンゴ酸マグネシウム、リンゴ酸カルシウム、リンゴ酸バリウムなどが挙げられ、リンゴ酸マグネシウム及びリンゴ酸カルシウムが好ましい。
【0025】
コハク酸のアルカリ金属塩としては、特に限定されないが、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウムが好ましく、コハク酸ナトリウムがより好ましい。
【0026】
コハク酸のアルカリ土類金属塩としては、特に限定されず、例えば、コハク酸マグネシウム、コハク酸カルシウム、コハク酸バリウムなどが挙げられ、コハク酸マグネシウム及びコハク酸カルシウムが好ましい。
【0027】
アスパラギン酸のアルカリ金属塩としては、特に限定されないが、アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸カリウムが好ましく、アスパラギン酸ナトリウムがより好ましい。
【0028】
アスパラギン酸のアルカリ土類金属塩としては、特に限定されず、例えば、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸カルシウム、アスパラギン酸バリウムなどが挙げられ、アスパラギン酸マグネシウム及びアスパラギン酸カルシウムが好ましい。
【0029】
酢酸のアルカリ金属塩としては、特に限定されないが、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムが好ましく、酢酸ナトリウムがより好ましい。
【0030】
酢酸のアルカリ土類金属塩としては、特に限定されず、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウムなどが挙げられ、酢酸マグネシウム及び酢酸カルシウムが好ましい。
【0031】
エチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩としては、特に限定されないが、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸カリウムが好ましく、エチレンジアミン四酢酸ナトリウムがより好ましく、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムが特に好ましい。
【0032】
エチレンジアミン四酢酸のアルカリ土類金属塩としては、特に限定されず、例えば、エチレンジアミン四酢酸マグネシウム、エチレンジアミン四酢酸カルシウム、エチレンジアミン四酢酸バリウムなどが挙げられ、エチレンジアミン四酢酸マグネシウム及びエチレンジアミン四酢酸カルシウムが好ましい。
【0033】
有機酸の金属塩としては、クエン酸のアルカリ金属塩、クエン酸のアルカリ土類金属塩、グルコン酸のアルカリ金属塩、グルコン酸のアルカリ土類金属塩、リンゴ酸のアルカリ金属塩、リンゴ酸のアルカリ土類金属塩、エチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩及びエチレンジアミン四酢酸のアルカリ土類金属塩が好ましく、クエン酸のアルカリ金属塩、グルコン酸のアルカリ金属塩、グルコン酸のアルカリ土類金属塩、リンゴ酸のアルカリ金属塩、リンゴ酸のアルカリ土類金属塩、エチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩及びエチレンジアミン四酢酸のアルカリ土類金属塩がより好ましく、リンゴ酸のアルカリ金属塩、リンゴ酸のアルカリ土類金属塩、エチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩及びエチレンジアミン四酢酸のアルカリ土類金属塩が特に好ましく、エチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩及びエチレンジアミン四酢酸のアルカリ土類金属塩が最も好ましい。
【0034】
有機酸の金属塩が、グルコン酸のアルカリ金属塩及びグルコン酸のアルカリ土類金属塩からなる群から選ばれた少なくとも一種のグルコン酸の金属塩と、
コハク酸のアルカリ金属塩、コハク酸のアルカリ土類金属塩、リンゴ酸のアルカリ金属塩、リンゴ酸のアルカリ土類金属塩、クエン酸のアルカリ金属塩及びクエン酸のアルカリ土類金属塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の有機酸の金属塩とを含有していることが好ましい。
【0035】
有機酸の金属塩が、グルコン酸のアルカリ金属塩と、
コハク酸のアルカリ金属塩、リンゴ酸のアルカリ金属塩及びクエン酸のアルカリ金属塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の有機酸のアルカリ金属塩とを含有していることがより好ましい。
【0036】
有機酸の金属塩が、グルコン酸のナトリウム塩と、
コハク酸のナトリウム塩、リンゴ酸のナトリウム塩及びクエン酸のナトリウム塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の有機酸のナトリウム塩とを含有していることが特に好ましい。
【0037】
有機酸の金属塩が、グルコン酸のアルカリ金属塩及びグルコン酸のアルカリ土類金属塩からなる群から選ばれた少なくとも一種のグルコン酸の金属塩と、
コハク酸のアルカリ金属塩、コハク酸のアルカリ土類金属塩、リンゴ酸のアルカリ金属塩及びリンゴ酸のアルカリ土類金属塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の有機酸の金属塩とを含有していることが好ましい。
【0038】
有機酸の金属塩が、グルコン酸のアルカリ金属塩と、
コハク酸のアルカリ金属塩及びリンゴ酸のアルカリ金属塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の有機酸のアルカリ金属塩とを含有していることがより好ましい。
【0039】
有機酸の金属塩が、グルコン酸のナトリウム塩と、
コハク酸のナトリウム塩及びリンゴ酸のナトリウム塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の有機酸のナトリウム塩とを含有していることが特に好ましい。
【0040】
有機酸の金属塩が、グルコン酸のアルカリ金属塩及びグルコン酸のアルカリ土類金属塩からなる群から選ばれた少なくとも一種のグルコン酸の金属塩と、
コハク酸のアルカリ金属塩及びコハク酸のアルカリ土類金属塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の有機酸の金属塩とを含有していることが好ましい。
【0041】
有機酸の金属塩が、グルコン酸のアルカリ金属塩と、コハク酸のアルカリ金属塩とを含有していることがより好ましい。
【0042】
有機酸の金属塩が、グルコン酸のナトリウム塩と、コハク酸のナトリウム塩とを含有していることが特に好ましい。
【0043】
有機酸の金属塩が、グルコン酸の金属塩を含有している場合、有機酸の金属塩中、グルコン酸の金属塩の含有量は、30~70質量%が好ましく、35~65質量%がより好ましく、40~60質量%が特に好ましい。
【0044】
有機酸の金属塩が、クエン酸のアルカリ金属塩及びクエン酸のアルカリ土類金属塩からなる群から選ばれた少なくとも一種のクエン酸の金属塩と、
コハク酸のアルカリ金属塩、コハク酸のアルカリ土類金属塩、リンゴ酸のアルカリ金属塩、リンゴ酸のアルカリ土類金属塩、アスパラギン酸のアルカリ金属塩、アスパラギン酸のアルカリ土類金属塩、エチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩及びエチレンジアミン四酢酸のアルカリ土類金属塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の有機酸の金属塩とを含有していることが好ましい。
【0045】
有機酸の金属塩が、クエン酸のアルカリ金属塩と、
コハク酸のアルカリ金属塩、リンゴ酸のアルカリ金属塩、アスパラギン酸のアルカリ金属塩及びエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の有機酸のアルカリ金属塩とを含有していることがより好ましい。
【0046】
有機酸の金属塩が、クエン酸のナトリウム塩と、
コハク酸のナトリウム塩、リンゴ酸のナトリウム塩、アスパラギン酸のナトリウム塩及びエチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の有機酸のナトリウム塩とを含有していることが特に好ましい。
【0047】
有機酸の金属塩が、クエン酸のアルカリ金属塩及びクエン酸のアルカリ土類金属塩からなる群から選ばれた少なくとも一種のクエン酸の金属塩と、
コハク酸のアルカリ金属塩、コハク酸のアルカリ土類金属塩、リンゴ酸のアルカリ金属塩及びリンゴ酸のアルカリ土類金属塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の有機酸の金属塩とを含有していることが好ましい。
【0048】
有機酸の金属塩が、クエン酸のアルカリ金属塩と、
コハク酸のアルカリ金属塩及びリンゴ酸のアルカリ金属塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の有機酸のアルカリ金属塩とを含有していることがより好ましい。
【0049】
有機酸の金属塩が、クエン酸のナトリウム塩と、
コハク酸のナトリウム塩及びリンゴ酸のナトリウム塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の有機酸のナトリウム塩とを含有していることが特に好ましい。
【0050】
有機酸の金属塩が、クエン酸のアルカリ金属塩及びクエン酸のアルカリ土類金属塩からなる群から選ばれた少なくとも一種のクエン酸の金属塩と、
コハク酸のアルカリ金属塩及びコハク酸のアルカリ土類金属塩からなる群から選ばれた少なくとも一種のコハク酸の金属塩とを含有していることが好ましい。
【0051】
有機酸の金属塩が、クエン酸のアルカリ金属塩と、コハク酸のアルカリ金属塩とを含有していることがより好ましい。
【0052】
有機酸の金属塩が、クエン酸のナトリウム塩と、コハク酸のナトリウム塩とを含有していることが特に好ましい。
【0053】
有機酸の金属塩が、クエン酸の金属塩を含有している場合、有機酸の金属塩中、クエン酸の金属塩の含有量は、30~70質量%が好ましく、35~65質量%がより好ましく、40~60質量%が特に好ましい。
【0054】
抗菌性組成物中における有機酸の金属塩の含有量は、焼成カルシウム100質量部に対して100質量部以上であり、150質量部以上が好ましく、200質量部以上がより好ましく、220質量部以上がより好ましく、250質量部以上が特に好ましい。有機酸の金属塩の含有量が100質量部以上であると、抗菌性組成物は優れた抗菌性を有する。
【0055】
抗菌性組成物中における有機酸の金属塩の含有量は、焼成カルシウム100質量部に対して600質量部以下であり、500質量部以下が好ましく、450質量部以下がより好ましく、350質量部以下が特に好ましい。有機酸の金属塩の含有量は、600質量部以下であると、抗菌性組成物中に有機酸の金属塩を沈澱させることなく溶解させることができる。
【0056】
なお、有機酸の金属塩が複数種類含有されている場合は、「有機酸の金属塩の含有量」とは、有機酸の金属塩の総含有量をいう。
【0057】
抗菌性組成物は、焼成カルシウムと有機酸の金属塩とを含有していることから、焼成カルシウムの抗菌性を維持しながら、抗菌性組成物を水中に沈澱を生じさせることなく簡単に溶解させることができる。この際、溶解条件を精密に制御することなく、抗菌性組成物を水に加えるだけで簡単に溶解させて抗菌性を有する薬液を作製することができる。得られた薬液は、温度変化にもかかわらず、抗菌性組成物、特に、焼成カルシウムの沈澱を生じさせることは殆どない。
【0058】
(炭酸塩、炭酸水素塩及び珪酸塩)
抗菌性組成物は、炭酸塩、炭酸水素塩又は珪酸塩を含有していることが好ましい。抗菌性組成物の抗菌性をより向上させることができると共に、抗菌性組成物に優れた洗浄性を付与することができる。
【0059】
炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられ、炭酸ナトリウムが好ましい。
【0060】
炭酸水素塩としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどが挙げられ、炭酸水素ナトリウムが好ましい。
【0061】
珪酸塩としては、例えば、M2O/nSiO2(式中、Mはナトリウム又はカリウムであり、nはSiO2のモル数である。)で表され、具体的には、オルソ珪酸ナトリウム、オルソ珪酸カリウム、セスキ珪酸ナトリウム、セスキ珪酸カリウム、メタ珪酸ナトリウム、メタ珪酸カリウムや、JIS K1408に規定されている1号珪酸ナトリウム、1号珪酸カリウム、2号珪酸ナトリウム、2号珪酸カリウム、3号珪酸ナトリウム、3号珪酸カリウムなどが挙げられ、珪酸ナトリウムが好ましい。
【0062】
抗菌性組成物中における有機酸の金属塩の質量と炭酸塩の質量との比(有機酸の金属塩の質量/炭酸塩の質量)は、1~50が好ましく、2~30がより好ましく、3~20がより好ましく、3.5~10が特に好ましい。有機酸の金属塩の質量と炭酸塩の質量との比(有機酸の金属塩の質量/炭酸塩の質量)が上記範囲内であると、抗菌性組成物の抗菌性を向上させることができると共に、抗菌性組成物に洗浄性を付与することができる。
【0063】
抗菌性組成物中における有機酸の金属塩の質量と炭酸水素塩の質量との比(有機酸の金属塩の質量/炭酸水素塩の質量)は、1~50が好ましく、2~30がより好ましく、3~20がより好ましく、3.5~10が特に好ましい。有機酸の金属塩の質量と炭酸水素塩の質量との比(有機酸の金属塩の質量/炭酸水素塩の質量)が上記範囲内であると、抗菌性組成物の抗菌性を向上させることができると共に、抗菌性組成物に洗浄性を付与することができる。
【0064】
抗菌性組成物中における有機酸の金属塩の質量と珪酸塩の質量との比(有機酸の金属塩の質量/珪酸塩の質量)は、1~50が好ましく、2~30がより好ましく、3~20が特に好ましく、3.5~10が最も好ましい。有機酸の金属塩の質量と珪酸塩の質量との比(有機酸の金属塩の質量/珪酸塩の質量)が上記範囲内であると、抗菌性組成物の抗菌性を向上させることができると共に、抗菌性組成物に洗浄性を付与することができる。
【0065】
(抗菌性組成物)
抗菌性組成物は、焼成カルシウムと有機酸の金属塩とを汎用の混合手段を用いて混合することによって製造することができる。
【0066】
抗菌性組成物の使用要領について説明する。抗菌性組成物は、水に溶解させて抗菌性を有する薬液を製造することができる。抗菌性組成物を水中に溶解させるにあたって溶解条件を細かく制御する必要はなく、抗菌性組成物を水中に加えるだけで抗菌性組成物を水中に容易に溶解させることができる。
【0067】
薬液中における抗菌性組成物の含有量は、水100質量部に対して0.01~10質量部が好ましく、0.05~5質量部がより好ましく、0.07~3質量部がより好ましく、0.08~2質量部が特に好ましい。
【0068】
得られた薬液は、抗菌性組成物の沈澱、特に、焼成カルシウムの沈澱を殆ど生じることがない。従って、薬液を用いるにあたって沈殿物のろ過を行う必要はなく、設備及び製造工程の簡略化を図ることができる。
【0069】
しかも、得られた薬液は、防腐剤の添加を必要とせず、変質することなく長期間に亘って優れた抗菌性を維持しながら安定的に保存することができる。なお、防腐剤としては、一般的に用いられているものが挙げられ、例えば、パラオキシ安息香酸エステル又はその塩類(パラベン類)、フェノキシエタノール、安息香酸又はその塩類、ソルビン酸又はその塩類、及び、グルコン酸クロルヘキシジンなどが挙げられる。
【0070】
そして、薬液を布(不織布、織布、編布など)に含浸させることによって抗菌性シートを作製することができる。抗菌性シートは、例えば、おしぼり、清拭シート、トイレクリーナなどとして用いることができる。
【0071】
また、抗菌性組成物は、人体に有害な化合物を含有していないことから、野菜や果物などの食料品を薬液に浸すことによって、食料品に抗菌性を付与し、保存性を向上させることができる。
【0072】
更に、薬液を洗浄剤として用いることができ、薬液で手足などの身体を拭くことによって、身体を清潔にすることができる。
【0073】
又、洗髪剤(シャンプー)、ヘアリンス及び身体を洗浄するための洗浄剤には水が含まれているので、水に抗菌性組成物を溶解させることによって、洗髪剤、ヘアリンス及び洗浄剤に抗菌性を付与することができ、洗髪剤、ヘアリンス及び洗浄剤を長期間に亘って安定的に保存することができる。
【0074】
抗菌性組成物は水性塗料に含有させることによって、水性塗料に抗菌性を付与することができる。水性塗料は、水と、水に分散させたバインダー成分とを含有している。抗菌性組成物は、沈澱を殆ど生じさせることなく水に溶解させることができるので、水性塗料中に抗菌性組成物を均一に含有させることができ、得られる塗膜中に均一に含有させて抗菌性を有する塗膜を形成することができる。
【0075】
抗菌性組成物は、化粧品に含有させて化粧品に抗菌性を付与することもできる。化粧品としては、水を含有しておればよく、例えば、化粧水などが挙げられる。
【0076】
また、抗菌性組成物は、合成樹脂に練り込んで用いてもよい。抗菌性組成物及び合成樹脂を押出機に供給して溶融混練し、押出機から押出して所望形状の成形品(例えば、シート、食品保存袋、日用品、車両内装材、建築用内装材)を成形することによって、抗菌性を有する成形品を得ることができる。
【実施例】
【0077】
以下に、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されない。
【0078】
(実施例1~5、参考例1~31、比較例1~4)
ほたて貝焼成カルシウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、リンゴ酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム及び珪酸ナトリウムを表1~4に示した所定量ずつ混合することによって抗菌性組成物を作製した。
【0079】
得られた抗菌性組成物の抗菌性及び溶解性を下記の要領で測定し、その結果を表1~4に示した。
【0080】
(抗菌性)
抗菌性組成物1質量部を水1000質量部に添加して溶解させて試験試料を作製した。大腸菌(Escherichia coli)を普通寒天培地に接種し、35℃にて24時間に亘って培養した。培養後、滅菌生理食塩水を用いて107/mLに調整したものを試験菌液とした。
【0081】
試験試料200mLに試験菌液100μL接種して25℃で培養した。接種5分後及び30分後に試験試料の10倍希釈系列を、滅菌生理食塩水を用いて希釈作製したものを試験液とし、この試験液をSCDLP寒天培地に接種し、35℃にて48時間培養した。培養後、形成されたコロニーをカウントして生菌数(cfu/mL)を換算した。
【0082】
又、滅菌燐酸緩衝生理食塩水をコントロールとして上記と同様の要領で試験を行って生菌数を換算し、初菌数(cfu/mL)とした。
抗菌性(%)=100×(初菌数-生菌数)/(初菌数)
【0083】
(溶解性)
抗菌性組成物0.4質量部を水100質量部に添加して溶解させて薬液を作製した。得られた薬液を24時間静置した後、薬液の濁度(TUR)を測定器(共立理化学研究所社製 商品名「WA-PT-4DG」)を用いて測定した。なお、薬液の濁度は、ホルマジン溶液を標準液として採用した。濁度が20ホルマジン度以上である場合は「OVER」と表記した。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2017年10月16日に出願された日本国特許出願第2017-200181に基づく優先権を主張し、この出願の開示はこれらの全体を参照することにより本明細書に組み込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の抗菌性組成物は、水に容易に溶解させて、薬液を製造することができる。薬液を用いて、抗菌性シートを作製し、又は、食料品に抗菌性を付与することができる。薬液を洗浄剤として用いることもできる。洗浄剤、水性塗料、化粧品及び合成樹脂などの対象物に抗菌性組成物を含有させることによって、対象物に抗菌性を付与することができる。