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特許7298926癌の治療のためのネオアンチゲンワクチン組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】癌の治療のためのネオアンチゲンワクチン組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20230620BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230620BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20230620BHJP
   C40B 40/08 20060101ALI20230620BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230620BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20230620BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230620BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230620BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20230620BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230620BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230620BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20230620BHJP
   A61K 39/42 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/85 Z
C40B40/08
C07K19/00
C07K14/47
A61P35/00
A61P35/02
A61K38/16
A61K48/00
A61K35/76
A61K39/12
A61K39/42
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020501243
(86)(22)【出願日】2018-07-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 EP2018069047
(87)【国際公開番号】W WO2019012091
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-06-25
(31)【優先権主張番号】17181026.0
(32)【優先日】2017-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17200036.6
(32)【優先日】2017-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518435943
【氏名又は名称】ノイスコム アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100163544
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 緑
(72)【発明者】
【氏名】ニコシア,アルフレド
(72)【発明者】
【氏名】スカルセッリ,エリーザ
(72)【発明者】
【氏名】ダリーゼ,アンナ モレーナ
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/020026(WO,A1)
【文献】特表2014-523406(JP,A)
【文献】特表2012-509071(JP,A)
【文献】国際公開第2017/060857(WO,A1)
【文献】Ugur Sahin,Personalized RNA mutanome vaccines mobilize poly-specific therapeutic immunity against cancer,Nature,2017年07月05日,Vol. 547,p. 222-226
【文献】The Journal of Immunology,2008年,Vol. 180,p. 309-318,doi:10.4049/jimmunol.180.1.309
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/12
C07K 14/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも31個の腫瘍特異的なネオアンチゲンと、少なくとも1個のT細胞エンハンサーアミノ酸配列とを含むポリペプチドであって、前記ネオアンチゲンが互いに独立して、8アミノ酸長~50アミノ酸長を有し、前記T細胞エンハンサーアミノ酸配列は、不変鎖又は組織型プラスミノーゲン活性化因子(TPA)のリーダー配列であり、前記T細胞エンハンサーアミノ酸配列は、前記ポリペプチド内のN末端に配置される、ポリペプチド。
【請求項2】
腫瘍特異的なネオアンチゲンはそれぞれ、互いに独立して、15アミノ酸長~35アミノ酸長、又は25アミノ酸長を有する、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
腫瘍特異的なネオアンチゲンはそれぞれ、独立して、単一アミノ酸突然変異体ペプチド、フレームシフトペプチド、リードスルー突然変異ペプチド、及びスプライス部位突然変異体ペプチドからなる群から選択される、請求項1又は2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記腫瘍特異的なネオアンチゲンの少なくとも4個が、患者においてT細胞応答を誘発する、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記腫瘍特異的なネオアンチゲンは、互いに直接連結される、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
(i)前記TPAは、配列番号42によるアミノ酸配列を有する伸長されたTPAリーダー配列であり、又は、配列番号42によるアミノ酸配列を有する伸長されたTPAリーダー配列であり、前記ポリペプチドのN末端に存在し、及び/又は、
(ii)前記不変鎖は、
(a)配列番号36によるヒト不変鎖、配列番号37によるマウス不変鎖、及び配列番号38によるニシキテグリ不変鎖、
(b)(a)による不変鎖の免疫刺激性フラグメント、及び/又は、
(c)(a)による不変鎖又は(b)によるそのフラグメントに対して少なくとも95%の配列同一性を有する、(a)又は(b)の免疫刺激性変異体、
からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする核酸。
【請求項8】
発現制御配列に作動可能に連結される、請求項7に記載の核酸を含むベクター。
【請求項9】
それぞれが請求項7に記載の核酸を含む1個以上の発現ベクターのコレクションであって、発現ベクターがそれぞれ、プラスミド;コスミド;RNA;アジュバントと配合されたRNA;リポソーム粒子中に配合されたRNA;自己増幅RNA(SAM);アジュバントと配合されたSAM;リポソーム粒子中に配合されたSAM;ウイルスベクター、又はアルファウイルスベクター、ベネズエラウマ脳炎(VEE)ウイルスベクター、シンドビス(SIN)ウイルスベクター、セムリキ森林ウイルス(SFV)ウイルスベクター、サル若しくはヒトサイトメガロウイルス(CMV)ベクター、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)ベクター、レトロウイルス若しくはレンチウイルスベクター又は、チンパンジー若しくはボノボ若しくはゴリラに由来する複製可能な若しくは複製不全の大型類人猿由来アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター又は改変ワクシニアアンカラ(MVA)ベクターからなる群から選択される、1個以上の発現ベクターのコレクション。
【請求項10】
被験体における増殖性疾患の予防又は治療に使用される、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項7に記載の核酸、請求項8に記載のベクター又は請求項9に記載のベクターのコレクションと、チェックポイント分子の少なくとも1個のモジュレーター若しくは免疫モジュレーター又は該モジュレーター若しくは免疫モジュレーターをコードする核酸又は該モジュレーター若しくは免疫モジュレーターをコードする該核酸を含むベクターとを含むワクチンを含む組成物。
【請求項11】
チェックポイント分子の前記モジュレーターは、
(a)腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリーの成員のアゴニスト、又はCD27、CD40(CP-870893が例示される)、OX40、GITR若しくはCD137のアゴニスト、及び/又は、
(b)PD-1、PD-L1、CD274、A2AR、B7-H3(MGA271が例示される)、B7-H4、BTLA、CTLA-4、IDO、KIR、LAG3、TIM-3、若しくはVISTAのアンタゴニスト若しくはB7-CD28スーパーファミリーの成員のアンタゴニスト、又はCD28若しくはICOSのアンタゴニスト若しくはそれらのリガンドのアンタゴニスト、及び/又は、
(c)IL-2、IL-12、IL-15によって例示されるT細胞増殖因子である他の免疫モジュレーター、
からなる群から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
チェックポイント分子の前記モジュレーターの投与は、前記ワクチンの投与の開始前に開始されるか、若しくはチェックポイント阻害剤の投与は、前記ワクチンの投与の開始後に開始されるか、若しくはチェックポイント阻害剤の投与は、前記ワクチンの投与の開始と同時に開始され、又は、チェックポイント分子の前記モジュレーターの投与は、前記ワクチンの投与の開始前に開始されるか、若しくはチェックポイント阻害剤の投与は、前記ワクチンの投与の開始後に開始されるか、若しくはチェックポイント阻害剤の投与は、前記ワクチンの投与の開始と同時に開始され、ワクチン接種計画は、2個の異なるウイルスベクターによる異種プライムブーストである、請求項10又は11に記載の組成物。
【請求項13】
前記被験体は、
(a)唇、口腔及び咽頭の悪性新生物、及び/又は、
(b)消化器の悪性新生物、及び/又は、
(c)呼吸器及び胸腔内臓器の悪性新生物、及び/又は、
(d)骨及び関節軟骨の悪性新生物、及び/又は、
(e)皮膚の黒色腫及び他の悪性新生物、及び/又は、
(f)中皮組織及び軟組織の悪性新生物、及び/又は、
(g)胸部の悪性新生物、及び/又は、
(h)女性生殖器の悪性新生物、及び/又は、
(i)男性生殖器の悪性新生物、及び/又は、
(j)尿路の悪性新生物、及び/又は、
(k)眼、脳及び中枢神経系の他の部分の悪性新生物、及び/又は、
(l)甲状腺及び他の内分泌腺の悪性新生物、及び/又は、
(m)リンパ組織、造血組織及び関連組織の悪性新生物、
を患っているか、又は患う危険性がある、請求項1012のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記被験体は、N及びMの任意の病期の少なくとも病期T1のTNM分類に従う腫瘍、及び/又は直径が少なくとも約3 mmの病変を特徴とする腫瘍を有する、請求項1012のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
別々のパッケージング中に、
(i)請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項7に記載の核酸、請求項8に記載のベクター又は請求項9に記載のベクターのコレクションを含むワクチンと、
(ii)チェックポイント分子の少なくとも1個のモジュレーター又は該モジュレーターをコードする核酸又は該モジュレーターをコードする該核酸を含むベクターと、
を含む、ワクチン接種キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1個のT細胞エンハンサーアミノ酸配列に融合された少なくとも4個の異なる腫瘍特異的なネオアンチゲンを含むポリペプチド、かかるポリペプチドをコードする核酸配列、かかる核酸配列を含むベクター及びかかるベクターを含むベクターのコレクションを提供する。さらに、癌の治療に使用される、混合して又は別々に、本発明のポリペプチド、核酸配列、ベクター又はベクターのコレクションと、チェックポイント分子の少なくとも1個のモジュレーター又は別のタイプの免疫モジュレーターとを含むワクチンを含む組成物(compositionsof matter)が提供される。
【背景技術】
【0002】
最近、癌の治療に関する新たなモダリティが開発されている。免疫系と、腫瘍との間の相互作用に関する研究により、宿主免疫応答を逃れる重要な経路が同定され、T細胞抗腫瘍活性の力を解き放つ免疫チェックポイント阻害剤(CPI)抗体の開発が可能となった。その成功にもかかわらず、チェックポイント阻害剤は、少数の治療患者において有効である。CPI治療中のT細胞免疫応答のパターンの解析により、腫瘍細胞に対する非常に限られた数のT細胞特異性が、CPI治療中に再活性化され得ることが示された(非特許文献1)。
【0003】
幾つかの腫瘍抗原が同定されており、異なるカテゴリー:癌-生殖系列、組織分化抗原及び突然変異された自己タンパク質に由来するネオアンチゲンに分類されている(非特許文献2)。CPIによる治療中の自己抗原に対する免疫応答の寄与は、いまだ議論の余地がある(上述の非特許文献2で概説される)。CPI治療中に再活性されることが示されている特定の好ましいカテゴリーの癌抗原は、ネオアンチゲンである。近年、発現される遺伝子のコード配列における突然変異の結果として腫瘍に生成されるネオアンチゲンは、癌に対するワクチン接種の有望な標的となるという見解が、有力な証拠によって支持されている(非特許文献3)。ゲノムのコード領域における遺伝子変化に由来する突然変異されたタンパク質は、癌特異的なネオアンチゲンを形成し得る。癌ネオアンチゲンは、専ら腫瘍細胞上に存在し、正常細胞上には存在しない抗原である。ネオアンチゲンは、腫瘍細胞におけるDNA突然変異によって生成され、T細胞媒介性免疫応答による腫瘍細胞の認識及び死滅において重要な役割を果たすことが示されている。
【0004】
癌ゲノムの完全配列を、適時にかつ安価な方法で決定することを可能にする次世代シーケンシング(NGS)の出現により、ヒト腫瘍の突然変異スペクトルが明らかになった(非特許文献4)。最も頻発するタイプの突然変異は、非同義単一ヌクレオチド変異体(SNV)であり、腫瘍に見出される単一ヌクレオチド変異体の中央値数は、それらの組織像に応じて非常に様々である。NSCLC及び黒色腫のような幾つかの腫瘍は、高い遺伝子変異量(mutationalburden:突然変異負荷)及び200を超える突然変異の中央値数を有し、外れ値によっては、1000超の突然変異を有するものもある。
【0005】
近年、RNA又はペプチドのいずれかに基づく2個の異なる個別化ワクチン接種アプローチが、第一相臨床研究で評価されている。得られたデータは、ワクチン接種が、限られた数の既存のネオアンチゲン特異的なT細胞を増やすことができるとともに、癌患者における新たなT細胞特異性のより広範囲のレパートリーを誘導することができることを示している(上述の非特許文献4及び非特許文献5)。両方のアプローチの主な制限は、これらのワクチン接種アプローチによって標的とされるネオアンチゲンの最大数である。公開データに基づくペプチドベースのアプローチに関する上限は、20個のペプチドであり、ペプチドを合成することができないこともあることから、全ての患者では到達されなかった。RNAベースのアプローチに関する上述の上限は、たったの10個の突然変異が各ワクチンに含まれていたため、更に低い。これらのワクチン接種アプローチの有効性を示す臨床データは、依然として利用可能でない。癌ワクチン接種において、ワクチンにより誘導されるT細胞によって認識されない腫瘍変異体の出現による腫瘍エスケープを回避することが重要である。癌ワクチンが癌を治癒する課題は、一度に最大数の癌細胞を認識及び排除することが可能な免疫T細胞の外見上多様な集団を誘導することであり、したがって、ワクチンが非常に多数の腫瘍抗原をコードすることが望ましい。
【0006】
さらに、特許文献1は、リンカーによって結合されるたった10個のネオアンチゲンを有する構築物の例を開示しているが、ほんの少数のネオアンチゲンの免疫原性を示しているに過ぎず、有効性を実証していない。実際に、これまでの研究はいずれも、高い腫瘍負荷(tumor burden:腫瘍量)モデルにおいて有効性を示さなかった。
【0007】
癌ワクチン接種において、ワクチンにより誘導されるT細胞によって認識されない抗原の出現による腫瘍エスケープを回避することが重要である。癌ワクチンが癌を治癒する課題は、一度に最大数の癌細胞を認識及び排除することが可能な免疫T細胞の外見上多様な集団を誘導することであり、したがって、ワクチンが非常に多数の腫瘍抗原をコードすることが望ましい。
【0008】
本発明者らは、本発明者らの前臨床データに基づいて、限られた数のネオアンチゲンに基づくワクチンが、癌の予防又は循環腫瘍セルフリーDNAのような分子的方法によって診断される癌である微小残存病変(minimal residualdisease)の治療のための独立型の処置として完全に適していると予測している。微小残存病変は、イメージング方法、例えば、コンピューター断層撮影法(CT)スキャン、磁気共鳴画像法(MRI)、陽電子放射断層撮影法(PET)におけるシンチグラフィーによって検出される放射性トレーサーを用いた同位体診断法を使用した検出限界に満たない場合が多い。核医学における臨床研究により、最小病変の検出性は、直径が約1.5 cmであることが実証されている。さらに、本発明者らは、本発明者らの前臨床データに基づいて、a)多くのネオアンチゲン(すなわち、25個超)に基づくこと、及びb)チェックポイント分子阻害剤のような免疫モジュレーターと組み合わせることの両方を満たすワクチンのみが、樹立腫瘍を効果的に制御することができると予想しており、樹立腫瘍とは、イメージングを用いて診断され得る腫瘍塊(tumor masses)を意味する。
【0009】
限られた数のネオアンチゲンを標的とするワクチンに基づく従来技術のこれらの不利益及び更なる不利益を克服するために、本発明は、ヘッドトゥテールで結合され、かつ組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)リーダー配列又は不変鎖等の少なくとも1個のT細胞エンハンサーアミノ酸配列に融合された多くの異なる腫瘍ネオアンチゲン(すなわち、31個)をコードするポリヌクレオチド配列、及びこれらの核酸を含むベクターを提供する。ベクターワクチンが、かかる核酸を含むか、又はチェックポイント分子のモジュレーターと組み合わせて投与される場合、高い治療率が誘発される。
【0010】
本発明は、ほとんどのネオアンチゲンを含む、腫瘍に存在する免疫原のような非常に弱い免疫原に対する免疫系の活性化が、強力な免疫化プラットフォームを必要とし、コードされる抗原の特有の構造と組み合わせる必要があるという発見に基づく。
【0011】
多くのネオアンチゲンは、腫瘍に見出される突然変異の最も頻発するタイプである非同義SNVの点突然変異に由来する。タンパク質配列における単一アミノ酸の変化が、強力な免疫応答を誘導することが可能な新規エピトープを生成することはめったになく、ほとんどの場合、この小さな変化は、新規エピトープを全く生成しないか、又は非常に弱いものを生成することがある。アデノウイルス、特に大型類人猿由来アデノウイルス(GAd)ウイルスベクターに基づく遺伝子ワクチン接種プラットフォームは、T細胞応答の誘導にとって非常に強力であることが示され、順々に連結される異なるタンパク質由来のフラグメントをコードするポリヌクレオチドで構成される人工遺伝子のフォーマットにおいて、大きな抗原をコードするのに適している。
【0012】
予期せぬことに、本発明者らが、ネオアンチゲンに関してこのプラットフォームを使用した場合、本発明者らは、いかなる免疫応答も誘導することは不可能であった。本発明者らは、一連の癌ネオアンチゲンに融合することで、本出願において「T細胞エンハンサーアミノ酸配列」と称される免疫原性を回復させることが可能な特定の配列を同定した。かかるT細胞エンハンサーアミノ酸配列は、ネオアンチゲンの免疫原性の欠如又は乏しい免疫原性を克服するのに適していた。好ましくは、これらの配列は、ネオアンチゲンコード配列の上流に融合される。T細胞エンハンサーアミノ酸配列の中で、本発明者らは、免疫原性を回復させる能力を示す組織プラスミノーゲンリーダー配列(TPA)リーダー配列及び不変鎖(INV)、それらの変異体及びフラグメントを同定した。本発明者らはまた、ネオアンチゲンが、免疫原性を回復させるのに、リンカーによって結合される必要はないことを発見した。
【0013】
本発明の関連する更なる態様は、有効な癌ワクチン接種に必要とされる免疫原性ネオアンチゲンの数に関する。本発明者らは、大型類人猿由来アデノウイルスベクターに基づいて、少数のネオアンチゲンをコードする遺伝子ワクチンが、予防の状況では独立型の処置として非常に有効であるが、大きな樹立腫瘍の存在下での治療の状況で使用される場合には、有効でなく、抗PD-1抗体のようなT細胞消耗を逆転させることが可能な免疫調節性分子と協同しないことを発見した。代わって、リンカーを用いずにヘッドトゥテールで結合され、かつT細胞エンハンサーに融合された30個を超えるネオアンチゲンをコードする、より大きなワクチン構築物は、抗PD-1抗体と併用して投与されると、強力な相乗的抗腫瘍活性を示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】国際公開第2017/118702号
【非特許文献】
【0015】
【文献】Alsaab, H.O., et al. (2017) Front Pharmacol, 8: p. 561
【文献】Fritsch, E.F., et al. (2014) Cancer ImmunolRes. 2(6): 522-9
【文献】Kandoth, C., et al. (2013) Nature 502(7471): 333
【文献】Ott, P.A., et al. (2017) Nature 547(7662): 217
【文献】Sahin, U., et al. (2017) Nature 547(7662): 222
【発明の概要】
【0016】
第1の態様では、本発明は、少なくとも25個の異なる腫瘍特異的なネオアンチゲンと、少なくとも1個のT細胞エンハンサーアミノ酸配列とを含むポリペプチドに関する。
【0017】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様のポリペプチドをコードする核酸に関する。
【0018】
第3の態様では、本発明は、発現制御配列に作動可能に連結される、本発明の第2の態様の核酸を含むベクターに関する。
【0019】
第4の態様では、本発明は、それぞれが本発明の第2の態様による核酸を含む1個以上の発現ベクターのコレクションであって、発現ベクターはそれぞれ、プラスミド;コスミド;RNA;アジュバントと配合されたRNA;リポソーム粒子中に配合されたRNA;自己増幅RNA(SAM);アジュバントと配合されたSAM;リポソーム粒子中に配合されたSAM;ウイルスベクター、好ましくはアルファウイルスベクター、ベネズエラ脳炎(VEE)ウイルスベクター、シンドビス(SIN)ウイルスベクター、セムリキ森林ウイルス(SFV)ウイルスベクター、サル若しくはヒトサイトメガロウイルス(CMV)ベクター、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)ベクター、レトロウイルス若しくはレンチウイルスベクター、好ましくは、チンパンジー若しくはボノボ若しくはゴリラに由来することが好ましい複製可能な若しくは複製不全の大型類人猿由来アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター又は改変ワクシニアアンカラ(MVA)ベクターからなる群から選択される、1個以上の発現ベクターのコレクションに関する。
【0020】
第5の態様では、本発明は、被験体(subject:対象)における増殖性疾患の予防又は治療に使用される、第1の態様のポリペプチド、本発明の第2の態様の核酸、本発明の第3の態様のベクター又は本発明の第4の態様によるベクターのコレクションと、チェックポイント分子の少なくとも1個のモジュレーター又は該モジュレーターをコードする核酸又は該モジュレーターをコードする該核酸を含むベクターとを含むワクチンを含む組成物に関する。
【0021】
第6の態様では、本発明は、別々のパッケージング中に、
(i)本発明の第1の態様のポリペプチド、本発明の第2の態様の核酸、本発明の第3の態様のベクター又は本発明の第4の態様によるベクターのコレクションを含むワクチンと、
(ii)チェックポイント分子の少なくとも1個のモジュレーター又は該モジュレーターをコードする核酸又は該モジュレーターをコードする該核酸を含むベクターと、
を含む、ワクチン接種キットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】CT26五胞体(pentatope:ペンタトープ)抗原(CT26-5)に連結されたヒトINV完全長(CT26-5-INV)又はTPA(CT26-5TPA)配列をコードするGAdベクターの免疫原性の図である。報告される値は、免疫化した動物の脾臓細胞に関するELISpotアッセイによって得られた。脾細胞は、ネオアンチゲンを含有する5個の突然変異の配列に相当する5個の合成ペプチドのプールを用いて、ワクチン接種(5×108 vpの用量)の3週後に、ex vivoで刺激した。応答は、脾細胞100万個当たりのIFNγを産生するT細胞の数として表される。
図2】GAd-CT26-31 TPA及びGAd-CT26-5 TPAベクターの免疫原性の図である。GAdベクターを、5×108 vpの用量で筋内注射して、T細胞応答は、免疫化の3週後のIFN-γ ELISpotによって測定され、ここでは、脾細胞100万個当たりのINFγを産生するT細胞の数として表される。免疫原性であるという結果になった癌突然変異に対する応答を示す。ネオアンチゲン#5、#18、#28は、2つのベクターによって共有される。破線は、陽性応答に対する閾値を表す。
図3】CT26ネオアンチゲンをコードするGAd-CT26-5及びGAd-CT26-31ベクターを用いた予防的なワクチン接種は、腫瘍の発生を効果的に制御することを示す図である。マウス(n=8~10/群)に、GAd-CT26-5又はGAd-CT26-31をワクチン接種して、免疫化の2週後に、CT26細胞を皮下注射した。腫瘍成長を経時的にモニタリングした。GAd対処置していない(モック)マウスにおける接種の28日後に測定した腫瘍体積を示す。
図4】GAd-CT26-5及びGAd-CT26-31ベクターを用いた初期ワクチン接種は、腫瘍成長を効果的に制御することを示す図である。マウス(n=8~10/群)に、CT26細胞を静脈内接種して(0日目)、治療していないままである(Cntr)か、又は3日目に、5×108 vpのGAd-CT26-5若しくはGAd-CT26-31を注射した。16日目に計数した肺小結節の数を示す。
図5A】高い腫瘍負荷を有する動物におけるGAdワクチンの有効性は、多くのネオアンチゲンを標的とすること、また抗PD1との組合せを必要とする。マウスにCT26細胞を皮下接種した。1週後、腫瘍体積(平均70 mm3~100 mm3)に従って、マウスを無作為化した。GAdワクチンを用いた治療は、0日目に開始した。A)経時的な個々のマウスの腫瘍成長を、GAd-CT26-31をワクチン接種したマウス対cntr(治療していない)マウスにおいて示す。B)抗PD1及び抗PD1とGAd-CT26-5又はGAd-CT26-31との組合せの有効性。ワクチンは、0日目に(筋内)投与したのに対して、抗PD1は、16日目まで毎週2回(腹腔内)付与した。経時的な個々のマウスにおける腫瘍成長を示す。統計値は、治癒されたマウス(レスポンダー)対非レスポンダーマウスの数を評価するカイ二乗検定によって算出される。
図5B】同上
図6】GAd-CT26-31及び抗PD1治療を受けた腫瘍担持マウスにおいて、IFN-γ ELISpotによって測定されるneoAg特異的なT細胞応答(30日目)の図である。応答は、免疫原性neoAgに相当する合成ペプチドの存在下で刺激された脾細胞に関して測定され、脾細胞100万個当たりのIFN-γを産生するT細胞の数として表される。
図7】CD4+T細胞枯渇抗体(CD4枯渇)又はCD8+T細胞枯渇抗体(CD8枯渇)の存在下、又は非枯渇T細胞対照群における、GAd-CT26-31及び抗PD1で治療した腫瘍担持マウスの腫瘍成長の図である。データは、少なくとも2回の独立した実験を表す。統計学的有意性は、*(フィッシャーの正確確率検定によってP<0.05)又はNS(有意ではない)によって示される。
図8】併用治療由来のマウス(左)と、抗PD1治療のみ由来のマウス(右)との間の腫瘍内TCR多様性(クローン型の数)の有意差(片側ウィルコクソン検定)の図である。併用治療レスポンダーマウス(左、黒丸)、併用治療非レスポンダーマウス(左、黒四角)、抗PD1治療のみのレスポンダーマウス(右、上向き三角)、抗PD1治療のみの非レスポンダーマウス(右、下向き三角)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を以下で詳細に記載する前に、本明細書中に記載する特定の方法論、プロトコル及び試薬は変動し得るので、本発明はこれらに限定されないことを理解すべきである。本明細書中で使用される専門用語が、特定の実施形態を記載するためのものにすぎず、添付した特許請求の範囲のみによって限定される本発明の範囲を限定することは意図されないことも理解すべきである。他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0024】
好ましくは、本明細書中で使用される用語は、"A multilingual glossary of biotechnological terms: (IUPACRecommendations)", Leuenberger, H.G.W, Nagel, B. and Klbl, H. eds. (1995),Helvetica Chimica Acta, CH-4010 Basel, Switzerland)に記載されるように、並びにAxel Kleemann and Jurgen Engel, Thieme Medical Publishing, 1999による"Pharmaceutical Substances: Syntheses, Patents,Applications"、"Merck Index: An Encyclopediaof Chemicals, Drugs, and Biologicals", Susan Budavari et al.編, CRC Press, 1996、及びUnited StatesPharmacopeia-25/National Formulary-20(the United StatesPharmcopeial Convention, Inc., Rockville Md., 2001により出版)に記載されるように定義される。
【0025】
以下の本明細書及び添付の特許請求の範囲を通じて、文脈上他に必要な場合以外は、「を含む(comprise)」という単語、並びに「を含む(comprises)」及び「を含む(comprising)」等の変化形は、記載された特徴、整数若しくは工程、又は特徴、整数若しくは工程の群を包含することを示唆するが、任意の他の特徴、整数若しくは工程、又は整数若しくは工程の群を除外することを示唆しないと理解される。以下の節では本発明の種々の態様をより詳細に規定する。そのようにして規定した各態様は、反対の内容が明示されない限り、任意の他の態様(単数又は複数)と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であるとして示した任意の特徴を、好ましい又は有利であるとして示した任意の他の特徴(単数又は複数)と組み合わせることができる。
【0026】
複数の文書が、本明細書の文章全体を通じて引用される。本明細書中で引用される文書(全ての特許、特許出願、科学的刊行物、製造業者の仕様書、取扱説明書等を含む)の各々が、上記のものであるか又は下記のものであるかに関わらず、その全体において引用することにより本明細書の一部をなす。本明細書のどの記載も、本発明が従来の発明に基づくかかる開示に先行する権利を有しないことを認めるものと解釈すべきではない。
【0027】
定義
以下で、本明細書で頻繁に使用される用語の幾つかの定義を示す。これらの用語は、それらがそれぞれ使用される場合に、本明細書の残りの部分では、それぞれ定義される意味及び好ましい意味を有することとなる。
【0028】
「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、本明細書中では区別なく使用され、ヌクレオチドモノマーから作製されるポリマー又はオリゴマー高分子として理解される。ヌクレオチドモノマーは、核酸塩基、五炭糖(例えば、リボース又は2'-デオキシリボースであるが、これらに限定されない)、及び1個~3個のリン酸基で構成される。通常、核酸は、個々のヌクレオチドモノマー間のホスホジエステル結合により形成される。本発明の文脈において、好ましい核酸分子として、リボ核酸(RNA)、修飾RNA、デオキシリボ核酸(DNA)、及び例えば、RNA-DNAハイブリッド等のそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、核酸は、例えばリン酸トリエステル法に従って、化学的に合成することができる(例えば、Uhlmann, E. & Peyman, A. (1990) Chemical Reviews,90, 543-584を参照のこと)。
【0029】
本明細書中で使用する場合、「タンパク質」、「ペプチド(単数)」、「ポリペプチド(単数)」、「ペプチド(複数)」及び「ポリペプチド(複数)」という用語は、全体にわたって区別なく使用される。これらの用語は、本発明の文脈において、天然に存在するペプチド、例えば、天然に存在するタンパク質、及び天然に存在するアミノ酸又は天然に存在しないアミノ酸を包含し得る合成ペプチドの両方を指すのに使用される。
【0030】
「ネオアンチゲン」という用語は、本発明の文脈において、正常/生殖系列細胞中には存在しないが、形質転換された細胞、特に癌性細胞で見られる抗原を指すのに使用される。ネオアンチゲンは、1個以上、例えば、2個、3個、4個、5個又はそれ以上のネオエピトープを含み得る。本発明のポリペプチド中に含まれる各ネオアンチゲンの長さは、正常/生殖系列細胞で見られるエピトープを含む可能性が低いことを確定するように選択されることが好ましい。通常、これにより、ネオアンチゲンが、ネオエピトープを創出したアミノ酸変化(複数の場合もある)のC末端に及び/又はN末端に、12個以下のアミノ酸を含むことが確定され得る。
【0031】
突然変異された癌タンパク質は、DNAレベルで発生する突然変異によって生成され、ここで、突然変異されたタンパク質は、
a)非同義SNVの点突然変異によって引き起こされる1個以上の単一アミノ酸変化、及び/又は、
b)フレームシフトされたペプチドを生じる挿入/欠失によって引き起こされる非野生型アミノ酸配列、及び/又は、
c)エクソン境界の変化によって、又はイントロン保持を生成する突然変異によって引き起こされる非野生型アミノ酸配列、及び/又は、
d)遺伝子融合事象によって生成される突然変異された癌タンパク質、
を含み得る。
【0032】
非同義SNVのゲノム点突然変異によって引き起こされる1個以上の単一アミノ酸変化の結果であるネオアンチゲンは、本発明の文脈において、単一アミノ酸突然変異体ペプチドと称される。
【0033】
「フレームシフトペプチド」という用語は、本発明の文脈において、オープンリーディングフレーム(ORF)のシフトを引き起こす挿入又は欠失突然変異を含む、核酸のタンパク質をコードするセグメントの完全な非野生型の翻訳産物を指すのに使用される。
【0034】
「ORF」と略記される「オープンリーディングフレーム」という用語は、本発明の文脈において、連続した一連のアミノ酸へ翻訳され得るヌクレオチドの配列を指すのに使用される。通常、ORFは、所与のリーディングフレームにおいて、開始コドン、3の倍数のヌクレオチドの長さを通常有するが、終止コドン(TAG、TAA、TGA、UAG、UAA、又はUGA)を含有しない続く領域を含有する。ORFは、翻訳され得るアミノ酸が、ペプチド連結鎖を形成するタンパク質をコードする。
【0035】
エクソン境界の変化によって、又はイントロン保持を生じる突然変異によって引き起こされる非野生型アミノ酸配列の結果であるネオアンチゲンは、本発明の文脈において、スプライス部位突然変異体ペプチドと称される。
【0036】
遺伝子融合事象によって生成される突然変異された癌タンパク質の結果であるネオアンチゲンは、本発明の文脈において、リードスルー突然変異ペプチドと称される。
【0037】
「発現カセット」という用語は、本発明の文脈において、転写及び翻訳制御配列に作動可能に連結される、発現される少なくとも1個の核酸配列を含む核酸分子、例えば、本発明の不変鎖に融合される一連のネオアンチゲンをコードする核酸又はその一部を指すのに使用される。好ましくは、発現カセットは、プロモーター、開始部位及び/又はポリアデニル化部位等の所与の遺伝子の効率的な発現用のシス調節エレメントを含む。好ましくは、発現カセットは、患者の細胞における核酸の発現に必要とされる更なるエレメント全てを含有する。したがって、典型的な発現カセットは、発現される核酸配列に作動可能に連結されるプロモーター、並びに転写物の効率的なポリアデニル化、リボソーム結合部位、及び翻訳終結に必要とされるシグナルを含有する。カセットの更なるエレメントとして、例えば、エンハンサーが挙げられ得る。発現カセットはまた、効率的な終結を提供するために、構造遺伝子の下流に転写終結領域を含有することが好ましい。終結領域は、プロモーター配列と同じ遺伝子から獲得され得るか、又は異なる遺伝子から獲得されてもよい。
【0038】
本発明の文脈で使用される「作動可能に連結された」という用語は、そのように記載された構成要素がそれらの通常の機能を発揮するように構成されるエレメントの配置を指す。核酸が、別の核酸配列と機能的関係に置かれる場合に、核酸は「作動可能に連結」されている。例えば、プロモーターは、それが1つ以上の導入遺伝子の転写に影響を及ぼすのであれば、1つ以上の導入遺伝子に作動可能に連結されている。さらに、コーディング配列に作動可能に連結された制御エレメントは、コーディング配列の発現に影響を及ぼすことが可能である。制御エレメントがコーディング配列を発現に向かわせる機能を有する限りは、制御エレメントはコーディング配列と連続している必要はない。したがって、例えば、翻訳されないが転写される介在配列が、プロモーター配列とコーディング配列との間に存在する場合があり、そのプロモーター配列は、依然としてコーディング配列に「作動可能に連結されている」とみなされ得る。
【0039】
「ベクター」又は「発現ベクター」という用語は、区別なく使用され、細胞、好ましくは哺乳類細胞へと、導入されることが可能であるか、又は本発明の核酸のコレクション若しくは本発明の核酸のコレクションの一部である1個の核酸を導入することが可能であるポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドとタンパク質との混合物を指す。ベクターの例として、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルス又は人工染色体が挙げられるが、これらに限定されない。特に、ベクターは、適切な宿主細胞へとプロモーター及び本発明の核酸のコレクション又は核酸のコレクションの一部である1個の核酸を輸送するのに使用される。発現ベクターは、宿主細胞において発現ベクターの自己複製を促進する「レプリコン」ポリヌクレオチド配列を含有してもよい。宿主細胞に一度入ると、発現ベクターは、宿主染色体DNAと独立して、又は宿主染色体DNAと同時に複製してもよく、ベクター及びその挿入されたDNAの幾つかのコピーが生成され得る。多くの場合が安全性の理由で、複製不全発現ベクターが使用される場合、ベクターは、複製しない場合があり、単に核酸の発現を誘導し得る。発現ベクターのタイプに応じて、発現ベクターは、細胞から失われてもよく、すなわち、核酸によってコードされるネオアンチゲンを単に一過的に発現するか、又は細胞において安定であってもよい。発現ベクターは通常、発現カセット、すなわち、核酸の、mRNA分子への転写を可能にする必須エレメントを含有する。
【0040】
「発現制御配列」という用語は、発現を決定又は測定するのに適したタグを指す。適切なタグは、当該技術分野で既知である。本発明の文脈において、適切なタグは、ペプチド配列が本発明のポリペプチドに連結されるタンパク質タグであり得る。タンパク質タグは、例えば、親和性タグ、可溶化タグ、クロマトグラフィータグ、エピトープタグ、又は蛍光タグを包含し得る。親和性タグは、親和性技法を使用して、タンパク質が、それらの粗製生物学的供給源から精製され得るようにタンパク質に付加される。親和性タグとしては、キチン結合タンパク質(CBP)、マルトース結合タンパク質(MBP)、及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)が挙げられる。ポリ(His)タグは、金属マトリクスに結合する広範囲に使用されるタンパク質タグである。可溶化タグは、特に、タンパク質における適正なフォールディングを補助して、タンパク質が沈殿しないようにシャペロン欠損種において発現される組換えタンパク質に使用される。可溶化タグとしては、チオレドキシン(TRX)及びポリ(NANP)が挙げられる。MBP及びGST等の幾つかの親和性タグは、可溶化剤として二重の役割を有する。クロマトグラフィータグは、特定の分離技法にわたる種々の分割を可能にするように、タンパク質のクロマトグラフィー特性を変化させるのに使用される。多くの場合、クロマトグラフィータグは、FLAG-タグ等のようにポリアニオン系アミノ酸からなる。エピトープタグは、高い親和性の抗体が多くの異なる種で信頼性高く産生され得るため選択される短ペプチド配列である。エピトープタグは通常、ウイルス遺伝子に由来し、それが、高い免疫反応性を説明する。エピトープタグとして、V5-タグ、Myc-タグ、及びHA-タグが挙げられる。これらのタグは、ウェスタンブロッティング、免疫蛍光及び免疫沈降実験に特に有用であるが、それらはまた、抗体精製においても利用される。蛍光タグは、タンパク質上の視覚的な読取りを与えるのに使用される。GFP及びその変異体は、最も一般的に使用される蛍光タグである。GFPの更に先進的な用途として、GFPをフォールディングレポーターとして使用することが挙げられる(フォールティングされると蛍光になり、フォールディングされなければ無色である)。フルオロフォアの更なる例として、フルオレセイン、ローダミン、及びスルホインドシアニン色素Cy5が挙げられる。
【0041】
かかるタグの例として、AviTag、カルモジュリン-タグ、ポリグルタミン酸タグ、E-タグ、FLAG-タグ、HA-タグ、His-タグ、Myc-タグ、S-tag、SBP-タグ、Softag1、Softag3、Strep-タグ、TCタグ、V5タグ、VSV-タグ、Xpressタグ、Isopeptag、SpyTag、BCCPタグ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ-タグ、緑色蛍光タンパク質-タグ、マルトース結合タンパク質-タグ、Nus-タグ、チオレドキシン-タグ、Fc-タグ、及びTyタグが挙げられるが、これらに限定されない。HAタグ(配列番号41によるHAペプチド配列)が最も好ましい。
【0042】
「抗原」という用語は、本発明の文脈において、免疫応答の分子、例えば、抗体、T細胞受容体(TCR)等によって認識される任意の構造を指すのに使用される。好ましい抗原は、特定の疾患と関連付けられる細胞タンパク質である。抗原は、適応免疫系の高度可変抗原受容体(B細胞受容体又はT細胞受容体)によって認識され、液性又は細胞性免疫応答を誘発し得る。かかる応答を誘発する抗原はまた、免疫原とも称される。細胞内部のタンパク質のほんの一部が、それらが外来性又は細胞性であるかどうかに関係なく、より小さなペプチドへとプロセシングされて、主要組織適合複合体(MHC)によって提示される。
【0043】
「エピトープ」という用語は、抗原決定基としても知られ、本発明の文脈において、抗原のセグメント、好ましくは、免疫系の分子、例えば、B細胞受容体、T細胞受容体又は抗体によって結合されるペプチドを指すのに使用される。抗体又はB細胞によって結合されるエピトープは、「B細胞エピトープ」と称され、T細胞によって結合されるエピトープは、「T細胞エピトープ」と称される。この文脈において、「結合」という用語は、1×105 M-1以上、好ましくは1×106 M-1、1×107 M-1、1×108 M-1以上の、抗体又はT細胞受容体(TCR)と、各々のエピトープとの間の結合定数を有する結合と定義される特異的な結合に関する。当業者は、結合定数を決定する方法を十分認識している(例えば、Caoili, S.E. (2012) Advances in Bioinformatics Vol. 2012を参照のこと)。好ましくは、抗体の、エピトープへの特異的な結合は、抗体のFab(フラグメント、抗原結合)領域によって媒介され、B細胞の特異的な結合は、B細胞受容体が含む抗体のFab領域によって媒介され、T細胞の特異的な結合は、T細胞受容体の可変(V)領域によって媒介される。T細胞エピトープは、抗原提示細胞の表面上に提示され、ここで、T細胞エピトープは、主要組織適合(MHC)分子に結合される。それぞれMHCクラスI、IIと称される、少なくとも2個の異なるクラスのMHC分子が存在する。MHC-I経路により提示されるエピトープは、細胞傷害性Tリンパ球(CD8+細胞)による応答を誘発するのに対して、MHC-II経路により提示されるエピトープは、T-ヘルパー細胞(CD4+細胞)による応答を誘発する。MHCクラスI分子によって提示されるT細胞エピトープは通常、8アミノ酸長~11アミノ酸長のペプチドであり、MHCクラスII分子によって提示されるT細胞エピトープは通常、13アミノ酸長~17アミノ酸長のペプチドである。MHCクラスIII分子はまた、糖脂質として非ペプチド性エピトープを提示する。したがって、「T細胞エピトープ」という用語は、好ましくは、MHCクラスI又はMHCクラスII分子のいずれかによって提示され得る8アミノ酸長~11アミノ酸長又は13アミノ酸長~17アミノ酸長のペプチドを指す。エピトープは通常、糖側鎖を有し得るか、又は有し得ない化学的に活性な表面の分類のアミノ酸からなり、特定の三次元構造特性及び特定の電荷特性を通常有する。立体構造的及び非立体構造的なエピトープは、変性溶媒の存在下で、前者への結合は失われるが、後者への結合は失われないという点で区別される。
【0044】
「T細胞エンハンサーアミノ酸配列」という用語は、遺伝子ワクチン接種の文脈において、抗原配列に融合されると、ネオアンチゲンに対するT細胞の誘導を高めるポリペプチド配列を指す。T細胞エンハンサーの例は、不変鎖配列又はそのフラグメント、任意選択で6個の更なる下流アミノ酸残基を含む組織型プラスミノーゲン活性化因子リーダー配列、PEST配列、サイクリン破壊ボックス、ユビキチン化シグナル、SUMO化シグナルである。
【0045】
「調製物」及び「組成物」という用語は、本発明の文脈において使用される場合、活性化合物、例えば、本発明の大型類人猿アデノベクターと、担体及び/又は賦形剤との配合物を含むと意図される。
【0046】
「薬学的に許容可能な」は、本発明の文脈において使用される場合、連邦規制機関若しくは州政府によって承認された、又は米国薬局方、若しくは動物、特にヒトにおける使用について一般に認められる他の薬局方に記載されるものを意味する。
【0047】
「担体」という用語は本明細書で使用される場合、治療上活性な成分とともに投与される希釈剤、賦形剤、界面活性剤、安定剤、生理的緩衝溶液又はビヒクル等であるが、これらに限定されない薬理学的に不活性な物質を指す。かかる医薬担体は液体であっても又は固体であってもよい。液体担体としては、水、及び石油、動物、植物又は合成起源のものを含むが、これらに限定されない油、例えばラッカセイ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油等における生理食塩溶液等の滅菌液が挙げられるが、これらに限定されない。生理食塩溶液、並びに水性デキストロース及びグリセロール溶液を特に注射溶液の液体担体として用いることもできる。医薬組成物を静脈内投与する場合、生理食塩溶液が好ましい担体である。好適な医薬担体の例は、E. W. Martinによる"Remington'sPharmaceutical Sciences"に記載されている。
【0048】
好適な医薬「賦形剤」としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。
【0049】
「界面活性剤」としては、デオキシコール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、Triton X-100、並びにポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65及びポリソルベート80等のポリソルベート等であるが、これらに限定されない陰イオン、陽イオン及び非イオン界面活性剤が挙げられる。
【0050】
「安定剤」としては、マンニトール、スクロース、トレハロース、アルブミン、並びにプロテアーゼ及び/又はヌクレアーゼアンタゴニストが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
本発明の文脈において使用され得る「生理的緩衝溶液」としては、塩化ナトリウム溶液、脱塩水、及びリン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、HEPES緩衝液([4(2ヒドロキシエチル)ピペラジノ]エタンスルホン酸)又はMOPS緩衝液(3モルホリノ-1プロパンスルホン酸)等であるが、これらに限定されない好適な有機又は無機緩衝溶液が挙げられるが、これらに限定されない。それぞれの緩衝液の選択は概して、所望の緩衝液モル濃度によって決まる。リン酸緩衝液は、例えば注射溶液及び輸液に好適である。
【0052】
「有効量」又は「治療上有効な量」は、本来の目的を達成するのに十分な治療薬の量である。所与の治療薬の有効量は、治療薬の性質、投与経路、治療薬の投与対象の動物の大きさ及び種、並びに投与目的等の因子により変動し得る。各々の個別のケースにおける有効量は、当該技術分野において確立された方法に従って当業者が経験的に決定することができる。
【0053】
本明細書中で使用する場合、或る疾患又は障害に関する「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」、「治療(treatment)」又は「治療法(therapy)」は、(a)該障害の重症度を低減すること、(b)治療される該障害(複数の場合もある)に特徴的な症状の発症を制限又は予防すること、(c)治療される該障害(複数の場合もある)に特徴的な症状の悪化を阻止すること、(d)該障害(複数の場合もある)を過去に有していた個人における該障害(複数の場合もある)の再発を制限又は予防すること、及び(e)過去に該障害(複数の場合もある)の症状を示した個人における症状の再発を制限又は予防することのうち1つ以上を達成することを意味する。
【0054】
本発明の態様及び好ましい実施形態
第1の態様では、本発明は、少なくとも4個の異なる腫瘍特異的なネオアンチゲンと、少なくとも1個のT細胞エンハンサーアミノ酸配列とを含むポリペプチドに関する。
【0055】
本発明者らは、驚くべきことに、大きな樹立腫瘍を有する治療の状況における治療の有効性が、T細胞応答を誘発する免疫原性ネオアンチゲンの数に依存することを見出した。これは、チェックポイント分子のモジュレーターの同時投与に関して特に明白である。免疫原性ネオアンチゲンの数が3を超えると、治療成績は、劇的に改善する。「免疫原性」は、この文脈において、患者においてT細胞応答を誘発することが可能であることを意味する。したがって、一般的に、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも8個、少なくとも9個又は少なくとも10個のネオアンチゲンが免疫原性である(患者においてT細胞応答を誘発する)ことが好ましい。当業者は、患者におけるT細胞応答を測定する方法を十分認識している。考え得る方法の1つを以下の実施例のセクションで概説する。
【0056】
この最小数の免疫原性ネオアンチゲンを一貫して達成するためには、第1の態様のポリペプチドは、少なくとも25個の腫瘍特異的なネオアンチゲン、好ましくは、少なくとも26個、27個、28個、29個又は30個の腫瘍特異的なネオアンチゲン、最も好ましくは、少なくとも31個の腫瘍特異的なネオアンチゲンを含むことが特に好ましい。本明細書中の実施例のセクションでは、31個の腫瘍特異的なネオアンチゲンの使用を示しているが、当然のことながら、さらに数を、例えば少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個、又は少なくとも50個の腫瘍特異的なネオアンチゲンに増やすことが可能であり、それは本発明の範囲内である。好ましくは、ポリペプチドは、25個~200個の間(及びそれらを含む)、より好ましくは25個~150個、更に好ましくは25個~100個、又は最も好ましくは25個~80個の腫瘍特異的なネオアンチゲンを含む。より好ましくは、ポリペプチドは、31個~200個の間(及びそれらを含む)、より好ましくは31個~150個、更に好ましくは31個~100個、又は最も好ましくは31個~80個の腫瘍特異的なネオアンチゲンを含む。概して、本明細書中で言及される任意の最小数に関して、腫瘍特異的なネオアンチゲンの上限は80個であることが好ましい。これは、80個超を含むことが実現不可能であるという理由ではなく、ワクチンをより迅速に作製することが可能であるという目的のためである。
【0057】
少なくとも25個の腫瘍特異的なネオアンチゲンのうち、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個又は少なくとも10個(数が多いほど好ましい)のネオアンチゲンが免疫原性であることが好ましい。少なくとも26個の腫瘍特異的なネオアンチゲンのうち、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個又は少なくとも10個(数が多いほど好ましい)のネオアンチゲンが免疫原性であることが好ましい。少なくとも27個の腫瘍特異的なネオアンチゲンのうち、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個又は少なくとも10個(数が多いほど好ましい)のネオアンチゲンが免疫原性であることが好ましい。少なくとも28個の腫瘍特異的なネオアンチゲンのうち、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個又は少なくとも10個(数が多いほど好ましい)のネオアンチゲンが免疫原性であることが好ましい。少なくとも29個の腫瘍特異的なネオアンチゲンのうち、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個又は少なくとも10個(数が多いほど好ましい)のネオアンチゲンが免疫原性であることが好ましい。少なくとも30個の腫瘍特異的なネオアンチゲンのうち、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個又は少なくとも10個(数が多いほど好ましい)のネオアンチゲンが免疫原性であることが好ましい。少なくとも31個の腫瘍特異的なネオアンチゲンのうち、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個又は少なくとも10個(数が多いほど好ましい)のネオアンチゲンが免疫原性であることが好ましい。少なくとも35個の腫瘍特異的なネオアンチゲンのうち、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個又は少なくとも10個(数が多いほど好ましい)のネオアンチゲンが免疫原性であることが好ましい。少なくとも40個の腫瘍特異的なネオアンチゲンのうち、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個又は少なくとも10個(数が多いほど好ましい)のネオアンチゲンが免疫原性であることが好ましい。少なくとも45個の腫瘍特異的なネオアンチゲンのうち、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個又は少なくとも10個(数が多いほど好ましい)のネオアンチゲンが免疫原性であることが好ましい。少なくとも50個の腫瘍特異的なネオアンチゲンのうち、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個又は少なくとも10個(数が多いほど好ましい)のネオアンチゲンが免疫原性であることが好ましい。さらに、少なくとも25個~200個の腫瘍特異的なネオアンチゲンのうち、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個又は少なくとも10個(数が多いほど好ましい)のネオアンチゲンが免疫原性であることが好ましい。少なくとも25個~150個の腫瘍特異的なネオアンチゲンのうち、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個又は少なくとも10個(数が多いほど好ましい)のネオアンチゲンが免疫原性であることが好ましい。少なくとも25個~100個の腫瘍特異的なネオアンチゲンのうち、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個又は少なくとも10個(数が多いほど好ましい)のネオアンチゲンが免疫原性であることが好ましい。少なくとも25個~80個の腫瘍特異的なネオアンチゲンのうち、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個又は少なくとも10個(数が多いほど好ましい)のネオアンチゲンが免疫原性であることが好ましい。少なくとも31個~200個の腫瘍特異的なネオアンチゲンのうち、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個又は少なくとも10個(数が多いほど好ましい)のネオアンチゲンが免疫原性であることが好ましい。少なくとも31個~150個の腫瘍特異的なネオアンチゲンのうち、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個又は少なくとも10個(数が多いほど好ましい)のネオアンチゲンが免疫原性であることが好ましい。少なくとも31個~100個の腫瘍特異的なネオアンチゲンのうち、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個又は少なくとも10個(数が多いほど好ましい)のネオアンチゲンが免疫原性であることが好ましい。少なくとも31個~80個の腫瘍特異的なネオアンチゲンのうち、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個又は少なくとも10個(数が多いほど好ましい)のネオアンチゲンが免疫原性であることが好ましい。
【0058】
また、腫瘍が、少なくとも病期Tis又はT1(Tx及びT0を除く)、好ましくは、少なくとも病期T2、T3又はT4であることが一般的に好ましい。腫瘍は、同時に、全ての病期N(例えば、Nx又はN0)及びM(例えば、M0)であってもよく、好ましい実施形態において、少なくとも病期N1、N2又はN3及び/又はM1であってもよい。これは、TNM分類を指し、TNM分類は、下記の通りに腫瘍病期を規定する:
【0059】
T:原発性腫瘍の大きさ又は直接的な程度
Tx:腫瘍の評価が不可能
Tis:上皮内に癌腫
T0:腫瘍の徴候なし
T1、T2、T3、T4:原発腫瘍の徴候あり、病期が上がるとともに、大きさ及び/又は進展が増加
【0060】
N:局所的なリンパ節への拡がりの度合い
Nx:リンパ節の評価が不可能
N0:局所的なリンパ節転移なし
N1:局所的なリンパ節転移が存在;幾つかの部位にて、腫瘍が、最も近くの局所的なリンパ節又は少数の局所的なリンパ節に拡がる
N2:腫瘍が、N1とN3との間の程度に拡がる(N2は、全ての部位では使用されない)
N3:腫瘍が、より遠くの局所的なリンパ節又は多数の局所的なリンパ節に拡がる(N3は、全ての部位では使用されない)
【0061】
M:遠隔転移の存在
M0:遠隔転移なし
M1:遠隔臓器への転移(局所的なリンパ節を超える)
【0062】
特に本発明から恩恵を受けると想定される例示的な病期は、Tis及びNのいずれか(好ましくは、N1又はN2又はN3)及びMのいずれか(好ましくは、M1)、T1及びNのいずれか(好ましくは、N1又はN2又はN3)及びMのいずれか(好ましくは、M1)、T2及びNのいずれか(好ましくは、N1又はN2又はN3)及びMのいずれか(好ましくは、M1)、T3及びNのいずれか(好ましくは、N1又はN2又はN3)及びMのいずれか(好ましくは、M1)、並びにT4及びNのいずれか(好ましくは、N1又はN2又はN3)及びMのいずれか(好ましくは、M1)である。患者における腫瘍の存在及びその拡がりは、イメージング法、例えば、コンピューター断層撮影法(CT)スキャン、磁気共鳴画像法(MRI)、陽電子放射断層撮影法(PET)におけるシンチグラフィーによって検出される放射性トレーサーを用いた同位体診断法又はそれらの組合せを使用して検出され得る。イメージング法はまた、例えば、超音波検査、内視鏡検査、マンモグラフィ、血中のバイオマーカー検出、細針生検又はそれらの組合せのような他の方法と組み合わせることができる。イメージング法によって検出することができる腫瘍のサイズは、使用される方法に依存し、同位体イメージングに関しては直径が約1.5 cm、CT及びMRIに関しては直径が約3 mm、またPETベースの方法に関しては直径が約7 mmである(Erdi. (2012) Molecular Imaging andRadionuclide Therapy 21(1): 23)。
【0063】
好ましくは、腫瘍の存在(「徴候」)は、循環腫瘍セルフリーDNAの検出、コンピューター断層撮影法(CT)スキャン、磁気共鳴画像法(MRI)、陽電子放射断層撮影法(PET)におけるシンチグラフィーによって検出される放射性トレーサーを用いた同位体診断法、及び上述の任意の組合せからなる群から選択される方法を用いて決定される。一実施形態において、上述の方法の1つ以上又はそれらの組合せは、超音波検査、内視鏡検査、マンモグラフィ、血中のバイオマーカー検出、細針生検及び上述の任意の組合せからなる群の一方法と組み合わせられる。
【0064】
好ましい実施形態において、腫瘍は、直径が少なくとも約3 mm、好ましくは直径が少なくとも7 mm、及びより好ましくは直径が少なくとも1.5 cmの病変を特徴とする。
【0065】
好ましくは、腫瘍特異的なネオアンチゲンは、独立して、単一アミノ酸突然変異体ペプチド、フレームシフトペプチド、リードスルー突然変異ペプチド及びスプライス部位突然変異体ペプチドからなる群から選択される。
【0066】
第1の態様の好ましい実施形態において、ポリペプチドは、腫瘍特異的なネオアンチゲンを含有する少なくとも5個のタンパク質フラグメントを含む。ポリペプチドは、腫瘍特異的なネオアンチゲンを含有する少なくとも10個のタンパク質フラグメントを含むことが好ましい。また、ポリペプチドは、腫瘍特異的なネオアンチゲンを含有する少なくとも15個のタンパク質フラグメントを含むことが好ましい。また、ポリペプチドは、腫瘍特異的なネオアンチゲンを含有する少なくとも20個のタンパク質フラグメントを含むことが好ましい。また、ポリペプチドは、腫瘍特異的なネオアンチゲンを含有する少なくとも25個のタンパク質フラグメントを含むことが好ましい。より好ましくは、ポリペプチドは、腫瘍特異的なネオアンチゲンを含有する少なくとも30個のタンパク質フラグメントを含む。
【0067】
本発明の第1の態様の別の実施形態において、ポリペプチドは、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、好ましくは、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個、少なくとも50個又はそれ以上の腫瘍特異的なネオアンチゲンを含む。好ましくは、ポリペプチドは、5個~200個、より好ましくは15個~150個、更に好ましくは25個~100個又はより好ましくは30個~50個の腫瘍特異的なネオアンチゲンを含む。
【0068】
本発明の第1の態様の別の実施形態において、腫瘍特異的なネオアンチゲンは、互いに独立して、8アミノ酸長~50アミノ酸長を有する。腫瘍特異的なネオアンチゲンは、互いに独立して、9アミノ酸長~45アミノ酸長を有することが好ましい。腫瘍特異的なネオアンチゲンは、互いに独立して、10アミノ酸長~40アミノ酸長を有することがより好ましい。また、腫瘍特異的なネオアンチゲンは、互いに独立して、15アミノ酸長~35アミノ酸長を有することが好ましい。また、腫瘍特異的なネオアンチゲンは、互いに独立して、12アミノ酸長~30アミノ酸長を有することが好ましい。腫瘍特異的なネオアンチゲンは、互いに独立して、13アミノ酸長~28アミノ酸長を有することがより好ましい。腫瘍特異的なネオアンチゲンは、互いに独立して、14アミノ酸長~45アミノ酸長を有することがより好ましい。腫瘍特異的なネオアンチゲンは、互いに独立して、15アミノ酸長~35アミノ酸長を有することが更に好ましい。最も好ましくは、腫瘍特異的なネオアンチゲンは、互いに独立して、25アミノ酸長を有する。
【0069】
本発明の第1の態様の別の実施形態において、腫瘍特異的なネオアンチゲンはそれぞれ、互いに独立して、8アミノ酸長~50アミノ酸長、好ましくは15アミノ酸長~35アミノ酸長、より好ましくは25アミノ酸長を有する。
【0070】
好ましくは、ポリペプチドは、8アミノ酸長~50アミノ酸長、好ましくは15アミノ酸長~35アミノ酸長、より好ましくは25アミノ酸長の5個~200個の腫瘍特異的なネオアンチゲン、より好ましくは、8アミノ酸長~50アミノ酸長、好ましくは15アミノ酸長~35アミノ酸長、より好ましくは25アミノ酸長の15個~150個の腫瘍特異的なネオアンチゲン、更に好ましくは、8アミノ酸長~50アミノ酸長、好ましくは15アミノ酸長~35アミノ酸長、より好ましくは25アミノ酸長の25個~100個の腫瘍特異的なネオアンチゲン、又はより好ましくは、8アミノ酸長~50アミノ酸長、好ましくは15アミノ酸長~35アミノ酸長、より好ましくは25アミノ酸長の30個~50個の腫瘍特異的なネオアンチゲンを含む。
【0071】
ペプチド内のネオアンチゲンの全体的な長さは、好ましくは100アミノ酸~2000アミノ酸、より好ましくは、500アミノ酸~1000アミノ酸の範囲内である。
【0072】
本発明の第1の態様の別の実施形態において、腫瘍特異的なネオアンチゲンはそれぞれ、独立して、単一アミノ酸突然変異体ペプチド、フレームシフトペプチド、リードスルー突然変異ペプチド、及びスプライス部位突然変異体ペプチドからなる群から選択される。好ましくは、腫瘍特異的なネオアンチゲンの少なくとも80%が、単一アミノ酸突然変異体ペプチドであり、より好ましくは、腫瘍特異的なネオアンチゲンの少なくとも85%が、単一アミノ酸突然変異体ペプチドであり、より好ましくは、腫瘍特異的なネオアンチゲンの少なくとも90%が、単一アミノ酸突然変異体ペプチドであり、より好ましくは、腫瘍特異的なネオアンチゲンの少なくとも95%が、単一アミノ酸突然変異体ペプチドである。
【0073】
本発明の第1の態様の別の好ましい実施形態において、前記腫瘍特異的なネオアンチゲンは、互いに直接連結される。
【0074】
本発明の第1の態様の別の好ましい実施形態において、アミノ酸リンカー配列は、各ネオアンチゲン間、又はネオアンチゲン群間に含まれる。適切なリンカー配列は、当該技術分野において既知であり、好ましくは、1アミノ酸~10アミノ酸を含むか、又はそれらからなる。リンカーは好ましくは、Ser及びGly等の小アミノ酸からなるか、又はそれらを含む。
【0075】
本発明の第1の態様の別の実施形態において、アミノ酸リンカー配列は、各ネオアンチゲン間、又はネオアンチゲン群間に含まれる。好ましくは、リンカーは、天然に存在する多ドメインタンパク質に由来し得るか、又は意図的に生成され得る。リンカーは、可撓性リンカー及び/又は細胞プロテアーゼによってプロセシングされ得るin vivoで切断可能なリンカーを含む。
【0076】
本発明の第1の態様の別の好ましい実施形態において、前記T細胞エンハンサーアミノ酸配列は、不変鎖、組織型プラスミノーゲン活性化因子(TPA)のリーダー配列、PEST配列、サイクリン破壊ボックス、ユビキチン化シグナル、及びSUMO化シグナルからなる群から選択される。
【0077】
T細胞エンハンサーアミノ酸配列は、ポリペプチド内のN末端に、より好ましくは、本発明のポリペプチドのN末端に配置されることが好ましい。
【0078】
本発明の第1の態様の別の好ましい実施形態において、TPAは、TPAリーダー配列及びTPAリーダー配列に対してC末端近くにある2個~10個、好ましくは4個~8個、より好ましくは6個のTPA残基を含む伸長されたTPAリーダー配列である。本発明者らは、これらの更なる残基を有することにより、リーダー配列の正確な切断の信頼性が改善される(正確とは、リーダー配列が野生型TPAで見られるのと同じ残基で切断されることを意味する)ことを見出した。本発明者らは、リーダー配列のみを導入することにより、ネオアンチゲン部分内で切断を引き起こすことができ、これが、一連のネオアンチゲンの一部を切断することを見出した。TPAは、本発明の第1の態様によれば、ポリペプチドのN末端に存在することが好ましい。本発明のポリペプチド中に含まれ得る好ましいTPAは、配列番号42によるアミノ酸配列を有する。
【0079】
本発明の第1の態様の別の好ましい実施形態において、前記不変鎖は、
(a)配列番号36によるヒト不変鎖、配列番号37によるマウス不変鎖、及び配列番号38によるニシキテグリ不変鎖、
(b)(a)による不変鎖の免疫刺激性フラグメント、及び/又は、
(c)(a)による不変鎖又は(b)によるフラグメントに対して少なくとも70%の配列同一性を有する、(a)又は(b)の免疫刺激性変異体、
からなる群から選択される。
【0080】
不変鎖は、配列番号36によるヒト不変鎖であることが好ましい。また、不変鎖は、配列番号37によるマウス不変鎖であることが好ましい。また、不変鎖は、配列番号38によるニシキテグリ不変鎖であることが好ましい。かかる不変鎖は、従来技術において、例えば国際公開第2007/062656号に記載されている。
【0081】
好ましくは、不変鎖は、配列番号36によるヒト不変鎖の免疫刺激性フラグメントである。不変鎖は、配列番号37によるマウス不変鎖の免疫刺激性フラグメントであることが、更に好ましい。不変鎖は、配列番号38によるニシキテグリ不変鎖であることが、更に好ましい。かかるフラグメントは、例えば国際公開第2010/057501号及び国際公開第2015/082922号のような従来技術において記載されている。特に好ましいフラグメントは、特に、配列番号39又は配列番号40のアミノ酸配列を含むか、又はそれらからなる配列番号38のフラグメントを含むか、又はそれらからなる。
【0082】
また、不変鎖は、配列番号36によるヒト不変鎖の免疫刺激性変異体であることが好ましく、ここで、変異体は、配列番号36による不変鎖に対して、少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%の配列同一性、より好ましくは少なくとも80%の配列同一性、より好ましくは少なくとも85%の配列同一性、より好ましくは少なくとも90%の配列同一性、更に好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する。また、不変鎖は、配列番号37によるマウス不変鎖の免疫刺激性変異体であることが好ましく、ここで、変異体は、配列番号37による不変鎖に対して、少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%の配列同一性、より好ましくは少なくとも80%の配列同一性、より好ましくは少なくとも85%の配列同一性、より好ましくは少なくとも90%の配列同一性、更に好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する。また、不変鎖は、配列番号38によるニシキテグリ不変鎖の免疫刺激性変異体であることが好ましく、ここで、変異体は、配列番号38による不変鎖に対して、少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%の配列同一性、より好ましくは少なくとも80%の配列同一性、より好ましくは少なくとも85%の配列同一性、より好ましくは少なくとも90%の配列同一性、更に好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0083】
不変鎖の免疫刺激性フラグメントの「免疫刺激性変異体」という用語は、本発明の文脈において、ネオアンチゲンの免疫刺激性活性を評価するアッセイにおける活性(例えば、以下の実施例を参照のこと)が、未変化の不変又はそのフラグメントに関して測定される活性の少なくとも50%であることを意味する。好ましくは、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは同じか、又はより高い免疫刺激性活性。
【0084】
ポリペプチドは、MITD(MHCクラスI輸送シグナル)を含まないことが更に好ましい。というのは、これが、発現後にポリペプチドを小胞体膜へ誘導し、それが望ましくないためである。したがって、ポリペプチドは一般的に、発現後にポリペプチドを小胞体膜へ誘導するエレメントを含まないことが更に好ましい。特定の実施形態において、ポリペプチドは、C末端で、本明細書中で規定するようなタグ(発現制御配列)に連結される。この実施形態において、タグは、ポリペプチドのC末端にある(すなわち、更なるエレメントは存在しない)ことが好ましい。ポリペプチドがタグを含まない場合、ポリペプチドのC末端は、ネオアンチゲンである(すなわち、ネオアンチゲンではない更なるエレメントは存在しない)ことが好ましい。
【0085】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様のポリペプチドをコードする核酸に関する。
【0086】
第3の態様では、本発明は、発現制御配列に作動可能に連結される、本発明の第2の態様の核酸を含むベクターに関する。
【0087】
第7の態様の発現ベクターのコレクションの好ましい実施形態において、コレクションの発現ベクターそれぞれは、独立して、プラスミド;コスミド;RNA;アジュバントと配合されたRNA;リポソーム粒子中に配合されたRNA;自己増幅RNA(SAM);アジュバントと配合されたSAM;リポソーム粒子中に配合されたSAM;ウイルスベクター、好ましくはアルファウイルスベクター、ベネズエラウマ脳炎(VEE)ウイルスベクター、シンドビス(SIN)ウイルスベクター、セムリキ森林ウイルス(SFV)ウイルスベクター、また好ましくは、チンパンジー若しくはボノボ若しくはゴリラに由来することが好ましい複製可能な若しくは複製不全のアデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター若しくは改変ワクシニアアンカラ(MVA)ベクター、サル若しくはヒトサイトメガロウイルス(CMV)ベクター、リンパ球性脈絡髄膜炎(LCMV)ベクター、レトロウイルス又はレンチウイルスベクターからなる群から選択される。1つのコレクションにおいて使用される発現ベクターは全て、同じタイプ、例えば、複製不全アデノウイルスベクターであることが好ましい。
【0088】
最も好ましい発現ベクターは、アデノウイルスベクター、特にヒト又は非ヒト大型類人猿に由来するアデノウイルスベクターである。アデノウイルスが由来する好ましい大型類人猿は、チンパンジー(Pan)、ゴリラ(Gorilla)及びオランウータン(Pongo)、好ましくはボノボ(Pan paniscus)及びナミチンパンジー(Pan troglodytes)である。通常、天然に存在する非ヒト大型類人猿アデノウイルスは、各々の大型類人猿の糞便サンプルから単離される。最も好ましいベクターは、hAd5、hAd11、hAd26、hAd35、hAd49、ChAd3、ChAd4、ChAd5、ChAd6、ChAd7、ChAd8、ChAd9、ChAd10、ChAd11、ChAd16、ChAd17、ChAd19、ChAd20、ChAd22、ChAd24、ChAd26、ChAd30、ChAd31、ChAd37、ChAd38、ChAd44、ChAd55、ChAd63、ChAd73、ChAd82、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2、及びPanAd3ウイルスに基づく非複製アデノウイルスベクター又は複製可能Ad4及びAd7ベクターである。ヒトアデノウイルスhAd4、hAd5、hAd7、hAd11、hAd26、hAd35及びhAd49は、当該技術分野で既知である。天然に存在するChAd3、ChAd4、ChAd5、ChAd6、ChAd7、ChAd8、ChAd9、ChAd10、ChAd11、ChAd16、ChAd17、ChAd19、ChAd20、ChAd22、ChAd24、ChAd26、ChAd30、ChAd31、ChAd37、ChAd38、ChAd44、ChAd63及びChAd82に基づくベクターは、国際公開第2005/071093号に詳述されている。天然に存在するPanAd1、PanAd2、PanAd3、ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146、及びChAd147に基づくベクターは、国際公開第2010/086189号に詳述されている。
【0089】
第4の態様では、本発明は、それぞれが請求項11に記載の核酸を含む1個以上の発現ベクターのコレクションであって、発現ベクターがそれぞれ、プラスミド;コスミド;RNA;アジュバントと配合されたRNA;リポソーム粒子中に配合されたRNA;自己増幅RNA(SAM);アジュバントと配合されたSAM;リポソーム粒子中に配合されたSAM;ウイルスベクター、好ましくはアルファウイルスベクター、ベネズエラ脳炎(VEE)ウイルスベクター、シンドビス(SIN)ウイルスベクター、セムリキ森林ウイルス(SFV)ウイルスベクター、サル若しくはヒトサイトメガロウイルス(CMV)ベクター、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)ベクター、レトロウイルス若しくはレンチウイルスベクター、好ましくは、チンパンジー若しくはボノボ若しくはゴリラに由来することが好ましい複製可能な若しくは複製不全の大型類人猿由来アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター又は改変ワクシニアアンカラ(MVA)ベクターからなる群から選択される、1個以上の発現ベクターのコレクションに関する。
【0090】
第5の態様では、本発明は、被験体における増殖性疾患の予防又は治療に使用される、第1の態様のポリペプチド、本発明の第2の態様の核酸、本発明の第3の態様のベクター又は本発明の第4の態様によるベクターのコレクションと、チェックポイント分子の少なくとも1個のモジュレーター又は該モジュレーターをコードする核酸又は該モジュレーターをコードする該核酸を含むベクターとを含むワクチンを含む組成物に関する。
【0091】
第5の態様の好ましい実施形態において、チェックポイント分子のモジュレーターは、
(a)腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリーの成員のアゴニスト、好ましくはCD27(例えば、バルリルマブ(Varlilumab))、CD40(例えば、CP-870893)、OX40(例えば、INCAGN01949又はMEDI0562)、GITR(例えば、MEDI1873)又はCD137(例えば、ウトミルマブ(Utomilumab))のアゴニスト、
(b)PD-1(例えば、ペムプロリズマブ又はニボルマブ等の抗体)、PD-L1(例えば、アテゾリズマブ等の抗体)、CD274(アテゾリズマブ又はデュルバルマブ)、A2AR(例えば、プレラデナント)、B7-H3(例えば、MGA271)、B7-H4、BTLA、CTLA-4(例えば、トレメリムマブ又はAGEN1884)、IDO、KIR、LAG3、TIM-3(例えば、CA-327又はRMT3-23)、若しくはVISTA(例えば、CA-170)のアンタゴニスト、又はB7-CD28スーパーファミリーの成員のアンタゴニスト、好ましくはCD28若しくはICOSのアンタゴニスト、又はそれらのリガンドのアンタゴニスト、
からなる群から選択される。
【0092】
好ましい免疫モジュレーターは、IL-2、IL-12、又はIL-15のようなT細胞増殖因子である。
【0093】
本発明の第5の態様の好ましい実施形態において、チェックポイント分子の前記モジュレーターの投与は、前記ワクチンの投与の開始前に開始されるか、又は該チェックポイント阻害剤の投与は、前記ワクチンの投与の開始後に開始されるか、又は該チェックポイント阻害剤の投与は、前記ワクチンの投与の開始と同時に開始される。
【0094】
本発明の第5の態様の好ましい実施形態において、ワクチン接種計画は、2個の異なるウイルスベクターによる異種プライムブーストである。好ましい組合せは、プライミング(priming:初回刺激)用の大型類人猿由来アデノウイルスベクター及びブースティング(boosting:追加免疫)用のポックスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター又は改変ワクシニアアンカラ(MVA)ベクターである。好ましくは、これらは、少なくとも1週、好ましくは6週間隔で、順次投与される。
【0095】
本発明の第5の態様の好ましい実施形態において、前記被験体は、
(a)唇、口腔及び咽頭の悪性新生物、及び/又は、
(b)消化器の悪性新生物、及び/又は、
(c)呼吸器及び胸腔内臓器の悪性新生物、及び/又は、
(d)骨及び関節軟骨の悪性新生物、及び/又は、
(e)皮膚の黒色腫及び他の悪性新生物、及び/又は、
(f)中皮組織及び軟組織の悪性新生物、及び/又は、
(g)胸部の悪性新生物、及び/又は、
(h)女性生殖器の悪性新生物、及び/又は、
(i)男性生殖器の悪性新生物、及び/又は、
(j)尿路の悪性新生物、及び/又は、
(k)眼、脳及び中枢神経系の他の部分の悪性新生物、及び/又は、
(l)甲状腺及び他の内分泌腺の悪性新生物、及び/又は、
(m)リンパ組織、造血組織及び関連組織の悪性新生物、
を患っているか、又は患う危険性がある。
【0096】
概して、被験体は、上述するようにTNM病期の腫瘍を有することが好ましい。
【0097】
1つの好ましい実施形態において、腫瘍は、直径が少なくとも約3 mm、好ましくは直径が少なくとも7 mm、及びより好ましくは直径が少なくとも1.5 cmの病変を特徴とする。
【0098】
第6の態様では、本発明は、別々のパッケージング中に、
(i)本発明の第1の態様のポリペプチド、本発明の第2の態様の核酸、本発明の第3の態様のベクター又は本発明の第4の態様によるベクターのコレクションを含むワクチンと、
(ii)チェックポイント分子の少なくとも1個のモジュレーター又は該モジュレーターをコードする核酸又は該モジュレーターをコードする該核酸を含むベクターと、
を含む、ワクチン接種キットに関する。
【実施例
【0099】
実施例1:ネオアンチゲンの、不変鎖又はTPA配列のいずれかへの融合は、GAdワクチン接種において免疫原性を回復させる
CT26マウス腫瘍に由来するイニシエーターメチオニンに先行された5個のネオアンチゲンを含有する五胞体(CT26-5、配列番号32)をコードする大型類人猿アデノウイルスベクターは、INV配列がネオアンチゲンのN末端に配置されない限り(CT26-5 INV、配列番号33)、癌抗原に対する免疫応答を誘導することは不可能である。免疫原性を取り戻す能力は、同様に5個のネオアンチゲンをコードする一連の配列に対してN末端でTPA配列を融合させることによって得られた(CT26-5 TPA、配列番号3)。
【0100】
選択されるネオアンチゲンは、腫瘍に見出される最も頻発するタイプの突然変異である5個の非同義単一ヌクレオチド変異体(SNV)によって生成される。各ネオアンチゲンのアミノ酸配列は、総長25アミノ酸に関して12個の野生型(wt)アミノ酸に上流及び下流の両方で隣接される、その中心に配置される突然変異されたアミノ酸を有する(表1)。ネオアンチゲン配列は、その発現をモニタリングする目的で、HAペプチド配列と下流で融合された人工抗原を形成するように、ヘッドトゥテールで結合される(配列番号41)。
【0101】
免疫学的効力は、3個のワクチンそれぞれに関して、5×108個のGAdウイルス粒子(vp)の用量での単回筋内免疫化後に、BalBC近交系マウスにおいて評価した。脾細胞を、免疫化の3週後に収集し、5個のネオアンチゲンそれぞれに相当する合成ペプチドのプールの存在下で細胞を刺激することによって、IFN-γ ELISpotにより試験した。免疫応答(脾細胞100万個当たりのIFN-γを産生するT細胞の数)を図1に示す。抗原ウェルの平均値が、(i)20よりも高いスポット形成コロニー(SFC)/106個のPBMCであり、かつ(ii)DMSOで希釈されたペプチドとともにインキュベートされたウェルのバックグラウンド値の3倍を超えた場合に、応答を陽性とみなした。図1に示すように、INV又はTPAのいずれかの付加は、ワクチン接種動物において100%応答率で、非免疫原性CT26-5抗原を、免疫原性抗原に変換させた。
【0102】
実施例2:積極治療の状況において、ワクチンと抗PD-1との間で相乗活性を獲得するのに、多数のネオアンチゲンが必要とされる
N末端TPA配列を有する31個のネオアンチゲンをコードするより長い構築物(CT26-31 TPA、配列番号35)に相当する第2の大型類人猿アデノウイルスベクター(GAd-CT26-31 TPA)を構築した。使用される好ましいTPA配列は、配列番号42のアミノ酸配列を有する。ネオアンチゲンを生成する選択される突然変異は、31個の非同義SNVであり(表2)、そのうちの3個はまた、より短いCT26-5 TPA構築物をコードするGAd-CT26-5 TPAベクター中にも存在していた(表1)。31個のネオアンチゲンそれぞれのアミノ酸配列は、総長25アミノ酸に関して12個のwtアミノ酸に上流及び下流の両方で隣接される、その中心に配置される突然変異されたアミノ酸を有する(表1)。突然変異されたタンパク質のN末端に相当する6個のみの上流wtアミノ酸が存在するネオアンチゲン配列番号6(表2)、及び更なるSNVによって生成される更なる突然変異が上流アミノ酸セグメント(表2)中に存在するネオアンチゲン配列番号16(表2)は、例外である。ネオアンチゲンのアミノ酸配列は、表2に示される順序で、ヘッドトゥテールで結合され、HAペプチド配列(配列番号41)は、発現をモニタリングする目的で、構築されたネオアンチゲンのC末端に付加された。
【0103】
5×108個のウイルス粒子(vp)の用量で一度ナイーブBalbCマウスを筋内で免疫化することによって、GAd-CT26-5 TPA(短い構築物)及びGAd-CT26-31 TPA(長い構築物)の免疫原性をin vivoで決定した。ワクチン構築物によってコードされる突然変異された25量体配列に相当する個々のペプチドの認識のため、INFγ ELISpotによって、T細胞応答を免疫化の3週後に測定した。より小さな構築物(CT26-5 TPA)は、3個のネオアンチゲンに対してのみ、T細胞応答を誘導した。これに対して、CT26-31 TPAを用いたワクチン接種は、CT26-5構築物と共有される3個のネオアンチゲンを含む、31個のネオアンチゲンのうち8個に対してT細胞応答を誘導した(図2)。
【0104】
ワクチン中に存在する免疫原性ネオアンチゲンの総数が、重要な因子となるかどうかに対処するために、本発明者らは、予防の状況、及び積極治療の状況の両方において、2個の構築物のワクチン接種効率を評価した。予防の状況においては、本発明者らはまず、GAd-CT26-31TPA又はGAd-CT26-5 TPA(5×108個のvp/マウス)で一度、筋内にワクチン接種して、続いて、ワクチン接種の15日後に、腫瘍細胞(マウス1匹当たり2×106個の細胞)を接種した。ワクチン接種したマウスは全て(100%)、使用される構築物のタイプとは独立して、腫瘍を含まなかったのに対して、モックワクチンをワクチン接種した対照マウスは全て、非常に大きな腫瘍の存在のため、4週後に屠殺した。
【0105】
治療の状況を再現するために、BALB/cマウスに、CT26腫瘍細胞(マウス1匹当たり2×106個の細胞)を生着させた。腫瘍塊を経時的に測定し、腫瘍塊が目に見えるようになり、平均体積70 mm3に達したら、治療を開始した。次に、GAd-CT26-31TPA及びGAd-CT26-5 TPAの治療的有効性を、単独で、又は抗PD1抗体(クローンRMP1-14、Bioxcell)治療と組み合わせて、単回用量のGAd-CT26-31 TPA又はGAd-CT26-5 TPAワクチン(5×108個のvp)の筋内注射及び抗PD1抗体の腹腔内注射による樹立腫瘍の初期治療によって評価した。続いて、抗PD-1抗体治療を2週間継続した(3日目、6日目、9日目、13日目、又は16日目)。
【0106】
結果により、抗PD1抗体治療を伴わないGAd-CT26-31 TPA及びGAd-CT26-5 TPAワクチン接種は、この状況においては有効でないことが示され、マウスは全て、治療していないマウスのように非常に大きな腫瘍の存在のため、4週後に屠殺した。したがって、ワクチンはともに、独立型の治療として使用される場合には、予防の状況において観察されるものとは異なって、動物を治癒することは不可能であった。抗PD-1単独療法又は抗PD-1療法とGAd-CT26-5TPAワクチン接種との組合せは、治療されたマウスのほんの15%において、腫瘍の縮小を引き起こした。対比して、抗PD-1治療と、長い構築物をコードするGAd-CT26-31 TPAによるワクチン接種との組合せは、治療された動物の48%において、腫瘍の収縮及び完全な治癒を伴う顕著な抗癌活性を提供した。データは表3にまとめており、PD-1/GAd-CT26-31 TPAコンボに対する、PD-1単独療法又はPD-1/GAd-CT26-5TPAコンボ間の差が、統計学的に有意であることを示す。これらの結果により、多数のネオアンチゲンをコードする場合、また免疫調節性分子による治療と組み合わせた場合に、遺伝子ワクチンは、樹立腫瘍を根絶することが可能であることが実証される。
【0107】
実施例3:3つの異なる状況におけるワクチン接種有効性の比較
ワクチン中に存在するネオアンチゲンの数が、ワクチン接種アプローチの有効性を決定するのに重要であるかどうかに対処するために、本発明者らは、3つの異なる状況:1)予防の状況、2)肺癌の転移モデルにおける早期介入、及び3)大きな樹立皮下腫瘍の高度な治療の状況において、ワクチン接種有効性を評価した。
【0108】
予防的介入において、マウスをまず、5×108個のvpの用量で、GAd-CT26-31又はGAd-CT26-5で免疫化して、2週後に、CT26腫瘍細胞を誘発して、ワクチン接種の予防的価値を評価した。これは、使用される構築物のタイプとは独立して、ワクチン接種したマウスの100%において、腫瘍の取込みからの防御をもたらしたのに対して、処置していないマウスは全て、大きな腫瘍を発生した(図3)。
【0109】
同様に、GAd-CT26-31及びGAd-CT26-5は同様に、微小残存病変を再現している早期の治療の状況において、腫瘍塊はワクチン送達時に依然として形成されないため、CT26細胞の、肺小結節の数によって測定される肺転移を根絶するのに有効であった。ワクチン接種(5×108個のvpの用量)は、腫瘍細胞の静脈内注射の3日後に実施した(図4)。
【0110】
大きな樹立皮下腫瘍を担持するマウスに、GAd-CT26-31 TPAをワクチン接種した場合には、抗腫瘍活性は観察されなかった(図5A)。抗PD-1単独療法又は抗PD-1療法とGAd-CT26-5 TPAとの組合せに関しては、部分的応答が観察された(図5B)。これに対して、PD1遮断と、大きな構築物GAd-CT26-31 TPAとの組合せは、顕著な抗癌活性を提供し、治療された動物の48%において、腫瘍の収縮及び完全な治癒をもたらした(図5B)。GAd-CT26-31 TPA及び抗PD1による同時治療は、予防の状況におけるGAd-CT26-31 TPA単独によるワクチン接種(図2)と比較して、31個のネオアンチゲンのうち同じ8個に対して、T細胞応答を誘導した(図6)。
【0111】
実施例4:個別化ワクチンの有効性は、CD8+T細胞応答に依存する
GAd-CT26-31TPAの治療的な抗腫瘍効果に対するCD4+T細胞及びCD8+T細胞の寄与を検討するために、CD4+T細胞又はCD8+T細胞を、療法の開始の1週後に注射した特定の抗体(α-mCD8、BioXcellクローンYTS169.4;α-mCD4、BioXcellクローンYTS191)(200 μg)によって枯渇させた。CD8+T細胞枯渇は、抗腫瘍効果を完全に抑制し(図8)、CD8+T細胞の中心的な寄与を強調した。対比して、CD4+T細胞の枯渇は、治療の有効性に対して影響を及ぼさなかった(図7)。有効性の媒介物質としてのCD8+T細胞応答の同定もまた、強力なCD8+T細胞応答を生成するアデノウイルスベクターの既知の特性と合致する。
【0112】
実施例5:個別化ワクチンと抗PD1治療との組合せの有効性は、腫瘍におけるTCRクローン性の増加と相関している
抗PD1のみで治療したマウス又は抗PD-1療法とGAd-CT26-31 TPAとの組合せによって治療されたマウスのCT26腫瘍由来のRNAを抽出して、RNASeq解析に付した。マニュアルのRNA-seqのワークフローに報告される標準的なパラメーターを適用したMIXCRツールを使用して(https://mixcr.readthedocs.io/en/master/rnaseq.html)、T細胞受容体(TCR)ベータのクローン性を、RNASeqデータから評価した。MIXCRによって生じた未加工出力(検出されるTCRクローン型の配列及び発現)を、RパッケージtcRを用いて(https://cran.r-project.org/web/packages/tcR/vignettes/tcrvignette.html)更に解析し、再構築されたCDR3配列を獲得して、要約統計量を得た。図8に示すように、抗PD-1とGAd-CT26-5 TPAとの同時治療は、抗PD1治療単独と比較した場合に、腫瘍において、非常に多数の別個のTCRクローン(クローン型)の存在をもたらす。
【0113】
表1
CT26-5の個々のネオアンチゲン:突然変異されたアミノ酸は、太字及び下線で表示している
【表1】
ネオアンチゲン
遺伝子
【0114】
表2
CT26-31に存在する個々のネオアンチゲン:突然変異されたアミノ酸は、太字及び下線で表示している
【表2】
ネオアンチゲン
遺伝子
【0115】
【表3】
治療(複数の場合もある)
T細胞反応性の誘導の数
治癒されたマウスの頻度
抗PD1
*レスポンダー対非レスポンダーの数で算出されるカイ二乗検定
【符号の説明】
【0116】

図面訳
図1
Responses on pool プールに対する応答
SFC/10^6 cells SFC/106個の細胞

図2
SFC/10^6 splenocytes SFC/106個の脾細胞

図3
Day-15 15日前
Day 0 0日目
CT26 inoculum CT26接種
TUMOR MONITORING 腫瘍モニタリング
Tumor volume 腫瘍体積
mock モック

図4
Day0 0日目
Day3 3日目
LUNG METASTASIS 肺転移
Day16 16日目
#lung nodules 肺小結節数

図5A
Established tumor 樹立細胞
CT26 inoculum CT26接種
Day 0 0日目
TUMOR MONITORING 腫瘍モニタリング
Tumor volume 腫瘍体積

図5B
Tumor volume 腫瘍体積
anti-PD1 抗PD1
GAd-CT26-5 & anti-PD1 GAd-CT26-5及び抗PD1
GAd-CT26-31 & anti-PD1 GAd-CT26-31及び抗PD1
days 日数

図6
GAd-CT26-31&anti-PD1 GAd-CT26-31及び抗PD1
SFC/10^6 splenocytes SFC/106個の脾細胞

図7
Tumor volume 腫瘍体積
Undepleted 非枯渇
GAd-CT26-31&anti-PD1 GAd-CT26-31及び抗PD1
CD4 depleted CD4枯渇
CD8 depleted CD8枯渇
days 日数

図8
p-value p値
Number ofclonotypes クローン型の数
Combined treatment 併用治療
anti-PD1 抗PD1
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
【配列表】
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